JP4866411B2 - 含油摺動材およびすべり軸受 - Google Patents

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Description

本発明は含油摺動材およびすべり軸受に関し、特に軟質の相手材あるいは高度な回転精度が要求されるすべり軸受用含油摺動材、およびこの含油摺動材を用いたすべり軸受に関する。
従来使用されている含油摺動材には、焼結金属含油軸受や樹脂含油軸受等がある。
焼結金属含油軸受の場合、焼結合金や成長鋳鉄、多孔質銅合金鋳物等に油を含浸させている。焼結金属含油軸受など、金属系の多孔質材料に油を含浸させたすべり軸受は油を継続的に摺動面に供給することが可能であるため、摩擦力を低くすることができる。また、一般に相手材は金属材料である場合が多く、線膨張の相違によるダキツキ、抜け等の心配がない。さらに、金属材料は加工精度を高めることが可能であり、回転精度が要求される分野へ使用されている。
樹脂含油軸受の場合、合成樹脂材料に油を含浸させたり、あるいはあらかじめ樹脂と油を混練して樹脂成形体中に油を分散させたりしている。この場合、樹脂自身に自己潤滑性があるため軟質材相手でも相手材を攻撃しない。
しかしながら、金属系の多孔質材料に油を含浸させたすべり軸受は、例えばアルミニウム合金材などの軟質金属の軸相手では、軸を摩耗させるおそれがある。また、潤滑油の供給が途切れた場合など、一時的に金属接触が発生するため、異音が発生しやすいという問題がある。また、負荷荷重が極端に大きい場合や、すべり速度が遅く油膜が形成されない場合にも金属接触が生じるという問題がある。
樹脂含油軸受は、金属材料と比較して線膨張係数、吸水率が大きい樹脂材料を用いるので、使用温度領域が広い場合、低温でも高温でも軸へのダキツキが発生するなどの問題がある。すなわち、低温時の使用では樹脂すべり材の収縮によりダキツキを発生する。また、高温時の使用では外形側ハウジングからの形状拘束を受けるので、体積膨張が内径側に逃げて内径寸法が小さくなり軸へのダキツキが発生する。
さらに、樹脂含油軸受は、吸水・吸湿により体積膨張が発生し、軸との隙間が変化するため、回転精度が要求される分野への使用が困難であるなどの問題がある。
このため、回転精度が要求される分野への適用として、金属材料の表面に樹脂コーティングを施した複層すべり軸受が考えられている。例えばポリテトラフルオロエチレン粉末を配合したポリアミドイミド樹脂のコーティングの場合、膜厚が 20 μm 程度と薄いため寸法精度は良好である。
近年、事務機器等に使用するすべり軸受に要求される回転精度および耐久性は年々厳しくなってきている。特に回転精度が要求される分野では、寸法変化の大きい樹脂製すべり軸受の適用は困難になりつつある。また、複層すべり軸受であっても固体潤滑剤の効果がなくなればコーティング膜が剥がれ落ち、下地の金属材料が露出するため、耐久性に劣るという問題がある。
本発明は、このような問題に対処するためになされたもので、特に軟質相手材を摩耗させることなく、かつ優れた寸法精度あるいは回転精度を有するすべり軸受および含油摺動材を提供することを目的とする。
本発明の含油摺動材は、相手材と摺動する摺動面に潤滑油を供給できる含油摺動材であって、上記摺動面が連通孔構造を有する合成樹脂層の一面に形成され、該合成樹脂層の反摺動面に潤滑油供給層を有し、上記合成樹脂層は連通孔を有する充填剤を配合した樹脂組成物を射出成形してなる層であることを特徴とする。
また、上記連通孔を有する充填剤は、一次粒子が集合して真球状シリカ粒子を形成した連続孔を有する球状多孔質シリカであり、該球状多孔質シリカの平均粒子径が 0.5〜100 μmであることを特徴とする。
また、上記潤滑油供給層は、金属焼結体で形成されてなることを特徴とする。
本発明のすべり軸受は、相手材と摺動する摺動面が合成樹脂層の一面に形成され、該合成樹脂層の反摺動面に潤滑油供給層を有するすべり軸受であって、上記合成樹脂層が連通孔を有する充填剤を配合した樹脂組成物を射出成形してなることを特徴とする。
また、上記連通孔を有する充填剤は、一次粒子が集合して真球状シリカ粒子を形成した連続孔を有する球状多孔質シリカであり、該球状多孔質シリカの平均粒子径が 0.5〜100 μmであることを特徴とする。
また、上記潤滑油供給層が金属焼結体で形成されてなることを特徴とする。
アルミニウム合金材など軟質金属の軸に対するラジアル形のすべり軸受を本発明の含油摺動材で作製する場合を考えると、このすべり軸受は軸と摺動する摺動面は連続孔を有する樹脂層であり、その外径側が潤滑油供給層となる焼結金属層である。焼結金属と連通孔を有する樹脂層からなるすべり軸受材に適当な潤滑油を含浸させて使用することで、軟質の軸でかつ回転精度が要求される分野に使用することが可能となる。連通孔を有する樹脂層の厚さを最適に設計すれば、摺動面での線膨張や吸水・吸湿による寸法変化を充分小さくできるため、寸法精度および回転精度が向上する。また、樹脂層との摺動となるため、相手材が軟質金属材であっても攻撃しない。
本発明の含油摺動材は、摺動面が連通孔構造を有する合成樹脂層の一面に形成され、該合成樹脂層の反摺動面に潤滑油供給層を有し、上記合成樹脂層は連通孔を有する充填剤を配合した樹脂組成物を射出成形してなる層であるので、軟質相手材を摩耗させることなく、かつ寸法精度の優れた摺動面が得られる。
本発明のすべり軸受は、相手材と摺動する摺動面が合成樹脂層の一面に形成され、該合成樹脂層の反摺動面に潤滑油供給層を有し、上記合成樹脂層が連通孔構造を有する充填剤を配合した樹脂組成物を射出成形してなるので、潤滑油を摺動面に連続的に供給できる。その結果、低い摩擦係数を長時間持続でき、金属接触による異音の発生を抑えることができる。
また、上記潤滑油供給層が金属焼結体で形成されてなるので、線膨張は通常のハウジングあるいは軸の金属材料とほとんど同じであり、寸法精度あるいは回転精度に優れ、軟質の相手軸を摩耗させることがない。
合成樹脂層に形成される連通孔構造は、合成樹脂層の摺動面と反摺動面とが連続した微細孔で連絡できる構造であればよい。一つの連通孔の断面積、摺動面における連通孔密度等は、含油摺動材の材質、用途、使用条件等により異なるが、潤滑油が通過し、連続的に潤滑油を摺動面に供給できる構造であればよい。
合成樹脂層の連通孔構造は、例えば以下の方法で形成することができる。
(1)樹脂材料に連通孔を有する充填剤を配合する。連通孔を有する充填剤としては多孔質粉末などが挙げられる。多孔質粉末は、以下のコーティング層を形成する場合にもコーティング膜厚と同等の粒子径を有する微粒子の集合体からなる多孔質粉末を配合することで、連続孔を付与させることができる。
多孔質粉末として、例えば一次粒子径が 3〜8nm の多孔質を使用すると、一つの断面直径がナノメートル程度の連通孔構造となる。
(2)粉末状の樹脂材料をその融点以下の温度で焼結して多孔質とする。この場合、粉末状樹脂材料の粒子径と焼結条件で連通孔構造は異なるが、例えば平均粒子径 10μm 程度のポリイミド粉末で多孔体を製造すれば、成形圧力、焼結温度等を調整して、0.1〜2μm 程度の連通孔構造が得られる。また、平均粒子径 200μm 程度のポリエチレンを用いれば、4〜50μm 程度の連通孔構造が得られる。この方法の場合、樹脂材料の平均粒子径の 1/100〜1/5 の断面直径を有する連通孔構造が得られる。
(3)樹脂材料Aと樹脂材料Bとを混練後、射出成形して合成樹脂層を得る。その後、樹脂材料Bを溶かさないで樹脂材料Aを溶かす溶剤Cを用いて処理して多孔質とする。
(4)合成樹脂層をコーティング層として形成する場合は、上記樹脂材料Aと樹脂材料Bとを用いて塗膜を形成し、溶剤Cを用いて処理して多孔質コーティング層とする。
(5)コーティング膜厚と同等の粒子径を有する微粒子の集合体からなる多孔質粉末を合成樹脂材料に配合して塗膜を形成し、多孔質コーティング層とする。
(6)織布を重ねあわせ、融点付近で融着させて連通孔を付与させる。この場合、織布の種類としては、市販されているものであれば特に限定しないが、例えばポリエチレンテレフタレート製、ポリアミド製、アラミド紡績糸織布等があげられる。織布で連通孔を持たせる場合、織布のみでは強度が不足する場合、バインダーとしての樹脂剤や各種充填剤を添加することができる。
(7)合成樹脂層を半透膜、あるいは分子間の隙間に油を保持できる樹脂層で形成し、所定の条件下に摺動面に油を供給できる多孔質層と同じ機能を有する材料で形成する。
上記例は、物理的および化学的方法による連通孔構造の形成方法であるが、以下に述べる機械的方法を採用することもでき、また、上記物理的および化学的方法と組み合わせることもできる。
(8)合成樹脂層をレーザー処理、放電処理等することにより微細孔あるいは微細溝などを合成樹脂層に形成する。
(9)針あるいはカッターなどにより微細孔あるいは微細溝などを合成樹脂層に形成する。
上記連通孔を付与させるための樹脂材料としては、ポリエチレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド、熱硬化性ポリイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等を例示できる。
また、溶剤に溶解しやすい樹脂としては、ケトン系樹脂に溶けるポリスチレン、水や熱水に溶解するポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの各種水溶性樹脂が例示できる。
樹脂材料に連通孔を有する充填剤を配合する場合、連通孔を有する充填剤としては、多孔質シリカが挙げられる。好ましい多孔質シリカは非晶質の二酸化ケイ素を主成分とする粉末である。例えば、一次粒子径が 15nm 以上の微粒子の集合体である沈降性シリカ、あるいはアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を含有したケイ酸アルカリ水溶液を有機溶媒中で乳化し、炭酸ガスでゲル化させることにより得られる粒子径が 3〜8nm の一次微粒子の集合体である真球状多孔質シリカ(特開2000−143228等)等が挙げられる。
本発明においては、粒子径が 3〜8nm の一次微粒子が集合して真球状シリカ粒子を形成した多孔質シリカが連通孔を有しているため特に好ましい。真球状シリカ粒子としては、平均粒子径が 0.5〜100 μm である。このような真球状シリカ粒子は、その内部に潤滑剤を保持することが可能であり、かつ摺動界面において内部に含浸した潤滑剤を少量ずつ供給することが可能である。平均粒子径が 0.5μm 未満では、ハンドリング性が悪い。また、潤滑剤の含浸量が十分でない。平均粒子径が 100μm をこえると、溶融樹脂中での分散性が悪い。また、溶融樹脂の混練時にかかるせん断力により、集合体が破壊し、球状を保持できない可能性がある。取り扱い易さや摺動特性の付与を考慮した場合、平均粒子径は 1〜20μm が特に好ましい。このような真球状多孔質シリカとしては、旭硝子社製:サンスフェア、鈴木油脂工業社製:ゴットボール等が例示できる。また、多孔質バルク状シリカとして、(株)東海化学工業所製:マイクロイドがある。
粒子径が 3〜8nm の一次微粒子が集合した真球状シリカ粒子は、比表面積が 200〜900m2/g、好ましくは 300〜800m2/g、細孔容積が 1〜3.5ml/g 、細孔径が 5〜30nm、好ましくは 20 〜30nm、吸油量が 150〜400ml/100g、好ましくは 300〜400ml/100g の特性を有することが好ましい。また、水に浸漬したのち再度乾燥しても、上記細孔容積および吸油量が浸漬前の 90 %以上を保つことが好ましい。
ここで、比表面積および細孔容積は窒素吸着法により、吸油量はJIS K5101に準じて測定した値である。また、上記真球状シリカ粒子の内部と外表面はシラノール基(Si−OH)で覆われていることが、潤滑剤を内部に保持しやすくなるため好ましい。さらに、多孔質シリカは、母材に適した有機系、無機系などの表面処理を行なうことができる。
なお、本発明においては、基材との組み合わせ、配合程度によっては、多孔質シリカとして、平均粒子径が 1000 μm 程度までは使用可能である。また、粒子の形状は特に限定されない。例えば、平均粒子径、比表面積、吸油量等が上記真球状シリカ粒子の範囲内であれば、非球状多孔質シリカであっても使用できる。なお、摺動相手材への攻撃性や混練性の観点から、球状、真球状の粒子が好ましい。ここで、球状とは長径に対する短径の比が 0.8〜1.0 の球をいい、真球状とは球状よりもより真球に近い球をいう。
上記樹脂材料は、摩擦・摩耗特性を改善させたり、線膨張係数を小さくするために、適当な充填材を配合することができる。例えば、ガラス繊維、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、炭化珪素繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、金属繊維等がある。あるいは炭酸カルシウムやタルク、シリカ、クレー、マイカ等の鉱物類、硼酸アルミニウムウィスカー等の無機ウィスカー類、あるいはガラス繊維や窒化珪素繊維、アスベスト、石英ウール、金属繊維等の無機繊維類、これらを布状に編んだもの、また、カーボンブラック、黒鉛、カーボン繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリイミド樹脂やポリベンゾイミダゾール等の各種熱硬化性樹脂を添加することができる。また、ポリテトラフルオロエチレンや窒化硼素、二硫化モリブデン、二硫化タングステン等を添加してもよい。また、含油摺動材の熱伝導性を向上させる目的で、カーボン繊維、金属繊維、黒鉛粉末、酸化亜鉛等を添加してもよい。なお、この発明の効果を阻害しない配合量で一般合成樹脂に広く適用しえる添加剤を併用してもよい。例えば離型剤、難燃剤、帯電防止剤、耐候性改良剤、酸化防止剤、着色剤等の工業用潤滑剤を適宜添加してもよく、これらを添加する方法も特に限定されるものではない。
この発明における連通孔を有する樹脂層樹脂組成物の混合方法は、従来からよく知られた方法を利用すればよく、ヘンシェルミキサー、ボールミル、タンブラーミキサー等の混合機によって混合した後、溶融混合性のよい射出成形機もしくは溶融押し出し機(例えば2軸押し出し機)に供給するか、またはあらかじめ熱ローラ、ニーダ、バンバリーミキサー、溶融押し出し機などを利用して溶融混合してもよい。
樹脂材料Aと樹脂材料Bを混練して樹脂材料Aのみ溶出させる場合、成形体は、射出成形、圧縮成形、真空成形、吹き込み成形、発泡成形のいずれの方法で成形してもよい。特に好ましい成形方法は射出成形である。また、コーティング処理を行なう場合、スプレー法やディッピング法、静電塗装法、流動浸漬法等特に限定されるものではない。
また、含油摺動材としての潤滑性を損なわない限り、中間製品または最終製品の形態において、別途、例えばアニール処理等の化学的または物理的な処理によって性質改善のための変性ができる。
合成樹脂層の反摺動面に配設する潤滑油供給層は、潤滑油を保持して摺動面に潤滑油を供給できる構造、材質であれば使用できる。好適な潤滑油供給層としては金属焼結体が挙げられる。金属焼結体は優れた寸法精度を維持して、潤滑油を供給できる。また、寸法精度を維持するために、金属焼結体の層厚さは合成樹脂層の層厚さよりも厚くする。例えば、すべり軸受として用いる場合、すべり軸受を形成する材料の大部分を金属焼結体とする。
本発明においては、合成樹脂層の層厚さが寸法精度を維持する上に重要となる。合成樹脂層と潤滑油供給層との層厚関係について表1を用いて詳細に説明する。表1は合成樹脂体2(内径:D1、外径:D2)を内層に、金属焼結体層3(内径:D2、外径:D3)を外層に構成したすべり軸受1の温度変化に伴う軸4との隙間を検討した表である。軸4は直径(D4)φ 7.97mm のアルミニウム合金(A5056)を用い、20℃における軸とすべり軸受の内層との隙間を 30μm となるように設定した。この状態で全体を 60℃に上昇すると、合成樹脂層2の体積膨張分が金属焼結体層3に拘束され、内径側に逃げるため上記隙間が減少する。なお、合成樹脂層2と金属焼結体層3とは隙間なく密着しているものとし、検討した材料の線膨張係数(/K)は、それぞれ以下の通りとする。
軸の材料であるアルミニウム合金(A5056) :0.000023
軸受の外層となる金属焼結体 :0.00002
軸受の内層となるポリエチレン樹脂 :0.00013
軸受の内層となるポリフェニレンスルファイド樹脂:0.00006
Figure 0004866411
表1に示すように、線膨張係数の大きい樹脂を使用し、かつ合成樹脂層2の層厚(T1)を厚くすれば、隙間の変化が大きくなるため、回転ムラの原因となり好ましくない。このため隙間変化を小さくするためには合成樹脂層2の層厚を薄くする必要がある。合成樹脂層2の線膨張係数の値にもよるが、好ましい範囲は、合成樹脂層2の層厚は 1000μm 以下、より好ましくは 500μm 以下である。
金属焼結体と連通孔を有する合成樹脂層との接合は、相互に固定できる方法であれば使用できる。例えば、圧入、ピン止め、コーティング、物理的な抜け止め等を採用できる。
焼結金属あるいは連通孔を有する樹脂部に含浸させる油としては、スピンドル油、冷凍機油、タービン油、マシン油、ダイナモ油等の鉱油、ポリブテン、ポリαオレフィン、アルキルナフタレン、脂環式化合物等の炭化水素系合成油、または、天然油脂とポリオールとのエステル油、リン酸エステル、ジエステル油、ポリグリコール油、シリコーン油、ポリフェニルエーテル油、アルキルジフェニルエーテル油、アルキルベンゼン、フッ素化油等の非炭化水素系合成油等、潤滑油として汎用されているものであれば使用できる。
本発明の含油摺動材をすべり軸受に用いた場合について図1により説明する。図1(a)〜図1(e)は、それぞれすべり軸受の断面図である。
すべり軸受1は、摺動面が連通孔構造を有する合成樹脂層2で、反摺動面であって、合成樹脂層2の裏面に潤滑油供給層となる金属焼結体3がそれぞれ形成されている。
すべり軸受1の形状としては、フランジ付きブッシュ型(図1(a))、スラスト型(図1(b))、ラジアル型(図1(d))、スラストおよびラジアル混合型(図1(c)(e))等があり、摺動部の形状に合わせて最適な軸受形状を選択できる。また、摺動面に溝を設けた形状とすることもできる。
実施例1
ポリアミド(ナイロン6)樹脂に多孔質シリカ(旭硝子社製:サンスフェアH33)を樹脂組成物全体に対して 30vol %配合して、φ7mm×φ8.7mm×t 3mm の樹脂円筒を射出成形した。また、φ8.5mm×φ16mm×t 3mm の焼結金属製円筒(気孔率:30vol %、Cu−Sn系)を用意して、この焼結金属製円筒内部に上記多孔質樹脂円筒を圧入し、内径面を加工してφ8mm×φ16mm×t 3mm のすべり軸受を得た。このすべり軸受をエステル油(日本油脂社製:H481R)中に浸し、真空含浸処理を行ない気孔の部分に油を封入した。このすべり軸受を用いて以下の条件で摩擦・摩耗試験を行なった。結果を表2に示す。
摩擦・摩耗試験条件を以下に示す。
(1)相手材軸:A5056(アルミニウム合金、Ra=0.8μm )、φ7.97
(2)荷重:2.5kg
(3)周速:3m/min.
(4)温度:50℃
(5)時間:120 時間
なお、軸とすべり軸受の隙間は、30μm (25℃で測定)とした。また、水中(温度:25℃)に軸受を 150 時間浸し、寸法変化(外径部)を測定した。寸法変化が 30μm 以下の場合は○、30μm よりも大きい場合は×と判定した。測定項目は、(a)すべり軸受の摩耗の有・無、(b)軸の摩耗の有・無、(c)試験終了時の動摩擦係数、(d)軸へのダキツキ、(e)吸水時の寸法変化(○、×の判定)測定を行なった。
参考例1
ポリアミド(ナイロン6)樹脂粉末を圧縮成形して、φ7mm×φ8.7mm×t 3mm の多孔質樹脂円筒(気孔率:30vol %)を作製した。また、φ8.5mm×φ16mm×t 3mm の焼結金属製円筒(気孔率:30vol %、Cu−Sn系)を用意して、この焼結金属製円筒内部に上記多孔質樹脂円筒を圧入し、内径面を加工してφ8mm×φ16mm×t 3mm のすべり軸受を得た。このすべり軸受をエステル油(日本油脂社製:H481R)中に浸し、真空含浸処理を行ない気孔の部分に油を封入した。このすべり軸受を用いて実施例1の条件で摩擦・摩耗試験を行なった。結果を表2に示す。
参考例2
ポリエチレン樹脂粉末を圧縮成形してφ7mm×φ8.7mm×t 3mm の多孔質樹脂円筒(気孔率:30vol %)を作製した。また、φ8.5mm×φ16mm×t 3mm の焼結金属製円筒(気孔率:30vol %、Cu−Sn系)を用意して、この焼結金属製円筒内部に上記多孔質樹脂円筒を圧入し、内径面を加工してφ8mm×φ16mm×t 3mm のすべり軸受を得た。このすべり軸受をエステル油(日本油脂社製:H481R)中に浸し、真空含浸処理を行ない気孔の部分に油を封入した。このすべり軸受を用いて実施例1の条件で摩擦・摩耗試験を行なった。結果を表2に示す。
比較例1
φ8mm×φ16mm×t 3mm の焼結金属製円筒(気孔率:30vol %、Cu−Sn系)をすべり軸受として使用した。この焼結金属軸受をエステル油(日本油脂製:H481R)中に浸し、真空含浸処理を行ない気孔の部分に油を封入した。このすべり軸受を用いて実施例1と同様の条件で摩擦・摩耗試験と水中放置による寸法変化の測定を行なった。結果を表2に示す。
比較例2
ポリアミド(ナイロン6)樹脂粉末を圧縮成形して、φ8mm×φ16mm×t 3mm の多孔質樹脂円筒(気孔率:30vol %)を作製し、すべり軸受として使用した。この多孔質樹脂円筒をエステル油(日本油脂製:H481R)中に浸し、真空含浸処理を行ない気孔の部分に油を封入した。このすべり軸受を用いて実施例1と同様の条件で摩擦・摩耗試験と水中放置による寸法変化の測定を行なった。結果を表2に示す。
Figure 0004866411
表2に示すように、金属焼結体と多孔質樹脂層を併用した参考例1および実施例1は、軸受および相手材軸の摩耗がなく、また動摩擦係数も 0.1 程度と低い値を示す。特に、実施例1は、動摩擦係数が0.05であり低い値を示した。また、吸水による寸法変化も少ない。
一方、金属焼結体のみですべり軸受を構成した比較例1は、軸受や軸の摩耗が発生し、かつ摩擦係数も 0.35 と高い値を示した。また、樹脂多孔体のみですべり軸受を構成した比較例2は、軸受、軸の摩耗はないが、吸水による寸法変化が大きく軸へのダキツキがみられた。
すべり軸受の断面図である。
符号の説明
1 すべり軸受
2 合成樹脂層
3 金属焼結体

Claims (4)

  1. 相手材と摺動する摺動面に潤滑油を供給できる含油摺動材であって、
    前記摺動面は連通孔構造を有する合成樹脂層の一面に形成され、該合成樹脂層の反摺動面に金属焼結体からなる潤滑油供給層を有し、前記合成樹脂層は連通孔を有する充填剤として球状多孔質シリカを配合した樹脂組成物を射出成形してなる層であり、前記潤滑油供給層と前記合成樹脂層とが直接に密着していることを特徴とする含油摺動材。
  2. 前記球状多孔質シリカは、一次粒子が集合して真球状シリカ粒子を形成した連続孔を有、該球状多孔質シリカの平均粒子径が 0.5〜100 μmであることを特徴とする請求項1記載の含油摺動材。
  3. 相手材と摺動する摺動面が合成樹脂層の一面に形成され、該合成樹脂層の反摺動面に金属焼結体からなる潤滑油供給層を有するすべり軸受であって、
    前記合成樹脂層は連通孔を有する充填剤として球状多孔質シリカを配合した樹脂組成物を射出成形してなる層であり、前記潤滑油供給層と前記合成樹脂層とが直接に密着していることを特徴とするすべり軸受。
  4. 前記球状多孔質シリカは、一次粒子が集合して真球状シリカ粒子を形成した連続孔を有、該球状多孔質シリカの平均粒子径が 0.5〜100 μmであることを特徴とする請求項記載のすべり軸受。
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