JP4558875B2 - 熱交換器フィン材用親水化処理組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱交換器フィン材用親水化処理剤に関し、特に室外機の熱交換器フィン材表面の着霜防止に優れた皮膜を形成できる親水化処理剤に関する。
【0002】
【従来の技術及びその課題】
冬期において、ヒートポンプ式エアコンの暖房運転時、室外機の熱交換器フィン材表面に霜が生じ、放っておくとフィン詰まりを起こし、暖房能力が低下するため、除霜運転を行わなければならなくなる。この熱交換器フィン材表面に霜が生じるのを防止する方法として、フィン材表面を親水化してフィン材表面の霜が水滴を作らないようにしてフィン間に水滴ブリッジを形成させない方法、及びフィン材表面を疎水化してフィン材表面の霜が水滴として転がり落ちるようにする方法が提案されている。
【0003】
熱交換器フィン材表面を疎水化する方法は、フィン材表面に埃が溜まりやすく、現在のところ、いまだに実用化されておらず、もっぱらフィン材表面を親水化する方法が実用化されている。
【0004】
室外機用熱交換器フィン材表面の親水化処理剤の代表例として、水ガラスを主体とする無機系皮膜を形成するものが知られており多用されている。しかしながら、水ガラスを主体とする親水化処理剤から形成された皮膜は、親水性は良好で水との接触角も20度以下を保つことができるが、耐食性が悪く、特有の臭気があり、さらに、皮膜の分解による微粉末の飛散があり、また細菌、カビが発育し易く、これらによる異臭を発生しやすいといった問題がある。
【0005】
本発明の目的は、上記水ガラスの長所を生かし欠点である耐食性を改良した、親水性及び耐食性に優れた皮膜を形成できる熱交換器フィン材表面の親水化処理剤を提供することである。また、本発明の目的は、上記親水化処理剤を用いた熱交換器アルミニウムフィン材の親水化処理方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、コロイダルシリカ、ポリビニルアルコール及び高酸価アクリル樹脂の中和物を含有する親水化処理剤によって上記目的を達成することができる。
【0007】
すなわち、本発明は、コロイダルシリカ(a)、ポリビニルアルコール(b)、及び3,000〜300,000の範囲内の重量平均分子量を有し400mgKOH/g以上の樹脂酸価を有する高酸価アクリル樹脂のカルボキシル基の少なくとも一部がアルカリ金属又はアルカリ土類金属と塩を形成してなる中和樹脂(c)を含有する組成物であって、上記コロイダルシリカ(a)と上記ポリビニルアルコール(b)との少なくとも一部がシランカップリング剤の存在下にて複合化されてなるものであることを特徴とする熱交換器フィン材用親水化処理組成物を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、上記親水化処理組成物を、アルミニウムフィン材表面に塗装し焼付けて乾燥膜厚0.2〜5μmの皮膜を形成することを特徴とする熱交換器アルミニウムフィン材の親水化処理方法を提供するものである。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の熱交換器フィン材用親水化処理組成物について説明する。
【0010】
本発明組成物は、下記コロイダルシリカ(a)、ポリビニルアルコール(b)及び中和樹脂(c)を含有する。
【0011】
コロイダルシリカ(a)
本発明組成物における(a)成分であるコロイダルシリカは、いわゆるシリカゾル又は微粉状シリカであって、粒子径が5nm〜10μm、好ましくは7nm〜1μmで、通常、水分散液として供給されているものをそのまま使用するか、または微粉状シリカを水に分散させて使用することができる。本発明組成物において、コロイダルシリカ(a)は、得られる皮膜に親水性を付与し、皮膜の水接触角を低下させることができる成分である。
【0012】
ポリビニルアルコール(b)
本発明組成物における(b)成分であるポリビニルアルコールは、造膜成分として主要な役割を果たすとともに分子中に二級水酸基が多量に存在するため水との親和性に富み、さらにこの水酸基と他の構成成分との相互作用により耐水性と親水持続性を維持する作用を示す。ポリビニルアルコール(b)としては、分子量が重合度500以上でケン化度87〜89%以上のポリビニルアルコールが好ましく、特にケン化度98%以上の、いわゆる完全ケン化ポリビニルアルコールであることが好適である。完全ケン化ポリビニルアルコールは、常温下における水に対する溶解度が低く、常温以下で使用される熱交換器フィン材用の皮膜材料として好ましい性質を示す。
【0013】
ポリビニルアルコール(b)は、他の有機化合物と反応させたいわゆる変性ポリビニルアルコール(例えば、アクリルアミド、不飽和カルボン酸、スルホン酸モノマー、カチオン性モノマー、不飽和シランモノマーなどとの共重合物)も包含する。
【0014】
中和樹脂(c)
本発明組成物における(c)成分である中和樹脂は、高酸価アクリル樹脂のカルボキシル基の少なくとも一部がアルカリ金属又はアルカリ土類金属と塩を形成してなる樹脂である。
【0015】
上記高酸価アクリル樹脂は、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーの重合体、又は該カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーとその他モノマーとの共重合体であって、重量平均分子量が3,000〜300,000、好ましくは4,000〜30,000の範囲内であって、樹脂酸価が400以上、好ましくは500〜780の範囲内にあるものである。
【0016】
上記カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸などを挙げることができる。これらは一種で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0017】
上記アクリル樹脂が共重合体である場合に、上記カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーと共重合される、その他モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等のC1 〜 24アルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の、多価アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのモノエステル化物;上記多価アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのモノエステル化物にε- カプロラクトンを開環重合した化合物などの水酸基含有モノマー; スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニルなどが挙げられる。これらの化合物は、1種で、又は2種以上を組合せて使用することができる。本発明において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。高酸価アクリル樹脂としては、なかでもポリアクリル酸が好適である。
【0018】
中和樹脂(c)を得るためには、高酸価アクリル樹脂中のカルボキシル基の一部又は全部をアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とすればよく、例えば、上記高酸価アクリル樹脂をアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物で中和することによって得ることができる。中和の程度は、中和樹脂が本発明組成物中で安定に溶解ないしは分散できる程度であればよく、通常、高酸価アクリル樹脂中のカルボキシル基に対して、中和当量が0.3〜1.2、好ましくは0.4〜0.9の範囲内にあることが、得られる皮膜の水接触角の低下効果、着霜防止性、耐水溶出性などの点から好適である。
【0019】
上記中和に使用されるアルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを挙げることができ、アルカリ土類金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどを挙げることができる。
【0020】
親水化処理組成物
本発明の親水化処理組成物において、前記コロイダルシリカ(a)とポリビニルアルコール(b)との配合割合は、両者の合計重量に基いて、前者が10〜80重量%、好ましくは20〜70重量%、後者が20〜90重量%、好ましくは30〜80重量%の範囲内にあることが好適であり、かつ前記中和樹脂(c)の配合割合が、上記コロイダルシリカ(a)とポリビニルアルコール(b)との合計100重量部に基いて5〜60重量部、好ましくは10〜50重量部の範囲内にあることが好適である。
【0021】
本発明組成物は、上記コロイダルシリカ(a)、ポリビニルアルコール(b)及び中和樹脂(c)を必須成分とするものであり、通常、さらにこれらの成分を溶解ないしは分散するための水性溶媒を含有し、さらに必要に応じて、架橋剤、界面活性剤、防菌剤;着色顔料、それ自体既知の防錆顔料(たとえばクロム酸塩系、鉛系、モリブデン酸系など)、防錆剤(たとえばタンニン酸、没食子酸などのフェノール性カルボン酸およびその塩類、フイチン酸、ホスフィン酸などの有機リン酸、重リン酸の金属塩類、亜硝酸塩など)などを含有することができる。
【0022】
上記水性媒体は、水であってもよいし、水と少量の有機溶剤や中和剤との混合溶媒であってもよい。混合溶媒において、通常、水の含有量は80重量%以上である。
【0023】
本発明組成物において、上記架橋剤は得られる皮膜の耐水溶解性を向上させるなどの目的で必要に応じて配合されるものであり、該架橋剤としては、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、ポリエポキシ化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、チタンキレートなどの金属キレート化合物などを挙げることができる。該架橋剤は一般に水溶性又は水分散性を有していることが好ましい。
【0024】
本発明組成物において、前記界面活性剤は得られる皮膜に付着した水分が水滴を形成せず、拡張濡れし易くするためなどの目的で必要に応じて配合されるものであり、該界面活性剤としては、表面湿潤作用を有するものであれば、陰イオン系、陽イオン系、両性イオン系、非イオン系のいずれの界面活性剤であってもよい。使用しうる界面活性剤の代表例としては、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩およびアルキレンオキシドシラン化合物を挙げることができる。これらの界面活性剤は、それぞれ単独で又は2種以上を組合わせて使用することができる。界面活性剤の配合量は、通常、前記コロイダルシリカ(a)、ポリビニルアルコール(b)及び中和樹脂(c)の合計100重量部に対して20重量部以下とすることができ、好ましくは0.5〜10重量部、さらに好ましくは1〜5重量部の範囲内である。
【0025】
本発明組成物において、前記防菌剤は得られる皮膜における微生物の発生や繁殖を阻止するなどの目的で必要に応じて配合されるものであり、該防菌剤としては特に以下の(1)〜(5)の条件を備えているものが好適である。
(1) 低毒性で安全性が高いこと;
(2) 熱、光、酸、アルカリなどに対して安定であり、水に対して離溶性であり、かつ持続性にすぐれていること;
(3) 低濃度で殺菌性を有するか、または菌の発育を阻止する能力を有すること;
(4) 塗料に配合しても効力が低下しないこと、また、塗料の安定性を阻害しないこと;
(5) 形成した被膜の親水性および耐食性を阻害しないこと。
【0026】
かかる条件に適合する防菌剤はそれ自体既知の防菌・殺菌作用をもつ脂肪族系、芳香族系の有機化合物の中から選ぶことができ、例えば、ハロアリルスルホン系、ヨードプロパギル系、N−ハロアルキルチオ系、ベンツチアゾール系、ニトリル系、ピリジン系、8−オキシキノリン系、ベンゾチアゾール系、イソチアゾリン系、フェノール系、第4級アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロムインダノン系等の防菌剤が挙げられる。
【0027】
上記防菌剤の具体例としては、2−(4−チアゾリル)−ベンツイミダゾール、N−(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド、N−ジメチル−N´−フェノール−N´−(フルオロジクロロメチルチオ)−スルファミド、O−フェニルフェノール、10,10´−オキシビスフェノキシアルシン、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、ジヨードメチル−p−トルイルスルホン、2−ベンツイミダゾールカルバミン酸メチル、ビス(ジメチルチオカルバモイル)ジサルファイド、N−(トリクロロメチルチオ)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシイミドなどを挙げることができる。また、無機塩系の防菌剤も使用でき、例えばメタホウ酸バリウム、ホウ酸銅、ホウ酸亜鉛、ゼオライト(アルミノシリケート)などが代表的なものである。
【0028】
これらの防菌剤はそれぞれ単独で用いてもよく或いは併用することができ、その配合量は防菌剤の種類等に応じて変えることができるが、一般には、本発明組成物の安定性、造膜性、皮膜の親水性、フィン材の耐食性を阻害しない等の点を考慮して、通常、前記コロイダルシリカ(a)、ポリビニルアルコール(b)及び中和樹脂(c)の合計100重量部に対して20重量部以下とすることが好ましく、3〜15重量部の範囲とすることがより好ましい。
【0029】
本発明組成物は、例えば、前記コロイダルシリカ(a)、ポリビニルアルコール(b)及び中和樹脂(c)を、必要に応じて配合される成分とともに、水性媒体中に溶解ないしは分散することにより調製することができる。
本発明の熱交換器フィン材用親水化処理組成物は、熱交換器フィン材表面に塗布し、乾燥させることによって親水性、着霜防止性、耐食性に優れた皮膜を熱交換器フィン材表面に形成することができる。
【0030】
本発明の熱交換器アルミニウムフィン材の表面処理方法
本発明の熱交換器アルミニウムフィン材の表面処理方法においては、上記熱交換器フィン材用親水化処理組成物を、アルミニウムフィン材表面に塗装し焼付けて乾燥膜厚0.2〜5μm、0.5〜3μmの皮膜を形成する。乾燥皮膜の膜厚は、上記範囲にあることが皮膜の耐水膨潤性、親水性、耐食性などの観点から適している。
【0031】
上記アルミニウムフィン材としては、表面が脱脂され、必要に応じて化成処理されたアルミニウム板(熱交換器に組立てられたものであってもよい)を挙げることができる。アルミニウム製のフィン材は、表面が化成処理されていることが親水化処理剤皮膜の付着性、耐食性などの点から好適である。上記化成処理としては、クロメート処理を挙げることができ、その代表例として、アルカリ塩−クロム酸塩法(B.V.法、M.B.V.法、E.W.法、アルロック法、ピルミン法)、クロム酸法、クロメート法、リン酸クロム酸法などの処理法、及びクロム酸クロムを主体とした組成物による無水洗塗布型処理法などが挙げられる。
【0032】
親水化処理剤の塗装は、それ自体既知の方法、例えば浸漬塗装、シャワー塗装、スプレー塗装、ロール塗装、電気泳動塗装などによって行うことができ、塗装した後、焼付けることにより硬化皮膜を形成することができる。焼付けは、一般に、素材到達最高温度が約80〜約250℃で焼付時間が約30分〜15秒の条件下で行なわれるが、本発明の処理剤は15〜5秒の条件下で良好な硬化塗膜を形成することが可能である。
【0033】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下において、「部」及び「%」はそれぞれ「重量部」及び「重量%」を意味する。
【0034】
ポリビニルアルコール溶液の作成
作成例1
デンカポバールK−05(電気化学工業(株)製、ケン化度99%、重合度550)を水に溶解し、固形分14%のポリビニルアルコール水溶液(b−1)を得た。
【0035】
作成例2
デンカポバールB−05(電気化学工業(株)製、ケン化度88%、重合度550)を水に溶解し、固形分14%のポリビニルアルコール水溶液(b−2)を得た。
【0036】
作成例3
デンカポバールK−17(電気化学工業(株)製、ケン化度99%、重合度1700)を水に溶解し、固形分14%のポリビニルアルコール水溶液(b−1)を得た。
【0037】
アクリル樹脂水溶液の製造
製造例1
ポリアクリル酸「AC10LP」(日本純薬(株)製のポリアクリル酸、重量平均分子量25,000、酸価779mgKOH/g)80部を水535部に溶解させ、固形分13%のアクリル樹脂水溶液(c−1)を得た。
【0038】
製造例2
還流管、温度計、滴下ロート、攪拌機を装着した四つ口フラスコに、エチレングリコールモノブチルエーテル406部を仕込み、窒素気流下で100℃に加熱、保持し、アクリル酸196部、2−ヒドロキシエチルアクリレート49部、エチレングリコールモノブチルエーテル35部及び2,2‘−アゾビスイソブチロニトリル14部の混合物を滴下ロートから3時間を要して滴下し、滴下後、さらに同温度で2時間攪拌を続け、ついで冷却し、固形分35%のアクリル樹脂溶液を得た。得られた樹脂(固形分)は、樹脂酸価623mgKOH/g、重量平均分子量25,000を有していた。得られた35%のアクリル樹脂溶液に水を徐々に添加、攪拌して固形分13%のアクリル樹脂水溶液(c−2)を得た。
【0039】
製造例3
製造例2において、滴下ロートから滴下する混合物の組成を、メタクリル酸196部、n−ブチルアクリレート49部、エチレングリコールモノブチルエーテル35部及び2,2‘−アゾビスイソブチロニトリル14部の混合物に変更する以外は製造例2と同様に行い、固形分35%のアクリル樹脂溶液を得た。得られた樹脂(固形分)は、樹脂酸価522mgKOH/g、重量平均分子量25,000を有していた。得られた35%のアクリル樹脂溶液に水を徐々に添加、攪拌して固形分13%のアクリル樹脂水溶液(c−3)を得た。
【0040】
製造例4
製造例2において、滴下ロートから滴下する混合物の組成を、メタクリル酸147部、n−ブチルアクリレート98部、エチレングリコールモノブチルエーテル35部及び2,2‘−アゾビスイソブチロニトリル14部の混合物に変更する以外は製造例2と同様に行い、固形分35%のアクリル樹脂溶液を得た。得られた樹脂(固形分)は、樹脂酸価391mgKOH/g、重量平均分子量25,000を有していた。得られた35%のアクリル樹脂溶液に水を徐々に添加、攪拌して固形分13%のアクリル樹脂水溶液(c−4)を得た。
【0041】
製造例5
製造例2において、滴下ロートから滴下する混合物における2,2‘−アゾビスイソブチロニトリルの量を14部から42部に変更する以外は製造例2と同様に行い、固形分35%のアクリル樹脂溶液を得た。得られた樹脂(固形分)は、樹脂酸価779mgKOH/g、重量平均分子量2,800を有していた。得られた35%のアクリル樹脂溶液に水を徐々に添加、攪拌して固形分13%のアクリル樹脂水溶液(c−5)を得た。
【0042】
シリカ−ポリビニルアルコール複合化樹脂の製造
製造例6
作成例1で得た固形分14%のポリビニルアルコール水溶液(b−1)357gをフラスコ中に仕込み、攪拌しながら「スノーテックスN」(日産化学工業(株)製、商品名、固形分20%のコロイダルシリカ水分散液、平均粒子径12〜14nm)250gを徐々に滴下し、ついでビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン1gを滴下混合し、80℃で2時間反応させ、固形分17.3%の乳白色のシリカ−ポリビニルアルコール複合化樹脂液(d−1)を得た。
【0043】
実施例1
製造例6で得た固形分17.3%のシリカ−ポリビニルアルコール複合化樹脂液(d−1)578g(固形分量で100g)の中に、製造例1で得た固形分13%のアクリル樹脂水溶液(c−1)231gに水酸化リチウム一水和物(LiOH・H2O)8.7gを添加し40〜50℃で1時間攪拌して得た固形分約16%の中和アクリル樹脂水溶液全量、「ニューコール290M」(日本乳化剤(株)製、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム塩)5g及び3%n−ブタノール水溶液254gを加え、1時間攪拌して固形分13%の親水化処理組成物を得た。
【0044】
実施例2〜3、比較例1〜6
実施例1において、配合組成を後記表1に示すとおりとする以外は実施例1と同様に行い、固形分13%の各親水化処理組成物を得た。各親水化処理組成物の固形分が13%となるように3%n−ブタノール水溶液の配合量を調整した。なお、表1における配合量は固形分又は有効成分量表示によるものである。
【0045】
表1における(註)は、それぞれ下記の意味を有する。
(*1)スノーテックスNXS:日産化学工業(株)製、商品名、固形分15%のコロイダルシリカ水分散液、平均粒子径6〜8nm、
(*2)スノーテックスXL:日産化学工業(株)製、商品名、固形分40%のコロイダルシリカ水分散液、平均粒子径40〜50nm、
(*3)スノーテックス20:日産化学工業(株)製、商品名、固形分 %のコロイダルシリカ水分散液、平均粒子径12〜14nm。
【0046】
塗装板の作成
上記実施例1〜3および比較例1〜6で得た親水化処理処理組成物を、アルカリ脱脂剤(日本シービーケミカル(株)製、商品名「ケミクリーナー561B」)を溶解した濃度2%の水溶液を使用して脱脂した後、クロメート処理剤(日本パーカライジング(株)製、商品名「アルクロム712」)でクロメート処理(金属クロム換算塗着量30mg/m2)を行ったアルミニウム板(A1050、板厚0.1mm)に、乾燥膜厚で1μmとなるように塗布し、240℃の熱風で素材到達最高温度が230℃になるように6秒間焼付けし塗装板を得た。
【0049】
これらの塗装板に揮発性プレス油を塗布し、150℃にて5分間乾燥させたものを試験塗板とし、塗膜外観、親水性、耐食性について試験をおこなつた。その試験結果を後記表1に示す。なお、表1における試験は下記試験方法に従って行なった。
【0050】
試験方法
塗膜外観:試験塗板を目視にて評価した。塗膜に異常の認められないものを○とした。
【0051】
水ラビング性:脱イオン水をしみ込ませたガーゼで、塗面に約4kg/cm2の圧力をかけて約5cmの距離を往復させてこすった。塗膜がとれてアルミニウム板表面が露出するまでの回数を測定し、下記基準により評価した。
○…10回往復してもアルミニウム板表面が露出しない
△…5〜10回の往復でアルミニウム板表面が露出する
×…5回未満の往復でアルミニウム板表面が露出する。
【0052】
経時での親水性:試験塗板を水道水流水(流水量は塗板1m2当り15kg/時)中に7時間浸漬し、引き上げて17時間塗内で乾燥させる乾湿工程を1サイクルとし、5サイクル行なった塗板の各々につき水ヌレ性および水滴の接触角を下記方法で測定した。
【0053】
水濡れ性:水道水の入ったビーカーに塗板を10秒間浸漬し、引き上げ
た時の塗板表面の水ヌレ状態を目視で判定する。
○…塗板表面全面が水に濡れ、引上げ10秒後においても水の偏りがない状態
△…引上げ直後は塗板表面全面が濡れているが、引上げ10秒後には塗板の端部から中央に水が寄っている状態
×…引上げ直後に水玉ができ、塗板全体に水が濡れない状態。
【0054】
接触角:塗板と水との接触角の測定は、塗板を80℃で5分間乾燥したのち、協和化学(株)製コンタクタングルメーターDCAA型で測定し、下記基準で評価した。
○…接触角が20度未満
△…接触角が20度以上で40度未満
×…接触角が40度以上。
【0055】
耐食性:JIS−Z−2371塩水噴霧試験法に準ずる。試験時間は500時間とし、下記基準により評価した。
○…塗面に白サビ、フクレの発生が認められない
△…白サビ又はフクレが少し発生した
×…白サビ又はフクレが著しく発生した。
【0056】
結露時の水濡れ性:30℃、75%RHの恒温槽の中に、20×15×5cmのステンレス製容器を置き、この側面に試験塗板を貼付けた。ついでステンレス製容器の中に0℃の不凍液を循環させ、循環10時間経過時の試験塗板表面の結露水による水ヌレ状態を目視で観察し下記基準で評価した。
○…塗板表面全面が水に濡れ、水滴の直径が1mm以下の状態
△…塗板表面の50〜100%が水に濡れ、水滴の直径が1mmを越え、2mm未満の状態
×…塗板表面のヌレ面積が50%未満の状態。
【0057】
着霜防止性:温度2℃、湿度89%RHの恒温槽の中に、20×15×5cmのステンレス容器を置き、この側面に試験塗板を貼付けた。ついで、ステンレス製容器の中に−7℃の不凍液を循環させ、循環3時間経過時の試験塗板表面の霜の状態を目視で観察し下記基準で評価した。
○…霜の平均厚さが0.5mm未満
△…霜の平均厚さが0.5mm以上、1.0mm未満
×…霜の平均厚さが1.0mm以上。
【0058】
金属イオン溶出量:両面に塗装した試験塗板(各面とも膜厚約1μm)を用い、塗装面積/脱イオン水量が1000cm2/1000ccとなるようにして脱イオン水に試験塗板を4日間浸漬した後、試験塗板を取出し、浸漬水中の金属イオンの量を、島津製作所製、型式「ICPS−8000」を用いて高周波プラズマ発光分析法(ICP分析法)により測定し、浸漬された塗膜中の珪酸塩中の金属イオン全量が溶出した場合を100%として下記基準により評価した。
○:金属イオン溶出量が40%未満
△:金属イオン溶出量が40%以上、70%未満
×:金属イオン溶出量が70%以上。
【0060】
防黴性:殺菌シャーレの中にペプトングルコース培地を作り、この上に試験塗板を置き、使用菌としてCladosporium(グラドスポリウム)sp,Penicillum(ペニシリウム)sp,Altarnaria(アルタナリア)sp,Aspergillus(アスペルギルス)spおよびTrichoderma(トリコデルマ)spの混合胞子のペプトングルコース懸濁液を噴霧し、26±2℃の温度下で28日間培養した。
【0063】
【表1】
【0064】
【発明の効果】
本発明処理剤からの皮膜を形成した熱交換器フィン材は、親水性及び耐食性に優れたものであり、特に着霜防止に優れるためエアコンの室外機用の親水化処理フィンとして好適に使用することができる。
さらに本発明組成物中に防菌剤を含有させることによってカビによる臭気発生を大巾に改善できる等の効果がある。
かくして、本発明処理剤で処理されたアルミニウム製熱交換器フィン材を用いることにより、熱交換器の省エネルギー化及び省資源化を達成することができる。
Claims (4)
- コロイダルシリカ(a)、ポリビニルアルコール(b)、及び3,000〜300,000の範囲内の重量平均分子量を有し400mgKOH/g以上の樹脂酸価を有する高酸価アクリル樹脂のカルボキシル基の少なくとも一部がアルカリ金属又はアルカリ土類金属と塩を形成してなる中和樹脂(c)を含有する組成物であって、上記コロイダルシリカ(a)と上記ポリビニルアルコール(b)との少なくとも一部がシランカップリング剤の存在下にて複合化されてなるものであることを特徴とする熱交換器フィン材用親水化処理組成物。
- 上記高酸価アクリル樹脂がポリアクリル酸である請求項1記載の親水化処理組成物。
- 上記コロイダルシリカ(a)とポリビニルアルコール(b)との配合割合が、両者の合計重量に基いて、前者が10〜80重量%、後者が20〜90重量%の範囲内にあり、かつ中和樹脂(c)を構成する高酸価アクリル樹脂の配合割合が、上記コロイダルシリカ(a)とポリビニルアルコール(b)との合計100重量部に基いて5〜60重量部の範囲内にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の親水化処理組成物。
- 上記請求項1〜3のいずれか一項に記載の親水化処理組成物を、アルミニウムフィン材表面に塗装し焼付けて乾燥膜厚0.2〜5μmの皮膜を形成することを特徴とする熱交換器アルミニウムフィン材の親水化処理方法。
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