JP4552453B2 - 高分子ゲル組成物、高分子ゲル複合体及びその製造方法、並びに該複合体を備えた光学素子 - Google Patents
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Description
(1)刺激の付与により体積変化を生ずる機能性高分子ゲルと、前記ゲルに吸脱される液体と、保持部材形成材料とを含む高分子ゲル組成物であって、前記保持部材形成材料が加熱により流動/固化転移を示す性質を有し、かつ保持部材形成材料を流動化温度以上の温度で保持し流動化に要する時間t1及び流動状態の保持部材形成材料を固化温度以下に保持し固化に要する時間t2がt1<t2であり、並びにポリ(スチレン−イソプレン−スチレン)トリブロック共重合体、及びポリエチレンから選択される何れかを含むことを特徴とする高分子ゲル組成物。
(3)前記ゲルに吸脱される液体が、前記高分子ゲル中に含まれていることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の高分子ゲル組成物。
(6)前記高分子ゲル複合体がフィルム状又は板状に成形されたものであることを特徴とする前記(5)に記載の光学素子。
(7)高分子ゲル複合体を被包するように封止材が形成されていることを特徴とする前記(5)又は(6)に記載の光学素子。
(8)高分子ゲルに刺激を付与し得る刺激付与素子が、前記高分子ゲル複合体に接触して設けられていることを特徴とする前記(5)〜(7)の何れか1つに記載 の光学素子。
(10)加熱によって流動化せしめた保持部材形成材料及び刺激の付与により体積変化を生ずる機能性高分子ゲルに吸脱される液体の混合物中に、前記高分子ゲルが分散された分散液を調製する工程と、前記分散液の層を形成する工程と、前記分散液の層を冷却により固化させる工程とを有する、前記(4)に記載の高分子ゲル複合体の製造方法。
また、保持部材形成材料として特定の温度特性を有するものを用いたため、流動化状態を長く保つことが可能で、加熱を必要最小限に抑えることができ、材料の劣化、溶媒の蒸発等を最小限にすることができる。
そして、高分子ゲル複合体の作製工程において、材料に影響を与える要因は加熱だけであり、その加熱も必要最小限に抑えることができるため、優れた特性を有する高分子ゲル複合体が得られる。さらに、長期間にわったって、高分子ゲル複合体における高分子ゲル同士の凝集はなく保持部材により強固に固定化され維持される。
また、本発明の光学素子は、前記のごとき高分子ゲル複合体を備えたものであるため、長期間劣化することがないなど、優れた特性を備えている。
[高分子ゲル組成物]
本発明の高分子ゲル組成物は、高分子ゲル複合体を作製するためのもので、刺激の付与により体積変化を生ずる機能性高分子ゲル(以下、「刺激応答性高分子ゲル」、又は単に「高分子ゲル」という場合がある。)と、前記ゲルに吸脱される液体(以下、「吸脱液体」ということがある。)と、保持部材形成材料を含む高分子ゲル組成物であって、前記保持部材形成材料は加熱により流動/固化転移を示す性質を有し、かつ保持部材形成材料を流動化温度以上の温度で保持し流動化に要する時間t1及び流動状態の保持部材形成材料を固化温度以下に保持し固化に要する時間t2がt1<t2であり、並びにポリ(スチレン−イソプレン−スチレン)トリブロック共重合体、及びポリエチレンから選択される何れかを含むことを特徴とする。前記吸脱液体は、高分子ゲル中に含まれていてもよい。
(刺激応答性高分子ゲル)
本発明において使用することができる高分子ゲルは、pH変化、イオン濃度変化、化学物質の吸脱着、溶媒の添加、あるいは光、熱、電流もしくは電界の付与等、刺激の付与によって、液体を吸収・放出して体積変化(膨潤・収縮)するものである。本発明において、高分子ゲルの体積変化は一方的なものでも可逆的なものであってもよい。以下に、本発明において使用することができる高分子ゲルの具体例を示す。
これらの中でも、ポリ(メタ)アクリル酸系高分子材料は好ましく使用される。
また、刺激として付与するpH変化は、液体の電気分解や添加される化合物の酸化還元反応などの電極反応、あるいは、導電性高分子の酸化還元反応、さらには、pHを変化させる化学物質の添加によることが好ましい。
また、刺激として付与するイオン濃度変化としては、塩等の添加、イオン交換性樹脂の使用などによることが好ましい。
特に、ポリアクリルアミドアルキルスルホン酸系高分子が好ましく使用される。この場合、化学物質としては、界面活性剤、例えば、n−ドデシルピリジニウムクロライドなどのアルキルピリジン塩、アルキルアンモニウム塩、フェニルアンモニウム塩、テトラフェニルホスフォニウムクロライドなどのホスホニウム塩などのカチオン性界面活性剤を使用することができる。
LCSTをもつ高分子の架橋体の具体的な化合物例としては、ポリN−イソプロピルアクリルアミドなどのポリ〔N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド〕の架橋体;N−アルキル置換(メタ)アクリルアミドと、(メタ)アクリル酸及びその塩、(メタ)アクリルアミド、又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどと、の2成分以上の共重合体の架橋体;ポリビニルメチルエーテルの架橋体;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのアルキル置換セルロース誘導体の架橋体;などが挙げられる。これらの中でも、ポリN−イソプロピル(メタ)アクリルアミドが特に好ましい。
一方、互いに水素結合する2成分の高分子ゲルのIPN体の具体的な化合物例としては、ポリ(メタ)アクリルアミドの架橋体と、ポリ(メタ)アクリル酸の架橋体と、からなるIPN体及びその部分中和体(アクリル酸単位を部分的に塩化したもの);ポリ(メタ)アクリルアミドを主成分とする共重合体の架橋体と、ポリ(メタ)アクリル酸の架橋体と、からなるIPN体及びその部分中和体;などが挙げられる。より好ましくは、ポリ〔N−アルキル置換〕アクリルアミドの架橋体、又は、ポリ(メタ)アクリルアミドの架橋体と、ポリ(メタ)アクリル酸の架橋体と、のIPN体及びその部分中和体などが挙げられる。
マゼンタ系顔料のより具体的な例としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物等が用いられる。より詳細には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48;2、48;3、48;4、57;1、81;1、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254等が特に好ましい。
シアン系顔料のより具体的な例としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、例えば顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15;3、15:4、60、62、66等が特に好適に利用できる。
然ゴム系プラスチック、セルロース系プラスチック等やこれら2種類以上の高分子材料の混合材料(ポリマーブレンド)などの高分子材料が挙げられる。
本発明の高分子ゲル組成物に含有される、刺激応答性高分子ゲルが吸脱し得る液体としては、水、電解質水溶液、アルコール、ケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキシド、アセトニトリル、プロピレンカーボネートやその他の芳香族系有機溶剤、脂肪族系有機溶剤やそれらの混合物が使用できる。また、当該液体には、高分子ゲルに吸脱する界面活性剤、溶液のpH変化を促進するためのビオロゲン誘導体などの酸化還元剤、酸、アルカリ、塩、及び分散安定剤、酸化防止や紫外線吸収などの安定剤などを添加してもよい。さらに、種々顔料や白色顔料や染料、紫外線吸収剤などの調光用材料を添加することもできる。
保持部材形成材料は、加熱により流動/固化転移を示す性質を有し、かつ保持部材形成材料を流動化温度以上の温度で保持し流動化に要する時間t1及び流動状態の保持部材形成材料を固化温度以下に保持し固化に要する時間t2がt1<t2であることを特徴とする。
前記のごとき材料は、温度変化に伴い、水素結合、ファンデアワールス力、多糖類の分子配向、ブロック共重合体のドメイン形成、結晶性高分子中の微結晶の変化が生じ、その結果、流動/固化転移を示す。また固化した状態では擬似的に三次元架橋され固体状態を維持し、高分子ゲルを保持する。前記材料は室温で固体であることが好ましい。
このような物理ゲルとしては以下のごときものが挙げられる。
1)水素結合の形成及び解離に起因して保持部材形成材料が流動/固化する物理ゲルとして、ポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリアクリルアミド及びその誘導体、ポリアクリル酸及びその誘導体、セルロース及びその誘導体の重合体、及びそれらの共重合体、及びそれらの重合体の混合物、及びそれらの共重合体の混合物などが挙げられる。これら高分子は通常は高分子鎖同士で水素結合を形成しているが加熱により可逆的にその水素結合が切れる。
1)ブロック共重合体又はグラフト共重合体の凝集及び融解により流動/固化転移する物理ゲルとして、それぞれのポリマーブロックのいずれかがミクロドメイン構造を形成し擬似架橋構造となるものであれば何でも良い。それぞれのブロックのポリマーの成分としては例えばポリイソプレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(メタ)アクリル酸及びその誘導体、ポリ(メタ)アクリルアミド及びその誘導体、ポリエチレン、ポリエーテル系高分子、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール系高分子、ポリアミノ酸系高分子、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン、シリコーン系高分子、ポリ酢酸ビニル、ポリビニル酢酸、ポリピロール、ポリオレフィンなどが挙げられ、2種以上の成分によって構成される。 これら高分子は通常はポリマーブロックのミクロドメインにより擬似架橋構造を有しゲル化しているが、加熱により可逆的に当該ドメインが融解し流動化する。
本発明では、前記保持部材形成材料に用いられる前記材料として、ポリ(スチレン−イソプレン−スチレン)トリブロック共重合体、及びポリエチレンから選択される何れかを用いる。
本発明の高分子ゲル複合体は、刺激の付与により体積変化を生ずる機能性高分子ゲル、該ゲルに吸脱される液体及び前記高分子ゲルを保持する保持部材を有し、前記保持部材が、加熱により流動/固化転移を示す性質を有する保持部材形成材料であって、かつ保持部材形成材料を流動化温度以上の温度で保持し流動化に要する時間t1及び流動状態の保持部材形成材料を固化温度以下に保持し固化に要する時間t2がt1<t2であり、並びにポリ(スチレン−イソプレン−スチレン)トリブロック共重合体、及びポリエチレンから選択される何れかを含む保持部材形成材料を加熱により流動化させた後冷却により固化させたものであることを特徴とする。前記吸脱液体は、高分子ゲル中に含まれていてもよく、また、高分子ゲルを包囲するように存在していてもよく、その一部又は全部が保持部材中に存在していてもよく、更にその一部又は全部が高分子ゲル複合体の系外に排出・供給される状態にあってもよい。
本発明の保持部材は物質透過性であることが好ましい。保持部材が物質透過性であれば、高分子ゲル複合体の電解質や界面活性剤の濃度を変化させる(外部刺激の付与)ことによって、高分子ゲル複合体内部に含まれる刺激応答性高分子ゲルに液体を吸脱させることが可能となる。物質透過性である保持部材を作るための保持部材形成材料としては、先に記した保持部材形成材料のほとんど全てを挙げることができる。
本発明の高分子ゲル複合体は、機能性高分子ゲルと保持部材を有するため、光学素子の材料として好適に用いることができる。
本発明の高分子ゲル複合体の製造方法は、加熱によって流動化せしめた保持部材形成材料中に、吸脱液体を含む高分子ゲルが分散された分散液を調製する工程と、前記分散液の層を形成する工程と、前記分散液の層を冷却により固化させる工程とを含む。また、あらかじめ高分子ゲルに吸脱液体を含ませない場合には、加熱によって流動化せしめた保持部材形成材料及びゲルに吸脱される液体の混合物中に、高分子ゲルが分散された分散液を調製し、その後、前記の方法と同様にして層形成後固化させる。
分散液の層は基板の上に直接形成して光学素子を作製することもできる。
また、固化工程は、自然冷却でも、冷却装置を用いてもよい。
本発明の光学素子は、前記の高分子ゲル複合体を備えることを特徴とする。
以下に、本発明の高分子ゲル複合体を用いた光学素子を、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の光学素子の一例の模式断面図を示したもので、一対の基板の間に本発明の高分子ゲル複合体の層を形成したものである。図1の光学素子において10は光学素子、12は高分子ゲル複合体の層(以下、「高分子ゲル層」ということがある。)、13及び14は前記高分子ゲル層に含まれる高分子ゲル粒子及び保持部材、16及び18は前記高分子ゲル層12を挟む平行に配置された一対の基板、20は高分子ゲル複合体の層を封止するための封止材をそれぞれ示す。また、高分子ゲル粒子13は保持部材14により保持されている。
また、図2は、封止材を設けない他は図1と同じ構造を有する光学素子の一例を示す模式断面図である。
高分子ゲル層12の厚み、すなわち基板16及び18の間隔は、特に限定されるものではないが、1μm〜3mmの範囲内が好ましく、20μm〜1000μmの範囲内がより好ましい。厚みが、1μmよりも薄くなると厚み方向の光路長が短いために所望の光学濃度が得られないなどの問題が生じる場合があり、3mmよりも厚くなると高分子ゲル層12に含まれる高分子ゲルの応答性が悪くなる場合や、高分子ゲル粒子が厚み方向に必要以上に積層してしまい、十分な透過率が得られないなどの問題が生じる場合がある。さらに、1μmよりも薄くなると、機械的な強度が弱くなる問題を生ずることがある。
基板の厚みや大きさは、特に限定されないが、光学素子を用いて作製される表示素子のサイズに合わせて様々なものが利用できる。基板の厚みに関しては、基板の可撓性等も考慮して10μmから20mmの範囲内が好ましく、フィルム状、シート状、板状のものなどが用いられる。
前記フィルム基板としては、ポリエステル、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、セルロース誘導体、フッ素樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアセタール系樹脂等の高分子材料フィルム、金属フイルムなどが使用できる。
可撓性の光学素子を作製するには、図1に示す光学素子において、基板16及び18の厚みを10μm〜10mmの範囲内から選択し、また高分子ゲルフィルムの厚みは5μm〜10mmの範囲から選択することが好ましい。
封止材20の材料としては、高分子ゲル組成物中の液体の蒸発・漏れを抑制する能力を有し、基板16及び18に対して接着性を有し、調光組成物の特性に悪影響を与えず、実使用条件においてこれらの条件を長期間満たすものであれば、どのような材料を用いてもよい。封止材は、特にガスバリア性の高いものが好ましく用いられる。また複数の封止材を組み合わせて構成することも可能である。
その他の封止材としては、ガラス、セラミックスなどの無機材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びこれらの共重合体などのポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン、ポリイミド、ポリアリレートなどの高分子材料も適用できる。
封止剤及び封止方法は上記例示に限定されるものではなく、多種多様なものが選択でき、かつ、それらを組み合わせて使用してもよい。
また、高分子ゲル粒子に、飽和吸収濃度又は飽和散乱濃度以上の調光用材料を含有させた場合は、高分子ゲル粒子の体積変化に応じて光の吸収効率が変化し、光学濃度を変化させることができる。具体的には高分子ゲル粒子の膨潤時(図3(A))には光学濃度が高くなり、収縮時(図3(B))には光学濃度が低くなる。
本発明の光学素子における高分子ゲル層はこのような光学的特性を有するため、本発明の光学素子は調光素子、表示素子などに利用することができる。
また人為的な外部刺激を与える場合には光学素子に刺激付与素子が設けられる。外部刺激として熱を付与する場合には、通電発熱抵抗体を用いる他、光付与、電磁波付与、磁場付与などの各種熱付与手段が挙げられる。中でも特に通電発熱抵抗体が好ましく用いられ、具体的にはNi−Cr合金などに代表される金属層、硼化タンタル、窒化タンタル、酸化タンタル、やITOなどの金属酸化物層、カーボン層などに代表されるの発熱抵抗体層が好ましく用いられ、これらの層に配線し電流を付与することにより発熱させることができる。また光付与の場合は、レーザー、LED、ELなどの発光素子層を用いることができる。電磁波や磁場の付与の場合は電磁コイル、電極等を用いることができる。
また、前記のごとき熱刺激付与手段はパターン化、セグメント化させて任意の部位を調光させることも好ましく実施される。また、これらのパターンに対応して特定の特性を有する高分子ゲルを分散させた高分子ゲル組成物を配置することも好ましく実施される。
また、前記刺激付与素子は高分子ゲル複合体の層に直接接触するように設けてもよい。
<参考例1>
(刺激応答性高分子ゲルの製造)
刺激応答性高分子ゲルとして、調光用材料を含有した感熱型(高温収縮型)高分子ゲルの粒子を、以下に示すように逆相懸濁重合によって製造した。
主モノマーとしてN−イソプロピルアクリルアミド10g、架橋剤としてメチレンビスアクリルアミド0.1gを用い、これに蒸留水20g、過硫酸アンモニウム0.1g、調光用材料として1次粒子径約0.1μmの青色顔料(大日本インキ化学社製:マイクロカプセル化青色顔料、MC blue 182−E)8.0gを添加し、攪拌混合した水溶液Aを調製した。上記の操作は窒素下にて行った。
得られた着色高分子ゲル粒子(刺激応答性高分子ゲル)の乾燥時の体積平均粒子径は、約15μmであった。この着色高分子ゲル粒子の20℃における純水吸水量は約38g/gであった。本着色高分子ゲル粒子は、加熱によって収縮する性質をもち、約35℃に相転移点をもっていた。つまり、本着色高分子ゲル粒子は、相転移点よりも高温では収縮し、低温では膨潤する。この変化は可逆的であり、収縮時に比べ膨潤時の着色高分子ゲル粒子の粒子径が約2.5倍程度まで変化し、すなわち、体積で約16倍程度の変化が得られた。
以上のようにして得られた着色高分子ゲル粒子を一定濃度(膨潤状態の着色高分子ゲル粒子が85〜95%)含む水分散溶液を調製し、粒子同士の凝集を防ぐために界面活性剤(エマルゲン909)を濃度0.05質量%となるように加え、着色高分子ゲル粒子水分散溶液Aを得た。
得られた高分子ゲル複合体J1のフィルムを、溶媒の蒸発を防ぐために前記ガラス基板と同じ大きさのガラス基板で挟み、ガラス基板の周囲を紫外線硬化樹脂(日本化薬社製、KAYARAD−R381I)を用いて封止し、光学素子J1を作製した。
得られた光学素子J1は、20℃においては青色を呈していたが、30℃付近から内部の刺激応答性高分子ゲルが収縮し始め光学濃度が低くなり、50℃に加熱すると色が消え、ほぼ透明となることが確認できた。また、再び20℃まで冷却すると初期の青色に変化し、可逆的であることが分かった。この変化は、1週間放置した後でも何ら劣化することはなかった。したがって、本参考例の高分子ゲル組成物J1を用いた光学素子J1は、非常に簡単な構成であるにもかかわらず、温度センサーや調光素子、あるいは表示・記録素子等に利用できることが判った。
(高分子ゲル複合体の製造)
ポリ(スチレン−イソプレン−スチレン)トリブロック共重合体60g(日本ゼオン社製、クインタック3520)及び流動パラフィン40g及びジブチルヒドロキシトルエン1gを160℃に加熱したニーダーで混練した。それぞれが相溶したのちニーダーの温度を100度にし、ここに加熱した着色高分子ゲル粒子水分散溶液Aを投入し混合し、ガラス基板(50×50×0.9mm)表面全面に塗布し、前記ガラス基板と同じ大きさのガラス基板で挟み厚さ300μmの高分子ゲル組成物に成形した後、徐冷した。徐冷後は柔軟なフィルム状に固化した高分子ゲル組成物J2が得られた。得られた高分子ゲル組成物J2のフィルムを、溶媒の蒸発を防ぐために前記ガラス基板と同じ大きさのガラス基板で挟み、ガラス基板の周囲を紫外線硬化樹脂(日本化薬社製、KAYARAD−R381I)を用いて封止し、光学素子J2を作製した。
(高分子ゲル複合体の製造)
着色高分子ゲル粒子水分散溶液A:10gに対し、キサンタンガム0.5gを加えた。この溶液を95℃に加熱して攪拌し、キサンタンガムを完全に溶解させた後に、ガラス基板(50×50×0.9mm)表面全面に塗布し、溶媒の蒸散を防ぐために前記ガラス基板と同じ大きさのガラス基板で挟み厚さ300μmの高分子ゲル組成物に成形した後、徐冷した。徐冷後は柔軟なフィルム状に固化した高分子ゲル組成物J3が得られた。得られた高分子ゲル組成物J3のフィルムを、溶媒の蒸発を防ぐために前記ガラス基板と同じ大きさのガラス基板で挟み、ガラス基板の周囲を紫外線硬化樹脂(日本化薬社製、KAYARAD−R381I)を用いて封止し、光学素子J3を作製した。
(高分子ゲル複合体の製造)
流動パラフィン10gに対しポリエチレン1gを加え150℃に熱してこれを溶解させた。着色高分子ゲル粒子水分散溶液A10gを前記ポリエチレンの溶融物に添加して拡販した後、ガラス基板(50×50×0.9mm)表面全面に塗布し急冷した。溶媒の蒸散を防ぐために前記ガラス基板と同じ大きさのガラス基板で挟み厚さ300μmの高分子ゲル組成物に成形した後、徐冷した。徐冷後は柔軟なフィルム状に固化した高分子ゲル組成物J4が得られた。得られた高分子ゲル組成物J4のフィルムを、溶媒の蒸発を防ぐために前記ガラス基板と同じ大きさのガラス基板で挟み、ガラス基板の周囲を紫外線硬化樹脂(日本化薬社製、KAYARAD−R381I)を用いて封止し、光学素子J4を作製した。
さらにこれら光学素子J1、J2、J3、及びJ4は、1ヶ月保存後でも何ら劣化することはなかった。1ヶ月保存後の粒子の状態を観察したところ、粒子同士の凝集は無く、保持材料により3次元的に強固に固定化されていることが確認された。
したがって、本実施例及び参考例のこれら光学素子J1、J2、J3、及びJ4は、温度の印加により流動/固化させることで簡便に成形及び高分子ゲル微粒子を固定化することができるため特別な装置や煩雑な工程を経ることなく簡便に製造することができ、かつ温度センサーや調光素子、あるいは表示・記録素子等に利用できることが判った。
(高分子ゲル複合体及び光学素子の製造)
紫外線硬化樹脂(日本化薬製 KAYARAD MANDA)の30%トルエン溶液20gに対して、界面活性剤(第一工業製薬社製:ソルゲン50)1.5gと光重合開始剤(日本チバガイギー社製:ダロキュア1173)0.3gとを加えて溶解した後、参考例1で調製した着色高分子ゲル粒子水分散溶液Aを0℃に冷却した上で10g加え、回転式攪拌装置を用いて高速攪拌して、着色高分子ゲル粒子水分散溶液Aを紫外線硬化樹脂中に分散した。これをスライドグラス(50×50×0.9mm)表面全体に200μmの厚さにコートし、0℃に冷やしながら紫外線照射装置において紫外線(120W/cm、照射距離20cm)を2分間照射したところ、紫外線硬化樹脂が硬化して、高分子ゲル組成物が得られた。(固化過程)
さらにJ1、J2、J3、及びJ4が0.5〜2時間で作製が可能であったのに対し、上記光学素子H1作製時の置換過程においては溶媒交換の工程に4日間を要し、大幅な作製時間が必要であることが示された。
12 高分子ゲル複合体の層
13 高分子ゲル粒子
14 保持部材
16、18 基板
20 封止材
Claims (10)
- 刺激の付与により体積変化を生ずる機能性高分子ゲルと、前記ゲルに吸脱される液体と、保持部材形成材料とを含む高分子ゲル組成物であって、前記保持部材形成材料が、加熱により流動/固化転移を示す性質を有し、かつ保持部材形成材料を流動化温度以上の温度で保持し流動化に要する時間t1及び流動状態の保持部材形成材料を固化温度以下に保持し固化に要する時間t2がt1<t2であり、並びにポリ(スチレン−イソプレン−スチレン)トリブロック共重合体、及びポリエチレンから選択される何れかを含むことを特徴とする高分子ゲル組成物。
- 前記刺激の付与により体積変化を生ずる機能性高分子ゲルが、調光用材料を含有することを特徴とする請求項1に記載の高分子ゲル組成物。
- 前記ゲルに吸脱される液体が、前記高分子ゲル中に含まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の高分子ゲル組成物。
- 刺激の付与により体積変化を生ずる機能性高分子ゲル、該ゲルに吸脱される液体及び前記高分子ゲルを保持する保持部材を有する高分子ゲル複合体であって、前記保持部材が、加熱により流動/固化転移を示す性質を有する保持部材形成材料であって、かつ保持部材形成材料を流動化温度以上の温度で保持し流動化に要する時間t1及び流動状態の保持部材形成材料を固化温度以下に保持し固化に要する時間t2がt1<t2であり、並びにポリ(スチレン−イソプレン−スチレン)トリブロック共重合体、及びポリエチレンから選択される何れかを含む保持部材形成材料を流動化させた後固化させたものであることを特徴とする高分子ゲル複合体。
- 請求項4に記載の高分子ゲル複合体を備えた光学素子。
- 前記高分子ゲル複合体がフィルム状又は板状に成形されたものであることを特徴とする請求項5に記載の光学素子。
- 高分子ゲル複合体を被包するように封止材が形成されていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の光学素子。
- 高分子ゲルに刺激を付与し得る刺激付与素子が、前記高分子ゲル複合体に接触して設けられていることを特徴とする請求項5〜請求項7の何れか1項に記載の光学素子。
- 加熱によって流動化せしめた保持部材形成材料中に、刺激の付与により体積変化を生ずる機能性高分子ゲルであって該ゲルに吸脱される液体を含む機能性高分子ゲルが分散された分散液を調製する工程と、前記分散液の層を形成する工程と、前記分散液の層を冷却により固化させる工程とを有する、請求項4に記載の高分子ゲル複合体の製造方法。
- 加熱によって流動化せしめた保持部材形成材料及び刺激の付与により体積変化を生ずる機能性高分子ゲルに吸脱される液体の混合物中に、前記高分子ゲルが分散された分散液調製工程と、前記分散液の層を形成する工程と、前記分散液の層を冷却により固化させる工程とを有する、請求項4に記載の高分子ゲル複合体の製造方法。
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