JP4462414B2 - 非水電解液及びこれを用いた電池 - Google Patents

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本発明は、特にリチウムイオンを正極と負極の間で移動させて充放電を行うリチウムイオン二次電池に使用される非水系電解液として、エーテル基を有する環状ポリシロキサンを含む非水電解液、及びその電解液を用いた電池に関するものである。本発明の電解液を使用した電池は温度特性、高出力特性に優れる。
近年、ノートパソコン、携帯電話、デジタルカメラのポータブル電源として、高エネルギー密度を有するリチウムイオン二次電池の使用が増大している。また、環境にやさしい自動車として実用化が期待される電気自動車用の電源としてもリチウムイオン二次電池が検討されている。
しかし、リチウムイオン二次電池は高性能であるものの、厳しい環境下(特に低温環境下)での放電特性及び短時間に大量の電気を必要とする高出力下での放電特性については十分とは云えない。
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、低温下での放電特性、高出力下での放電特性を与える電池、特に非水電解液二次電池を可能にする非水電解液及びこれを用いた電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を達成するため鋭意検討を行った結果、非水電解液として、下記式(1)で示されるエーテル基を有する環状ポリシロキサンを含む電解液を二次電池の電解液として用いることにより、低温下での放電特性、高出力下での放電特性が向上した二次電池が得られることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、非水溶媒と電解質塩と下記式(1)で示されるエーテル結合酸素原子を1〜7個有し、任意にエステル結合を有してもよい1価炭化水素基を1分子中に3〜6個含有する、環状構造のオルガノポリシロキサンとを必須成分とすることを特徴とする非水電解液、及び正極、負極、セパレータ、電解液を備えた電池であって、電解液が上記非水電解液であることを特徴とする電池を提供する。
Figure 0004462414
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2はメチル基、エチル基、プロピル基又はアセチル基のいずれかである。mは3〜6の整数、nは1〜6の整数である。)
本発明のエーテル基を有する環状ポリシロキサンを含む非水電解液を使用した電池は、優れた温度特性及び高出力特性を有する。
本発明の非水電解液に用いるシロキサンは、下記一般式(1)で示されるエーテル基を有する環状シロキサンである。
Figure 0004462414
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2はメチル基、エチル基、プロピル基又はアセチル基のいずれかである。mは3〜6の整数、nは1〜6の整数である。)
本発明のエーテル基を有する式(1)の環状ポリシロキサンは、エーテル基を有するため、電解質塩との相溶性が向上し、かつ良好な濡れ性を有するシロキサン結合を有するため、電極表面及びセパレータを介した電極間のリチウムイオンが、円滑に移動するものと考えられる。
本発明のエーテル基を有する式(1)の環状ポリシロキサンとしては、下記式で示されるものを挙げることができる。
Figure 0004462414
本発明のエーテル基を有する式(1)の環状ポリシロキサンは、ケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を有する所定のポリシロキサンと、付加反応に必要なアリル基又はメタリル基を有する所定のポリエーテル化合物との付加反応により得ることができる。例えば、式(3)のポリエーテル基を有する環状ポリシロキサンの場合は、SiH基を有する所定のポリシロキサンとして、
Figure 0004462414

を用いる。一方、付加反応に必要なアリル基又はメタリル基を有する所定のポリエーテル化合物として、
Figure 0004462414
を用いる。
上記付加反応は、白金触媒又はロジウム触媒の存在下で行うことが望ましく、具体的には塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸−ビニルシロキサン錯体等の触媒が好適に使用される。また、助触媒として酢酸ナトリウムやクエン酸ナトリウムを添加してもよい。
なお、触媒の使用量は触媒量とすることができるが、SiH基含有ポリシロキサンとアリル基又はメタリル基含有化合物との総量に対して白金又はロジウム量で50ppm以下であることが好ましく、特に20ppm以下であることが好ましい。
上記付加反応は、必要に応じて有機溶剤中で行ってもよい。有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール等の脂肪族アルコール、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。付加反応条件は特に限定されるものではないが、還流下で1〜10時間反応させることが好ましい。
本発明のエーテル基を有する式(1)の環状ポリシロキサンは、非水電解液中に0.001体積%以上含有することが必要である。0.001体積%未満では本発明の効果が十分発揮できない。好ましくは0.1体積%以上含有することである。また含有量の上限については用いる非水電解液用溶媒によっても異なるが、非水電解液内でのLiイオンの移動が実用レベル以下にならない程度の含有量とする。通常、80体積%以下、好ましくは50体積%以下、より好ましくは30体積%以下である。
本発明のエーテル基を有する式(1)の環状ポリシロキサンの粘度については特に制限は無いが、非水電解液内でのLiイオンのスムーズな移動を考慮すると、例えばキャノン−フェンスケ法による粘度測定において25℃での粘度は100mm2/s以下、好ましくは50mm2/s以下である。粘度の下限は特に限定されないが、通常、0.1mm2/s以上、特に1mm2/s以上であればよい。
本発明の非水電解液は、更に電解質塩及び非水溶媒を含有する。
本発明に使用される電解質塩は、電解質として使用し得るものであれば特に制限はない。一般にLiPF6,LiBF4,LiClO4,LiSbF6,LiCF3SO3,LiN(CF3SO22,LiC(CF3SO23等のリチウム金属塩が使用される。これらは複数併用使用してもよい。
非水電解液の電解質塩の濃度は、電気伝導性の点から、0.5〜2.0モル/リットルが好ましい。
本発明に使用される非水電解液用溶媒としては、非水電解液用として使用し得るものであれば特に制限はない。一般にエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン等の非プロトン性高誘電率溶媒や、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピオネート、メチルアセテート、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等の非プロトン性低粘度溶媒が挙げられる。これらの非プロトン性高誘電率溶媒と非プロトン性低粘度溶媒を適当な混合比で併用することが望ましい。
更に、本発明の非水電解液中には必要に応じて各種添加剤を添加してもよい。例えば、サイクル寿命向上を目的としたビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、4−ビニルエチレンカーボネート等や、過充電防止を目的としたビフェニル、アルキルビフェニル、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、ジフェニルエーテル、ベンゾフラン等や、脱酸や脱水を目的とした各種カーボネート化合物、各種カルボン酸無水物、各種含窒素及び含硫黄化合物が挙げられる。
本発明に係る電池は、特に非水電解液二次電池として構成され、正極、負極、セパレータ、電解液を備えたものであるが、本発明においては、この電解液として、上記非水電解液を用いたものである。
この場合、その他の構成は、公知の二次電池の場合と同様でよいが、本発明を構成する正極材料は、リチウムとコバルト、マンガン、ニッケル等の遷移金属との複合酸化物が好ましい。例えば、LiCoO2,LiMnO2,LiNiO2等が挙げられる。またこれらの遷移金属の一部をFe,Si,Zn,Cu,Mg,Ga,Ti,Al,Cr,V等の金属で置き換えたものでもよい。これらの材料は複数併用して使用してもよい。
本発明を構成する負極材料は、リチウムを吸蔵・放出可能なものならば特に制限はない。一般的に、黒鉛等の炭素質材料、珪素や錫等の金属及びこれらの金属酸化物、リチウム金属、及び種々のリチウム合金が挙げられる。これらの負極材料は複数併用してもよい。
正極、負極の作製方法については特に制限はない。一般的には、溶媒に活物質、結着剤、導電剤等を加えてスラリー状とし、集電体シートに塗布し乾燥、圧着して作製する。結着剤としては一般的にポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、各種ポリイミド樹脂等が挙げられる。
導電剤としては、一般的に黒鉛、カーボンブラック等の炭素系材料や、銅、ニッケル等の金属材料が挙げられる。集電体としては正極用にはアルミニウム、又はその合金、負極用には銅、ステンレス、ニッケル等の金属又はそれらの合金等が挙げられる。
正極と負極の間に用いられるセパレータは電解液に対して安定であり、保液性に優れていれば特に制限はないが、一般的にはポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンの多孔質シート、又は不織布が挙げられる。
電池の形状は任意であり、特に制限はない。一般的にはコイン形状に打ち抜いた電極とセパレータを積層したコインタイプ、電極シートとセパレータをスパイラル状にしたシリンダータイプ等が挙げられる。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、粘度はキャノン−フェンスケ法による25℃における値である。
[実施例1]
(ポリエーテル基を有する環状ポリシロキサンの合成)
前記式(3)で示されるポリシロキサンを以下の手順で合成した。撹拌機、温度計及び還流管を備えた反応器に前記式(8)で示されるアリル基を有しエチレンオキサイド2モルのポリエーテル100gとトルエン100g及び塩化白金酸0.5質量%のイソプロピルアルコール(IPA)溶液0.05gを仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら100℃にて前記式(7)で示される1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン31gを滴下して反応を行った。SiH基に対する末端不飽和基のモル比は約1.2で行った。
反応液を減圧下で精密蒸留を行い、前記式(3)で示されるポリエーテル基を有する環状ポリシロキサンを得た。このものの粘度は33.2mm2/sで、ガスクロマトグラフィー分析による純度は99.9%であった。
(非水電解液の調製)
エチレンカーボネート47.5体積%とジエチルカーボネート47.5体積%に式(3)で示されるポリシロキサン5体積%を溶解した。次に、LiPF6を1モル/リットルの濃度で溶解し非水電解液とした。
(電池材料の作製)
正極材料として、LiCoO2を活物質とし、集電体としてアルミ箔を用いた単層シート(パイオニクス(株)製、商品名;ピオクセル C−100)を用いた。また、負極材料として、黒鉛を活物質とし、集電体として銅箔を用いた単層シート(パイオニクス(株)製、商品名;ピオクセル A−100)を用いた。
次に、セパレータとして、ポリオレフィンの多孔質膜(セルガード社製、商品名;セルガード2400)を用いた。
(電池の組み立て)
アルゴン雰囲気下のドライボックス内で、前記電池材料と正極導電体を兼ねるステンレス製缶体と負極導電体を兼ねるステンレス製封口板と絶縁用ガスケットを用いて2032コイン型電池を組み立てた。
(電池性能の評価;低温特性)
25℃下で充電(0.6mA一定電流下で4.2Vまで)と放電(0.6mA一定電流下で2.5Vまで)を10サイクル繰り返した後、5℃下で同様に充放電を繰り返した。25℃下で10サイクル目の放電容量を100として、5℃下での放電容量が80に低下した時のサイクル数を求めた。
また、比較例として、非水電解液にポリシロキサンを含有しない場合についても2032コイン型電池を組み立て、同様の評価を行った。
その結果、非水電解液にポリシロキサンを含有した場合は、123サイクルであるのに対して、非水電解液にポリシロキサンを含有しない場合は85サイクルであった。
(電池性能の評価;高出力特性)
25℃下で充電(0.6mA一定電流下で4.2Vまで)と放電(0.6mA一定電流下で2.5Vまで)を5サイクル繰り返した後、充電条件はそのままで、放電の電流を5mAにして5サイクル繰り返した。
この2種類の充放電を交互に繰り返した。最初の0.6mA充放電における5サイクル目の放電容量を100として、放電容量が80に低下した時のサイクル数を求めた。
また、比較例として、非水電解液にポリシロキサンを含有しない場合についても2032コイン型電池を組み立て、同様の評価を行った。
その結果、非水電解液にポリシロキサンを含有した場合は、138サイクルであるのに対して、非水電解液にポリシロキサンを含有しない場合は93サイクルであった。
[実施例2〜4]
実施例1と同様にして、表1に示す他のポリエーテル基を有するの環状ポリシロキサンについても、電池性能を測定した。その結果を実施例1、比較例も含めて表1に示す。
Figure 0004462414

Claims (5)

  1. 非水溶媒と電解質塩と下記式(1)で示されるポリシロキサンとを必須成分とすることを特徴とする非水電解液。
    Figure 0004462414
    (式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2はメチル基、エチル基、プロピル基又はアセチル基のいずれかである。mは3〜6の整数、nは1〜6の整数である。)
  2. ポリシロキサンが、下記式(2)〜(6)のいずれかで示されるものである請求項1記載の非水電解液。
    Figure 0004462414
  3. ポリシロキサンの含有量が0.001体積%以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の非水電解液。
  4. 電解質塩がリチウム金属塩であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の非水電解液。
  5. 正極、負極、セパレータ、電解液を備えた電池であって、電解液が請求項1〜4のいずれか1項記載のものであることを特徴とする電池。
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