JP3921984B2 - 光学素子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、温度変化により可逆的に液体を吸収・放出して体積変化を生ずる高分子ゲルを含む調光組成物又は調光樹脂組成物を用いた光学素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、温度変化、pH変化、イオン強度変化、化学物質の吸着・脱離、溶媒組成変化、等の各種刺激の付与によって可逆的に体積変化(膨潤・収縮)を起こす高分子ゲル(以下、「刺激応答性高分子ゲル」と略す場合がある)を利用して、光の透過量を制御することで調光を行なう技術が知られている。
【0003】
例えば、特開昭61−149926号公報によれば、電場の作用で液体を吸収・放出する高分子ゲルと、顔料を液体中に分散した着色液体と、を組み合わせた組成物からなる光学素子が提案されている。前記公報に記載の技術では、高分子ゲルの形状の変化によって着色液体を移動させて表示を行う。
【0004】
また、特開平4−274480号公報よれば、染料を結合した高分子ゲルを用いて、電圧の印加により前記高分子ゲルの体積を変化させることにより光学濃度を変化させて表示を行う素子が提案されている。
さらには、特開平9−160081号公報によれば、顔料微粒子または着色微粒子の表面に吸着させた高分子ゲルを、電界の変化により体積変化させることにより、色相を変化させる素子が提案されている。この素子は、前記高分子ゲルの膨潤時にはほぼ白色を表示し、前記高分子ゲルの収縮時には前記顔料微粒子または前記着色微粒子の色を表示する。
【0005】
一方、温度変化に応答する高分子ゲルを利用した光学素子や調光材料も提案されている。例えば、特開昭61−151625号公報および特開昭62−927号公報によれば、着色した高分子ゲルを用い、温度変化により、前記高分子ゲルが膨潤した際に光学濃度が低下し、前記高分子ゲルが収縮した際には着色する原理を用いた素子が提案されている。また、温度変化に応じて相分離を生じ、濁度が可逆的に変化する高分子溶液からなる調光材料が特公昭61−7948号公報に開示されている。
【0006】
さらに、本発明者らは特開平11−236559号公報において新規な調光組成物の提案をしている。該調光組成物は、刺激の付与による液体の吸収・放出により膨潤・収縮する高分子ゲル中に、飽和吸収濃度以上の顔料を含有してなる組成物である。該組成物は、飽和吸収濃度以上の顔料を含有している高分子ゲルの収縮時には、前記顔料の局所的な凝集により光吸収効率が低下して、前記組成物全体が光透過性となる。一方、飽和吸収濃度以上の顔料を含有している高分子ゲルの膨潤時には、前記顔料が組成物全体に拡散することにより光吸収効率が向上し、前記組成物は発色状態となる。
【0007】
しかしながら、従来技術における、温度変化等の各種刺激によって体積変化する刺激応答性高分子ゲルを利用した光学素子や調光材料は、高品位のカラー表示や、屋外での使用等の幅広いニーズに対応するために、多様な色彩が表現できることや、耐久性に優れること等、更なる改良が求められている。
特に、従来技術において、一つあるいは単層の光学素子による、複数の色彩を表するための具体的な手段や構成等は殆ど検討されていない。このため、従来技術により複数の色彩を表現しようとした場合、各々の色を発色する光学素子を複数積層する必要があり、光学素子全体の構成が複雑になる。
さらに、高分子溶液を用いた調光材料では、それが光散乱性の変化による調光作用を利用するものであるため、透過光量を大きく制御することができず、また多様な色彩を表現することができないなどの場合があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明は、従来技術の上記課題を解決せんとするものであり、複数の色彩を表現することができ、透過光量や反射光量を幅広く制御可能であり、かつ耐久性にも優れる光学素子を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、以下の本発明により達成される。即ち本発明は、
<1> 一対の基板と、該一対の基板間に挟持された調光組成物とを含み、
前記調光組成物が、外部刺激の付与により可逆的に液体を吸収・放出して体積変化を生ずる2種類以上の高分子ゲルと、該高分子ゲルが吸収・放出し得る液体とからなり、
前記2種類以上の高分子ゲルが、内部に調光用材料を含有し、
前記2種類以上の高分子ゲルのうち少なくとも2種類が、相互に異なる刺激特性を有し、
相互に異なる刺激特性を有する一の高分子ゲルおよび他の高分子ゲルが、前記一対の基板の少なくとも一方の基板表面に固定されていることを特徴とする光学素子である。
【0010】
<2> 前記一の高分子ゲルおよび前記他の高分子ゲルが、同一の基板表面に固定されていることを特徴とする<1>に記載の光学素子である。
【0011】
<3> 前記一の高分子ゲルおよび前記他の高分子ゲルが、別々の基板表面に固定されていることを特徴とする<1>に記載の光学素子である。
【0012】
<4> 一対の基板と、該一対の基板間に挟持された調光組成物と、前記一対の基板間に配置された支持体を含み、
前記調光組成物が、外部刺激の付与により可逆的に液体を吸収・放出して体積変化を生ずる2種類以上の高分子ゲルと、該高分子ゲルが吸収・放出し得る液体とからなり、
前記2種類以上の高分子ゲルが、内部に調光用材料を含有し、
前記2種類以上の高分子ゲルのうち少なくとも2種類が、相互に異なる刺激特性を有し、
相互に異なる刺激特性を有する一の高分子ゲルおよび他の高分子ゲルが、前記支持体に固定されていることを特徴とする光学素子である。
【0013】
<5> 前記支持体が繊維状であることを特徴とする<4>に記載の光学素子である。
【0014】
<6> フィルム状に形成された調光樹脂組成物を有し、
前記調光組成物が、外部刺激の付与により可逆的に液体を吸収・放出して体積変化を生ずる2種類以上の高分子ゲルと、該高分子ゲルが吸収・放出し得る液体と、樹脂とからなり、
前記2種類以上の高分子ゲルが、内部に調光用材料を含有し、
前記2種類以上の高分子ゲルのうち少なくとも2種類が、相互に異なる刺激特性を有し、
相互に異なる刺激特性を有する一の高分子ゲルおよび他の高分子ゲルが、前記樹脂の内部に、相分離状に隔離、分散して存在することを特徴とする光学素子である。
【0015】
<7> 前記高分子ゲルのうち少なくとも2種類が、同一の刺激種に応答することを特徴とする<1>〜<6>のいずれか1に記載の光学素子である。
【0016】
<8> 前記高分子ゲルのうち少なくとも2種類が、相互に異なる刺激種に応答することを特徴とする<1>〜<6>のいずれか1に記載の光学素子である。
【0017】
<9> 前記同一の刺激種が、温度変化の付与であることを特徴とする<7>に記載の光学素子である。
【0018】
<10> 前記相互に異なる刺激種が、一方が温度変化の付与であり、他方がpH変化の付与であることを特徴とする<8>に記載の光学素子である。
【0019】
<11> 前記高分子ゲルのうち少なくとも2種類が、相互に異なる相転移点を有することを特徴とする<1>〜<10>のいずれか1に記載の光学素子である。
【0020】
<12> 前記高分子ゲルのうち少なくとも2種類が、相互に異なる体積変化特性を有すること特徴とする<1>〜<11>のいずれか1に記載の光学素子である。
【0021】
<13> 前記2種類以上の高分子ゲルが、内部に含有する調光用材料が、相互に色彩の異なる色材であることを特徴とする<13>に記載の光学素子である。
【0022】
<14> 前記2種類以上の高分子ゲルが、粒子状であることを特徴とする<1>〜<14>のいずれか1に記載の光学素子である。
<15> 前記調光用材料が、高分子ゲルに物理的あるいは化学的に固定されていることを特徴とする<1>〜<14>のいずれか1つに記載の光学素子である。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
[調光組成物]
本発明の光学素子に用いられる調光組成物は、温度変化により可逆的に液体を吸収・放出して体積変化を生ずる2種類以上の高分子ゲルと、該高分子ゲルが吸収・放出し得る液体(以下、単に「吸脱液体」という場合がある。)とからなる調光組成物であって、前記2種類以上の高分子ゲルのうち少なくとも2種類(以下、単に「少なくとも2種類以上の高分子ゲル」と略す)が、相互に異なる刺激特性を有することを特徴とする。また、前記高分子ゲルは、色材や光散乱剤などの調光用材料を含有する
【0024】
本発明において「異なる刺激特性」とは、高分子ゲルが、刺激の付与により体積変化が起こる場合の刺激のそのものの種類(刺激種)の違いや、ある刺激の付与により体積変化が起こる場合の相転移点の違い、ある刺激の付与により体積変化が起こる場合の体積変化特性の違い、などを意味する。
【0025】
即ち、本発明において、「相互に異なる刺激特性を有する」とは、少なくとも2種類以上の高分子ゲルが有する刺激特性が相互に異なる刺激種である場合は、「相互に異なる刺激種に応答する」ことを意味する。
例えば、2種類の高分子ゲルの一方が温度特性(あるいは温度変化)に応答し、他方がpH特性(あるいはpH変化)に応答する場合、「相互に異なる刺激種に応答する」という。
【0026】
一方、「相互に異なる刺激特性を有する」ことが、少なくとも2種類以上の高分子ゲルが有する刺激特性が同一の刺激種である場合は、「相互に異なる相転移点を有する」及び/又は「相互に異なる体積変化特性を有する」ことを意味する。
例えば、2種類の高分子ゲルの両方が、同一の刺激種として温度特性のみに応答する場合、「相互に異なる相転移温度を有する」及び/又は「相互に異なる体積変化特性を有する」といい、より詳しくは、体積変化を性ずる温度(相転移温度と呼ぶ)が異なる、及び/又は、温度変化に対する体積変化特性(すなわち、相転移温度を境に高温側で、体積が増加(膨潤)するか減少(収縮)するか)が異なる(逆である)ともいう。なお、この場合、「相互に異なる刺激特性を有する」とは、「相互に異なる温度特性を有する」ということができる。
【0027】
また、「相転移点」とは、高分子ゲルがある刺激種により体積変化する場合に必要な特定の刺激量を意味する。例えば、前記高分子ゲルが温度変化によって体積変化する場合は、体積変化が発生する刺激量は「相転移温度」を意味し、前記高分子ゲルがpH変化によって体積変化する場合は、この体積変化が発生する刺激量は「相転移pH」を意味する。
なお、高分子ゲルは2つ以上の相互に異なる相転移点を有するものであってもよい。例えば、2つの異なる相転移点で体積変化する高分子ゲルの場合、刺激量の増加に伴い、膨潤−収縮−膨潤、あるいは、収縮−膨潤−収縮する体積変化が可能である。
【0028】
さらに、「体積変化特性」とは、高分子ゲルがある刺激種の変化により体積変化する場合に、前記高分子ゲルの体積変化が、相転移点以上で膨潤する場合と、相転移点以上で収縮する場合のいずれかを意味する。なお、本発明では、相転移点以上で膨潤する高分子ゲルを「膨潤ゲル」、相転移点以上で収縮する高分子ゲルを「収縮ゲル」と略す。
【0029】
従って、相互に異なる刺激特性を有する少なくとも2種類以上の高分子ゲルが、同一の刺激種に応答するもので構成される場合、前記高分子ゲルが膨潤ゲルのみ(あるいは収縮ゲルのみ)からなり、且つ、相互に相転移点が異なる組合せからなる構成(構成A)、の他に、前記高分子ゲルが、膨潤ゲルと収縮ゲルと、の組み合わせからなる構成(構成B)も挙げられる。なお、構成Bでは、前記高分子ゲルの相転移点は同一であっても異なっていてもよい。
【0030】
構成Aおよび構成Bは、相互に異なる刺激特性を有する少なくとも2種類以上の高分子ゲルが、同一の刺激種(特に温度変化)に応答する場合に特に好適な構成である。
例えば、温度変化により可逆的に液体を吸収・放出して体積変化を生ずる高分子ゲルとしては、吸脱液体の存在下、相転移温度を境に高温側で収縮するものと膨潤するものとが知られている。以下、前者を高温収縮ゲル、後者を高温膨潤ゲルと称する。
これら相互に異なる温度変化に応答する高分子ゲルの内部に、調光用材料(色材、光散乱剤等)を含有させた場合、構成Aでは温度変化に応じて多色や色濃度、調光量の変化を呈示することが可能となる。一方、同様に構成Bでは温度変化によって一方の特性の色を表現することができる。勿論、高温膨潤ゲルや高温収縮ゲルの各高分子ゲルをそれぞれ複数種類組み合わせ、かつ各高分子ゲル中の色材や光散乱剤を種々選択することで、多彩な色彩、調光量、光学濃度を表現することも可能である。
【0031】
但し、構成Aおよび構成Bとして、温度変化に応答して体積変化する高分子ゲルについて上述したが、その他の刺激種、例えば、pH変化や、イオン濃度変化等の他の特定の刺激種のみに応答して体積変化する高分子ゲルを用いることもできる。また、構成Aあるいは構成Bを適用して作製された光学素子は、刺激付与手段が1種類のみであるため、光学素子の構成を簡素にできるという利点もある。
【0032】
一方、相互に異なる刺激特性を有する少なくとも2種類以上の高分子ゲルが、相互に異なる刺激種に応答して体積変化する場合には、異なる刺激種の組合せが、温度変化とpH変化とからなる構成(構成C)が、好適な一例として挙げられる。従って、構成Cでは温度変化及び/又はpH変化に応じて、多色や色濃度、調光量の変化を呈示することができると共に、一方の特性の色を、より柔軟かつ容易に表現することができる。勿論、膨潤ゲルや収縮ゲルの各高分子ゲルをそれぞれ複数種類組み合わせ、かつ各高分子ゲル中の色材や光散乱剤を種々選択することで、多彩な色彩、調光量、光学濃度を表現することも可能である。なお、構成Cからなる調光組成物の組合せを適用して作製された光学素子は、刺激付与手段として、電極の加熱と電極反応とを利用した場合、前記2つの刺激付与手段に対して光学素子に設ける刺激付与手段が電極のみに共通化できるため、光学素子の構成を簡素にできるという利点がある。
【0033】
但し、相互に異なる刺激種の組合せは、温度変化とpH変化とからなる構成Cに限定されるものではなく、構成C以外の組合せであってもよい。例えば、好ましい相互に異なる刺激種の組み合わせとしては、温度変化と電界変化、温度変化と光照射の変化、温度変化と磁場変化、温度変化と酸化還元量変化、電界変化と光照射の変化、電界変化と磁場変化、光照射の変化と磁場変化等が挙げられる。相互に異なる刺激種の組合せからなる構成の調光組成物を適用して作製された光学素子は、各々の刺激種に応答する高分子ゲルを、各々の刺激種の刺激量を変化させて、別々に体積変化させることが可能であるため、多色や色濃度、調光量の呈示や、一方の特性の色の表現を、より柔軟かつ容易に行うことができる。
【0034】
前記高分子ゲルには、色材や光散乱剤などの調光用材料が含有される。このため、刺激に応じて、色の発色、色の濃度変化、調光量の変化、を呈示することが可能である。さらに、前記高分子ゲルを複数種類組み合わせ、且つ、各高分子ゲル中の色材や光散乱剤を種々選択することで、多様な色彩、調光量、光学濃度を表現することも可能である。
【0035】
さらに、前記高分子ゲルには、各種刺激種に応答する各種材料が含有されていてもよく、例えば、磁場変化に応答する強磁性体粒子を含有する高分子ゲルなどが挙げられる。なお、本発明においては、相互に異なる刺激特性を有する高分子ゲルとしては、高分子ゲル自体が各種刺激種に対して自発的に刺激応答する高分子ゲル以外に、上記した高分子ゲル中に各種刺激種に応答する各種材料が含有されてなる他発的に刺激応答する高分子ゲル、あるいは前記両者の性質を有する高分子ゲルであってもよい。また、本発明では、各種刺激種に対して自発的あるいは他発的に刺激応答することを問わず、2種類以上の刺激種に対して刺激応答する高分子ゲルを用いることもできる。
【0036】
次に、本発明に用いる高分子ゲルおよび吸脱液体の具体的構成について、詳細に説明する。
本発明で使用可能な高分子ゲルは、pH変化、化学物質の吸脱着、酸化・還元、温度変化、光照射の変化、磁場変化、溶液の組成やイオン強度変化等の各種刺激の付与により、水素結合性の変化、吸脱液体との溶媒和の変化、疎水性相互作用の変化、結晶構造の変化、磁性体の相互作用の変化等による相転移特性を有するものである。つまり、本発明で使用可能な高分子ゲルは、各種刺激の付与により、高分子ゲルの膨潤体としての体積が可逆的に変化する性質をもつ。ただし、「可逆的」といっても、刺激量が増加する時と減少する時とで異なる、いわゆるヒステリシスな性質を有するものであっても問題なく、本発明において、このような性質の場合も「可逆的」の概念に含まれる。
以下に、前記高分子ゲルの具体例として、pH変化と、界面活性剤などの化学物質の吸脱着と、酸化・還元と、温度変化と、光照射の変化と、磁場変化と、溶液の組成変化やイオン強度の変化と、に対して刺激応答して可逆的に体積変化する高分子ゲルの具体例を列挙する。
【0037】
まず、pH変化によって刺激応答する高分子ゲルとしては、電解質系高分子ゲルが好ましい。
具体例としては、ポリ(メタ)アクリル酸の架橋体やその塩:例えば、(メタ)アクリル酸と、(メタ)アクリルアミド、アルキル置換(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートなどから選択される1種以上との共重合体の架橋体やその4級化物や塩;
マレイン酸と、(メタ)アクリルアミド、アルキル置換(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートなどから選択される1種以上との共重合体の架橋体やその塩;
ポリビニルスルホン酸の架橋体やその塩:ビニルスルホン酸と、(メタ)アクリルアミド、アルキル置換(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートなどから選択される1種以上との共重合体の架橋体やその4級化物やその塩;
ポリビニルベンゼンスルホン酸の架橋体やその塩:ビニルベンゼンスルホン酸と、(メタ)アクリルアミド、アルキル置換(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートなどから選択される1種以上との共重合体の架橋体やその4級化物やその塩;
ポリ(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸の架橋体やその塩:(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸と、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートなどから選択される1種以上との共重合体の架橋体やその4級化物やその塩;
ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの架橋体やその4級化物:ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドと、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどから選択される1種以上との共重合体の架橋体やその塩や4級化物;
ポリジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドの架橋体やその4級化物:ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドと、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどから選択される1種以上との共重合体の架橋体やその塩や4級化物;
ポリジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの架橋体やその4級化物:ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートと、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどから選択される1種以上との共重合体の架橋体やその塩や4級化物;
ポリジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートの架橋体やその4級化物:ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートと、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどから選択される1種以上との共重合体の架橋体やその塩や4級化物;
ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドとポリビニルアルコールとの複合体の架橋体やその4級化物;
ポリビニルアルコールと、ポリ(メタ)アクリル酸との複合体の架橋体やその塩;
ポリ(メタ)アクリロニトリルの架橋体の部分加水分解物やその塩、などが挙げられる。
【0038】
界面活性剤などの化学物質の吸脱着によって刺激応答する高分子ゲルとしては強イオン性高分子ゲルが好ましく、カチオン界面活性剤と組合せて用いることができる。
具体例としては、前記高分子ゲルとして、ポリビニルスルホン酸の架橋物やビニルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物、
あるいは、ポリビニルベンゼンスルホン酸の架橋物やビニルベンゼンスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどから選択される1種以上の化合物との共重合体の架橋物、
あるいは、ポリアクリルアミドアルキルスルホン酸の架橋物やアクリルアミドアルキルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどから選択される1種以上の化合物との共重合体の架橋物などが挙げられる。
また、前記高分子ゲルに組合せて用いられるカチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルピリジン塩(例えば、n−ドデシルピリジニウムクロライドなど)、アルキルアンモニウム塩、フェニルアンモニウム塩、ホスホニウム塩(例えば、テトラフェニルホスフォニウムクロライドなど)などが挙げられる。
【0039】
酸化・還元によって刺激応答する高分子ゲルとしては、カチオン性高分子ゲルが挙げられ、電子受容性化合物と組み合わせて、CT錯体(電荷移動錯体)として好ましく使用される。
具体例としては、前記カチオン性高分子ゲルとして、ポリジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどポリアミノ置換(メタ)アクリルアミドの架橋物;ポリジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ポリジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートやポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのポリ(メタ)アクリル酸アミノ置換アルキルエステルの架橋物;ポリスチレンの架橋物;ポリビニルピリジンの架橋物;ポリビニルカルバゾールの架橋物;ポリジメチルアミノスチレンの架橋物などが挙げられる。
また、前記電子受容性化合物として、ベンゾキノン、7,7,8,8,−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、テトラシアノエチレン、クロラニル、トリニトロベンゼン、無水マレイン酸やヨウ素などが挙げられる。
【0040】
温度変化により刺激応答する高分子ゲルとしては、LCST(下限臨界共融温度)やUCST(上限臨界共融温度)をもつ高分子の架橋体(前者を「LCSTゲル」、後者を「UCSTゲル」と称する。)、互いに水素結合する2成分の高分子ゲルのIPN体(相互侵入網目構造体)や結晶性などの凝集性の側鎖をもつ高分子ゲル(前者を「IPNゲル」、後者を「結晶性ゲル」と称する。)などが好ましいものとして例示される。LCSTゲルは、高温において収縮し、UCSTゲル、IPNゲルおよび結晶性ゲルは、逆に高温で膨潤する特性をもっている。
【0041】
LCSTゲルの具体例としては、ポリ[N−イソプロピルアクリルアミド]などのポリ[N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド]の架橋体;N−アルキル置換(メタ)アクリルアミドと、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルなどから選択される1種以上との共重合体の架橋体やその塩;ポリビニルメチルエーテルの架橋体;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのアルキル置換セルロース誘導体の架橋体;などが挙げられる。
【0042】
UCSTゲルの具体例としては、ポリ[3−ジメチル(メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムプロパンスルフォネート]などの、分子内にアニオンとカチオンとの両成分を有する双性イオン高分子の架橋体等が挙げられる。
【0043】
一方、IPNゲルの代表的な例としては、ポリ(メタ)アクリルアミドの架橋体とポリ(メタ)アクリル酸の架橋体からなるIPN体およびその部分中和物(アクリル酸単位のカルボキシル基の一部を金属イオンなどの陽イオンで中和したもの)が挙げられる。
また上記以外のIPNゲルとしては、(メタ)アクリルアミドあるいはN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド誘導体を主成分とする共重合体の架橋体と(メタ)アクリル酸あるいはマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸などの不飽和カルボン酸を主成分とする共重合体の架橋体からなるIPN体およびそれらの部分中和物;少なくとも(メタ)アクリルアミドあるいはN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド誘導体と(メタ)アクリル酸あるいはマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸などの不飽和カルボン酸を含む共重合体の架橋体およびその部分中和物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを主成分とする共重合体の架橋体;少なくともステアリル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のアルキルエステルと(メタ)アクリル酸あるいはマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸などの不飽和カルボン酸を含む共重合体の架橋体およびその部分中和物;少なくともアクリロキシメチルウラシルなど側鎖に核酸塩基を導入した(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸あるいはマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸などの不飽和カルボン酸を含む共重合体の架橋体およびその部分中和物などが挙げられる。
【0044】
また、結晶性ゲルとしてはオクチル基、デシル基、ラウリル基、ステアリル基などの長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸との共重合体の架橋体やその塩、コレステリル系モノマーあるいは芳香族系モノマーと、(メタ)アクリル酸との共重合体の架橋体やその塩が挙げられる。
【0045】
さらに、温度変化に応じて複数の相転移温度を示す高分子ゲルも好ましく使用できる。このような高分子ゲルとしては、例えば、ポリ[N−イソプロピルアクリルアミド]などのポリ[N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド]の架橋体とポリ(メタ)アクリル酸の架橋体とのIPN体などが挙げられる。かかる高分子ゲルは、温度上昇に伴い、膨潤−収縮−膨潤という2つの相転移温度を示すことが知られている。
【0046】
光照射の変化によって刺激応答する高分子ゲルとしては、トリアリールメタン誘導体やスピロベンゾピラン誘導体などの光の照射によってイオン解離する基を有する親水性高分子化合物の架橋物が好ましい。前記親水性高分子化合物の架橋物としては、例えば、ビニル置換トリアリールメタンロイコ誘導体とアクリルアミドとの共重合体の架橋物などが挙げられ、より好ましくは、ビニル置換トリアリールメタンロイコ誘導体とアクリルアミドとの共重合体の架橋体などが挙げられる。
【0047】
磁場変化によって刺激応答する高分子ゲルとしては、強磁性体粒子や磁性流体等を含有するポリビニルアルコールの架橋物等が挙げられる。ただし、含有される高分子ゲルは、高分子ゲルの範疇であるものであれば限定されることなく適用できる。
【0048】
溶液の組成変化やイオン強度の変化によって刺激応答する高分子ゲルとしては、例えば、前記した電解質系高分子ゲルが、特に大きな体積変化が得られるために好ましい。
【0049】
本発明において特に好ましく用いられる高分子ゲルとしては、刺激種として、pH変化や温度変化に刺激応答する高分子ゲルが好ましい。また、これら刺激を高分子ゲルに付与するのに好適な刺激付与手段としては、例えば、電極反応によるpH変化、あるいは、パルス電圧印加による温度変化(加熱)の付与が可能な電極や、通電による温度変化(加熱)の付与が可能な発熱抵抗体が挙げられる。
なお、上記の括弧を用いた記述は、括弧内の接頭語を含まない化合物および含む化合物の両方を示しており、例えば「(メタ)アクリル」という記述は、「アクリル」および「メタクリル」のいずれをも意味するものである。
【0050】
前記高分子ゲルの相転移点前後の体積変化量としては、より大きいものが調光特性上好ましく、膨潤時および収縮時の体積比として、5以上であることが好ましく10以上であることがより好ましく、15以上であることがさらに好ましい。前記体積比が5未満の場合には、十分な調光コントラストが得られない場合がある。
【0051】
また前記高分子ゲルにおいて体積変化を示す相転移点としては、当該高分子ゲルの構造、組成により種種の設計が可能である。例えば、温度変化に刺激応答する高分子ゲルの相転移温度としては、−30℃〜300℃の範囲から選択され、特に好ましくは−10℃から200℃の範囲である。また、pH変化に刺激応答する高分子ゲルの相転移pHとしては、pH1〜pH14の範囲から選択され、特に好ましくはpH3〜pH12の範囲である。
【0052】
前記高分子ゲルはそれ自身でも、体積変化に伴い光散乱性が変化するという調光能を示すが、調光用材料が高分子ゲル内部に含有されているために、より大きな調光特性や色変化を発現する。
使用可能な調光用材料としては、顔料および染料などの色材や光散乱材などが挙げられる。またこの調光用材料は、高分子ゲルに物理的あるいは化学的に固定化されていることが好ましい。
【0053】
顔料としてはカーボンブラックなどの黒色顔料、ベンジジン系のイエロー顔料、キナクリドン系、ローダミン系のマゼンタ顔料、フタロシアニン系のシアン顔料などを挙げることができる。
より詳しくは、黒色顔料としてはチャネルブラック、ファーネスブラックなどのカーボンブラックおよびチタンブラックなどが挙げられる。
イエロー顔料としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、例えば顔料としては、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、168等が好適に用いられる。
【0054】
マゼンタ顔料としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。具体的には、例えば顔料としては、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48;2、48;3、48;4、57;1、81;1、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254が特に好ましい。
シアン顔料としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、例えば顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15;3、15:4、60、62、66等が特に好適に利用できる。
【0055】
染料としては、例えば、黒色のニグロシン系染料や、赤、緑、青、シアン、マゼンタ、イエローなどのカラー染料であるアゾ染料、アントラキノン系染料、インジゴ系染料、フタロシアニン系染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、ナフタルイミド染料、ベリノン染料などが挙げられ、特に光吸収係数が高いものが望ましい。
【0056】
染料の好適な具体例としては、例えば、C.I.ダイレクトイエロー1、8、11、12、24、26、27、28、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、157;C.I.アシッドイエロー1、3、7、11、17、19、23、25、29、38、44、79、127、144、245;C.I.ベイシックイエロー1、2、11、34;C.I.フードイエロー4;C.I.リアクティブイエロー37;C.I.ソルベントイエロー6、9、17、31、35、100、102、103、105;C.I.ダイレクトレッド1、2、4、9、11、13、17、20、23、24、28、31、33、37、39、44、46、62、63、75、79、80、81、83、84、89、95、99、113、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230、231;C.I.アシッドレッド1、6、8、9、13、14、18、26、27、35、37、42、52、82、85、87、89、92、97、106、111、114、115、118、134、158、186、249、254、289;C.I.ベイシックレッド1、2、9、12、14、17、18、37;C.I.フードレッド14;C.I.リアクティブレッド23、180;C.I.ソルベントレッド5、16、17、18、19、22、23、143、145、146、149、150、151、157、158;C.I.ダイレクトブルー1、2、6、15、22、25、41、71、76、78、86、87、90、98、163、165、199、202;C.I.アシッドブルー1、7、9、22、23、25、29、40、41、43、45、78、80、82、92、93、127、249;C.I.ベイシックブルー1、3、5、7、9、22、24、25、26、28、29;C.I.フードブルー2;C.I.ソルベントブルー22、63、78、83〜86、191、194、195、104;C.I.ダイレクトブラック2、7、19、22、24、32、38、51、56、63、71、74、75、77、108、154、168、171;C.I.アシッドブラック1、2、7、24、26、29、31、44、48、50、52、94;C.I.ベイシックブラック2、8;C.I.フードブラック1、2;C.I.リアクティブブラック31;C.I.フードバイオレット2;C.I.ソルベントバイオレット31、33、37;C.I.ソルベントグリーン24、25;C.I.ソルベントブラウン3、9;等が挙げられる。
【0057】
これらの顔料及び染料は、単独で使用することができ、また、所望とする色を得るために少なくとも2種類以上を混合して使用することもできる。なお、優れた耐候性を得るためには、染料よりも顔料を用いるほうが好ましい。
【0058】
また、光散乱材としては、高分子ゲルが体積変化する際に前記高分子ゲルにより吸収・放出される液体の屈折率と異なる屈折率を有する材料が好ましい。前記材料としては、各種の無機化合物および有機化合物が適用できる。
【0059】
前記無機材料の具体例としては、酸化亜鉛、塩基性炭酸鉛、塩基性硫酸鉛、硫酸鉛、リトボン、白雲母、硫化亜鉛、酸化チタン、酸化アンモチモン、鉛白、酸化ジルコニウム、アルミナ、マイカナイト、マイカレックス、石英、炭酸カルシウム、石膏、クレー、シリカ、ケイ酸、珪素土、タルク、塩基性炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、サチン白等の無機酸化物や、
亜鉛、アルメル、アンチモン、アルミニウム、アルミニウム合金、イリジウム、インジウム、オスミウム、クロム、クロメル、コバルト、ジルコニウム、ステンレス鋼、金、銀、洋銀、銅、青銅、すず、タングステン、タングステン鋼、鉄、鉛、ニッケル、ニッケル合金、ニッケリン、白金、白金ロジウム、タンタル、ジュラルミン、ニクロム、チタン、クルップ・オーステナイト鋼、コンスタンタン、真鍮、白金イリジウム、パラジウム、パラジウム合金、モリブデン、モリブデン鋼、マンガン、マンガン合金、ロジウム、ロジウム金などの金属材料、ITO(インジウム・スズ酸化物)等の無機導電性材料などが挙げられる。
【0060】
また、前記有機材料の具体例としては、フェノール樹脂、フラン樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アニリン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ−p−キシリレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素系プラスチック、ポリアクリロニトリル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、ポリエーテル、ポリカーボネート、熱可塑性ポリエステル、ポリアミド、ジエン系プラスチック、ポリウレタン系プラスチック、ポリフェニレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、芳香族ヘテロ環ポリマー、シリコーン、天然ゴム系プラスチック、セルロース系プラスチック等やこれら2種類以上の高分子材料の混合材料(ポリマーブレンド)などの高分子材料が挙げられる。
【0061】
使用する顔料や光散乱材の大きさは、一次粒子の平均粒子径で、0.001μm〜1μmのものが好ましく、特に0.01μm〜0.5μmのものが好ましい。これは、粒径が0.001μm未満では高分子ゲルからの流出が起こりやすく、また、1μmより大きい場合では発色特性が悪くなる恐れが生じるためである。
【0062】
また、前記したように顔料や光散乱材は、前記高分子ゲル中に含有され、前記高分子ゲルから流出しないことが望まれる。そのためには、前記高分子ゲルの架橋密度を最適化して顔料や光散乱材を前記高分子ゲルの網目中に物理的に閉じ込めるたり、前記高分子ゲルとの電気的、イオン的、その他物理的な相互作用が高い顔料や光散乱材を用いること、表面を化学修飾した顔料や光散乱材を用いること、などが好ましい。
例えば、表面を化学修飾した顔料や光散乱材としては、表面にビニル基などの不飽和基や不対電子(ラジカル)などの高分子ゲルと化学結合する基を導入したものや、高分子材料をグラフト結合したものなどが挙げられる。
【0063】
高分子ゲル中に含有される顔料あるいは光散乱材の濃度は、高分子ゲルが収縮した時に、少なくとも高分子ゲルの一部分で、顔料の場合は飽和吸収濃度以上、光散乱材の場合は飽和光散乱濃度以上であることが望ましい。
この飽和吸収濃度(飽和光散乱濃度)について、以下に詳細に説明する。高分子ゲルの少なくとも一部分が収縮した際に、収縮部分において、前記高分子ゲル中に含有される顔料(光散乱材)同士の平均間隔が十分に短くなる。この場合、前記収縮部分の顔料(光散乱材)による可視光線吸収(散乱)の働きが1次粒子的なものから集合体的なものに変化することにより、前記収縮部分における顔料(光散乱材)の1粒子当たりの可視光線吸収量(散乱量)が低下する。この1粒子当たりの可視光線吸収量(散乱量)が低下し始める前記収縮部分での顔料(光散乱材)の濃度を飽和吸収濃度(飽和光散乱濃度)という。
また、顔料(光散乱材)が集合体的な可視光線吸収(あるいは散乱)を示す状態を、顔料(光散乱材)の濃度が飽和吸収濃度以上(飽和光散乱濃度以上)にある状態と呼ぶ。
【0064】
次に、飽和吸収濃度(飽和散乱濃度)前後での可視光線吸収量(散乱量)の変化を、例として、高分子ゲル全体が一様に膨潤あるいは収縮し、且つ、前記高分子ゲルの収縮時に、顔料(光散乱材)の濃度が飽和吸収濃度以上(飽和散乱濃度以上)となる場合について具体的に説明する。
高分子ゲルが膨潤した状態にある場合は、前記高分子ゲル中の顔料(光散乱材)の濃度が飽和吸収濃度以下(飽和光散乱濃度以下)であるため、顔料(光散乱材)の1粒子あたりの可視光線吸収量(散乱量)はほぼ一定である。このため、単位体積当たりの可視光線吸収量(散乱量)が、単位体積中に存在する高分子ゲルに含有される顔料(光散乱材)濃度に比例する。
【0065】
一方、高分子ゲルが収縮した状態にある場合は、前記高分子ゲル中の顔料(光散乱材)の濃度が飽和吸収濃度以上(飽和光散乱濃度以上)となるため、顔料(光散乱材)の1粒子あたりの可視光線吸収量(散乱量)が低下する。このため、単位体積当たりの可視光線吸収量(散乱量)が、単位体積中に存在する高分子ゲルに含有される顔料(光散乱材)濃度に比例しなくなる。
即ち、単位体積中に存在する高分子ゲルに含有される顔料(光散乱材)濃度に対して、可視光線吸収量(散乱量)は、飽和吸収濃度以下(飽和光散乱濃度以下)では1次直線的に比例している。しかし、飽和吸収濃度以上(飽和光散乱濃度以上)では、予想される1次直線からずれが発生し、単位体積中に存在する高分子ゲルに含有される顔料(光散乱材)濃度に対して可視光線吸収量(散乱量)が低下する。
【0066】
従って、高分子ゲルの収縮時に顔料(光散乱材)が飽和吸収濃度以上(飽和光散乱濃度以上)となるように、前記高分子ゲルに顔料(光散乱材)を含有させた場合、収縮時における顔料(光散乱材)の1粒子当たりの可視光線吸収量(散乱量)は、膨潤時と比較して低下する。
このため、前記高分子ゲルの収縮時と比べて、相対的に膨潤時では可視光線吸収量(散乱量)をより大きくすることができる。
【0067】
一方、高分子ゲルの収縮時に顔料(光散乱材)が飽和吸収濃度以下(飽和光散乱濃度以下)となるように、前記高分子ゲルに顔料(光散乱材)を含有させた場合、収縮時における顔料(光散乱材)の1粒子当たりの可視光線吸収量(散乱量)は、膨潤時と比較して同程度である。
このため、前記高分子ゲルの収縮時と比べて、膨潤時では相対的に可視光線吸収量(散乱量)は同程度となる。
【0068】
上記に説明したように、収縮時の高分子ゲル中の顔料(光散乱材)の濃度が飽和吸収濃度以上(飽和光散乱濃度以上)の場合、前記高分子ゲルが膨潤状態から収縮状態へ、あるいは、収縮状態から膨潤状態へ、と変化した際に、可視光線吸収量(散乱量)が大きく変化する。
従って、収縮時の高分子ゲル中の顔料(光散乱材)の濃度が飽和吸収濃度以上(飽和光散乱濃度以上)となるように、顔料(光散乱材)を高分子ゲル中に含有させることが好ましい。
【0069】
なお、高分子ゲルが収縮した時に、顔料(光散乱材)の濃度が、飽和吸収濃度以上(飽和光散乱濃度以上)となるのは、前記高分子ゲルのうち少なくとも一部であればよい。この「高分子ゲルのうち少なくとも一部」とは、1個の高分子ゲル内部の一部の領域あるいは全ての領域、及び、複数個の高分子ゲルの内の一部の高分子ゲルあるいは全ての高分子ゲル、の両方を意味する。
【0070】
「高分子ゲルのうち少なくとも一部」が、収縮時に飽和吸収濃度以上(飽和光散乱濃度以上)であれば、調光作用を発揮することができる。しかし、1個の高分子ゲル内部のより多くの領域、あるいは、複数個の高分子ゲルの内のより多数の高分子ゲルが、収縮時に飽和吸収濃度以上(飽和光散乱濃度以上)であることが好ましい。
【0071】
前記高分子ゲル中に含有される顔料や光散乱材の量としては、少なくとも吸脱液体を含まない状態の前記高分子ゲル中において飽和吸収濃度以上(あるいは飽和光散乱濃度以上)の濃度とすることが好ましい。
飽和吸収濃度以上(あるいは飽和光散乱濃度以上)にするためには、顔料や光散乱材の光吸収係数や光散乱係数にも依存するが、顔料や光散乱材の濃度としては、顔料や光散乱材を含んだ状態の高分子ゲル全体に対し、一般的には3質量%〜95質量%の範囲が好ましく、より好ましくは5質量%〜80質量%の範囲である。顔料あるいは光散乱材の濃度が3質量%未満であると、飽和吸収濃度以上(あるいは飽和光散乱濃度以上)とはならず、高分子ゲルの体積変化に伴う調光特性が不十分となる場合がある。一方、濃度が95質量%を超えると、高分子ゲルの応答速度や体積変化量が低下してしまう恐れがある。
【0072】
なお、染料を高分子ゲルに固定化するために、不飽和二重結合基などの重合可能な基を有する構造の染料や、高分子ゲルと反応可能ないわゆる反応性染料などが好ましく使用される。
一方、高分子ゲル中に含有させる染料の好ましい濃度は、3質量%から50質量%の範囲であり、特に好ましくは5質量%から30質量%の範囲である。染料濃度としては、前記顔料および光散乱材の場合と同様に、少なくとも高分子ゲルの乾燥あるいは収縮状態において飽和吸収濃度以上であることが望ましい。
染料の濃度が3質量%未満の場合、高分子ゲルが収縮した際に、収縮部の少なくとも一部において、染料の濃度が飽和吸収濃度以上とはならず、高分子ゲルの体積変化による調光特性が不充分となる可能性がある。一方、染料の濃度が50質量%を超える場合、高分子ゲルの刺激応答速度や体積変化量が低下してしまう可能性がある。
【0073】
このような調光用材料を含む高分子ゲルは、架橋前の高分子組成物に調光用材料を均一に分散、混合した後に架橋する方法や、重合時にモノマー組成物に調光用材料を添加して重合する方法によって製造することができる。重合時において顔料や光散乱材を添加する場合には、前記したように重合性基や不対電子(ラジカル)をもつ顔料や光散乱材を使用し、高分子ゲルに化学結合させることも好ましく実施される。
【0074】
また、調光用材料は、本発色材料中に極力均一に分散されていることが好ましい。特に、架橋前の高分子組成物への分散や、モノマー組成物への添加に際して、機械的混練法、攪拌法、あるいは分散剤などを利用して均一に分散させることが望ましい。
【0075】
本発明で使用可能な高分子ゲルの形状としては、特に限定されるものではないが、応答速度や加工の容易性等の観点からは、粒子状であることが好ましい。粒子状の高分子ゲルの具体的な形状としては、球体、立方体、楕円体、多面体、多孔質体、繊維状、星状、針状、中空状などが挙げられるが、その他不定形のものであってもよい。粒子状の高分子ゲルの好ましい大きさは、吸脱液体を含まない状態において、体積平均粒径で0.1μm〜1mmの範囲、より好ましくは1μm〜500μmの範囲である。体積平均粒径が0.1μm未満であると、粒子のハンドリングが困難になる、優れた光学特性が得られないなどの問題を生じる場合がある。一方、体積平均粒径が500μmよりも大きくなると、体積変化に要する応答速度が大幅に遅くなってしまうなどの問題を生じる場合がある。
【0076】
粒子状の高分子ゲルは、高分子ゲルを物理的粉砕法によって粉砕する方法や、架橋前の高分子を物理的粉砕法や化学的粉砕法によって粒子化した後に架橋して高分子ゲルとする方法、あるいは乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法などの粒子化重合法などの一般的な方法によって製造することができる。
【0077】
なお、高分子を架橋させるためには、種々の架橋剤(多官能性化合物)を、重合時あるいは重合後に添加し反応させる、あるいは高分子に電子線、γ線などの放射線を照射する、加熱する、さらには過酸化物を添加する、などの一般的な方法が適用できる。
【0078】
なお、本発明に用いられる高分子ゲルを形成するために適用される架橋剤としては、例えば、該架橋剤分子内に重合性不飽和基、反応性官能基などを2個以上有する化合物を挙げることができる。
上記重合性不飽和基を2個以上有する化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリンポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリンなどのポリオール類のジ(メタ)アクリル酸エステル類またはトリ(メタ)アクリル酸エステル類、前記ポリオール類とマレイン酸、フマル酸などの不飽和酸類とを反応させて得られる不飽和ポリエステル類、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミドなどのビス(メタ)アクリルアミド類、トリレジンイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどのポリイソシアネートと(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとを反応させて得られるジ(メタ)アクリル酸カルバミン酸エステル類、アリル化澱粉、アリル化セルロース、ジアリルフタレート、その他のテトラアリロキシエタン、ペンタンエリスリトールトリアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、トリアリルトリメチルエーテルなどの多価アリル系を挙げることができる。
前記重合性不飽和基を2個以上有する化合物中でも、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミドなどが好ましく使用される。
【0079】
また、反応性官能基を2個以上有する化合物としては、ジグリシジルエーテル化合物、ハロエポキシ化合物、ジトリイソシアネート化合物、およびトリイソシアネート化合物などを挙げることができる。
ジグリシジルエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ポリグリセリンジグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
ハロエポキシ化合物の具体例としては、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、β−メチルエピクロロヒドリンなどを挙げることができる。
また、ジイソシアネート化合物の具体例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどを挙げることができる。
前記反応性官能基を2個以上有する化合物の中でも、特にエチレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが好ましく使用される。
【0080】
前記架橋剤の中で特に好ましい架橋剤はN,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミドである。架橋剤の使用量は、架橋前の高分子あるいは重合前のモノマー(以下、両者をまとめて「架橋体の前駆体」と記す場合がある)の仕込み量に対して、0.001質量%〜10質量%の範囲が好ましく、0.01質量%〜5質量%の範囲がより好ましい。
【0081】
本発明で用いられる重合開始剤は、前記架橋体の前駆体組成物溶液に溶解し得るものであればよい。具体的には、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキシドやクメンハイドロパーオキシド等のパーオキシド類、アゾイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のアゾ化合物などが用いられる。
前記重合開始剤の中でも、特に、過硫酸塩、ハイドロパーオキシド類等の様な酸化性を示す開始剤は、例えば亜硫酸水素ナトリウム、L−アスコルビン酸、第一鉄塩等の様な還元性物質と、あるいは、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンなどのアミン類と、の組合せによるレドックス開始剤としても用いることができる。これらの重合開始剤の使用量は、一般には主たる架橋体の前駆体組成物に対して、0.001質量%〜10質量%の範囲が好ましく、0.01質量%〜5質量%の範囲がより好ましい。
【0082】
また、温度変化やpH変化等の各種刺激の付与による体積変化特性をより高速化するために、従来技術と同様に、高分子ゲルを多孔質化して液体の出入りを向上させることも好ましい。一般に、膨潤した高分子ゲルを凍結乾燥する方法で、高分子ゲルを多孔質化することができる。
【0083】
次に、本発明の光学素子に用いられる調光組成物に、高分子ゲルとともに使用される吸脱液体について説明する。
本発明で使用可能な吸脱液体は、温度変化により可逆的に高分子ゲルに吸収・放出される性質のもので、前記高分子ゲルを膨潤可能なものである。吸脱液体として好ましいものを例示すれば、水、電解質水溶液、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類;アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類;エーテル類;エステル類;等の他、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキシド、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、脂肪族あるいは芳香族系有機溶媒などや、それらの混合物が挙げられる。また、吸脱液体には、必要に応じて各種高分子、酸、アルカリ、塩、界面活性剤や分散安定剤、あるいは酸化防止や紫外線吸収などを目的とする安定剤等を添加しても構わない。
本発明の調光組成物においては、前記高分子ゲルと上記吸脱液体との好ましい混合比の範囲は、質量比で1:2000〜1:1(高分子ゲル:吸脱液体)である。
【0084】
[調光樹脂組成物]
本発明の光学素子に用いられる調光組成物は、そのままで光学素子に適用することもできるが、さらに樹脂を含む調光樹脂組成物とすることも好適である。該調光樹脂組成物としては、本発明の光学素子に用いられる調光組成物を樹脂中に分散したもの、あるいは、高分子膜でカプセル化したマイクロカプセルなどが挙げられる。このように調光樹脂組成物とすることで、その利用形態を拡大することができる。
【0085】
樹脂中に調光組成物分散する場合は、該調光組成物をこれと非相溶な樹脂あるいは樹脂前駆体に混合し、樹脂を乾燥、重合あるいは硬化させることで調光樹脂組成物を調製することができる。図1に、樹脂中に高分子ゲルと吸脱液体からなる調光組成物を分散した調光樹脂組成物の構成例を模式図にて示す。図1において、2および4は、高分子ゲルおよび吸脱液体からなる調光組成物であり、6は樹脂である。調光組成物2中の高分子ゲルと調光組成物4中の高分子ゲルとは、相互に異なる刺激特性を有し、好ましくは相互に異なる特性の調光用材料を内部に含むものである。
【0086】
また、上記方法以外にも、例えばあらかじめ高分子ゲルと吸脱液体とからなる調光組成物をマイクロカプセル化し、これをマトリックス材料としての樹脂中に分散することも可能である。
樹脂と、高分子ゲルおよび吸脱液体からなる調光組成物との組成比は、質量比で1/50〜50/1[樹脂/(高分子ゲル+吸脱液体)、あるいは、マトリックス材料/(高分子ゲルおよび吸脱液体を含むカプセル)]の範囲が好ましい。
【0087】
一方、マイクロカプセル化は、高分子材料の不溶化を利用したいわゆるコアセルベーション法、分散粒子の界面で重合を行いカプセル膜を形成するいわゆる界面重合マイクロカプセル化法、in situマイクロカプセル化重合法、液中乾燥法、液中硬化被覆マイクロカプセル化法、気体中に液滴を噴霧することでその表面にカプセル膜を形成するスプレードライングマイクロカプセル化法などにより実施することができる。これら技術の詳細は「近藤 保著、新版マイクロカプセルその製法・性質・応用 三共出版」などの成書に記述されている。マイクロカプセルを構成する高分子膜(樹脂)の厚みとしては、1nm〜20μmの範囲が好ましく、より好ましくは1nm〜10μmの範囲である。マイクロカプセルの好ましい大きさは、体積平均粒径で、好ましくは1μm〜5mmの範囲、より好ましくは10μm〜2mmの範囲である。
【0088】
カプセル材料と、高分子ゲルおよび吸脱液体の混合物との配合比は、質量比で1/200〜5/1[カプセル材料/(高分子ゲル+吸脱液体)]の範囲が好ましい。カプセル化した調光樹脂組成物は、その形態のまま、あるいは他の樹脂中に分散することで様々な用途に応用できる。
【0089】
前記した調光樹脂組成物に好ましく使用する樹脂(マイクロカプセル膜としての樹脂を含む)としては、熱硬化樹脂、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂、ポリエステル、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル樹脂、ポリスチレンおよびその誘導体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、セルロース誘導体、フッ素系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、光学的に透明なものが望ましい。また、これらの樹脂は、樹脂と種々の溶剤との混合物やゲル状物であっても構わない。
【0090】
[光学素子]
上述した調光組成物の応用形態である、本発明の光学素子について説明する。本発明の光学素子は、上述した調光組成物を含むことを特徴とするものである。まず、前記調光樹脂組成物を用いた例について、説明する。
前記調光樹脂組成物は、フィルム状、繊維状など様々な構造で、光学素子として利用することができるが、本発明ではフィルム状とすることにより、フィルム状の種々の基材表面、あるいは、フィルム状の複数枚の基材間に、前記調光樹脂組成物を所望の厚みで形成することで、安定かつ耐久性に優れる調光フィルムとすることができる。また、基材を用いず前記調光樹脂組成物のみでフィルム状に成形して調光フィルム(光学素子)とすることもできる。
なお、本発明において、「フィルム状」というときは、可撓性を有するいわゆるフィルム状のほか、ある程度硬さを有するいわゆる板状のものも含む概念とする。
【0091】
図2に、フィルム状の基材に前記調光樹脂組成物を形成した構成の調光フィルムの拡大断面図を示す。図2において、10はフィルム状の基材であり、その表面に、調光組成物2,4と、樹脂6とからなる調光樹脂組成物層8が形成され、全体としてフィルム状の光学素子である調光フィルムを成している。なお、図2において、図1と同一の機能を有する部材には、同一の符号が付されており、その詳細な説明は省略することとする。
また、図2に示す構成の他にも、既述の如く前記調光樹脂組成物のみからなる構成や、2枚のフィルム状の基材間に前記調光樹脂組成物が挟持された構成であってもよい。さらに、保護層などの他の構成層が形成されていても構わない。
【0092】
これら基材としては、ポリエステル、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、セルロース誘導体、フッ素樹脂、各種金属、ガラス、セラミック材料などを使用することができる。
フィルム状の光学素子(調光素子)における各層の好ましい厚みを詳記すると、基材10としては10μm〜10mmの範囲から選択され、調光樹脂組成物層8は5μm〜10mmの範囲から選択される。
【0093】
に、調光組成物自体をそのまま用いた光学素子について説明する。
図3(A)は、本発明に用いられる調光組成物自体をそのまま用いた、本発明の光学素子の構成例を示す模式断面図であり、図4(A)は、他の構成例を示す模式断面図である。図3(A)および図4(A)の双方の構成例とも、2枚の基板間に本発明の調光組成物が封入されている例である。図3(A)および図4(A)において、20および20’は基板であり、基板20,20’間に、相互に異なる刺激特性を有する高分子ゲル12及び高分子ゲル14と、吸脱液体16とからなる調光組成物(層)18が挟持されている。なお、高分子ゲル12及び高分子ゲル14は、吸脱液体16と、調光用材料と、を含み、高分子ゲル12と、高分子ゲル14とに各々含まれる調光用材料は、同一あるいは相互に異なる色彩及び/又は光散乱特性を有することができる。また、図3(A)および図4(A)に共通の符号は、同一の機能を有する部材である。
【0094】
図3及び図4に示した光学素子の調光組成物層18の厚みは、1μm〜20mmの範囲が好ましく、2μm〜5mmの範囲がより好ましい。調光組成物層18の厚みが1μm未満の場合は、調光性能が低くなり所望の調光効果を得ることができない場合がある。一方、調光組成物層18の厚みが20mmよりも大きい場合は刺激応答特性が低下する場合がある。
【0095】
なお、図4(A)に示す光学素子は、図3(A)に示す光学素子の高分子ゲル12及び高分子ゲル14が同一基板表面に固定されているのに対し、高分子ゲル12及び高分子ゲル14が別々の基板表面に固定されているものである。図4(A)に示す光学素子における、この高分子ゲルの基板表面への固定は、高分子ゲル12と高分子ゲル14とが、相互に異なる色彩を発色する場合に、各々の色彩を高濃度で発色するのに好適である。
【0096】
調光組成物18中の高分子ゲル12,14は、基板20および/または20’表面(あるいは後述する刺激付与手段表面、以下、単に「基板20表面等」と省略す場合もある。)に固定されていることが好ましい。このとき高分子ゲル12,14は、図3(A)に示すように基板20のみに固定されていても、図4(A)に示すように基板20,20’の双方に固定されていても構わない。
あるいは、高分子ゲル12,14は、基板20,20’と、の間に配置された支持体に固定することも可能である。このような固定により、高分子ゲル12及び高分子ゲル14が、基板20及び基板20’の面と平行な方向への移動が制限されるように固定されるため、光学素子の面内での調光特性のバラツキや経時劣化等を抑えることができる。
【0097】
高分子ゲル12,14の固定は、種々の二官能性化合物や接着剤を利用したり、あるいは物理的な手段で行うことができる。例えば、反応性シランカップリング剤により基板20表面等をあらかじめ処理することで官能基を導入し、これと粒子状の高分子ゲル12,14の官能基とを反応させることにより共有結合させることが可能である。その他にも、種々の多官能性化合物や接着剤により高分子ゲル12,14を固定する方法や、基板20表面等を立体的に加工して、高分子ゲル12,14を物理的に固定することも可能である。さらに、基板20,基板20’と、の間に配置された支持体により機械的に固定することも可能である。
【0098】
上記の高分子ゲル12及び14の基板20、基板20’、基板20表面等、及び/又は基板20’表面等(以下「被接着面」と略す場合がある)、あるいは、支持体に対する化学的固定、物理的固定、機械的固定について以下に更に詳しく説明する。
化学的固定において用いられる化学結合としては、イオン結合、水素結合、共有結合などが挙げられるが、これら化学結合の内、安定性の面から共有結合が最も好ましい。前記共有結合は固定化剤を用いた反応により形成される。高分子ゲル12、高分子ゲル14、および、前記固定化剤の被接着面への付与は、塗布、散布、含浸などの方法により行うことができる。
【0099】
高分子ゲル12、高分子ゲル14、及び、前記固定化剤の被接着面への付与方法が塗布および含浸の場合には、固定化剤を該固定化剤と相溶性のある溶媒に溶解した溶液、あるいは前記溶媒に調光組成物の乾燥粒子および固定化剤を分散混合した溶液を使用する。前記溶媒は固定化剤に応じて選択され、例えば、アセトンなどのケトン類、エタノール、メタノールなどのアルコール類、酢酸エチルなどのカルボン酸エステル類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテルなどのエーテル類、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類および、これらの混合物などが適用できる。
【0100】
高分子ゲル12、高分子ゲル14、および、固定化剤を被接着面に付与した後は、固定化剤に固有の反応温度に加熱して、高分子ゲル12及び高分子ゲル14と、被接着面と、の間に化学結合を形成し、高分子ゲル12及び高分子ゲル14を被接着面に固定するなどの方法が適用できる。
また、被接着面を固定化剤で処理した後、この被接着面に形成された反応基を有する固定化剤層に高分子ゲル12及び高分子ゲル14を付与して固定するという段階的な反応なども適用できる。
【0101】
前記固定化剤としては、重合性不飽和基、反応性官能基などを2個以上有する化合物を挙げることができる。
上記重合性不飽和基を2個以上有する化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリンポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリンなどのポリオール類のジまたはトリ(メタ)アクリル酸エステル類、前記ポリオール類とマレイン酸、フマル酸などの不飽和酸類とを反応させて得られる不飽和ポリエステル類、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミドなどのビス(メタ)アクリルアミド類、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどのポリイソシアネートと(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとを反応させて得られるジ(メタ)アクリル酸カルバミン酸エステル類、アリル化澱粉、アリル化セルロース、ジアリルフタレート、その他のテトラアリロキシエタン、ペンタンエリスリトールトリアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、トリアリルトリメチルエーテルなどの多価アリル系を挙げることができる。
これらの中でも本発明には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、 N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミドなどが好ましく使用される。
【0102】
また、上記反応性官能基を2個以上有する化合物としては、ジグリシジルエーテル化合物、ハロエポキシ化合物、ジおよびトリイソシアネート化合物などを挙げることができる。ジグリシジルエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ポリグリセリンジグリシジルエーテルなどを挙げることができる。その他、ハロエポキシ化合物の具体例としては、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、β−メチルエピクロロヒドリンなどを挙げることができる。また、ジイソシアネート化合物の具体例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどを挙げることができる。
【0103】
また、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系シランカップリング剤、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系シランカップリング剤、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ系シランカップリング剤など、各種反応性シランカップリング剤なども適用できる。
【0104】
前記固定化剤の中でも、特に3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどが好ましく使用される。
前記固定化剤の使用量は、通常、高分子ゲル12及び高分子ゲル14の乾燥重量に対して、0.001質量%〜10質量%の範囲が好ましく、0.001質量%〜5質量%の範囲が好ましい。前記使用量が0.001質量%未満の場合は、高分子ゲル12及び高分子ゲル14を被接着面に十分に固定できない場合がある。一方、前記使用量が10質量%を超えた場合は、高分子ゲル12及び高分子ゲル14を被接着面に固定した際に、この固定力が強すぎて体積変化を阻害される場合がある。
【0105】
物理的固定に使用する接着剤としては、有機溶剤揮散型接着剤(クロロプレンゴム系、ウレタン系など)、熱硬化反応型接着剤(エポキシ系、レゾール系など)、湿気硬化反応型接着剤(2−シアノアクリル酸エステル系、シリコーン系など)、紫外線硬化反応型接着剤(アクリル系オリゴマーなど)、縮合反応型接着剤(ユリア樹脂系)、付加反応型接着剤(エポキシ系、イソシアネート系など)、熱溶融型接着剤などが挙げられる。
【0106】
前記接着剤としては、特に熱溶融型接着剤が好適であり、例えば、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリオレフィン誘導体(マレイン酸変性ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、プロピレン−アクリル酸共重合体、プロピレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、マレイン化ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル共重合体およびそのマレイン化物など)、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカプロラクトン系樹脂、ポリスチレン樹脂、およびその誘導体(ポリスチレン、スルホン化ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体など)、熱可塑性ポリウレタン樹脂、高分子量ポリエチレングリコール、酢酸ビニル樹脂、ワックス類(パラフィンワックス、ミツロウ、牛脂など)、長鎖脂肪酸エステル樹脂およびこれら2種以上の混合物などが挙げられる。
【0107】
前記接着剤の使用量は、高分子ゲル12及び高分子ゲル14の乾燥質量100質量部に対して接着剤の使用量が、0.1質量部〜50質量部の範囲が好ましく、1質量部〜30質量部の範囲がより好ましい。前記使用量が50質量部を超えると被接着面や支持体への固定性は向上するものの、調光組成物の接着剤との接触割合が高くなり、膨潤・収縮挙動を阻害する場合がある。一方、前記使用量が0.1質量部未満では、被接着面への固定が不十分となる場合がある。
【0108】
前記接着剤を用いた高分子ゲル12及び高分子ゲル14の被接着面への固定は、例えば、高分子ゲルの乾燥粒子と、粒子状の接着剤と、の混合物を被接着面に散布した後、加熱処理を施して接着する方法が適用できる。この時、混合に使用する装置は特に限定されず、通常の粉体混合装置等を用いることができる。前記粉体混合装置としては、例えば、コニカルブレンダー、ナウターミキサー、V型ブレンダー、タービュライザー、スクリュー式ラインブレンダーなどが挙げられる。
【0109】
また、前記接着剤を用いて高分子ゲル12及び高分子ゲル14を被接着面へ固定する他の方法としては、接着剤を溶媒に溶かした接着剤溶液を調製し、被接着面に該接着剤溶液を塗布した後、高分子ゲルの乾燥粒子を散布して加熱処理を施す方法を用いてもよい。前記溶媒は、接着剤が可溶なものであれば特に限定されないが、前記溶媒の沸点は比較的低い方がよく、150℃以下、好ましくは100℃以下が適当であり、例えば、アセトンなどのケトン類、エタノール、メタノールなどのアルコール類、酢酸エチルなどのカルボン酸エステル類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテルなどのエーテル類、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類および、これらの混合物などが挙げられる。
【0110】
前記接着剤溶液の被接着面への付与方法は、塗布、噴霧、浸漬などが挙げられる。また、接着のための加熱処理は特に限定されないが、熱風加熱機、赤外線加熱機、高周波加熱機およびヒートローラなどの接触式加熱機などが適用でき、加熱温度は、前記接着剤の溶融温度に応じて、50℃〜200℃の範囲で適宜設定される。
【0111】
なお、高分子ゲル12及び高分子ゲル14を、基板20,20’と、の間に配置された支持体により機械的に固定する場合はこの支持体の表面、内部、あるいは、該支持体の表面及び内部の両方に固定することができる。
かかる支持体は、高分子ゲル12及び高分子ゲル14の刺激応答による体積変化挙動を妨げない形状であれば特に限定されない。しかしながら、前記支持体の形状としては、繊維状であることが特に好ましい。また、前記支持体は出来る限り吸脱液体16と屈折率の差が小さいことが好ましい。前記支持体と吸脱液体16との屈折率の差が大きいと、前記支持体による光の散乱が多くなり、調光特性を低下させる場合がある。
【0112】
なお、繊維状の支持体を用いる場合には、高分子ゲル12及び高分子ゲル14は、かかる支持体の網目などの空間に保持される。この繊維状支持体としては、例えば、合成繊維としてナイロン系繊維、アクリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリウレタン系繊維など、天然繊維として木材パルプ、綿、羊毛など、半合成繊維としてビスコースレーヨン、アセテート、キュプラなど、無機繊維としてカーボン繊維、チタン繊維などを適用することができる。
【0113】
前記繊維状支持体の形態としては、単なる繊維の集合体ではなく、織物状、不織布状、ウエブ状、シート状などの構造体となっていることが好ましい。なお、この構造体は、高分子ゲル12及び高分子ゲル14の固定・保持効果を高めるために、1μm〜50μm程度の比較的細い繊維を用いて、目付け量10g/m2以上の比較的高密度で構成されていることが好ましい。
【0114】
なお、高分子ゲル12,14を固定する際、基板等と密着させすぎると、応答特性が低下する場合があるため、空間を空けるために基板20等の表面を立体的に加工し、その凸部に結合させる手段や、長鎖化合物(スペーサー)を介して高分子ゲル12,14を、空間を設けて結合させる手段も好ましく実施される。
また、基板20と、これに対向配置された基板20’と、の間隔(ギャップ)が小さいと、基板等に固定された高分子ゲル12,14が膨潤した際に、対向する基板面と接触することにより体積変化が阻害される場合がある。従って、このような体積変化の阻害を防ぐ為に、スペーサー粒子やフィルム状のスペーサーを基板20,20’間に挟み込むことにより、高分子ゲル12,14の膨潤時の粒径よりも大きいギャップを確保することが好ましい。
【0115】
該スペーサー粒子、該フィルム状スペーサーなどの部材、あるいは、基板20及び/又は基板20’の表面を立体的に加工した凸部のような構造体などは、高分子ゲル12,14の応答特性の低下及び体積変化の阻害を引き起こすものでなければ特に限定されないが、例えば、球、立方体、柱状のものなどの独立した形状のものが好ましく用いられる。また、連続した形状を有する部材や構造体を使用することも出来る。この場合、それらの形状は、安定して間隙を維持できる形状であれば特に限定されず、主に格子状、ハニカム状などの多角形を始めとして、様々な形状を適用することが出来る。前記部材は、吸脱液体16に対して化学的に安定な材料であれば特に限定されず、例えば、樹脂、金属、金属酸化物、ガラスなどが適用できる。
【0116】
基板20,20’としては、ポリエステル、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、セルロース誘導体などの高分子のフィルムや板状基板、ガラス基板、金属基板、セラミック基板などの無機基板を使用することができる。
【0117】
なお、基板20,20’のうち少なくとも一方は、光学的に透明であることが、光学素子として機能させる上で必要である。また、透過型光学素子の場合は、双方の基板が透明であることが好ましい。
基板20,20’の厚みや大きさは、所望する光学素子によって様々なものが利用でき、特に限定されないが、厚みの好ましい範囲としては、10μmから20mmである。
【0118】
本発明の光学素子は、例えば気温の変化、太陽光量の変化など自然エネルギーによって調光や表示を行うことができるが、刺激付与手段を設けることで、能動的に調光することもできる。この場合、刺激付与手段は、高分子ゲルに実質的に温度変化やpH変化等の各種刺激を付与するものであり、熱刺激付与手段、電気刺激付与手段、光刺激付与手段、電磁波刺激付与手段、磁場刺激付与手段などを選択することができる。
【0119】
熱刺激付与手段としては、特に通電発熱抵抗体が好ましく適用され、具体的にはNi−Cr合金などに代表される金属層、硼化タンタル、窒化タンタル、酸化タンタルやITOなどの金属酸化物層、カーボン層などに代表されるの発熱抵抗体層が好ましく用いられ、これらの通電発熱抵抗体に配線し電圧を印加することにより、通電発熱抵抗体を発熱させることができる。
あるいは、後述する電極に配線しパルス電圧を印加することにより、電極を発熱させることもできる。
【0120】
前記通電発熱抵抗体の構成は、単純マトリックス型あるいは画素別分割型などが適用できる。なお、該画素別分割型の場合には、前記通電発熱抵抗体は片方の基板表面のみに設けられていればよい。
【0121】
電気刺激付与手段としては、銅、アルミニウム、銀、プラチナなどに代表される金属膜からなる電極、酸化スズ、酸化スズ−酸化インジウム(ITO)に代表される金属酸化物からなる電極、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアセン類、ポリアセチレン類などに代表される導電性高分子からなる電極、高分子と前述の金属や金属酸化物の粒子との複合材料からなる電極などが好ましく用いられる。
これらの電極は、単純マトリックス駆動用に配線されていてもよいが、薄膜トランジスタ(TFT)素子あるいは、MIM素子やバリスタなどの二端子素子などのスイッチング素子として配線することもできる。
【0122】
また、光刺激付与手段としては、レーザー、LED、ELなどの発光素子層を用いることができる。また、磁場刺激付与手段や電磁波刺激付与手段としては、電磁コイルや電極等を設けることなどで実現できる。
【0123】
また、前記した刺激付与手段は、パターン化、セグメント化させて、任意の部位を調光させることも好ましく実施される。また、これらのパターンに対応して特定の特性の高分子ゲルを配置(固定)することも好ましく実施される。
図3(A)あるいは図4(A)に示す構成の光学素子には、その他、様々な層を形成しても構わない。例えば、光学素子の保護を目的とした保護層、防汚染層、紫外線吸収層、帯電防止層などが挙げられる。
【0124】
図3(A)あるいは図4(A)に示す構成の光学素子においては、端部が封止部材22で封止されていることが望ましい。封止部材22で端部を封止することにより、吸脱液体16の蒸発を防止することができ、光学素子全体としての耐久性が向上する。封止部材22は、光学素子の端部全体を覆う状態で形成されていてもよい。
【0125】
また、封止部材22により、基板20と基板20’との端部を封止する場合、図3(A)に示した封止部材22を基板20と基板20’とが互いに向き合う面の間に挟み込んで封止する形態の他に、封止部材22により基板20と基板20’の端面を覆うように封止する形態をとることができる。あるいは、前記2者の形態を組合せて封止してもよい。
【0126】
封止部材22の材料としては、特に限定されないが、例えばガラス、セラミックのような無機材料や、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートやこれらの共重合体等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテルサルホン、ポリサルホン、ポリイミド、ポリアリレート等が使用できる。なおこれら封止部材の材料は、ガスバリア性の高いものが好ましく使用でき、特に樹脂の場合は内部に含まれる液体蒸気のガスバリア性の高いものが好ましい。また、封止部材22の材料としては、前記端部に塗布後、放置・加熱・紫外線照射等の手段により硬化するものを用いることが好ましく、通常の接着剤、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等を挙げることができる。なお、封止部材22の材料は、高分子ゲル12,14や吸脱液体16に対して劣化や変性等の悪影響を及ぼさないものであることが好ましい。
【0127】
封止方法は、光学素子の開口部面積の確保、光学素子組み立て時の加工コスト等を考慮すると、1層の封止部材による封止が好ましい。
1層で封止を行うときの封止部材22としては、末端に反応基を有するイソブチレンオリゴマーを主体とした熱硬化型弾性シーリング材等の使用が例示できる。また、2層で封止を行うときの封止部材22としては、調光組成物18と接触する1次封止部材にポリイソブチレン系シーラント等が、2次封止部材としてアクリル樹脂等が例示できる。
【0128】
さらに、基板20と基板20’との端部を封止する場合、特定の開口部を除いて封止した後、該開口部から減圧注入法等で吸脱液体16を注入し、その後、前記開口部を封止することが好ましい。
なお、本発明の封止部材22および封止方法は上記例示に限定されるものではなく、多種多様なものが選択でき、かつ、それらを組み合わせて使用してもよい。
【0129】
次に、図3(A)及び図4(A)に示す光学素子の構成を基本とした他の構成例を、それぞれ図3(B)及び図4(B)に示す。なお、図3(B)及び図4(B)に付された百番台の符号番号の下2桁の数字と、図3(A)及び図4(A)に付された符号の数字と、が一致している部材は同一の機能を有するものである。
【0130】
図3(B)の光学素子150及び図4(B)の光学素子160は、図3(A)及び図4(A)に示した光学素子の構成に加えて、刺激付与手段123と、スペーサー粒子124を有するものである。刺激付与手段123は基板120と基板120’の向かい合う2つの面の両方に形成されている。但し、刺激付与手段123は、この向かい合う2つの面の片方のみに形成されていてもよい。また、スペーサー粒子124は基板120と基板120’との間に配置されている。なお、基板120及び/又は基板120’表面に刺激付与手段123が設けられており、支持体を基板120と基板120’との間に配置しない場合は、高分子ゲル112及び高分子ゲル114は刺激付与手段123の表面に固定される。
【0131】
なお、基板120及び/又は基板120’と調光組成物層18とが接しない側の面に、保護層、防汚層、紫外線遮蔽層、帯電防止層等の他の構成層を設けてもよい。
また、図3(A)及び図4(A)に示した光学素子では、基板120と基板120’とが、互いに向き合う面の間に封止部材22を挟み込んで封止されているが、図3(B)の光学素子150及び図4(B)の光学素子160は封止部材22により基板20と基板20’の端面を覆うように封止されている。
【0132】
このような構成を有する光学素子を、図5に示すように2つ以上重ね合わせて、1つの光学素子とすることも可能である。図5は本発明の光学素子を組合せた構成例を示す模式断面図である。図5に示す光学素子170は、図4(B)に示す光学素子160を2枚組合せて2層構成にしたものである。但し、光学素子150及び/又は光学素子160を2枚以上組合せて2層以上の複層構成からなる光学素子とすることも可能である。
【0133】
図5に示す光学素子170では、1例として、黒、シアン、マゼンタ、及び、イエローの4色の色彩を有する色材を、別々な高分子ゲル中に含有させた、黒色色材含有高分子ゲル131、シアン色材含有高分子ゲル132、マゼンダ色材含有高分子ゲル133、及び、イエロー色材含有高分子ゲル134を用いた構成である。このような構成により、フルカラーの色彩表示も可能となる。
【0134】
次に、図3(A)に示す光学素子を事例に、その代表的な作製方法を説明する。
2枚の基板20,20’を用意し、この少なくとも一方の基板20表面に、前記いずれかの方法で、粒子状の高分子ゲル12,14を固定する。次に、基板20をもう一方の基板20’と、一定の間隔を設けて貼り合わせてセルを作製する。この時の基板20,20’間の間隔は、一般的には、5μm〜10mmから選択される。
【0135】
このように2枚の基板20,20’の間隔を設定するためには、▲1▼所望の間隙となるような大きさのスペーサー粒子を基板20および/または基板20’に散布する、▲2▼フィルムスペーサーを基板20および20’間に挟み込む、▲3▼基板20等表面に基板20および20’を貼り合わせた際、所望の間隙が生ずるような形状の立体的な構造体を形成しておく、などの手段が好ましいものとして挙げられる。なお、2枚の基板20および20’を貼り合わせる際、特定の開口部を除き周囲を接着剤、紫外線硬化樹脂、あるいは熱硬化樹脂で封止することが好ましい。一部残された開口部から減圧注入法等で吸脱液体を注入し、その後、開口部を封止することで、図3(A)に示す構成の光学素子を作製することができる。
【0136】
なお、図3(A)に示す構成の光学素子を作製する際に、基板20及び/又は基板20’として、図3(B)に示す光学素子150のように予めこれら基板の表面に刺激付与手段123が設けられたものを用いてもよい。また、基板20と基板20’とを貼り合わせてセルを作製する際に、図3(B)に示す光学素子150のようにスペーサー粒子124を基板20と基板20’との間に配置することも好ましい。
【0137】
[本発明の光学素子の調光機能]
本発明の光学素子の調光機能について、図6を用いて説明する。図6(A)〜(D)は、本発明の光学素子の機能について説明するための模式図であり、基板30の表面に固定された、相互に色彩の異なる色材が内部に含まれる高分子ゲル32および34を、それぞれ1つずつのみ抜き出して模式的に表わしたものであり、高分子ゲル32、34の周囲に存在する吸脱液体は、省略されている。図6(A)は、高分子ゲル32、34双方とも膨潤した状態を、図6(B)は高分子ゲル32が収縮し高分子ゲル34が膨潤した状態を、図6(C)は高分子ゲル32が膨潤し高分子ゲル34が収縮した状態を、図6(D)は、高分子ゲル32、34双方とも収縮した状態を、それぞれ示すものである。
【0138】
第1の例として、高分子ゲル32、34双方とも温度変化に応答する高分子ゲルであり、高分子ゲル32は相転移温度TA以上において収縮する体積変化特性を有し、高分子ゲル34は相転移温度TB以上において膨潤する体積変化特性を有するものとする。
A=TBなる性質を持つ場合、温度TがTAよりも低い(T<TA(=TB))ときには、高分子ゲル32の色(例えば赤色)に(図6(C))、温度TがTAよりも高い(T>TA(=TB))ときには、高分子ゲル34の色(例えば青色)に(図6(B))、それぞれ呈色する。
【0139】
同様な構成で、TA<TBなる性質を持つ場合、温度TがTAよりも低い(T<TA)ときには、高分子ゲル32の色(例えば赤色)に(図6(C))、温度TがTAより高くTBよりも低い(TA<T<TB)ときには、高分子ゲル32、34双方とも収縮してほぼ無色に(図6(D))、温度TがTBよりも高い(TB<T)ときには、高分子ゲル34の色(例えば青色)に(図6(B))、それぞれ呈色する。
【0140】
さらに、同様な構成で、TA>TBなる性質を持つ場合、温度TがTBよりも低い(T<TB)ときには、高分子ゲル32の色(例えば赤色)に(図6(C))、温度TがTBより高くTAよりも低い(TB<T<TA)ときには、高分子ゲル32、34双方とも膨潤して高分子ゲル32および34の混合色(例えば紫色)に(図6(A))、温度TがTAよりも高い(TA<T)ときには、高分子ゲル34の色(例えば青色)に(図6(B))、それぞれ呈色する。
【0141】
第2の例として、高分子ゲル32、34双方ともに温度変化に応答する高分子ゲルであり、高分子ゲル32、34がともに昇温により収縮する体積変化特性を有し、相転移温度がそれぞれ順にTA、TBである場合を想定する。
A<TBなる性質を持つ場合、温度TがTAよりも低い(T<TA)ときには、高分子ゲル32、34双方とも膨潤して高分子ゲル32および34の混合色(例えば紫色)に(図6(A))、温度TがTAより高くTBよりも低い(TA<T<TB)ときには、高分子ゲル34の色(例えば青色)に(図6(B))、温度TがTBよりも高い(TB<T)ときには、高分子ゲル32、34双方とも収縮してほぼ無色に(図6(D))、それぞれ呈色する。
【0142】
第3の例として、高分子ゲル32は、温度変化に応答する高分子ゲルであり、相転移温度TA以上において収縮する体積変化特性を有するものとする。一方、高分子ゲル34は、pH変化に応答する高分子ゲルであり、相転移pHがpHA以上において膨潤する体積変化特性を有するものとする。
ここで、温度TがTAよりも低く(T<TA)、吸脱液体のpHがpHAよりも大きい(pH>pHA)場合、高分子ゲル32、34双方とも膨潤した状態となり、高分子ゲル32の色(例えば赤色)と高分子ゲル34の色(例えば青色)の混合色(この場合紫色)に呈色する(図6(A))。
【0143】
次に、温度TがTAよりも高く(T>TA)、吸脱液体のpHがpHAよりも大きい(pH>pHA)場合、高分子ゲル32が収縮し高分子ゲル34は膨潤したままの状態となり、高分子ゲル32の色(例えば赤色)が消え、高分子ゲル34の色(例えば青色)に呈色する(図6(B))。
【0144】
一方、温度TがTAよりも低く(T<TA)、吸脱液体のpHがpHAよりも小さい(pH<pHA)場合、高分子ゲル32は膨潤したままで、高分子ゲル34が収縮した状態となり、高分子ゲル34の色(例えば青色)が消え、高分子ゲル32の色(例えば赤色)に呈色する(図6(C))。
【0145】
また、温度TがTAよりも高く(T>TA)、吸脱液体のpHがpHAよりも小さい(pH<pHA)場合、高分子ゲル32、34双方とも収縮した状態となり、ほぼ無色となる(図6(D))。
【0146】
なお、本発明の光学素子は、上記の事例に限定されず、様々な色や種類の高分子ゲルを使用することで、様々な色彩、色調や調光特性を呈示することができる。
以上、本発明の光学素子について、具体例を挙げて説明したが、本発明に上記した具体例に限定されるものではない。例えば、上記説明においては、第1の例では、同一の刺激種に応答し、相互に異なる体積変化特性を有する高分子ゲルを二種類用いた場合について、第2の例では、同一の刺激種に応答し、同一の体積変化特性を有し、相互に異なる相点移点を有する高分子ゲルを二種類用いた場合について、第3の例では、相互に異なる刺激種に応答する高分子ゲルを二種類用いた場合を主に説明した。
【0147】
しかし、高分子ゲルの種類としては三種類以上であってもよく、この場合において、それぞれ相互に異なる特性の調光用材料(例えば、それぞれ異なる色彩の色材)を内部に含むこととしてもよいし、一部または全部が、同一の特性の調光用材料(例えば、同一の色彩の色材)を含むもの、あるいは、調光用材料を含まないものであっても構わない。
【0148】
本発明の光学素子は、温度変化やpH変化などの各種の刺激の付与により色変化する、光散乱するなど幅広い波長において透過光量や反射光量を調節でき、多様な色彩を呈色できる、多彩なパターンを表示できるなどの特性を有するものである。したがって、本発明の光学素子は、調光板、調光フィルム、調光ガラス、表示素子、インテリア、温度センサー、玩具など、幅広い分野で応用可能な有用なものである。
【0149】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例で用いる高分子ゲルの調製について説明した後、これら高分子ゲルを用いた実施例について説明する。
[高温収縮ゲル粒子1の調製(高分子ゲルA)]
黒色顔料であるカーボンブラックを含有した高温収縮ゲル粒子1を、以下ようなプロセスによって製造した。
1次粒径約0.2μmのマイクロカプセル化カーボンブラック(大日本インキ化学工業社製)1.0g(固形分)、N−イソプロピルアクリルアミド5g、架橋剤としてメチレンビスアクリルアミド25mgを、蒸留水20mlに溶解したモノマー水溶液を調製し、これをよく窒素置換した。
【0150】
別途分散媒として、ソルビトール系界面活性剤(第一工業製薬製、ソルゲン50)5.0gをシクロヘキサン1000mlに溶解した溶液を調製し、これをよく窒素置換し、温度を30℃に設定した。
前記モノマー水溶液に、重合開始剤として過硫酸アンモニウム20mgを添加し、これを上記分散媒中に投入後、回転式攪拌羽根を用いて高速攪拌して乳化させた。乳化後、反応助剤であるテトラメチルエチレンジアミン0.6mlを少量ずつ添加した。攪拌しながら3時間重合を行った。その後、生成した黒色高分子ゲル粒子を回収し、純水で繰り返し洗浄を行った。
【0151】
得られた黒色高分子ゲル粒子(高温収縮ゲル粒子1)は、ほぼ球形であり、その体積平均粒径は、20℃において約50μmであった。20℃における純水吸水量は約40g/g(乾燥ゲル粒子1gあたり40gの純水を吸収する量)であった。本黒色高分子ゲル粒子は、加熱によって収縮する性質をもち、約34℃に相転移温度をもっていた。つまり、相転移温度よりも高温では収縮し、低温では膨潤する。この変化は可逆的であり、膨潤・収縮によって粒子の大きさは2倍以上変化することが分かった。
【0152】
[高温収縮ゲル粒子2の調製(高分子ゲルB)]
上記高温収縮ゲル粒子1とは相転移温度の異なる、フタロシアニン系青色顔料を含有した高温収縮ゲル粒子2を、以下ようなプロセスによって製造した。
1次粒径約0.2μmのマイクロカプセル化青色顔料(大日本インキ化学工業社製)1.0g(固形分)、N−イソプロピルメタクリルアミド5g、架橋剤としてメチレンビスアクリルアミド25mgを、蒸留水20mlに溶解したモノマー水溶液を調製し、これをよく窒素置換した。
【0153】
別途分散媒として、ソルビトール系界面活性剤(第一工業製薬製、ソルゲン50)5.0gをシクロヘキサン1000mlに溶解した溶液を調製し、これをよく窒素置換し、温度を30℃に設定した。
前記モノマー水溶液に、重合開始剤として過硫酸アンモニウム20mgを添加し、これを上記分散媒中に投入後、回転式攪拌羽根を用いて高速攪拌して乳化させた。乳化後、反応助剤であるテトラメチルエチレンジアミン0.6mlを少量ずつ添加した。攪拌しながら3時間重合を行った。その後、生成した青色高分子ゲル粒子を回収し、純水で繰り返し洗浄を行った。
【0154】
得られた青色高分子ゲル粒子(高温収縮ゲル粒子2)は、ほぼ球形であり、その体積平均粒径は、20℃において約50μmであった。20℃における純水吸水量は約35g/g(乾燥ゲル粒子1gあたり35gの純水を吸収する量)であった。本青色高分子ゲル粒子は、加熱によって収縮する性質をもち、約47℃に相転移温度をもっていた。つまり、相転移温度よりも高温では収縮し、低温では膨潤する。この変化は可逆的であり、膨潤・収縮によって粒子の大きさは2倍以上変化することが分かった。
【0155】
[高温膨潤ゲル粒子1の調製(高分子ゲルC)]
赤色顔料を含有した、上記高温収縮ゲル粒子1および2とは逆の体積変化特性をもつ高温膨潤ゲル粒子1を、以下ようなプロセスによって製造した。
1次粒径約0.2μmのマイクロカプセル化赤色顔料(大日本インキ化学工業社製)1.0g(固形分)、アクリルアミド5g、架橋剤としてメチレンビスアクリルアミド10mgを、蒸留水20mlに溶解したモノマー水溶液を調製し、これをよく窒素置換した。
【0156】
別途分散媒として、ソルビトール系界面活性剤(第一工業製薬製、ソルゲン50)5.0gをシクロヘキサン1000mlに溶解した溶液を調製し、これをよく窒素置換し、温度を30℃に設定した。
前記モノマー水溶液に、重合開始剤として過硫酸アンモニウム20mgを添加し、これを上記分散媒中に投入後、回転式攪拌羽根を用いて高速攪拌して乳化させた。乳化後、反応温度を60℃に設定し、5時間重合を行った。その後、生成した赤色高分子ゲル粒子を回収し、純水で繰り返し洗浄を行った後、乾燥させたところ約6gの粒子が得られた。
【0157】
得られた乾燥粒子は、ほぼ球形であり、その体積平均粒径は約30μmであった。また、20℃における純水吸水量は約20g/g(乾燥ゲル粒子1gあたり20gの純水を吸収する量)であった。
次に、アクリル酸4g、架橋剤としてメチレンビスアクリルアミド4mg、過流酸アンモニウム20mgおよび蒸留水16mlを混合した水溶液を調製した。これに先に合成したポリアクリルアミドの赤色高分子ゲル粒子1.0gを添加し、よく窒素置換した。さらに約1時間放置し、赤色高分子ゲルにアクリル酸系水溶液を十分に含浸させた。これを60℃に加熱し、5時間重合を行い、IPN高分子ゲルを合成した。
【0158】
得られたIPNゲル粒子(高温膨潤ゲル粒子1)は、加熱によって膨潤する性質をもち、約35℃に相転移温度をもっていた。つまり、相転移温度よりも低温では収縮し、高温では膨潤する。この変化は可逆的であり、膨潤・収縮によって粒子の大きさは2倍以上変化することが分かった。
【0159】
[pH変化応答性膨潤ゲル粒子の調製(高分子ゲルD)]
pH変化に応答し、相転移pH以上で膨潤する性質を有し、青色の色材を含有する高分子ゲル粒子を以下のようなプロセスによって製造した。
500mlのセパラブルフラスコ内で、アクリルアミド0.5質量部、アクリル酸0.5質量部、色材として青色顔料分散液(大日本インキ化学工業社製、マイクロカプセル化顔料分散液MCC−44−T:固形分を13.4質量%含有)3.194質量部、架橋剤としてメチレンビスアクリルアミド0.005質量部、蒸留水2.400質量部を混合し十分に窒素置換した後、5.0質量%の過硫酸アンモニウム水溶液0.526質量部を添加し十分に攪拌混合した。
【0160】
次に、界面活性剤としてSO−15R(ニッコーケミカルズ社製)を2.900質量部含有する313.567質量部のシクロヘキサン溶液を注入した。この混合液を20℃、1200rpmで30分間攪拌し懸濁した後、60℃の水浴に浸し、300rpmで3時間攪拌保持することで重合反応を行い、ほぼ球形の粒子状の青色調光組成物を得た。得られた青色調光組成物はアセトンで洗浄した後、乾燥回収した。このとき、得られた粒子状の青色調光組成物の体積平均粒径は、約20μmであった。
【0161】
このようにして得られた青色調光組成物(pH変化応答性膨潤ゲル粒子)は、光学顕微鏡で観察した結果、pH2の塩酸水溶液中において約3g/g(乾燥ゲル粒子1gあたり、3gの水を吸収する量)の吸水状態を示していたが、pH10の水酸化ナトリウム水溶液中では約80g/gの吸水状態を示し、pH10においては体積がpH2と比較して約20倍に膨潤していた。このように、前記青色調光組成物は、溶液のpHに依存して体積が変化するpH変化応答性を有することを確認した。なお、相転移pHは6〜8のpH範囲にあった。つまり、相転移pHよりも、高いpHでは膨潤し、低いpHでは収縮する特性を有することが確認された。また、この体積変化(膨潤・収縮)は可逆的であった。
【0162】
[高温収縮ゲル粒子3の調製(高分子ゲルE)]
温度変化に応答し、相転移温度以上で収縮する性質を有し、赤色の色材を含有する高分子ゲル粒子を以下のようなプロセスによって製造した。
500mlのセパラブルフラスコ内で、N−イソプロピルアクリルアミド1質量部、色材として赤色顔料分散液(大日本インキ化学工業社製、マイクロカプセル化顔料分散液MCM−44−T:固形分を13.4質量%含有)3.194質量部、架橋剤としてメチレンビスアクリルアミド0.005質量部、蒸留水2.400質量部を混合し十分に窒素置換した後、5.0質量%の過硫酸アンモニウム水溶液0.526質量部を添加し十分に攪拌混合した。
【0163】
次に、界面活性剤としてSO−15R(ニッコーケミカルズ社製)を2.900質量部含有する313.567質量部のシクロヘキサン溶液を注入した。この混合液を20℃、1200rpmで30分間攪拌し懸濁した後、反応助剤であるテトラメチルエチレンジアミンを8.5質量%のシクロヘキサン溶液として0.700質量部添加し十分に攪拌混合した。その後、30℃の水浴に浸し、300rpmで3時間攪拌保持することで重合反応を行い、赤色顔料を含有したN−イソプロピルアクリルアミドゲル粒子(赤色調光組成物)を得た。得られた赤色調光組成物はアセトンおよび蒸留水で十分に洗浄した後、蒸留水中で保存した。このとき、得られた赤色調光組成物の体積平均粒径は、蒸留水中で20℃において約70μmであった。
【0164】
このようにして得られた赤色調光組成物(高温収縮ゲル粒子3)は、光学顕微鏡で観察した結果、蒸留水中で、20℃において約40g/gの吸水状態を示していたが、50℃では約3g/gの吸水状態を示し、20℃においては体積が50℃と比較して約10倍に膨潤していた。このように、前記赤色調光組成物は、温度変化の付与により体積が変化する温度変化応答性を有することを確認した。なお、相転移温度は30〜40℃の温度範囲にあった。つまり、相転移温度よりも低温では膨潤し、高温では収縮する特性を有することが確認された。また、この体積変化(膨潤・収縮)は可逆的であった。
【0165】
[高温膨潤ゲル粒子2の調製(高分子ゲルF)]
温度変化に応答し、相転移温度以上で膨潤する性質を有し、黄色の色材を含有する高分子ゲル粒子を以下のようなプロセスによって製造した。
500mlのセパラブルフラスコ内で、アクリルアミド1質量部、色材として黄色顔料分散液(大日本インキ化学工業社製、マイクロカプセル化顔料分散液MCY−44−T:固形分13.5質量%含有)3.170質量部、架橋剤としてメチレンビスアクリルアミド0.005質量部、蒸留水2.424質量部を混合し十分に窒素置換した後、5.0質量%の過硫酸アンモニウム水溶液0.526質量部を添加し十分に攪拌混合した。
【0166】
次に、界面活性剤としてSO−15R(ニッコーケミカルズ社製)を2.900質量部含有する313.567質量部のシクロヘキサン溶液を注入した。この混合液を20℃、1200rpmで30分間攪拌し懸濁した後、60℃の水浴に浸し、300rpmで3時間攪拌保持することで重合反応を行い、ほぼ球形の粒子状の黄色アクリルアミドゲルを得た。得られた黄色アクリルアミドゲル粒子はアセトンで洗浄した後、乾燥回収した。
【0167】
次に、アクリル酸1.5質量部、蒸留水3.0質量部の混合溶液を十分に窒素置換した後、1.2質量%の過硫酸アンモニウム水溶液0.506質量部を添加し十分に攪拌混合した溶液を作製した。次に、この溶液に、先に得られた黄色アクリルアミドゲル粒子0.20質量部を添加し十分に混合した後、60℃の水浴に浸し3時間保持することで重合反応を行い、粒子状の黄色調光組成物を得た。得られた黄色調光組成物は蒸留水で十分に洗浄した。このとき、得られた黄色調光組成物の体積平均粒径は、蒸留水中で20℃において約30μmであった。
【0168】
また、このようにして得られた黄色調光組成物(高温膨潤ゲル粒子2)は、光学顕微鏡で観察した結果、蒸留水中で、20℃において約3g/gの吸水状態を示していたが、50℃では約40g/gの吸水状態を示し、50℃においては体積が20℃と比較して約10倍に膨潤していた。このように、前記黄色調光組成物は、温度変化の付与により体積が変化する温度変化応答性を有することを確認した。なお、相転移温度は30〜40℃の温度範囲にあった。つまり、相転移温度よりも高温では膨潤し、低温では収縮する特性を有することが確認された。また、この体積変化(膨潤・収縮)は可逆的であった。
【0169】
調光組成物例1>
相転移温度の異なる高温収縮ゲル(高分子ゲルAおよび高分子ゲルB)を用いて、調光組成物を以下のプロセスで作製した。
蒸留水10mlに非イオン性界面活性剤(花王製、エマルゲン909)50mgを溶解させ、これに上記得られた膨潤状態の高分子ゲルAおよび高分子ゲルBを各0.2g添加した、粒子分散水溶液(調光組成物)を調製した。これをアンプル容器に入れ、温度変化による色彩の変化を観測した。温度25℃では、アンプル容器中の2種類の高分子ゲルはともに膨潤しており、溶液は黒色を呈していた。温度を40℃まで昇温すると、35℃で高分子ゲルAが収縮し、溶液は青色に変化した。さらに50℃まで昇温すると、47℃で高分子ゲルBも収縮し、溶液はほぼ透明となった。また、降温により可逆的に色が変化することも確認できた。昇温・降温のサイクル(25℃→50℃→25℃で1サイクル)を100サイクル以上行ったところ、何ら劣化することはなかった。
【0170】
該調光組成物の耐久性を評価するために、ウェザーメーター装置(東洋精機製、サンテスト)を用いて、紫外線を積算時間で100時間照射した。その結果、調光組成物の変性、変色や劣化は確認されず、非常に優れていることが確認できた。
以上から、本例の調光組成物は多様の色彩を呈し、かつ優れた安定性、耐久性をもつものであることが確認された。
【0171】
調光組成物例2>
体積変化特性の異なる高温収縮ゲル(高分子ゲルBおよび高分子ゲルC)を用いて、調光組成物を以下のプロセスで作製した。
蒸留水10mlに非イオン性界面活性剤(花王製、エマルゲン909)50mgを溶解させ、これに上記得られた膨潤状態の高分子ゲルBおよび高分子ゲルCを各0.2g添加した、粒子分散水溶液(調光組成物)を調製した。これをアンプル容器に入れ、温度変化による色彩の変化を観測した。温度25℃では、アンプル容器中の2種類の高分子ゲルのうち、高分子ゲルBのみが膨潤しており、溶液は青色を呈していた。温度を40℃に昇温すると、35℃で高分子ゲルCも膨潤し、溶液は紫色に変化した。さらに、温度を50℃まで昇温すると、47℃で高分子ゲルBが収縮し、溶液は赤色に変化した。また、降温により可逆的に色が変化することも確認できた。昇温・降温のサイクル(25℃→50℃→25℃で1サイクル)を100以上行ったところ、何ら劣化することはなかった。
【0172】
該調光組成物の耐久性を評価するために、ウェザーメーター装置(東洋精機製、サンテスト)を用いて、紫外線を積算時間で100時間照射した。その結果、調光組成物の変性、変色や劣化は確認されず、非常に優れていることが確認できた。
以上から、本例の調光組成物は多様の色彩を呈し、かつ優れた安定性、耐久性をもつものであることが確認された。
【0173】
<実施例
調光樹脂組成物からなる光学素子を、以下のプロセスで作製した。
フッ素系の紫外線硬化剤(日本化薬製、KAYARAD FAD−515)のフッ素系界面活性剤(セイミケミカル製、Surflon S−383)5質量%溶液20gに対して、前記得られた高分子ゲルAおよび高分子ゲルBの各粒子を0℃に冷却した膨潤状態のもので各々4gずつを混合し、これを容器に入れウェーブローターで回転させて分散させ、分散溶液Xを得た。
得られた分散溶液Xを、凹部として一辺5cm、深さ0.2cmの型に注入し、これに紫外線照射装置を用いて紫外線(120W/cmランプを20cm離して照射)を2分間照射し硬化させ、フィルム状の調光樹脂組成物を作製し、これを型から取り出して光学素子を得た。
【0174】
得られたフィルム状の光学素子を顕微鏡にて観察したところ、紫外線硬化樹脂の内部に各高分子ゲルの膨潤粒子が、相分離状に隔離、分散して存在することが確認できた。この光学素子を温度変化させて評価すると、調光組成物例1と同様に黒色、青色、無色の色変化が可逆的に起こることが確認できた。また、昇温・降温のサイクル(25℃→50℃→25℃で1サイクル)を100サイクル以上行っても、何ら劣化することはなかった。
【0175】
該光学素子の耐久性を評価するために、ウェザーメーター装置(東洋精機製、サンテスト)を用いて、紫外線を積算時間で100時間照射した。その結果、調光樹脂組成物の変性、変色や劣化は確認されず、非常に優れていることが確認できた。
以上から、本実施例の光学素子は多様の色彩を呈し、かつ優れた安定性、耐久性をもつものであることが確認された。
【0176】
<実施例
実施例における調光樹脂組成物を用いた調光フィルム(光学素子)を、以下のプロセスで作製した。
実施例の調光樹脂組成物の作製において得られた分散溶液Xを、ブレードコーターを用いて、厚み100μmの透明ポリエステルフィルム表面(片面)に塗布し、これに粒径100μmのスペーサー粒子(積水ファインケミカル製、ミクロパールSP)0.2g/m2を散布したもう一枚の厚み100μmの透明ポリエステルフィルムを、スペーサー粒子が散布された側と分散溶液Xが塗布された側とが接するように貼り合わせ、圧着させた後に、紫外線(120W/cmランプを20cm離して照射)を2分間照射して硬化を行い、調光フィルムを作製した。
【0177】
得られた調光フィルムを温度変化させて評価すると、調光組成物1と同様に黒色、青色、無色の色変化が可逆的に起こることが確認できた。また、昇温・降温のサイクル(25℃→50℃→25℃で1サイクル)を100サイクル以上行っても、何ら劣化することはなかった。
【0178】
該調光フィルムの耐久性を評価するために、ウェザーメーター装置(東洋精機製、サンテスト)を用いて、紫外線を積算時間で100時間照射した。その結果、組成物の変性、変色や劣化は確認されず、非常に優れていることが確認できた。
以上から、本発明によれば、多様の色彩を呈し、かつ優れた安定性、耐久性をもつ調光フィルムが提供できることが確認された。
【0179】
<実施例
相転移温度の異なる高温収縮ゲル(高分子ゲルAおよび高分子ゲルB)を用いて、光学素子を以下のプロセスで作製した。
ガラス基板(大きさ50mm×50mm、厚み3mm)を2枚用意した(以下、一方のガラス基板は単に「ガラス基板」と表記し、他方は「対向ガラス基板」と表記する。)。ガラス基板の表面には、γ−アミノプロピルトリエトキシシランを塗布、乾燥させることで高分子ゲルの粒子との粘着層(固定化剤層)を形成した。
【0180】
一方、高分子ゲルの粒子を固定するために、高分子ゲルAおよび高分子ゲルBを、それぞれテトラヒドロフラン(THF)溶媒で溶媒置換を行い、固形分として約1質量%のTHF分散溶液とした。さらに各分散溶液を当量混合した。
【0181】
プラスチック容器内に、前記ガラス基板を、接着層(固定化剤層)が形成された面を上面として配置した。これに先の分散溶液を加え、インキュベーターで25℃において5時間振とうさせた。振とう後、基板をTHFで洗浄し、さらに蒸留水に浸漬して再度溶液を置換した。
【0182】
ガラス基板表面を顕微鏡観察すると、各色の高分子ゲルの粒子がほぼ同じ割合で固定されていた。また、各粒子が固定されたガラス基板表面の面積率は、20℃において合計で約70%であった。ここで、「面積率」とは、ガラス基板表面における粒子の投影面積の、全ガラス基板表面に対する面積率と定義される(以下同様)。
【0183】
対向ガラス基板表面(片面)に粒径100μmの樹脂スペーサー粒子(積水ファインケミカル製、ミクロパールSP)0.2g/m2を散布した後、一部の開口部を除き外周部に紫外線硬化樹脂を塗布し、前記高分子ゲルの粒子が固定されたガラス基板と、樹脂スペーサー粒子が散布された側と高分子ゲルの粒子が固定された側とが接するように貼り合わせ、紫外線を照射して外周部を接着させ、セルを形成した。
【0184】
次に、セル内部に高分子ゲルの吸脱液体として蒸留水を注入し、開口部をアクリル系紫外線硬化樹脂(日本化薬製、KAYARAD R−381I)にて封止し、光学素子を作製した。
得られた光学素子は、温度25℃では、2種類の高分子ゲルの粒子はともに膨潤しており、光学素子は黒色を呈していた。波長400nm〜800nmの範囲である光の平均透過率は、約40%であった。温度を40℃に昇温すると、35℃で高分子ゲルAが収縮し、光学素子は青色に変化した。さらに50℃まで昇温すると、47℃で高分子ゲルBも収縮し、光学素子はほぼ透明となった。この時の前記平均透過率は約80%であった。昇温・降温のサイクル(25℃→50℃→25℃で1サイクル)を100サイクル以上行ったところ、何ら劣化することはなかった。
【0185】
該光学素子の耐久性を評価するために、ウェザーメーター装置(東洋精機製、サンテスト)を用いて、紫外線を積算時間で100時間照射した。その結果、調光組成物の変性、変色や劣化は確認されず、非常に優れていることが確認できた。
以上から、本発明によれば、多様の色彩を呈し、かつ優れた安定性、耐久性をもつ光学素子が提供できることが確認された。
【0186】
<実施例
体積変化特性の異なる高温収縮ゲル(高分子ゲルB(青色)および高分子ゲルC(赤色))を用い、刺激付与手段として発熱抵抗体層が形成された光学素子を、以下のプロセスで作製した。
ガラス基板(大きさ50mm×50mm、厚み1.5mm)表面(片面)に抵抗値を最適化(500Ω/cm2)したITO層を全面に形成し、これをエッチング処理することで、幅5mm、長さ50mm、隣接間の距離が0.2mmとなるストライプ状の透明発熱抵抗体層を有する基板を作製した。さらに、該ストライプ状の発熱抵抗体層の各両端に配線を行った。該配線から発熱抵抗体層の各両端に、適当な電圧のパルス通電を行うことで、所望の温度に加熱できることを確認した。
【0187】
得られた基板の前記発熱抵抗体層側の面に、シランカップリング剤(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)溶液を塗布、乾燥させることで、高分子ゲルを固定するための結合層(固定化剤層)を形成した。
【0188】
先に、高分子ゲルC(赤色)の粒子を基板表面の結合層に固定した。具体的には、高分子ゲルCの粒子1.0g(膨潤時)を蒸留水100mlに分散し、これを、結合層が形成された面を上面として前記基板を設置した容器に投入し、60℃で24時間反応させた。反応後、基板表面を蒸留水で洗浄した。基板表面を顕微鏡観察すると、基板表面には高分子ゲルCの粒子が点在的に固定されていることがわかった。膨潤時(60℃)における基板表面の高分子ゲルCの面積率は約50%であった。
【0189】
次に、高分子ゲルB(青色)の粒子を基板表面の結合層(固定化剤層)に固定した。具体的には、高分子ゲルB1.0gを実施例と同様にしてTHF溶媒で溶媒置換した分散溶液として、これを用いて高分子ゲルCが固定された基板表面に、20℃の条件でさらに高分子ゲルBの粒子を、高分子ゲルCと同様の方法で固定した。高分子ゲルBの固定後、THFおよび蒸留水を用いて洗浄、溶液置換を行った。固定後の基板表面を観察すると、青色ゲル粒子がその膨潤時において約40%の面積率で固定化されていることがわかった。
【0190】
対向ガラス基板としてガラス基板(大きさ40mm×50mm、厚み1.5mm)を用意し、実施例と同様にして、ストライプ状の各発熱抵抗体の両端部が露出した状態となるように貼り合わせ、セルを形成した。
次に、セル内部に高分子ゲルの吸脱液体として蒸留水を注入し、開口部をアクリル系紫外線硬化樹脂(日本化薬製、KAYARAD R381I)にて封止し、光学素子を作製した。
【0191】
ストライプ状の発熱抵抗体層に通電のための配線を行い、通電による色変化を観察した。通電前の光学素子は、高分子ゲルBが膨潤し、かつ高分子ゲルCが収縮しているため、青色であった。短周期のパルス(約4W)を通電すると、光学素子は約40℃まで昇温し、高分子ゲルCが膨潤して、高分子ゲルBはもともと膨潤しているため、光学素子は紫色に変化した。また、長周期のパルス(約8W)を通電すると、光学素子は約50℃まで昇温し、高分子ゲルCが膨潤し高分子ゲルBが収縮することで、光学素子は色に変化した。このように印加パルスの周期の違いによって、発熱抵抗体層の発熱温度を種々変え、各種の色変化が得られることが明らかとなった。
【0192】
通電時には、上記のように色変化するが、通電を止める(OFF)と再び青色の初期状態に戻った。このような通電サイクル(OFF→短周期のパルス→長周期のパルス→OFF、で1サイクル)を10000サイクル実施した後も、光学素子には、何ら劣化は確認できなかった。
【0193】
該光学素子の耐久性を評価するために、ウェザーメーター装置(東洋精機製、サンテスト)を用いて、紫外線を積算時間で100時間照射した。その結果、調光組成物の変性、変色や劣化は確認されず、非常に優れていることが確認できた。
以上から、本発明によれば、多様の色彩を呈し、かつ優れた安定性、耐久性をもつ光学素子が提供できることが確認された。
<実施例
相互に異なる刺激種に応答する、pH変化応答性膨潤ゲル粒子(高分子ゲルD)および高温収縮ゲル粒子3(高分子ゲルE)、を用いた光学素子を、以下のプロセスで作製した。
最初に、基板として、大きさが10cm×10cmで厚さ0.7mmの透明なガラス基板(コーニンググラスワークス社製、7059ガラス基板)を準備し、該ガラス基板の片方の表面に透明電極材料として膜厚が約100nmの酸化スズ膜をスパッタリング法により形成した。次に、このガラス基板表面に形成された酸化スズ膜を、フォトリソグラフィ法によりエッチングし、幅20μmで間隔が120μmの単純マトリックス駆動用のライン電極を形成することにより、電極付きガラス基板を得た。さらに、この電極付きガラス基板の電極が設けられた側の表面(電極面)に、反応性シランカップリング剤(3−アミノプロピルトリメトキシシラン)の2%水溶液を塗布し、約1時間反応させて、調光組成物を固定するための固定化剤層を形成した。このようにして、電極面に固定化剤層を形成した電極付きガラス基板を2枚作製した。
【0194】
次に、該固定化剤層が電極面に形成された電極付きガラス基板を、粒子状青色調光組成物(高分子ゲルD)のpHが4〜6に調整されている分散液(固形分は約1質量%)中に浸して12時間放置し、粒子状青色調光組成物を電極付きガラス基板の電極面に固定した。その後、前記電極付きガラス基板の電極面を蒸留水で洗浄することにより、該電極付きガラス基板の電極面に結合していない前記青色調光組成物を取り除いた。この洗浄後の電極付きガラス基板表面を、pH10の水酸化ナトリウム水溶液に浸した状態で、光学顕微鏡により観察すると、前記電極付きガラス基板の電極面に青色調光組成物がほぼ均一に密に固定されていた。
【0195】
次に、もう1枚の固定化剤層が電極面に形成された電極付きガラス基板を、粒子状赤色調光組成物(高分子ゲルE)をTHF(テトラヒドロフラン)に分散させた溶液(固形分は約1質量%)中に浸して12時間放置し、前記電極付きガラス基板の電極面に粒子状赤色調光組成物を固定した。その後、前記赤色調光組成物が電極面に固定された電極付きガラス基板をTHFおよび蒸留水で洗浄することでこの電極面に結合していない赤色調光組成物を取り除いた。この洗浄後の電極付きガラス基板表面を、20℃の蒸留水に浸した状態で、光学顕微鏡により観察すると、前記電極付きガラス基板の電極面に赤色調光組成物がほぼ均一に密に固定されていた。
次に、青色調光組成物が電極面に固定された電極付きガラス基板と、赤色調光組成物電極面に固定された電極付きガラス基板と、を互いの前記電極付き基板表面のライン電極が直交するように電極面を内側に対向させて貼り合わせ、セルを作製した。この際、互いに向き合う電極面のライン電極が形成されていないガラス表面同士がお互いに向き合う領域に、スペーサとしてアクリル樹脂製の直径約300μmの球(積水ファインケミカル社製、ミクロパールSP)を、前記2枚の電極付きガラス基板の間隔が保持できるよう適当量(約0.5個/cm2)配置した。このようにして作製したセルの周囲を、かかる周囲の一部を吸脱液体注入口として残す以外は、全てアクリル系紫外線硬化型樹脂(日本化薬社製、KAYARAD R−381I)により封止した。
【0196】
その後、前記セルの前記吸脱液体注入口から減圧注入法により、吸脱液体として0.0001N水酸化ナトリウム水溶液を該セル内部に注入し、その後、前記吸脱液体注入口をアクリル系紫外線硬化型樹脂(日本化薬社製、KAYARAD
R381I)により封止して光学素子を得た。
この光学素子は、常温で非通電状態であるpH10において、青色調光組成物および赤色調光組成物が共に膨潤しているために、紫色を呈していた。このとき、波長400nm〜800nmの範囲である光の平均透過率は約20%であった。
【0197】
次に、pH変化応答性の青色調光組成物が固定されている電極付きガラス基板の電極を陽極とし、対向する2枚の電極付きガラス基板の電極間に直流電圧5Vを印加したところ、すぐに青色調光組成物が収縮した。一方、pH変化応答性ではない赤色調光組成物は体積変化することなく膨潤状態を維持していた。そのため、光学素子は赤色を呈した。
このとき、波長400nm〜800nmの範囲である光の平均透過率は約40%であった。その後、対向する2枚の電極付きガラス基板の電極間への直流電圧の印加を中止したところ、pH変化応答性の青色調光組成物が再び膨潤し、光学素子は紫色を呈した。
【0198】
次に、温度変化応答性の赤色調光組成物が固定されている電極付きガラス基板の電極のみに、10V/1msと100V/10msとの電圧変化を交互に繰り返すパルス電圧を印加すると、電極が発熱して周囲に固定されている赤色調光組成物が収縮した。一方、温度変化応答性ではない青色調光組成物は体積変化することなく膨潤状態を維持していた。そのため、光学素子は青色を呈した。
このとき、波長400nm〜800nmの範囲である光の平均透過率は約40%であった。その後、赤色調光組成物が固定されている電極付きガラス基板の電極へのパルス電圧の印加を中止したところ、温度変化応答性の赤色調光組成物が再び膨潤し、光学素子は紫色を呈した。
【0199】
次に、pH変化応答性の青色調光組成物が固定されている電極付きガラス基板の電極を陽極とし、対向する2枚の電極付きガラス基板の電極間に直流電圧5Vを印加し、温度変化応答性の赤色調光組成物が固定されている電極付きガラス基板の電極に、10V/1msと100V/10msとの電圧変化を交互に繰り返すパルス電圧を印加すると、両方の調光組成物が収縮し光学素子はほぼ透明な状態となった。
このとき、波長400nm〜800nmの範囲である光の平均透過率は約80%であった。その後、直流電圧とパルス電圧の印加を共に中止したところ、両方の調光組成物が再び膨潤し、光学素子は紫色を呈した。
【0200】
このように、本実施例では、対向する2枚の基板表面に設けられた刺激付与手段表面に、相互に異なる刺激に応答し、且つ、相互に異なる色彩を有する2種類の調光組成物を、別々に固定することにより、該調光組成物の体積変化を独立して制御することができ、さらに、各種の色変化が得られることが明らかになった。
また、本実施例で得られた光学素子への通電による前記2種類の調光組成物の体積変化挙動は、両者共に可逆的に繰り返し10000回以上行うことができることを確認した。
さらに、本実施例で得られた光学素子に対して、スガ試験機製のサンシャインウエザメータ(WEL−SUN−HC型)を用いて、ブラックパネル温度63℃の条件下で100時間の耐候性試験を行った。その結果、前記2種類の調光組成物の変性や褪色がなく、これらの変性や褪色に起因した前記光学素子の調光特性の劣化も確認されなかった。
以上のように、本発明によれば、多様な色彩を呈し、かつ優れた安定性、耐久性を有する光学素子が提供できることが確認された。
【0201】
<実施例
相互に異なる刺激種に応答する、pH変化応答性膨潤ゲル粒子(高分子ゲルD)および高温膨潤ゲル粒子2(高分子ゲルF)を用いた光学素子を、以下のプロセスで作製した。
最初に、黄色調光組成物(高分子ゲルF)を、以下のプロセスにてマイクロカプセル化処理した。
まず、黄色調光組成物(高分子ゲルF)を0.2質量%ポリアクリル酸水溶液中で60℃に加熱し、吸脱液体を十分に取り除いたゲル含浸液1.0質量部を調製した。次に、0.8質量部のポリスチレン(分子量250000)を10質量部のトリクロロメタンに溶解し得られた溶液に、先に準備したゲル含浸液を加え、50℃に保温したホモジナイザーを用いて攪拌し、ゲル乳化液を作製した。なお乳化中は、黄色調光組成物(高分子ゲルF)は膨潤状態であった。
【0202】
次に、5質量部のポリビニルピロリドン(分子量90000)および0.1質量部の炭酸カルシウム微粉末を添加した水溶液300mlを60℃に加熱し、そこに、先に調製したゲル乳化液を緩やかに攪拌しながら滴下した。その後、水溶液を徐々に加熱し70℃で1時間加熱してトリクロロメタンを留去し、黄色調光組成物(高分子ゲルF)の外周にポリスチレンマイクロカプセル膜を形成した。得られたマイクロカプセル化黄色調光組成物を、0.1Nの塩酸で洗浄後、蒸留水でさらによく洗浄した。
【0203】
このマイクロカプセル化黄色調光組成物は、マイクロカプセル化処理をする前の黄色調光組成物とほぼ同等の温度変化応答性を有していた。
次に、実施例と同様な方法により、固定化剤層を電極面に形成した電極付き基板を準備した。
さらに、青色調光組成物(高分子ゲルD)および上述のようにマイクロカプセル化処理した黄色調光組成物(高分子ゲルF)を、それぞれ別々の前記電極付きガラス基板の電極面に固定した。このとき、青色調光組成物(高分子ゲルD)の電極面への固定と、かかる固定後の電極面の洗浄は、実施例と全く同様な方法により行った。一方、マイクロカプセル化処理した黄色調光組成物(高分子ゲルF)の電極面への固定と、かかる固定後の電極面の洗浄も、実施例における赤色調光組成物(高分子ゲルE)と同様な方法により行った。
【0204】
マイクロカプセル化処理した黄色調光組成物(高分子ゲルF)が電極面に固定された前記電極付きガラス基板の電極面を、光学顕微鏡により観察すると、黄色調光組成物を含んだマイクロカプセルが該電極面にほぼ均一に密に固定されており、もう1枚の電極付きガラス基板表面に固定された赤色調光組成物についても同様であった。
次に、得られた赤色及び黄色の調光組成物がそれぞれ電極面に固定された前記電極付きガラス基板を用いて、実施例と同様にして、ガラス基板挟持タイプの光学素子を作製した。
【0205】
この光学素子は、常温で非通電状態であるpH10において、青色調光組成物が膨潤状態であり、黄色調光組成物が収縮状態であるために、青色を呈していた。このとき、波長400nm〜800nmの範囲である光の平均透過率は約40%であった。
【0206】
次に、pH変化応答性の青色調光組成物が固定されている電極付きガラス基板の電極を陽極とし、対向する2枚の電極付きガラス基板の電極間に直流電圧5Vを印加したところ、すぐに青色調光組成物が収縮した。一方、マイクロカプセル化処理された黄色調光組成物はpH変化に応答することなく収縮状態を維持していた。そのため、光学素子はほぼ透明な状態となった。
このとき、波長400nm〜800nmの範囲である光の平均透過率は約80%であった。その後、対向する2枚の電極付きガラス基板の電極間への直流電圧の印加を中止したところ、pH変化応答性の青色調光組成物が再び膨潤し、光学素子は青色を呈した。
【0207】
次に、温度変化応答性の黄色調光組成物が固定されている電極付きガラス基板の電極のみに、10V/1msと100V/10msとの電圧変化を交互に繰り返すパルス電圧を印加すると、電極が発熱して該電極面に固定されている黄色調光組成物が膨潤した。一方、温度変化応答性ではない青色調光組成物は体積変化することなく膨潤状態を維持していた。そのため、光学素子は緑色を呈した。
このとき、波長400nm〜800nmの範囲である光の平均透過率は約20%であった。その後、黄色調光組成物が固定されている電極付きガラス基板の電極へのパルス電圧の印加を中止したところ、温度変化応答性の黄色調光組成物が再び収縮し、光学素子は青色を呈した。
【0208】
次に、pH変化応答性の青色調光組成物が固定されている電極付きガラス基板の電極を陽極とし、対向する2枚の電極付きガラス基板の電極間に直流電圧5Vを印加し、温度変化応答性の黄色調光組成物が電極面に固定されている電極付きガラス基板の電極に、10V/1msと100V/10msとの電圧変化を交互に繰り返すパルス電圧を印加すると、青色調光組成物は収縮し黄色調光組成物が膨潤したことにより、光学素子は黄色を呈した。
このとき、波長400nm〜800nmの範囲である光の平均透過率は約40%であった。その後、直流電圧とパルス電圧の印加を共に中止したところ、青色調光組成物は再び膨潤し黄色調光組成物は再び収縮したことにより、光学素子は青色を呈した。
【0209】
このように、本実施例では、対向する2枚の基板表面に設けられた刺激付与手段表面に、相互に異なる刺激に応答し、且つ、相互に異なる色彩を有する2種類の調光組成物を、別々に固定することにより、該調光組成物の体積変化を独立して制御することができ、さらに、各種の色変化が得られることが明らかになった。
また、本実施例で得られた光学素子への通電による前記2種類の調光組成物の体積変化挙動は、両者共に可逆的に繰り返し10000回以上行うことができることを確認した。
さらに、本実施例で得られた光学素子に対して、スガ試験機製のサンシャインウエザメータ(WEL−SUN−HC型)を用いて、ブラックパネル温度63℃の条件下で100時間の耐候性試験を行った。その結果、前記2種類の調光組成物の変性や褪色がなく、これらの変性や褪色に起因した前記光学素子の調光特性の劣化も確認されなかった。
以上のように、本発明によれば、多様な色彩を呈し、かつ優れた安定性、耐久性を有する光学素子が提供できることが確認された。
【0210】
<実施例
同一の刺激種として温度変化に応答する、高温収縮ゲル粒子3(高分子ゲルE)および高温膨潤ゲル粒子2(高分子ゲルF)、を用いた光学素子を、以下のプロセスで作製した。
最初に、基板として厚さ0.7mmの透明なガラス基板(コーニンググラスワークス社製、7059ガラス基板)を用いて、このガラス基板に発熱抵抗層として、厚さが約50nmのITO膜をスパッタリング法により形成した。次に、このITO発熱抵抗層付きガラス基板をフォトリソグラフィ法でエッチングし、図7に模式的に示したような複数の正方形パターンのセグメント発熱抵抗体182をガラス基板180表面に形成した。この発熱抵抗層は、パルス状の電流を通電することで所望の温度に加熱することができる。
【0211】
次に、作製した発熱抵抗層付きガラス基板の発熱抵抗層を形成した面(発熱抵抗層面)に、実施例と同様な方法により固定化剤層を形成し、さらに、実施例と同様な方法により粒子状赤色調光組成物(高分子ゲルE)を発熱抵抗層面に固定した発熱抵抗層付きガラス基板を作製した。該発熱抵抗層付きガラス基板の発熱抵抗層面を、20℃の蒸留水に浸した状態で、光学顕微鏡により観察すると、赤色調光組成物が該発熱抵抗層面にほぼ均一に密に固定されていた。
【0212】
一方、実施例と同様に固定化剤層を発熱抵抗層面に形成したガラス基板を、黄色調光組成物(高分子ゲルF)を0.2質量%ポリアクリル酸水溶液中に分散した分散液(固形分は約1質量%)中に浸し、60℃で12時間放置し、前記黄色調光組成物を前記ガラス基板の発熱抵抗層面に固定した。その後、このガラス基板を蒸留水で洗浄することで該ガラス基板の発熱抵抗層面に結合していない前記黄色調光組成物を取り除いた。該発熱抵抗層付きガラス基板の発熱抵抗層面を、60℃に保温された0.2質量%ポリアクリル酸水溶液に浸した状態で、光学顕微鏡により観察すると、黄色調光組成物が該発熱抵抗層面にほぼ均一に密に固定されていた。
【0213】
次に、得られた赤色及び黄色の調光組成物がそれぞれ固定された発熱抵抗層付きガラス基板同士を、発熱抵抗層面を内側に対抗させて配置して貼り合わせ、セルを作製した。この際、この際、互いに向き合う発熱抵抗層面の発熱抵抗層が形成されていないガラス表面同士がお互いに向き合う領域に、スペーサとしてアクリル樹脂製の直径約500μmの球(積水ファインケミカル社製、ミクロパールSP)を、前記2枚の発熱抵抗層付きガラス基板の間隔が保持できるよう適当量(約0.5個/cm2)配置した。このようにして作製したセルの周囲を、かかる周囲の一部を吸脱液体注入口として残す以外は、全てアクリル系紫外線硬化型樹脂(日本化薬社製、KAYARAD R381I)により封止した。
その後、前記セルに減圧注入法により、吸脱液体として0.2質量%ポリアクリル酸水溶液を吸脱液体注入口より該セル内部に注入し、さらに、該吸脱液体注入口をアクリル系紫外線硬化型樹脂(日本化薬社製、KAYARAD R381I)により封止して光学素子を得た。
この光学素子は、常温で非通電状態において、内部の赤色調光組成物が膨潤状態であり、黄色調光組成物が収縮状態であるために、赤色を呈していた。このとき、波長400nm〜800nmの範囲である光の平均透過率は約40%であった。
【0214】
次に、温度変化応答性の赤色調光組成物が発熱抵抗層面に固定されている発熱抵抗層付きガラス基板表面の発熱抵抗層のみに、10V/1msと100V/10msとの電圧変化を交互に繰り返すパルス電圧を印加すると、発熱抵抗層が発熱して周囲に固定されている赤色調光組成物が収縮した。一方、対向面に固定されている温度変化応答性の黄色調光組成物は、十分に加熱されることがないために体積変化することなく収縮状態を維持していた。そのため、光学素子はほぼ透明な状態となった。
このとき、波長400nm〜800nmの範囲である光の平均透過率は約80%であった。その後、赤色調光組成物が固定されている発熱抵抗層付きガラス基板への通電を中止したところ、赤色調光組成物が再び膨潤し、光学素子は赤色を呈した。
【0215】
次に、温度変化応答性の黄色調光組成物が発熱抵抗層面に固定されている発熱抵抗層付きガラス基板表面の発熱抵抗層のみに、10V/1msと100V/10msとの電圧変化を交互に繰り返すパルス電圧を印加すると、発熱抵抗層が発熱して周囲に固定されている黄色調光組成物が膨潤した。一方、対向面に固定されている温度変化応答性の赤色調光組成物は、十分に加熱されることがないために体積変化することなく膨潤状態を維持していた。そのため、光学素子は橙色を呈した。
このとき、波長400nm〜800nmの範囲である光の平均透過率は約20%であった。その後、黄色調光組成物が固定されている発熱抵抗層付きガラス基板への通電を中止したところ、黄色調光組成物が再び収縮し、光学素子は赤色を呈した。
【0216】
次に、対向する2枚の発熱抵抗層付きガラス基板の発熱抵抗層に、それぞれ別々に10V/1msと100V/10msとの電圧変化を交互に繰り返すパルス電圧を印加すると、双方の発熱抵抗層が発熱して、赤色調光組成物は収縮し、黄色調光組成物が膨潤したために、光学素子は黄色を呈した。
このとき、波長400nm〜800nmの範囲である光の平均透過率は約40%であった。その後、双方の発熱抵抗層への通電を共に中止したところ、赤色調光組成物は膨潤し、黄色調光組成物が収縮したために、光学素子は赤色を呈した。
【0217】
このように、本実施例では、対向する2枚の基板表面に設けられた刺激付与手段表面に、同一の刺激種として温度変化に応答し、且つ、相互に異なる色彩を有する2種類の調光組成物を、別々に固定することにより、該調光組成物の体積変化を独立して制御することができ、さらに、各種の色変化が得られることが明らかになった。
また、本実施例で得られた光学素子への通電による前記2種類の調光組成物の体積変化挙動は、両者共に可逆的に繰り返し10000回以上行うことができることを確認した。
さらに、本実施例で得られた光学素子に対して、スガ試験機製のサンシャインウエザメータ(WEL−SUN−HC型)を用いて、ブラックパネル温度63℃の条件下で100時間の耐候性試験を行った。その結果、前記2種類の調光組成物の変性や褪色がなく、これらの変性や褪色に起因した前記光学素子の調光特性の劣化も確認されなかった。
以上のように、本発明によれば、多様な色彩を呈し、かつ優れた安定性、耐久性を有する光学素子が提供できることが確認された。
【0218】
<実施例
相互に異なる体積変化特性を有する、高温収縮ゲル粒子3(高分子ゲルE)および高温膨潤ゲル粒子2(高分子ゲルF)、を用いた調光樹脂組成物(調光シート)を、以下のプロセスで作製した。
最初に、重合開始剤(メルク社製、ダロキュア)を2質量%と、紫外線硬化樹脂(東亜合成社製、アロニックスUV)を50質量%とをトルエンに溶解させた紫外線硬化樹脂溶液を調製した。また、赤色調光組成物(高分子ゲルE)0.3質量部に蒸留水50質量部を加えて、20℃に保持し、膨潤状態の赤色調光組成物を調製した。この膨潤状態の赤色調光組成物を、先に調製した紫外線硬化樹脂溶液90gに加え、回転式攪拌装置を用いて、前記膨潤状態の赤色調光組成物を分散させた混合液を調製した。なお、この攪拌分散は赤色調光組成物を構成する高分子ゲルが収縮しない温度である20℃で行なった。
【0219】
次に、得られた混合液を、ブレードコーターを用いて厚み100μmの透明ポリエステルフイルムの表面に塗布したのち、塗布された混合液を紫外線照射装置によって紫外線を照射(120W/cm2で2分間)することで硬化させ、厚みが約50μmの赤色調光組成物含有層を形成した調光シートを作製した。
【0220】
次に、赤色調光組成物(高分子ゲルE)と同様な方法により、膨潤状態の黄色調光組成物を分散させた紫外線硬化樹脂混合液を調製した。なお、この攪拌分散は前記赤色調光組成物を構成する高分子ゲルが膨潤状態となる温度である50℃で行なった。次に、得られた膨潤状態の黄色調光組成物を分散させた紫外線硬化樹脂混合液を、ブレードコーターを用いて、先に得られた調光シートの赤色調光組成物含有層の上に塗布し、紫外線照射装置によって紫外線を照射(120W/cm2で2分間)することで硬化させ、黄色調光組成物含有層(厚み:約50μm)を前記赤色調光組成物含有層の上に積層形成した調光シートを作製した。
得られた調光シートを光学顕微鏡によって観察したところ、シートの内部には、赤色および黄色の調光組成物が分離積層されて存在することが確認できた。
【0221】
この調光シートを温度変化させると、20℃では赤色調光組成物が膨潤状態で、黄色調光組成物が収縮状態となり、シート全体が赤色を呈していた。一方、50℃に加熱すると赤色調光組成物が収縮し、黄色調光組成物が膨潤状態となり、シート全体が黄色を呈していた。
さらに、この調光シートの温度を30℃付近に保持すると、両調光組成物が膨潤状態となり、シート全体が橙色を呈していた。
このような色変化は、可逆的に繰り返し10000回以上行うことができることを確認した。
【0222】
さらに、本実施例で得られた調光シートに対して、スガ試験機製のサンシャインウエザメータ(WEL−SUN−HC型)を用いて、ブラックパネル温度63℃の条件下で100時間の耐候性試験を行った。その結果、前記2種類の調光組成物の変性や褪色がなく、これらの変性や褪色に起因した前記調光シートの調光特性の劣化も確認されなかった。
以上のように、本発明によれば、多様な色彩を呈し、かつ優れた安定性、耐久性を有する光学素子が提供できることが確認された。
【0223】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、多様な色彩を表現することができ、透過光量や反射光量を幅広く制御可能であり、かつ耐久性に優れる光学素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 樹脂中に高分子ゲルと吸脱液体からなる調光組成物を分散した、調光樹脂組成物の構成例を示す模式図である。
【図2】 フィルム状の基材に調光樹脂組成物を形成した構成の調光フィルム(本発明の光学素子)を示す拡大断面図である。
【図3】 図3(A)は本発明の調光組成物自体をそのまま用いた、本発明の光学素子の構成例を示す模式断面図である。
図3(B)は本発明の調光組成物自体をそのまま用いた、図3(A)に示す本発明の光学素子の構成を基本とした光学素子の、他の構成例を示す模式断面図である。
【図4】 図4(A)は本発明の調光組成物自体をそのまま用いた、本発明の光学素子の他の構成例を示す模式断面図である。
図4(B)は本発明の調光組成物自体をそのまま用いた、図4(A)に示す本発明の光学素子の構成を基本とした光学素子の、他の構成例を示す模式断面図である。
【図5】 本発明の調光組成物自体をそのまま用いた、本発明の光学素子を2つ組合せた光学素子の構成例を示す模式断面図である。
【図6】 本発明の光学素子の調光機能について説明するための模式図であり、図6(A)は高分子ゲル32,34双方とも膨潤した状態を、図6(B)は高分子ゲル32が収縮し高分子ゲル34が膨潤した状態を、図6(C)は高分子ゲル32が膨潤し高分子ゲル34が収縮した状態を、図6(D)は高分子ゲル32,34双方とも収縮した状態を、それぞれ示す。
【図7】 本発明の光学素子に用いる発熱抵抗層付きガラス基板の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
2、4、18 調光組成物
6 樹脂
8 調光樹脂組成物層
10 基材
12、14、32、34 高分子ゲル
16 吸脱液体
18 調光組成物(層)
20,20’、30 基板
22 封止部材
112、114 高分子ゲル
116 吸脱液体
131 黒色色材含有高分子ゲル
132 シアン色色材含有高分子ゲル
133 マゼンダ色色材含有高分子ゲル
134 イエロー色色材含有高分子ゲル
118 調光組成物(層)
120,120’ 基板
122 封止部材
123 刺激付与手段
124 スペーサー粒子
150 光学素子
160 光学素子
170 光学素子
180 ガラス基板
182 発熱抵抗体

Claims (15)

  1. 一対の基板と、該一対の基板間に挟持された調光組成物とを含み、
    前記調光組成物が、外部刺激の付与により可逆的に液体を吸収・放出して体積変化を生ずる2種類以上の高分子ゲルと、該高分子ゲルが吸収・放出し得る液体とからなり、
    前記2種類以上の高分子ゲルが、内部に調光用材料を含有し、
    前記2種類以上の高分子ゲルのうち少なくとも2種類が、相互に異なる刺激特性を有し、
    相互に異なる刺激特性を有する一の高分子ゲルおよび他の高分子ゲルが、前記一対の基板の少なくとも一方の基板表面に固定されていることを特徴とする光学素子。
  2. 前記一の高分子ゲルおよび前記他の高分子ゲルが、同一の基板表面に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
  3. 前記一の高分子ゲルおよび前記他の高分子ゲルが、別々の基板表面に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
  4. 一対の基板と、該一対の基板間に挟持された調光組成物と、前記一対の基板間に配置された支持体を含み、
    前記調光組成物が、外部刺激の付与により可逆的に液体を吸収・放出して体積変化を生ずる2種類以上の高分子ゲルと、該高分子ゲルが吸収・放出し得る液体とからなり、
    前記2種類以上の高分子ゲルが、内部に調光用材料を含有し、
    前記2種類以上の高分子ゲルのうち少なくとも2種類が、相互に異なる刺激特性を有し、
    相互に異なる刺激特性を有する一の高分子ゲルおよび他の高分子ゲルが、前記支持体に固定されていることを特徴とする光学素子。
  5. 前記支持体が繊維状であることを特徴とする請求項4に記載の光学素子。
  6. フィルム状に形成された調光樹脂組成物を有し、
    前記調光組成物が、外部刺激の付与により可逆的に液体を吸収・放出して体積変化を生ずる2種類以上の高分子ゲルと、該高分子ゲルが吸収・放出し得る液体と、樹脂とからなり、
    前記2種類以上の高分子ゲルが、内部に調光用材料を含有し、
    前記2種類以上の高分子ゲルのうち少なくとも2種類が、相互に異なる刺激特性を有し、
    相互に異なる刺激特性を有する一の高分子ゲルおよび他の高分子ゲルが、前記樹脂の内部に、相分離状に隔離、分散して存在することを特徴とする光学素子。
  7. 前記高分子ゲルのうち少なくとも2種類が、同一の刺激種に応答することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1に記載の光学素子
  8. 前記高分子ゲルのうち少なくとも2種類が、相互に異なる刺激種に応答することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1に記載の光学素子
  9. 前記同一の刺激種が、温度変化の付与であることを特徴とする請求項に記載の光学素子
  10. 前記相互に異なる刺激種が、一方が温度変化の付与であり、他方がpH変化の付与であることを特徴とする請求項に記載の光学素子
  11. 前記高分子ゲルのうち少なくとも2種類が、相互に異なる相転移点を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1に記載の光学素子
  12. 前記高分子ゲルのうち少なくとも2種類が、相互に異なる体積変化特性を有すること特徴とする請求項1〜11のいずれか1に記載の光学素子
  13. 前記2種類以上の高分子ゲルが、内部に含有する調光用材料が、相互に色彩の異なる色材であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1に記載の光学素子
  14. 前記2種類以上の高分子ゲルが、粒子状であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1に記載の光学素子
  15. 前記調光用材料が、高分子ゲルに物理的あるいは化学的に固定されていることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1つに記載の光学素子。
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