JP4546176B2 - 発光装置 - Google Patents
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Description
ここでいう蛍光体とは、蛍光を発し得る物質そのもの(有機または無機の化合物や、これに特定の元素が添加されたものなど)であって、実使用上では、蛍光体は微粒子状とされ、樹脂、低融点ガラス等の透明媒体中に分散させてなる蛍光体部材などとして用いられる場合が多い。一般に、蛍光体は、塊状よりも微粒子状として用いた方が、波長変換効率が向上する。
以下、黄色光を発する蛍光体を黄色蛍光体と呼び、同様に、他の色の蛍光を発する蛍光体についても、その蛍光の色の名を冠して、例えば、赤色蛍光体、緑色蛍光体、青色蛍光体などと呼んで、従来技術および本発明を説明する。
擬似白色光は、光の3原色が揃っていないために演色性が好ましくないので、電光掲示板やバックライトなど、白色光であること(デザイン上、白色に見えること)だけが求められる用途に用いられている。
このような3原色光またはそれ以上の色の光を含んだ白色光は、演色性が良好であり、照明用途として期待されている。
半導体発光素子と一次蛍光体とによって構成された一段階励起の発光装置では、発光素子の発光波長が変動し易いために、一次蛍光の強度も大きく変動する。これに対して、蛍光体は、半導体発光素子と比べて発光波長が変動し難いという性質を有するので、カスケード励起では、一次蛍光が、強度の面で変動するとしても、波長の面での変動が小さいために、二次蛍光の強度の変動はより改善されるという利点がある。
図8(a)の例では、近紫外光(原励起光)L10を発するGaN系LED(励起光源)110がステム100内に実装されており、蛍光体部材120は板状部材(波長変換板)として形成され、ステム100の開口を塞いでいる。
また、図8(b)の例では、GaN系LED110がステム100に実装されているが、蛍光体部材121は、板状ではなく、ステムのキャビティ内に充填された態様となっている。
該問題とは、蛍光体部材が、一次蛍光体、二次蛍光体を共に粒子状とし、これらを混合して1つの基材中に分散させた構成であることに起因する問題である。
微粒子状の蛍光体を樹脂などの基材中に分散させる場合、液状の基材原料に、あるいは加熱等によって流動性を有する状態とされた基材材料に、微粒子状の蛍光体を混ぜ合わせて分散させ、成形型やステムの所定の位置などに配置した状態で硬化させるという製造工程を経る。
しかし、基材が硬化するまでに蛍光体粒子が沈降し、基材中での分散は不均一となる。しかも、沈降の速度は、粒子の大きさ、形状および表面状態、蛍光体の種類毎での粒子と基材との比重差、硬化前の基材の粘度等により異なり、また、均一な粒径を持つ蛍光体粉末は一般に入手困難である。よって、基材中における一次蛍光体粒子と二次蛍光体粒子の空間的な分布の状態を制御することは困難である。
このために、次の(a)〜(c)の量が製品毎に常に一定とならず、出力光に含まれる一次蛍光の強さと二次蛍光の強さとの比率が安定しないために、製品毎に白色光の品質が異なるという問題が生じる。
(a)蛍光体部材中に入射した原励起光のうち、二次蛍光体によって吸収、散乱を受けながら、最終的に一次蛍光体に到達し得る原励起光の量。
(b)一次蛍光体から発せられた一次蛍光のうち、一次蛍光体自体によって散乱されながら、二次蛍光体に到達し得る一次蛍光の量、および外部に出射される一次蛍光の量。
(c)二次蛍光体から発せられた二次蛍光のうち、一次蛍光体および二次蛍光体によって散乱されながら、外部に出射される二次蛍光の量。
(1)原励起光を発する窒化物半導体発光素子と、一次蛍光体部材と、二次蛍光体部材とを有して構成される発光装置であって、
一次蛍光体部材は、原励起光によって励起されて一次蛍光を発する一次蛍光体を含んでいるとともに、板状に形成されており、
二次蛍光体部材は、前記一次蛍光によって励起されて二次蛍光を発する二次蛍光体を含んでいるとともに、一次蛍光体部材に対して窒化物半導体発光素子と同じ側に設けられた反射面上に、層状に形成されており、
一次蛍光体部材は、原励起光が二次蛍光体部材を透過することなく一次蛍光体に照射され得るように配置され、
二次蛍光体部材は、一次蛍光体部材から窒化物半導体発光素子側に放射される一次蛍光が二次蛍光体に照射され得るように配置され、
上記構成によって、
(a)一次蛍光体部材から窒化物半導体発光素子側とは反対側に放射される一次蛍光と、
(b)一次蛍光体部材から窒化物半導体発光素子と同じ側に放射された一次蛍光によって励起されることで二次蛍光体部材から放射され、一次蛍光体部材を窒化物半導体発光素子側から透過する二次蛍光とが、
出力光とされることを特徴とする、発光装置。
(2)窒化物半導体発光素子が実装される底面と、該底面を取り囲む漏斗状の反射面とを備える凹部を有し、一次蛍光体部材が該凹部の開口を塞いでおり、二次蛍光体部材が該反射面上にコーティングされている、上記(1)に記載の発光装置。
しかし、このような分散のさせ方であっても、従来では、十分に均等な分散が、常に再現性良く得られていると考えられており、出力光に含まれる一次蛍光と二次蛍光との比率についても常に同程度となるとされて、何らの問題点も提起されることはなかった。
同様に、二次蛍光体に到達する一次蛍光の量も、外部に出射される一次蛍光と二次蛍光の割合も制御し易くなり、製品毎の出力光の品質のばらつきは少なくなる。
本発明のように、一次蛍光体部材と二次蛍光体部材とを互いに独立した別の部材として分けることによって、蛍光体粒子を基材中に好ましく分散させるための製造条件が狭くなるという問題を避けることができる。
一次蛍光体部材1は、一次蛍光体10を含んでいる。該蛍光体10は、原励起光Lによって励起され一次蛍光L1を発する物質である。一次蛍光体部材1は、原励起光Lが一次蛍光体10に十分に照射され、十分な一次蛍光L1を発し得るように、原励起光Lに対して、位置、姿勢などを選択されて配置されている。
また、二次蛍光体部材2は、二次蛍光体20を含んでいる。該蛍光体20は、一次蛍光L1によって励起されて二次蛍光L2を発する物質である。二次蛍光体部材2は、一次蛍光L1が二次蛍光体に十分に照射され、十分な二次蛍光L2を発し得るように、一次蛍光L1に対して、位置、姿勢などを選択されて配置されている。
ここで重要な点は、上記発明の効果で述べたとおり、一次蛍光体粒子と、二次蛍光体粒子とが、互いに混合されることなく、互いに異なる空間領域に分かれて独立的に位置していること、即ち、両蛍光体粒子が、互いに独立した別の部材中に存在している点にある。この構成によって、発明の効果で述べた作用効果が得られる。
窒化物半導体とは、InAGaBAlCN(0≦A≦1、0≦B≦1、0≦C≦1、A+B+C=1)で示される化合物半導体であって、例えば、AlN、GaN、AlGaN、InGaNなどが重要な化合物として挙げられる。
特に、このような発光波長となるように組成比を決定されたInAGa1−ANを発光層に用いたGaN系発光素子は、高い発光効率を有するために、高出力となり、励起光源として好ましい。また、そのようなInAGa1−ANを井戸層とする、単一量子井戸(SQW)または多重量子井戸(MQW)構造の発光層を用いたものは、更に高効率となり、好ましい。この場合の量子井戸構造中の障壁層の材料としては、GaNなどが挙げられる。
また、励起光を青紫光〜青色光(波長400nm〜480nm)などとし、出力光の一部として、一次蛍光や二次蛍光とともに出射されるように発光装置を構成してもよい。
図2は、GaN系LEDの好ましい素子構造の一例を示す模式図であって、結晶基板(サファイア基板など)30上に、GaN系低温成長バッファ層30bを介して、順に、n型コンタクト層31、発光部35(n型クラッド層32/MQW発光層(詳細な積層構造は図示せず)33/p型クラッド層34)、p型コンタクト層(複数層の構造とされる場合があるが詳細には図示せず)36が気相成長によって積層され、各コンタクト層に、n電極P1、p電極P2が設けられている。
同図の例では、説明のために結晶基板30を下側として描いているが、p電極P2を実装用基板側に向けて回路に直接接続し結晶基板30を上にする実装(所謂フリップチップ実装)を行って基板裏面から光を取り出し、その光を蛍光体部へ照射する構成であってもよい。
また、図1(b)の態様では、一次蛍光体部材1、二次蛍光体部材2は、ドーム形の樹脂モールドとして形成され、GaN系LEDとステム50を2重に被覆している。
これらの態様では、一次、二次のいずれの蛍光体部材も、透明樹脂製の基材中に、微粒子状とされた蛍光体が分散した構成となっている。
また、一次蛍光体部材が励起光源側、二次蛍光体部材が外界側(出射側)となるように積層されており、原励起光の光が二次蛍光体による吸収・散乱を受けることなく、先ず一次蛍光体に到達するため、変換効率が良い。
GaN系発光素子がフリップチップ実装型の素子である場合、一次蛍光体部材、二次蛍光体部材を発光素子の結晶基板の裏面に直接的にカスケード励起可能に2層に配置してもよい。
一次蛍光体部材、二次蛍光体部材をそれぞれどのように形成するかは限定されず、モールドタイプ、板状タイプ、反射面や透明基材の上へコーティングしたものなどを、自由に組み合わせて構成すればよい。本発明の発光装置は、GaN系半導体素子を複数並べて実装したものを励起光源とすることで、大型化することができるが、このように大型化する場合には、一次蛍光体部材や二次蛍光体部材を板状タイプまたは、透明基材にコーティングしたものとすることが好ましい。
即ち、二次蛍光体が原励起光によっても励起され得る場合、二次蛍光体に原励起光と一次蛍光の両方が到達したとき、その割合によって、二次蛍光体が発生する蛍光(原励起光により励起されて発生する蛍光と、一次蛍光により励起されて発生する蛍光の総和)の強度が変わるため、二次蛍光体の発光強度が一次蛍光体の空間分布に大きく影響を受けることになり、出力光の成分を安定させるための制御が困難となるからである。
上記(あ)を達成するための構成としては、次の(a)および/または(b)の構成が例示される。
(a)励起光源と二次蛍光体部材との間に一次蛍光体部材を配置し、原励起光が該一次蛍光体部材において実質的に全て一次蛍光に変換されるように、一次蛍光体部材に含まれる一次蛍光体の量を調節する構成。
(b)一次蛍光体部材と二次蛍光体部材との間に、一次蛍光は透過するが、原励起光は吸収または反射するフィルタ層を配置する構成。
図3(a)の例では、図1(a)の態様と同様に、板状の一次蛍光体部材1、二次蛍光体部材2が2層の状態になって、ステム50の開口を塞いでいるが、一次蛍光体部材1、二次蛍光体部材2の積層順序が、図1(a)の態様とは逆になっている。原励起光Lは、いったん二次蛍光体部材2を通過して一次蛍光体部材1に入り、そこで発生した一次蛍光の一部は外界へ出力され、一部は二次蛍光体部材2に入り、そこで二次蛍光L2が発せられる。
このような構成では、二次蛍光体として、原励起光によって励起されない性質を有する物質を用いることが好ましく、これによって、より多くの量の原励起光を外側の一次蛍光体部材に入射させることができる。
図3(c)の例では、透明基板3の内側の主面に一次蛍光体部材層1aがコーティングされ、外側の主面に二次蛍光体部材層2aがコーティングされている。
これら図3(b)、(c)の構成は、図1に対する図3(a)のように、一次蛍光体部材層と二次蛍光体部材層の積層順または位置が逆であってもよい。
このように二次蛍光体部材層を細分化されたパターンとして配置する態様は、板状の蛍光体部材において、意図した面内分布パターン(均等なパターン、偏ったパターン)にて二次蛍光体を自在に分布させることができ、また、複数の二次蛍光体を分散させる場合の、各二次蛍光体の量的比率も面内で自在に制御することができるなど、特別な作用効果を有する。この態様については、より詳しく、後述する。
一次蛍光体部材1と二次蛍光体2とは、互いに入れ替えてもよい。
原励起光を紫外光として、これを出力光としては用いないようにする一方、一次蛍光を青色光として、これを出力光としかつ二次蛍光体の励起光とする組み合わせが好ましい態様として挙げられる。この場合、二次蛍光体として、赤色蛍光体と緑色蛍光体とを少なくとも用いれば、白色光を出力することができる。
また、二次蛍光体として黄色蛍光体を用い、青色光(一次蛍光)と黄色光(二次蛍光)とによる擬似白色光を出力する構成としてもよい。擬似白色光に赤色蛍光体や緑色蛍光体をさらに加えて演色性を向上させる場合には、これら赤色蛍光体や緑色蛍光体などは、一次蛍光体および二次蛍光体のいずれに含めてもよい。
本発明の発光装置において、一次蛍光体は、必ずしも1種類である必要はなく、二次蛍光体の励起に関係しない蛍光を発する蛍光体が含まれていてもよい。
図6(a)は、図4(a)の態様を上方から見たときの斜視図であって、二次蛍光体部材層2が板状の一次蛍光体部材1の表面に、細かい方形状領域が離間的に並んだパターンとして配置されている。換言すれば、一次蛍光体部材1の表面は複数の小領域に区分され、該小領域毎に、二次蛍光体20の配置の有無が選択されている。ここで、小領域毎に二次蛍光体20の種類が選択されてもよい。これによって、二次蛍光体部材層2は、一次蛍光体部材1の表面に細分化されたパターンとして配置された構成となっている。
以下、図6(a)の例においても、一次蛍光体部材の表面のうち、一次蛍光が照射されかつ二次蛍光体部材層を配置する面を「被照射面」と呼ぶ。
例えば、図1の態様のように、二次蛍光体部材が粒子状の蛍光体を樹脂基材中に分散させた一つの塊状物である場合、二次蛍光体部材に一次蛍光が入射した後、二次蛍光体部材から一次蛍光と二次蛍光とがどのような比率で出てくるかは、主として樹脂基材中の二次蛍光体微粒子の空間的な分布(前述の通り、これらは二次蛍光体微粒子の粒度、樹脂基材に対する配合比率などに影響される)で制御されることになる。
これに対して、図6(a)、(b)に例示するように、二次蛍光体部材層を細分化されたパターンとして配置することによって、次の作用効果が得られる。
(a)二次蛍光体の種類が複数種あっても、各二次蛍光体を含む二次蛍光体部材層が被照射面内において形成するパターンを制御することで、被照射面内における、各二次蛍光体の分布(均等な分布、偏在する分布)や、各二次蛍光体の量的比率(均等な比率、異なる比率)を制御することができる。同様に、二次蛍光体が一種類だけの場合でも、前記のように、被照射面内におけるその分布のしかたを自在に制御することができる。
(b)二次蛍光体部材層が形成された領域同士の間に、二次蛍光体部材層が存在しない隙間領域が形成されるので、この隙間領域を、確実に、被照射面内に二次蛍光体が存在しない領域(励起光や一次蛍光が二次蛍光体の影響を実質的に受けることなく通過し得る領域)とすることができる。このような作用効果は、被照射面に入射する原励起光や一次蛍光の一部を通過させて出力光とする場合に顕著に有用となる。
前記の位置関係に加えて、蛍光体部材に対する原励起光の入射方向と、蛍光体部材から出る出力光の取り出し方向との関係についても限定はない。図6(a)、(b)の例において、少なくとも二次蛍光を含む出力光を、二次蛍光体部材層2が形成された面の側から取り出すように発光装置を構成してもよいし、あるいは励起光源Sに面した側の面から取り出す構成であってもよい。後者の場合、反射手段によって、励起光源Sから遠ざかる方向に向かう出力光を、積極的に、励起光源Sの側に向けるようにしてもよい。
これらドット状領域の配置パターンは、細密的なもの、正方行列的なもの、特定の規則にしたがって繰り返すもの、ランダムなものなど、用途に応じて選択すればよい。
ドットの形状が円形や異形の場合でも、上記の正方形と等価な大きさとすればよい。
また、二次蛍光体部材層を帯状に形成する場合には、個々の帯幅は0.01mm〜1mm程度、特に0.1mm〜0.5mmが好ましい寸法である。
なお、発光装置の用途において問題となる色ムラが生じなければ、前記正方形状のドットの1辺の長さや、帯状領域の帯幅は特に制限されるものではなく、例えば大型の投光装置等の用途であれば、10mm程度またはそれ以上に大きくしてもよい。
基板上に蛍光体部材層を配置する場合、蛍光体を板面から盛り上がる様に配置してもよいし、図4(a)に示すように、基板(この場合は一次蛍光体部材が基板となっている)の板面に凹部を形成し、該凹部に二次蛍光体部材を充填する態様などが挙げられる。
基板の材料は、原励起光や一次蛍光が該基板を通過する装置構成とするならば、当該光が透過し得る材料を用いるべきであり、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、フッ素樹脂、各種の無機ガラスなどが好ましい材料として挙げられる。
例えば、青色蛍光体によって励起され得る赤色蛍光体としては、〔Ln2O2S:Eu(Ln=Y,La,Gd,Lu)〕、〔(ZnaCd1−a)S:Ag,Cl、(0.5>a>0.2)〕、〔REuW2O8〕、〔M2Si5N8:Eu〕、〔3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn〕、及び〔(Ca,Sr)S:Eu〕(但し、MはCa,Sr,Baのうちの少なくとも1種であり、RはLi,Na,K,Rb,Csのうちの少なくとも1種である)から選ばれる1種類以上の蛍光体が挙げられる。
この変色のため、ZnS系蛍光体を用いた白色発光装置は、経時的に緑色光の成分が低下し、演色性や輝度が低下することがわかった。
この問題を解消し、経時的に安定した信頼性ある緑色蛍光体を用いることを検討したところ、経時的な安定性については、〔(Ba,Sr)MgAl10O17:Eu,Mn〕などの酸化物系蛍光体がより好ましいことがわかった。
ところが、該酸化物系蛍光体は、材料の安定性(信頼性)の面ではZnS系蛍光体よりも優れているが、その発光特性(発光スペクトル)を調べたところ、発光スペクトルの半値巾が狭い為、長い波長側の成分である540nm付近〜650nmの成分が、黒変する前のZnS系蛍光体と比べて欠落していることがわかった。
これによって、緑色光において欠落する長い波長側の成分を黄色光によって補うことができ、優れた安定性(信頼性)と、優れた演色性とが両立した、好ましい白色発光装置が得られる。
黄色蛍光体は、一次蛍光体(青色蛍光体)から発せられる光によって励起される材料であることが好ましい。そのような蛍光体材料としては、〔(Y、Gd)3(Al、Ga)5O12:Ce〕、〔SrAl2O4:Eu〕、〔(Y、Gd、Sc)−Al−O−N:(Eu、Ce)〕から選ばれる1種類以上の蛍光体が挙げられる。
黄色蛍光体として〔(Y、Gd)3(Al、Ga)5O12:Ce〕を用いる場合、該材料は波長 400nm〜550nmの発光分布を持つ青色光によって励起されるので、青色蛍光体として〔(Ba,Sr)MgAl10O17:Eu〕を用いることが好ましい組み合せとなる。
同図のグラフから明らかなとおり、緑色光において欠落した長波長側の成分が黄色光によって補われており、好ましい白色光となる。
本実施例では、図1(a)に類する構造にて、励起光源としてInGaNを発光部材料とした近紫外LEDと、青色蛍光体を含んだ一次蛍光体部材と、赤色蛍光体、緑色蛍光体を含んだ二次蛍光体部材とを組み合わせ、白色光を出力する発光装置を実際に製作し、その性能を評価した。
発光波長ピーク:382nm。
発光部の構造:InGaN井戸層/GaN障壁層を6ペア積層したMQW構造。
転位密度低減化の手法:サファイア基板上にストライプ状の凹凸を加工し、各凹部底面・凸部上面にGaN系結晶をファセット成長させたのち、横方向成長を優勢にさせて平坦化する、所謂ファセットLEPS法。
ベアチップの外形:350μm×350μm方形。
実装方式:フリップチップ
ベアチップ状態での発光出力:通電電流20mAにおいて6.5mW
青色蛍光体:(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6Cl2:Eu
赤色蛍光体:La2O2S:Eu
緑色蛍光体:BaMgAl10O17:Eu,Mn
近紫外LEDを配置するための配線パターンが形成された絶縁性基体と、近紫外LEDを取り囲む枠状の反射部材とを有する筐体を用意した。
該筐体内の配線パターンに、Agペースト等の導電性接着剤を介して、近紫外LEDを実装した。
筐体内にシリコーン樹脂を充填して(図1(a)には充填樹脂は特に示していない)、近紫外LEDを被覆し、さらに加熱することによって該樹脂を硬化させ、内部層を形成した。
内部層のシリコーン樹脂と同じ材料樹脂を接着剤として介在させて、前記一次蛍光体部材を、内部層の上面に取り付けた。
内部層と同一のシリコーン樹脂と同じ材料樹脂を接着剤として介在させて、図1(a)に示すように、二次蛍光体部材2を一次蛍光体部材1の上面に取り付け、本実施例の発光装置を得た。評価は、後述する。
従来の発光装置として、図8(a)に示す発光装置を製作し比較例1として、上記実施例1と同様に性能を評価した。
〔比較例品の仕様〕
筐体、近紫外LED、蛍光体は、上記実施例1と同様のものを用いた。
筐体内の配線パターンに、導電性接着剤(Agペースト)を介して、近紫外LEDを実装した。
硬化前の液状のシリコーン樹脂に、上記実施例1で用いた青色蛍光体、赤色蛍光体、緑色蛍光体を含有させ攪拌し、均一に分散させた。
ディスペンサーを用いて、前記3種類の蛍光体を含有したシリコーン樹脂を、筐体内に充填して、近紫外LEDを被覆し、150℃、10分間の加熱によって硬化させ、比較例1の発光装置を得た。
本実施例1の発光装置と、比較例1の発光装置とを、それぞれ11個ずつ作製し、出力光の色温度のバラツキについて評価した。
それぞれのサンプルについての出力光の色温度の測定結果を表1に示す。
即ち、本発明の発光装置は、一次蛍光体部材と二次蛍光体部材とが互いに異なる空間領域に分かれて独立的に存在するように、互いに別の部材として配置されているので、発光装置の出力光に含まれる主要波長成分毎の強度の比率をより安定させることができ、出力光の色温度のバラツキを有効に抑制できていることがわかった。
本実施例では、図1(a)に示した構造にて、青色蛍光体、赤色蛍光体、緑色蛍光体とを含んだ一次蛍光体部材と、黄色蛍光体を含んだ二次蛍光体部材とを組み合わせ、色特性と演色性に優れる白色光を出力する発光装置を実際に製作した。
シリコーン樹脂中に、青色蛍光体、赤色蛍光体、緑色蛍光体を分散させて一次蛍光体部材としたこと、および、シリコーン樹脂中に黄色蛍光体を分散させて二次蛍光体部材としたこと以外は、筐体、近紫外LED、青色蛍光体、赤色蛍光体、緑色蛍光体など、各材料、各部の構成、製作工程は、全て上記実施例1と同様である。また、黄色蛍光体は〔Y3Al5O12:Ce〕である。
評価は、後述する。
実施例2に対する従来の発光装置として、図8(a)に示す発光装置を製作し、当該発光装置の性能を評価した。
筐体、近紫外LED、蛍光体は、上記実施例1と同様のものを用いた。
筐体内の配線パターンに、導電性接着剤(Agペースト)を介して、近紫外LEDを実装した。
硬化前の液状のシリコーン樹脂に、上記実施例1で用いた青色蛍光体、赤色蛍光体、緑色蛍光体と、上記実施例2で用いた黄色蛍光体とを含有させ攪拌し、均一に分散させた。
ディスペンサーを用いて、前記4種類の蛍光体を含有したシリコーン樹脂を、筐体内に充填して、近紫外LEDを被覆し、150℃、10分間の加熱によって硬化させ、比較例2の発光装置を得た。
実施例2の発光装置と、比較例2の発光装置とを、それぞれ11個ずつ作製し、出力光の色温度のバラツキについて評価した。
それぞれのサンプルについての出力光の色温度の測定結果を表2に示す。
比較例2では、シリコーン樹脂内における、青色蛍光体、緑色蛍光体、赤色蛍光体と、黄色蛍光体(青色蛍光体の蛍光により励起され発光する)との分散状態により、発光装置の出力光に含まれる主要波長成分毎の強度の比率が不安定となり、色温度にバラツキが生じている。即ち、青色蛍光体、緑色蛍光体、赤色蛍光体は、近紫外LEDからの光によって励起され蛍光を出力する。一方、黄色蛍光体は、シリコーン樹脂内部に分散した青色蛍光体からの蛍光によって励起され蛍光を出力する。この為、シリコーン樹脂内における青色蛍光体と黄色蛍光体の分散状態や配置状態によって、青色蛍光体と黄色蛍光体の光出力が大きく異なり、その結果、光強度にバラツキが生じたと考えられる。
これに対し実施例2の発光装置では、一次蛍光体部材内の青色蛍光体の蛍光により励起される、緑色蛍光体、赤色蛍光体の発光強度は小さく、従って、一次蛍光体部材から出力される青色蛍光体の発光強度は安定している。その結果、発光強度の安定した青色蛍光を、二次蛍光体部材に入力できることから、該青色蛍光により励起される黄色蛍光体の光出力も安定している。即ち、実施例2の発光装置では、青色蛍光体と黄色蛍光体とが互いに異なる空間領域に分かれて独立的に存在するように、互いに別の部材として配置されているので、一次蛍光体部材から出力される青色蛍光の強度を安定させることができるとともに、青色蛍光により励起される黄色蛍光体の発光出力も安定させることができる。従って、発光装置の出力光に含まれる主要波長成分毎の強度の比率をより安定させることができ、出力光の色温度のバラツキを有効に抑制できたと考えられる。
さらに、本実施例2の発光装置の演色性について平均演色指数Raを測定した結果、Raが90以上であることを確認した。
以上の結果から、本発明の発光装置は、出力光の色温度のバラツキがより安定しているとともに、照明装置や医療用光源として最適な演色性に優れる発光装置となっていることがわかった。
上記実施例2において、黄色蛍光体を分散させた蛍光体部材をフィルム状として形成する代わりに、インクジェット印刷法により、黄色蛍光体を含む層を、細かいドット状領域が多数分散したパターンとして形成した(詳細なパターン形成工程自体については、例えば、特開2004−80058号公報に記載されたとおりである)。
インクジェット印刷のパターンを変化させることにより、ドット状領域の分布密度を変化させたところ、得られた発光装置から出力される光の色温度が5500K〜6500Kの範囲で変化した。
これは、黄色蛍光体の分布が変わったことによって、出力光に含まれる一次蛍光と二次蛍光の比率が変化したためである。
これによって、ドットの分布密度を、印刷パターンの変更として変えることで、容易に出力光の色調を制御できることがわかった。
L 励起光
1 一次蛍光体部材
10 一次蛍光体
L1 一次蛍光
2 二次蛍光体部材
20 二次蛍光体
L2 二次蛍光
Claims (2)
- 原励起光を発する窒化物半導体発光素子と、一次蛍光体部材と、二次蛍光体部材とを有して構成される発光装置であって、
一次蛍光体部材は、原励起光によって励起されて一次蛍光を発する一次蛍光体を含んでいるとともに、板状に形成されており、
二次蛍光体部材は、前記一次蛍光によって励起されて二次蛍光を発する二次蛍光体を含んでいるとともに、一次蛍光体部材に対して窒化物半導体発光素子と同じ側に設けられた反射面上に、層状に形成されており、
一次蛍光体部材は、原励起光が二次蛍光体部材を透過することなく一次蛍光体に照射され得るように配置され、
二次蛍光体部材は、一次蛍光体部材から窒化物半導体発光素子側に放射される一次蛍光が二次蛍光体に照射され得るように配置され、
上記構成によって、
(a)一次蛍光体部材から窒化物半導体発光素子側とは反対側に放射される一次蛍光と、
(b)一次蛍光体部材から窒化物半導体発光素子と同じ側に放射された一次蛍光によって励起されることで二次蛍光体部材から放射され、一次蛍光体部材を窒化物半導体発光素子側から透過する二次蛍光とが、
出力光とされることを特徴とする、発光装置。 - 窒化物半導体発光素子が実装される底面と、該底面を取り囲む漏斗状の反射面とを備える凹部を有し、一次蛍光体部材が該凹部の開口を塞いでおり、二次蛍光体部材が該反射面上にコーティングされている、請求項1記載の発光装置。
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