JP4357905B2 - 感光性樹脂版の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、感光性樹脂版の製造方法に関する。
一般的なフレキソ印刷用感光性樹脂版は、例えば特許文献1〜3に記載されるように、露光、現像および後露光工程を経て、製造される。
フレキソ印刷用感光性樹脂版を用いた印刷方式は、凹凸のある樹脂版の凸部の表面に、インキ供給ロール等で、インキを供給し、次に、樹脂版を被印刷体に接触させて、凸部表面のインキを被印刷体に転移させる方式である。
このようなフレキソ印刷においては、しばしば、長時間印刷中に、インキが樹脂版の凸部のショルダー部分に付着してきたり、凹部にインキが入り込んだりして(以下、版面汚れ)、本来の絵柄でない部分まで、印刷されることがある。
このような場合には、一旦、印刷を中止し、樹脂版面をアルコール等の洗浄液を用いて、布等で拭き取る必要があり、経済的に不利になる。
樹脂版の版面汚れに関しては、種々の方法が提案されている。
特許文献4には、版表面に有機フッ素化合物を、はけ塗りやスプレー方式で付着させる技術が記載されているが、後露光後に塗布するために、版面汚れ防止の効果が小さく、持続効果も低い。
特許文献5には、版表面にシリコン系化合物やフッ素系化合物の水系エマルジョンと水性樹脂の混合物を塗布する方法が提案されているが、浸透力の低い水系の溶液であることや後露光後に塗布するため、版面汚れ防止の効果は、必ずしも十分ではない。
特開平10−171111号公報 特開昭63−088555号公報 特開平05−134410号公報 特開昭51−40206号公報 特開2002−292985号公報
本発明における技術的課題は、版面のインキ汚れを長期間防止し、かつ印刷に悪影響がない感光性樹脂版の製造方法を提供するものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、後露光前に、樹脂版の版面に、(メタ)アクリル変性された反応性シリコーンオイル、およびフッ素系化合物からなる群より選ばれる化合物を含有した溶液を、付着させることで、課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、下記の通りである。
(1)露光工程、現像工程および後露光工程を含む感光性樹脂版の製造方法であって、後露光工程の前に、樹脂版の版面に、(メタ)アクリル変性された反応性シリコーンオイル、およびフッ素系化合物からなる群より選ばれる化合物を含有した溶液を、付着させることを特徴とする感光性樹脂版の製造方法。
(2)現像工程で用いられる現像液が、(メタ)アクリル変性された反応性シリコーンオイル、およびフッ素系化合物からなる群より選ばれる化合物を含有することを特徴とする(1)記載の感光性樹脂版の製造方法。
本発明の製造方法は、樹脂版の版面のインキ汚れを長期間防止し、かつ印刷に悪影響がない感光性樹脂版を提供することができる。
以下、本発明について、その好ましい形態を中心に、詳細に説明する。
本発明のフレキソ印刷用感光性樹脂版とは、露光、現像および後露光工程を経て製造されるもので、露光前の樹脂が、室温で流動性があったり、固体であっても構わない。感光性樹脂版として公知の樹脂のものを使用することができる。
本発明でいう、露光工程、現像工程は、通常の感光性樹脂版の製造方法で使用される公知の条件で実施することができる。
本発明では、(メタ)アクリル変性された反応性シリコーンオイル、およびフッ素系化合物からなる群より選ばれる化合物の溶液を、後露光前に、樹脂版面に付着させることが必須である。
本発明で用いられるシリコーンオイルは、反応性のものでも、非反応性のものでも構わない。反応性シリコーンオイルとしては、(メタ)アクリル変性物が挙げられる
発明で用いられるフッ素系化合物としては、ポリフッ化エチレン化合物、ポリ(エチレン−フッ化エチレン)化合物、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するアクリル系共重合体、パーフルオロアルキル基を有するウレタン系重合体、パーフルオロアルキル基を有するエステル系重合体あるいはフッ素系のモノマー等が挙げられる。

(メタ)アクリル変性された反応性シリコーンオイルやフッ素系化合物は、2種類以上を組合わせて用いても良い。
本発明の(メタ)アクリル変性された反応性シリコーンオイル、およびフッ素系化合物からなる群より選ばれる化合物は、溶媒に溶解して使用される。
溶媒は、樹脂版の表面に付着し、表面近傍に浸透するものが良い。樹脂版の表面に浸透する溶媒を選択した上で、後露光工程に処することで、一層、(メタ)アクリル変性された反応性シリコーンオイル、およびフッ素系化合物からなる群より選ばれる化合物が樹脂表面(近傍)に強固に固着されるので好ましい。特に、現像液に塩素系溶剤や炭化水素系溶剤が使用される溶剤現像型感光性樹脂版には、溶媒として、水よりも浸透力の高い溶剤を使用しなければならならい。
水よりも浸透力のある溶媒としては、具体的には、炭化水素、酢酸エステル、アルコール、ケトンあるいはグリコールエーテル等の溶剤を用いることができる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を組合わせて用いても良い。樹脂版の表面に浸透させるために、水に上記溶媒のパラフィンやグリコールエーテルを併用したり、浸透力の高いノニオン系界面活性剤を添加して用いることもできる。
必要に応じて、(メタ)アクリル変性された反応性シリコーンオイル、およびフッ素系化合物からなる群より選ばれる化合物を含有する溶液に、消泡剤、酸化防止剤あるいは防腐剤等の添加剤を加えても良い。
(メタ)アクリル変性された反応性シリコーンオイル、およびフッ素系化合物からなる群より選ばれる化合物の溶液を、樹脂版の版面に付着や塗布する工程を省略するため、(メタ)アクリル変性された反応性シリコーンオイル、およびフッ素系化合物からなる群より選ばれる化合物を、現像液に添加して使用するのが好ましい

現像液中に、(メタ)アクリル変性された反応性シリコーンオイル、およびフッ素系化合物からなる群より選ばれる化合物を添加する場合の濃度は、好ましくは、0.01wt%〜5wt%である。
現像液中に(メタ)アクリル変性された反応性シリコーンオイル、およびフッ素系化合物からなる群より選ばれる化合物を添加しない場合の樹脂版の版面への付着方法としては、スプレーによる溶液塗布、はけ塗り、浸漬、布やスポンジで溶液を塗る方法、現像後リンス液に添加し版面に滴下する等があげられる。これらは、後露光前であれば、現像直後に実施しても良いし、現像し乾燥後に実施してもよい。
現像液中に添加せず、版面に付着させる場合の濃度は、付着時間が現像液の場合より短いので、濃度を高くした方がよく、0.05wt%から50wt%が好ましい。
本発明の後露光とは、少なくとも波長300nm以下の活性光線を、現像後の樹脂版の版面に露光処理することをいう。必要に応じて、300nm以上の活性光線を併用しても構わない。これらの波長の異なる活性光線を併用する場合は、同時に露光処理しても、別々に露光処理しても構わない。
以下、実施例、及び比較例により本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)感光性樹脂版の製版
(1−1)露光および現像
溶剤現像型の未露光の感光性樹脂版AFP−SH(旭化成製、商品名、厚み1.14mm)のカバーシートをはぎとり、感光性樹脂層の上にある保護膜層の上にネガフィルムを密着させ、AFP−1500露光機(旭化成製、商品名)上で370nmに中心波長を有する紫外線蛍光灯を用いて、まず支持体側から800mJ/cm2の全面露光をおこなった後、引き続きネガフィルムを通して5000mJ/cm2の画像露光をおこなった。このときの露光強度をオ−ク製作所製のUV照度計MO−2型機でUV−35フィルタ−を用いて、バック露光を行なう側である下側ランプからの紫外線をガラス板上で測定した強度は4.0mW/cm2、レリーフ露光側である上側ランプからの紫外線を測定した強度は7.8mW/cm2であった。
次に、ソルビット(ポリファイブロン社製、商品名)を現像液として、クイックライン912現像機(旭化成製、商品名)を用いて、液温30℃で現像を行った。
(1−2)後露光
現像直後は、版が現像液に膨潤しているため、後露光の前に、60℃で1時間乾燥後に、254nmに中心波長をもつ殺菌灯を用いて版表面全体に、2000mJ/cm2、続いて紫外線蛍光灯を用いて1000mJ/cm2の後露光を行なってフレキソ樹脂版を得た。
なおここで殺菌灯による後露光量は、MO−2型機のUV−25フィルタ−を用いて測定された照度から算出したものである。
(1−3)シリコーンオイルやフッ素系化合物の付着方法
表1〜4に記載の方法で、反応性シリコーンオイル、非反応性シリコーンオイルまたはフッ素系化合物を含有する溶液を版表面に付着させた。
すなわち、実施例1〜5、比較例2においてはメタクリル変性された反応性シリコーンオイルX−22−164A(信越化学製、商品名)を用い、表1に記載の条件で行い、参考および参考比較例においては高級脂肪酸エステル変性された非反応性シリコーンオイル(信越化学工業製、商品名)を用い、表2の条件で行い、実施例10および比較例においてはアサヒガードAG−5850(旭硝子製、商品名、フッ素系化合物、実施例1113、参考例6および比較例においては表4に記載の条件で行った。
なお、フッ素系化合物のアサヒガードAG−5850(旭硝子製、商品名)は、製品安全データシートによると、ポリフッ化エチレンおよびパーフルオロアルキル基を有するアクリル系共重合体をミネラルスプリットで希釈したフッ素系化合物が43wt%の溶液である。
(2)評価方法
(a)インキのカラミの防止効果
(a−1)印刷条件
水性インキには、HW571AQP(東洋インキ製、商品名)、UVインキには、FDFL39シアン(東洋インキ製、商品名)を使用した。被印刷体には、コート紙パールコート(王子製紙製、商品名)を使用した。アニロックスロールは、600lpi(セル容積3.8cm3/m2)、クッションテープは、3M1020(3M製、商品名)を使用し、印刷速度は、100m/分で印刷を実施した。
(a−2)インキのカラミ評価方法
製版後のフレキソ樹脂版を用い、(a−1)の条件で、500m印刷後に、樹脂版の網点部の3%ハイライトと30%ミッドゾーンの凹部のインキの溜まりの程度を、ルーペで観察し、凹部の谷までインクが流れたものを×、凸部のショルダー部の上層にのみインキが付着している場合を○、その中間を△とした。インキが凹部の谷に到達する時間が長い方が良いので、○を合格とした。
(b)インキのカラミ防止の持続効果
インキのカラミの持続効果を模擬的に評価するため、(a−2)で得られた500m印刷後の樹脂版の表面を、イソプロピルアルコールで布拭きし、インキを除去した後に、ぬれ張力試験用混合液(和光純薬工業株式会社製、商品名)を用いて、樹脂版の版面の表面張力を測定し、34mN/m以下であれば、シリコン系化合物やフッ素系化合物が付着していると判断し、○とし、34mN/mより高ければ持続効果が低いと判断し、×とした。
(c)総合評価
評価(a)および評価(b)が共に○で、且つ印刷において、印刷物の100%画像のベタ部に、インキのはじきが見られない場合を合格とし、○とした。
実施例1〜5、比較例1および2で得られた水性インキ使用における評価試験結果の一覧を表1に記載する。樹脂版の版面には、付着および塗布ムラは無かった。また、得られた印刷物のベタ部(100%画像部)に、インキのはじきも無く、きれいに印刷できた。表1に示す通り、後露光前に、シリコン系化合物の溶液を、版面に付着させることで、インキのカラミを抑えられ、且つ持続効果が得られた。
参考、比較例1および参考比較例1で得られた水性インキにおける評価結果を表2に記載する。樹脂版の版面には、付着および塗布ムラは無かった。また、得られた印刷物のベタ部(100%画像部)に、インキのはじきも無く、きれいに印刷できた。表2に示す通り、後露光前に、シリコン系化合物の溶液を、版面に付着させることで、インキのカラミを抑えられ、且つ持続効果が得られた。
実施例10、比較例1およびで得られた水性インキにおける結果を表3に記載する。樹脂版の版面には、付着および塗布ムラは無かった。また、得られた印刷物のベタ部(100%画像部)に、インキのはじきも無く、きれいに印刷できた。表3に示す通り、後露光前に、フッ素系化合物の溶液を、版面に付着させることで、インキのカラミを抑えられ、且つ持続効果が得られた。
実施例1113、参考例6および比較例で得られたUVインキにおける結果を表4に記載する。表4に示す通り、UVインキにおいても、後露光前に、フッ素系化合物やシリコン系化合物の溶液を版面に付着させることで、インキカラミを抑えられ、且つ持続効果が得られた。また、得られた印刷物のベタ部(100%画像部)に、インキのはじきも無く、きれいに印刷できた。

本発明は、印刷中の版面の汚れ防止に好適な感光性樹脂印刷版の製造方法として利用することができる。

Claims (2)

  1. 露光工程、現像工程および後露光工程を含む感光性樹脂版の製造方法であって、後露光工程の前に、樹脂版の版面に、(メタ)アクリル変性された反応性シリコーンオイル、およびフッ素系化合物からなる群より選ばれる化合物を含有した溶液を、付着させることを特徴とする感光性樹脂版の製造方法。
  2. 現像工程で用いられる現像液が、(メタ)アクリル変性された反応性シリコーンオイル、およびフッ素系化合物からなる群より選ばれる化合物を含有することを特徴とする請求項1記載の感光性樹脂版の製造方法。
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