JP4547830B2 - 電子写真感光体及びその製造方法、並びに電子写真感光体を用いた電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、レーザープリンター等の電子写真装置に用いられる電子写真感光体及びその製造方法、並びに電子写真感光体を用いた電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真感光体は、高速でかつ高印字の品質が得られることから、複写機およびレーザープリンター等の電子写真装置に使用されている。現在、電子写真感光体としては、有機の光導電性材料を用いた有機感光体が主流となっており、感光体の構成も、電荷移動型錯体構造や、感光層を電荷発生層と電荷輸送層とに分離した機能分離型の感光体へと変遷しており、特に機能分離型感光体が注目されている。
【0003】
この機能分離型感光体は、一般的に、導電性基材の上に中間層、電荷発生層および電荷輸送層を有してなるものである。ここで、感光体の繰り返し安定性や環境安定性の改善に関しては、電荷発生層や電荷輸送層のみならず中間層に依存する部分も多く、繰返し使用による電荷蓄積性の少ない中間層が要求されている。
【0004】
また、画質欠陥の防止に関しても中間層の役割が大きく、導電性基材の欠陥や汚れ、あるいは電荷発生層等の塗膜欠陥や塗膜むらに起因する画質欠陥を抑制するために中間層は欠かせない存在となっている。
【0005】
特に、近年、電子写真装置においては、コロトロン等の非接触帯電方式の帯電装置に代わり、オゾン発生が少ない接触帯電方式の帯電装置がよく用いられるようになっているが、この場合、感光体の局所的な劣化部に局所的な高電場が印加されるとその劣化部に電気的なピンホールが生じやすく、これにより画質欠陥が生じやすい。このため、感光体の不均一状態に起因する欠陥を防止する技術が特に強く求められるようになってきており、そのために中間層の改良が求められている。
【0006】
そこで、導電性基材の欠陥を隠蔽し且つ電気特性の安定化を図るために、導電性微粉末を含有する中間層を導電性基材上に形成する方法がこれまで講じられている。
【0007】
この方法には、2種類の方法が知られており、第1の方法はアルミニウム基材上に導電粉を分散させた第1の中間層を形成し、さらにその上に第2の中間層を形成する方法である。即ち中間層を2層で構成する方法である。この方法によれば、第1の中間層が基材隠蔽を行うとともに抵抗調整を行い、第2の中間層が電荷のブロッキング機能を有する。
【0008】
第2の方法は、導電粉を分散させた中間層を基材上に塗布し、この中間層をブロッキング機能と抵抗調整機能を有する層として使用する方法である。即ち中間層を1層で構成する方法である。この方法によれば、第1の方法に比べて積層数が1層少なくてすむため感光体の製造プロセスを簡略化することができ、コストも低減できる。
【0009】
このような中間層を有する電子写真感光体の製造方法として、従来、特開平3−136062号公報に開示されるものが知られている。同公報には、中間層としての下引層が1層からなる電子写真感光体の製造方法が次のように開示されている。即ち同公報に記載の下引層の製造方法は、先ず変性酸化インジウムと、ブチラール樹脂と、シクロヘキサン溶液とを混合し、イソシアネート系硬化剤のメチルエチルケトン溶液を加えて下引層塗工液を調製し、この下引層塗工液を、アルミニウムドラム上にスプレー塗布して乾燥硬化させ、下引層を形成する方法が開示されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述した公報に記載の製造方法により得られた電子写真感光体は以下に示す課題を有する。
【0011】
即ち、上記電子写真感光体においては、繰り返し使用した時に黒点が発生し、画像欠陥を生じる場合があった。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、繰り返し使用しても黒点の発生を十分に防止でき、画質の劣化を十分に防止できる電子写真感光体及びその製造方法、並びに電子写真感光体を用いた電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題について検討した結果、変性酸化インジウム等の金属酸化物粒子とブチラール樹脂とをいきなり混合すると、変性酸化インジウムが活性を有しているためにブチラール樹脂等が変質し、これにより中間層にピンホールが発生して電気的特性が悪化し、電子写真感光体を繰り返し使用する場合に黒点が発生するものと考えた。
【0014】
そこで、本発明者らは、更に鋭意研究を進めた結果、金属酸化物粒子を、イソシアネート系硬化剤等の樹脂前駆体と混合した後に、ブチラール樹脂等と混合することにより上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち本発明は、導電性基材と感光層との間に中間層を備える電子写真感光体において、前記中間層が、金属酸化物微粒子を、樹脂前駆体であるブロック化イソシアネート系化合物と混合した後、バインダ樹脂であるポリビニルブチラール樹脂中に分散させて得られる中間層形成用塗布液を用いて形成されるものであることを特徴とする。また、本発明は、導電性基材と感光層との間に中間層を備える電子写真感光体において、前記中間層が、金属酸化物微粒子を、前記金属酸化物微粒子に対して不活性な不活性樹脂であるメラミン樹脂又はフェノール樹脂と混合した後、ポリビニルブチラール樹脂中に分散させて得られる中間層形成用塗布液を用いて形成されるものであることを特徴とする電子写真感光体である。
【0016】
これらの発明によれば、バインダ樹脂が金属酸化物微粒子によって変質させられる事態が十分に防止され、均質な状態となっている。従って、接触型帯電装置を有する電子写真装置において、繰り返し使用しても、ピンホールの発生が十分に防止され、黒点の発生が十分に防止される。
【0017】
また、本発明は、導電性基材と感光層との間に中間層を備える電子写真感光体の製造方法において、金属酸化物微粒子を、樹脂前駆体であるブロック化イソシアネート系化合物と混合した後、バインダ樹脂であるポリビニルブチラール樹脂中に分散させて中間層形成用塗布液を調製し、この中間層形成用塗布液を用いて、前記導電性基材上に前記中間層を形成する工程と、前記中間層の上に感光層を形成する工程とを含むことを特徴とする電子写真感光体の製造方法である。また、本発明は、導電性基材と感光層との間に中間層を備える電子写真感光体の製造方法において、金属酸化物微粒子を、前記金属酸化物微粒子に対して不活性な不活性樹脂であるメラミン樹脂又はフェノール樹脂と混合した後、ポリビニルブチラール樹脂中に分散させて中間層形成用塗布液を調製し、この中間層形成用塗布液を用いて、前記導電性基材上に前記中間層を形成する工程と、前記中間層の上に感光層を形成する工程とを含むことを特徴とする電子写真感光体の製造方法である。
【0018】
これらの製造方法によれば、バインダ樹脂が金属酸化物微粒子によって変質させられる事態が十分に防止され、均質な状態となる。従って、得られる電子写真感光体の中間層においては、接触型帯電装置を有する電子写真装置において電子写真感光体が繰り返し使用されてもピンホールの発生が十分に防止され、黒点の発生が十分に防止される。また、この製造方法によれば、中間層形成用塗布液において、金属酸化物微粒子の分散状態が良好となる。このため、中間層形成用塗布液の保存安定性が飛躍的に向上すると共に、画像欠陥の発生が十分に防止され且つ良好な抵抗値を持つ電子写真感光体が得られる。
【0019】
更に本発明は、上記電子写真感光体と、前記電子写真感光体の表面に接触して前記表面を帯電させる接触型帯電装置とを備えており、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とする電子写真プロセスカートリッジである。また、本発明は、上記電子写真感光体と、前記電子写真感光体の表面に接触して前記表面を帯電させる接触型帯電装置と、前記電子写真感光体の表面を露光して静電潜像を形成する露光装置と、前記静電潜像を現像する現像装置と、現像された像を被転写媒体に転写する転写装置とを備えることを特徴とする電子写真装置である。
【0020】
一般に、帯電装置として接触型帯電装置を用いる場合、感光体に局所的な劣化部があると、局所的な高電場が印加されることによりその劣化部に電気的なピンホールが生じやすく、これにより画質欠陥が生じやすい。しかし、本発明に係る電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真装置によれば、電子写真感光体の中間層においてバインダ樹脂が均質な状態となるため、電子写真感光体を繰り返し使用してもピンホールの発生が十分に防止され、黒点の発生が十分に防止される。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0022】
(電子写真感光体)
先ず本発明の電子写真感光体について説明する。
本発明の電子写真感光体は、導電性基材と感光層との間に中間層を有している。
【0023】
(中間層)
上記中間層は、中間層形成用塗布液を導電性基材上に塗布して加熱させることにより形成することができる。
【0024】
上記中間層形成用塗布液は、次のようにして調製する。即ち先ず金属酸化物微粒子を樹脂前駆体と混合した後、バインダ樹脂中に分散させることにより調製する。
【0025】
上記金属酸化物微粒子としては、例えば酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化銅等の導電性物質が用いられる。
【0026】
上記金属酸化物微粒子としては、粒径が100nm以下のものが好ましく用いられる。ここでいう粒径とは平均1次粒径を意味する。粒径が100nmを超えると、残留電位が高くなり、良好な電気特性が得られなくなる傾向がある。
【0027】
中間層は、耐リーク性を得るために適切な抵抗を得ることが必要であり、そのため、金属酸化物微粒子は、102〜1011Ω・cm程度の粉体抵抗を有することが好ましく、104〜1010Ω・cm程度の粉体抵抗を有することがより好ましい。金属酸化物微粒子の粉体抵抗が102Ω・cm未満では、十分なリーク耐性が得られない傾向があり、粉体抵抗が1011Ω・cmを超えると、残留電位の上昇を引き起こす傾向がある。
【0028】
金属酸化物微粒子としては、残留電位の抑制の観点から、特に上記範囲の粉体抵抗を有する酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛等が好ましい。
【0029】
上記金属酸化物微粒子は、中間層中に、好ましくは10〜95重量%、より好ましくは25〜85重量%の範囲で含有される。含有率が10重量%未満では、得られる中間層の抵抗が高くなりすぎて、良好な電気特性を得ることができない傾向があり、95重量%を超えると、金属酸化物微粒子の分散性が悪くなったり、中間層の強度が不十分となったり、良好な画質特性が得られなくなったりする傾向あがある。
【0030】
一方、樹脂前駆体は、バインダ樹脂中で良好な分散性を示し且つ上記金属酸化物微粒子に対して不活性なもので構成される。このような樹脂前駆体としては、例えばイソシアネート系化合物、エポキシ基含有プレポリマー、フェノール系化合物、メチロール系化合物、メラミン系化合物、不飽和ポリエステル、フタル酸ジアリル、ビスマレイミド、イミド基含有プレポリマー等が挙げられ、高分散性を有することから、イソシアネート系化合物が好ましく、イソシアネート系化合物の中でも、ブロック化イソシアネート系化合物が特に好ましい。本発明では、樹脂前駆体としてブロック化イソシアネート系化合物を用いる。この場合、ゲル化が十分に抑制されるため、中間層形成用塗布液の保存安定性が向上し、製造コストの低減が可能となる。
【0031】
上記樹脂前駆体の添加量は、金属酸化物微粒子100重量部に対して好ましくは5〜30重量部、より好ましくは10〜25重量部である。樹脂前駆体の添加量が5重量部未満では、後述のバインダ樹脂が金属酸化物微粒子によって変質させられやすくなると共に、金属酸化物微粒子の分散性が悪くなる傾向があり、30重量部を超えると、中間層の強度が低下する傾向がある。
【0032】
上記金属酸化物微粒子と樹脂前駆体を混合又は分散するに際しては、必要に応じて溶剤を添加する。溶剤としては樹脂前駆体を溶解させるものであればよく、例えば炭化水素系溶剤、ハロゲン化炭化水素系溶剤、メタノール、n−ブチルアルコール、メトキシプロパノール等のアルコール系溶剤、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、芳香族系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤等の公知のいかなる溶剤も使用することできる。これらは単独で使用してもよいが、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0033】
樹脂前駆体と金属酸化物微粒子の混合又は分散は、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどの公知の方法を用いて行うことができる。
【0034】
混合又は分散を行う温度は、通常は0〜40℃である。溶剤を使用して混合又は分散を行う場合には、その温度は通常、使用溶剤の沸点以下で行われる。この場合、温度の調整は、分散時の温度上昇を防止するという理由から、流水冷却により行うことが好ましい。
【0035】
バインダ樹脂としては、上記樹脂前駆体を分散させることが可能なものとして、例えばポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物などが挙げられるが、本発明においてはポリビニルブチラール樹脂が用いられる。
【0036】
なお、中間層形成用塗布液には、モアレ模様の発生防止の観点からは、樹脂粒子を添加することが好ましい。樹脂粒子としては、例えばシリコーン樹脂、PMMA樹脂等が用いられ、その粒子径は1〜10μmが好ましく、2〜7μmがより好ましい。
【0037】
また、中間層形成用塗布液には、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加物を添加してもよい。
【0038】
かかる添加物としては、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物;2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾ−ル、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)1,3,4オキサジアゾールなどのオキサジアゾール系化合物;キサントン系化合物;チオフェン化合物;3,3',5,5'テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物などの電子輸送性物質、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、シランカップリング剤、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物等の公知の材料が用いられる。
【0039】
上記シランカップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0040】
上記ジルコニウムキレート化合物の例としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシドなどが挙げられる。
【0041】
上記チタニウムキレート化合物の例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレートなどが挙げられる。
【0042】
上記アルミニウムキレート化合物の例としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
【0043】
これらの化合物は、単独であるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることができる。
【0044】
さらに中間層形成用塗布液には、酸化防止剤を添加してもよい。酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びそれらの誘導体、有機硫黄系酸化防止剤、有機燐系酸化防止剤などが挙げられる。
【0045】
上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチル フェノール、スチレン化フェノール、n−オクタデシル−3−(3',5'−ジ−t−ブチル 4'−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、2,2'−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチル フェノール)、2−t−ブチル−6−(3'−t−ブチル−5'−メチル−2'−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニル アクリレート、4,4'−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチル−フェノール)、4,4'−チオ−ビス−(3−メチル 6−t−ブチル フェノール)、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチル ベンジル)イソシアヌレート、テトラキス−[メチレン−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート]−メタン、3,9−ビス[2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチル フェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチル エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。
【0046】
上記ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイミル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,3,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、N,N'−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6,−ペンタメチル−4ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物などが挙げられる。
【0047】
上記有機硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリル−3,3'−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3'−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3'−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)、ジトリデシル−3,3'−チオジプロピオネート、2−メルカプト ベンズイミダゾールなどが挙げられる。
【0048】
上記有機燐系酸化防止剤としては、トリスノニルフェニル フォスフィート、トリフェニル フォスフィート、トリス(2,4−ジ−t−ブチル フェニル)−フォスフィートなどが挙げられる。
【0049】
上記有機硫黄系および有機燐系酸化防止剤は2次酸化防止剤と言われ、上記フェノール系あるいはアミン系などの1次酸化防止剤と併用すると、これらの相乗効果により、電子写真感光体の劣化を一層防止することができる。
【0050】
こうして中間層形成用塗布液が得られたならば、導電性基材上に中間層形成用塗布液を塗布し加熱して樹脂前駆体を硬化させる。
【0051】
中間層形成用塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。なお、1回の塗布により必要な厚さが得られない場合、複数回重ね塗布することにより必要な厚さを得ることができる。複数回の重ね塗布を行う場合、加熱処理は塗布の度に行っても良いし、複数回重ね塗布した後に一括して行っても良い。
【0052】
硬化温度は、樹脂前駆体の種類に応じて任意に設定できるが、通常は100℃以上、より好ましくは150℃以上に設定される。硬化時間は、樹脂前駆体の種類に応じて任意に設定できるが、30分〜5時間が好ましい。
【0053】
こうして導電性基材上に中間層が得られるが、中間層は、35〜200のビッカース強度を有することが好ましい。ビッカース強度が35未満では、十分な耐リーク性が得られなくなる傾向があり、200を超えると、中間層がもろくなる傾向がある。
【0054】
さらに、中間層の厚さについては、厚さが3μm未満では十分なリーク耐性を有しない傾向がある。一方、厚さが30μmを超えると、外部からの貫入物質の効果を阻止しやすくなるため耐リーク性は向上するものの、成膜が困難となり、また残留電荷の増加による画質低下を生じやすくなる傾向がある。従って、中間層の膜厚は3〜30μmの範囲に設定されることが好ましい。
【0055】
また、中間層の抵抗は104〜1010Ω・cmであることが好ましい。抵抗値が104Ω・cm未満では、十分なリーク耐性が得られない傾向があり、1010Ω・cmを超えると、高すぎる場合は残留電位の上昇を引き起こす傾向がある。抵抗値は、金属酸化物微粒子自体の抵抗値と、この抵抗値に応じて結着樹脂中への添加量を制御すること、金属酸化物微粒子の結着樹脂中への分散性により制御することができる。
【0056】
さらに、電気特性向上、画質向上、画質維持性向上、感光層の接着性向上などの観点からは、中間層は、上記中間層と感光層との間に、感光層からの電荷をブロッキングする機能を有する第2の中間層を有していてもよい。
【0057】
第2の中間層は、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物のほかに、シリコン、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン原子などを含有する有機金属化合物などで構成される。これらの化合物は単独であるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることができる。
【0058】
中でも、シリコン又はジルコニウムを含有する有機金属化合物は残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ないなど性能上優れている。
【0059】
シリコンを含有する有機金属化合物の例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらの中でも特に、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤が好ましい。
【0060】
ジルコニウムを含有する有機金属化合物の例としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシドなどが挙げられる。
【0061】
チタニウム原子を含有する有機金属化合物の例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレートなどが挙げられる。
【0062】
アルミニウム原子を含有する有機金属化合物の例としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
【0063】
第2の中間層は、上層の濡れ性改善の他に、電気的なブロッキングの役割も果たすが、厚さが大きすぎる場合には電気的な障壁が強くなりすぎて感度の低下や繰り返しによる電位の上昇を引き起こす傾向があり、小さすぎると、十分なブロッキング性が得られなくなり黒点発生を防ぐことができなくなる傾向がある。従って、第2の中間層を形成する場合には、その厚さは0.1〜3μmの範囲に設定されることが好ましい。
【0064】
以上、中間層形成用塗布液を、樹脂前駆体を用いて調製した場合について説明したが、樹脂前駆体に代えて、金属酸化物微粒子に対して不活性であって上記バインダ樹脂と異なる不活性樹脂が用いられてもよい。
【0065】
このような不活性樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂が用いられる。
【0066】
なお、金属酸化物微粒子および不活性樹脂の混合又は分散に際して使用する溶剤としては、不活性樹脂を溶解できるものであれば特に制限されず、金属酸化物微粒子と樹脂前駆体との混合又は分散に使用する溶剤と同じ溶剤が用いられる。
【0067】
中間層形成用塗布液の調製は、樹脂前駆体を不活性樹脂に代えた以外は、樹脂前駆体を用いる場合と同様にして行う。
【0068】
(電子写真感光体の層構成)
次に、本発明の電子写真感光体の具体的な層構成について説明する。図1〜6は、電子写真感光体の種々の層構成を示す断面図である。図1に示す電子写真感光体は、導電性基材1と、導電性基材1上に設けられる中間層2と、中間層2の上に設けられる感光層3とで構成されている。図2に示す電子写真感光体は、図1の感光層3が電荷発生層31と電荷輸送層32の2層で構成されているもの、図3に示す電子写真感光体は、図1の電子写真感光体の感光層3の上に更に保護層5を備えたもの、図4に示す電子写真感光体は、図2の電子写真感光体の電荷輸送層32の上に更に保護層5を備えたもの、図5に示す電子写真感光体は、図1の電子写真感光体の中間層2と感光層3との間に第2の中間層4を備えたもの、図6に示す電子写真感光体は、図2の電子写真感光体の中間層2と電荷発生層31との間に第2の中間層4を備えたものである。本発明の電子写真感光体は、上記のいかなる層構成であってもよい。
【0069】
以下、電子写真感光体のうち導電性基材1、電荷発生層31、電荷輸送層32、保護層5、感光層3について説明する。
【0070】
(導電性基材)
導電性基材1としては、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス、亜鉛、ニッケルなどの金属ドラム、又はシート、紙、プラスチック若しくはガラス上にアルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム、チタン、ニッケル−クロム合金、ステンレス鋼、銅−インジウム合金等の金属若しくは酸化インジウム、酸化錫などの導電性金属化合物を蒸着したもの、シート、紙、プラスチック若しくはガラス上に金属箔をラミネートしたもの、又はカーボンブラック、酸化インジウム、酸化錫、酸化アンチモン粉、金属粉、沃化銅等を結着樹脂に分散し、これをシート、紙、プラスチック若しくはガラス上に塗布することによって導電処理したものなどが用いられる。
【0071】
導電性基材1の形状はドラム状に限られず、シート状、プレート状としてもよい。
【0072】
導電性基材1を金属ドラムとした場合、金属ドラムは素管のままであってもよいし、事前に鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニングなどの表面処理が行われていてもよい。但し、導電性基材1に表面処理したものを用いる方が好ましい。この場合、基材表面が粗面化され、レーザービームのような可干渉光源を用いた場合に感光層内に発生しうる干渉光による木目状の濃度斑(モアレ模様)を防止することが可能となる。
【0073】
(電荷発生層)
電荷発生層31は通常、有機溶剤中に電荷発生物質及び結着樹脂を分散させて電荷発生層形成用塗布液を塗布し乾燥することにより形成される。
【0074】
上記電荷発生物質としては、公知の電荷発生物質ならいかなるものでも使用できるが、特に優れた電荷発生機能を有することから、フタロシアニン系顔料が好ましく用いられる。この場合、特に高感度で、繰り返し安定性の優れる電子写真感光体が得られる。また、フタロシアニン系顔料は一般に数種の結晶型を有しており、目的にあった感度が得られる顔料であるならば、いずれの結晶型でも用いることができる。特に好ましく用いられる電荷発生物質の具体例としては、下記構造式(1)〜(9)で表される化合物が挙げられる。
【0075】
【化1】
【0076】
【化2】
【0077】
上記電荷発生物質は、公知の方法で製造される顔料結晶を、自動乳鉢、遊星ミル、振動ミル、CFミル、ローラーミル、サンドミル、ニーダー等で機械的に乾式粉砕するか、乾式粉砕後、溶剤と共にボールミル、乳鉢、サンドミル、ニーダー等を用いて湿式粉砕処理を行うことによって製造することができる。上記の処理において使用される溶剤は、芳香族類(トルエン、クロロベンゼン等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等)、脂肪族アルコール類(メタノール、エタノール、ブタノール等)、脂肪族多価アルコール類(エチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等)、芳香族アルコール類(ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等)、エステル類(酢酸エステル、酢酸ブチル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、ジメチルスルホキシド、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、さらにはこれら2種以上の混合溶剤、水とこれら有機溶剤の混合溶剤があげられる。使用される溶剤の量は、顔料結晶100重量部に対して、1〜200重量部、好ましくは10〜100重量部の範囲で用いる。処理温度は、0℃〜溶剤の沸点、好ましくは10〜60℃の範囲で行う。また、粉砕の際に食塩、ぼう硝等の磨砕助剤を用いることもできる。磨砕助剤は顔料の重量の0.5〜20倍、好ましくは1〜10倍用いればよい。また、公知の方法で製造される顔料結晶を、アシッドペースティング、あるいはアシッドペースティングと前述したような乾式粉砕あるいは湿式粉砕を組み合わせることにより、結晶制御することもできる。アシッドペースティングに用いる酸としては、硫酸が好ましく、濃度70〜100%、好ましくは95〜100%のものが使用され、溶解温度は、−20〜100℃好ましくは0〜60℃の範囲に設定される。濃硫酸の量は、顔料結晶の重量の1〜100倍、好ましくは3〜50倍の範囲に設定される。析出させる溶剤としては、水、あるいは水と有機溶剤の混合溶剤が任意の量で用いられる。析出させる温度については特に制限はないが、発熱を防ぐ観点からは、氷等で冷却することが好ましい。
【0078】
上記結着樹脂としては、絶縁性樹脂、又は、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシランなどの有機光導電性ポリマーから選択することができる。好ましい結着樹脂としては、絶縁性樹脂のうち、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノールAとフタル酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中では特にポリビニルアセタール樹脂が好ましく用いられる。これらの結着樹脂は単独で又は2種以上混合して用いることができる。
【0079】
また、上記電荷発生物質と上記結着樹脂との配合比(重量比)は、10:1〜1:10の範囲が好ましい。
【0080】
電荷発生層形成用分散液を調製するための溶媒としては、公知の有機溶剤、例えばアルコール系、芳香族系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、ケトンアルコール系、エーテル系、エステル系等から任意に選択することができる。例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を用いることができる。
【0081】
これら溶剤は単独で又は2種以上混合して用いることができる。混合する際、使用される溶剤としては、バインダー樹脂を溶かすことができる溶剤であれば、いかなるものでも使用できる。
【0082】
また、電荷発生層形成用分散液には、塗膜の平滑性向上のためのレベリング剤としてシリコーンオイルを微量添加することもできる。
【0083】
電荷発生物質を結着樹脂中に分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどの方法を用いることができる。このとき、金属酸化物微粒子を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、さらに好ましくは0.15μm以下の粒子サイズにすることが有効である。
【0084】
上記電荷発生層形成用分散液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0085】
さらに、この電荷発生層用塗布液には、電気特性向上、画質向上などのために種々の添加剤を添加することもできる。かかる添加物としては、中間層に用いる添加物と同じものが用いられる。
【0086】
なお、電荷発生層には、電子写真装置中で発生するオゾンや酸化性ガス、あるいは光や熱による電荷発生層の劣化を防止する目的で、電荷発生層中に酸化防止剤、光安定剤などの添加剤を添加することができる。
【0087】
上記酸化防止剤としては、中間層に用いる酸化剤と同じものを用いることができる。
【0088】
上記光安定剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ジチオカルバメート系、テトラメチルピペリジン系などの誘導体が挙げられる。
【0089】
上記ベンゾフェノン系光安定剤としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシ ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシ ベンゾフェノン、2,2'−ジ−ヒドロキシ−4−メトキシ ベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0090】
上記ベンゾトリアゾール系光安定剤としては、2−(−2'−ヒドロキシ−5'メチル フェニル−)−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3'−(3'',4'',5'',6''−テトラ−ヒドロフタルイミド−メチル)−5'−メチルフェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(−2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル 5'−メチルフェニル−)−5−クロロ ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル 5'−メチルフェニル−)−5−クロロ ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−t−ブチルフェニル−)−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−t−オクチル フェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ 3',5'−ジ−t−アミル フェニル−)−ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0091】
その他の光安定剤としては、2,4,ジ−t−ブチルフェニル 3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシベンゾエート、ニッケル ジブチル−ジチオカルバメートなどがある。
【0092】
また、電荷発生層には、感度の向上、残留電位の低減、繰り返し使用時の疲労低減等を目的として、少なくとも1種の電子受容性物質を含有せしめることができる。電荷発生層に使用可能な電子受容性物質としては、例えば無水琥珀酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸などが挙げられる。これらのうち、フルオレノン系、キノン系や、Cl,CN,NO2等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が特によい。
【0093】
なお、電荷発生層は、電荷発生物質を真空蒸着することにより、上記のように有機溶剤を用いることなく形成することも可能である。
【0094】
(電荷輸送層)
電荷輸送層に含有される電荷輸送物質としては、公知の電荷輸送物質のうちいかなるものでも使用可能であるが、下記に示すものが例示できる。
【0095】
即ち、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどのオキサジアゾール誘導体;1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリンなどのピラゾリン誘導体;トリフェニルアミン、トリ(P−メチル)フェニルアミン、N,N’−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、ジベンジルアニリン、9,9−ジメチル−N,N’−ジ(p−トリル)フルオレノン−2−アミンなどの芳香族第3級アミノ化合物;N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミンなどの芳香族第3級ジアミノ化合物;3−(4’ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4’−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジンなどの1,2,4−トリアジン誘導体;4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、4−ジフェニルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、[p−(ジエチルアミノ)フェニル](1−ナフチル)フェニルヒドラゾンなどのヒドラゾン誘導体;2−フェニル−4−スチリル−キナゾリンなどのキナゾリン誘導体;6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)−ベンゾフランなどのベンゾフラン誘導体;p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N’−ジフェニルアニリンなどのα−スチルベン誘導体;エナミン誘導体;N−エチルカルバゾールなどのカルバゾール誘導体;ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体などの正孔輸送物質、又はクロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物;2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)1,3,4オキサジアゾールなどのオキサジアゾール系化合物;キサントン系化合物;チオフェン化合物;3,3',5,5'テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物などの電子輸送物質、又は以上に示した化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体などが挙げられる。これらの電荷輸送物質は、1種又は2種以上を組み合せて使用できる。
【0096】
電荷輸送層の結着樹脂は公知の結着樹脂のうちいかなるものでも使用することができるが、電気絶縁性のフィルム形成可能な樹脂が好ましい。このような電気絶縁性のフィルム形成可能な樹脂としては、例えばポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコン樹脂。シリコン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−カルバゾール、ポリビニルブチラール、ポリビニルフォルマール、ポリスルホン、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、フェノール樹脂、ポリアミド、カルボキシ−メチルセルロース、塩化ビニリデン系ポリマーワックス、ポリウレタン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの結着樹脂は、単独で又は2種類以上混合して用いられるが、これらのうち特に、電荷輸送物質との相溶性、溶剤への溶解性、強度の点で優れていることから、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂が好ましく用いられる。
【0097】
結着樹脂と電荷輸送物質との配合比(重量比)は、必要とする感度に応じて任意に設定することができるが、配合比によっては電気特性が低下したり、膜強度が低下したりするので、注意する必要がある。
【0098】
電荷輸送層は、電荷輸送物質、結着樹脂を有機溶剤中に分散させて電荷輸送層形成用塗布液を調整し、この電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層等に塗布し乾燥させることにより得ることができる。
【0099】
上記有機溶剤としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が用いられ、これらは単独であるいは2種以上混合して用いることができる。
【0100】
上記塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0101】
電荷輸送層の厚さは通常5〜50μm、好ましくは10〜35μmである。
【0102】
電荷輸送層には、電子写真装置中で発生するオゾンや酸化性ガス、あるいは光や熱による感光体の劣化を防止する目的で、電荷輸送層中に酸化防止剤、光安定剤などの添加剤を添加することができる。
【0103】
上記酸化防止剤、光安定剤としては、上記電荷発生層で用いたものと同じものを用いることができる。
【0104】
(保護層)
保護層は、積層構造の感光層においては帯電時の電荷輸送層の化学的変化を防止したり、感光層の機械的強度をさらに改善する為に用いられる。この保護層は、導電性材料を適当な結着樹脂中に含有させて形成される。
【0105】
上記導電性材料としては、N,N'−ジメチルフェロセン等のメタロセン化合物、N,N'−ジフェニル−N,N'−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1'−ビフェニル]−4,4'−ジアミン等の芳香族アミン化合物、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化アンチモン、酸化錫、酸化チタン、酸化インジウム、酸化錫とアンチモン若しくは酸化アンチモンとの固溶体の担体(各々が分子分散した後に固体化したもの)又はこれらの混合物、あるいは単一金属酸化物粒子中にこれらの金属酸化物を混合したもの、あるいは被覆したものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0106】
この保護層に用いる結着樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等の公知の樹脂が用いられ、これらは必要に応じて架橋して使用することもできる。
【0107】
保護層の厚さは通常、1〜20μm、好ましくは2〜10μmである。
【0108】
保護層は、保護層形成用塗布液を電荷輸送層等に塗布し乾燥させることにより得ることができる。
【0109】
保護層形成用塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0110】
保護層形成用塗布液に用いる溶剤としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が挙げられる。これら有機溶剤は、単独であるいは2種以上混合して用いることができる。但し、下層を溶解しにくい溶剤が好ましい。
【0111】
(感光層)
ここでは、感光層3が単一の層で構成される場合であって電荷発生能と電荷輸送能を有する場合について説明する。
【0112】
感光層3は、電荷発生機能と電荷輸送機能を有する材料で構成されていれば特に限定されず、例えば電荷発生材料、電荷輸送材料、バインダ樹脂等で構成される。
【0113】
上記感光層3の厚さは一般には5〜50μm、好ましくは10〜40μmの範囲に設定される。
【0114】
感光層3は、当該層3を形成するための感光層形成用塗布液を導電性基材1又は中間層2等に塗布し乾燥することにより得ることができる。上記感光層形成用塗布液は、電荷発生機能及び電荷輸送機能を有する材料と、結着樹脂を溶剤中に分散させることにより得ることができる。
【0115】
上記溶剤としては、前述した電荷発生層形成用分散液の溶剤と同様のものを使用することができる。
【0116】
感光層形成用塗布液の塗布は、電荷発生層形成用塗布液の場合と同様の塗布法を用いて行う。
【0117】
(電子写真プロセスカートリッジ)
次に、本発明の電子写真プロセスカートリッジについて説明する。図7は、本発明の電子写真プロセスカートリッジを備えた電子写真装置の一例を示す概略断面図である。図7に示す電子写真装置は、電子写真装置本体を備えており、電子写真装置本体は、現像装置11、転写部材12、定着装置15及び取付けレール16により構成されている。更に、電子写真装置は、電子写真プロセスカートリッジ17を有している。電子写真プロセスカートリッジ17は、ハウジング18内に、電子写真感光体7、接触型帯電装置8、露光装置10及びクリーニング装置13を一体に支持し、電子写真プロセスカートリッジ17は取付けレール16に取付け可能となっている。なお、接触型帯電装置8は、接触帯電用部材を有しており、接触帯電用部材は、感光体表面に接触するように配置され、電圧を電子写真感光体7に直接、均一に印加し、感光体表面を所定の電位に帯電させるものである。
【0118】
ここで、接触型帯電用部材についてより詳細に説明する。
接触帯電用部材としては、アルミニウム、鉄、銅などの金属;ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子材料;ポリウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、フッソゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム等のエラストマー材料にカーボンブラック、沃化銅、沃化銀、硫化亜鉛、炭化けい素などの金属酸化物微粒子を分散したものなどを用いることができる。
【0119】
上記金属酸化物の例としては、Z2O、SnO2、TiO2、In2O3、MoO3等、あるいはこれらの複合酸化物が挙げられる。
【0120】
また、接触帯電用部材は、上記エラストマー材料中に過塩素酸塩を含有させて導電性を付与したもので構成されても良い。
【0121】
更に、接触帯電用部材の表面には被覆層が設けられてもよい。この場合、被覆層を形成する材料としては、N−アルコキシメチル化ナイロン、セルロース樹脂、ビニルピリジン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、メラミン等が挙げられ、これらは、単独であるいは併用して用いられる。また、被覆層を形成する材料としては、エマルジョン樹脂系材料、例えばアクリル樹脂エマルジョン、ポリエステル樹脂エマルジョン、ポリウレタン、特にソープフリーのエマルジョン重合により合成されたエマルジョン樹脂、を用いることもできる。これらのエマルジョン樹脂系材料には、抵抗率を調整するために、さらに導電剤粒子を分散してもよいし、劣化を防止するために酸化防止剤を含有させることもできる。また、被覆層を形成する時の成膜性を向上させるために、エマルジョン樹脂にレベリング剤または界面活性剤を含有させることもできる。また、この接触帯電用部材の形状としては、ローラー型、ブレード型、ベルト型、ブラシ型などがあげられる。さらに、この接触帯電用部材の抵抗は、好ましくは100〜1014Ωcm、さらに好ましくは102〜1012Ωcmの範囲である。また、この接触帯電用部材への印加電圧は、直流、交流のいずれであってもよく、直流に交流を重畳させたものであってもよい。
【0122】
この電子写真プロセスカートリッジ17によれば、電子写真感光体7の中間層2においてバインダ樹脂の変質が十分に防止され、中間層2は均質な状態となっている。従って、プロセスカートリッジ17を電子写真装置本体に装着して電子写真装置を構成した場合に、電子写真感光体7の表面に、接触帯電用部材により局所的に高電界が繰り返し印加されても、ピンホールの発生が十分に防止され、黒点の発生が十分に防止され、ひいては画質の劣化が十分に防止される。
【0123】
なお、図9に示す電子写真プロセスカートリッジ17は、ハウジング18内に電子写真感光体7、接触型帯電装置8、露光装置10及びクリーニング装置13を一体に支持しているが、本発明の電子写真プロセスカートリッジは、電子写真感光体7以外は、少なくとも接触型帯電装置8を支持していればよい。但し、この場合、電子写真プロセスカートリッジ17と電子写真装置本体とにより電子写真装置を構成した場合、この電子写真装置は、現像装置11、転写部材12、定着装置15、取付けレール16、電子写真感光体7、接触型帯電装置8、露光装置10及びクリーニング装置13を有する必要がある。
【0124】
(電子写真装置)
最後に本発明の電子写真装置について説明する。図8は、本発明の電子写真感光体を備えた電子写真装置の一実施形態を示す概略断面図である。図8に示すように、電子写真装置は、電子写真感光体7を備えており、電子写真感光体7の周囲には、電子写真感光体7の回転方向に沿って順次、帯電装置8、露光装置10、現像装置11、転写装置12、クリーニング装置13、除電装置14が配置されている。帯電装置8には、電源9により電位が与えられるようになっている。
なお、15は定着装置、19は紙等の被転写媒体である。
【0125】
この電子写真装置によれば、電子写真感光体7を繰り返し使用しても黒点の発生が十分に防止され、画質の劣化が十分に防止される。
【0126】
図9は、本発明の電子写真装置の他の実施形態を示す概略断面図である。図9に示す電子写真装置は、帯電装置として接触帯電装置8を用いる点で、図10に示す電子写真装置と相違する。
【0127】
本実施形態の電子写真感光体7は、中間層2中のバインダ樹脂が金属酸化物微粒子によって変質させられるという事態が十分に防止され、均質な状態となっており、それゆえ、接触型帯電装置8が設けられ、局所的に高電界が繰り返し印加されても、ピンホールの発生が十分に防止され、黒点の発生が十分に防止され、ひいては画質の劣化も十分に防止される。
【0128】
また、本実施形態の電子写真装置には、接触型帯電装置8が用いられるため、画像上の欠陥発生を十分に防止できるという利点のほかに、コロナ放電式等の非接触帯電方式の帯電装置を用いる場合と比較してオゾンを発生しにくいという利点もある。
【0129】
なお、図8、図9に示す電子写真装置は、除電装置14を備えているが、本発明の電子写真装置は、必ずしも除電装置を備える必要はない。
【0130】
上記電子写真装置としては、例えばライトレンズ系複写機、近赤外光もしくは可視光に発光するレーザービームプリンター、デイジタル複写機、LEDプリンター、レーザーファクシミリなどが挙げられる。
【0131】
更に、電子写真装置は、一成分系、二成分系の正規現像剤あるいは反転現像剤とも合わせて用いることができる。
【0132】
以下、本発明の内容を、実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0133】
【実施例】
(実施例1)
先ず直径80mm、長さ340mm、肉厚1mmのアルミニウム基材を準備した。
【0134】
一方、次のようにして中間層形成用塗布液を調製した。即ち金属酸化物微粒子としての酸化チタン(商品名:富士チタン工業社製TAF−J500、表面処理なし、一次粒径50nm)25重量部と、樹脂前駆体としてのブロック化イソシアネート(商品名:住友バイエルンウレタン社製スミジュール3175)10重量部と、メチルエチルケトン60重量部を30分間混合し、その後、バインダ樹脂としてのブチラール樹脂(商品名:積水化学社製BM−1)9重量部、シリコーンボール(商品名:東芝シリコーン社製トスパール120)3重量部、レベリング剤(商品名:東レダウコーニングシリコーン社製シリコーンオイルSH29PA)0.01重量部を添加し、サンドミルにて2時間の分散を行い、中間層形成用塗布液を得た。
【0135】
次に、この中間層形成用塗布液を、浸漬コーティング法を用いて上記アルミニウム基材上に塗布し、150℃、30分の乾燥硬化を行い、厚さ20μmの中間層を得た。
【0136】
次に、中間層の上に次のようにして電荷発生層を形成した。先ず電荷発生物質としてのCukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.4゜,16.6゜,25.5゜,28.3゜である位置に回折ピークを有する塩化ガリウムフタロシアニン15重量部と、結着樹脂としての塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(商品名:日本ユニカー社製VMCH)10重量部と、n−ブチルアルコール300重量部からなる混合物を、サンドミルにて4時間分散し、電荷発生層形成用分散液を得た。そして、得られた電荷発生層形成用分散液を、浸漬コーティング法を用いて中間層上に塗布し乾燥させて、厚さが0.2μmの電荷発生層を得た。
【0137】
次に、電荷発生層の上に電荷輸送層を形成した。先ずN,N'−ジフェニル−N,N'−ビス(3−メチルフェニル)−[1、1']ビフェニル−4,4'−ジアミン4重量部と、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(分子量4万)6重量部とをクロルベンゼン80重量部に加えて溶解し、電荷輸送層形成用塗布液を得た。そして、得られた電荷輸送層形成用塗布液を、浸漬コーティング法を用いて電荷発生層上に塗布し、130℃、40分で乾燥させることにより、厚さ25μmの電荷輸送層を得た。こうして電子写真感光体を得た。
【0138】
得られた電子写真感光体を、接触型帯電装置、中間転写装置を有するフルカラープリンター(製品名:富士ゼロックス社製Docu Print C620)に搭載し、プリント画質(初期プリント画質)を調べた。結果を表1に示す。表1に示すように、黒点の発生は見られず、良好な画質が得られた。
【表1】
【0139】
更に、上記電子写真感光体を上記フルカラープリンターに搭載したまま連続1万枚のプリントテストを行い、1万枚目のプリント画質を確認した。結果を表1に示す。表1に示すようにやはり黒点の発生は見られず、リーク欠陥の発生も見られなかった。このことから、本発明の電子写真感光体は、優れた画質維持性を示すことが分かった。
【0140】
(実施例2)
中間層を以下のようにして形成した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を得た。
【0141】
即ち、金属酸化物微粒子としての酸化亜鉛(商品名:シーアイ化成社製Nano Tek ZnO、表面処理なし、一次粒径30nm)33重量部と、樹脂前駆体としてのブロック化イソシアネート(商品名:住友バイエルンウレタン社製スミジュール3175)6重量部と、メチルエチルケトン25重量部を30分間混合し、その後、バインダ樹脂としてのブチラール樹脂(商品名:積水化学社製BM−1)5重量部と、シリコーンボール(商品名:東芝シリコーン社製トスパール120)3重量部と、レベリング剤(商品名:東レダウコーニングシリコーン社製シリコーンオイルSH29PA)0.01重量部を添加し、サンドミルにて2時間の分散を行い、中間層形成用塗布液を得た。そして、この中間層形成用塗布液を、浸漬コーティング法を用いて、直径80mm、長さ340mm、肉厚1mmのアルミニウム基材上に塗布し、150℃、30分の乾燥硬化を行い、厚さ20μmの中間層を形成した。
【0142】
上記のようにして得られた電子写真感光体について実施例1と同様にして、プリント画質の評価を行った。結果を表1に示す。表1に示すように、初期プリント画質、1万枚目のプリント画質ともに黒点の発生は認められず、良好であった。
【0143】
(実施例3)
金属酸化物微粒子としての酸化亜鉛33重量部に代えて、酸化スズ(商品名:三菱マテリアル株式会社製S1、表面処理なし、一次粒径20nm)40重量部を用いた以外は実施例2と同様にして電子写真感光体を得た。
【0144】
得られた電子写真感光体について実施例1と同様にして、プリント画質の評価を行った。結果を表1に示す。表1に示すように、初期プリント画質、1万枚目のプリント画質ともに黒点の発生は認められず、良好であった。
【0145】
(実施例4)
ブロック化イソシアネートに代えて、不活性樹脂としてのメラミン樹脂(商品名:ユーバン20SE−60)を用い、メチルエチルケトンに代えてn−BuOHを用い、ブチラール樹脂の添加量を5重量部から6重量部とした以外は、実施例2と同様にして電子写真感光体を得た。
【0146】
得られた電子写真感光体について実施例1と同様にして、プリント画質の評価を行った。結果を表1に示す。表1に示すように、初期プリント画質、1万枚目のプリント画質ともに黒点の発生は認められず、良好であった。
【0147】
(実施例5)
ブロック化イソアイアネート6重量部に代えて、不活性樹脂としてのフェノール樹脂(商品名:大日本インキ社製J325)9重量部を用い、メチルエチルケトン25重量部に代えて、メタノール5重量部及びメトキシプロパノール12重量部を用い、且つブチラール樹脂の添加量を5重量部から12重量部に代えた以外は実施例2と同様にして電子写真感光体を得た。
【0148】
得られた電子写真感光体について実施例1と同様にして、プリント画質の評価を行った。結果を表1に示す。表1に示すように、初期プリント画質、1万枚目のプリント画質ともに黒点の発生は認められず、良好であった。
【0149】
(比較例1)
金属酸化物微粒子としての酸化亜鉛(商品名:シーアイ化成社製Nano Tek ZnO、表面処理なし、一次粒径30nm)33重量部と、ブチラール樹脂(商品名:積水化学社製BM−1)5重量部と、メチルエチルケトン35重量部をサンドミルにて30分間混合し、分散液を得た。
【0150】
得られた分散液は茶褐色に着色していた。このことから、酸化亜鉛によってブチラール樹脂又はメチルエチルケトンが変質されたことが分かった。
【0151】
その後、この分散液に、ブロック化イソシアネート(商品名:住友バイエルウレタン社製スミジュール3175)6重量部を混合し、サンドミルにて2時間の分散を行った。その後、シリコーンボール(商品名:東芝シリコーン社製トスパール120)3重量部と、レベリング剤(商品名:東レダウコーニングシリコン社製シリコーンオイルSH29PA)0.01重量部を添加・攪拌して、中間層形成用塗布液を得た。
【0152】
この中間層形成用塗布液を、浸漬コーティング法を用いて、直径80mm、長さ340mm、肉厚1mmのアルミニウム基材上に塗布し、150℃、30分の乾燥硬化を行い、厚さ20μmの中間層を得た。
【0153】
さらに実施例1と同様にして、電荷発生層、電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を得た。
【0154】
得られた電子写真感光体について実施例1と同様にして、プリント画質の評価を行った。結果を表1に示す。表1に示すように、1万枚目のプリント画質を調べたところ、黒点の発生が認められた。このことから、電子写真感光体を繰り返し使用したことにより画質が劣化したことが分かった。
【0155】
(比較例2)
金属酸化物粒子としての酸化チタン(商品名:富士チタン工業社製TAF−J500、表面処理なし、一次粒径50nm)25重量部と、樹脂前駆体としてのブロック化イソシアネート(商品名:住友バイエルンウレタン社製スミジュール3175)10重量部と、バインダ樹脂としてのブチラール樹脂(商品名:積水化学社製BM−1)9重量部と、メチルエチルケトン60重量部をサンドミルにて2時間分散を行い、分散液を得た。この分散液にシリコーンボール(商品名:東芝シリコーン社製トスパール120)3重量部と、レベリング剤(商品名:東レダウコーニングシリコーン社製シリコーンオイルSH29PA)0.01重量部を添加・攪拌し、中間層形成用塗布液を得た。この中間層形成用塗布液を、浸漬コーティング法を用いて、直径80mm、長さ340mm、肉厚1mmのアルミニウム基材上に塗布し、150℃、30分の乾燥硬化を行い、厚さ20μmの中間層を得た。
【0156】
さらに実施例1と同様にして電荷発生層、電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を得た。
【0157】
得られた電子写真感光体について実施例1と同様にして、プリント画質の評価を行った。結果を表1に示す。表1に示すように、1万枚目のプリント画質を調べたところ、黒点の発生が認められた。このことから、電子写真感光体を繰り返し使用したことにより画質が劣化したことが分かった。
【0158】
以上の実施例1〜5及び比較例1〜2の結果より、本発明によれば、黒点の発生を十分に防止でき、画質の劣化を十分に防止できることが分かった。また、上記実施例1〜5の結果より、本発明によれば、画質の維持性も良好であることが分かった。
【0159】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の電子写真感光体によれば、バインダ樹脂の変質が十分に防止され、中間層が均質な状態となっているため、高電界が印加されてもピンホールの発生が十分に防止される。従って、電子写真感光体の繰り返し使用による黒点の発生が十分に防止され、画質の劣化が十分に防止される。
【0160】
また、本発明の電子写真感光体の製造方法によれば、バインダ樹脂が金属酸化物微粒子によって変質させられる事態が十分に防止され、均質な状態となる。従って、得られる電子写真感光体の中間層においては、接触型帯電装置を有する電子写真装置において電子写真感光体が繰り返し使用されてもピンホールの発生が十分に防止され、黒点の発生が十分に防止され、画質の劣化が十分に防止される。また、この製造方法によれば、中間層形成用塗布液において、金属酸化物微粒子の分散状態が良好となるため、中間層形成用塗布液の保存安定性が飛躍的に向上すると共に、画像欠陥の発生が十分に防止され且つ良好な抵抗値を持つ電子写真感光体が得られる。
【0161】
更に、本発明の電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真装置によれば、帯電装置として接触型帯電装置を用いても、電子写真感光体の中間層においてバインダ樹脂が均質な状態となっているため、電子写真感光体を繰り返し使用しても、ピンホールの発生が十分に防止され、黒点の発生が十分に防止される。従って、画質の劣化を十分に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、単層構造の電子写真感光体の第1の例を示す断面図である。
【図2】図2は、機能分離型積層構造の電子写真感光体の第1の例を示す断面図である。
【図3】図3は、単層構造の電子写真感光体の第2例を示す断面図である。
【図4】図4は、機能分離積層構造の電子写真感光体の第2例を示す断面図である。
【図5】図5は、単層構造の電子写真感光体の第3の例を示す断面図である。
【図6】図6は、機能分離型積層構造の電子写真感光体の第3の例を示す断面図である。
【図7】図7は、本発明の電子写真プロセスカートリッジを備えた電子写真装置の一例を示す概略断面図である。
【図8】図8は、本発明の電子写真装置の一実施形態を示す概略断面図である。
【図9】図9は、本発明の電子写真装置の他の実施形態を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1…導電性基材、2…中間層、3…感光層、4…第2の中間層、5…保護層、7…電子写真感光体、8…接触型帯電装置、9…電源、10…露光装置、11…現像装置、12…転写装置、13…クリーニング装置、14…除電器、15…定着装置、16…取付けレール、19…被転写媒体、31…電荷発生層、32…電荷輸送層。
Claims (6)
- 導電性基材と感光層との間に中間層を備える電子写真感光体において、
前記中間層が、金属酸化物微粒子を、樹脂前駆体であるブロック化イソシアネート系化合物と混合した後、ポリビニルブチラール樹脂中に分散させて得られる中間層形成用塗布液を用いて形成されるものであることを特徴とする電子写真感光体。 - 導電性基材と感光層との間に中間層を備える電子写真感光体において、
前記中間層が、金属酸化物微粒子を、メラミン樹脂又はフェノール樹脂と混合した後、ポリビニルブチラール樹脂中に分散させて得られる中間層形成用塗布液を用いて形成されるものであることを特徴とする電子写真感光体。 - 導電性基材と感光層との間に中間層を備える電子写真感光体の製造方法において、
金属酸化物微粒子を、樹脂前駆体であるブロック化イソシアネート系化合物と混合した後、ポリビニルブチラール樹脂中に分散させて中間層形成用塗布液を調製し、この中間層形成用塗布液を用いて、前記導電性基材上に前記中間層を形成する工程と、
前記中間層の上に感光層を形成する工程と、を含むことを特徴とする電子写真感光体の製造方法。 - 導電性基材と感光層との間に中間層を備える電子写真感光体の製造方法において、
金属酸化物微粒子を、メラミン樹脂又はフェノール樹脂と混合した後、ポリビニルブチラール樹脂中に分散させて中間層形成用塗布液を調製し、この中間層形成用塗布液を用いて、前記導電性基材上に前記中間層を形成する工程と、
前記中間層の上に感光層を形成する工程と、を含むことを特徴とする電子写真感光体の製造方法。 - 請求項1又は2に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面に接触して前記表面を帯電させる接触型帯電装置と、を備えており、
電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とする電子写真プロセスカートリッジ。 - 請求項1又は2に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面に接触して前記表面を帯電させる接触型帯電装置と、
前記電子写真感光体の表面を露光して静電潜像を形成する露光装置と、
前記静電潜像を現像する現像装置と、
現像された像を被転写媒体に転写する転写装置と、を備えることを特徴とする電子写真装置。
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