JP4474923B2 - 光学素子 - Google Patents
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Description
本光学素子は、対向する2枚の基板間に液体と高分子ゲルを封止した構成からなり、また高分子ゲルは粒子として少なくとも一方の基板上に接着剤等によって一粒子層として固定されている。基板上に固定された高分子ゲル粒子は刺激付与によって液体を吸脱して体積変化(膨潤・収縮)し、それにともなって調光作用を示す。また、高分子ゲル粒子として、真球状の粒子が好ましく用いられる。
光学素子による透過光の調節は、例えば、高分子ゲルが最大膨潤状態に最小の透過率を、反対に最大収縮状態において最大透過率を各々示すものとなる。
図5は、基板の法線方向からみた、基板上に一粒子層として固定された、最大膨潤状態の高分子ゲル粒子の一例を示す図である。基板の法線方向からみた場合の高分子ゲル粒子6の正射影の面積は基板の総面積に対して約90%が上限となる。
これは、粒子を最密に充填しても粒子間に空間が空いてしまうためである。したがって、10%程度の光の漏れが発生することになる。このような光の漏れは、特に光学素子を表示素子として応用する場合に大きな問題となる。それは、黒レベルの低下によってコントラストが低下することを意味する。
そこで、本発明は、コントラスト比の高い光学素子を提供することを目的とする。
<1> 対向する一対の基板と、前記一対の基板間に挟持された、液体と、刺激の付与により前記液体を吸収・放出して膨潤・収縮する高分子ゲル粒子とを含む調光層と、前記一対の基板の周囲を封止する封止部材とを備える光学素子であって、前記高分子ゲル粒子は、前記一対の基板の内向する面の少なくとも一方に固定され、前記高分子ゲル粒子の固定された面は、最大膨潤状態における前記高分子ゲル粒子の、前記高分子ゲル粒子の固定された面への正射影の領域外に遮光領域を有する光学素子である。
本発明の光学素子は、対向する一対の基板と、前記一対の基板間に挟持された、液体と、刺激の付与により前記液体を吸収・放出して膨潤・収縮する高分子ゲル粒子とを含む調光層と、前記一対の基板の周囲を封止する封止部材とを備える光学素子であって、前記高分子ゲル粒子は、前記一対の基板の内向する面の少なくとも一方に固定され、前記高分子ゲル粒子の固定された面は、最大膨潤状態における前記高分子ゲル粒子の、前記高分子ゲル粒子の固定された面への正射影の領域外に遮光領域を有する。
また、本発明に係る高分子ゲル粒子は基板に固定されているため、高分子ゲル粒子の移動を抑制できる。そのため、非調光領域及び調光領域の変動が生じない。
本発明に係る遮光領域を、非調光領域の総面積の100%に設けることにより、本発明の光学素子のコントラストを十分に高めることができる。
本発明に係る遮光領域を、各々の非調光領域の面積の100%に設けることにより、本発明の光学素子のコントラストを十分に高めることができる。
図1は、本発明の光学素子の一構成を示す概略断面図である。光学素子1は、平行に配置された対向する少なくとも一方が透明な基板2及び基板4と、基板2及び基板4の間に挟持される高分子ゲル粒子6と液体7とを含む調光層8と、高分子ゲル粒子6と液体7とが流出しないように基板2及び基板4の周囲を封止する封止部材9とを備える。刺激付与手段である刺激付与部材10及び12は、それぞれ基板2及び基板4の表面に設けられている。高分子ゲル粒子6は、刺激付与部材10の面上に固定されている。
高分子ゲル粒子6は基板2上に複数固定されており、各高分子ゲル粒子はその固定部を支点に外部刺激に応じた体積変化を示す。遮光領域16は非調光領域に形成される。見方を変えれば、調光領域18は複数の円形の領域となることが望ましく、その円の中心部に高分子ゲル粒子が固定されていることが好ましい。
遮光領域16は、色素を含んだ樹脂層を塗布する、着色した無機材料をスパッタ、蒸着する、基材として着色したものを利用する、基板を部分的に染色する、あるいは必要な大きさ、数の着色領域と透明領域とを有する基材を溶融成形法等によって作製する等によって実現できる。
また、これらの実施には塗布法、各種リソグラフィー法、成形法等が適用できる。
以下、本発明の光学素子を構成する要素について説明する。
本発明の光学素子に用いられる基板は、特に限定されるものではないが、ポリエステル、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、ポリ塩化ビニル等のフィルムや板状基板、ガラス基板、金属、セラミックス等が使用可能である。前記基板の厚みは10μm〜2mmが好ましいが、この大きさは目的によって種々選択可能で、特に限定はされない。
前記遮光領域は、上述したように光を遮るものであれば特に限定されるものではない。遮光領域の形成方法としては、[1]基板上に、光を吸収する物質や色材等の光吸収剤を含む材料を印刷あるいは塗布することにより、光吸収剤を含有する遮光層を形成する方法、[2]基板を色材等によって染色する方法、部分的に色材を含んだ基板を使用する方法等が考えられるが、作製上の簡便さから、[1]の方法により基板上に光吸収剤を含有する遮光層を形成することが好ましい。つまり、遮光領域は、光吸収剤を含有する遮光層であることが好ましい。
前記光吸収剤の具体例としては、顔料および染料などの色材などが挙げられる。
例えば、顔料としてはカーボンブラックなどの黒色顔料、ベンジジン系のイエロー顔料、キナクリドン系、ローダミン系のマゼンタ顔料、フタロシアニン系のシアン顔料などを挙げることができる。
より詳しくは、黒色顔料としてはチャネルブラック、ファーネスブラックなどのカーボンブラックおよびチタンブラックなどが挙げられる。
染料としては、黒色染料のニグロシン系染料および各種カラー染料であるアゾ染料をはじめとし、その他アントラキノン系染料、インジゴ系染料、フタロシアニン系染料、カルボニウム系染料、キノンイミン染料、メチン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、ナフタルイミド染料、ベリノン染料などが挙げられ、特に光吸収係数が高いものが好ましい。
塗料の種類としては、油性塗料、ニトロセルロース塗料、アルキド樹脂塗料、アミノアルキド樹脂塗料、ビニル樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ウレタン樹脂塗料、ポリエステル樹脂塗料、塩化ゴム系塗料、シリコン樹脂塗料、ふっ素樹脂塗料、無機質塗料を挙げることができる。
また、前記遮光層の色調は、黒の他に本発明の光学素子に用いる高分子ゲル粒子と同様であることが好ましい。
また、前記遮光層は、基板に形成された電極層、発熱抵抗層や保護層等の刺激付与手段上に形成されても構わない。
基板上に形成される遮光層は部分的、パターン状、複数であることが望ましい。そのためには、各種印刷法やリソグラフィー法,ソフトリソグラフィー法等により前記光吸収剤を含む材料をパターン状に形成する,あるいはマスキング等によって所望の複数のパターン領域を設定しこれにスパッタリング法,蒸着法,塗布法,浸漬法によって前記光吸収剤を含む材料をパターン状に形成する方法が適用できる。またインクジェット法によって前記光吸収剤を含む材料の溶液を噴射してパターン状に形成することも可能である。
遮光領域がパターン状に形成されることにより、調光領域、すなわち調光に寄与する高分子ゲル粒子を自由に配置できる、または、さまざまな形状、大きさの高分子ゲル粒子が使用できる、といった効果が得られる。
基板の光学素子としての実用面積に占める遮光領域の割合は、5%〜40%の範囲から選択される。より好ましくは5〜20%である。
また、遮光領域の上には、保護層や後述する高分子ゲル粒子との接着性が低くなる表面処理をすることも好ましく実施される。
前記したように、本発明では基板表面に遮光領域を形成することが必須であるが、これ以外にも種々の基板表面処理が必要に応じて実施される。以下、これらの処理について説明する。
前記遮光領域は、非調光領域に形成されるが、球形の高分子ゲル粒子を用いた場合は、調光領域は複数の円形の領域となることが望ましい。また、高分子ゲル粒子は、調光領域における円の中心部に固定されていることが好ましい。
上記重合性不飽和基を2個以上有する化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリンポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリンなどのポリオール類のジまたはトリ(メタ)アクリル酸エステル類、前記ポリオール類とマレイン酸、フマル酸などの不飽和酸類とを反応させて得られる不飽和ポリエステル類、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミドなどのビス(メタ)アクリルアミド類、トリレジンイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどのポリイソシアネートと(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとを反応させて得られるジ(メタ)アクリル酸カルバミン酸エステル類、アリル化澱粉、アリル化セルロース、ジアリルフタレート、その他のテトラアリロキシエタン、ペンタンエリスリトールトリアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、トリアリルトリメチルエーテルなどの多価アリル系を挙げることができる。これらの中でも本発明には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミドなどが好ましく使用される。
また、このような調光領域における高分子ゲル粒子の固定可能な領域は、部分的であることが望ましい。
例えば、調光領域が前記したような複数の円形パターンである場合、各円の中心部の一部領域のみが固定可能な領域となっていることが望ましい。それは、全面が固定可能な領域となっている場合には、高分子ゲル粒子の固定部分の面積が増加し、高分子ゲル粒子の体積変化特性に悪影響を与える恐れがあるためである。
このような部分領域の形成には、前記したような印刷法、リソグラフィー法等が適用できる。
例えば,高分子ゲル粒子との化学結合(水素結合,イオン結合,共有結合)を形成しない,材料間の相互作用や親和性の低い,などの材料によって形成される領域であることが好ましい。
本発明の光学素子には、以下に示す様々な刺激応答性高分子ゲルからなる高分子ゲル粒子が使用できる。これらの高分子ゲルは、それ自身でも膨潤・収縮によって光散乱性が変化するが、必要に応じて色材または光散乱材等の調光用材料が含有されていても構わない。
特に、本発明者らが見出した特開平11−236559号公報に開示されている発色材料と液体の組成物が好ましく使用できる。また光散乱材を含有した高分子ゲル粒子としては、特開2000−231127に開示されている飽和散乱濃度以上の光散乱材料と液体の組成物が好ましく用いられる。
例えば、カチオン性高分子ゲルとしてポリジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどポリアミノ置換(メタ)アクリルアミドの架橋物;ポリジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ポリジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートやポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのポリ(メタ)アクリル酸アミノ置換アルキルエステルの架橋物;ポリスチレンの架橋物;ポリビニルピリジンの架橋物;ポリビニルカルバゾールの架橋物;ポリジメチルアミノスチレンの架橋物などが挙げられる。また、電子受容性化合物としてベンゾキノン、7,7,8,8,−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、テトラシアノエチレン、クロラニル、トリニトロベンゼン、無水マレイン酸やヨウ素などが挙げられる。
なお、上記の括弧を用いた記述は、括弧内の接頭語を含まない化合物および含む化合物の両方を示しており、例えば「(メタ)アクリル」という記述は、「アクリル」および「メタクリル」のいずれをも意味するものである。
例えば、表面を化学修飾した顔料および光散乱材として例えば、表面にビニル基などの不飽和基や不対電子(ラジカル)などの高分子ゲルとの化学結合する基を導入したものや、高分子材料をグラフト結合したものなどが挙げられる。
ここで、飽和吸収濃度以上(あるいは飽和光散乱濃度以上)とは、ひとつの指標として各々の顔料および光散乱材同士の平均間隔が十分に短くなることで、顔料および光散乱材の可視光線吸収および散乱の働きが1次粒子的なものから集合体的なものに変化し、可視光線吸収および散乱の効率が減少する濃度である。このような顔料および光散乱材が集合体的な可視光線吸収および散乱特性を示す状態を、顔料および光散乱材の濃度が飽和吸収濃度以上(あるいは飽和光散乱濃度以上)にある状態と呼ぶ。
すなわち、高分子ゲル粒子中に顔料および光散乱材を飽和吸収濃度以上(あるいは飽和光散乱濃度以上)に含有させた場合、膨潤状態において可視光線を効率よく吸収および散乱することができ、収縮状態と比べて可視光線吸収および散乱量をより大きくすることができる。つまりこの場合、高分子ゲル粒子が収縮した状態に顔料および光散乱材を飽和吸収濃度以上に含有できるので、この高分子ゲル粒子が膨潤すると、顔料および光散乱材の濃度が下がり、顔料および光散乱材1粒子あたりの可視光線の吸収および散乱効率を収縮状態の場合よりも上げることができる。その結果、高分子ゲル粒子の膨潤状態において、可視光線の吸収および散乱量を大きく上げ、収縮状態には可視光線の吸収および散乱量を大きく下げることができる。
以上のことから、飽和吸収濃度(あるいは飽和光散乱濃度)とは膨潤・収縮による可視光線の吸収および散乱量変化をより大きくするために必要な濃度であり、高分子ゲル粒子中の顔料および光散乱材の濃度を、飽和吸収濃度以上(あるいは飽和光散乱濃度以上)に設定することが好ましい。
「高分子ゲル粒子のうち少なくとも一部」が飽和濃度以上になる濃度となっていれば、調光作用を発揮することができるが、その高分子ゲル粒子の内部のより多くの部分が、あるいは、より多くの高分子ゲル粒子が、前記飽和濃度以上になる濃度であることが好ましい。
重合時において調光用材料を添加する場合には、前記したように重合性基や不対電子(ラジカル)をもつ調光用材料を使用し、高分子ゲル粒子に化学結合させることも好ましく実施される。
また、調光用材料は高分子ゲル粒子中に極力均一に分散されていることが望ましい。特に、架橋前の高分子への分散や、高分子前駆体モノマー組成物への添加に際して、機械的混練法、攪拌法やあるいは分散剤などを利用して均一に分散させることが望ましい。
さらには、前記した調光領域がパターン状かつ複数ある場合においては、このようなパターン配置に対応して、基板上に塗布した高分子ゲル前駆体(必要に応じて調光用材料を含んでも構わない)に、フォトマスク等を用いて、紫外線や電子線を照射することで、パターン状に高分子ゲル粒子を形成することも実施可能である。
上記重合性不飽和基を2個以上有する化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリンポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリンなどのポリオール類のジまたはトリ(メタ)アクリル酸エステル類、前記ポリオール類とマレイン酸、フマル酸などの不飽和酸類とを反応させて得られる不飽和ポリエステル類、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミドなどのビス(メタ)アクリルアミド類、トリレジンイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどのポリイソシアネートと(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとを反応させて得られるジ(メタ)アクリル酸カルバミン酸エステル類、アリル化澱粉、アリル化セルロース、ジアリルフタレート、その他のテトラアリロキシエタン、ペンタンエリスリトールトリアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、トリアリルトリメチルエーテルなどの多価アリル系を挙げることができる。これらの中でも本発明には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミドなどが好ましく使用される。
その他、ハロエポキシ化合物の具体例としては、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、β−メチルエピクロロヒドリンなどを挙げることができる。また、ジイソシアネート化合物の具体例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどを挙げることができる。これらの中でも本発明には、特にエチレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが好ましく使用される。
これらのうち特に好ましいのはN,N′−メチレンビス(メタ)アクリルアミドである。架橋剤の使用量は、前記モノマーの仕込み量に対して一般に0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%である。
これらの開始剤の使用量は、一般には主モノマーに対して0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%である。
また、高分子ゲル粒子の刺激応答による体積変化速度をより高速にするために、従来技術と同様に高分子ゲル粒子の材料を多孔質化して液体の出入り易さを向上させることも好ましい。一般的には膨潤した高分子ゲル粒子を凍結乾燥する方法等で多孔質化することができる。
前記高分子ゲル粒子が吸収・放出可能な液体としては、特に制限はないが、好ましくは、水、電解質水溶液、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキシド、アセトニトリル、プロピレンカーボネートなどや、キシレン、トルエンなどの芳香族系溶媒およびそれらの混合物が使用できる。
また、液体には高分子ゲル粒子に吸脱する界面活性剤、液体のpH変化を促進するためのビオロゲン誘導体などの酸化還元剤、酸、アルカリ、塩、および界面活性剤等の分散安定剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの安定剤などを添加しても構わない。
−刺激付与手段−
本発明に用いる刺激付与手段は、前記高分子ゲル粒子に適した刺激を付与し得るものが選ばれる。従って、たとえば電気応答性の高分子ゲルを用いる場合は電極が具備されており、熱応答性の高分子ゲルを用いる場合は発熱抵抗体が具備されている。
本発明において好ましく用いられる刺激付与手段は、主に電気刺激を付与するための電極である。電極の構成は、単純マトリクス電極型あるいは画素別分割電極型のいずれも適用できる。
封止部材としては、液体の蒸発または揮発を抑制する能力を有し、基板に対する接着性を有し、調光特性に悪影響を与えず、実使用条件においてこれらの条件を長期間満たすものであれば、どのような材料を用いてもよい。また複数の封止部材を組み合わせて構成することも可能である。
封止部材および封止方法は、光学素子の開口部面積の確保、工程簡略化による加工コスト等を考慮すると、1層の封止が好ましい。1層で封止を行うときの封止部材として、末端に反応基を有するイソブチレンオリゴマーを主体とした熱硬化型弾性シーリング材や、アクリル系紫外線硬化樹脂等の使用が例示できる。
また、2層で封止するときには、調光層と接触する1次封止にポリイソブチレン系シーラント等、2次封止としてアクリル樹脂等が例示できる。本発明の封止部材および封止方法は上記例示に限定されるものではなく、多種多様なものが選択でき、かつ、それらを組み合わせて使用してもよい。
本発明の光学素子は、調光層を挟持するために十分に均一な基板の間隙が確保されていればよく、必要に応じて画像欠陥が生じないように出来るだけ少ない量のスペーサを使用すればよい。スペーサーによる基板間の間隔は1μm〜5mmから選択され、小型光学素子においては10μm〜200μmの範囲がより好ましい。厚みが1μm以上であれば調光量を大きくすることができ、5mm以下であれば光学素子の重量を軽くすることができる。
スペーサーの形状は、安定して間隙を維持できる物であれば特に限定されないが、スペーサーは例えば球、立方体、柱状のものなどの独立した形状のものが好ましく用いられる。また、連続した形状を有するスペーサーを使用することも出来る。この場合スペーサーは、間隙を保持することと同時に、網目状にすることで調光層の内部をセグメント化する働きを持たせてもよい。そうすることにより、隣接画素の誤動作を抑制する効果が得られ、より表示画質が向上する。
スペーサーの連続した形状は、安定して間隙を維持できる物であれば特に限定されず、主に格子状、ハニカム状などの多角形を始めとして、様々な形状を適用することが出来る。なお、光学素子の内部をセグメント化する働きを持たせる場合、画素の形状や刺激付与手段の形状を考慮すると、中でも格子状が最も好ましい。これらのスペーサーは、調光層中の液体に安定な材料であれば特に限定されず、例えば、樹脂、金属、金属酸化物、ガラスなどが適用できる。
[実施例1]
(基板)
光学素子を作製するための基板として、大きさ100×100mm、厚さ0.7mmの7059透明ガラス板(コーニンググラスワークス社製)を使用し、基板上に透明電極としておよそ100nm程度の酸化スズ膜をスパッタリングにより形成した。
この電極付き基板上に、スピンコート法によりフォトレジストを塗布した後、図4に示す基板に対応する、遮光領域16に対応した穴が配列されたフォトマスク(形成される調光領域18は約50μmφの円形領域となる)を用いて、紫外線露光を行なった。次に、現像を行ない、紫外線露光された部分のフォトレジストを取り除くことで、基板面を露出させた。次に、色材としてカーボンブラック(ショウブラックN762:昭和キャボット社製)を含有するインキを、スピンコート法にて全面に塗布し乾燥させた後、フォトレジストをすべて除去し、基板の実効面積に対し約10%の部分的に遮光領域16が形成された基板を作製した。また、非調光領域の面積の100%が遮光領域16であった。また、孤立して存在する各々の非調光領域の面積の100%が遮光領域16であった。
次に、複数形成された約50μmφの円形の調光領域18の中心部分に、前記したフォトマスク法を用いて約10μmの円形の高分子ゲル粒子を固定する領域を形成した。この固定領域には電極上にγ−アミノプロピルトリエトキシシランが塗布形成されている。
また、次に示す方法により調光材料である着色高分子ゲル粒子を作製した。
まず、色材としてカーボンブラック(ショウブラックN762:昭和キャボット社製)10質量部と蒸留水40質量部と界面活性剤としてアクリル酸−スチレン系高分子30%水溶液(FAD120:三洋化成社製)2質量部とを容器に入れ、遊星ミルで1時間攪拌混合し20%カーボンブラック分散液を調製した。
次に、このカーボンブラック分散液を4.375質量部と、水酸化カリウム0.548質量部と、アクリル酸0.500質量部と、アクリルアミド0.500質量部と、架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド0.002質量部とを加え、十分に混合した。
調製した混合物を、ステンレス製の攪拌羽根、還流冷却器、窒素ガス導入管を付設したガラス製の容量300mlのセパラブルフラスコに入れ、混合液中に窒素ガスを10分間吹き込み溶存酸素を窒素置換した。次に、反応開始剤として過硫酸アンモニウム0.004質量部を0.500質量部の蒸留水に溶かした水溶液として加えよく攪拌混合し、分散安定剤としてHLB4.7のソルビタンモノステアレート(第一工業製薬製:ソルゲン50)1.25質量部を添加溶解したシクロヘキサンを300ml注いで懸濁液を調製した。
得られた着色高分子ゲル粒子は、乾燥状態で平均粒径が約16μmであった。また、pH3の酸性水溶液中では体積が約2倍となり、平均粒径は約20μmであった。一方、pH11のアルカリ性水溶液中では、体積がpH3の酸性水溶液中に対して約16倍になり、平均粒径は約50μmであった。なお、純水吸水量は約100g/gであった。
高分子ゲル粒子を固定する領域の形成された電極付き基板を、1%カルボジイミド水溶液を添加して末端のカルボキシル基の反応性を高めた前述の高分子ゲル粒子の分散液中に浸し、1時間放置し粒子を固定した。なお、この時用いた高分子ゲル粒子分散液は、pHが6〜7に調整されている。
次に、この高分子ゲル粒子が固定された電極付き基板を、スペーサーとしてアクリル樹脂製の直径200μmの球を用いて、粒子が固定されていない電極付き基板で挟み、基板の一部を膨潤液注入口として残す以外は全てアクリル系紫外線硬化型樹脂により封止した。その後、減圧注入法により、膨潤液として0.001N水酸化ナトリウム水溶液を内部に注入し、注入口をアクリル系紫外線硬化型樹脂により封止して、光学素子を得た。顕微鏡観察から円形かつ複数の調光領域の100%にゲル粒子が固定されていた。
この光学素子は、外部刺激が無い状態において内部の高分子ゲル粒子が膨潤しており、透過率は1%未満であった。なお、透過率は分光光度計にて、380〜780nmの可視光透過率を測定し、その平均値を用いた。
次に、高分子ゲル粒子が固定されている基板上の電極を陽極とし、両電極間に直流電圧5Vを印加したところ、すぐに高分子ゲル粒子が収縮し消色状態を示した。このときの光学素子全体の透過率を先ほどと同様な方法で測定したところ、約68%であった。したがって、コントラスト比1:68の発色・消色状態を示す光学素子が得られたことを確認した。またこの発色・消色状態は、電気刺激のon/offにより繰り返し形成することができた。
(基板)
光学素子を作製するための基板として、大きさ100×100mm、厚さ2mmの透明ガラス板(コーニンググラスワークス社製)を使用した。
前記基板上に実施例1と同様な方法で調光領域として50μmφの円形領域を多数有し、それ以外に黒色の遮光領域を形成した基板を作製した。遮光領域の素子実効面積に占める割合は約10%であった。また、非調光領域の面積の100%が遮光領域であった。また、孤立して存在する各々の非調光領域の面積の100%が遮光領域であった。
次に、実施例1と同様なフォトマスク法によって、調光領域の中心部分に、約10μmのγ−アミノプロピルトリエトキシシランを形成した高分子ゲル粒子を固定する領域を形成した。
黒色顔料であるカーボンブラックを含有した感熱応答性高分子ゲル粒子を以下ようなプロセスによって製造した。
1次粒径約0.2μmのマイクロカプセル化カーボンブラック(大日本インキ化学工業社製)1.0g(固形分)、N−イソプロピルアクリルアミド5g、架橋剤としてメチレンビスアクリルアミド25mgを蒸留水20mlに溶解したモノマー水溶液を調製し、これをよく窒素置換した。別途、分散媒としてソルビトール系界面活性剤(第一工業製薬製:ソルゲン50)5.0gをシクロヘキサン1000mlに溶解した溶液を調製し、これをよく窒素置換し、温度を30℃に設定した。
上記のモノマー水溶液に重合開始剤として過硫酸アンモニウム20mgを添加し、これを先の分散媒中に投入後、回転式攪拌羽根を用いて高速攪拌して乳化させた。乳化後、反応助剤であるテトラメチルエチレンジアミン0.6mlを少量づつ添加した。攪拌しながら3時間重合を行った。その後、生成した黒色高分子ゲル粒子を回収し、純水で繰り返し洗浄を行なった。得られた粒子をメッシュによる分級によって分割し平均粒径はが20℃において約50μmの粒径の揃った粒子を得た。
20℃における純水吸水量は約40g/g(乾燥ゲル粒子1gあたり40gの純水を吸収する)であった。本ゲル粒子は加熱によって収縮する性質をもち、約34℃に相転移点をもっていた。つまり、相転移点よりも高温では収縮し、低温では膨潤する。この変化は可逆的であり、膨潤・収縮によって粒子の大きさは3倍以上変化することが分かった。
前記のプロセスで作製した基板に、実施例1と同様浸漬法によって、合成した高分子ゲル粒子を固定した。顕微観察から円形かつ複数の調光領域のうちの98%以上にゲル粒子が固定されていた。
次に、この高分子ゲル粒子が固定された基板を、スペーサーとしてアクリル樹脂製の直径200μmの球を用いて、別途用意した同様な基板で挟み、基板の一部を膨潤液注入口として残す以外は全てアクリル系紫外線硬化型樹脂により封止した。その後、減圧注入法により、蒸留水を注入し、注入口をアクリル系紫外線硬化型樹脂により封止して、光学素子を得た。
この光学素子は、室温(約22℃)状態において内部の高分子ゲル粒子が膨潤しており、実施例1と同様の方法により測定された透過率は約1%であった。次に、素子の温度を40℃まで加熱すると高分子ゲル粒子が収縮し消色状態を示した。このときの光学素子全体の透過率を先ほどと同様な方法で測定したところ、約69%であった。したがって、コントラスト比1:69の発色・消色状態を示す光学素子が得られたことを確認した。またこの発色・消色状態は温度変化により繰り返し実施することができた。
遮光領域を形成しないこと以外は、すべて実施例1と同様な方法により光学素子を作製した。この光学素子は、実施例1と同様な方法により発色状態および消色状態の透過率を測定したところ、それぞれ10%と74%であった。コントラスト比は、1:7.4であり、発色時の光の漏れが生じることでコントラスト比が低下していることを確認した。したがって、この結果により遮光領域を有することが、光学素子の発色状態の黒レベルを向上させ、より高いコントラストを得るために効果的な手段であることを確認した。
遮光領域を形成しないこと以外は、すべて実施例2と同様な方法により光学素子を作製した。この光学素子は、実施例1と同様な方法により発色状態および消色状態の透過率を測定したところ、それぞれ10%と77%であった。コントラスト比は、1:7.7であり、発色時の光の漏れが生じることでコントラスト比が低下していることを確認した。したがって、この結果により遮光領域を有することが、光学素子の発色状態の黒レベルを向上させ、より高いコントラストを得るために効果的な手段であることを確認した。
2、4 基板
6 高分子ゲル粒子
7 液体
8 調光層
9 封止部材
10、12 刺激付与手段
14 スペーサー
16 遮光領域
18 調光領域
20 フォトレジスト
22 フォトマスク
Claims (5)
- 対向する一対の基板と、
前記一対の基板間に挟持された、液体と、刺激の付与により前記液体を吸収・放出して膨潤・収縮する高分子ゲル粒子とを含む調光層と、
前記一対の基板の周囲を封止する封止部材とを備える光学素子であって、
前記高分子ゲル粒子は、前記一対の基板の内向する面の少なくとも一方に固定され、
前記高分子ゲル粒子の固定された面は、最大膨潤状態における前記高分子ゲル粒子の、前記高分子ゲル粒子の固定された面への正射影の領域外に遮光領域を有する光学素子。 - 前記遮光領域は、パターン状に形成されている請求項1に記載の光学素子。
- 前記遮光領域は、光吸収剤を含有する遮光層である請求項1に記載の光学素子。
- 前記高分子ゲル粒子は、調光用材料を含有する請求項1に記載の光学素子。
- 前記一対の基板と、前記調光層と、前記封止部材と、さらに刺激付与手段とを備える請求項1に記載の光学素子。
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