JP4537035B2 - 非水電解液及びリチウム二次電池 - Google Patents
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Description
本発明の非水電解液は、直鎖ポリシロキサン鎖の末端にポリエーテル鎖が結合してなる下記[化1](例えば、実施例におけるオイル1)または下記[化2](例えば、実施例におけるオイル2)のいずれかに示す構造であって粘度が10cSt未満であるポリエーテル変性シリコーン油と、環状カーボネートと、溶質とが含有されてなることを特徴とする(例えば、実施例における試験例1〜4及び7〜9と実施例1〜4の非水電解液)。ただし、下記[化1]または下記[化2]において、kは0〜10の範囲であり、mは2から4の範囲の自然数であり、nは1〜4の範囲の自然数であり、RはCH3またはC6H5のいずれかであり、ZはCH3またはC2H5のいずれかである。
また、係る非水電解液によれば、前記ポリエーテル変性シリコーン油の粘度が10cSt未満なので、リチウムイオンの移動がスムーズに行われて、リチウムイオンのイオン伝導度を向上することができる。
係る非水電解液によれば、前記ポリエーテル変性シリコーン油の引火点が120℃以上なので、高温で引火する可能性が低く、非水電解液の熱安定性を高めることができる。
また、本発明の非水電解液においては、フッ素化環状カーボネートが添加されていても良い(例えば、実施例における実施例10、11の非水電解液)。
係るリチウム二次電池によれば、負極の表面に上記の被膜が形成されているので、この被膜の存在により、負極表面においてポリエーテル変性シリコーン油を含む非水電解液が分解するおそれがなく、リチウム二次電池の充放電容量を向上できる。
また、本発明のリチウム二次電池においては、前記非水電解液に更にフッ素化環状カーボネートが添加されていても良い(例えば、実施例における実施例10、11のリチウム二次電池)。
更に、アジリジン化合物として、下記[化8]に示す構造式で表される化合物、又は下記[化7]に示す構造式で表される化合物と下記[化8](例えば、実施例における試験例7〜9及び実施例3〜4のリチウム二次電池)に示す構造式で表される化合物との混合物であってもよい。
更にまた、アジリジン化合物として、下記[化9]〜[化10]に示すものを含んでいても良い。これらの化合物は、下記の[化7]及び/又は[化8]に示すものと同時に使用することが好ましい。
尚、下記[化7]の構造式中、R1はH、CH3、OHのいずれかであり、R2はHまたはCH3のいずれか一方である。また、下記[化8]の構造式中、R2はHまたはCH3のいずれか一方であり、下記[化9]におけるn1は0〜10の範囲が好ましく、下記[化10]におけるn2は0〜10の範囲が好ましい。
また、本発明のリチウム二次電池によれば、非水電解液が上記の[化3]または[化4]に記載の構造を有するポリエーテル変性シリコーン油を含むので、非水電解液の熱安定性並びにイオン伝導性が向上し、高温での安定性に優れるとともに高率充放電が可能なリチウム二次電池を構成することができる。
本発明のリチウム二次電池は、正極と負極と非水電解液とを具備してなり、前記非水電解液が、直鎖ポリシロキサン鎖の末端にポリエーテル鎖が結合してなる上記[化3](上記[化1]と同じ)または上記[化4](上記[化2]と同じ)のいずれかに示すポリエーテル変性シリコーン油と、環状カーボネートと、溶質とを含有してなるものである。尚、上記[化3]または上記[化4]中、kは0〜10の範囲であり、mは2から4の範囲の自然数であり、nは1〜4の範囲の自然数であり、RはCH3またはC6H5のいずれかであり、ZはCH3またはC2H5のいずれかである。
また、この非水電解液をポリマーに含浸させてなるゲル電解質を用いても良い。ポリマーとしては、PEO、PPO、PAN、PVDF、PMA、PMMA等のポリマーあるいはその重合体を用いることができる。
また、直鎖ポリシロキサン鎖の末端の一方または両方にポリエーテル鎖が結合するため、ポリエーテル変性シリコーン油の全体構造が直線状となり、これによりポリエーテル鎖の柔軟性が向上して粘度を低下させることができる。これにより、非水電解液のイオン伝導度を向上できる。また、ポリエーテル鎖が直鎖ポリシロキサン鎖のいずれか一方または両方に結合することで、ポリエーテル変性シリコーン油の粘度をより低下させることができ、非水電解液のイオン伝導度を更に向上することができる。
また本実施形態のポリエーテル変性シリコーン油は、引火点が120℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましい。引火点が120℃以上であれば、非水電解液の引火点を高めることができ、非水電解液の熱安定性を向上できる。
kが10を越えると熱安定性は向上するものの、粘度が高くなるおそれがあり、リチウムイオンとの溶媒和する能力が低下してイオン伝導度が低下するので好ましくない。
また、mが2未満だと、後述するポリエーテル変性シリコーン油の合成が困難であり、mが4を越えると粘度が高くなって結果的にイオン伝導度が低下するので好ましくない。
また、nが1未満(即ちnが0)だと、ポリシロキサン鎖に連結するポリエーテル鎖がほとんどなくなり、環状カーボネートとの相溶性が低下するので好ましくなく、nが4を越えるとポリエーテル鎖が長くなって粘度が高くなり、イオン伝導度が低下するので好ましくない。
更に、RがCH3またはC6H5のいずれかであり、ZがCH3またはC2H5のいずれかであれば、ポリエーテル変性シリコーン油の合成が容易になる。
また鎖状カーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネートのうちの1種以上を含むものが好ましい。これらの鎖状カーボネートは低粘度であるので、非水電解液自体の粘度を下げてイオン伝導度を高めることができる。ただし、これら鎖状カーボネートは引火点が低いので、過剰に添加すると非水電解液の引火点を下げてしまうので過剰添加しないように注意を払う必要がある。
更にフッ素化環状カーボネートとしては、フッ化エチレンカーボネートを例示することができ、特にモノフルオロエチレンカーボネートが好ましい。フッ素化環状カーボネートを添加することにより、非水電解液の不燃性をより向上させてリチウム二次電池の安全性を高めることができる。また、負極表面にフッ素化環状カーボネートによる被膜が形成され、この被膜によって非水電解液の分解が抑制され、リチウム二次電池のサイクル特性を向上できる。また、非水電解液の分解が抑制されることに伴って、分解ガスの発生量も少なくなる。
これらリチウム塩の非水電解質における濃度は、0.5モル/L以上2.0モル/L以下であることが好ましい。非水電解液中にこれらのリチウム塩が含まれるので、非水電解液自体のイオン伝導度を高めることができる。
非水電解液における環状カーボネートの含有率は、30体積%以上95体積%以下の範囲が好ましく、50体積%以上90体積%以下の範囲がより好ましい。環状カーボネートの含有率が30体積%未満だとイオン伝導度が低下するので好ましくなく、含有率が95体積%を超えると非水電解液の粘度が高くなってイオン伝導度が低下するので好ましくない。
更に、非水電解液にフッ素化環状カーボネートを添加する場合には、フッ素化環状カーボネートの含有率を0.1体積%以上25体積%以下の範囲にすることが好ましく、0.5体積%以上10体積%以下の範囲にすることがより好ましい。フッ素化環状カーボネートの含有率が0.1体積%未満だと負極表面の被膜の形成が不十分となり電解液の分解が抑制できないので好ましくなく、含有率が25体積%を超えると非水電解液の粘度が高くなってイオン伝導度が低下するので好ましくない。
例えば、上記[化1]及び上記[化3]のポリエーテル変性シリコーン油は、例えば塩化白金触媒存在下で、SiHR2O(SiR2O)kSiHR2(ポリシロキサン)に、CH2=CH(CH2)m−2O(C2H5O)nZ(ポリエーテル置換のポリオレフィン)をハイドロシリレーション反応させることにより得られる。
また、上記[化2]及び上記[化4]のポリエーテル変性シリコーン油は、例えば塩化白金触媒存在下で、SiR3O(SiR2O)kSiHR2(ポリシロキサン)に、CH2=CH(CH2)m−2O(C2H5O)nZ(ポリエーテル置換のポリオレフィン)をハイドロシリレーション反応させることにより得られる。
真空蒸留前のポリエーテル変性シリコーン油には、Ptが5ppm程度、BHTが60ppm程度含まれていることから、本発明ではポリエーテル変性シリコーン油に含まれるPtが少なくとも5ppm未満であるとともにBHTが60ppm未満であることが好ましく、Pt、BHTがそれぞれ検出限界以下であることがより好ましい。
またアジリジン化合物として、[化8]に示す構造式で表される化合物、又は上記[化7]に示す構造式で表される化合物と上記[化8]に示す構造式で表される化合物との混合物であってもよい。
また、アジリジン化合物として、上記[化9]〜[化10]に示すものを含んでいても良い。これらの化合物は、上記の[化7]及び/又は上記[化8]に示すものと同時に使用することが好ましい。
尚、上記[化7]の構造式中、R1はH、CH3、OHのいずれかであり、R2はHまたはCH3のいずれか一方である。また、上記[化8]の構造式中、R2はHまたはCH3のいずれか一方であり、上記[化9]におけるn1は0〜10の範囲が好ましく、上記[化10]におけるn2は0〜10の範囲が好ましい。
即ち、ポリアクリレート化合物による皮膜の形成は、図1に示すように進行するものと推定される。まず図1(a)に示すように、初充電開始前には、非水電解液中にポリアクリレート化合物が存在しており、次に図1(b)に示すように、充電を開始すると、ポリアクリレート化合物が負極表面に引き寄せられ、負極表面上でアニオン重合し、最終的に図1(c)に示すように被膜が形成される。
次に、図2(b)に示すように、充電を開始すると、陽イオンであるリチウムイオンが負極に引き寄せられることによって、Li−アジリジン架橋物が負極表面に付着する。これにより、負極表面において、アジリジン化合物の密度増加が生じる。
次に、リチウムイオンがアジリジン環とのイオン架橋から解き放たれ、負極内に吸蔵される。すると、残されたアジリジン環が開裂し、重合反応が開始され、その結果図2(c)に示すように被膜が形成される。この生成した被膜は負の電荷を帯びているため、陽イオンのみを輸送する被膜となる。そのため、電解液が直接負極に接して分解することを防止することができる。
即ち図3に示すように、ポリアクリレート化合物とアジリジン化合物が同時に添加された場合は、図1及び図2で説明した重合反応と同様の反応がそれぞれ進行し(図3(a)及び(b))、最終的にポリアクリレート化合物とアジリジン化合物が混合してなる皮膜が形成される(図3(c))。係る皮膜は極めて緻密で強固であり、ポリエーテル変性シリコーン油に対する耐性が極めて高いものである。
ポリアクリレート化合物やアジリジン化合物の添加量が上記範囲より少ないと負極表面に十分な被膜を形成できなくなるので好ましくなく、添加量が上記範囲より多いと被膜が厚くなり、界面抵抗が増加するので好ましくない。
また、負極の表面にポリアクリレート化合物やアジリジン化合物からなる被膜が形成されているので、ポリエーテル変性シリコーン油の分解が防止されて、リチウム二次電池の高率放電特性を向上できる。
尚、ポリアクリレート化合物やアジリジン化合物は、非水電解液に対する含有量が高い場合、それ自体が他の溶媒及びリチウム塩を取り込んでゲル化し、固体電解質を形成する場合がある。
したがって、本実施形態のリチウム二次電池を非水電解液二次電池として製造する場合には、たとえば、放置してもゲルを形成できない程度に少量のポリアクリレート化合物、アジリジン化合物のうちのいずれか一方または両方を非水電解質に添加し、負極表面にのみ皮膜を形成させればよい。
また、本実施形態のリチウム二次電池をゲル電解質二次電池として製造する場合には、ゲル形成に充分な比較的多量のポリアクリレート化合物やアジリジン化合物を非水電解質に添加し、ゲル化が完全に終了する前に、初充電を行うことによって、負極に皮膜を形成させればよい。
SiH(CH3)2OSiH(CH3)2と、CH2=CHCH2CH2O(C2H5O)3CH3とを塩化白金触媒存在下でハイドロシリレーション反応させることにより、下記[化11]に示す構造のポリエーテル変性シリコーン油を得た。以下、オイル1と称す。尚、このオイル1は、上記[化1]または上記[化3]において、RをCH3とし、ZをCH3とし、kを0とし、mを4とし、nを3としたものに相当する。
また、Si(CH3)3OSiH(CH3)2と、CH2=CHCH2CH2O(C2H5O)3CH3とを塩化白金触媒存在下でハイドロシリレーション反応させることにより、下記[化12]に示す構造のポリエーテル変性シリコーン油を得た。以下、オイル2と称す。尚、このオイル2は、上記[化2]または上記[化4]において、RをCH3とし、ZをCH3とし、kを0とし、mを4とし、nを3としたものに相当する。
更に、Si(CH3)3OSiH(CH3)OSi(CH3)3と、CH2=CHCH2CH2O(C2H5O)4CH3とを塩化白金触媒存在下でハイドロシリレーション反応させることにより、下記[化13]に示す構造のポリエーテル変性シリコーン油を得た。以下、オイル3と称す。
また、オイル1及びオイル2に対して、JIS−K2265に規定される開放式引火点測定装置により、室温から160℃の範囲で引火点を測定したところ、引火点が検出されなかった。従ってオイル1及びオイル2の引火点は少なくとも160℃を越えるものである。
実験例1で得られた試験例1〜6の非水電解液を用いて、コイン型のリチウム二次電池を作成し、放電容量を測定した。
電池の製造は、LiCoO2を正極活物質、ポリフッ化ビニリデンを結着剤、カーボンブラックを導電助材、Al箔を集電体とするペレット状の正極と、黒鉛を負極活物質、ポリフッ化ビニリデンを結着剤、Cu箔を集電体とするペレット状の負極と、ポロプロピレン製セパレータとを重ね合わせた状態で電池容器に挿入し、試験例1〜6の非水電解液を注入した後に電池容器を封口することにより行い、直径20mm、高さ1.6mm、設計充放電容量が5mAhのコイン型の電池(試験例1〜6)を製造した。
次に、各電池に対して、0.2Cの電流で電池電圧が4.2Vに達するまで定電流充電をした後に9時間の定電圧充電する条件で充電を行った。そして、0.2Cの電流で電池電圧が2.75Vになるまで放電を行うことにより、各電池の放電容量を測定した。結果を図4及び図5に示す。
添加する皮膜形成化合物としては、上記[化6]に示す構造のポリアクリレート化合物(以下、PAAと表記)と、下記[化14]に示す構造のテトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピネート[tetramethylolmethane-tri-β-aziridinylpropionate]と上記[化8]のR2がHである化合物とが、25:75の割合で混合した混合物(以下、TAZOと表記)を用いた。
試験例2,4,6の非水電解液に、PAAを0.2質量%、TAZOを1質量%の割合で添加することにより、試験例7、8、9の非水電解液を調製した。これらの具体的な組成は表1に併せて示す。
そして、試験例7、8、9の非水電解液を用いたこと以外は上記と同様にして、試験例7、8、9のリチウム二次電池を製造した。
次に、試験例7、8、9の各電池に対して、0.2Cの電流で電池電圧が3Vに達するまで定電流充電をした後に4時間の定電圧充電をし、更に0.2Cの電流で電池電圧が4.2Vに達するまで定電流充電をした後に9時間の定電圧充電する2段階充電を行うことにより、各電池について初充電(化成)を行い、負極表面に皮膜を形成させた。
その後、全ての電池について、0.2Cの電流で電池電圧が2.75Vになるまで放電を行って放電容量を測定した。結果を図5に示す。
一方、図5に示すように、被膜形成化合物を添加した電池(試験例7、8)は、被膜形成化合物が未添加の試験例2,4,6の電池に対して、放電容量が大幅に向上していることが分かる。また、試験例7、8の電池は、直鎖構造のポリエーテル変性シリコーン油(オイル1,2)を含んでおり、試験例9の電池(分岐構造のポリエーテル変性シリコーン油(オイル3)を含有したもの)に対して優れた放電容量を示すことが分かる。
尚、従来の非水電解液は、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒(体積比でEC:DEC=3:7)にLiPF6を1.3モル/Lの濃度で溶解させたものである。また、引火点の測定は、JIS−K2265に規定される開放式引火点測定装置により、室温から160℃の範囲で引火点を測定した。
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒(体積比でEC:DEC=3:7)にLiPF6を1.3モル/Lの濃度で溶解させてなる比較例1の非水電解液を調製した。
次に、比較例1の非水電解液に、上記[化11]に示す構造のオイル1を10体積%の含有率となるように添加することにより、実施例1の非水電解液を調製した。
また、比較例1の非水電解液に、上記[化12]に示す構造のオイル2を10体積%の含有率となるように添加することにより、実施例2の非水電解液を調製した。
更に、実施例1の非水電解液に、PAAを0.2質量%、TAZOを1質量%の割合で添加することにより、実施例3の非水電解液を調製した。
更に、実施例2の非水電解液に、PAAを0.2質量%、TAZOを1質量%の割合で添加することにより、実施例4の非水電解液を調製した。
次に、比較例1の非水電解液に、上記[化13]に示す構造のオイル3を10体積%の含有率となるように添加することにより、比較例2の非水電解液を調製した。
更に、比較例2の非水電解液に、PAAを0.2質量%、TAZOを1質量%の割合で添加することにより、比較例3の非水電解液を調製した。
次に、実施例1、2と比較例1、2の各電池に対して、0.5Cの電流で電池電圧が4.2Vに達するまで定電流充電をした後に9時間の定電圧充電する条件で充電を行った。そして、0.2C、0.5C、1.0C、2.0Cの電流で電池電圧が2.75Vになるまでそれぞれ放電を行うことにより、放電電流毎の各電池の放電容量を測定した。結果を図6及び図7に示す。
その後、0.2C、0.5C、1.0C、2.0Cの電流で電池電圧が2.75Vになるまでそれぞれ放電を行うことにより、放電電流毎の各電池の放電容量を測定した。結果を図6及び図7に示す。
また図6及び図7に示すように、比較例2はいずれの放電電流でも実施例3とほぼ同等の放電容量を示すが、比較例3は1.0〜2.0Cの範囲で実施例1〜4よりも放電容量が低くなっていることが分かる。
また、実施例4は比較例1よりも放電容量が少ないものの、サイクル曲線の傾きが比較例1より小さくなっており、サイクルの進行に伴う放電容量の劣化が比較例1よりも少ないことが分かる。
更に、比較例3の電池は、実施例4よりも放電容量が少なく、またサイクル曲線の傾きが実施例4より大きくなっており、サイクルの進行に伴う放電容量の劣化が実施例4よりも大きいことが分かる。
このように、被膜形成化合物を添加した非水電解液を備えたリチウム二次電池(実施例3、4)は、サイクル特性に優れることが分かる。
そして、上記の比較例1の非水電解液に、下記[化15]に示す構造のオイル4を10体積%の含有率となるように添加することにより、実施例5の非水電解液を調製した。
そして、実施例5の非水電解液を用いたこと以外は実験例2と同様にして、実施例5のリチウム二次電池を製造した。
即ち、実施例1の非水電解液に含まれるオイル1は、上記[化1]に示す構造式においてnを3にしたものに相当するが、このオイル1は図10に示すようにオイル1の単独でリチウムイオン(Li+)に配位できる。更に、電解液中にはECのみにより配位されたリチウムイオン(Li+)も共存している。
このような実施例1の電解液を用いた場合、初充電において、図10に示すように、負極表面にEC由来の被膜10とシリコーンオイル分解由来の被膜20が競争反応で生成する。このようにして、負極表面上にリチウムイオンが透過しないシリコーンオイル分解由来の被膜20が生成されるものと考えられる。
このため、図11に示すように、初充電において、EC由来の被膜10が図10の場合よりも多く形成される。その結果、実施例1の電解液よりも実施5の方がより良好な被膜を形成でき、これにより0.2C及び0.5Cのときにおける放電容量が増加したものと思われる。
Si(CH3)3OSiH(CH3)2と、CH2=CHCH2O(C2H5O)2CH3とを塩化白金触媒存在下でハイドロシリレーション反応させることにより、下記[化16]に示す構造のポリエーテル変性シリコーン油を得た。以下、オイル5と称す。尚、このオイル5は、上記[化2]または上記[化4]において、RをCH3とし、ZをCH3とし、kを0とし、mを3とし、nを2としたものに相当する。
また、第1電解液に、オイル6を15体積%の含有率となるように添加することにより、実施例7の非水電解液を調製した。
更に、第1電解液に、オイル7を15体積%の含有率となるように添加することにより、実施例8の非水電解液を調製した。
また、第1電解液に、オイル6を15体積%、モノフルオロエチレンカーボネート(FEC)を5体積%添加することにより、実施例11の非水電解液を調製した。
電池の製造は、LiCoO2を正極活物質、ポリフッ化ビニリデンを結着剤、カーボンブラックを導電助材、Al箔を集電体とする正極と、黒鉛を負極活物質、ポリフッ化ビニリデンを結着剤、Cu箔を集電体とする負極と、ポロプロピレン製セパレータとを重ね合わせた状態で渦巻き状に巻回し、これを電池容器に挿入し、実施例6〜11の非水電解液を注入した後に電池容器を封口することにより行い、設計充放電容量が820mAhの電池を製造した。
その後、0.2C、0.5C、1.0C、2.0Cの電流で電池電圧が2.75Vになるまでそれぞれ放電を行うことにより、放電電流毎の各電池の放電容量を測定した。結果を図12に示す。
またリチウム塩としてLiBETIを使用した実施例9については、実施例7と同等のサイクル特性を示していることがわかる。また、図示はしないが更にサイクルを繰り返すとLiPF6よりもサイクルが良好であった。このように、LiBETIは、LiPF6よりも優れたサイクル特性を示すことが分かる。
また、実施例9については、LiBETIが添加されているために、3.3V付近にみられた被膜形成に伴う電流が小さくなり、負極表面に良好な皮膜の形成が促されていると考えられる。
Claims (8)
- 前記ポリエーテル変性シリコーン油の引火点が120℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の非水電解液。
- 鎖状カーボネートが添加されてなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の非水電解液。
- 前記非水電解液にフッ素化環状カーボネートが添加されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の非水電解液。
- 前記負極の表面にポリアクリレート化合物、アジリジン化合物、フッ素化環状カーボネートのうち、単一成分または混合物からなる被膜が形成されていることを特徴とする請求項5に記載のリチウム二次電池。
- 前記非水電解液に鎖状カーボネートが添加されてなることを特徴とする請求項5または請求項6に記載のリチウム二次電池。
- 前記非水電解液にフッ素化環状カーボネートが添加されてなることを特徴とする請求項5ないし請求項7のいずれかに記載のリチウム二次電池。
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