JP4591393B2 - シリンダブロック製造方法、及びシリンダブロック - Google Patents
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Description
従って、シリンダブロックとシリンダヘッドの接合面には気密性が要求され、高圧のガスが抜けないようにするため、シリンダブロックとシリンダヘッドは、間にガスケットを挟んで高い締結力で締め付けられる必要がある。
このピストンには、外周部にピストンリングが嵌め込まれており、ボア部内壁と直接接触するのは、ピストンリングである。従って、ピストンは、ピストンリングを介してボア部内壁と接触し、摺動している。
このピストンリングには、燃焼室からの高圧ガスをシールし、摺動抵抗を軽減するためにクランクシャフト側から供給されるエンジンオイルをボア部内壁に適度に保持するという2つの機能がある。
このため、ピストンリングはバネ性のある素材で作られ、そして、ピストンリングの張力によって、ボア部内壁とピストンとの間のシール性と摺動性のバランスをとっている。
従って、ボア部内壁とピストンの形状精度が悪いと、ピストンリングの張力を上げてシール性を上げることになる。
この高圧ガスの漏れは、燃焼室での爆発力をピストンに伝達する力の低下に繋がり、エネルギーロスとなる。
また、摺動抵抗を軽減するためにクランクシャフト側から供給されるエンジンオイルは、ピストンリングによって必要最低限の薄さにシリンダ内壁に付くように管理されているが、ボア部内壁とピストンリングの隙間が大きくなると、エンジンオイルの付着量が多くなり、結果、エンジンオイルが燃焼室側に漏れることになる。
エンジンオイルが漏れることでエンジンオイルの消費量が上がり、燃焼室にエンジンオイルが多く入り込むと、混合気にエンジンオイルが混じり、燃焼効率が落ちるために燃費の低下にも繋がる。
近年は、高出力化が望まれると共に、環境にも配慮して燃費の向上の要望が高く、このような摺動抵抗の低減が求められている。従って、シリンダブロックのボア部内壁は数μmオーダーの形状精度が要求されるようになってきている。
これは、エンジン稼働時には、ボア部をピストンが摺動し、往復運動をする。この時、ピストン周りで発生するフリクションロスは、エンジン全体で発生するフリクションロスの3分の1にも当たるといわれており、このフリクションロスを解決できれば劇的に高効率なエンジンが実現できるからである。
しかしながら、前述のように、エンジンのシリンダブロックは高い締結力でシリンダヘッド等とボルトで締め付けられるため、シリンダブロックの締結部位での変形は避けられない。つまり、加工時と組み付け時、シリンダブロックの備えるシリンダの形状は異なってしまう点が問題となる。さらにエンジン稼働時では、高熱にさらされるために熱の影響も考慮する必要性に迫られる。高熱によって材料が膨張し、歪みが増幅されると、摺動抵抗は更に顕著になる。従って、シリンダブロックにおいては組み付け時において、数μmオーダーの高い形状精度が要求される。
このダミーヘッドとは、ヘッドを組み付けた状態と同等の締結力を発生させるための治具の一種であり、シリンダブロックにシリンダヘッドと同様にボルトで締結して固定し、加工時に使用するものである。このダミーヘッドを組み付けることによって、シリンダヘッドを組み付けた状態と同等の歪みがシリンダブロックに発生し、その状態でボア部の加工を行うため、仕上げ後に、シリンダヘッドを組み付ければ、加工時にと同等の真円度等の形状精度が再現できることになる。
ただし、このようなダミーヘッドを用いた加工は、ダミーヘッドを組み付け、加工後取り外すという手間がかかるため、生産性の向上においては阻害原因となり、コスト低減の妨げとなる。
図14には、特許文献1のシリンダヘッド加工用位置決め装置の一部断面正面図を示している。
特許文献1の方法では、基準金151、152の基準面上にシリンダヘッド140をシリンダヘッド押し付け装置162で上から抑えることにより、シリンダヘッド140の下面を全基準面に圧着させる。
これにより、シリンダヘッド140を、このシリンダヘッド140が図示しない特定のシリンダブロック150に固定されたときの形状変態と同等の形状変態に固定し、この状態でボーリングバー132によりカムシャフト穴をボーリング加工する。
このようにシリンダヘッド140が加工されるので、実際に図示しないシリンダブロックに組み付けられた際に、高いレベルの真直度をもつカムシャフト穴が得られる。
図15には、特許文献2の押圧装置の正面図を示している。
特許文献2の方法では、シリンダブロックAとロアケースBの結合面に形成されるジャーナル軸受け穴Jを真円加工するに際し、一対の押圧装置1Bの位置決めと載置部221にそれぞれシリンダブロックAを位置決めする。
そして、各シリンダブロックAの結合面とロアケースBの結合面とを突き合わせて、ボルト締結部に複数の押圧ピン215を等接させた後、各押圧ロット6Bを前進させる。
これにより、各シリンダブロックAとロアケースBにボルト締めと同等の変形を与えて、一方側のシリンダブロックA及びロアケースBに対して図示しない共加工具219でジャーナル軸受け穴Jの真円加工を行う。他方側のシリンダブロックA及びロアケースBに対して図示しない加工具で他の箇所を加工する。
このようにシリンダブロックAとロアケースBを固定し、押圧ピン215で押圧してジャーナル軸受け穴Jを共加工することによって、組み付け時に真円となるような加工を施すことが可能になる。
しかしながら、単純にボルト穴部分を押圧しただけでは、製品としてエンジンに組み付けられたシリンダブロックの歪みは再現できない。よって、そのまま加工しても製品としてエンジンに組み付けられたシリンダブロックの形状精度が数μmオーダーの高いレベルに維持することが出来ないことが問題となる。
シリンダブロック10は、シリンダヘッド20と組み付けられる際に、シリンダブロック10と、シリンダヘッド20の間にシール用のガスケット15が挟まれる。
そして、シリンダブロック10には、前述のように冷却用のウォータジャケット11が設けられるため、ウォータジャケット11の外側に外壁12とヘッドボルト締結穴12aを備えることになる。
従来技術における一般的なシリンダブロック10と、シリンダヘッド20を組み付けた状態のエンジンは図13のような状態である。
従って、シリンダブロック10の外壁12とボア部10aの接続部あたりでは、外側に引っ張られる力F3が発生して、ボア部10aに変形を生じることになる。この変形量は微量ではあるが、ピストンの上下運動及び、高圧ガスやエンジンオイルのシールにとっては好ましいものではなく、燃費の悪化や性能の低下に繋がることとなる。
このように、複雑な力の関係が発生するので、加工時において、特許文献1や特許文献2のように単純に押圧するだけでは、製品としてエンジンに組み付けられたシリンダブロックの歪みは再現出来ない。
(1)ピストンが摺動するボア部と、前記ボア部を冷却するためのウォータジャケット部と、前記ウォータジャケット部を覆う外壁部を有するエンジンのシリンダブロックの、前記ボア部を仕上げ加工するシリンダブロック製造方法において、前記シリンダブロックが、前記外壁部が備えるヘッドボルト締結穴の先端から所定の距離離間した、前記外壁部をクランクシャフト側から押圧するための、受圧部を備え、前記シリンダブロックのアッパーデッキ面を押圧する第1押圧部を有する、第1クランプと、前記受圧部を押圧する第2押圧部を有する、第2クランプがあって、前記シリンダブロックを、前記第1クランプと前記第2クランプとで加圧し、前記アッパーデッキ面側から、前記ボア部を加工することを特徴とする。
また、ここでいう「ヘッドボルト締結穴」とは、ヘッドボルト締結部にあたり、シリンダブロックにシリンダヘッドを組み付けるために設けられるヘッドボルトを締結するための雌ねじ加工が施された穴のことを指している。
従って、ここでいう「ヘッドボルト締結穴の先端から所定の距離」は、シリンダブロックに設けられた雌ねじ穴の先端からの所定の距離を指す。
また、ここでいう「所定の距離離間」とは、シリンダブロックにクランクキャップ側から押圧が加えられる際に、ヘッドボルト締結穴であるシリンダブロックの外壁部に設けられた雌ねじ加工された穴の先端から、第2押圧部が当接する位置までの距離のことであり、シリンダブロックの有する肉厚を指す。この厚みは、製品としてエンジンに組み付けられたシリンダブロックの歪みを再現するために、第1押圧部及び第2押圧部によって発生される押圧力に耐えうるだけの剛性を有する。
(4)(3)に記載するシリンダブロック製造方法において、前記上側クランプの有する前記第1押圧部が、第1押圧突起と第2押圧突起と逃がし空間を有し、前記第1押圧突起は、シリンダヘッドガスケットが有するシール用ビード部のうち、ボア部を押圧する部分に対応して位置し、前記第2押圧突起は、前記シール用ビード部のうち、前記シリンダブロックのアッパーデッキ面外周を押圧する部分に対応して位置し、前記逃がし空間が、前記シール用ビード部のうち、ヘッドボルトの座面に対応して位置し、前記シリンダブロックを前記上側クランプが固定し加圧する際に、前記シリンダブロックのアッパーデッキ面に前記第1押圧部の前記第1押圧突起と前記第2押圧突起とを当接させることを特徴とする。
前記挿入穴に、前記第2押圧部を挿入し、押圧して加工することを特徴とする。
(6)(5)に記載するシリンダブロック製造方法において、前記挿入穴が、座繰り形状穴であり、前記座繰り形状穴に、前記第2押圧部を挿入し、押圧して加工することを特徴とする。
(7)(1)乃至(4)のいずれかに記載するシリンダブロック製造方法において、前記受圧部が、前記シリンダブロックの側面に孔設された側面穴であり、前記シリンダブロックに4カ所設けられ、前記第2クランプの有する前記第2押圧部を、前記シリンダブロック側面から前記側面穴に挿入し、前記第1クランプ側に押圧して加工することを特徴とする。
この厚みは、「完成品としてシリンダヘッドと前記シリンダブロックの間にシリンダヘッドガスケットを挟んでヘッドボルトで締結した際に前記ボア部に発生する歪みと同等の歪みを、発生」させた時にシリンダブロックが塑性変形しないだけの強度を有する程度の「所定の」厚みを有している。
ここでいう「完成品としてシリンダヘッドと前記シリンダブロックの間にシリンダヘッドガスケットを挟んでヘッドボルトで締結した際に前記ボア部に発生する歪みと、同等の歪み」とは、製品としてエンジンに組み付けられたシリンダブロックの歪みを再現することと同義であり、シリンダヘッドとシリンダブロックの間に、シリンダヘッドガスケットを挟んで、製品時の規定トルクでヘッドボルトを締め、シリンダヘッドとシリンダブロックを一体化した際に、シリンダブロックの備えるボア部に発生する歪みのことを指している。
(1)シリンダブロックのアッパーデッキ面を押圧する第1押圧部を有する、第1クランプと、受圧部を押圧する第2押圧部を有する、第2クランプがあって、シリンダブロックを、第1クランプでアッパーデッキ面を、第2クランプでヘッドボルト締結穴の先端から所定の距離離間した受圧部をクランクシャフト側から押圧し、アッパーデッキ面側から、ボア部を加工するシリンダブロック製造方法であることを特徴とするので、ダミーヘッドを用いずに、製品としてエンジンに組み付けられたシリンダブロックの歪みを再現して、ボア部の加工を行い、組み付け時に高い形状精度を得ることが出来るという優れた効果を奏する。
また、シリンダブロックとシリンダヘッドを組み付ける際にアッパーデッキ面に当接し押圧する部分でクランクシャフト側に押し付けられる力が発生する。
このような上下2つの力によって、シリンダブロックのボア部と外壁の接続部で歪みを発生するのである。
この歪みを、第1クランプと第2クランプで挟み込み、押圧することによって、第1クランプからはアッパーデッキ面に第1押圧部によって、第2クランプからは受圧部を第2押圧部によって押圧することで再現し、その状態でボア部を加工する。このため、ダミーヘッドを用いることなく、製品としてエンジンに組み付けられたシリンダブロックの歪みを再現して、ボア部の加工を行い、高い形状精度を有することが可能となる。
このため、シリンダブロックとシリンダヘッドを組み付けた際に、第1押圧部がボア部のアッパーデッキ面に当接することで、製品となる際にシリンダブロックとシリンダヘッドの間にシリンダヘッドガスケットを挟んだ際に、シリンダヘッドガスケットのビード部が発生する押圧力と、ヘッドボルトが引っ張り上げる力を再現することが可能となる。
これによって、仕上げ加工の精度は、そのまま製品完成後の精度となり、ボア部の形状精度を高めることが容易になる。
さらに、第2押圧突起及び逃がし空間を設けることで、シールビード部を正確に再現することになり、力が分散する分(2)よりも大きな押圧力を必要とするが、シリンダブロックにシリンダヘッドを組み付けた際の歪みをより正確に再現することが可能となる。
これによって、仕上げ加工の精度は、そのまま製品完成後の精度となり、ボア部の形状精度を高めることが容易になる。
これによって、仕上げ加工の精度は、そのまま製品完成後の精度となり、ボア部の形状精度を高めることが容易になる。
ヘッドボルト締結穴と対向する側に、ヘッドボルト締結穴と同数だけ挿入穴を設けることは、設計上の制約から困難な場合がある。
例えば直列4気筒のエンジンであれば、ヘッドボルト締結穴は1気筒当たり4つ設けられていた場合には10カ所にも及ぶ。したがって、(5)の挿入穴もクランクキャップ側から10カ所設ける必要がある。しかしながら、クランクシャフトの形状や、オイルギャラリ、ウォータジャケット等を配置する必要があるため、部分的に挿入穴を設けることが出来ない場合も考えられる。
この場合、(5)のように、ヘッドボルト締結穴と対向する側に挿入穴をヘットボルト締結穴と同じ数だけ設けて押圧するのではなく、シリンダブロック側面に側面穴を設け四隅の4カ所で押圧するため、製品となる際にシリンダブロックとシリンダヘッドの間にシリンダヘッドガスケットを挟みヘッドボルトで締結して組み付けた時に発生する歪みによる形状変化を完全に再現することは難しい。
ただし、歪みの影響の強い端の気筒には、歪みによる形状変化をほぼ再現することが可能なので、ヘッドボルト締結穴と対向する側に挿入穴をヘットボルト締結穴と同じ数だけ設けることに設計上の制約がある場合に有効である。
これによって、仕上げ加工の精度は、そのまま製品完成後の精度となり、ボア部の形状精度を高めることが容易になる。
これによって、仕上げ加工の精度は、ほぼ製品完成後の精度となり、ボア部の形状精度を高めることが容易になる。
以下、本発明の第1実施例について図面を用いて説明する。
まず、第1実施例の構成について説明する。
図1は、上側クランプと下側クランプでシリンダブロックを挟み込んでいる立体斜視図を示している。また、図2は、図1の分解斜視図を示している。
図3は、図1のAA断面図を示している。
第1実施例のワークは、エンジンのシリンダブロック10であり、図示しないピストンが摺動するボア部10aを備え、図2に示すような、エンジン稼働中に冷却水を流しボア部10aを冷却するためのウォータジャケット11をボア部10aの周囲に備えている。ウォータジャケット11の外側には、外壁12が設けられている。なお、図2ではオープンデッキタイプのシリンダブロック10を示しているが、クローズドデッキタイプにも適応は可能である。
このシリンダブロック10は、複雑な構造を有しているので、アルミニウムや鉄の鋳造品であることが多い。特に、近年は軽量化と高剛性化を図るためにADC11等のアルミニウム合金を用いて、ダイカスト鋳造等で薄肉に作られることが多い。
また、シリンダブロック10の外壁12には、アッパーデッキ面13からヘッドボルト締結穴12aが設けられ、図示しないシリンダヘッド20を組み付けるのに用いられる。
ヘッドボルト締結穴12aは、エンジンの出力等や設計のコンセプトによって左右されるが、ガソリンエンジン用であればM10、ディーゼルエンジン用であればM12程度であることが多い。穴の深さはネジの径の2倍以上必要で、通常は安全率を見て長めに設定される。
この座繰り形状穴10bは、シリンダブロック10に設けられるヘッドボルト締結穴12aと同数設けられている。
第1実施例では直列4気筒エンジン用のシリンダブロック10であるので、ボア部10aは4つ、ヘッドボルト締結穴12aは10カ所、対応する座繰り形状穴10bも10カ所設けられている。
座繰り形状穴10bは後述するピン状突起41が入る為の穴であり、図2に示すようにヘッドボルト締結穴12aの対向する位置に設けられ、ヘッドボルト締結穴12aの中心線上に中心を持つ円筒形の穴であり、ヘッドボルト締結穴12aの先端付近までの深さを有している。
ヘッドボルト締結穴12aの先端と、座繰り形状穴10bの先端の距離12bは、所定の厚みが必要となる。この厚みは、課題で説明した、シリンダブロック10にシリンダヘッド20をヘッドボルトで締結した際に発生する力で塑性変形してしまわない程度の剛性が得られるだけの厚みが必要となる。
座繰り形状穴10bの径は設計の許す範囲で太い方が好ましい。
この場合、クランクキャップボルト穴14を大きく設け、ヘッドボルト締結穴12aの先端から所定の距離までの深さを有する必要があるが、わざわざ座繰り形状穴10bを設けなくとも良くなるというメリットはある。
クランクキャップ18をシリンダブロック10に組み付けた状態で加工するのは、シリンダブロック10の状態をより製品完成時に近づける目的である。ただし、シリンダヘッド20を組み付けるヘッドボルト16に比べて、クランクキャップボルト17は締結トルクが低いため、ボア部10aに及ぼす影響はヘッドボルト16程大きくない。従って、クランクキャップ18を組み付けていない状態でシリンダブロック10を加工したとしても、上側クランプ30と下側クランプ40のクランプ力を調整する等の方法で、対応することが可能である。
上側クランプ30の上部からは加工工具50で、シリンダブロック10に備えるボア部10aの加工を行う。
上側クランプ30には、加工工具50が通過するための加工穴30aが設けられている。加工穴30aはシリンダブロック10のボア部10aと同数用意されており、ボア部10aの開口部よりも若干大きめに設定されている。また、上側クランプ30の厚みは、シリンダブロック10をクランプする際に発生する圧力を受けるだけの剛性が必要であり、材質によってその剛性が変わるため、必要強度に応じた厚みが必要である。
また、上側クランプ30には、図3に示すように、第1押圧部に相当するボア部押圧突起31bとビード部押圧突起31aを設けられている。
このボア部押圧突起31b及びビード部押圧突起31aは、シリンダブロック10がシリンダヘッド20と組み付けられる際に挟まれるガスケット15の有するビードの形状に対応する。即ち、シリンダブロック10とシリンダヘッド20が組み付けられた状態で、力が集中する部分に対応してボア部押圧突起31b及びビード部押圧突起31aが設けられている。
ただし、上側クランプ30には図3に示すように、逃がし空間32を設けてやる必要がある。逃がし空間32は、シリンダブロック10のアッパーデッキ面13にあるヘッドボルト締結穴12aの周囲のうち、内側部分に該当する。
また、下側クランプ40には、図1及び図2に示されるように、ピン状突起41が複数本設けられている。このピン状突起41は、シリンダブロック10の有する座繰り形状穴10bに対応する本数だけ設けられ、シリンダブロック10を挟む際には、座繰り形状穴10bの中にピン状突起41が入り込む。第1実施例では直列4気筒のエンジンであるので、ピン状突起41は10本設けられている。
ピン状突起41は下側クランプ40に、シリンダブロック10を均等な力で押し付けることが可能なように設けられると良い。例えば、摺動可能に保持され、ピン状突起41の下部に操作ポートを共通に接続されるピン状突起41と同数の図示しない油圧シリンダで個別に接続されれば、シリンダブロック10の有する座繰り形状穴10bの深さが不均一であっても、操作ポートを共通にする油圧シリンダでピン状突起41が押されるので、シリンダブロック10を均等な力で上側クランプ30に押し付けることが出来る。
このような油圧シリンダを設備側に用意すれば、シリンダブロック10に設ける座繰り形状穴10bの深さが不均一であっても良くなるため、座繰り形状穴10bは鋳造した後、機械加工で追加工を行わなくても良くなる。
シリンダブロック10のアッパーデッキ面13は、ボア部10aの高さをそろえる等の目的で必ず機械加工を施す。従って、アッパーデッキ面13を基準にして、機械加工を行えば座繰り形状穴10bの高さをそろえることが可能であり、座繰り形状穴10bの高さがそろっていることで、設備側へ油圧シリンダ等の機構を備える必要が無くなる。
そして、下側クランプ40に備えられるピン状突起41で、シリンダブロック10に均等な力をかけると、シリンダブロック10のアッパーデッキ面13を上側クランプ30がボア部押圧突起31b及びビード部押圧突起31aによって押圧し、下側クランプ40がピン状突起41によって座繰り形状穴10bをクランクキャップ18側から押圧する。
この状態でボア部10aを加工工具50で加工することで、ダミーヘッドをシリンダブロック10に組み付けて加工した場合と同等の効果が得られる。
まず、図4に図8に示した一般的なシリンダブロックにシリンダヘッドを組み付けた状態でのボア部と外壁部の結合部付近の形状測定結果を示す。
図4は、ボア部と外壁部の結合部付近の断面図に、形状測定結果を重ねた状態を示している。
シリンダブロック10がエンジンとして製品化された場合には、図8に示すように、シリンダブロック10とシリンダヘッド20がガスケット15を挟んで、ヘッドボルト16で所定のトルクで締結される。その結果、シリンダブロック10のアッパーデッキ面13にも歪みが現れる。
図4のボア部10aはエンジンの先端側の1番の気筒であり、ウォータジャケット11とヘッドボルト締結穴12aとの相対位置をわかりやすいようにボア部10aと外壁12の結合部よりも若干上の部分を示している。
ボア部10aの測定結果はボア部表面輪郭線10cで示されている。ボア部表面輪郭線10cの内側と外側には基準線SLを描いている。なお、ウォータジャケット11及び、ボア部10aの外壁の線は変形を考慮した図にはなっていない。
図4の示す通り、ボア部10aのボア部表面輪郭線10cは、基準線SLの間でいびつに変形しており、外壁12とボア部10aの結合部では、このような歪みが発生していることが分かる。特に、ヘッドボルト締結穴12aが設けられる4点から矢印で示す方向に影響が強い。
内側の基準線SLと外側の基準線SLの間の間隔が9μmなので、ボア部表面輪郭線10cは10μm程度の歪みが発生していることが分かる。
図5に、上側クランプ30と下側クランプ40に挟まれたシリンダブロック10がどの様な力を受けるかを示す断面図を示す。
上側クランプ30に備えられるボア部押圧突起31bとビード部押圧突起31aが、シリンダブロック10のアッパーデッキ面13を押圧するため、下向きの力F2を発生する。
一方、下側クランプ40に備えられるピン状突起41が、上向きの力F1を発生して外壁12を押し、逃がし空間32が設けられることで、図8に示す下向きの力F2と同等の力を再現することが可能となる。
従って、ダミーヘッドを用いなくとも、上側クランプ30と下側クランプ40でシリンダブロック10をクランプし、押圧することで、上向きの力F1及び下向きの力F2を発生することが可能である。
図6は、ボア部10aの内側輪郭についての歪の解析を行い、その歪みを立体的に表したものである。
縦軸は上面からの距離を示し、横軸は基準からの変位量を示している。また、中心線CLを基準にしてボア部10aのボア部表面輪郭線10cが描かれており、周囲に縦描かれる細線がボア部10aの歪みを示しており、その変形量が歪みの大きさを示している。
ボア部表面輪郭線10cの形状は、高さh1で特に変形が大きいことが分かる。この高さのBB切断面図が図7に示されている。
図7では、ボア部表面輪郭線10cが基準線SLの中心と同一の中心で描かれ、周囲の4カ所には、ヘッドボルト16が締結される位置を示している。
図7から、ボア部10aのボア部表面輪郭線10cは、ヘッドボルト16と同じ位相で大きく歪んでいる様子が分かる。特に、右側が大きく変形している。
右側が大きく変形している理由は、図7の右側がエンジン先端方向であり、直列4気筒エンジンの1番の気筒に対して解析を行った結果を示しているためである。右側は2番の気筒が接しているために、剛性が高く変形量が少なくなる。
また、図6から、高さh1でボア部10aの歪みの大きさが最も大きくなっており、この高さは、ボア部10aと外壁12との接続部の高さと一致する。
従ってこの結果から、上側クランプ30と下側クランプ40に固定され加圧されたシリンダブロック10が、図5に示す上向きの力F1と、下向きの力F2を受け、外側に引っ張られる力F3が発生することで、ボア部10aに力がかかり、結果的にボア部10aの形状変位として現れたものと判断できる。
このように、上側クランプ30と下側クランプ40で固定し、加圧した状態でシリンダブロック10を加工することでも、図4に示した測定結果とほぼ同様の結果が得られることが分かる。
即ち、図5のモデルと、図8のモデルで同種類の力が発生したことを意味するので、上側クランプ30と下側クランプ40で固定し、加圧した状態のシリンダブロック10は、製品としてエンジンに組み付けられたシリンダブロック10の歪みを再現することが可能であり、この状態で加工を施すことにより、その加工精度が製品の精度となる。
(1)ピストンが摺動するボア部10aと、ボア部10aを冷却するためのウォータジャケット11と、ウォータジャケット11を覆う外壁12を有するエンジンのシリンダブロック10の、ボア部10aを仕上げ加工するシリンダブロック製造方法において、シリンダブロック10が、外壁12が備えるヘッドボルト締結穴12aの先端から所定の距離12bだけ離間した、外壁12をクランクシャフト側から押圧するための、受圧部を備え、シリンダブロック10のアッパーデッキ面13を押圧するボア部押圧突起31b及びビード部押圧突起31a及び空間32を有する、上側クランプ30と、受圧部を押圧するピン状突起41を有する、下側クランプ40があって、シリンダブロック10を、上側クランプ30と、下側クランプ40とで加圧し、アッパーデッキ面13側から、ボア部10aを加工することを特徴とするので、ダミーヘッドを用いずに、製品としてエンジンに組み付けられたシリンダブロック10の歪みを再現して、ボア部10aの加工を行い、組み付け時に高い形状精度を得ることが出来るという優れた効果を奏する。
このような上下2つの力によって、シリンダブロック10のボア部10aと外壁12の接続部で歪みを発生する。
この歪みを、上側クランプ30と下側クランプ40で固定することによって、上側クランプ30からはアッパーデッキ面13にボア部押圧突起31b及びビード部押圧突起31aによって、下側クランプ40からは外壁12をピン状突起41によって押圧することで再現し、その状態でボア部10aを加工する。その結果、ダミーヘッドを用いることなく、製品としてエンジンに組み付けられたシリンダブロック10の歪みを再現して、ボア部10aの加工を行い、高い形状精度を有することが可能となる。
このため、シリンダブロック10とシリンダヘッド20を組み付けた際に、ボア部押圧突起31bがボア部10aのアッパーデッキ面13に当接することで、製品となる際にシリンダブロック10とシリンダヘッド20の間にガスケット15を挟んだ際に、ガスケット15のビード部が発生する押圧力と、ヘッドボルト16が引っ張り上げる力を再現することが可能となる。
これによって、仕上げ加工の精度は、そのまま製品完成後の精度となり、ボア部10aの形状精度を高めることが容易になる。
さらに、ビード部押圧突起31a及び逃がし空間32を設けることで、シールビード部を正確に再現することになり、力が分散する分(2)よりも大きな押圧力を必要とするが、シリンダブロック10にシリンダヘッド20を組み付けた際の歪みをより正確に再現することが可能となる。
これによって、仕上げ加工の精度は、そのまま製品完成後の精度となり、ボア部10aの形状精度を高めることが容易になる。
これによって、仕上げ加工の精度は、そのまま製品完成後の精度となり、ボア部10aの形状精度を高めることが容易になる。
これによって、仕上げ加工の精度は、そのまま製品完成後の精度となり、ボア部10aの形状精度を高めることが容易になる。
以下、本発明の第2実施例について図面を用いて説明する。
まず、第2実施例の構成について説明する。
図8は、上側クランプ30と側面挿入クランプ42でシリンダブロック10を挟み込んでいる立体斜視図を示している。
第2実施例のシリンダブロック10は縦置きレイアウトの直列4気筒エンジンであるので、左側がエンジンのフロント側となり、シリンダブロック10に設けられる気筒は、左側が1番で、右端は4番の気筒となる。4番側には図示されないクラッチやトランスミッション等が接続され、プロペラシャフトに駆動力を伝える構造になっている。
そして、第2実施例のワークは、第1実施例と同様シリンダブロック10であり、シリンダブロック10は、第1実施例とほぼ同じ構成である。ただし、シリンダブロック10のアッパーデッキと対向する位置、すなわちクランクシャフト側の面に座繰り形状穴10bを設ける代わりに、シリンダブロック10の側面の4カ所に、側面穴10dを設けてある。
また、側面穴10dは、ヘッドボルト締結穴12aのクランクシャフト側に所定の距離12bだけ離間した部分を、後述するクランプアーム部42aで押圧出来る位置にあけられている。この位置は、第1実施例の座繰り形状穴10bとほぼ同じ深さまで設けられていることになる。図8の1番の気筒側に2カ所の側面穴10dが設けられていることが分かる。
なお、図8にはレイアウトの関係で図示されないが、側面穴10dは4番の気筒側の同じ高さに残り2カ所が設けられている。
この側面穴10dは、鋳造時に形成されても、鋳造後に設けられても良い。
上側クランプ30の形状は図9(a)、(b)に示す。
図9(a)には、上側クランプ30の側面図を示している。また、図9(b)には、上側クランプ30の押圧面側の平面図を示している。
このように、上側クランプ30はボア部押圧突起31bを備えており、このボア部押圧突起31bは、シリンダブロック10のアッパーデッキ面13を押圧する。
ボア部押圧突起31bは、ボア部10aのアッパーデッキ面13とほぼ同じ形状をしており、アッパーデッキ面13と接触する面は、ガスケット15の形状を考慮して設けられている。
一方、側面挿入クランプ42は、第2押圧部に相当するクランプアーム部42aと油圧シリンダ部42bを備え、昇降自在に設けられている。
また、側面挿入クランプ42は、1つのシリンダブロック10に対して4つ設けられ、シリンダブロック10の4カ所に設けられた側面穴10dに、クランプアーム部42aを挿入し、アッパーデッキ面13側に押圧可能に設けられている。
シリンダブロック10を、図8に示すように上側クランプ30で上部から押圧し、クランプアーム部42aを側面穴10dに挿入し、油圧シリンダ部42bでクランプアーム部42aをアッパーデッキ面側に上昇させることで、シリンダブロック10の外壁12に変形を加える、
図10に、上側クランプ30と側面挿入クランプ42でシリンダブロック10を挟み込んでいる状態の力の関係を示した模式図を示す。
このように、外壁12は側面挿入クランプ42によって、上向きの力F1が再現され、一方、上側クランプ30の備えるボア部押圧突起31bによって、下向きの力F2が再現される。
この上向きの力F1及び下向きの力F2によって、外側に引っ張られる力F3が働くことになり、ボア部10a内壁面は歪むことになる。
これら、上向きの力F1、下向きの力F2、及び外側に引っ張られる力F3は、実際にシリンダブロック10に、ガスケット15を挟んでシリンダヘッド20を組み付けた際にも発生する力であり、この状態でホーニング加工を行えば、製品としてシリンダブロック10をエンジンに組み付けた際に、ボア部10aの真円度を高めることが出来る。
図11に、図7の1番目の気筒を解析した結果と、2番目の気筒を解析した結果を比較した図を示す。
1番目気筒ボア部表面輪郭線10caは、図7のボア部表面輪郭線10cと同じ1番目の気筒のボア部表面輪郭線10cについて解析した結果を示すものであり、2番目気筒ボア部表面輪郭線10cbは、2番目の気筒のボア部表面輪郭線10cについて解析した結果を示すものである。
このように、1番目気筒ボア部表面輪郭線10caと2番目気筒ボア部表面輪郭線10cbでは形状が異なり、2番目気筒ボア部表面輪郭線10cbの方が歪みの影響が少ないことが分かる。
このことは、気筒同士が隣り合うために起こる。すなわち、1番目の気筒のエンジンフロント方向側には、隣り合う気筒がないために歪みが大きくなり、1番目の気筒のエンジンフロント方向と逆側には、2番目の気筒があるために外壁12を共有し、ヘッドボルト締結穴12aも共有するため、歪みは半分で済むのである。2番目の気筒、3番目の気筒も同じ効果で歪みは大きくならない。そして、4番目の気筒の図示しないクラッチ側は、隣に気筒がないために歪みが大きくなるのである。
厳密に言えば4番目の気筒側には、図示しないクラッチやトランスミッション等が接続されるため、剛性が高く、1番目の気筒ほど歪みは高く出ない。ただし、その影響は軽微であるため、ほぼ同様の歪みが出ると考えて差し支えない。
図12は、条件を変えてボア部表面輪郭線10cの歪みを計測し、4次歪み成分を比較したグラフである。
縦軸は、4次歪み成分の大きさを示し、値が大きくなるほどボア真円度が悪化することを示している。横軸は、アッパーデッキ面からの距離を示している。
この図12のうち、シリンダヘッド組付時歪曲線21は、シリンダヘッド20の仕上げ加工時にダミーヘッド等組み付けず、そのまま加工した場合の4次歪みの値を比較のために示している。一方、ブロック上面押圧歪曲線22と、ボア上面押圧歪曲線23は、それぞれ、シリンダブロック10のアッパーデッキ面13全面を押圧しながら、ホーニング加工した場合と、シリンダブロック10のボア部10a外壁上面を押圧する第2実施例の方法で、ホーニング加工した場合について示している。
このように、ボア部10aの歪みを少なくすることで、図示しないピストン周りの摺動抵抗を削減し、エンジンの燃費を向上させる効果がある。
また、ブロック上面押圧歪曲線22とボア上面押圧歪曲線23を比較した場合も、その歪みは小さくなっていることが分かる。これは、ボア部押圧突起31bによってボア部10aの外筒上面だけを押圧した方が、よりシリンダブロック10にガスケット15を挟んでシリンダヘッド20を組み付けた際に発生する歪みを再現し易いためである。
これは、上側クランプ30にボア部押圧突起31bのみ設けた方が、シリンダブロック10にガスケット15を挟んでシリンダヘッド20を組み付けた際に発生する歪みを再現し易いためである。これは、ビード部押圧突起31aによって、押圧力が分散してしまうからであり、上側クランプ30にボア部押圧突起31bのみを設けて、押圧する場合の方が、小さな押圧力で歪みを再現することが可能となり、その結果は図12に示す通りである。
ただし、より正確に再現するためには、ガスケット15を忠実に再現し、第1実施例のように上側クランプ30にビード部押圧突起31a及びボア部押圧突起31bの両方を設け、シリンダブロック10を押圧した方が好ましい。
なお、図12で、ボア上面押圧歪曲線23は高さh1よりもアッパーデッキ面13より遠くなる部分で再び歪みが大きくなる傾向にあるが、これは擬似的にシリンダブロック10にガスケット15を挟んでシリンダヘッド20を組み付けた際に発生する歪みを再現しているために起こっている。
ただし、この部分は図示しないピストンの摺動範囲外になるので、ピストンの摺動抵抗とはならず、燃費にも影響しない。
(1)ピストンが摺動するボア部10aと、ボア部10aを冷却するためのウォータジャケット11と、ウォータジャケット11を覆う外壁12を有するエンジンのシリンダブロック10の、ボア部10aを仕上げ加工するシリンダブロック製造方法において、シリンダブロック10が、外壁12が備えるヘッドボルト締結穴12aの先端から所定の距離12bを離間した、外壁12をクランクシャフト側から押圧するための、受圧部を備え、シリンダブロック10のアッパーデッキ面13を押圧する第1押圧部を有する、上側クランプ30と、受圧部を押圧する第2押圧部を有する、側面挿入クランプ42があって、シリンダブロック10を、上側クランプ30と、側面挿入クランプ42とで加圧し、アッパーデッキ面13側から、ボア部10aを加工することを特徴とするので、ダミーヘッドを用いずに、製品としてエンジンに組み付けられたシリンダブロック10の歪みを再現して、ボア部10aの加工を行い、組み付け時に高い形状精度を得ることが出来るという優れた効果を奏する。
また、シリンダブロック10とシリンダヘッド20を組み付ける際にアッパーデッキ面13に当接し押圧する部分でクランクキャップ18側に押し付けられる下向きの力F2が発生する。
このような、上向きの力F1、下向きの力F22つの力によって外側に引っ張られる力F3が発生し、シリンダブロック10のボア部10aと外壁12の接続部で歪みを発生するのである。
この歪みを、上側クランプ30と側面挿入クランプ42で挟み込み、固定することによって、上側クランプ30からはアッパーデッキ面13にボア部押圧突起31bによって、側面挿入クランプ42からは外壁12をクランプアーム部42aによって押圧することで再現し、その状態でボア部10aを加工する。このため、ダミーヘッドを用いることなく、製品としてエンジンに組み付けられたシリンダブロック10の歪みを再現して、ボア部10aの加工を行い、高い形状精度を有することが可能となる。
このため、シリンダブロック10とシリンダヘッド20を組み付けた際に、ボア部押圧突起31bがボア部10aのアッパーデッキ面13に当接することで、製品となる際にシリンダブロック10とシリンダヘッド20の間にガスケット15を挟んだ際に、ガスケット15のビード部が発生する押圧力と、ヘッドボルト16が引っ張り上げる力を再現することが可能となる。
これによって、仕上げ加工の精度は、そのまま製品完成後の精度となり、ボア部10aの形状精度を高めることが容易になる。
ヘッドボルト締結穴12aと対向する側に、ヘッドボルト締結穴12aと同数だけ座繰り形状穴10bを設けることは、設計上の制約から困難な場合がある。
例えば直列4気筒のエンジンであれば、ヘッドボルト締結穴12aは1気筒当たり4つ設けられていた場合には10カ所にも及ぶ。したがって、第1実施例の座繰り形状穴10bもクランクキャップ18側から10カ所設ける必要がある。しかしながら、クランクシャフトの形状や、オイルギャラリ、ウォータジャケット11等を配置する必要があるため、部分的に座繰り形状穴10bを設けることが出来ない場合も考えられる。
この場合、第1実施例のように、ヘッドボルト締結穴12aと対向する側に座繰り形状穴10bをヘッドボルト締結穴12aと同じ数だけ設けて押圧するのではなく、シリンダブロック10側面に側面穴10dを設け4カ所で押圧するため、製品となる際にシリンダブロック10とシリンダヘッド20の間にガスケット15を挟みヘッドボルト16で締結して組み付けた時に発生する歪みによる形状変化を完全に再現することは難しい。
ただし、歪みの影響の強い端の気筒には、歪みによる形状変化をほぼ再現することが可能なので、ヘッドボルト締結穴12aと対向する側に座繰り形状穴10bをヘッドボルト締結穴12aと同じ数だけ設けることに設計上の制約がある場合に有効である。
これによって、仕上げ加工の精度は、ほぼ製品完成後の精度となり、ボア部10aの形状精度を高めることが容易になる。
例えば、第1実施例ではヘッドボルト締結穴12aと座繰り形状穴10bを同芯としているが、シリンダブロック10の形状によっては、芯をずらすことで、製品としてエンジンに組み付けられたシリンダブロックの歪みを再現するのに適した場所になることも考えられるし、設計的な制限によってその近傍にしか座繰り形状穴10bが設けられない場合も考えられる。従って、ヘッドボルト締結穴12aと座繰り形状穴10bの芯をずらすことを妨げないし、座繰り形状穴10bの形状も特に円筒形に制限するものではない。
10a ボア部
10b 座繰り形状穴
10c ボア部表面輪郭線
10d 側面穴
11 ウォータジャケット
12 外壁
12a ヘッドボルト締結穴
12b 距離
13 アッパーデッキ面
15 ガスケット
16 ヘッドボルト
20 シリンダヘッド
30 上側クランプ
30a 加工穴
31a ビード部押圧突起
31b ボア部押圧突起
32 逃がし空間
40 下側クランプ
41 ピン状突起
42 側面挿入クランプ
42a クランプアーム部
42b 油圧シリンダ部
50 加工工具
F1 上向きの力
F2 下向きの力
F3 外側に引っ張られる力
Claims (10)
- ピストンが摺動するボア部と、前記ボア部を冷却するためのウォータジャケット部と、前記ウォータジャケット部を覆う外壁部を有するエンジンのシリンダブロックの、前記ボア部を仕上げ加工するシリンダブロック製造方法において、
前記シリンダブロックが、前記外壁部が備えるヘッドボルト締結穴の先端から所定の距離離間した、前記外壁部をクランクシャフト側から押圧するための、受圧部を備え、
前記シリンダブロックのアッパーデッキ面を押圧する第1押圧部を有する、第1クランプと、
前記受圧部を押圧する第2押圧部を有する、第2クランプがあって、
前記シリンダブロックを、前記第1クランプと前記第2クランプとで加圧し、
前記アッパーデッキ面側から、前記ボア部を加工することを特徴とするシリンダブロック製造方法。 - 請求項1に記載するシリンダブロック製造方法において、
前記第1クランプの有する前記第1押圧部は、シリンダヘッドガスケットが有するシール用ビード部のうち、ボア部外筒のアッパーデッキ面を押圧する部分に対応して位置し、
前記シリンダブロックを前記第1クランプが固定し加圧する際に、前記シリンダブロックのアッパーデッキ面に前記第1押圧部を当接させることを特徴とするシリンダブロック製造方法。 - 請求項1に記載するシリンダブロック製造方法において、
前記第1クランプが上側クランプであり、前記第2クランプが下側クランプであって、
前記シリンダブロックを、前記上側クランプと前記下側クランプで固定して加圧し、
前記上側クランプ側から、前記ボア部を加工することを特徴とするシリンダブロック製造方法。 - 請求項3に記載するシリンダブロック製造方法において、
前記上側クランプの有する前記第1押圧部が、第1押圧突起と第2押圧突起と逃がし空間を有し、
前記第1押圧突起は、シリンダヘッドガスケットが有するシール用ビード部のうち、ボア部を押圧する部分に対応して位置し、
前記第2押圧突起は、前記シール用ビード部のうち、前記シリンダブロックのアッパーデッキ面外周を押圧する部分に対応して位置し、
前記逃がし空間が、前記シール用ビード部のうち、ヘッドボルトの座面に対応して位置し、
前記シリンダブロックを前記上側クランプが固定し加圧する際に、前記シリンダブロックのアッパーデッキ面に前記第1押圧部の前記第1押圧突起と前記第2押圧突起とを当接させることを特徴とするシリンダブロック製造方法。 - 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載するシリンダブロック製造方法において、
前記第2クランプの有する前記第2押圧部が、前記ヘッドボルト締結穴と同数のピン状突起であり、
前記受圧部が、前記シリンダブロックの前記ヘッドボルト締結穴と対向する側に、前記ヘッドボルト締結穴の先端から前記所定の距離まで達する深さを有する挿入穴であり、
前記挿入穴に、前記第2押圧部を挿入し、押圧して加工することを特徴とするシリンダブロック製造方法。 - 請求項5に記載するシリンダブロック製造方法において、
前記挿入穴が、座繰り形状穴であり、前記座繰り形状穴に、前記第2押圧部を挿入し、押圧して加工することを特徴とするシリンダブロック製造方法。 - 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載するシリンダブロック製造方法において、
前記受圧部が、前記シリンダブロックの側面に孔設された側面穴であり、前記シリンダブロックに4カ所設けられ、
前記第2クランプの有する前記第2押圧部を、前記シリンダブロック側面から前記側面穴に挿入し、前記第1クランプ側に押圧して加工することを特徴とするシリンダブロック製造方法。 - ピストンが摺動するボア部と、前記ボア部を冷却するためのウォータジャケット部と、前記ウォータジャケット部を覆う外壁部を有するエンジンのシリンダブロックにおいて、
前記外壁部に有するヘッドボルト締結穴と対向する側に、挿入穴が設けられ、
前記挿入穴の深さが、前記ヘッドボルト締結穴と対向する側から、前記ヘッドボルト締結穴の先端より所定の距離まで達し、
前記ボア部を仕上げ加工する際に、前記挿入穴から押圧され、アッパーデッキ面から押圧されることで、
完成品として、前記アッパーデッキ面に、シリンダヘッドガスケットを挟んでシリンダヘッドをヘッドボルトで締結した際に、前記ボア部に発生する歪みと、同等の歪みを発生させることを特徴とするシリンダブロック。 - 請求項8に記載するシリンダブロックにおいて、
前記挿入穴が、座繰り形状穴であり、
完成品として前記シリンダヘッドと前記シリンダブロックの間に前記シリンダヘッドガスケットを挟んで前記ヘッドボルトで締結した際に前記ボア部に発生する歪みと、同等の歪みを発生させるように前記所定の距離が設定されていることを特徴とするシリンダブロック。 - ピストンが摺動するボア部と、前記ボア部を冷却するためのウォータジャケット部と、前記ウォータジャケット部を覆う外壁部を有するエンジンのシリンダブロックにおいて、
前記外壁部のクランクシャフト側端部の側面から、側面穴が設けられ、
前記側面穴が、前記ヘッドボルト締結穴の先端より所定の距離にあり、
前記ボア部を仕上げ加工する際に、前記側面穴からアッパーデッキ面側に向かって押圧され、前記アッパーデッキ面から押圧されることで、
完成品として、前記アッパーデッキ面に、シリンダヘッドガスケットを挟んでシリンダヘッドをヘッドボルトで締結した際に、前記ボア部に発生する歪みと、同等の歪みを発生させることを特徴とするシリンダブロック。
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