JP2007200871A - リチウムイオン二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】低い充電深度での充放電の繰り返しに、良好な性能を維持できるリチウムイオン二次電池を提供する。
【解決手段】非水系電解液が、式(1)、式(2)、式(3)で表される化合物、分子内にS−F結合を有する化合物、硝酸塩、亜硝酸塩、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩を1種以上含有し、かつ負極活物質が異配向性炭素複合物を含有するリチウムイオン二次電池。
Figure 2007200871

[R〜Rは炭素数1〜12の有機基、nは3〜10の整数、xは1〜3の整数、p、q、rは0〜3の整数。AはH、C、N、O、F、S、Si及び/又はPからなる基。]
【選択図】なし

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池に関するものであり、更に詳細には、特定の非水系電解液と、特定の負極活物質を有するリチウムイオン二次電池に関するものである。
情報関連機器、通信機器の分野では、パソコン、ビデオカメラ、携帯電話等の小型化に伴い、これらの機器に用いる電源として、高エネルギー密度であるという点から、リチウムイオン二次電池が実用化され広く普及するに至っている。
近年では、上記の分野に加えて、自動車の分野においても、特に、環境問題、資源問題を背景に開発が急がれている電気自動車用の電源としての利用を中心に、リチウムイオン二次電池が検討されている。
リチウムイオン二次電池のうち、金属リチウムを負極とする二次電池は、高容量化を達成できる電池として古くから盛んに研究が行われている。しかし、これらの電池には、金属リチウムが充放電の繰り返しによりデンドライト状に成長し、最終的に正極に達して電池内部において短絡が生じてしまうという問題があり、この問題は金属リチウムイオン二次電池を実用化する際の最大の技術的な課題となっている。
そこで負極に、例えば、コークス、人造黒鉛、天然黒鉛等のリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な炭素質材料を用いたリチウムイオン二次電池が提案されている。このようなリチウムイオン二次電池では、リチウムが金属状態で存在しないためデンドライトの形成が抑制され、電池寿命と安全性を向上することができる。特に、人造黒鉛や天然黒鉛等の黒鉛系炭素質材料は、単位体積当たりのエネルギー密度を向上させることができる材料として期待されている。
しかしながら、黒鉛系の種々の電極材料を単独で、あるいはリチウムを吸蔵及び放出することが可能な他の負極材料と混合して負極としたリチウムイオン二次電池に、リチウム一次電池で一般に好んで使用されるプロピレンカーボネートを主溶媒とする非水系電解液を用いると、黒鉛電極表面で溶媒の分解反応が激しく進行し、黒鉛電極へのスムーズなリチウムの吸蔵及び放出が不可能になる。
一方、エチレンカーボネートはこのような分解が少ないことから、リチウムイオン二次電池の非水系電解液の主溶媒として多用されているが、エチレンカーボネートを主溶媒としても、充放電過程において、電極表面で非水系電解液が分解するために充放電効率やサイクル特性の低下を招くといった問題がある。
更に電気自動車用電源としてリチウムイオン二次電池を使用する場合、山道や連続した坂道を登る場合に、充電容量が少ない領域での充放電が繰り返されることが多くなり、電池に対して大きな負担となることが予想される。
これまで、リチウムイオン二次電池の正極や負極の活物質を始めとする様々な電池の構成要素について、数多くの技術が検討されており、負極活物質に関する技術としても、特願2004−35207の明細書には、所定範囲内のアスペクト比を有する黒鉛質及びそれとは配向性の異なる黒鉛質が複合化した黒鉛複合体粉末と、人造黒鉛粉末とを含有する黒鉛混合粉末を負極材料として用いることで、高い電極密度において、放電容量が大きく、充放電効率が高く、負荷特性に優れ、かつ、充電時の電極膨張が小さい、高性能のリチウムイオン二次電池を安定して効率的に製造できることが記載されている。しかしながら、この方法を用いても、低い充電深度での長期間充放電の繰り返しに対する特性を改善については十分とは言えなかった。
また、非水系電解液に関する技術としても、特許文献1には、リチウムイオン二次電池において、非水系電解液にモノフルオロリン酸リチウムやジフルオロリン酸リチウムを添加すると、電極界面に良質な被膜が形成されることにより、非水系電解液の分解が抑制されて、保存特性が向上した電池が得られることが記載されている。しかしながら、この方法を用いても、低い充電深度での長期間充放電の繰り返しに対する特性を改善については十分とは言えなかった。
特開平11−67270号公報
本発明は、かかる背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、低い充電深度での長期間充放電の繰り返しに対して、良好な性能を維持できるリチウムイオン二次電池を提供することにある。
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意研究した結果、特定の負極活物質と、特定の化合物を含有する非水系電解液とを組み合わせて用いることによって、低い充電深度での長期間充放電の繰り返しに対する特性が著しく向上することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、リチウム塩を含有する非水系電解液、負極活物質及び正極活物質を少なくとも有するリチウムイオン二次電池であって、該非水系電解液が、一般式(1)で表される環状シロキサン化合物、一般式(2)で表されるフルオロシラン化合物、一般式(3)で表される化合物、分子内にS−F結合を有する化合物、硝酸塩、亜硝酸塩、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、酢酸塩及びプロピオン酸塩からなる群より選ばれた少なくとも1種以上の化合物を、該非水系電解液全体中に10ppm以上含有するものであり、かつ、該負極活物質が、配向性の異なる炭素質物を2種以上含有する異配向性炭素複合物を含有することを特徴とするリチウムイオン二次電池を提供するものである。
Figure 2007200871
[一般式(1)中、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよい炭素数1〜12の有機基を表し、nは3〜10の整数を表す。]
Figure 2007200871
[一般式(2)中、R〜Rは互いに同一であっても異なっていてもよい炭素数1〜12の有機基を表し、xは1〜3の整数を表し、p、q及びrはそれぞれ0〜3の整数を表し、1≦p+q+r≦3である。]
Figure 2007200871
[一般式(3)中、R〜Rは互いに同一であっても異なっていてもよい炭素数1〜12の有機基を表し、AはH、C、N、O、F、S、Si及び/又はPから構成される基を表す。]
本発明によれば、低い充電深度での長期間充放電の繰り返しに対して、良好な性能を維持できるリチウムイオン二次電池の実現が可能である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの具体的内容に限定はされず、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
<非水系電解液>
本発明のリチウムイオン二次電池に用いられる非水系電解液は、リチウム塩及びこれを溶解する非水溶媒を含有する。
[リチウム塩]
リチウム塩としては、リチウムイオン二次電池用非水系電解液の電解質として用いられ得ることが知られているリチウム塩であれば特に制限はないが、例えば次のものが挙げられる。
無機リチウム塩:
LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6等の無機フッ化物塩;LiClO4、LiBrO4、LiIO4等の過ハロゲン酸塩;LiAlCl4等の無機塩化物塩等。
含フッ素有機リチウム塩:
LiCF3SO3等のパーフルオロアルカンスルホン酸塩;LiN(CF3SO22、LiN(CF3CF2SO22、LiN(CF3SO2)(C49SO2)等のパーフルオロアルカンスルホニルイミド塩;LiC(CF3SO23等のパーフルオロアルカンスルホニルメチド塩;Li[PF5(CF2CF2CF3)]、Li[PF4(CF2CF2CF32]、Li[PF3(CF2CF2CF33]、Li[PF5(CF2CF2CF2CF3)]、Li[PF4(CF2CF2CF2CF32]、Li[PF3(CF2CF2CF2CF33]等のフルオロアルキルフッ化リン酸塩等。
オキサラトボレート塩:
リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレート等。
これらは、1種を単独で使用しても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。これらのなかでも、非水溶媒に対する溶解性、二次電池とした場合の充放電特性、出力特性、サイクル特性等を総合的に判断すると、LiPF6、LiBF4等が好ましく、LiPF6が特に好ましい。
非水系電解液中の上記リチウム塩の濃度は、特に制限はないが、通常0.3mol/L以上、好ましくは0.6mol/L以上、より好ましくは0.7mol/L以上である。また、その上限は、通常2mol/L以下、好ましくは1.8mol/L以下、より好ましくは1.7mol/L以下である。濃度が低すぎると、非水系電解液の電気伝導率が不十分の場合があり、一方、濃度が高すぎると、粘度上昇のため電気伝導度が低下する場合があり、リチウムイオン二次電池の性能が低下する場合がある。
非水系電解液中には、リチウム塩として、含フッ素リチウム塩を含有することが好ましく、非水系電解液中の含フッ素リチウム塩の濃度は、特に制限はないが、0.5mol/L以上が好ましく、特に好ましくは0.7mol/L以上である。また、その上限は、2mol/L以下が好ましく、1.7mol/L以下が特に好ましい。濃度が低すぎると、非水系電解液の電気伝導率が不十分となる場合があり、一方、濃度が高すぎると、粘度上昇のため電気伝導度が低下して、リチウムイオン二次電池の性能が低下する場合がある。
リチウム塩は、1種を単独で使用しても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良いが、リチウム塩を2種以上併用する場合の好ましい一例は、LiPF6とLiBF4との併用であり、この場合には、両者の合計に占めるLiBF4の割合が、0.01質量%以上、20質量%以下であることが特に好ましく、0.1質量%以上、5質量%以下であるのが更に好ましい。また、他の好ましい一例は、無機フッ化物塩とパーフルオロアルカンスルホニルイミド塩との併用であり、この場合には、両者の合計に占める無機フッ化物塩の割合は、70質量%以上、99質量%以下であることが特に好ましく、80質量%以上、98質量%以下であることがより更に好ましい。この両者の併用は、高温保存による劣化を抑制する効果がある。
[非水溶媒]
非水溶媒としても従来から非水系電解液の溶媒として提案されているものの中から、適宜選択して用いることができる。例えば、次のものが挙げられる。
1)環状カーボネート:
環状カーボネートを構成するアルキレン基の炭素数は2〜6が好ましく、特に好ましくは2〜4である。具体的には例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等が挙げられる。中でも、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートが好ましい。
2)鎖状カーボネート:
鎖状カーボネートとしては、ジアルキルカーボネートが好ましく、構成するアルキル基の炭素数は、それぞれ、1〜5が好ましく、特に好ましくは1〜4である。具体的には例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート等の対称鎖状カーボネート類;エチルメチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネート、エチル−n−プロピルカーボネート等の非対称鎖状カーボネート類等のジアルキルカーボネートが挙げられる。中でも、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートが好ましい。
3)環状エステル:
具体的には例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等が挙げられる。
4)鎖状エステル:
具体的には例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル等が挙げられる。
5)環状エーテル:
具体的には例えば、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等が挙げられる。
6)鎖状エーテル:
具体的には例えば、ジメトキシエタン、ジメトキシメタン等が挙げられる。
7)含硫黄有機溶媒:
具体的には例えば、スルフォラン、ジエチルスルホン等が挙げられる。
これらは単独で用いても、2種類以上を併用してもよいが、2種以上の化合物を併用することが好ましい。例えば、環状カーボネート類や環状エステル類等の高誘電率溶媒と、鎖状カーボネート類や鎖状エステル類等の低粘度溶媒とを併用するのが好ましい。
非水溶媒の好ましい組合せの一つは、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類を主体とする組合せである。なかでも、非水溶媒に占める環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との合計が、85容量%以上、好ましくは90容量%以上、より好ましくは95容量%以上である。また、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との合計に対する環状カーボネート類の容量が5%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上であり、通常50%以下、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下のものである。非水溶媒全体に占めるカーボネート類の合計の上記好ましい容量範囲と、環状及び鎖状カーボネート類に対する環状カーボネート類の好ましい上記容量範囲は、組み合わされていることが特に好ましい。
環状カーボネート類と鎖状カーボネート類の好ましい組み合わせの具体例としては、エチレンカーボネートとジメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート等が挙げられる。これらのエチレンカーボネートと鎖状カーボネート類との組み合わせに、更にプロピレンカーボネートを加えた組み合わせも、好ましい組み合わせとして挙げられる。プロピレンカーボネートを含有する場合には、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの容量比は、99:1〜40:60が好ましく、特に好ましくは95:5〜50:50である。
これらの中で、非対称鎖状カーボネート類を含有するものが更に好ましく、特に、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートといったエチレンカーボネートと対称鎖状カーボネート類と非対称鎖状カーボネート類を含有するものが、サイクル特性と大電流放電特性のバランスが良いので好ましい。中でも、非対称鎖状カーボネート類がエチルメチルカーボネートであるものが好ましく、また、ジアルキルカーボネートを構成するアルキル基の炭素数は1〜2が好ましい。
好ましい非水溶媒の他の例は、鎖状エステルを含有するものである。特に、上記、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類の混合溶媒に、鎖状エステルを含有するものが、電池の低温特性向上の観点から好ましく、鎖状エステルとしては,酢酸メチル、酢酸エチルが、特に好ましい。非水溶媒に占める鎖状エステルの容量は、通常5%以上、好ましくは8%以上、より好ましくは15%以上であり、通常50%以下、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下、更に好ましくは25%以下である。
他の好ましい非水溶媒の例は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン及びγ−バレロラクトンよりなる群から選ばれた1種の有機溶媒、又は該群から選ばれた2以上の有機溶媒からなる混合溶媒を全体の60容量%以上を占めるものである。こうした混合溶媒は、引火点が50℃以上であるものが好ましく、中でも70℃以上であるものが特に好ましい。この溶媒を用いた非水系電解液は、高温で使用しても溶媒の蒸発や液漏れが少なくなる。中でも、非水溶媒に占めるγ−ブチロラクトンの量が60容量%以上であるものや、非水溶媒に占めるエチレンカーボネートとγ−ブチロラクトンとの合計が、80容量%以上、好ましくは90容量%以上であり、かつエチレンカーボネートとγ−ブチロラクトンとの容量比が5:95〜45:55であるもの、又は非水溶媒に占めるエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとの合計が、80容量%以上、好ましくは90容量%以上であり、かつエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの容量比が30:70〜60:40であるものを用いると、一般にサイクル特性と大電流放電特性等のバランスがよくなる。
[特定化合物]
本発明の非水系電解液は、一般式(1)で表される環状シロキサン化合物、一般式(2)で表されるフルオロシラン化合物、一般式(3)で表される化合物、分子内にS−F結合を有する化合物、硝酸塩、亜硝酸塩、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、酢酸塩及びプロピオン酸塩からなる群より選ばれた少なくとも1種以上の化合物(以下、これらを「特定化合物」と略記することがある)を、10ppm以上含有することを特徴とする。
かかる特定化合物が含有された非水系電解液と、配向性の異なる炭素質物を2種以上含有する異配向性炭素複合物を含有する負極活物質とを組み合わせることによって、更には、かかる特定化合物が含有された非水系電解液と、結晶性の異なる炭素質物を2種以上含有する異配向性炭素複合物を含有する負極活物質とを組み合わせることによって、低い充電深度での長期間充放電の繰り返しに対する特性を改善する効果がある。
[[一般式(1)で表される環状シロキサン化合物]]
一般式(1)で表される環状シロキサン化合物におけるR及びRは互いに同一であっても異なっていてもよい炭素数1〜12の有機基であるが、R及びRとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等の鎖状アルキル基;シクロヘキシル基、ノルボルニル基等の環状アルキル基;ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、ブテニル基、1,3−ブタジエニル基等のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルキニル基;トリフルオロメチル基等のハロゲン化アルキル基;3−ピロリジノプロピル基等の飽和複素環基を有するアルキル基;アルキル置換基を有していてもよいフェニル基等のアリール基;フェニルメチル基、フェニルエチル基等のアラルキル基;トリメチルシリル基等のトリアルキルシリル基;トリメチルシロキシ基等のトリアルキルシロキシ基等が挙げられる。
中でも、炭素数が少ないものの方が特性が発現しやすく、炭素数1〜6の有機基が好ましい。また、アルケニル基は非水系電解液や電極表面の被膜に作用して入出力特性を向上させ、アリール基は充放電時に電池内で発生するラジカルを捕捉して電池性能全般を向上させる作用を有するので好ましい。従って、R及びRとしては、メチル基、ビニル基又はフェニル基が特に好ましい。
一般式(1)中、nは3〜10の整数を表すが、3〜6の整数が好ましく、3又は4が特に好ましい。
一般式(1)で表される環状シロキサン化合物の例としては、例えば、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、ヘキサエチルシクロトリシロキサン、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリビニルシクロトリシロキサン等のシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等のシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等のシクロペンタシロキサン等が挙げられる。このうち、シクロトリシロキサンが特に好ましい。
[[一般式(2)で表されるフルオロシラン化合物]]
一般式(2)で表されるフルオロシラン化合物におけるR〜Rは、互いに同一であっても異なっていてもよい炭素数1〜12の有機基であるが、一般式(1)におけるR及びRの例として挙げた鎖状アルキル基、環状アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン化アルキル基、飽和複素環基を有するアルキル基、アルキル基を有していてもよいフェニル基等のアリール基、アラルキル基、トリアルキルシリル基、トリアルキルシロキシ基に加え、エトキシカルボニルエチル基等のカルボニル基;アセトキシ基、アセトキシメチル基、トリフルオロアセトキシ基等のカルボキシル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、アリロキシ基等のオキシ基;アリルアミノ基等のアミノ基;ベンジル基等を挙げることができる。
一般式(2)中、xは1〜3の整数を表し、p、q及びrはそれぞれ0〜3の整数を表し、1≦p+q+r≦3である。また必然的に、x+p+q+r=4である。
一般式(2)で表されるフルオロシラン化合物の例としては、トリメチルフルオロシラン、トリエチルフルオロシラン、トリプロピルフルオロシラン、フェニルジメチルフルオロシラン、トリフェニルフルオロシラン、ビニルジメチルフルオロシラン、ビニルジエチルフルオロシラン、ビニルジフェニルフルオロシラン、トリメトキシフルオロシラン、トリエトキシフルオロシラン等のモノフルオロシラン類の他、ジメチルジフルオロシラン、ジエチルジフルオロシラン、ジビニルジフルオロシラン、エチルビニルジフルオロシラン等のジフルオロシラン類;メチルトリフルオロシラン、エチルトリフルオロシラン等のトリフルオロシラン類も挙げられる。
一般式(2)で表されるフルオロシラン化合物は、沸点が低いと、揮発してしまうため非水系電解液に所定量含有させるのが難しくなる場合がある。また、非水系電解液に含有させた後も、充放電による電池の発熱や外部環境が高温になる様な条件下で揮発してしまう可能性がある。よって、1気圧で、50℃以上の沸点を持つものが好ましく、中でも60℃以上の沸点を持つものが特に好ましい。
また、一般式(1)の化合物と同様に、有機基としては炭素数の少ないものの方が効果が発現しやすく、炭素数1〜6のアルケニル基は非水系電解液や電極表面の被膜に作用して入出力特性を向上させ、アリール基は充放電時に電池内で発生するラジカルを捕捉して電池性能全般を向上させる作用を有する。従って、この観点からは有機基としては、メチル基、ビニル基又はフェニル基が好ましく、化合物の例としては、トリメチルフルオロシラン、ビニルジメチルフルオロシラン、フェニルジメチルフルオロシラン、ビニルジフェニルフルオロシラン等が特に好ましい。
[[一般式(3)で表される化合物]]
一般式(3)で表される化合物におけるR〜Rは、互いに同一であっても異なっていてもよい炭素数1〜12の有機基であるが、その例としては、一般式(2)のR〜Rの例として挙げた鎖状アルキル基、環状アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン化アルキル基、飽和複素環基を有するアルキル基、アルキル基を有していてもよいフェニル基等のアリール基、アラルキル基、トリアルキルシリル基、トリアルキルシロキシ基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシ基、アミノ基、ベンジル基等を同様に挙げることができる。
一般式(3)で表される化合物におけるAは、H、C、N、O、F、S、Si及び/又はPから構成される基であれば特に制限はないが、一般式(3)中の酸素原子に直接結合する元素としては、C、S、Si又はPが好ましい。これら原子の存在形態としては、例えば、鎖状アルキル基、環状アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン化アルキル基、カルボニル基、スルホニル基、トリアルキルシリル基、ホスホリル基、ホスフィニル基等に含まれるものが好ましい。また、一般式(3)で表される化合物の分子量は、1000以下が好ましく、中でも800以下が特に好ましく、500以下が更に好ましい。
一般式(3)で表される化合物の例としては、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジエチルテトラメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン等のシロキサン化合物類;メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン等のアルコキシシラン類;ビス(トリメチルシリル)パーオキサイド等の過酸化物類;酢酸トリメチルシリル、酢酸トリエチルシリル、プロピオン酸トリメチルシリル、メタクリル酸トリメチルシリル、トリフルオロ酢酸トリメチルシリル等のカルボン酸エステル類;メタンスルホン酸トリメチルシリル、エタンスルホン酸トリメチルシリル、メタンスルホン酸トリエチルシリル、フルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル等のスルホン酸エステル類;ビス(トリメチルシリル)スルフェート等の硫酸エステル類;トリス(トリメチルシロキシ)ボロン等のホウ酸エステル類;トリス(トリメチルシリル)ホスフェート、トリス(トリメチルシリル)ホスファイト等のリン酸若しくは亜リン酸エステル類等が挙げられる。
このうち、シロキサン化合物類、スルホン酸エステル類、硫酸エステル類が好ましく、スルホン酸エステル類が特に好ましい。シロキサン化合物類としては、ヘキサメチルジシロキサンが好ましく、スルホン酸エステル類としては、メタンスルホン酸トリメチルシリルが好ましく、硫酸エステル類としては、ビス(トリメチルシリル)スルフェートが好ましい。
[[分子内にS−F結合を有する化合物]]
分子内にS−F結合を有する化合物としては特に限定はないが、スルホニルフルオライド類、フルオロスルホン酸エステル類が好ましい。例えば、メタンスルホニルフルオライド、エタンスルホニルフルオライド、メタンビス(スルホニルフルオライド)、エタン−1,2−ビス(スルホニルフルオライド)、プロパン−1,3−ビス(スルホニルフルオライド)、ブタン−1,4−ビス(スルホニルフルオライド)、ジフルオロメタンビス(スルホニルフルオライド)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン−1,2−ビス(スルホニルフルオライド)、1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン−1,3−ビス(スルホニルフルオライド)、フルオロスルホン酸メチル、フルオロスルホン酸エチル等が挙げられる。中でも、メタンスルホニルフルオライド、メタンビス(スルホニルフルオライド)又はフルオロスルホン酸メチルが好ましい。
[[硝酸塩、亜硝酸塩、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩]]
硝酸塩、亜硝酸塩、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩のカウンターカチオンとしては特に限定はないが、Li、Na、K、Mg、Ca、Fe、Cu等の金属元素の他、NR9101112(式中、R9〜R12は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜12の有機基を表わす。)で表現されるアンモニウム、4級アンモニウムが挙げられる。ここで、R9〜R12の炭素数1〜12の有機基としては、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいシクロアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基、窒素原子含有複素環基等が挙げられる。R9〜R12としては、それぞれ、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、窒素原子含有複素環基等が好ましい。これらのカウンターカチオン中でも、リチウムイオン二次電池に用いたときの電池特性の点から、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム又はNR9101112が好ましく、リチウムが特に好ましい。また、中でも、硝酸塩又はジフルオロリン酸塩が、出力向上効果が大きい上、電池のサイクル、高温保存特性の点で好ましく、ジフルオロリン酸リチウムが特に好ましい。また、これらの化合物は非水溶媒中で合成されたものを実質的にそのまま用いてもよく、別途合成して実質的に単離されたものを非水溶媒中又は非水系電解液中に添加してもよい。
特定化合物、すなわち、一般式(1)で表される環状シロキサン化合物、一般式(2)で表されるフルオロシラン化合物、一般式(3)で表される化合物、分子内にS−F結合を有する化合物、硝酸塩、亜硝酸塩、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、酢酸塩又はプロピオン酸塩は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上の化合物を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、特定化合物で、上記それぞれに分類される化合物の中であっても、1種を単独で用いてもよく、2種類以上の化合物を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
非水系電解液中のこれら特定化合物の割合は、全非水系電解液に対して、合計で10ppm以上(0.001質量%以上)が必須であるが、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上である。また、上限は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。特定化合物の濃度が低すぎると、長期間使用した後でも、出力特性が維持される効果が得られ難い場合があり、一方、濃度が高すぎると充放電効率の低下を招く場合がある。
また、これら特定化合物は、非水系電解液として実際に二次電池作製に供すると、その電池を解体して再び非水系電解液を取り出しても、その中の含有量が著しく低下している場合が多い。そのため、電池から抜き出した非水系電解液から、少なくとも上記特定化合物が検出できるものは本発明に含まれるとみなされる。
[他の化合物]
本発明のリチウムイオン二次電池における非水系電解液は、電解質であるリチウム塩及び特定化合物を必須成分として含有するが、必要に応じて他の化合物を、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の量で含有させることができる。このような他の化合物としては、具体的には、例えば、
(1)ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2−フルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の前記芳香族化合物の部分フッ素化物;2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール、2,6−ジフルオロアニソール、3,5−ジフルオロアニソール等の含フッ素アニソール化合物等の過充電防止剤;
(2)ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物等の負極被膜形成剤;
(3)亜硫酸エチレン、亜硫酸プロピレン、亜硫酸ジメチル、プロパンスルトン、ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブスルファン、トルエンスルホン酸メチル、硫酸ジメチル、硫酸エチレン、スルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ジフェニルスルフィド、チオアニソール、ジフェニルジスルフィド、ジピリジニウムジスルフィド等の正極保護剤;
等が挙げられる。
過充電防止剤としては、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物が好ましい。これらは2種類以上併用して用いてもよい。2種以上併用する場合は、特に、シクロヘキシルベンゼンやターフェニル(又はその部分水素化体)と、t−ブチルベンゼンやt−アミルベンゼンを併用するのが好ましい。
負極被膜形成剤としては、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、無水コハク酸、無水マレイン酸が好ましい。これらは2種類以上併用して用いてもよい。正極保護剤としては、亜硫酸エチレン、亜硫酸プロピレン、プロパンスルトン、ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブスルファンが好ましい。これらは2種類以上併用して用いてもよい。また、負極皮膜形成剤と正極保護剤との併用や、過充電防止剤と負極皮膜形成剤と正極保護剤との併用が特に好ましい。
非水系電解液中におけるこれら他の化合物の含有割合は特に限定はないが、非水系電解液全体に対し、それぞれ、0.01質量%以上が好ましく、特に好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上であり、上限は、5質量%以下が好ましく、特に好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。これらの化合物を添加することにより、過充電による異常時に電池の破裂・発火を抑制したり、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を向上させたりすることができる。
<負極>
以下に本発明のリチウムイオン二次電池に使用される負極について説明する。
[負極活物質]
以下に負極に使用される負極活物質について述べる。
[[異配向性炭素複合物の構成]]
負極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものが用いられる。本発明のリチウムイオン二次電池における負極活物質は、配向性が異なる炭素質を2種以上含有する異配向性炭素複合物を含有する。
ここで、「配向性が異なる」とは、偏光顕微鏡で粉末を観察した際に、光学的異方性組織の異方性単位のパターン、すなわち、異方性単位の大きさ、方向、数等を目視し対比した場合に、それらの大きさ、方向、数等のうち少なくとも何れかが異なることをいう。例えば、炭素質1及び炭素質2のうち、一方が一方向への結晶方向性を有し、他方がランダムな結晶方向性を有する場合や、炭素質1及び炭素質2が共に各々一定の方向への結晶方向性を有し、その方向が異なっている場合等が挙げられる。なお、炭素質1及び炭素質2の一方又は双方が、単一の結晶ではなく、複数の結晶の集合体である場合には、集合体の単位を1領域として、その光学的異方性組織の異方性単位の集合パターンを対比する。
更に、異配向性炭素複合物中の、炭素質1、炭素質2共存の形態は、1つの二次粒子中に含まれていることが好ましい。ここで言う「1つの二次粒子中に含まれている」とは、配向性の異なる炭素質物が物理的に拘束、付着された状態、静電的な拘束、付着によって形状を維持している状態、結合によって拘束された状態等をいう。ここでいう「物理的な拘束、付着」とは、炭素質物の一方が他方に巻き込まれたような状態、引っかかっている状態を示し、「静電的な拘束、付着」とは、炭素質物の一方が他方に、静電的なエネルギーによって付着している状態をいう。この拘束、付着した状態において、前述の配向性が異なる状態となっていれば、元の炭素質物が同等のものであっても構わない。また、「結合によって拘束された状態」とは、水素結合、共有結合、イオン結合等の化学的な結合を意味する。
この中でも、一方の炭素質物の表面の少なくとも一部に、付着及び/又は結合によって、他方の炭素質物が、配向性の異なる界面を有している状態が好ましい。界面を有していることによって、界面を有していない場合に比べて、同一形状の粒子で比較すると、充電時にリチウムがインターカレーションして起こる膨張が、多方面に分散されて、電池劣化を防止できる点で好ましい。
該配向性の異なる部分の形成が、外部から供給された材料及び/又はこれらの変質物との結合によるか、或いは、炭素質物の表面部の材料の変質によるかは問わない。ここで、被覆とは、炭素質物の表面との界面中の少なくとも一部に化学結合を有し、(1)表面全体を覆っている状態、(2)炭素質粒子の局所的に覆っている状態、(3)表面一部を選択的に覆っている状態、(4)化学結合を含む極微小領域に存在している状態を示す。
また、界面近傍では炭素質物の配向性が連続的に変化していても、不連続で変化していても構わない。すなわち、異配向性炭素複合物が、配向性の異なる炭素質物が付着及び/又は結合されてなる界面を有し、該界面の炭素質物の配向性が不連続及び/又は連続的に変化するものであることが好ましい。
また、異配向性炭素質複合物(A)の構成成分としては、結晶性を有していれば特に限定はないが、配向性の異なる炭素質物の1種以上が、天然黒鉛(D)に由来する黒鉛系炭素質物(B)(以下、「天然黒鉛系炭素質物(B)」と略記する)であることが、質量当たりの充電容量が高くなる点で好ましい。
更には、異配向性炭素複合物中に含有される天然黒鉛系炭素質物(B)の割合は、異配向性炭素複合物に対して、通常5質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量%以上の範囲である。上限は、通常99.9質量%以下、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下の範囲である。この範囲を下回ると、電極の圧延時の荷重が著しく上昇し、電極の剥離等が起こる場合がある。一方この範囲を上回ると、配向性の異なる粒子の複合体としての界面の結着が弱くなる場合がある。
また、異配向性炭素複合物の他の構成成分としては、配向性の異なる炭素質の1種以上が、以下の(1)ないし(5)から選択される炭素質物(C)であることも、異配向性炭素複合物調製時の界面生成及び界面の結着性向上の観点から好ましい。
(1)石炭系コークス、石油系コークス、ファーネスブラック、アセチレンブラック及びピッチ系炭素繊維からなる群より選ばれた炭化物
(2)ピッチ原料、芳香族炭化水素、N環化合物、S環化合物、ポリフェニレン、有機合成高分子、天然高分子、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂からなる群より選ばれた有機物及び/又はその熱分解物を前駆体とする炭化物
(3)(2)の有機物を低分子有機溶媒に溶解させた溶液の熱分解物を前駆体とする炭化物
(4)有機物を含有する気体の炭化物
(5)(1)ないし(4)の黒鉛化物
(2)については、炭素化できるものであれば特には限定はないが、ピッチ原料、アセナフチレン、デカシクレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素;フェナジン、アクリジン等のN環化合物;チオフェン、ビチオフェン等のS環化合物;ビフェニル、テルフェニル等のポリフェニレン;ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、これらのものの不溶化処理品、含窒素性のポリアクニロニトリル、ポリピロール等の有機高分子;含硫黄性のポリチオフェン、ポリスチレン等の有機高分子;セルロース、リグニン、マンナン、ポリガラクトウロン酸、キトサン、サッカロースに代表される多糖類等の天然高分子;ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド等の熱可塑性樹脂;フルフリルアルコール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、イミド樹脂等の熱硬化性樹脂;又はこれらをベンゼン、トルエン、キシレン、キノリン、n−へキサン等の低分子有機溶媒に溶解させた溶液等の有機物;炭化可能な気体等が挙げられる。
これらの中で、ピッチ原料は残炭率が高いことから、収率の高い材料を作製することが可能であり好ましい。なお、本明細書において「ピッチ原料」とは、ピッチ及びそれに順ずるものであり、適当な処理を行なうことによって炭素化及び又は黒鉛化することができるものをいう。具体的なピッチ原料の例としては、タールや重質油やピッチ等を用いることができる。タールの具体例としては、コールタール、石油系タール等が挙げられる。重質油の具体例としては、石油系重質油の接触分解油、熱分解油、常圧残油、減圧残油等が挙げられる。また、ピッチの具体例としては、コールタールピッチ、石油系ピッチ、合成ピッチ等が挙げられる。これらの中でもコールタールピッチが芳香族性に高く好ましい。これらのピッチ原料は、何れか1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
(3)については、上記(2)の有機物を、ベンゼン、トルエン、キシレン、キノリン、n−へキサン等の低分子有機溶媒に溶解させた溶液の熱分解物を前駆体とする炭化物が、好ましいものとして挙げられる。
(4)については、メタン、エタン、プロパン、ベンゼン、アセチレン、エチレン等の炭化水素化合物、一酸化炭素等が例示される。
異配向性炭素複合物中に含有される炭素質物(C)の割合が、通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上の範囲である。上限は特にはなく、配向性が異なる界面を有していれば問題ない。この範囲を下回ると、異配向性炭素複合物中の界面の結着が弱くなる場合がある。また、この範囲を下回ると、炭素質物(C)を含有することによる、プレス時の粒子変形抑制の効果が減少し、サイクル特性が低下する場合がある。
本発明のリチウムイオン二次電池に用いられる負極活物質の更に好ましい構成としては、電極圧延時のプレス荷重の観点及び、複合体としての界面の結着性のバランスの点から、異配向性炭素複合物が、1種以上の天然黒鉛系炭素質物(B)と1種以上の炭素質物(C)を同時に含有していることが好ましい。
前述の理由と同様の理由で、異配向性炭素複合物中の天然黒鉛系炭素質物(B)と炭素質物(C)の質量比率(天然黒鉛系炭素質物(B)/炭素質物(C))は、通常20/80以上、好ましくは40/60以上、更に好ましくは60/40以上、より好ましくは70/30以上の範囲である。上限としては99.9/0.1以下、好ましくは99/1以下、より好ましくは95/5以下の範囲である。この範囲を上回ると(天然黒鉛系炭素質物(B)の比率が大きすぎると)、炭素質物(C)による界面の結着性が低下する可能性がある。一方この範囲を下回ると(天然黒鉛系炭素質物(B)の比率が小さすぎると)電極圧延時のプレス荷重が著しく大きくなり、圧延時に剥離する場合がある。
天然黒鉛系炭素質物(B)及び炭素質物(C)を含有する異配向性炭素複合物としては、本発明の主旨を超えない範囲であれば、任意の様態と取ることが可能であるが、一例を以下に示す。
(イ)天然黒鉛系炭素質物(B)の表面全体又は一部が、炭素質物(C)が付着及び/又は被覆及び/又は結合された形態。
(ロ)天然黒鉛系炭素質物(B)の表面全体又は一部に、炭素質物(C)が結着し、2個以上の天然黒鉛系炭素質物(B)及び/又は炭素質物(C)が複合化した形態。
(ハ)上記(イ)及び(ロ)が任意の割合で混合した形態。
また、上記の天然黒鉛系炭素質物(B)が炭素質物(C)と入れ替わっても良い。また、その異配向性炭素複合物の具体的な複合の様態としては、核となる粒子の表面に、配向性の異なる炭素質が付着及び/又は被覆及び/又は結合された状態、又はこれらの複数が付着及び/又は被覆及び/又は結合された形態、核となる粒子が非平行に造粒したような状態等が挙げられる。ここでいう非平行に造粒した状態とは、一定の結晶性を有する粒子がランダムな方向を向いた状態で、他の炭素質物で固定され、異配向性を示す結合をもった状態となっているものを指す。
[[異配向性炭素複合物の調製]]
異配向性炭素複合物の調製については、「異配向性炭素複合物の製造方法1及び製造方法2」の箇所で後述するが、異配向性炭素複合物の調製に際しては、熱処理を加えることで結晶性の向上を図ることが可能となり、単位重量当たりの容量を増加させることが可能である。熱処理温度としては通常400℃以上、好ましくは1000℃以上、より好ましくは2000℃以上、更に好ましくは2400℃以上、特に好ましくは2800℃以上の範囲である。上限としては、通常3400℃以下、好ましくは3200℃以下の範囲である。この範囲を下回ると、結晶性が十分向上しておらず、単位重量当たりの容量の増加の効果が得られない可能性がある。一方この範囲を上回ると、炭素の昇華による損失が無視できなくなり、収率の減少が起こる可能性がある。
[[異配向性炭素複合物の性質]]
異配向性炭素複合物についての性質については、次に示す(1)〜(5)の何れか1項又は複数項を同時に満たしていることが好ましい。
(1)円形度
異配向性炭素複合物の球形の程度としては、その粒径が3〜40μmの範囲にある粒子の円形度は通常0.1以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.8以上、更に好ましくは0.85以上、最も好ましくは0.9以上である。円形度が大きいと高電流密度充放電特性が向上するため好ましい。円形度は以下の式で定義され、円形度が1のときに理論的真球となる。
円形度
=(粒子投影形状と同じ面積を持つ相当円の周囲長)/(粒子投影形状の実際の周囲長)
円形度の値としては、例えば、フロー式粒子像分析装置(例えば、シスメックスインダストリアル社製FPIA)を用い、試料約0.2gを、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(約50mL)に分散させ、28kHzの超音波を出力60Wで1分間照射した後、検出範囲を0.6〜400μmに指定し、粒径が3〜40μmの範囲の粒子について測定した値を用いる。
円形度を向上させる方法は、特に限定されないが、球形化処理を施して球形にしたものが、電極体にしたときの粒子間空隙の形状が整うので好ましい。球形化処理の例としては、せん断力、圧縮力を与えることによって機械的に球形に近づける方法、複数の微粒子をバインダー若しくは、粒子自身の有する付着力によって造粒する機械的・物理的処理方法等が挙げられる。
(2)ラマンR値、ラマン半値幅
アルゴンイオンレーザーラマンスペクトル法を用いて測定した異配向性炭素複合物のラマンR値は、通常0.01以上、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.04以上、上限としては0.35以下、好ましくは0.30以下、より好ましくは0.25以下の範囲である。ラマンR値がこの範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎて、充放電に伴ってLiが層間に入るサイトが少なくなる場合がある。すなわち、充電受入性が低下する場合がある。一方、この範囲を上回ると、粒子表面の結晶性が低下し、非水系電解液との反応性が増し、効率の低下やガス発生の増加を招く場合がある。
また、本発明の炭素材料の1580cm-1付近のラマン半値幅は特に制限されないが、通常5cm-1以上、好ましくは10cm-1以上、また上限として、通常40cm-1以下、好ましくは35cm-1以下、より好ましくは30cm-1以下の範囲である。ラマン半値幅がこの範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎて、充放電に伴ってLiが層間に入るサイトが少なくなる場合がある。すなわち、充電受入性が低下する場合がある。一方、この範囲を上回ると、粒子表面の結晶性が低下し、非水系電解液との反応性が増し、効率の低下やガス発生の増加を招く場合がある。
ラマンスペクトルの測定は、ラマン分光器(例えば、日本分光社製ラマン分光器)を用い、試料を測定セル内へ自然落下させることで試料充填し、測定はセル内のサンプル表面にアルゴンイオンレーザー光を照射しながら、セルをレーザー光と垂直な面内で回転させながら行なう。得られたラマンスペクトルについて、1580cm-1付近のピークPAの強度IAと、1360cm-1付近のピークPBの強度IBとを測定し、その強度比R(R=IB/IA)を算出して、これを炭素材料のラマンR値と定義する。また、得られたラマンスペクトルの1580cm-1付近のピークPAの半値幅を測定し、これを炭素材料のラマン半値幅と定義する。
なお、ここでのラマン測定条件は、次の通りである。
・アルゴンイオンレーザー波長 :514.5nm
・試料上のレーザーパワー :15〜25mW
・分解能 :10〜20cm-1
・測定範囲 :1100cm-1〜1730cm-1
・ラマンR値、ラマン半値幅解析:バックグラウンド処理
・スムージング処理 :単純平均、コンボリューション5ポイント
(3)タップ密度
異配向性炭素複合物のタップ密度は、通常0.55g/cm3以上であり、好ましくは0.70/cm3以上、更に好ましくは0.9g/cm3以上、特に好ましくは1g/cm3以上であることが望ましい。また、好ましくは2.0g/cm3以下、より好ましくは1.8g/cm3以下、更に好ましくは1.7g/cm3以下、特に好ましくは1.5g/cm3以下である。タップ密度がこの範囲を下回ると、負極として用いた場合に充填密度が上がり難く、高容量の電池を得ることができない場合がある。一方、この範囲を上回ると、電極中の粒子間の空隙が少なくなり過ぎ、粒子間の導電性が確保され難くなり、好ましい電池特性が得られにくい場合がある。
本発明においてタップ密度は、目開き300μmの篩を通過させて、20cm3のタップセルに試料を落下させてセルの上端面まで試料を満たした後、粉体密度測定器(例えば、セイシン企業社製タップデンサー)を用いて、ストローク長10mmのタップを1000回行なって、その時の体積と試料の重量から求めた密度をタップ密度と定義する。
(4)BET比表面積
異配向性炭素複合物のBET法を用いて測定した本発明の炭素材料の比表面積は、通常0.1m2/g以上、好ましくは0.7m2/g以上、より好ましくは1.0m2/g以上、更に好ましくは1.2m2/g以上である。上限は、通常100m2/g以下、好ましくは25m2/g以下、より好ましくは15m2/g以下、更に好ましくは10m2/g以下である。比表面積の値がこの範囲を下回ると、負極材料として用いた場合の充電時にリチウムの受け入れ性が悪くなりやすく、リチウムが電極表面で析出しやすくなる場合がある。一方、この範囲を上回ると、負極材料として用いた時に非水系電解液との反応性が増加し、ガス発生が多くなりやすく、好ましい電池が得られにくい場合がある。
BET比表面積は、表面積計(例えば、大倉理研製全自動表面積測定装置)を用い、試料に対して窒素流通下350℃で15分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用い、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって測定した値で定義する。
(5)体積基準平均粒径
異配向性炭素複合物の体積基準平均粒径は、レーザー回折・散乱法により求めた体積基準の平均粒径(メジアン径)が、通常1μm以上、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは7μm以上である。また、上限は、通常100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、更に好ましくは30μm以下、特に好ましくは25μm以下である。上記範囲を下回ると、不可逆容量が増大して、初期の電池容量の損失を招くことになる場合がある。また上記範囲を上回ると、電極極板化時に、不均一な塗面になりやすく、電池製作工程上望ましくない場合がある。
本発明において体積基準平均粒径は、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(約1mL)に炭素粉末を分散させて、レーザー回折式粒度分布計(例えば、堀場製作所社製LA−700)を用いて測定したメジアン径で定義する。
上記(1)〜(5)項以外にも、更に、下記の(6)〜(11)項の1項以上を満たしていることが、電池特性のバランスの観点から好ましい。
(6)X線パラメータ
異配向性炭素複合物は、学振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(層間距離)が、0.335nm以上であることが好ましく、通常0.340nm以下、好ましくは0.337nm以下であることが望まれる。この範囲を上回ると、結晶性が低下し、初期不可逆容量が増加する可能性がある。また下限の0.335nmは黒鉛の理論値である。また、学振法によるX線回折で求めた炭素材料の結晶子サイズ(Lc)は、通常30nm以上、好ましくは50nm以上、より好ましくは80nm以上の範囲である。この範囲を下回ると、結晶性が低下し、初期不可逆容量が増加する可能性がある。
(7)灰分
異配向性炭素複合物に含まれる灰分は、異配向性炭素複合物の全質量に対して、1質量%以下、中でも0.5質量%以下、特に0.1質量%以下、下限としては1ppm以上であることが好ましい。上記の範囲を上回ると充放電時の非水系電解液との反応による電池性能の劣化が無視できなくなる場合がある。この範囲を下回ると、製造に多大な時間とエネルギーと汚染防止のための設備とを必要とし、コストが上昇する場合がある。
(8)細孔分布
異配向性炭素複合物としては、水銀ポロシメトリー(水銀圧入法)により求められる、直径0.01μm以上、1μm以下に相当する粒子内の空隙、粒子表面のステップによる凹凸の量が、0.001mL/g以上、好ましくは0.002mL/g以上、上限として0.6mL/g以下、好ましくは0.4mL/g以下、より好ましくは0.3mL/g以下の範囲である。この範囲を上回ると、極板化時にバインダーを多量に必要となる場合がある。一方この範囲を下回ると、高電流密度充放電特性が低下し、かつ充放電時の電極の膨張収縮の緩和効果が得られない場合がある。
また、全細孔容積が、好ましくは0.1mL/g以上、より好ましくは0.25mL/g以上、上限として10mL/g以下、好ましくは5mL/g以下、より好ましくは2mL/g以下の範囲である。この範囲を上回ると極板化時にバインダーを多量に必要となる場合がある。下回ると極板化時に増粘剤や結着剤の分散効果が得られない場合がある。
また、平均細孔径が、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは0.5μm以上、上限として50μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下の範囲である。この範囲を上回ると、バインダーを多量に必要となる場合がある。一方この範囲を下回ると高電流密度充放電特性が低下する場合がある。
水銀ポロシメトリー用の装置として、水銀ポロシメータ(オートポア9520:マイクロメリテックス社製)を用いた。試料(負極材料)を、0.2g前後の値となるように秤量し、パウダー用セルに封入し、室温、真空下(50μmHg以下)にて10分間脱気して前処理を実施した。引き続き、4psia(約28kPa)に減圧し水銀を導入し、4psia(約28kPa)から40000psia(約280MPa)までステップ状に昇圧させた後、25psia(約170kPa)まで降圧させた。昇圧時のステップ数は80点以上とし、各ステップでは10秒の平衡時間の後、水銀圧入量を測定した。こうして得られた水銀圧入曲線からWashburnの式を用い、細孔分布を算出した。なお、水銀の表面張力(γ)は485dyne/cm、接触角(ψ)は140°として算出した。平均細孔径には累計細孔体積が50%となるときの細孔径を用いた。
(9)真密度
異配向性炭素複合物の真密度は、通常2.0g/cm3以上、好ましくは2.1g/cm3以上、より好ましくは2.2g/cm3以上、更に好ましくは2.22g/cm3以上であり、上限としては2.26g/cm3以下である。上限は黒鉛の理論値である。この範囲を下回ると炭素の結晶性が低すぎて初期不可逆容量が増大する場合がある。本発明においては、真密度は、ブタノールを使用した液相置換法(ピクノメータ法)によって測定したもので定義する。
(10)配向比(粉)
異配向性炭素複合物の配向比は、通常0.005以上であり、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.015以上、上限は理論上0.67以下の範囲である。この範囲を下回ると、高密度充放電特性が低下する場合がある。
配向比はX線回折により測定する。X線回折により炭素の(110)回折と(004)回折のピークを、プロファイル関数として非対称ピアソンVIIを用いてフィッティングすることによりピーク分離を行ない、(110)回折と(004)回折のピークの積分強度を各々算出する。得られた積分強度から、(110)回折積分強度/(004)回折積分強度で表わされる比を算出し、活物質配向比と定義する。
ここでのX線回折測定条件は次の通りである。なお、「2θ」は回折角を示す。
・ターゲット:Cu(Kα線)グラファイトモノクロメーター
・スリット :発散スリット=1度、受光スリット=0.1mm、散乱スリット=1度
・測定範囲及びステップ角度/計測時間:
(110)面:76.5度≦2θ≦78.5度 0.01度/3秒
(004)面:53.5度≦2θ≦56.0度 0.01度/3秒
(11)アスペクト比(粉)
異配向性炭素複合物のアスペクト比は、理論上1以上であり、上限として10以下、好ましくは8以下、更に好ましくは5以下である。上限を上回ると、極板化時にスジ引きや、均一な塗布面が得られず、高電流密度充放電特性が低下する場合がある。
なお、アスペクト比は、3次元的に観察した時の炭素材料粒子の最長となる径A、それと直交する最短となる径Bとしたとき、A/Bであらわされる。炭素粒子の観察は、拡大観察ができる走査型電子顕微鏡で行う。厚さ50μm以下の金属の端面に固定した任意の50個の黒鉛粒子を選択し、それぞれについて試料が固定されているステージを回転、傾斜させて、A、Bを測定し、A/Bの平均値を求める。
[[天然黒鉛系炭素質物(B)の原料]]
異配向性炭素複合物中に含有される天然黒鉛系炭素質物(B)の原料としては通常、X線広角回折法による(002)面の面間隔(d002)が0.340nm以下を示すような結晶性の高い天然黒鉛を原料とするものが例に挙げられる。具体的には天然黒鉛又はこれらに機械的粉砕品を加えて円形度を向上させたもの及び/又はこれらを1000℃以上で熱処理品したもの,膨張黒鉛の熱処理品,或いはこれらの黒鉛の高純度精製品から選ばれる粉体が好ましい。
天然黒鉛系炭素質物(B)の前駆体となる天然黒鉛(D)は、その性状によって、鱗片状黒鉛(Flake Graphite)、鱗状黒鉛(Crystalline(Vein) Graphite)、土状黒鉛(Amorphous Graphite)に分類される(「粉粒体プロセス技術集成」((株)産業技術センター、昭和49年発行)の黒鉛の項、及び「HANDBOOK OF CARBON,GRAPHITE,DIAMOND AND FULLERENES」(Noyes Publications発行)参照)。黒鉛化度は、鱗状黒鉛が100%で最も高く、これに次いで鱗片状黒鉛が99.9%で高いが、土状黒鉛は28%と低い。天然黒鉛である鱗片状黒鉛は、マダガスカル、中国、ブラジル、ウクライナ、カナダ等に産し、鱗状黒鉛は、主にスリランカに産する。土状黒鉛は、朝鮮半島、中国、メキシコ等を主な産地としている。これらの天然黒鉛の中で、土状黒鉛は一般に粒径が小さいうえ、純度が低い。これに対して、鱗片状黒鉛や鱗状黒鉛は、黒鉛化度や不純物量が低い等の長所があるため、本発明において好ましく使用することができる。
[[天然黒鉛系炭素質物(B)の調製]]
天然黒鉛系炭素質物(B)の調製については、「異配向性炭素複合物の製造方法1及び製造方法2」の箇所で後述する。
[[天然黒鉛系炭素質物(B)の性質]]
天然黒鉛系炭素質物(B)については、次に示す(1)〜(11)の何れか1項又は複数項を同時に満たしていることが望ましい。なお、それぞれの定義、測定方法等は、異配向性炭素複合物の部分に記載した定義、測定方法と同一である。
(1)X線パラメータ
天然黒鉛系炭素質は、学振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(層間距離)が、0.335nm以上であることが好ましく、通常0.340nm以下、好ましくは0.337nm以下であることが望まれる。この範囲を上回ると、結晶性が低下し、初期不可逆容量の増大が増加する可能性がある。また0.335nmは黒鉛の理論値である。また、学振法によるX線回折で求めた炭素材料の結晶子サイズ(Lc)は、通常30nm以上、好ましくは50nm以上、より好ましくは90nm以上の範囲である。この範囲を下回ると、結晶性が低下し、初期不可逆容量の増大が増加する可能性がある。
(2)灰分
天然黒鉛系炭素質中に含まれる灰分は、天然黒鉛系炭素質の全質量に対して、1質量%以下、中でも0.5質量%以下、特に0.1質量%以下、下限としては1ppm以上であることが好ましい。上記の範囲を上回ると充放電時の非水系電解液との反応による電池性能の劣化が無視できなくなる場合がある。この範囲を下回ると、製造に多大な時間とエネルギーと汚染防止のための設備とを必要とし、コストが上昇する場合がある。
(3)体積基準平均粒径
天然黒鉛系炭素質の体積基準平均粒径は、レーザー回折・散乱法により求めた体積基準の平均粒径(メジアン径)が、通常1μm以上、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは7μm以上である。また、上限は、通常50μm以下、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは25μm以下である。上記範囲を下回ると、不可逆容量が増大して、初期の電池容量の損失を招くことになる場合がある。また上記範囲を上回ると、電極極板化時に、不均一な塗面になりやすく、電池製作工程上望ましくない場合がある。
(4)ラマンR値、ラマン半値幅
アルゴンイオンレーザーラマンスペクトル法を用いて測定した天然黒鉛系炭素質のラマンR値は、通常0.01以上、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.04以上、上限としては0.35以下、好ましくは0.30以下、より好ましくは0.25以下の範囲である。ラマンR値がこの範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎて、充放電に伴ってLiが層間に入るサイトが少なくなる場合がある。すなわち、充電受入性が低下する場合がある。一方、この範囲を上回ると、粒子表面の結晶性が低下し、非水系電解液との反応性が増し、効率の低下やガス発生の増加を招く場合がある。
また、本発明の炭素材料の1580cm-1付近のラマン半値幅は特に制限されないが、通常5cm-1以上、好ましくは10cm-1以上、また上限として、通常40cm-1以下、好ましくは35cm-1以下、より好ましくは30cm-1以下の範囲である。ラマン半値幅がこの範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎて、充放電に伴ってLiが層間に入るサイトが少なくなる場合がある。すなわち、充電受入性が低下する場合がある。一方、この範囲を上回ると、粒子表面の結晶性が低下し、非水系電解液との反応性が増し、効率の低下やガス発生の増加を招く場合がある。
(5)BET比表面積
天然黒鉛系炭素質のBET法を用いて測定した比表面積は、通常0.1m2/g以上、好ましくは0.7m2/g以上、より好ましくは1.0m2/g以上、更に好ましくは1.5m2/g以上である。上限は、通常100m2/g以下、好ましくは25m2/g以下、より好ましくは15m2/g以下、更に好ましくは10m2/g以下である。比表面積の値がこの範囲を下回ると、負極材料として用いた場合の充電時にリチウムの受け入れ性が悪くなりやすく、リチウムが電極表面で析出しやすくなる場合がある。一方、この範囲を上回ると、負極材料として用いた時に非水系電解液との反応性が増加し、ガス発生が多くなりやすく、好ましい電池が得られにくい場合がある。
(6)細孔分布
天然黒鉛系炭素質としては、水銀ポロシメトリー(水銀圧入法)により求められる、直径0.01μm以上、1μm以下に相当する粒子内の空隙、粒子表面のステップによる凹凸の量が、0.01mL/g以上、好ましくは0.05mL/g以上、より好ましくは0.1mL/g以上、上限として0.6mL/g以下、好ましくは0.4mL/g以下、より好ましくは0.3mL/g以下の範囲である。この範囲を上回ると、極板化時にバインダーを多量に必要となる場合がある。下回ると、高電流密度充放電特性が低下し、かつ充放電時の電極の膨張収縮の緩和効果が得られなにくい場合がある。
また、全細孔容積が、好ましくは0.1mL/g以上、より好ましくは0.25mL/g以上、上限として10mL/g以下、好ましくは5mL/g以下、より好ましくは2mL/g以下の範囲である。この範囲を上回ると極板化時にバインダーを多量に必要となる場合がある。下回ると極板化時に増粘剤や結着剤の分散効果が得られない場合がある。
また、平均細孔径が、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは0.5μm以上、上限として50μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下の範囲である。この範囲を上回ると、バインダーを多量に必要となる場合がある。下回ると高電流密度充放電特性が低下する場合がある。
(7)円形度
天然黒鉛系炭素材料の球形の程度としては、その粒径が3〜40μmの範囲にある粒子の円形度は0.1以上が好ましく、特に好ましくは0.5以上、より好ましくは0.8以上、更に好ましくは0.85以上、最も好ましくは0.9以上である。円形度が大きいと高電流密度充放電特性が向上するため好ましい。
(8)真密度
天然黒鉛系炭素質の真密度は、通常2.0g/cm3以上、好ましくは2.1g/cm3以上、より好ましくは2.2g/cm3以上、更に好ましくは2.22g/cm3以上であり、上限としては2.26g/cm3以下である。上限は黒鉛の理論値である。この範囲を下回ると炭素の結晶性が低すぎて初期不可逆容量が増大する場合がある。
(9)タップ密度
天然黒鉛系炭素材料のタップ密度は、通常0.1g/cm3以上であり、好ましくは0.5g/cm3以上、更に好ましくは0.7g/cm3以上、特に好ましくは0.9g/cm3以上であることが望まれる。また、好ましくは、2.0g/cm3以下、更に好ましくは、1.8g/cm3以下、特に好ましくは1.6g/cm3以下である。タップ密度がこの範囲を下回ると、負極として用いた場合に充填密度が上がり難く、高容量の電池を得ることができない場合がある。一方、この範囲を上回ると、電極中の粒子間の空隙が少なくなり過ぎ、粒子間の導電性が確保され難くなり、好ましい電池特性が得られにくい場合がある。
(10)配向比(粉)
天然黒鉛系炭素質の配向比は、通常0.005以上であり、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.015以上、上限は理論上0.67以下の範囲である。この範囲を下回ると、高密度充放電特性が低下する場合がある。
(11)アスペクト比(粉)
天然黒鉛系炭素質のアスペクト比は、理論上1以上であり、上限として10以下、好ましくは8以下、更に好ましくは5以下である。上限を上回ると、極板化時にスジ引きや、均一な塗布面が得られず、高電流密度充放電特性が低下する場合がある。
[[炭素質物(C)の原料]]
本発明の異配向性炭素複合物中に含まれる炭素質物(C)の原料としては、炭素化できるものであれば特には限定はないが、ピッチ原料、アセナフチレン、デカシクレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素;フェナジン、アクリジン等のN環化合物;チオフェン、ビチオフェン等のS環化合物;ビフェニル、テルフェニル等のポリフェニレン;ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、これらのものの不溶化処理品、含窒素性のポリアクニロニトリル、ポリピロール等の有機高分子;含硫黄性のポリチオフェン、ポリスチレン等の有機高分子;セルロース、リグニン、マンナン、ポリガラクトウロン酸、キトサン、サッカロースに代表される多糖類等の天然高分子;ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド等の熱可塑性樹脂;フルフリルアルコール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、イミド樹脂等の熱硬化性樹脂;又はこれらをベンゼン、トルエン、キシレン、キノリン、n−へキサン等の低分子有機溶媒に溶解させた溶液等の有機物;炭化可能な気体等が挙げられる。
これらの中で、ピッチ原料は残炭率が高いことから、収率の高い材料を作製することが可能であり好ましい。なお、本明細書において「ピッチ原料」とは、ピッチ及びそれに順ずるものであり、適当な処理を行なうことによって炭素化及び又は黒鉛化することができるものをいう。具体的なピッチ原料の例としては、タールや重質油やピッチ等を用いることができる。タールの具体例としては、コールタール、石油系タール等が挙げられる。重質油の具体例としては、石油系重質油の接触分解油、熱分解油、常圧残油、減圧残油等が挙げられる。また、ピッチの具体例としては、コールタールピッチ、石油系ピッチ、合成ピッチ等が挙げられる。これらの中でもコールタールピッチが芳香族性に高く好ましい。これらのピッチ原料は、何れか1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、上述のピッチ原料であって、キノリン不溶分の含有量は、特に制限されないが、通常30以下の範囲にあるものを用いる。キノリン不溶分とは、コールタール中に微量に含まれるサブミクロンの炭素粒子や極微小なスラッジ等であり、これが多過ぎると黒鉛化過程での結晶性向上を著しく阻害し、黒鉛化後の放電容量の著しい低下を招く。なお、キノリン不溶分の測定方法としては、例えばJIS K2425に規定された方法を用いることができる。
なお、本発明の効果を妨げない限り、原料として上述のピッチ原料に加え、各種の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等を併用してもよい。
[[炭素質物(C)の調製]]
炭素質物(C)の調製については、「異配向性炭素複合物の製造方法1及び製造方法2」の箇所で後述する。
[[炭素質物(C)の性質]]
炭素質物(C)については、次に示す(1)〜(4)の何れか1項又は複数項を同時に満たしていることが好ましい。なお、それぞれの定義、測定方法等は、異配向性炭素複合物の部分に記載した定義、測定方法と同一である。
(1)X線パラメータ
炭素質物(C)は、学振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(層間距離)が、0.335nm以上であることが好ましく、通常0.345nm以下、好ましくは0.340nm以下、より好ましくは0.337nm以下であることが望まれる。また、学振法によるX線回折で求めた炭素材料の結晶子サイズ(Lc)は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは80nm以上の範囲である。この範囲を下回ると、結晶性が低下し、初期不可逆容量の増大が増加する可能性がある。
(2)灰分
炭素質物(C)に含まれる灰分は、異配向性炭素複合物の全質量に対して、1質量%以下、中でも0.5質量%以下、特に0.1質量%以下、下限としては1ppm以上であることが好ましい。上記の範囲を上回ると充放電時の非水系電解液との反応による電池性能の劣化が無視できなくなる場合がある。この範囲を下回ると、製造に多大な時間とエネルギーと汚染防止のための設備とを必要とし、コストが上昇する場合がある。
(3)ラマンR値、ラマン半値幅
アルゴンイオンレーザーラマンスペクトル法を用いて測定した炭素質物(C)のラマンR値は、通常0.01以上、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上、上限としては0.60以下、好ましくは0.30以下の範囲である。ラマンR値がこの範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎて、充放電に伴ってLiが層間に入るサイトが少なくなる場合がある。すなわち、充電受入性が低下する場合がある。一方、この範囲を上回ると、粒子表面の結晶性が低下し、非水系電解液との反応性が増し、効率の低下やガス発生の増加を招く場合がある。
また、本発明における炭素質物(C)の1580cm-1付近のラマン半値幅は特に制限されないが、通常5cm-1以上、好ましくは10cm-1以上、また上限として、通常60cm-1以下、好ましくは45cm-1以下、より好ましくは30cm-1以下の範囲である。ラマン半値幅がこの範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎて、充放電に伴ってLiが層間に入るサイトが少なくなる場合がある。一方、この範囲を上回ると、粒子表面の結晶性が低下し、非水系電解液との反応性が増し、効率の低下やガス発生の増加を招く場合がある。
(4)真密度
炭素質物(C)の真密度は、通常2.0g/cm3以上、好ましくは2.2g/cm3以上、より好ましくは2.22g/cm3以上、上限としては黒鉛の理論上限である2.26g/cm3以下である。この範囲を下回ると炭素の結晶性が低すぎて初期不可逆容量が増大する場合がある。
[異配向性炭素複合物の製造方法]
製造方法としては特に限定はなく、本発明の要旨を超えない範囲であれば、どのような手法を用いてもよいが、好適な例の概略は以下の(1)、(2)の通りである。
(1)炭素質物(C)の出発原料が何れかの工程で全体又は一部が液状となる状態を形成し、この液状となった状態で天然黒鉛(D)と混合及び/又は捏合を行う。
(2)この工程で得られた複合物を脱揮発分・焼成及び、黒鉛化を行い、粉砕、分級を行って粒度を調整する。これらの工程の間には粉砕・分級工程を1回以上経ても構わない。
次に上述の概略の具体例を示す。
[[異配向性炭素複合物の製造方法1]]
本発明における異配向性炭素複合物は、天然黒鉛系炭素質物(B)と天然黒鉛系炭素質物(B)とは配向性の異なる炭素質物(C)が複合化されることが好ましく、例として、前記した天然黒鉛(D)に、前記した炭素質物(C)の前駆体であるピッチ原料、又はピッチ原料等を熱処理し粉砕したもの(以下、「熱処理黒鉛結晶前駆体」と略記する)、天然高分子等を、所定の割合で混合し、熱処理Aを行なった後、更に粉砕し、熱処理B(焼成、黒鉛化)を行う方法等が挙げられる。また、上記の粉砕は、十分にメジアン径が小さく必要がなければ行わなくても良い。
[[[熱処理黒鉛結晶前駆体の製造]]]
ピッチ原料に事前に熱処理を施し、熱処理黒鉛結晶前駆体を得る。この事前の熱処理をピッチ熱処理と呼ぶこととする。この熱処理黒鉛結晶前駆体を粉砕後、天然黒鉛(D)と混合後、熱処理Aをする際に、その一部又は全部が溶融するが、ここで事前の熱処理(ピッチ熱処理)によって揮発分の含量を調整しておくことにより、その溶融状態を適切に制御することができる。なお、熱処理黒鉛結晶前駆体に含まれる揮発分としては、通常、水素、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピレン等が挙げられる。
ピッチ熱処理の際の温度条件は、特に制限されないが、通常300℃以上、550℃以下の範囲である。熱処理の温度がこの範囲を下回ると、揮発分が多くなるため、大気中で安全に粉砕を行ない難くなる場合がある。一方、上限を上回ると、熱処理A時に熱処理黒鉛結晶前駆体の一部又は全部が溶融せず、天然黒鉛系炭素質物(B)と熱処理黒鉛結晶前駆体の複合化した粒子(異配向性炭素複合物)が得られ難い場合がある。ピッチ熱処理を行なう際には、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下、又は、ピッチ原料から発生する揮発分雰囲気下で行なう。
ピッチ熱処理に用いる装置としては特に制限はないが、例えば、シャトル炉、トンネル炉、電気炉、オートクレーブ等の反応槽、コーカー(コークス製造の熱処理槽)等を用いることができる。ピッチ熱処理時には、必要に応じて攪拌を行なってもよい。
なお、熱処理黒鉛結晶前駆体として、揮発分の含有率が通常5質量%以上のものを用いることが好ましい。揮発分含有率がこの範囲にある黒鉛結晶前駆体を使用することで、熱処理Aにより天然黒鉛系炭素質物(B)と炭素質物(C)が複合化することから、上述に規定する物性を有する異配向性炭素複合物を得ることができる。
始めに、ピッチ原料に事前に熱処理を施し、黒鉛結晶の前駆体であるバルクメソフェーズ(事前に熱処理した黒鉛結晶前駆体であり、以下、「熱処理黒鉛結晶前駆体」と略記する)の製造方法について説明する。
(熱処理黒鉛結晶前駆体の揮発分)
ピッチ熱処理によって得られる黒鉛結晶前駆体の揮発分は、特に制限されないが、通常5質量%以上、好ましくは6質量%以上、また、通常20質量%以下、好ましくは15質量%以下とする。揮発分が上記範囲を下回ると揮発分が多いため、大気中で安全に粉砕を行ない難くなる場合がある一方で、上限を上回ると熱処理A時に黒鉛結晶前駆体の一部又は全部が溶融せず、天然黒鉛系炭素質物(B)と熱処理黒鉛結晶前駆体の複合化した粒子(異配向性炭素複合物)を得難い場合がある。なお、揮発分の測定方法としては、例えばJIS M8812に規定された方法を用いる。
(熱処理黒鉛結晶前駆体の軟化点)
ピッチ熱処理によって得られる黒鉛結晶前駆体の軟化点は、特に制限されないが、通常250℃以上、好ましくは300℃以上、更に好ましくは370℃以上、また、通常470℃以下、好ましくは450℃以下、更に好ましくは430℃以下の範囲とする。下限を下回ると、熱処理後の黒鉛結晶前駆体の炭素化収率が低く、天然黒鉛系炭素質物(B)との均一な混合物を得難く、上限を上回ると、熱処理A時に黒鉛結晶前駆体の一部又は全部が溶融せず、天然黒鉛系炭素質物(B)と熱処理黒鉛結晶前駆体の複合化した粒子(異配向性炭素複合物)を得難い場合がある。
軟化点としては、錠剤成型器で1mm厚さに成型した試料について、熱機械分析装置(例えば、ブルカー・エイエックス株式会社製TMA4000)を用いて、窒素流通下、昇温速度10℃/分、針先形状1mmφ、加重20gfの条件で、ペネトレーション法により測定した値を用いる。
(熱処理黒鉛結晶前駆体の粉砕)
次に、ピッチ熱処理によって得られた熱処理黒鉛結晶前駆体を粉砕する。熱処理により大きな単位で同一方向に並びかけている熱処理黒鉛結晶前駆体の結晶を微細化するため、及び/又は、天然黒鉛(D)と熱処理黒鉛結晶前駆体との混合、複合化を均一にするためである。
ピッチ熱処理によって得られる熱処理黒鉛結晶前駆体の粉砕は、特に制限されないが、粉砕後の熱処理黒鉛結晶前駆体の粒度が、通常1μm以上、好ましくは5μm以上、また、通常10mm以下、好ましくは5mm以下、中でも好ましくは500μm以下、更に好ましくは200μm以下、特に好ましくは50μm以下となるように行なう。前記粒度が1μm未満では、粉砕中若しくは粉砕後に熱処理した熱処理黒鉛結晶前駆体の表面が空気と触れることで酸化し、黒鉛化過程での結晶性の向上を阻害し、黒鉛化後の放電容量の低下を招く場合がある。一方、前記粒度が10mmを超えると、粉砕による微細化効果が薄れ結晶が配向しやすくなり、炭素質物(C)が配向しやすくなって、異配向性炭素質複合物(A)を用いた電極の活物質配向比が低くなり、電池充電時の電極膨張を抑制し難くなる場合がある。及び/又は、天然黒鉛(D)と熱処理黒鉛結晶前駆体の粒径差が大きくなる為に、均一な混合がし難くなり、複合化が不均一になりやすくなる場合がある。
粉砕に用いる装置に特に制限はないが、例えば、粗粉砕機としてはせん断式ミル、ジョークラッシャー、衝撃式クラッシャー、コーンクラッシャー等が挙げられ、中間粉砕機としてはロールクラッシャー、ハンマーミル等が挙げられ、微粉砕機としてはボールミル、振動ミル、ピンミル、攪拌ミル、ジェットミル、ターボミル等が挙げられる。
[[[天然黒鉛(D)と熱処理黒鉛結晶前駆体の熱処理]]]
天然黒鉛(D)と熱処理黒鉛結晶前駆体(炭素質物(C)の原料)を所定の割合で混合、熱処理A、粉砕、熱処理B(焼成、黒鉛化)することにより異配向性炭素複合物を作製する。
(天然黒鉛(D)と熱処理黒鉛結晶前駆体との混合)
熱処理A前に行なう天然黒鉛(D)と熱処理黒鉛結晶前駆体との混合割合は、特に制限されないが、混合物に対する天然黒鉛(D)の割合が、通常20質量%以上、好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、また、通常95質量%以下、好ましくは90質量%以下となるように行なう。下限を下回ると、異配向性炭素質複合物(A)中の炭素質物(C)の割合が増える為、電極にした時に充填密度が上がり難く、過大なプレス荷重を必要とし天然黒鉛系炭素質物(B)を複合化した効果が得られ難い場合がある。上限を上回ると、異配向性炭素質複合物(A)中の天然黒鉛系炭素質物(B)表面の露出が増し、異配向性炭素質複合物(A)の比表面積が大きくなる可能性があり、粉体物性上好ましくない場合がある。
天然黒鉛(D)と、所定粒度に調整した熱処理黒鉛結晶前駆体を混合する際に、用いる装置に特に制限はないが、例えば、V型混合機、W型混合機、容器可変型混合機、混練機、ドラムミキサー、せん断ミキサー等が挙げられる。
(熱処理A)
次に、天然黒鉛(D)と熱処理黒鉛結晶前駆体の混合物に熱処理Aを施す。粉砕した熱処理黒鉛結晶前駆体を再溶融又は融着することにより、天然黒鉛(D)と微細化した熱処理黒鉛結晶前駆体粒子が無配向状態で接触したまま固定化するためである。これにより、天然黒鉛(D)と熱処理黒鉛結晶前駆体の混合物は、単なる粒子の混合物ではなく、より均一な複合化した混合物(以下適宜、「黒鉛複合混合物」という)とすることができる。
熱処理Aの温度条件は、特に制限されないが、通常300℃以上、好ましくは400℃以上、更に好ましくは450℃以上、また、通常650℃以下、好ましくは600℃以下である。熱処理Aの温度が前記範囲を下回ると、熱処理Aの後の材料中に揮発分が多く残存する為、焼成、若しくは黒鉛化工程時に粉体同志の融着を起こす可能性があり、再粉砕が必要となる場合がある。一方、前記範囲を上回ると、再溶融した成分が粉砕時に針状に割れ、タップ密度の低下を招く場合がある。熱処理Aは、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下、又は、粉砕により微細化した熱処理黒鉛結晶前駆体から発生する揮発分雰囲気下で行なう。
熱処理Aに用いる装置に特に制限はないが、例えば、シャトル炉、トンネル炉、電気炉等を用いることができる。
(熱処理黒鉛結晶前駆体の粉砕及び熱処理Aの代替処理)
ところで、上記の粉砕及び熱処理Aの代替処理として、熱処理黒鉛結晶前駆体の組織を微細化、無配向化することが可能な処理、例えば、熱処理した黒鉛結晶前駆体が溶融若しくは軟化する様な温度領域で機械的エネルギーを付与する処理を行ないながら、天然黒鉛(D)と混合、熱処理を行なうことも可能である。
この代替処理としての熱処理は、特に制限されないが、通常200℃以上、好ましくは250℃以上、また、通常450℃以下、好ましくは400℃以下で行なう。温度条件が前記範囲を下回ると代替処理中の黒鉛結晶前駆体の溶融、軟化が不十分であり、天然黒鉛(D)との複合化がし難くなる場合がある。また、上回ると熱処理が急速に進みやすく、粉砕時に炭素質熱処理黒鉛結晶前駆体等の粒子が針状に割れ、タップ密度の低下を招きやすくなる場合がある。
この代替処理は、通常、窒素ガス等の不活性雰囲気下、又は空気等の酸化性雰囲気下で行なう。但し、酸化性雰囲気で処理する場合は、黒鉛化後に高結晶性を得ることが難しい場合があるので、酸素による不融化が進み過ぎない様にする必要がある。具体的には、代替処理後の黒鉛結晶前駆体中の酸素量が、通常8質量%以下、好ましくは5質量%以下となるようにする。
また、代替処理に用いる装置としては特に制限はないが、例えば、ミキサー、ニーダー等を用いることができる。
(粉砕)
次に、熱処理Aを行なった黒鉛複合混合物を粉砕する。熱処理Aにより天然黒鉛(D)と複合化され組織が微細化、無配向化した状態で溶融又は融着した黒鉛複合混合物の塊を、粉砕により目的の粒子径にするためである。
粉砕後の黒鉛複合混合物の粒度は、特に制限されないが、通常1μm以上、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは7μm以上、また、通常50μm以下、好ましくは35μm以下、より好ましくは30μm以下とする。粒度が前記範囲を下回ると、異配向性炭素質複合物(A)としてタップ密度が小さくなってしまうため、電極とした場合に活物質の充填密度が上がり難く、高容量の電池を得難い。一方、前記範囲を上回ると、異配向性炭素質複合物(A)として塗布により電極を作製するときに塗工むらが生じやすくなる場合がある。
粉砕に用いる装置について特に制限はないが、例えば、粗粉砕機としてはジョークラッシャー、衝撃式クラッシャー、コーンクラッシャー等が挙げられ、中間粉砕機としてはロールクラッシャー、ハンマーミル等が挙げられ、微粉砕機としてはボールミル、振動ミル、ピンミル、攪拌ミル、ジェットミル等が挙げられる。
(熱処理B:焼成)
熱処理Bは、焼成及び黒鉛化のことを言う。以下、焼成から説明する。但し、焼成は、省略することも可能である。粉砕により粉砕された黒鉛複合混合物を焼成する。黒鉛化時の黒鉛複合混合物の融着を抑制するべく、焼成により黒鉛複合混合物の揮発分を除去するためである。
焼成を行なう際の温度条件は、特に制限されないが、通常600℃以上、好ましくは1000℃以上、また上限は、通常2400℃以下、好ましくは1300℃以下である。温度条件が前記範囲を下回ると、黒鉛化時に黒鉛複合混合物が粉体の融着を起こしやすくなる場合がある。一方、上記範囲を上回ると、焼成設備に費用が掛かるため、通常上記温度条件の範囲内で行われる。
焼成は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下、又は、再粉砕した黒鉛複合混合物から発生するガスによる非酸化性雰囲気下で行なう。また、製造工程の簡略化のため、焼成工程を組み込まずに、直接黒鉛化を行なうことも可能である。
焼成に用いる装置としては特に制限はないが、例えば、シャトル炉、トンネル炉、電気炉、リードハンマー炉、ロータリーキルン等を用いることができる。
(熱処理B:黒鉛化)
次に、焼成を行なった黒鉛複合混合物に黒鉛化を施す。電池評価での放電容量を大きくするために、結晶性を向上させるためである。黒鉛化により、異配向性炭素質複合物(A)を得ることができる。
黒鉛化を行なう際の温度条件は、特に制限されないが、通常2800℃以上、好ましくは2900℃以上、より好ましくは3000℃以上、また、通常3400℃以下、好ましくは3200℃以下である。前記範囲を上回ると、電池の可逆容量が小さくなる場合があり、高容量な電池を作り難い場合がある。また、前記範囲を上回ると、黒鉛の昇華量が多くなりやすくなる場合がある。
黒鉛化は、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下、又は、焼成した黒鉛複合混合物から発生するガスによる非酸化性雰囲気下で行なう。黒鉛化に使用する装置としては特に制限はないが、例えば、直接通電炉、アチソン炉、間接通電式として抵抗加熱炉、誘導加熱炉等が挙げられる。
なお、黒鉛化処理時、若しくはそれ以前の工程、すなわち、熱処理から焼成までの工程で、材料(天然黒鉛(D)、ピッチ原料又は黒鉛結晶前駆体)の中若しくは表面にSi、B等の黒鉛化触媒を添加しても構わない。
(その他の処理)
その他、発明の効果が妨げられない限りにおいて、上記の各処理に加え、分級処理等の各種の処理を行なうことができる。分級処理は、黒鉛化処理後の粒度を目的の粒径にするべく、粗粉や微粉を除去するためのものである。
分級処理に用いる装置としては特に制限はないが、例えば、乾式篩い分けの場合:回転式篩い、動揺式篩い、旋動式篩い、振動式篩い、乾式気流式分級の場合:重力式分級機、慣性力式分級機、遠心力式分級機(クラシファイア、サイクロン等)、湿式篩い分け、機械的湿式分級機、水力分級機、沈降分級機、遠心式湿式分級機等を用いることができる。
分級処理は、熱処理A後の粉砕のすぐ後に続けて行なうこともできるし、その他のタイミング、例えば、粉砕後の焼成の後、あるいは黒鉛化の後に行なってもよい。更には、分級処理自体を省略することも可能である。但し、異配向性炭素質複合物(A)のBET比表面積を低下させる点、及び、生産性の点からは、熱処理A後の粉砕のすぐ後に続けて分級処理を行なうことが好ましい。
(異配向性炭素質複合物(A)の製造後の処理)
上述の手順で製造した異配向性炭素質複合物(A)に対して、更に、負極材料のBET比表面積の制御、電極プレス性の向上、放電容量の向上、安価化等の目的で、別に製造した人造黒鉛粉末又は天然黒鉛粉末を加えて混合しても良い。
[異配向性炭素複合物の製造方法2]
異配向性炭素複合物の製造は、次のような方法によっても可能である。本発明における異配向性炭素複合物は、天然黒鉛系炭素質物(B)と天然黒鉛系炭素質物(B)とは配向性の異なる炭素質物(C)が複合化されることが好ましく、例として、前記した天然黒鉛(D)に、前記した炭素質物(C)の前駆体であるピッチ原料を「捏合(混合)」「成型」「焼成」「黒鉛化」「粉砕」の工程を経て製造されること等が挙げられる。但しこれらの工程で「成型」「焼成」「粉砕」は省略及び/又は他工程と同時に実施することも可能である。具体的には、以下に挙げる製造方法等によって得ることができる。
[[捏合(混合)]]
天然黒鉛(D)、ピッチ原料及び所望により添加された黒鉛化触媒等の原料の、混合を行う。このとき、均一な混合のために、加熱することが好ましい。これにより、天然黒鉛(D)及び捏合温度では溶融しない原料に液状のピッチ原料が添着された状態となる。この場合、捏合機に全原料を仕込んで捏合と昇温を同時に行っても良いし、捏合機にピッチ原料以外の成分を仕込んで攪拌状態で加熱し、捏合温度まで温度が上がった後に常温又は加硫溶融状態のピッチ原料を仕込んでも良い。
加熱温度は、通常ピッチ原料の軟化点以上、好ましくは軟化点より10℃以上高い温度、より好ましくは軟化点より20℃以上高い温度範囲で行われる。また上限としては通常300℃以下、好ましくは250℃以下の範囲である。この範囲を下回るとピッチ原料の粘度が高くなり、混合が困難となる可能性がある。一方この範囲を上回ると揮発と重縮合によって混合系の粘度が高くなりすぎる場合もある。
混合機は撹拌翼をもつ機種が好ましく、撹拌翼はZ型、マチスケータ型といった汎用的なものを用いることができる。混合機に投入する原料の量は、通常混合機容積の10体積%以上、好ましくは15体積%以上で、50体積%以下、好ましくは30体積%以下である。混合時間は5分以上必要であり、最長でも揮発分の揮散による大きな粘性の変化を来たす時間までで、通常は30〜120分である。混合機は混合に先立ち捏合温度まで予熱しておくことが好ましい。
[[成形]]
得られた混合物は、そのまま揮発成分の除去と炭化を目的とする脱揮発成分・焼成工程に供してもよいが、ハンドリングしやすいように、成形してから脱揮発成分・焼成工程に供することが好ましい。
成形方法は形状を保持することが可能であれば特に制限はなく、押し出し成形、金型成形、静水圧成形等を採用することができる。このうち、成形体内で粒子が配向しやすい押し出し成形や、粒子の配向はランダムに保たれるが生産性の点から、静水圧成形より、比較的操作が容易であり、また、混合でランダムな配向となった構造を破壊せずに成形体を得ることができる金型成形が好ましい。
成形温度は、室温(冷間)、加熱下(熱間、ピッチ原料の軟化点以上の温度)のどちらでもよい。冷間で成形する場合は、成形性の向上と成形体の均一性を得るために、捏合後冷却された混合物を予め最大寸法が1mm以下に粗砕することが望ましい。成形体の形状、大きさは特に制限は無いが、熱間成形では、成形体が大きすぎると成形に先立つ均一な予熱を行うのに時間がかかるので、通常最大寸法で150cm程度以下の大きさとすることが好ましい。
成形圧力は、圧力が高すぎると成形体の細孔を通しての揮発成分除去が困難となり、かつ真円ではない天然黒鉛(D)が配向し、後工程における粉砕が難しくなるので、成形圧力の上限は、通常3000kgf/cm2(294MPa)以下、好ましくは500kgf/cm2(49MPa)以下、更に好ましくは10kgf/cm2(0.98MPa)以下である。下限の圧力は特に制限はないが、脱揮発成分・焼成工程で成形体の形状を保持できる程度に設定することが好ましい。
[[脱揮発成分・焼成]]
得られた成形体は、天然黒鉛(D)及びピッチ原料の揮発成分を除去して、黒鉛化時の充填物の汚染、充填物の成形体への固着を防ぐために、脱揮発成分・焼成を行う。脱揮発成分・焼成は、通常600℃以上、好ましくは650℃以上で、通常1300℃以下、好ましくは1100℃以下の温度で、通常0.1時間〜10時間行う。加熱は、酸化を防止するために、通常、窒素、アルゴン等不活性ガスの流通下又はブリーズ、パッキングコークス等の粒状炭素材料を間隙に充填した非酸化性雰囲気で行う。
脱揮発成分・焼成に用いる設備は、電気炉やガス炉、電極材用リードハンマー炉等、非酸化性雰囲気で焼成可能であれば特に限定されない。加熱時の昇温速度は揮発分の除去のために低速であることが望ましく、通常、低沸分の揮発が始まる200℃付近から水素の発生のみとなる700℃近傍までを、3〜100℃/hrで昇温する。
[[黒鉛化]]
脱揮発成分・焼成により得られた炭化物成形体は、次いで、高温で加熱して黒鉛化する。黒鉛化の条件については製造方法1記載と同様である。
黒鉛化時の雰囲気は、酸化を防止するため、窒素、アルゴン等の不活性ガスの流通下又はブリーズ、パッキングコークス等の粒状炭素材料を間隙に充填した非酸化性雰囲気下で行う。黒鉛化に用いる設備は、電気炉やガス炉、電極材用アチソン炉等、上記の目的に添うものであれば特に限定されず、昇温速度、冷却速度、熱処理時間等は使用する設備の許容範囲で任意に設定することができる。
[[粉砕]]
このようにして得られた黒鉛化処理物は、通常はこのままでは塊状であり負極活物質としては使用が困難であることから、粉砕及び/又は大径粒状物・小径粒状物除去を行う。黒鉛化処理物の粉砕方法は特に制限はないが、粉砕手段としては、機械的に摩砕する手段、例えば、ボールミル、ハンマーミル、CFミル、アトマイザーミル、パルベライザー等、風力を利用した粉砕手段、例えば、ジェットミル等が例示される。粗粉砕、中粉砕については、ジョークラッシャー、ハンマーミル、ローラーミル等の衝撃力による粉砕方式を用いてもよい。ここで、粉砕のタイミングは、黒鉛化前であっても黒鉛化後であってもよい。
[副材混合]
本発明のリチウムイオン二次電池における負極活物質には、上記異配向性炭素複合物以外に、それとは炭素質の物性が異なる炭素質物(炭素質材料)を1種以上含有させることにより、更に、電池性能の向上を図ることが可能である。ここで述べた「炭素質の物性」とは、X線回折パラメータ、メジアン径、アスペクト比、BET比表面積、配向比、ラマンR値、タップ密度、真密度、細孔分布、円形度、灰分量のうちの一つ以上の特性を示す。また、好ましい実施の形態としては、体積基準粒度分布がメジアン径を中心としたときに左右対称とならないことや、ラマンR値異なる炭素材料を2種以上含有していること、X線パラメータが異なること等が挙げられる。その効果の一例としては、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト)、アセチレンブラック等のカーボンブラック、ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素材料を副材として含有されることにより電気抵抗を低減させること等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。副材として添加する場合には0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.6質量%以上であり、上限としては80質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下の範囲である。この範囲を下回ると、導電性向上の効果が得にくい場合がある。上回ると、初期不可逆容量の増大を招く場合がある。
[電極作製]
負極の製造は、常法によればよい。例えば、負極活物質に、バインダー、溶媒、必要に応じて、増粘剤、導電材、充填材等を加えてスラリーとし、これを集電体に塗布、乾燥した後にプレスすることによって形成することができる。電池の非水系電解液注液工程直前の段階での片面あたりの負極活物質層の厚さは通常15μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上であり、上限は150μm以下、好ましくは120μm以下、より好ましくは100μm以下である。この範囲を上回ると、非水系電解液が集電体界面付近まで浸透しにくいため、高電流密度充放電特性が低下する場合がある。またこの範囲を下回ると、負極活物質に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合がある。また、負極活物質をロール成形してシート電極としたり、圧縮成形によりペレット電極としても良い。
[[集電体]]
負極活物質を保持させる集電体としては、公知のものを任意に用いることができる。負極の集電体としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられ、中でも加工し易さとコストの点から特に銅が好ましい。集電体の形状は、集電体が金属材料の場合は、例えば金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられる。中でも好ましくは金属薄膜、より好ましくは銅箔であり、更に好ましくは圧延法による圧延銅箔と、電解法による電解銅箔があり、どちらも集電体として用いることができる。銅箔の厚さが25μmよりも薄い場合、純銅よりも強度の高い銅合金(リン青銅、チタン銅、コルソン合金、Cu−Cr−Zr合金等)を用いることができる。
圧延法により作製した銅箔からなる集電体は、銅結晶が圧延方向に並んでいるため、負極を密に丸めても、鋭角に丸めても割れにくく、小型の円筒状電池に好適に用いることができる。電解銅箔は、例えば、銅イオンが溶解された非水系電解液中に金属製のドラムを浸漬し、これを回転させながら電流を流すことにより、ドラムの表面に銅を析出させ、これを剥離して得られるものである。上記の圧延銅箔の表面に、電解法により銅を析出させていても良い。銅箔の片面又は両面には、粗面化処理や表面処理(例えば、厚さが数nm〜1μm程度までのクロメート処理、Ti等の下地処理等)がなされていても良い。
また、集電体基板には、更に次のような物性が望まれる。
(1)平均表面粗さ(Ra)
JISB0601−1994に記載の方法で規定される集電体基板の活物質薄膜形成面の平均表面粗さ(Ra)は、特に制限されないが、通常0.01μm以上、好ましくは0.03μm以上、通常1.5μm以下、好ましくは1.3μm以下、特に好ましくは1.0μm以下である。集電体基板の平均表面粗さ(Ra)を上記した下限と上限の間の範囲内とすることにより、良好な充放電サイクル特性が期待できる。上記下限値以上とすることにより、活物質薄膜との界面の面積が大きくなり、活物質薄膜との密着性が向上する。平均表面粗さ(Ra)の上限値は特に制限されるものではないが、平均表面粗さ(Ra)が1.5μmを超えるものは電池として実用的な厚みの箔としては一般に入手しにくいため、1.5μm以下のものが好ましい。
(2)引張強度
集電体基板の引張強度は、特に制限されないが、通常50N/mm2以上、好ましくは100N/mm2以上、更に好ましくは150N/mm以上である。引張強度とは、試験片が破断に至るまでに要した最大引張力を、試験片の断面積で割ったものである。本発明における引張強度は、伸び率と同様な装置及び方法で測定される。引張強度が高い集電体基板であれば、充電・放電に伴う活物質薄膜の膨張・収縮による集電体基板の亀裂を抑制することができ、良好なサイクル特性を得ることができる。
(3)0.2%耐力
集電体基板の0.2%耐力は、特に制限されないが、通常30N/mm2以上、好ましくは100N/mm2以上、特に好ましくは150N/mm2以上である。0.2%耐力とは、0.2%の塑性(永久)歪みを与えるに必要な負荷の大きさであり、この大きさの負荷を加えた後に除荷しても0.2%変形している事を意味している。本発明における0.2%耐力は、伸び率と同様な装置及び方法で測定される。0.2%耐力が高い集電体基板であれば、充電・放電に伴う活物質薄膜の膨張・収縮による集電体基板の塑性変形を抑制することができ、良好なサイクル特性を得ることができる。金属薄膜の厚さは任意であるが、通常1μm以上、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上である。また、上限は、通常1mm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは30μm以下である。1μmより薄くなると強度が低下するため塗布が困難となり工程上好ましくない場合がある。100μmより厚くなると捲回等で所望の電極の形に変形させることがあり、工程上困難となる場合がある。また、金属薄膜は、メッシュ状でもよい。
[[集電体と活物質層の厚さの比]]
集電体と活物質層の厚さの比は特には限定されないが、(非水系電解液注液直前の片面の活物質層の厚さ)/(集電体の厚さ)の値が150以下、好ましくは20以下、より好ましくは10以下であり、下限は0.1以上、好ましくは0.4以上、より好ましくは1以上の範囲である。この範囲を上回ると、高電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じる場合がある。この範囲を下回ると、負極活物質に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合がある。
[[電極密度]]
負極活物質の電極化した際の電極構造は特には限定されないが、集電体上に存在している活物質の密度は、好ましくは1g/cm3以上、より好ましくは1.2g/cm3以上、更に好ましくは1.3g/cm3以上であり、上限として2g/cm3以下、好ましくは1.9g/cm3以下、より好ましくは1.8g/cm3以下、更に好ましくは1.7g/cm3以下の範囲である。この範囲を上回ると活物質粒子が破壊され、初期不可逆容量の増加や、集電体/活物質界面付近への非水系電解液の浸透性が低下し、高電流密度充放電特性の低下を招く場合がある。また下回ると活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大し、単位容積当たりの容量低下を招く場合がある。
[[バインダー]]
活物質を結着するバインダーとしては、非水系電解液や電極製造時に用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に制限されない。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、エチレン−プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体及びその水素添加物;EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体及びその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
スラリーを形成するための溶媒としては、活物質、バインダー、必要に応じて使用される増粘剤及び導電材を、溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いても良い。水系溶媒の例としては水、アルコールと水との混合溶媒等が挙げられ、有機系溶媒の例としてはN−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジエチルエーテル、ジメチルアセトアミド、ヘキサメリルホスファルアミド、ジメチルスルフォキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキサン等が挙げられる。特に水系溶媒を用いる場合、上述の増粘剤に併せて分散剤等を加え、SBR等のラテックスを用いてスラリー化する。なお、これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
活物質に対するバインダーの割合は、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.6質量%以上であり、上限としては20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下の範囲である。この範囲を上回るとバインダー量が電池容量に寄与しないバインダー割合が増加して、電池容量が低下する場合がある。また下回ると、負極電極の強度低下を招き、電池作製工程上好ましくない場合がある。特に、SBRに代表されるゴム状高分子を主要成分に含有する場合には、活物質に対するバインダーの割合は、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.6質量%以上であり、上限としては5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下の範囲である。また、ポリフッ化ビニリデンに代表されるフッ素系高分子を主要成分に含有する場合には活物質に対する割合は、1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上であり、上限としては15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下の範囲である。
増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調製するために使用される。増粘剤としては、特に制限はないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。更に増粘剤を添加する場合には、活物質に対する増粘剤の割合は、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.6質量%以上であり、上限としては5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下の範囲である。この範囲を下回ると、著しく塗布性が低下する場合がある。上回ると、負極活物質層に占める活物質の割合が低下し、電池の容量が低下したり、負極活物質間の抵抗が増大したりする場合がある。
[[極板配向比]]
極板配向比は、0.001以上、好ましくは0.005以上、より好ましくは0.01以上、上限は理論値である0.67以下である。この範囲を下回ると、高密度充放電特性が低下する場合がある。
極板配向比の測定は以下のとおりである。目的密度にプレス後の負極電極について、X線回折により電極の活物質配向比を測定する。具体的手法は特に制限されないが、標準的な方法としては、X線回折により炭素の(110)回折と(004)回折のピークを、プロファイル関数として非対称ピアソンVIIを用いてフィッティングすることによりピーク分離を行ない、(110)回折と(004)回折のピークの積分強度を各々算出する。得られた積分強度から、(110)回折積分強度/(004)回折積分強度で表わされる比を算出する。該測定で算出される電極の活物質配向比を極板配向比と定義する。
ここでのX線回折測定条件は次の通りである。なお、「2θ」は回折角を示す。
・ターゲット: Cu(Kα線)グラファイトモノクロメーター
・スリット : 発散スリット=1度、受光スリット=0.1mm、散乱スリット=1度・測定範囲、及び、ステップ角度/計測時間:
(110)面 : 76.5度≦2θ≦78.5度 0.01度/3秒
(004)面 : 53.5度≦2θ≦56.0度 0.01度/3秒
・試料調製 : 硝子板に0.1mm厚さの両面テープで電極を固定
[[インピーダンス]]
放電状態から公称容量の60%まで充電した時の負極の抵抗が100Ω以下が好ましく、特に好ましくは50Ω以下、より好ましくは20Ω以下、及び/又は二重層容量が1×10-6F以上が好ましく、特に好ましくは1×10-5F以上、より好ましくは1×10-4F以上である。この範囲であると出力特性が良く好ましい。
負極の抵抗及び二重層容量は、次の手順で測定する。測定するリチウムイオン二次電池は、公称容量を5時間で充電できる電流値にて充電した後に、20分間充放電をしない状態を維持し、次に公称容量を1時間で放電できる電流値で放電したときの容量が公称容量の80%以上あるものを用いる。前述の放電状態のリチウムイオン二次電池について公称容量を5時間で充電できる電流値にて公称容量の60%まで充電し、直ちにリチウムイオン二次電池をアルゴンガス雰囲気下のグローブボックス内に移す。ここで該リチウムイオン二次電池を負極が放電又はショートしない状態ですばやく解体して取り出し、両面塗布電極であれば、片面の電極活物質を他面の電極活物質を傷つけずに剥離し、負極電極を12.5mmφに2枚打ち抜き、セパレータを介して活物質面がずれないよう対向させる。電池に使用されていた非水系電解液60μLをセパレータと両負極間に滴下して密着し、外気と触れない状態を保持して、両負極の集電体に導電をとり、交流インピーダンス法を実施する。測定は温度25℃で、10-2〜105Hzの周波数帯で複素インピーダンス測定を行ない、求められたコール・コール・プロットの負極抵抗成分の円弧を半円で近似して表面抵抗(R)と、二重層容量(Cdl)を求める。
<正極>
以下に本発明のリチウムイオン二次電池に使用される正極について説明する。
[正極活物質]
以下に正極に使用される正極活物質について述べる。
[[組成]]
正極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば特に制限はない。リチウムと少なくとも1種の遷移金属を含有する物質が好ましく、例えば、リチウム遷移金属複合酸化物、リチウム含有遷移金属リン酸化合物が挙げられる。
リチウム遷移金属複合酸化物の遷移金属としてはV、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、具体例としては、LiCoO2等のリチウム・コバルト複合酸化物、LiNiO2等のリチウム・ニッケル複合酸化物、LiMnO2、LiMn、Li2MnO3等のリチウム・マンガン複合酸化物、これらのリチウム遷移金属複合酸化物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。置換されたものの具体例としては、例えば、LiNi0.5Mn0.52、LiNi0.85Co0.10Al0.052、LiNi0.33Co0.33Mn0.332、LiMn1.8Al0.2、LiMn1.5Ni0.5等が挙げられる。
リチウム含有遷移金属リン酸化合物の遷移金属としては、V、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、具体例としては、例えば、LiFePO、Li3Fe2(PO3、LiFeP27等のリン酸鉄類、LiCoPO4等のリン酸コバルト類、これらのリチウム遷移金属リン酸化合物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Nb、Si等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。
[[表面被覆]]
また、これら正極活物質の表面に、正極活物質を構成する物質とは異なる組成の物質が付着したものを用いることもできる。表面付着物質としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の酸化物、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、炭素等が挙げられる。
これら表面付着物質は、例えば、溶媒に溶解又は懸濁させて正極活物質に含浸添加、乾燥する方法、表面付着物質前駆体を溶媒に溶解又は懸濁させて正極活物質に含浸添加後、加熱等により反応させる方法、正極活物質前駆体に添加して同時に焼成する方法等により正極活物質表面に付着させることができる。尚、炭素を付着させる場合には、炭素質を、例えば、活性炭などの形で後から機械的に付着させる方法を用いることもできる。
表面付着物質の量としては、正極活物質に対して質量で、下限として好ましくは0.1ppm以上、より好ましくは1ppm以上、更に好ましくは10ppm以上、上限として好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下で用いられる。表面付着物質により、正極活物質表面での非水系電解液の酸化反応を抑制することができ、電池寿命を向上させることができるが、その付着量が少なすぎる場合その効果は十分に発現せず、多すぎる場合には、リチウムイオンの出入りを阻害するため抵抗が増加する場合がある。
[[形状]]
本発明における正極活物質粒子の形状は、従来用いられるような、塊状、多面体状、球状、楕円球状、板状、針状、柱状等が用いられるが、中でも一次粒子が凝集して、二次粒子を形成して成り、その二次粒子の形状が球状ないし楕円球状であるものが好ましい。通常、電気化学素子はその充放電に伴い、電極中の活物質が膨張収縮をするため、そのストレスによる活物質の破壊や導電パス切れ等の劣化がおきやすい。そのため一次粒子のみの単一粒子活物質であるよりも、一次粒子が凝集して、二次粒子を形成したものである方が膨張収縮のストレスを緩和して、劣化を防ぐため好ましい。また、板状等軸配向性の粒子であるよりも球状ないし楕円球状の粒子の方が、電極の成形時の配向が少ないため、充放電時の電極の膨張収縮も少なく、また電極を作成する際の導電材との混合においても、均一に混合されやすいため好ましい。
[[タップ密度]]
正極活物質のタップ密度は、通常1.3g/cm3以上、好ましくは1.5g/cm3以上、更に好ましくは1.6g/cm3以上、最も好ましくは1.7g/cm3以上である。正極活物質のタップ密度が上記下限を下回ると正極活物質層形成時に、必要な分散媒量が増加すると共に、導電材や結着剤の必要量が増加し、正極活物質層への正極活物質の充填率が制約され、電池容量が制約される場合がある。タップ密度の高い金属複合酸化物粉体を用いることにより、高密度の正極活物質層を形成することができる。タップ密度は一般に大きいほど好ましく特に上限はないが、大きすぎると、正極活物質層内における非水系電解液を媒体としたリチウムイオンの拡散が律速となり、負荷特性が低下しやすくなる場合があるため、通常2.5g/cm3以下、好ましくは2.4g/cm3以下である。なお、タップ密度は、前記した方法と同様な方法で測定され定義される。
[[メジアン径d50]]
粒子のメジアン径d50(一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には二次粒子径)は通常0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、最も好ましくは3μm以上で、上限は、通常20μm以下、好ましくは18μm以下、より好ましくは16μm以下、最も好ましくは15μm以下である。上記下限を下回ると、高タップ密度品が得られなくなる場合があり、上限を超えると粒子内のリチウムの拡散に時間がかかるため、電池性能の低下をきたしたり、電池の正極作成すなわち活物質と導電材やバインダー等を溶媒でスラリー化し、薄膜状に塗布する際に、スジを引く等の問題を生ずる場合がある。ここで、異なるメジアン径d50をもつ正極活物質を2種類以上混合することで、正極作成時の充填性を更に向上させることもできる。
なお、本発明におけるメジアン径d50は、公知のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって測定される。粒度分布計としてHORIBA社製LA−920を用いる場合、測定の際に用いる分散媒として、0.1質量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を用い、5分間の超音波分散後に測定屈折率1.24を設定して測定される。
[[平均一次粒子径]]
一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には、正極活物質の平均一次粒子径としては、通常0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、更に好ましくは0.08μm以上、最も好ましくは0.1μm以上で、上限は、通常3μm以下、好ましくは2μm以下、更に好ましくは1μm以下、最も好ましくは0.6μm以下である。上記上限を超えると球状の二次粒子を形成し難く、粉体充填性に悪影響を及ぼしたり、比表面積が大きく低下するために、出力特性等の電池性能が低下する可能性が高くなる場合がある。逆に、上記下限を下回ると、通常、結晶が未発達であるために充放電の可逆性が劣る場合がある。
なお、一次粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により測定される。具体的には、10000倍の倍率の写真で、水平方向の直線に対する一次粒子の左右の境界線による切片の最長の値を、任意の50個の一次粒子について求め、平均値をとることにより求められる。
[[BET比表面積]]
本発明の二次電池に供する正極活物質のBET比表面積は、0.2m2/g以上、好ましくは0.3m2/g以上、更に好ましくは0.4m2/g以上で、上限は4m2/g以下、好ましくは2.5m2/g以下、更に好ましくは1.5m2/g以下である。BET比表面積がこの範囲よりも小さいと電池性能が低下しやすく、大きいとタップ密度が上がりにくくなり、正極活物質形成時の塗布性に問題が発生しやすい場合がある。
BET比表面積は、表面積計(例えば、大倉理研製全自動表面積測定装置)を用い、試料に対して窒素流通下150℃で30分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用い、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって測定した値で定義される。
[[製造法]]
正極活物質の製造法としては、無機化合物の製造法として一般的な方法が用いられる。特に球状ないし楕円球状の活物質を作成するには種々の方法が考えられるが、例えば、遷移金属硝酸塩、遷移金属硫酸塩等の遷移金属原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、攪拌をしながらpHを調節して球状の前駆体を作成回収し、これを必要に応じて乾燥した後、LiOH、LiCO、LiNO等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法、遷移金属硝酸塩、遷移金属硫酸塩、遷移金属水酸化物、遷移金属酸化物等の遷移金属原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これにLiOH、LiCO、LiNO等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法、また、遷移金属硝酸塩、遷移金属硫酸塩、遷移金属水酸化物、遷移金属酸化物等の遷移金属原料物質と、LiOH、LiCO、LiNO等のLi源と、必要に応じ他の元素の原料物質とを水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これを高温で焼成して活物質を得る方法等が挙げられる。
[正極の構成]
以下に、本発明に使用される正極の構成について述べる。
[[電極構造と作製法]]
本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、正極活物質と結着剤とを含有する正極活物質層を、集電体上に形成して作製される。正極活物質を用いる正極の製造は、常法により行うことができる。すなわち、正極活物質と結着剤、並びに必要に応じて導電材及び増粘剤等を乾式で混合してシート状にしたものを正極集電体に圧着するか、又はこれらの材料を液体媒体に溶解又は分散させてスラリーとして、これを正極集電体に塗布し、乾燥することにより、正極活物質層を集電体上に形成させることにより正極を得ることができる。
正極活物質はその2種類以上を事前に混合して用いてもよいし、正極作成時に同時に加えることによって混合されてもよい。
[[正極活物質]]
本発明のリチウムイオン二次電池の正極に用いられる正極活物質の、正極活物質層中の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは82質量%以上、特に好ましくは84質量%以上である。また上限は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは93質量%以下である。正極活物質層中の正極活物質の含有量が低いと電気容量が不十分となる場合がある。逆に含有量が高すぎると正極の強度が不足する場合がある。
[[導電材]]
導電材としては、公知の導電材を任意に用いることができる。具体例としては、銅、ニッケル等の金属材料;天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト);アセチレンブラック等のカーボンブラック;ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素材料等が挙げられる。なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
導電材は、正極活物質層中に、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、また上限は、通常50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下含有するように用いられる。含有量がこの範囲よりも低いと導電性が不十分となる場合がある。逆に、含有量がこの範囲よりも高いと電池容量が低下する場合がある。
[[結着剤]]
正極活物質層の製造に用いる結着剤としては、特に限定されず、塗布法の場合は、電極製造時に用いる液体媒体に対して溶解又は分散される材料であれば良いが、具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。なお、これらの物質は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
正極活物質層中の結着剤の割合は、通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、上限は通常80質量%以下、好ましくは60質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、最も好ましくは10質量%以下である。結着剤の割合が低すぎると、正極活物質を十分保持できずに正極の機械的強度が不足し、サイクル特性等の電池性能を悪化させてしまう場合がある。一方で、高すぎると、電池容量や導電性の低下につながる場合がある。
[[液体媒体]]
スラリーを形成するための液体媒体としては、正極活物質、導電材、結着剤、並びに必要に応じて使用される増粘剤を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いても良い。
水系媒体としては、例えば、水、アルコールと水との混合媒等が挙げられる。有機系媒体としては、例えば、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類;キノリン、ピリジン等の複素環化合物;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、アクリル酸メチル等のエステル類;ジエチレントリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン等のアミン類;ジエチルエーテル、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルフォキシド等の非プロトン性極性溶媒等を挙げることができる。
[[増粘剤]]
特に水系媒体を用いる場合、増粘剤と、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のラテックスを用いてスラリー化するのが好ましい。増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調製するために使用される。増粘剤としては、特に制限はないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。更に増粘剤を添加する場合には、活物質に対する増粘剤の割合は、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.6質量%以上であり、また、上限としては5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下の範囲である。この範囲を下回ると、著しく塗布性が低下する場合がある。上回ると、正極活物質層に占める活物質の割合が低下し、電池の容量が低下したり、正極活物質間の抵抗が増大したりする場合がある。
[[圧密化]]
塗布、乾燥によって得られた正極活物質層は、正極活物質の充填密度を上げるために、ハンドプレス、ローラープレス等により圧密化することが好ましい。正極活物質層の密度は、下限として好ましくは1.5g/cm3以上、より好ましくは2g/cm3、更に好ましくは2.2g/cm3以上であり、上限としては、好ましくは3.5g/cm3以下、より好ましくは3g/cm3以下、更に好ましくは2.8g/cm3以下の範囲である。この範囲を上回ると集電体/活物質界面付近への非水系電解液の浸透性が低下し、特に高電流密度での充放電特性が低下する場合がある。また下回ると活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大する場合がある。
[[集電体]]
正極集電体の材質としては特に制限は無く、公知のものを任意に用いることができる。具体例としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素材料が挙げられる。中でも金属材料、特にアルミニウムが好ましい。
集電体の形状としては、金属材料の場合、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられ、炭素材料の場合、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。これらのうち、金属薄膜が好ましい。なお、薄膜は適宜メッシュ状に形成してもよい。薄膜の厚さは任意であるが、通常1μm以上、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、また上限は、通常1mm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。薄膜がこの範囲よりも薄いと集電体として必要な強度が不足する場合がある。逆に、薄膜がこの範囲よりも厚いと取り扱い性が損なわれる場合がある。
集電体と正極活物質層の厚さの比は特には限定されないが、(非水系電解液注液直前の片面の活物質層の厚さ)/(集電体の厚さ)が20以下であることが好ましく、より好ましくは15以下、最も好ましくは10以下であり、下限は、0.5以上が好ましく、より好ましくは0.8以上、最も好ましくは1以上の範囲である。この範囲を上回ると、高電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じる場合がある。この範囲を下回ると、正極活物質に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合がある。
[[電極面積]]
本発明の非水系電解液を用いる場合、高出力かつ高温時の安定性を高める観点から、正極活物質層の面積は、電池外装ケースの外表面積に対して大きくすることが好ましい。具体的には、二次電池の外装の表面積に対する前記正極の電極面積の総和が面積比で20倍以上とすることが好ましく、更に40倍以上とすることがより好ましい。外装ケースの外表面積とは、有底角型形状の場合には、端子の突起部分を除いた発電要素が充填されたケース部分の縦と横と厚さの寸法から計算で求める総面積をいう。有底円筒形状の場合には、端子の突起部分を除いた発電要素が充填されたケース部分を円筒として近似する幾何表面積である。正極の電極面積の総和とは、負極活物質を含む合材層に対向する正極合材層の幾何表面積であり、集電体箔を介して両面に正極合材層を形成してなる構造では、それぞれの面を別々に算出する面積の総和をいう。
[[放電容量]]
本発明の二次電池用非水系電解液を用いる場合、二次電池の1個の電池外装に収納される電池要素のもつ電気容量(電池を満充電状態から放電状態まで放電したときの電気容量)が、3アンペアーアワー(Ah)以上であると、低温放電特性の向上効果が大きくなるため好ましい。そのため、正極板は、放電容量が満充電で、3アンペアアワー(Ah)以上20Ah以下になるように設計することが好ましく、更に4Ah以上10Ah以下がより好ましい。3Ah未満では、大電流の取り出し時に電極反応抵抗による電圧低下が大きくなり電力効率が悪くなる場合がある。20Ah以上では、電極反応抵抗が小さくなり電力効率は良くなるが、パルス充放電時の電池内部発熱による温度分布が大きく、充放電繰り返しの耐久性が劣り、また、過充電や内部短絡等の異常時の急激な発熱に対して放熱効率も悪くなり、内圧が上昇してガス放出弁が作動する現象(弁作動)、電池内容物が外に激しく噴出する現象(破裂)に至る確率が上がる場合がある。
[[正極板の厚さ]]
正極板の厚さは特に限定されるものではないが、高容量かつ高出力の観点から、芯材の金属箔厚さを差し引いた合材層の厚さは、集電体の片面に対して下限として、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上で、上限としては、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。
<リチウムイオン二次電池>
以下に、本発明のリチウムイオン二次電池について詳細に記す。
[電池形状]
電池形状は特に限定されるものではないが、有底筒型形状、有底角型形状、薄型形状、シート形状、ペーパー形状が挙げられる。システムや機器に組み込まれる際に、容積効率を高めて収納性を上げるために、電池周辺に配置される周辺システムへの収まりを考慮した馬蹄形、櫛型形状等の異型のものであってもよい。電池内部の熱を効率よく外部に放出する観点から、比較的平らで大面積の面を少なくとも一つを有する角型形状が好ましい。
有底筒型形状の電池では、充填される発電素子に対する外表面積が小さくなるので、充電や放電時に内部抵抗による発生するジュール発熱を効率よく外部に逃げる設計にすることが好ましい。また、熱伝導性の高い物質の充填比率を高め、内部での温度分布が小さくなるように設計することが好ましい。
有底角型形状では、一番大きい面の面積S(端子部を除く外形寸法の幅と高さとの積、単位cm2)の2倍と電池外形の厚さT(単位cm)との比率2S/Tの値が100以上であることが好ましく、200以上であることが更に好適である。最大面を大きくすることにより高出力かつ大容量の電池であってもサイクル性や高温保存等の特性を向上させるとともに、異常発熱時の放熱効率を上げることができ、「弁作動」や「破裂」という危険な状態になることを抑制することができる。
[電池構成]
本発明のリチウムイオン二次電池は、リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極及び負極、非水系電解液、正極と負極の間に配設されるセパレータ、集電端子、及び外装ケース等によって少なくとも構成される。要すれば、電池の内部及び/又は電池の外部に保護素子を装着してもよい。
[[セパレータ]]
本発明で用いられるセパレータは、両極間を電子的に絶縁する所定の機械的強度を有し、イオン透過度が大きく、かつ、正極と接する側における酸化性と負極側における還元性への耐性を兼ね備えるものであれば特に限定されるものではない。このような要求特性を有するセパレータの材質として、樹脂、無機物、ガラス繊維等が用いられる。前記樹脂としては、オレフィン系ポリマー、フッ素系ポリマー、セルロース系ポリマー、ポリイミド、ナイロン等が用いられる。具体的には、電解液に対して安定で、保液性の優れた材料の中から選ぶのが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを原料とする多孔性シート又は不織布等を用いるのが好ましい。
前記無機物としては、アルミナや二酸化珪素等の酸化物類、窒化アルミニウムや窒化珪素等の窒化物類、硫酸バリウムや硫酸カルシウム等の硫酸塩類が用いられ、粒子形状若しくは繊維形状のものが用いられる。形態としては、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状のものが用いられる。薄膜形状では、孔径が0.01〜1μm、厚さが5〜50μmのものが好適に用いられる。前記の独立した薄膜形状以外に、樹脂製の結着剤を用いて前記無機物の粒子を含有する複合多孔層を正極及び/又は負極の表層に形成させてなるセパレータを用いることができる。例えば、正極の両面に90%粒径が1μm未満のアルミナ粒子をフッ素樹脂を結着剤として多孔層を形成させることが挙げられる。
[[電極群]]
電極群は、前述の正極板と負極板とを前述のセパレータを介してなる積層構造のもの、及び前述の正極板と負極板とを前述のセパレータを介して渦巻き状に捲回した構造のものの何れでもよい。
電極群の体積が電池内容積に占める割合(以下、電極群占有率と称する)は、40%〜90%にすることが好ましく、50%〜80%にすることが更に好ましい。前記の電極群占有率が40%未満では、電池容量が小さくなり、また、90%以上では空隙スペースが少なく、電池が高温になることによって部材が膨張したり電解質の液成分の蒸気圧が高くなったりして内部圧力が上昇し、電池としての充放電繰り返し性能や高温保存等の諸特性を低下させたり、更には、内部圧力を外に逃がすガス放出弁が作動する場合がある。
[[集電構造]]
集電構造は特に限定されるものではないが、本発明の非水系電解液による低温放電特性の向上をより効果的に実現するには、配線部分や接合部分の抵抗を低減する構造にする必要がある。こうした内部抵抗が小さい場合、本発明の非水系電解液を使用した効果は特に良好に発揮される。
電極群が前述の積層構造のものでは、各電極層の金属芯部分を束ねて端子に溶接して形成される構造が好適に用いられる。一枚の電極面積が大きくなる場合には、内部抵抗が大きくなるので、電極内に複数の端子を設けて抵抗を低減することも好適に用いられる。電極群が前述の捲回構造のものでは、正極及び負極にそれぞれ複数のリード構造を設け、端子に束ねることにより、内部抵抗を低くすることができる。
前述の構造を最適化することにより、内部抵抗をできるだけ小さくすることができる。大電流で用いられる電池では、10kHz交流法で測定されるインピーダンス(以下、「直流抵抗成分」と略記する)を10ミリオーム(mΩ)以下にすることが好ましく、直流抵抗成分を5ミリオーム(mΩ)以下にすることがより好ましい。直流抵抗成分を0.1ミリオーム(mΩ)未満にすると高出力特性が向上するが、用いられる集電構造材の占める比率が増え、電池容量が減少する場合がある。
本発明の非水系電解液は、電極活物質に対するリチウムの脱挿入に係わる反応抵抗の低減に効果があり、それが良好な低温放電特性を実現できる要因になっていると考えられる。しかし、通常の直流抵抗が大きな電池では、直流抵抗に阻害されて反応抵抗低減の効果を低温放電特性に100%反映できないことがわかった。直流抵抗成分の小さな電池を用いることでこれを改善し、本発明の非水系電解液の効果を充分に発揮できるようになる。
また、非水系電解液の効果を引き出し、高い低温放電特性をもつ電池を作製するという観点からは、この要件と前述した二次電池の1個の電池外装に収納される電池要素のもつ電気容量(電池を満充電状態から放電状態まで放電したときの電気容量)が、3アンペアーアワー(Ah)以上である、という要件を同時に満たすことが特に好ましい。
[[外装ケース]]
外装ケースの材質は用いられる非水系電解質に対して安定な物質であれば特に限定されるものではない。具体的には、ニッケルめっき鋼板、ステンレス、アルミニウム又はアルミニウム合金、マグネシウム合金等の金属類、又は、樹脂とアルミ箔との積層フィルム(ラミネートフィルム)が用いられる。軽量化の観点から、アルミニウム又はアルミニウム合金の金属、ラミネートフィルムが好適に用いられる。
前記金属類を用いる外装ケースでは、レーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接により金属同士を溶着して封止密閉構造とするもの、若しくは、樹脂製ガスケットを介して前記金属類を用いてかしめ構造とするものが挙げられる。
前記ラミネートフィルムを用いる外装ケースでは、樹脂層同士を熱融着することにより封止密閉構造とするもの等が挙げられる。シール性を上げるために、前記樹脂層の間にラミネートフィルムに用いられる樹脂と異なる樹脂を介在させてもよい。特に、集電端子を介して樹脂層を熱融着して密閉構造とする場合には、金属と樹脂との接合になるので、介在する樹脂として極性基を有する樹脂や極性基を導入した変成樹脂が好適に用いられる。
[[保護素子]]
前述の保護素子として、異常発熱や過大電流が流れた時に抵抗が増大するPTC(Positive Temperature Coefficient)、温度ヒューズ、サーミスター、異常発熱時に電池内部圧力や内部温度の急激な上昇により回路に流れる電流を遮断する弁(電流遮断弁)等が挙げられる。前記保護素子は高電流の通常使用で作動しない条件のものを選択することが好ましく、高出力の観点から、保護素子がなくても異常発熱や熱暴走に至らない設計にすることがより好ましい。
<作用・原理>
特定物質を含有する非水系電解液と異配向性炭素複合物を含有する負極活物質とを組み合わせると、より大型にした際にも、低充電深度での長期間の使用に対しても、良好な容量維持率を発現できるリチウムイオン二次電池を提供できる作用・原理は明らかではないが、また、その作用原理によって本発明は限定されるものではないが、電池作成後の初回の充電時に配向性の異なる面が混在することによって特定化合物との複雑な反応を生み出し、これによって生じたSEI(Solid Electrolyte Interface 固体電解質界面)被膜が通常のSEI被膜に対して、低充電深度の状態でも安定な層となり、低充電深度での過酷な使用においても被膜の溶解や増大を招かず、高い容量維持率を発現できると推察している。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
[負極材料の作製1]
キノリン不溶分が0.05質量%以下のコールタールピッチを、反応炉にて460℃で10時間熱処理し、軟化点385℃の、溶融性のある塊状の熱処理黒鉛結晶前駆体を得た。得られた塊状の熱処理黒鉛結晶前駆体を、中間粉砕機(セイシン企業社製オリエントミル)を用いて粉砕し、更に微粉砕機(マツボー社製ターボミル)を用いて微粉砕して、メジアン径17μmの微細化した黒鉛結晶前駆体粉末(E)を得た。
上記の微細化した黒鉛結晶前駆体粉末(E)に、メジアン径17μm、アスペクト比1.4、タップ密度1.0g/cm3、BET比表面積6.5m2/g、円形度0.92の天然黒鉛を、微細化黒鉛結晶前駆体粉末及び天然黒鉛の全重量に対して50質量%混合し、混合粉末を得た。
この熱処理黒鉛結晶前駆体の混合粉末を金属製の容器に詰め、箱形の電気炉で窒素ガス流通下、540℃で2時間、熱処理Aを行なった。熱処理A中に、微細化した黒鉛結晶前駆体粉末は溶融し、天然黒鉛と均一に複合化した熱処理黒鉛結晶前駆体の混合物の塊となった。
この固化した熱処理黒鉛結晶前駆体混合物の塊を粗砕機(吉田製作所製ロールジョークラッシャー)で粉砕、更に微粉砕機(マツボー社製ターボミル)を用いて微粉砕し、メジアン径18.5μmの粉末を得た。
得られた粉末を容器に入れ、電気炉にて窒素雰囲気下、1000℃で1時間焼成した。焼成後に得られた粉体(熱処理B前前駆体混合物(F))は粉末のままの形態であり、溶融、融着は殆ど見られなかった。
更に、焼成した粉末を黒鉛坩堝に移し替え、直接通電炉を用いて不活性雰囲気下で3000℃にて5時間かけて黒鉛化し、粗大粒子の混入を防ぐため、ASTM400メッシュの篩いを5回繰り返し、異配向性炭素複合物(G)を得た。
[負極材料の作製2]
[負極材料の作製1]で用いた天然黒鉛と黒鉛化可能なバインダーとして軟化点88℃のバインダーピッチとを、100:30の重量比で混合し、予め128℃に加熱されたマチスケータ型撹拌翼を持つニーダーに投入して20分間混合した。
十分に捏合された混合物を、予め108℃に予熱されたモールドプレス機の金型に充填し、5分間放置し混合物の温度が安定したところでプランジャーを押し、2kgf/cm2(0.20MPa)の圧力を加えて成形した。1分間この圧力を保持した後、駆動を止め、圧力低下が収まった後、天然黒鉛と黒鉛結晶前駆体粉末の複合した成形体を取り出した。
得られた成形体を耐熱容器である金属製サガーに収納し、間隙に黒鉛質ブリーズを充填した。電気炉で室温から1000℃まで48時間かけて昇温し、1000℃で3時間保持し、脱揮発成分・焼成を行った。次に、成形体を黒鉛ルツボに収納し、間隙に黒鉛質ブリーズを充填し、直接通電炉を用いて不活性雰囲気下で3000℃にて4時間加熱して黒鉛化を行った。
得られた黒鉛質の成形体をジョークラッシャーで粗砕した後、粉砕羽根回転数を4000回転/分に設定したターボミルにて微粉砕した。更に、分級処理としては粗大粒子の混入を防ぐため、ASTM400メッシュの篩いを5回繰り返し、異配向性炭素複合物(H)を得た。
[負極材料の作製3]
[負極材料の作製2]の直接通電炉を用いた熱処理を2200℃で行った以外は同様の方法にて異配向性炭素複合物(I)を得た。
[負極材料の作製4]
[負極材料の作製2]の天然黒鉛をメジアン径10μm、アスペクト比2.3、タップ密度0.64g/cm3、BET比表面積9.5m2/g、円形度0.83のコークスとした以外は、同様にして異配向性炭素複合物(J)を得た。
[負極材料の作製5]
[負極材料の作製4]で用いたコークスと黒鉛化触媒の炭化珪素と黒鉛化可能なバインダーとして軟化点88℃のバインダーピッチとを、100:10:30の質量比で混合した以外は、[負極材料の作製2]と同様にして、異配向性炭素複合物(K)を得た。
[負極材料の作製6]
[負極材料の作製2]の天然黒鉛をメジアン径19.8μm、アスペクト比3.2、タップ密度0.47g/cm3、BET比表面積5.9m2/g、円形度0.81のリン片状天然黒鉛とした以外は、同様にして異配向性炭素複合物(L)を得た。
[負極材料の作製7]
[負極材料の作製2]の天然黒鉛をメジアン径35μm、アスペクト比1.4、タップ密度1.02g/cm3、BET比表面積3.9m2/g、円形度0.90の天然黒鉛とした以外は、同様にして異配向性炭素複合物(M)を得た。
[負極材料の作製8]
[負極材料の作製2]の粉砕羽根回転数を1500回転/分に設定した以外は同様にして異配向性炭素複合物(N)を得た。
[負極材料の作製9]
[負極材料の作製2]の天然黒鉛をメジアン径6μm、アスペクト比1.5、タップ密度0.15g/cm3の天然黒鉛とした以外は、同様にして異配向性炭素複合物(O)を得た。
[負極材料の作製10]
[負極材料の作製1]で得られた黒鉛結晶前駆体粉末(E)を金属製の容器に詰め、箱形の電気炉で窒素ガス流通下、540℃で2時間、熱処理Aを行なった。熱処理A中に、黒鉛結晶前駆体粉末(E)は溶融し、塊状となった。
この固化した熱処理黒鉛結晶前駆体塊を粗砕機(吉田製作所製ロールジョークラッシャー)で粉砕、更に微粉砕機(マツボー社製ターボミル)を用いて微粉砕し、メジアン径18.5μmの粉末を得た。
得られた粉末を容器に入れ、電気炉にて窒素雰囲気下、1000℃で1時間焼成した。焼成後に得られた粉体は粉末のままの形態であり、溶融、融着は殆ど見られなかった。
更に、焼成した粉末を黒鉛坩堝に移し替え、直接通電炉を用いて不活性雰囲気下で3000℃にて5時間かけて黒鉛化し、粗大粒子の混入を防ぐため、ASTM400メッシュの篩いを5回繰り返し、炭素質物(P)を得た。
[負極材料の作製11]
[負極材料の作製1]で用いた天然黒鉛を金属製の容器に詰め、箱形の電気炉で窒素ガス流通下、540℃で2時間、熱処理Aを行なった。熱処理A後においても、天然黒鉛に溶融・融着は見られなかった。得られた粉末を容器に入れ、電気炉にて窒素雰囲気下、1000℃で1時間焼成した。焼成後に得られた粉体は粉末のままの形態であり、溶融、融着は見られなかった。
更に、焼成した粉末を黒鉛坩堝に移し替え、直接通電炉を用いて不活性雰囲気下で3000℃にて5時間かけて黒鉛化し、粗大粒子の混入を防ぐため、ASTM400メッシュの篩いを5回繰り返し、炭素質物(Q)を得た。
[負極材料の作製12]
炭素質物(P)と炭素質物(Q)を50質量%ずつとなるよう混まぜ、均一となるよう混合し、炭素質物混合物(R)を得た。
〔電池の作製〕
《正極の作製1》
正極活物質としてのコバルト酸リチウム(LiCoO)90質量%と、導電材としてのアセチレンブラック5質量%と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)5質量%とを、N−メチルピロリドン溶媒中で混合して、スラリー化した。得られたスラリーを厚さ15μmのアルミ箔の両面に塗布して乾燥し、プレス機で厚さ80μmに圧延したものを、活物質層のサイズとして幅100mm、長さ100mm及び幅30mmの未塗工部を有する形状に切り出し、正極とした。このときの正極の活物質の密度は2.35g/cm3であった。
《負極の作製1》
負極活物質を98重量部に、増粘剤、バインダーとしてそれぞれ、カルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)100重量部、及び、スチレン−ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン−ブタジエンゴムの濃度50質量%)2重量部を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。得られたスラリーを厚さ10μmの圧延銅箔の両面に塗布して乾燥し、プレス機で厚さ75μmに圧延したものを、活物質層のサイズとして幅104mm、長さ104mm及び幅30mmの未塗工部を有する形状に切り出し、負極とした。このときの負極の活物質の密度は1.35g/cm3であった。
《非水系電解液の作製1》
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)の混合物(体積比3:3:4)に、1mol/Lの濃度で、充分に乾燥したヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を溶解させた。更に、ジフルオロリン酸リチウム塩(LiPO22)を0.3質量%となるように含有させた。
《非水系電解液の作製2》
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)の混合物(体積比3:3:4)に、1mol/Lの濃度で、充分に乾燥したヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を溶解させた。更に、メタンスルホン酸トリメチルシリルを0.3質量%となるように含有させた。
《非水系電解液の作製3》
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)の混合物(体積比3:3:4)に、1mol/Lの濃度で、充分に乾燥したヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を溶解させた。更に、ヘキサメチルシクロトリシロキサンを0.3質量%となるように含有させた。
《非水系電解液の作製4》
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)の混合物(体積比3:3:4)に、1mol/Lの濃度で、充分に乾燥したヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を溶解させた。
《電池の作製1》
正極32枚と負極33枚は交互となるように配置し、各電極の間に多孔性ポリエチレンシートのセパレータ(厚さ25μm)が挟まれるよう積層した。この際、正極活物質面が負極活物質面内から外れないよう対面させた。この正極と負極それぞれについての未塗工部同士を溶接して集電タブを作製し、電極群としたものを電池缶(外寸:120×110×10mm)に封入した。その後、電極群を装填した電池缶に非水系電解液を20mL注入して、電極に充分浸透させ、密閉し角型電池を作製した。この電池の定格放電容量は約6アンペアーアワー(Ah)であり、10kHz交流法で測定される直流抵抗は約5ミリオーム(mΩ)である。
実施例1
《負極の作製1》項の負極活物質を異配向性炭素複合物(G)として作製した負極と、《正極の作製1》項で作製した正極と《非水系電解液の作製1》項で作製した非水系電解液を用いて、《電池の作製1》項の手法で電池を作製した。この電池について、下記の《電池の評価》の項で述べる方法及び上記した測定方法で、測定を実施した。
実施例2
実施例1の《負極の作製1》項の負極活物質に異配向性炭素複合物(H)を用いた以外は同様にして電池を作製し、《電池の評価》項記載の電池評価を実施した。
実施例3
実施例1の《負極の作製1》項の負極活物質に異配向性炭素複合物(I)を用いた以外は同様にして電池を作製し、《電池の評価》項記載の電池評価を実施した。
実施例4
実施例1の《負極の作製1》項の負極活物質に異配向性炭素複合物(J)を用いた以外は同様にして電池を作製し、《電池の評価》項記載の電池評価を実施した。
実施例5
実施例1の《負極の作製1》項の負極活物質に異配向性炭素複合物(K)を用いた以外は同様にして電池を作製し、《電池の評価》項記載の電池評価を実施した。
実施例6
実施例1の《負極の作製1》項の負極活物質に異配向性炭素複合物(L)を用いた以外は同様にして電池を作製し、《電池の評価》項記載の電池評価を実施した。
実施例7
実施例1の《負極の作製1》項の負極活物質に異配向性炭素複合物(M)を用いた以外は同様にして電池を作製し、《電池の評価》項記載の電池評価を実施した。
実施例8
実施例1の《負極の作製1》項の負極活物質に異配向性炭素複合物(N)を用いた以外は同様にして電池を作製し、《電池の評価》項記載の電池評価を実施した。
実施例9
実施例1の《負極の作製1》項の負極活物質に異配向性炭素複合物(O)を用いた以外は同様にして電池を作製し、《電池の評価》項記載の電池評価を実施した。
実施例10〜18
実施例1〜9の非水系電解液を、《非水系電解液の作製2》の項で作製した非水系電解液に代えた以外は同様にして電池を作製し、同様の方法にて電池評価を実施した。
実施例19〜27
実施例1〜9の非水系電解液を、《非水系電解液の作製3》の項で作製した非水系電解液に代えた以外は同様にして電池を作製し、同様の方法にて電池評価を実施した。
比較例1
実施例1の《負極の作製1》項の負極活物質に炭素質物(P)を用いた以外は同様にして電池を作製し、《電池の評価》項記載の電池評価を実施した。
比較例2
比較例1の非水系電解液を、《非水系電解液の作製4》の項で作製した非水系電解液に代えた以外は、同様にして電池を作製し、《電池の評価》項記載の電池評価を実施した。
比較例3
実施例1の《負極の作製1》項の負極活物質に炭素質物(Q)を用いた以外は同様にして電池を作製し、《電池の評価》項記載の電池評価を実施した。
比較例4
比較例3の非水系電解液を、《非水系電解液の作製4》の項で作製した非水系電解液に代えた以外は、同様にして電池を作製し、《電池の評価》項記載の電池評価を実施した。
比較例5
実施例1の《負極の作製1》項の負極活物質に炭素質物混合物(R)を用いた以外は同様にして電池を作製し、《電池の評価》項記載の電池評価を実施した。
比較例6
比較例5の非水系電解液を、《非水系電解液の作製4》の項で作製した非水系電解液に代えた以外は、同様にして電池を作製し、《電池の評価》項記載の電池評価を実施した。
比較例7
実施例1の非水系電解液を、《非水系電解液の作製4》の項で作製した非水系電解液に代えた以外は、同様にして電池を作製し、《電池の評価》項記載の電池評価を実施した。
比較例8
実施例2の非水系電解液を、《非水系電解液の作製4》の項で作製した非水系電解液に代えた以外は、同様にして電池を作製し、《電池の評価》項記載の電池評価を実施した。
比較例9
実施例4の非水系電解液を、《非水系電解液の作製4》の項で作製した非水系電解液に代えた以外は、同様にして電池を作製し、《電池の評価》項記載の電池評価を実施した。
比較例10
実施例5の非水系電解液を、《非水系電解液の作製4》の項で作製した非水系電解液に代えた以外は、同様にして電池を作製し、《電池の評価》項記載の電池評価を実施した。
比較例11〜13
比較例1、3、5の非水系電解液を、《非水系電解液の作製2》の項で作製した非水系電解液に代えた以外は同様にして電池を作製し、同様の方法にて電池評価を実施した。
比較例14〜16
比較例1、3、5の非水系電解液を、《非水系電解液の作製3》の項で作製した非水系電解液に代えた以外は同様にして電池を作製し、同様の方法にて電池評価を実施した。
《電池の評価》
(容量測定)
充放電サイクルを経ていない電池に対して、25℃で電圧範囲4.2V〜3.0V、電流値0.2C(1時間率の放電容量による定格容量を1時間で放電する電流値を1Cとする、以下同様)にて5サイクル初期充放電を行った。この時の5サイクル目0.2C放電容量を初期容量とした。次に下記に示す出力測定を実施した。
(低充電深度サイクル試験)
リチウムイオン二次電池の実使用上限温度と目される60℃の高温環境下にてサイクル試験を行った。容量測定で測定した初期容量の20%となる容量まで、充電上限電圧4.2Vまで2Cの定電流定電圧法で充電した後、放電終止電圧3.0Vまで2Cの定電流で放電する充放電サイクルを1サイクルとし、このサイクルを500サイクルまで繰り返した。
サイクル試験終了後の電池に対し、25℃環境下で3サイクルの充放電を行い、その3サイクル目の0.2C放電容量を低充電深度サイクル後容量とした。サイクルに先だって測定した初期容量とサイクル試験終了後に測定した低充電深度サイクル後容量から下記計算式によってサイクル維持率を求めた。
サイクル維持率(%)=100×低充電深度サイクル後容量/初期容量
実施例及び比較例に用いた負極活物質一覧を表1に、電池評価の結果を表2及び表3に示す。表2及び表3の結果から分かるように、ジフルオロリン酸リチウム塩、メタンスルホン酸トリメチルシリル又はヘキサメチルシクロトリシロキサンを含有すること、及び負極活物質として異配向性炭素複合物を組み合わせることで、飛躍的に低充電深度のサイクル試験後における容量の維持率(サイクル維持率)が向上していることが分かった。
Figure 2007200871
Figure 2007200871
Figure 2007200871
本発明のリチウムイオン二次電池の用途は特に限定されず、公知の各種の用途に用いることが可能である。具体例としては、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、バイク、原動機付自転車、自転車、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、電動工具、ストロボ、カメラ等を挙げることができる。特に、本発明のリチウムイオン二次電池は、低い充電深度での長期間充放電の繰り返しに対して良好な性能を維持できることから、広く好適に利用できるものである。

Claims (17)

  1. リチウム塩を含有する非水系電解液、負極活物質及び正極活物質を少なくとも有するリチウムイオン二次電池であって、該非水系電解液が、一般式(1)で表される環状シロキサン化合物、一般式(2)で表されるフルオロシラン化合物、一般式(3)で表される化合物、分子内にS−F結合を有する化合物、硝酸塩、亜硝酸塩、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、酢酸塩及びプロピオン酸塩からなる群より選ばれた少なくとも1種以上の化合物を、該非水系電解液全体中に10ppm以上含有するものであり、かつ、該負極活物質が、配向性の異なる炭素質物を2種以上含有する異配向性炭素複合物を含有することを特徴とするリチウムイオン二次電池。
    Figure 2007200871
    [一般式(1)中、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよい炭素数1〜12の有機基を表し、nは3〜10の整数を表す。]
    Figure 2007200871
    [一般式(2)中、R〜Rは互いに同一であっても異なっていてもよい炭素数1〜12の有機基を表し、xは1〜3の整数を表し、p、q及びrはそれぞれ0〜3の整数を表し、1≦p+q+r≦3である。]
    Figure 2007200871
    [一般式(3)中、R〜Rは互いに同一であっても異なっていてもよい炭素数1〜12の有機基を表し、AはH、C、N、O、F、S、Si及び/又はPから構成される基を表す。]
  2. 異配向性炭素複合物が、配向性の異なる炭素質物が付着及び/又は結合されてなる界面を有し、該界面の炭素質物の配向性が不連続及び/又は連続的に変化するものである請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
  3. 異配向性炭素複合物の円形度が0.1以上である請求項1又は請求項2に記載のリチウムイオン二次電池。
  4. 異配向性炭素複合物のラマンスペクトル法によるラマンR値が0.35以下である請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載のリチウムイオン二次電池。
  5. 異配向性炭素複合物のタップ密度が0.55g/cm3以上である請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載のリチウムイオン二次電池。
  6. 異配向性炭素複合物の比表面積が0.1m2/g以上100m2/g以下である請求項1ないし請求項5の何れかの請求項に記載のリチウムイオン二次電池。
  7. 異配向性炭素複合物の体積基準平均粒径が1μm以上50μm以下である請求項1ないし請求項6の何れかの請求項に記載のリチウムイオン二次電池。
  8. 配向性の異なる炭素質物の少なくとも1種が、天然黒鉛(D)に由来する黒鉛系炭素質物(B)である請求項1ないし請求項7の何れかの請求項に記載のリチウムイオン二次電池。
  9. 天然黒鉛(D)に由来する黒鉛系炭素質物(B)の含有量が、異配向性炭素複合物に対して、5質量%以上99.9質量%以下である請求項8に記載のリチウムイオン二次電池。
  10. 配向性の異なる炭素質物の少なくとも1種が、以下の(1)ないし(5)からなる群より選ばれた炭素質物(C)である請求項1ないし請求項9の何れかの請求項に記載のリチウムイオン二次電池。
    (1)石炭系コークス、石油系コークス、ファーネスブラック、アセチレンブラック及びピッチ系炭素繊維からなる群より選ばれた炭化物
    (2)ピッチ原料、芳香族炭化水素、N環化合物、S環化合物、ポリフェニレン、有機合成高分子、天然高分子、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂からなる群より選ばれた有機物及び/又はその熱分解物を前駆体とする炭化物
    (3)(2)の有機物を低分子有機溶媒に溶解させた溶液の熱分解物を前駆体とする炭化物
    (4)有機物を含有する気体の炭化物
    (5)(1)ないし(4)の黒鉛化物
  11. 炭素質物(C)の含有量が、異配向性炭素複合物に対して、0.1質量%以上である請求項10に記載のリチウムイオン二次電池。
  12. 異配向性炭素複合物が、天然黒鉛(D)に由来する黒鉛系炭素質物(B)の1種以上と、炭素質物(C)の1種以上とを含有する請求項1ないし請求項11の何れかの請求項に記載のリチウムイオン二次電池。
  13. 異配向複合炭素質物が、400〜3400℃で1回以上熱処理する工程を経て得られたものである請求項1ないし請求項12の何れかの請求項に記載のリチウムイオン二次電池。
  14. 該非水系電解液が、一般式(1)で表される環状シロキサン化合物、一般式(2)で表されるフルオロシラン化合物、一般式(3)で表される化合物、分子内にS−F結合を有する化合物、硝酸塩、亜硝酸塩、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、酢酸塩及びプロピオン酸塩からなる群より選ばれた少なくとも1種以上の化合物を、非水系電解液全体中に0.01質量%以上、5質量%以下含有するものである請求項1ないし請求項13の何れかの請求項に記載のリチウムイオン二次電池。
  15. 二次電池の外装の表面積に対する正極の電極面積の総和が、面積比で20倍以上である請求項1ないし請求項14の何れかの請求項に記載のリチウムイオン二次電池。
  16. 二次電池の直流抵抗成分が、10ミリオーム(mΩ)以下である請求項1ないし請求項15の何れかの請求項に記載のリチウムイオン二次電池。
  17. 二次電池の1個の電池外装に収納される電池要素のもつ電気容量が、3アンペアーアワー(Ah)以上である請求項1ないし請求項16の何れかの請求項に記載のリチウムイオン二次電池。
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