JP4378886B2 - 高分子ゲル組成物及びその製造方法、並びに、前記高分子ゲル組成物を用いた光学素子 - Google Patents

高分子ゲル組成物及びその製造方法、並びに、前記高分子ゲル組成物を用いた光学素子 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、刺激の付与により体積変化する高分子ゲルを含有する高分子ゲル組成物及びその製造方法、並びに、前記高分子ゲル組成物を用いた光学素子に関する。本発明の高分子ゲル組成物は、表示素子、記録素子、調光素子やセンサなどの光学素子の材料として有用なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、pH変化、イオン濃度変化、化学物質の吸脱着、溶媒の添加、あるいは、光、熱、電流もしくは電界の付与等、刺激の付与によって、体積変化(膨潤、収縮)を生ずる高分子ゲル材料(以下、刺激応答性高分子ゲルという)が知られており、その機能材料としての応用が期待されている。これらの材料は、例えば、「機能性高分子ゲル」(シーエムシー出版)に総説として記載されている。この刺激応答性高分子ゲルの用途として、ドラッグデリバリーシステムなどの薬の担持体、医療材料、インクの添加剤、機能膜、人工筋肉、表示素子、記録素子、アクチュエータ、ポンプなどが検討されている。
【0003】
一般に、水や電解質等の液体中に存在する刺激応答性高分子ゲルに刺激を付与することにより、該刺激応答性高分子ゲルは相転移等を起こし、ゲル内部への液体の吸収、あるいはゲル外部への液体の排出によって、前記刺激応答性高分子ゲルの体積、大きさ、形状を変化させることができる。
【0004】
刺激応答性高分子ゲルの材料としては、ポリアクリル酸系、ポリビニルスルホン酸系、ポリアクリルアミドアルキルスルホン酸系、ポリマレイン酸系、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸複合系の各塩などのイオン解離基を有する高分子化合物;セルロース系、ポリアクリルアミド系、ポリN−アルキル置換アクリルアミド系、ポリビニルメチルエーテル系などの高分子化合物;あるいは光などによってイオン解離する基を有する高分子化合物の架橋体;等が知られている。また、刺激応答性高分子ゲルの形態としては、粒子、繊維、立方体などの成形体が知られている。
【0005】
これら従来から知られている刺激応答性高分子ゲルの課題の一つは、体積変化に要する応答速度が遅く、数分から数時間かかってしまうことである。刺激応答性高分子ゲルの応答速度はその大きさに依存し、大きさが小さくなるにつれて高速化することが知られているため、刺激応答性高分子ゲルを微粒子にして高速化を狙う検討がされているが、刺激応答性高分子ゲルを微粒子にして用いると、凝集が生じやすく利用が困難であること、凝集によって結局応答速度が低下すること、などの問題がある。更に、刺激応答性高分子ゲルの構造を多孔質化して液体の出入りを容易にし、高速化を狙う検討もされているが、高速化には限界があり、用途が限られていた。
【0006】
更に、刺激応答性高分子ゲルの他の課題は、その作動原理から液体中で使用しなければはならず、その利用分野が制限されることである。例えば、表示素子や記録素子等に利用する場合、2枚の支持基材間に刺激応答性高分子ゲルと液体とを封入しなければならない(特開昭61−149926号公報、特公平7−95172号公報、特開平5−173190号公報など)。これらのように素子として利用する場合、素子構成が煩雑になり高価になったり、あるいは液漏れなどが起こり信頼性の低下を招く恐れがあるなどの問題があった。
【0007】
これらの問題を改善するために、特開平11−228850号公報において、刺激応答性高分子ゲル及び液体を含む領域と、その領域を覆う隔離部材とを有する高分子ゲル組成物を用いることにより、液漏れを防ぐことが可能であるとの提案がなされている。しかし、当該提案においては、隔離部材の蒸気透過性が高い場合、高分子ゲル組成物を使用する条件(例えば、温度、湿度及び時間など)によっては内部の液体が徐々に蒸発してしまい、時間の経過と共に刺激応答性高分子ゲルの刺激に対する応答性が低下するという問題を有しており、所望の光学特性が得られなくなるなど、用途展開の範囲に制約があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、上記課題を解決するべくなされたものであり、より詳細には、長期間使用しても刺激に対する応答性が低下することを抑制するような、刺激応答の耐久性を有する高分子ゲル組成物及びその製造方法、並びに、前記高分子ゲル組成物を用いた光学素子を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための手段として、本発明者らは、鋭意検討の結果、従来の構成の高分子ゲル組成物に、内部の液体の蒸発を防止する蒸発防止部材を、当該高分子ゲル組成物を囲むように設けることで、当該液体の蒸発が抑制されることを見出した。
【0010】
<1> 刺激の付与により液体を吸収・放出して体積変化を生ずる高分子ゲル粒子と、該高分子ゲル粒子内及び/又は該高分子ゲル粒子外に位置する液体と、該液体と前記高分子ゲル粒子とを含む領域を覆う隔離部材と、を含む組成物を有し、
前記隔離部材が樹脂からなるマトリックス材料から構成され、該マトリックス材料中に前記高分子ゲル粒子及び前記液体が分散して存在しており、
更に、前記組成物の周囲を囲み、かつ、前記液体の蒸発を防止する蒸発防止部材が設けられ、該蒸発防止部材が、シランカップリング剤を含有するポリマー層からなることを特徴とする高分子ゲル組成物。
【0011】
<2> 前記高分子ゲル粒子が調光材料を含有することを特徴とする請求項1に記載の高分子ゲル組成物。
【0018】
> 前記隔離部材の露出面と、前記蒸発防止部材の当該露出面に接触する面と、の間に刺激付与手段を設けたことを特徴とする<1>又は>に記載の高分子ゲル組成物。
【0019】
> <1>〜<>のいずれか1に記載の高分子ゲル組成物からなることを特徴とする光学素子。
【0020】
> フィルム状に成形された<1>〜<>のいずれか1に記載の高分子ゲル組成物からなることを特徴とする光学素子。
【0021】
> 前記フィルム状に成形された光学素子のどちらか一方の面が光反射性を有することを特徴とする<>に記載の光学素子。
【0022】
> 前記フィルム状に成形された光学素子の周囲が封止されていることを特徴とする<>又は<>に記載の光学素子。
【0023】
<8> 刺激の付与により液体を吸収・放出して体積変化を生ずる高分子ゲル粒子と液体との膨潤混合物を、それと相溶しない他の液体を溶媒とする隔離部材形成用材料の溶液中に分散させる分散工程と、
前記隔離部材形成用材料を固化させて隔離部材を形成する固化工程と、
該固化工程によって形成した当該隔離部材の露出部に包接するように配され、前記液体の蒸発を防止する蒸発防止部材を当該露出部に接着する接着工程と、
を含み、
前記隔離部材形成用材料が樹脂からなるマトリックス材料であり、且つ、前記蒸発防止部材が、シランカップリング剤を含有するポリマー層からなることを特徴とする高分子ゲル組成物の製造方法。
【0024】
> 刺激の付与により液体を吸収・放出して体積変化を生ずる高分子ゲル粒子と液体との膨潤混合物を、それと相溶しない他の液体を溶媒とする隔離部材形成用材料の溶液中に分散させる分散工程と、
前記隔離部材形成用材料を固化させて隔離部材を形成する固化工程と、
前記隔離部材の露出部に包接するように蒸発防止部材用材料を塗布する塗布工程と、
前記蒸発防止部材用材料を固化し、前記液体の蒸発を防止する蒸発防止部材が形成される蒸発防止部材形成工程と、
を含み、
前記隔離部材形成用材料が樹脂からなるマトリックス材料であり、且つ、前記蒸発防止部材用材料が、シランカップリング剤とポリマーとを含有することを特徴とする高分子ゲル組成物の製造方法。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0027】
<高分子ゲル組成物>
本発明の高分子ゲル組成物は、刺激の付与により液体を吸収・放出して体積変化を生ずる高分子ゲル粒子と、該高分子ゲル粒子内及び/又は該高分子ゲル粒子外に位置する液体と、該液体と前記高分子ゲル粒子とを含む領域を覆う隔離部材と、を含む組成物を有し、
前記隔離部材が樹脂からなるマトリックス材料から構成され、該マトリックス材料中に前記高分子ゲル粒子及び前記液体が分散して存在しており、
更に、前記組成物の周囲を囲み、かつ、前記液体の蒸発を防止する蒸発防止部材が設けられ、該蒸発防止部材が、シランカップリング剤を含有するポリマー層からなることを特徴とする。
ここで、「囲む(囲み)」とは、高分子ゲル、液体、隔離部材及びその他の添加物を含有する高分子ゲル組成物の周囲を、接触・非接触を問わず囲むことを意味する。また、本発明では、例えば、高分子ゲル組成物が板状やフィルム状に形成されている場合、その表面及び裏面が蒸発防止部材によって囲まれていれば、その両端部が必ずしも封止されていなくとも「囲む」の概念に含まれることとする。
【0028】
図1は本発明の第1の実施形態としての高分子ゲル組成物の構造を説明するための拡大断面図である。図1に示すように、高分子ゲル組成物は、刺激応答性高分子ゲル粒子1と、図示されない液体Lと、隔離部材2と、蒸発防止部材3と、から構成される。刺激応答性高分子ゲル粒子1(以下、単に「高分子ゲル」、「刺激応答性高分子ゲル」という場合がある。)は隔離部材2によって覆わることにより保持される。また、図1に示すように、組成物内部の液体Lの蒸発を防止するために、当該液体L、刺激応答性高分子ゲル1及び隔離部材2を挟み込むように蒸発防止部材3が設けられている。つまり、高分子ゲル組成物が板状やフィルム状であれば、蒸発防止部材3は、当該分子ゲル組成物の表面及び裏面に接触して設けられる。
【0029】
図1に示す第1の実施形態においては、高分子ゲル組成物を層状に形成してなる場合について例示してあるが、本発明の高分子ゲル組成物は、図2に示すような球状や塊状などの任意な形状に形成して用いることもできる。ここで、図2は本発明の第2の実施形態としての高分子ゲル組成物の構造を説明するための拡大断面図である。なお、本発明の高分子ゲル組成物が球状や塊状をしているならば、蒸発防止部材3は、当該高分子ゲル組成物(主に、隔離部材2)の露出面(外気との接触面)を包接するように設けられる。
【0030】
(刺激応答性高分子ゲル1)
本発明において使用することができる刺激応答性高分子ゲル1は、pH変化、イオン濃度変化、化学物質の吸脱着、溶媒組成の変化、又は光、熱、電流もしくは電界の付与等、刺激の付与によって、液体を吸収・放出して体積変化(膨潤・収縮)するものである。本発明において、刺激応答性高分子ゲル1の体積変化は一方的なものでも可逆的なものであってもよい。但し、刺激応答性高分子ゲル1を光学素子等として用いる場合は、可逆的であるものが好ましい。以下に、本発明において使用することのできる刺激応答性高分子ゲル1の具体例を示す。
【0031】
pH変化によって刺激応答する高分子ゲル1としては、電解質系高分子ゲルが好ましく、その例としては、ポリ(メタ)アクリル酸の架橋物やその塩、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその塩、ポリマレイン酸の架橋物やその塩、マレイン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその塩、ポリビニルスルホン酸の架橋物やビニルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物、ポリビニルベンゼンスルホン酸の架橋物やその塩、ビニルベンゼンスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその塩、ポリアクリルアミドアルキルスルホン酸の架橋物やその塩、アクリルアミドアルキルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその塩、ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの架橋物やその塩酸塩、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその4級化物や塩、ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドとポリビニルアルコールとの複合体の架橋物やその4級化物や塩、ポリビニルアルコールとポリ(メタ)アクリル酸との複合体の架橋物やその塩、カルボキシアルキルセルロース塩の架橋物、ポリ(メタ)アクリロニトリルの架橋物の部分加水分解物やその塩などが挙げられる。
【0032】
これらの中でも、ポリ(メタ)アクリル酸系高分子材料は好ましく使用される。なお、pH変化は、液体の電気分解や添加される化合物の酸化還元反応などの電極反応、あるいは、導電性高分子の酸化還元反応、更には、pHを変化させる化学物質の添加によるものであることが好ましい。
【0033】
イオン濃度変化によって刺激応答する高分子ゲル1としては、前記したpH変化による刺激応答性高分子ゲルと同様なイオン性高分子材料が使用できる。また、イオン濃度変化としては、塩等の添加、イオン交換性樹脂の使用などによるものが好ましい。
【0034】
化学物質の吸脱着によって刺激応答する高分子ゲル1としては、強イオン性高分子ゲルが好ましく、その例として、ポリビニルスルホン酸の架橋物やビニルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物、ポリビニルベンゼンスルホン酸の架橋物やビニルベンゼンスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物、ポリ(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸の架橋物や(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物などが挙げられる。
【0035】
特に、ポリアクリルアミドアルキルスルホン酸系高分子が好ましく使用される。この場合、化学物質としては、界面活性剤、例えば、n−ドデシルピリジニウムクロライドなどのアルキルピリジン塩、アルキルアンモニウム塩、フェニルアンモニウム塩、テトラフェニルホスフォニウムクロライドなどのホスホニウム塩などのカチオン性界面活性剤を使用することができる。
【0036】
溶媒組成の変化によって刺激応答する高分子ゲル1としては、一般にほとんどの高分子ゲルが挙げられ、その高分子ゲルの良溶媒と貧溶媒とを利用することで膨潤、収縮を引き起こすことが可能である。
【0037】
電流もしくは電界の付与によって、刺激応答する高分子ゲル1としては、カチオン性高分子ゲルと電子受容性化合物とのCT錯体(電荷移動錯体)が好ましく、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどアミノ置換(メタ)アクリルアミドの架橋物、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートやジメチルアミノプロピルアクリレートなどの(メタ)アクリル酸アミノ置換アルキルエステルの架橋物、ポリスチレンの架橋物、ポリビニルピリジンの架橋物、ポリビニルカルバゾールの架橋物、ポリジメチルアミノスチレンの架橋物などが挙げられ、特に、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート系高分子は好ましい。これらは、ベンゾキノン、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラシアノエチレン、クロラニル、トリニトロベンゼン、無水マレイン酸やヨウ素などの電子受容性化合物とを組み合わせて使用することができる。
【0038】
光の付与によって刺激応答する高分子ゲル1としては、トリアリールメタン誘導体やスピロベンゾピラン誘導体などの光によってイオン解離する基を有する親水性高分子化合物の架橋物が好ましく、その例として、ビニル置換トリアリールメタンロイコ誘導体と(メタ)アクリルアミドとの共重合体の架橋物などが挙げられる。
【0039】
熱の付与によって刺激応答する高分子ゲル1としては、LCST(下限臨界共融温度)やUCST(上限臨界共融温度)(記載追加)をもつ高分子の架橋体や、互いに水素結合する2成分の高分子ゲルのIPN(相互侵入網目構造)体などが好ましい。LCSTをもつ高分子の架橋体は高温において収縮し、UCSTをもつ高分子の架橋体やIPN体は逆に高温で膨潤する特性をもっている。
【0040】
LCSTをもつ高分子の架橋体の具体的な化合物例としては、ポリN−イソプロピルアクリルアミドなどの〔N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド〕の架橋体やN−アルキル置換(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸及びその塩、又は(メタ)アクリルアミド、又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどの2成分以上の共重合体の架橋体、ポリビニルメチルエーテルの架橋物、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのアルキル置換セルロース誘導体の架橋体などが挙げられる。これらの中でも、ポリN−イソプロピル(メタ)アクリルアミドが特に好ましい。
【0041】
UCSTをもつ高分子の架橋体の具体的な化合物例としては、ポリ[3−ジメチル(メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムプロパンスルフォネート]などの分子内にアニオンとカチオンとの両成分を有する双性イオン高分子の架橋体などが挙げられる。
【0042】
一方、互いに水素結合する2成分の高分子ゲルのIPN体の具体的な化合物例としては、ポリ(メタ)アクリルアミドの架橋体とポリ(メタ)アクリル酸の架橋体からなるIPN体及びその部分中和体(アクリル酸単位を部分的に塩化したもの)、ポリ(メタ)アクリルアミドを主成分とする共重合体の架橋体とポリ(メタ)アクリル酸の架橋体からなるIPN体及びその部分中和体などが挙げられる。より好ましくは、ポリ〔N−アルキル置換アルキルアミドの架橋体、ポリ(メタ)アクリルアミドの架橋体とポリ(メタ)アクリル酸の架橋体とのIPN体及びその部分中和体などが挙げられる。
【0043】
本発明において、刺激応答性高分子ゲル1の体積変化量は特に限定されないが、高いほど好ましく、膨潤時及び収縮時の体積比(膨潤時/収縮時)が5以上、特に10以上のものが好ましい。また、本発明において、刺激応答性高分子ゲル1の体積変化は、一方的であるものでも可逆的であるものでもよいが、調光素子や表示素子などに利用する場合は、可逆的なものであることが好ましい。
【0044】
なお、本発明では、刺激応答性高分子ゲル1の形態は刺激応答特性を考慮し、粒子の形態であることを要する。粒子の形態である刺激応答性高分子ゲル1を用いる場合、個々の高分子ゲルの形状についても特に制限はないが、球体、楕円体、多面体、多孔質体、繊維状、星状、針状、中空状などのものを使用することができる。
【0045】
本発明において用いられる刺激応答性高分子ゲル1は、その体積平均粒子径が膨潤状態で0.5μm〜1mmの範囲、特に、1μm〜500μmの範囲の粒子であることが好ましい。体積平均粒子径が0.5μm未満となると、光学的な特性を得ることができなくなり、また、凝集等を起こしやすくなり、かつ、使用する場合にその扱いが困難となってくる。一方、体積平均粒子径が1mmを超えると、応答速度が遅くなる、組成物の発色状態において粒状性が目立つなどの問題が生じる。
【0046】
これらの高分子ゲル1の粒子は、高分子ゲルを物理的粉砕法等で粒子化する方法、架橋前の高分子を化学的粉砕法等によって粒子化した後に架橋して高分子ゲル粒子を得る方法、あるいは乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法などの粒子化重合法等、一般的な粒子化方法によって製造することができる。また、架橋前の高分子をノズル口金等によって押し出して繊維化し、これを架橋した後に粉砕する方法、あるいは前記繊維を粉砕して粒子化した後に架橋する方法によって高分子ゲル粒子を製造することも可能である。
【0047】
なお、本発明の高分子ゲル組成物を表示素子や記録素子もしくは調光素子に用いる場合には、前記高分子ゲル1に、顔料や染料、あるいは光散乱材料などの調光用材料を添加することが好ましい。更に、可視光以外の光を吸収や散乱する材料、つまり、赤外線吸収色素、赤外線吸収又は散乱顔料や、紫外線吸収色素、紫外線吸収又は散乱顔料等も、本発明における刺激応答性高分子ゲルに含有させる調光用材料として好ましく適用することができる。
【0048】
このような調光用材料の添加量としては、高分子ゲルの乾燥時又は収縮時に、飽和吸収濃度あるいは飽和散乱濃度以上となる量を添加することが好ましい。ここで、飽和吸収(あるいは散乱)濃度以上とは、特定の光路長のもとにおける調光用材料濃度と光吸収量の関係が1次直線の関係から大きく外れる領域のことを示す。高分子ゲル1に、このような濃度の調光用材料を添加することによって、高分子ゲル1の膨潤・収縮により光学濃度又は散乱を変化させることができる。飽和吸収濃度あるいは飽和散乱濃度以上となる調光用材料の濃度は、一般に3質量%以上であり、5質量%〜95質量%の範囲を高分子ゲルに添加することが好ましく、より好ましくは5質量%〜80質量%の範囲である。3質量%未満となると、調光用材料を添加した効果が十分に得られず、95質量%を超えると、高分子ゲルの特性が低下してしまう恐れがある。
【0049】
調光用材料としては、各種の染料や顔料、光散乱材料が挙げられ、無機系顔料、有機系顔料、塩基性染料、酸性染料、分散染料、反応性染料などが好ましい。特に顔料はその添加による高分子ゲルの刺激応答性に与える影響が比較的小さいので好ましい。
【0050】
一般的な染料で好適な具体例としては、例えば、黒色のニグロシン系染料や赤、緑、青、シアン、マゼンタ、イエローなどのカラー染料であるアゾ染料、アントラキノン系染料、インジゴ系染料、フタロシアニン系染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、ナフタルイミド染料、ベリノン染料などが挙げられ、特に光吸収係数が高いものが望ましい。
【0051】
また、一般的な顔料の具体例としては、黒色顔料である各種カーボンブラック(チャネルブラック、ファーネスブラック等)やチタンブラック、白色顔料である酸化チタンなどの金属酸化物やカラー顔料である。カラー顔料としては例えば、ベンジジン系のイエロー顔料、ローダミン系のマゼンタ顔料、フタロシアニン系のシアン顔料、あるいはこの他にもアントラキノン系、アゾ系、アゾ金属錯体、フタロシアニン系、キナクリドン系、ペリレン系、インジゴ系、イソインドリノン系、キナクリドン系、アリルアミド系などの各種カラー顔料を挙げることができる。
【0052】
顔料のより具体的な例として、酸化亜鉛、塩基性炭酸鉛、塩基性硫酸鉛、硫酸鉛、リトボン、白雲母、硫化亜鉛、酸化チタン、酸化アンモチモン、鉛白、酸化ジルコニウム、アルミナ、マイカナイト、マイカレックス、石英、炭酸カルシウム、石膏、クレー、シリカ、ケイ酸、珪素土、タルク、塩基性炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、サチン白等の無機酸化物等の白色顔料や、亜鉛、アルメル、アンチモン、アルミニウム、アルミニウム合金、イリジウム、インジウム、オスミウム、クロム、クロメル、コバルト、ジルコニウム、ステンレス鋼、金、銀、洋銀、銅、青銅、すず、タングステン、タングステン鋼、鉄、鉛、ニッケル、ニッケル合金、ニッケリン、白金、白金ロジウム、タンタル、ジュラルミン、ニクロム、チタン、クルップ・オーステナイト鋼、コンスタンタン、真鍮、白金イリジウム、パラジウム、パラジウム合金、モリブデン、モリブデン鋼、マンガン、マンガン合金、ロジウム、ロジウム金などの金属材料や、フェノール樹脂、フラン樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アニリン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ−p−キシリレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素系プラスチック、ポリアクリロニトリル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、ポリエーテル、ポリカーボネート、熱可塑性ポリエステル、ポリアミド、ジエン系プラスチック、ポリウレタン系プラスチック、ポリフェニレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、芳香族ヘテロ環ポリマー、シリコーン、天然ゴム系プラスチック、セルロース系プラスチック等の高分子材料で構成された顔料等が挙げられる。
【0053】
また、カラー顔料であるイエロー系顔料のより具体的な例としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。より詳細には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、168等が好適に用いられる。
【0054】
マゼンタ系顔料のより具体的な例としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。より詳細には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48;2、48;3、48;4、57;1、81;1、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254が特に好ましい。
【0055】
シアン系顔料のより具体的な例としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、例えば顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15;3、15:4、60、62、66等が特に好適に利用できる。
【0056】
使用する顔料の粒子径としては、1次粒子の体積平均粒子径で0.001μm〜1μmのものが好ましく、特に、0.01μm〜0.5μmのものが好ましい。これは粒子径が0.001μm未満では高分子ゲルからの流出が起こりやすく、また、1μmを超えると発色特性や光散乱特性が悪くなる恐れが生じるためである。
【0057】
光散乱材料の好適な無機材料の具体例として、酸化亜鉛、塩基性炭酸鉛、塩基性硫酸鉛、硫酸鉛、リトボン、白雲母、硫化亜鉛、酸化チタン、酸化アンモチモン、鉛白、酸化ジルコニウム、アルミナ、マイカナイト、マイカレックス、石英、炭酸カルシウム、石膏、クレー、シリカ、ケイ酸、珪素土、タルク、塩基性炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、サチン白等の無機酸化物や、亜鉛、アルメル、アンチモン、アルミニウム、アルミニウム合金、イリジウム、インジウム、オスミウム、クロム、クロメル、コバルト、ジルコニウム、ステンレス鋼、金、銀、洋銀、銅、青銅、すず、タングステン、タングステン鋼、鉄、鉛、ニッケル、ニッケル合金、ニッケリン、白金、白金ロジウム、タンタル、ジュラルミン、ニクロム、チタン、クルップ・オーステナイト鋼、コンスタンタン、真鍮、白金イリジウム、パラジウム、パラジウム合金、モリブデン、モリブデン鋼、マンガン、マンガン合金、ロジウム、ロジウム金などの金属材料、ITO(インジウム・スズ酸化物)等の無機導電性材料などが挙げられる。
【0058】
また、光散乱材料の好適な有機材料の具体例として、フェノール樹脂、フラン樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アニリン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ−p−キシリレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素系プラスチック、ポリアクリロニトリル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、ポリエーテル、ポリカーボネート、熱可塑性ポリエステル、ポリアミド、ジエン系プラスチック、ポリウレタン系プラスチック、ポリフェニレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、芳香族ヘテロ環ポリマー、シリコーン、天然ゴム系プラスチック、セルロース系プラスチック等やこれら2種類以上の高分子材料の混合材料(ポリマーブレンド)などの高分子材料が挙げられる。
【0059】
これらの調光用材料として、高分子ゲルに共有結合するための付加反応性基や重合性基を有する調光用材料や、高分子ゲルとイオン結合などの相互作用する基を有する調光用材料などの各種の化学修飾した調光用材料を用いることも好ましい。
【0060】
なお、上記の調光用材料は、高分子ゲル1(あるいは、その液体による膨潤体)内部に存在し、膨潤・収縮によっても高分子ゲルの外部に移動しないものであることが好ましい。このためには、前記したように、高分子ゲルに調光用材料を共有結合する方法、イオン結合する方法、高分子ゲルの網目内部に物理的に保持する方法などによって調光用材料を添加することが好ましい。特に調光用材料として顔料を用いる場合は、高分子ゲルの架橋密度を適宜選択し、顔料の粒子径よりも小さい網目を形成させることにより、顔料を安定に保持することができる。
【0061】
このような調光用材料を含有する高分子ゲル1は、架橋前の高分子中に調光用材料を均一に分散、混合した後に架橋する方法や、重合時に、高分子前駆体モノマー組成物に調光用材料や重合性基を有する調光用材料を添加して重合する方法によって製造することができる。調光用材料は、高分子ゲル中に均一に分散されていることが好ましく、特に、高分子ゲルへの分散に際して、高分子ゲル製造段階において、機械的混練法、攪拌法を用いて、又は界面活性剤や両親媒性高分子等の分散剤などを利用して均一に分散させることが望ましい。なお、調光用材料を含有する高分子ゲルの粒子は、前記した粒子化方法と同様の方法により製造することができる。
【0062】
(液体L)
本発明の高分子ゲル組成物に含有され、刺激応答性高分子ゲル粒子が吸脱(吸収及び放出)し得る液体Lは、該高分子ゲル粒子内部及び/又は該高分子ゲル粒子外部に位置し、該高分子ゲル粒子の吸脱作用により、該高分子ゲル粒子の内部と外部との間を移動する。
【0063】
前記液体Lとしては、水、電解質水溶液、アルコール、ケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキシド、アセトニトリル、プロピレンカーボネートやその他の芳香族系有機溶剤、脂肪族系有機溶剤やそれらの混合物が使用できる。また、液体Lには高分子ゲルに吸脱する界面活性剤、又は酸、アルカリ、塩、及び分散安定剤、酸化防止や紫外線吸収などを目的とした安定剤、抗菌剤、防腐剤などを添加してもよい。更に、種々顔料や白色顔料や染料などの色素を添加することもできる。
【0064】
また、本発明の高分子ゲル組成物における、高分子ゲル1と液体Lとの混合比は、質量比で1/2000〜1/1(高分子ゲル1/液体L)の範囲であることが好ましい。質量比が1/2000を超えると、組成物の機械的強度などを物性低下の恐れがあり、1/1未満になると、刺激応答による体積変化が低下する恐れがある。
【0065】
(隔離部材)
本発明の高分子ゲル組成物において、前記刺激応答性高分子ゲル粒子及び前記液体を含む領域を覆う隔離部材2は、図1及び図2に示すようにマトリックスとして使用される。隔離部材2の材料(マトリックス材料)としては、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデンやその異種共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレンやその異種共重合体、ポリメチルメタクリレートやその異種共重合体、ポリアミド系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアセタール、ポリイミド、エポキシ樹脂、アクリル系やビニル系の熱、紫外線や電子線硬化性樹脂等の樹脂組成物、シラン系ゾルゲル組成物などの他、セラミック、ガラス等の無機材料が挙げられるが、本発明においては、マトリックス材料として樹脂を用いることを要する。
【0066】
なお、隔離部材2のマトリックス材料は架橋されたものであってもよい。更に、マトリックス材料は、種々の添加剤、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤などの安定剤、可塑剤、充填剤、着色剤などを含有していてもよい。また、隔離部材2が、光透過性・透明性の高いものが特に好ましく使用できる。更に、隔離部材の材料は内部に含まれる液体Lの透過性の低いものが好ましい。
【0067】
隔離部材2によって隔離されている領域に含有される刺激応答性高分子ゲルは、その領域1つあたり1つであることが好ましいが、性能を低下させない範囲で複数個含まれていてもよい。
【0068】
上記した隔離部材2であるマトリックス材料と、高分子ゲル組成物との組成比は、その質量比で1/50〜50/1[マトリックス材料/(刺激応答性高分子ゲル+液体)]の範囲が好ましい。この範囲を越えると、所望の光学特性や材料の物理的強度が得られない恐れがある。また、図1(a)の態様における刺激応答性高分子ゲル及び前記液体Lが構成する領域(ドロップ)の大きさは、体積平均粒子径で0.5μm〜5mm、特に、1μm〜2mmの範囲であることが好ましい。
【0069】
(蒸発防止部材3)
本発明の高分子ゲル組成物において、前記液体の蒸発防止のために設けられた蒸発防止部材3の材料は、特に限定されないが、例えば、金属及び金属化合物の薄膜、ガラス、セラミックのような無機材料やポリマー材料が使用できる。なかでも、蒸発防止部材3の材料は、ガスバリア性の高いものが好ましく使用でき、特に、内部に含まれる液体蒸気のガスバリア性の高いものが好ましい。また、高分子ゲル組成物が光学素子として使用されることが多いことから、蒸発防止部材3は、透明性の高いものが好ましく使用されることがある。
本発明においては、蒸発防止部材が、シランカップリング剤を含有するポリマー層からなることを要する。
【0070】
特に、ポリマー材料は本発明の高分子ゲル組成物に可撓性を持たせることができ、用途範囲を広げられるので蒸発防止部材3として好ましく使用できる。蒸発防止部材3として好適なポリマー材料としては、例えば、塩化ビニリデン系共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアミド系重合体、ポリビニルアルコール系重合体、ポリアクリロニトリル系重合体、ウレタン系重合体などが挙げられる。これらのポリマー材料は、1種又は2種以上混合して使用できる。また、図1に示すように、蒸発防止部材3が、高分子ゲル1、液体L及び隔離部材3を挟持するように設けられた場合、少なくとも一方の蒸発防止部材3は光透過性を有することが必要である。これにより、高分子ゲル組成物を光学素子として好適に使用することができる。
【0071】
ポリマー材料からなる薄膜を積層して層状構造を有するポリマー層として使用する場合には、当該ポリマー層は、所望のバリア性(水蒸気、有機溶剤のガス、などに対するバリア性)に応じて、前記ポリマー材料(好ましくは塩化ビニリデン系共重合体及びエチレン−ビニルアルコール共重合体)のうち少なくとも一つのポリマー材料を含有していてもよく、複数のポリマー材料を含有していてもよい。また、バリア性ポリマー層は、バリア性材料を含有する複数の層で構成されていてもよい。例えば、バリア性ポリマー層をコーティングするためのバリア性ポリマーコーテイング層は、塩化ビニリデン系共重合体を含有する層と、エチレン−ビニルアルコール共重合体を含有する層とを含む複数の層で構成されていてもよい。バリア性ポリマー層中のバリア性を有するポリマー材料の含有量は、50質量%以上、好ましくは75〜100質量%、更に、好ましくは90〜100質量%程度である。
【0072】
なお、バリア性ポリマー層は、他のポリマー、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体などのオレフィン系ポリマー、アクリル系ポリマー、スチレン系ポリマー、ポリエステル、ポリアセタール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ウレタン系重合体、アクリロニトリル系重合体、ポリカーボネート、塩素化ポリオレフィン、セルロース系ポリマーなどを含有していてもよい。バリア性ポリマー層は、必要に応じて、前記添加剤、アンチブロッキング剤、ポリエチレンイミン、ポリイソシアネートなどの接着性向上剤などを含んでいてもよい。
【0073】
図1に示される高分子ゲル組成物において、蒸発防止部材3の好ましい厚さは0.1μm〜3mmであり、特に、0.1μm〜500μmであることが好ましい。蒸発防止部材3が、0.1μmよりも薄くなってしまうと所望の蒸発防止効果を得ることが難しくなってしまい、3mmより厚くなってしまうとハンドリング性が悪くなる場合がある。
【0074】
また、上記ポリマー層中に、バリア性や、高分子ゲル1、液体L及び隔離部材2からなる高分子ゲル組成物(主に、隔離部材2)との密着性を高めるためにシランカップリング材(例えば、ハロゲン原子、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基から選択された少なくとも1種の官能基と、アルコキシ基とを有するケイ素化合物)を混合させる。
【0075】
蒸発防止部材3としてポリマー層を利用する場合には、図3に示したようにポリマー層4の他に無機質層5を設けることもできる。無機質層5を設けることにより前記ポリマー層4が薄くても、優れた蒸発防止機能を有する蒸発防止部材3を形成できる。ここで、図3は、高分子ゲル組成物の構造の一例を説明するための拡大断面図であり、(a)は無機質層がポリマー層の内側に設けられていることを表し、(b)は無機質層がポリマー層の外側に設けられていることを表す。
【0076】
無機質層5を構成する無機物としては、透明性薄膜を形成できる無機物であるのが好ましく、このような無機物には、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどの周期表2族元素;チタン、ジルコニウム、ルテニウム、ハフニウム、タンタルなどの周期表遷移元素;亜鉛などの周期表12族元素;アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウムなどの周期表13族元素;ケイ素、ゲルマニウム、錫などの周期表14族元素;セレン、テルルなどの周期表16族元素などの単体、これらの元素を含む無機化合物、例えば、酸化物、ハロゲン化物、炭化物、窒化物などが挙げられる。これらは、1種又は2種以上用いることができる。好ましい無機物には、例えば、マグネシウム、カルシウム、バリウムなどの周期表2族元素;チタン、ジルコニウム、タンタル、ルテニウムなどの周期表遷移元素;亜鉛などの周期表12族元素;アルミニウム、インジウム、タリウムなどの周期表13族元素;ケイ素、錫などの周期表14族元素;セレンなどの周期表16族元素の単体、又はこれらを含む酸化物が含まれる。特に周期表13族元素又は14族元素の金属単体又はこれらの酸化物により、無機質層が形成されているのが好ましい。
【0077】
前記無機物のなかでも前記元素を含む酸化物(例えば、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化インジウム又はこれらの複合酸化物やケイ素酸化物など)は透明性やバリア性に優れている。特に、ケイ素酸化物は、前記特性に加えて、緻密な薄膜を形成でき、シランカップリング剤を含む蒸発防止層を構成するポリマーとの親和性が高く、機械的外力が作用しても、無機質層に亀裂や欠陥が生成せず、高温においても高いバリア性を長期間に亘り維持できる。なお、ケイ素酸化物には、一酸化ケイ素や、二酸化ケイ素のみならず、組成式SiOx(式中、0<x≦2、好ましくは0.8≦x≦1.5)で表されるケイ素酸化物が含まれる。
【0078】
無機質層5の厚さは、通常、0.01〜1μmの範囲、好ましくは0.02〜0.5μm、更に、好ましくは0.03〜0.15μm程度の範囲から選択できる。厚さが0.01μm未満では、均質な薄膜の形成が困難であり、十分なバリア性や機械的強度が得られず、1μmを越えても、バリア性はさほど向上しないばかりか、透明性や外観を損なうなどの問題があり、経済的にも不利である。
【0079】
また、高分子ゲル1、液体L及び隔離部材2からなる高分子ゲル組成物(主に、隔離部材2)と蒸発防止部材3との密着性を高めるために、隔離部材2の露出面、又は、当該蒸発防止部材3の前記露出面と接触する面、の少なくとも何れか一方に表面処理をすることも好ましく実施できる。表面処理としては、シランカップリング処理などが好ましい。蒸発防止部材3に無機質を含む場合には隔離部材2に親和性の高いシランカップリング剤や隔離部材2と反応する反応性シランカップリング剤などが好ましく使用できる。親和性の高いシランカップリング剤は隔離部材2の材質によって例えば、アルキル基、ハロゲン原子、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などを持つシランカップリング剤から選択することができ、反応性のシランカップリング剤としてはエポキシ基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などを持つものが好ましく使用できる。
【0080】
同様に、隔離部材2と蒸発防止部材3との密着性を上げるために、隔離部材2の露出面と、当該蒸発防止部材3の前記露出面と接触する面と、の間に粘着層を設けることも好ましい。接着層としては、一般に知られている接着剤等を好ましく使用できる。また、ヒートシール性のあるポリマー層を用いることも好ましい。なお、粘着層は光透過性であることが好ましく、透明性の高いものが更に好ましい。
【0081】
更に、隔離部材2の露出面と、当該蒸発防止部材3の前記露出面と接触する面と、の間に刺激付与手段を設けることも好ましい。刺激付与手段を設けることによって、外部から能動的に刺激を付与して本発明の高分子ゲル組成物内の刺激応答性高分子ゲルの膨潤状態を任意に制御してその光学特性などを変化させることができる。導電性無機質膜を用いて電場や熱を付与することもできるし、導電性高分子やイオン交換性の高分子などを皮膜しておけば通電によって導電性高分子やイオン交換性の高分子中のイオンを液体中に出し入れすることによって本発明の高分子ゲル組成物中のイオン濃度を変化させることができる。この時、用いられる導電性高分子としてはポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアセン類、ポリアセチレン類などが好ましく使用できる。また、これら刺激付与手段は蒸発防止部材として用いる前記無機質膜やポリマー部分を兼ねることもできる。
【0082】
<光学素子>
次に本発明の高分子ゲル組成物を用いた光学素子について説明する。
本発明の高分子ゲル組成物はそのままで調光、表示用等の光学素子として使用することができる。更に、強度、耐久性や機能の向上のために、他の基材上に本発明の組成物を層状に形成すること、あるいは2枚の基材間に本組成物を層状に挟持することで光学素子とすることもできる。また、熱や光、電気などの刺激付与手段と組み合わせて光学素子として用いることも好ましい。本発明の光学素子に付与される刺激は、自然界の刺激でも、人為的な刺激でもよい。光、熱等の自然界の刺激を利用する場合には調光素子や、光シャッター、センサーなどに利用することができる。一方、人為的な刺激を利用する場合には、素子の内部あるいは外部から熱、光、電場などを付与する手段を講じることで、上記の用途にも、表示素子、記録素子、光変調素子などの用途にも応用することが可能となる。
【0083】
上記の光学素子の構成例において、高分子ゲル組成物又はそれよりなる層の厚みの好ましい範囲は、1μm〜5mm、特に、2μm〜3mmの範囲である。1μmよりも小さいと、調光性能が低下し、3mmを超えると、応答特性などが低下する恐れがある。
【0084】
本発明の高分子ゲル組成物は球状、塊状など任意の形に成形して使用することができるが、フィルム状もしくは板状に成形して光学素子として使用することもできる。
フィルム状に成形するには、隔離部材形成用材料に分散した膨潤状態の刺激応答性高分子ゲルを、▲1▼薄膜上のフィルム基材上にコートする、あるいは、▲2▼複数の基材に挟持させる、等の様にして層状に形成したものを固化させることによって薄膜状のフィルムとすることができる。固化させたものは、基材に支持させたまま、又は、基材より剥離して用いることができる。
【0085】
ここで、蒸発防止部材3は、使用する基材そのものに蒸発防止機能を有するものを選出してもよい。また、フィルム状としてからその上に薄膜状にコートすることで蒸発防止部材3を設けてもよいし、フィルム上に成形された蒸発防止部材3を接着することも好ましく実施される。
【0086】
上述のように、フィルム状に成形し、他の蒸発防止フィルムを張り合わせる等を行った場合その端面は開放端となるので、その部分を封止部材用いて封止することも好ましく実施される。封止しない場合には、開放端から徐々に内部液体が蒸発して刺激応答性高分子ゲルの応答性が悪くなる場合がある。封止部材としては、蒸発防止部材3に用いた材料と同じ材料が好ましく使用できる。封止する方法としては硬化性の樹脂をコートし、乾燥や光、熱等によって硬化する、ヒートシールにより端面を接着する、金属及び金属化合物を蒸着する等の方法を用いることができる。
【0087】
また、フィルム状の光学素子は、表面及び裏面のどちらか一方の面に光反射性を有してもよい。このように、一方の面を光反射性にすることによって、反射型の調光フィルムなどとして使用することもできる。
【0088】
<高分子ゲル組成物の製造方法>
次に本発明の高分子ゲル組成物の製造方法について説明する。
本発明の高分子ゲル組成物は、特開平11−228850号公報に開示されている製造方法に準じて作られた、刺激応答性高分子ゲルと液体を含む領域と前記領域を覆う隔離部材とを有する組成物に対して、前記した蒸発防止部材材料を接着することによって作製できる。接着する手段としては、各種接着剤を用いる方法、ラミネートによる周囲をヒートシールする方法など各種の一般的な接着手段を用いることができる。
【0089】
また、前記刺激応答性高分子ゲルと液体とを含む領域と、前記領域を覆う隔離部材とを有する組成物に対して、液体状の蒸発防止材料前駆体を塗布しそれを固化することによっても作製することができる。塗布方法としては種々の慣用の塗布方法、例えばロールコーティング法、グラビアコーティング法、キャストコーティング法、スプレーコーティング法、リバースコーティング法、ディップコーティング法、ブレードコーティング法などを用いることができ、乾燥又は熱、光などによって硬化することにより蒸発防止部材とすることができる。
【0090】
更に、刺激応答性高分子ゲルを前記ゲルが吸脱する液体で膨潤させた状態で隔離部材形成用材料の溶液に混合し、これを蒸発防止部材材料上にコートする、蒸発防止部材材料で挟持する、又は、所望の形状をした蒸発防止部材材料中に成形し、隔離部材形成用材料に熱や光などの硬化手段を与えて硬化させることによっても作製することができる。この時、微粒子状の刺激応答性高分子ゲルを用いる際は、界面活性剤等の分散剤を使用して隔離部材形成用材料中に液滴状に良く分散させることが好ましい。
【0091】
本発明の高分子ゲル組成物は、図4に例示するように、隔離された刺激応答性高分子ゲル6が、刺激によって膨潤(a)及び収縮(b)による体積変化を引き起こし、光の透過性等を散乱や回折によって変化させることができる。ここで、図4は、本発明の高分子ゲル組成物の動作について説明するための拡大断面図であり、(a)は刺激応答性高分子ゲル粒子の膨潤時を表し、(b)は刺激応答性高分子ゲル粒子の収縮時を表す。また、刺激応答性高分子ゲルに飽和吸収濃度又は飽和吸収散乱濃度以上の調光材料を含有させた場合は、高分子ゲルの体積変化に応じて光の吸収又は散乱効率が変化し光学濃度を変化させることができる。具体的には刺激応答性高分子ゲルの膨潤時には光学濃度が高くなり、収縮時には光学濃度が低くなる。従って、本発明の高分子ゲル組成物は、調光素子、表示素子などの光学素子として利用することができる。
【0092】
本発明によれば、刺激の付与により液体を吸収・排出して体積変化する高分子ゲル1と液体Lとを含む領域を、隔離部材2によって相分離マトリックス状に保持せしめることにより、当該高分子ゲルの機能を向上させることができる。これは、高分子ゲルと液体との混合物が微小な領域として隔離され、独立に存在することにより、従来の高分子ゲル粒子で問題となっていた凝集による粗大化が抑制され、応答速度や繰り返し安定性が低下する等の問題を防止できるからである。また、高分子材料やガラスなどの固体マトリックス中に、高分子ゲルの刺激応答機能を妨げることなく、高分子ゲルと液体との混合物を隔離し、保持することにより、固体状の自己保持性の材料として使用できる。更に、蒸発防止部材3を設けることによって内部液体Lの蒸発による刺激応答性高分子ゲルの応答性低下を防ぐことができ、耐久性の高い光学素子を作製することができ、用途範囲を格段に広げることができる。
【0093】
以上、本発明の好ましい実施の形態を説明したが、本発明はその要旨の範囲内で様々な変形や変更が可能である。
【0094】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0095】
〔比較例1、参考例1〕
参考例1の高分子ゲル組成物と比較例の高分子ゲル組成物を製造した。以下、その製造方法を工程ごとに説明する。また、製造された高分子ゲル組成物(参考例1及び比較例1)を光学素子として使用し、その光学性能を測定した。
【0096】
(高分子ゲル粒子の製造)
熱による刺激応答性高分子ゲルの粒子を、以下に示すように、逆相懸濁重合によって製造した。
主モノマーとして、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)10g、架橋剤として、メチレンビスアクリルアミド0.05gを用い、これに蒸留水20g、過硫酸アンモニウム(APS)0.1gを添加し、攪拌混合して水溶液Aを調製した。
ソルビトール系界面活性剤(ソルゲン50:第一工業製薬(株)製)2.0gをシクロヘキサン200mlに溶解した溶液を窒素置換された反応容器に加え、これに、先に調製した水溶液Aを添加し、回転式攪拌羽根を用いて高速攪拌して乳化させた。乳化後、反応系の温度を20℃に調節し、更に、攪拌しながら、これにテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)の50%水溶液を添加し、重合を行った。重合後、生成した高分子ゲル粒子を回収し、純水で洗浄を行った。
【0097】
得られた高分子ゲル粒子(刺激応答性高分子ゲル)の膨潤時の体積平均粒子径は約60μmであった。かかる高分子ゲル粒子は、加熱によって収縮する性質をもち、約32℃に相転移点を有していた。従って、本高分子ゲル粒子は、相転移点よりも高い温度では収縮し、低い温度では膨潤する。この変化は可逆的であり、膨潤・収縮によって粒子の体積は12倍以上変化するものであった。また、膨潤状態で高分子ゲル粒子は透明であるが、収縮状態では白濁する性質をもっていた。
【0098】
(高分子ゲル組成物の製造)
以上のようにして得られた高分子ゲル粒子を用いて下記の方法で高分子ゲル組成物を製造した。
(1)隔離部材による高分子ゲル粒子の保持
重合開始剤を含有する紫外線硬化樹脂(日本化薬社製:KAYARAD FAD−515に分散剤としてセイミケミカル製:Surflon S382を10質量%混合したもの)に30g対して前記高分子ゲル粒子の水分散液(ゲルの固形分濃度3質量%)20gを20℃において膨潤したものを加え、ウェーブロータを用いて、高分子ゲルの膨潤粒子を分散させた混合溶液Bを調製した。なお、この攪拌分散は高分子ゲルが収縮しない温度である20℃で行った。
【0099】
得られた混合溶液Bをスライドグラス上にバーコーターを用いて200μmの厚さにコートし、紫外線照射装置によって紫外線(高圧水銀灯、120W/cm、照射距離20cm)を30秒間照射することで硬化させ、刺激応答性高分子ゲルを含む組成物(比較例1)を作成した。得られた高分子ゲル組成物を顕微鏡観察によって観察したところ、膜の内部には高分子ゲルの膨潤粒子が相分離状に隔離、分散して存在することが確認できた。
【0100】
(2)蒸発防止部材の形成
得られた刺激応答性高分子ゲルを含む組成物(比較例1)の表面に、アクリレート系接着剤をコートした。更に、ポリエチレンナフタレートフィルム(厚さ75μm)を張り合わせて高分子ゲル組成物(参考例1)とした。
【0101】
(機能評価)
このようにして作製した高分子ゲル組成物(比較例1及び参考例1)からなる光学素子は、20℃においては半透明な状態であったが、これを40℃に加熱すると白濁した不透明状態になった。また、再び、20℃に冷却すると初期の半透明状態に戻り、可逆的に変化することが判った。これらの変化を顕微鏡で観察したところ、膜中の高分子ゲルが温度変化によって膨潤・収縮しており、収縮状態(40℃)では光を散乱させることが判った。このように、刺激応答性ゲルが膨潤時には半透明であり、収縮時には白濁する高分子ゲル組成物を作成できた。
【0102】
従って、高分子ゲル組成物は、非常に簡単な構成であるにもかかわらず温度センサや調光素子などの光学素子としての機能を有する。しかしながら、蒸発防止部材3が設けられていない比較例1の高分子ゲル組成物は、空気中、室温で放置しておくと6時間後には白濁が強くなり温度に応答しにくくなった。一方で、参考例1の高分子ゲル組成物は、1日放置した後でも問題なく温度に対して応答した。比較例1の高分子ゲル組成物を顕微鏡観察した所、内部の液体が蒸発して刺激応答性高分子ゲルが収縮していることが観測されたが、参考例1の高分子ゲル組成物では液体が保持されていた。この結果、蒸発防止部材を設けることによって高分子ゲル組成物の耐久性は向上していることが示された。
【0103】
〔参考例2〜7、対照例1、2、比較例2〕
参考例2〜7、対照例1、2の高分子ゲル組成物と比較例2の高分子ゲル組成物を製造した。以下、その製造方法を工程ごとに説明する。また、製造された高分子ゲル組成物(参考例2〜7、対照例1、2及び比較例2)を光学素子として使用し、その光学性能を測定した。
【0104】
(色材を含有した刺激応答性高分子ゲル粒子の作製)
刺激応答性高分子ゲルとして、色材を含有した感熱型(高温収縮型)高分子ゲルの粒子を以下のようなプロセスにより製造した。
N−イソプロピルアクリルアミド:3.58g、メチレンビスアクリルアミド:0.0072g、マイクロカプセル化カーボンブラック分散液(大日本インキ化学製、MC black 082−E、顔料分14.3%含有):19.16gの溶液に15分間窒素を通し溶存酸素を除いた。この溶液に対して、APS:29.9mgを含む水溶液:0.50gを加えて攪拌し均一に溶解させ、NIPAMの顔料分散液を調製した。
【0105】
75mm径の3枚羽根の攪拌翼を取り付けた2リットルのセパラブルフラスコに、ソルゲン50:6.00gのシクロヘキサン溶液:1.2リットルをいれ、さらに先に調製したNIPAMの顔料分散液を加え、窒素を流してフラスコ内部全体を窒素置換した。
ウォーターバスを用いてこのフラスコ全体を25℃に保ち、攪拌翼を800rpmで15分間回転させて水相をシクロヘキサン中に懸濁、分散させた。攪拌翼の回転数を250rpmにして、この分散液に対して、TMEDA:0.8mlのシクロヘキサン溶液:3.2mlを加えて、反応を開始させ、25℃に保ったまま250rpmで2時間重合した。
【0106】
このようにして、色材を含有した感熱型高分子ゲル粒子を作製した。得られた感熱型高分子ゲル粒子は室温(25℃、膨潤状態)での体積平均粒子径が30μmであった。この感熱型高分子ゲル粒子は約34℃に相転移温度を有していた。すなわち本高分子ゲル粒子は、相転移点よりも高い温度では収縮し、低い温度では膨潤する。また、その体積変化量は約15倍であった。
【0107】
(分散液の調製)
フッ素系の紫外線硬化剤(日本化薬製 KAYARAD FAD−515)にフッ素系界面活性剤(セイミケミカル製 Surflon S−383)を、10質量%溶解した溶液20gに対して、先に合成した感熱型高分子ゲル粒子(ポリN−イソプロピルアクリルアミドゲル)の水分散液(ゲルの固形分濃度3質量%)20gを20℃に冷却して加え、ウエーブローターを用いてゲル分散液を紫外線硬化樹脂中に分散した(分散液A)。分散時間は2時間であった。
【0108】
(高分子ゲル組成物の作製)
得られた分散液Aを、粒子径200μmのポリスチレンビーズをスペーサとして用いて表1に示した各種蒸発防止部材材料(50×50mm)を用いて挟持し、紫外線照射装置によって紫外線(高圧水銀灯、120W/cm、照射距離20cm)を30秒間照射し、紫外線硬化剤部分を硬化させ、高分子ゲル組成物(参考例3、4、7及び対照例2)を得た。一方、硬化させた、刺激応答性高分子ゲルを含む組成物から蒸発防止部材を剥離して、蒸発防止部材が設けられていない高分子ゲル組成物(比較例2)を得た。
【0109】
更に、得られた組成物の端面を必要に応じて紫外線硬化樹脂(日本化薬製 KAYARAD R381−I)をコートし、紫外線照射を行うことによって封止した。このようにして高分子ゲル組成物(参考例2、5、6及び対照例1)を作成した。得られた高分子ゲル組成物を顕微鏡観察によって観察したところ、膜の内部には高分子ゲルの膨潤粒子が相分離状に隔離、分散して存在することが確認できた。
【0110】
参考例2〜7、対照例1、2の高分子ゲル組成物からなる光学素子は、20℃においてはほぼ黒色に着色した状態であったが、これを40℃に加熱すると半透明となった。また、再び、20℃に冷却すると初期の着色状態に戻り、可逆的に変化することが判った。
【0111】
(機能評価)
それぞれの高分子ゲル組成物(参考例2〜7、実施例1、2及び比較例2)について、蒸発防止性能についての評価を行った。評価は、温度25℃、湿度50%の大気中に一定期間放置した後に、温度に対する応答性を測定することによって行った。蒸発防止部位が設けられていない高分子ゲル組成物(比較例2)は、1日後にすでにゲルは温度に対して応答を示さなくなっていた。一方で、表1に示すように、蒸発防止部位を設けた高分子ゲル組成物(参考例2〜7、実施例1、2)は、いずれも1日後でも、温度に対して応答しており、蒸発防止部位が有効に働いていることが判明している。更に、シランカップリング剤で表面処理した、又は、周囲を封止した高分子ゲル組成物(参考例2、5、6及び実施例1、2)は、1週間後でも良好な応答を示していた。また、周囲を封止していない高分子ゲル組成物(参考例3、4及び7)も、1週間後でも応答を示していた。
【0112】
これは、表面処理、もしくは、封止をしなかったものは樹脂との接着性が悪く蒸発防止層が樹脂層からはがれてしまい、蒸発防止部材としての役割を果たさなくなってしまったためである。この結果により、蒸発防止部位に表面処理を施す、もしくは周囲を封止することによってポリマー層と蒸発防止部位との密着性を上げることによってさらに本組成物、フィルムの耐久性を向上させることができることを示している。更に、周囲を封止していないものでは、次第に端面から乾燥していき、1ヶ月後には応答しなくなっていた(参考例3、4、7及び実施例2)。この結果によれば、端面を封止して空気と直接の接触を遮断することにより本フィルムの耐久性を飛躍的に向上させることができることを示している。
【0113】
【表1】
Figure 0004378886
【0114】
〔実施例
本発明の高分子ゲル組成物(実施例)を製造した。以下、その製造方法を工程ごとに説明する。また、製造された高分子ゲル組成物(実施例)をフィルム状に成形し、光学素子とした上で、光学性能を測定した。
【0115】
(高分子ゲル粒子を含む組成物の製造)
高分子ゲル粒子を含む組成物(実施例)を、紫外線硬化樹脂を用いて下記の方法で作製した。
重合開始剤を含有する紫外線硬化樹脂(日本化薬社製:KAYARAD FAD−515)30gに対して、実施例2で作製したのと同様の感熱型高分子ゲル粒子の水分散液(ゲルの固形分濃度3質量%)25gを加えて、20℃において膨潤させたものを回転式攪拌装置を用いて、高分子ゲルの膨潤粒子を分散させた混合溶液Cを調製した。なお、この攪拌分散は高分子ゲルが収縮しない温度である20℃で行った。
【0116】
得られた混合溶液Cを、スライドガラス上にバーコーターを用いて200μmの厚さにコートし、紫外線照射装置によって紫外線(高圧水銀灯、120W/cm、照射距離20cm)を30秒間照射することで硬化させ、高分子ゲル組成物(実施例)を作成した。得られた高分子ゲル組成物(実施例)を顕微鏡観察によって観察したところ、膜の内部には高分子ゲルの膨潤粒子が相分離状に隔離、分散して存在することが確認できた。
【0117】
(塗布により蒸発防止部位を設けたフィルム状光学素子の作製)
(1)塗布液の調製
塩化ビニリデン系共重合体(旭化成工業(株)製、商品名:サランレジンF216)100質量部に対して、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(すなわち、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン)(東芝シリコーン(株)製,商品名:TSL8350)1.0質量部を添加し、トルエン/テトラヒドロフラン=1/2(質量比)の混合溶媒に溶解し、ポリマー濃度15質量%のバリア性ポリマー層用の塗布液Dを調製した。なお、前記塩化ビニリデン系共重合体は、塩化ビニリデンモノマー85モル%以上を主成分とし、アクリル酸、メタクリル酸メチル、メタアクリロニトリルから選ばれた少くとも1種をコモノマーとして重合させた共重合体である。
【0118】
(2)蒸発防止部位の塗布工程
前記塗布液Dを、前記組成物(実施例)に対して、バーコーターを用いて乾燥後の厚さ5μmになるように塗布し、80℃のオーブンで1分間乾燥し、蒸発防止部位を形成して、さらに反対面にも同様の処理を施して高分子ゲル組成物(実施例)からなるフィルム状光学素子を得た。
【0119】
(機能評価)
このようにして得られたフィルム状光学素子は、20℃では黒色を呈しており、40℃に加熱すると半透明となった。この応答は、3日間たった後でも何ら変化することが無かった。また、応答は、一週間後でも、変化することなくあり、一ヶ月後であっても、ほぼ初期の応答が維持されていた。
【0120】
〔実施例
下記に示すコーティング工程を追加した他は、上述した高分子ゲル組成物(実施例)と同様の方法で高分子ゲル組成物(実施例)を製造した。また、製造された高分子ゲル組成物(実施例)をフィルム状に成形し、光学素子とした上で、光学性能を測定した。
【0121】
(紫外線硬化樹脂によるコーティング)
実施例に記載した製造方法と同様にして作製した高分子ゲル組成物(実施例)の片方の表面に、バーコーターを用いて紫外線硬化樹脂(日本化薬製 KAYARAD MGS−51)を厚さ150μmになるようにコートした。紫外線(高圧水銀灯、120W/cm、照射距離20cm)を30秒間照射して樹脂部分を硬化させ、蒸発防止部位を形成した。更に、反対面にも同様の操作を行うことによって蒸発防止部位を形成した。これにより、高分子ゲル組成物(実施例)からなるフィルム状光学素子を得た。
【0122】
(機能評価)
このようにして得られたフィルム状光学素子は、20℃では黒色を呈しており、40℃に加熱すると半透明となった。この応答は1日間たった後でも何ら変化することが無かった。また、応答は、一週間後でも、ほぼ初期の特性が維持されていた。
【0123】
〔参考例
参考例の高分子ゲル組成物を製造した。以下、その製造方法を工程ごとに説明する。また、製造された高分子ゲル組成物(参考例)をフィルム状に成形し、更に、フィルムの表面及び裏面のどちらか一方に光反射層を設け、光学素子とした上で、光学性能を測定した。
【0124】
(高分子ゲル粒子を含む組成物の製造)
高分子ゲル粒子を含む組成物(参考例)を、UV硬化樹脂を用いて下記の方法で作製した。
重合開始剤を含有する紫外線硬化樹脂(日本化薬社製:KAYARAD FAD−515)30gに対して、参考例2で作製したのと同様の感熱型高分子ゲル粒子の水分散液(ゲルの固形分濃度3質量%)20gを加えて、20℃において膨潤させたものを回転式攪拌装置を用いて、高分子ゲルの膨潤粒子を分散させた混合溶液Eを調製した。なお、この攪拌分散は高分子ゲルが収縮しない温度である20℃で行った。
【0125】
調製した分散液Eを、白色アクリル板上に塗布し、200μmポリスチレンビーズをスペーサとして用い、スライドガラスで挟持した。紫外線照射装置によって紫外線(高圧水銀灯、120W/cm、照射距離20cm)を30秒間照射し、紫外線硬化剤部分を硬化させた。更に、得られた組成物の端面を紫外線硬化樹脂(日本化薬製 KAYARAD R381−I)でコートし、紫外線照射を行うことによって周囲を封止した。このようにして一方の面が光反射性であるフィルム状光学素子を得た。
【0126】
高分子ゲル組成物(参考例)からなるフィルム状光学素子は、20℃においてはほぼ黒色に着色した状態であったが、これを40℃に加熱すると光反射層の色である白色となった。また、再び、20℃に冷却すると初期の着色状態に戻り、可逆的に変化することが判った。また、この応答性は1ヶ月経過した後でも作製直後と同様の製能が維持されていた。
【0127】
〔参考例10
高分子ゲル組成物に刺激付与手段を付与し、光学素子とした上で、その光学性能を測定した。
【0128】
(刺激付与手段の付与及び光学素子の製造)
室温にて、参考例2で作製した分散液Aを、200μmのポリスチレンビーズを介して、ITO蒸着ガラス(松浪ガラス製、50×50×0.9mm)とスライドガラス(40×50×0.9mm)の間に挟持した。これに紫外線(高圧水銀灯、120W/cm、照射距離20cm)を30秒間照射して樹脂部分を硬化させ、さらに端面を紫外線硬化樹脂(日本化薬製 KAYARAD R381−I)でコートし、紫外線照射を行うことによって周囲を封止した。このようにして刺激付与手段(ITO蒸着膜導電層)を有した図5に示したような光学素子を作製した。ここで、図5は、本発明の高分子ゲル組成物からなる光学素子の構造を表す拡大断面図である。
【0129】
(機能評価)
前記光学素子に対してITO導電層を利用してITO蒸着面方向に15Vの電圧を印加した。ITO蒸着膜中に流れた電流によるジュール熱によって、発熱し約15秒後に半透明(白色)に変化した。この時のガラスの表面温度を測定したところ、約40℃に加熱されていた。また、1ヶ月たった後でも本光学素子の特性はほぼ維持されていた。このようにITO蒸着膜を刺激付与手段として用いることによって能動的な刺激の付与によって光学特性を変化させることのできる光学素子を作製できた。
【0130】
【発明の効果】
本発明によれば、刺激応答性高分子ゲルとそれに吸収・放出される液体を含む領域とを隔離部材によって相分離に保持せしめ、さらに蒸発防止部位を設けることによって、より耐久性に優れた高分子ゲル組成物を得ることができる。本発明の高分子ゲル組成物は、そのままで、又は、基材上もしくは基材間に設けることにより、光学素子として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施形態としての高分子ゲル組成物の構造を説明するための拡大断面図である。
【図2】 本発明の第2の実施形態としての高分子ゲル組成物の構造を説明するための拡大断面図である。
【図3】 分子ゲル組成物の構造の一例を説明するための拡大断面図であり、(a)は無機質薄膜がポリマー層の内側に設けられていることを表し、(b)は無機質薄膜がポリマー層の外側に設けられていることを表す。
【図4】 本発明の高分子ゲル組成物の動作について説明するための拡大断面図であり、(a)は刺激応答性高分子ゲル粒子の膨潤時を表し、(b)は刺激応答性高分子ゲル粒子の収縮時を表す。
【図5】 本発明の高分子ゲル組成物からなる光学素子の構造を表す拡大断面図である。
【符号の説明】
1 刺激応答性高分子ゲルと液体との混合物
2 隔離部材
3 蒸発防止部材
4 ポリマー層(蒸発防止部材)
5 無機質層(蒸発防止部材)
6 膨潤状態の刺激応答性高分子ゲル
6’ 収縮状態の刺激応答性高分子ゲル
7 液体と隔離部材との界面
8 液体
9 スライドガラス
10 ITO蒸着ガラス
11 封止部材

Claims (9)

  1. 刺激の付与により液体を吸収・放出して体積変化を生ずる高分子ゲル粒子と、該高分子ゲル粒子内及び/又は該高分子ゲル粒子外に位置する液体と、該液体と前記高分子ゲル粒子とを含む領域を覆う隔離部材と、を含む組成物を有し、
    前記隔離部材が樹脂からなるマトリックス材料から構成され、該マトリックス材料中に前記高分子ゲル粒子及び前記液体が分散して存在しており、
    更に、前記組成物の周囲を囲み、かつ、前記液体の蒸発を防止する蒸発防止部材が設けられ、該蒸発防止部材が、シランカップリング剤を含有するポリマー層からなることを特徴とする高分子ゲル組成物。
  2. 前記高分子ゲル粒子が調光材料を含有することを特徴とする請求項1に記載の高分子ゲル組成物。
  3. 前記隔離部材の露出面と、前記蒸発防止部材の当該露出面に接触する面と、の間に刺激付与手段を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高分子ゲル組成物。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の高分子ゲル組成物からなることを特徴とする光学素子。
  5. フィルム状に成形された請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の高分子ゲル組成物からなることを特徴とする光学素子。
  6. 前記フィルム状に成形された光学素子のどちらか一方の面が光反射性を有することを特徴とする請求項5に記載の光学素子。
  7. 前記フィルム状に成形された光学素子の周囲が封止されていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の光学素子。
  8. 刺激の付与により液体を吸収・放出して体積変化を生ずる高分子ゲル粒子と液体との膨潤混合物を、それと相溶しない他の液体を溶媒とする隔離部材形成用材料の溶液中に分散させる分散工程と、
    前記隔離部材形成用材料を固化させて隔離部材を形成する固化工程と、
    該固化工程によって形成した当該隔離部材の露出部に包接するように配され、前記液体の蒸発を防止する蒸発防止部材を当該露出部に接着する接着工程と、
    を含み、
    前記隔離部材形成用材料が樹脂からなるマトリックス材料であり、且つ、前記蒸発防止部材が、シランカップリング剤を含有するポリマー層からなることを特徴とする高分子ゲル組成物の製造方法。
  9. 刺激の付与により液体を吸収・放出して体積変化を生ずる高分子ゲル粒子と液体との膨潤混合物を、それと相溶しない他の液体を溶媒とする隔離部材形成用材料の溶液中に分散させる分散工程と、
    前記隔離部材形成用材料を固化させて隔離部材を形成する固化工程と、
    前記隔離部材の露出部に包接するように蒸発防止部材用材料を塗布する塗布工程と、
    前記蒸発防止部材用材料を固化し、前記液体の蒸発を防止する蒸発防止部材が形成される蒸発防止部材形成工程と、
    を含み、
    前記隔離部材形成用材料が樹脂からなるマトリックス材料であり、且つ、前記蒸発防止部材用材料が、シランカップリング剤とポリマーとを含有することを特徴とする高分子ゲル組成物の製造方法。
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