以下、本発明の調光素子及びその製造方法について詳細に説明する。
[1]調光素子:
本発明の調光素子を、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の第1の調光素子の一例を示す概略構成図である。当該調光素子10は、基板3上でその一部の領域に、変色領域2が一定のパターンで形成された構成となっている。変色領域2は、不図示の液体(刺激応答性高分子ゲルが吸収放出する液体)と刺激応答性高分子ゲル22とが保持された保持部材21からなる。
このように、変色領域が任意のパターンに形成され、保持部材に刺激応答性高分子ゲルと液体に保持されているので、文字や図柄などの表示や微細なパターンが形成され、調光特性に優れた安全性の高い調光素子を得ることができる。その結果、表示素子・カラーフィルター・微小センサー・文字表示やデザイン、イラストなどを表示可能な意匠性の高い調光部材などに応用可能な調光素子とすることができる。また、刺激応答性高分子ゲルは保持部材によって高分子ゲル組成物(刺激応答性高分子ゲルと前記刺激応答性高分子ゲルが吸収放出する液体とが保持部材中に保持されたもの)内に固定されているため、高分子ゲル組成物それ自身に自己支持性がある。そのため高分子フィルムなどフレキシブルな基板間に形成し、可とう性のある素子を作製することが可能となり用途範囲を格段に広げることができる。このようなパターンの形成は、後述するように、フォトリソグラフィー・印刷等の技術を利用して低コストで生産することも可能である。
さらに、変色領域に含まれる刺激応答性高分子ゲルは異なる刺激に応答する複数種のものを使用しても良い。この場合、一つの変色領域に異なる刺激に応答する復数種の刺激応答性高分子ゲルを含有させても良いし、2つ以上の変色領域がある場合にはそれぞれに異なる刺激に応答する刺激応答性高分子ゲルを1種以上含有させても良い。
図2は、本発明の第2の調光素子の一例を示す概略構成図である。当該調光素子20は、基板3上でその一部の領域に、変色領域2が一定のパターンで形成された構成となっており、また、非変色領域2aも変色領域2に対応して一定のパターンで形成された構成となっている。変色領域2は、第1の調光素子と同様な構成となっており、非変色領域2aは樹脂23のみで構成され、これが一定の厚みで形成された態様となっている。
上記第2の調光素子でも、第1の調光素子と同様の効果が得られ、さらに、非変色領域2aを設けることで、刺激応答性高分子ゲルが吸収放出する液体の蒸発を防ぐことが可能となり、耐久性を向上させることができる。
図3に示す調光素子は、変色領域が、少なくとも2種の変色領域からなり、それぞれの変色領域が互いに異なる色を有する例である。調光素子30において、保持部材21中に不図示の液体と刺激応答性高分子ゲル22とが保持された変色領域2が形成され、さらに、刺激応答性高分子ゲル22とは異なる色相を持つ刺激応答性高分子ゲル22’が保持剤21中に不図示の液体と刺激応答性高分子ゲル22とが保持された変色領域2’が形成されたものが基板3上に配置されている。ここで、「異なる色を持つ(有する)」とは、変色領域の発色状態(刺激応答性高分子ゲルの膨潤状態)において発現する色の色相、明度、彩度の少なくとも一つが他の変色領域と異なることをいう。
図4は、本発明の調光素子の他の一例を示す概略構成図である。調光素子40において、保持部材21中に不図示の液体と刺激応答性高分子ゲル22とが保持された変色領域2が形成され、変色領域以外にも樹脂23が一定の厚みで成型されたものが、少なくとも一方が透明な一対の基板3、4間に挟持されている。さらに基板3、4の周囲は、接着剤、紫外線硬化樹脂又は熱硬化樹脂等の封止材5によって液体が蒸発しないように封止されている。
図5は、図4の調光素子に、さらに、刺激付与手段6、7を備えた調光素子50を示す概略構成図である。図5では、刺激付与手段6、7は基板3、4の内側の面に設けられているが、外側に設けられていてもよい。また、刺激付与手段6、7は必須ではないが、調光素子の少なくとも片面に、また必要に応じて両面に設けられていることが好ましい。刺激応答性高分子ゲルは、刺激付与手段を具備した基板の表面に固定されていることが好ましい。これにより、人為的に刺激応答性高分子ゲルの体積変化を制御し、その調光特性を任意に変化させることができる。
次に本発明の調光素子の作用について、図6を用いて説明する。図6は本発明の調光素子の要部拡大断面図であり、図6中の符号は図1と同様である。本発明の調光素子10は、図1に示す刺激応答性高分子ゲル22(図6(a)では符号22a、(b)では符号22bに相当)に含まれた不図示の液体が、刺激によって吸収・放出され、刺激応答性高分子ゲルが図6(a)のごとく膨潤し、あるいは図6(b)のごとく収縮して、体積変化を引き起こすことができる。その結果、刺激応答性高分子ゲルが調光材料を含まない場合には収縮時に光散乱性が増大して、変色領域が光散乱性となり、膨潤時には光散乱性が減少して、変色領域の光透過性が高くなる。
一方、刺激応答性高分子ゲルが十分な濃度の調光材料を含有する場合は膨潤時には、光吸収性や光散乱性が高くなり、消色時には光散乱性や光吸収性が低くなり、変色領域の光の透過性等が変化する。このようにして、本発明の調光素子の変色領域はその光透過性が変化し、文字や絵柄や微細に加工された模様等の表示等が可能になる。
このとき、刺激応答性高分子ゲル外に放出された液体が、刺激応答性高分子ゲルと保持部材との間に存在する場合と、刺激応答性高分子ゲル外に放出された液体が、保持部材に染み出す状態となり、刺激応答性高分子ゲルと保持部材とが密着状態となる場合と、が考えられるが、前者の状態となる場合であっても、時間と共に後者の状態へと移行していくものと推定される。
図7は文字「A」を表示可能なようにパターニングした本発明の調光素子70である。基板3上の変色領域2中の不図示の刺激応答性高分子ゲルの体積変化に応じ、このような調光素子においては、変色領域に配置された不図示の刺激応答性高分子ゲルの体積変化により、光を吸収または散乱する面積が変化し、それに応じて、変色領域の光透過性または散乱性が変化し、調光素子上のパターンの光学特性(光吸収性、光散乱性)が変化し、文字や絵柄などのパターン表示などが可能となる。
以下、本発明をさらに詳細に説明するため、その構成要素について具体的に述べる。
(刺激応答性高分子ゲル)
次に、本発明において使用することができる刺激応答性高分子ゲルについて説明する。刺激応答性高分子ゲルは、pH変化、イオン濃度変化、化学物質の吸脱着、溶媒組成の変化、又は光、熱、電流もしくは電界の付与等、刺激の付与によって、液体を吸脱(吸収・放出)して体積変化(膨潤・収縮)するものである。
本発明において、刺激応答性高分子ゲルの体積変化は一方的なものでも可逆的なものであってもよいが、可逆的であるものが好ましい。以下に、本発明において使用することのできる刺激応答性高分子ゲルの具体例を示す。
pH変化によって刺激応答する高分子ゲルとしては、電解質系高分子ゲルが好ましく、その例としては、ポリ(メタ)アクリル酸の架橋物やその塩、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその塩、ポリマレイン酸の架橋物やその塩、マレイン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその塩、ポリビニルスルホン酸の架橋物やビニルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物、ポリビニルベンゼンスルホン酸の架橋物やその塩、ビニルベンゼンスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその塩、ポリアクリルアミドアルキルスルホン酸の架橋物やその塩、アクリルアミドアルキルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその塩、ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの架橋物やその塩酸塩、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその4級化物や塩、ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドとポリビニルアルコールとの複合体の架橋物やその4級化物や塩、ポリビニルアルコールとポリ(メタ)アクリル酸との複合体の架橋物やその塩、カルボキシアルキルセルロース塩の架橋物、ポリ(メタ)アクリロニトリルの架橋物の部分加水分解物やその塩などが挙げられる。
pH変化は、液体の電気分解や添加される化合物の酸化還元反応などの電極反応、あるいは、導電性高分子の酸化還元反応、更には、pHを変化させる化学物質の添加や脱離によるものであることが好ましい。
イオン濃度変化によって刺激応答する高分子ゲルとしては、前記したpH変化による刺激応答性高分子ゲルと同様なイオン性高分子材料が使用できる。また、イオン濃度変化としては、塩等の添加、イオン交換性樹脂の使用などによるものが好ましい。
化学物質の吸脱着によって刺激応答する高分子ゲルとしては、強イオン性高分子ゲルが好ましく、その例として、ポリビニルスルホン酸の架橋物やビニルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物、ポリビニルベンゼンスルホン酸の架橋物やビニルベンゼンスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物、ポリ(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸の架橋物や(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物などが挙げられる。
特に、ポリアクリルアミドアルキルスルホン酸系高分子が好ましく使用される。この場合、化学物質としては、界面活性剤、例えば、n−ドデシルピリジニウムクロライドなどのアルキルピリジン塩、アルキルアンモニウム塩、フェニルアンモニウム塩、テトラフェニルホスフォニウムクロライドなどのホスホニウム塩などのカチオン性界面活性剤を使用することができる。
磁場の付与によって刺激応答する高分子ゲルとしては、強磁性体粒子や磁性流体を含有するポリビニルアルコールの架橋物等が挙げられるが、高分子ゲル自体は特に限定されるものではなく、高分子ゲルの範疇に含まれるものであればよい。
溶媒組成の変化によって刺激応答する高分子ゲルとしては、一般にほとんどの高分子ゲルが挙げられ、その高分子ゲルの良溶媒と貧溶媒とを利用することで膨潤、収縮を引き起こすことが可能である。
電流もしくは電界の付与によって、刺激応答する高分子ゲルとしては、カチオン性高分子ゲルと電子受容性化合物とのCT錯体(電荷移動錯体)が好ましく、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどアミノ置換(メタ)アクリルアミドの架橋物、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートやジメチルアミノプロピルアクリレートなどの(メタ)アクリル酸アミノ置換アルキルエステルの架橋物、ポリスチレンの架橋物、ポリビニルピリジンの架橋物、ポリビニルカルバゾールの架橋物、ポリジメチルアミノスチレンの架橋物などが挙げられ、特に、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート系高分子は好ましい。これらは、ベンゾキノン、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラシアノエチレン、クロラニル、トリニトロベンゼン、無水マレイン酸やヨウ素などの電子受容性化合物とを組み合わせて使用することができる。
光の付与によって刺激応答する高分子ゲルとしては、トリアリールメタン誘導体やスピロベンゾピラン誘導体などの光によってイオン解離する基を有する親水性高分子化合物の架橋物が好ましく、その例として、ビニル置換トリアリールメタンロイコ誘導体と(メタ)アクリルアミドとの共重合体の架橋物などが挙げられる。
熱応答性高分子ゲルとしては、ある温度以上で疎水性相互作用によって凝集し水溶液中から析出してくる性質を持つLCST(下限臨界共融温度)をもつ高分子の架橋体、およびUCST(上限臨界共融温度)をもつ高分子の架橋体や、互いに水素結合する高分子鎖を持つ高分子ゲル、または互いに水素結合する2成分の高分子のIPN体(相互侵入網目構造体)、結晶性などの凝集性の側鎖を持つ高分子ゲルなどが好ましい。これらの中でも疎水性相互作用を利用したLCSTゲルは特に好ましい。LCSTゲルは高温において収縮し、UCSTゲルやIPNゲル、結晶性ゲルでは、逆に高温で膨潤する特性をもっている。
前者の具体的な化合物としては、ポリN−イソプロピルアクリルアミドなどのN−アルキル置換(メタ)アクリルアミドの架橋体やN−アルキル置換(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸およびその塩、または(メタ)アクリルアミド、または(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどの2成分以上の共重合体の架橋体、ポリビニルメチルエーテルの架橋物、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのアルキル置換セルロース誘導体の架橋体などが挙げられる。これらの中でも、ポリN−イソプロピル(メタ)アクリルアミドは好ましい。一方、後者の化合物としては、ポリ(メタ)アクリルアミドの架橋体とポリ(メタ)アクリル酸の架橋体からなるIPN体およびその部分中和体(アクリル酸単位を部分的に塩化したもの)、ポリ(メタ)アクリルアミドを主成分とする共重合体の架橋体とポリ(メタ)アクリル酸の架橋体からなるIPN体およびその部分中和体などが挙げられる。より好ましくは、ポリN−アルキル置換アルキルアミドの架橋体、ポリ(メタ)アクリルアミドの架橋体とポリ(メタ)アクリル酸の架橋体とのIPN体およびその部分中和体などが挙げられる。
また、結晶性ゲルとしては、オクチル基、デシル基、ラウリル基、ステアリル基等の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸との共重合体の架橋体やその塩があげられる。この熱応答性高分子ゲルの体積変化を示す温度(相転移温度)は、高分子ゲルの構造、組成により種々の設計が可能である。なお、好ましい相転移温度は溶媒の沸点や凝固点内であることが好ましく、−30〜300℃の範囲から選択され、さらに好ましくは−10〜150℃の範囲であり、特に好ましくは0℃〜60℃の範囲である。
刺激応答性高分子ゲルとしては上記例示した具体例の他に、温度変化に応じて複数の相転移点を示すゲルも好適に使用することができる。具体的に例示すると、ポリN−イソプロピル(メタ)アクリルアミドなどのポリアルキル置換(メタ)アクリルアミドの架橋体とポリ(メタ)アクリル酸の架橋体とのIPN体などがあげられる。これらのゲルは、温度上昇に伴い膨潤−収縮−膨潤という2つの相転移点を示すことが知られている。
また、熱応答性高分子ゲルの体積変化量を増大させる目的でイオン性官能基を高分子ゲル中に含有させることも好ましく実施できる。イオン性官能基としてはカルボン酸、スルホン酸、アンモニウム基、りん酸基などが挙げられる。イオン性官能基は高分子ゲルを調製する際にこれら官能基をもつモノマーを共重合する、合成後の刺激応答性高分子ゲルにモノマーおよび架橋剤を含浸させて重合しIPN(相互侵入網目構造体)体とする、前記刺激応答性高分子ゲル中の官能基を部分的に加水分解や酸化反応などの化学反応によって変換するなどの方法で含有させることができる。
刺激応答性高分子ゲルは一般的なゲルの製造方法に準じて製造することができる。例えば、「ゲルハンドブック」(長田、梶原編集、1997年、株式会社エヌ・ティー・エス)などに製造方法が記載されている。一般的には、前記した刺激応答性高分子ゲルの構成要素となるモノマーと架橋剤を適当な溶媒中に共存させて重合する方法、架橋部分をもった高分子を架橋させる方法などにより高分子が架橋して3次元網目構造をもったゲルを製造することができる。用いる架橋剤としては特に限定されないが、多数の反応点をもつ多官能のモノマーが好ましく使用できる。特に、ラジカル重合によってゲルを製造する際には、メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどが好ましく、特にメチレンビスアクリルアミドが溶解性、安定性、コストなどの観点から好ましく使用されるが、特にこれに限定されるものではない。
本発明の刺激応答性高分子ゲルの体積変化量は特に限定されないが、高いほど好ましく、膨潤時および収縮時の体積比が3以上、特に5以上のものが好ましい。また、本発明の刺激応答性高分子ゲルの体積変化は、一方的であるものでも可逆的であるものでもよいが、調光素子として利用する場合は、可逆的なものであることが好ましい。また、刺激応答性高分子ゲルの膨潤時の液体の吸収量は(液体の質量/乾燥時の刺激応答性高分子ゲルの質量)=5〜500の間が好ましい。5以上であれば刺激応答性高分子ゲルの体積変化を十分取ることができ、500以下であれば高分子ゲルの強度を十分確保できる。また、後述する調光用材料を含有させる場合に刺激応答性高分子ゲル内部の調光用材料濃度を十分なものとすることができ、十分な調光特性を得ることができる。
刺激応答性高分子ゲル中にはその特性を損なわない範囲で紫外線吸収剤、光安定剤等、種々の安定剤を共重合あるいは結合させることが可能である。例えば、ヒンダードアミン系やヒンダードフェノール系の化合物や光安定化機能を持つ化合物などを共重合あるいは結合することが好ましく実施できる。これらの化合物の共重合量あるいは結合量は高分子ゲルに対して0.01質量%〜5質量%の範囲が好ましい。
本発明において用いられる刺激応答性高分子ゲルは、膨潤状態で平均粒径が好ましくは0.01μm〜5mmの範囲、さらに好ましくは、0.1μm〜1mmの範囲、特に好ましくは5μm〜100μmの粒子であることが好ましい。平均粒子径が0.01μm以上であれば、十分な光学的な特性を得ることができ、凝集等を起こしにくくなり、使用する場合にその取り扱いが容易となる。一方、5mm以下であれば、応答速度が速くなる、素子の粒状感が向上するなどの効果が生じる。
これらの刺激応答性高分子ゲルの粒子は、高分子ゲルを物理的粉砕法等で粒子化する方法、架橋前の高分子を化学的粉砕法等によって粒子化した後に架橋して高分子ゲル粒子を得る方法、あるいは乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法などの粒子化重合法などの一般的な粒子化方法によって製造することができる。また、架橋前の高分子をノズル口金等によって押し出して繊維化し、これを架橋した後に粉砕する方法、あるいは前記繊維を粉砕して粒子化した後に架橋する方法によって刺激応答性高分子ゲル粒子を製造することも可能である。
(調光用材料)
調光素子としての使用に際しては、これらの刺激応答性高分子ゲルに顔料や染料などの色材あるいは光散乱材料などの調光用材料を添加することが好ましい。添加する調光用材料としては、染料、顔料や光散乱材などが挙げられる。また、調光用材料は刺激応答性高分子ゲルに物理的あるいは化学的に固定化されることが好ましい。
このような調光用材料の添加量としては、高分子ゲルの乾燥時又は収縮時に、飽和吸収濃度あるいは飽和散乱濃度以上となる量を添加することが好ましい。ここで、飽和吸収(あるいは散乱)濃度以上とは、特定の光路長のもとにおける調光用材料濃度と光吸収量との関係が1次直線の関係から大きく外れる領域のことを示す。刺激応答性高分子ゲルに、このような濃度の調光用材料を添加することによって、刺激応答性高分子ゲルの膨潤・収縮により光学濃度又は散乱を変化させることができる。
飽和吸収濃度あるいは飽和散乱濃度以上となる調光用材料の濃度は、一般に3質量%以上であり、3質量%〜95質量%の範囲を刺激応答性高分子ゲルに添加することが好ましく、より好ましくは5質量%〜80質量%の範囲である。3質量%以上であれば、調光用材料を添加した効果を十分に得られ、95質量%以下であれば、刺激応答性高分子ゲルの特性が優れたものとなる。
染料の好適な具体例としては、例えば、黒色のニグロシン系染料や赤、緑、青、シアン、マゼンタ、イエローなどのカラー染料であるアゾ染料、アントラキノン系染料、インジゴ系染料、フタロシアニン系染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、ナフタルイミド染料、ベリロン染料などが挙げられ、特に光吸収係数が高いものが望ましい。
例えば、C.I.ダイレクトイエロー1、8、11、12、24、26、27、28、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、157、C.I.アシッドイエロー1、3、7、11、17、19、23、25、29、38、44、79、127、144、245、C.I.ベイシックイエロー1、2、11、34、C.I.フードイエロー4、C.I.リアクティブイエロー37、C.I.ソルベントイエロー6、9、17、31、35、100、102、103、105、C.I.ダイレクトレッド1、2、4、9、11、13、17、20、23、24、28、31、33、37、39、44、46、62、63、75、79、80、81、83、84、89、95、99、113、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230、231、C.I.アシッドレッド1、6、8、9、13、14、18、26、27、35、37、42、52、82、85、87、89、92、97、106、111、114、115、118、134、158、186、249、254、289、C.I.ベイシックレッド1、2、9、12、14、17、18、37、C.I.フードレッド14、C.I.リアクティブレッド23、180、C.I.ソルベントレッド5、16、17、18、19、22、23、143、145、146、149、150、151、157、158、
C.I.ダイレクトブルー1、2、6、15、22、25、41、71、76、78、86、87、90、98、163、165、199、202、C.I.アシッドブルー1、7、9、22、23、25、29、40、41、43、45、78、80、82、92、93、127、249、C.I.ベイシックブルー1、3、5、7、9、22、24、25、26、28、29、C.I.フードブルー2、C.I.ソルベントブルー22、63、78、83〜86、191、194、195、104、C.I.ダイレクトブラック2、7、19、22、24、32、38、51、56、63、71、74、75、77、108、154、168、171、C.I.アシッドブラック1、2、7、24、26、29、31、44、48、50、52、94、C.I.ベイシックブラック2、8、C.I.フードブラック1、2、C.I.リアクティブブラック31、C.I.フードバイオレット2、C.I.ソルベントバイオレット31、33、37、C.I.ソルベントグリーン24、25、C.I.ソルベントブラウン3、9等が挙げられる。これらの染料は、単独で使用してもよく、さもなければ所望とする色を得るために混合して使用してもよい。
また、一般的な顔料の具体例としては、黒色顔料である各種カーボンブラック(チャネルブラック、ファーネスブラック等)やチタンブラック、白色顔料である酸化チタンなどの金属酸化物やカラー顔料である。カラー顔料としては例えば、ベンジジン系のイエロー顔料、ローダミン系のマゼンタ顔料、フタロシアニン系のシアン顔料、あるいはこの他にもアントラキノン系、アゾ系、アゾ金属錯体、フタロシアニン系、キナクリドン系、ペリレン系、インジゴ系、イソインドリノン系、キナクリドン系、アリルアミド系などの各種カラー顔料を挙げることができる。
顔料のより具体的な例として、酸化亜鉛、塩基性炭酸鉛、塩基性硫酸鉛、硫酸鉛、リトボン、白雲母、硫化亜鉛、酸化チタン、酸化アンチモン、鉛白、酸化ジルコニウム、アルミナ、マイカナイト、マイカレックス、石英、炭酸カルシウム、石膏、クレー、シリカ、ケイ酸、珪素土、タルク、塩基性炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、サチン白等の無機酸化物等の白色顔料や、亜鉛、アルメル、アンチモン、アルミニウム、アルミニウム合金、イリジウム、インジウム、オスミウム、クロム、クロメル、コバルト、ジルコニウム、ステンレス鋼、金、銀、洋銀、銅、青銅、すず、タングステン、タングステン鋼、鉄、鉛、ニッケル、ニッケル合金、ニッケリン、白金、白金ロジウム、タンタル、ジュラルミン、ニクロム、チタン、クルップ・オーステナイト鋼、コンスタンタン、真鍮、白金イリジウム、パラジウム、パラジウム合金、モリブデン、モリブデン鋼、マンガン、マンガン合金、ロジウム、ロジウム金などの金属材料や、
フェノール樹脂、フラン樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アニリン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ−p−キシリレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素系プラスチック、ポリアクリロニトリル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、ポリエーテル、ポリカーボネート、熱可塑性ポリエステル、ポリアミド、ジエン系プラスチック、ポリウレタン系プラスチック、ポリフェニレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、芳香族ヘテロ環ポリマー、シリコーン、天然ゴム系プラスチック、セルロース系プラスチック等の高分子材料で構成された顔料等が挙げられる。
また、カラー顔料であるイエロー系顔料のより具体的な例としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。より詳細には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、168等が好適に用いられる。
マゼンタ系顔料のより具体的な例としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。より詳細には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48;2、48;3、48;4、57;1、81;1、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254が特に好ましい。
シアン系顔料のより具体的な例としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15;3、15:4、60、62、66等が特に好適に利用できる。
使用する顔料の粒子径としては、1次粒子の体積平均粒子径で0.001μm〜1μmのものが好ましく、特に、0.02μm〜0.2μmのものが好ましい。これは粒子径が0.001μm以上では高分子ゲルからの流出が起こりにくく、また、1μm以下であれば発色特性や光散乱特性優れるためである。
光散乱材の好適な無機材料の具体例として、酸化亜鉛、塩基性炭酸鉛、塩基性硫酸鉛、硫酸鉛、リトボン、白雲母、硫化亜鉛、酸化チタン、酸化アンチモン、鉛白、酸化ジルコニウム、アルミナ、マイカナイト、マイカレックス、石英、炭酸カルシウム、石膏、クレー、シリカ、ケイ酸、珪素土、タルク、塩基性炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、サチン白等の無機酸化物や、亜鉛、アルメル、アンチモン、アルミニウム、アルミニウム合金、イリジウム、インジウム、オスミウム、クロム、クロメル、コバルト、ジルコニウム、ステンレス鋼、金、銀、洋銀、銅、青銅、すず、タングステン、タングステン鋼、鉄、鉛、ニッケル、ニッケル合金、ニッケリン、白金、白金ロジウム、タンタル、ジュラルミン、ニクロム、チタン、クルップ・オーステナイト鋼、コンスタンタン、真鍮、白金イリジウム、パラジウム、パラジウム合金、モリブデン、モリブデン鋼、マンガン、マンガン合金、ロジウム、ロジウム金などの金属材料、ITO(インジウム・スズ酸化物)等の無機導電性材料などが挙げられる。特に雲母やアルミニウムおよびその類縁体は塗装膜とする際に好適に使用できる。
また、光散乱材の好適な有機材料の具体例として、フェノール樹脂、フラン樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アニリン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ−p−キシリレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素系プラスチック、ポリアクリロニトリル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、ポリエーテル、ポリカーボネート、熱可塑性ポリエステル、ポリアミド、ジエン系プラスチック、ポリウレタン系プラスチック、ポリフェニレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、芳香族ヘテロ環ポリマー、シリコーン、天然ゴム系プラスチック、セルロース系プラスチック等やこれら2種類以上の高分子材料の混合材料(ポリマーブレンド)などの高分子材料が挙げられる。
これらの調光用材料として、高分子ゲルに共有結合するための付加反応性基や重合性基を有する調光用材料や、高分子ゲルとイオン結合などの相互作用する基を有する調光用材料などの各種の化学修飾した調光用材料を用いることも好ましい。
また、前記したように顔料や光散乱材は高分子ゲル中に含有され、高分子ゲルから流出しないことが必要である。そのためには高分子ゲルの架橋密度を最適化して顔料や光散乱材を高分子網目中に物理的に閉じ込めること、高分子ゲルとの電気的、イオン的、その他物理的な相互作用が高い顔料や光散乱材を用いること、表面を化学修飾した顔料や光散乱材を用いることなどが好ましい。例えば、表面を化学修飾した顔料や光散乱材としては、表面にビニル基などの不飽和基や不対電子(ラジカル)などの高分子ゲルと化学結合する基を導入したものや、高分子材料をグラフト結合したものなどが挙げられる。
このような調光用材料を含む高分子ゲルは、架橋前の高分子に調光用材料を均一に分散、混合した後に架橋する方法や重合時に高分子前駆体モノマー組成物に調光用材料を添加して重合する方法によって製造することができる。重合時において顔料や光散乱材を添加する場合には前記したように重合性基や不対電子(ラジカル)をもつ顔料や光散乱材を使用し、高分子ゲルに化学結合することも好ましく実施される。
また、調光用材料は本発色材料中に極力均一に分散されていることが好ましい。特に、高分子への分散に際して、機械的混練法、攪拌法やあるいは分散剤などを利用して均一に分散させることが望ましい。なお調光用材料を含有した高分子ゲルの粒子は前述した高分子ゲルの粒子と同様の方法によって合成することができる。
(液体)
刺激応答性高分子ゲルが吸収・放出する液体としては水や各種有機溶剤およびこれらの2種以上の混合物を用いることができる。
本発明で使用可能な吸脱液体として好ましいものを例示すれば、水;電解質水溶液;メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類;アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類;エーテル類;エステル類;等の他、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキシド、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、脂肪族あるいは芳香族系有機溶媒、エチルメチルイミダゾリウム塩などのイオン性液体などや、それらの混合物が挙げられる。これらの中でも、安全性の観点から水、アルコール類が好ましい。
また、液体には分散安定剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの安定剤、抗菌剤、防腐剤などを添加してもよい。また、刺激応答性高分子ゲルの体積変化特性を変化させるための材料を溶解することもできる。さらに、種々顔料や白色顔料や染料などの色素を添加することもできる。
刺激応答性高分子ゲルと液体との混合比は、質量比で1/2000〜1/5(高分子ゲル/液体)の範囲とすることが好ましく、1/300〜1/15がさらに好ましい。質量比が1/2000以上であれば、組成物の機械的強度などの物性が優れたものとなり、1/5以下であれば、刺激応答による体積変化量や応答速度が向上する。
さらに、これら液体の沸点は、好ましくは80℃以上、さらに好ましくは100℃以上であり、特に好ましくは150℃以上である。沸点が低い場合には調光素子内部から液体が徐々に蒸発して刺激応答性高分子ゲルの体積変化が鈍くなるおそれや、調光素子中に気泡が生じ、その外観を損なうおそれがある。そのため、高沸点の溶剤や、不揮発性の化合物を溶解し、モル沸点上昇を利用して沸点を高めることも好ましく実施される。
(保持部材)
本発明の調光素子においては、刺激応答性高分子ゲルおよび刺激応答性高分子ゲルが吸収・放出可能な液体は、保持部材中に保持されていることを特徴とする。本発明において保持部材とは、前記液体の流動性を小さくする機能を有する材料をいう。保持部材を用いることによって、調光素子内部で刺激応答性高分子ゲルが流動せずに安定に保持されているため、刺激応答性高分子ゲルによって形成されたパターンが安定に保持され、文字、絵柄など表示、または微細なセンサーとして使用することができる。さらに、調光素子が破損した場合でも内部の液体が飛散せず安全性を高めることができる。以下、保持部材について説明する。
本発明における保持部材としては、高分子が三次元的に架橋されてなる硬化性樹脂の硬化物等が好ましく使用できる。なお、本発明において保持部材として硬化性樹脂の硬化物を用いる場合、硬化性樹脂とその硬化物とを区別するため、硬化性樹脂を保持部材前駆体と、その硬化物を保持部材と称することがある。
保持部材として硬化性樹脂の硬化物を用いる場合には、硬化性樹脂を刺激応答性高分子ゲルが吸収・放出する液体に溶解させた硬化性樹脂溶液を調製し、刺激応答性高分子ゲルを固定した基板間に硬化性樹脂溶液を供給するか、または刺激応答性高分子ゲルを固定した基板表面に硬化性樹脂溶液を塗布した後に、適当な硬化手段を用いて硬化性樹脂を硬化し、流動しないゲル状態とすることが好ましい。
硬化性樹脂としては、紫外線硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂、などを好ましく使用することができる。硬化性樹脂の使用は、低粘度の液体状態で基板間に供給できるため、基材間の厚みが薄い場合でも容易に供給することができるので好ましい。
また、前記硬化性樹脂は水溶性高分子化合物であると、刺激応答性高分子ゲルの吸収・放出する液体として水を使用することができ、安全性の高い調光素子を提供できるため好ましい。
紫外線硬化性樹脂の具体例としてはアクリル系、ビニルエーテル系の光硬化性樹脂や高分子にラジカル反応性基を修飾したものと光ラジカル開始剤の組み合わせなど公知の紫外線硬化性樹脂で刺激応答性高分子ゲルが吸収・放出する液体を内部に含有できるものであればすべての紫外線硬化性樹脂を用いることができる。紫外線硬化性樹脂の好ましい具体例としては、ポリ(メタ)アクリル酸にラジカル反応性基を修飾した反応性高分子、ポリビニルアルコールにラジカル反応性基を修飾した反応性高分子、ポリアクリルアミドにラジカル反応性基を修飾した反応性高分子等が挙げられる。これらの反応性高分子は、光ラジカル開始剤等と併用される。
放射線硬化性樹脂の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルクロライド、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリジメチルシロキサン、天然ゴム、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリイソブチレン、ポリα−メチルスチレン、ポリメタクリレート、ポリメタクリルアミド、ポリメタクリロニトリル、ポリビニリデンクロライド、ポリ塩化三フッ化エチレン、ポリ四フッ化エチレン、セルロースなど放射線照射によって高分子間に架橋構造を形成できる高分子で刺激応答性高分子ゲルが吸収・放出する液体を内部に含有できるものであればすべての放射線硬化樹脂を用いることができる。
放射線硬化性樹脂の好ましい具体例としては、ポリアクリルアミド、ポリメタクリレート、ポリビニルピロリドンなどがある。
なお、前記した硬化性樹脂は、刺激応答性高分子ゲルの刺激応答性に影響を与えないことが好ましいが、調光特性に問題がない範囲ならば構わない。
また、保持部材中に保持される刺激応答性ゲルに吸収・放出される液体と、乾燥状態の保持部材との割合としては、[乾燥時保持部材質量]/[液体質量+乾燥時保持部材質量]で0.3〜0.002の範囲が好ましい。さらに好ましくは0.1〜0.005の範囲であり、さらに好ましくは0.03〜0.15の範囲である。[乾燥時保持部材質量]/[液体質量+乾燥時保持部材質量]が0.3以下であれば、刺激応答性高分子ゲルの体積変化特性が抑制されることがないため十分な調光性能を得ることができる。また、0.002以上であると、保持部材の強度を十分確保することができる。
(樹脂)
非変色領域を形成する樹脂としては、変色領域の調光特性を損なわない範囲で、一般的に知られたほとんど全ての樹脂を使用することができる。たとえばフェノール樹脂、フラン樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アニリン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ−p−キシリレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素系プラスチック、ポリアクリロニトリル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、ポリエーテル、ポリカーボネート、熱可塑性ポリエステル、ポリアミド、ジエン系プラスチック、ポリウレタン系プラスチック、ポリフェニレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、芳香族ヘテロ環ポリマー、シリコーン、天然ゴム系プラスチック、セルロース系プラスチック等やこれら2種類以上の高分子材料の混合材料(ポリマーブレンド)などの高分子材料を挙げることができる。これら樹脂は刺激応答性ゲルが吸収・放出する液体を含んでいても含んでいなくとも良い。また変色領域形成用に用いた保持剤を使うことも好ましい。
(基板)
本発明の調光素子に用いられる基板としては、ポリエステル、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、ポリ塩化ビニル等のフィルムや板状基板、ガラス基板、金属、セラミックス等が使用可能である。前記基板の厚みは10μm〜2mmが好ましいが、この大きさは目的によって種々選択可能で、特に限定はされない。高分子ゲル組成物層が一対の基板で挟持されている態様の調光素子にあっては、基板の少なくとも一方は、透明であることが必要である。
本発明の調光素子は例えば気温の変化、太陽光量の変化などの自然エネルギーによって調光を行うことができるが、刺激付与手段を設けることで、能動的に調光することもできる。この場合、刺激付与手段は高分子ゲルに実質的に既述したような外部刺激を付与するものであり、通電発熱抵抗体のほかに光付与、電磁波付与、磁場付与などの各種熱付与手段が挙げられる。なかでも特に通電発熱抵抗体が好ましく適用され、具体的にはNi−Cr合金などに代表される金属層、硼化タンタル、窒化タンタル、酸化タンタル、やITOなどの金属酸化物層、カーボン層などに代表される発熱抵抗体層が好ましく用いられ、これらの層に配線し電流を付与することにより発熱させることができる。またその他にも、光付与の場合は、レーザー、LED、ELなどの発光素子層を用いること、磁界や電界の付与は電磁コイル、電極等を設けることで実現できる。中でも電界を付与する場合にはITOやSnO2に代表される透明電極を基板上に形成することが光の透過率を損なわないという観点から特に好ましい。
また、本発明の調光素子には上記の基板、刺激付与手段以外の様々な構成を有してもよい。例えば、光学素子の保護を目的とした保護層、防汚染層、反射防止層、紫外線吸収層、帯電防止層、内部液体の蒸発防止層などを必要に応じて設けることができる。
(封止材)
封止材としては、調光素子からの液体の蒸発又は揮発を抑制する能力を有し、基板に対する接着性を有し、調光素子の特性に悪影響を与えず、実使用条件においてこれらの条件を長期間維持可能なものであれば、どのような材料を用いてもよい。また複数の封止材を組み合わせて構成することも可能である。
封止材及び封止方法は、調光素子の開口部面積の確保、工程簡略化による加工コスト等を考慮すると、1層の封止が好ましい。1層で封止を行うときの封止材として、末端に反応基を有するイソブチレンオリゴマーを主体とした熱硬化型弾性シーリング材や、アクリル系紫外線硬化樹脂等の使用が例示できる。また、2層で封止するときには、高分子ゲル組成物層と接触する1次封止にポリイソブチレン系シーラント等、2次封止としてアクリル樹脂等が例示できる。本発明における封止材及び封止方法は上記例示に限定されるものではなく、多種多様なものが選択でき、かつ、それらを組み合わせて使用してもよい。
また、基板としてホットメルト性の材料を用いた場合には、端部に熱をかけて圧着することによって基板同士を接着させ、封止材の代わりとして用いることもできる。
[2]調光素子の製造方法:
本発明の調光素子は、少なくとも保持部材中に保持された、刺激応答性高分子ゲルがパターン上に配置されている変色領域を含むことを特徴とする。このような変色領域は、例えば以下のような方法で作成することができる。保持部材前駆体中に刺激応答性高分子ゲル中に分散させた分散液を調整する。その後に、(1)分散液を各種印刷法により基板上にパターン状に印刷し、硬化手段により保持部材前駆体を硬化させ、印刷時に成型したパターンを持つ調光素子とする、(2)分散液を基板上に塗布した後に、一定のパターンを持ったフォトマスクを分散液上に配置し、電子線や紫外線などの高エネルギー線でフォトマスクの形状に硬化させた後に、未硬化の部分を洗浄して、フォトマスクのパターンを持った調光素子とする、(3)分散液を基板上に塗布した後に、電子線や紫外線などの高エネルギー線を塗布層の上に集光し、一定のパターンを高エネルギー線を用いて描き、調光素子とする方法、などが挙げられる。(2)、(3)の方法を用いる場合には塗布、硬化、洗浄のプロセスを繰り返すことによって複数の異なる特性をもつ変色領域を形成することも好ましく実施できる。本発明の製造方法によれば、煩雑な工程を経ることなく低コストで上記調光素子を作製することができる
保持部材前駆体中に刺激応答性高分子ゲルを分散した分散液の塗布方法としては、公知の塗布方法を用いることができ、例えば、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、キャストコーティング法、スプレーコーティング法、リバースコーティング法、ディップコーティング法、ブレードコーティング法、コンマコーティング法などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
フォトマスクや高エネルギー線を集光して硬化させる場合には、保持部材前駆体として、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂などが好ましく使用される。フォトマスクや、高エネルギー線を集光する方法は用いる高エネルギー線の波長の1/2程度までの微細な構造を作ることができるので好ましい。
また、前記分散液中には液体が含まれるため、内部液体の蒸発を防ぐために、基板上に分散液を塗布した後にもう一対の基板でサンドイッチ状にラミネートすることも好ましく実施される。このとき配置する基板は塗布時に用いた基板と同じ材質であっても、違う材質であってもかまわない。ただし、硬化手段として高エネルギー線を用いる場合には、どちらか一方の基板は硬化手段である高エネルギー線が透過可能な材質であることが必要である。
さらに、基板間の厚みを一定に保つためにスペーサーを利用して基板間の厚みを保持しておくことが好ましい。スペーサーとしてはガラスビーズやポリスチレンビーズなどの粒子、または基板上に配置された凹凸部などを用いることができる。基板上の凹凸は例えば、基板上に硬化性の樹脂を印刷、硬化させることなどによって作製することができる。
また、パターン状に配置された変色領域以外に部分に刺激応答性高分子ゲルを含まない樹脂を配置しておくことも好ましく実施できる。このような樹脂は、変色領域を形成した後の基板上に樹脂前駆体を一定の厚みに塗布した後に、樹脂前駆体を硬化させることによって作製することができる。
以上、本発明の好ましい実施の形態を説明したが、本発明はその要旨の範囲内で、様々な変形や変更が可能である。
色材を含有しない刺激応答性(高温収縮型)高分子ゲル粒子A(粒子A)を、以下のようなプロセスにより製造した。
(粒子Aの製造)
N−イソプロピルアクリルアミド「NIPAM」(3.5758g)と、メチレンビスアクリルアミド(0.0072g)との混合水溶液(19.1630g)に15分間窒素を通し溶存酸素を除き、NIPAMのモノマー溶液を調製した。この溶液に対して、重合開始剤APS(過硫酸アンモニウム)(13.5mg)の水溶液(0.5106g)を加えて攪拌し均一に溶解させた。75mm径の3枚羽根の攪拌翼を取り付けた2Lのセパラブルフラスコに、ソルゲン50(第一工業製薬製 6.00g)を含有するシクロヘキサン(1.2L)溶液をいれ、さらに先に調製したNIPAMのモノマー溶液を加え、窒素を流してフラスコ内部全体を窒素置換した。
ウォーターバスを用いてこのフラスコ全体を25℃に保ち、攪拌翼を800rpmで15分間回転させて水相をシクロヘキサン中に懸濁、分散させた。攪拌翼の回転数を250rpmにして、この分散液に対してTMEDA(テトラメチルエチレンジアミン)(0.8ml)を含有するシクロヘキサン(3.2ml)溶液を加えて、反応を開始させ、25℃に保ったまま250rpmで2時間重合した。得られた重合体の粒子をジメチルホルムアミド及び水で十分に洗浄した。このようにして刺激応答性高分子ゲル粒子(粒子A)を作製した。
作製した刺激応答性高分子ゲル粒子は、室温(25℃,膨潤状態)での体積平均粒径が30μmであった。この刺激応答性高分子ゲル粒子は約34℃に相転移温度を有していた。すなわち本高分子ゲル粒子は、相転移点よりも高い温度では収縮し、低い温度では膨潤する。また、その体積変化量は約20倍であった。
(粒子Bの製造)
色材を含有した刺激応答性(高温収縮型)高分子ゲル粒子B(粒子B)を、以下のようなプロセスにより製造した。
N−イソプロピルアクリルアミド「NIPAM」(3.5758g)と、メチレンビスアクリルアミド(0.0072g)と、マイクロカプセル化カーボンブラック分散液(大日本インキ化学製、MC black 082−E、顔料分14.3%含有)(8.1630g)と、を蒸留水(16.52g)に溶解した溶液を15分間窒素を通し溶存酸素を除き、NIPAMの顔料分散液を調製した。
この溶液に対して重合開始剤APS(過硫酸アンモニウム)(29.9mg)の水溶液(0.5106g)を加えて攪拌し均一に溶解させた。75mm径の3枚羽根の攪拌翼を取り付けた2Lのセパラブルフラスコにソルゲン50(6.00g)のシクロヘキサン(1.2L)溶液をいれ、さらに先に調製したNIPAMの顔料分散液を加え、窒素を流してフラスコ内部全体を窒素置換した。
ウォーターバスを用いてこのフラスコ全体を25℃に保ち、攪拌翼を800rpmで15分間回転させて水相をシクロヘキサン中に懸濁、分散させた。攪拌翼の回転数を250rpmにして、この分散液に対してTMEDA(テトラメチルエチレンジアミン)(0.8ml)のシクロヘキサン(3.2ml)溶液を加えて、反応を開始させ、25℃に保ったまま250rpmで2時間重合した。得られた重合体の粒子をジメチルホルムアミド及び水で十分に洗浄した。このようにして刺激応答性高分子ゲル粒子(粒子B)を作製した。
合成した刺激応答性高分子ゲル粒子は室温(25℃,膨潤状態)での体積平均粒径が20μmであった。この刺激応答性高分子ゲル粒子は約34℃に相転移温度を有していた。すなわち、本高分子ゲル粒子は、相転移点よりも高い温度では収縮し、低い温度では膨潤する。またその体積変化量は約15倍であった。
(粒子Cの製造)
色材を含有した刺激応答性(高温収縮型)高分子ゲル粒子C(粒子C)を、以下のようなプロセスにより製造した。
N−イソプロピルアクリルアミド「NIPAM」(3.5758g)と、メチレンビスアクリルアミド(0.0072g)と、マイクロカプセル化青色顔料分散液(大日本インキ化学製、MC blue 182−E、顔料分14.2%含有)(10.2860g)と、を蒸留水(15.42g)に溶解した溶液に15分間窒素を通し溶存酸素を除き、NIPAMの顔料分散液を調製した。
この溶液に対して重合開始剤APS(過硫酸アンモニウム)(12.9mg)の水溶液(0.5106g)を加えて攪拌し均一に溶解させた。75mm径の3枚羽根の攪拌翼を取り付けた2Lのセパラブルフラスコにソルゲン50(6.00g)のシクロヘキサン(1.2L)溶液をいれ、さらに先に調製したNIPAMの顔料分散液を加え、窒素を流してフラスコ内部全体を窒素置換した。
ウォーターバスを用いてこのフラスコ全体を25℃に保ち、攪拌翼を800rpmで15分間回転させて水相をシクロヘキサン中に懸濁、分散させた。攪拌翼の回転数を250rpmにして、この分散液に対してTMEDA(テトラメチルエチレンジアミン)(0.8ml)のシクロヘキサン(3.2ml)溶液を加えて、反応を開始させ、25℃に保ったまま250rpmで2時間重合した。得られた重合体の粒子をジメチルホルムアミド及び水で十分に洗浄した。このようにして刺激応答性高分子ゲル粒子(粒子B)を作製した。
合成した刺激応答性高分子ゲル粒子は室温(25℃,膨潤状態)での体積平均粒径が23μmであった。この刺激応答性高分子ゲル粒子は約34℃に相転移温度を有していた。すなわち、本高分子ゲル粒子は、相転移点よりも高い温度では収縮し、低い温度では膨潤する。またその体積変化量は約18倍であった。
(粒子Dの製造)
色材を含有した刺激応答性(高温収縮型)高分子ゲル粒子D(粒子D)を、以下のようなプロセスにより製造した。
N−イソプロピルアクリルアミド「NIPAM」(3.5733g)と、メチレンビスアクリルアミド(0.0072g)と、マイクロカプセル化赤色顔料分散液(大日本インキ化学製、MCM−44−T、顔料分13.4%含有)(10.3560g)と、を蒸留水(15.56g)に溶解した溶液に15分間窒素を通し溶存酸素を除き、NIPAMの顔料分散液を調製した。
この溶液に対して重合開始剤APS(過硫酸アンモニウム)(12.9mg)の水溶液(0.5106g)を加えて攪拌し均一に溶解させた。75mm径の3枚羽根の攪拌翼を取り付けた2Lのセパラブルフラスコにソルゲン50(6.00g)のシクロヘキサン(1.2L)溶液をいれ、さらに先に調製したNIPAMの顔料分散液を加え、窒素を流してフラスコ内部全体を窒素置換した。
ウォーターバスを用いてこのフラスコ全体を25℃に保ち、攪拌翼を800rpmで15分間回転させて水相をシクロヘキサン中に懸濁、分散させた。攪拌翼の回転数を250rpmにして、この分散液に対してTMEDA(テトラメチルエチレンジアミン)(0.8ml)のシクロヘキサン(3.2ml)溶液を加えて、反応を開始させ、25℃に保ったまま250rpmで2時間重合した。得られた重合体の粒子をジメチルホルムアミド及び水で十分に洗浄した。このようにして刺激応答性高分子ゲル粒子(粒子D)を作製した。
合成した刺激応答性高分子ゲル粒子は室温(25℃,膨潤状態)での体積平均粒径が23μmであった。この刺激応答性高分子ゲル粒子は約34℃に相転移温度を有していた。すなわち、本高分子ゲル粒子は、相転移点よりも高い温度では収縮し、低い温度では膨潤する。また、その体積変化量は約18倍であった。
(粒子Eの製造)
色材を含有した刺激応答性(高温膨潤型)高分子ゲル粒子E(粒子E)を、以下のようなプロセスにより製造した。
アクリルアミド1.0gと、架橋剤としてのメチレンビスアクリルアミド1.0mgと、蒸留水0.575gと、色材としての黒色顔料(大日本インキ化学製、MC black 082−E、顔料分14.3%含有)の水分散液3.425gと、を攪拌混合した水溶液Bを調製した。
ソルビトール系界面活性剤(ソルゲン50:第一工業製薬(株)製)2.375gをトルエン300mlに溶解した溶液を窒素置換された反応容器に加え、これに、先に調製した水溶液Bを添加し、回転式攪拌装置を用いて1200rpmで30分攪拌して懸濁させ、懸濁液Bを得た。得られた懸濁液Bをフラスコ中に入れ、窒素置換により酸素を除いた後、重合開始剤である過硫酸アンモニウム0.004gを水0.5mlに溶解したものを添加し、70℃に加熱して3時間、重合を行った。重合終了後、大量のアセトンで洗浄することで精製を行い、さらに乾燥させて、色材を含有したアクリルアミドゲルの粒子を得た。
次に、アクリル酸1.5g、架橋剤としてのメチレンビスアクリルアミド0.0015g、および蒸留水5.5gを混合し、窒素置換後、これに過硫酸アンモニウム0.006gを水0.5gに溶解したものを添加し、混合液を得た。この混合液に上記得られたアクリルアミドゲルの粒子0.5gを加えて70℃に加熱し、3時間重合を行いIPN高分子ゲル粒子(粒子E)を調製した。
得られたIPN高分子ゲル粒子(アクリル酸−アクリルアミド相互侵入網目構造体ゲル粒子)を大量の蒸留水中に投入し、加熱冷却を行いゲル粒子を膨潤収縮させ、これをろ過する操作を繰り返すことで精製を行った。
得られたIPN高分子ゲル粒子の乾燥時の体積平均粒子径は、約10μmであった。このIPN高分子ゲル粒子を、大量の純水に加えて膨潤させた。このIPN高分子ゲル粒子の10℃における平衡膨潤時の吸水量は約3g/gであった。ところが、これを50℃に加熱するとさらに膨潤し、約80g/gの吸水量を示すことがわかった。この相転移点は30〜40℃の温度範囲にあった。つまり、相転移点よりも高温では膨潤し、低温では収縮する。この変化は可逆的であり、収縮時に比べ膨潤時の高分子ゲル粒子の粒子径が約3倍まで変化し、すなわち、体積で約27倍の変化が得られた。
(粒子Fの製造)
色材を含有した刺激応答性(pH応答型)高分子ゲル粒子F(粒子F)を、以下のようなプロセスにより製造した。
主モノマーとしてアクリル酸20.0gをビーカーにとり、冷却して攪拌しつつ25質量%の水酸化ナトリウム水溶液33gを滴下して約74%の中和を行った後、この中和後の溶液に、過硫酸アンモニウム0.1gを2gの純水に溶解した溶液と、ゲル着色用の顔料としてフタロシアニン系青色顔料10.0gと、架橋剤であるメチレンビスアクリルアミド0.1gとを加え、充分に攪拌してエマルゲン909(花王(株)製)1gを添加し、均一な溶液を調製した。さらにこの溶液に15分間窒素を通し、溶存酸素を除いたものを、セパラブルフラスコ中でシクロヘキサン500gに分散安定剤であるソルビトール系界面活性剤(第一工業製薬製:ソルゲン50)5.0gを溶解して窒素置換した溶液に添加し、回転式攪拌羽根を用いて1200回転で10分間高速攪拌して懸濁させた。
次に、反応系の温度を25℃に調節し、溶液を攪拌しながらN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンの50%シクロヘキサン溶液を添加し、重合を行った。重合後、生成した着色高分子ゲル粒子を回収し、水酸化ナトリウム水溶液で中和反応を行った後に、純水で繰り返し洗浄を行いアセトンで脱水した後、乾燥させた。得られた粒子を分級して、平均粒径が約4μmの刺激応答性高分子ゲル粒子F(粒子F)を得た。
刺激応答性高分子ゲル粒子Fの潤湿時の平均最小粒子径(A1)は水−アセトン混合溶液(体積比1:4)中に浸した状態で13.6μm、潤湿時の平均最大粒子径(A2)はpH7の純水中に浸した状態で29μmであった。また、この着色粒子の純水吸水量は約200g/gであった。
(酸性保持部材前駆体Aの調製)
重量平均分子量800,000を有するポリアクリル酸(日本触媒製 アクリアックAS−58)の30wt%水溶液、20gに対し、メタクリル酸グリシジル0.5gを加え、室温で24時間攪拌し反応させることで架橋性高分子を合成した。この溶液に対して光開始剤(チバスペシャリティケミカル製 イルガキュア2959)を0.8gと純水60gとを加え、酸性保持部材前駆体Aを調製した。このときの樹脂組成物のpHは約2.2であった。
この酸性保持部材前駆体Aを、ガラス基板間に100μmの厚さに保持したものを調整し、紫外線を照射(高圧水銀灯、160W/cm,150sec,照射距離40cm)ところ、樹脂組成物全体がゲル化し自己保持製のある硬化物が得られた。
(硬化性インキの調製)
刺激応答性高分子ゲル粒子の水分散液20gに対して、ポリアクリルアミド、保持剤前駆体(東洋合成製SPP−S−13または酸性保持剤前駆体Aを固形分濃度7.5wt%となるように調製したもの)20gを加え、さらに必要に応じて、添加剤としてドデシル硫酸ナトリウム(SDS、遊星式分散機を用いて保持剤前駆体中に刺激応答性高分子ゲル粒子を均一に分散し、各散液A−Gを調製した。分散液A−Gの組成は表1に示した。なお、表1中の「固形分濃度」は、刺激応答性高分子ゲル粒子の水分散液中の固形分濃度を示す。
パターン化された調光素子の作製
(参考例1)
2枚のガラス基板(松浪ガラス製白板ガラス 50×50×0.9mm)間に、ポリスチレンビーズ(積水化学製ミクロパール,粒径110μm)からなるスペーサを設置した。そして、この2枚のガラス基板間に分散液Aを注入して狭持した。なお、2枚のガラス基板のうち、1枚のガラス基板の変色領域を形成する面側には、剥離剤として日東電工製のフッ素テープ(商品名:ニフトロン)を貼付しておいた。
ガラス基板上に、図8(a)に示すフォトマスクを配置して、このフォトマスク上から、紫外線(ウシオ電機製、超高圧水銀灯、照度75mW/cm2)を6秒間照射し、フォトマスク部分の保持剤前駆体である硬化樹脂を硬化した。なお、フォトマスクは、レーザープリンター(富士ゼロックス製DocuCentre Color 500)を用いて、図8(a)示したようなパターンをOHPフィルム上に形成して作製した。
次に、フォトマスクと片側の基板とを剥離し、未硬化の分散液を蒸留水で洗浄し、パターン化された変色領域を形成した調光素子を得た。
この調光素子は室温付近(25℃)ではパターン部分もほぼ透明であったが、60℃に加熱するとパターン部分が白濁し、文字が浮き出て見えた。
(参考例2)
分散液Bを用いて参考例1と同様の方法でパターン化された調光素子を得た。この調光素子は室温付近(25℃)ではパターン部分は黒く着色して文字が浮き出て見えていたが、60℃に加熱するとパターン部分が消色した。
(参考例3)
分散液Cを用いて参考例1と同様の方法でパターン化された調光素子を得た。さらにもう一枚のガラス基板を、パターンを形成した表面の対向面に配置し、ガラス基板の端面を紫外線硬化樹脂(日本化薬製 KAYARAD R381−I)でコートし、紫外線照射(高圧水銀灯、120W/cm、照射距離20cm,30秒間照射)を行うことによって硬化し、周囲を封止した調光素子を得た。この調光素子は室温付近(25℃)ではパターン部分は青く着色して文字が浮き出て見えていたが、60℃に加熱するとパターン部分が消色した。
(参考例4)
分散液Dを用いて、PETフィルム(厚み100μm)上にバーコーターを用いて厚み110μmにコートし、図8(a)示したようなフォトマスクを塗布面上に配置して、フォトマスクの側から紫外線(ウシオ電機製、超高圧水銀灯、照度75mW/cm2)を6秒間照射し、フォトマスク部分の保持剤前駆体である硬化樹脂を硬化した。フォトマスクを剥離し、未硬化の分散液を蒸留水で洗浄し、パターン化された調光素子を得た。この調光素子は室温付近(25℃)ではパターン部分は赤く着色して文字が浮き出て見えていたが、60℃に加熱するとパターン部分が消色した。また、基板を変形させることも可能であり、柔軟性を持つ調光素子を作製可能であることも分かった。
(参考例5)
2枚のガラス基板(松浪ガラス製白板ガラス 50×50×0.9mm)間に、ポリスチレンビーズ(積水化学製ミクロパール,粒径110μm)からなるスペーサを設置した。そして、この2枚のガラス基板間に分散液Bを注入して狭持した。なお、2枚のガラス基板のうち、1枚のガラス基板の変色領域を形成する面側には、剥離剤として日東電工製のフッ素テープ(商品名:ニフトロン)を貼付しておいた。
ガラス基板上に、図8(b)に示すフォトマスクを配置して、このフォトマスク上から、紫外線(ウシオ電機製、超高圧水銀灯、照度75mW/cm2)を6秒間照射し、フォトマスク部分の保持剤前駆体である硬化樹脂を硬化した。なお、フォトマスクは、レーザープリンター(富士ゼロックス製DocuCentre Color 500)を用いて、図8(b)示したようなパターンをOHPフィルム上に形成して作製した。
フォトマスクと剥離剤を塗布した基板を剥離し、未硬化の分散液を蒸留水で洗浄し、図8(b)の形にパターンがガラス基板上に形成された基板Aを得た。さらに分散液Cを粒径110μm(積水化学製ミクロパール)のポリスチレンビーズ(積水化学製ミクロパール)をスペーサとして用いて、前記基板Aと剥離剤を塗布したガラス基板間に挟持し、ガラス基板上に図8(c)に示したパターンを有するフォトマスクを配置してフォトマスクの側から紫外線(ウシオ電機製、超高圧水銀灯、照度75mW/cm2)を6秒間照射し、フォトマスク部分の保持剤前駆体である硬化樹脂を硬化した。
フォトマスクと剥離剤を塗布した基板を剥離し、未硬化の分散液を蒸留水で洗浄し、さらに図8(c)の形にパターニングされた基板Bを得た。分散液Eと基板B、図8(d)に示したフォトマスクを用いて、同様の操作を行い、室温で「G」,「E」,「L」の文字がそれぞれ黒、青、赤に着色した調光素子を得た。この調光素子は室温付近(25℃)ではパターン部分はそれぞれに着色して文字が浮き出て見えていたが、60℃に加熱するとパターン部分が消色した。
(実施例1)
分散液Cを用いて参考例1と同様の方法でパターン化された調光素子を得た。この調光素子上にさらにSPP−S−13(固形分濃度5wt%)5gにSDS0.3gを溶解した分散液を塗布し、粒径200μmのポリスチレンビーズ(積水化学製ミクロパール)をスペーサとして用いて、もう一枚のガラス基板で挟持した。紫外線(ウシオ電機製、超高圧水銀灯、照度75mW/cm2)を20秒間照射して、SPP−S−13を硬化させた後に、ガラス基板の端面を紫外線硬化樹脂(日本化薬製 KAYARAD R381−I)でコートし、紫外線照射(高圧水銀灯120W/cm、照射距離20cm,30秒間照射)を行うことによって硬化し、周囲を封止した調光素子を得た。この調光素子は室温付近(25℃)ではパターン部分は青く着色して文字が浮き出て見えていたが、60℃に加熱するとパターン部分が消色した。
(実施例2)
分散液Eを用いて参考例1と同様の方法でパターン化された調光素子を得た。この調光素子上にさらに酸性保持剤前駆体A(固形分濃度5wt%)5gにSDS0.3gを溶解した分散液を塗布し、粒径200μm(積水化学製ミクロパール)のポリスチレンビーズ(積水化学製ミクロパール)をスペーサとして用いて、もう一枚のガラス基板で挟持した。紫外線(ウシオ電機製、超高圧水銀灯、照度75mW/cm2)を20秒間照射して、SPP−S−13を硬化させた後に、ガラス基板の端面を紫外線硬化樹脂(日本化薬製 KAYARAD R381−I)でコートし、紫外線照射(高圧水銀灯120W/cm、照射距離20cm,30秒間照射)を行うことによって硬化し、周囲を封止した調光素子を得た。この調光素子は60℃ではパターン部分は黒く着色して文字が浮き出て見えていたが、10℃に冷却するとパターン部分が消色した。
(実施例3)
分散液Fを用いて粒径110μm(積水化学製ミクロパール)のポリスチレンビーズ(積水化学製ミクロパール)をスペーサとして用いて、基板上には剥離剤を塗布したガラス基板(松浪ガラス製白板ガラス50×50×0.9mm)とITOガラス基板(ITO蒸着面が内側になるように配置)間に挟持した。
一方の基板上にレーザープリンター(富士ゼロックス製DocuCentre Color 500)を用いてOHPフィルム上に作製した、図8(a)示したようなパターンを有するフォトマスクをITOガラス基板上に配置して、フォトマスクの側から紫外線(ウシオ電機製、超高圧水銀灯、照度75mW/cm2)を6秒間照射し、フォトマスク部分の保持剤前駆体である硬化樹脂を硬化した。フォトマスクとガラス基板を剥離し、未硬化の分散液を蒸留水で洗浄した。さらに、SPP−S−13(固形分濃度5wt%)5gにSDS0.3gを溶解した分散液をITO基板上塗布し、粒径200μm(積水化学製ミクロパール)のポリスチレンビーズ(積水化学製ミクロパール)をスペーサとして用いて、もう一枚のITOガラス基板(ITO蒸着面が内側になるように配置)で挟持した。紫外線(ウシオ電機製、超高圧水銀灯、照度75mW/cm2)を20秒間照射して、SPP−S−13を硬化し、調光素子を得た。この調光素子に10Vの直流電圧を印加した。パターン形成をした基板側を陽極にしたところ、調光素子のパターンは着色し、反対に陰極にしたところパターンは消色した。
(参考例6)
分散液Gを用いて粒径110μm(積水化学製ミクロパール)のポリスチレンビーズ(積水化学製ミクロパール)をスペーサとして用いて、一方の基板上には剥離剤を塗布した2枚のガラス基板間(松浪ガラス製白板ガラス50×50×0.9mm)間に挟持した。一方の基板上にレーザープリンター(富士ゼロックス製DocuCentre Color 500)を用いてOHPフィルム上に作製した、図8(a)示したようなパターンを有するフォトマスクをガラス基板上に配置して、フォトマスクの側から電子線を照射し、フォトマスク部分の保持剤前駆体である硬化樹脂を硬化した。フォトマスクと片側の基板を剥離し、未硬化の分散液を蒸留水で洗浄し、パターン化された変色領域を形成した調光素子を得た。この調光素子は室温付近(25℃)ではパターン部分は青く着色して文字が浮き出て見えていたが、60℃に加熱するとパターン部分が消色した。
(実施例4)
分散液Cを用いて参考例1と同様の方法でパターン化された調光素子を得た。この調光素子上にさらにアクリル系紫外線硬化樹脂(日本化薬製KAYARADR 381−I)を塗布し、粒径200μmのポリスチレンビーズ(積水化学製ミクロパール)をスペーサとして用いて、もう一枚のガラス基板で挟持した。紫外線(ウシオ電機製、超高圧水銀灯、照度75mW/cm2)を20秒間照射して、SPP−S−13を硬化させた後に、ガラス基板の端面を紫外線硬化樹脂(日本化薬製 KAYARAD R381−I)でコートし、紫外線照射(高圧水銀灯120W/cm、照射距離20cm,30秒間照射)を行うことによって硬化し、周囲を封止した調光素子を得た。この調光素子は室温付近(25℃)ではパターン部分は青く着色して文字が浮き出て見えていたが、60℃に加熱するとパターン部分が消色した。