JP2004107601A - 刺激応答変色性液状組成物および変色性積層体とその作製方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】汎用性、使用性において良好な形態を提供することであり、かつ、色選択の幅が広く、任意の発色が可能で意匠性が高く、光照射での褪色が少なく優れ、さらに、温度上昇や光照射の増加に伴って消色し、その逆に、温度低下及び日光の照射が少ないときには、着色して熱・光を効率的に吸収・排出する機能を持たせた刺激応答性変色性組成物を提供する。
また、容易に前述の機能を有する変色性塗装膜、変色性積層体とその作製方法を提供する。
【解決手段】液体と前記液体を刺激に応じて吸収または放出することにより可逆的な体積変化を生じる高分子ゲルとを含む刺激応答変色性材料を含み、前記刺激応答変色性材料がバインダー中に分散され液状であることを特徴とする刺激応答変色性液状組成物、前記組成物を硬化させてなる変色性塗装膜及び該塗装膜を基板上に積層してなる変色性積層体。
【選択図】 なし
また、容易に前述の機能を有する変色性塗装膜、変色性積層体とその作製方法を提供する。
【解決手段】液体と前記液体を刺激に応じて吸収または放出することにより可逆的な体積変化を生じる高分子ゲルとを含む刺激応答変色性材料を含み、前記刺激応答変色性材料がバインダー中に分散され液状であることを特徴とする刺激応答変色性液状組成物、前記組成物を硬化させてなる変色性塗装膜及び該塗装膜を基板上に積層してなる変色性積層体。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、刺激応答変色性液状組成物、及び前記液状組成物から形成される塗装膜、さらに該塗装膜を基材上に積層してなる変色性積層体に関する。さらに詳細には、温度や光照射量の変化などの外部刺激により無色ないしは有色から他の色に可逆的色変化を呈する前記刺激応答変色性液状組成物および該刺激応答変色性液状組成物から形成される塗装膜さらに該塗装膜を基材上に積層してなる変色性積層体に関する。
本発明は、インク、塗料、塗装、塗装部品、装飾部材、センサー等に幅広く応用可能なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、温度変化により、有色と無色間、有色と他の有色間の可逆的色変化を呈する熱変色性材については、多くの検討がなされて来た(例えば、特許文献1乃至7参照。)。これを利用して彩色した熱変色材は示温要素、玩具要素、マジック要素等として実用に供されている。
【0003】
また、金属光沢調の色彩を呈する熱変色性塗料、及びそれを用いて得られる塗装体に関しては、幾つかの提案が既に開示されている(例えば、特許文献8乃至10参照)。前記提案は、天然雲母の表面を酸化チタンで被覆した金属光沢顔料と 熱変色性材料との組み合わせによるものであり、金属光沢調の多彩な色変化を視覚させることができ、示温、装飾、玩具要素等、多様な分野に適用できることが述べられている。
【0004】
さらに、光により可逆的に変色する物質として有機フォトクロミック化合物が知られている。この化合物は、光のエネルギーを吸収してその化学構造が変わることによって、化合物の色が変化するもので、各種の有機化合物が知られている。
【0005】
【特許文献1】
特公昭51−44706号公報
【特許文献2】
特公昭51−44707号公報
【特許文献3】
特公昭51−44708号公報
【特許文献4】
特公昭52−7764号公報
【特許文献5】
特公昭51−46548号公報
【特許文献6】
特開昭62−140881号公報
【特許文献7】
特公平7−100769号公報
【特許文献8】
特開平6−107974号公報
【特許文献9】
特開平6−107975号公報
【特許文献10】
特開平6−107976号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記した従来の色材を用いたインキや塗料の耐光堅牢性については、光安定剤を添加することにより、光照射によって生じるコントラストの低下をある程度防止することはできる。しかしながら、屋外などの光、特に紫外線照射の過酷な環境条件下では、時間の経過とともに退色してしまい、コントラストが低下する。また、黄変して見た目の美観が損なわれるなど実用上使用すること困難であった。
【0007】
また、これらの欠点を補うために耐候性の高い、無機材料からなるサーモクロミック、フォトクロミック材料を利用することが考えられるが、これらの材料は着色度が強くなく、また、材料種が多くないため任意の色を出すことができないなど意匠性が低く、また、高価なため、用途展開の上で大きな制約があった。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決することを課題とする。すなわち、汎用性、使用性において良好な形態を提供することであり、かつ、色選択の幅が広く、任意の発色が可能で意匠性が高く、光照射での褪色が少なく優れ、さらに、温度上昇や光照射の増加に伴って消色し、その逆に、温度低下及び日光の照射が少ないときには、着色して熱・光を効率的に吸収・排出する機能を持たせた刺激応答変色性組成物を提供することを目的とする。
また、容易に前述の機能を有する変色性塗装膜、変色性積層体とその作製方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは鋭意検討した結果、液体と前記液体を刺激に応じて吸収または放出することにより可逆的な体積変化を生じる高分子ゲル(以下、「刺激応答性高分子ゲル」ともいう。)を含む刺激応答変色材料を用いた前記液状組成物を利用することによって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
即ち、以下の本発明により達成される。
<1> 液体と前記液体を刺激に応じて吸収または放出することにより可逆的な体積変化を生じる高分子ゲルとを含む刺激応答変色性材料を含み、前記刺激応答変色性材料がバインダー中に分散され液状であることを特徴とする刺激応答変色性液状組成物。
<2> 前記刺激応答変色性材料が、マイクロカプセル膜に被包されている刺激応答性高分子ゲルを含有することを特徴とする上記<1>に記載の刺激応答変色性液状組成物。
<3> 前記マイクロカプセル膜が、無機材料を含むことを特徴とする上記<2>に記載の刺激応答変色性液状組成物。
<4> 前記高分子ゲルが、調光用材料を含むことを特徴とする上記<1>乃至<3>のいずれかに記載の刺激応答変色性液状組成物。
<5> 前記バインダーが、無機材料を含むことを特徴とする上記<1>に記載の刺激応答変色性液状組成物。
<6> 上記<5>に記載の無機材料が、金属アルコキシドであることを特徴とする上記<5>に記載の刺激応答変色性液状組成物。
<7> 前記バインダーが、調光用材料を含むことを特徴とする上記<1>に記載の刺激応答変色性液状組成物。
<8> 前記液体の沸点が、100℃以上であることを特徴とする上記<1>に記載の刺激応答変色性液状組成物。
<9> 前記刺激応答性材料を応答させる刺激が熱であり、かつ、低温時に着色状態にあり熱の付与によって着色状態から無色または淡色へと変化することを特徴とする上記<1>に記載の刺激応答変色性液状組成物。
<10> 上記<9>に記載の変色の温度が5乃至80℃の範囲にあることを特徴とする上記9に記載の刺激応答変色性液状組成物。
<11> 上記<1>乃至<10>のいずれかに記載の刺激応答変色性液状組成物を硬化させてなることを特徴とする変色性塗装膜。
<12> 前記変色性塗装膜の表面上に、保護膜を設けてなることを特徴とする上記<11>に記載の変色性塗装膜。
<13> 前記保護膜が、前記液体の蒸発防止機能を有することを特徴とする上記<12>に記載の変色性塗装膜。
<14> 上記<9>又は<10>に記載の刺激応答変色性液状組成物を硬化させてなる省エネ用変色性塗装膜。
<15> 前記変色性塗装膜を基材上に積層してなる上記<11>乃至<14>のいずれかに記載の変色性積層体。
<16> 上記<14>に記載の省エネ変色性塗装膜を基材上に積層してなる省エネ用変色性積層体。
<17> 前記硬化の方法が、紫外線または/及び電子線を利用することを特徴とする上記<11>記載の変色性塗装膜の作製方法。
<18> 前記硬化の温度が、150℃以下であることを特徴とする上記<11>又は<17>に記載の変色性塗装膜の作製方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に係る刺激応答変色性液状組成物(以下、「液状組成物」ともいう。)は、液体と前記液体を刺激に応じて吸収または放出することにより可逆的な体積変化を生じる高分子ゲルとを含む刺激応答変色性材料を含み、前記刺激応答変色性材料がバインダー中に分散され液状であることを特徴とする。また、該液状組成物を硬化することによりなる変色性塗装膜およびその作製方法並びに変色性塗装膜を基材上に積層してなる変色性積層体を特徴とする。
以下に、本発明について詳細に説明するが、これらに限定されるものではない。
【0011】
<<刺激応答性変色性液状組成物>>
本発明の液状組成物について、実施形態の1例図1を用いて説明する。
図1(a)は、本発明の液状組成物を層状に形成した変色性塗装膜例を示す図であり、バインダー2の内部に、高分子ゲル1と図示されない液体3が分散されているものを示すものである。図1(b)は、前記刺激応答変色性材料5がマイクロカプセル膜4に被包された状態を示すものである。カプセル膜4の内部に高分子ゲル1と液体3が封入されている。図1(c)は、高分子ゲル1と液体3の混合物を封入したマイクロカプセル5をバインダー2中に分散したものを示すものである。
さらに、この液状組成物を基材6の上に積層し、硬化させることによって変色性積層体としたものを図2に示してある。図3及び図4は、図1(c)の塗装膜及び図2の積層体に、それぞれ更に保護膜を施したものの一例を示してある。
【0012】
<刺激応答変色材料>
本発明に係る刺激応答変色性材料は、少なくとも刺激応答性高分子ゲル(以下、「高分子ゲル」ともいう。)と液体を含有する。刺激応答性高分子ゲルには、種々の安定剤を共重合あるいは結合させることも可能である。
【0013】
(刺激応答性高分子ゲル)
本発明において使用することができる刺激応答性高分子ゲルについて説明する。刺激応答性高分子ゲル1は、pH変化、イオン濃度変化、化学物質の吸脱着、溶媒組成の変化、又は光、熱、電流もしくは電界の付与等、刺激の付与によって、液体を吸収・放出して体積変化(膨潤・収縮)するものである。本発明において、刺激応答性高分子ゲル1の体積変化は、一方的なものでも可逆的なものであってもよい。但し、刺激応答性高分子ゲル1をセンサー等の光学素子や装飾品、省エネ用塗装膜等として用いる場合は、可逆的であるものが好ましい。以下に、本発明において使用することのできる刺激応答性高分子ゲル1の具体例を示す。
【0014】
pH変化によって刺激応答する高分子ゲル1としては、電解質系高分子ゲルが好ましく、その例としては、ポリ(メタ)アクリル酸の架橋物やその塩、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその塩、ポリマレイン酸の架橋物やその塩、マレイン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその塩、ポリビニルスルホン酸の架橋物やビニルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物、ポリビニルベンゼンスルホン酸の架橋物やその塩、ビニルベンゼンスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその塩、ポリアクリルアミドアルキルスルホン酸の架橋物やその塩、アクリルアミドアルキルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその塩、ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの架橋物やその塩酸塩、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその4級化物や塩、ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドとポリビニルアルコールとの複合体の架橋物やその4級化物や塩、ポリビニルアルコールとポリ(メタ)アクリル酸との複合体の架橋物やその塩、カルボキシアルキルセルロース塩の架橋物、ポリ(メタ)アクリロニトリルの架橋物の部分加水分解物やその塩などが挙げられる。
耐候性、耐久性の観点から、より好ましくは、(メタ)アクリル酸の単独共重合体あるいはそれと他のモノマーとの共重合体の架橋物やその塩であり、特に、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸などの共重合体の架橋物やその塩が、好ましい。
【0015】
pH変化としては、液体の電気分解や添加される化合物の酸化還元反応などの電極反応、あるいは、導電性高分子の酸化還元反応、更には、pHを変化させる化学物質の添加によるものであることが好ましい。用途範囲の拡大、繰り返し性の観点から、より好ましくは、添加される化合物の酸化還元反応や導電性高分子の酸化還元反応を利用することである。
【0016】
イオン濃度変化によって刺激応答する高分子ゲル1としては、前記したpH変化による刺激応答性高分子ゲルと同様なイオン性高分子材料が使用できる。また、イオン濃度変化としては、塩等の添加、イオン交換性樹脂の使用などによるものが好ましい。用途範囲の拡大、繰り返し性の観点から、より好ましくは、イオン交換性樹脂の使用である。
【0017】
化学物質の吸脱着によって刺激応答する高分子ゲル1としては、イオン性高分子ゲルが好ましく、その例として、ポリビニルスルホン酸の架橋物やビニルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物、ポリビニルベンゼンスルホン酸の架橋物やビニルベンゼンスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物、ポリ(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸の架橋物や(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物などが挙げられる。耐候性の観点から、ポリ(メタ)アクリル酸の誘導体の架橋物が好ましい。
【0018】
この場合、化学物質としては、界面活性剤、例えば、n−ドデシルピリジニウムクロライドなどのアルキルピリジン塩、アルキルアンモニウム塩、フェニルアンモニウム塩、テトラフェニルホスフォニウムクロライドなどのホスホニウム塩などのカチオン性界面活性剤を使用することができる。
【0019】
溶媒組成の変化によって刺激応答する高分子ゲル1としては、一般にほとんどの高分子ゲルが挙げられ、その高分子ゲルの良溶媒と貧溶媒とを利用することで膨潤、収縮を引き起こすことが可能である。
【0020】
電流もしくは電界の付与によって、刺激応答する高分子ゲル1としては、カチオン性高分子ゲルと電子受容性化合物とのCT錯体(電荷移動錯体)が好ましく、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどアミノ置換(メタ)アクリルアミドの架橋物、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートやジメチルアミノプロピルアクリレートなどの(メタ)アクリル酸アミノ置換アルキルエステルの架橋物、ポリスチレンの架橋物、ポリビニルピリジンの架橋物、ポリビニルカルバゾールの架橋物、ポリジメチルアミノスチレンの架橋物、(メタ)アクリル酸およびその塩などの共重合体の架橋物などが挙げられ、特に、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート系高分子および(メタ)アクリル酸およびその塩などの共重合体は好ましい。耐候性および応答性の観点から、より好ましくは、(メタ)アクリル酸およびその塩の共重合体の架橋物、またポリアクリルアミドアルキルスルホン酸系高分子も好ましく使用される。
これらは、ベンゾキノン、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラシアノエチレン、クロラニル、トリニトロベンゼン、無水マレイン酸やヨウ素などの電子受容性化合物とを組み合わせて使用することができる。
【0021】
光の付与によって刺激応答する高分子ゲル1としては、トリアリールメタン誘導体やスピロベンゾピラン誘導体などの光によってイオン解離する置換基を有する親水性高分子化合物の架橋物が好ましく、その例として、ビニル置換トリアリールメタンロイコ誘導体と(メタ)アクリルアミドとの共重合体の架橋物などが挙げられる。応答性の観点から、より好ましくは、ビニル置換トリアリールメタンロイコ誘導体と(メタ)アクリルアミドとの共重合体の架橋物である。
【0022】
熱応答性高分子ゲルとしては、ある温度以上で疎水性相互作用によって凝集し水溶液中から析出してくる性質を持つLCST(下限臨界共融温度)をもつ高分子の架橋体、およびUCST(上限臨界共融温度)をもつ高分子の架橋体や、互いに水素結合する2成分の高分子ゲルのIPN(相互侵入網目構造体)、結晶性などの凝集性の側鎖を持つ高分子ゲルなどが好ましい。これらの中でも疎水性相互作用を利用したLCSTゲルは特に好ましい。
【0023】
LCST(下限臨界共融温度)をもつ高分子の架橋体であるLCSTゲルは、高温において収縮し、UCSTゲル、IPNゲルおよび結晶性ゲルでは、逆に高温で膨潤する特性をもっている。前者の具体的な化合物としては、ポリN−イソプロピルアクリルアミドなどの〔N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド〕の架橋体やN−アルキル置換(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸の共重合体およびその塩、または(メタ)アクリルアミド、または(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどの2成分以上の共重合体の架橋体、ポリビニルメチルエーテルの架橋物、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのアルキル置換セルロース誘導体の架橋体などが挙げられる。N−アルキル置換(メタ)アクリルアミドの架橋体が、耐候性,体積変化特性の観点から、好ましくは、例えば、N−アルキル置換(メタ)アクリルアミドの架橋体やN−アルキル置換(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸の共重合体およびその塩の架橋体であり、中でも、N−アルキル置換(メタ)アクリルアミドの架橋体が好ましく、特に、ポリN−イソプロピル(メタ)アクリルアミドは好ましい。
【0024】
一方、後者の化合物としては、ポリ(メタ)アクリルアミドの架橋体とポリ(メタ)アクリル酸の架橋体からなるIPN体およびその部分中和体(アクリル酸単位を部分的に塩化したもの)、ポリ(メタ)アクリルアミドを主成分とする共重合体の架橋体とポリ(メタ)アクリル酸の架橋体からなるIPN体およびその部分中和体などが挙げられる。より好ましくは、ポリ〔N−アルキル置換アルキルアミドの架橋体、ポリ(メタ)アクリルアミドの架橋体とポリ(メタ)アクリル酸の架橋体とのIPN体およびその部分中和体などが挙げられ、耐候性の観点から、好ましくは、ポリアクリルアミドの架橋体とポリアクリル酸の架橋体からなるIPN体である。
【0025】
また、結晶性ゲルとしては、オクチル基、デシル基、ラウリル基、ステアリル基等の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸との共重合体の架橋体やその塩があげられる。
【0026】
この熱応答性高分子ゲルの体積変化を示す温度(相転移温度)としては、高分子ゲルの構造、組成により種々の設計が可能である。なお、好ましい相転移温度は−30〜300℃の範囲から選択され、中でも、−20〜150℃の範囲が好ましく、特に、好ましくは−5〜80℃の範囲である。
【0027】
高分子ゲルとしては、上記例示した具体例の他に、温度変化に応じて複数の相転移点を示すゲルも好適に使用することができる。具体的に例示すると、ポリN−イソプロピル(メタ)アクリルアミドなどのポリアルキル置換(メタ)アクリルアミドの架橋体とポリ(メタ)アクリル酸の架橋体とのIPN体などがあげられる。耐候性の観点から、例えば、アクリル酸系誘導体の重合体の架橋体のIPN体が好ましく、特に、好ましくは、ポリN−イソプロピルアクリルアミドの架橋体とポリアクリル酸の架橋体のIPN体である。これらのゲルは、温度上昇に伴い膨潤−収縮−膨潤という2つの相転移点を示すことが知られている。
【0028】
また、熱応答性高分子ゲルの体積変化量を増大させる目的で、イオン性官能基を高分子ゲル中に含有させることも好ましく実施できる。
イオン性官能基としては、カルボン酸、スルホン酸、アンモニウム基、りん酸基などがあげられ、耐候性、耐久性の観点から、中でも、カルボン酸、スルホン酸が好ましく、特に、カルボン酸が好ましい。イオン性官能基は、高分子ゲルを調製する際にこれら官能基をもつモノマーを共重合する方法、合成後の高分子ゲルにモノマーを含浸させて重合しIPN(相互侵入網目構造)体とする方法、前記高分子ゲル中の官能基を部分的に加水分解や酸化反応などの化学反応によって変換する方法などが好ましく実施できるが、製造性の観点から、中でも、共重合する方法やIPN体とする方法が好ましく、特に、共重合する方法が好ましい。
【0029】
本発明の刺激応答性高分子ゲルの体積変化量は、特に限定されないが、高いほうが光学濃度変化の観点から好ましく、膨潤時および収縮時の体積比が、3以上、中でも5以上が好ましく、特に15以上が好ましい。また、本発明の刺激応答性高分子ゲルの体積変化は、可逆的であるものでも不可逆的であるものでもよいが、調光素子や表示素子、センサーなどの光学素子や装飾品、省エネ用塗装体として利用する場合は、可逆的なものであることが好ましい。
【0030】
高分子ゲル中にはその特性を損なわない範囲で、紫外線吸収剤、光安定剤等、種々の安定剤を共重合あるいは結合させることが可能である。例えば、ヒンダードアミン系やヒンダードフェノール系の化合物や光安定化機能を持つ化合物などを共重合あるいは結合することが好ましく実施できる。これらの化合物の共重合量あるいは結合量は、高分子ゲルに対して0.01重量%〜5重量%の範囲が好ましく、中でも、0.01重量%〜2重量%が好ましく、特に、0.05重量%〜1重量%が好ましい。
【0031】
また、本発明では、刺激応答性高分子ゲルの形態は、特に限定されないが、刺激応答特性を考慮すると、粒子の形態として使用することが特に好ましい。その粒子の形態も特に限定されないが、球体、楕円体、多面体、多孔質体、繊維状、星状、針状、中空状などの形態のものを使用することができる。
【0032】
本発明において用いられる刺激応答性高分子ゲルは、乾燥状態で平均粒径が0.01μm〜5mmの範囲、中でも、0.01μm〜3mmの範囲、特に、0.01μm〜1mmの範囲の粒子であることが好ましい。平均粒子径が0.01μm未満となると、光学的な特性を得ることができなくなり、凝集等を起こしやすくなり、かつ、使用する場合にその扱いが困難となる。一方、5mmを超えると、応答速度が遅くなってしまう問題が生じる。
【0033】
これらの高分子ゲルの粒子は、高分子ゲルを物理的粉砕法等で粒子化する方法、架橋前の高分子を化学的粉砕法等によって粒子化した後に架橋して高分子ゲル粒子を得る方法、あるいは乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法などの粒子化重合法などの一般的な粒子化方法によって製造することができる。また、架橋前の高分子をノズル口金等によって押し出して繊維化し、これを架橋した後に粉砕する方法、あるいは前記繊維を粉砕して粒子化した後に架橋する方法によって高分子ゲル粒子を製造することも可能である。これらの方法は、目的用途に応じて種々適宜選択することができる。
【0034】
尚、表示素子もしくは調光素子等に用いる場合には、これらの高分子ゲルに調光用材料を添加することが好ましい。添加する調光用材料としては、染料、顔料などの色材や光散乱材などが挙げられ、高分子ゲルに物理的あるいは化学的に固定化されることが好ましい。
【0035】
このような調光用材料の添加量としては、高分子ゲルの乾燥時又は収縮時に、飽和吸収濃度あるいは飽和散乱濃度以上となる量を添加することが好ましい。ここで、飽和吸収(あるいは飽和散乱)濃度以上とは、特定の光路長のもとにおける調光用材料濃度と光吸収量の関係が1次直線の関係から大きく外れる領域のことを示す。高分子ゲル1に、前記濃度以上となるように調光用材料を添加することによって、高分子ゲル1が膨潤・収縮を起こし、その結果光学濃度および/又は散乱を変化させることができる。
【0036】
飽和吸収濃度あるいは飽和散乱濃度以上となる調光用材料の濃度は、一般に3質量%以上であり、中でも、3質量%〜95質量%の範囲を高分子ゲルに添加することが好ましく、より好ましくは5質量%〜80質量%の範囲であり、特に好ましくは、10質量%〜50質量%の範囲である。3質量%未満となると、調光用材料を添加した効果が十分に得られず、95質量%を超えると、高分子ゲルの特性が低下してしまう恐れがある。
【0037】
前記染料の好適な具体例としては、例えば、黒色のニグロシン系染料や赤、緑、青、シアン、マゼンタ、イエローなどのカラー染料であるアゾ染料、アントラキノン系染料、インジゴ系染料、フタロシアニン系染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、ナフタルイミド染料、ベリノン染料などが挙げられ、特に光吸収係数が高いものが望ましい。例えば、C.I.ダイレクトイエロー1、8、11、12、24、26、27、28、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、157、C.I.アシッドイエロー1、3、7、11、17、19、23、25、29、38、44、79、127、144、245、C.I.ベイシックイエロー1、2、11、34、C.I.フードイエロー4、C.I.リアクティブイエロー37、C.I.ソルベントイエロー6、9、17、31、35、100、102、103、105、C.I.ダイレクトレッド1、2、4、9、11、13、17、20、23、24、28、31、33、37、39、44、46、62、63、75、79、80、81、83、84、89、95、99、113、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230、231、C.I.アシッドレッド1、6、8、9、13、14、18、26、27、35、37、42、52、82、85、87、89、92、97、106、111、114、115、118、134、158、186、249、254、289、C.I.ベイシックレッド1、2、9、12、14、17、18、37、C.I.フードレッド14、C.I.リアクティブレッド23、180、C.I.ソルベントレッド5、16、17、18、19、22、23、143、145、146、149、150、151、157、158、C.I.ダイレクトブルー1、2、6、15、22、25、41、71、76、78、86、87、90、98、163、165、199、202、C.I.アシッドブルー1、7、9、22、23、25、29、40、41、43、45、78、80、82、92、93、127、249、C.I.ベイシックブルー1、3、5、7、9、22、24、25、26、28、29、C.I.フードブルー2、C.I.ソルベントブルー22、63、78、83〜86、191、194、195、104、C.I.ダイレクトブラック2、7、19、22、24、32、38、51、56、63、71、74、75、77、108、154、168、171、C.I.アシッドブラック1、2、7、24、26、29、31、44、48、50、52、94、C.I.ベイシックブラック2、8、C.I.フードブラック1、2、C.I.リアクティブブラック31、C.I.フードバイオレット2、C.I.ソルベントバイオレット31、33、37、C.I.ソルベントグリーン24、25、C.I.ソルベントブラウン3、9等が挙げられる。これらの染料は、単独で使用してもよく、また所望する色を得るために混合して使用してもよい。
【0038】
また、前記顔料としては、黒色顔料である各種カーボンブラック(チャネルブラック、ファーネスブラック等)やチタンブラック、白色顔料である酸化チタンなどの金属酸化物やカラー顔料が挙げられる。カラー顔料としては、例えば、ベンジジン系のイエロー顔料、ローダミン系のマゼンタ顔料、フタロシアニン系のシアン顔料、あるいはこの他にもアントラキノン系、アゾ系、アゾ金属錯体、フタロシアニン系、キナクリドン系、ペリレン系、インジゴ系、イソインドリノン系、キナクリドン系、アリルアミド系などの各種カラー顔料を挙げることができる。これらの顔料は、単独で使用してもよく、また所望する色を得るために混合して使用してもよい。
【0039】
前記顔料のより具体的な例として、酸化亜鉛、塩基性炭酸鉛、塩基性硫酸鉛、硫酸鉛、リトボン、白雲母、硫化亜鉛、酸化チタン、酸化アンモチモン、鉛白、酸化ジルコニウム、アルミナ、マイカナイト、マイカレックス、石英、炭酸カルシウム、石膏、クレー、シリカ、ケイ酸、珪素土、タルク、塩基性炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、サチン白等の無機酸化物等の白色顔料や、亜鉛、アルメル、アンチモン、アルミニウム、アルミニウム合金、イリジウム、インジウム、オスミウム、クロム、クロメル、コバルト、ジルコニウム、ステンレス鋼、金、銀、洋銀、銅、青銅、すず、タングステン、タングステン鋼、鉄、鉛、ニッケル、ニッケル合金、ニッケリン、白金、白金ロジウム、タンタル、ジュラルミン、ニクロム、チタン、クルップ・オーステナイト鋼、コンスタンタン、真鍮、白金イリジウム、パラジウム、パラジウム合金、モリブデン、モリブデン鋼、マンガン、マンガン合金、ロジウム、ロジウム金などの金属材料や、フェノール樹脂、フラン樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アニリン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ−p−キシリレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素系プラスチック、ポリアクリロニトリル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、ポリエーテル、ポリカーボネート、熱可塑性ポリエステル、ポリアミド、ジエン系プラスチック、ポリウレタン系プラスチック、ポリフェニレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、芳香族ヘテロ環ポリマー、シリコーン、天然ゴム系プラスチック、セルロース系プラスチック等の高分子材料で構成された顔料等が挙げられる。
【0040】
また、カラー顔料であるイエロー系顔料のより具体的な例としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。より詳細には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、168等が好適に用いられる。
【0041】
マゼンタ系顔料のより具体的な例としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。より詳細には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48;2、48;3、48;4、57;1、81;1、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254が、特に好ましい。
【0042】
シアン系顔料のより具体的な例としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、例えば顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15;3、15:4、60、62、66等が特に好適に利用できる。
【0043】
使用する顔料の粒子径としては、1次粒子の体積平均粒子径で0.001μm〜1μmのものが好ましく、中でも、0.01〜0.5μmが好ましく、特に、0.01μm〜0.2μmのものが好ましい。これは粒子径が0.001μm未満では高分子ゲルからの流出が起こりやすく、また、1μmを超えると発色特性や光散乱特性が悪くなる恐れが生じるためである。
【0044】
前記光散乱材料としては、無機材料、有機材料が挙げられ、共に使用することができる。また、必要に応じてそれらを混合して使用することもできる。
【0045】
前記無機材料好適な具体例として、酸化亜鉛、塩基性炭酸鉛、塩基性硫酸鉛、硫酸鉛、リトボン、白雲母、硫化亜鉛、酸化チタン、酸化アンモチモン、鉛白、酸化ジルコニウム、アルミナ、マイカナイト、マイカレックス、石英、炭酸カルシウム、石膏、クレー、シリカ、ケイ酸、珪素土、タルク、塩基性炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、サチン白等の無機酸化物や、亜鉛、アルメル、アンチモン、アルミニウム、アルミニウム合金、イリジウム、インジウム、オスミウム、クロム、クロメル、コバルト、ジルコニウム、ステンレス鋼、金、銀、洋銀、銅、青銅、すず、タングステン、タングステン鋼、鉄、鉛、ニッケル、ニッケル合金、ニッケリン、白金、白金ロジウム、タンタル、ジュラルミン、ニクロム、チタン、クルップ・オーステナイト鋼、コンスタンタン、真鍮、白金イリジウム、パラジウム、パラジウム合金、モリブデン、モリブデン鋼、マンガン、マンガン合金、ロジウム、ロジウム金などの金属材料、ITO(インジウム・スズ酸化物)等の無機導電性材料などが挙げられる。特に、雲母やアルミニウムおよびその類縁体は塗装膜とする際に好適に使用できる。
【0046】
また、前記有機材料の好適な具体例として、フェノール樹脂、フラン樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アニリン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ‐p−キシリレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素系プラスチック、ポリアクリロニトリル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、ポリエーテル、ポリカーボネート、熱可塑性ポリエステル、ポリアミド、ジエン系プラスチック、ポリウレタン系プラスチック、ポリフェニレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、芳香族ヘテロ環ポリマー、シリコーン、天然ゴム系プラスチック、セルロース系プラスチック等や、これらから選択される2種以上の混合材料(ポリマーブレンド)などの高分子有機材料が挙げられる。
【0047】
前記調光用材料として、高分子ゲルに共有結合するための付加反応性基や重合性基を有する調光用材料や、高分子ゲルとイオン結合などの相互作用する基を有する調光用材料などの各種の化学修飾した調光用材料を用いることも好ましい。
【0048】
また、前述したように染料や顔料などの色材や光散乱材は、高分子ゲル中に含有され、高分子ゲルから流出しないことが必要である。そのためには高分子ゲルの架橋密度を最適化して染料や顔料などの色材や光散乱材を高分子網目中に物理的に閉じ込めることが好ましい。また、高分子ゲルと電気的、イオン的、その他物理的な相互作用が高い染料や顔料などの色材や光散乱材を用いること、及び表面を化学修飾した染料や顔料などの色材や光散乱材を用いることなどが好ましい。例えば、表面を化学修飾した顔料や、光散乱材としては表面にビニル基などの不飽和基や不対電子(ラジカル)などの高分子ゲルと化学結合する基を導入したものや、高分子材料をグラフト結合したものなどが挙げられる。
【0049】
このような調光用材料を含む高分子ゲルは、架橋前の高分子に調光用材料を均一に分散、混合した後に架橋する方法や重合時に高分子前駆体モノマー組成物に調光用材料を添加して重合する方法によって製造することができる。重合時において染料や顔料などの色材や光散乱材を添加する場合には、前記したように重合性基や不対電子(ラジカル)をもつ顔料や光散乱材を使用し、高分子ゲルに化学結合することも好ましく実施される。
【0050】
また、調光用材料は、刺激応答変色性材料中に極力均一に分散されていることが好ましく、特に、高分子ゲルまたはバインダーへの分散に際して、機械的混練法、攪拌法やあるいは分散剤などを利用して均一に分散させることが望ましい。なお、調光材料を含有した高分子ゲルの粒子の調製は前記高分子ゲルの粒子と同様の方法によって作製することができる。
【0051】
(液体)
刺激応答性高分子ゲルが吸収・放出する液体としては、水、各種有機溶剤およびこれらの2種以上の混合物を用いることができる。また、液体には、分散安定剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの安定剤、抗菌剤、防腐剤、界面活性剤、アルカリ、塩などを添加してもよい。また刺激応答性高分子ゲルの体積変化特性を変化させるための材料を溶解することもできる。例えば、イオン性の界面活性剤、アルコール等の各種有機溶剤を挙げることができる。さらに、白色顔料やカラー顔料等の種々の顔料や染料などの色素を添加することもできる。
【0052】
高分子ゲルと液体との混合比は、重量比で1/2000〜1/1 (高分子ゲル/液体)の範囲とすることが好ましく、中でも、1/500〜1/1が好ましく、特に、1/100〜1/10が好ましい。重量比が1/2000未満となると、組成物の機械的強度などの物性劣化の恐れがあり、1/1を超えると、刺激応答による体積変化の応答速度が低下する恐れがある
【0053】
前記液体の沸点としては、好ましくは80℃以上、さらに好ましくは100℃以上、特に好ましくは150℃以上である。沸点が低い場合には、積層膜とした場合に内部の液体が徐々に蒸発して刺激応答性高分子ゲルの体積変化が鈍くなるおそれや、内部液体中に気泡が生じ、積層膜の外観を損なうおそれがある。そのため、高沸点の溶剤や、不揮発性の化合物を溶解し、モル沸点上昇を利用して沸点を高めることも好ましく実施される。
【0054】
(マイクロカプセル膜)
刺激応答変色性材料が、カプセル膜に被包されている形態の例を図1(b)〜図(c)に示す。前記刺激応答変色性材料を含有する刺激応答変色性液状組成物は、公知のカプセル化法あるいはマイクロカプセルの製造方法によって作製することができる。
【0055】
カプセル膜は、高分子や無機材料を含むことが好ましく、特に、高い光透過性を有するものが好ましい。さらに、内部の液体の蒸発を防ぐために無機材料を含むことが好ましい。このような高分子の主材料として用いることができる高分子としては、ポリ酢酸ビニル、セルロースアセテートブチレート、スチレン−マレイン酸共重合体、ベンジルセルロース、エチルセルロース、ポリエチレン、ポリスチレン、ゴム、ニトロセルロース、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエーテル、アルギン酸、ペクチン、カラギーナン、キサンタンなどの多糖類、ポリビニルアルコール、ゼラチン、アルブミンなどのタンパク質、エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、多糖類、ポリビニルアルコールは好ましい。特に、ポリアミド、ポリウレタンが好ましい。また、このような高分子膜材料に、無機粒子、フィラーなどの各種添加材を加えてもよい。
【0056】
また、無機材料そのものをマイクロカプセル膜として用いる場合には、各種金属の酸化物や炭化チタン、チッ化チタンが好ましく用いられる。金属酸化物の具体的としては酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム等が好適に用いられる。また各種シランカップリング剤、ゾル−ゲル材料を用いることも好ましい。
【0057】
マイクロカプセルの製造方法としては、高分子材料の不溶化を利用した、いわゆるコアセルベーション法、分散粒子の界面で重合を行いカプセル膜を形成する、いわゆる界面重合マイクロカプセル化法、in situマイクロカプセル化重合法、液中硬化被覆マイクロカプセル化法、気体中に液滴を噴霧することでその表面にカプセル膜を形成するスプレードライングマイクロカプセル化法などが挙げられる。これらの技術の詳細は、近藤保著、「新版 マイクロカプセル その製法・性質・応用」、三共出版などの成書に記述されている。
【0058】
本発明の高分子ゲルが、前記液体と共にマイクロカプセル膜に被包されたマイクロカプセルである場合の具体的製造方法としては、▲1▼あらかじめ調製された高分子ゲルの粒子と液体との混合液体、または高分子ゲルの粒子を液体で膨潤させた膨潤体を、カプセル用高分子化合物を含む溶液中に添加して、コアセルベーション処理することでカプセルを形成する方法;▲2▼高分子ゲル粒子と液体およびカプセル用高分子前駆体との混合液体を、前記前駆体との反応する物質を含む溶液に添加し、界面重合によってカプセルを形成する方法;▲3▼高分子ゲル粒子と液体およびカプセル用高分子との混合液体を、前記高分子との反応する物質を含む溶液に添加し、高分子を不溶化または架橋することでカプセルを形成する方法などが挙げられる。また、カプセル化過程においては、▲4▼攪拌機による攪拌方法、▲5▼微細な径をもつノズルからカプセル用組成物を吐出してカプセルを形成する方法、あるいは▲6▼カプセル用組成物を噴霧してカプセルを形成する方法などによって、所望の粒径や形状のカプセルを形成することができる。さらに、マイクロカプセル膜を複数層設けることもできる。すなわち、刺激応答性高分子ゲルの特性に対する影響の少ない高分子系のマイクロカプセル膜で被覆した後に、機械的強度や物質不透過性の無機物質からなるマイクロカプセル膜をさらに形成させることも好ましい。
【0059】
(バインダー)
本発明の液状組成物において、バインダーの材料としては、各種高分子材料、セラミック、ガラスなどの無機材料を利用することができるが、特に、光透過性の高い材料であることが好ましい。また、バインダーは、複数種類の材料からなるものであっても複数の層からなるものであってもよい。
バインダーの具体的な材料としては、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデンやその異種共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレンやその異種共重合体、ポリメチルメタクリレートやその異種共重合体、ポリアミド系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系やビニル系の熱、紫外線や電子線硬化性樹脂、シラン系、チタン系およびジルコニウム系のゾルゲル組成物などの他、セラミック等の無機材料が挙げられる。
これらの中でも、特に高分子材料、紫外線硬化樹脂、およびゾルゲル組成物は好ましい。また本発明のバインダーは、塗布後に硬化させるが、硬化後のバインダーは内部液体の上記透過性の低いことが好ましい。
【0060】
バインダーは、前記した刺激応答変色性材料を分散するために流動性を持つ必要がある。樹脂材料を用いる場合には前記した高分子材料を溶媒に溶解して溶液とすることができる。または、常温で液体である反応性の各種モノマーをバインダーとして用いることもできる。さらに、無機材料の場合には、常温で液体である各種金属アルコキシドを用いることができる。金属アルコキシドの具体例としては、アルコキシシラン、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド等があげられる。これら金属アルコキシドは水と酸性触媒の共存下で加水分解後に縮合重合し強固なマトリックスを形成させることができ、好適に本発明に使用できる。
【0061】
バインダー中には調光用材料、安定剤、防腐剤、抗菌剤、酸化防止剤などを添加することもできる。また前記刺激応答変色性材料を均一に分散させるために界面活性剤等の分散安定剤を添加することも好ましい。また塗布方法に応じて粘度を調整するための増粘剤等の粘度調整剤を添加することもできる。
【0062】
(液状)
本発明の前記液状とは、塗布膜あるいは積層体を形成するにたる流動性を有する液体状の形態のものをいう。即ち、本発明に係る液状組成物とは前記液体及び激応答性高分子ゲルとが含有される刺激応答変色性材料がバインダー中に分散されて、その結果、流動性を有し、かつ、塗布性を有する形態の液体状の組成物を言う。つまり、本発明の液状組成物は、その形態を液状とすることにより、あらゆる表面を塗布することが可能となる。例えば、平面、曲面、凹凸面等任意の表面に任意の量を塗布することが即座に対応でき、その使用性・汎用性は極めて高いものということができる。一方、これに対して、前述の従来の変色性材は、固形の形態であるため、その使用性には多くの制限があるため、その用途は極めて狭く劣る。
【0063】
(省エネ用刺激応答性変色液状組成物)
本発明の刺激応答性変色液状組成物はさまざまな刺激に応答して変色させることができるが、中でも熱を用いた場合には省エネ用途としても使用することができる。すなわち、ある温度のLCSTをもつ刺激応答性高分子ゲルを使用すれば、その温度以上では消色し、その温度以下では着色するような変色性液状組成物とすることができる。このような変色性液状組成物を建物等の外装の塗装に用いれば、夏場の気温の高いときには消色し、太陽光を効果的に散乱し、内部への熱の吸収を抑え、冬場の気温の低いときには着色し、太陽光を吸収して内部へ熱を伝えることができる。そのため、変色性のない塗装を用いた場合に比べ、空調の負荷を軽減することができ、本発明の刺激応答性変色液状組成物を省エネ用途として好適に使用することができる。
【0064】
省エネ用途として用いる場合の刺激応答性変色液状組成物の変色温度範囲は好ましくは5−80℃の範囲であり、さらに好ましくは15−60℃、さらに好ましくは30−45℃の範囲である。
【0065】
(変色性塗装膜及び積層体の作製方法)
本発明の変色性塗装膜及び積層体の作製方法について併せて説明する。前記液状組成物を分散液として基材上又は任意の面に塗布し、硬化させることにより、変色性塗布膜及び積層体を作製することができる。
前記分散液の作製方法としては、前記刺激応答性高分子ゲルを含む水分散溶液を作製し、この水分散溶液を紫外線硬化樹脂溶液等のバインダーに加え、分散させて作製するが、これらに限定されるものではない。
分散液の塗布方法としては、種々の慣用及び公知の塗布方法、例えば、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、キャストコーティング法、スプレーコーティング法、リバースコーティング法、ディップコーティング法、ブレードコーティング法、コンマコート法、はけ塗り法、などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0066】
前記分散液によって塗布された液状組成物は、公知の適当な方法によって硬化させることによって塗装膜とすることができる。その硬化方法としては、バインダーに樹脂溶液を用いた場合には、加熱または自然乾燥によって前記刺激応答性変色液状組成物を硬化させることができる。また、バインダーが紫外線または電子線硬化樹脂であれば、それぞれ紫外線や電子線を照射することによって硬化させることができる。
また刺激応答性変色液状組成物を硬化させる時の温度としては、好ましくは150℃以下であり、さらに好ましくは100℃以下であり、特に好ましくは50℃以下である。硬化時の温度が、150℃以上になると刺激応答性高分子ゲルが吸収・放出する液体が蒸発してしまい、刺激応答性高分子ゲルの体積変化が少なくなり、変色特性を損なう恐れがある。
【0067】
また、図2に示したような実施形態における積層体の膜の厚みは、特に限定されないが、1μm〜3mmの範囲である。より好ましくは20〜1000μmの範囲、特に好ましくは50〜500μmである。1μmよりも薄くなると機械的な強度が弱くなる、光路長が短いために所望の光学濃度がえられないなどの問題が生じる場合があり、3mmよりも厚くなると高分子ゲル組成物の応答性が悪くなる、刺激応答変色性材料が必要以上に積層してしまい、十分な変色特性が得られないなどの問題が生じる場合がある。
【0068】
(基材)
本発明に用いる基材としては、ガラス基材、金属基材、セラミック基材、コンクリートなどの無機基材および、ポリエステル、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアセタール系樹脂などの高分子のフィルムや板状基材、さらには木材板などを使用することもできる。また、積層膜の接着性を高めるために基材表面をあらかじめ処理しておく、または基材と積層膜との間に接着性改善のための層を設ける等の方法も好ましく実施できる。
【0069】
(保護膜)
本発明の変色性塗装膜の表面にはさまざまな保護膜を設けることもできる。保護膜としては、耐候性を高めることを目的に紫外線遮蔽膜や赤外線遮蔽膜を設けることができるが、さらに、汚染防止膜、帯電防止膜、磨耗防止膜を設けることもできる。また、変色性塗装膜内部液体の蒸発を防ぐ目的で、蒸発防止膜を設けることも好ましい。これらの保護膜は、変色性塗装膜表面にそれぞれの保護機能をもった塗料を塗布する、または保護シートを貼り付ける、または真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などの乾式法によって薄膜を作製するなどの方法によって形成することができる。
【0070】
前記それぞれの保護機能をもった塗料を作製する場合は、それぞれの保護機能を有する物質等を添加することにより調整することができる。
前記それぞれの保護機能をもった保護膜は、積層されて多層を形成するものであっても、また、単層として前記保護機能を有する形態としてもよい。
前記保護シートとしては、表面処理または無処理の一般的な高分子フィルムシート、表面に金属酸化物を蒸着させた高分子フィルムシート等が挙げられるが、特に限定されるものではない。光透過性および前記液体の蒸発防止の観点から、好ましくは金属酸化物を蒸着させた高分子フィルムシートであり、中でもシリカ、アルミナ、チッ化ケイ素を蒸着した高分子フィルムシートが好ましく、特に、チッ化ケイ素を蒸着した高分子フィルムシートが好ましい。
【0071】
【実施例】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、これらに限定されるものではない。
【0072】
実施例
(刺激応答性高分子ゲル粒子Aの作製)
刺激応答性高分子ゲルの粒子を以下のようなプロセスにより製造した。
N‐イソプロピルアクリルアミド(NIPAM) (3.5758 g), メチレンビスアクリルアミド (0.0072 g), マイクロカプセル化カーボンブラック分散液(大日本インキ化学製、MC black 082−E、顔料分14.3%含有)の水(19.1630 g)溶液に15分間窒素を通し溶存酸素を除いた。この溶液に対して、過硫酸アンモニウム(APS)(29.9mg)の水(0.5106 g)溶液を加えて攪拌し均一に溶解させた。
【0073】
別に、75 mm径の3枚羽根の攪拌翼を取り付けた2Lのセパラブルフラスコにソルゲン50(第一工業製薬(株)製、6.00 g)のシクロヘキサン(1.2 L)溶液をいれ、先に調整したN‐イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)の顔料分散液を加え、窒素を流してフラスコ内部全体を窒素置換した。ウォーターバスを用いてこのフラスコ全体を25℃に保ち、攪拌翼を800 rpmで15分間回転させて水相をシクロヘキサン中に懸濁、分散させた。攪拌翼の回転数を250 rpmにして、この分散液に対してテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)(0.8 ml)のシクロヘキサン(3.2 ml)溶液を加えて、反応を開始させ、25℃に保ったまま250 rpm で2時間重合した。得られた重合体の粒子をジメチルホルムアミド、水で十分に洗浄した。このようにして感応答性高分子ゲル粒子を作製した(粒子A)。
【0074】
合成した刺激応答性高分子ゲル粒子の室温(25 ℃, 膨潤状態)での体積平均粒径は30μmであった。この刺激応答性高分子ゲル粒子は、約34℃に相転移温度を有していた。また、その体積変化量は約15倍であった。すなわち、該高分子ゲル粒子は、相転移点よりも高い温度では収縮し、低い温度では膨潤する。
【0075】
(刺激応答性高分子ゲル粒子Bの作製)
色材を含有した刺激応答性(高温膨潤型)高分子ゲルの粒子を、以下のようなプロセスにより作製した。
アクリルアミド1.0g、架橋剤としてのメチレンビスアクリルアミド1.0mg、蒸留水0.575g、色材としての青色顔料(大日本インキ化学製、MC Blue 182−E、顔料分14.3%含有)の水分散液3.425g、を攪拌混合した水溶液Bを調製した。
【0076】
ソルビトール系界面活性剤(ソルゲン50:第一工業製薬(株)製)2.375gをトルエン300mlに溶解した溶液を窒素置換された反応容器に加え、これに、先に調製した水溶液Bを添加し、回転式攪拌装置を用いて1200rpmで30分攪拌して懸濁させ、懸濁液Bを得た。
【0077】
得られた懸濁液Bをフラスコ中に入れ、窒素置換により酸素を除いた後、重合開始剤である過硫酸アンモニウム(APS)0.004gを水0.5mlに溶解したものを添加し、70℃に加熱して3時間、重合を行った。重合終了後、大量のアセトンで洗浄することで精製を行い、さらに乾燥させて、色材を含有したアクリルアミドゲルの粒子を得た。
【0078】
次に、アクリル酸1.5g、架橋剤としてのメチレンビスアクリルアミド0.0015g、および蒸留水5.5gを混合し、窒素置換後、これに過硫酸アンモニウム0.006gを水0.5gに溶解したものを添加し、混合液を得た。この混合液に上記得られたアクリルアミドゲルの粒子0.5gを加えて70℃に加熱し、3時間重合を行いIPN高分子ゲル粒子(粒子B)を調製した。
【0079】
得られたIPN高分子ゲル粒子(アクリル酸−アクリルアミド相互侵入網目構造体ゲル粒子)を大量の蒸留水中に投入し、加熱冷却を行いゲル粒子を膨潤収縮させ、これをろ過する操作を繰り返すことで精製を行った。
【0080】
得られたIPN高分子ゲル粒子の乾燥時の体積平均粒子径は、約15μmであった。このIPN高分子ゲル粒子を、大量の純水に加えて膨潤させた。このIPN高分子ゲル粒子の10℃における平衡膨潤時の吸水量は約3g/gであった。ところが、これを50℃に加熱するとさらに膨潤し、約80g/gの吸水量を示すことがわかった。
この相転移点は30−40℃の温度範囲にあった。つまり、相転移点よりも高温では膨潤し、低温では収縮する。この変化は可逆的であり、収縮時に比べ膨潤時の高分子ゲル粒子の粒子径が約3倍まで変化し、すなわち、体積で約27倍の変化が得られた。
【0081】
(マイクロカプセル膜をもつ刺激応答変色性材料(粒子C)の作製)
次に、得られた上記粒子Aを含むマイクロカプセルを下記の界面重合法によって作製した。
乾燥したゲル粒子A1.0gを、0.4Mの1,6−ヘキサンジアミンと0.45Mの炭酸ナトリウムとを溶解した水溶液30mlおよび蒸留水30mlの混合液に入れ、溶液を飽和膨潤させた。この分散水溶液を、界面活性剤として、Span85を5%含有するクロロホルム−シクロヘキサン混合溶液(1/4v/v)150mlに加え、よく攪拌して乳化分散させた。この乳化液に、テレフタロイルジクロライド1.2gを前記と同じ混合溶液150mlに溶解したものを、攪拌しながら添加した。界面重合によってポリアミド膜が形成され、マイクロカプセルが得られた。このマイクロカプセルを蒸留水でよく洗浄し、乾燥させた(粒子C)。
【0082】
得られたマイクロカプセルの平均粒径は約20μmであった。顕微鏡観察により、得られたマイクロカプセルの内部には青色に着色した高分子ゲル粒子が存在することが確認できた。また、加熱冷却によってカプセル内の高分子ゲル粒子の大きさは可逆的に変化することも確認できた。
【0083】
(分散液の調製)
前記刺激応答性高分子ゲル粒子Aを一定濃度含む水分散溶液(ゲルの固形分濃度2.5%)を調製した。この水分散溶液10 gを、フッ素系界面活性剤(セイミケミカル製 Surflon S−383)5質量%を含有するフッ素系紫外線硬化樹脂(日本化薬社製 KAYARAD FAD−515)溶液10gに加え、0℃に冷却した。この溶液をウェーブローターで分散して分散液を作製した(分散液A)。
【0084】
また、前記刺激応答性高分子ゲル粒子Bを一定濃度含む水分散溶液(ゲルの固形分濃度2.5%)を調製した。この水分散溶液10 gを、フッ素系界面活性剤(セイミケミカル製 Surflon S−383)5質量%を含有するフッ素系紫外線硬化樹脂(日本化薬社製 KAYARAD FAD−515)溶液10gに加え、0℃に冷却した。この溶液をウェーブローターで分散して分散液を作製した(分散液B)。
【0085】
また、前記刺激応答性高分子ゲル粒子Cを一定濃度含む水分散溶液(ゲルの固形分濃度2.5%)を調製した。この水分散溶液10 gを、フッ素系界面活性剤(セイミケミカル製 Surflon S−383)5質量%を含有するフッ素系紫外線硬化樹脂(日本化薬社製 KAYARAD FAD−515)溶液10gに加え、0℃に冷却した。この溶液をウェーブローターで分散して分散液を作製した(分散液C)。
【0086】
前記刺激応答性高分子ゲル粒子Aを一定濃度含む20wt%エチレングリコール水溶液(ゲルの固形分濃度2.5%)を調製した。この水分散溶液10 gを、フッ素系界面活性剤(セイミケミカル製 Surflon S−383)5質量%を含有するフッ素系紫外線硬化樹脂(日本化薬社製 KAYARAD FAD−515)溶液10gに加え、0℃に冷却した。この溶液をウェーブローターで分散して分散液を作製した(分散液D)。
【0087】
(積層体の作製)
前記の分散液A−Dをステンレス金属板上にバーコーターを用いて厚さ100μmに塗布した。紫外線照射(高圧水銀灯、160 W/cm、照射距離 20 cm, 10秒間照射)によって硬化し、刺激応答変色性積層体を形成した。紫外線照射は、25℃にて行なった。さらに、この積層体表面に内部液体の蒸発を防止する目的で、アルミナ蒸着PETフィルムを張り合わせ、さらに端面を封止し積層体を作製した(積層体A−D)。
【0088】
これら積層体は、温度の変化に伴って変色し、積層体A、Cは30℃以下においては黒く着色し、40℃以上に加熱することによって消色して白色となった。また積層体Dは10℃以下においては黒く着色し、15℃以上では白色となった。一方、積層体Bは、室温においては白色であり、40℃以上に加熱することによって青く着色した。この色変化は可逆的であった。
【0089】
比較例
従来(公知)の刺激応答変色性積層体を以下のようにして作製した。
クリスタルバイオレッドラクトン 1g, ビスフェノールA 2g, ステアリン酸ネオペンチル27gを混合し、100℃10分間加熱溶解して均質化し、着色料Aとした。
さらに、この着色料A 10 g,ポリアクリル酸エステル(分子量約70,000, 軟化点100℃)20g, キシレン 40g、メチルイソブチルケトン 30 gを混合し、70℃、20分間過熱溶解して塗料とした。これをステンレス金属板上にコートして、公知の刺激応答変色性積層体(積層体E)を作製した。
【0090】
この積層体は、15℃以下では青色を呈し、35℃以上では白色となり、この変化は可逆的であった。
【0091】
(耐候性評価)
作製したそれぞれの刺激応答性高分子ゲル液状組成物の積層体をウェザーメーター(東洋精機製 サンテストCPS+)中に1500時間、暴露することによって促進試験を行った。結果は、促進試験後の顕微鏡観察による内部ゲル粒子の外観、刺激応答した時の膨潤時と収縮時の体積比、発色時と消色時における反射光学濃度を測定した。その光学濃度差の変化によって耐候性を評価した。反射光学濃度の測定にはX−Rite404を用いた。刺激応答した時の膨潤時と収縮時の体積比、および発色時と消色時における反射光学濃度差を暴露前、暴露後について、表1に結果を示した。
【0092】
【表1】
【0093】
ウェザーメーターによる1500時間暴露促進試験では、上記表1の結果より、暴露前後においても、実施例1〜4では、光学濃度の変化が認められないかまたはわずかであることが分かった。一方、比較例においては、暴露後顕著な光学濃度の変化が認められた。よって、実施例により、本発明の刺激応答性変色性液状組成物は、1500時間の暴露促進試験においてもほとんど変化が認められず安定であることがわかった。
【0094】
(機能評価)
積層体AおよびBを気温35℃において直射日光の下に放置した。この時、積層体Aは白色であり、積層体Bは黒色を呈していた。3時間後にこれら積層体の表面温度を測定したところ、積層体Aでは40℃、積層体Bでは55℃になっていた。一方、気温15℃においても同様に直射日光の下に放置した。この時積層体Aは黒色であり、積層体Bは白色を呈していた。同様に3時間後にこれら積層体の表面を温度を測定したところ、積層体Aでは30℃、積層体Bでは20℃であった。積層体Eについても同様の試験を行った。暴露後の積層体Eは、直射日光下で、変色が起こらず、気温35℃において直射日光の下に放置したところ表面温度は40℃に、気温15℃においても同様に直射日光の下に放置したところ表面温度は20℃になった。
【0095】
以上の機能評価の結果により、本発明の積層体Aの様に、気温35℃の直射日光の下で、高温で白色、低温で着色する積層体においては、夏場の気温が高いときには光を散乱して熱を蓄積せず、冬場の気温の低いときには、光を効率的に吸収して熱を蓄積できることが分かる。したがって、外装材や塗装に用いれば、内部の温度を自律的に調節できる省エネ変色性塗装膜又は省エネ変色性積層体とすることができることがわかった。一方、比較例として調製された積層体Eの前記試験では、変色せず、積層体Aのような省エネ効果を得ることはできなかった。
【0096】
【発明の効果】
本発明によれば、本発明の液状組成物は、その形態を液状とすることにより、あらゆる表面に塗布することが可能となる。すなわち、例えば、平面、曲面、凹凸面等任意の表面に任意の量を塗布し、塗布膜を形成することが即座にでき、その使用性・汎用性は、極めて高い刺激応答変色性液状組成物を提供することができる。
また、色選択の幅が広く、任意の発色が可能なため、意匠性が高く、かつ、光照射における発色時と消色時での光学濃度差の少ない優れた刺激応答性変色性液状組成物、変色性塗装膜、変色性積層体及びその作製方法を提供することができる。
【0097】
さらに、温度上昇や光照射の増加に伴って消色し、その逆に、温度低下及び日光の照射が少ないときには、着色して光を効率的に吸収・排出する機能を奏する現在の地球環境に適した前記省エネルギーに優れた変色性塗装膜、変色性積層体の提供をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)本発明の刺激応答変色性液状組成物を層状に形成した1例を示す断面図であり、液体3(図示省略)を含む刺激高分子ゲル粒子1がバインダー2中に分散し、薄膜状に成型されたものの拡大断面図である。
(b)刺激応答変色性材料5がマイクロカプセル膜4に被包された状態を示す図である。
(c)本発明の刺激応答変色性液状組成物において、刺激応答変色材料がマイクロカプセル化膜4に被包されたものをバインダー2中に分散し、薄膜状に成型されたものの拡大断面図である。
【図2】本発明の刺激応答変色性液状組成物を基材6上に薄膜状に塗布し、バインダー2を硬化させることによって変色性積層体を作製したことを例示するための拡大断面図である。
【図3】本発明の刺激応答変色性液状組成物において、刺激応答変色材料がマイクロカプセル化膜4に被包されたものをバインダー2中に分散し、薄膜状に成型され、その表面に保護膜が施された変色性塗装膜の一例の拡大断面図である。
【図4】本発明の刺激応答変色性液状組成物を基材6上に薄膜状に塗布し、バインダー2を硬化させ、更に外表面を保護膜で覆って変色性積層体を作製したことを例示するための拡大断面図である。
【符号の説明】
1 刺激応答性高分子ゲル
2 バインダー
3 液体
4 マイクロカプセル膜
5 マイクロカプセル膜に被包された刺激応答変色性材料
6 基材
7 保護膜
10 変色性塗装膜
20 変色性積層体
【発明の属する技術分野】
本発明は、刺激応答変色性液状組成物、及び前記液状組成物から形成される塗装膜、さらに該塗装膜を基材上に積層してなる変色性積層体に関する。さらに詳細には、温度や光照射量の変化などの外部刺激により無色ないしは有色から他の色に可逆的色変化を呈する前記刺激応答変色性液状組成物および該刺激応答変色性液状組成物から形成される塗装膜さらに該塗装膜を基材上に積層してなる変色性積層体に関する。
本発明は、インク、塗料、塗装、塗装部品、装飾部材、センサー等に幅広く応用可能なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、温度変化により、有色と無色間、有色と他の有色間の可逆的色変化を呈する熱変色性材については、多くの検討がなされて来た(例えば、特許文献1乃至7参照。)。これを利用して彩色した熱変色材は示温要素、玩具要素、マジック要素等として実用に供されている。
【0003】
また、金属光沢調の色彩を呈する熱変色性塗料、及びそれを用いて得られる塗装体に関しては、幾つかの提案が既に開示されている(例えば、特許文献8乃至10参照)。前記提案は、天然雲母の表面を酸化チタンで被覆した金属光沢顔料と 熱変色性材料との組み合わせによるものであり、金属光沢調の多彩な色変化を視覚させることができ、示温、装飾、玩具要素等、多様な分野に適用できることが述べられている。
【0004】
さらに、光により可逆的に変色する物質として有機フォトクロミック化合物が知られている。この化合物は、光のエネルギーを吸収してその化学構造が変わることによって、化合物の色が変化するもので、各種の有機化合物が知られている。
【0005】
【特許文献1】
特公昭51−44706号公報
【特許文献2】
特公昭51−44707号公報
【特許文献3】
特公昭51−44708号公報
【特許文献4】
特公昭52−7764号公報
【特許文献5】
特公昭51−46548号公報
【特許文献6】
特開昭62−140881号公報
【特許文献7】
特公平7−100769号公報
【特許文献8】
特開平6−107974号公報
【特許文献9】
特開平6−107975号公報
【特許文献10】
特開平6−107976号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記した従来の色材を用いたインキや塗料の耐光堅牢性については、光安定剤を添加することにより、光照射によって生じるコントラストの低下をある程度防止することはできる。しかしながら、屋外などの光、特に紫外線照射の過酷な環境条件下では、時間の経過とともに退色してしまい、コントラストが低下する。また、黄変して見た目の美観が損なわれるなど実用上使用すること困難であった。
【0007】
また、これらの欠点を補うために耐候性の高い、無機材料からなるサーモクロミック、フォトクロミック材料を利用することが考えられるが、これらの材料は着色度が強くなく、また、材料種が多くないため任意の色を出すことができないなど意匠性が低く、また、高価なため、用途展開の上で大きな制約があった。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決することを課題とする。すなわち、汎用性、使用性において良好な形態を提供することであり、かつ、色選択の幅が広く、任意の発色が可能で意匠性が高く、光照射での褪色が少なく優れ、さらに、温度上昇や光照射の増加に伴って消色し、その逆に、温度低下及び日光の照射が少ないときには、着色して熱・光を効率的に吸収・排出する機能を持たせた刺激応答変色性組成物を提供することを目的とする。
また、容易に前述の機能を有する変色性塗装膜、変色性積層体とその作製方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは鋭意検討した結果、液体と前記液体を刺激に応じて吸収または放出することにより可逆的な体積変化を生じる高分子ゲル(以下、「刺激応答性高分子ゲル」ともいう。)を含む刺激応答変色材料を用いた前記液状組成物を利用することによって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
即ち、以下の本発明により達成される。
<1> 液体と前記液体を刺激に応じて吸収または放出することにより可逆的な体積変化を生じる高分子ゲルとを含む刺激応答変色性材料を含み、前記刺激応答変色性材料がバインダー中に分散され液状であることを特徴とする刺激応答変色性液状組成物。
<2> 前記刺激応答変色性材料が、マイクロカプセル膜に被包されている刺激応答性高分子ゲルを含有することを特徴とする上記<1>に記載の刺激応答変色性液状組成物。
<3> 前記マイクロカプセル膜が、無機材料を含むことを特徴とする上記<2>に記載の刺激応答変色性液状組成物。
<4> 前記高分子ゲルが、調光用材料を含むことを特徴とする上記<1>乃至<3>のいずれかに記載の刺激応答変色性液状組成物。
<5> 前記バインダーが、無機材料を含むことを特徴とする上記<1>に記載の刺激応答変色性液状組成物。
<6> 上記<5>に記載の無機材料が、金属アルコキシドであることを特徴とする上記<5>に記載の刺激応答変色性液状組成物。
<7> 前記バインダーが、調光用材料を含むことを特徴とする上記<1>に記載の刺激応答変色性液状組成物。
<8> 前記液体の沸点が、100℃以上であることを特徴とする上記<1>に記載の刺激応答変色性液状組成物。
<9> 前記刺激応答性材料を応答させる刺激が熱であり、かつ、低温時に着色状態にあり熱の付与によって着色状態から無色または淡色へと変化することを特徴とする上記<1>に記載の刺激応答変色性液状組成物。
<10> 上記<9>に記載の変色の温度が5乃至80℃の範囲にあることを特徴とする上記9に記載の刺激応答変色性液状組成物。
<11> 上記<1>乃至<10>のいずれかに記載の刺激応答変色性液状組成物を硬化させてなることを特徴とする変色性塗装膜。
<12> 前記変色性塗装膜の表面上に、保護膜を設けてなることを特徴とする上記<11>に記載の変色性塗装膜。
<13> 前記保護膜が、前記液体の蒸発防止機能を有することを特徴とする上記<12>に記載の変色性塗装膜。
<14> 上記<9>又は<10>に記載の刺激応答変色性液状組成物を硬化させてなる省エネ用変色性塗装膜。
<15> 前記変色性塗装膜を基材上に積層してなる上記<11>乃至<14>のいずれかに記載の変色性積層体。
<16> 上記<14>に記載の省エネ変色性塗装膜を基材上に積層してなる省エネ用変色性積層体。
<17> 前記硬化の方法が、紫外線または/及び電子線を利用することを特徴とする上記<11>記載の変色性塗装膜の作製方法。
<18> 前記硬化の温度が、150℃以下であることを特徴とする上記<11>又は<17>に記載の変色性塗装膜の作製方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に係る刺激応答変色性液状組成物(以下、「液状組成物」ともいう。)は、液体と前記液体を刺激に応じて吸収または放出することにより可逆的な体積変化を生じる高分子ゲルとを含む刺激応答変色性材料を含み、前記刺激応答変色性材料がバインダー中に分散され液状であることを特徴とする。また、該液状組成物を硬化することによりなる変色性塗装膜およびその作製方法並びに変色性塗装膜を基材上に積層してなる変色性積層体を特徴とする。
以下に、本発明について詳細に説明するが、これらに限定されるものではない。
【0011】
<<刺激応答性変色性液状組成物>>
本発明の液状組成物について、実施形態の1例図1を用いて説明する。
図1(a)は、本発明の液状組成物を層状に形成した変色性塗装膜例を示す図であり、バインダー2の内部に、高分子ゲル1と図示されない液体3が分散されているものを示すものである。図1(b)は、前記刺激応答変色性材料5がマイクロカプセル膜4に被包された状態を示すものである。カプセル膜4の内部に高分子ゲル1と液体3が封入されている。図1(c)は、高分子ゲル1と液体3の混合物を封入したマイクロカプセル5をバインダー2中に分散したものを示すものである。
さらに、この液状組成物を基材6の上に積層し、硬化させることによって変色性積層体としたものを図2に示してある。図3及び図4は、図1(c)の塗装膜及び図2の積層体に、それぞれ更に保護膜を施したものの一例を示してある。
【0012】
<刺激応答変色材料>
本発明に係る刺激応答変色性材料は、少なくとも刺激応答性高分子ゲル(以下、「高分子ゲル」ともいう。)と液体を含有する。刺激応答性高分子ゲルには、種々の安定剤を共重合あるいは結合させることも可能である。
【0013】
(刺激応答性高分子ゲル)
本発明において使用することができる刺激応答性高分子ゲルについて説明する。刺激応答性高分子ゲル1は、pH変化、イオン濃度変化、化学物質の吸脱着、溶媒組成の変化、又は光、熱、電流もしくは電界の付与等、刺激の付与によって、液体を吸収・放出して体積変化(膨潤・収縮)するものである。本発明において、刺激応答性高分子ゲル1の体積変化は、一方的なものでも可逆的なものであってもよい。但し、刺激応答性高分子ゲル1をセンサー等の光学素子や装飾品、省エネ用塗装膜等として用いる場合は、可逆的であるものが好ましい。以下に、本発明において使用することのできる刺激応答性高分子ゲル1の具体例を示す。
【0014】
pH変化によって刺激応答する高分子ゲル1としては、電解質系高分子ゲルが好ましく、その例としては、ポリ(メタ)アクリル酸の架橋物やその塩、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその塩、ポリマレイン酸の架橋物やその塩、マレイン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその塩、ポリビニルスルホン酸の架橋物やビニルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物、ポリビニルベンゼンスルホン酸の架橋物やその塩、ビニルベンゼンスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその塩、ポリアクリルアミドアルキルスルホン酸の架橋物やその塩、アクリルアミドアルキルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその塩、ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの架橋物やその塩酸塩、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその4級化物や塩、ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドとポリビニルアルコールとの複合体の架橋物やその4級化物や塩、ポリビニルアルコールとポリ(メタ)アクリル酸との複合体の架橋物やその塩、カルボキシアルキルセルロース塩の架橋物、ポリ(メタ)アクリロニトリルの架橋物の部分加水分解物やその塩などが挙げられる。
耐候性、耐久性の観点から、より好ましくは、(メタ)アクリル酸の単独共重合体あるいはそれと他のモノマーとの共重合体の架橋物やその塩であり、特に、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸などの共重合体の架橋物やその塩が、好ましい。
【0015】
pH変化としては、液体の電気分解や添加される化合物の酸化還元反応などの電極反応、あるいは、導電性高分子の酸化還元反応、更には、pHを変化させる化学物質の添加によるものであることが好ましい。用途範囲の拡大、繰り返し性の観点から、より好ましくは、添加される化合物の酸化還元反応や導電性高分子の酸化還元反応を利用することである。
【0016】
イオン濃度変化によって刺激応答する高分子ゲル1としては、前記したpH変化による刺激応答性高分子ゲルと同様なイオン性高分子材料が使用できる。また、イオン濃度変化としては、塩等の添加、イオン交換性樹脂の使用などによるものが好ましい。用途範囲の拡大、繰り返し性の観点から、より好ましくは、イオン交換性樹脂の使用である。
【0017】
化学物質の吸脱着によって刺激応答する高分子ゲル1としては、イオン性高分子ゲルが好ましく、その例として、ポリビニルスルホン酸の架橋物やビニルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物、ポリビニルベンゼンスルホン酸の架橋物やビニルベンゼンスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物、ポリ(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸の架橋物や(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物などが挙げられる。耐候性の観点から、ポリ(メタ)アクリル酸の誘導体の架橋物が好ましい。
【0018】
この場合、化学物質としては、界面活性剤、例えば、n−ドデシルピリジニウムクロライドなどのアルキルピリジン塩、アルキルアンモニウム塩、フェニルアンモニウム塩、テトラフェニルホスフォニウムクロライドなどのホスホニウム塩などのカチオン性界面活性剤を使用することができる。
【0019】
溶媒組成の変化によって刺激応答する高分子ゲル1としては、一般にほとんどの高分子ゲルが挙げられ、その高分子ゲルの良溶媒と貧溶媒とを利用することで膨潤、収縮を引き起こすことが可能である。
【0020】
電流もしくは電界の付与によって、刺激応答する高分子ゲル1としては、カチオン性高分子ゲルと電子受容性化合物とのCT錯体(電荷移動錯体)が好ましく、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどアミノ置換(メタ)アクリルアミドの架橋物、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートやジメチルアミノプロピルアクリレートなどの(メタ)アクリル酸アミノ置換アルキルエステルの架橋物、ポリスチレンの架橋物、ポリビニルピリジンの架橋物、ポリビニルカルバゾールの架橋物、ポリジメチルアミノスチレンの架橋物、(メタ)アクリル酸およびその塩などの共重合体の架橋物などが挙げられ、特に、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート系高分子および(メタ)アクリル酸およびその塩などの共重合体は好ましい。耐候性および応答性の観点から、より好ましくは、(メタ)アクリル酸およびその塩の共重合体の架橋物、またポリアクリルアミドアルキルスルホン酸系高分子も好ましく使用される。
これらは、ベンゾキノン、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラシアノエチレン、クロラニル、トリニトロベンゼン、無水マレイン酸やヨウ素などの電子受容性化合物とを組み合わせて使用することができる。
【0021】
光の付与によって刺激応答する高分子ゲル1としては、トリアリールメタン誘導体やスピロベンゾピラン誘導体などの光によってイオン解離する置換基を有する親水性高分子化合物の架橋物が好ましく、その例として、ビニル置換トリアリールメタンロイコ誘導体と(メタ)アクリルアミドとの共重合体の架橋物などが挙げられる。応答性の観点から、より好ましくは、ビニル置換トリアリールメタンロイコ誘導体と(メタ)アクリルアミドとの共重合体の架橋物である。
【0022】
熱応答性高分子ゲルとしては、ある温度以上で疎水性相互作用によって凝集し水溶液中から析出してくる性質を持つLCST(下限臨界共融温度)をもつ高分子の架橋体、およびUCST(上限臨界共融温度)をもつ高分子の架橋体や、互いに水素結合する2成分の高分子ゲルのIPN(相互侵入網目構造体)、結晶性などの凝集性の側鎖を持つ高分子ゲルなどが好ましい。これらの中でも疎水性相互作用を利用したLCSTゲルは特に好ましい。
【0023】
LCST(下限臨界共融温度)をもつ高分子の架橋体であるLCSTゲルは、高温において収縮し、UCSTゲル、IPNゲルおよび結晶性ゲルでは、逆に高温で膨潤する特性をもっている。前者の具体的な化合物としては、ポリN−イソプロピルアクリルアミドなどの〔N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド〕の架橋体やN−アルキル置換(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸の共重合体およびその塩、または(メタ)アクリルアミド、または(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどの2成分以上の共重合体の架橋体、ポリビニルメチルエーテルの架橋物、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのアルキル置換セルロース誘導体の架橋体などが挙げられる。N−アルキル置換(メタ)アクリルアミドの架橋体が、耐候性,体積変化特性の観点から、好ましくは、例えば、N−アルキル置換(メタ)アクリルアミドの架橋体やN−アルキル置換(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸の共重合体およびその塩の架橋体であり、中でも、N−アルキル置換(メタ)アクリルアミドの架橋体が好ましく、特に、ポリN−イソプロピル(メタ)アクリルアミドは好ましい。
【0024】
一方、後者の化合物としては、ポリ(メタ)アクリルアミドの架橋体とポリ(メタ)アクリル酸の架橋体からなるIPN体およびその部分中和体(アクリル酸単位を部分的に塩化したもの)、ポリ(メタ)アクリルアミドを主成分とする共重合体の架橋体とポリ(メタ)アクリル酸の架橋体からなるIPN体およびその部分中和体などが挙げられる。より好ましくは、ポリ〔N−アルキル置換アルキルアミドの架橋体、ポリ(メタ)アクリルアミドの架橋体とポリ(メタ)アクリル酸の架橋体とのIPN体およびその部分中和体などが挙げられ、耐候性の観点から、好ましくは、ポリアクリルアミドの架橋体とポリアクリル酸の架橋体からなるIPN体である。
【0025】
また、結晶性ゲルとしては、オクチル基、デシル基、ラウリル基、ステアリル基等の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸との共重合体の架橋体やその塩があげられる。
【0026】
この熱応答性高分子ゲルの体積変化を示す温度(相転移温度)としては、高分子ゲルの構造、組成により種々の設計が可能である。なお、好ましい相転移温度は−30〜300℃の範囲から選択され、中でも、−20〜150℃の範囲が好ましく、特に、好ましくは−5〜80℃の範囲である。
【0027】
高分子ゲルとしては、上記例示した具体例の他に、温度変化に応じて複数の相転移点を示すゲルも好適に使用することができる。具体的に例示すると、ポリN−イソプロピル(メタ)アクリルアミドなどのポリアルキル置換(メタ)アクリルアミドの架橋体とポリ(メタ)アクリル酸の架橋体とのIPN体などがあげられる。耐候性の観点から、例えば、アクリル酸系誘導体の重合体の架橋体のIPN体が好ましく、特に、好ましくは、ポリN−イソプロピルアクリルアミドの架橋体とポリアクリル酸の架橋体のIPN体である。これらのゲルは、温度上昇に伴い膨潤−収縮−膨潤という2つの相転移点を示すことが知られている。
【0028】
また、熱応答性高分子ゲルの体積変化量を増大させる目的で、イオン性官能基を高分子ゲル中に含有させることも好ましく実施できる。
イオン性官能基としては、カルボン酸、スルホン酸、アンモニウム基、りん酸基などがあげられ、耐候性、耐久性の観点から、中でも、カルボン酸、スルホン酸が好ましく、特に、カルボン酸が好ましい。イオン性官能基は、高分子ゲルを調製する際にこれら官能基をもつモノマーを共重合する方法、合成後の高分子ゲルにモノマーを含浸させて重合しIPN(相互侵入網目構造)体とする方法、前記高分子ゲル中の官能基を部分的に加水分解や酸化反応などの化学反応によって変換する方法などが好ましく実施できるが、製造性の観点から、中でも、共重合する方法やIPN体とする方法が好ましく、特に、共重合する方法が好ましい。
【0029】
本発明の刺激応答性高分子ゲルの体積変化量は、特に限定されないが、高いほうが光学濃度変化の観点から好ましく、膨潤時および収縮時の体積比が、3以上、中でも5以上が好ましく、特に15以上が好ましい。また、本発明の刺激応答性高分子ゲルの体積変化は、可逆的であるものでも不可逆的であるものでもよいが、調光素子や表示素子、センサーなどの光学素子や装飾品、省エネ用塗装体として利用する場合は、可逆的なものであることが好ましい。
【0030】
高分子ゲル中にはその特性を損なわない範囲で、紫外線吸収剤、光安定剤等、種々の安定剤を共重合あるいは結合させることが可能である。例えば、ヒンダードアミン系やヒンダードフェノール系の化合物や光安定化機能を持つ化合物などを共重合あるいは結合することが好ましく実施できる。これらの化合物の共重合量あるいは結合量は、高分子ゲルに対して0.01重量%〜5重量%の範囲が好ましく、中でも、0.01重量%〜2重量%が好ましく、特に、0.05重量%〜1重量%が好ましい。
【0031】
また、本発明では、刺激応答性高分子ゲルの形態は、特に限定されないが、刺激応答特性を考慮すると、粒子の形態として使用することが特に好ましい。その粒子の形態も特に限定されないが、球体、楕円体、多面体、多孔質体、繊維状、星状、針状、中空状などの形態のものを使用することができる。
【0032】
本発明において用いられる刺激応答性高分子ゲルは、乾燥状態で平均粒径が0.01μm〜5mmの範囲、中でも、0.01μm〜3mmの範囲、特に、0.01μm〜1mmの範囲の粒子であることが好ましい。平均粒子径が0.01μm未満となると、光学的な特性を得ることができなくなり、凝集等を起こしやすくなり、かつ、使用する場合にその扱いが困難となる。一方、5mmを超えると、応答速度が遅くなってしまう問題が生じる。
【0033】
これらの高分子ゲルの粒子は、高分子ゲルを物理的粉砕法等で粒子化する方法、架橋前の高分子を化学的粉砕法等によって粒子化した後に架橋して高分子ゲル粒子を得る方法、あるいは乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法などの粒子化重合法などの一般的な粒子化方法によって製造することができる。また、架橋前の高分子をノズル口金等によって押し出して繊維化し、これを架橋した後に粉砕する方法、あるいは前記繊維を粉砕して粒子化した後に架橋する方法によって高分子ゲル粒子を製造することも可能である。これらの方法は、目的用途に応じて種々適宜選択することができる。
【0034】
尚、表示素子もしくは調光素子等に用いる場合には、これらの高分子ゲルに調光用材料を添加することが好ましい。添加する調光用材料としては、染料、顔料などの色材や光散乱材などが挙げられ、高分子ゲルに物理的あるいは化学的に固定化されることが好ましい。
【0035】
このような調光用材料の添加量としては、高分子ゲルの乾燥時又は収縮時に、飽和吸収濃度あるいは飽和散乱濃度以上となる量を添加することが好ましい。ここで、飽和吸収(あるいは飽和散乱)濃度以上とは、特定の光路長のもとにおける調光用材料濃度と光吸収量の関係が1次直線の関係から大きく外れる領域のことを示す。高分子ゲル1に、前記濃度以上となるように調光用材料を添加することによって、高分子ゲル1が膨潤・収縮を起こし、その結果光学濃度および/又は散乱を変化させることができる。
【0036】
飽和吸収濃度あるいは飽和散乱濃度以上となる調光用材料の濃度は、一般に3質量%以上であり、中でも、3質量%〜95質量%の範囲を高分子ゲルに添加することが好ましく、より好ましくは5質量%〜80質量%の範囲であり、特に好ましくは、10質量%〜50質量%の範囲である。3質量%未満となると、調光用材料を添加した効果が十分に得られず、95質量%を超えると、高分子ゲルの特性が低下してしまう恐れがある。
【0037】
前記染料の好適な具体例としては、例えば、黒色のニグロシン系染料や赤、緑、青、シアン、マゼンタ、イエローなどのカラー染料であるアゾ染料、アントラキノン系染料、インジゴ系染料、フタロシアニン系染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、ナフタルイミド染料、ベリノン染料などが挙げられ、特に光吸収係数が高いものが望ましい。例えば、C.I.ダイレクトイエロー1、8、11、12、24、26、27、28、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、157、C.I.アシッドイエロー1、3、7、11、17、19、23、25、29、38、44、79、127、144、245、C.I.ベイシックイエロー1、2、11、34、C.I.フードイエロー4、C.I.リアクティブイエロー37、C.I.ソルベントイエロー6、9、17、31、35、100、102、103、105、C.I.ダイレクトレッド1、2、4、9、11、13、17、20、23、24、28、31、33、37、39、44、46、62、63、75、79、80、81、83、84、89、95、99、113、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230、231、C.I.アシッドレッド1、6、8、9、13、14、18、26、27、35、37、42、52、82、85、87、89、92、97、106、111、114、115、118、134、158、186、249、254、289、C.I.ベイシックレッド1、2、9、12、14、17、18、37、C.I.フードレッド14、C.I.リアクティブレッド23、180、C.I.ソルベントレッド5、16、17、18、19、22、23、143、145、146、149、150、151、157、158、C.I.ダイレクトブルー1、2、6、15、22、25、41、71、76、78、86、87、90、98、163、165、199、202、C.I.アシッドブルー1、7、9、22、23、25、29、40、41、43、45、78、80、82、92、93、127、249、C.I.ベイシックブルー1、3、5、7、9、22、24、25、26、28、29、C.I.フードブルー2、C.I.ソルベントブルー22、63、78、83〜86、191、194、195、104、C.I.ダイレクトブラック2、7、19、22、24、32、38、51、56、63、71、74、75、77、108、154、168、171、C.I.アシッドブラック1、2、7、24、26、29、31、44、48、50、52、94、C.I.ベイシックブラック2、8、C.I.フードブラック1、2、C.I.リアクティブブラック31、C.I.フードバイオレット2、C.I.ソルベントバイオレット31、33、37、C.I.ソルベントグリーン24、25、C.I.ソルベントブラウン3、9等が挙げられる。これらの染料は、単独で使用してもよく、また所望する色を得るために混合して使用してもよい。
【0038】
また、前記顔料としては、黒色顔料である各種カーボンブラック(チャネルブラック、ファーネスブラック等)やチタンブラック、白色顔料である酸化チタンなどの金属酸化物やカラー顔料が挙げられる。カラー顔料としては、例えば、ベンジジン系のイエロー顔料、ローダミン系のマゼンタ顔料、フタロシアニン系のシアン顔料、あるいはこの他にもアントラキノン系、アゾ系、アゾ金属錯体、フタロシアニン系、キナクリドン系、ペリレン系、インジゴ系、イソインドリノン系、キナクリドン系、アリルアミド系などの各種カラー顔料を挙げることができる。これらの顔料は、単独で使用してもよく、また所望する色を得るために混合して使用してもよい。
【0039】
前記顔料のより具体的な例として、酸化亜鉛、塩基性炭酸鉛、塩基性硫酸鉛、硫酸鉛、リトボン、白雲母、硫化亜鉛、酸化チタン、酸化アンモチモン、鉛白、酸化ジルコニウム、アルミナ、マイカナイト、マイカレックス、石英、炭酸カルシウム、石膏、クレー、シリカ、ケイ酸、珪素土、タルク、塩基性炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、サチン白等の無機酸化物等の白色顔料や、亜鉛、アルメル、アンチモン、アルミニウム、アルミニウム合金、イリジウム、インジウム、オスミウム、クロム、クロメル、コバルト、ジルコニウム、ステンレス鋼、金、銀、洋銀、銅、青銅、すず、タングステン、タングステン鋼、鉄、鉛、ニッケル、ニッケル合金、ニッケリン、白金、白金ロジウム、タンタル、ジュラルミン、ニクロム、チタン、クルップ・オーステナイト鋼、コンスタンタン、真鍮、白金イリジウム、パラジウム、パラジウム合金、モリブデン、モリブデン鋼、マンガン、マンガン合金、ロジウム、ロジウム金などの金属材料や、フェノール樹脂、フラン樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アニリン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ−p−キシリレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素系プラスチック、ポリアクリロニトリル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、ポリエーテル、ポリカーボネート、熱可塑性ポリエステル、ポリアミド、ジエン系プラスチック、ポリウレタン系プラスチック、ポリフェニレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、芳香族ヘテロ環ポリマー、シリコーン、天然ゴム系プラスチック、セルロース系プラスチック等の高分子材料で構成された顔料等が挙げられる。
【0040】
また、カラー顔料であるイエロー系顔料のより具体的な例としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。より詳細には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、168等が好適に用いられる。
【0041】
マゼンタ系顔料のより具体的な例としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。より詳細には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48;2、48;3、48;4、57;1、81;1、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254が、特に好ましい。
【0042】
シアン系顔料のより具体的な例としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、例えば顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15;3、15:4、60、62、66等が特に好適に利用できる。
【0043】
使用する顔料の粒子径としては、1次粒子の体積平均粒子径で0.001μm〜1μmのものが好ましく、中でも、0.01〜0.5μmが好ましく、特に、0.01μm〜0.2μmのものが好ましい。これは粒子径が0.001μm未満では高分子ゲルからの流出が起こりやすく、また、1μmを超えると発色特性や光散乱特性が悪くなる恐れが生じるためである。
【0044】
前記光散乱材料としては、無機材料、有機材料が挙げられ、共に使用することができる。また、必要に応じてそれらを混合して使用することもできる。
【0045】
前記無機材料好適な具体例として、酸化亜鉛、塩基性炭酸鉛、塩基性硫酸鉛、硫酸鉛、リトボン、白雲母、硫化亜鉛、酸化チタン、酸化アンモチモン、鉛白、酸化ジルコニウム、アルミナ、マイカナイト、マイカレックス、石英、炭酸カルシウム、石膏、クレー、シリカ、ケイ酸、珪素土、タルク、塩基性炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、サチン白等の無機酸化物や、亜鉛、アルメル、アンチモン、アルミニウム、アルミニウム合金、イリジウム、インジウム、オスミウム、クロム、クロメル、コバルト、ジルコニウム、ステンレス鋼、金、銀、洋銀、銅、青銅、すず、タングステン、タングステン鋼、鉄、鉛、ニッケル、ニッケル合金、ニッケリン、白金、白金ロジウム、タンタル、ジュラルミン、ニクロム、チタン、クルップ・オーステナイト鋼、コンスタンタン、真鍮、白金イリジウム、パラジウム、パラジウム合金、モリブデン、モリブデン鋼、マンガン、マンガン合金、ロジウム、ロジウム金などの金属材料、ITO(インジウム・スズ酸化物)等の無機導電性材料などが挙げられる。特に、雲母やアルミニウムおよびその類縁体は塗装膜とする際に好適に使用できる。
【0046】
また、前記有機材料の好適な具体例として、フェノール樹脂、フラン樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アニリン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ‐p−キシリレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素系プラスチック、ポリアクリロニトリル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、ポリエーテル、ポリカーボネート、熱可塑性ポリエステル、ポリアミド、ジエン系プラスチック、ポリウレタン系プラスチック、ポリフェニレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、芳香族ヘテロ環ポリマー、シリコーン、天然ゴム系プラスチック、セルロース系プラスチック等や、これらから選択される2種以上の混合材料(ポリマーブレンド)などの高分子有機材料が挙げられる。
【0047】
前記調光用材料として、高分子ゲルに共有結合するための付加反応性基や重合性基を有する調光用材料や、高分子ゲルとイオン結合などの相互作用する基を有する調光用材料などの各種の化学修飾した調光用材料を用いることも好ましい。
【0048】
また、前述したように染料や顔料などの色材や光散乱材は、高分子ゲル中に含有され、高分子ゲルから流出しないことが必要である。そのためには高分子ゲルの架橋密度を最適化して染料や顔料などの色材や光散乱材を高分子網目中に物理的に閉じ込めることが好ましい。また、高分子ゲルと電気的、イオン的、その他物理的な相互作用が高い染料や顔料などの色材や光散乱材を用いること、及び表面を化学修飾した染料や顔料などの色材や光散乱材を用いることなどが好ましい。例えば、表面を化学修飾した顔料や、光散乱材としては表面にビニル基などの不飽和基や不対電子(ラジカル)などの高分子ゲルと化学結合する基を導入したものや、高分子材料をグラフト結合したものなどが挙げられる。
【0049】
このような調光用材料を含む高分子ゲルは、架橋前の高分子に調光用材料を均一に分散、混合した後に架橋する方法や重合時に高分子前駆体モノマー組成物に調光用材料を添加して重合する方法によって製造することができる。重合時において染料や顔料などの色材や光散乱材を添加する場合には、前記したように重合性基や不対電子(ラジカル)をもつ顔料や光散乱材を使用し、高分子ゲルに化学結合することも好ましく実施される。
【0050】
また、調光用材料は、刺激応答変色性材料中に極力均一に分散されていることが好ましく、特に、高分子ゲルまたはバインダーへの分散に際して、機械的混練法、攪拌法やあるいは分散剤などを利用して均一に分散させることが望ましい。なお、調光材料を含有した高分子ゲルの粒子の調製は前記高分子ゲルの粒子と同様の方法によって作製することができる。
【0051】
(液体)
刺激応答性高分子ゲルが吸収・放出する液体としては、水、各種有機溶剤およびこれらの2種以上の混合物を用いることができる。また、液体には、分散安定剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの安定剤、抗菌剤、防腐剤、界面活性剤、アルカリ、塩などを添加してもよい。また刺激応答性高分子ゲルの体積変化特性を変化させるための材料を溶解することもできる。例えば、イオン性の界面活性剤、アルコール等の各種有機溶剤を挙げることができる。さらに、白色顔料やカラー顔料等の種々の顔料や染料などの色素を添加することもできる。
【0052】
高分子ゲルと液体との混合比は、重量比で1/2000〜1/1 (高分子ゲル/液体)の範囲とすることが好ましく、中でも、1/500〜1/1が好ましく、特に、1/100〜1/10が好ましい。重量比が1/2000未満となると、組成物の機械的強度などの物性劣化の恐れがあり、1/1を超えると、刺激応答による体積変化の応答速度が低下する恐れがある
【0053】
前記液体の沸点としては、好ましくは80℃以上、さらに好ましくは100℃以上、特に好ましくは150℃以上である。沸点が低い場合には、積層膜とした場合に内部の液体が徐々に蒸発して刺激応答性高分子ゲルの体積変化が鈍くなるおそれや、内部液体中に気泡が生じ、積層膜の外観を損なうおそれがある。そのため、高沸点の溶剤や、不揮発性の化合物を溶解し、モル沸点上昇を利用して沸点を高めることも好ましく実施される。
【0054】
(マイクロカプセル膜)
刺激応答変色性材料が、カプセル膜に被包されている形態の例を図1(b)〜図(c)に示す。前記刺激応答変色性材料を含有する刺激応答変色性液状組成物は、公知のカプセル化法あるいはマイクロカプセルの製造方法によって作製することができる。
【0055】
カプセル膜は、高分子や無機材料を含むことが好ましく、特に、高い光透過性を有するものが好ましい。さらに、内部の液体の蒸発を防ぐために無機材料を含むことが好ましい。このような高分子の主材料として用いることができる高分子としては、ポリ酢酸ビニル、セルロースアセテートブチレート、スチレン−マレイン酸共重合体、ベンジルセルロース、エチルセルロース、ポリエチレン、ポリスチレン、ゴム、ニトロセルロース、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエーテル、アルギン酸、ペクチン、カラギーナン、キサンタンなどの多糖類、ポリビニルアルコール、ゼラチン、アルブミンなどのタンパク質、エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、多糖類、ポリビニルアルコールは好ましい。特に、ポリアミド、ポリウレタンが好ましい。また、このような高分子膜材料に、無機粒子、フィラーなどの各種添加材を加えてもよい。
【0056】
また、無機材料そのものをマイクロカプセル膜として用いる場合には、各種金属の酸化物や炭化チタン、チッ化チタンが好ましく用いられる。金属酸化物の具体的としては酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム等が好適に用いられる。また各種シランカップリング剤、ゾル−ゲル材料を用いることも好ましい。
【0057】
マイクロカプセルの製造方法としては、高分子材料の不溶化を利用した、いわゆるコアセルベーション法、分散粒子の界面で重合を行いカプセル膜を形成する、いわゆる界面重合マイクロカプセル化法、in situマイクロカプセル化重合法、液中硬化被覆マイクロカプセル化法、気体中に液滴を噴霧することでその表面にカプセル膜を形成するスプレードライングマイクロカプセル化法などが挙げられる。これらの技術の詳細は、近藤保著、「新版 マイクロカプセル その製法・性質・応用」、三共出版などの成書に記述されている。
【0058】
本発明の高分子ゲルが、前記液体と共にマイクロカプセル膜に被包されたマイクロカプセルである場合の具体的製造方法としては、▲1▼あらかじめ調製された高分子ゲルの粒子と液体との混合液体、または高分子ゲルの粒子を液体で膨潤させた膨潤体を、カプセル用高分子化合物を含む溶液中に添加して、コアセルベーション処理することでカプセルを形成する方法;▲2▼高分子ゲル粒子と液体およびカプセル用高分子前駆体との混合液体を、前記前駆体との反応する物質を含む溶液に添加し、界面重合によってカプセルを形成する方法;▲3▼高分子ゲル粒子と液体およびカプセル用高分子との混合液体を、前記高分子との反応する物質を含む溶液に添加し、高分子を不溶化または架橋することでカプセルを形成する方法などが挙げられる。また、カプセル化過程においては、▲4▼攪拌機による攪拌方法、▲5▼微細な径をもつノズルからカプセル用組成物を吐出してカプセルを形成する方法、あるいは▲6▼カプセル用組成物を噴霧してカプセルを形成する方法などによって、所望の粒径や形状のカプセルを形成することができる。さらに、マイクロカプセル膜を複数層設けることもできる。すなわち、刺激応答性高分子ゲルの特性に対する影響の少ない高分子系のマイクロカプセル膜で被覆した後に、機械的強度や物質不透過性の無機物質からなるマイクロカプセル膜をさらに形成させることも好ましい。
【0059】
(バインダー)
本発明の液状組成物において、バインダーの材料としては、各種高分子材料、セラミック、ガラスなどの無機材料を利用することができるが、特に、光透過性の高い材料であることが好ましい。また、バインダーは、複数種類の材料からなるものであっても複数の層からなるものであってもよい。
バインダーの具体的な材料としては、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデンやその異種共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレンやその異種共重合体、ポリメチルメタクリレートやその異種共重合体、ポリアミド系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系やビニル系の熱、紫外線や電子線硬化性樹脂、シラン系、チタン系およびジルコニウム系のゾルゲル組成物などの他、セラミック等の無機材料が挙げられる。
これらの中でも、特に高分子材料、紫外線硬化樹脂、およびゾルゲル組成物は好ましい。また本発明のバインダーは、塗布後に硬化させるが、硬化後のバインダーは内部液体の上記透過性の低いことが好ましい。
【0060】
バインダーは、前記した刺激応答変色性材料を分散するために流動性を持つ必要がある。樹脂材料を用いる場合には前記した高分子材料を溶媒に溶解して溶液とすることができる。または、常温で液体である反応性の各種モノマーをバインダーとして用いることもできる。さらに、無機材料の場合には、常温で液体である各種金属アルコキシドを用いることができる。金属アルコキシドの具体例としては、アルコキシシラン、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド等があげられる。これら金属アルコキシドは水と酸性触媒の共存下で加水分解後に縮合重合し強固なマトリックスを形成させることができ、好適に本発明に使用できる。
【0061】
バインダー中には調光用材料、安定剤、防腐剤、抗菌剤、酸化防止剤などを添加することもできる。また前記刺激応答変色性材料を均一に分散させるために界面活性剤等の分散安定剤を添加することも好ましい。また塗布方法に応じて粘度を調整するための増粘剤等の粘度調整剤を添加することもできる。
【0062】
(液状)
本発明の前記液状とは、塗布膜あるいは積層体を形成するにたる流動性を有する液体状の形態のものをいう。即ち、本発明に係る液状組成物とは前記液体及び激応答性高分子ゲルとが含有される刺激応答変色性材料がバインダー中に分散されて、その結果、流動性を有し、かつ、塗布性を有する形態の液体状の組成物を言う。つまり、本発明の液状組成物は、その形態を液状とすることにより、あらゆる表面を塗布することが可能となる。例えば、平面、曲面、凹凸面等任意の表面に任意の量を塗布することが即座に対応でき、その使用性・汎用性は極めて高いものということができる。一方、これに対して、前述の従来の変色性材は、固形の形態であるため、その使用性には多くの制限があるため、その用途は極めて狭く劣る。
【0063】
(省エネ用刺激応答性変色液状組成物)
本発明の刺激応答性変色液状組成物はさまざまな刺激に応答して変色させることができるが、中でも熱を用いた場合には省エネ用途としても使用することができる。すなわち、ある温度のLCSTをもつ刺激応答性高分子ゲルを使用すれば、その温度以上では消色し、その温度以下では着色するような変色性液状組成物とすることができる。このような変色性液状組成物を建物等の外装の塗装に用いれば、夏場の気温の高いときには消色し、太陽光を効果的に散乱し、内部への熱の吸収を抑え、冬場の気温の低いときには着色し、太陽光を吸収して内部へ熱を伝えることができる。そのため、変色性のない塗装を用いた場合に比べ、空調の負荷を軽減することができ、本発明の刺激応答性変色液状組成物を省エネ用途として好適に使用することができる。
【0064】
省エネ用途として用いる場合の刺激応答性変色液状組成物の変色温度範囲は好ましくは5−80℃の範囲であり、さらに好ましくは15−60℃、さらに好ましくは30−45℃の範囲である。
【0065】
(変色性塗装膜及び積層体の作製方法)
本発明の変色性塗装膜及び積層体の作製方法について併せて説明する。前記液状組成物を分散液として基材上又は任意の面に塗布し、硬化させることにより、変色性塗布膜及び積層体を作製することができる。
前記分散液の作製方法としては、前記刺激応答性高分子ゲルを含む水分散溶液を作製し、この水分散溶液を紫外線硬化樹脂溶液等のバインダーに加え、分散させて作製するが、これらに限定されるものではない。
分散液の塗布方法としては、種々の慣用及び公知の塗布方法、例えば、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、キャストコーティング法、スプレーコーティング法、リバースコーティング法、ディップコーティング法、ブレードコーティング法、コンマコート法、はけ塗り法、などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0066】
前記分散液によって塗布された液状組成物は、公知の適当な方法によって硬化させることによって塗装膜とすることができる。その硬化方法としては、バインダーに樹脂溶液を用いた場合には、加熱または自然乾燥によって前記刺激応答性変色液状組成物を硬化させることができる。また、バインダーが紫外線または電子線硬化樹脂であれば、それぞれ紫外線や電子線を照射することによって硬化させることができる。
また刺激応答性変色液状組成物を硬化させる時の温度としては、好ましくは150℃以下であり、さらに好ましくは100℃以下であり、特に好ましくは50℃以下である。硬化時の温度が、150℃以上になると刺激応答性高分子ゲルが吸収・放出する液体が蒸発してしまい、刺激応答性高分子ゲルの体積変化が少なくなり、変色特性を損なう恐れがある。
【0067】
また、図2に示したような実施形態における積層体の膜の厚みは、特に限定されないが、1μm〜3mmの範囲である。より好ましくは20〜1000μmの範囲、特に好ましくは50〜500μmである。1μmよりも薄くなると機械的な強度が弱くなる、光路長が短いために所望の光学濃度がえられないなどの問題が生じる場合があり、3mmよりも厚くなると高分子ゲル組成物の応答性が悪くなる、刺激応答変色性材料が必要以上に積層してしまい、十分な変色特性が得られないなどの問題が生じる場合がある。
【0068】
(基材)
本発明に用いる基材としては、ガラス基材、金属基材、セラミック基材、コンクリートなどの無機基材および、ポリエステル、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアセタール系樹脂などの高分子のフィルムや板状基材、さらには木材板などを使用することもできる。また、積層膜の接着性を高めるために基材表面をあらかじめ処理しておく、または基材と積層膜との間に接着性改善のための層を設ける等の方法も好ましく実施できる。
【0069】
(保護膜)
本発明の変色性塗装膜の表面にはさまざまな保護膜を設けることもできる。保護膜としては、耐候性を高めることを目的に紫外線遮蔽膜や赤外線遮蔽膜を設けることができるが、さらに、汚染防止膜、帯電防止膜、磨耗防止膜を設けることもできる。また、変色性塗装膜内部液体の蒸発を防ぐ目的で、蒸発防止膜を設けることも好ましい。これらの保護膜は、変色性塗装膜表面にそれぞれの保護機能をもった塗料を塗布する、または保護シートを貼り付ける、または真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などの乾式法によって薄膜を作製するなどの方法によって形成することができる。
【0070】
前記それぞれの保護機能をもった塗料を作製する場合は、それぞれの保護機能を有する物質等を添加することにより調整することができる。
前記それぞれの保護機能をもった保護膜は、積層されて多層を形成するものであっても、また、単層として前記保護機能を有する形態としてもよい。
前記保護シートとしては、表面処理または無処理の一般的な高分子フィルムシート、表面に金属酸化物を蒸着させた高分子フィルムシート等が挙げられるが、特に限定されるものではない。光透過性および前記液体の蒸発防止の観点から、好ましくは金属酸化物を蒸着させた高分子フィルムシートであり、中でもシリカ、アルミナ、チッ化ケイ素を蒸着した高分子フィルムシートが好ましく、特に、チッ化ケイ素を蒸着した高分子フィルムシートが好ましい。
【0071】
【実施例】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、これらに限定されるものではない。
【0072】
実施例
(刺激応答性高分子ゲル粒子Aの作製)
刺激応答性高分子ゲルの粒子を以下のようなプロセスにより製造した。
N‐イソプロピルアクリルアミド(NIPAM) (3.5758 g), メチレンビスアクリルアミド (0.0072 g), マイクロカプセル化カーボンブラック分散液(大日本インキ化学製、MC black 082−E、顔料分14.3%含有)の水(19.1630 g)溶液に15分間窒素を通し溶存酸素を除いた。この溶液に対して、過硫酸アンモニウム(APS)(29.9mg)の水(0.5106 g)溶液を加えて攪拌し均一に溶解させた。
【0073】
別に、75 mm径の3枚羽根の攪拌翼を取り付けた2Lのセパラブルフラスコにソルゲン50(第一工業製薬(株)製、6.00 g)のシクロヘキサン(1.2 L)溶液をいれ、先に調整したN‐イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)の顔料分散液を加え、窒素を流してフラスコ内部全体を窒素置換した。ウォーターバスを用いてこのフラスコ全体を25℃に保ち、攪拌翼を800 rpmで15分間回転させて水相をシクロヘキサン中に懸濁、分散させた。攪拌翼の回転数を250 rpmにして、この分散液に対してテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)(0.8 ml)のシクロヘキサン(3.2 ml)溶液を加えて、反応を開始させ、25℃に保ったまま250 rpm で2時間重合した。得られた重合体の粒子をジメチルホルムアミド、水で十分に洗浄した。このようにして感応答性高分子ゲル粒子を作製した(粒子A)。
【0074】
合成した刺激応答性高分子ゲル粒子の室温(25 ℃, 膨潤状態)での体積平均粒径は30μmであった。この刺激応答性高分子ゲル粒子は、約34℃に相転移温度を有していた。また、その体積変化量は約15倍であった。すなわち、該高分子ゲル粒子は、相転移点よりも高い温度では収縮し、低い温度では膨潤する。
【0075】
(刺激応答性高分子ゲル粒子Bの作製)
色材を含有した刺激応答性(高温膨潤型)高分子ゲルの粒子を、以下のようなプロセスにより作製した。
アクリルアミド1.0g、架橋剤としてのメチレンビスアクリルアミド1.0mg、蒸留水0.575g、色材としての青色顔料(大日本インキ化学製、MC Blue 182−E、顔料分14.3%含有)の水分散液3.425g、を攪拌混合した水溶液Bを調製した。
【0076】
ソルビトール系界面活性剤(ソルゲン50:第一工業製薬(株)製)2.375gをトルエン300mlに溶解した溶液を窒素置換された反応容器に加え、これに、先に調製した水溶液Bを添加し、回転式攪拌装置を用いて1200rpmで30分攪拌して懸濁させ、懸濁液Bを得た。
【0077】
得られた懸濁液Bをフラスコ中に入れ、窒素置換により酸素を除いた後、重合開始剤である過硫酸アンモニウム(APS)0.004gを水0.5mlに溶解したものを添加し、70℃に加熱して3時間、重合を行った。重合終了後、大量のアセトンで洗浄することで精製を行い、さらに乾燥させて、色材を含有したアクリルアミドゲルの粒子を得た。
【0078】
次に、アクリル酸1.5g、架橋剤としてのメチレンビスアクリルアミド0.0015g、および蒸留水5.5gを混合し、窒素置換後、これに過硫酸アンモニウム0.006gを水0.5gに溶解したものを添加し、混合液を得た。この混合液に上記得られたアクリルアミドゲルの粒子0.5gを加えて70℃に加熱し、3時間重合を行いIPN高分子ゲル粒子(粒子B)を調製した。
【0079】
得られたIPN高分子ゲル粒子(アクリル酸−アクリルアミド相互侵入網目構造体ゲル粒子)を大量の蒸留水中に投入し、加熱冷却を行いゲル粒子を膨潤収縮させ、これをろ過する操作を繰り返すことで精製を行った。
【0080】
得られたIPN高分子ゲル粒子の乾燥時の体積平均粒子径は、約15μmであった。このIPN高分子ゲル粒子を、大量の純水に加えて膨潤させた。このIPN高分子ゲル粒子の10℃における平衡膨潤時の吸水量は約3g/gであった。ところが、これを50℃に加熱するとさらに膨潤し、約80g/gの吸水量を示すことがわかった。
この相転移点は30−40℃の温度範囲にあった。つまり、相転移点よりも高温では膨潤し、低温では収縮する。この変化は可逆的であり、収縮時に比べ膨潤時の高分子ゲル粒子の粒子径が約3倍まで変化し、すなわち、体積で約27倍の変化が得られた。
【0081】
(マイクロカプセル膜をもつ刺激応答変色性材料(粒子C)の作製)
次に、得られた上記粒子Aを含むマイクロカプセルを下記の界面重合法によって作製した。
乾燥したゲル粒子A1.0gを、0.4Mの1,6−ヘキサンジアミンと0.45Mの炭酸ナトリウムとを溶解した水溶液30mlおよび蒸留水30mlの混合液に入れ、溶液を飽和膨潤させた。この分散水溶液を、界面活性剤として、Span85を5%含有するクロロホルム−シクロヘキサン混合溶液(1/4v/v)150mlに加え、よく攪拌して乳化分散させた。この乳化液に、テレフタロイルジクロライド1.2gを前記と同じ混合溶液150mlに溶解したものを、攪拌しながら添加した。界面重合によってポリアミド膜が形成され、マイクロカプセルが得られた。このマイクロカプセルを蒸留水でよく洗浄し、乾燥させた(粒子C)。
【0082】
得られたマイクロカプセルの平均粒径は約20μmであった。顕微鏡観察により、得られたマイクロカプセルの内部には青色に着色した高分子ゲル粒子が存在することが確認できた。また、加熱冷却によってカプセル内の高分子ゲル粒子の大きさは可逆的に変化することも確認できた。
【0083】
(分散液の調製)
前記刺激応答性高分子ゲル粒子Aを一定濃度含む水分散溶液(ゲルの固形分濃度2.5%)を調製した。この水分散溶液10 gを、フッ素系界面活性剤(セイミケミカル製 Surflon S−383)5質量%を含有するフッ素系紫外線硬化樹脂(日本化薬社製 KAYARAD FAD−515)溶液10gに加え、0℃に冷却した。この溶液をウェーブローターで分散して分散液を作製した(分散液A)。
【0084】
また、前記刺激応答性高分子ゲル粒子Bを一定濃度含む水分散溶液(ゲルの固形分濃度2.5%)を調製した。この水分散溶液10 gを、フッ素系界面活性剤(セイミケミカル製 Surflon S−383)5質量%を含有するフッ素系紫外線硬化樹脂(日本化薬社製 KAYARAD FAD−515)溶液10gに加え、0℃に冷却した。この溶液をウェーブローターで分散して分散液を作製した(分散液B)。
【0085】
また、前記刺激応答性高分子ゲル粒子Cを一定濃度含む水分散溶液(ゲルの固形分濃度2.5%)を調製した。この水分散溶液10 gを、フッ素系界面活性剤(セイミケミカル製 Surflon S−383)5質量%を含有するフッ素系紫外線硬化樹脂(日本化薬社製 KAYARAD FAD−515)溶液10gに加え、0℃に冷却した。この溶液をウェーブローターで分散して分散液を作製した(分散液C)。
【0086】
前記刺激応答性高分子ゲル粒子Aを一定濃度含む20wt%エチレングリコール水溶液(ゲルの固形分濃度2.5%)を調製した。この水分散溶液10 gを、フッ素系界面活性剤(セイミケミカル製 Surflon S−383)5質量%を含有するフッ素系紫外線硬化樹脂(日本化薬社製 KAYARAD FAD−515)溶液10gに加え、0℃に冷却した。この溶液をウェーブローターで分散して分散液を作製した(分散液D)。
【0087】
(積層体の作製)
前記の分散液A−Dをステンレス金属板上にバーコーターを用いて厚さ100μmに塗布した。紫外線照射(高圧水銀灯、160 W/cm、照射距離 20 cm, 10秒間照射)によって硬化し、刺激応答変色性積層体を形成した。紫外線照射は、25℃にて行なった。さらに、この積層体表面に内部液体の蒸発を防止する目的で、アルミナ蒸着PETフィルムを張り合わせ、さらに端面を封止し積層体を作製した(積層体A−D)。
【0088】
これら積層体は、温度の変化に伴って変色し、積層体A、Cは30℃以下においては黒く着色し、40℃以上に加熱することによって消色して白色となった。また積層体Dは10℃以下においては黒く着色し、15℃以上では白色となった。一方、積層体Bは、室温においては白色であり、40℃以上に加熱することによって青く着色した。この色変化は可逆的であった。
【0089】
比較例
従来(公知)の刺激応答変色性積層体を以下のようにして作製した。
クリスタルバイオレッドラクトン 1g, ビスフェノールA 2g, ステアリン酸ネオペンチル27gを混合し、100℃10分間加熱溶解して均質化し、着色料Aとした。
さらに、この着色料A 10 g,ポリアクリル酸エステル(分子量約70,000, 軟化点100℃)20g, キシレン 40g、メチルイソブチルケトン 30 gを混合し、70℃、20分間過熱溶解して塗料とした。これをステンレス金属板上にコートして、公知の刺激応答変色性積層体(積層体E)を作製した。
【0090】
この積層体は、15℃以下では青色を呈し、35℃以上では白色となり、この変化は可逆的であった。
【0091】
(耐候性評価)
作製したそれぞれの刺激応答性高分子ゲル液状組成物の積層体をウェザーメーター(東洋精機製 サンテストCPS+)中に1500時間、暴露することによって促進試験を行った。結果は、促進試験後の顕微鏡観察による内部ゲル粒子の外観、刺激応答した時の膨潤時と収縮時の体積比、発色時と消色時における反射光学濃度を測定した。その光学濃度差の変化によって耐候性を評価した。反射光学濃度の測定にはX−Rite404を用いた。刺激応答した時の膨潤時と収縮時の体積比、および発色時と消色時における反射光学濃度差を暴露前、暴露後について、表1に結果を示した。
【0092】
【表1】
【0093】
ウェザーメーターによる1500時間暴露促進試験では、上記表1の結果より、暴露前後においても、実施例1〜4では、光学濃度の変化が認められないかまたはわずかであることが分かった。一方、比較例においては、暴露後顕著な光学濃度の変化が認められた。よって、実施例により、本発明の刺激応答性変色性液状組成物は、1500時間の暴露促進試験においてもほとんど変化が認められず安定であることがわかった。
【0094】
(機能評価)
積層体AおよびBを気温35℃において直射日光の下に放置した。この時、積層体Aは白色であり、積層体Bは黒色を呈していた。3時間後にこれら積層体の表面温度を測定したところ、積層体Aでは40℃、積層体Bでは55℃になっていた。一方、気温15℃においても同様に直射日光の下に放置した。この時積層体Aは黒色であり、積層体Bは白色を呈していた。同様に3時間後にこれら積層体の表面を温度を測定したところ、積層体Aでは30℃、積層体Bでは20℃であった。積層体Eについても同様の試験を行った。暴露後の積層体Eは、直射日光下で、変色が起こらず、気温35℃において直射日光の下に放置したところ表面温度は40℃に、気温15℃においても同様に直射日光の下に放置したところ表面温度は20℃になった。
【0095】
以上の機能評価の結果により、本発明の積層体Aの様に、気温35℃の直射日光の下で、高温で白色、低温で着色する積層体においては、夏場の気温が高いときには光を散乱して熱を蓄積せず、冬場の気温の低いときには、光を効率的に吸収して熱を蓄積できることが分かる。したがって、外装材や塗装に用いれば、内部の温度を自律的に調節できる省エネ変色性塗装膜又は省エネ変色性積層体とすることができることがわかった。一方、比較例として調製された積層体Eの前記試験では、変色せず、積層体Aのような省エネ効果を得ることはできなかった。
【0096】
【発明の効果】
本発明によれば、本発明の液状組成物は、その形態を液状とすることにより、あらゆる表面に塗布することが可能となる。すなわち、例えば、平面、曲面、凹凸面等任意の表面に任意の量を塗布し、塗布膜を形成することが即座にでき、その使用性・汎用性は、極めて高い刺激応答変色性液状組成物を提供することができる。
また、色選択の幅が広く、任意の発色が可能なため、意匠性が高く、かつ、光照射における発色時と消色時での光学濃度差の少ない優れた刺激応答性変色性液状組成物、変色性塗装膜、変色性積層体及びその作製方法を提供することができる。
【0097】
さらに、温度上昇や光照射の増加に伴って消色し、その逆に、温度低下及び日光の照射が少ないときには、着色して光を効率的に吸収・排出する機能を奏する現在の地球環境に適した前記省エネルギーに優れた変色性塗装膜、変色性積層体の提供をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)本発明の刺激応答変色性液状組成物を層状に形成した1例を示す断面図であり、液体3(図示省略)を含む刺激高分子ゲル粒子1がバインダー2中に分散し、薄膜状に成型されたものの拡大断面図である。
(b)刺激応答変色性材料5がマイクロカプセル膜4に被包された状態を示す図である。
(c)本発明の刺激応答変色性液状組成物において、刺激応答変色材料がマイクロカプセル化膜4に被包されたものをバインダー2中に分散し、薄膜状に成型されたものの拡大断面図である。
【図2】本発明の刺激応答変色性液状組成物を基材6上に薄膜状に塗布し、バインダー2を硬化させることによって変色性積層体を作製したことを例示するための拡大断面図である。
【図3】本発明の刺激応答変色性液状組成物において、刺激応答変色材料がマイクロカプセル化膜4に被包されたものをバインダー2中に分散し、薄膜状に成型され、その表面に保護膜が施された変色性塗装膜の一例の拡大断面図である。
【図4】本発明の刺激応答変色性液状組成物を基材6上に薄膜状に塗布し、バインダー2を硬化させ、更に外表面を保護膜で覆って変色性積層体を作製したことを例示するための拡大断面図である。
【符号の説明】
1 刺激応答性高分子ゲル
2 バインダー
3 液体
4 マイクロカプセル膜
5 マイクロカプセル膜に被包された刺激応答変色性材料
6 基材
7 保護膜
10 変色性塗装膜
20 変色性積層体
Claims (18)
- 液体と前記液体を刺激に応じて吸収または放出することにより可逆的な体積変化を生じる高分子ゲルとを含む刺激応答変色性材料を含み、前記刺激応答変色性材料がバインダー中に分散され液状であることを特徴とする刺激応答変色性液状組成物。
- 前記刺激応答変色性材料が、マイクロカプセル膜に被包されている刺激応答性高分子ゲルを含有することを特徴とする請求項1に記載の刺激応答変色性液状組成物。
- 前記マイクロカプセル膜が、無機材料を含むことを特徴とする請求項2に記載の刺激応答変色性液状組成物。
- 前記高分子ゲルが、調光用材料を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の刺激応答変色性液状組成物。
- 前記バインダーが、無機材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の刺激応答変色性液状組成物。
- 請求項5に記載の無機材料が、金属アルコキシドであることを特徴とする請求項5に記載の刺激応答変色性液状組成物。
- 前記バインダーが、調光用材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の刺激応答変色性液状組成物。
- 前記液体の沸点が、100℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の刺激応答変色性液状組成物。
- 前記刺激応答性材料を応答させる刺激が熱であり、かつ、低温時に着色状態にあり熱の付与によって着色状態から無色または淡色へと変化することを特徴とする請求項1に記載の刺激応答変色性液状組成物。
- 請求項9に記載の変色の温度が5乃至80℃の範囲にあることを特徴とする請求項9に記載の刺激応答変色性液状組成物。
- 請求項1乃至10のいずれかに記載の刺激応答変色性液状組成物を硬化させてなることを特徴とする変色性塗装膜。
- 前記変色性塗装膜の表面上に、保護膜を設けてなることを特徴とする請求項11に記載の変色性塗装膜。
- 前記保護膜が、前記液体の蒸発防止機能を有することを特徴とする請求項12に記載の変色性塗装膜。
- 請求項9又は10に記載の刺激応答変色性液状組成物を硬化させてなる省エネ用変色性塗装膜。
- 前記変色性塗装膜を基材上に積層してなる請求項11乃至14のいずれかに記載の変色性積層体。
- 請求項14に記載の省エネ変色性塗装膜を基材上に積層してなる省エネ用変色性積層体。
- 前記硬化の方法が、紫外線または/及び電子線を利用することを特徴とする請求項11記載の変色性塗装膜の作製方法。
- 前記硬化の温度が、150℃以下であることを特徴とする請求項11又は17に記載の変色性塗装膜の作製方法。
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