JP3887958B2 - 光学材料および光学素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、外部刺激に応じて可逆的に光透過率、光散乱性および光の吸収量などを制御できる、光学材料およびそれを用いた光学素子に関する。詳しくは、光の透過量を制御する調光材料やセンサー、画像を表示する表示素子、記録用途の発色材料などに利用可能な光学材料およびそれを用いた光学素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、pH変化、イオン強度変化、化学物質の吸脱着、溶媒組成変化、あるいは熱、光、電気刺激などの付与によって可逆的に体積変化(膨潤・収縮)を起こす高分子ゲル材料(刺激応答性高分子ゲル)を利用して、光の透過量や散乱性を制御することで調光・発色を行なう光学材料に関する技術が知られている。これらの光学材料は、そのゲル材料に色素を含まない場合には、光の透過量や散乱性を制御するのに用いられ、色素を含む場合には、例えば、体積変化により発色消色する可逆性の発色材料等として用いられる。
例えば、色素を含まない光学材料としては、特開平4−134325号公報では、電気刺激によって液体を吸脱する高分子ゲルの光散乱性の変化によって表示を行う素子が、特公平7−95172号公報では、含有される導電性高分子のイオンドープ・脱ドープによるpH変化によって、高分子ゲルの光散乱性の変化によって表示を行う素子が、特開平5−188354号公報では、電場の作用で液体を吸脱する高分子ゲルの膨潤・収縮により、光を遮光・反射・散乱あるいは透過状態を制御して、白濁・透明の表示を行う素子が提案されている。
【0003】
一方、色素を含む発色状態を制御する材料としては、特開昭61−151625号公報および特開昭62−927号公報などに、着色した高分子ゲルを用いてその膨潤時に光学濃度が低下し、高分子ゲルの収縮時には着色することを用いた素子が提案されている。また、特開平4−274480号公報では、染料を結合した高分子ゲルを用いて、その体積変化によって光学濃度を変化させて表示を行う素子が提案されている。さらには、特開平9−160081号公報では、顔料微粒子または着色微粒子の表面に吸着させた高分子ゲルの形状変化を利用して、高分子ゲルの膨潤時にほぼ白色表示とし、高分子ゲルの収縮時には顔料微粒子または着色微粒子の色を表示することによって高分子ゲルの体積変化によって色相を変化させる素子が提案されている。
【0004】
しかしながら、従来の刺激応答性高分子ゲルを利用して、光の透過量や散乱性を制御することで調光・発色およびそれらを用いた表示などを行う技術においては、様々な問題があった。
例えば、無色の高分子ゲルと着色液体とを組み合わせた場合、発色、消色の繰り返しによって着色液体が高分子ゲルに混入して高分子ゲルを汚染し経時的なコントラストの低下が生じる、高分子ゲルの粒径が大きい場合、応答速度が遅いという問題がある。また、着色高分子ゲルを用いた場合、ゲル中に含有される色素の量が制限され、十分なコントラストが得られないという問題がある。一方、コントラストを高くするために染料濃度を高くすると、高分子ゲルが変性してしまい応答特性が低下してしまう虞もある。
またこれらに加え、上記の従来技術に共通して、繰り返し安定性が悪いという問題があった。特に、膨潤・収縮を繰り返すことにより高分子ゲルの凝集が起こるため、調光・発色状態では膨潤したゲルの分布ムラ(濃度ムラ)が増加し、高分子ゲルの膨潤による応答速度が低下するなど耐久性に問題がある。
【0005】
本発明者らは、コントラストの優れた発色材料として、先に、特願平9−345541号を出願して、新規な発色材料の提案を行った。この発色材料は、刺激の付与による液体の吸脱により膨潤・収縮する高分子ゲル中に飽和吸収濃度以上の顔料を含有してなる組成物および発色材料であり、飽和吸収濃度以上の顔料を含有している高分子ゲルが収縮時には、顔料の局所的な凝集により光吸収効率が低下し組成物全体として光透過性となる。一方、飽和吸収濃度以上の顔料を含有している高分子ゲルが膨潤時には、顔料が組成物全体に拡散することで光吸収効率が向上し、該組成物は発色状態となる。
このように優れたコントラストと耐久性を有する発色材料においても、先に述べたゲル粒子間の凝集の問題について、さらなる改良が望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる従来技術の問題点に鑑みなされたものであって、本発明の目的は、可逆的に膨潤・収縮を繰り返す刺激応答性高分子ゲル粒子を用いた光学材料において、経時的に生じる膨潤ゲルの分布ムラによる光学材料の濃度ムラの増加および応答速度の低下を改善しうる、新規な光学材料およびその光学材料を用いた耐久性に優れた光学素子を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、以下の本発明により達成される。即ち本発明の光学材料は、少なくとも、外部刺激に応じて可逆的に体積変化し、且つ、飽和吸収濃度以上の顔料を含有する高分子ゲル粒子と、該高分子ゲル粒子の体積変化に用いられる液体と、該高分子ゲル粒子を実質的に固定しうる固定化基材とから構成され、該顔料が高分子ゲル粒子の体積変化に伴い拡散・凝集することを特徴とする光学材料である。
また、別の態様では、外部刺激に応じて可逆的に光散乱性が変化し、且つ、飽和吸収濃度以上の顔料を含有する高分子ゲル粒子が用いられる。
本発明においては、固定化基材が、合成繊維、天然繊維、半合成繊維および無機繊維からなる群より選択される繊維の集合体からなる繊維質基材であることが好ましい態様である。
本発明においては、前記したように、高分子ゲル粒子が分散されて実質的に固定化されていることで、該高分子ゲル粒子の凝集を防ぐことができ、その結果、繰り返し応答の際に発生する濃度ムラや応答速度の低下を飛躍的に改善することができた。
【0008】
また、請求項5に記載の、本発明の光学素子は、一対の基板間に、少なくとも外部刺激に応じて可逆的に体積変化し、且つ、飽和吸収濃度以上の顔料を含有する高分子ゲル粒子と、該高分子ゲル粒子の体積変化に用いられる液体と、該高分子ゲル粒子を実質的に固定しうる固定化基材とから構成され、該顔料が高分子ゲル粒子の体積変化に伴い拡散・凝集する光学材料を保持してなるセルと、該セルに外部刺激を付与する刺激付与手段と、を有することを特徴とする。この光学素子においても、高分子ゲル粒子は、繊維質基材に実質的に固定されていることが好ましい態様である。
また、高分子ゲル粒子の膨潤時の体積が、収縮時の体積の10倍以上であることがコントラストの観点から好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の発色材料の基本構成は、特願平9−345541号に示されている発色材料と液体の組成物を適用することができ、ここにおける発色材料としてのゲル粒子を固定化する固定化基材を加えたものである。
【0010】
本発明の光学材料の好ましい態様を図1に概略構成図として示した。本発明の発色材料は、繊維の集合体からなる繊維質基材10の上に刺激応答性高分子ゲル粒子12が分散され、実質的に固定化されている形態を有している。また、繊維質基材10の空隙内には、図示されないが高分子ゲル粒子12の体積変化に用いられる液体が配置されている。
【0011】
本発明の光学材料に使用可能な刺激応答性高分子ゲルとしては、pH変化、イオン濃度変化、化学物質の吸脱着、溶媒組成変化、および光、熱、電界、磁界などのエネルギー付与などの各種刺激によって液体を吸脱し、可逆的に体積変化あるいは光散乱性変化するものが好ましい。
【0012】
具体的には、pH変化によって刺激応答するものとしては、電解質系高分子ゲルが好ましく、ポリ(メタ)アクリル酸の架橋物やその金属塩、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等との共重合体の架橋物やその金属塩、ポリマレイン酸の架橋物やその金属塩、マレイン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその金属塩、ポリビニルスルホン酸の架橋物やビニルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物、ポリビニルベンゼンスルホン酸の架橋物やその金属塩、ビニルベンゼンスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその金属塩、ポリアクリルアミドアルキルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその金属塩、ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの架橋物やその塩酸塩、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその金属や塩酸塩、ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドとポリビニルアルコールとの複合体の架橋物やその塩酸塩、ポリビニルアルコールとポリ(メタ)アクリル酸との複合体の架橋物やその金属塩、カルボキシアルキルセルロース金属塩の架橋物、ポリ(メタ)アクリロニトリルの架橋物の部分加水分解物やその金属塩などが挙げられる。なお、本明細書においては、「アクリル」或いは「メタクリル」の何れをも意味する場合、「(メタ)アクリル」と、「アクリレート」或いは「メタクリレート」の何れをも意味する場合、「(メタ)アクリレート」と、それぞれ表記する。
【0013】
電界による界面活性剤などの化学物質の吸脱着によって刺激応答するものとしては、強イオン性高分子ゲルが好ましく、ポリビニルスルホン酸の架橋物やビニルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物、ポリビニルスルホン酸の架橋物やビニルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物、ポリアクリルアミドアルキルスルホン酸の架橋物やアクリルアミドアルキルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物などが挙げられ、これらとn−ドデシルピリジニウムクロライドなどのアルキルピリジニウム塩、アルキルアンモニウム塩、フェニルアンモニウム塩、テトラフェニルホスホニウムクロライドなどのホスホニウム塩などのカチオン性界面活性剤とを組み合わせることで使用される。
【0014】
電気による酸化・還元によって刺激応答するものとしては、カチオン性高分子ゲルと電子受容性化合物とのCT錯体(電荷移動錯体)が好ましく、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアミノ置換体(メタ)アクリルアミドの架橋物、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレートやジメチルアミノプロピルアクリレートなどの(メタ)アクリル酸アミノ置換アルキルエステルの架橋物、ポリスチレンの架橋物、ポリビニルピリジンの架橋物、ポリビニルカルバゾールの架橋物、ポリジメチルアミノスチレンの架橋物などが挙げられ、ベンゾキノン、7,7,8,8,−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、テトラシアノエチレン、クロラニル、トリニトロベンゼン、無水マレイン酸やヨウ素などの電子受容性化合物とを組み合わせることで使用される。
【0015】
熱の付与によって刺激応答するものとしては、LCST(下限臨界溶液温度)をもつ高分子の架橋物が好ましく、ポリN−イソプロピルアクリルアミドなどのポリアルキル置換(メタ)アクリルアミドの架橋物やアルキル置換(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸やその金属塩、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等との共重合体の架橋物、ポリビニルメチルエーテルの架橋物、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのアルキル置換セルロース誘導体の架橋物などが挙げられる。
【0016】
光の付与によって刺激応答するものとしては、トリアリールメタン誘導体やスピロベンゾピラン誘導体などの光によってイオン解離する官能基を有する親水性高分子化合物の架橋物が好ましく、ビニル置換トリアリールメタンロイコ誘導体とアクリルアミドとの共重合体の化合物などが挙げられる。
【0017】
刺激応答性高分子ゲルの体積変化は大きいことが好ましく、膨潤時および収縮時の体積比が10以上、好ましくは20以上のものである。この体積比が10未満であると、高分子ゲルの膨潤・収縮の差が小さくなり、光学素子などとしてのコントラストが不十分となる。
本発明の光学材料の利用形態には特に制限はなく粒子状、ブロック状、フィルム状、不定形状、繊維状などの種々のものが使用可能である。なかでも特に、粒子状の形態は発色性、応答性が高いことや応用範囲が広いなどの特徴から特に好ましい。粒子状における形態にも特に制限はないが、球体、楕円体、多面体、多孔質体、繊維状、星状、針状、中空状などのものが適用できる。また、粒子の場合の好ましい大きさは平均粒径で0.01μm〜5mmの範囲、より好ましくは0.01μm〜1mmの範囲である。
またこれらの粒子は、高分子ゲルを物理的粉砕方法によって粉砕する方法や、架橋前の高分子を化学的粉砕方法によって粒子化した後に架橋してゲルとする方法、あるいは乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法などの粒子化重合法などの一般的な方法によって製造することができる。
また、光学材料の刺激応答による体積変化特性をより高速にするために、高分子ゲルの従来技術と同様に材料を多孔質化して液体の出入りを向上させることも好ましい。一般に膨潤した顔料を含有する高分子ゲルを凍結乾燥する方法で多孔質化することができる。
【0018】
なお、参考までに述べれば、本発明に係る高分子ゲル粒子から顔料を除いたものを用いる場合、これに吸収可能な液体の存在下において、前記したような刺激を与えることで不均一構造を形成し、光散乱性を変化させることができ、いわゆる調光材料として用いることができる。また、顔料を含む本発明に係る高分子ゲル粒子では、これに吸収可能な液体の存在下において、前記したような刺激を与えることで体積を種々変化させ、発色材料や調光材料として用いることができる。
例えば、熱応答性高分子ゲルを用いる場合は、光、熱などの放射熱の付与によって、電気応答性高分子ゲルの場合は電極反応によるpH変化や電界によるイオン吸着や静電作用によって、光応答性高分子ゲルの場合は光の付与による内部構造変化によって液体を吸収、放出させることで、体積を大きく変化させ不均一構造を形成することができる。
【0019】
本発明の光学材料に利用可能な液体としては、前記した高分子ゲルが吸収可能な液体すなわち、ゲルを構成するポリマー(架橋していない)を溶解可能な液体(ゲルに対して親和性がよい液体)が好ましい。例えば、水、電解質水溶液、アルコール、ケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキシド、アセトニトリル、プロピレンカーボネートなどやそれらの混合物が使用できる。なお、高分子ゲルと液体との好ましい組み合わせがあり、例えば、イオン性の高分子ゲルの場合には、液体としては、水、アルコールまたは、水とアルコールとの混合物や水系電解質が好ましく、また、高分子ゲルがカチオン性高分子ゲルと電子受容性化合物とのCT錯体(電荷移動錯体)はゲルが水不溶性であり、この場合には、液体としては、非水系の有機溶媒が好ましい。また、液体には高分子ゲルに吸脱する界面活性剤、溶液のpH変化を促進するためのビオロゲン誘導体、酸、アルカリ、塩、および分散安定剤、酸化防止剤や紫外線などの安定剤などを添加しても構わない。
なお、高分子ゲル粒子と液体との好ましい混合比の範囲は、重量比で1:2000〜1:1(高分子ゲル粒子:液体)である。
【0020】
また、本発明に用いる高分子ゲル粒子の固定化基材は、高分子ゲル粒子を実質的に固定化することにより、液体内における高分子ゲル粒子の自由な移動をある程度抑制し、膨潤して体積が膨張した粒子同士が接触した場合にも、収縮時にその接触に起因する粒子同士の吸着、凝集を効果的に防止する目的で用いられる。本発明における固定化基材は、高分子ゲル粒子を実質的に固定化しうるものであれば特に制限はなく、光学材料の使用目的、刺激応答性ゲル粒子に付与する刺激付与手段との適合性、用いられる高分子ゲル粒子などにより適宜、選択しうるが、ゲル粒子を機械的に固定化するという観点からは、粒子を保持しやすい凹凸や空隙を表面に有するものが好ましく用いられ、化学的吸着、接着剤による固定化などの手段を用いた場合には、表面性状は特に制限はなく、シート状、フィルム状のものであってもよい。
本発明において、「実質的に固定する」とは、高分子ゲル粒子の少なくとも一部分が固定化基材と接触又は接着して、併用される液体中を自由に移動できない状態になっていることを指し、例えば、繊維間の三次元空隙や樹脂に形成された空隙にゲル粒子が入り込んだ状態(この場合、厳密には接着などのように基材自体に強固に固定されてはいない)、基材の一部が溶融してゲル粒子の一部を融着した状態、ゲル粒子が分子間力等で基材に固定された状態、接着剤などのバインダーでゲル粒子の一部が基材に接着されている状態等をすべて包含する。
固定化基材としては、繊維の集合体を基本とする繊維質基材、合成樹脂シート、合成樹脂多孔質体、透明導電層を有する透明フィルム基材、シート状金属薄板等が挙げられる。
【0021】
なかでも、製造、入手の容易性やコストの観点から、空隙を有する多数の繊維の集合体である繊維質基材が好ましい態様として挙げられる。繊維質基材の形態としては、単なる繊維の集合体の他、繊維を撚ってなる糸を編成した編み物状、ネット状、或いは製織してなる織物状基材でもよく、繊維同士が一部融着したり、互いに絡み合ったりしてなる不織布状基材、ウエブ状基材、シート状基材などの構造体も本発明の繊維質基材に包含される。
【0022】
繊維質基材を構成する繊維は、発色或いは調色効果上、無色であることが好ましいが、目的によっては、有色の繊維も使用しうる。また、高分子ゲルが顔料を含有する発色材料の場合、繊維質基材の光散乱性が高い方がより好ましく、具体的には、多孔質性繊維、不均一繊維、フィラー添加繊維などを挙げることができる。また、基材に 使用する繊維径は1μm〜1mm、好ましくは10μm〜0.5mm程度、基材の厚みは約0.1〜10mm、好ましくは0.1〜5mm程度、目付け量は約2〜200g/m2 、好ましくは2〜100g/m 2程度が適当である。
【0023】
繊維質基材を構成する繊維としては、例えば、合成繊維としてナイロン系繊維、アクリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリウレタン系繊維など、天然繊維として木材パルプ、綿、羊毛など、半合成繊維としてビスコースレーヨン、アセテート、キュプラなど、無機繊維としてカーボン繊維、チタン繊維、ガラス繊維などを適用することができる。これらの中でも、本発明には特に合成繊維および半合成繊維が特に好ましい。
【0024】
本発明に用いる粒子の基材上への固定化は、機械的固定化、接着などの物理的固定化、化学結合などの化学的固定化などが適用できる。なお、化学結合は、イオン結合、水素結合、共有結合など各種考えられるが、その中でも安定性の面から共有結合が最も好ましい。
機械的固定化は、主に基材の繊維の網目などの空間に保持することによるものである。この場合、繊維質基材は単なる繊維の集合体ではなく、織物状、不織布状、ウエブ状、シート状などの網目の空間が安定した構造体となっていることが好ましい。なお、この場合の構造体は、高分子ゲル粒子の保持効果を高めるために、直径1〜50μm程度の比較的細い繊維を、目付け量10g/m2 以上の比較的高密度で構成した方がよい。
【0025】
物理的固定化としては、接着剤等のバインダーにより固定化する方法、基材を構成する材料の一部が熱或いは溶媒などにより溶融或いは溶解してそこに粒子が接触し、その後、硬化されて固定化する方法などが挙げられる。
この物理的固定化に使用する接着剤としては、有機溶剤揮散型接着剤(クロロプレンゴム系、ウレタン系など)、熱硬化反応型接着剤(エポキシ系、レゾール系など)、湿気硬化反応型接着剤(2−シアノアクリル酸エステル系、シリコーン系など)、紫外線硬化反応型接着剤(アクリル系オリゴマーなど)、縮合反応型接着剤(ユリア樹脂系)、付加反応型接着剤(エポキシ系、イソシアネート系など)、熱溶融型接着剤などが挙げられる。本発明においては、この中でも特に熱溶融型接着剤が好適であり、例えば、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリオレフィン誘導体(マレイン酸変性ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、プロピレン−アクリル酸共重合体、プロピレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、マレイン化ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル共重合体およびそのマレイン化物など)、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカプロラクトン系樹脂、ポリスチレン樹脂、およびその誘導体(ポリスチレン、スルホン化ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体など)、熱可塑性ポリウレタン樹脂、高分子量ポリエチレングリコール、酢酸ビニル樹脂、ワックス類(パラフィンワックス、ミツロウ、牛脂など)、長鎖脂肪酸エステル樹脂およびこれら2種以上の混合物などが挙げられる。
【0026】
本発明において、使用する接着剤樹脂の割合は、通常高分子ゲル粒子100重量部に対して接着剤樹脂の量が0.1〜50重量部、好ましくは1〜30重量部程度で十分ある。接着剤樹脂の量が50重量部を超えると繊維質基材への固着性は向上するものの、高分子ゲル粒子の接着剤樹脂との接触割合が高くなり、膨潤・収縮挙動を阻害する可能性が高くなる。一方、0.1重量部未満では、繊維への固着が不十分となる。
接着剤を用いた高分子ゲル粒子の固定化は、例えば、高分子ゲル粒子と粒子状の接着剤樹脂の混合物を繊維質基材に散布した後、加熱、紫外線照射等接着樹脂の特性に応じたエネルギー付与処理を施して接着する方法が適用できる。この時、混合に使用する装置は特に限定されず、通常の粉体混合装置でよく、例えば、コニカルブレンダー、ナウターミキサー、V型ブレンダー、タービュライザー、スクリュー式ラインブレンダーなどが挙げられる。
その他、接着剤樹脂を溶媒に溶かした接着剤溶液を調製し、繊維質基材に該接着剤溶液を塗布した後、高分子ゲル粒子を散布して加熱処理を施しても構わない。この時使用される溶媒は、接着剤樹脂が可溶なものであれば特に限定されないが、溶媒の沸点は比較的低い方がよく、150℃以下、好ましくは100℃以下が適当であり、例えば、アセトンなどのケトン類、エタノール、メタノールなどのアルコール類、酢酸エチルなどのカルボン酸エステル類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテルなどのエーテル類、ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素類およびこれらの混合物などが挙げられる。また、接着剤溶液の繊維質基材への適用方法は、塗布、噴霧、浸漬などが挙げられる。
また、架橋型の接着剤の場合には、接着剤溶液の繊維質基材へ適用した後、架橋を開始させるためのエネルギー或いは、架橋開始剤を供給する方法等が挙げられる。
固定化基材自体が、例えば、熱可塑性樹脂、熱可塑性繊維等により構成されている場合、基材上に高分子ゲル粒子を散布した後、加熱して固定化基材自体を溶融させ、ゲル粒子を融着する方法なども適用することができる。
接着或いは融着のための加熱処理手段は特に限定されないが、熱風加熱機、赤外線加熱機、高周波加熱機等の非接触型加熱機およびヒートローラなどの接触式加熱機などが適用でき、加熱温度は、接着剤の溶融温度の従いおよそ50℃〜200℃の間で適宜設定される。
【0027】
また、本発明における高分子ゲル粒子の化学的固定化における化学結合は、イオン結合、水素結合、共有結合など各種考えられるが、その中でも安定性の面から共有結合が最も好ましく、各種固定化剤を用いた反応により行う。固定化基材表面への高分子ゲル粒子および固定化剤の付与は、塗布、散布、含浸などの方法により行うことができる。塗布および含浸の場合、固定化剤と相溶性のある各種溶媒あるいはそれらの混合物中に、高分子ゲル粒子および固定化剤を分散混合した溶液を使用する。溶媒は固定化剤に応じて選択され、アセトンなどのケトン類、エタノール、メタノールなどのアルコール類、酢酸エチルなどのカルボン酸エステル類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテルなどのエーテル類、ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素類および、これらの混合物などが適用できる。高分子ゲル粒子および固定化剤を繊維質基材表面に付与した後は、固定化剤に固有の反応温度に加熱して化学結合を形成し、高分子ゲル粒子を繊維質基材表面に固定化するなどの方法が適用できる。また、繊維質基材表面を固定化剤で処理した後、形成された反応基に高分子ゲル粒子を固定化するという段階的な反応なども適用できる。
なお、本発明に用いる高分子ゲル固定化剤は、重合性不飽和基、反応性官能基などを2個以上有する化合物を挙げることができる。上記重合性不飽和基を2個以上有する化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリンポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリンなどのポリオール類のジまたはトリ(メタ)アクリル酸エステル類、前記ポリオール類とマレイン酸、フマル酸などの不飽和酸類とを反応させて得られる不飽和ポリエステル類、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミドなどのビス(メタ)アクリルアミド類、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどのポリイソシアネートと(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとを反応させて得られるジ(メタ)アクリル酸カルバミン酸エステル類、アリル化澱粉、アリル化セルロース、ジアリルフタレート、その他のテトラアリロキシエタン、ペンタンエリスリトールトリアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、トリアリルトリメチルエーテルなどの多価アリル系を挙げることができる。これらの中でも本発明には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミドなどが好ましく使用される。
【0028】
また、反応性官能基を2個以上有する化合物としては、ジグリシジルエーテル化合物、ハロエポキシ化合物、ジおよびトリイソシアネート化合物などを挙げることができる。ジグリシジルエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ポリグリセリンジグリシジルエーテルなどを挙げることができる。その他、ハロエポキシ化合物の具体 例としては、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、β−メチルエピクロロヒドリンなどを挙げることができる。また、ジイソシアネート化合物の具体例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどを挙げることができる。これこの中でも本発明には、特にエチレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが好ましく使用される。
【0029】
上記の様な高分子ゲル固定化剤の使用量は、通常、高分子ゲルの乾燥重量に対して、0.001〜10重量%、好ましくは0.001〜5重量%である。これは、固定化剤の使用量が0.001重量%以下であると十分に高分子ゲル粒子を固定化できない一方、10重量%以上であると高分子ゲル粒子の固定化が強すぎて体積変化を阻害するためである。
また、本発明における固定化基材上に固定化される高分子ゲルの割合は、膨張時に基材表面のほぼ全体を覆い隠す量であることが好ましい。これは、高分子ゲルの膨張率に依存して適宜定められ、例えば比重1.2の高分子ゲル粒子の膨張時の粒子径が10μmの場合は、繊維 質基材の表面積に対して、乾燥状態の高分子ゲル粒子を8g/m2 程度に相当する。ただし、実際には繊維質基材上に固定化される高分子ゲルの割合は、高分子ゲルが含有する顔料の量および吸光度に依存しており、膨潤・収縮時に十分な光学濃度変化が得られる割合であれば、この割合に限定されるものではない。
【0030】
なお、本発明に用いられる顔料には特に制約はなく、無機系顔料、有機系顔料などが使用可能である。顔料の好適な具体例としては、酸化チタン等の金属酸化物、ブロンズ粉、カーボンブラックやアントラキノン系、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ペリレン系、インジゴ系などの各種顔料などが挙げられ、特に光吸収係数が高ものが望ましい。また、顔料の好ましい粒径は、一次粒子の平均粒径で0.001μm〜1μmである。また、特に好ましい粒径は0.01μm〜0.5μmのものである。これは、粒径が0.01μm以下では高分子ゲルからの流出が起こり易く、また、0.5μm以上では発色濃度が低下する恐れが生じるためである。
また、これらの顔料において、分子内にカルボキシル基やスルホン酸基などの酸基、水酸基、アミノ基、チオール基、ハロゲン、ニトロ基、カルボニル基など極性基をもち、高分子ゲル内において顔料濃度が高い場合に凝集体を形成し易い特性のものも好ましく使用される。
【0031】
本発明では、高分子ゲル中に含有される顔料が、高分子ゲルから流出しないことが好ましい。顔料の流出を防止するためには、使用する高分子ゲルの網目よりも大きな粒径の顔料を用いること、あるいは高分子ゲルとの電気的、イオン的、その他物理的な相互作用が高い顔料を用いること、表面を化学修飾した顔料としては例えば、表面に高分子ゲルとの化学結合する基を導入したものや、高分子材料をグラフトした顔料などが挙げられる。
高分子ゲル中に含まれる顔料の量は、乾燥時において少なくとも飽和吸収濃度以上の濃度が必要である。ここで、飽和吸収濃度以上とは、一般的な高い吸収係数を有する顔料を用いる場合において高分子ゲルが収縮した、すなわち外部刺激により殆ど液体を吸収していない状態の高分子ゲル(あるいは乾燥状態の高分子ゲル)中における、各々の顔料粒子同士の平均間隔が、λ/2(但し、λは光の波長)以下となるように含有されている状態である。
【0032】
高分子ゲルにおいてこのような間隔で顔料粒子が含有されている状態を形成すると、波長λの光が顔料粒子間に侵入できなくなるため、顔料粒子の光吸収の効率が変化する。このような顔料粒子が集合的な状態になる状態を飽和吸収濃度以上の顔料を含む状態と呼ぶ。
したがって、可視光の波長に対して、飽和吸収濃度以上になるためには、可視光波長λは400nm〜800nmの範囲であるので、乾燥状態の高分子ゲル中で、顔料粒子と高分子ゲルとの比重が同一であり、かつ、顔料粒子の平均径が0.1μm以下である場合には、飽和吸収濃度となるためには、顔料の好ましい濃度としては、顔料が乾燥状態の高分子ゲル中に約5重量%以上含有されることが一つの目安となる。
しかしながら、これは一つの目安であって、顔料の粒径や吸光係数によって種々変化すものである。
【0033】
このような飽和吸収濃度以上の状態を実現するためには、顔料の吸光係数にも依存するが、発色材料に含有させる顔料濃度は一般に5重量%〜95重量%の範囲が好ましく、より好ましくは10重量%〜95重量%の範囲である。顔料の濃度が5重量%以下であると、飽和吸収濃度以上とはならず発色材料の体積変化による色濃度変化が現れなくなり、さらに十分なコントラストを得るためには発色層の厚みが厚くなるなどの問題が生じ、一方、顔料の濃度が95重量%以上の場合、高分子ゲルの膨潤・収縮の応答性が悪くなり、発色材料の刺激応答性や体積変化量が低下してしまう恐れがある。
【0034】
また、本発明の発色材料において、発色材料の膨潤状態での光吸収効率が発色材料の収縮状態での光吸収効率に比べて高くなるように高分子ゲル中に顔料が含まれていてもよい。したがって、この場合には、高分子ゲルが液体を吸収して膨潤したときと、高分子ゲルが液体を脱離して収縮したときのそれぞれ光吸収効率の差によって高分子ゲル中に含有される顔料の量が選定される。
高分子ゲル中に顔料を含有させる発色材料は、架橋前の高分子に顔料を均一に分散、混合した後に架橋する方法や重合時に高分子前駆体モノマ組成物に顔料を添加して重合する方法によって製造することができる。重合時において顔料を添加する場合には、前記したように重合性基をもつ顔料を使用し、化学結合することも好ましい。
また、顔料は光学材料中に極力均一に分散されていることが好ましい。特に、高分子への分散に際して、機械的混練法、攪拌法やあるいは分散剤などを利用して均一に分散させることが望ましい。
次に、本発明の光学素子について説明する。本発明の光学素子には、前記光学材料を利用することが可能である。その場合は二枚の基板間に本発明の光学材料を挟持し、封入した構成が好ましい。この構成の素子においては、光や熱、電場などの刺激を付与することで光学材料を応答させて光学的な変調を行うことができる。
この場合の刺激は、自然界の刺激でも人為的な刺激でも構わない。光、熱などの自然界の刺激の場合は、この素子構成のままで調光ガラスなどの調光素子やセンサーに使用可能である。一方、人為的な刺激の場合は、素子の内部および外部からの刺激の付与としては、レーザ光や放射熱を付与する外部手段を用いることが可能である。
【0035】
本発明の光学材料は、固定化基材に実質的に固定されている高分子ゲル粒子が体積変化することによって、高分子ゲル粒子が膨潤・収縮することや、内部に含まれる顔料が拡散・凝集することで光の透過・散乱および発色状態を変化させることを基本原理としている。前記高分子ゲル材料は、液体の存在下で、pH変化、イオン濃度変化、化学物質の吸脱着、溶媒組成変化、光、熱、電気的エネルギーの付与などの外部刺激によって液体を吸放出し体積変化(膨潤・収縮)する性質をもつ。
【0036】
ここで、高分子ゲル粒子中に含まれる顔料は、該高分子ゲル粒子の膨潤時には拡散状態をとり、収縮時は凝集状態をとる。このような顔料の拡散・凝集によって、該材料に含まれる顔料である顔料の各状態における光吸収効率が変化し、色濃度を変化させることができる。即ち、高分子ゲル粒子が膨張し顔料が拡散状態になると、個々の顔料粒子の光吸収能力が十分に発揮され、高分子ゲル粒子全体が発色した状態を示す。一方、高分子ゲル粒子が収縮し顔料が凝集状態になると、内部の顔料粒子が光吸収に寄与しなくなり、高分子ゲル粒子全体としての光吸収効率が低下するものである。図3には本発明の発色材料の発色・消色状態を表す概念図を示した。高分子ゲル粒子42は膨張状態(図2(B))において繊維質基材40のほぼ全面を覆い隠すことおよび、膨張状態において視覚的に光学濃度が飽和する量の顔料を含有していることで高濃度の発色状態を形成する。一方、収縮状態(図2(A)a)では、高分子ゲル粒子42の体積が数十分の1になるために、粒子個々の光学濃度は飽和していて視覚的に殆ど変化が認められないのに対して、背景部を含めた単位面積当たりの光学濃度は、高分子ゲル粒子42の表面積の減少により低下する。これに加えて、背景部の繊維質基材40表面の光の散乱により、白色度が増すために実質的に高いコントラストを得ることができる。
【0037】
したがって本発明の光学材料は、刺激応答性高分子ゲル粒子の体積変化を利用しているので、調光・発色状態が安定しており、視野角依存性がなく、高いコントラスト、高い応答速度を達成することができる。また、該高分子ゲル粒子が分散されて実質的に固定化されていることで、該高分子ゲル粒子の凝集を防ぐことができ、その結果、繰り返し応答の際に発生する濃度ムラや応答速度の低下を飛躍的に改善することができる。
またこれら以外に、繊維質基材への固定化は、高分子ゲル粒子を積層保持する場合にも粒子同士の接触を防止することができ、高分子ゲル粒子が立体的に配置された調光・発色材料において、その刺激応答性を低下させることなく、かつ光散乱性や発色性を向上することができる。
【0038】
次に、本発明の光学素子について説明する。本発明の光学素子は、一対の基板間に、前記した本発明の光学材料を保持してなるセルと、該セルに外部刺激を付与する刺激付与手段と、を有することを特徴としている。
本発明の光学素子の好ましい態様を図3に概略断面図として示す。図3の光学素子は、先に説明した刺激応答性高分子ゲル粒子10と、液体と固定化基材12からなる光学材料20を一対の刺激付与手段22を設けた基板24間をスペーサ26を介して挟持した構成からなる。
【0039】
基板24としては、ポリエステル、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、ポリ塩化ビニルなどのフィルムや板状基板、ガラス基板、金属、セラミックスなどが使用可能である。
【0040】
一方、刺激付与手段22としては、電気的刺激や発熱手段および光付与手段などが好ましい。電気的手段の場合は、金属膜からなる電極、導電性高分子からなる電極、高分子と金属粒子からなる電極などが好ましい。発熱手段としては、前記電極とNi−Cr化合物などに代表される金属、金属酸化物やカーボンなどの発熱抵抗体を組み合わせた物が好ましい。
電気的手段を設けた場合には、前記のpH変化により応答する高分子ゲル、界面活性剤などの化学物質の吸脱着により応答する高分子ゲル、酸化・還元によって応答する高分子ゲルが組成物として好ましく使用される。また、発熱手段を設けた場合には、前記の熱応答性高分子ゲルが好ましく使用される。さらに、外部から光を照射する構成の場合は、前記の光応答性高分子ゲルが好ましく使用される。
【0041】
光学素子を構成する場合の本発明の調光・発色材料20の層の厚みの好ましい範囲は、1μm〜500μm、より好ましくは2μm〜200μmの範囲である。これは、1μmよりも小さいと、発色濃度や光散乱性が低くなり所望のコントラストを得ることができず、500μm以上では応答特性が低下する恐れがあるためである。
また、色変化を伴う光学素子では、単一色の発色材料を用いても複数色の発色材料を用いて構成しても構わない。複数色の発色材料を用いる場合は、光学素子の平面上に着色高分子ゲルと顔料との組み合わせが異なる、複数の異なる色を発色するセグメントを設けることでフルカラーの発色や表示を行うことも可能である。
【0042】
本発明の光学素子は、光の透過量を調製する調光素子やフィルタ、さらには画像を表示する表示素子などに利用することが可能である。また、溶媒や化学物質の添加などにより応答する高分子ゲルの場合には、例えば、この高分子ゲルを所定の溶媒や化学物質を検知するための部位に設置し、溶媒を含む液体が高分子ゲルに接触したときに濃度変化を検知する方法などが考えられる。
【0043】
そして、光学素子への応用に際しては、素子を構成する基板上に固定化基材を介して間接的に保持することができ、製造プロセス上の容易さ、耐久性の向上、応答性の向上などの利点も併せ持っている。
【0044】
なお、高分子ゲルの刺激応答性についてはすでに公知であり、「機能性高分子ゲル製造と応用(入江正浩編集・シーエムシー)」や、「機能性高分子ゲルと最新の応用動向(東レリサーチセンター)」などを始めとする多くの著書に記載されている。
高分子ゲルを利用した従来技術において応答速度が遅いという問題は、主に分散した高分子ゲル粒子同士の凝集に原因がある。これは、高分子ゲル粒子の体積変化は、外部刺激に応じた液体の吸収・放出により起こっているため、高分子ゲル粒子同士が凝集することにより、粒子の周囲の液体に接触する表面積が減少し、単位時間当たりの周囲からの液体の吸収量が減少することに起因している。また、凝集した粒子内部では周囲の粒子による遮蔽効果により、体積変化を起こすための外部刺激の付与も効率が低下する。したがって本発明においては、高分子ゲル粒子を繊維質基材上に分散して実質的に固定化することにより、これらの応答速度の低下要因を排除し、応答速度の向上を達成している。
【0045】
また、一度膨潤した際に高分子ゲル粒子同士が接触することで、収縮時に凝集が起こることは、収縮時の黒点の発生(図4(A))および、再膨潤時の濃度ムラ(図4(B))を誘発する。したがって、本発明の光学材料のように高分子ゲル粒子を繊維質基材上に分散して実質的に固定化することで、上記の濃度ムラに関わる課題も解決することができた。
その他、本発明の光学材料は、高分子ゲル粒子を構成している高分子網目の広がり(膨張)が液体の侵入により保持されるため、可逆的挙動(液体の放出による収縮)を起こすための外部刺激が無い限りその状態が維持されるという原理的特徴により、調光・発色状態が安定しているという特徴も有している。
【0046】
また、本発明の光学材料を表示材料として用いる場合、液晶表示の原理的な問題である視野角依存性などは、全く問題とはならない。また、繊維質基材上に固定化されている高分子ゲル粒子が、膨張時には基材を殆ど覆い隠すことで高濃度に発色する一方、収縮時には基材の繊維を露出することで消色することができるという、本発明の構造上の特徴から、液晶など利用した反射型表示方法におけるコントラストの低さの問題も解決されている。また、繊維質基材が光散乱性の場合には、背景部に光散乱が生じてより一層白色度の高い状態を形成することができる。
【0047】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
(実施例3)
高分子ゲルの前駆体としてカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩(第一工業製薬社製:BS−H)10.0重量部と、水酸化ナトリウム1.2重量部と、ゲル着色用の顔料としてカーボンブラック(昭和キャボット社製:ショウブラックN762)10.0重量部を、100重量部の純水中に入れ、十分に攪拌し均一な溶液とした。次にこの溶液に、架橋剤としてエピクロロヒドリン1.4重量部を混合し、60℃で6時間加熱することで着色された高分子ゲルを作製した。作製した着色高分子ゲルの塊を、容易にろ過できる(およそ0.1cm3 )程度のブロック状に粗粉砕したのち大量の純水で洗浄した。洗浄後、純粋で十分に膨潤させた状態としたゲルブロックを、ホモジナイザー(日本精機社製AM−6)により7000rpmで30分間攪拌粉砕した。その後、得られた膨潤状態の高分子ゲル粒子200重量部に対して、十分に攪拌混合しながら800重量部のアセトンを少しずつ加えて高分子ゲル粒子を収縮析出させた。その後、吸引ろ過により高分子ゲル粒子を回収して乾燥した。得られた粒子は、平均粒径が約10μmで最大粒径が約20μmであった。また、吸水量は約250g/gであった。
得られた粒子は、pH変化、イオン濃度変化、溶媒組成変化などにより、可逆的に膨張・収縮を繰り返すことができ、その粒子径は約7倍に変化することが確認できた。
【0052】
次に、得られた高分子ゲル粒子を繊維質基材上に固定化するために、固定化剤としてヘキサメチレンジイソシアネートの5%トルエン溶液を調製した。この固定化剤溶液を、直径40μm程度の繊維で構成された繊維質基材である、厚さ0.2mm、目付け量100g/m2 のナイロン繊維製不織布上に均一に塗布した。次に、乾燥高分子ゲル粒子を面積率30%程度の割合で繊維質基材上に均一散布した後、60℃で24時間加熱処理することで高分子ゲル粒子を固定化し、発色材料(着色高分子ゲル粒子固定化繊維)を得た。
得られたは発色材料は、純水中では高分子ゲルが膨潤状態にあり、視野角にほとんど依存することのない光学濃度(λ=600nmで測定 )1.2を安定して示した。次に、該発色材料の表面に0.1mol/lの塩化ナトリウム水溶液を塗布したところ、高分子ゲル粒子が瞬時(0.1s以内)に収縮し光学濃度が0.2に低下し、イオン濃度変化による光学濃度の大きな変化が素早く起こることを確認した。また、純水中に浸し表面の塩化ナトリウム水溶液を洗い流したところ、再びゲルが膨張しておよそ1.2の光学濃度が得られ、発消色変化が可逆的に起こることを確認した。
【0053】
(実施例4)
顔料を含有した高分子ゲルの粒子を以下に示すように逆相懸濁重合によって製造した。
主モノマーとしてアクリル酸20.0重量部をビーカーにとり、冷却して攪拌しつつ25wt%の水酸化ナトリウム水溶液33重量部を滴下して約74%の中和を行った後、過硫酸アンモニウム0.1重量部を2重量部の純水に溶解した溶液と、ゲル着色用の顔料としてフタロシアニン系青色顔料10.0重量部と、架橋剤であるメチレンビスアクリルアミド0.1g重量部を加え、十分に攪拌し均一な溶液を調製した。得られた溶液を、ビーカー中でシクロヘキサン100重量部に分散安定剤であるソルビトール系界面活性剤(第一工業製薬製:ソルゲン50)1.0重量部を溶解して窒素置換した溶液に添加し、回転式攪拌羽根を用いて10000回転で10分間高速攪拌して乳化させた。
次に、反応系の温度を25℃に調節し、溶液を攪拌しながらN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンの50%シクロヘキサン溶液を添加し、重合を行なった。重合後、生成した着色高分子ゲル粒子を回収し、水酸化ナトリウム水溶液で中和反応を行なった後に、純水で繰り返し洗浄を行ない乾燥させた。得られた粒子の乾燥時の平均粒径は約4μmであった。また、この着色粒子の純水吸水量は約200g/gであった。
【0054】
次に、得られた高分子ゲル粒子を繊維質基材上に固定化するために、固定化剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルの5%アセトン溶液を調製した。この固定化剤溶液を、直径40μm程度の繊維で構成された繊維質基材である、厚さ0.2mm、目付け量100g/m2 のセルロース繊維製不織布上に均一に塗布した。次に、乾燥高分子ゲル粒子を面積率30%程度の割合で繊維質基材上に均一散布した後、60℃で24時間加熱処理することで高分子ゲル粒子を固定化し、発色材料(着色高分子ゲル粒子固定化繊維)を得た。
このようにして作製された発色材料は、純水中では高分子ゲルが膨潤状態にあり、視野角にほとんど依存することのない光学濃度(λ=600nmで測定)1.0を安定して示した。次に、発色材料の表面に水−アセトン混合溶液(体積比1:4)を塗布したところ、高分子ゲル粒子が瞬時(0.1s以内)に収縮し光学濃度が0.2に低下し、溶媒組成変化による光学濃度の大きな変化が素早く起こることを確認した。また、純水中に浸し表面の水−アセトン混合溶液を洗い流したところ、再びゲルが膨張しておよそ1.0の光学濃度が得られ、発色・消色変化が可逆的に起こることを確認した。
【0055】
(実施例5)
実施例3と全く同様な方法で発色材料(着色高分子ゲル粒子固定化繊維)を作製した。
得られた発色材料は、pH7の純水中で高分子ゲルが膨潤状態にあり、視野角にほとんど依存することのない光学濃度(λ=600nmで測定)1.2を示した。一方、発色材料の表面にpH3の塩酸水溶液を塗布したところ、高分子ゲル粒子が瞬時(0.1s以内)に収縮し光学濃度が0.2に低下した。その後、塩酸水溶液を中和できる量の水酸化ナトリウム水溶液を適用して、およそpH7に戻したところ、再びゲルが膨張しておよそ1.2の光学濃度が得られ、発消色変化が可逆的に起こることを確認した。
次に、このようなpH変化による膨潤・収縮を繰り返し行い、繰り返しによる膨潤時の面積率の変化を測定した。
図5(A)には、作製した発色材料について、繰り返し体積変化(膨潤・収縮)させた時の、時間t0 における面積率の測定結果を示した。観測領域は1cm四方とし、時間t0 は作製後初回の飽和膨潤(面積率100%)時間とした。図5aに示したように、高分子ゲル粒子が基材に固定化されている本発明の発色材料は、膨潤・収縮を繰り返しても、時間t0 後の面積率は殆ど変わらず安定した発色状態が得られた。また、収縮時の高分子ゲル粒子の凝集も殆ど発生しないので、消色状態も均一で大きな黒点などが目立たないことを確認した。
【0056】
(比較例1)
実施例3と同様な方法で着色高分子ゲル粒子を作製した後、シート状のナイロン製基材上に該着色高分子ゲル粒子を固定化しない状態の発色材料を作製した。 実施例5と同様に、pH変化による膨潤・収縮を繰り返し行い、繰り返しによる膨潤時の面積率の変化を測定した。図5(B)には、作製した発色材料について、繰り返し体積変化(膨潤・収縮)させた時の、時間t0 における面積率の測定結果を示した。観測領域は1cm四方とし、時間t0 は作製後初回の飽和膨潤(面積率100%:図4(B))時間とした。図5(B)に示したように、高分子ゲル粒子が基材に固定化されていない本比較例1の試料は、膨潤・収縮を繰り返すと、時間t0 後の面積率が100%に達せず(図4(B))かつ、繰り返し回数の増加に伴い時間t0 後の面積率が低下している事が分かる。これは、膨潤時に高分子ゲル粒子同士が接触した後、収縮する際に凝集するため、再度膨潤するときに膨潤速度が低下することが原因であると考えられる。また、収縮状態は、初期の均一分散状態と比較して、凝集体が多く存在し、大きな黒点として目立つ(図4(A))ようになる。
【0057】
(実施例6)
実施例4と全く同様な方法で発色材料(着色高分子ゲル粒子固定化繊維)を作製した。
得られた発色材料は、pH7の純水中で高分子ゲルが膨潤状態にあり、視野角にほとんど依存することのない光学濃度(λ=600nmで測定)1.2を示した。一方、発色材料の表面にpH3の塩酸水溶液を塗布したところ、高分子ゲル粒子が瞬時(0.1s以内)に収縮し光学濃度が0.2に低下した。その後、塩酸水溶液を中和できる量の水酸化ナトリウム水溶液を適用して、およそpH7に戻したところ、再びゲルが膨張しておよそ1.2の光学濃度が得られ、発消色変化が可逆的に起こることを確認した。
次に、このようなpH変化による膨潤・収縮を繰り返し行い、繰り返しによる膨潤時の面積率の変化を測定した。図6(A)には、作製した発色材料について、繰り返し体積変化(膨潤・収縮)させた時の、面積率100%に達する時間を測定した。観測領 域は1cm四方とし、測定時間は作製後初回の飽和膨潤(面積率10 0%)時間(t0 )を分母とした割合に換算して示した。図6(A)に示したように、高分子ゲル粒子が基材に固定化されている本発明の発色材料は、膨潤・収縮を繰り返しても飽和膨潤時間は殆ど変わらず安定した応答速度が得られた。
【0058】
(比較例2)
実施例4と同様な方法で着色高分子ゲル粒子を作製した後、シート状のセルロース製基材上に該着色高分子ゲル粒子を固定化しない状態の発色材料を作製した。
実施例6と同様に、pH変化による膨潤・収縮を繰り返し行い、繰り返しによる膨潤時の面積率の変化を測定した。図6(B)には、作製した発色材料について、繰り返し体積変化(膨潤・収縮)させた時の、面積率100%に達する時間を測定した。観測領 域は1cm四方とし、測定時間は作製後初回の飽和膨潤(面積率100%)時間(t0 )を分母とした割合に換算して示した。図6(B)に示したように、粒子が固定化されていない試料は、膨潤・収縮を繰り返すと飽和膨潤時間が増大しており、応答速度が遅くなっていることがわかる。これは、膨潤時に高分子ゲル粒子同士が接触したのち収縮する際に凝集するため、再度膨潤するときに膨潤速度が低下することが原因であると考えられる。
【0059】
(実施例7)
顔料を含有した高分子ゲルの粒子を以下に示すように逆相懸濁重合によって製造した。
主モノマーとしてアクリル酸20.0重量部をビーカーにとり、冷却して攪拌しつつ25wt%の水酸化ナトリウム水溶液33重量部を滴下して約74%の中和を行った後、過硫酸アンモニウム0.1重量部を2重量部の純水に溶解した溶液と、ゲル着色用の顔料としてカーボンブラック(昭和キャボット社製:ショウブラックN762)10.0重量部と、架橋剤であるメチレンビスアクリルアミド0.1g重量部を加え、十分に攪拌し均一な溶液を調製した。得られた溶液を、ビーカー中でシクロヘキサン100重量部に分散安定剤であるソルビトール系界面活性剤(第一工業製薬製:ソルゲン50)1.0重量部を溶解して窒素置換した溶液に添加し、回転式攪拌羽根を用いて10000回転で10分間高速攪拌して乳化させた。
次に、反応系の温度を25℃に調節し、溶液を攪拌しながらN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンの50%シクロヘキサン溶液を添加し、重合を行なった。重合後、生成した着色高分子ゲル粒子を回収し、水酸化ナトリウム水溶液で中和反応を行なった後に、純水で繰り返し洗浄を行ない乾燥させた。得られた粒子の乾燥時の平均粒径は約4μmであった。また、この着色粒子の純水吸水量は約200g/gであった。
【0060】
次に、得られた高分子ゲル粒子を繊維質基材上に固定化するために、固定化剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルの5%アセトン溶液を調製した。この固定化剤溶液を、直径30μm程度の繊維で構成された繊維質基材である、厚さ0.2mm、目付け量50g/m2 のビニロン繊維製不織布上に均一に塗布した。次に、乾燥高分子ゲル粒子を面積率30%程度の割合で繊維質基材上に均一散布した後、60℃で24時間加熱処理することで高分子ゲル粒子を固定化し、発色材料(着色高分子ゲル粒子固定化繊維)を得た。
次に、2 枚のITO(インジウム−スズ酸化物)電極付きガラス板を厚さ200μmのスペーサーで間隔を設けて重ねたセル間にこの試料を挟持し、セル内部には0.001mol/lの塩化ナトリウム水溶液を充填し、表示材料に適用可能な光学素子を作製した。この状態では、セル内部の発色材料は高分子ゲル粒子が膨潤しているために黒色であり、光学濃度はおよそ1.6であった。
次に、高分子ゲル粒子が固定化されている繊維質基材面に近接する側を陰極として、両ITO電極間に5Vの直流電圧を印加すると、瞬時に高分子ゲル粒子が収縮し消色した。この時、光学濃度はおよそ0.4であった。その後、消色反応とは逆極性の電圧を印加すると、再び黒色に変化し発色・消色反応が可逆的に起こることを確認した。また、この可逆的な濃度変化は、50回以上安定して繰り返すことができた。
【0061】
【発明の効果】
このように本発明の光学材料は、前記の如き構成を有しているため、高分子ゲル粒子が膨潤・収縮を繰り返すことによる調光・発色状態の膨潤したゲルの分布ムラ(濃度ムラ)の増加及び応答速度の低下を防止しうるという優れた効果を奏する。
また、本発明の光学素子によれば、前記光学材料を用いているため、視野角依存性がなく、素子を構成する基板上に固定化基材を介して間接的に高分子ゲル粒子を保持することができるため、濃度ムラや応答性の低下が少なく、耐久性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の光学材料の構成を示す概念図である。
【図2】 本発明の光学材料を発色材料として用いたときの発色・消色状態を示す概念図である。
【図3】 本発明の光学素子の構成の一態様を示す概略断面図である。
【図4】 (A)は粒子非固定試料の再膨潤時における形態を、(B)は収縮時における形態を示す概略図である。
【図5】 (A)は粒子固定試料の、(B)は粒子非固定試料の、膨潤・収縮繰り返し回数に応じた膨潤時の面積率変化を示すグラフである。
【図6】 (A)は粒子固定試料の、(B)は粒子非固定試料の、膨潤・収縮繰り返し回数に応じた飽和膨潤時間変化を示すグラフである。
【符号の説明】
10 繊維質基材(固定化基材)
12 高分子ゲル粒子
20 調光・発色材料
22 刺激付与手段
24 基板
26 スペーサー
40 繊維質基材
42 着色高分子ゲル粒子
44 光
50 基材
52 着色高分子ゲル粒子の凝集体
54 凝集状態で膨潤した着色高分子ゲル粒子集合体
Claims (9)
- 少なくとも、外部刺激に応じて可逆的に体積変化し、且つ、飽和吸収濃度以上の顔料を含有する高分子ゲル粒子と、該高分子ゲル粒子の体積変化に用いられる液体と、該高分子ゲル粒子を実質的に固定しうる固定化基材とから構成され、該顔料が高分子ゲル粒子の体積変化に伴い拡散・凝集することを特徴とする光学材料。
- 少なくとも、外部刺激に応じて可逆的に光散乱性が変化し、且つ、飽和吸収濃度以上の顔料を含有する高分子ゲル粒子と、該高分子ゲル粒子を含む液体と、該高分子ゲル粒子を実質的に固定しうる固定化基材とから構成され、該顔料が高分子ゲル粒子の体積変化に伴い拡散・凝集することを特徴とする光学材料。
- 前記固定化基材が、合成繊維、天然繊維、半合成繊維および無機繊維からなる群より選択される繊維の集合体からなる繊維質基材であることを特徴とする、請求項1乃至2のいずれか1項に記載の光学材料。
- 前記高分子ゲル粒子が、液体の吸収・放出による膨潤・収縮により、その体積及び光散乱性が変化することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に光学材料。
- 一対の基板間に、少なくとも外部刺激に応じて可逆的に体積変化し、且つ、飽和吸収濃度以上の顔料を含有する高分子ゲル粒子と、該高分子ゲル粒子の体積変化に用いられる液体と、該高分子ゲル粒子を実質的に固定しうる固定化基材とから構成され、該顔料が高分子ゲル粒子の体積変化に伴い拡散・凝集する光学材料を保持してなるセルと、
該セルに外部刺激を付与する刺激付与手段と、
を有することを特徴とする光学素子。 - 前記高分子ゲル粒子が、繊維質基材に実質的に固定されていることを特徴とする、請求項5に記載の光学素子。
- 前記高分子ゲル粒子が、液体の吸収・放出による膨潤・収縮により、その体積及び光散乱性が変化することを特徴とする請求項5又は6に記載の光学素子。
- 前記固定化基材が、合成繊維、天然繊維、半合成繊維および無機繊維からなる群より選択される繊維の集合体からなる繊維質基材であることを特徴とする、請求項5乃至7のいずれか1項に記載の光学素子。
- 前記高分子ゲル粒子の膨潤時の体積が、収縮時の体積の10倍以上であることを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項に記載の光学素子。
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