JP4554742B2 - 摺動部材用樹脂組成物およびすべり軸受 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた摩擦摩耗特性を発揮する軸受等の各種摺動部材として用いられる摺動部材用樹脂組成物およびすべり軸受に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、合成樹脂の摩擦摩耗特性を向上させる目的で、合成樹脂に四フッ化エチレン樹脂(以下「PTFE」と略記する。)を含有した軸受等の合成樹脂製摺動部材はよく知られている。この摺動部材は、PTFEの含有により摺動特性が向上され、摺動部材の摺動面に潤滑油剤を供給することなく乾燥摩擦条件下において長期間の使用に耐え得るという利点を有するものである。
【0003】
しかしながら、近年、合成樹脂製摺動部材の用途分野が拡大されるにつれ、合成樹脂製摺動部材には、例えば、▲1▼高温雰囲気下での使用においても優れた摩擦摩耗特性を発揮すること、▲2▼摺動部材の摺動相手材として、比較的軟質のアルミニウム合金等が使用された場合においても、優れた摩擦摩耗特性を発揮しかつ摺動相手材を損傷させない特性を有すること、▲3▼高温雰囲気下での使用であってかつ摺動相手材がアルミニウム合金等の軟質金属である場合においても、優れた摩擦摩耗特性を発揮しかつ摺動相手材を損傷させない特性を有すること、▲4▼複写機等の摺動部材としての用途においては、前記▲1▼、▲2▼、▲3▼に加えて、さらに導電性を有すること、などの諸特性が要求されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述した要求に対して本出願人は、先に特願平1−41454号(特許第2777724号)において、合成樹脂にPTFEおよびリン酸塩を含有した摺動部材用樹脂組成物を提案した。この特願平1−41454号において提案した樹脂組成物からなる摺動部材は、相手材表面に組成物中のPTFEの強固な潤滑被膜が形成され、摩擦係数が低く、耐摩耗性に優れるものであったが、摺動部材が高温雰囲気下での使用であったり、相手材がアルミニウム合金等の軟質金属であったり、あるいは高温雰囲気下でかつ相手材がアルミニウム合金等の軟質金属であった場合には、必ずしも摩擦摩耗特性において満足できるものではなかった。また、複写機等の摺動部材など導電性が要求される用途には適用できなかった。
【0005】
本発明は上記諸点に鑑みなされたもので、上記特願平1−41454号の技術を改良するとともに前記各特性を満足する摺動部材用樹脂組成物およびすべり軸受を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、上記目的は、合成樹脂に四フッ化エチレン樹脂5〜50重量%、リン酸塩0.1〜15重量%、銅粉末、亜鉛粉末および酸化銅粉末から選択される成分0.1〜15重量%が含有されてなる摺動部材用樹脂組成物によって達成される。
【0007】
また、本発明によれば、上記目的は、上記成分組成からなる樹脂組成物にさらに2〜20重量%の芳香族ポリアミド繊維を含有した摺動部材用樹脂組成物によっても達成される。
【0008】
また、本発明によれば、上記目的は、上述した合成樹脂、PTFE、リン酸塩および銅粉末、亜鉛粉末、酸化銅粉末から選択される成分からなる摺動部材用樹脂組成物または該摺動部材用樹脂組成物に芳香族ポリアミド繊維を配合してなる摺動部材用樹脂組成物に対し、1〜10重量%の導電性カーボンブラックを含有した摺動部材用樹脂組成物によっても達成される。
【0009】
さらに、本発明によれば、上記目的は、これら摺動部材用樹脂組成物を成形してなるすべり軸受によっても達成される。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に使用される合成樹脂は、摺動部材に要求される機械的性質、化学的性質を備えており、加うるに自己潤滑性を有しているものであれば一層好ましい。
具体的には、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリシアノアリールエーテル樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂から選択されるが、摺動部材が高温雰囲気下で使用される用途においては、上記合成樹脂のうち、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリシアノアリールエーテル樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂から選択される。
【0011】
本発明におけるPTFEは、モールディングパウダーあるいはファインパウダーとして主に成形用途に使用される成形用粉末および潤滑用途に使用される潤滑用粉末のいずれをも使用することができ、また両者を同時に使用することもできる。成形用粉末としては、例えば三井デュポンフロロケミカル社製の「テフロン6J(商品名)」、「テフロン7J(商品名)」、ダイキン工業社製の「ポリフロンM−15(商品名)」、「ポリフロンF−103(商品名)」、旭硝子社製の「アフロンG163(商品名)」などを挙げることができ、また、潤滑用粉末としては、例えば三井デュポンフロロケミカル社製の「TLP−10(商品名)」、ダイキン工業社製の「ルブロンL5(商品名)」などを挙げることができる。
【0012】
そして、このPTFEの配合量は、5〜50重量%、好ましくは10〜30重量%である。配合量が5重量%より少ないと潤滑特性の向上に効果が現れず、また50重量%を超えて配合すると潤滑特性は向上する反面、成形性を著しく損なうばかりでなく成形物の機械的強度を著しく低下させることになる。
【0013】
本発明におけるリン酸塩は、それ自体何ら潤滑性を示すものではないが、前記合成樹脂、PTFEおよび後述する銅粉末、亜鉛粉末、酸化銅粉末から選択される成分に配合されることにより、PTFEと銅粉末、亜鉛粉末または酸化銅粉末との混合被膜の相手材表面への移着性を助長し、かつ該被膜の相手材への保持性を高め、被膜の耐久性を高めるという効果を発揮する。かかるリン酸塩の効果により、相手材表面に、潤滑被膜として充分な厚みの、かつ該表面に強固に保持された混合被膜が形成される。そして、この混合被膜の形成により、相手材および摺動部材の耐摩耗性が高められる。
【0014】
上述した効果を発揮するリン酸塩としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属などの金属の第三リン酸塩、第二リン酸塩、ピロリン酸塩、亜リン酸塩、メタリン酸塩およびそれらの混合物を挙げることができる。この中でも、第三リン酸塩、第二リン酸塩およびピロリン酸塩が好ましい。具体的には、リン酸リチウム(Li3PO4)、リン酸水素リチウム(Li2HPO4)、ピロリン酸リチウム(Li4P2O7)、リン酸カルシウム(Ca3(PO4)2)、リン酸水素カルシウム(CaHPO4(・2H2O))、ピロリン酸カルシウム(Ca2P2O7)、リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2・4H2O)、リン酸水素マグネシウム(MgHPO4)、ピロリン酸マグネシウム(Mg2P2O7)、リン酸バリウム(Ba3(PO4)2)、リン酸水素バリウム(BaHPO4)およびピロリン酸バリウム(Ba2P2O7)が本発明で使用するリン酸塩としては好ましいものである。
【0015】
このリン酸塩は、均一に混合するためにも平均粒径20μm以下のものが好ましい。また、リン酸塩中に結晶水を有しているものについては、予め熱処理することによって該結晶水を蒸発逸散せしめてから使用される。リン酸塩の配合量は、0.1〜15重量%、好ましくは3〜10重量%である。配合量が0.1重量%より少ないと組成物中のPTFEと後述する銅粉末、亜鉛粉末または酸化銅粉末との混合被膜の相手材表面への移着性、該被膜の保持性、耐久性に効果が発揮されず、また15重量%を超えて配合すると、相手材表面に良好な混合被膜が形成されず摩擦摩耗特性を悪化させるという欠点が現れる。
【0016】
本発明における銅粉末、亜鉛粉末および酸化銅粉末は、組成物中に均一に分散されて組成物中の前記PTFEとともに相手材表面に混合被膜を形成し、摩擦摩耗特性の向上に効果を発揮するもので、平均粒径50μm以下のものが好ましい。これらの粉末は、特に限定されるものではなく、市販されているものが使用できる。例えば、銅粉末であれば、電解粉、アトマイズ粉、搗砕粉のいずれをも使用できる。配合量は0.1〜15重量%、好ましくは2〜10重量%である。配合量が0.1重量%より少ないと摩擦摩耗特性の向上に効果が現れず、また15重量%を超えて配合すると、成形性を損なうばかりでなく混合被膜中に存在する量が多くなりすぎ、相手材としてアルミニウム合金等の軟質金属が使用された場合には、当該相手材表面を損傷するという欠点が現れる。
【0017】
本発明においては、上述した成分組成からなる摺動部材用樹脂組成物に、さらに2〜20重量%の芳香族ポリアミド繊維を配合することができる。この芳香族ポリアミド繊維は、とくに摺動部材の耐摩耗性および機械的強度を向上させるもので、本発明では化学構造がメタ系、パラ系のいずれであってもよく、繊維長さ0.2〜3mm、アスペクト比10〜200のものが好ましいものとして例示することができる。この芳香族ポリアミド繊維はその長さが0.2mm未満では耐摩耗性の向上に十分な効果が発揮されず、また3mmを超えると分散性が損なわれ、成形性を悪化させるとともに摺動部材としての強度低下をもたらす。
【0018】
本発明においては、デュポン・東レ・ケブラー社製の「ケブラー:パラ系(商品名)」、「ノーメックス:メタ系(商品名)」、帝人社製の「テクノーラ:パラ系(商品名)」、「コーネックス:メタ系(商品名)」、日本アラミド社製の「トワロン:パラ系(商品名)」などを挙げることができる。
【0019】
また、本発明においては、上述した合成樹脂、PTFE、リン酸塩および銅粉末、亜鉛粉末、酸化銅粉末から選択される成分からなる摺動部材用樹脂組成物または該摺動部材用樹脂組成物に芳香族ポリアミド繊維を配合してなる摺動部材用樹脂組成物に対し、帯電防止性能等の導電性を付加するために、さらに、導電性カーボンブラックを配合することができる。導電性カーボンブラックの配合量は、1〜10重量%、好ましくは3〜8重量%である。配合量が1重量%より少ないと導電性の効果が現れず、また10重量%を超えて配合すると、成形性を悪化させるとともに成形物の機械的強度を低下させる。
【0020】
導電性カーボンブラックとしては、市販の導電性カーボンブラックでよく、ライオンアクゾ社製の「ケッチェンブラック(商品名)」を例示することができる。
【0021】
上述した成分組成からなる摺動部材用樹脂組成物を成形するには、合成樹脂、PTFE、リン酸塩および銅粉末、亜鉛粉末、酸化銅粉末から選択される成分、必要に応じて芳香族ポリアミド繊維、導電性カーボンブラックをそれぞれ計量しヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ボールミル、タンブラーミキサー等の混合機によって混合して混合物を作製し、この混合物を射出成形機もしくは押出成形機に供給して成形する方法、あるいは混合物を押出機により溶融混練し、紐状の成形物に成形したのち裁断してペレットを作製し、これを成形原料として射出成形機あるいは押出成形機により成形する方法が採られる。
【0022】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0023】
<実施例1>
合成樹脂として、ポリアセタール樹脂(以下「POM」と略記する。ポリプラスチックス社製の「ジュラコンM90(商品名)」)粉末に、PTFE(ダイキン工業社製の「ルブロンL5(商品名)」)粉末19重量%、リン酸リチウム(Li3PO4)粉末3重量%および平均粒径3μmの銅粉末2重量%をスーパーミキサーに投入し、混合してPOM粉末76重量%、PTFE粉末19重量%、リン酸リチウム粉末3重量%、銅粉末2重量%からなる混合粉末を得た。この混合粉末をスクリューインライン型射出成形機によって、成形温度160〜200℃、射出圧力600kg/cm2の条件で成形し、内径10mm、外径14mm、長さ12mmの円筒状摺動部材(すべり軸受)を作製した。
【0024】
<実施例2〜4、実施例6〜8、比較例1〜3>
実施例1において、表2ないし表4に示すように組成を変更した以外は、実施例1と同様の方法で内径10mm、外径14mm、長さ12mmの円筒状摺動部材(すべり軸受)を作製した。芳香族ポリアミド繊維としては繊維長1mm、アスペクト比10の芳香族ポリアミド繊維(パラ系:帝人社製の「テクノーラT−322(商品名)」)を、亜鉛粉末としては平均粒径45μmの亜鉛粉末を、酸化銅粉末としては平均粒径7μmの酸化銅粉末を使用した。
【0025】
<実施例5>
合成樹脂として、ポリアミド樹脂(以下「PA」と略記する。東レ社製の6ナイロン「アミラン(商品名)」)粉末に、PTFE(上記実施例1と同じ)粉末28重量%、リン酸リチウム(上記実施例1と同じ)粉末5重量%および平均粒径3μmの銅粉末2重量%をスーパーミキサーに投入し、混合してポリアミド樹脂粉末65重量%、PTFE粉末28重量%、リン酸リチウム粉末5重量%、銅粉末2重量%からなる混合粉末を得た。この混合粉末をスクリューインライン型射出成形機によって、成形温度200〜250℃、射出圧力600kg/cm2の条件で成形し、内径10mm、外径14mm、長さ12mmの円筒状摺動部材(すべり軸受)を作製した。
【0026】
上述した実施例1ないし実施例8および比較例1ないし比較例3で作製した円筒状摺動部材について、表1に示す条件でジャーナル試験を行った。その結果を表2ないし表4に示す。
【0027】
【表1】
すべり速度 7m/min
荷重 4kgf/cm2
相手材 アルミニウム合金(A5056−H34)
相手材表面粗さ 3μmRz
試験時間 24時間
潤滑 無潤滑
試験雰囲気温度 常温(25℃)
【0028】
【表2】
(以下余白)
【0029】
【表3】
(以下余白)
【0030】
【表4】
【0031】
上表中、摩耗量は摺動部材の寸法変化量を示し、また相手材表面の損傷度の評価は、損傷していないものを○印にて、若干の損傷が認められるものを△印にて、損傷しているものを×印にて表示した。
【0032】
以上の試験結果から、実施例1ないし実施例8の摺動部材は、試験後の相手材表面に損傷は認められず、PTFEと銅粉末、亜鉛粉末または酸化銅粉末との良好な混合被膜が形成されているのが確認され、摩擦摩耗特性においても、極めて良好な性能を示した。一方、比較例1の摺動部材は、相手材表面に損傷を与えているのが確認され、また比較例2および比較例3の摺動部材は、相手材表面に若干の損傷を与えているのが確認され、いずれの比較例においても実施例からなる摺動部材に比べ摩擦摩耗特性に劣っていることが分かる。
【0033】
つぎに、高温雰囲気下で使用される用途に適した実施例について説明する。
【0034】
<実施例9>
ポリフェニレンサルファイド樹脂(以下「PPS」と略記する。トープレン社製の「T−4(商品名)」)粉末に、PTFE(前記実施例1と同じ)粉末28重量%、リン酸リチウム(前記実施例1と同じ)粉末5重量%および平均粒径3μmの銅粉末2重量%をスーパーミキサーに投入し、混合してPPS粉末65重量%、PTFE粉末28重量%、リン酸リチウム粉末5重量%、銅粉末2重量%からなる混合粉末を得た。この混合粉末をスクリューインライン型射出成形機によって、成形温度270〜300℃、射出成形圧力800kg/cm2の条件で成形し、内径10mm、外径14mm、長さ12mmの円筒状摺動部材(すべり軸受)を作製した。
【0035】
<実施例10〜12、実施例14〜16、比較例4〜6>
実施例9において、表6ないし表8に示すように組成を変更した以外は、実施例9と同様の方法で内径10mm、外径14mm、長さ12mmの円筒状摺動部材(すべり軸受)を作製した。芳香族ポリアミド繊維としては繊維長1mm、アスペクト比10の芳香族ポリアミド繊維(パラ系:帝人社製の「テクノーラT−322(商品名)」)を、亜鉛粉末としては平均粒径45μmの亜鉛粉末を、酸化銅粉末としては平均粒径7μmの酸化銅粉末を使用した。
【0036】
<実施例13>
ポリエーテルケトン樹脂(以下「PEK」と略記する。BASF社製「Ultrapek−A1000(商品名)」粉末に、PTFE(前記実施例1と同じ)粉末28重量%、リン酸リチウム(前記実施例1と同じ)粉末5重量%および平均粒径3μmの銅粉末2重量%をスーパーミキサーに投入し、混合してPEK粉末65重量%、PTFE粉末28重量%、リン酸リチウム粉末5重量%、銅粉末2重量%からなる混合粉末を得た。この混合粉末をスクリューインライン型射出成形機によって、成形温度350〜400℃、射出圧力800kg/cm2の条件で成形し、内径10mm、外径14mm、長さ12mmの円筒状摺動部材(すべり軸受)を作製した。
【0037】
上述した実施例9ないし実施例16および比較例4ないし比較例6で作製した円筒状摺動部材について、表5に示す条件でジャーナル試験を行った。その結果を表6ないし表8に示す。
【0038】
【表5】
すべり速度 7m/min
荷重 4kgf/cm2
相手材 アルミニウム合金(A5056−H34)
相手材表面粗さ 3μmRz
試験時間 24時間
潤滑 無潤滑
試験雰囲気温度 200℃
(以下余白)
【0039】
【表6】
(以下余白)
【0040】
【表7】
(以下余白)
【0041】
【表8】
【0042】
上表中、摩耗量は摺動部材の寸法変化量を示し、また相手材表面の損傷度の評価は、前述した評価と同様、損傷していないものを○印にて、若干の損傷が認められるものを△印にて、損傷しているものを×印にて表示した。
【0043】
以上の試験結果から、実施例9ないし実施例16の摺動部材は、試験後の相手材表面に損傷は認められず、PTFEと銅粉末、亜鉛粉末または酸化銅粉末との良好な混合被膜が形成されているのが確認され、摩擦摩耗特性においても極めて良好な性能を示した。一方、比較例4の摺動部材は、相手材表面に損傷を与えているのが確認され、また比較例5および比較例6の摺動部材は、相手材表面に若干の損傷を与えているのが確認され、いずれの比較例においても実施例からなる摺動部材に比べ摩擦摩耗特性に劣っていることが分かる。
【0044】
つぎに、導電性が要求される用途に適した実施例について説明する。
【0045】
<実施例17>
PPS(前記実施例9と同じ)粉末に、PTFE(前記実施例1と同じ)粉末10重量%、リン酸リチウム(前記実施例1と同じ)粉末3重量%、平均粒径3μmの銅粉末2重量%および導電性カーボンブラック(ライオン・アクゾ社製の「ケッチェンブラックEC600JD(商品名)」)粉末3重量%をスーパーミキサーに投入し、混合してPPS粉末82重量%、PTFE粉末10重量%、リン酸リチウム粉末3重量%、銅粉末2重量%、導電性カーボンブラック粉末3重量%からなる混合粉末を得た。この混合粉末をスクリューインライン型射出成形機によって、成形温度270〜300℃、射出成形圧力800kg/cm2の条件で成形し、内径23mm、外径29mm、長さ6mmの円筒状摺動部材(すべり軸受)を作製した。
【0046】
<実施例18〜21、実施例23〜24、比較例7〜9>
実施例17において、表10ないし表12に示すように組成を変更した以外は、実施例17と同様の方法で内径23mm、外径29mm、長さ6mmの円筒状摺動部材(すべり軸受)を作製した。芳香族ポリアミド繊維としては繊維長1mm、アスペクト比10の芳香族ポリアミド繊維(パラ系:帝人社製の「テクノーラT−322(商品名)」)を、亜鉛粉末としては平均粒径45μmの亜鉛粉末を、酸化銅粉末としては平均粒径7μmの酸化銅粉末を使用した。
【0047】
<実施例22>
PEK(前記実施例13と同じ)粉末に、PTFE(前記実施例1と同じ)粉末29重量%、リン酸リチウム(前記実施例1と同じ)粉末5重量%、平均粒径3μmの銅粉末10重量%および導電性カーボンブラック(上記実施例17と同じ)粉末5重量%をスーパーミキサーに投入し、混合してPEK粉末51重量%、PTFE粉末29重量%、リン酸リチウム粉末5重量%、銅粉末10重量%および導電性カーボンブラック粉末5重量%からなる混合粉末を得た。この混合粉末をスクリューインライン型射出成形機によって、成形温度350〜400℃、射出圧力800kg/cm2の条件で成形し、内径23mm、外径29mm、長さ6mmの円筒状摺動部材(すべり軸受)を作製した。
【0048】
上述した実施例17ないし実施例24および比較例7ないし比較例9で作製した円筒状摺動部材について、表9に示す条件でジャーナル試験を行った。その結果を表10ないし表12に示す。
【0049】
【表9】
すべり速度 5.2m/min
荷重 4.4kgf/cm2
相手材 アルミニウム合金(A5052−H34)
相手材表面粗さ 3μmRz
試験時間 24時間
潤滑 無潤滑
試験雰囲気温度 185℃
(以下余白)
【0050】
【表10】
【0051】
【表11】
【0052】
【表12】
【0053】
上表中、摩耗量は摺動部材の寸法変化量を示す。体積固有抵抗値は、成形物の両端に導電性塗料を塗布し、JIS K6911に準拠して乾燥後両端の抵抗を測定した。また相手材表面の損傷度の評価は、前述した評価と同様、損傷していないものを○印にて、若干の損傷が認められるものを△印にて、損傷しているものを×印にて表示した。
【0054】
以上の試験結果から、実施例17ないし実施例24の摺動部材は、試験後の相手材表面に損傷は認められず、PTFEと銅粉末、亜鉛粉末または酸化銅粉末との良好な混合被膜が形成されているのが確認され、摩擦摩耗特性においても極めて良好な性能を示した。一方、比較例7の摺動部材は、相手材表面に損傷を与えているのが確認され、また比較例8および9の摺動部材は、相手材表面に若干の損傷を与えているのが確認され、いずれの比較例においても実施例からなる摺動部材に比べ摩擦摩耗特性に劣っていることが分かる。
【0055】
【発明の効果】
以上説明した本発明によれば、摺動部材の用途に応じて適宜合成樹脂を選択することにより、常温から高温雰囲気下において優れた摩擦摩耗特性を発揮する摺動部材用樹脂組成物およびすべり軸受が提供される。
Claims (6)
- 合成樹脂に四フッ化エチレン樹脂5〜50重量%、リン酸塩0.1〜15重量%、銅粉末、亜鉛粉末および酸化銅粉末から選択される成分0.1〜15重量%が含有されている摺動部材用樹脂組成物であって、前記合成樹脂はポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリシアノアリールエーテル樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂から選択されることを特徴とする摺動部材用樹脂組成物。
- リン酸塩は、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属のリン酸塩である請求項1に記載の摺動部材用樹脂組成物。
- リン酸塩は、リン酸リチウム、リン酸水素リチウム、ピロリン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、ピロリン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、ピロリン酸マグネシウム、リン酸バリウム、リン酸水素バリウムおよびピロリン酸バリウムから選択される請求項1又は2に記載の摺動部材用樹脂組成物。
- さらに、芳香族ポリアミド繊維が2〜20重量%含有されている請求項1から3のいずれか一項に記載の摺動部材用樹脂組成物。
- さらに、導電性カーボンブラックが1〜10重量%含有されている請求項1から4のいずれか一項に記載の摺動部材用樹脂組成物。
- 請求項1から5のいずれか一項に記載の摺動部材用樹脂組成物を成形してなるすべり軸受。
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