JP4553018B2 - シリンダブロックの加工方法、加工用治具、およびシリンダブロック - Google Patents

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Description

本発明は、例えば自動車エンジン等の内燃機関を構成するシリンダブロックの加工方法、加工用治具、およびシリンダブロックに関する。
例えば自動車エンジン等の内燃機関を構成するシリンダブロックにおいては、その一般的な構成として、ピストンを摺動可能に内装する円柱状の孔部であるシリンダボアと、このシリンダボアが開口する面であってシリンダヘッドが組み付けられるシリンダヘッド取付面(以下単に「ヘッド取付面」という。)とが備えられる。そして、ヘッド取付面に対するシリンダヘッドの組付けに際しては、ボルト等の締結具(ヘッドボルト)が用いられる。つまり、ヘッドボルトが、シリンダヘッドを貫通するとともにシリンダブロックに設けられる雌ねじ部分となるボルト穴に螺挿されることにより、シリンダヘッドがシリンダブロックに対して締結固定される。
このシリンダヘッドのシリンダブロックに対する固定に際してヘッドボルトが螺挿されるボルト穴は、ヘッド取付面においてシリンダボアの周囲に設けられる。具体的には、シリンダボアの周囲において略等間隔で4個設けられる構成がある。つまりこの場合、例えば、自動車等に搭載される直列4気筒エンジンにおいては、一列に並んだ状態となる4個のシリンダボアに対し、隣り合うシリンダボア間において2個のボルト穴が共用されることにより、計10個のボルト穴が設けられることとなる。
このような構成においては、シリンダブロックに対するシリンダヘッドの組付け時、およびシリンダブロックが用いられて構成されるエンジンの実働時に、シリンダボアの変形(ボア変形)が生じる。つまり、エンジン実働時におけるボア変形には、シリンダヘッドの組付け時に発生するもの(以下「組付け変形」という。)と、エンジンの実働時の熱負荷によって発生するものとが含まれる。これらのボア変形により、シリンダボアの真円度が決まる。
ここで、ボア変形について、図12を用いて具体的に説明する。図12はシリンダボアに対するボルト締結部の配置およびボア変形を示す模式図であり、(a)は単品状態(非組付状態)を示す図、(b)は組付け時またはエンジン実働時のボア変形を示す図である。
図12に示すように、シリンダヘッドをシリンダブロックに固定するためのボルト締結部のシリンダボアに対する配置例として、一つのシリンダボア104に対し、ボルト締結部110がシリンダボア104の周囲において略等間隔で4ヶ所設けられる構成がある。各ボルト締結部110においては、シリンダブロックに形成されるボルト穴112にヘッドボルト111が螺挿された状態となる。
図12(a)に示すように、ボルト穴112に螺挿されるヘッドボルト111の締付けによるシリンダヘッドの固定が行われてない単品状態では、ヘッドボルト111による締付け力(締結力)がシリンダブロックに対して加わっていないため、その締付け力が作用することによるシリンダブロックの変形が生じることはなく、シリンダボア104は変形をともなわない状態となる。
図12(b)に示すように、ヘッドボルト111が締め付けられることによりシリンダヘッドがシリンダブロックに対して締結固定された状態である組付け時においては、ヘッドボルト111による締付け力がシリンダブロックに作用し、この締付け力がシリンダブロックに変形を生じさせ、組付け変形が生じる。この組付け変形は、ヘッドボルト111の締付けによってボア上面(ヘッド取付面におけるシリンダボア104の周縁部)が強く押し付けられることにより生じる。
したがって、特に強く押し付けられることとなるボルト周りで変形が大きくなり、本例のようにボルト締結部110がシリンダボア104の周囲において略等間隔で4ヶ所設けられる構成においては、シリンダボア104において、ボルト締結部110に対応する位相(以下「ボルト位相」という。)の部分が内側に窄むような(相対的に内側に膨出するような)変形が生じる(図12(b)における矢印参照)。結果として、組付け変形は、図12(b)に示すように、平面視において円形であったシリンダボア104が、十字形となるような変形となる(いわゆる4次変形)。また、エンジンの実働時において熱負荷によって生じるボア変形は、組付け変形により変形した状態のシリンダボア104において、その十字形が強調される変形となる。
こうしたボア変形は、シリンダボアの真円度を悪化させることとなる。そして、シリンダボアの真円度の悪化は、シリンダボアにおけるピストンの摺動にともなうフリクション(摺動抵抗)の増大を招く。フリクションの増大は、内燃機関の出力の制限や燃費の悪化等の原因となる。
すなわち、ピストンにはシリンダボアに対して摺接するピストンリングが装着されるが、シリンダボアの真円度が悪化すると、シリンダボアにおいて真円から大径に変形する部分(拡径する部分)ではピストンリングによるシール性が低下し、浸出によるエンジンオイル消費やブローバイガスが増大する。こうした状況は、ピストンリングの張力(拡がろうとする力)を大きくし(高張力化し)、シリンダボアの大径に変化する部分でもピストンリングによる最低限の押付け力が確保できるようにすることで避けることができる。しかし、ピストンリングの高張力化は、シリンダボアにおける全体的なフリクションの増大を招く。
そこで、エンジン実働時におけるボア変形を抑制するためには、シリンダボアについて所定の真円度を得るための仕上げ加工(例えばホーニング加工等)を行うに際し、シリンダボアに対してエンジン実働時におけるボア変形と逆方向の変形(以下「逆変形」ともいう。)を予め与えることで、エンジン実働時でのシリンダボアの真円化を狙うことができる加工法が必要となる。
つまり、シリンダブロックに対しては、そのシリンダボアに対する仕上げ加工が行われた後にシリンダヘッドが組み付けられるが、そのシリンダヘッドの組付け、およびエンジン実働時の熱負荷によってシリンダボアが真円となるように、逆変形を生じさせる必要がある。言い換えると、エンジン実働時において、組付け変形および熱負荷による変形によって変形したシリンダボアが真円となるように、逆変形を生じさせる必要がある。このため、シリンダボアに対する仕上げ加工後の単品状態で、図13に示すような逆変形が、シリンダボアに付与されることが必要となる。
このように、シリンダボアに対する仕上げ加工後の単品状態で逆変形を付与することができる加工法としては、従来、ダミーヘッドを用いた加工法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
ダミーヘッドとは、実際の製品として組み付けられるシリンダヘッドとは異なる加工用治具であり、シリンダボアの加工に際し、シリンダヘッドと同様にしてヘッドボルトによってシリンダブロックに組み付けられるものである。このダミーヘッドにより、シリンダヘッドがシリンダブロックに組み付けられた状態が模擬される。つまり、ダミーヘッドがシリンダブロックに組み付けられることにより、シリンダブロックに対してシリンダヘッドの組付けにともなう締付け力に相当する規定の締付け力が付与され、シリンダボアに対して組付け変形が付与された状態となる。この状態で、シリンダボアに対する仕上げ加工が行われ、その仕上げ加工後にダミーヘッドが取り外されることで、前記締付け力の解除にともなう復元作用により、シリンダボアに逆変形が付与された状態となる。そして、このシリンダボアに逆変形が付与されたシリンダブロックに対してシリンダヘッドが組み付けられることにより、シリンダヘッド組付け時の締付け力によって生じるボア変形(組付け変形)によるシリンダボアの真円度の悪化が抑制される。
しかし、ダミーヘッドを用いた加工法においては、ダミーヘッドを締付け(組付け)・分解(取外し)・洗浄・搬送等する工程がそれぞれ必要となり、シリンダブロックを加工するための工程が複雑化する。加工工程が複雑化することは、量産性の向上を図るうえで好ましくない。また、ダミーヘッドを用いた加工法においては、生産サイクルタイムを考慮した相当数のダミーヘッドの準備や、ダミーヘッドの締付け等の前記各工程を行うための設備等が必要となるため、コストが高い。
特開2004−243514号公報
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、シリンダブロックのシリンダボアに対する仕上げ加工に際し、ダミーヘッド等の加工用治具を用いることで生じる加工工程の複雑化や高コスト化を招くことなく、仕上げ加工後にシリンダボアに対してエンジン実働時に生じるボア変形と逆方向の変形を付与することができ、エンジン実働時におけるシリンダボアの真円度の悪化を抑制することができるシリンダブロックの加工方法、加工用治具、およびシリンダブロックを提供することにある。
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
すなわち、請求項1においては、締結部材によってシリンダヘッドが固定されるシリンダヘッド取付面に開口しピストンを摺動可能に内装する円柱状の孔部であるシリンダボアと、該シリンダボアを囲む壁状部分であるシリンダ部を介して前記シリンダボアを取り囲むように形成され前記シリンダヘッド取付面に開口するウォータジャケットとを有するシリンダブロックに対して行うシリンダブロックの加工方法であって、前記ウォータジャケットの内側面を形成する前記シリンダ部の外周面のうち、前記シリンダボアの円周形状における前記締結部材による締結部に対応する位相の部分を押圧することにより、前記シリンダ部における、前記押圧した部分の前記シリンダボア側からの圧力に対する剛性を、他の部分に対して高めた状態で、前記シリンダボアに対する仕上げ加工を行うものである。
請求項2においては、請求項1に記載のシリンダブロックの加工方法において、互いに離間可能に連結される押圧部を有しこれら押圧部同士が離間する方向の楔作用を受ける楔面を有する押圧部材と、前記楔面に係合して前記楔作用を与える楔部材とを用い、前記離間する方向に、前記シリンダ部の外周面における前記位相の部分に対する押圧方向が含まれるとともに、前記ウォータジャケットの前記シリンダヘッド取付面に対する開口部側からの押付けによって前記楔作用が得られる姿勢で、前記ウォータジャケットにおける前記位相の部分に挿入した状態の前記押圧部材に対し、前記楔部材を係合させた状態で、前記開口部側から押し付けて前記楔作用を得ることにより、前記シリンダ部の外周面における前記位相の部分に対する押圧を行うものである。
請求項3においては、請求項2記載のシリンダブロックの加工方法において、複数ある前記締結部それぞれに対応する、前記ウォータジャケットにおける前記位相の部分に、前記姿勢で挿入された状態の前記押圧部材それぞれに対して係合する、複数の前記楔部材を、前記挿入された状態の前記押圧部材の配置に対応する配置状態で一体に連結するとともに、前記押圧部材を、その対応する前記楔部材に対して、該楔部材が係合可能な状態で支持させ、前記複数の前記楔部材を連動させて、該複数の前記楔部材の前記開口部側からの押付けを行うものである。
請求項4においては、請求項2または請求項3に記載のシリンダブロックの加工方法において、前記シリンダボアに対する仕上げ加工は、ホーニング用の砥石を有し前記シリンダボアに対して移動することで該シリンダボアに対して前記砥石を作用させるヘッド部と、前記シリンダヘッド取付面に対して近接離間移動可能に設けられ前記ヘッド部を案内するガイド部とを備える構成が用いられて行われるホーニング加工であり、前記ガイド部に、前記楔部材を連結し、前記楔部材の前記開口部側からの押付けを、前記ガイド部の前記シリンダヘッド取付面に対する近接動作を用いて行うものである。
請求項5においては、請求項2記載のシリンダブロックの加工方法において、複数ある前記締結部それぞれに対応する、前記ウォータジャケットにおける前記位相の部分に、前記姿勢で挿入された状態の前記押圧部材それぞれに対して係合する、複数の前記楔部材それぞれに対して、該楔部材の前記開口部側からの押付けを行うための荷重を付与する荷重付与手段を設け、前記荷重付与手段により前記複数の前記楔部材に付与する前記荷重を均一とするものである。
請求項6においては、請求項5に記載のシリンダブロックの加工方法において、前記荷重として、流体圧を用い、前記荷重付与手段は、前記流体圧により少なくとも前記楔部材の前記開口部側からの押付け方向に付勢可能に設けられる流体圧伝達部材を含み、前記流体圧を、前記流体圧伝達部材を介して前記楔部材に伝達することにより、前記楔部材に前記荷重を付与するとともに、前記流体圧の調整により、前記複数の前記楔部材に付与する前記荷重を均一とするものである。
請求項7においては、請求項6に記載のシリンダブロックの加工方法において、前記シリンダボアに対する仕上げ加工は、ホーニング用の砥石を有し前記シリンダボアに対して移動することで該シリンダボアに対して前記砥石を作用させるヘッド部と、前記シリンダヘッド取付面に対して近接離間移動可能に設けられ前記ヘッド部を案内するガイド部とを備える構成が用いられて行われるホーニング加工であり、前記ガイド部に、前記流体圧伝達部材を前記押付け方向を含む所定の摺動方向に移動可能に支持するとともに前記流体圧を前記流体圧伝達部材に作用させる流体圧室を設けるものである。
請求項8においては、請求項2〜7のいずれか一項に記載のシリンダブロックの加工方法において、前記楔部材に微小振動を生じさせるものである。
請求項9においては、請求項1に記載のシリンダブロックの加工方法において、前記ウォータジャケットに対してその前記ヘッド取付面に対する開口部側から挿入可能な径を有する棒状のピン部材を、その外周面が前記シリンダ部の外周面における前記位相の部分に対して圧接する状態で、前記ウォータジャケットの底部に対して圧入することにより、前記シリンダ部の外周面における前記位相の部分に対する押圧を行うものである。
請求項10においては、請求項9に記載のシリンダブロックの加工方法において、前記ピン部材を、シリンダブロックの本体を構成する材料よりも熱伝導率の低い材料により構成し、前記圧入された状態の前記ピン部材の外周面と、前記ウォータジャケットの外側面との間に、少なくともシリンダブロックが用いられて構成される内燃機関の実働時における熱膨張によって、前記ピン部材の外周面と前記ウォータジャケットの外側面とが互いに接触しない程度の隙間を設けるものである。
請求項11においては、締結部材によってシリンダヘッドが固定されるシリンダヘッド取付面に開口しピストンを摺動可能に内装する円柱状の孔部であるシリンダボアと、該シリンダボアを囲む壁状部分であるシリンダ部を介して前記シリンダボアを取り囲むように形成され前記シリンダヘッド取付面に開口するウォータジャケットとを有するシリンダブロックの、前記シリンダボアに対する仕上げ加工に際して用いるシリンダブロックの加工用治具であって、互いに離間可能に連結される押圧部を有しこれら押圧部同士が離間する方向の楔作用を受ける楔面を有する押圧部材と、前記楔面に係合して前記楔作用を与える楔部材とを備え、前記離間する方向に、前記ウォータジャケットの内側面を形成する前記シリンダ部の外周面のうち、前記シリンダボアの円周形状における前記締結部材による締結部に対応する位相の部分に対する押圧方向が含まれるとともに、前記ウォータジャケットの前記シリンダヘッド取付面に対する開口部側からの押付けによって前記楔作用が得られる姿勢で、前記ウォータジャケットにおける前記位相の部分に挿入された状態の前記押圧部材に対し、前記楔部材が係合した状態で、前記開口部側から押し付けられて前記楔作用を得ることにより、前記シリンダ部の外周面における前記位相の部分に対する押圧を行うものである。
請求項12においては、請求項11に記載のシリンダブロックの加工用治具において、複数ある前記締結部それぞれに対応する、前記ウォータジャケットにおける前記位相の部分に、前記姿勢で挿入された状態の前記押圧部材それぞれに対して係合する、複数の前記楔部材を備えるとともに、該複数の前記楔部材を、前記挿入された状態の前記押圧部材に対応する配置状態で一体に連結する連結部材を備え、前記押圧部材を、その対応する前記楔部材に対して、該楔部材が係合可能な状態で支持する構成としたものである。
請求項13においては、請求項11に記載のシリンダブロックの加工用治具において、複数ある前記締結部それぞれに対応する、前記ウォータジャケットにおける前記位相の部分に、前記姿勢で挿入された状態の前記押圧部材それぞれに対して係合する、複数の前記楔部材を備えるとともに、該複数の前記楔部材それぞれに対して、該楔部材の前記開口部側からの押付けを行うための荷重を付与する荷重付与手段を備え、前記荷重付与手段により前記複数の前記楔部材に付与する前記荷重が均一となる構成としたものである。
請求項14においては、請求項13に記載のシリンダブロックの加工用治具において、前記荷重付与手段は、前記荷重を、流体圧とするものであり、前記流体圧により少なくとも前記楔部材の前記開口部側からの押付け方向に付勢可能に設けられる流体圧伝達部材と、該流体圧伝達部材を前記押付け方向を含む所定の摺動方向に移動可能に支持するとともに前記流体圧を前記流体圧伝達部材に作用させる流体圧室を形成する流体圧室形成部材と、を有し、前記流体圧室に対する前記流体圧の調整により、前記複数の前記楔部材に付与する前記荷重を均一とするものである。
請求項15においては、請求項11〜14のいずれか一項に記載のシリンダブロックの加工用治具において、前記荷重付与手段は、前記荷重を脈動的に変化させることにより、前記楔部材に微小振動を生じさせるものである。
請求項16においては、請求項10に記載のシリンダブロックの加工方法により加工されたシリンダブロックであって、前記圧入された状態の前記ピン部材を有するものである。
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
すなわち、本発明によれば、シリンダブロックのシリンダボアに対する仕上げ加工に際し、ダミーヘッド等の加工用治具を用いることで生じる加工工程の複雑化や高コスト化を招くことなく、仕上げ加工後にシリンダボアに対してエンジン実働時に生じるボア変形と逆方向の変形を付与することができ、エンジン実働時におけるシリンダボアの真円度の悪化を抑制することができる。
次に、発明の実施の形態を説明する。
本発明に係る加工方法の加工対象であるシリンダブロックは、例えば自動車エンジン等の内燃機関を構成するものであり、締結部材(ヘッドボルト)によってシリンダヘッドが固定されるシリンダヘッド取付面に開口しピストンを摺動可能に内装する円柱状の孔部であるシリンダボアと、このシリンダボアを囲む壁状部分であるシリンダ部を介してシリンダボアを取り囲むように形成されシリンダヘッド取付面に開口するウォータジャケットとを有する。
そして、本発明は、シリンダボアについて所定の真円度を得るためのシリンダボアに対する仕上げ加工に際し、シリンダボアを囲む壁状部分であるシリンダ部において、ヘッドボルトによる締結部に対応する位相(ボルト位相)の部分の、シリンダボア側からの圧力に対する剛性を、他の位相の部分に対して相対的に高くすることで、シリンダボアにおいてボルト位相の部分の加工による取り代(研削量)を大きくし、シリンダボアに対する仕上げ加工後の単品状態で、シリンダボアに対してエンジン実働時におけるボア変形と逆方向の変形(逆変形)を付与するものである。これにより、エンジン実働時におけるシリンダボアの真円度の悪化を抑制するものである。
すなわち、ホーニング加工等の仕上げ加工が施されることによってシリンダボアが所定の真円度を得た状態のシリンダブロックに対し、そのシリンダヘッド取付面に対してシリンダヘッドがボルト締結により組み付けられる。これにより、シリンダブロックにおいて強く押し付けられるボルト周りで変形が大きくなり、シリンダボアについてそのボルト位相の部分が内側に窄むような組付け変形が生じ、真円度が悪化する。また、エンジンの実働時において熱負荷によって生じるボア変形は、組付け変形が強調される変形となる。そこで、前記のとおりシリンダボアの仕上げ加工に際し、シリンダ部におけるボルト位相の部分について、そのシリンダボア側からの圧力に対する剛性を他の位相の部分に対して相対的に高くし、仕上げ加工による取り代を大きくすることで、仕上げ加工後の単品状態におけるシリンダボアに逆変形を付与することができる。そして、シリンダボアに逆変形が付与された状態のシリンダブロックに対してシリンダヘッドが組み付けられることにより、逆変形した状態のシリンダボアに対して組付け変形が生じる。また、エンジン実働時においては、逆変形した状態のシリンダボアに対して熱負荷による変形が生じる。結果として、エンジン実働時においてシリンダボアを真円となるようにすることができ、エンジン実働時におけるシリンダボアの真円度の向上が図れる。
以下、シリンダボアに対する仕上げ加工に際し、シリンダ部において、そのボルト位相の部分におけるシリンダボア側からの圧力に対する剛性を、他の位相の部分に対して相対的に高くした状態とする、本発明の各実施形態について説明する。
本発明の第一実施形態について、図1〜図4を用いて説明する。図1は本発明の第一実施形態に係るシリンダブロック等の構成を示す断面図、図2は本発明の第一実施形態に係るシリンダブロックを示す平面図、図3は押付コマおよび楔体の構成を示す断面図、図4は本発明の第一実施形態に係るシリンダブロックの加工フローを示すフロー図である。
図1および図2に示すように、本実施形態に係るシリンダブロック1は、その本体がアルミニウムを材料として構成され、締結部材(ヘッドボルト)によってシリンダヘッド(図示略)が固定されるシリンダヘッド取付面(以下「ヘッド取付面」という。)3と、このヘッド取付面3に開口しピストン(図示略)を摺動可能に内装する円柱状の孔部であるシリンダボア4と、このシリンダボア4を囲む壁状部分であるシリンダ部5を介してシリンダボア4を取り囲むように形成されヘッド取付面3に開口するウォータジャケット6とを有する。
図2に示すように、本実施形態に係るシリンダブロック1は、自動車等に搭載される直列4気筒のエンジンを構成するものであり、シリンダボア4を4個備え、これらは中心軸方向が平行となるように隣り合う状態で一列に配設される。
ヘッド取付面3は、シリンダブロック1の一側において平面として形成されるシール面であり、このヘッド取付面3に、ガスケットを介する等してシリンダヘッドが組み付けられる。ヘッド取付面3に対するシリンダヘッドの組付けに際しては、ヘッドボルト(図示略)が用いられる。つまり、図2に示すように、ヘッドボルトが、シリンダヘッドを貫通するとともにシリンダブロック1に設けられる雌ねじ部分となるボルト穴12に螺挿されることにより、シリンダヘッドがシリンダブロック1に対して締結固定される。
このシリンダヘッドのシリンダブロック1に対する固定に用いられる締結部としてのボルト締結部10、つまりヘッドボルトが螺挿されるボルト穴12は、ヘッド取付面3においてシリンダボア4の周囲に設けられる。本実施形態では、図2に示すように、シリンダボア4の周囲において略等間隔で4個設けられる。また、隣り合うシリンダボア4間においては2個のボルト穴12が共用される。つまり、本実施形態のように直列4気筒エンジンを構成するシリンダブロック1においては、一列に並んだ状態となる4個のシリンダボアに対し、計10個のボルト穴12が設けられる。
また、シリンダブロック1におけるヘッド取付面3と反対側には、図示せぬオイルパンが取り付けられる。以下、シリンダブロック1において、シリンダヘッドが組み付けられる側を「上」とし、その反対側を「下」とする。
シリンダボア4は、その中心軸方向を上下方向とし、前記のとおり一列に並んだ状態で4個配設される。シリンダボア4に内装されるピストンには、ピストンリングが装着され、このピストンリングを介してピストンがシリンダボア4内を上下方向に往復摺動する。
各シリンダボア4におけるピストンよりも上側の空間は、燃料および空気の混合気を燃焼するための燃焼室の一部を構成する。シリンダボア4は、前記混合気や燃焼によって生じたガスの機密を保つため、ホーニング加工等の仕上げ加工により、所定の真円度を有する円筒面に形成される。すなわち、シリンダブロック1が用いられて製造されるエンジンの実働時には、前記燃焼室における混合気の爆発・燃焼によりビストンが往復摺動し、これにより、ピストンとコンロッド(連接棒)を介して連結されるクランク軸(出力軸)が回転する。
シリンダボア4は、シリンダブロック1において各シリンダボア4に対応するように略筒状に形成されるシリンダ部5の内周面側に、鋳鉄を材料として円筒状に構成されるシリンダライナ9が、鋳ぐるみや圧入等によって内装されることで形成される。つまり、シリンダライナ9の内周面が、シリンダボア4を形成し、ピストンの摺動面となる。
なお、本実施形態では、シリンダボア4は、シリンダライナ9が用いられて形成される構成であるが、例えばシリンダブロックが鋳鉄等の鉄系材料で構成される場合など、シリンダボアがシリンダブロックの構造体に対して直接形成される構成であってもよい。
ウォータジャケット6は、冷却水の通路であり、シリンダブロック1の鋳造に際して4個のシリンダボア4を取り囲むように形成される。ウォータジャケット6は、シリンダボア4に対してシリンダ部5を介して設けられる。
シリンダ部5は、シリンダボア4の周囲、つまりシリンダライナ9の周囲においてシリンダボア4を取り囲むように形成される円筒状の壁状部分であり、図2に示すように、隣り合うシリンダボア4に対しては円筒状の部分が繋がった状態となる。
すなわち、ウォータジャケット6は、シリンダ部5の外周面(ウォータジャケット6の内側面)と、これに対向するように形成される外周壁面(ウォータジャケット6の外側面)とにより、ヘッド取付面3側に開口するように形成される。つまり、本実施形態のシリンダブロック1は、ウォータジャケット6がヘッド取付面3側に開放されているオープンデッキ型の構造となっている。このウォータジャケット6により、シリンダ部5を介してシリンダボア4等が冷却される。
以上のような構成を備える本実施形態のシリンダブロック1において、そのシリンダボア4に対する仕上げ加工を行うに際し、シリンダ部5において、そのボルト位相の部分におけるシリンダボア4側からの圧力に対する剛性を、他の位相の部分に対して相対的に高くした状態とする。
すなわち、以下に説明するシリンダブロック1の加工方法においては、ウォータジャケット6の内側面を形成するシリンダ部5の外周面(以下「シリンダ部外周面」とする。)15のうち、シリンダボア4の円周形状におけるヘッドボルトによる締結部(ボルト締結部10)に対応する位相の部分を押圧することにより、シリンダ部5における、前記押圧した部分のシリンダボア4側からの圧力に対する剛性を、他の部分に対して高めた状態で、シリンダボア4に対する仕上げ加工を行う。
本実施形態に係るシリンダブロック1の加工方法においては、図1〜図3に示すように、シリンダ部外周面15におけるボルト位相の部分に対する押圧を行うため、互いに離間可能に連結される押圧部21・22を有しこれら押圧部21・22同士が離間する方向の楔作用を受ける楔面23を有する押圧部材としての押付コマ20と、楔面23に係合して楔作用を与える楔部材としての楔体30とを用いる。
そして、押圧部21・22同士が離間する方向に、シリンダ部外周面15におけるボルト位相の部分に対する押圧方向が含まれるとともに、ウォータジャケット6のヘッド取付面3に対する開口部側(上側、以下「ジャケット開口部側」という。)からの押付けによって楔作用が得られる姿勢で、ウォータジャケット6におけるボルト位相の部分に挿入した状態の押付コマ20に対し、楔体30を係合させた状態で、ジャケット開口部側から押し付けて楔作用を得ることにより、シリンダ部外周面15におけるボルト位相の部分に対する押圧を行う。
押付コマ20は、シリンダブロック1のシリンダ部5に対して押圧作用することができる程度の剛性を有するように構成される。したがって、シリンダブロック1の本体を構成する材料がアルミニウムであるのに対し、押付コマ20を構成する材料としては、例えば鉄系の材料が用いられ、押付コマ20はシリンダブロック1の本体よりも高い剛性を有する構成とされる。
図3に示すように、押付コマ20は、互いに離間可能に連結された状態となる2つの押圧部21・22を有する。これら押圧部21・22は、いずれも板状部分として構成され、互いに対向した状態でその一端側が連結部24により連結された状態となる。そして、押圧部21・22同士は、連結部24により一端側が連結された状態でその連結部24の弾性的な変形によって、互いに離間するように構成される。つまり、押付コマ20は、押圧部21・22の他端側(連結部24側と反対側、以下「開口側」とする。)から広がるように構成されている。この押付コマ20の広がりにより、シリンダ部外周面15における所定の部分が押圧される。
押付コマ20は、ウォータジャケット6に挿入可能な形状・大きさを有し、連結部24側から(連結部24側を先端側として)ウォータジャケット6に挿入される。そして、押付コマ20は、ウォータジャケット6に挿入された状態で、外周面がウォータジャケット6の形成面に対して略接した状態(わずかな隙間を有する状態)となる。
したがって、押付コマ20は、押圧部21・22が、ウォータジャケット6を形成する壁面に沿う湾曲形状を有し、連結部24が、ウォータジャケット6の底部の形状に沿う形状を有することにより、全体としてウォータジャケット6の形状に沿う形状を有する。
前記のとおり押付コマ20は、その押圧部21・22が互いに離間することで開口側から広がる構成となっており、その広がる方向(離間する方向)に、シリンダ部外周面15に対する押圧方向が含まれるようにウォータジャケット6内に挿入される。つまり、押付コマ20は、そのウォータジャケット6に対する挿入状態で、一方の押圧部21がウォータジャケット6の内側に位置し、他方の押圧部22がウォータジャケット6の外側に位置した状態となる。したがって、押付コマ20は、内側の押圧部21(以下「内側押圧部21」ともいう。)の外周面21aが、シリンダ部外周面15に対向する(略接する)とともに、外側の押圧部22(以下「外側押圧部22」ともいう。)の外周面22aが、ウォータジャケット6の外側面(以下「ジャケット外側面」とする。)16に対応する(略接する)ように、ウォータジャケット6内に挿入される。
これにより、押付コマ20の広がる方向(内側押圧部21と外側押圧部22とが離間する方向)に、シリンダ部外周面15に対する押圧方向が含まれる。つまり、ウォータジャケット6内の押付コマ20が広がる(内側押圧部21と外側押圧部22とが離間する)ことにより、外側押圧部22(の外周面22a)によってジャケット外側面16が押圧されるとともに、内側押圧部21(の外周面21a)によってシリンダ部外周面15が押圧されることとなる。
また、押付コマ20は、楔面23を介して押圧部21・22同士が離間する方向の楔作用を受けるところ、この楔作用が得られる姿勢(以下「挿入姿勢」とする。)で、ウォータジャケット6内に挿入される。
押付コマ20は、その楔面23に係合(楔係合)した状態の楔体30が開口側から押し付けられることによって楔作用を得る。すなわち、押付コマ20が有する楔面23は、内側押圧部21と外側押圧部22との間に形成され、連結部24側にかけて徐々に狭くなる略V字形状の面である。具体的には、楔面23は、内側押圧部21における外側押圧部22側に形成される斜面21bと、外側押圧部22における内側押圧部21側に形成される斜面22bとにより略V字形状に形成される。
押付コマ20の楔面23に対し、楔体30が係合する。楔体30は、内側押圧部21の斜面21bに対応する第一の斜面31aと、外側押圧部22の斜面22bに対応する第二の斜面32aとにより、楔面23の略V字形状に対応するV字形状を有し、各斜面31a・32aを押付コマ20側の斜面21b・22bにそれぞれ接触させることにより、押付コマ20に係合する。そして、押付コマ20に係合した状態の楔体30が、押付コマ20の開口側から押し付けられることにより、押付コマ20が楔作用を得る。この楔作用により、シリンダ部外周面15における所定の部分が押圧される。
つまり、押付コマ20が得る楔作用とは、押付コマ20がその開口側から広がる(内側押圧部21と外側押圧部22とが離間する)という作用であり、かかる作用により、シリンダ部外周面15における所定の部分が押圧される。
このように、押付コマ20は、その挿入姿勢として、開口側がジャケット開口部側となる姿勢で、ウォータジャケット6に挿入される。
なお、押付コマ20における楔面23の下方(連結部24側)には、押付コマ20の広がり(内側押圧部21と外側押圧部22との離間)、つまり楔体30の押付けにともなう楔体30の移動を許容するための凹部25が設けられている。
また、押付コマ20と楔体30との間には、必要に応じて、楔体30が係合した状態の押付コマ20が、ウォータジャケット6の形状に沿って移動することを防止するためのずれ防止機構が設けられる。
また、押付コマ20によるシリンダ部外周面15に対する押圧力は、楔面23の角度や楔体30を押し付ける力の大きさ等によって調節される。
上述のような押付コマ20が楔作用を得ることによるシリンダ部外周面15に対する押圧は、シリンダ部外周面15におけるボルト位相の部分に対して行われる。つまり、押付コマ20は、ウォータジャケット6におけるシリンダ部外周面15のボルト位相の部分に対応する位置に挿入されるとともに、シリンダ部外周面15に接触することとなる内側押圧部21の外周面21aは、シリンダ部外周面15におけるボルト位相の部分に対応する大きさ(面積)を有する。
ここで、ボルト位相とは、シリンダボア4の円周形状における(円周形状に対する)ボルト締結部10に対応する位相であり、シリンダボア4の円周形状における「位相」とは、次のとおりである。すなわち、円柱状の孔部であるシリンダボア4は、その中心軸方向視で円周形状となる。このシリンダボア4の円周形状においては(円周形状に対しては)、中心軸の位置を中心とした円周上における角度が定まる。この角度(角度範囲)が、シリンダボア4の円周形状における「位相」となる。
したがって、ボルト位相とは、図2において一番左側のシリンダボア4について示すように、シリンダボア4が円周形状となるその中心軸方向視において、中心軸の位置Cを中心とする円周上における角度について、中心(位置C)からボルト締結部10およびその近傍部分を含む方向の所定の角度範囲α1となる。本実施形態のように、ボルト締結部10がシリンダボア4の周囲において略等間隔で4個設けられる構成においては、前記のようなボルト締結部10に対応する位相(角度範囲α1)が、各シリンダボア4において4ヶ所存在することとなる。
以下では、ボルト位相に対し、それ以外の位相(他の位相)を「非ボルト位相」とする。
また、押付コマ20によるシリンダ部外周面15に対する押圧部分について、その高さ(上下方向の長さ)範囲は、ウォータジャケット6内に挿入された状態の押付コマ20の高さ(上下方向の長さ)に相当する。つまり、図3において符号D1で示す矢印範囲が、押付コマ20の高さに相当し、内側押圧部21の外周面21aがシリンダ部外周面15に接触する部分となる。そして、この内側押圧部21の外周面21aがシリンダ部外周面15に接触する部分が、押付コマ20によるシリンダ部外周面15に対する押圧部分についての高さ範囲となる。
なお、押付コマ20によるシリンダ部外周面15に対する押圧部分の高さ範囲、即ち押付コマ20の高さは、シリンダブロック1の形状等に応じて適宜設定される。
このように、シリンダ部外周面15において、内側押圧部21の外周面21aが接触する部分となる、押付コマ20によって押圧される所定の部分とは、ボルト位相(角度範囲α1参照)の部分であって、ウォータジャケット6に挿入された状態の押付コマ20の高さ(符号D1参照)に相当する高さ範囲の部分となる。
そして、この押付コマ20によって押圧されるシリンダ部外周面15における部分が、シリンダボア4側からの圧力に対する剛性が高められる部分となる。
以上のように、本実施形態に係るシリンダブロック1の加工方法では、押付コマ20と楔体30とを用いることにより、シリンダ部外周面15におけるボルト位相の部分に対する押圧を行い、シリンダ部5における、前記押圧した部分のシリンダボア4側からの圧力に対する剛性を、他の部分に対して高めた状態で、シリンダボア4に対する仕上げ加工を行う。
これにより、シリンダブロック1のシリンダボア4に対する仕上げ加工に際し、ダミーヘッド等の加工用治具を用いることで生じる加工工程の複雑化や高コスト化を招くことなく、仕上げ加工後にシリンダボア4に対してエンジン実働時に生じるボア変形と逆方向の変形を付与することができ、エンジン実働時におけるシリンダボア4の真円度の悪化を抑制することができる。
すなわち、シリンダ部外周面15におけるボルト位相の部分を押圧することにより、その押圧した部分のシリンダ部5のシリンダボア4側からの圧力に対する剛性を高くした状態で、シリンダボア4に対する仕上げ加工を行うことで、押圧した部分であるボルト位相の部分において、加工にともなうシリンダボア4側からの圧力(例えばホーニング加工における砥石からの面圧(押圧負荷))に対する面圧が大きくなり、シリンダボア4を形成する壁面における加工による取り代(研削量)が大きくなる。
言い換えると、剛性が高められていない非ボルト位相の部分は、加工にともなうシリンダボア4側からの圧力に対する面圧が小さくなり、その圧力に対して弾性変形して逃げるような状態となり、加工による取り代が小さくなる。これに対し、シリンダ部外周面15側からの押圧によって剛性が高められたボルト位相の部分は、加工にともなうシリンダボア4側からの圧力に対して弾性変形して逃げることが防止され、加工による取り代が大きくなる。
この結果、加工後のシリンダブロック1においては、シリンダボア4において、押付コマ20によって押圧されていたボルト位相の部分が広がるという、逆変形が生じた状態が得られる(図13におけるシリンダボア104参照)。
そして、シリンダボア4に逆変形が生じているシリンダブロック1に対し、シリンダヘッドがボルト締結によって組み付けられ、エンジン実働時において熱負荷がかかることにより、エンジン実働時におけるボア変形によってシリンダボア4を真円となるようにすることができる。つまり、エンジン実働時におけるシリンダボア4の真円度の悪化を抑制することができる。
したがって、ボルト位相について前記所定の角度範囲α1については、その角度の大きさは特に限定されるものではないが、シリンダヘッド組付け時の組付け変形やエンジン実働時のボア変形に際し、シリンダボア4においてヘッドボルトの締結によるボルト軸力や熱応力によって内側に窄む部分に対応する角度範囲として設定される。
前述したように、本実施形態のシリンダブロック1においては、ある1つのシリンダボア4に対してその周囲に略等間隔で4個のボルト締結部10(ボルト穴12)が設けられる。これに対し、各ボルト締結部10に対応するボルト位相の部分において、押付コマ20がウォータジャケット6内に挿入されて配置される。そして、あるシリンダボア4に対して仕上げ加工が行われる際には、少なくともその加工対象であるシリンダボア4の周囲に配置される4個の押付コマ20は、楔体30からの押付けを受けている必要がある。つまり、加工対象であるシリンダボア4における4つのボルト位相の部分について、シリンダ部外周面15側からの押圧によって剛性が高められることにより、そのシリンダボア4において逆変形を生じさせることができる。
そこで、本実施形態のように、押付コマ20と楔体30とを用いるシリンダブロック1の加工方法においては、複数あるボルト締結部10それぞれに対応する、ウォータジャケット6におけるボルト位相の部分に、挿入姿勢で挿入された状態の押付コマ20それぞれに対して係合する、複数の楔体30を、前記挿入された状態の押付コマ20の配置に対応する配置状態で一体に連結することとしている。
そして、図2に示すように、本実施形態では、前述したようにシリンダブロック1が10個のボルト締結部10を有し、これらのボルト締結部10に対応するボルト位相の部分に対して、計10個の押付コマ20が配置されるが、これら10個の押付コマ20に対して係合する10個の楔体30を、挿入姿勢で挿入された状態の押付コマ20の配置状態で一体に連結している。
楔体30の連結には、連結部材としての連結リング33が用いられる。連結リング33は、10個の楔体30を一体に連結する一体の部材として構成され、ウォータジャケット6の形状に沿う形状を有する。
すなわち、楔体30は、押付コマ20に対してジャケット開口部側から押し付けられて作用するところ、楔体30を一体に連結する連結リング33は、ウォータジャケット6に対してジャケット開口部側(ヘッド取付面3側)からの挿入が可能な形状となる。
したがって、図2に示すように、本実施形態における連結リング33は、シリンダブロック1において4個のシリンダボア4を取り囲むように形成されるウォータジャケット6に沿うように、各シリンダボア4に対応する円筒状部33aを4つ有するとともに、隣り合うシリンダボア4に対応する円筒状部33a同士が繋がった状態となる1つの閉じた形状を有する。
かかる形状を有する連結リング33の下端側(ウォータジャケット6に対する挿入先端側)に、棒状部33bを介して楔体30が連結される。つまり、連結リング33においては、そのウォータジャケット6に対する挿入状態で、10個の押付コマ20の配置状態に対応する位置に、棒状部33bが設けられ、この棒状部33bの下端側に楔体30が連結される。
なお、連結リング33による楔体30の一体的な連結構成は、本実施形態に限定されるものではない。
例えば、連結リング33による楔体30の一体的な連結構成としては、楔体30が、その径方向の断面形状が押付コマ20の楔面23に対応するV字形状となるような環状の一部分として構成されるとともに、この環状の一部分の形状を有する楔体30と連結リング33とが、全体として円筒状部同士が繋がった状態となる1つの閉じた形状となるような構成、つまり、連結リング33を構成する各円筒状部33aが、その筒軸方向一側から延設され、その延設部に楔体30が形成される構成であってもよい。
また、連結リング33によって一体に連結されている各楔体30に対し、押付コマ20を、その対応する楔体30に対して、この楔体30が係合可能な状態で支持させる。
図3に示すように、押付コマ20の楔体30に対する支持状態では、連結リング33によって棒状部33bの先端部に連結された状態の楔体30が、押付コマ20において内側押圧部21と外側押圧部22との間に介装された状態となる。そして、この押付コマ20の楔体30に対する支持状態では、楔体30が押付コマ20に対して係合可能な状態となる。つまり、ここでいう楔体30について係合可能な状態とは、楔体30が内側押圧部21と外側押圧部22との間に介装され、楔体30の第一の斜面31aが内側押圧部21の斜面21bに、同じく第二の斜面32aが外側押圧部22の斜面22bに、それぞれ対向した状態であり、楔体30が押付コマ20に対して押し付けられることで押付コマ20に対して係合可能な状態である。
楔体30に対して支持される押付コマ20は、連結リング33により連結された状態の楔体30に対し、係止された状態となる。
つまり、押付コマ20の開口側において、内側押圧部21と外側押圧部22との間に、楔体30が開口側から抜けることを規制するとともに楔体30に対する棒状部33bの連結を許容する間隙26が設けられる。この間隙26が設けられることにより、押付コマ20が連結リング33により連結された状態の楔体30に対して係止された状態となる。
なお、連結リング33により連結された状態の楔体30に対して支持される各押付コマ20は、全ての押付コマ20が各配置位置でウォータジャケット6に挿入された状態で、押圧部21・22同士が離間する方向に、シリンダ部外周面15におけるボルト位相の部分に対する押圧方向が含まれるように支持される。
以上のように、本実施形態においては、ウォータジャケット6における各ボルト位相の部分に挿入される10個の押付コマ20は、連結リング33によって一体に連結される10個の楔体30それぞれに対して支持されることにより、全てアッセンブリの状態とされている。
そして、このアッセンブリの状態の押付コマ20および楔体30を含む構成を、各押付コマ20がウォータジャケット6におけるボルト位相の部分に位置するように挿入し、その挿入した状態で、連結リング33を下側(押付コマ20側)に押し付けることにより、複数の楔体30を連動させて、これら複数の楔体30のジャケット開口部側からの押付けを行う。
このように、複数の押付コマ20に対応する楔体30を一体に連結するとともに、各楔体30に対して押付コマ20を支持させることで、ウォータジャケット6の所定の位置に配置される全ての押付コマ20を、各押付コマ20に対応する楔体30を含めてアッセンブリの状態とする。これにより、シリンダボア4に対する仕上げ加工に際し、押付コマ20のウォータジャケット6に対する挿入が容易となり、シリンダボア4の仕上げ加工についての作業性を向上することができ、シリンダブロック1の生産性の向上を図ることができる。
以上のように、本実施形態においては、シリンダボア4に対する仕上げ加工に際して用いるシリンダブロック1の加工用治具は、互いに離間可能に連結される内側押圧部21および外側押圧部22を有しこれら押圧部21・22同士が離間する方向の楔作用を受ける楔面23を有する押付コマ20と、楔面23に係合して楔作用を与える楔体30とを備える。そして、本加工用治具は、押圧部21・22同士が離間する方向に、シリンダ部外周面15のうち、ボルト位相の部分に対する押圧方向が含まれるとともに、挿入姿勢で、ウォータジャケット6におけるボルト位相の部分に挿入された状態の押付コマ20に対し、楔体30が係合した状態で、ジャケット開口部側から押し付けられて前記楔作用を得ることにより、シリンダ部外周面15におけるボルト位相の部分に対する押圧を行う。
また、本実施形態に係るシリンダブロック1の加工用治具は、複数あるボルト締結部10それぞれに対応する、ウォータジャケット6におけるボルト位相の部分に、挿入姿勢で挿入された状態の押付コマ20それぞれに対して係合する、複数の楔体30を備えるとともに、これら複数の楔体30を、前記挿入された状態の押付コマ20に対応する配置状態で一体に連結する連結リング33を備える。そして、本加工用治具は、押付コマ20が、その対応する楔体30に対して、この楔体30が係合可能な状態で支持される構成となっている。
ところで、本実施形態においては、シリンダボア4に対する仕上げ加工として、シリンダボア4について所定の真円度を得るためのホーニング加工を行う。
すなわち、本実施形態に係るシリンダブロック1の加工方法においては、シリンダボア4に対する仕上げ加工は、ホーンヘッド(「ホーニングヘッド」とも称される。)41と、ホーンガイド42とを備える構成が用いられて行われるホーニング加工である。ホーンヘッド41は、ホーニング用の砥石43を有しシリンダボア4に対して移動することでシリンダボア4に対して砥石43を作用させるヘッド部として機能する。ホーンガイド42は、ヘッド取付面3に対して近接離間移動可能に設けられホーンヘッド41を案内するガイド部として機能する。
ホーニング加工は、ホーニング加工装置によって行われる。かかる装置には、ホーンヘッド41とホーンガイド42とを有する構成のホーニング手段が備えられる。このホーニング手段が用いられて、シリンダボア4を形成する壁面に対する研削が行われる。
ホーンヘッド41は、全体として略円柱状に構成され、その外周面部に砥石43を有する。ホーンヘッド41は、図示せぬ駆動手段によって上下方向の移動(軸方向の移動)および軸心を回転軸とする回転が可能に設けられる主軸44の先端部(下端部)に構成される。つまり、ホーンヘッド41は、主軸44を介して上下運動(軸方向の運動)および回転運動が可能な状態で設けられる。
ホーンヘッド41が有する砥石43は、ホーンヘッド41の外周面部において例えば周方向に等間隔を隔てた状態で環状に配設される。
砥石43は、例えば、ホーンヘッド41内において構成される、主軸44と同軸に設けられるロッド部材の軸方向の移動を砥石43の径方向の移動に変換するためのテーパ面を備えるような周知の機構が用いられ、前記テーパ面によるテーパ作用等によって径方向外側に変位可能に構成される。すなわち、砥石43は、シリンダボア4に対するホーニング加工に際しては、径方向外側の変位によりシリンダボア4の壁面に対して圧接した状態で、ホーンヘッド41の回転運動等にともなってシリンダボア4の壁面に対して作用する。
ホーンガイド42は、ホーンヘッド41のシリンダボア4に対する位置決め等を行うための構成である。ホーンガイド42は、主軸44を含めたホーンヘッド41の上下運動等を許容するためのガイド孔42aを有し、シリンダボア4に対するホーンヘッド41の上下運動等を案内する。
このホーンガイド42は、シリンダブロック1のヘッド取付面3に対する近接離間方向、つまり上下方向に移動可能に設けられる。
そして、ホーニング加工に際しては、シリンダボア4に対して所定の位置で位置決めされた状態のホーンガイド42によってホーンヘッド41が案内され、このホーンヘッド41の回転運動等によって砥石43によりシリンダボア4の壁面が研削加工される。
つまり、ホーニング加工中は、ホーンガイド42が、そのヘッド取付面3に対する近接離間方向において所定の位置に停止した状態、つまりヘッド取付面3に対して所定の距離を隔てた状態となり、かかる状態のホーンガイド42によってホーンヘッド41が案内される。
このような構成によってホーニング加工を行うに際し、押付コマ20に楔体30を押し付けることよってシリンダ部外周面15におけるボルト位相の部分に対する押圧を行うため、次のような方法を用いる。
すなわち、ホーンガイド42に、楔体30を連結し、楔体30のジャケット開口部側からの押付けを、ホーンガイド42のヘッド取付面3に対する近接動作を用いて行う。
楔体30をホーンガイド42に連結するための構成は、特に限定されるものではないが、前述したように、複数(本実施形態では10個)の楔体30が連結リング33によって一体に連結される本実施形態においては、連結リング33がホーンガイド42に取り付けられることで、楔体30がホーンガイド42に連結される。
連結リング33のホーンガイド42に対する取付方法は、特に限定されるものではないが、例えば、図1および図3に示すように、連結リング33の上端部(楔体30と反対側端部)にフランジ部33cが形成され、このフランジ部33cを介して連結リング33がホーンガイド42に取り付けられる。つまり、フランジ部33cが、ホーンガイド42においてシリンダブロック1のヘッド取付面3に対向する面(下側面)となるブロック側面42bにボルト締結等が用いられて固定されることにより、連結リング33がホーンガイド42に取り付けられる。
このように、楔体30をホーンガイド42に連結することにより、ホーンガイド42のヘッド取付面3に対する近接移動の動作を用いて、楔体30のジャケット開口部側からの押付けを行う。
したがって、連結リング33の上下方向の長さは、ホーンガイド42が、ホーニング加工中に停止した状態となる、ヘッド取付面3に対する近接離間方向における所定の位置にある状態で、押付コマ20が楔作用を得ることでシリンダ部外周面15に対する所望の押圧力が得られるように、楔体30が押し付けられる状態となるような長さに設定される。
このように、シリンダボア4に対する仕上げ加工であるホーニング加工を行うための構成であるホーンガイド42に楔体30を連結し、楔体30の押付コマ20に対する押付けにホーンガイド42の動作を用いることにより、楔体30の押付コマ20に対する押付けに際してホーニング加工についての既存の構成およびその動作を用いることができ、楔体30を押し付けるための構成を別途設ける必要がなくなる。これにより、装置構成の簡略化や作業性の向上が図れる。
なお、本実施形態では、楔体30の押付コマ20に対する押付けにホーンガイド42の動作を用いることとしているが、ホーンガイド42の動作を用いることなく、楔体30を押し付けるための構成を別途設け、その構成を押付コマ20に対して楔体30を押し付けるための手段として用いてもよい。
すなわち、楔体30のジャケット開口部側からの押付けを行うための荷重を付与するための荷重付与手段としては、シリンダボア4に対する仕上げ加工のためのホーニング手段とは別途に設けられ、油圧やモータ駆動力等によって楔体30に荷重を付与する構成であってもよい。
以上説明した本実施形態におけるシリンダブロック1の加工方法についての加工フローを、図4に示すフロー図を用いて説明する。なお、以下では、連結リング33によって連結されている楔体30とこれら楔体30にそれぞれ支持されている押付コマ20とを含みアッセンブリの状態となっている構成を「押付コマアッセンブリ」とする。
まず、押付コマアッセンブリをウォータジャケット6に挿入する(ステップ(以下「S」と略す)10)。つまり、シリンダボア4に対するホーニング加工前に、押付コマアッセンブリにおける各押付コマ20を、ウォータジャケット6における各ボルト位相の部分に挿入した状態とする。
次に、ホーンガイド42を下降させることにより、押付コマアッセンブリに対する押付けを行う(S20)。つまり、ホーンガイド42の下降にともない、連結リング33を介して各楔体30をジャケット開口部側から押し付け、各押付コマ20に対して楔作用を与える。
これにより、シリンダ部外周面15におけるボルト位相の部分が押圧され、この押圧された部分に対応するシリンダ部5の部分の、シリンダボア4側からの圧力に対する剛性が他の部分に対して相対的に高められた状態となる。
シリンダ部5におけるボルト位相の部分のシリンダボア4側からの圧力に対する剛性を高めた状態で、シリンダボア4に対してホーニング加工を行う(S30)。つまり、ホーンガイド42による案内をともなうホーンヘッド41をシリンダボア4内に挿入させ、その回転運動等によって砥石43をシリンダボア4の壁面に作用させて研削加工を行う。
この際、シリンダ部5のボルト位相の部分は、押付コマ20からの押圧によって、シリンダボア4側からの圧力となる砥石43からの面圧に対する剛性が高められた状態であるため、その部分のシリンダボア4の壁面については、他の部分に対して相対的に砥石43の面圧が高くなり、ホーニング加工による取り代(研削量)が大きくなる。これにより、シリンダボア4に対して逆変形を生じさせる。
ホーニング加工終了後、ホーンガイド42を上昇させる(S40)。つまり、ホーンヘッド41を上昇させてシリンダボア4内から取り出した後、ホーンガイド42をシリンダブロック1のヘッド取付面3に対して離間する方向に移動させる。
その後、必要に応じて押付コマアッセンブリをホーンガイド42から取り外す(S50)。
これにより、シリンダボア4に対するホーニング加工の完了とともに、シリンダボア4に対して逆変形を付与するための加工が完了する(S60)。
本発明の第二実施形態について、図5および図6を用いて説明する。図5は本発明の第二実施形態に係る加工用治具等の構成を示す図、図6はシリンダボアの加工に際して楔体に付与する荷重の変化を示す図である。なお、以下に説明する各実施形態においては、前述した第一実施形態と共通する部分については、同一の符号を用いる等して適宜その説明を省略する。
本実施形態に係るシリンダブロック1の加工方法においては、複数あるボルト締結部10それぞれに対応する、ウォータジャケット6におけるボルト位相の部分に、挿入姿勢で挿入された状態の押付コマ20それぞれに対して係合する、複数の楔体30それぞれに対して、この楔体30のジャケット開口部側からの押付けを行うための荷重(以下「押付け荷重」という。)を付与する荷重付与手段が設けられている。すなわち、本実施形態では、シリンダブロック1において各ボルト位相の部分に挿入される押付コマ20に係合する楔体30それぞれに対して、押付コマ20に楔作用を与えるための荷重を付与するための手段が独立に設けられている。
そして、前記荷重付与手段により複数の楔体30に付与される押付け荷重が均一とされる。
本実施形態では、押付け荷重として、流体圧の一例である油圧が用いられる。すなわち、図5に示すように、本実施形態に係る荷重付与手段は、油圧により少なくとも楔体30のジャケット開口部側からの押付け方向(下方向、以下単に「押付け方向」ともいう。)に付勢可能に設けられる流体圧伝達部材としてのピストンロッド71を含む。
そして、油圧が、ピストンロッド71を介して楔体30に伝達されることにより、楔体30に押付け荷重が付与されるとともに、油圧の調整により、複数の楔体30に付与される押付け荷重が均一とされる。
図5に示すように、ピストンロッド71は、全体として略棒状の部材であり、ウォータジャケット6に挿入可能な径を有する棒状の部分であるロッド部71aと、このロッド部71aの一端部(上端部)に設けられロッド部71aに対して拡径部分となるピストン部71bとを有する。ピストンロッド71は、その一側端部が油圧室72に内装された状態で上下方向に摺動可能に支持されることにより、前記のとおり油圧によって少なくとも下方向に付勢可能に設けられる。つまり、ピストンロッド71が有するピストン部71bは、油圧室72を形成する側壁面に対して摺動可能な形状を有する栓状の部分となる。このように、油圧室72は、ピストンロッド71を押付け方向を含む所定の摺動方向(上下方向)に移動可能に支持するとともに油圧をピストンロッド71に作用させる流体圧室として機能する。
ピストンロッド71は、油圧室72において受ける油圧を、押付け荷重として楔体30に伝達する。すなわち、ピストンロッド71においては、ロッド部71aの他端部(下端部)側に、一体的にあるいは別体として(連結された状態で)、楔体30が設けられる。この楔体30に対して、押付コマ20が支持される。そして、ピストンロッド71が、油圧室72においてピストン部71bを介して油圧を受けることで下方向に付勢されることにより(矢印F1参照)、楔体30が押付け荷重を受け、その楔体30が係合する押付コマ20に楔作用が与えられる。この楔作用を得た押付コマ20により、シリンダ部外周面15における所定の部分が押圧される(矢印N1参照)。
つまりは、ウォータジャケット6におけるボルト位相の部分に挿入された状態の押付コマ20が、油圧室72における油圧をピストンロッド71を介して押付け荷重として受けた楔体30から楔作用を得ることにより、内側押圧部21と外側押圧部22とが互いに離間する(図3参照)。これにより、外側押圧部22の外周面22aによってジャケット外側面16が押圧されるとともに、内側押圧部21の外周面21aによってシリンダ部外周面15が押圧されることとなる(矢印N1参照)。
このように、本実施形態においては、楔体30に押付け荷重を付与する荷重付与手段として、ピストンロッド71と油圧室72とにより、油圧シリンダ機構が構成される。このピストンロッド71と油圧室72とにより構成される油圧シリンダ機構が、シリンダブロック1においてボルト位相の部分に挿入される押付コマ20に係合する楔体30それぞれに対して設けられる。したがって、シリンダブロック1においてボルト位相の部分が10箇所となる本実施形態では、各楔体30に対する荷重付与手段としての油圧シリンダ機構が、10箇所設けられることとなる。
そして、前記のような油圧シリンダ機構によって各楔体30に付与される押付け荷重が、全ての楔体30について均一とされる。つまり、楔体30に対する押付け荷重の付与に際してピストンロッド71に対して与えられる油圧(矢印F1参照)が、全ての油圧室72において一定となるように、油圧室72における油圧が調整される。
本実施形態では、油圧室72における油圧の調整に際し、次のような構成が用いられる。ピストンロッド71と油圧室72とにより構成される油圧シリンダ機構は、ピストンロッド71のロッド部71aが油圧室72の一側(下側)から突出する片ロッド型の複動シリンダとして構成される。すなわち、油圧室72においては、ピストンロッド71が有するピストン部71bを介して上下二つの油圧室72a、72bが形成され、各油圧室72a、72bに、油の出入口が設けられる。そして、各油圧室72a、72bの油の出入口が、回路の切換えによって油の入口または出口となることで、ピストンロッド71の上下方向についての往復動(下降および上昇)が行われる。
したがって、油圧室72においてピストン部71bよりも上側の油圧室72aに圧油が供給されることにより、ピストンロッド71が下降し(押付け方向に付勢され)、楔体30に対する押付け荷重の付与が行われる。一方、油圧室72においてピストン部71bよりも下側の油圧室72bに圧油が供給されることにより、ピストンロッド71が上昇する(押付け方向と反対方向に付勢される)。以下の説明では、圧油が供給されることでピストンロッド71が下降することとなるピストン部71bよりも上側の油圧室72aを「下降油圧室72a」とし、圧油が供給されることでピストンロッド71が上昇することとなるピストン部71bよりも下側の油圧室72bを「上昇油圧室72b」とする。
下降油圧室72aおよび上昇油圧室72bに対する圧油の供給の切換え(回路の切換え)に際しては、電磁切換弁73が用いられる。電磁切換弁73は、いわゆるソレノイド操作切換弁として構成されるものであり、所定の制御信号(電気信号)によってリレーを介して操作されるソレノイド(電磁石)と、このソレノイドの力で動かされるスプールとを有し、スプールの動作によって油圧回路の流路の切換え等を行う。つまり電磁切換弁73は、OCV(オイルコントロールバルブ)と呼ばれる弁機構として構成される。この電磁切換弁73により、下降油圧室72aおよび上昇油圧室72bに対する圧油の供給の調整(流路の切換えおよび油量の調整)、つまり下降油圧室72aおよび上昇油圧室72bそれぞれの油圧についての昇圧・減圧が行われる。
すなわち、油圧室72に対しては、図示せぬオイルタンク内の油が、油圧ポンプ74によって供給され、その油圧室72における下降油圧室72aおよび上昇油圧室72bに対する圧油の供給の調整が、油圧ポンプ74と油圧室72との間に介在する電磁切換弁73により行われる。具体的には、電磁切換弁73は、油圧ポンプ74による油の供給を受けるポートと、下降油圧室72aに接続されるポートと、上昇油圧室72bに接続されるポートと、その他ドレン用のポートとを有する。そして、油圧ポンプ74による油の供給を受けるポートは、油圧ポンプ74を介してオイルタンクに接続される。また、下降油圧室72aに接続されるポートは、油路(以下「第一油路」という。)75aを介して下降油圧室72aが有する油の出入口に接続され、上昇油圧室72bに接続されるポートは、油路(以下「第二油路」という。)75bを介して上昇油圧室72bが有する油の出入口に接続される。
このような油圧回路構成において、電磁切換弁73により切り換えられる回路状態として、少なくとも次の二つの状態が含まれる。一つは、油圧ポンプ74によって供給される油が電磁切換弁73を介して第一油路75aから下降油圧室72a内に供給されるとともに、上昇油圧室72b内の油が第二油路75bから電磁切換弁73を介して排出される状態(第一の状態)である。もう一つは、油圧ポンプ74によって供給される油が電磁切換弁73を介して第二油路75bから上昇油圧室72b内に供給されるとともに、下降油圧室72a内の油が第一油路75aから電磁切換弁73を介して排出される状態(第二の状態)である。つまり、第一の状態においては、ピストンロッド71は下降し、第二の状態においては、ピストンロッド71は上昇する。
また、下降油圧室72aおよび上昇油圧室72bそれぞれに対して、油圧センサ76a、76bが設けられる。本実施形態では、下降油圧室72aの油圧を検出するための油圧センサ76aは、第一油路75aにおいて設けられ、上昇油圧室72bの油圧を検出するための油圧センサ76bは、第二油路75bにおいて設けられる。
以上のような油圧回路構成により、楔体30に付与される押付け荷重が均一となるように、油圧室72における油圧の調整が行われる。すなわち、油圧センサ76a、76bによりセンシングされる下降油圧室72aおよび上昇油圧室72bの油圧についての検出値に基づいて、楔体30に対する押付け荷重の付与に際してピストンロッド71に対して与えられる油圧が全ての油圧室72において一定となるように、電磁切換弁73に対する指示(制御信号)が送られ、電磁切換弁73が制御される。このようにして制御される電磁切換弁73により、下降油圧室72aおよび上昇油圧室72bに対する圧油の供給の調整、つまり油圧室72からピストンロッド71を介して楔体30に伝達される押付け荷重の制御が行われる。
下降油圧室72aおよび上昇油圧室72bに対する圧油の供給の調整(押付け荷重の制御)に際しては、例えば、油圧センサ76a、76bによる検出値に基づくフィードバック制御が行われる。すなわち、かかるフィードバック制御においては、ピストンロッド71を介して楔体30に付与される押付け荷重となる油圧室72における油圧が制御対象となる。この制御対象となる油圧室72における油圧について、全ての油圧室72で一定の(共通の)値が目標値として予め設定される。ここで設定される目標値は、シリンダボア4の仕上げ加工によって付与される逆変形についての所望の大きさ、つまり押付コマ20によるシリンダ部外周面15に対する押圧力(矢印N1参照)についての所望の大きさを生じさせることとなる、楔体30に対する押付け荷重に対応するものとなる。
そして、目標値に基づく入力信号(基準入力信号)と、油圧センサ76a、76bによる検出値に基づく検出信号(フィードバック信号)とが比較され、その差に基づく信号が、制御対象に対する操作部となる電磁切換弁73に対する制御信号として送られ、電磁切換弁73における操作量(スプールの動作量)が制御される。このようなフィードバック制御により、全ての楔体30に付与される押付け荷重が均一とされる。
また、本実施形態では、前述したように、シリンダボア4に対する仕上げ加工として、ホーンヘッド41とホーンガイド42とを備える構成が用いられるホーニング加工が行われる。そこで、本実施形態では、図5に示すように、ホーンガイド42に、ピストンロッド71を支持するとともに油圧をピストンロッド71に作用させる油圧室72が設けられている。
すなわち、本実施形態においては、ピストンロッド71とともに油圧シリンダ機構を構成する油圧室72が、シリンダボア4に対するホーニング加工を行うためのホーニング手段を構成するホーンガイド42に対して設けられている。具体的には、前述したようにホーニング加工に際してシリンダボア4に対して所定の位置で位置決めされた状態となるホーンガイド42において、油圧室72は、その支持するピストンロッド71がウォータジャケット6内に挿入される押付コマ20に係合する楔体30に対応するような位置に設けられる。つまり、ホーニング加工に用いられるホーンガイド42に設けられる油圧室72は、ホーンガイド42において、平面視でボルト位相の部分に対応する位置に設けられることとなる。
このように、楔体30に押付け荷重を付与するための油圧シリンダ機構を構成する油圧室72を、シリンダボア4に対するホーニング加工に用いられるホーンガイド42に設けることにより、ピストンロッド71の支持およびピストンロッド71に対する油圧の付与に際して、シリンダボア4のホーニング加工に用いられる既存の構成を利用することができ、ピストンロッド71の支持等のための構成を別途設ける必要がなくなる。これにより、装置構成の簡略化や作業性の向上が図れる。
なお、本実施形態では、ピストンロッド71の支持等を行うための油圧室72が、既存の構成としてのホーンガイド42に設けられているが、これに限定されるものではない。つまり、油圧室72は、ホーンガイド42とは別途に設けられる構成において設けられてもよい。
以上のように、本実施形態においては、シリンダボア4に対する仕上げ加工に際して用いられるシリンダブロック1の加工用治具は、複数あるボルト締結部10それぞれに対応する、ウォータジャケット6におけるボルト位相の部分に、挿入姿勢で挿入された状態の押付コマ20それぞれに対して係合する、複数の楔体30を備えるとともに、これら複数の楔体30それぞれに対して、押付け荷重を付与する荷重付与手段を備える。
そして、本実施形態に係る加工用治具は、前記荷重付与手段により複数の楔体30に付与する押付け荷重が均一となる構成とされている。
また、本実施形態では、前記荷重付与手段は、楔体30に付与する押付け荷重を、油圧とするもの(油圧シリンダ機構)であり、ピストンロッド71と、油圧室72を形成する流体圧室形成部材とを有する。ここで、本実施形態では、油圧シリンダ機構を構成する流体圧室形成部材として、ホーンガイド42が用いられている。つまり、本実施形態では、前述したように、油圧シリンダ機構を構成する油圧室72は、ホーニング手段を構成するホーンガイド42に対して設けられている。したがって、油圧シリンダ機構を構成する流体圧室形成部材としては、ホーンガイド42とは別の部材が用いられてもよい。
そして、本実施形態では、前記荷重付与手段は、油圧室72に対する油圧の調整により、複数の楔体30に付与する押付け荷重を均一とする。
本実施形態では、楔体30に付与される押付け荷重が均一とされるための構成として、電磁切換弁73と、油圧センサ76a、76bとが備えられる。すなわち、楔体30に付与される押付け荷重が均一とされるに際しては、前述したように、例えば油圧センサ76a、76bによる検出値に基づくフィードバック制御が行われることにより、電磁切換弁73が制御され、下降油圧室72aおよび上昇油圧室72bに対する圧油の供給の調整(押付け荷重の制御)が図られる。
本実施形態のように、楔体30に押付け荷重を付与する荷重付与手段が各楔体30に対して設けられ、シリンダボア4の仕上げ加工に際して各荷重付与手段によって楔体30に付与される押付け荷重が全ての楔体30で均一とされることにより、押付け荷重を受ける楔体30により楔作用を得る押付コマ20によるシリンダ部外周面15に対する押圧力のばらつきを低減することができ、仕上げ加工によってシリンダボア4に付与する逆変形についての精度を向上することができる。
すなわち、シリンダボア4の仕上げ加工に際して、押付コマ20によってシリンダ部外周面15における多点(本実施形態では一つのシリンダボア4について4点)が押圧されるに際し、その押圧場所により、ウォータジャケット6の底部形状等のばらつき等によって、押付コマ20によるシリンダ部外周面15に対する押圧力がばらつく場合がある。かかる場合、シリンダボア4の変形量(仕上げ加工による研削量)が押付コマ20による押圧場所によって異なることとなり、シリンダボア4に対して狙いの変形(逆変形)が作れないこととなる。シリンダボア4に対して狙いの変形が作れないと、エンジン実働時におけるシリンダボア4の真円度を狙いとは逆に悪化させる可能性が生じる。エンジン実働時におけるシリンダボア4の真円度の悪化は、燃費の悪化につながる。
そこで、本実施形態のように、全ての楔体30に付与される押付け荷重が均一とされることにより、押付コマ20によるシリンダ部外周面15に対する押圧力が低減され、仕上げ加工によってシリンダボア4に逆変形を生じさせるに際し、シリンダボア4に付与する狙いの変形に対する精度を向上することができる。
なお、楔体30に付与される押付け荷重が均一とされるに際し、油圧室72に対して設けられる油圧回路構成については、特に本実施形態に限定されるものではない。つまり、油圧室72に対して設けられる油圧回路構成としては、ピストンロッド71を介して楔体30に付与する押付け荷重を均一とすることができるものであれば、下降油圧室72aおよび上昇油圧室72bに対する回路の切換え等を行うための弁機構の構成や油圧センサが設けられる位置などは、本実施形態に限定されるものではなく、種々の回路構成を採用することができる。
また、本実施形態では、荷重付与手段が楔体30に対する押付け荷重とする流体圧として、油圧が用いられているが、エア圧等のような他の流体圧が用いられてもよい。例えば、楔体30に対する押付け荷重とされる流体圧としてエア圧が用いられる場合においては、ピストンロッド71を含む荷重付与手段として、エアシリンダ機構が構成されることとなる。
以上のような構成により、本実施形態におけるシリンダボア4の仕上げ加工は、次のようにして行われる。まず、油圧室72にピストンロッド71を支持した状態のホーンガイド42が、その支持するピストンロッド71をシリンダブロック1のウォータジャケット6に挿入しつつヘッド取付面3に対して所定の高さ位置となるまで下降し、シリンダボア4に対して所定の位置で位置決めされた状態となる。ここで、ピストンロッド71においては、前述したようにロッド部71aの他端部(下端部)側に楔体30が設けられており、この楔体30に対して、押付コマ20が、楔体30が係合可能な状態で支持される。
次に、ピストンロッド71による楔体30の押付けが行われる。すなわち、油圧ポンプ74から供給される圧油が電磁切換弁73から第一油路75aを介して下降油圧室72aに導かれ(回路状態が第一の状態となり)、ピストンロッド71が押付け方向に付勢され、楔体30に対して押付け荷重が付与される。これにより、楔体30に係合する押付コマ20が楔作用を得て、シリンダ部外周面15におけるボルト位相の部分が押圧される。シリンダ部外周面15において押圧された部分に対応するシリンダ部5の部分は、シリンダボア4側からの圧力に対する剛性が他の部分に対して相対的に高められた状態となる。ここで、楔体30に付与される押付け荷重は、前述したように、全ての楔体30について均一となるように制御される。
このようにしてシリンダ部5におけるボルト位相の部分のシリンダボア4側からの圧力に対する剛性が高められた状態で、シリンダボア4に対するホーニング加工が行われる。これにより、前述したように、シリンダボア4に対して逆変形が付与されることとなる。
ホーニング加工終了後、ピストンロッド71による楔体30の押付けが解除される。すなわち、油圧ポンプ74から供給される圧油が電磁切換弁73から第二油路75bを介して上昇油圧室72bに導かれ(回路状態が第二の状態となり)、ピストンロッド71が押付け方向と反対方向に付勢され、楔体30が引っ張り上げられる。これにより、楔体30の押付コマ20に対する係合が解除されるとともに、押付コマ20がウォータジャケット6の底部(以下「ジャケット底部」ともいう。)から抜かれる。そして、ホーンガイド42の上昇とともに、ピストンロッド71、楔体30および押付コマ20がウォータジャケット6内から取り出される。
こうした本実施形態でのシリンダボア4に対するホーニング加工に際しての各工程における、楔体30に付与される押付け荷重の変化の一例(制御例)について、図6を用いて説明する。図6に示すグラフにおいて、横軸は、時間T、つまりシリンダボア4の仕上げ加工に際して行われる各工程の経過を示している。また、縦軸は、楔体30に付与される押付け荷重となる下降油圧室72aの油圧(下降油圧室油圧)Pdを示している。
図6において一点鎖線で表すグラフG1で示されるように、まず、ピストンロッド71による楔体30の押付けに際しては、楔体30に付与される押付け荷重、つまり下降油圧室油圧Pdが、徐々に上昇させられる(時間T:0〜t1)。上昇した下降油圧室油圧Pdは、シリンダボア4に対する切削加工中、一定の値となるように制御される(時間T:t1〜t2)。つまり、シリンダボア4の加工中においては、楔体30に付与される押付け荷重は、一定に保持される。そして、ボア加工終了後、ピストンロッド71が上昇させられ、楔体30の押付コマ20に対する係合の解除とともに、押付コマ20がジャケット底部から抜かれる。つまり、一定の値となるように制御されていた下降油圧室油圧Pdが、徐々に低下させられる(上昇油圧室72bの油圧が上昇させられる)(時間T:t2〜t3)。
このようにしてシリンダボア4の仕上げ加工行われる本実施形態においては、楔体30に微小振動を生じさせることが好ましい。
本実施形態では、楔体30に付与される押付け荷重、つまり油圧シリンダ機構における油圧が脈動的に変化させられることにより、楔体30に微小振動が生じさせられる。具体的には、油圧シリンダ機構を含む油圧回路構成において、電磁切換弁73により、ピストンロッド71が下降する第一の状態と、ピストンロッド71が上昇する第二の状態とが微小時間で脈動的に切り換えられる。これにより、ピストンロッド71が加振され、楔体30に微小振動が生じることとなる。ただし、楔体30に微小振動を生じさせるための方法は、これに限定されるものではない。例えば、油圧回路構成における第一の状態において、油圧ポンプ74から電磁切換弁73を介して下降油圧室72aに供給される油圧が脈動的に変動させられること等によって、楔体30に微小振動が付与されてもよい。
こうした楔体30に対する微小振動の付与は、前述したシリンダボア4の仕上げ加工における一連の過程において、少なくとも、楔体30の押付け(ピストンロッド71の下降)→ボア加工→楔体30の楔抜き(ピストンロッド71の上昇)の間行われる。すなわち、図6において実線で表されるグラフG2で示されるように、楔体30の押付けの開始から楔体30の楔抜きの終了までの間(時間T:0〜t3)において、油圧シリンダ機構について第一の状態と第二の状態との脈動的な切換えが継続的に行われる。この状態の切換えが行われる間、下降油圧室油圧Pdが脈動的に変化する。これにより、下降油圧室油圧Pdの脈動的な変化がピストンロッド71を介して楔体30に伝達され、楔体30が微小振動する。楔体30が微小振動することにより、楔体30に係合している押付コマ20が、加振され微小振動することとなる。
以上のように、本実施形態に係る加工用治具においては、荷重付与手段としての油圧シリンダ機構は、押付け荷重を脈動的に変化させることにより、楔体30に微小振動を生じさせる。
このように、楔体30に微小振動を生じさせることにより、ピストンロッド71の上昇によって押付コマ20がジャケット底部から抜かれるに際し、押付コマ20が抜きやすくなる。
すなわち、押付コマ20がジャケット底部から抜かれるに際しては、押付コマ20とウォータジャケット6の形成面との間(詳細には内側押圧部21の外周面21aとシリンダ部外周面15との間、および外側押圧部22の外周面22aとジャケット外側面16との間)の摩擦力が抗力となる。かかる摩擦力は、押付コマ20が静止している状態(加振されてない状態)では静止摩擦力となるが、押付コマ20が微小振動している状態(加振されている状態)では動摩擦力となる。
したがって、前述したように楔体30が微小振動することにより、押付コマ20が加振されて微小振動し、押付コマ20がジャケット底部から抜かれるに際して抗力となる摩擦力が、静止摩擦力に比して小さい(摩擦係数μが小さい)動摩擦力となる。これにより、押付コマ20がジャケット底部から抜かれるに際し、抗力となる摩擦力が比較的小さくなり、押付コマ20が抜きやすくなる。言い換えると、楔体30の押付けの開始から楔体30の楔抜きの終了までの間において、楔体30が微小振動することにより、押付コマ20とウォータジャケット6の形成面との間の摩擦力についての摩擦係数μが、静止摩擦係数よりも小さい動摩擦係数として維持されることとなり、押付コマ20がジャケット底部から抜きやすくなる。
このように、押付コマ20がジャケット底部から抜きやすくなることで、ボア加工終了後に押付コマ20をジャケット底部から抜くための設備動力(例えば油圧ポンプ74の動力)を小さくすることができ、設備の大型化やコストアップを防止することができる。
また、楔体30に微小振動を生じさせることにより、楔体30の押付けによって押付コマ20によりシリンダ部外周面15が押圧されている状態における、押付コマ20とウォータジャケット6の形成面との間の摩擦係数μが安定することとなり、押付コマ20によるシリンダ部外周面15に対する押圧力のばらつきを、より効果的に低減することができる。
すなわち、シリンダボア4に逆変形を生じさせるために押付コマ20によって押圧されるウォータジャケット6の形成面(シリンダ部外周面15およびジャケット外側面16)は鋳肌であり、比較的面粗度が粗い面となる。そこで、楔体30が微小振動することにより、シリンダ部外周面15を押圧している状態の押付コマ20が加振され、その押付コマ20の微小振動により、鋳肌であるウォータジャケット6の形成面について摩擦による平滑作用が得られる。これにより、押付コマ20とウォータジャケット6の形成面との間の摩擦係数μが安定し、楔体30が受ける押付け荷重が、押付コマ20によるシリンダ部外周面15に対する押圧力として効率的に安定して伝達される。結果として、各楔体30における同じ入力に対して、押付コマ20によるシリンダ部外周面15に対する押圧力のばらつきが低減され、シリンダボア4について安定して狙いの変形を作り出すことができる。
ところで、本実施形態のように、楔体30に付与される押付け荷重として油圧が用いられる構成において、第一実施形態では連結リング33が用いられて実現される複数の楔体30の連結構成を採用することができる。具体的には、例えば、各楔体30に対して設けられる複数のピストンロッド71がロッド部71aまたはピストン部71bにおいて一体に連結されるとともに、各ピストンロッド71を支持する複数の油圧室72が全て連通されることで一つの油圧室として構成される。これにより、複数の楔体30が一体的に連結される。かかる構成において、一体に連結された複数のピストンロッド71が、共通の油圧によって一体的に昇降することで、複数の楔体30が連動することとなる。
また、このように複数の楔体30が連結される構成においては、電磁切換弁73によって油圧室72に対する圧油の供給の調整が行われることで、例えばシリンダブロック1について機種が変更される場合に必要となる、楔体30に対する押付け荷重(油圧)についてのチューニングが省略できる等、作業の簡略化が図れる。
本発明の第三実施形態について、図7および図8を用いて説明する。図7は本発明の第三実施形態に係る加工用治具等の構成を示す図、図8はシリンダボアの加工に際して楔体に付与する荷重の変化を示す図である。
本実施形態においては、第二実施形態と同様に、複数の楔体30それぞれに対して、押付け荷重を付与する荷重付与手段が設けられている。そして、本実施形態では、楔体30に対する押付け荷重として、モータの駆動力が用いられる。
すなわち、図7に示すように、本実施形態に係る荷重付与手段は、電気により回転駆動するモータ81を備える。このモータ81の駆動力が、ボールネジ機構82および押付ロッド87を介して楔体30に対する押付け荷重として伝達される。つまり、モータ81の回転動力が、ボールネジ機構82によって上下方向の直線動力に変換され、この直線動力が押付ロッド87を介して楔体30に押付け荷重として伝達される。
そして、モータ81の駆動力が、ボールネジ機構82および押付ロッド87を介して楔体30に伝達されることにより、楔体30に押付け荷重が付与されるとともに、モータ81の駆動力の調整により、複数の楔体30に付与される押付け荷重が均一とされる。
図7に示すように、本実施形態では、第二実施形態と同様に、荷重付与手段が構成されるに際して、シリンダボア4に対するホーニング加工を行うためのホーニング手段を構成するホーンガイド42が用いられている。つまり、荷重付与手段を構成するモータ81、ボールネジ機構82、および押付ロッド87が、ホーンガイド42に対して設けられている。これにともない、ホーンガイド42においては、ボールネジ機構82や押付ロッド87等の各部を収容するとともに、これら各部の動き等を許容する空間が形成される。
ボールネジ機構82は、モータ81の出力軸に対して直結されるネジ軸83と、このネジ軸83に対するナット部となる円筒状のスリーブ84と、ネジ軸83とスリーブ84との間に挟み込まれた状態となる多数のボール85とを有する。
ネジ軸83は、モータ81の駆動力によって回転する。ネジ軸83は、ホーンガイド42に対して上下方向に貫通するように軸受83aによって回転可能に支持される。なお、ネジ軸83を回転させるモータ81は、図示せぬ支持部によって所定の位置に支持される。ネジ軸83に対して、スリーブ84がボール85を介して係合する。このような構成のボールネジ機構82において、モータ81の駆動力によってネジ軸83が回転すると、ボール85がネジ軸83とスリーブ84との間を転がりながら移動し、これにともなってスリーブ84がネジ軸83に沿って上下方向に移動する(矢印H1参照)。
押付ロッド87は、ウォータジャケット6に挿入可能な径を有する棒状の部材である。押付ロッド87は、ボールネジ機構82において直線動力に変換されたモータ81の駆動力を、押付け荷重として楔体30に伝達する。押付ロッド87は、連結部86を介してボールネジ機構82のスリーブ84に連結される。つまり、ボールネジ機構82におけるスリーブ84のネジ軸83に沿う上下方向の移動が、連結部86を介して押付ロッド87に伝達される。また、押付ロッド87においては、その下端部側に、一体的にあるいは別体として(連結された状態で)、楔体30が設けられる。この楔体30に対して、押付コマ20が支持される。そして、押付ロッド87が、モータ81の駆動力がボールネジ機構82および連結部86を介して伝達されることで受ける下向きの力(以下「押付け軸力」という。)により(矢印F2参照)、楔体30が押付け荷重を受け、その楔体30が係合する押付コマ20に楔作用が与えられる。この楔作用を得た押付コマ20により、シリンダ部外周面15における所定の部分が押圧される(矢印N1参照)。
つまりは、ウォータジャケット6におけるボルト位相の部分に挿入された状態の押付コマ20が、モータ81の駆動力をボールネジ機構82および押付ロッド87を介して押付け荷重として受けた楔体30から楔作用を得ることにより、内側押圧部21と外側押圧部22とが互いに離間する(図3参照)。これにより、外側押圧部22の外周面22aによってジャケット外側面16が押圧されるとともに、内側押圧部21の外周面21aによってシリンダ部外周面15が押圧されることとなる(矢印N1参照)。
このように、本実施形態においては、楔体30に押付け荷重を付与する荷重付与手段として、モータ81とボールネジ機構82と押付ロッド87とにより、モータ駆動機構が構成される。このモータ81とボールネジ機構82と押付ロッド87とにより構成されるモータ駆動機構が、シリンダブロック1においてボルト位相の部分に挿入される押付コマ20に係合する楔体30それぞれに対して設けられる。したがって、シリンダブロック1においてボルト位相の部分が10箇所となる本実施形態では、各楔体30に対する荷重付与手段としてのモータ駆動機構が、10箇所設けられることとなる。
そして、前記のようなモータ駆動機構によって各楔体30に付与される押付け荷重が、全ての楔体30について均一とされる。つまり、楔体30に対する押付け荷重の付与に際して押付ロッド87に対して与えられる押付け軸力(矢印F2参照)が、全ての押付ロッド87について一定となるように、モータ81の駆動力等が調整される。
本実施形態では、モータ81の駆動力等の調整に際し、押付け軸力を計測するための軸力計88が用いられる。軸力計88は、押付ロッド87に対して設けられる歪ゲージ式の軸力計である。この軸力計88により、モータ81からボールネジ機構82を介して押付ロッド87に付与されるとともに押付ロッド87を介して楔体30に対して押付け荷重として付与される押付け軸力が計測される。そしてこの軸力計88により計測される押付け軸力についての計測値が用いられ、モータ81の駆動力等が調整される。
以上のように楔体30に対する押付け荷重としてモータ81の駆動力が用いられる本実施形態でのシリンダボア4に対するホーニング加工に際しての各工程における、楔体30に付与される押付け荷重の変化は、第二実施形態の場合と同様となる。
すなわち、図8において一点鎖線で表すグラフJ1で示されるように、まず、押付ロッド87による楔体30の押付けに際しては、楔体30に付与される押付け荷重、つまり押付け軸力Fsが、徐々に上昇させられる(時間T:0〜t1)。上昇した押付け軸力Fsは、シリンダボア4に対する切削加工中、一定の値となるように制御される(時間T:t1〜t2)。つまり、シリンダボア4の加工中においては、楔体30に付与される押付け荷重は、一定に保持される。そして、ボア加工終了後、押付ロッド87が上昇させられ、楔体30の押付コマ20に対する係合の解除とともに、押付コマ20がジャケット底部から抜かれる。つまり、一定の値となるように制御されていた押付け軸力Fsが、徐々に低下させられる(時間T:t2〜t3)。
そして、楔体30に対する押付け荷重の付与に際しては、第二実施形態と同様、楔体30に微小振動が生じさせられる。具体的には、モータ81の回転方向が微小時間で脈動的に切り換えられる。これにより、ネジ軸83の回転方向が微小時間で脈動的に切り換わり、スリーブ84および連結部86を介して押付ロッド87が上下方向に加振され、楔体30に微小振動が生じることとなる。
こうした楔体30に対する微小振動の付与は、前述したシリンダボア4の仕上げ加工における一連の過程において、少なくとも、楔体30の押付け(押付ロッド87の下降)→ボア加工→楔体30の楔抜き(押付ロッド87の上昇)の間行われる。すなわち、図8において実線で表されるグラフJ2で示されるように、楔体30の押付けの開始から楔体30の楔抜きの終了までの間(時間T:0〜t3)において、モータ81の回転方向についての脈動的な切換えが継続的に行われる。モータ81の回転方向の切換えが行われる間、押付け軸力Fsが脈動的に変化する。これにより、押付け軸力Fsの脈動的な変化が押付ロッド87を介して楔体30に伝達され、楔体30が微小振動する。楔体30が微小振動することにより、楔体30に係合している押付コマ20が、加振されることとなる。
このように、本実施形態においても、楔体30に微小振動を生じさせることにより、ピストンロッド71の上昇によって押付コマ20がジャケット底部から抜かれるに際し、押付コマ20が抜きやすくなる。
また、本実施形態のように、楔体30に付与される押付け荷重としてモータの駆動力が用いられる構成において、第一実施形態では連結リング33が用いられて実現される複数の楔体30の連結構成を採用することができる。具体的には、例えば、各楔体30に対して設けられる複数の押付ロッド87が一体に連結される。これにより、複数の楔体30が一体的に連結される。かかる構成において、一体に連結された複数の押付ロッド87が、モータの駆動力がボールネジ機構等を介して伝達されることによって一体的に昇降することで、複数の楔体30が連動することとなる。
本発明の第四実施形態について、図9〜図11を用いて説明する。図9は本発明の第四実施形態に係るシリンダブロック等の構成を示す断面図、図10は本発明の第四実施形態に係るシリンダブロックを示す平面図、図11はエンジン実働時におけるボア変形を示す模式図である。
本実施形態に係るシリンダブロック51の加工方法においては、第一実施形態と同様、シリンダブロック51において、そのシリンダボア4に対する仕上げ加工を行うに際し、シリンダ部5において、そのボルト位相の部分におけるシリンダボア4側からの圧力に対する剛性を、他の位相の部分に対して相対的に高くした状態とする。
そして、本実施形態に係るシリンダブロック51の加工方法においては、図9および図10に示すように、シリンダ部外周面15におけるボルト位相の部分に対する押圧を行うため、ウォータジャケット6に対してそのジャケット開口部側から挿入可能な径を有する棒状のピン部材としてのピン60を、その外周面(以下「ピン外周面」とする。)61がシリンダ部外周面15におけるボルト位相の部分(図2における角度範囲α1参照)に対して圧接する状態で、ウォータジャケット6の底部(ジャケット底部)に対して圧入することにより、シリンダ部外周面15におけるボルト位相の部分に対する押圧を行う。
ピン60は、シリンダブロック51のシリンダ部5に対して押圧作用することができる程度の剛性を有するように構成される。したがって、シリンダブロック51の本体を構成する材料がアルミニウムであるのに対し、ピン60を構成する材料としては、例えば鉄系の材料が用いられ、ピン60はシリンダブロック51の本体よりも高い剛性を有する構成とされる。
ピン60は、本実施形態において略円柱棒状の部材であり、前記のとおりウォータジャケット6に対してそのジャケット開口部側から挿入可能な径を有する。
ピン60は、ジャケット底部、即ちジャケット開口部側と反対側であってウォータジャケット6を形成するシリンダ部外周面15とジャケット外側面16とが連続する部分に圧入される。つまり、図9に示すように、ウォータジャケット6に圧入された状態のピン60は、その一端部(下端部)が、シリンダブロック51の本体側に形成される穴部に対して圧入された埋没部62となり、シリンダブロック51に対して一部埋没した状態となる。
ピン60は、ジャケット底部に対して圧入された状態で、ピン外周面61が、シリンダ部外周面15に圧接した状態となる。
シリンダ部外周面15におけるピン60の接触部には、ピン外周面61の形状に沿う凹部65が適宜形成される。ピン60は、この凹部65に嵌合した状態でジャケット底部に対して圧入される。つまり、ピン60は、その圧入された状態で凹部65に対して圧接する状態となり、凹部65の大きさを調整することにより、ピン60のシリンダ部外周面15に対する接触面積を調整することができる。したがって、ピン60について、ジャケット開口部側から挿入可能な径とは、凹部65の存在も加味した大きさの径となる。
このように、ジャケット底部に対して圧入された状態のピン60のシリンダ部外周面15に対する圧接により、シリンダ部外周面15における所定の部分が押圧される。
なお、ピン60によるシリンダ部外周面15に対する押圧力は、ピン60のジャケット底部に対する圧入の角度等によって調節する。
上述のようなピン60が圧入されることによるシリンダ部外周面15に対する押圧は、シリンダ部外周面15におけるボルト位相の部分に対して行われる。つまり、ピン60は、ウォータジャケット6におけるシリンダ部外周面15のボルト位相の部分に対応する位置に挿入されて圧入される。
また、ピン60によるシリンダ部外周面15に対する押圧部分について、その高さ(上下方向の長さ)範囲は、ウォータジャケット6内に挿入され圧入された状態のピン60におけるウォータジャケット6内に露出する部分(以下単に「露出部分」という。)の高さ(上下方向の長さ)に相当する。つまり、図9において符号D2で示す矢印範囲が、ピン60の露出部分の高さに相当し、ピン外周面61がシリンダ部外周面15に接触する部分となる。このピン外周面61がシリンダ部外周面15に接触する部分が、ピン60によるシリンダ部外周面15に対する押圧部分についての高さ範囲となる。
なお、ピン60によるシリンダ部外周面15に対する押圧部分の高さ範囲、即ちピン60の露出部分の高さは、シリンダブロック51の形状等に応じて適宜設定される。
このように、シリンダ部外周面15において、ピン外周面61が接触する部分となる、ピン60によって押圧される所定の部分とは、ボルト位相の部分であって、ウォータジャケット6に挿入され圧入された状態のピン60の露出部分の高さ(符号D2参照)に相当する高さ範囲の部分となる。
そして、このピン60によって押圧されるシリンダ部外周面15における部分が、シリンダボア4側からの圧力に対する剛性が高められる部分となる。
以上のように、本実施形態に係るシリンダブロック51の加工方法では、ピン60を用いることにより、シリンダ部外周面15におけるボルト位相の部分に対する押圧を行い、シリンダ部5における、前記押圧した部分のシリンダボア4側からの圧力に対する剛性を、他の部分に対して高めた状態で、シリンダボア4に対する仕上げ加工を行う。
これにより、第一実施形態と同様に、シリンダブロック51のシリンダボア4に対する仕上げ加工に際し、ダミーヘッド等の加工用治具を用いることで生じる加工工程の複雑化や高コスト化を招くことなく、仕上げ加工後にシリンダボア4に対してエンジン実働時に生じるボア変形と逆方向の変形を付与することができ、エンジン実働時におけるシリンダボア4の真円度の悪化を抑制することができる。
また、本実施形態に係るシリンダブロック51の加工方法においては、ピン60を、シリンダブロック51の本体を構成する材料よりも熱伝導率の低い材料により構成し、前述のように圧入された状態のピン60のピン外周面61と、ジャケット外側面16との間に、少なくともシリンダブロック51が用いられて構成される内燃機関の実働時における熱膨張によって、ピン外周面61とジャケット外側面16とが互いに接触しない程度の隙間66を設けることが好ましい。
ピン60は、前述したようにシリンダブロック51の本体よりも高い剛性を有する構成とされる。したがってこの場合、ピン60を構成する材料としては、ピン60がシリンダブロック51よりも高い剛性を有するものとなり、シリンダブロック51の本体を構成する材料よりも熱伝導率の低い材料が用いられることとなる。
具体的には、本実施形態のように、シリンダブロック51の本体を構成する材料がアルミニウムであるのに対して、ピン60を構成する材料例としては、鉄(Fe)等を挙げることができる。
また、ウォータジャケット6の底部に対して圧入された状態のピン60については、図10においてその間隔を符号S1で示すように、ピン外周面61とジャケット外側面16との間に隙間66が設けられる。つまり、ウォータジャケット6の底部に対して圧入された状態のピン60は、そのピン外周面61が、シリンダ部外周面15側に圧接するとともに、ジャケット外側面16に対しては間隔S1を隔てた状態となる。
このピン60とジャケット外側面16との間の隙間66は、前記のとおり少なくともシリンダブロック51が用いられて構成される内燃機関の実働時における熱膨張によって、ピン外周面61とジャケット外側面16とが互いに接触しない程度の大きさに設定される。
すなわち、内燃機関の実働時においては、燃焼室における混合気の爆発や燃焼等によってシリンダボア4の温度は上昇する。このため、内燃機関の実働時においては、シリンダブロック51においてシリンダボア4を形成するシリンダ部5の部分は比較的高温となり、その部分の熱膨張も比較的大きくなる。このシリンダ部5の熱膨張にともない、シリンダ部外周面15に圧接した状態のピン60は自身の熱膨張もともなって外側(シリンダボア4の径方向外側)に変位する。
このような内燃機関の実働時における各部の熱膨張により、ピン外周面61とジャケット外側面16とが互いに接触しないように、ウォータジャケット6の底部に圧入された状態のピン60のピン外周面61とジャケット外側面16との間に隙間66が設けられる。
ここで、内燃機関の実働時とは、いわゆる内燃機関の実使用環境下での状態であり、通常使用されうる(常用される範囲での)内燃機関の運転状態(負荷、回転数、温度等)であることを意味する。ただし、隙間66の間隔S1の大きさは、内燃機関の使用環境に応じて適宜設定されうる。
このようなピン外周面61とジャケット外側面16との間の隙間66が、各ボルト位相の部分に圧入されるピン60それぞれにおいて設けられる。
このように、ピン60をシリンダブロック51の本体を構成する材料よりも熱伝導率の低い材料により構成するとともに、圧入された状態のピン60についてそのピン外周面61とジャケット外側面16との間に前述のような隙間66を設けることにより、内燃機関の実働時(エンジン実働時)に生じるボア変形を抑制することができ、エンジン実働時におけるシリンダボア4の真円度の悪化を抑制することができる。
すなわち、シリンダ部5において、そのシリンダ部外周面15に、シリンダブロック51の本体を構成する材料よりも熱伝導率の低い材料により構成されるピン60が接触するボルト位相の部分は、非ボルト位相の部分に対し、ウォータジャケット6内を流れる冷却水によるボア冷却において冷却効率が低下するため、相対的に弱く冷却される。これにより、エンジン実働時において、シリンダ部5におけるボルト位相の部分の温度は非ボルト位相の部分に対して相対的に上がることとなる。したがって、シリンダ部5におけるボルト位相の部分の熱膨張が非ボルト位相の部分に対して相対的に大きくなる。結果として、エンジン実働時におけるシリンダボア4の真円度の悪化が抑制される。
ここで、エンジン実働時におけるシリンダボア4の真円度の悪化が抑制されることについて、図11を用いて説明する。図11において、(a)は本実施形態に係るエンジン実働時におけるボア変形を示す図であり、(b)は同じく従来におけるボア変形を示す図である。
シリンダブロック51に対しては、ボルト締結によってシリンダヘッドが組み付けられる。シリンダブロック51における各ボルト締結部10においては、図11に示すように、ボルト穴12にヘッドボルト11が螺挿された状態となる。
シリンダブロック51に対してシリンダヘッドが組み付けられることにより、ヘッドボルト11による締付け力がシリンダブロック51に作用してシリンダボア4について組付け変形が生じる。この組付け変形は、本実施形態のようにボルト締結部10がシリンダボア4の周囲において略等間隔で4ヶ所設けられる構成においては、図11において組付け変形した状態のシリンダボア4の形状を表す点線B1で示すように、十字形となるような変形(4次変形)となる。
このようにヘッドボルト11によってシリンダヘッドが組み付けられたシリンダブロックが用いられて構成されるエンジンの実働時においては、前述のような組付け変形に加え、エンジンの実働時における熱膨張や熱歪み等の熱負荷(熱応力)によって生じるボア変形(以下「熱変形」という。)がある。
図11(b)に示すように、従来におけるエンジンの実働時に生じる熱変形は、組付け変形した状態のシリンダボア(点線B1参照)において、その十字形が強調される変形となる。これは次のような理由による。すなわち、エンジンの実働時においては、シリンダブロックは温度上昇し、シリンダボア4は周方向に膨張する。この際、ボルト位相の部分の変形は、ヘッドボルト11の締結によるボルト軸力によって抑制される。このため、図11(b)において矢印で示すように、シリンダボア4においてボルト位相以外の位相の部分がボルト位相の部分に比べて大きく膨張することとなり、ボア変形について十字形が強調される変形となる(実線B3参照)。
そこで、前述したように、シリンダ部外周面15におけるボルト位相の部分に圧接した状態となるピン60をシリンダブロック51よりも高い熱伝導率を有する構成とすることにより、図11(a)に示すように、ボルト締結部10がシリンダボア4の周囲において略等間隔で4ヶ所設けられる構成において、シリンダボア4の中心軸の位置Cを中心とする所定の角度範囲α1となるボルト位相の部分(点線B1上の実線部分参照)の温度をTbとし、非ボルト位相の部分の温度をT0とすると、Tb>T0の関係が成り立つ。
このことから、エンジン実働時におけるシリンダボア4の変形(熱変形)について、非ボルト位相の部分に対するボルト位相の部分の相対的な膨張量が大きくなり、図11(a)において熱変形した状態のシリンダボア4の形状を表す実線B2で示すように、シリンダボア4の周方向についての全体的な膨張が均一化される。結果として、エンジン実働時におけるシリンダボア4の真円度の悪化が抑制され、真円度が向上することとなる。
したがって、前述したようにウォータジャケット6の底部に圧入された状態のピン60のピン外周面61とジャケット外側面16との間に設ける隙間66は、エンジン実働時に生じる熱変形に際し、シリンダボア4におけるボルト位相の部分の周方向への熱膨張(広がり)を許容するためのものである。
このように、本実施形態に係るシリンダブロック51においては、シリンダボア4の仕上げ加工に用いるピン60は、その仕上げ加工に際してウォータジャケット6の底部に圧入された状態となる。そして、その圧入された状態のピン60を有した状態のシリンダブロック51により、内燃機関が構成される。
つまり、本実施形態に係るシリンダブロック51は、シリンダブロック1の本体を構成する材料よりも熱伝導率の低い材料により構成されたピン60が用いられて加工されたものであり、前述したようにジャケット外側面16に対して隙間66を有する状態で圧入された状態のピン60を有する。
このようなシリンダブロック51が用いられて構成される内燃機関においては、ボア変形について、シリンダヘッド組付け時に生じる組付け変形の防止に加えて、エンジン実働時に生じる熱変形をも防止することができる。
本発明の第一実施形態に係るシリンダブロック等の構成を示す断面図。 本発明の第一実施形態に係るシリンダブロックを示す平面図。 押付コマおよび楔体の構成を示す断面図。 本発明の第一実施形態に係るシリンダブロックの加工フローを示すフロー図。 本発明の第二実施形態に係る加工用治具等の構成を示す図。 シリンダボアの加工に際して楔体に付与する荷重の変化の一例を示す図。 本発明の第三実施形態に係る加工用治具等の構成を示す図。 シリンダボアの加工に際して楔体に付与する荷重の変化の一例を示す図。 本発明の第四実施形態に係るシリンダブロック等の構成を示す断面図。 本発明の第四実施形態に係るシリンダブロックを示す平面図。 エンジン実働時におけるボア変形を示す模式図。 シリンダボアに対するボルト締結部の配置およびボア変形を示す模式図。 シリンダボアの逆変形を示す模式図。
符号の説明
1 シリンダブロック
3 ヘッド取付面(シリンダヘッド取付面)
4 シリンダボア
5 シリンダ部
6 ウォータジャケット
10 ボルト締結部
11 ヘッドボルト
12 ボルト穴
15 シリンダ部外周面
16 ジャケット外側面
20 押付コマ(押圧部材)
21 内側押圧部(押圧部)
22 外側押圧部(押圧部)
23 楔面
30 楔体(楔部材)
33 連結リング(連結部材)
41 ホーンヘッド(ヘッド部)
42 ホーンガイド(ガイド部)
43 砥石
51 シリンダブロック
60 ピン(ピン部材)
61 ピン外周面
66 隙間
71 ピストンロッド(流体圧伝達部材)
72 油圧室(流体圧室)
73 電磁切換弁
76a、76b 油圧センサ
81 モータ
82 ボールネジ機構
87 押付ロッド
88 軸力計

Claims (16)

  1. 締結部材によってシリンダヘッドが固定されるシリンダヘッド取付面に開口しピストンを摺動可能に内装する円柱状の孔部であるシリンダボアと、該シリンダボアを囲む壁状部分であるシリンダ部を介して前記シリンダボアを取り囲むように形成され前記シリンダヘッド取付面に開口するウォータジャケットとを有するシリンダブロックに対して行うシリンダブロックの加工方法であって、
    前記ウォータジャケットの内側面を形成する前記シリンダ部の外周面のうち、前記シリンダボアの円周形状における前記締結部材による締結部に対応する位相の部分を押圧することにより、
    前記シリンダ部における、前記押圧した部分の前記シリンダボア側からの圧力に対する剛性を、他の部分に対して高めた状態で、前記シリンダボアに対する仕上げ加工を行うことを特徴とするシリンダブロックの加工方法。
  2. 互いに離間可能に連結される押圧部を有しこれら押圧部同士が離間する方向の楔作用を受ける楔面を有する押圧部材と、前記楔面に係合して前記楔作用を与える楔部材とを用い、
    前記離間する方向に、前記シリンダ部の外周面における前記位相の部分に対する押圧方向が含まれるとともに、前記ウォータジャケットの前記シリンダヘッド取付面に対する開口部側からの押付けによって前記楔作用が得られる姿勢で、前記ウォータジャケットにおける前記位相の部分に挿入した状態の前記押圧部材に対し、前記楔部材を係合させた状態で、前記開口部側から押し付けて前記楔作用を得ることにより、
    前記シリンダ部の外周面における前記位相の部分に対する押圧を行うことを特徴とする請求項1に記載のシリンダブロックの加工方法。
  3. 複数ある前記締結部それぞれに対応する、前記ウォータジャケットにおける前記位相の部分に、前記姿勢で挿入された状態の前記押圧部材それぞれに対して係合する、複数の前記楔部材を、前記挿入された状態の前記押圧部材の配置に対応する配置状態で一体に連結するとともに、前記押圧部材を、その対応する前記楔部材に対して、該楔部材が係合可能な状態で支持させ、
    前記複数の前記楔部材を連動させて、該複数の前記楔部材の前記開口部側からの押付けを行うことを特徴とする請求項2に記載のシリンダブロックの加工方法。
  4. 前記シリンダボアに対する仕上げ加工は、
    ホーニング用の砥石を有し前記シリンダボアに対して移動することで該シリンダボアに対して前記砥石を作用させるヘッド部と、前記シリンダヘッド取付面に対して近接離間移動可能に設けられ前記ヘッド部を案内するガイド部とを備える構成が用いられて行われるホーニング加工であり、
    前記ガイド部に、前記楔部材を連結し、
    前記楔部材の前記開口部側からの押付けを、前記ガイド部の前記シリンダヘッド取付面に対する近接動作を用いて行うことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のシリンダブロックの加工方法。
  5. 複数ある前記締結部それぞれに対応する、前記ウォータジャケットにおける前記位相の部分に、前記姿勢で挿入された状態の前記押圧部材それぞれに対して係合する、複数の前記楔部材それぞれに対して、該楔部材の前記開口部側からの押付けを行うための荷重を付与する荷重付与手段を設け、
    前記荷重付与手段により前記複数の前記楔部材に付与する前記荷重を均一とすることを特徴とする請求項2に記載のシリンダブロックの加工方法。
  6. 前記荷重として、流体圧を用い、
    前記荷重付与手段は、前記流体圧により少なくとも前記楔部材の前記開口部側からの押付け方向に付勢可能に設けられる流体圧伝達部材を含み、
    前記流体圧を、前記流体圧伝達部材を介して前記楔部材に伝達することにより、前記楔部材に前記荷重を付与するとともに、
    前記流体圧の調整により、前記複数の前記楔部材に付与する前記荷重を均一とすることを特徴とする請求項5に記載のシリンダブロックの加工方法。
  7. 前記シリンダボアに対する仕上げ加工は、
    ホーニング用の砥石を有し前記シリンダボアに対して移動することで該シリンダボアに対して前記砥石を作用させるヘッド部と、前記シリンダヘッド取付面に対して近接離間移動可能に設けられ前記ヘッド部を案内するガイド部とを備える構成が用いられて行われるホーニング加工であり、
    前記ガイド部に、前記流体圧伝達部材を前記押付け方向を含む所定の摺動方向に移動可能に支持するとともに前記流体圧を前記流体圧伝達部材に作用させる流体圧室を設けることを特徴とする請求項6に記載のシリンダブロックの加工方法。
  8. 前記楔部材に微小振動を生じさせることを特徴とする請求項2〜7のいずれか一項に記載のシリンダブロックの加工方法。
  9. 前記ウォータジャケットに対してその前記ヘッド取付面に対する開口部側から挿入可能な径を有する棒状のピン部材を、その外周面が前記シリンダ部の外周面における前記位相の部分に対して圧接する状態で、前記ウォータジャケットの底部に対して圧入することにより、
    前記シリンダ部の外周面における前記位相の部分に対する押圧を行うことを特徴とする請求項1に記載のシリンダブロックの加工方法。
  10. 前記ピン部材を、シリンダブロックの本体を構成する材料よりも熱伝導率の低い材料により構成し、
    前記圧入された状態の前記ピン部材の外周面と、前記ウォータジャケットの外側面との間に、少なくともシリンダブロックが用いられて構成される内燃機関の実働時における熱膨張によって、前記ピン部材の外周面と前記ウォータジャケットの外側面とが互いに接触しない程度の隙間を設けることを特徴とする請求項9に記載のシリンダブロックの加工方法。
  11. 締結部材によってシリンダヘッドが固定されるシリンダヘッド取付面に開口しピストンを摺動可能に内装する円柱状の孔部であるシリンダボアと、該シリンダボアを囲む壁状部分であるシリンダ部を介して前記シリンダボアを取り囲むように形成され前記シリンダヘッド取付面に開口するウォータジャケットとを有するシリンダブロックの、前記シリンダボアに対する仕上げ加工に際して用いるシリンダブロックの加工用治具であって、
    互いに離間可能に連結される押圧部を有しこれら押圧部同士が離間する方向の楔作用を受ける楔面を有する押圧部材と、前記楔面に係合して前記楔作用を与える楔部材とを備え、
    前記離間する方向に、前記ウォータジャケットの内側面を形成する前記シリンダ部の外周面のうち、前記シリンダボアの円周形状における前記締結部材による締結部に対応する位相の部分に対する押圧方向が含まれるとともに、前記ウォータジャケットの前記シリンダヘッド取付面に対する開口部側からの押付けによって前記楔作用が得られる姿勢で、前記ウォータジャケットにおける前記位相の部分に挿入された状態の前記押圧部材に対し、前記楔部材が係合した状態で、前記開口部側から押し付けられて前記楔作用を得ることにより、
    前記シリンダ部の外周面における前記位相の部分に対する押圧を行うことを特徴とするシリンダブロックの加工用治具。
  12. 複数ある前記締結部それぞれに対応する、前記ウォータジャケットにおける前記位相の部分に、前記姿勢で挿入された状態の前記押圧部材それぞれに対して係合する、複数の前記楔部材を備えるとともに、該複数の前記楔部材を、前記挿入された状態の前記押圧部材に対応する配置状態で一体に連結する連結部材を備え、
    前記押圧部材を、その対応する前記楔部材に対して、該楔部材が係合可能な状態で支持する構成としたことを特徴とする請求項11に記載のシリンダブロックの加工用治具。
  13. 複数ある前記締結部それぞれに対応する、前記ウォータジャケットにおける前記位相の部分に、前記姿勢で挿入された状態の前記押圧部材それぞれに対して係合する、複数の前記楔部材を備えるとともに、該複数の前記楔部材それぞれに対して、該楔部材の前記開口部側からの押付けを行うための荷重を付与する荷重付与手段を備え、
    前記荷重付与手段により前記複数の前記楔部材に付与する前記荷重が均一となる構成としたことを特徴とする請求項11に記載のシリンダブロックの加工用治具。
  14. 前記荷重付与手段は、
    前記荷重を、流体圧とするものであり、
    前記流体圧により少なくとも前記楔部材の前記開口部側からの押付け方向に付勢可能に設けられる流体圧伝達部材と、該流体圧伝達部材を前記押付け方向を含む所定の摺動方向に移動可能に支持するとともに前記流体圧を前記流体圧伝達部材に作用させる流体圧室を形成する流体圧室形成部材と、を有し、
    前記流体圧室に対する前記流体圧の調整により、前記複数の前記楔部材に付与する前記荷重を均一とすることを特徴とする請求項13に記載のシリンダブロックの加工用治具。
  15. 前記荷重付与手段は、
    前記荷重を脈動的に変化させることにより、前記楔部材に微小振動を生じさせることを特徴とする請求項11〜14のいずれか一項に記載のシリンダブロックの加工用治具。
  16. 請求項10に記載のシリンダブロックの加工方法により加工されたシリンダブロックであって、
    前記圧入された状態の前記ピン部材を有することを特徴とするシリンダブロック。
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