JP4228738B2 - 高分子ゲル組成物及びその製造方法、並びに高分子ゲル組成物を用いた光学素子 - Google Patents

高分子ゲル組成物及びその製造方法、並びに高分子ゲル組成物を用いた光学素子 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、刺激により体積変化を示す粒子を含有する高分子ゲル組成物及びその製造方法、並びに高分子ゲル組成物を用いた光学素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
pH変化、イオン強度変化、化学物質の吸脱着、溶媒組成変化、あるいは熱、光、電気刺激などの付与によって可逆的に膨潤・収縮(体積変化)を起こす刺激応答性高分子ゲルを利用して、光の透過量や散乱性を制御することで調光・発色を行う光学素子技術が知られている。
例えば、温度変化によって液体を吸脱する高分子ゲルの膨潤・収縮による溶媒との屈折率差を変化させることによる光散乱性を制御して表示を行う素子が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。また、電気刺激によって液体を吸収・放出する高分子ゲルの光散乱性の変化によって表示を行う素子(例えば、特許文献3参照。)や、含有される導電性高分子のイオンドープ・脱ドープによるpH変化によって、高分子ゲルの光散乱性を変化させて表示を行う素子(例えば、特許文献4参照。)や、電場の作用で液体を吸収・放出する高分子ゲルの膨潤・収縮により、光を遮光・反射・散乱あるいは透過状態を制御して、白濁・透明の表示を行う素子(例えば、特許文献5参照。)が提案されている。
さらに、刺激応答性高分子ゲルであるN−イソプロピルアクリルアミドゲル粒子をアクリルアミドゲル中に分散し、白濁・透明の表示を行う素子の提案もなされている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
上記の光学素子においてはいずれも刺激応答高分子ゲルの膨潤・収縮による高分子ゲル内部の光散乱性の変化を利用したものであるため、直線光透過率は大きく変化するが、散乱光を含めた全光線透過率を大きく変化することは難しかった。また色変化は白色、透明間に制限され、さまざまな色変化を起こさせることはできなかった。
さらに、これらの問題を回避するため本発明者らによって着色した刺激応答性高分子ゲルを刺激応答性高分子ゲルが含有する液体を保持できる保持部材中に分散させた構成の調光材料が提案されている(例えば、特許文献6参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開昭61−151621号公報
【特許文献2】
特開昭62−925号公報
【特許文献3】
特開平4−134325号公報
【特許文献4】
特公平7−95172号公報
【特許文献5】
特開平5−188354号公報
【特許文献6】
特開2002−105327号公報
【非特許文献1】
A. Suzuki et. al. Jpn. J. Appl.Phys. 38 (1999), 5204.
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の発明における調光材料には以下のような課題があった。すなわち、保持部材が流動性を有する場合には、刺激による繰り返し色変化により保持部材内部の刺激応答高分子ゲルが徐々に凝集し、光学特性が損なわれる場合があった。一方、保持部材に流動性のない高分子素材を用いた場合には、内部に分散された刺激応答高分子ゲルが刺激により収縮した際に保持部材の高分子が刺激応答高分子ゲルの膨潤状態の形に保持され、収縮した刺激応答高分子ゲルから放出された液体と保持部材との間に界面が生じ、この界面の散乱により調光材料が白濁しヘイズが生じる場合があった。
【0006】
本発明は、全光線透過率を大きく変化させることができ、かつヘイズが少なく透明性の高い光学素子、並びに光学素子に用いられる高分子ゲル組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、
<1> 高分子ゲル連続相と、前記高分子ゲル連続相中に分散された刺激により単独で体積変化を示す高分子ゲル粒子と、前記高分子ゲル連続相と前記高分子ゲル粒子とに含まれる液体とを有する高分子ゲル組成物であって、前記高分子ゲル粒子は調光用材料を含有し、前記高分子ゲル連続相と前記高分子ゲル粒子とは互いに相互侵入網目構造を形成することを特徴とする高分子ゲル組成物である。
【0008】
<2> <1>に記載の高分子ゲル組成物の製造方法であって、前記高分子ゲル連続相を形成するための、少なくともモノマーと架橋剤と開始剤と溶媒とを含有する溶液に、前記高分子ゲル粒子を分散して高分子ゲル粒子分散液を得る分散工程と、前記高分子ゲル粒子分散液を重合する重合工程とを含むことを特徴とする高分子ゲル組成物の製造方法である。
【0009】
<3> <2>に記載の高分子ゲル組成物の製造方法によって製造された高分子ゲル組成物である。
【0010】
<4> <1>に記載の高分子ゲル組成物の製造方法であって、前記高分子ゲル連続相を形成するための、少なくとも架橋性高分子と開始剤と溶媒とを含有する溶液に、前記高分子ゲル粒子を分散して高分子ゲル粒子分散液を得る分散工程と、前記高分子ゲル粒子分散液を重合する重合工程とを含むことを特徴とする高分子ゲル組成物の製造方法である。
【0011】
<5> <4>に記載の高分子ゲル組成物の製造方法によって製造された高分子ゲル組成物である。
【0012】
<6> 一対の基板間に、<1>、<3>又は<5>に記載の高分子ゲル組成物が挟持され、且つ前記基板の端部が封止処理されていることを特徴とする光学素子である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の高分子ゲル組成物及びその製造方法、並びに高分子ゲル組成物を用いた光学素子について詳細に説明する。
<高分子ゲル組成物>
本発明の高分子ゲル組成物は、高分子ゲル連続相と、前記高分子ゲル連続相中に分散された刺激により単独で体積変化を示す高分子ゲル粒子と、前記高分子ゲル連続相と前記高分子ゲル粒子とに含まれる液体とを有する高分子ゲル組成物であって、前記高分子ゲル粒子は調光用材料を含有し、前記高分子ゲル連続相と前記高分子ゲル粒子とは互いに相互侵入網目構造を形成することを特徴とする。
前記高分子ゲル粒子は、前記液体の存在下で温度、pH、電場、光、イオン濃度変化などのさまざまな外部からの刺激によって前記液体を吸収、放出(膨潤、収縮)することにより体積変化する性質を示す。
ここで、「前記高分子ゲル連続相と前記高分子ゲル粒子とは互いに相互侵入網目構造を形成する」とは、前記高分子ゲル連続相を構成する高分子化合物と、前記高分子ゲル粒子を構成する高分子化合物との間で相互侵入網目構造を形成する態様をいう。
【0014】
本発明の高分子ゲル組成物を上記構成とすることによって、任意の色に着色でき、前記高分子ゲル連続相と前記高分子ゲル粒子との界面における屈折率差が小さくなり、光散乱性(Haze、ヘイズ)が低減できるという効果が生まれる。その理由は、前記高分子ゲル連続相と前記高分子ゲル粒子とが互いに相互侵入網目構造を形成するため、前記高分子ゲル粒子が収縮したときに前記高分子ゲル連続相はその収縮に追従可能となると考えられる。そのため、前記高分子ゲル連続相と前記高分子ゲル粒子とが同時に体積変化し、従来の構成で問題となっていた高分子ゲル粒子から放出された液体と高分子ゲル連続相との間で新たな界面が生じることがないからであると考えられる。
さらには、本発明の高分子ゲル組成物は、それ自身が自己保持性を持つことから、加工し易く、様々な用途に利用できる。例えば、本発明の高分子ゲル組成物を2枚の基板間に層状に封入したものは、調光素子あるいは調光フイルムとして利用できる。
【0015】
−高分子ゲル粒子−
本発明に係る高分子ゲル粒子は、後述する色材又は光散乱材などの調光用材料を含有する。また、本発明に係る高分子ゲル粒子には、熱、光、電気、磁気などのエネルギー付与、pH変化、酸化・還元、イオン濃度変化、化学物質の吸脱着、溶媒組成変化などの刺激によって液体を吸収・放出し、可逆的に体積変化(膨潤・収縮)するいわゆる刺激応答性高分子ゲルが用いられる。
【0016】
本発明に係る高分子ゲル粒子は、刺激により単独で体積変化を示すものである。ここで、「単独で体積変化を示す」とは、前記高分子ゲル連続相を構成する高分子ゲルとの相互作用によらなくとも、何らかの刺激によりその粒子単独で体積変化を示すことをいう。
【0017】
また、刺激応答性高分子ゲルは以下のものが好ましい。
電気刺激によるpH変化によって応答するものとしては種々電解質系高分子ゲルが挙げられる。具体的には、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸の架橋物やその塩;(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその塩;マレイン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその塩;ポリビニルスルホン酸の架橋物やその塩;ビニルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその塩;ポリビニルベンゼンスルホン酸の架橋物やその塩;ビニルベンゼンスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその塩;ポリアクリルアミドアルキルスルホン酸の架橋物やその塩;
【0018】
アクリルアミドアルキルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその塩;ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの架橋物やその塩;ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその塩や4級化物;ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドとポリビニルアルコールとの複合体の架橋物やその4級化物;ポリビニルアルコールとポリ(メタ)アクリル酸との複合体の架橋物やその塩;カルボキシアルキルセルロース塩の架橋物;ポリ(メタ)アクリロニトリルの架橋物の部分加水分解物やその塩などが挙げられる。
なお、上記の括弧を用いた記述は、括弧内の接頭語を含まない化合物および含む化合物の両方を示しており、例えば(メタ)アクリル酸という記述は、アクリル酸およびメタクリル酸のことを意味するものである。
【0019】
電界による界面活性剤などの化学物質の吸脱着によって刺激応答する高分子ゲルとしては、強イオン性高分子ゲルが好ましく、ポリビニルベンゼンスルホン酸の架橋物やビニルベンゼンスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物;ポリアクリルアミドアルキルスルホン酸の架橋物やアクリルアミドアルキルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物などが挙げられる。これらは、n−ドデシルピリジニウムクロライドなどのアルキルピリジニウム塩、アルキルアンモニウム塩、フェニルアンモニウム塩、テトラフェニルホスホニウムクロライドなどのホスホニウム塩などのカチオン性界面活性剤と組み合わせることで使用される。
【0020】
電気による酸化・還元によって刺激応答する高分子ゲルとしては、カチオン性高分子ゲルが好ましく、ポリジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどポリアミノ置換(メタ)アクリルアミドの架橋物;ポリジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート;ポリジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート;ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのポリ(メタ)アクリル酸アミノ置換アルキルエステルの架橋物;ポリスチレンの架橋物;ポリビニルピリジンの架橋物;ポリビニルカルバゾールの架橋物;ポリジメチルアミノスチレンの架橋物などが挙げられる。これらは、電子受容性化合物と組み合わせてCT錯体(電荷移動錯体)として使用される。このとき好ましく用いられる電子受容性化合物としては、ベンゾキノン;7、7、8、8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ);過塩素酸テトラブチルアンモニウム;テトラシアノエチレン;クロラニル;トリニトロベンゼン;無水マレイン酸;ヨウ素などが挙げられる。
【0021】
熱の付与によって刺激応答する高分子ゲルとしては、変化により水素結合性の変化、膨潤液体との溶媒和の変化や結晶構造の変化等による相転移特性を有するものである。このような高分子ゲルを例示すれば、LCST(下限臨界共融温度)やUCST(上限臨界共融温度)をもつ高分子の架橋体、互いに水素結合する2成分の高分子ゲルのIPN体(相互侵入網目構造体)や結晶性などの凝集性の側鎖をもつ高分子ゲルなどが好ましい。
【0022】
LCSTゲルは、高温において収縮し、IPNゲルや結晶性ゲルは逆に高温で膨潤する特性をもっている。LCSTゲルの具体例としては、ポリ[N−イソプロピルアクリルアミド]などのポリ[N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド]の架橋体、N−アルキル置換(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルなどから選択される1種以上との共重合体の架橋体やその塩、ポリビニルメチルエーテルの架橋体やメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのアルキル置換セルロース誘導体の架橋体などが挙げられる。
【0023】
IPNゲルの具体例としては、ポリ(メタ)アクリルアミドあるいはその誘導体の架橋体とポリ(メタ)アクリル酸の架橋体とからなるIPN体およびその部分中和物(アクリル酸単位を部分的に塩としたもの)、(メタ)アクリルアミドあるいはその誘導体を含む共重合体の架橋体と(メタ)アクリル酸を含む共重合体の架橋体からなるIPN体およびその部分中和物などが挙げられる。また、結晶性ゲルとしてはオクチル基、デシル基、ラウリル基、ステアリル基などの長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸との共重合体の架橋体やその塩、コレステリル系モノマーあるいは芳香族系モノマーと(メタ)アクリル酸との共重合体の架橋体やその塩が挙げられる。
【0024】
さらに、温度変化に応じて複数の相転移点を示すゲルも好ましく使用できる。このようなゲルとしては例えば、ポリ[N−イソプロピルアクリルアミド]などのポリ[N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド]の架橋体とポリ(メタ)アクリル酸の架橋体とのIPN体などが挙げられる。これらのゲルは、温度上昇にともない膨潤−収縮−膨潤という2つの相転移点を示すことが知られている。
【0025】
光の付与によって刺激応答する高分子ゲルとしては、トリアリールメタン誘導体やスピロベンゾピラン誘導体などの、光によってイオン解離する分子構造を有する親水性高分子化合物の架橋物が好ましい。具体的には、ビニル置換トリアリールメタンロイコ誘導体と(メタ)アクリルアミドとの共重合体の架橋物などが挙げられる。
【0026】
磁場の付与によって刺激応答する高分子ゲルとしては、強磁性体粒子や磁性流体を含有するポリビニルアルコールの架橋物などが挙げられるが、高分子ゲル自体は特に限定されるものではなく、高分子ゲルの範疇に含まれるものであればよい。
【0027】
溶液の組成変化やイオン強度の変化によって応答する高分子ゲルとしては、前記した電解質系高分子ゲルが好ましく適用できる。
本発明においては、各々の刺激応答性高分子ゲルを単独で使用することもできるし、複数の刺激応答性高分子ゲルを併用して用いることもできる。
【0028】
前記高分子ゲル粒子の形状には特に制限はないが、球形、楕円体、立方体、多面体、多孔質体、星状、針状、中空状などのものが適用できる。また、粒子の好ましい大きさは、収縮状態時において平均粒子径で0.1μm〜5mmが好ましく、より好ましくは1μm〜1mmである。粒子径が0.1μm以下であると、粒子の扱いが困難になる、光路長が短くなり優れた光学特性が得られないなどの問題が生じることがある。一方、粒子径が5mmよりも大きくなると、体積変化に要する応答時間が大幅に遅くなってしまうなどの問題が生じることがある。
【0029】
前記高分子ゲル粒子は、高分子ゲルを物理的粉砕方法によって粉砕する方法や、架橋前の高分子ゲルを化学的粉砕方法によって粒子化した後に架橋して高分子ゲルとする方法、あるいは乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法などの粒子化重合法の一般的な方法によって作製することができる。
【0030】
また、高分子ゲル粒子の刺激による体積変化速度をより高速にするために、高分子ゲル粒子の従来技術と同様に材料を多孔質化して液体の出入り易さを向上させることも好ましい。一般に膨潤した高分子ゲルを凍結乾燥する方法等で多孔質化することができる。
【0031】
さらに本発明に係る高分子ゲル粒子の刺激に応じた体積変化量(溶液中)は、少なくとも体積比で3以上100以下、好ましくは10以上50以下であることが望ましい。体積比が3未満であると十分な調光コントラストが得られない可能性があり、体積比が100以上になると高分子ゲル粒子内部の色材の濃度が希薄になり十分な着色濃度が得られなくなる場合がある。
【0032】
−調光用材料−
前記高分子ゲル粒子には、調光用材料が含有される。前記調光用材料としては、例えば、色材及び光散乱材等を用いることができる。
前記高分子ゲル粒子に含有可能な色材としては、各種の顔料及び染料が挙げられる。例えば、黒色顔料の各種カーボンブラック(チャネルブラック、ファーネスブラック等)や黒色染料のニグロシン系化合物、そしてカラー顔料、例えば、ベンジジン系のイエロー顔料、キナクリドン系、ローダミン系のマゼンタ顔料、フタロシアニン系のシアン顔料などを挙げることができる。
【0033】
より詳しくは、イエロー顔料としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、例えば顔料としては、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、168等が好適に用いられる。
【0034】
マゼンタ顔料としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。具体的には、例えば顔料としては、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48;2、48;3、48;4、57;1、81;1、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254が特に好ましい。
【0035】
シアン顔料としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、例えば顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15;3、15:4、60、62、66等が特に好適に利用できる。
【0036】
染料としては、例えば、C.I.ダイレクトイエロー1、8、11、12、24、26、27、28、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、157、C.I.アシッドイエロー1、3、7、11、17、19、23、25、29、38、44、79、127、144、245、C.I.ベイシックイエロー1、2、11、34、C.I.フードイエロー4、C.I.リアクティブイエロー37、C.I.ソルベントイエロー6、9、17、31、35、100、102、103、105、C.I.ダイレクトレッド1、2、4、9、11、13、17、20、23、24、28、31、33、37、39、44、46、62、63、75、79、80、81、83、84、89、95、99、113、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230、231、C.I.アシッドレッド1、6、8、9、13、14、18、26、27、35、37、42、52、82、85、87、89、92、97、106、111、114、115、118、134、158、186、249、254、289、C.I.ベイシックレッド1、2、9、12、14、17、18、37、C.I.フードレッド14、;
【0037】
C.I.リアクティブレッド23、180、C.I.ソルベントレッド5、16、17、18、19、22、23、143、145、146、149、150、151、157、158、C.I.ダイレクトブルー1、2、6、15、22、25、41、71、76、78、86、87、90、98、163、165、199、202、C.I.アシッドブルー1、7、9、22、23、25、29、40、41、43、45、78、80、82、92、93、127、249、C.I.ベイシックブルー1、3、5、7、9、22、24、25、26、28、29、C.I.フードブルー2、C.I.ソルベントブルー22、63、78、83〜86、191、194、195、104、C.I.ダイレクトブラック2、7、19、22、24、32、38、51、56、63、71、74、75、77、108、154、168、171、C.I.アシッドブラック1、2、7、24、26、29、31、44、48、50、52、94、C.I.ベイシックブラック2、8、C.I.フードブラック1、2、C.I.リアクティブブラック31、C.I.フードバイオレット2、C.I.ソルベントバイオレット31、33、37、C.I.ソルベントグリーン24、25、C.I.ソルベントブラウン3、9等が挙げられる。これらの顔料及び染料は、単独で使用してもよく、所望とする色を得るために混合して使用してもよい。ただし、耐候性の観点からは染料よりも顔料を用いるほうが好ましい。また、染料は高分子ゲル粒子中に化学反応によって結合させたり、あるいは前記染料化合物に重合可能な基を導入して高分子ゲル粒子中に共重合させることも好ましい。
【0038】
前記高分子ゲル粒子に含有可能な光散乱材としては、高分子ゲル粒子の体積変化に用いられる液体の屈折率と異なる屈折率を有する材料であれば特に制限はなく、各種の無機化合物および有機化合物が適用できる。
【0039】
無機化合物の具体例としては、酸化亜鉛、塩基性炭酸鉛、塩基性硫酸鉛、硫酸鉛、リトボン、白雲母、硫化亜鉛、酸化チタン、酸化アンチモン、鉛白、酸化ジルコニウム、アルミナ、マイカナイト、マイカレックス、石英、炭酸カルシウム、石膏、クレー、シリカ、ケイ酸、珪素土、タルク、塩基性炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、サチン白等の無機酸化物や、亜鉛、アルメル、アンチモン、アルミニウム、アルミニウム合金、イリジウム、インジウム、オスミウム、クロム、クロメル、コバルト、ジルコニウム、ステンレス鋼、金、銀、洋銀、銅、青銅、すず、タングステン、タングステン鋼、鉄、鉛、ニッケル、ニッケル合金、ニッケリン、白金、白金ロジウム、タンタル、ジュラルミン、ニクロム、チタン、クルップ・オーステナイト鋼、コンスタンタン、真鍮、白金イリジウム、パラジウム、パラジウム合金、モリブデン、モリブデン鋼、マンガン、マンガン合金、ロジウム、ロジウム金などの金属材料、ITO(インジウム・スズ酸化物)等の無機導電性材料などが挙げられる。
【0040】
有機化合物の具体例としては、フェノール樹脂、フラン樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アニリン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ−p−キシリレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素系プラスチック、ポリアクリロニトリル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、ポリエーテル、ポリカーボネート、熱可塑性ポリエステル、ポリアミド、ジエン系プラスチック、ポリウレタン系プラスチック、ポリフェニレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、芳香族ヘテロ環ポリマー、シリコーン、天然ゴム系プラスチック、セルロース系プラスチック等やこれら2種類以上の高分子材料の混合材料(ポリマーブレンド)などの高分子材料が挙げられる。
【0041】
上記した顔料や光散乱材の好ましい大きさは平均粒子径で0.01〜500μm、より好ましくは0.05〜100μmである。これは、平均粒子径で0.01μm以下または500μm以上になると、顔料および光散乱材に求められる発色効果および光散乱効果が低くなるためである。さらに、平均粒子径0.01μm以下では、高分子ゲル内部からの外部への流出が起こりやすいためである。
【0042】
色材としての染料を選択した場合には、特に光吸収係数の高いものが望ましい。また、高分子ゲル中に含有され、高分子ゲルから流出しないことが好ましいので、高分子ゲルと化学結合する基が導入されている反応染料等が特に望ましく適用される。
【0043】
高分子ゲル中に含有される色材の濃度は、高分子ゲルが収縮した時に、少なくとも高分子ゲルの一部分で飽和吸収濃度以上の濃度に達することが望ましい。ここで、飽和吸収濃度以上とは、色材濃度が十分に濃い状態において、単位色材当たりの光吸収効率が低下する濃度である。また、飽和吸収濃度以上という定義を別な特性で表現すれば、特定の光路長のもとにおける色材濃度と光吸収量の関係が1次直線の関係から大きく外れるような色材濃度である。
【0044】
つまり色材濃度が飽和吸収濃度以上になると、色材の1粒子または1分子あたりの光吸収効率が下がることで、光吸収量が色材濃度に比例しなくなり、1次直線の関係から予想される光吸収量と比べて低くなる。一方、飽和吸収濃度以下では、光吸収量が色材濃度に比例しており、色材1粒子または1分子あたりの光吸収効率は殆ど一定になる。したがって、飽和吸収濃度以上に色材を高分子ゲル粒子中に含有させた場合、膨潤時に光を効率よく吸収することができ、収縮時と比べて光吸収量を大きくすることができる。
【0045】
高分子ゲル粒子が収縮した場合に、色材を飽和吸収濃度以上になるように含有させる場合、この高分子ゲルが膨潤すると、色材濃度が下がり色材1粒子または1分子あたりの光吸収効率を上げることができる。その結果、膨潤時に光吸収量を大きく上げ、収縮時に光吸収量を大きく下げることができる。一方、含有させる色材の濃度を飽和吸収濃度以下にすると、膨潤時の色材1粒子あたりの光吸収効率は収縮時とほとんど同程度となる。その結果、膨潤時に光吸収量を大きく上げ、収縮時に光吸収量を大きく下げることができなくなる。以上のことから、飽和吸収濃度とは膨潤・収縮による光吸収量変化を大きくするために必要な濃度であり、色材濃度を飽和吸収濃度以上に設定することで表示コントラストを高くすることができる。
【0046】
このような特性を有するために必要な高分子ゲル粒子に含有させる色材の濃度は、色材の粒子径、屈折率、吸光係数や比重等にも依存するが、一般的には乾燥状態の高分子ゲル粒子に色材を3質量%〜95質量%の範囲で含有させることが好ましく、より好ましくは5質量〜80質量%の範囲である。色材の濃度が3質量%以下であると、調光用材料の、高分子ゲル粒子の体積変化による発色量変化が現れなくなる。さらに十分な調光コントラストを得るためには、光学素子の厚みが厚くなるなどの問題が生じる。一方、色材の濃度が95質量%以上の場合、高分子ゲル粒子の膨潤・収縮が応答性や体積変化量が低下する恐れがある。
【0047】
また、高分子ゲル粒子中に含有される光散乱材の濃度も、色材の濃度と類似した議論のもとに、高分子ゲル粒子が収縮した時に、少なくとも高分子ゲル粒子の一部分で飽和散乱濃度以上の濃度に達することが望ましい。ここで、飽和散乱濃度以上とは、ひとつの指標として各々の光散乱材同士の平均間隔が十分に短くなることで、光散乱材の光散乱の働きが1次粒子的なものから、集合体的なものに変化し、光散乱の効率が減少する濃度である。このような光散乱材が集合体的な光散乱特性を示す状態を、光散乱材の濃度が飽和散乱濃度以上にある状態と呼ぶ。また、飽和散乱濃度以上という定義を別な特性で表現すれば、特定の光路長のもとにおける光散乱材濃度と光散乱量の関係が1次直線の関係から大きく外れるような光散乱材濃度である。
【0048】
高分子ゲル粒子の収縮状態でこのような飽和散乱濃度以上の状態を達成するためには、光散乱材の粒子径、屈折率、導電率や比重等にも依存するが、一般的には乾燥状態の高分子ゲル粒子に光散乱材を2質量%〜95質量%の範囲で含有させることが好ましく、より好ましくは5質量〜95質量%の範囲である。光散乱材の濃度が2質量%以下であると、高分子ゲル粒子の体積変化による光散乱量変化が現れなくなり、さらに十分なコントラストを得るためには、光学素子の厚みが厚くなるなどの問題が生じる。一方、光散乱材の濃度が95質量%以上の場合、高分子ゲル粒子の膨潤・収縮が応答よく進行しにくくなり、光学素子の刺激応答特性や体積変化量が低下してしまう。
【0049】
高分子ゲル粒子に色材および光散乱材を含有させる方法は、架橋前の高分子に色材および光散乱材を均一に分散、混合した後に架橋する方法や重合時に高分子前駆体組成物に色材および光散乱材を添加して重合する方法等が適用できる。重合時において色材および光散乱材を添加する場合には前記したように重合性基や不対電子(ラジカル)をもつ色材および光散乱材を使用し、化学結合することも好ましい。また、色材および光散乱材は高分子ゲル中に極力均一に分散されていることが望ましい。特に、高分子への分散に際して、機械的混練法、攪拌法やあるいは分散剤などを利用して均一に分散させることが望ましい。
【0050】
−高分子ゲル連続相−
本発明に係る高分子ゲル連続相を構成する高分子ゲルは、前記高分子ゲル粒子と同様の液体に膨潤する性質のものが好ましく使用される。その好ましい機能・性質としては、透明性、前記高分子ゲル粒子の分散性、保持性、などである。前記高分子ゲルは、外部刺激への応答性を持つ必要はない。
【0051】
前記高分子ゲルの具体例としては、例えば、セルロース、アガロース等の天然高分子およびその誘導体、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、ポリエチレングリコールおよびその誘導体、ポリアミンおよびその誘導体、ポリ(メタ)アクリル酸およびその塩、(メタ)アクリル酸を含む共重合体およびその塩、ポリマレイン酸およびその塩、マレイン酸を含む共重合体およびその塩、ポリ(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドを含む共重合体、ポリ置換(メタ)アクリルアミド、置換(メタ)アクリルアミドを含む共重合体、ポリスチレン、ポリスチレン誘導体、ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレートを含む共重合体、などの架橋体が挙げられる。
【0052】
前記高分子ゲルの合成は、公知の高分子ゲル作製方法を用いることができる。例えば、モノマーと架橋材とを混合して重合する方法、マクロモノマーと架橋材とを反応させる方法、ポリマーに電子線や中性子線等を照射して架橋する方法、などがあげられる。これらゲル作製方法については例えば「ゲルハンドブック」株式会社エヌ・ティー・エスなどに詳述されている。
【0053】
前記高分子ゲルは、各種色材を添加して着色されていてもよい。非架橋型の高分子を添加することもできる。この非架橋型の高分子は前記高分子ゲルと同様の成分を含んでいてもよい。また、前記高分子ゲルは、必要に応じて分散安定剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの安定剤などを添加されていてもよい。
【0054】
−液体−
本発明に係る液体は、前記高分子ゲル連続相及び前記高分子ゲル粒子の双方に含有される。本発明の高分子ゲル組成物において、前記高分子ゲル連続相を構成する前記高分子ゲルは、前記液体によって膨潤させることができる。また、前記高分子ゲル粒子は、前記液体の存在下において刺激に応答して単独で液体の吸収、放出による体積変化を示すものである。
本発明で使用可能な液体としては、上記条件を満たすものであれば特に制限はないが、好ましくは、水、電解質水溶液、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキシド、アセトニトリル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどや、キシレン、トルエンなどの芳香族系溶媒およびそれらの混合物が使用できる。また、前記液体には高分子ゲルに吸脱する界面活性剤、液体のpH変化を促進するためのビオロゲン誘導体などの酸化還元剤、酸、アルカリ、塩、および界面活性剤等の分散安定剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの安定剤などを添加することもできる。
【0055】
<高分子ゲル組成物の製造方法>
本発明の高分子ゲル組成物において、前記高分子ゲル連続相と前記高分子ゲル粒子とは互いに相互侵入網目構造を形成する。本発明の高分子ゲル組成物の製造方法を以下に説明する。
【0056】
前記高分子ゲル組成物の製造方法には、前記高分子ゲル連続相を形成するための、少なくともモノマーと架橋剤と開始剤と溶媒とを含有する溶液に、前記高分子ゲル粒子を分散して高分子ゲル粒子分散液を得る分散工程と、前記高分子ゲル粒子分散液を重合する重合工程とが含まれる。例えば、前記高分子ゲル連続相を形成するための、少なくともモノマーと、架橋剤と、開始剤と、溶媒とを含有する溶液に前記高分子ゲル粒子を添加、分散して高分子ゲル粒子分散液Aを得る。次に、前記高分子ゲル粒子分散液Aを加熱あるいは電子線や光照射によって重合しゲル化する方法が挙げられる。
【0057】
他の前記高分子ゲル組成物の製造方法には、前記高分子ゲル連続相を形成するための、少なくとも架橋性(反応性)高分子と開始剤と溶媒とを含有する溶液に、前記高分子ゲル粒子を分散して高分子ゲル粒子分散液を得る分散工程と、前記高分子ゲル粒子分散液を重合する重合工程とが含まれる。例えば、少なくとも架橋性高分子と、開始剤と、溶媒とを含有する溶液に前記高分子ゲル粒子を添加、分散して高分子ゲル粒子分散液Bを得る。次に、前記高分子ゲル粒子分散液Bを加熱あるいは電子線や光照射によって重合しゲル化する方法を用いることができる。
また、本方法においては上記の構成において、開始剤以外の付加反応性の架橋剤、さらには重合反応において架橋する化合物等を添加させることも可能である。さらには、上記したようなモノマーの重合と架橋性高分子の反応とを併用した手法も可能である。
【0058】
上記製造方法のうち、良好な相互侵入網目構造を形成するには、モノマーを用いて重合することが好ましい。これは、高分子ゲル粒子中への化学物質の浸透は一般的に低分子化合物ほど効率的であり、特定の分子量以上の高分子は浸透できないためである。また、上記した架橋性高分子を用いる場合には分子量がその重量平均分子量で100万以下のものを使用することが好ましい。分子量が100万を越えると、高分子ゲル粒子中へ殆ど浸透しないために、事実相互侵入網目構造が形成されなくなってしまい、本発明の効果が得られなくなってしまう場合がある。
架橋性高分子を用いる場合の好ましい重量平均分子量の範囲は、600〜250,000であり、さらに好ましくは1,000〜100,000であり、特に好ましくは2,000〜50,000である。
【0059】
上記製造方法において、前述した、前記高分子ゲル連続相及び前記高分子ゲル粒子の双方に含有される液体が前記溶媒として使用される。
【0060】
前記重合工程においては、高分子ゲル組成物の形態の加工を同時に実施することも好ましい。例えば、一対の基板間に前記高分子ゲル粒子分散液を封入後、又は種々基板表面に前記高分子ゲル粒子分散液を塗布後に、重合せしめることで薄膜や層状に加工した高分子ゲル組成物を作製することも好ましく実施できる。
また、あらかじめ基板上に前記高分子ゲル粒子を配列または固定しておき、その後、前記高分子ゲル連続相を形成するためのモノマー又は架橋性高分子、架橋剤、開始剤および溶媒からなる溶液を添加して重合することにより、基板上に所望の配列の高分子ゲル粒子を有する高分子ゲル組成物を得ることもできる。
【0061】
本発明の高分子ゲル組成物における、高分子ゲル粒子と高分子ゲル連続相を構成する高分子ゲルとの組成比は、その乾燥質量比で10:1〜1:100の範囲内で選択され、好ましくは3:1〜1:10、さらに好ましくは1:1〜1:3である。10:1の比率よりも高分子ゲル粒子が多くなると高分子ゲル組成物の強度が低下する恐れがあり、一方、1:100の比率よりも高分子ゲル粒子が少なくなると、例えば本発明の高分子ゲル組成物を調光組成物として利用する場合に調光特性が低下してしまう。
【0062】
一方、高分子ゲル組成物中に含まれる前記液体の好ましい組成比率は、高分子ゲル粒子と高分子ゲル連続相を構成する高分子ゲルとの合計の乾燥質量に対して質量で10倍量〜500倍量の範囲から、好ましくは20倍量〜100倍量の範囲から選択される。前記液体の組成比が10倍量よりも少ないと、例えば本発明の高分子ゲル組成物を調光組成物として利用する場合に調光特性が低下し、一方、500倍よりも多くなると高分子ゲル組成物の強度が低下する恐れがある。
【0063】
また、本高分子ゲル組成物には必要に応じて各種色材、各種高分子、酸、アルカリ、塩、界面活性剤、分散安定剤や消泡剤、あるいは酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤や抗菌剤などの安定剤などを添加することもできる。
【0064】
<光学素子>
本発明の光学素子は、一対の基板間に、本発明の高分子ゲル組成物が挟持され、且つ前記基板の端部が液体漏洩防止のため封止処理されていることを特徴とする。本発明の光学素子を図1を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の光学素子の一例の模式断面図を示す。
光学素子10において、高分子ゲル粒子1と高分子ゲル連続相2とを有する高分子ゲル組成物3は、平行に配置された一対の基板4と基板4’との間に挟持され、基板4と基板4’との端部が封止材5により封止処理されている。高分子ゲル粒子1と高分子ゲル連続相2とは、不図示の液体を含有する。高分子ゲル粒子1と高分子ゲル連続相2とは相互侵入網目構造を形成する。なお、光学素子10には、高分子ゲル粒子1に刺激を与えるための不図示の刺激付与手段が設けられてもよい。
【0065】
図1において、高分子ゲル組成物3の厚みは特に限定されないが、1μm〜3mmの範囲内が好ましく、20μm〜1000μmの範囲内がより好ましい。厚みが、1μmよりも薄くなると機械的な強度が弱くなる場合や、厚み方向の光路長が短いために所望の光学濃度が得られないなどの問題が生じる場合がある。また、3mmよりも厚くなると高分子ゲル組成物3中に含まれる高分子ゲル粒子1の応答性が悪くなる場合や、高分子ゲル粒子1が厚み方向に必要以上に積層してしまい、十分な透過率が得られないなどの問題が生じる場合がある。
【0066】
また、板状に形成した光学素子の表面には、その目的に応じてさらに保護層、紫外線吸収層、蒸発防止層などを設けることができる。
【0067】
次に、本発明の光学素子の動作について、図2を用いて説明する。既述したように高分子ゲル組成物3における、高分子ゲル連続相2中の高分子ゲル粒子1は、不図示の刺激付与手段による刺激によって、液体を吸収・放出し、図2(a)に例示するように膨潤し、あるいは、図2(b)に例示するように収縮して、体積変化を引き起こすことができる。この体積変化に応じて、光の透過性等を、散乱や回折によって変化させることができる。
【0068】
基板4,4’の材料としては、ポリエステル、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテルスルフォン、ナイロン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のフィルムや板状基板、ガラス基板、金属、金属フイルム、セラミックス等が使用可能である。前記基板の厚みは10μm〜2mmが好ましいが、この大きさは目的によって種々選択可能で、特に限定はされない。また光学素子を形成するためには少なくとも1方の基板が光透過性であることが必要である。
【0069】
封止材5の材料としては、前記液体の蒸発を抑制する能力を有し、基板4、4’に対する接着性を有し、高分子ゲル組成物の特性に悪影響を与えず、実使用条件においてこれらの条件を長期間満たすものであれば、どのような材料を用いてもよい。また複数の封止材を組み合わせて構成することも可能である。
【0070】
1層で封止を行うときの封止材としては、末端に反応基を有するイソブチレンオリゴマーを主体とした熱硬化型弾性シーリング材や、アクリル系紫外線硬化樹脂、シリコーン系樹脂、金属酸化物膜等の使用が例示できる。また、2層で封止するときには、高分子ゲル組成物と接触する1次封止にポリイソブチレン系シーラント等、2次封止としてアクリル樹脂等が例示できる。本発明の封止材および封止方法は上記例示に限定されるものではなく、多種多様なものが選択でき、かつ、それらを組み合わせて使用してもよい。
【0071】
光学素子10において、2枚の基板4、4’は、高分子ゲル組成物3を挟持するために十分に均一な間隙が確保されていることが好ましい。2枚の基板間に均一な間隙を確保するための方法として、スペーサーを用いる方法が挙げられる。スペーサーを用いる場合、画像欠陥が生じないように出来るだけ少ない量のスペーサーを使用することが好ましい。スペーサーによる基板間の間隔は1μm〜5mmから選択され、小型光学素子においては10μm〜200μmの範囲がより好ましい。厚みが1μmよりも小さいと調光量が小さくなり、5mm以上では素子が重くなるなどの問題がある。
【0072】
スペーサーの形状は、安定して間隙を維持できる物であれば特に限定されないが、スペーサーは例えば球、立方体、柱状のものなどの独立した形状のものが好ましく用いられる。また、連続した形状を有するスペーサーを使用することも出来る。この場合スペーサーは、間隙を保持することと同時に、網目状にすることで高分子ゲル組成物を有する層の内部をセグメント化する働きを持たせてもよい。それにより、隣接画素の誤動作を抑制する効果が得られ、より表示画質が向上する。スペーサーの連続した形状は、安定して間隙を維持できる物であれば特に限定されず、主に格子状、ハニカム状などの多角形を始めとして、様々な形状を適用することが出来る。なお、光学素子の内部をセグメント化する働きを持たせる場合、画素の形状や刺激付与手段の形状を考慮すると、中でも格子状が最も好ましい。これらのスペーサーは、高分子ゲル組成物に安定な材料であれば特に限定されず、例えば、樹脂、金属、金属酸化物、ガラスなどが適用できる。
【0073】
本発明に用いる刺激付与手段は、高分子ゲル粒子1に適した刺激を付与し得るものが選ばれる。従って、たとえば電気応答性の高分子ゲル粒子を用いる場合は、刺激付与手段として電極が具備され、熱応答性の高分子ゲルを用いる場合は発熱抵抗体が具備される。
刺激として熱を付与する場合には、前記電極と、Ni−Cr化合物などに代表される金属、酸化タンタルやITOなどの金属酸化物、あるいはカーボンなどの発熱抵抗体を組み合わせた物が好ましく用いられる。なお、上記以外にも、刺激付与手段として光や磁界、電磁場などを付与する層を設けることもできる。光学素子10にはカラーフィルターや反射防止層、防汚層、紫外線吸収または散乱層などの各種機能層を基板上に形成することも好ましい。
【0074】
刺激としてpH変化などを用いる場合は、電気刺激をあたえる電極を用いることによってpH変化を誘起できる。例えば、電極上に導電性高分子膜等を形成しておけば電極反応に伴うイオンのドープ・脱ドープに伴いpH変化を引き起こすことができる。電極の構成は、単純マトリクス電極型あるいは画素別分割電極型のいずれも適用できる。
具体的には、電気刺激を付与する場合は、銅、アルミニウム、銀、金、ニッケル、プラチナなどに代表される金属膜からなる電極、酸化スズ、酸化インジウムスズ(ITO)に代表される金属酸化物、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアセン類、ポリアセチレン類などに代表される導電性高分子からなる電極、高分子と前述の金属や金属酸化物の粒子との複合材料からなる電極などが好ましく用いられる。またこれらの電極構成は、単純マトリクス駆動用に配線されていてもよいが、薄膜トランジスタ(TFT)素子あるいは、MIM素子やバリスタなどの二端子素子などのスイッチング素子を設けることもできる。
【0075】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例によって何ら制限される物ではない。
[実施例1]
(高分子ゲル粒子bの作製)
感熱応答性の高分子ゲル粒子bを以下のようなプロセスにより製造した。
N‐イソプロピルアクリルアミド(3.5758g),メチレンビスアクリルアミド(0.0072g),マイクロカプセル化カーボンブラック分散液(8.21g,大日本インキ化学製、MC black 082−E、顔料分14.3%含有)の水(19.1630g)溶液に15分間窒素を通し溶存酸素を除いた。この溶液に対して過硫酸アンモニウム(29.9mg)の水(0.5106g)溶液を加えて攪拌し均一に溶解させた。75mm径の3枚羽根の攪拌翼を取り付けた2Lのセパラブルフラスコにソルゲン50(6.00g)のシクロヘキサン(1.2L)溶液をいれ、さらに先に調整したN−イソプロピルアクリルアミドの顔料分散液を加え、窒素を流してフラスコ内部全体を窒素置換した。ウォーターバスを用いてこのフラスコ全体を25℃に保ち、攪拌翼を800rpmで15分間回転させて水相をシクロヘキサン中に懸濁、分散させた。攪拌翼の回転数を250rpmにして、この分散液に対してテトラメチルエチレンジアミン(0.8ml)のシクロヘキサン(3.2ml)溶液を加えて、反応を開始させ、25℃に保ったまま250rpmで2時間重合した。得られた重合体の粒子をジメチルホルムアミド、水で十分に洗浄した。このようにして感熱応答性の高分子ゲル粒子bを作製した。合成した高分子ゲル粒子bは、室温(25℃,膨潤状態)での体積平均粒径が20μmであった。この刺激応答性高分子ゲル粒子は約34℃に相転移温度を有していた。すなわち本高分子ゲル粒子は、相転移点よりも高い温度では収縮し、低い温度では膨潤する。またその体積変化量は約15倍であった。
【0076】
(架橋性高分子溶液cの調製)
ポリアクリル酸(和光純薬製・平均分子量25,000)の20質量%水溶液、20gに対し、メタクリル酸グリシジル0.5gを加え、室温で24時間攪拌し反応させることで側鎖に架橋のためのメタクリレート基を部分的に導入した。この溶液に対して光開始剤(チバスペシャリティケミカル製イルガキュア2959)を0.8gと純水60gとを加え、架橋性高分子溶液cを調製した。この樹脂組成物を、ガラス基板間に100μmの厚さに保持したものを調整し、紫外線を照射(高圧水銀灯、160W/cm,150sec,照射距離40cm)ところ、樹脂組成物全体がゲル化し自己保持性のある硬化物が得られた。
【0077】
(光学素子Bの作製)
高分子ゲル粒子bを含む水分散液(ゲルの固形分濃度2.5%)を調製した。架橋性高分子溶液c10gに対し、先に調製した高分子ゲル粒子bを含む水分散液10mlを加え、ウエーブローターで3時間分散して架橋性高分子を高分子ゲル粒子中に浸透させ、かつ溶液中に均一に分散した。この分散液をブレードコーターを用いてPET基板上に厚さ150μmに成形し、もう一枚のPETフイルムでラミネートした。紫外線照射(高圧水銀灯、160W/cm、照射距離 20cm,120秒間照射)によって硬化した。さらに、感光性のアクリル系接着剤(日本化薬製 KAYARAD R381I)で周囲を封止し、光学素子Bを作製した。この光学素子Bは低温(25℃)では高分子ゲル粒子bの膨潤にともない発色し、高温(60℃)では高分子ゲル粒子bの収縮に伴い消色し、いずれの状態においても高い透明性を有していた。この可逆的な変化は100回繰り返しても変化することはなかった。
【0078】
[実施例2]
(光学素子Dの作製)
アクリルアミド1.0gとN,N−メチレンビスアクリルアミド0.0266g、を蒸留水10gに溶解した溶液を調製した(溶液S1)。溶液S1の2.0gと高分子ゲル粒子bの水分散液(固形分濃度2.5質量%)2.0gとを混合し、窒素を通じて溶液中の溶存酸素を取り除いた。この溶液をスライドガラス(50x50x0.9mm,500μmのスペーサーでギャップを維持、スライドガラスの3方を接着剤で封止)間に導入し開始剤として過硫酸アンモニウム0.005gとN,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン20μLを加えて重合を開始した。室温で6時間重合させてアクリルアミド溶液をゲル化させた後、ガラス板の周囲を封止して光学素子Dを作製した。光学素子Dは、低温(25℃)では高分子ゲル粒子bの膨潤にともない発色し、高温(60℃)では分子ゲル粒子bの収縮に伴い消色する特性を有しており、低温、高温においても高い透明性を有していた。この可逆的な変化は100回繰り返しても変化することはなかった。
【0079】
[比較例1]
(光学素子Gの作製)
高分子ゲル粒子bの水分散液(固形分濃度2.0質量%)10.0gに対し、ポリビニルアルコール(信越化学製、ポバールC−25GP)の7質量%水溶液10.0gと界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム)30mgを加えた。ウエーブローターで3時間分散して高分子ゲル粒子bを溶液中に均一に分散した。この分散液をスライドガラス(50x50x0.9 mm)上に塗布し、0.1mmのスペーサービーズをもちいて膜厚を維持しながら、もう一枚のスライドガラス(50x50x0.9 mm)で挟持した。さらに、感光性のアクリル系接着剤(日本化薬製KAYARAD R381I)で周囲を封止し、光学素子Gを作製した。この光学素子Gは低温(25℃)では高分子ゲル粒子bの膨潤にともない発色し、高温(60℃)では高分子ゲル粒子bの収縮に伴い消色する特性を有していた。しかしながらこの変化を100回繰り返したところ光学素子G中で粒子bが次第に凝集し色変化が少なくなった。
【0080】
(機能評価)
繰り返し変化により透過率幅が減少する比較例1を除く、光学素子の温度変化に伴う全光線透過率とヘイズの変化を表1に示した。全光線透過率とヘイズの測定にはヘイズメーター(日本電飾製NDH2000)を用いた。
【0081】
【表1】
Figure 0004228738
【0082】
本発明の光学素子を用いた実施例では、全光線透過率の変化が大きくかつ消色時、発色時ともヘイズが10%以下ときわめて高い透明性を有することがわかる。さらに繰り返しによる耐久性も高いことがわかる。
【0083】
【発明の効果】
本発明の高分子ゲル組成物を用いることにより、全光線透過率を大きく変化させることができ、かつヘイズが少なく透明性の高い光学素子を得ることができる。また、本発明の高分子ゲル組成物の製造方法により、高分子ゲル組成物を容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の光学素子の一例の模式断面図を示す図である。
【図2】 本発明の光学素子の動作を説明するための図である。
【符号の説明】
1 高分子ゲル粒子
2 高分子ゲル連続相
3 高分子ゲル組成物
4、4’ 基板
5 封止材
10 光学素子

Claims (6)

  1. 高分子ゲル連続相と、前記高分子ゲル連続相中に分散された刺激により単独で体積変化を示す高分子ゲル粒子と、前記高分子ゲル連続相と前記高分子ゲル粒子とに含まれる液体とを有する高分子ゲル組成物であって、前記高分子ゲル粒子は調光用材料を含有し、前記高分子ゲル連続相と前記高分子ゲル粒子とは互いに相互侵入網目構造を形成することを特徴とする高分子ゲル組成物。
  2. 請求項1に記載の高分子ゲル組成物の製造方法であって、前記高分子ゲル連続相を形成するための、少なくともモノマーと架橋剤と開始剤と溶媒とを含有する溶液に、前記高分子ゲル粒子を分散して高分子ゲル粒子分散液を得る分散工程と、前記高分子ゲル粒子分散液を重合する重合工程とを含むことを特徴とする高分子ゲル組成物の製造方法。
  3. 請求項2に記載の高分子ゲル組成物の製造方法によって製造された高分子ゲル組成物。
  4. 請求項1に記載の高分子ゲル組成物の製造方法であって、前記高分子ゲル連続相を形成するための、少なくとも架橋性高分子と開始剤と溶媒とを含有する溶液に、前記高分子ゲル粒子を分散して高分子ゲル粒子分散液を得る分散工程と、前記高分子ゲル粒子分散液を重合する重合工程とを含むことを特徴とする高分子ゲル組成物の製造方法。
  5. 請求項4に記載の高分子ゲル組成物の製造方法によって製造された高分子ゲル組成物。
  6. 一対の基板間に、請求項1、3又は5に記載の高分子ゲル組成物が挟持され、且つ前記基板の端部が封止処理されていることを特徴とする光学素子。
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