JP4851695B2 - 摺動材料 - Google Patents
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Description
また、半導体の製造設備などにおける閉された清浄な雰囲気、特に真空などの低圧の清浄雰囲気で使用される真空用の摺動材料では、潤滑剤から発生する蒸気や飛散する微粒子が存在すると精密部品の性能に悪影響を及ぼすため、上記要求特性に加えて、高い低発塵性も要求されている。このような摺動材料では、その充填材として、低蒸気圧の液体潤滑剤や、ポリテトラフルオロエチレン、二硫化モリブデン、二硫化タングステンなどの固体潤滑剤、または金、銀、鉛などの軟質金属が使用されている。
繊維補強材などを配合して機械的強度を向上させる場合、該繊維と樹脂との濡れ性が重要となるが、介在する潤滑油の影響のため十分に強度を向上させることが難しい。また、射出成形時において樹脂とスクリューの間で滑りを生じさせずに安定した原料供給量を確保するため、配合できる潤滑油量は最大でも 10 体積%程度であり、使用条件によっては潤滑油量が不足する場合があった。
潤滑油を含浸した多孔質シリカを配合した樹脂材料(特許文献1参照)は、潤滑油配合量を従来より多量に配合できるよう改善したものであるが、その場合でも潤滑油配合量は最大で 30 容量%であり、過酷な使用環境では潤滑油不足となる可能性がある。また、上述の樹脂と潤滑油の選定問題は残っており、耐熱性の必要とする用途などにおける使用は困難である。
また、上記潤滑油がアルキル化シクロペンタン系油であることを特徴とする。
また、上記潤滑油がパーフルオロポリエーテル油であることを特徴とする。
また、上記弱アルカリ塩は、前記安息香酸ナトリウム、前記酢酸ナトリウム、前記セバシン酸ナトリウム、前記コハク酸ナトリウム、および前記ステアリン酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする。
また、樹脂多孔体を成形した後に該樹脂多孔体に潤滑油を含浸させて得られるので、上記低蒸気圧の潤滑油に対して、用途や仕様に応じた任意の樹脂を選択できる。この結果、真空条件下で使用でき、かつ優れた強度、耐熱性、低摩擦係数、耐摩耗性などを併せもつ摺動材料とできる。また、バックメタルなどの補強部材を併用することなく、摺動材料のみを用いて必要特性を満足する摺動部材を形成できる。
上記潤滑油としては、例えば、上記の低蒸気圧となるように高度に精製した石油系潤滑油、アルキル化シクロペンタン系油、パーフルオロポリエーテル油などが挙げられる。
真空条件下での使用に十分耐えうる潤滑油であり、耐熱性、耐薬品性、耐溶剤性および耐荷重性などに優れることからアルキル化シクロペンタン系油を用いることが好ましい。また、摺動面にかかる面圧が低い場合には、パーフルオロポリエーテル油を好適に用いることができる。
上記アルキル化シクロペンタン系油は、下記の化1に示す構造の潤滑油である。
上記アルキル化シクロペンタン系油の具体例としては、トリ(2−オクチルドデシル)シクロペンタン(蒸気圧( 40 ℃):1.0 ×10-8 Pa NYE LUBICANTS社製NYE SYNTHETIC OIL 2001A)が挙げられる。
また上記潤滑油には、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、極圧剤、酸化防止剤、防錆剤、流動点降下剤、無灰系分散剤、金属系清浄剤、界面活性剤、摩耗調整剤などを配合できる。酸化防止剤としては、フェノール系、アミン系、イオウ系などを単独または、混合して使用できる。
以下、連通孔率、および本発明の摺動材料を構成する樹脂、気孔形成材、成形方法、抽出方法について説明する。
以上の計算は、同一サイズの球体を考えた場合であるが、複数のサイズの球体を充填した場合は、六方最密充填よりも充填率は大きくなり、気孔率は小さくなる。
また、粉末状の球体樹脂粒子を圧縮成形した後に焼結する場合、点接触はあり得ず、球体樹脂粒子は変形して面接触する。このため、六方最密充填よりも充填率はより大きくなり、気孔率はより小さくなる。このため従来の焼結樹脂成形体の気孔率は 20 %程度が限界となっている。
具体的には、連通孔率は数1内の式(1)に示す方法で算出した。
V;加熱圧縮成形法にて成形された洗浄前成形体の体積
ρ;加熱圧縮成形法にて成形された洗浄前成形体の密度
W;加熱圧縮成形法にて成形された洗浄前成形体の重量
V1;樹脂粉末の体積
ρ1;樹脂粉末の密度
W1;樹脂粉末の重量
V2;気孔形成材の体積
ρ2;気孔形成材の密度
W2;気孔形成材の重量
V3;洗浄後の多孔体の体積
W3;洗浄後の多孔体の重量
V’2;洗浄後に多孔体に残存する気孔形成材の体積
なお、樹脂多孔体の製造方法は、これに限られるものでなく、30 %以上の連通孔率となる任意の方法を採用できる。
熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどのポリエチレン樹脂、変性ポリエチレン樹脂、水架橋ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、クロロトリフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ポリブチレンテレフタラート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリケトン樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリオキサゾリン樹脂、ポリフェニレンサルフィド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂などを例示できる。また、上記合成樹脂から選ばれた2種以上の材料の混合物、すなわちポリマーアロイなどを例示できる。
気孔形成材は、無機塩化合物、有機塩化合物、またはこれらの混合物であることが好ましく、特に洗浄抽出工程が容易となる水溶性物質であることが好ましい。また、アルカリ性物質、好ましくは防錆剤として使用できる弱アルカリ性物質が好ましい。弱アルカリ塩としては、有機アルカリ金属塩、有機アルカリ土類金属塩、無機アルカリ金属塩、無機アルカリ土類金属塩などが挙げられる。未抽出分が脱落したときも、比較的軟らかく、転動面やすべり面を損傷し難いことから、有機アルカリ金属塩、有機アルカリ土類金属塩を用いることが好ましい。なお、これらの金属塩は1種または2種以上混合して用いてもよい。また、洗浄用溶媒として安価な水を使用することができ、気孔形成時における廃液処理などが容易となることから水溶性の弱アルカリ塩を使用することが好ましい。
また、成形時における気孔形成材の溶解を防止するため、気孔形成材は使用する樹脂の成形温度よりも高い融点の物質を使用する。
本発明に好適に用いることができる水溶性有機アルカリ金属塩としては、安息香酸ナトリウム(融点 430 ℃)、酢酸ナトリウム(融点 320 ℃)またはセバシン酸ナトリウム(融点 340 ℃)、コハク酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウムなどが挙げられる。融点が高く、多種の樹脂に対応でき、かつ水溶性が高いという理由から、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウムまたはセバシン酸ナトリウムが特に好ましい。
無機アルカリ金属塩としては、例えば、炭酸カリウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、タングステン酸ナトリウムなどが挙げられる。
気孔形成材の割合は、樹脂粉末、多孔体形成材料および充填材などの他の材料を含めた全量に対して、30 体積%〜 90 体積%、好ましくは 40 体積%〜 70 体積%とする。30 体積%未満では多孔体の気孔が連続孔になり難く、90 体積%をこえると所望の機械的強度が得られない。
また配合時において、気孔形成材の抽出に使用する溶媒に不溶な充填材を配合してもよい。
また、摺動性を向上させる目的で、アミノ酸化合物やポリオキシベンゾイルポリエステル樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、液晶樹脂、アラミド樹脂のパルプ、ポリテトラフルオロエチレンや窒化硼素、二硫化モリブデン、二硫化タングステン等を配合できる。
なお、この発明の効果を阻害しない配合量で一般合成樹脂に広く適用しえる添加剤を併用してもよい。例えば離型剤、難燃剤、帯電防止剤、耐候性改良剤、酸化防止剤、着色剤、導電性付与剤等の工業用潤滑剤を適宜添加してもよく、これらを添加する方法も特に限定されるものではない
また、気孔形成材を液体溶媒中に溶解させて透明溶液とした後、この溶液に樹脂粉末を分散混合させて、その後、この溶媒を除去する方法を用いることができる。
分散混合させる方法としては、液中混合できる方法であれば特に限定されるものではなく、ボールミル、超音波分散機、ホモジナイザー、ジューサーミキサー、ヘンシェルミキサーなどが例示できる。また、分散液の分離を抑えるために少量の界面活性剤を添加することも有効である。なお、混合時においては、混合により気孔形成材が完全に溶解するよう溶媒量を確保する。
また、溶媒を除去する方法としては、加熱蒸発、真空蒸発、窒素ガスによるバブリング、透析、凍結乾燥などの方法を用いることができる。手法が容易で、設備が安価であることから加熱蒸発により液体溶媒の除去を行なうことが好ましい。
樹脂に気孔成形材を配合した混合物の成形に関しては、圧縮成形、射出成形、押し出し成形、ブロー成形、真空成形、トランスファ成形などの任意の成形方法を採用できる。また成形前に作業性を向上させるため、ペレットやプリプレグなどに加工してもよい。成形は最終製品である摺動部材の形状に合せて成形することが好ましい。また、成形後において切削加工などにより形状仕上げを行なう。
該溶媒としては、例えば、水、および水と相溶しうる溶媒としてアルコール系、エステル系、ケトン系溶媒などを用いることができる。これらの中で、樹脂および気孔形成材の種類によって上記条件に従い適宜選択される。また、これらの溶媒は1種または2種以上を混合し使用してもよい。廃液処理などが容易、安価などの利点から水を用いることが好ましい。
該抽出処理を行なうことにより、気孔形成材が充填されていた部分が溶解され、該溶解部分に気孔が形成された樹脂製多孔体が得られる。
含浸方法としては、樹脂多孔体の内部まで含浸できる方法であればよい。潤滑油が満たされた含浸槽に樹脂多孔体を浸漬した後、減圧して含浸する減圧含浸が好ましい。また、加圧含浸することもでき、さらには、これらを組み合わせた加圧減圧含浸としてもよい。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂粉末(ビクトレックス社製150PF)と安息香酸ナトリウム粉末(和光純薬(株)製試薬)とを体積比 50 : 50 の割合でミキサーにて5分間混合して混合粉末を得た。この混合粉末を、加熱圧縮成形( 360 ℃× 30 分)した後、切削加工にて所定の成形体(φ3mm ×13mm の試験片)とした。該成形体を 80 ℃の温水で超音波洗浄器にて 10 時間洗浄して安息香酸ナトリウム粉末を溶出させた。その後 100 ℃で 8 時間乾燥し連通孔率 48 %の多孔体を得た。この多孔体にアルキル化シクロペンタン油(NYE LUBICANTS社製NYESYNTHETIC OIL 2001A)を真空含浸して試験片を得た。含油率は全体積に対して 45 %であった。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂粉末(ビクトレックス社製150PF)と安息香酸ナトリウム粉末(和光純薬(株)製試薬)とを体積比 50 : 50 の割合でミキサーにて5分間混合して混合粉末を得た。この混合粉末を、加熱圧縮成形( 360 ℃× 30 分)した後、切削加工にて所定の成形体(φ3mm ×13mm の試験片)とした。該成形体を 80 ℃の温水で超音波洗浄器にて 10 時間洗浄して安息香酸ナトリウム粉末を溶出させた。その後 100 ℃で 8 時間乾燥し連通孔率 48 %の多孔体を得た。この多孔体にパーフルオロポリエーテル油(ソルベイソレクシス社製フォンブリンZ60)を真空含浸して試験片を得た。含油率は全体積に対して 45 %であった。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂粉末(ビクトレックス社製150PF)と炭素繊維(東レ製MLD100)と安息香酸ナトリウム粉末(和光純薬(株)製試薬)とを体積比 40 : 10 : 50 の割合でミキサーにて5分間混合して混合粉末を得た。この混合粉末を、加熱圧縮成形( 360 ℃× 30 分)した後、切削加工にて所定の成形体(φ3mm ×13mm の試験片)とした。該成形体を 80 ℃の温水で超音波洗浄器にて 10 時間洗浄して安息香酸ナトリウム粉末を溶出させた。その後 100 ℃で 8 時間乾燥し連通孔率 48 %の多孔体を得た。この多孔体にアルキル化シクロペンタン油(NYE LUBICANTS社製NYESYNTHETIC OIL 2001A)を真空含浸して試験片を得た。含油率は全体積に対して 45 %であった。
ポリフェニレンサルフィド樹脂粉末(大日本インキ(株)製T4AG)とアルキル化シクロペンタン油(NYE LUBICANTS社製NYESYNTHETIC OIL 2001A)とを体積比 95 : 5 の割合でミキサーにて5分間混合した後、加熱圧縮成形( 330 ℃× 30 分)し、切削加工にて所定の試験片(φ3mm ×13mm )を得た。
試験片:φ3mm×13mm, 軌道径 23 mm
相手材:φ33mm×6mm, SUS440C(硬さ:HRC60、表面粗さ:Ra=0.5μm )
面圧: 1 MPa
周速: 4.2m/分
温度: 常温(25 ℃)
時間: 20時間
評価方法として、試験前のピン長さと試験後のピン長さとの差から摩耗量を計算した。動摩擦係数と併せて結果を表1に示す。
Claims (5)
- 安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、セバシン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、炭酸カリウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、およびタングステン酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1つの弱アルカリ塩である気孔形成材を含む樹脂成形体から該気孔形成材を抽出して得られる連通孔を有し、30 %以上の連通孔率を有し、前記気孔形成材の未抽出分が残存している樹脂多孔体に、40 ℃における蒸気圧が 1.0×10-5Pa 以下の潤滑油を含浸してなることを特徴とする摺動材料。
- 前記潤滑油がパーフルオロポリエーテル油であることを特徴とする請求項1記載の摺動材料。
- 前記連通孔は、前記気孔形成材が配合された樹脂を成形して成形体とした後、該気孔形成材を溶解し、かつ前記樹脂を溶解しない溶媒を用いて前記成形体から前記気孔形成材を抽出して得られることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の摺動材料。
- 前記弱アルカリ塩は、前記安息香酸ナトリウム、前記酢酸ナトリウム、前記セバシン酸ナトリウム、前記コハク酸ナトリウム、および前記ステアリン酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載の摺動材料。
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