JP2009036380A - 含油摺動材およびすべり軸受 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】相手材と摺動する摺動面が合成樹脂層2の一面に形成され、該合成樹脂層2の反摺動面に金属焼結体3で形成されてなる潤滑油供給層を有するすべり軸受1であって、上記合成樹脂層2が連通孔を有する充填剤を配合した樹脂組成物を射出成形してなり、上記連通孔を有する充填剤は、一次粒子が集合して真球状シリカ粒子を形成した連続孔を有する球状多孔質シリカであり、該球状多孔質シリカの平均粒子径が 0.5〜100 μmである。
【選択図】図1
Description
焼結金属含油軸受の場合、焼結合金や成長鋳鉄、多孔質銅合金鋳物等に油を含浸させている。焼結金属含油軸受など、金属系の多孔質材料に油を含浸させたすべり軸受は油を継続的に摺動面に供給することが可能であるため、摩擦力を低くすることができる。また、一般に相手材は金属材料である場合が多く、線膨張の相違によるダキツキ、抜け等の心配がない。さらに、金属材料は加工精度を高めることが可能であり、回転精度が要求される分野へ使用されている。
さらに、樹脂含油軸受は、吸水・吸湿により体積膨張が発生し、軸との隙間が変化するため、回転精度が要求される分野への使用が困難であるなどの問題がある。
また、上記連通孔を有する充填剤は、一次粒子が集合して真球状シリカ粒子を形成した連続孔を有する球状多孔質シリカであり、該球状多孔質シリカの平均粒子径が 0.5〜100 μmであることを特徴とする。
また、上記潤滑油供給層は、金属焼結体で形成されてなることを特徴とする。
また、上記連通孔を有する充填剤は、一次粒子が集合して真球状シリカ粒子を形成した連続孔を有する球状多孔質シリカであり、該球状多孔質シリカの平均粒子径が 0.5〜100 μmであることを特徴とする。
また、上記潤滑油供給層が金属焼結体で形成されてなることを特徴とする。
また、上記潤滑油供給層が金属焼結体で形成されてなるので、線膨張は通常のハウジングあるいは軸の金属材料とほとんど同じであり、寸法精度あるいは回転精度に優れ、軟質の相手軸を摩耗させることがない。
(1)樹脂材料に連通孔を有する充填剤を配合する。連通孔を有する充填剤としては多孔質粉末などが挙げられる。多孔質粉末は、以下のコーティング層を形成する場合にもコーティング膜厚と同等の粒子径を有する微粒子の集合体からなる多孔質粉末を配合することで、連続孔を付与させることができる。
多孔質粉末として、例えば一次粒子径が 3〜8nm の多孔質を使用すると、一つの断面直径がナノメートル程度の連通孔構造となる。
(2)粉末状の樹脂材料をその融点以下の温度で焼結して多孔質とする。この場合、粉末状樹脂材料の粒子径と焼結条件で連通孔構造は異なるが、例えば平均粒子径 10μm 程度のポリイミド粉末で多孔体を製造すれば、成形圧力、焼結温度等を調整して、0.1〜2μm 程度の連通孔構造が得られる。また、平均粒子径 200μm 程度のポリエチレンを用いれば、4〜50μm 程度の連通孔構造が得られる。この方法の場合、樹脂材料の平均粒子径の 1/100〜1/5 の断面直径を有する連通孔構造が得られる。
(3)樹脂材料Aと樹脂材料Bとを混練後、射出成形して合成樹脂層を得る。その後、樹脂材料Bを溶かさないで樹脂材料Aを溶かす溶剤Cを用いて処理して多孔質とする。
(4)合成樹脂層をコーティング層として形成する場合は、上記樹脂材料Aと樹脂材料Bとを用いて塗膜を形成し、溶剤Cを用いて処理して多孔質コーティング層とする。
(5)コーティング膜厚と同等の粒子径を有する微粒子の集合体からなる多孔質粉末を合成樹脂材料に配合して塗膜を形成し、多孔質コーティング層とする。
(6)織布を重ねあわせ、融点付近で融着させて連通孔を付与させる。この場合、織布の種類としては、市販されているものであれば特に限定しないが、例えばポリエチレンテレフタレート製、ポリアミド製、アラミド紡績糸織布等があげられる。織布で連通孔を持たせる場合、織布のみでは強度が不足する場合、バインダーとしての樹脂剤や各種充填剤を添加することができる。
(7)合成樹脂層を半透膜、あるいは分子間の隙間に油を保持できる樹脂層で形成し、所定の条件下に摺動面に油を供給できる多孔質層と同じ機能を有する材料で形成する。
(8)合成樹脂層をレーザー処理、放電処理等することにより微細孔あるいは微細溝などを合成樹脂層に形成する。
(9)針あるいはカッターなどにより微細孔あるいは微細溝などを合成樹脂層に形成する。
また、溶剤に溶解しやすい樹脂としては、ケトン系樹脂に溶けるポリスチレン、水や熱水に溶解するポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの各種水溶性樹脂が例示できる。
本発明においては、粒子径が 3〜8nm の一次微粒子が集合して真球状シリカ粒子を形成した多孔質シリカが連通孔を有しているため特に好ましい。真球状シリカ粒子としては、平均粒子径が 0.5〜100 μm である。このような真球状シリカ粒子は、その内部に潤滑剤を保持することが可能であり、かつ摺動界面において内部に含浸した潤滑剤を少量ずつ供給することが可能である。平均粒子径が 0.5μm 未満では、ハンドリング性が悪い。また、潤滑剤の含浸量が十分でない。平均粒子径が 100μm をこえると、溶融樹脂中での分散性が悪い。また、溶融樹脂の混練時にかかるせん断力により、集合体が破壊し、球状を保持できない可能性がある。取り扱い易さや摺動特性の付与を考慮した場合、平均粒子径は 1〜20μm が特に好ましい。このような真球状多孔質シリカとしては、旭硝子社製:サンスフェア、鈴木油脂工業社製:ゴットボール等が例示できる。また、多孔質バルク状シリカとして、(株)東海化学工業所製:マイクロイドがある。
ここで、比表面積および細孔容積は窒素吸着法により、吸油量はJIS K5101に準じて測定した値である。また、上記真球状シリカ粒子の内部と外表面はシラノール基(Si−OH)で覆われていることが、潤滑剤を内部に保持しやすくなるため好ましい。さらに、多孔質シリカは、母材に適した有機系、無機系などの表面処理を行なうことができる。
樹脂材料Aと樹脂材料Bを混練して樹脂材料Aのみ溶出させる場合、成形体は、射出成形、圧縮成形、真空成形、吹き込み成形、発泡成形のいずれの方法で成形してもよい。特に好ましい成形方法は射出成形である。また、コーティング処理を行なう場合、スプレー法やディッピング法、静電塗装法、流動浸漬法等特に限定されるものではない。
また、含油摺動材としての潤滑性を損なわない限り、中間製品または最終製品の形態において、別途、例えばアニール処理等の化学的または物理的な処理によって性質改善のための変性ができる。
軸の材料であるアルミニウム合金(A5056) :0.000023
軸受の外層となる金属焼結体 :0.00002
軸受の内層となるポリエチレン樹脂 :0.00013
軸受の内層となるポリフェニレンスルファイド樹脂:0.00006
すべり軸受1は、摺動面が連通孔構造を有する合成樹脂層2で、反摺動面であって、合成樹脂層2の裏面に潤滑油供給層となる金属焼結体3がそれぞれ形成されている。
すべり軸受1の形状としては、フランジ付きブッシュ型(図1(a))、スラスト型(図1(b))、ラジアル型(図1(d))、スラストおよびラジアル混合型(図1(c)(e))等があり、摺動部の形状に合わせて最適な軸受形状を選択できる。また、摺動面に溝を設けた形状とすることもできる。
ポリアミド(ナイロン6)樹脂に多孔質シリカ(旭硝子社製:サンスフェアH33)を樹脂組成物全体に対して 30vol %配合して、φ7mm×φ8.7mm×t 3mm の樹脂円筒を射出成形した。また、φ8.5mm×φ16mm×t 3mm の焼結金属製円筒(気孔率:30vol %、Cu−Sn系)を用意して、この焼結金属製円筒内部に上記多孔質樹脂円筒を圧入し、内径面を加工してφ8mm×φ16mm×t 3mm のすべり軸受を得た。このすべり軸受をエステル油(日本油脂社製:H481R)中に浸し、真空含浸処理を行ない気孔の部分に油を封入した。このすべり軸受を用いて以下の条件で摩擦・摩耗試験を行なった。結果を表2に示す。
(1)相手材軸:A5056(アルミニウム合金、Ra=0.8μm )、φ7.97
(2)荷重:2.5kg
(3)周速:3m/min.
(4)温度:50℃
(5)時間:120 時間
なお、軸とすべり軸受の隙間は、30μm (25℃で測定)とした。また、水中(温度:25℃)に軸受を 150 時間浸し、寸法変化(外径部)を測定した。寸法変化が 30μm 以下の場合は○、30μm よりも大きい場合は×と判定した。測定項目は、(a)すべり軸受の摩耗の有・無、(b)軸の摩耗の有・無、(c)試験終了時の動摩擦係数、(d)軸へのダキツキ、(e)吸水時の寸法変化(○、×の判定)測定を行なった。
ポリアミド(ナイロン6)樹脂粉末を圧縮成形して、φ7mm×φ8.7mm×t 3mm の多孔質樹脂円筒(気孔率:30vol %)を作製した。また、φ8.5mm×φ16mm×t 3mm の焼結金属製円筒(気孔率:30vol %、Cu−Sn系)を用意して、この焼結金属製円筒内部に上記多孔質樹脂円筒を圧入し、内径面を加工してφ8mm×φ16mm×t 3mm のすべり軸受を得た。このすべり軸受をエステル油(日本油脂社製:H481R)中に浸し、真空含浸処理を行ない気孔の部分に油を封入した。このすべり軸受を用いて実施例1の条件で摩擦・摩耗試験を行なった。結果を表2に示す。
ポリエチレン樹脂粉末を圧縮成形してφ7mm×φ8.7mm×t 3mm の多孔質樹脂円筒(気孔率:30vol %)を作製した。また、φ8.5mm×φ16mm×t 3mm の焼結金属製円筒(気孔率:30vol %、Cu−Sn系)を用意して、この焼結金属製円筒内部に上記多孔質樹脂円筒を圧入し、内径面を加工してφ8mm×φ16mm×t 3mm のすべり軸受を得た。このすべり軸受をエステル油(日本油脂社製:H481R)中に浸し、真空含浸処理を行ない気孔の部分に油を封入した。このすべり軸受を用いて実施例1の条件で摩擦・摩耗試験を行なった。結果を表2に示す。
φ8mm×φ16mm×t 3mm の焼結金属製円筒(気孔率:30vol %、Cu−Sn系)をすべり軸受として使用した。この焼結金属軸受をエステル油(日本油脂製:H481R)中に浸し、真空含浸処理を行ない気孔の部分に油を封入した。このすべり軸受を用いて実施例1と同様の条件で摩擦・摩耗試験と水中放置による寸法変化の測定を行なった。結果を表2に示す。
ポリアミド(ナイロン6)樹脂粉末を圧縮成形して、φ8mm×φ16mm×t 3mm の多孔質樹脂円筒(気孔率:30vol %)を作製し、すべり軸受として使用した。この多孔質樹脂円筒をエステル油(日本油脂製:H481R)中に浸し、真空含浸処理を行ない気孔の部分に油を封入した。このすべり軸受を用いて実施例1と同様の条件で摩擦・摩耗試験と水中放置による寸法変化の測定を行なった。結果を表2に示す。
一方、金属焼結体のみですべり軸受を構成した比較例1は、軸受や軸の摩耗が発生し、かつ摩擦係数も 0.35 と高い値を示した。また、樹脂多孔体のみですべり軸受を構成した比較例2は、軸受、軸の摩耗はないが、吸水による寸法変化が大きく軸へのダキツキがみられた。
2 合成樹脂層
3 金属焼結体
Claims (6)
- 相手材と摺動する摺動面に潤滑油を供給できる含油摺動材であって、
前記摺動面は連通孔構造を有する合成樹脂層の一面に形成され、該合成樹脂層の反摺動面に潤滑油供給層を有し、前記合成樹脂層は連通孔を有する充填剤を配合した樹脂組成物を射出成形してなる層であることを特徴とする含油摺動材。 - 前記連通孔を有する充填剤は、一次粒子が集合して真球状シリカ粒子を形成した連続孔を有する球状多孔質シリカであり、該球状多孔質シリカの平均粒子径が 0.5〜100 μmであることを特徴とする請求項1記載の含油摺動材。
- 前記潤滑油供給層は、金属焼結体で形成されてなることを特徴とする請求項1または請求項2記載の含油摺動材。
- 相手材と摺動する摺動面が合成樹脂層の一面に形成され、該合成樹脂層の反摺動面に潤滑油供給層を有するすべり軸受であって、
前記合成樹脂層は連通孔を有する充填剤を配合した樹脂組成物を射出成形してなることを特徴とするすべり軸受。 - 前記連通孔を有する充填剤は、一次粒子が集合して真球状シリカ粒子を形成した連続孔を有する球状多孔質シリカであり、該球状多孔質シリカの平均粒子径が 0.5〜100 μmであることを特徴とする請求項4記載のすべり軸受。
- 前記潤滑油供給層は、金属焼結体で形成されてなることを特徴とする請求項4または請求項5記載のすべり軸受。
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