JP4548859B2 - 凸版印刷用水現像感光性樹脂版を製造するための現像液 - Google Patents

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Description

本発明は、凸版印刷用水現像感光性樹脂版の製造方法に使用する現像液に関する。
一般的な凸版印刷用感光性樹脂版は、例えば特許文献1〜3に記載されるように、露光、現像および後露光工程を経て、製造される。
フレキソ印刷用感光性樹脂版を用いた印刷方式は、凹凸のある樹脂版の凸部の表面に、インキ供給ロール等で、インキを供給し、次に、樹脂版を被印刷体に接触させて、凸部表面のインキを被印刷体に転移させる方式である。このようなフレキソ印刷においては、しばしば、長時間印刷中に、インキが樹脂版の凸部のショルダー部分に付着してきたり、凹部にインキが入り込んだりすることがある(以下、版面汚れ)。その結果、本来の絵柄でない部分まで印刷されることがある。このような場合には、一旦、印刷を中止し、樹脂版面をアルコール等の洗浄液を用い、布等で拭き取る必要があり、経済的に不利になる。
他方、従来の凸版印刷用感光性樹脂版の現像に際しては有機溶剤を用いる方法が一般的であるが、環境保護の観点から水系の現像液が使用可能な版の開発が盛んに行われている。そのような水系の現像液を用いた技術が、例えば、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7等に提案されている。水現像感光性樹脂版では水現像性を付与するため、液状樹脂としてオリゴマーやモノマーを極性の高いものを使用する。固体状の樹脂としては組成上の主体であるポリマーに極性基のものを導入するか、もしくは極性基含有ポリマーと疎水性のポリマーを混合・分散して使用するような手法がとられるのが一般的である。特に後者の方法の方が版の耐久性が良好である事や高精細な版面形成が可能な事から好ましく用いられる。
このような組成の特徴の結果、凸版印刷用水現像感光性樹脂版においては熱可塑性エラストマーのような疎水性のポリマーが主体の溶剤現像感光性樹脂版と比べて版表面の極性がより高まる。そのため、インキに対する親和性が過度に高まってしまう。その結果、前述のようなインキが樹脂版の凸部のショルダー部分への付着する、凸部へインキが入り込むといった現象がさらに起こりやすい。
また、特に近年凸版印刷の高精細印刷への適用が進んでおり、色や濃度の階調を出すための網点をもちいて印刷がなされる。その際、高線数のハーフトーン印刷で用いられる微細な網点のレリーフ周囲で余分なインキが絡み、即ちドット間のブリッジングが生じる。その結果、著しい印刷品質の低下により事実上使用不可能となる。さらには、凸版印刷をもちいてプラスチックのフィルムに印刷することも盛んに行われるようになってきた。しかし、従来の凸版印刷用水現像感光性樹脂版では被印刷体を紙からインキ吸収性の低いプラスチックフィルム基材に置き換えた場合には、インキの転移性が悪く、印刷のベタ部の濃度が低く、ぼやけた印刷しかできないこと;それを補うべく印刷の圧力をかけて印刷しようとするとベタ濃度のわずかな改善と引き換えに線や点の太りという重大な欠陥を生じるため、バランスの良い印刷ができないことという欠点を生じる。
このように、従来の凸版印刷用水現像感光性樹脂版ではそのインキに対する性質から印刷可能な図柄や被印刷体が限られる。そのために、その環境対応性にもかかわらず使用が制限されているのが現状である。
樹脂版の版面汚れに関しては、種々の方法が提案されている。
特許文献8には、版表面に有機フッ素化合物を、はけ塗りやスプレー方式で付着させる技術が記載されている。しかし、低線数の網点印刷での場合でしか効果がでないことや持続効果も不充分であり、前記のような課題の解決には至らない方法である。
特許文献9には、シランカップリング剤、シリコーンオイル、シリコーングリースより選ばれた材料を感光性樹脂に内部添加した後、感光性樹脂表面上に移行させる方法が記載されている。本方法の目的は製版作業等での引き裂き傷の発生防止のための方法であり、基本的にシリコーン化合物をブリードさせる方法である。そのため、印刷時に表面から除去され、シリコーンによる表面の疎水性効果の持続性は全く期待できない。
特許文献10には、シリコーン系化合物やフッ素系化合物の水系エマルジョンと水性樹脂の混合物を塗布する方法が提案されている。しかし、浸透力の低い水系の溶液を塗布するため、版面汚れ防止の効果は、必ずしも十分ではない。特にロングラン、又はリピート印刷においてこれらの効果は継続しがたく、効果を維持させる為には繰り返し塗布する必要がある。
特許文献11には、水現像可能な組成物中の重合性材料と共重合可能なフッ素、塩素、珪素を含む疎水性化合物を内部添加して版表面の接触角を大きくする方法が提案されている。本方法は、感光性樹脂成分と共重合させることで版面の疎水化が樹脂に固定される点で優れている。しかし、明細書中にも言及されているように、適用可能な樹脂がポリウレタン系やポリビニルアルコール系、ポリエステル樹脂系あるいはナイロン樹脂系などの液状またはペースト状の均一系の樹脂に限られている。このような技術を、特に水現像感光性樹脂でも版の耐久性を有すると共に高精細な版面形成が可能な極性基含有ポリマーと疎水性のポリマーを混合・分散した樹脂系に適用しようとすると思わぬ不都合を生じる事が本発明者によって明らかにされた。その不都合とは、フッ素化合物やシリコーン化合物を極性基含有ポリマーと疎水性のポリマーを混合・分散した樹脂系に添加してゆくと、樹脂からブリードしてしまうか、もしくは版に濁りを生じてしまい、露光時に光の散乱を引き起こすことになる。そのため、例えば細線の形成不良や点の形状不良など画像形成性が悪化してしまうことである。画像形成性の悪化を極力抑える程度の疎水性化合物の添加では、今度は版表面の疎水化効果が小さくなって、目的が達成されないのである。版の濁りに関しては、その作用機構は明確になっていないが、次のように考えられる。すなわち、極性基含有ポリマーと疎水性のポリマーを混合・分散した樹脂系では、疎水性物質が極性基含有ポリマーと疎水性のポリマーの界面に存在しやすく、その界面での光の散乱を増幅するためではないかと推定される。
特開平10−171111号公報 特開昭63−088555号公報 特開平05−134410号公報 特許3508788号明細書 特公昭58−33884号公報 特許第2940006号明細書 特許第2985655号明細書 特開昭51−40206号公報 特開昭60−191238号公報 特開2002−292985号公報 特開平6−186740号公報
本発明における課題は、凸版印刷用水現像感光性樹脂版を用い、その画像形成性を悪化させる事なく、高い精細性とベタ部の高い濃度をバランスよく印刷でき、かつ版面のインキ汚れを長期間防止し、版拭きなどの印刷作業時の煩雑な操作を極力防止できる感光性樹脂版の製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、露光工程以降に樹脂版の版面をシリコーン系化合物を含有した液と接触させることで課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の構成は、下記の通りである。
(1)変性シリコーン化合物を含有し、当該変性シリコーン化合物が、水酸基、カルビノール基、エポキシ基、(メタ)アクリル酸エステル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、アミノ基、からなる群から選ばれる1種以上の変性基を有するシリコーン化合物である、凸版印刷用水現像感光性樹脂版を製造するための現像液。ただし、当該変性シリコーン化合物がシリコーン系界面活性剤である場合を除く。
(2)変性シリコーン化合物を含有し、当該変性シリコーン化合物が、カルビノール基、エポキシ基、(メタ)アクリル酸エステル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、アミノ基、からなる群から選ばれる1種以上の変性基を有するシリコーン化合物である、凸版印刷用水現像感光性樹脂版を製造するための現像液。
)(a)1つまたは2つ以上の界面活性剤1〜50重量部、(b)変性シリコーン化合物0.01〜20重量部、(c)アルキルグリコールエーテル0.2〜20重量部、及び(d)アルカリビルダー0.1〜10重量部を含有する、(1)又は(2)に記載の現像液。
本発明の製造方法により、画像形成性を悪化させる事なく、高い精細性とベタ部の高い濃度をバランスよく印刷でき、かつ版面のインキ汚れを長期間防止し、版拭きなどの印刷作業時の煩雑な操作を極力防止できる凸版印刷用水現像感光性樹脂版を提供することができる。
以下、本発明について、その好ましい形態を中心に、詳細に説明する。
本発明の凸版印刷用水現像感光性樹脂版は、露光、現像および後露光工程を経て製造される。露光前の樹脂が、室温で流動性があるものでも固体であってもよく、通常版の厚みは0.5〜10mmの範囲で用いられる。水現像感光性樹脂版として公知の樹脂のものを使用することができる。例えば、上記の特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7等に提案されている樹脂がその例である。基本的な構成として、オリゴマーもしくはポリマー成分と重合性モノマー成分と光開始剤および安定剤から構成される。版の物性に最も影響の大きいオリゴマーもしくはポリマー成分に用いられる材料も多岐にわたり、ポリウレタン系、ポリビニルアルコール系、ポリエステル樹脂系あるいはナイロン樹脂系から、極性基含有ポリマーと疎水性のポリマーを混合・分散した樹脂系(バインダーポリマー)を用いる場合まで様々である。特に極性基含有ポリマーと疎水性のポリマーを混合・分散した樹脂系を用いるものは、版の耐久性や高精細な版面形成性が優れており、印刷における汎用性が高く有用な樹脂系である。このような樹脂系の例としては以下のようなものが例示できる。
極性基含有ポリマーとしてはカルボキシル基、アミノ基、水酸基、燐酸基、スルフォン酸基等の親水性基、もしくはそれらの塩を有する水溶性、又は水分散性共重合体が挙げられる。さらに具体的には特許第2128098号明細書に記載されているカルボキシル基含有NBR、カルボキシル基含有SBR;特開平5−7705号明細書、特開昭61−128243号明細書、特開平6−194837号明細書、特開平7−134411号明細書等に記載されたカルボキシル基を含有した脂肪族共役ジエンの重合体;特開平9−15860号明細書に記載された燐酸基、又はカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物の乳化重合体;特開平3−206456号明細書に記載されているスルフォン酸基含有ポリウレタン;特願2000−361371に記載されたカルボキシル基含有ブタジエンラテックスなどが例として挙げられる。これらの親水性重合体類は単独で用いても良いし2つ以上を併用しても良い。
これと併用される疎水性のポリマーとしては共役ジエン系炭化水素を重合して得られる重合体、又は共役ジエン系炭化水素と、モノオレフィン系不飽和化合物を重合して得られる共重合体があり、例えばブタジエン重合体、イソプレン重合体、クロロプレン重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−クロロプレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−イソプレン共重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合体、メタクリル酸メチル−イソプレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−イソプレン−スチレン共重合体等が挙げられる。これらの疎水性ポリマーは1つでも2つ以上を併用しても良い。
これらオリゴマーもしくはポリマー成分と併用される重合性モノマーに特に制限は無い。例えばエチレン性不飽和酸とアルコール類のエステル化合物などがあり、文献「光硬化技術データブック(テクノネット社発行)」等に記載された化合物が利用できる。具体的にはヘキシル(メタ)アクリレート、ノナン(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチル、2−ブチルプロパンジオール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、ECH変性アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の直鎖、分岐、環状の単官能モノマー;又はヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル、2−ブチルプロパンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエート(メタ)アクリレート、EO(PO)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の直鎖、分岐、環状の多官能モノマーなどが挙げられる。またはジオクチルフマレート等のアルコールとフマル酸のエステル、又はラウリルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどN置換マレイミド誘導体などを挙げることができる。
その他の成分として用いられる光重合開始剤としては文献「光硬化技術データブック(テクノネット社発行)」、「紫外線硬化システム(総合技術センター発行)」等に記載されたものが例示できる。具体的にはベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、α―メチロールベンゾイン、α―メチロールベンゾインメチルエーテル、ベンジルメチルケタール、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、ベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、ビスアシルフォスフィンオキサイド、α―メトキシベンゾインメチルエーテル、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−メチル−1−[4−メチルチオ]フェニル、2−モルフォリノプロパン−1−オン、チオキサントン、ベンジル、アンスラキノンなどが挙げられる。これらは単独でも、2種類以上を併用しても良い。
その他、必要に応じて重合禁止剤、可塑剤、染料、紫外線吸収剤、耐オゾン剤等の添加剤を配合することができる。可塑剤としては液状1,2(又は1,4)−ポリブタジエン、1,2(または1,4)−ポリイソプレン、又はこれらの末端変性品、ナフテン油、パラフィン油等の炭化水素油等が挙げられる。重合禁止剤としてはハイドロキノン、P−メトキシフェノール、2,4−ジ−t−ブチルクレゾール、カテコール、t−ブチルカテコール等のフェノール類などが挙げられる。
固体状の感光性樹脂の場合、通常、ポリエチレンテレフタレート支持体(必要に応じてアンチハレーション効果を付与されたものを使用)と粘着防止層を有するフィルムを用いて板状に成形する。フレキソCTPといわれるデジタル版の場合には、上記支持体とレーザーアブレーション能を持つ層を有するフィルムを用いて板状に成形される。液状の感光性樹脂の場合、市販の液状感光性樹脂用の製版機上で支持体とフィルムの間に樹脂を投入して、露光される。
通常、水現像感光性樹脂板は露光工程(活性光線露光工程)、現像工程(未露光部の洗浄除去工程)を行った後、後露光工程を経て製造される。本発明においては、露光工程以降にシリコーン化合物を含有する液と感光性樹脂版を接触させることが必要である。ここでいうシリコーン化合物とはメチル基を代表とするアルキル基を有するアルキルシロキサンを主たる骨格とするオリゴマーもしくはポリマーをいい、一般的にシリコーンオイルなどと称される場合もある物質である。また、ここでいうフッ素化合物とは炭素水素化合物の水素基の一部もしくは全部をフッ素で置換した化合物をいう。
本発明で用いるシリコーン化合物は樹脂成分と相互作用および/または反応性を有する官能基を有していることが望ましい。具体的には水酸基、カルビノール基、エポキシ基、(メタ)アクリル酸エステル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、アミノ基、フェニル基を含む芳香族炭化水素基、メチルスリチル基を含む芳香族炭化水素で置換された炭化水素基、ヒドロキシフェニル基を含む水酸基で置換された芳香族炭化水素基、アルコキシル基、(ポリ)エーテル基、ウレタン基等の官能基が好ましいものとして挙げられる。このような1種以上の変性基を有するシリコーン化合物を称して変性シリコーン化合物という。これらの変性シリコーン化合物においては、上記の1種以上の変性基が、Si原子と直接結合していてもよいし、もしくはSi原子に結合している炭化水素基の水素原子の1個または2個以上と置換されていてもよい。
変性基のないシリコーン化合物、例えばジメチルシロキサンを主鎖とするシリコーンオイル、及び/又はフッ素化合物、例えばパーフロロカーボンやハイドロフロロエーテル、ハイドロフロロカーボン等のフッ素オイル、を感光性樹脂版に接触させても、感光性樹脂版表面の疎水化効果が発現しないか、もしくは印刷の初期に失われてしまうことが本発明者らの検討で明らかになった。この現象はおそらく、これらの化合物の樹脂板に対する浸透性や、分子間の相互作用や反応性が極めて乏しいため、樹脂板の表面に定着しないためと推察できる。
上記変性シリコーン化合物を版表面と接触させる方法はどのような方法でもよい。例えば有機溶剤、又はアルコール類、好ましくは炭素数が1個から6個のアルコール類、更に好ましくはエタノール、メタノール、イソプロピルアルコールなどに溶解させた処理液を予め作成しておく。そして、露光工程後の適当な時に版を処理液に浸漬、又は処理液をアトマイザー、刷毛などを用いて版表面に塗布することができる。このような処理液中のシリコーン系化合物の濃度は、通常0.001重量%から50重量%の範囲で用いられ、好ましくは0.01重量%から20重量%、さらに好ましくは0.1重量%から10重量%以下の範囲で使用される。この範囲より低い場合には、充分な疎水化効果が得られないし、この範囲を越える高い濃度に場合には、処理にかかるコストのみが増大し好ましくない。必要に応じて、シリコーン系化合物を含有する溶液に、消泡剤、酸化防止剤あるいは防腐剤等の添加剤を加えても良い。
その他、感光性樹脂の現像工程で用いられる現像液中に溶解もしくは分散させ、露光工程を経た感光性樹脂版を現像させながら変性シリコーン化合物を版表面と接触させることもできる。この方法は新たに変性シリコーン化合物を版表面と接触させる工程を増やすことなく実施できる点で好ましい実施の形態である。
現像方式としては公知の方法でよい。具体的には版を洗浄液に浸漬させた状態でブラシを用いて未露光部を溶解、又は掻き落とす現像方式、スプレーなどで版面に洗浄液を振りかけながらブラシで未露光部を溶解、又は掻き落とす現像方式などが挙げられる。水現像感光性樹脂版の現像液は公知のものを使用することができる。通常、有効成分として界面活性剤を含有している。界面活性剤としてはアニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤などが挙げられる。これらは単独で用いても2種類以上を混合して使用してよい。
アニオン系界面活性剤の例としては硫酸エステル塩、高級アルコール硫酸エステル、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、硫酸化オレフィン、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、α−オレフィンスルフォン酸塩、燐酸エステル塩、ジチオ燐酸エステル塩などが挙げられる。両性活性剤の例としては、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤などが挙げられる。ノニオン系界面活性剤の例としては、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物等のポリエチレングリコール型界面活性剤やグリセロール脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビトール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエステル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等の多価アルコール型界面活性剤などが挙げられる。
これらに加え、版の洗浄性の向上、及びシリコーン系化合物の版内への浸透性を向上させるためにアルキルグリコールエーテルのような水と混合可能な有機溶剤を浸透剤として添加することは有効な方法である。浸透剤は洗浄する樹脂の組成により選択することができる。例えばジブチルジグリコールエーテルなどのモノもしくはポリエチレングリコールエーテル型非イオン浸透剤等が挙げられる。
その他の成分としてアルカリビルダーと称されるPH調整剤を含有させても良く、アルカリビルダーとしては有機材料、無機材料のどちらも使用でき、pHを9以上に調整できるものが望ましい。例えば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、琥珀酸ナトリウムなどが挙げられる。
現像液中の界面活性剤や浸透剤、ビルダーの量には特に制限はない。通常、界面活性剤の量としては現像液の重量に対して、1重量部〜50重量部、より好ましくは3重量部〜20重量部である。浸透剤は通常、現像液の重量に対して、0.2重量部以上、20重量部以下の範囲で用いられる。より好ましくは0.2重量部以上、10重量部以下である。アルカリビルダーは通常、現像液の重量に対して、0.1〜10重量部の範囲で用いられる。これら成分の量が上記の範囲より少ない場合には現像にかかる時間が長くなりすぎるなどの不都合がおき、上記範囲より大きい場合コストの観点で好ましくない。
上述のように、本発明においては、感光性樹脂の現像工程で用いられる現像液中に溶解もしくは分散させ、露光工程を経た感光性樹脂版を現像させながら変性シリコーン化合物を版表面と接触させる。特に、現像液への溶解もしくは分散の安定性の観点から水酸基、カルビノール基、エポキシ基、(メタ)アクリル酸エステル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、アミノ基から選ばれる1つまたは2つ以上の変性基を有する変性シリコーン系化合物が特に好ましい。ただし、当該変性シリコーン化合物がシリコーン系界面活性剤である場合を除く。これらの変性シリコーン化合物においては、上記の1種以上の変性基が、Si原子と直接結合していてもよいし、もしくはSi原子に結合している炭化水素基の水素原子の1個または2個以上と置換されていてもよい。変性シリコーン化合物の現像剤中の濃度としては、0.01重量部〜20重量部が好ましく、より好ましくは0.1重量部〜5重量部である。この範囲より低い濃度では充分な疎水化効果が得がたい。一方、この範囲より高い濃度では処理にかかるコストのみが増大し、場合によって現像液の現像速度を低下させるなどの弊害があり好ましくない。
2種類以上の薬剤を併用する場合、薬剤間の比率は任意でよいが、合計量は上記範囲に入ることが望ましい。
本発明の方法においては、変性シリコーン化合物の変性基の効果により、感光性樹脂の表面に高濃度に疎水性を発現するシリコーン分子を有する分子が存在させる事ができる。樹脂中の成分との相互作用や反応により表面に固定化するので、効果的にかつ持続的に印刷時における諸問題を回避できるものと推定される。従って、用いる感光性樹脂の種類によって変性シリコーン化合物の変性基の種類や量は適宜選択されるべきである。
しかしながら、例えば印刷に溶剤系のインキなど版自身への浸透性の高いものを使用する場合において、徐々にではあるが疎水化効果が失われてゆく現象がみられる場合がある。そのような場合、変性シリコーン化合物と接触させた後に活性光線を照射することにより疎水化効果の持続性が向上することを本発明者らは見出した。ここでいう活性光線とは少なくとも300nm以下の波長の光を有するものである。これに必要に応じて300nm以上の波長の光を有する活性光線を併用してもかまわない。これらの波長の異なる複数種の活性光線を照射する場合は、同時に照射しても、別々に照射してもかまわない。また、照射は版を空気中で露光処理しても、酸素を経内から除外した状態,即ち真空条件、窒素ガス、又は他の不活性ガス雰囲気下、又は版を水中に浸漬した状態等で実施してもかまわない。
疎水化効果の持続性の向上効果についてその理由は明確になってはいない。感光性樹脂版を露光した後においても、光重合開始剤が残存しており、これに活性光線を照射することで版の表面付近に反応活性種が発生し、樹脂成分や変性シリコーン化合物間に結合を生じるためではないかと推定している。活性光線の照射は、露光工程の後、変性シリコーンと感光性樹脂版とを接触させた以降であればいつでもよい。通常、感光性樹脂版は露光、現像および後露光工程で作成される。従って、現像工程の後であって後露光工程の直前で変性シリコーンと感光性樹脂版とを接触させてから後露光と活性光線の照射を一度に行っても良い。例えば水中に変性シリコーンを分散させた状態で後露光と活性光線の照射を一度に行う方法でも良い。あるいは、活性光線の照射は、後露光工程とは別個に適当な工程で実施しても良い。活性光線の線源の種類や、光線の照射量は、適切に効果が得られる条件を選択して実施すべきである。
本発明者らは、本発明の方法に従って変性シリコーン化合物を含有する液と感光性樹脂版を接触させることによって製造された感光性樹脂版の効果についてさらに詳細に検討した。その結果、特定の条件で溶剤に浸漬した後の感光性樹脂版の表面性質の変化を測定する事によって、本発明による感光性樹脂版が実印刷において発揮することを所望されている効果、特に効果の実用上の持続性について確認できる方法を見出した。
その方法とは溶剤インキに用いられる酢酸エチルとイソプロピルアルコールを20対80の重量比に混合した溶剤に20℃で4時間浸漬した後、さらに60℃で4時間以上乾燥した版表面の表面濡れ性を、本処理実施前の感光性樹脂版の表面濡れ性と比較する方法である。ここでいう表面濡れ性の測定方法は、室温20℃、湿度70%の雰囲気下で、JIS K6768の試験方法において使用する30dyne/cmの濡れ張力試験用標準液をベタ版表面上に20mmの高さから0.5ml滴下し、滴下後30秒後の液滴の直径を測定する。液滴の直径はX、Y方向の平均を取り、各サンプル3回測定してその平均値を結果とした。酢酸エチルとイソプロピルアルコール混合溶剤を用いての前記の処理前後において、その指示薬の直径は大きくなる傾向、つまり疎水性が低下する傾向にある。しかし、その変化率が25%以内より好ましくは15%以内であれば、実印刷での効果の実用上の持続性が達成できることを見出した。この方法を酢酸エチルとイソプロピルアルコール混合溶剤に替えて、UVインキなど版に対する浸透性が高いインキで行っても同様の結果が得られることも判った。従って、変性シリコーン系化合物を版表面と接触させたものを酢酸エチル/イソプロピルアルコール=20/80(重量比)の溶剤にて処理する前後における表面濡れ性指示薬直径の変化率が25%以下である水現像感光性樹脂凸版も本発明の態様の一つである。
さらに本発明者らは、処理した感光性樹脂版の表面を科学的に解析する方法を鋭意検討した。その結果、特に変性シリコーン化合物を用いる場合において、XPSによる感光性樹脂版の表面に存在する珪素の相対元素濃度の測定値が酢酸エチルとイソプロピルアルコール混合溶剤での処理後において、0.1at%以上、より好ましくは0.5at%以上存在する感光性樹脂版が実印刷での効果の実用上の持続性が達成できることを見出した。なお、ここで「at%」とは、感光性樹脂版の表面における原子数についての割合を示すものである(相対元素濃度)。酢酸エチルとイソプロピルアルコール混合溶剤での処理後における、変性シリコーン化合物に接触させた感光性樹脂版の表面の珪素濃度が0.1at%以上である水現像感光性樹脂版も本発明の態様の一つである。
本発明の方法に用いられる水現像感光性樹脂凸版の樹脂中に、本発明の方法で感光性樹脂版の露光工程以降で感光性樹脂版との接触に用いられる変性シリコーン化合物を内添させてもかまわない。しかし、既に述べたように感光性樹脂版に濁りを生じて、露光時に光の散乱を引き起こし、例えば細線の形成不良や点の形状不良など画像形成性が悪化してしまうといった悪影響が起きない範囲で実施すべきである。内添する利点として例えば表面が粗い紙の印刷等で感光性樹脂版のすべり性が改良されて擦り切れ現象が抑えられる等の効果が期待できる場合もあり、必要に応じて添加することができる。そのような感光性樹脂版への変性シリコーン化合物の露光工程以降の接触する方法に関しても本発明実施の形態の一つである。
以下、実施例、及び比較例により本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔合成例〕
<親水性共重合体Aの合成>
攪拌装置と温度調整用ジャケットを取り付けた耐圧反応容器に水125重量部、及び乳化剤(α−スルフォ(1−(ノニルフェノキシ)メチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)のアンモニウム塩(商品名 アデカリアソープ 旭電化工業製)3重量部を初期仕込みとした。内温を重合温度80℃まで昇温後、アクリル酸2重量部、メタクリル酸5重量部、ブタジエン60重量部、スチレン10重量部、ブチルアクリレート23重量部、t−ドデシルメルカプタンの油性混合液と、水28重量部、ペルオキソ二硫酸ナトリウム1.2重量部、乳化剤(商品名 アデカリアソープ 旭電化工業製)1重量部からなる水溶液をそれぞれ一定流速で5時間、及び6時間かけて添加した。その後1時間保って重合を完了した後冷却した。生成したラテックスを水酸化ナトリウムでpH7に調整した後、スチームストリッピングで未反応物を除去し最終的に固形分濃度40%で親水性重合体水溶液を得た。これを60℃で乾燥し親水性共重合体Aを得た。
〔インキ絡みの評価〕
インキ絡みはAI−3型フレキソ印刷機(伊予機械製)を用い、600LPI(容量 3.8cm3/m2)のアニロックスロールを用いて行った。インキは水性インキ「HW571AQP プロセスシアン(商品名 TOYO INK製)」を粘度15秒(Zhan粘度計#4)に調整して使用した。被印刷体にはコート紙(商品名 パールコート 王子製紙製 坪量 106g/m2)を用いた。印刷速度は100m/minで行った。アニ圧はインキ絡みを加速させる目的で感光性樹脂版に過剰量のインキを供給する為、適正値より0.02mm加圧して行った。また同様の目的でレリーフ表面の変形を大きくしインキ絡みが加速する様、印圧も適正値より0.15mm加圧した条件で行った。上記印刷条件で100m印刷した後、アニロックスを感光性樹脂版から離した。そして、感光性樹脂版がアニロックスに接しない状態で10m印刷し感光性樹脂版表面の余分なインキを除去した。その後印刷機を停止、印刷版の網点部分へのインキの残留状態で評価を行った。評価する網点は画像内に配置した100、133、150、175LPI線数で、それぞれ線数が1、2、3、5%の面積率でデザインされており計16箇所の評価画像が存在する。この16箇所の網点のうちで画像面積の30%以上に渡ってインキが絡んだ網点の個数にて評価を行った。インキの絡み難い好適な版材では絡みは少なく、最高評価は0個になる。一方インキの絡みやすい版材の場合、インキの絡む網点の個数は必然的に多くなり最大16個所の網点にインキが絡むことになる。
〔感光性樹脂版の表面濡れ性の評価〕
感光性樹脂版の表面濡れ性は以下の方法で評価を行った。室温20℃、湿度70%の雰囲気下で、30dyne/cmの濡れ張力試験用混合液No.30.0(和光純薬製)をベタ版表面上に20mmの高さから0.5ml滴下し、滴下後30秒後の液滴の直径(単位;mm)を測定し評価を行った。液滴の直径はX、Y方向の平均を取り、各サンプル3回測定してその平均値を結果とした。インキが絡み易い感光性樹脂版、即ち濡れ性が良い感光性樹脂版の液滴直径は大きく広がる結果になる。反対にインキが絡みにくいもの、即ち濡れ性が悪いものは液滴が広がりにくく直径が小さい為、液滴直径を測定することで濡れ性の比較が可能である。
〔処理効果の持続性評価〕
ここで言う処理効果の持続性とは、以下に述べるように、溶剤及びUVインキに対する耐久性に関するものであり、それぞれの感光性樹脂版の表面濡れ性の評価は上記の方法に従った。
評価例1:処理効果耐溶剤テスト(浸漬テスト1)
作成した感光性樹脂版を酢酸エチル/イソプロピルアルコール=20/80(重量比)の溶剤に20℃で4時間浸漬後、60℃で4時間以上乾燥後の感光性樹脂版の表面濡れ性を評価した。
評価例2:処理効果耐UVインキテスト(浸漬テスト2)
作成した感光性樹脂版をフレキソ用UVインキ“UFL639 藍”(インクテック製)に20℃で4時間浸漬後、イソプロピルアルコールでインキ洗浄を行った。この感光性樹脂版を60℃で4時間乾燥後、感光性樹脂版の表面濡れ性を評価した。
〔Si濃度の測定〕
感光性樹脂版の表面に存在する珪素の相対元素濃度はXPSにより測定を行った。測定条件は以下に記載するとおりである。
使用機器 :VG製 機器名ESCALAB250
励起源 :単色化AlKα 15kV×10mA
分析面積 :300μm×600μmの楕円
取込領域
Survey Scan :1,100〜0eV (定性分析用)
Narrow Scan :Cls、Ols、Si2p、S2p、Nals (定量分析、化学状態分析用)
Pass Energy
Survey Scan : 100eV
Narrow Scan : 20eV
定量は、Cls、Ols、Si2p、S2p、Nalsの面積強度、および相対感度係数を用いて相対元素濃度を算出し、単位はat%と表記した。用いた相対感度係数は、以下の通りであった。
Cls:1.00 Ols:2.72 Si2p:0.93 S2p:1.67 Nals:8.52
〔実印刷での評価〕
インキとして溶剤系のFBキング(藍色、東洋インキ製)を使用し、被印刷体には低密度ポリエチレンを用いた。アニロックスロールは800lpi(セル容積3.8cm3/m2)、クッションテープには3M1020(3M製)を使用して、200m/分の速度で、5万部の印刷を実施した。評価する感光性樹脂版には画像内にベタ部分、独立点独立線、白抜き線と100、133、150、175lpi線数で、それぞれ線数が1、2、3、5%の面積率でデザインされたものを使用した。刷了前に特に網点部にインキが絡み、印刷を止めなければならない状態になった場合を“C”、刷了はできたがベタ濃度の低下や網点部の太りを生じた場合を“B”、刷了できベタ濃度の低下や網点部の太りも生じなかった場合を“A”と評価した。
参考例1〕
上記合成例に示した親水性共重合体A30重量部、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(クレイトンKX405 シェル化学)25重量部、液状ポリブタジエン(LIR305 クラレ)30重量部、ヘキサメチレンジメタクリレート2.5重量部、2−ブチル、2−エチルプロパンジオールジアクリレート8重量部、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン2重量部、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.3重量部を130℃のニーダーを用いて均一に混練して感光性樹脂組成物を得た。
この組成物を120℃の熱プレス機を使用し、ウレタン系の接着剤層を有するポリエチレンテレフタレートフィルム支持体とポリビニルアルコールとセルロースからなる粘着防止層を有するフィルムを用いて、1.14mmの厚みに成形した。この感光性樹脂版には濁りがほとんど認められず透明性は維持されていた。この感光性樹脂版をJET−A2−HSS露光機(日本電子精機製)を用いてまず支持体側から全面露光600mJを行った後、反対面のフィルムを剥離し、ネガフィルムを介して画像露光5000mJを行った。次に界面活性剤として炭素数12から14の第二級アルコールのエチレンオキシド5モル付加物であるレオコールSC−80(ライオン製)5重量部、浸透剤としてジブチルジエチレングリコール1重量部および炭酸ナトリウム0.4重量部を含む水系現像液を用い平型洗浄機(ロボ電子製)により未露光部の洗い出しを行った。60℃で15分乾燥した後、ケミカルランプ、及び殺菌灯を用いて後露光を行った。この感光性樹脂版をメタクリル変性されたシリコーン系化合物X−22−174DX(信越化学製)を0.1重量部含有させたエタノール/水混合液=1/9(重量比)に1分間浸漬後、60℃で10分間乾燥を行い、目的の感光性樹脂版を得た。評価結果を表1に示す。
参考例2〕
メタクリル変性されたシリコーン系化合物X−22−174DXにかえてメチルスチリル変性されたシリコーン系化合物KF−410(信越化学製)を使用した以外は参考例1と同様な方法で目的の感光性樹脂版を得た。評価結果を表1に示す。
参考例3〕
参考例2と同様な方法で得られた感光性樹脂版を用い、さらにケミカルランプ、及び殺菌灯を用いて活性光線照射を行って目的の感光性樹脂版を得た。評価結果を表1に示す。
〔比較例1〕
参考例1に記載の感光性樹脂に対し同条件で成形、露光及び洗い出し工程を行って感光性樹脂版を得た。この感光性樹脂版を60℃で15分乾燥後、ケミカルランプ、及び殺菌灯を用いて同露光量で後露光を行い所定の感光性樹脂版を得た。評価結果を表1に示す。
参考例4〕
参考例1に記載の感光性樹脂に対し同条件で成形、露光及び洗い出し工程を行って感光性樹脂版を得た。この感光性樹脂版を60℃で15分乾燥後、メタクリル変性されたシリコーン系化合物X−22−164A(商品名 信越化学製)の1重量%エタノール溶液に1分間浸漬後、さらに5分間乾燥させた。この感光性樹脂版をケミカルランプ、及び殺菌灯を用いて後露光を行い、目的の感光性樹脂版を得た。評価結果を表1に示す。
参考例5〕
X−22−164Aのかわりにフェノール変性されたシリコーン系化合物X−22−1621(信越化学製)を用いる以外は参考例4と同様な方法で目的の感光性樹脂版を得た。評価結果を表1に示す。
参考例6〕
X−22−164Aのかわりにエポキシ変性されたシリコーン系化合物X22−163A(信越化学製)を用いる以外は参考例4と同様な方法で目的の感光性樹脂版を得た。評価結果を表1に示す。
参考例7〕
参考例1に記載の感光性樹脂に対し同条件で成形、露光及び洗い出し工程を行って感光性樹脂版を得た。この感光性樹脂版を60℃で15分乾燥した。それから、アサヒガードAG5850(旭硝子製、ポリフッ化エチレンおよびパーフルオロアルキル基を有するアクリル系共重合体のミネラルスピリット希釈物)を感光性樹脂版に吹き付け60℃で1時間乾燥後、ケミカルランプ、及び殺菌灯を用いて後露光を行い、目的の感光性樹脂版を得た。評価結果を表1に示す。
参考例8〕
参考例1に記載の感光性樹脂に対し同条件で成形、露光及び洗い出し工程を行って感光性樹脂版を得た。この感光性樹脂版を60℃で15分乾燥した。それから、高級脂肪酸エステル変性されたシリコーン系化合物X−22−715(商品名 信越化学製)を0.1重量部分散させたエタノール/水溶液=1/9(重量比)に浸漬した状態でケミカルランプ、及び殺菌灯を用いて後露光を行い、目的の感光性樹脂版を得た。評価結果を表1に示す。
参考例9〕
X−22−715のかわりにカルビノール変性されたシリコーン系化合物X−22−160AS(商品名 信越化学製)用いる以外は参考例8と同様な方法で目的の感光性樹脂版を得た。評価結果を表1に示す。
〔比較例2〕
参考例1に記載の感光性樹脂に対し同条件で成形、露光及び洗い出し工程を行って感光性樹脂版を得た。この感光性樹脂版を60℃で15分乾燥した。それから、メチル基以外の官能基を有さないジメチルシリコーンオイルの1重量%のエタノール溶液に1分浸漬後、更に5分乾燥を行った。この感光性樹脂版をケミカルランプ、及び殺菌灯を用いて後露光を行い、目的の感光性樹脂版を得た。評価結果を表1に示す。
参考例10〕
参考例1に記載の感光性樹脂に対し同条件で成形、及び露光工程を行った。その後、界面活性剤として炭素数12から14の第二級アルコールのエチレンオキシド5モル付加物であるレオコールSC−80(ライオン製)5重量部、浸透剤としてジブチルジエチレングリコール1重量部、ポリエチレングリコールポリプリピレングリコール変性されたシリコーンオイルTSF4452(GE東芝シリコーン製)0.2重量部、炭酸ナトリウム0.4重量部からなる水系現像液を用いて平型洗浄機(ロボ電子製)により未露光部の洗い出しを行った。この感光性樹脂版に対し60℃で30分乾燥を行った。この感光性樹脂版に対しケミカルランプ、及び殺菌灯を用いて後露光を行い、目的の感光性樹脂版を得た。評価結果を表1に示す。
〔実施例11〕
参考例1に記載の感光性樹脂に対し同条件で成型、及び露光工程を行った。その後、水系現像液に添加するシリコーン系化合物をカルビノール変性されたシリコーン系化合物X−22−160AS(信越化学製)に変更した以外は参考例10と同様な方法で目的の感光性樹脂版を得た。評価結果を表1に示す。
〔実施例12〕
参考例1に記載の感光性樹脂に対し同条件で成型、及び露光工程を行った。その後、水系現像液に添加するシリコーン系化合物をメタクリル変性されたシリコーン系化合物X−22−164A(信越化学製)に変更した以外は参考例10と同様な方法で目的の感光性樹脂版を得た。評価結果を表1に示す。
〔実施例13〕
参考例1に記載の感光性樹脂に対し同条件で成型、及び露光工程を行った。その後、水系現像液に添加するシリコーン系化合物をカルボキシル変性されたシリコーン系化合物X−22−162C(信越化学製)に変更した以外は参考例10と同様な方法で目的の感光性樹脂版を得た。評価結果を表1に示す。
〔実施例14〕
参考例1に記載の感光性樹脂に対し同条件で成型、及び露光工程を行った。その後、水系現像液に添加するシリコーン系化合物をアミノ基変性されたシリコーン系化合物KF−393(信越化学製)に変更した以外は参考例10と同様な方法で目的の感光性樹脂版を得た。評価結果を表1に示す。
Figure 0004548859
〔比較参考例1〕
合成例に示した親水性共重合体A30重量部、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(クレイトンKX405 シェル化学 商品名)25重量部、液状ポリブタジエン(LIR305 クラレ 商品名)30重量部、ヘキサメチレンジメタクリレート2.5部、2−ブチル、2−エチルプロパンジオールジアクリレート8重量部、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン2重量部、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.3重量部、および高級脂肪酸エステル変性されたシリコーン系化合物X−22−715(信越化学製)0.5重量部を130℃のニーダーを用いて均一に混練して感光性樹脂組成物を得た。
この組成物を120℃の熱プレス機を使用し、ウレタン系の接着剤層を有するポリエチレンテレフタレートフィルム支持体とポリビニルアルコールとセルロースからなる粘着防止層を有するフィルムを用いて、1.14mmの厚みに成形した。この感光性樹脂版には濁りがほとんど認められず透明性は維持されていた。この感光性樹脂版をJET−A2−HSS露光機(日本電子精機製)を用いてまず支持体側から全面露光600mJを行った後、反対面のフィルムを剥離し、ネガフィルムを介して画像露光5000mJを行った。次に界面活性剤として炭素数12から14の第二級アルコールのエチレンオキシド5モル付加物であるレオコールSC−80(ライオン製)5重量部、浸透剤としてジブチルジエチレングリコール1重量部および炭酸ナトリウム0.4重量部を含む水系現像液を用い平型洗浄機(ロボ電子製)により未露光部の洗い出しを行った。60℃で15分乾燥した後、ケミカルランプ、及び殺菌灯を用いて後露光を行って目的の版感光性樹脂を得た。インキ絡みの評価をしたところ6箇所の網点でインキ絡みがみられ、実印刷評価でも“C”であった。
〔比較参考例2〕
上記組成物を、高級脂肪酸エステル変性されたシリコーン系化合物X−22−715の使用量を2.0重量部とした以外は、比較参考例1と同様な方法で1.14mmの厚みに成型した。この感光性樹脂版には濁りが認められ、比較参考例1と同様の露光、洗浄及び後露光工程をして得られた感光性樹脂版の白抜き線が埋まる、網点の形状がブロードになるなど、画像再現性が著しく悪化した。
参考例15〕
比較参考例1と同様な方法で得られた1.14mmの厚みに成型された感光性樹脂版を用い、実施例12と同様の現像、露光、洗浄、後露光を行って、目的の感光性樹脂版を得た。インキ絡みの評価では全く絡みが起こらず、実印刷評価でも“A”であった。シリコーンを少量、感光性樹脂に内部添加し、インキの絡みが少し発生し実印刷評価でも良い結果を得られなかった感光性樹脂版が本発明の方法により性能が改善されることが確認できた。
参考例16〕
感光性樹脂版として市販の水現像固体版AQS(デュポン製)を使用し、画像が形成する露光量を選んで露光した以外は参考例4と同様の方法で目的の感光性樹脂版を得た。同じくAQSを比較例1と同様の方法で露光、洗浄、後露光した感光性樹脂版とインキ絡みの評価を比較したところ、変性シリコーンでの処理をすることでインキ絡みが発生しなくなる事を確認した。
参考例17〕
感光性樹脂版として市販の水現像固体版コスモライト(東洋紡製)を使用し、画像が形成する露光量を選んで露光した以外は参考例4と同様の方法で目的の感光性樹脂版を得た。同じくコスモライトを比較例1と同様の方法で露光、洗浄、後露光した感光性樹脂版とインキ絡みの評価を比較したところ、変性シリコーンでの処理をすることでインキ絡みが発生しなくなる事を確認した。
参考例18〕
液状の感光性樹脂APR、F−320(旭化成ケミカルズ製)をALF−213E露光機(旭化成ケミカルズ製)上でカバーフィルムCF−82(旭化成ケミカルズ製)とベースフィルムBF−4B8(旭化成ケミカルズ製)の間に2.84mmの厚みになるように挟み込み、ベースフィルム側から全面露光150mJを行った。その後、カバーフィルムの外側に配置したベタ画像、30、45、65lpi線数の網点を含むネガフィルムを介して画像露光500mJを行った。カバーフィルムを除去し未露光樹脂を回収した後、AL−400W洗浄機(旭化成ケミカルズ製)を用い、洗浄液W−10(旭化成ケミカルズ製)を用いて洗浄した。得られた感光性樹脂版をALF−200UP後露光機によりケミカルランプ、及び殺菌灯を用いて水中で後露光を行った。その後、エポキシ基で変性されたシリコーン化合物X−22−173DX(信越化学製)1重量%のエタノール溶液に10分浸漬後、再びALF−200UP後露光機を用いてケミカルランプ、及び殺菌灯によって水中で露光して、目的の感光性樹脂版を得た。変性シリコーン化合物の処理前と変性シリコーン化合物で処理し露光した後のインキ絡みの評価を比較したところ、変性シリコーンでの処理をすることでインキ絡みが発生しなくなる事を確認した。
本発明は、凸版印刷用水現像感光性樹脂版の印刷性能を向上させるとともに、印刷時のトラブルを減少させる製版方法として利用できる。

Claims (3)

  1. 変性シリコーン化合物を含有し、当該変性シリコーン化合物が、水酸基、カルビノール基、エポキシ基、(メタ)アクリル酸エステル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、アミノ基、からなる群から選ばれる1種以上の変性基を有するシリコーン化合物である、凸版印刷用水現像感光性樹脂版を製造するための現像液。ただし、当該変性シリコーン化合物がシリコーン系界面活性剤である場合を除く。
  2. 変性シリコーン化合物を含有し、当該変性シリコーン化合物が、カルビノール基、エポキシ基、(メタ)アクリル酸エステル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、アミノ基、からなる群から選ばれる1種以上の変性基を有するシリコーン化合物である、凸版印刷用水現像感光性樹脂版を製造するための現像液。
  3. (a)1つまたは2つ以上の界面活性剤1〜50重量部、(b)変性シリコーン化合物0.01〜20重量部、(c)アルキルグリコールエーテル0.2〜20重量部、及び(d)アルカリビルダー0.1〜10重量部を含有する、請求項1又は2に記載の現像液。
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