JP2015187926A - リチウム二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】保存後容量維持率が高いリチウム二次電池の提供。【解決手段】炭素質材料等の負極活物質と式(I)の環状硫酸エステル添加剤Aを含有する非水電解液を備える〔R1が(II)、(III);R2がH、アルキル、(II)、(III);R3がハロゲン、(ハロゲン化)アルキル、アルコキシ、(IV)〕。【選択図】なし

Description

本発明は、携帯電子機器の電源、車載、及び電力貯蔵などに利用される充放電可能なリチウム二次電池に関する。
近年、リチウム二次電池は、携帯電話やノート型パソコンなどの電子機器、或いは電気自動車や電力貯蔵用の電源として広く使用されている。特に最近では、ハイブリッド自動車や電気自動車に搭載可能な、高容量で高出力かつエネルギー密度の高い電池の要望が急拡大している。
リチウム二次電池は、主に、リチウムを吸蔵放出可能な材料を含む正極および負極、並びに、リチウム塩と非水溶媒とを含む電池用非水電解液から構成される。
正極に用いられる正極活物質としては、例えば、LiCoO、LiMnO、LiNiO、LiFePOのようなリチウム金属酸化物が用いられる。
また、非水電解液としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどカーボネート類の混合溶媒(非水溶媒)に、LiPF、LiBF、LiN(SOCF、LiN(SOCFCFのようなLi電解質を混合した溶液が用いられている。
一方、負極に用いられる負極活物質としては、金属リチウム、リチウムを吸蔵及び放出可能な金属系材料(金属単体、金属酸化物、合金など)、リチウムを吸蔵及び放出可能な炭素質材料(「炭素材料」とも呼ばれている)、等が用いられている。
例えば、負極活物質として、天然黒鉛、人造黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン等の単体又は混合物である炭素質材料;Si、Ge、Sn、Pb、P、Sb、Bi、Al、Ga、In、Ti、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ag、Mg、Sr、Ba等の金属元素を少なくとも1種含有する金属系材料;等を用いることが知られている(例えば、特許文献1、2、4〜9参照)。
また、負極活物質として、チタン酸リチウム等のチタン酸化物を用いることが知られている(例えば、特許文献2及び3参照)。
一方、電池性能を改善する試みとして、種々の添加剤を電池用非水電解液に含有させることが提案されている。
例えば、添加剤として、特定の環状硫酸エステルを含有する電池用非水電解液が知られている(例えば、特許文献10参照)。
特許第5376142号 特許第5353923号公報 特許第4855331号公報 特開2008−10183号公報 特開2013−175456号公報 特開2007−173222号公報 特許第4424895号公報 特許第4080110号公報 特許第5268018号公報 国際公開第2012/053644号パンフレット
しかしながら、リチウム二次電池に関し、保存後の容量維持率を更に向上させることが求められている。
従って、本発明の目的は、保存後の容量維持率が高いリチウム二次電池を提供することである。
前記課題を解決するための手段は以下のとおりである。
<1> 正極と、
リチウムを吸蔵・放出可能な負極活物質であって、炭素質材料及び金属化合物系材料からなる群から選択される少なくとも1種を含む負極活物質を含む負極と、
下記一般式(I)で表される環状硫酸エステル化合物である添加剤Aを含有する非水電解液と、
を備えるリチウム二次電池。
〔一般式(I)において、Rは、一般式(II)で表される基又は式(III)で表される基を表し、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、一般式(II)で表される基、又は式(III)で表される基を表す。
一般式(II)において、Rは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は式(IV)で表される基を表す。一般式(II)、式(III)、および式(IV)における波線は、結合位置を表す。
一般式(I)で表される環状硫酸エステル化合物中に、一般式(II)で表される基が2つ含まれる場合、2つの一般式(II)で表される基は、同一であっても互いに異なっていてもよい。〕
<2> 前記炭素質材料が、天然黒鉛である炭素質材料、人造炭素質物質を一回以上熱処理してなる炭素質材料、及び人造黒鉛質物質を一回以上熱処理してなる炭素質材料からなる群から選択される少なくとも1種である<1>に記載のリチウム二次電池。
<3> 前記負極が、前記負極活物質を含有する負極活物質層を備え、
前記負極活物質層が、前記負極活物質として炭素質材料を含有し結晶性及び配向性の少なくとも一方が異なる炭素質材料含有層を2層以上含む<1>又は<2>に記載のリチウム二次電池。
<4> 前記負極活物質層は、前記2層以上の炭素質材料含有層のうちの隣り合う2層が接する界面を少なくとも1つ含む<3>に記載のリチウム二次電池。
<5> 前記炭素質材料が、ハードカーボンを含む<1>に記載のリチウム二次電池。
<6> 前記炭素質材料が、黒鉛と、ハードカーボンと、を含む<1>に記載のリチウム二次電池。
<7> 前記炭素質材料が、結晶性が異なる炭素質物を2種以上含む複合炭素質物を含む<1>に記載のリチウム二次電池。
<8> 前記複合炭素質物が、粒子状炭素質物に対し、該粒子状炭素質物とは結晶性が異なる炭素質物を被覆及び/又は結合させてなる界面を有し、該界面の結晶性が不連続及び/又は連続的に変化するものである<7>に記載のリチウム二次電池。
<9> 前記粒子状炭素質物が、天然黒鉛及び人造黒鉛の少なくとも一方を含有する黒鉛系炭素質物である<8>に記載のリチウム二次電池。
<10> 前記粒子状炭素質物が、
(a)石炭系コークス、石油系コークス、ファーネスブラック、アセチレンブラック、及びピッチ系炭素繊維からなる群から選択される少なくとも1種を熱分解して得られた熱分解物、
(b)有機物気体の炭化物、並びに、
(c)前記(a)又は前記(b)の少なくとも一部を黒鉛化してなる炭素質物
からなる群から選択される少なくとも1種を含有する<8>に記載のリチウム二次電池。
<11> 前記粒子状炭素質物とは結晶性が異なる炭素質物が、前記粒子状炭素質物よりも結晶性が低い低結晶性炭素質物である<8>〜<10>のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
<12> 前記粒子状炭素質物とは結晶性が異なる炭素質物が、
(d)石炭系重質油、直流系重質油、分解系石油重質油、芳香族炭化水素、N環化合物、S環化合物、ポリフェニレン、有機合成高分子、天然高分子、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、炭化可能な有機物、又は、
(e)前記(d)を低分子有機溶媒に溶解させたもの
の炭化物である<8>〜<11>のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
<13> 前記複合炭素質物が、黒鉛系炭素質物と低結晶性炭素質物とを含有し、前記黒鉛系炭素質物が複合炭素質物全体に対して50質量%以上である<7>〜<12>のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
<14> 前記複合炭素質物の円形度が、0.85以上である<7>〜<13>のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
<15> 前記複合炭素質物が、粒子状炭素質物と炭化可能な有機物とを混合して混合物とし、該混合物を400℃〜3200℃で1回以上熱処理する工程を含む方法で得られたものである<7>〜<14>のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
<16> 前記炭素質材料が、鱗片状黒鉛を球形化してなる球形化黒鉛、及び、前記球形化黒鉛の表面を炭素被覆してなる炭素被覆球形化黒鉛からなる群から選択される少なくとも1種を含む<1>に記載のリチウム二次電池。
<17> 前記炭素質材料が、黒鉛、ソフトカーボン、及びハードカーボンからなる群から選択される少なくとも1種を含む<1>に記載のリチウム二次電池。
<18> 前記炭素質材料が、球状天然黒鉛粒子と黒鉛化可能なバインダーの黒鉛化物とが複合化された複合黒鉛粒子を含み、
前記複合黒鉛粒子のBET比表面積で規格化した表面に存在するCO基の量が、1.35μmol/m以上5μmol/m以下、平均円形度が0.85以上0.95以下である<1>に記載のリチウム二次電池。
<19> 前記炭素質材料は、(002)面の面間隔(d002)が0.340nm以下の炭素質材料を含む<1>〜<18>のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
<20> 前記金属化合物系材料が、下記一般式(T1)で表されるチタン酸化物を含む<1>に記載のリチウム二次電池。
LiTi ・・・ (T1)
〔一般式(T1)中、Aは、遷移金属元素、周期律表におけるLi以外の第1族元素、第2族元素、及び第13族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を表す。
一般式(T1)中、x、y、及びzは、0≦x≦3、0≦y≦1.3、1≦z≦2.5を満たす値を表す。〕
<21> 前記金属化合物系材料が、前記一般式(T1)で表されるチタン酸化物として、TiO、Li0.8Ti2.2、LiTi、Li1.33Ti1.67、Li1.14Ti1.71、及びLiCrTiOからなる群から選択される少なくとも1種を含む<20>に記載のリチウム二次電池。
<22> 前記金属化合物系材料が、下記一般式(T11)で表されるチタン酸化物を含む<1>に記載のリチウム二次電池。
LiTi ・・・ (T11)
〔一般式(T11)中、Mは、Na、K、Co、Al、Fe、Ti、Mg、Cr、Ga、Cu、Zn及びNbからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。
一般式(T11)中、x、y、及びzは、0.7≦x≦1.5、1.5≦y≦2.3、0≦z≦1.6を満たす値を表す。
<23> 前記金属化合物系材料が、前記一般式(T11)で表されるチタン酸化物として、Li4/3Ti5/3、LiTi、Li4/5Ti11/5、及びLi4/3Ti4/3Al1/3を含む<22>に記載のリチウム二次電池。
<24> 前記添加剤Aの含有量が、前記非水電解液の全量に対し、0.01質量%以上である<1>〜<23>のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
<25> 前記非水電解液が、更に、炭素−炭素不飽和結合を有するカーボネート化合物、フッ素原子を有するカーボネート化合物、フルオロリン酸化合物、オキサラト化合物、及び環状スルトン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である添加剤Bを含有する<1>〜<24>のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
<26> 前記添加剤Bの含有量が、前記非水電解液の全量に対し、0.01質量%〜10質量%である<25>に記載のリチウム二次電池。
<27> 前記添加剤Bが、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート、モノフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、ジフルオロ(ビスオキサラト)リン酸リチウム、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム、トリス(オキサラト)リン酸リチウム、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム、ビスオキサラトホウ酸リチウム、1,3−プロパンスルトン、及び1,3−プロペンスルトンからなる群から選ばれる少なくとも1種である<25>又は<26>に記載のリチウム二次電池。
<28> <1>〜<27>のいずれか1項に記載のリチウム二次電池を充放電させて得られたリチウム二次電池。
本発明によれば、保存後の容量維持率が高いリチウム二次電池を提供することができる。
本発明のリチウム二次電池の一例を示すコイン型電池の模式的断面図である。
本発明のリチウム二次電池は、正極と、リチウムを吸蔵・放出可能な負極活物質であって、炭素質材料及び金属化合物系材料からなる群から選択される少なくとも1種を含む負極活物質を含む負極と、下記一般式(I)で表される環状硫酸エステル化合物である添加剤Aを含有する非水電解液と、を備える。
一般に、リチウムを吸蔵・放出可能な負極活物質を含む負極を用いたリチウム二次電池では、上記負極上で、非水電解液中の非水溶媒の一部が還元分解する場合がある。この還元分解が継続的に起こると、リチウム二次電池の保存後の容量維持率が低下する場合がある。
この問題に関し、本発明のリチウム二次電池によれば、保存後の容量維持率を向上されることができる。
かかる効果が得られる理由は、リチウム二次電池の充電時、下記の骨格を有する添加剤A(一般式(I)で表される環状硫酸エステル化合物)が、負極の表面に強固な被膜を形成することで、上記負極上での非水溶媒の継続的な還元分解が抑制されるため、と推測される。
更に、本発明のリチウム二次電池は、上述した添加剤Aの作用により、電池の充電保存時における開放電圧の低下も抑制できる。
以下、本発明のリチウム二次電池の各構成要素について説明する。
〔非水電解液〕
本発明における非水電解液は、下記一般式(I)で表される環状硫酸エステル化合物(以下、「一般式(I)で表される化合物」ともいう)である添加剤Aを含有する。
一般式(I)において、Rは、一般式(II)で表される基又は式(III)で表される基を表し、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、一般式(II)で表される基、又は式(III)で表される基を表す。
一般式(II)において、Rは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は式(IV)で表される基を表す。一般式(II)、式(III)、および式(IV)における波線は、結合位置を表す。
一般式(I)で表される環状硫酸エステル化合物中に、一般式(II)で表される基が2つ含まれる場合、2つの一般式(II)で表される基は、同一であっても互いに異なっていてもよい。
一般式(I)中、「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が具体例として挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
一般式(I)中、「炭素数1〜6のアルキル基」とは、炭素数が1〜6個である直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、2−メチルブチル基、1−メチルペンチル基、ネオペンチル基、1−エチルプロピル基、ヘキシル基、3,3−ジメチルブチル基などが具体例として挙げられる。
炭素数1〜6のアルキル基としては、炭素数1〜3のアルキル基がより好ましい。
一般式(I)中、「炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基」とは、炭素数が1〜6個である直鎖又は分岐鎖のハロゲン化アルキル基であり、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロイソブチル基、クロロメチル基、クロロエチル基、クロロプロピル基、ブロモメチル基、ブロモエチル基、ブロモプロピル基、ヨウ化メチル基、ヨウ化エチル基、ヨウ化プロピル基などが具体例として挙げられる。
炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基としては、炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基がより好ましい。
一般式(I)中、「炭素数1〜6のアルコキシ基」とは、炭素数が1〜6個である直鎖又は分岐鎖アルコキシ基であり、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、2−メチルブトキシ基、1−メチルペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、1−エチルプロポキシ基、ヘキシルオキシ基、3,3−ジメチルブトキシ基などが具体例として挙げられる。
炭素数1〜6のアルコキシ基としては、炭素数1〜3のアルコキシ基がより好ましい。
一般式(I)中のRとして、好ましくは、一般式(II)で表される基(一般式(II)において、Rは、フッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、又は式(IV)で表される基であることが好ましい。)、又は式(III)で表される基である。
一般式(I)中のRとして、好ましくは、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、一般式(II)で表される基(一般式(II)において、Rは、フッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、又は、式(IV)で表される基であることが好ましい。)、又は式(III)で表される基であり、より好ましくは水素原子又はメチル基であり、特に好ましくは水素原子である。
一般式(I)中のRが一般式(II)で表される基である場合、一般式(II)中のRは前述のとおり、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は式(IV)で表される基であるが、Rとしてより好ましくは、フッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、又は、式(IV)で表される基であり、更に好ましくは、フッ素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、エトキシ基、又は、式(IV)で表される基である。
一般式(I)中のRが一般式(II)で表される基である場合、一般式(II)中のRの好ましい範囲については、一般式(I)中のRが一般式(II)で表される基である場合におけるRの好ましい範囲と同様である。
本発明の効果がより効果的に奏される点からみた一般式(I)の好ましい形態は、
が、一般式(II)で表される基(一般式(II)中、Rはフッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、又は式(IV)で表される基であることが好ましい)、又は式(III)で表される基であり、Rが、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、一般式(II)で表される基(一般式(II)中、Rはフッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、又は式(IV)で表される基であることが好ましい。)、又は式(III)で表される基である形態である。
一般式(I)のより好ましい形態は、Rが一般式(II)で表される基(一般式(II)中、Rはフッ素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、エトキシ基、又は式(IV)で表される基であることが好ましい)又は式(III)で表される基であり、Rが水素原子又はメチル基である形態である。
一般式(I)の更に好ましい形態は、Rが式(III)で表される基であり、Rが水素原子である組み合わせ(最も好ましくは1,2:3,4−ジ−O−スルファニル−メゾ−エリスリトール)である。
一般式(I)において、Rが一般式(II)で表される基である環状硫酸エステル化合物は、下記一般式(XII)で表される環状硫酸エステル化合物である。
一般式(XII)中、R及びRは、一般式(I)及び一般式(II)におけるR及びRとそれぞれ同義である。
一般式(XII)で表される環状硫酸エステル化合物としては、Rが、水素原子、又は炭素数1〜6のアルキル基であり、Rが、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は式(IV)で表される基である化合物が好ましい。
更に、一般式(XII)で表される環状硫酸エステル化合物としては、Rが、水素原子又はメチル基であって、Rが、フッ素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、エトキシ基、又は式(IV)で表される基である化合物が特に好ましい。
一般式(I)で表される環状硫酸エステル化合物として、好ましくは、4−メチルスルホニルオキシメチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、4−エチルスルホニルオキシメチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、ビス((2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン−4−イル)メチル)サルフェート、又は4,4’−ビス(2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオランであり、更に好ましくは、4−メチルスルホニルオキシメチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、4−エチルスルホニルオキシメチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、ビス((2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン−4−イル)メチル)サルフェート、又は4,4’−ビス(2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオランであり、特に好ましくは、4−メチルスルホニルオキシメチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、4−エチルスルホニルオキシメチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、又はビス((2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン−4−イル)メチル)サルフェートである。
本発明における一般式(I)で表される環状硫酸エステル化合物の具体例〔例示化合物A−1〜例示化合物A−30〕を、一般式(I)における各置換基を明示することで下記の表に記載するが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
下記例示化合物の構造中、「Me」はメチル基を、「Et」はエチル基を、「Pr」はプロピル基を、「iPr」はイソプロピル基を、「Bu」はブチル基を、「tBu」はターシャリーブチル基を、「Pent」はペンチル基を、「Hex」はヘキシル基を、「OMe」はメトキシ基を、「OEt」はエトキシ基を、「OPr」はプロポキシ基を、「OBu」はブトキシ基を、「OPent」はペンチルオキシ基を、「OHex」はヘキシルオキシ基を、それぞれ表す。また、R〜Rにおける「波線」は、結合位置を表す。
なお、2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン環の4位及び5位の置換基に由来する立体異性体が生じる場合があるが、両者とも本発明に含まれる化合物である。
一般式(I)で表される環状硫酸エステル化合物のうち、分子内に2個以上の不斉炭素が存在する場合はそれぞれ立体異性体(ジアステレオマー)が存在するが、特に記載しない限りは、対応するジアステレオマーの混合物である。
一般式(I)で表される環状硫酸エステル化合物を合成する方法には特に制限はないが、例えば、国際公開第2012/053644号パンフレットの段落0062〜0068に記載の合成方法によって合成することができる。
本発明における非水電解液は、添加剤A(例えば、一般式(I)で表される化合物)を、1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。
本発明における非水電解液中における添加剤Aの含有量(2種以上である場合には総含有量)には特に制限はないが、本発明の効果がより効果的に奏される観点から、非水電解液の全量に対し、0.001質量%以上であることが好ましく、0.001質量%〜10質量%であることがより好ましく、0.05質量%〜5質量%の範囲であることがより好ましい。
なお、添加剤Aは、非水電解液として実際に二次電池作製に供すると、その電池を解体して再び非水電解液を取り出しても、その中の含有量が著しく低下している場合が多い。そのため、電池から抜き出した非水電解液から、少なくとも上記添加剤Aが検出できる場合には、非水電解液に添加剤Aが含まれるとみなすことができる。後述の添加剤B、添加剤Cをはじめとする他の添加剤についても同様である。
<添加剤B>
本発明における非水電解液は、更に、炭素−炭素不飽和結合を有するカーボネート化合物、フッ素原子で置換されたカーボネート化合物、フルオロリン酸化合物、オキサラト化合物、及び環状スルトン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である添加剤Bを含有することが好ましい。
本発明における非水電解液が添加剤Bを含有することにより、上述した本発明の効果がより効果的に奏される。この理由は、添加剤Bが、添加剤Aによって電極表面に形成された被膜を強化することにより、電極表面での溶媒の分解がより効果的に抑制されるためと考えられる。
(炭素−炭素不飽和結合を有するカーボネート化合物)
炭素−炭素不飽和結合を有するカーボネート化合物としては、メチルビニルカーボネート、エチルビニルカーボネート、ジビニルカーボネート、メチルプロピニルカーボネート、エチルプロピニルカーボネート、ジプロピニルカーボネート、メチルフェニルカーボネート、エチルフェニルカーボネート、ジフェニルカーボネートなどの鎖状カーボネート類;ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、4,4−ジメチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、4,4−ジビニルエチレンカーボネート、4,5−ジビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、4,4−ジエチニルエチレンカーボネート、4,5−ジエチニルエチレンカーボネート、プロピニルエチレンカーボネート、4,4−ジプロピニルエチレンカーボネート、4,5−ジプロピニルエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類;などが挙げられる。これらのうち、好ましくは、メチルフェニルカーボネート、エチルフェニルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、4,4−ジビニルエチレンカーボネート、4,5−ジビニルエチレンカーボネートであり、より好ましくは、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートである。
(フッ素原子を有するカーボネート化合物)
フッ素原子を有するカーボネート化合物としては、メチルトリフルオロメチルカーボネート、エチルトリフルオロメチルカーボネート、ビス(トリフルオロメチル)カーボネート、メチル(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート、エチル(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネートなどの鎖状カーボネート類;4−フルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、4−トリフルオロメチルエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類;などが挙げられる。これらのうち、好ましくは、4−フルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネートである。
(フルオロリン酸化合物)
フルオロリン酸化合物としては、ジフルオロリン酸リチウム、モノフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸、モノフルオロリン酸、ジフルオロリン酸メチル、ジフルオロリン酸エチル、フルオロリン酸ジメチル、フルオロリン酸ジエチルなどが挙げられる。これらのうち、好ましくはジフルオロリン酸リチウム、モノフルオロリン酸リチウムである。
(オキサラト化合物)
ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム、トリス(オキサラト)リン酸リチウム、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム、ビスオキサラトホウ酸リチウムなどが挙げられる。これらのうち、好ましくはジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム、ビスオキサラトホウ酸リチウムである。
本発明における非水電解液が、添加剤Bとしてオキサラト化合物を含む場合には、保存後の容量維持率を向上できることに加え、初期及び充電保存時における電池の低温放電特性を向上させることができる。即ち、本発明における非水電解液が、前述の添加剤Aと、添加剤Bとしてのオキサラト化合物と、を含むことにより、電池の初期特性と電池の保存特性とをより高いレベルで両立させることができる。
ここで、非水電解液が、前述の添加剤Aを含まずに添加剤Bとしてのオキサラト化合物を含む場合には、初期における電池の低温放電特性の向上の効果は得られるものの、電池の保存特性を十分に満足させることができない場合がある。即ち、この場合には、保存時の容量維持率が低下する場合があり、また、保存時の開放電圧の低下を抑制できない場合がある。
(環状スルトン化合物)
環状スルトン化合物としては、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,3−プロペンスルトン、1−メチル−1,3−プロペンスルトン、2−メチル−1,3−プロペンスルトン、3−メチル−1,3−プロペンスルトン等のスルトン類が挙げられる。これらのうち、好ましくは、1,3−プロパンスルトン、1,3−プロペンスルトンである。
上述した添加剤Bは、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、モノフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム、トリス(オキサラト)リン酸リチウム、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム、ビスオキサラトホウ酸リチウム、1,3−プロパンスルトン、及び1,3−プロペンスルトンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが特に好ましい。
本発明における非水電解液が添加剤Bを含有する場合、含有される添加剤Bは、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
本発明における非水電解液が添加剤Bを含有する場合、その含有量(2種以上である場合には総含有量)には特に制限はないが、本発明の効果がより効果的に奏される観点から、非水電解液の全量に対し、0.001質量%〜10質量%であることが好ましく、0.05質量%〜5質量%の範囲であることがより好ましく、0.1質量%〜4質量%の範囲であることが更に好ましく、0.1質量%〜2質量%の範囲であることが更に好ましく、0.1質量%〜1質量%の範囲であることが特に好ましい。
また、本発明における非水電解液が添加剤Bを含有する場合、添加剤A及び添加剤Bの総含有量は、本発明の効果がより効果的に奏される観点から、非水電解液の全量に対し、0.001質量%〜10質量%であることが好ましく、0.1質量%〜8質量%の範囲であることがより好ましく、0.5質量%〜8質量%の範囲であることが特に好ましい。
<添加剤C>
本発明における非水電解液は、下記一般式(V)で表される電解質化合物(但し、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム、トリス(オキサラト)リン酸リチウム、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム、ビスオキサラトホウ酸リチウムを除く)である添加剤Cを含有することができる。
これにより、保存後の容量維持率を向上できることに加え、初期及び充電保存時における電池の低温放電特性を向上させることができる。即ち、本発明における非水電解液が、前述の添加剤Aと、添加剤Cと、を含むことにより、電池の初期特性と電池の保存特性とをより高いレベルで両立させることができる。
ここで、非水電解液が、前述の添加剤Aを含まずに添加剤Cを含む場合には、初期における電池の低温放電特性の向上の効果は得られるものの、電池の保存特性を十分に満足させることができない場合がある。即ち、この場合には、保存時の容量維持率が低下する場合があり、また、保存時の開放電圧の低下を抑制できない場合がある。
以下、一般式(V)で表される電解質化合物(但し、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム、トリス(オキサラト)リン酸リチウム、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム、ビスオキサラトホウ酸リチウムを除く)について説明する。
〔一般式(V)において、Mは、アルカリ金属、Yは、遷移元素、周期律表の13族、14族又は15族元素を表し、bは1〜3の整数、mは1〜4の整数、nは0〜8の整数、qは0又は1を表す。R11は、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数1〜10のハロゲン化アルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基、又は炭素数6〜20のハロゲン化アリーレン基(これらの基は、構造中に置換基、又はヘテロ原子を含んでいてもよく、またqが1でmが2〜4の場合にはm個のR11はそれぞれが結合していてもよい。)を表し、R12は、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のハロゲン化アリール基(これらの基は、構造中に置換基、又はヘテロ原子を含んでいてもよく、また、nが2〜8の場合はn個のR12はそれぞれが結合して環を形成していてもよい。)、又は−Q13を表す。Q、Q及びQは、それぞれ独立に、O、SまたはNR14を表し、R13およびR14は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数6〜20のハロゲン化アリール基(これらの基は、構造中に置換基、又はヘテロ原子を含んでいてもよく、R13および/またはR14が複数個存在する場合はそれぞれが結合して環を形成してもよい。)を表す。〕
一般式(V)で表される電解質化合物において、Mは、アルカリ金属であり、Yは、遷移金属、又は周期表の13族、14族もしくは15族元素である。Yとしては、このうちAl、B、V、Ti、Si、Zr、Ge、Sn、Cu、Y、Zn、Ga、Nb、Ta、Bi、P、As、Sc、Hf又はSbであることが好ましく、Al、BまたはPであることがより好ましい。YがAl、BまたはPの場合には、アニオン化合物の合成が比較的容易になり、製造コストを抑えることができる。アニオンの価数およびカチオンの個数を表すbは1〜3の整数であり、1であることが好ましい。bが3より大きい場合は、アニオン化合物の塩が混合有機溶媒に溶解しにくくなる傾向があるので好ましくない。また、定数m、nは、配位子の数に関係する値であり、Mの種類によって決まってくるものであるが、mは1〜4の整数、nは0〜8の整数である。定数qは、0または1である。qが0の場合には、キレートリングが五員環となり、qが1の場合にはキレートリングが六員環となる。
11は、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数1〜10のハロゲン化アルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基又は炭素数6〜20のハロゲン化アリーレン基を表す。これらのアルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アリーレン基又はハロゲン化アリーレン基はその構造中に置換基、ヘテロ原子を含んでいてもよい。具体的には、これらの基の水素原子の代わりに、ハロゲン原子、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、スルホニル基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、アシル基、アミド基、又は水酸基を置換基として含んでいてもよい。また、これらの基の炭素元素の代わりに、窒素原子、硫黄原子、又は酸素原子が導入された構造であってもよい。また、qが1でmが2〜4のときには、m個のR11はそれぞれが結合していてもよい。そのような例としては、エチレンジアミン四酢酸のような配位子を挙げることができる。
12は、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のハロゲン化アリール基又は−Q13(Q、R13については後述する。)を表す。
12におけるこれらのアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基又はハロゲン化アリール基は、R11と同様に、その構造中に置換基、ヘテロ原子を含んでいてもよく、また、nが2〜8のときにはn個のR12は、それぞれ結合して環を形成してもよい。R12としては、電子吸引性の基が好ましく、特にフッ素原子が好ましい。
、Q及びQは、それぞれ独立に、O、S又はNR14を表す。つまり、配位子はこれらヘテロ原子を介してYに結合することになる。
13及びR14は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素集6〜20のハロゲン化アリール基を表す。これらのアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、又はハロゲン化アリール基は、R11と同様に、その構造中に置換基、ヘテロ原子を含んでいてもよい。また、R13及びR14は複数個存在する場合にはそれぞれが結合して環を形成してもよい。
Mにおけるアルカリ金属としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
nとしては、0〜4の整数が好ましい。
本発明における非水電解液が一般式(V)で表される電解質化合物を含む場合、本発明における非水電解液は前記一般式(V)で表される化合物を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
また、一般式(V)で表される電解質化合物は、下記一般式(VI)で表される化合物、下記一般式(VII)で表される化合物、下記一般式(VIII)で表される化合物、及び、下記一般式(IX)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることがより好ましい。一般式(VI)〜(IX)で表される化合物において、Mがリチウム、ナトリウム、又はカリウムである化合物が、一般式(V)で表される電解質化合物の更に好ましい化合物として挙げられる。
〔一般式(VI)〜(IX)中、Mは一般式(V)におけるMと同義である。〕
本発明における非水電解液が添加剤Cを含有する場合、含有される添加剤Cは、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
本発明における非水電解液が添加剤Cを含有する場合、添加剤Cの含有量(2種以上である場合には総含有量)は、非水電解液全質量に対して0.001質量%〜10質量%であることが好ましく、0.05質量%〜5質量%の範囲であることがより好ましい。この範囲において、より効果的に、電池の低温特性の改善と、電池の保存特性の改善と、を両立することができる。
本発明における非水電解液が添加剤Cを含有する場合、含有される添加剤Bは、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
また、本発明における非水電解液が添加剤Cを含有する場合、添加剤A及び添加剤Cの総含有量は、本発明の効果がより効果的に奏される観点から、非水電解液の全量に対し、0.001質量%〜10質量%であることが好ましく、0.1質量%〜8質量%の範囲であることがより好ましく、0.5質量%〜8質量%の範囲であることが特に好ましい。
また、本発明における非水電解液が添加剤B及び添加剤Cを含有する場合、添加剤A、添加剤B、及び添加剤Cの総含有量は、本発明の効果がより効果的に奏される観点から、非水電解液の全量に対し、0.001質量%〜10質量%であることが好ましく、0.1質量%〜8質量%の範囲であることがより好ましく、0.5質量%〜8質量%の範囲であることが特に好ましい。
また、本発明における非水電解液は、上記以外のその他の添加剤を含有していてもよい。
その他の添加剤としては、例えば、上述のジフルオロリン酸リチウム以外のジフルオロリン酸塩、モノフルオロリン酸塩、及びフルオロスルホン酸塩が挙げられる。
また、その他の添加剤は、例えば、国際公開第2012/053644号パンフレット、特許第4033074号公報、特許第4819409号公報、特開2012−226878号公報、特許第5376142号、特許第5353923号公報、特許第4855331号公報、特開2008−10183号公報、特開2013−175456号公報、特開2007−173222号公報、特許第4424895号公報、特許第4080110号公報、特許第5268018号公報などに記載の添加剤の中から、適宜選択して用いることができる。
次に、非水電解液の他の成分について説明する。
非水電解液は、一般的には、電解質と非水溶媒とを含有する。
<非水溶媒>
本発明における非水溶媒としては、種々公知のものを適宜選択することができるが、環状の非プロトン性溶媒及び/又は鎖状の非プロトン性溶媒を用いることが好ましい。
電池の安全性の向上のために、溶媒の引火点の向上を志向する場合は、非水溶媒として環状の非プロトン性溶媒を使用することが好ましい。
(環状の非プロトン性溶媒)
環状の非プロトン性溶媒としては、環状カーボネート、環状カルボン酸エステル、環状スルホン、環状エーテルを用いることができる。
環状の非プロトン性溶媒は単独で使用してもよいし、複数種混合して使用してもよい。
環状の非プロトン性溶媒の非水溶媒中の混合割合は、10質量%〜100質量%、さらに好ましくは20質量%〜90質量%、特に好ましくは30質量%〜80質量%である。このような比率にすることによって、電池の充放電特性に関わる電解液の伝導度を高めることができる。
環状カーボネートの例として具体的には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、2,3−ペンチレンカーボネートなどが挙げられる。これらのうち、誘電率が高いエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートが好適に使用される。負極活物質に黒鉛を使用した電池の場合は、エチレンカーボネートがより好ましい。また、これら環状カーボネートは2種類以上を混合して使用してもよい。
環状カルボン酸エステルとして、具体的にはγ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、あるいはメチルγ−ブチロラクトン、エチルγ−ブチロラクトン、エチルδ−バレロラクトンなどのアルキル置換体などを例示することができる。
環状カルボン酸エステルは、蒸気圧が低く、粘度が低く、かつ誘電率が高く、電解液の引火点と電解質の解離度を下げることなく電解液の粘度を下げることができる。このため、電解液の引火性を高くすることなく電池の放電特性に関わる指標である電解液の伝導度を高めることができるという特徴を有するので、溶媒の引火点の向上を指向する場合は、上記環状の非プロトン性溶媒として環状カルボン酸エステルを使用することが好ましい。環状カルボン酸エステルの中でも、γ−ブチロラクトンが最も好ましい。
また、環状カルボン酸エステルは、他の環状の非プロトン性溶媒と混合して使用することが好ましい。例えば、環状カルボン酸エステルと、環状カーボネート及び/又は鎖状カーボネートとの混合物が挙げられる。
環状スルホンの例としては、スルホラン、2−メチルスルホラン、3―メチルスルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジプロピルスルホン、メチルエチルスルホン、メチルプロピルスルホンなどが挙げられる。
環状エーテルの例としてジオキソランを挙げることができる。
(鎖状の非プロトン性溶媒)
本発明の鎖状の非プロトン性溶媒としては、鎖状カーボネート、鎖状カルボン酸エステル、鎖状エーテル、鎖状リン酸エステルなどを用いることができる。
鎖状の非プロトン性溶媒の非水溶媒中の混合割合は、10質量%〜100質量%、さらに好ましくは20質量%〜90質量%、特に好ましくは30質量%〜80質量%である。
鎖状カーボネートとして具体的には、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、エチルブチルカーボネート、ジブチルカーボネート、メチルペンチルカーボネート、エチルペンチルカーボネート、ジペンチルカーボネート、メチルヘプチルカーボネート、エチルヘプチルカーボネート、ジヘプチルカーボネート、メチルヘキシルカーボネート、エチルヘキシルカーボネート、ジヘキシルカーボネート、メチルオクチルカーボネート、エチルオクチルカーボネート、ジオクチルカーボネート、メチルトリフルオロエチルカーボネートなどが挙げられる。これら鎖状カーボネートは2種類以上を混合して使用してもよい。
鎖状カルボン酸エステルとして具体的には、ピバリン酸メチルなどが挙げられる。
鎖状エーテルとして具体的には、ジメトキシエタンなどが挙げられる。
鎖状リン酸エステルとして具体的には、リン酸トリメチルなどが挙げられる。
(溶媒の組み合わせ)
本発明における非水電解液で使用する非水溶媒は、1種類でも複数種類を混合して用いてもよい。また、環状の非プロトン性溶媒のみを1種類又は複数種類用いても、鎖状の非プロトン性溶媒のみを1種類又は複数種類用いても、又は環状の非プロトン性溶媒及び鎖状のプロトン性溶媒を混合して用いてもよい。電池の負荷特性、低温特性の向上を特に意図した場合は、非水溶媒として環状の非プロトン性溶媒と鎖状の非プロトン性溶媒を組み合わせて使用することが好ましい。
さらに、電解液の電気化学的安定性から、環状の非プロトン性溶媒には環状カーボネートを、鎖状の非プロトン性溶媒には鎖状カーボネートを適用することが最も好ましい。また、環状カルボン酸エステルと環状カーボネート及び/又は鎖状カーボネートの組み合わせによっても電池の充放電特性に関わる電解液の伝導度を高めることができる。
環状カーボネートと鎖状カーボネートの組み合わせとして、具体的には、エチレンカーボネートとジメチルカーボネート、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、プロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、プロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネートなどが挙げられる。
環状カーボネートと鎖状カーボネートの混合割合は、質量比で表して、環状カーボネート:鎖状カーボネートが、5:95〜80〜20、さらに好ましくは10:90〜70:30、特に好ましくは15:85〜55:45である。このような比率にすることによって、電解液の粘度上昇を抑制し、電解質の解離度を高めることができるため、電池の充放電特性に関わる電解液の伝導度を高めることができる。また、電解質の溶解度をさらに高めることができる。よって、常温又は低温での電気伝導性に優れた電解液とすることができるため、常温から低温での電池の負荷特性を改善することができる。
環状カルボン酸エステルと環状カーボネート及び/又は鎖状カーボネートの組み合わせの例として、具体的には、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとスルホラン、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとスルホラン、γ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとスルホラン、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとスルホラン、γ−ブチロラクトンとスルホランとジメチルカーボネートなどが挙げられる。
(その他の溶媒)
本発明に係る非水電解液は、非水溶媒として、上記以外の他の溶媒を含んでいてもよい。他の溶媒としては、具体的には、ジメチルホルムアミドなどのアミド、メチル−N,N−ジメチルカーバメートなどの鎖状カーバメート、N−メチルピロリドンなどの環状アミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノンなどの環状ウレア、ほう酸トリメチル、ほう酸トリエチル、ほう酸トリブチル、ほう酸トリオクチル、ほう酸トリメチルシリル等のホウ素化合物、及び下記の一般式で表されるポリエチレングリコール誘導体などを挙げることができる。
HO(CHCHO)
HO[CHCH(CH)O]
CHO(CHCHO)
CHO[CHCH(CH)O]
CHO(CHCHO)CH
CHO[CHCH(CH)O]CH
19PhO(CHCHO)[CH(CH)O]CH
(Phはフェニル基)
CHO[CHCH(CH)O]CO[OCH(CH)CHOCH
上記式中、a〜fは、5〜250の整数、g〜jは2〜249の整数、5≦g+h≦250、5≦i+j≦250である。
<電解質>
本発明における非水電解液は、種々公知の電解質を含有することができる。電解質としては、通常、非水電解液用電解質として使用されているものであれば、いずれをも使用することができる。
本発明における電解質の具体例としては、(CNPF、(CNBF、(CNClO、(CNAsF、(CSiF、(CNOSO(2k+1)(k=1〜8の整数)、(CNPF[C(2k+1)(6−n)(n=1〜5、k=1〜8の整数)などのテトラアルキルアンモニウム塩、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiSiF、LiOSO(2k+1)(k=1〜8の整数)、LiPF[C(2k+1)(6−n)(n=1〜5、k=1〜8の整数)などのリチウム塩が挙げられる。また、次の一般式で表されるリチウム塩も使用することができる。
LiC(SO27)(SO28)(SO29)、LiN(SOOR30)(SOOR31)、LiN(SO32)(SO33)(ここでR27〜R33は互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基である)。これらの電解質は単独で使用してもよく、また2種類以上を混合してもよい。
これらのうち、特にリチウム塩が望ましく、さらには、LiPF、LiBF、LiOSO(2k+1)(k=1〜8の整数)、LiClO、LiAsF、LiNSO[C(2k+1)(k=1〜8の整数)、LiPF[C(2k+1)(6−n)(n=1〜5、k=1〜8の整数)が好ましい。
本発明に係る電解質は、通常は、非水電解液中に0.1mol/L〜3mol/L、好ましくは0.5mol/L〜2mol/Lの濃度で含まれることが好ましい。
本発明における非水電解液において、非水溶媒として、γ−ブチロラクトンなどの環状カルボン酸エステルを併用する場合には、特にLiPFを含有することが望ましい。LiPFは、解離度が高いため、電解液の伝導度を高めることができ、さらに負極上での電解液の還元分解反応を抑制する作用がある。LiPFは単独で使用してもよいし、LiPFとそれ以外の電解質を使用してもよい。それ以外の電解質としては、通常、非水電解液用電解質として使用されるものであれば、いずれも使用することができるが、前述のリチウム塩の具体例のうちLiPF以外のリチウム塩が好ましい。
具体例としては、LiPFとLiBF、LiPFとLiN[SO(2k+1)(k=1〜8の整数)、LiPFとLiBFとLiN[SO(2k+1)](k=1〜8の整数)などが例示される。
リチウム塩中に占めるLiPFの比率は、1質量%〜100質量%、好ましくは10質量%〜100質量%、さらに好ましくは50質量%〜100質量%が望ましい。このような電解質は、0.1mol/L〜3mol/L、好ましくは0.5mol/L〜2mol/Lの濃度で非水電解液中に含まれることが好ましい。
また、本発明における非水電解液は、過充電防止剤を含有することもできる。
過充電防止剤としては、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル(o−、m−、p−体)、ターフェニル(o−、m−、p−体)の部分水素化体(例えば、1,2−ジシクロヘキシルベンゼン、2−フェニルビシクロヘキシル、1,2−ジフェニルシクロヘキサン、o−シクロヘキシルビフェニル)、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、1,3−ジ−t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;フルオロトルエン(o−、m−、p−体)、ジフルオロトルエン、トリフルオロトルエン、テトラフルオロトルエン、ペンタフルオロトルエン、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン(o−、m−、p−体)、1−フルオロ−4−t−ブチルベンゼン、2−フルオロビフェニル、フルオロシクロヘキシルベンゼン(例えば、1−フルオロ−2−シクロヘキシルベンゼン、1−フルオロ−3−シクロヘキシルベンゼン、1−フルオロ−4−シクロヘキシルベンゼン)等の芳香族化合物の部分フッ素化物;2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール、2,6−ジフルオロアニソール、3,5−ジフルオロアニソール等の含フッ素アニソール化合物等が挙げられる。
中でも、上記で例示した芳香族化合物が好ましい。
また、過充電防止剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
2種以上併用する場合は、特に、シクロヘキシルベンゼンとt−ブチルベンゼン又はt−アミルベンゼンとの組み合わせ、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン等の酸素を含有しない芳香族化合物から選ばれる少なくとも1種と、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の含酸素芳香族化合物から選ばれる少なくとも1種を併用するのが過充電防止特性と高温保存特性のバランスの点から好ましい。
本発明における非水電解液が過充電防止剤を含有する場合、過充電防止剤の含有量には特に制限はないが、例えば0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上である。
また、上記過充電防止剤の含有量は、例えば10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。
本発明における非水電解液は、本発明の目的を妨げない範囲で、上述した化合物以外の他の化合物を添加剤として少なくとも1種含有していてもよい。
他の化合物として具体的には、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸エチレン、硫酸プロピレン、硫酸ブテン、硫酸ペンテン、硫酸ビニレン等の硫酸エステル類;並びにスルホラン、3−スルホレン、ジビニルスルホン等のイオウ系化合物、を挙げることができる。
これらの化合物は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
これらのうち、硫酸エチレン、硫酸プロピレン、硫酸ブテン、硫酸ペンテンが好ましい。
〔負極〕
次に、本発明のリチウム二次電池に備えられる負極について説明する。
本発明における負極は、負極活物質を含む。
<負極活物質>
本発明における負極活物質は、リチウムを吸蔵・放出可能な負極活物質であって、炭素質材料及び金属化合物系材料からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
上記炭素質材料としては、カーボンブラック、活性炭、黒鉛材料(人造黒鉛、天然黒鉛)、非晶質炭素材料、等が挙げられる。上記炭素質材料の形態は、繊維状、球状、ポテト状、フレーク状いずれの形態であってもよい。
上記非晶質炭素材料として具体的には、ハードカーボン、コークス、1500℃以下に焼成したメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソペーズビッチカーボンファイバー(MCF)などが例示される。
上記黒鉛材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛が挙げられる。人造黒鉛としては、黒鉛化MCMB、黒鉛化MCFなどが用いられる。また、黒鉛材料としては、ホウ素を含有するものなども用いることができる。また、黒鉛材料としては、金、白金、銀、銅、スズなどの金属で被覆したもの、非晶質炭素で被覆したもの、非晶質炭素と黒鉛を混合したものも使用することができる。
これらの炭素質材料は、1種類で使用してもよく、2種類以上混合して使用してもよい。
上記炭素質材料としては、(002)面の面間隔(d002)が0.340nm以下(より好ましくは0.335〜0.337nm)の炭素質材料(好ましくは黒鉛型結晶構造を有する炭素質材料)が好ましい。
本明細書中において、(002)面の面間隔(d002)は、学振法によるX線解析で測定された値を指す。
また、上記炭素質材料としては、真密度が1.70g/cm以上である黒鉛又はそれに近い性質を有する高結晶性の炭素質材料も好ましい。
以上のような炭素質材料を使用すると、電池のエネルギー密度をより高くすることができる。
また、一般に、負極活物質として、高結晶性の炭素質材料を使用すると、充電時において非水電解液と反応しやすく、高温保存特性やサイクル特性等の電池特性が低下する傾向がある。
しかし、本発明のリチウム二次電池では、前述の非水電解液中の添加剤Aの作用(被膜を形成する作用)により、負極活物質としての高結晶性の炭素質材料と、非水電解液と、の反応を抑制することができる。また、高結晶性の炭素質材料が低結晶性の炭素質材料によって被膜されていると非水電解液の分解が一段と抑制されるので好ましい。
また、上記金属化合物系材料としては、Si、Ge、Sn、Pb、P、Sb、Bi、Al、Ga、In、Ti、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ag、Mg、Sr、Ba等の金属元素を少なくとも1種含有する化合物が挙げられる。これらの金属化合物は単体、合金、酸化物、窒化物、硫化物、硼化物、リチウムとの合金等、何れの形態で用いてもよいが、単体、合金、酸化物、リチウムとの合金の何れかが高容量化できるので好ましい。中でも、Si、Ge及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素を含有するものが好ましく、Si及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素を含むものが電池を高容量化できるので特に好ましい。
上記金属化合物系材料としては、チタン酸リチウムが特に好ましい。
負極活物質は、上記以外にも、必要に応じ、金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属もしくは合金(例えば、シリコン、シリコン合金、スズ、スズ合金など)、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物からなる群から選ばれた少なくとも1種(単独で用いてもよいし、これらの2種以上を含む混合物を用いてもよい)を用いることができる。
負極活物質のより具体的な形態については、後述の第1〜第9形態の説明中で述べる。
<負極の構成>
本発明における負極の構成としては、負極集電体と、この負極集電体上に配置され負極活物質を含有する負極活物質層と、を備える構成が好ましい。
負極活物質層は、必要に応じ、バインダー、増粘剤、導電材、等を含有することができる。
負極活物質層は、例えば、負極集電体上に、負極活物質を含有するスラリーを塗布することにより形成することができる。この方法において、塗布後のスラリー(負極活物質層)に対し、必要に応じ、乾燥やプレスを施してもよい。スラリーは、必要に応じ、バインダー、増粘剤、導電材、溶媒等を含有することができる。
(負極活物質層)
上記負極活物質層は、負極集電体上に配置される層であり、上述した負極活物質を含有する層である。
負極活物質層中における負極活物質の含有量は、電池性能等の電池性能をより向上させる観点から、負極活物質層全量に対し、10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上が特に好ましい。
一方、負極活物質層中における負極活物質の含有量は100質量%であってもよいが、負極活物質層の強度の点から、負極活物質層全量に対し、99質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましい。
負極集電体、バインダー、増粘剤、導電材については、それぞれ、公知のものを用いることができる。これらについては、後述する負極の各形態で説明するものを適宜選択して用いることができる。
以下、本発明の負極のより具体的な形態(第1形態〜第9形態)について説明する。
ここで、第1〜第7形態は、炭素質材料を含む負極活物質を含む負極の具体的な一形態である。
また、第8〜第9形態は、金属化合物系材料を含む負極活物質を含む負極の具体的な一形態である。
但し、本発明における負極は、これらの形態には限定されない。
また、本発明における負極活物質としては、一つの形態における負極活物質のみを用いるだけでなく、2つ以上の形態の負極活物質の中から、適宜選択して組み合わせて用いることもできる。また、一つの形態における負極活物質から、一種のみを用いることもできるし、二種以上を選択して組み合わせて用いることもできる。
また、特定の形態における好ましい態様は、他の形態にも適用できる。
<第1形態>
第1形態に係る負極は、炭素質材料を含む負極活物質を含む負極の一形態である。
第1形態における炭素質材料は、天然黒鉛である炭素質材料、人造炭素質物質を一回以上熱処理してなる炭素質材料、及び人造黒鉛質物質を一回以上熱処理してなる炭素質材料からなる群から選択される少なくとも1種である。
また、第1形態に係る負極は、上記負極活物質を含有する負極活物質層を備え、上記負極活物質層が、上記負極活物質として炭素質材料を含有し結晶性及び配向性の少なくとも一方が異なる炭素質材料含有層を2層以上含むことが好ましい。
更に、上記2層以上の炭素質材料含有層のうちの隣り合う2層が接する界面を少なくとも1つ含むことが好ましい。
第1形態については、特許第5353923号公報を参照することができる。
上記人造炭素質物質及び上記人造黒鉛質物質の具体的な例としては、天然黒鉛、石炭系コークス、石油系コークス、石炭系ピッチ、石油系ピッチ、あるいはこれらピッチを酸化処理したもの、ニードルコークス、ピッチコークス及びこれらを一部黒鉛化した炭素材、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維等の有機物の熱分解物、炭化可能な有機物、及びこれらの炭化物、又は炭化可能な有機物をベンゼン、トルエン、キシレン、キノリン、n−へキサン等の低分子有機溶媒に溶解させた溶液及びこれらの炭化物等が挙げられる。
第1形態において、炭素質材料についての性質、炭素質材料を含有する負極、電極化手法、負極集電体、リチウム二次電池については、次に示す(1)〜(13)の何れか1つ又は複数を同時に満たしていることが望ましい。
−(1)X線パラメータ−
炭素質材料の、(002)面の面間隔(d002)(層間距離)は、0.340nm以下が好ましく、0.335〜0.340nmがより好ましく、0.335〜0.338nmが更に好ましく、0.335〜0.337nmが特に好ましい。 また、学振法によるX線回折で求めた結晶子サイズ(Lc)は、通常1.0nm以上、好ましくは1.5nm以上、特に好ましくは2nm以上である。
−(2)体積平均粒子径−
炭素質材料の体積平均粒子径は、レーザー回折・散乱法により求めた体積の平均粒子径(メジアン径)が、通常1μm以上であり、3μm以上が好ましく、5μm以上が更に好ましく、7μm以上が特に好ましく、また、通常100μm以下であり、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下が更に好ましく、25μm以下が特に好ましい。体積平均粒子径が上記範囲を下回ると、不可逆容量が増大して、初期の電池容量の損失を招くことになる場合がある。また、上記範囲を上回ると、塗布により電極を作製する際に、不均一な塗面になりやすく、電池製作工程上望ましくない場合がある。
体積平均粒子径の測定は、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(約10mL)に炭素粉末を分散させて、レーザー回折・散乱式粒度分布計(堀場製作所社製LA−700)を用いて行なう。該測定で求められるメジアン径を、本形態の炭素質材料の体積平均粒子径と定義する。
−(3)ラマンR値、ラマン半値幅−
炭素質材料のラマンR値は、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトル法を用いて測定した値が、通常0.01以上であり、0.03以上が好ましく、0.1以上が更に好ましく、また、通常1.5以下であり、1.2以下が好ましく、1以下が更に好ましく、0.5以下が特に好ましい。
ラマンR値が上記範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎて、充放電に伴ってLiが層間に入るサイトが少なくなる場合がある。すなわち、充電受入性が低下する場合がある。また、負極集電体に塗布した後、プレスすることによって負極を高密度化した場合に電極板と平行方向に結晶が配向しやすくなり、負荷特性の低下を招く場合がある。一方、上記範囲を上回ると、粒子表面の結晶性が低下し、非水電解液との反応性が増し、効率の低下やガス発生の増加を招く場合がある。
また、炭素質材料の1580cm−1付近のラマン半値幅は特に制限されないが、通常10cm−1以上であり、15cm−1以上が好ましく、また、通常100cm−1以下であり、80cm−1以下が好ましく、60cm−1以下が更に好ましく、40cm−1以下が特に好ましい。
ラマン半値幅が上記範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎて、充放電に伴ってLiが層間に入るサイトが少なくなる場合がある。すなわち、充電受入性が低下する場合がある。また、負極集電体に塗布した後、プレスすることによって負極を高密度化した場合に電極板と平行方向に結晶が配向しやすくなり、負荷特性の低下を招く場合がある。一方、上記範囲を上回ると、粒子表面の結晶性が低下し、非水電解液との反応性が増し、効率の低下やガス発生の増加を招く場合がある。
ラマンスペクトルの測定は、ラマン分光器(日本分光社製ラマン分光器)を用いて、試料を測定セル内へ自然落下させて充填し、セル内のサンプル表面にアルゴンイオンレーザー光を照射しながら、セルをレーザー光と垂直な面内で回転させることにより行なう。得られるラマンスペクトルについて、1580cm−1付近のピークPAの強度IAと、1360cm−1付近のピークPBの強度IBとを測定し、その強度比R(R=IB/IA)を算出する。該測定で算出されるラマンR値を、本発明における炭素質材料のラマンR値と定義する。また、得られるラマンスペクトルの1580cm−1付近のピークPAの半値幅を測定し、これを本発明における炭素質材料のラマン半値幅と定義する。
また、上記のラマン測定条件は、次の通りである。
・アルゴンイオンレーザー波長 :514.5nm
・試料上のレーザーパワー:15〜25mW
・分解能 :10〜20cm−1
・測定範囲 :1100cm−1〜1730cm−1
・ラマンR値、ラマン半値幅解析:バックグラウンド処理
・スムージング処理 :単純平均、コンボリューション5ポイント
−(4)BET比表面積−
炭素質材料のBET比表面積は、BET法を用いて測定した比表面積の値が、通常0.1m・g−1以上であり、0.7m・g−1以上が好ましく、1.0m・g−1以上が更に好ましく、1.5m・g−1以上が特に好ましく、また、通常100m・g−1以下であり、25m・g−1以下が好ましく、15m・g−1以下が更に好ましく、10m・g−1以下が特に好ましい。
BET比表面積の値がこの範囲を下回ると、負極材料として用いた場合の充電時にリチウムの受け入れ性が悪くなりやすく、リチウムが電極表面で析出しやすくなり、安定性が低下する可能性がある。一方、この範囲を上回ると、負極材料として用いた時に非水電解液との反応性が増加し、ガス発生が多くなりやすく、好ましい電池が得られにくい場合がある。
BET法による比表面積の測定は、表面積計(大倉理研製全自動表面積測定装置)を用いて、試料に対して窒素流通下350℃で15分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用いて、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって行なう。該測定で求められる比表面積を、本発明における炭素質材料のBET比表面積と定義する。
−(5)円形度−
炭素質材料の球形の程度として円形度を測定した場合、以下の範囲に収まることが好ましい。なお、円形度は、「円形度=(粒子投影形状と同じ面積を持つ相当円の周囲長)/(粒子投影形状の実際の周囲長)」で定義され、円形度が1のときに理論的真球となる。
炭素質材料の粒子径が3〜40μmの範囲にある粒子の円形度は1に近いほど望ましく、また、0.1以上が好ましく、中でも0.5以上が好ましく、0.8以上がより好ましく、0.85以上が更に好ましく、0.9以上が特に好ましい。
高電流密度充放電特性は、円形度が大きいほど向上する。従って、円形度が上記範囲を下回ると、負極活物質の充填性が低下し、粒子間の抵抗が増大して、短時間高電流密度充放電特性が低下する場合がある。
円形度の測定は、フロー式粒子像分析装置(シスメックス社製FPIA)を用いて行う。試料約0.2gを、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(約50mL)に分散させ、28kHzの超音波を出力60Wで1分間照射した後、検出範囲を0.6〜400μmに指定し、粒子径が3〜40μmの範囲の粒子について測定する。該測定で求められる円形度を、本発明における炭素質材料の円形度と定義する。
円形度を向上させる方法は、特に限定されないが、球形化処理を施して球形にしたものが、電極体にしたときの粒子間空隙の形状が整うので好ましい。球形化処理の例としては、せん断力、圧縮力を与えることによって機械的に球形に近づける方法、複数の微粒子をバインダー若しくは、粒子自身の有する付着力によって造粒する機械的・物理的処理方法等が挙げられる。
−(6)タップ密度−
炭素質材料のタップ密度は、通常0.1g・cm−3以上であり、0.5g・cm−3以上が好ましく、0.7g・cm−3以上が更に好ましく、1g・cm−3以上が特に好ましく、また、2g・cm−3以下が好ましく、1.8g・cm−3以下が更に好ましく、1.6g・cm−3以下が特に好ましい。
タップ密度が、上記範囲を下回ると、負極として用いた場合に充填密度が上がり難く、高容量の電池を得ることができない場合がある。また、上記範囲を上回ると、電極中の粒子間の空隙が少なくなり過ぎ、粒子間の導電性が確保され難くなり、好ましい電池特性が得られにくい場合がある。
タップ密度の測定は、目開き300μmの篩を通過させて、20cmのタッピングセルに試料を落下させてセルの上端面まで試料を満たした後、粉体密度測定器(例えば、セイシン企業社製タップデンサー)を用いて、ストローク長10mmのタッピングを1000回行なって、その時の体積と試料の質量からタップ密度を算出する。該測定で算出されるタップ密度を、本発明における炭素質材料のタップ密度として定義する。
−(7)配向比−
炭素質材料の配向比は、通常0.005以上であり、0.01以上が好ましく、0.015以上が更に好ましく、また、通常0.67以下である。配向比が、上記範囲を下回ると、高密度充放電特性が低下する場合がある。なお、上記範囲の上限は、炭素質材料の配向比の理論上限値である。
配向比は、試料を加圧成型してからX線回折により測定する。試料0.47gを直径17mmの成型機に充填し58.8MN・m−2で圧縮して得た成型体を、粘土を用いて測定用試料ホルダーの面と同一面になるようにセットしてX線回折を測定する。得られた炭素の(110)回折と(004)回折のピーク強度から、(110)回折ピーク強度/(004)回折ピーク強度で表わされる比を算出する。該測定で算出される配向比を、本発明における炭素質材料の配向比と定義する。
X線回折測定条件は次の通りである。なお、「2θ」は回折角を示す。
・ターゲット:Cu(Kα線)グラファイトモノクロメーター
・スリット:
発散スリット=0.5度
受光スリット=0.15mm
散乱スリット=0.5度
・測定範囲及びステップ角度/計測時間:
(110)面:75度≦2θ≦80度 1度/60秒
(004)面:52度≦2θ≦57度 1度/60秒
−(8)アスペクト比(粉)−
炭素質材料のアスペクト比は、通常1以上、また、通常10以下であり、8以下が好ましく、5以下が更に好ましい。アスペクト比が、上記範囲を上回ると、極板化時にスジ引きや、均一な塗布面が得られず、高電流密度充放電特性が低下する場合がある。なお、上記範囲の下限は、炭素質材料のアスペクト比の理論下限値である。
アスペクト比の測定は、炭素質材料の粒子を走査型電子顕微鏡で拡大観察して行う。厚さ50ミクロン以下の金属の端面に固定した任意の50個の黒鉛粒子を選択し、それぞれについて試料が固定されているステージを回転、傾斜させて、3次元的に観察した時の炭素質材料粒子の最長となる径Aと、それと直交する最短となる径Bを測定し、A/Bの平均値を求める。該測定で求められるアスペクト比(A/B)を、本発明における炭素質材料のアスペクト比と定義する。
−(9)負極の製造−
負極の製造は、公知の何れの方法を用いることができる。
例えば、負極活物質に、バインダー、溶媒、必要に応じて、増粘剤、導電材、充填材等を加えてスラリーとし、これを負極集電体に塗布、乾燥した後にプレスすることによって製造することができる。
電池の非水電解液注液工程直前の段階での片面あたりの負極活物質層の厚さは、通常15μm以上であり、20μm以上が好ましく、30μm以上が更に好ましく、また、通常150μm以下であり、120μm以下が好ましく、100μm以下が更に好ましい。負極活物質の厚さが、この範囲を上回ると、非水電解液が負極集電体界面付近まで浸透しにくいため、高電流密度充放電特性が低下する場合があるためである。またこの範囲を下回ると、負極活物質に対する負極集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合があるためである。また、負極活物質をロール成形してシート電極としてもよく、圧縮成形によりペレット電極としてもよい。
−(10)負極集電体−
負極活物質を保持させる負極集電体としては、公知のものを任意に用いることができる。負極集電体としては、例えば、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられるが、加工し易さとコストの点から特に銅が好ましい。
また、負極集電体の形状は、負極集電体が金属材料の場合は、例えば、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられる。中でも、好ましくは金属薄膜、より好ましくは銅箔であり、更に好ましくは圧延法による圧延銅箔と、電解法による電解銅箔があり、どちらも負極集電体として用いることができる。
また、銅箔の厚さが25μmよりも薄い場合、純銅よりも強度の高い銅合金(リン青銅、チタン銅、コルソン合金、Cu−Cr−Zr合金等)を用いることができる。
負極集電体の厚さは任意であるが、通常1μm以上であり、3μm以上が好ましく、5μm以上が更に好ましく、また、通常1mm以下であり、100μm以下が好ましく、50μm以下が更に好ましい。
負極集電体の厚さが、1μmより薄くなると、強度が低下するため塗布が困難となる場合がある。また、負極集電体の厚さが1mmより厚くなると、捲回等の電極の形を変形させる場合がある。なお、負極集電体は、メッシュ状でもよい。
JISB0601−1994に記載の方法で規定される負極集電体の負極活物質層形成面の平均表面粗さ(Ra)は、特に制限されないが、通常0.01μm以上であり、0.03μm以上が好ましく、また、通常1.5μm以下であり、1.3μm以下が好ましく、1.0μm以下が更に好ましい。
負極集電体の平均表面粗さ(Ra)が、上記の範囲内であると、良好な充放電サイクル特性が期待できるためである。また、負極活物質層との界面の面積が大きくなり、負極活物質層との密着性が向上するためである。なお、平均表面粗さ(Ra)の上限値は特に制限されるものではないが、平均表面粗さ(Ra)が1.5μmを超えるものは電池として実用的な厚みの箔としては一般に入手しにくいため、1.5μm以下のものが通常用いられる。
負極集電体の引張強度は、特に制限されないが、通常50N・mm−2以上であり、100N・mm−2以上が好ましく、150N・mm−2以上が更に好ましい。引張強度は、値が高いほど好ましいが、工業的入手可能性の観点から、通常1000N・mm−2以下が望ましい。
引張強度が高い負極集電体であれば、充電・放電に伴う活物質薄膜の膨張・収縮による負極集電体の亀裂を抑制することができ、良好なサイクル特性を得ることができる。
なお、引張強度とは、試験片が破断に至るまでに要した最大引張力を、試験片の断面積で割ったものである。
ここでの引張強度は、JISZ2241(金属材料引張試験方法)に記載と同様な装置及び方法で測定される。
負極集電体の0.2%耐力は、特に制限されないが、通常30N・mm−2以上、好ましくは100N・mm−2以上、特に好ましくは150N・mm−2以上である。0.2%耐力は、値が高いほど好ましいが、工業的入手可能性の観点から、通常900N・mm−2以下が望ましい。
0.2%耐力が高い負極集電体であれば、充電・放電に伴う活物質薄膜の膨張・収縮による負極集電体の塑性変形を抑制することができ、良好なサイクル特性を得ることができるためである。
ここで、0.2%耐力とは、0.2%の塑性(永久)歪みを与えるに必要な負荷の大きさであり、この大きさの負荷を加えた後に除荷しても0.2%変形していることを意味している。0.2%耐力は、引張強度と同様な装置及び方法で測定される。
−(11)負極集電体と負極活物質層との厚さの比−
負極集電体と負極活物質層との厚さの比は特には限定されないが、「(非水電解液注液直前の片面の負極活物質層厚さ)/(負極集電体の厚さ)」の値が、150以下が好ましく、20以下が更に好ましく、10以下が特に好ましく、また、0.1以上が好ましく、0.4以上が更に好ましく、1以上が特に好ましい。
負極集電体と負極活物質層の厚さの比が、上記範囲を上回ると、高電流密度充放電時に負極集電体がジュール熱による発熱を生じる場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極活物質に対する負極集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合がある。
−(12)負極活物質の密度−
負極活物質を負極化した際の負極構造は特には限定されないが、負極集電体上に存在している負極活物質の密度は、1g・cm−3以上が好ましく、1.2g・cm−3以上が更に好ましく、1.3g・cm−3以上が特に好ましく、また、3.0g・cm−3以下が好ましく、2.5g・cm−3以下がより好ましく、2.2g・cm−3以下が更に好ましく、2.1g・cm−3以下が更に好ましく、2.0g・cm−3以下が更に好ましく、1.9g・cm−3以下が特に好ましい。
負極活物質の密度が、上記範囲を上回ると、負極活物質粒子が破壊され、初期不可逆容量の増加や、負極集電体/負極活物質界面付近への非水電解液の浸透性低下による高電流密度充放電特性悪化を招く場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大し、単位容積当たりの容量が低下する場合がある。
−(13)バインダー−
負極活物質を結着するバインダーとしては、非水電解液や電極製造時に用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に制限されない。
具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物;EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
スラリーを形成するための溶媒としては、負極活物質、バインダー、並びに必要に応じて使用される増粘剤及び導電材を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。
水系溶媒の例としては水、アルコール等が挙げられ、有機系溶媒の例としてはN−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジエチルエーテル、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルフォキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキサン等が挙げられる。
特に水系溶媒を用いる場合、増粘剤に併せて分散剤等を含有させ、SBR等のラテックスを用いてスラリー化することが好ましい。なお、これらの溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
負極活物質に対するバインダーの割合は、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上が更に好ましく、0.6質量%以上が特に好ましく、また、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましく、8質量%以下が特に好ましい。負極活物質に対するバインダーの割合が、上記範囲を上回ると、バインダー量が電池容量に寄与しないバインダー割合が増加して、電池容量の低下を招く場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極電極の強度低下を招く場合がある。
特に、SBRに代表されるゴム状高分子を主要成分に含有する場合には、負極活物質に対するバインダーの割合は、通常0.1質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上が更に好ましく、また、通常5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、2質量%以下が更に好ましい。
また、ポリフッ化ビニリデンに代表されるフッ素系高分子を主要成分に含有する場合には負極活物質に対する割合は、通常1質量%以上であり、2質量%以上が好ましく、3質量%以上が更に好ましく、また、通常15質量%以下であり、10質量%以下が好ましく、8質量%以下が更に好ましい。
増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調製するために使用される。増粘剤としては、特に制限はないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
更に増粘剤を用いる場合には、負極活物質に対する増粘剤の割合は、通常0.1質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上が更に好ましく、また、通常5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、2質量%以下が更に好ましい。負極活物質に対する増粘剤の割合が、上記範囲を下回ると、著しく塗布性が低下する場合がある。また、上記範囲を上回ると、負極活物質層に占める負極活物質の割合が低下し、電池の容量が低下する問題や負極活物質間の抵抗が増大する場合がある。
<第2形態>
第2形態に係る負極は、炭素質材料を含む負極活物質を含む負極の一形態である。
第2形態における炭素質材料は、ハードカーボンを含む。
第2形態に係る負極は、ハードカーボンを含む炭素質材料からなる負極活物質と、導電材としてのカーボンブラックと、バインダーとしての、窒素原子及び/又は酸素原子を含む高分子と、を含有する負極活物質層を備えることが好ましい。
上記負極活物質層は、上記負極活物質を50〜95質量%、上記導電材を1〜20質量%、及び上記バインダーを4〜30質量%含有することが好ましい。
第2形態については、特開2008−10183号公報を参照することができる。
従来、リチウム二次電池の負極活物質として、黒鉛系炭素質材料が用いられることがあった。しかし、黒鉛系炭素質材料は、高い体積エネルギー密度を有する一方で、次のような問題点を有していた。
即ち、まず、黒鉛系炭素質材料は、その形態が積層構造を有する板状又は鱗片状であるため、積層面方向の導電性には優れるが、積層面に対して垂直な方向の導電性が悪いという問題があった。また、黒鉛系炭素質材料は、充放電時における体積変化が大きく、約10%程度の体積変化が起こる。そのため、この体積変化によって、電極が破壊されてしまうおそれがあった。さらに、黒鉛系炭素質材料は、リチウム二次電池の電解液として広く用いられるプロピレンカーボネート等の有機溶媒と接触すると、その積層構造に層間剥離が起こり、電池性能を低下させてしまうおそれがあった。
そこで、リチウム二次電池の負極活物質として、ハードカーボンを用いることが考えられる。負極活物質としてハードカーボンを用いた場合には、黒鉛系炭素質材料を用いることによって生じる上述のような問題点を解消することができる。したがって、負極活物質としてハードカーボンを用いることにより、黒鉛系炭素質材料を用いた場合に比べて、リチウム二次電池の充放電サイクル特性等の電池特性を向上させることができる。
ところで、近年、リチウム二次電池は、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)等の自動車用電源として期待されている。そのため、リチウム二次電池には、さらなる高出力化が要求されている。また、自動車用電源としては、長期間使用可能であることが望まれており、充放電を繰り返し行っても出力が低下し難いという出力耐久性に優れたリチウム二次電池が要求されている。
そこで、ハードカーボンを用いた負極においても、電気抵抗の低減が検討されている。具体的には、負極の負極活物質層に鱗片状黒鉛を添加させる技術が提案されている。また、負極の負極活物質層にポリフッ化ビニリデン及びカーボンブラックを添加させる技術が提案されている。
しかしながら、鱗片状黒鉛は、上述の黒鉛系炭素質材料と同様の問題を有しており、鱗片状黒鉛を用いた場合には、リチウム二次電池の出力を十分に向上させることができないおそれがあった。
また、上述のポリフッ化ビニリデン及びカーボンブラックを添加させる技術によれば、出力密度を向上させることができるが、負極活物質層の密着性が低下するため、十分な出力耐久性が得られないという問題があった。密着性を確保するために、ポリフッ化ビニリデンを増量する方法もあるが、この場合には、負極の電気抵抗が増大し、容量等の電池特性が低下してしまうおそれがある。
上述の点に関し、本発明のリチウム二次電池の負極として、第2形態の負極を用いた場合には、負極活物質としての、ハードカーボンを含む炭素質材料の作用、及び、前述した非水電解液中の添加剤Aの作用により、出力、出力耐久性、及び、保存後の容量維持率を向上させることができる。
第2形態に係る負極は、金属を主成分とする上記負極集電体と、その表面に形成された上記負極活物質層とによって構成することができる。
上記負極活物質層は、例えば上記負極活物質に上記バインダー及び上記導電材を混合し、分散材として適当な溶媒を加えてスラリー状にした負極合材を、上記負極集電体の表面に塗布、乾燥し、その後に圧縮することにより形成することができる。上記負極としては、上記負極合材をプレス成形して得られるペレット電極等を用いることもできる。
上記負極活物質(炭素質材料)としては、ハードカーボンを用いる。
ハードカーボンは、2000℃以上の高温で熱処理してもほとんど積層秩序が変化しない炭素質材料であり、難黒鉛化炭素ともよばれる。
ハードカーボンの平均粒子径は、0.1〜20μmが好ましい。ハードカーボンの平均粒子径が0.1μm未満の場合には、ハードカーボン粒子間の接触抵抗が増大し、これに伴って負極全体の抵抗が増大してしまうおそれがある。一方、20μmを越える場合には、負極表面において電解液側に露出するハードカーボン粒子の表面積が減少し、電解液とハードカーボン粒子との接触面積が小さくなるため、電極反応抵抗が増大するおそれがある。さらに、ハードカーボン粒子内部のリチウムイオン伝導パスが長くなり、粒子の内部に吸蔵されたリチウムイオンが脱離し難くなるため、反応効率が低下するおそれがある。より好ましくは、ハードカーボンの平均粒子径は1〜15μmがよい。
また、ハードカーボンは、(002)面の面間隔(d002)が、0.75nm以上であることが好ましい。また、ハードカーボンは、Lcの値が0.8〜2nmであることが好ましい。
また、上記導電材としては、カーボンブラックを用いることができる。
カーボンブラックは、液体状又は気体状の炭化水素を熱分解することによって製造される炭素材料である。上記カーボンブラックとしては、例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等から選ばれる1種以上を用いることができる。
好ましくは、上記カーボンブラックとしてはアセチレンブラックを用いることがよい。一般に一次粒子が連結された構造を有するアセチレンブラックは、導電性に優れ、上記負極活物質層の導電性をより一層向上させることができる。そのため、上記リチウム二次電池の出力特性をより一層向上させることができる。
また、上記バインダーとしては、窒素原子及び/又は酸素原子を含む高分子を用いる。上記バインダーは、上記ハードカーボンの粒子間を連結し、上記負極活物質層を上記負極集電体に繋ぎ止める役割を果たす。また、上記バインダーとしては、上記非水電解液に用いられる上記非水溶媒に対する耐性、電池反応が進行する電位に対する安定性、及び耐熱性等を備える高分子が好ましい。
上記バインダーとして用いられる具体的な上記高分子としては、例えばポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂をカルボキシル基等の酸素原子を含む官能基で変性させた変性フッ素樹脂等がある。また、上記高分子としては、窒素原子を含有するポリアクリロニトリル及びポリアミド等、酸素原子を含有するポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂等を用いることもできる。これらの高分子は、1種を単独で用いることもできるが、2種以上を併用することもできる。
また、上記負極活物質、上記導電材、及び上記バインダーを分散させる溶剤としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。
上記負極活物質層は、上記負極活物質を50〜95質量%、上記導電材を1〜20質量%、及び上記バインダーを4〜30質量%含有することが好ましい。
上記負極活物質が50質量%未満の場合には、容量等の電池性能が低下するおそれがある。また、上記導電材が1質量%未満の場合には、上記リチウム二次電池の出力性能を十分に向上させることが困難になるおそれがある。また、上記バインダーが4質量%未満の場合には、上記負極活物質層の上記負極集電体に対する密着性を十分に向上させることが困難になるおそれがある。また、上記負極活物質が95質量%を越える場合には、上記導電材又は上記バインダーの量が少なくなるため、上述の出力性能や密着性を向上させることが困難になるおそれがある。また、上記導電材が20質量%を越える場合には、上記負極活物質又は上記バインダーの量が少なくなるため、容量などの電池性能が低下したり、上述の密着性を向上させることが困難になるおそれがある。また、上記バインダーが30質量%を越える場合には、上記負極活物質又は上記導電材の量が少なくなるため、容量などの電池性能が低下したり、上述の出力性能を向上させることが困難になるおそれがある。より好ましくは、上記負極活物質層は、上記負極活物質を60〜90質量%、上記導電材を3〜20質量%、及び上記バインダーを7〜20質量%含有することがよい。
また、上記負極活物質層における活物質の密度は、0.6〜1.0g/cmであることが好ましい。密度が0.6g/cm未満の場合には、上記ハードカーボンの粒子の表面における接触抵抗が増大し、負極における電気抵抗が増大するおそれがある。一方、1.0g/cmを越える場合には、ハードカーボンの粒子間に電解液が十分に浸透しなくなるおそれがあり、また、リチウムイオンの伝導抵抗が増大するおそれがある。その結果、負極における電気抵抗が増大するおそれがある。より好ましくは、活物質の密度は0.7〜0.9g/cmがよい。なお、負極活物質層における活物質の密度は、負極活物質層の単位体積あたりに含まれる負極活物質(ハードカーボン)の質量である。負極活物質層における活物質の密度は、負極にプレス操作を行って負極活物質層の厚さを調整することにより、調整することができる。
また、上記負極活物質層の厚さは、5〜100μmであることが好ましい。
厚さが5μm未満の場合には、電池容量が不十分となるおそれがある。一方、100μmを越える場合には、負極活物質層中のイオン伝導性が低下するおそれがあり、特に高出力下における充放電特性が不十分となるおそれがある。より好ましくは、上記負極活物質層の厚さは10〜70μmがよい。
また、上記負極における上記負極集電体は、金属を主成分とし、上記負極活物質層と外部の負荷との間の電子の移動を媒介する。上記負極集電体の主成分である金属としては、電池反応が進行する電位において、リチウムと合金を形成しない金属を用いることが好ましい。具体的には、例えば銅、ニッケル、チタン、ステンレス等を用いることができる。これらのうち1種を単独で用いてもよいが、2種以上を併用することもできる。より好ましくは、上記負極集電体は、銅又はニッケルからなることがよい。
上記負極集電体の厚みは、1〜50μmが好ましい。
厚みが1μm未満の場合には、負極集電体表面に上記負極活物質層を形成する際の応力に上記負極集電体が耐えきれず、該負極集電体に切断や亀裂が生じるおそれがある。一方、厚みが50μmを越える場合には、製造コストが増大し、また、電池が大型化するおそれがある。より好ましくは、上記負極集電体の厚みは5〜20μmがよい。
<第3形態>
第3形態に係る負極は、炭素質材料を含む負極活物質を含む負極の一形態である。
第3形態における炭素質材料は、黒鉛とハードカーボン(不定形炭素)との混合物である。
第3形態については、特開2013−175456号公報を参照することができる。
一般に、リチウム二次電池は、充放電を繰り返すと放電容量が徐々に低下する傾向がある。ここで、充電電圧を高く設定することにより、高い放電電圧を取り出すことができるので、リチウム二次電池のエネルギー密度を高くすることができる。
しかしながら、充電電圧を高く設定すると、充放電サイクルを繰り返した場合に放電容量が低下しやすいといった問題点があった。また、電池の膨れが生じやすいといった問題点があった。
上述した点に関し、本発明のリチウム二次電池の負極として第3形態に係る負極を用いた場合には、黒鉛とハードカーボン(不定形炭素)との混合物の作用、及び、前述した非水電解液中の添加剤Aの作用により、電池の膨れ及び放電容量の低下を抑制できる。
第3形態に係る負極では、炭素質材料として、黒鉛とハードカーボン(不定形炭素)との混合物を用いる。
ハードカーボンは、(002)面の面間隔(d002)が0.75nm以上であることが好ましい。また、ハードカーボンは、Lcの値が0.8〜2nmであることが好ましい。
炭素質材料に含まれるハードカーボンの比率は、5〜60質量%が好ましい。
炭素質材料に含まれるハードカーボンの比率を5質量%以上とすることにより、上記効果がより効果的に奏される。
さらに、炭素質材料に含まれるハードカーボンの比率を5質量%以上とし、炭素質材料に含まれる黒鉛の比率を95質量%以下とすることにより、初期充放電工程時の負極上でのLi析出が抑制できるため、サイクル性能に優れたリチウム二次電池とすることができる。この効果は、初期充放電工程において高い充電電位を採用する場合に特に認められる。
また、炭素質材料に含まれるハードカーボンの比率を60質量%以下とし、炭素質材料に含まれる黒鉛の比率を40%以上とすることにより、黒鉛が備える電位平坦性の特徴を生かせるため、優れた電池容量を備えるリチウム二次電池とすることができる。
炭素質材料に含まれるハードカーボンの比率は10質量%以上がより好ましい。また、炭素質材料に含まれるハードカーボンの比率は、50質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。また、ハードカーボンの比率を60質量%以下から50質量%以下、さらに、30質量%以下とすることにより、初期効率が顕著に向上するので、この範囲が好ましい。
第3形態における負極活物質には、炭素質材料以外の負極活物質が含有されていてもよい。
炭素質材料以外の負極活物質として、例えば、Li[Li1/3Ti5/3]Oに代表されるスピネル型結晶構造を有するチタン酸リチウム等のチタン系材料;Si系、Sb系、Sn系などの合金系材料リチウム金属;リチウム合金(リチウム−シリコン、リチウム−アルミニウム、リチウム−鉛、リチウム−スズ、リチウム−アルミニウム−スズ、リチウム−ガリウム、及びウッド合金等のリチウム金属含有合金);リチウム複合酸化物(リチウム−チタン);酸化珪素;等、リチウムを吸蔵・放出可能な合金等が挙げられる。
<第4形態>
第4形態に係る負極は、炭素質材料を含む負極活物質を含む負極の一形態である。
第4形態における炭素質材料は、結晶性が異なる炭素質物を2種以上含む複合炭素質物を含む。
第4形態については、特開2007−173222号公報を参照することができる。
一般に、リチウム二次電池の負極活物質として、例えばコークス、人造黒鉛、天然黒鉛等の炭素質材料を用いることが知られている。
炭素質材料を用いたリチウム二次電池では、デンドライトの形成が抑制され、電池寿命と安全性を向上することができる。特に、人造黒鉛や天然黒鉛等の黒鉛系炭素質材料は、単位体積当たりのエネルギー密度を向上させることができる材料として期待されている。
しかしながら、負極活物質として、黒鉛系炭素質材料を単独で、または、リチウムを吸蔵及び放出することが可能な他の負極活物質と混合して用いたリチウム二次電池において、リチウム一次電池で一般に好んで使用されるプロピレンカーボネートを主溶媒とする電解液を用いると、負極表面で溶媒の分解反応が激しく進行し、負極へのスムーズなリチウムの吸蔵及び放出が不可能になる場合がある。
一方、エチレンカーボネートはこのような分解が少ないことから、リチウム二次電池の電解液の主溶媒として多用されている。
しかし、エチレンカーボネートを主溶媒として用いた場合であっても、充放電過程において、負極表面で非水電解液が分解するために、充放電効率やサイクル特性の低下を招くといった問題を生じる場合がある。
更に、電気自動車用電源としてリチウム二次電池を使用する場合、電気自動車は発進、加速時に大きなエネルギーを要し、また、減速時に発生する大きなエネルギーを効率よく回生させなければならないため、該リチウム二次電池には、高い出力特性が要求される。 通常のノートパソコン等に用いられるリチウム二次電池では充放電に対する低電流密度での容量維持率が重視されるが、電気自動車用電源としては、この特性よりも、充放電サイクルの劣化後においても大電力での出力特性が維持されることが重要となる。
そこでこれまで、リチウム二次電池の出力特性を改善するための手段として、正極や負極の活物質を始めとする様々な電池の構成要素について、数多くの技術が検討されている。
負極活物質に関する技術としても、劣化が抑制された、表面近傍のみが低結晶性の炭素質物で、その内部が結晶質の黒鉛である負極活物質を用いることが知られている。これにより、高温時においても相対放電容量が低下し難く、サイクル特性に優れることが知られている。
しかし、この方法でもサイクル後期での出力特性については、十分とはいえない。
上述した点に関し、本発明のリチウム二次電池の負極として第4形態に係る負極を用いた場合には、負極活物質として複合炭素質物を用いた作用、及び、前述した非水電解液中の添加剤Aの作用により、より大型にした際にも、サイクル特性向上の効果を維持しながら、サイクル初期から末期に渡って高い出力特性を実現でき、充放電サイクルを行った後の劣化後においても、大電力での出力特性を維持できる。
第4形態における炭素質材料は、結晶性が異なる炭素質物を2種以上含む複合炭素質物を含む。
ここで、「結晶性の異なる炭素質物を2種以上含有する」とは、結晶性が異なる炭素質物が負極活物質中に共存していることを示し、また、その共存の形態は、個々の単一の粒子として存在して混合された状態であるか、一つの二次粒子中に含まれているか、また、その両者が混合しているかは問わない。
また、負極活物質としては、結晶性の異なる炭素質物を2種以上含有する複合炭素質物を含有するものを用いるが、更に、この複合炭素質物に、それとは炭素質の物性が異なる炭素質物(炭素質材料)を1種以上、副材として含有するものも好ましく用いることができる。
また、ここで言う「一つの二次粒子中に含まれている」とは、結晶性の異なる炭素質物が結合によって拘束された状態、物理的に拘束された状態、静電的な拘束によって形状を維持している状態等を示す。
ここでいう「物理的な拘束」とは、結晶性の異なる炭素質物の一方が他方に巻き込まれたような状態、引っかかっている状態を示し、「静電的な拘束」とは、結晶性の異なる炭素質物の一方が他方に、静電的なエネルギーによって付着している状態を示す。
また、「結合によって拘束された状態」とは、水素結合、共有結合、イオン結合などの化学的な結合を意味する。
この中でも、芯となる炭素質物の表面の少なくとも一部に、結合によって結晶性の異なる被覆層との界面を有している状態が、結晶性の異なる炭素質物間のリチウムの移動の抵抗が小さく有利である。
この被覆層の形成が、外部から供給された材料及び/又はこれらの変質物との結合によるか、或いは、炭素質物の表面部の材料の変質によるかは問わない。
ここで、被覆とは、炭素質物の表面との界面中の少なくとも一部に化学結合を有し、(1)表面全体を覆っている状態、(2)炭素質粒子の局所的に覆っている状態、(3)表面一部を選択的に覆っている状態、(4)化学結合を含む極微小領域に存在している状態を示す。また、界面では結晶性が連続的に変化していても、不連続で変化していても構わない。
複合炭素質物は、粒子状炭素質物に対し、該粒子状炭素質物とは結晶性が異なる炭素質物を被覆及び/又は結合させてなる界面を有し、該界面の結晶性が不連続及び/又は連続的に変化するものであることが好ましい。
「粒子状炭素質物」と「該粒子状炭素質物とは結晶性が異なる炭素質物」のどちらの方が結晶性が高いかは限定はないが、粒子状炭素質物の方が高いことが、本形態の上記効果を発現させるために好ましい。
ここで結晶性の差は、X線広角回折法による(002)面の面間隔(d002)の差異、Lcの差異、Laの差異で判断するが、結晶性の差が(d002)で0.0002nm以上、又は、Laが1nm以上、又は、Lcが1nm以上であることが好ましい。
上記範囲の中で(d002)の差異は、好ましくは0.0005nm以上、より好ましくは0.001nm以上、更に好ましくは0.003nm以上、上限としては0.03nm以下、好ましくは0.02nm以下の範囲である。
この範囲を下回ると、結晶性の差による効果が小さくなる場合がある。一方この範囲を上回ると、結晶性の低い部分の結晶性が低くなる傾向があり、これに起因する不可逆容量が増加する可能性がある。また、前記の範囲の中でLa又はLcの差異は、好ましくは2nm以上、より好ましくは5nm以上、更に好ましくは10nm以上の範囲である。一般に黒鉛は100nm以上が定義できないので、指定できない。この範囲を下回ると、結晶性の差による効果が小さくなる場合がある。
複合炭素質物は、粒子状炭素質物に対し、該粒子状炭素質物と結晶性の異なる炭素質物が被覆及び/又は結合したものである。
「粒子状炭素質物」及び「該粒子状炭素質物と結晶性の異なる炭素質物」は、一方が黒鉛系炭素質物であり、他方が低結晶性炭素質物であることが好ましく、「粒子状炭素質物」が黒鉛系炭素質物であり、「該粒子状炭素質物と結晶性の異なる炭素質物」が低結晶性炭素質物であることがより好ましい。
(粒子状炭素質物)
粒子状炭素質物としては、天然黒鉛及び人造黒鉛の少なくとも一方を含有する黒鉛系炭素質物であることが好ましい。
また、粒子状炭素質物としては、(a)石炭系コークス、石油系コークス、ファーネスブラック、アセチレンブラック、及びピッチ系炭素繊維からなる群から選択される少なくとも1種を熱分解して得られた熱分解物、
(b)有機物気体の炭化物、並びに、
(c)前記(a)又は前記(b)の少なくとも一部を黒鉛化してなる炭素質物
からなる群から選択される少なくとも1種を含有することも好ましい。
上記(a)〜(c)としては、例えば、天然黒鉛及び人造黒鉛よりも、結晶性がやや低いものを用いることができる。
−黒鉛系炭素質物−
粒子状炭素質物は、天然黒鉛及び人造黒鉛の少なくとも一方を含有する黒鉛系炭素質物であることが好ましい。
黒鉛系炭素質物としては、(002)面の面間隔(d002)が0.340nm未満を示す、結晶性の高い炭素質物が好ましい。
黒鉛系炭素質物の具体例としては、天然黒鉛、人造黒鉛、又はこれらの機械的粉砕品、再熱処理品,膨張黒鉛の再熱処理品、或いはこれらの黒鉛の高純度精製品から選ばれる粉体が好ましい。
上記人造黒鉛の具体例としては、コールタールピッチ、石炭系重質油、常圧残油、石油系重質油,芳香族炭化水素、窒素含有環状化合物、硫黄含有環状化合物、ポリフェニレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール,ポリアクリロニトリル、ポリビニルブチラール、天然高分子、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド、フルフリルアルコール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、イミド樹脂等から選ばれる1種以上の有機物質を、通常、2500℃以上、3200℃以下程度の焼成温度で黒鉛化したものを、適当な粉砕手段で粉化したものが好ましい。
黒鉛系炭素質物についての性質は、次に示す(1)〜(11)の何れか1つ又は複数を同時に満たしていることが望ましい。
−(1)X線パラメータ−
黒鉛系炭素質物は、(002)面の面間隔(d002)(層間距離)が、0.335nm以上であることが好ましい。また、下限は、定義から0.340nm未満であるが、好ましくは0.337nm以下である。
d値が大きすぎると、結晶性が低下し、初期不可逆容量が増加する場合がある。
一方、0.335は黒鉛の理論値である。
また、学振法によるX線回折で求めた炭素質材料の結晶子サイズ(Lc)は、通常30nm以上、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上の範囲である。この範囲を下回ると、結晶性が低下し、初期不可逆容量が増加する可能性がある。
−(2)灰分−
黒鉛系炭素質物中に含まれる灰分は、黒鉛系炭素質物の全質量に対して、1質量%以下、中でも0.5質量%以下、特に0.1質量%以下、下限としては1ppm以上であることが好ましい。上記の範囲を上回ると充放電時の電解液との反応による電池性能の劣化が無視できなくなる場合がある。この範囲を下回ると、製造に多大な時間とエネルギーと汚染防止のための設備とを必要とし、コストが上昇する場合がある。
−(3)体積平均粒子径−
黒鉛系炭素質物の体積平均粒子径の好ましい範囲は、第1形態における炭素質材料の体積平均粒子径の好ましい範囲と同様である。
−(4)ラマンR値、ラマン半値幅−
黒鉛系炭素質物のラマンR値及びラマン半値幅の好ましい範囲は、それぞれ、第1形態における炭素質材料のラマンR値及びラマン半値幅の好ましい範囲と同様である。
−(5)BET比表面積−
黒鉛系炭素質物のBET比表面積の好ましい範囲は、第1形態における炭素質材料のBET比表面積の好ましい範囲と同様である。
−(6)細孔分布−
黒鉛系炭素質物としては、水銀ポロシメトリー(水銀圧入法)により求められる、直径0.01μm以上、1μm以下に相当する粒子内の空隙、粒子表面のステップによる凹凸の量が、0.01mL/g以上、好ましくは0.05mL/g以上、より好ましくは0.1mL/g以上、上限として0.6mL/g以下、好ましくは0.4mL/g以下、より好ましくは0.3mL/g以下の範囲である。この範囲を上回ると、極板化時にバインダーを多量に必要となる場合がある。一方この範囲を下回ると、高電流密度充放電特性が低下し、且つ充放電時の電極の膨張収縮の緩和効果が得られない場合がある。
また、全細孔容積が、好ましくは0.1mL/g以上、より好ましくは0.25mL/g以上、上限として10mL/g以下、好ましくは5mL/g以下、より好ましくは2mL/g以下の範囲である。この範囲を上回ると極板化時にバインダーを多量に必要となる場合がある。下回ると極板化時に増粘剤やバインダーの分散効果が得られない場合がある。
また、平均細孔径が、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは0.5μm以上、上限として50μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下の範囲である。この範囲を上回ると、バインダーを多量に必要となる場合がある。一方この範囲を下回ると高電流密度充放電特性が低下する場合がある。
水銀ポロシメトリー用の装置として、水銀ポロシメータ(オートポア9520:マイクロメリテックス社製)を用いる。試料(負極材料)を、0.2g前後の値となるように秤量し、パウダー用セルに封入し、室温、真空下(50μmHg以下)にて10分間脱気して前処理を実施する。引き続き、4psia(約28kPa)に減圧し水銀を導入し、4psia(約28kPa)から40000psia(約280MPa)までステップ状に昇圧させた後、25psia(約170kPa)まで降圧させた。昇圧時のステップ数は80点以上とし、各ステップでは10秒の平衡時間の後、水銀圧入量を測定した。こうして得られた水銀圧入曲線からWashburnの式を用い、細孔分布を算出した。なお、水銀の表面張力(γ)は485dyne/cm、接触角(ψ)は140°として算出した。平均細孔径には累計細孔体積が50%となるときの細孔径を用いる。
−(7)円形度−
黒鉛系炭素質物の円形度の好ましい範囲は、第1形態における炭素質材料の円形度の好ましい範囲と同様である。
−(8)真密度−
黒鉛系炭素質物の真密度は、通常2g/cm以上、好ましくは2.1g/cm以上、より好ましくは2.2g/cm以上、更に好ましくは2.22g/cm以上であり、上限としては2.26g/cm以下である。上限は黒鉛の理論値である。この範囲を下回ると炭素の結晶性が低すぎて初期不可逆容量が増大する場合がある。本発明においては、真密度は、ブタノールを使用した液相置換法(ピクノメータ法)によって測定したもので定義する。
−(9)タップ密度−
黒鉛系炭素質物のタップ密度の好ましい範囲は、第1形態における炭素質材料のタップ密度の好ましい範囲と同様である。
−(10)配向比(粉)−
黒鉛系炭素質物の配向比は、通常0.005以上であり、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.015以上、上限は理論上0.67以下の範囲である。この範囲を下回ると、高密度充放電特性が低下する場合がある。
配向比はX線回折により測定する。X線回折により炭素の(110)回折と(004)回折のピークを、プロファイル関数として非対称ピアソンVIIを用いてフィッティングすることによりピーク分離を行ない、(110)回折と(004)回折のピークの積分強度を各々算出する。得られた積分強度から、(110)回折積分強度/(004)回折積分強度で表わされる比を算出し、活物質配向比と定義する。
ここでのX線回折測定条件は次の通りである。なお、「2θ」は回折角を示す。
・ターゲット:Cu(Kα線)グラファイトモノクロメーター
・スリット :発散スリット=1度、受光スリット=0.1mm、散乱スリット=1度
・測定範囲及びステップ角度/計測時間:
(110)面:76.5度≦2θ≦78.5度 0.01度/3秒
(004)面:53.5度≦2θ≦56.0度 0.01度/3秒
−(11)アスペクト比(粉)−
黒鉛系炭素質物のアスペクト比の好ましい範囲は、第1形態における炭素質材料のアスペクト比の好ましい範囲と同様である。
(粒子状炭素質物とは結晶性が異なる炭素質物)
「粒子状炭素質物とは結晶性が異なる炭素質物」は、粒子状炭素質物よりも結晶性が低い、低結晶性炭素質物であることが好ましい。
ここで、低結晶性炭素質物とは、(002)面の面間隔(d002)が0.340nm以上を示す、結晶性の低い炭素質物が好ましい。
「粒子状炭素質物とは結晶性が異なる炭素質物」は、以下の(d)又は(e)の炭化物であることが特に好ましい。
(d)石炭系重質油、直流系重質油、分解系石油重質油、芳香族炭化水素、N環化合物、S環化合物、ポリフェニレン、有機合成高分子、天然高分子、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、炭化可能な有機物
(e)(d)を低分子有機溶媒に溶解させたもの
石炭系重質油としては、軟ピッチから硬ピッチまでのコールタールピッチ、乾留液化油等が好ましい。
直流系重質油としては、常圧残油、減圧残油等が好ましい。
分解系石油重質油としては、原油、ナフサ等の熱分解時に副生するエチレンタール等が好ましい。
芳香族炭化水素としては、アセナフチレン、デカシクレン、アントラセン、フェナントレン等が好ましい。
N環化合物としては、フェナジン、アクリジン等が好ましい。
S環化合物としては、チオフェン、ビチオフェン等が好ましい。
ポリフェニレンとしては、ビフェニル、テルフェニル等が好ましい。
有機合成高分子としては、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、これらのものの不溶化処理品、ポリアクリロニトリル、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリスチレン等が好ましい。
天然高分子としては、セルロース、リグニン、マンナン、ポリガラクトウロン酸、キトサン、サッカロース等の多糖類等が好ましい。
熱可塑性樹脂としては、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド等が好ましい。
熱硬化性樹脂としては、フルフリルアルコール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、イミド樹脂等が好ましい。
「粒子状炭素質物と結晶性の異なる炭素質物」は、上記の「炭化可能な有機物」の炭化物であることが好ましい。
また、「粒子状炭素質物と結晶性の異なる炭素質物」は、上記の「炭化可能な有機物」を、ベンゼン、トルエン、キシレン、キノリン、n−へキサン等の低分子有機溶媒に溶解させた溶液等の炭化物であることも好ましい。
また、「粒子状炭素質物と結晶性の異なる炭素質物」は、石炭系コークス、石油系コークスの炭化物であることも好ましい。
上記(d)又は(e)は、液状であることが特に好ましい。
すなわち、液相で炭化を進行させることが、黒鉛系炭素質物部分との界面生成の点から好ましい。
(低結晶性炭素質物の物性)
低結晶性炭素質物の物性としては、次に示す(1)〜(5)の何れか1つ又は複数を同時に満たしていることが望ましい。また、かかる物性を示す低結晶性炭素質物1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
−(1)X線パラメータ−
低結晶性炭素質物については、(002)面の面間隔(d002)(層間距離)は、0.340nm以上であることが好ましく、0.341nm以上であることがより好ましい。
また上限は、0.380nm以下が好ましく、特に好ましくは0.355nm以下、更に好ましくは0.350nm以下である。
d値が大きすぎると、著しく結晶性の低い表面となり、不可逆容量が増加する場合があり、小さすぎると、低結晶性炭素質を表面に配置することによる得られる充電受入性向上の効果が小さく、本発明の効果が小さくなってしまう場合がある。また、学振法によるX線回折で求めた炭素質材料の結晶子サイズ(Lc)は、通常1nm以上、好ましくは1.5nm以上の範囲である。この範囲を下回ると、結晶性が低下し、初期不可逆容量の増大が増加する場合がある。
−(2)灰分−
低結晶性炭素質物に含まれる灰分の好ましい範囲は、黒鉛系炭素質物中に含まれる灰分の好ましい範囲と同様である。
−(3)ラマンR値、ラマン半値幅−
アルゴンイオンレーザーラマンスペクトル法を用いて測定した低結晶性炭素質物部分のR値は、通常0.5以上、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上、上限としては1.5以下、好ましくは1.2以下の範囲である。
ラマンR値がこの範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎて、充放電に伴ってLiが層間に入るサイトが少なくなる場合がある。即ち、充電受入性が低下する場合がある。また、負極集電体に塗布した後、プレスすることによって負極を高密度化した場合に電極板と平行方向に結晶が配向し易くなり、負荷特性の低下を招く場合がある。一方、この範囲を上回ると、粒子表面の結晶性が低下し、電解液との反応性が増し、効率の低下やガス発生の増加を招く場合がある。
また、低結晶性炭素質物の1580cm−1付近のラマン半値幅は特に制限されないが、通常40cm−1以上、好ましくは50cm−1以上、また上限として、通常100cm−1以下、好ましくは90cm−1以下、より好ましくは80cm−1以下の範囲である。
ラマン半値幅がこの範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎて、充放電に伴ってLiが層間に入るサイトが少なくなる場合がある。即ち、充電受入性が低下する場合がある。また、負極集電体に塗布した後、プレスすることによって負極を高密度化した場合に電極板と平行方向に結晶が配向し易くなり、負荷特性の低下を招く場合がある。一方、この範囲を上回ると、粒子表面の結晶性が低下し、電解液との反応性が増し、効率の低下やガス発生の増加を招く場合がある。
−(4)真密度−
低結晶性炭素質物の真密度は、通常1.4g/cm以上、好ましくは1.5g/cm以上、より好ましくは1.6g/cm以上、更に好ましくは1.7g/cm以上であり、上限としては2.1g/cm以下、好ましくは2g/cm以下である。
この範囲を上回ると充電受入性が損なわれる可能性がある。この範囲を下回ると炭素の結晶性が低すぎて初期不可逆容量が増大する場合がある。
−(5)配向比−
低結晶性炭素質物の配向比の好ましい範囲は、黒鉛系炭素質物の配向比の好ましい範囲と同様である。
(複合炭素質物)
複合炭素質物は、「粒子状炭素質物」と「該粒子状炭素質物とは結晶性が異なる炭素質物」を含有していることが好ましいが、この場合、どちらかが黒鉛系炭素質物であり、もう一方が低結晶性炭素質物であればよい。
また、好ましくは、「粒子状炭素質物」が黒鉛系炭素質物であり、「該粒子状炭素質物と結晶性の異なる炭素質物」が低結晶性炭素質物である。
複合炭素質物において、黒鉛系炭素質物と低結晶性炭素質物の質量比は、好ましくは50/50以上、更に好ましくは80/20以上、特に好ましくは、90/10以上であり、好ましくは、99.9/0.1以下、更に好ましくは99/1以下、特に好ましくは98/2以下である。
上記範囲を上回ると2種類の結晶性の炭素質物を有している効果が得られない場合があり、上記範囲を下回ると初期の不可逆容量が増加する傾向を示し、電池設計上問題となる場合がある。
黒鉛系炭素質物が、複合炭素質物全体に対して50質量%以上であることが好ましい。
複合炭素質物としては、次に示す(1)〜(11)の何れか1つ又は複数を同時に満たしていることが望ましい。
また、かかる物性を示す複合炭素質物1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
−(1)X線パラメータ−
複合炭素質物は、(002)面の面間隔(d002)が、0.335nm以上であることが好ましく、通常0.350nm以下、好ましくは0.345nm以下、更に好ましくは0.340nm以下であることが望まれる。
また、学振法によるX線回折で求めた炭素質材料の結晶子サイズ(Lc)は、通常1.5nm以上、好ましくは3.0nm以上の範囲である。この範囲を下回ると、結晶性が低下し、初期不可逆容量の増大が増加する可能性がある。
−(2)灰分−
複合炭素質物中に含まれる灰分の好ましい範囲は、黒鉛系炭素質物中に含まれる灰分の好ましい範囲と同様である。
−(3)体積平均粒子径−
複合炭素質物の体積平均粒子径の好ましい範囲は、黒鉛系炭素質物の体積平均粒子径の好ましい範囲と同様である。
−(4)ラマンR値、ラマン半値幅−
アルゴンイオンレーザーラマンスペクトル法を用いて測定した複合炭素質物のラマンR値は、通常0.03以上、好ましくは0.10以上、より好ましくは0.15以上、上限としては0.60以下、好ましくは0.50以下の範囲である。ラマンR値がこの範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎて、充放電に伴ってLiが層間に入るサイトが少なくなる場合がある。即ち、充電受入性が低下する場合がある。また、負極集電体に塗布した後、プレスすることによって負極を高密度化した場合に電極板と平行方向に結晶が配向し易くなり、負荷特性の低下を招く場合がある。一方、この範囲を上回ると、粒子表面の結晶性が低下し、電解液との反応性が増し、効率の低下やガス発生の増加を招く場合がある。
また、複合炭素質物の1580cm−1付近のラマン半値幅は特に制限されないが、通常15cm−1以上、好ましくは20cm−1以上、また上限として、通常70cm−1以下、好ましくは60cm−1以下、より好ましくは50cm−1以下の範囲である。ラマン半値幅がこの範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎて、充放電に伴ってLiが層間に入るサイトが少なくなる場合がある。即ち、充電受入性が低下する場合がある。また、負極集電体に塗布した後、プレスすることによって負極を高密度化した場合に電極板と平行方向に結晶が配向し易くなり、負荷特性の低下を招く場合がある。一方、この範囲を上回ると、粒子表面の結晶性が低下し、電解液との反応性が増し、効率の低下やガス発生の増加を招く場合がある。
−(5)BET比表面積−
複合炭素質物のBET法比表面積の好ましい範囲は、黒鉛系炭素質物のBET法比表面積の好ましい範囲と同様である。
−(6)細孔分布−
複合炭素質物の細孔分布の好ましい範囲は、黒鉛系炭素質物の細孔分布の好ましい範囲と同様である。
−(7)円形度−
複合炭素質物の球形の程度としては、その粒子径が3〜40μmの範囲にある粒子の円形度は0.85以上が好ましく、より好ましくは0.87以上、更に好ましくは0.9以上円形度が大きいと高電流密度充放電特性が向上するため好ましい。
−(8)真密度−
複合炭素質物の真密度は、通常1.9g/cm以上、好ましくは2g/cm以上、より好ましくは2.1g/cm以上、更に好ましくは2.2g/cm以上であり、上限としては2.26g/cm以下である。上限は黒鉛の理論値である。この範囲を下回ると炭素の結晶性が低すぎて初期不可逆容量が増大する場合がある。
−(9)タップ密度−
複合炭素質物のタップ密度の好ましい範囲は、黒鉛系炭素質物のタップ密度の好ましい範囲と同様である。
−(10)配向比(粉)−
複合炭素質物の配向比の好ましい範囲は、黒鉛系炭素質物の配向比の好ましい範囲と同様である。
−(11)アスペクト比(粉)−
複合炭素質物のアスペクト比の好ましい範囲は、黒鉛系炭素質物のアスペクト比の好ましい範囲と同様である。
(複合炭素質物の製法)
これらの複合炭素質物の製法は特には制限されないが、以下に示す方法が挙げられる。 黒鉛系炭素質物と低結晶性炭素質物の複合化は、低結晶性炭素質物を得るための炭素前駆体をそのまま用いて、炭素前駆体と黒鉛系炭素質物粉体との混合物を加熱処理して複合粉体を得る方法;前述の炭素前駆体を一部炭素化した低結晶性炭素質物粉体を予め作製しておき、黒鉛系炭素質物粉体と混合し、加熱処理して複合化する方法;前述の低結晶性炭素質物粉体を予め作製しておき、黒鉛系炭素質物粉体と低結晶性炭素質物粉体と炭素前駆体とを混合し、加熱処理して複合化する方法;等が採用可能である。
なお、後二者の予め低結晶性炭素質物粉体を用意しておく方法では、平均粒子径が黒鉛系炭素質物粒子の平均粒子径の10分の1以下の低結晶性炭素質物粒子を用いることが好ましい。
また、予め作製した低結晶性炭素質物と黒鉛系炭素質物を粉砕等の力学的エネルギーを加えることで、一方に他方が巻き込まれた構造や、静電的に付着した構造にする方法も採用が可能である。
黒鉛系炭素質物粒子と炭素前駆体を混合したものを加熱して中間物質を得るか、あるいは、黒鉛系炭素質物粒子と低結晶性炭素質物粒子の混合物と炭素前駆体を混合したものを加熱して中間物質を得て、その後、炭化焼成、粉砕することにより、最終的に黒鉛系炭素質物粒子に低結晶性炭素質物を複合化させた複合炭素質物を得ることが好ましい。
かかる複合炭素質物を得るための製造工程は、以下の4工程に分けられる。
第1工程:(黒鉛系炭素質物粒子又は(黒鉛系炭素質物粒子と低結晶性炭素質物粒子の混合粒子))並びに低結晶性炭素質物粒子の炭素前駆体、更に、必要に応じて溶媒とを、種々の市販の混合機や混練機等を用いて混合し、混合物を得る。
第2工程:混合物を加熱し溶媒及び、炭素前駆体から発生する揮発分を除去した中間物質を得る。このとき必要に応じ、前記混合物を攪拌しながら行ってもよい。また、揮発分が残留していても、後の第3工程で除去されるので、問題ない。
第3工程:前記混合物又は中間物質を、窒素ガス、炭酸ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で、400℃以上3200℃以下に加熱し、黒鉛・低結晶性炭素質物・複合物質を得る。
第4工程:前記複合物質を必要に応じて粉砕、解砕、分級処理等の粉体加工をする。
これらの工程中、第2工程及び第4工程は場合によっては省略可能であり、第4工程は第3工程の前に行ってもよい。但し、第4工程を第3工程の前に実施した場合は、必要に応じて、再度粉砕、解砕、分級処理等の粉体加工し、複合炭素質物を得る。
また、第3工程の加熱処理条件としては、熱履歴温度条件が重要である。その温度下限は炭素前駆体の種類、その熱履歴によっても若干異なるが通常400℃以上、好ましくは900℃以上である。一方、上限温度は、基本的に黒鉛系炭素質物粒子核の結晶構造を上回る構造秩序を有しない温度まで上げることができる。従って熱処理の上限温度としては、通常3200℃以下、好ましくは2000℃以下、更に好ましくは1500℃以下が好ましい範囲である。このような熱処理条件において、昇温速度、冷却速度、熱処理時間等は目的に応じて任意に設定することができる。また、比較的低温領域で熱処理した後、所定の温度に昇温することもできる。なお、本工程に用いる反応機は回分式でも連続式でも、また一基でも複数基でもよい。
(副材混合)
本形態における負極活物質には、上記複合炭素質物以外に、それとは炭素質の物性が異なる炭素質物(炭素質材料)を1種以上含有させることにより、更に、電池性能の向上を図ることが可能である。
ここで述べた「炭素質の物性」とは、X線回折パラメータ、メジアン径、アスペクト比、BET比表面積、配向比、ラマンR値、タップ密度、真密度、細孔分布、円形度、灰分量のうちの一つ以上の特性を示す。
また、好ましい実施の形態としては、体積粒度分布がメジアン径を中心としたときに左右対称とならないことや、ラマンR値異なる炭素質材料を2種以上含有していること、X線パラメータが異なること等が挙げられる。
その効果の一例としては、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト)、アセチレンブラック等のカーボンブラック、ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素質材料を副材として含有されることにより電気抵抗を低減させること等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。副材として添加する場合には0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.6質量%以上であり、上限としては80質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下の範囲である。この範囲を下回ると、導電性向上の効果が得にくく好ましくない。上回ると、初期不可逆容量の増大を招き好ましくない。
(負極の製造)
本形態における負極は、常法によって製造することができる。例えば、負極活物質に、バインダー、溶媒、必要に応じて、増粘剤、導電材、充填材等を加えてスラリーとし、これを負極集電体に塗布、乾燥した後にプレスすることによって製造することができる。
本形態における負極は、第1形態における負極と同様の方法によって製造できる。
本形態における負極に用い得る、負極集電体、バインダー、溶媒、増粘剤、導電材、充填剤は、それぞれ、第1形態における負極に用い得るものと同様である。
−負極集電体と活物質層の厚さの比−
負極集電体と負極活物質層の厚さの比は特には限定されないが、(電解液注液直前の片面の負極活物質層の厚さ)/(負極集電体の厚さ)の値が150以下、好ましくは20以下、より好ましくは10以下であり、下限は0.1以上、好ましくは0.4以上、より好ましくは1以上の範囲である。この範囲を上回ると、高電流密度充放電時に負極集電体がジュール熱による発熱を生じ、好ましくない。この範囲を下回ると、負極活物質に対する負極集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少して好ましくない。
−電極密度−
負極活物質の電極化した際の電極構造は特には限定されないが、負極集電体上に存在している負極活物質の密度は、好ましくは1g/cm以上、より好ましくは1.2g/cm以上、更に好ましくは1.3g/cm以上であり、上限として2g/cm以下、好ましくは1.9g/cm以下、より好ましくは1.8g/cm以下、更に好ましくは1.7g/cm以下の範囲である。この範囲を上回ると負極活物質粒子が破壊され、初期不可逆容量の増加や、負極集電体/活物質界面付近への電解液の浸透性が低下し、高電流密度充放電特性が低下して招き好ましくない。また下回ると負極活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大し、単位容積当たりの容量が低下するため好ましくない。
−極板配向比−
極板配向比は、0.001以上、好ましくは0.005以上、より好ましくは0.01以上、上限は理論値である0.67以下である。この範囲を下回ると、高密度充放電特性が低下して好ましくない。
極板配向比の測定は以下のとおりである。目的密度にプレス後の負極電極について、X線回折により電極の活物質配向比を測定する。具体的手法は特に制限されないが、標準的な方法としては、X線回折により炭素の(110)回折と(004)回折のピークを、プロファイル関数として非対称ピアソンVIIを用いてフィッティングすることによりピーク分離を行ない、(110)回折と(004)回折のピークの積分強度を各々算出する。得られた積分強度から、(110)回折積分強度/(004)回折積分強度で表わされる比を算出する。該測定で算出される電極の活物質配向比を極板配向比と定義する。
ここでのX線回折測定条件は次の通りである。なお、「2θ」は回折角を示す。
・ターゲット: Cu(Kα線)グラファイトモノクロメーター
・スリット : 発散スリット=1度、受光スリット=0.1mm、散乱スリット=1度・測定範囲、及び、ステップ角度/計測時間:
(110)面 : 76.5度≦2θ≦78.5度 0.01度/3秒
(004)面 : 53.5度≦2θ≦56.0度 0.01度/3秒
・試料調整 : 硝子板に0.1mm厚さの両面テープで電極を固定
−インピーダンス−
放電状態から公称容量の60%まで充電した時の負極の抵抗が100Ω以下が好ましく、特に好ましくは50Ω以下、より好ましくは20Ω以下、及び/又は二重層容量が1×10−6F以上が好ましく、特に好ましくは1×10−5F以上、より好ましくは1×10−4F以上である。この範囲であると出力特性が良く好ましい。
負極の抵抗及び二重層容量は、次の手順で測定する。
測定するリチウム二次電池は、公称容量を5時間で充電できる電流値にて充電した後に、20分間充放電をしない状態を維持し、次に公称容量を1時間で放電できる電流値で放電したときの容量が公称容量の80%以上あるものを用いる。
前述の放電状態のリチウム二次電池について公称容量を5時間で充電できる電流値にて公称容量の60%まで充電し、直ちにリチウム二次電池をアルゴンガス雰囲気下のグローブボックス内に移す。ここで該リチウム二次電池を負極が放電又はショートしない状態ですばやく解体して取り出し、両面塗布電極であれば、片面の電極活物質を他面の電極活物質を傷つけずに剥離し、負極電極を12.5mmφに2枚打ち抜き、セパレータを介して活物質面がずれないよう対向させる。電池に使用されていた電解液60μLをセパレータと両負極間に滴下して密着し、外気と触れない状態を保持して、両負極の負極集電体に導電をとり、交流インピーダンス法を実施する。測定は温度25℃で、10−2〜10Hzの周波数帯で複素インピーダンス測定を行ない、求められたコール・コール・プロットの負極抵抗成分の円弧を半円で近似して表面抵抗(R)と、二重層容量(Cdl)を求める。
<第5形態>
第5形態に係る負極は、炭素質材料を含む負極活物質を含む負極の一形態である。
第5形態における炭素質材料は、鱗片状黒鉛を球形化してなる球形化黒鉛、及び、前記球形化黒鉛の表面を炭素被覆してなる炭素被覆球形化黒鉛からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
第5形態については、特許第4424895公報を参照することができる。
黒鉛などの高結晶性炭素を負極に用いる場合、黒鉛負極上で起こる電解液の還元分解反応を抑制することが重要となる。
例えば、プロピレンカーボネートは電解質の溶解性に優れ、化学的安定性が高く、融点が低いため実用上優れた溶媒であるが、これを使用した電解液は、初回充電時に、黒鉛の炭素網面のはがれを伴いながら溶媒の還元分解反応が激しく起こり、リチウムイオンの黒鉛への挿入反応が進行しにくくなる。その結果、初回の充放電効率が低下し、電池のエネルギー密度が低下し、充放電特性が低下するため( J.Electrochem.Soc.,146(5)1664-1671(1999)など)、黒鉛負極を使用した電池では主成分として使用されていない。
そのため、電解液に使用される高誘電率の非水溶媒として、還元分解反応が継続的に起こりにくいエチレンカーボネートを使用して、非水溶媒の還元分解反応を抑えることが行われるが( J.Electrochem.Soc.,146(5)1664-1671(1999))、エチレンカーボネートを使用しても負極表面で微量の電解液の還元分解反応が継続して起こっている( J.Electrochem.Soc.,147(10)3628-3632(2000)、J.Electrochem.Soc.,146(11)4014-4018(1999)、J.Power Sources 81-82(1999)8-12 )。例えば、充放電を何度も長期間繰り返すサイクル使用をしたり、高温で電池を貯蔵したりすると、電池の容量や充放電特性が低下し、電解液の分解ガスにより電池の外観が変形することがある。
そこで、負極上での溶媒の還元分解反応をさらに抑制する試みとして、電解液の還元分解を抑制する化合物を電解液に添加することや、負極表面を改質して電解液の還元分解反応を起り難くすることが報告されている。
電解液の還元分解を抑制する化合物の例としてビニレンカーボネートがあり、これを含有させることによって、電池の貯蔵特性やサイクル特性が向上すること、黒鉛負極のエッジ面で還元分解を受けるプロピレンカーボネートを使用できることなどが報告されている。
ところが、本発明者らの検討によると、電解液の還元分解を抑制する化合物は、負極表面に電解液の分解を抑制する抵抗皮膜を形成して効果を発現するため、リチウムイオンの挿入脱離反応を阻害し、電池の充放電特性を低下するという副次的作用があり、寿命特性と充放電特性の両方を同時に満足するものは得られていない。
また、負極表面を改質して電解液の還元分解反応を起り難くする例として、黒鉛粒子の表面を電解液の分解性が低い低結晶性炭素又は非晶質性炭素で被覆する方法が提案されている(特開2000−106182号公報)。ところが、黒鉛粒子を結晶性炭素又は低結晶性炭素で被覆した複合材料は、その被覆層の機械的強度が高いため、負極活物質の加圧成型性に劣り、電極の充填密度を高くし難いことが言われている(特開2002―141062号公報)。他方、被覆層を少なくすれば、加圧成型性が向上して電極密度を高くすることが可能になるが、この場合、黒鉛粒子の被覆が不完全になるため電解液の分解を抑制する機能が不十分となり、寿命特性を満足する電池は得られていない。
上述した点に関し、本発明のリチウム二次電池の負極として第5形態に係る負極を用いた場合には、負極活物質として上記特定の炭素質材料を用いた作用、及び、前述した非水電解液中の添加剤Aの作用により、負極上での溶媒の分解反応が抑制される。これにより、高温保存試験やサイクル充放電試験などの寿命試験時に、電池の容量低下とガスの発生による電池の変形とが抑制され、電池の充放電特性が向上する。
第5形態における炭素質材料は、鱗片状黒鉛を球形化してなる球形化黒鉛、及び、前記球形化黒鉛の表面を炭素被覆してなる炭素被覆球形化黒鉛からなる群から選択される少なくとも1種を含む
鱗片状黒鉛を球形化してなる球形化黒鉛は、鱗片状黒鉛を粉砕した後、少なくとも2方向から応力をかけて圧縮して成形する方法、ずり応力をかけながら圧縮して成形する方法などで得ることができる。
鱗片状黒鉛の粉砕方法としては、公知の衝撃粉砕方法や摩砕方法等いずれの方法を用いてもよい。また、この時に鱗片状黒鉛が変形されやすいように、黒鉛層間化合物を高温で処理するなどの方法であらかじめ膨張化処理などを施してもよい。この球形化黒鉛は、上記のように球形化されているので、体積あたりの充填性に優れ、体積当たりの電池の容量が高いリチウム二次電池を得ることができる。
鱗片状黒鉛としては、天然黒鉛でも人造黒鉛でもよいが、(002)面の面間隔(d002)が0.336nm以下の高結晶性のものであることが、電池の容量が高くなるため好ましい。中でも天然黒鉛は、結晶性が非常に高く特に好ましい。
上記球形化黒鉛の平均粒子径は5〜30μmが好ましく、10〜20μmがより好ましい。また、上記球形化黒鉛のBET表面積は1〜10m/gが好ましく、1〜5m/gがより好ましい。
上記球形化黒鉛は、リチウムイオンの充放電サイトであるエッジ面を確保しながら、電解液との実質の接触面積を小さくすることができるため、リチウムイオンの充放電反応が速く、かつ電解液の還元分解反応を抑制することができる。
また、上記球形化黒鉛の表面を炭素被覆してなる炭素被覆球形化黒鉛は、上記球形化黒鉛に炭素を化学蒸着する方法によって得ることができる。
また、上記球形化黒鉛の表面を炭素被覆してなる炭素被覆球形化黒鉛は、上記球形化黒鉛の表面に、コールタールピッチ、レーヨン、ポリアクリロニトリル樹脂などに例示される熱分解時に炭素化する有機物を形成した後、熱分解する方法によって得ることもできる。
このうち、炭素を化学蒸着する方法は、負極材料の表面を均一に炭素被覆出来るため好ましい。
炭素を化学蒸着する方法としては、流動床式の反応炉を850〜1200℃に加熱し、 上記球形化黒鉛を、流動化ガスで浮揚させながら、炭素被覆原料の芳香族炭化水素などの有機物を反応炉に導入し熱分解させて、上記球形化黒鉛の表面に沈着させる方法などが例示される。
このようにして得られた炭素被覆球形化黒鉛は、被覆された炭素によって、さらに電解液の還元分解反応を抑制することが出来るため好ましい。また、この場合、炭素の被覆効率を高めるために、あらかじめ上記球形化黒鉛の表面を酸化処理しておいてもよい。このようにすると、炭素の被覆量が数%以下と少なくても均一に被覆することが出来るようになる。
炭素の被覆量は、多すぎると圧縮成型性が悪くなり、リチウム二次電池中への充填密度を高めることが困難になるため、上記球形化黒鉛に対して20wt%以下、さらには10wt%以下であることが望ましい。逆に、被覆炭素量が少な過ぎる場合は、被覆した炭素による電解液の分解抑制作用が弱くなることが考えられるが、本発明のリチウム二次電池では、上記添加剤Aの作用により非水電解液の分解が大幅に抑制されているので、特に問題はない。
第5形態における負極は、リチウムイオンの充放電サイトであるエッジ面を確保しながら、電解液との実質の接触面積を小さくしたものであるため、リチウムイオンの充放電反応が速いという利点を有する。
第5形態において、「鱗片状黒鉛を球形化してなる球形化黒鉛、及び、前記球形化黒鉛の表面を炭素被覆してなる炭素被覆球形化黒鉛からなる群から選択される少なくとも1種」の含有量は、負極活物質全量に対し、好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上である。
第5形態における負極活物質には、「鱗片状黒鉛を球形化してなる球形化黒鉛、及び、前記球形化黒鉛の表面を炭素被覆してなる炭素被覆球形化黒鉛からなる群から選択される少なくとも1種」以外にも、その他の一般的な、リチウムイオンをドーブ・脱ドーブすることが可能な黒鉛材料や非晶質炭素材料を含んでいてもよい。また、金属リチウム、リチウム含有合金、またはリチウムとの合金化が可能なシリコン、シリコン合金、スズ、スズ合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化スズ、酸化シリコン、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属酸化物、遷移金属窒素化物などを含有していてもよい。これらの負極活物質は、2種類以上含有されてもよい。
ここで、非晶質炭素材料として具体的には、ハードカーボン、コークス、1500℃以下に焼成したメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソフェーズピッチを紡糸して得られるメソフェーズピッチカーボンファイバー(MCF)などが例示され、黒鉛材料としては、天然黒鉛、黒鉛化MCMB、黒鉛化MCFなどが例示される。
また、負極活物質粒子間の電子伝導性を向上させるために、カーボンブラック、カーボンウィスカー、貴金属粒子、貴金属繊維を含有させてもよい。
<第6形態>
第6形態に係る負極は、炭素質材料を含む負極活物質を含む負極の一形態である。
第6形態における炭素質材料は、黒鉛、ソフトカーボン、及びハードカーボンからなる群から選択される少なくとも1種を含む。
第6形態については、特許第4080110公報を参照することができる。
一般に、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート等の炭酸エステル系非水溶媒は、一般に電気化学的に比較的安定であると言われている。
しかし、リチウム二次電池において、炭酸エステル系非水溶媒を含む非水電解液を用いた場合には、正極や負極の酸化力、還元力が非常に強いために、これら炭酸エステル系非水溶媒が反応を起こす場合がある。
このような反応が起こると、電極表面に反応生成物が皮膜となって成長し、電池のインピーダンスの増加をもたらす。その結果、特に大電流で放電した時に電圧降下が著しくなり、サイクル特性や負荷特性が悪くなるという問題が生ずる。
上述した点に関し、本発明のリチウム二次電池の負極として第6形態に係る負極を用いた場合には、負極活物質として上記特定の炭素質材料を用いた作用、及び、前述した非水電解液中の添加剤Aの作用により、負極上での非水溶媒の分解反応が抑制される。これにより、電池の負荷特性を向上させることができる。
第6形態における炭素質材料は、黒鉛材料、ソフトカーボン(以下、「易黒鉛化炭素材料」ともいう)、及びハードカーボン(以下、「難黒鉛化炭素材料」ともいう)からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
(難黒鉛化炭素材料(ハードカーボン))
難黒鉛化炭素材料(ハードカーボン)は、3000℃程度で熱処理されても黒鉛化しない炭素材料であり、例えば(002)面の面間隔(d002)が0.37nm以上、真密度が1.70g/cm未満、空気中の示差熱分析(DTA)において700℃以上に発熱ピークを持たない炭素材料である。
この難黒鉛化炭素材料の代表的な例としては、フルフリルアルコール、或いはフルフラールのホモポリマー、コポリマー、また他の樹脂との共重合よりなるフラン樹脂を焼成し、炭素化したものがある。
難黒鉛化炭素材料の製造方法について説明すると、出発原料となる有機材料としては、上記フラン樹脂の他、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ハロゲン化ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセチレン、ポリ(p−フェニレン)等の共役系樹脂、セルロースおよびその誘導体、任意の有機高分子系化合物を用いることができる。また、特定のH/C原子比を有する石油ピッチに酸素を含む官能基を導入(いわゆる酸素架橋)したものも、前記フラン樹脂と同様、炭素化の過程(400℃以上)で溶融することはなく、固相状態のままで最終の難黒鉛化炭素材料となる。
前記石油ピッチとしては、コールタール、エチレンボトム油、原油等の高温熱分解で得られるタール類、アスファルト等より蒸留(真空蒸留、常圧蒸留、スチーム蒸留)、熱重縮合、抽出、化学重縮合等の操作によって得られる。このとき、石油ピッチのH/C原子比が重要で、難黒鉛化性炭素とするためには、このH/C原子比を0.6〜0.8とすることが好ましい。
これらの石油ピッチに酸素を含む官能基を導入する手段は限定されないが、例えば硝酸、混酸、硫酸、次亜塩素酸等の水溶液による湿式法、或いは酸化性ガス(空気、酸素)による乾式法、更に硫黄、硝酸アンモニア、過硫酸アンモニア、塩化第二鉄等の固体試薬による反応などが用いられる。
酸素含有率は、特に限定されないが、特開平3−252053号公報に開示されているように、好ましくは3%以上、更に好ましくは5%以上である。この酸素含有率は、最終的に製造される炭素材料の結晶構造に影響を与え、酸素含有率をこの範囲としたとき(002)面の面間隔(d002)を0.37nm以上、空気気流中でのDTAにおいて700℃以上に発熱ピークを持たず、負極容量を大きくする。
また、特開平2−48184号公報に開示されているリン、酸素、炭素を主成分とする化合物も上述した難黒鉛化性炭素材料と同様の物性パラメータを示し、本発明の電極材料として用いることが可能である。さらに、他のあらゆる有機材料においても、酸素架橋処理等によって固相炭素化過程を経て難黒鉛化炭素となれば使用可能であり、酸素架橋を行うための処理方法は限定されない。
以上の有機材料を用いて炭素材料を得る場合、例えば、300〜700℃で炭化した後、昇温速度毎分1〜100℃、到達温度900〜1300℃、到達温度での保持時間0〜30時間程度の条件で焼成すればよい。勿論、場合によっては炭化操作を省略してもよい。得られた炭素材料は粉砕、分級して負極材料として供されるが、この粉砕は炭化、か焼、高温熱処理の前後、或いは昇温過程のいずれの工程で行ってもよい。
(易黒鉛化炭素材料(ソフトカーボン))
易黒鉛化炭素材料(ソフトカーボン)は、2800〜3000℃程度で熱処理したときに黒鉛化する炭素材料である。
易黒鉛化炭素材料は、例えば、石炭やピッチを、窒素気流中、昇温速度毎分1〜20℃、到達温度900〜1300℃、到達温度での保持時間0〜5時間程度の条件で焼成することにより生成される。ピッチは、コールタール、エチレンボトム油、原油等の高温熱分解で得られるタール類、アスファルト等より蒸留(真空蒸留、常圧蒸留、スチーム蒸留)、熱重縮合、抽出、化学重縮合等の操作によって得られるもの、或いは、木材乾留時に生成するピッチ等である。
また、易黒鉛化炭素材料は、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチラート、3,5−ジメチルフェノール樹脂等の高分子化合物原料を、窒素気流中、300〜700℃で炭化した後、上述と同じ条件で焼成しても生成される。
(黒鉛材料)
黒鉛材料は、いわゆるグラファイトであり、真密度が2.1g/cm以上のものが好ましく、2.18g/cm以上のものがさらに好ましい。そのような真密度を得るには、(002)面の面間隔(d002)が、好ましくは0.340nm未満、さらに好ましくは0.335nm以上、0.337nm以下を満足し、(002)面のC軸結晶子厚みが14.0nm以上であることが好ましい。
また、黒鉛材料はJISK−1469記載の方法による嵩密度が0.4g/cm以上のものを用いることにより長いサイクル寿命が得られる。嵩密度が0.4g/cm以上の黒鉛材料を用いて構成された負極は、良好な電極構造を有し、負極合剤層からの黒鉛材料の剥離、脱落は少なくなる。尚、嵩密度が0.5g/cm以上の黒鉛材料であればより好ましく、0.6g/cm以上であればさらに好ましい。
サイクル寿命をより長くするためには、黒鉛材料として嵩密度が前記の範囲であって、且つ、(6−1)式で示される形状パラメータの平均値が125以下の粉末を用いることが望ましい。
X=(W/T)×(L/T)・・・ (6−1)
ここで、
X:形状パラメータ
T:粉末の最も厚さの薄い部分の厚み
L:粉末の長軸方向の長さ
W:粉末の長軸と直交する方向の長さ
である。
一般に、黒鉛材料の粉末形状は扁平な円柱状、或いは直方体状である。
この黒鉛材料粉末の最も厚さの薄い部分の厚みをT、最も長い部分の長さをL、この部分に直交する方向の長さをWとしたときに、LとWのそれぞれをTで除した値の積が形状パラメータXである。この形状パラメータXが小さいほど、底面積に対する高さが高く、扁平度が小さいことを意味する。
嵩密度が前記の範囲内であって、且つ、このようにして求められる形状パラメータXの平均値(以下、「平均形状パラメータXave.」と称す)が125以下である黒鉛材料粉末を用いて構成された負極は、黒鉛材料の扁平度が低いため、電極構造はさらに良好になっていて、より長寿命のサイクル特性が得られる。黒鉛材料粉末の平均形状パラメータXave.が125以下であれば上記効果を得ることができるが、好ましくは2以上115以下、さらに好ましくは2以上100以下がよい。
また、嵩密度、平均形状パラメータXave.が前記の範囲であって、窒素吸着BET法により求められる比表面積が9m/g以下の黒鉛材料の粉末を用いた場合、さらに長いサイクル寿命を得ることができる。これは、黒鉛粒子に付着したサブミクロンの微粒子が嵩密度の低下に影響していると考えられ、微粒子が付着した場合に比表面積が増加することから、同様の粒度であっても比表面積の小さい黒鉛粉末を用いたほうが微粒子の影響がなく、高い嵩密度が得られ、結果としてサイクル特性が向上する。黒鉛粉末の比表面積が9m/g以下であれば上記効果は十分に得られるが、好ましくは7m/g以下、さらに好ましくは5m/g以下がよい。
また、実用電池として高い安全性および信頼性を得るためには、レーザ回折法により求められる粒度分布において、累積10%粒子径が3μm以上であり、且つ、累積50%粒子径が10μm以上であり、且つ、累積90%粒子径が70μm以下である黒鉛粉末を用いることが望ましい。
黒鉛材料の粉末は、粒度分布に幅をもたせたほうが効率よく充填でき、正規分布により近いほうが好ましい。但し、過充電等の異常事態に電池が発熱することがあり、粒子径の小さな粒子の分布数が多い場合には発熱温度が高くなる傾向にあるため好ましくない。
また、電池を充電する際、黒鉛層間へリチウムイオンが挿入されるため結晶子が約10%膨張し、電池内において正極やセパレータを圧迫して、初充電時に内部ショート等の初期不良が起こりやすい状態となるが、大きな粒子の分布が多い場合には不良の発生率が高くなる傾向にあるため好ましくない。
従って、粒子径の大きな粒子から小さい粒子までバランス良く配合された粒度分布を有する黒鉛粉末を用いることにより、高い信頼性を有する実用電池が可能となる。粒度分布の形状はより正規分布に近いほうが効率よく充填できるが、レーザ回折法により求められる粒度分布において、累積10%粒子径が3μm以上であり、且つ累積50%粒子径が10μm以上であり、且つ累積90%粒子径が70μm以下である黒鉛粉末を用いることが望ましく、特に累積90%粒子径が60μm以下の場合、初期不良が大きく低減される。
また、実用電池としての重負荷特性を向上させるためには、黒鉛粒子の破壊強度の平均値が6.0kgf/mm以上であることが望ましい。負荷特性には放電時のイオンの動き易さが影響するが、特に電極中に空孔が多く存在する場合は、電解液も十分な量が存在するので、良好な特性を示すことになる。
一方、結晶性が高い黒鉛材料はa軸方向に黒鉛六角網面が発達しており、その積み重なりによってc軸の結晶子が成り立っているが、炭素六角網面同志の結合はファンデルワールス力という弱い結合であるため、応力に対して変形しやすく、そのため、黒鉛粉末の粒子を圧縮成形して電極に充填する際、低温で焼成された炭素質材料よりも潰れやすく、空孔を確保することが難しい。従って、黒鉛粉末粒子の破壊強度が高いものを用いることによって、粒子が潰れにくく、従って空孔を作りやすくなるため、負荷特性を向上することが可能となる。
黒鉛材料としては、上述したような結晶性、真密度、嵩密度、形状パラメータX、比表面積、粒度分布、粒子破壊強度を有するものであれば、天然黒鉛であっても、前述したように有機材料を炭素化し、更に高温処理された人造黒鉛であってもよい。
人造黒鉛の製造方法は前述の通りであり、得られた黒鉛材料は粉砕、分級して負極材料として供される。この粉砕は炭化、か焼の前後、或いは黒鉛化前の昇温過程のいずれの工程で行ってもよく、最終的には粉末状態で黒鉛化のための熱処理が行われる。更に、嵩密度が高く、破壊強度の高い黒鉛材料粉末を得るには、炭素材料成型体を熱処理し、黒鉛化して黒鉛化成型体としたものを粉砕、分級することが望ましい。
黒鉛化成型体は、一般にはフィラーとなるコークスと、成型剤、或いは焼結剤としてのバインダーピッチとからなり、それらが混合され成型された後、バインダーピッチを炭素化し、その後、これにピッチを含浸し炭素化、更に黒鉛化されて得られる。また、フィラー自身に成型性、焼結性を付与した原料を用い、同様の黒鉛化成型体を得ることが可能である。黒鉛化成型体は、熱処理後に粉砕、分級されて負極材料に供されるが、成型体自身の硬度が高いため粉砕粉としては嵩密度が高く、破壊強度の高い材料が得られやすい。
また、フィラーとなるコークスとバインダーピッチからなるため、黒鉛化後に多結晶体となり、且つ、原料に硫黄や窒素等の元素を含み熱処理時にガスとなって発散し、そのガスの通り道がミクロな孔となって、負極材料のリチウムのドープ・脱ドープ反応の進行を速めている。更に、工業的に処理効率が高いという利点もある。
第6形態の負極活物質は、上記炭素質材料以外にも、リチウム金属、リチウム−アルミニウム合金等のリチウム合金、リチウムをドープ・脱ドープ可能な材料(ポリアセチレン、ポリピロール等のポリマーや、SnO等の酸化物)を使用することができる。
<第7形態>
第7形態に係る負極は、炭素質材料を含む負極活物質を含む負極の一形態である。
第7形態における炭素質材料は、球状天然黒鉛粒子と黒鉛化可能なバインダーの黒鉛化物とが複合化された複合黒鉛粒子を含み、前記複合黒鉛粒子のBET比表面積で規格化した表面に存在するCO基の量が、1.35μmol/m以上5μmol/m以下、平均円形度が0.85以上0.95以下である。
第7形態については、特許第5268018公報を参照することができる。
第7形態における炭素質材料において、上記複合黒鉛粒子は、下記の要件(a)、(b)、(c)、(d’)、(e)及び(g)よりなる群から選ばれる少なくとも1つを満たすことが好ましい。
(a)表面に、該球状黒鉛粒子の少なくとも一部が露出している複合黒鉛粒子を含有する。
(b)表面近傍に、該球状黒鉛粒子の不完全な積層構造を有する複合黒鉛粒子を含有する。
(c)該球状黒鉛粒子のメジアン径をaとし、該複合黒鉛粒子のメジアン径をbとした時、その比c=a/bが0.93以上である。
(d’)ラマンR値が0.10以上0.30以下、タップ密度が0.87g/cm以上1.25g/cm以下、かつ、BET比表面積が2.5m/g以上8.0m/g以下である。
(e)水銀ポロシメーターで測定された0.01μm以上2μm以下の細孔容積が0.05mL/g以上1mL/g以下である。
(g)該複合黒鉛粒子を用いて下記(i)の条件でスラリーを調製後、圧延銅箔上にドクターブレード法で塗布して乾燥後、活物質層密度1.70g/cm3にプレスした電極の中央部長手方向に、下記(ii)の組成を有する電解液を高さ5cmから5μL滴下させた時に、該電解液が電極上にて完全に消失するまでの時間の平均値が180秒以下である。
(i)スラリーの調製条件
該複合黒鉛粒子を20.00±0.02g、1質量%カルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液を20.00±0.02g、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)水性ディスパーションを0.25±0.02g秤り取り、手で攪拌し、その後遊星回転式のミキサー(ハイブリッドミキサー)にて5分間攪拌、30秒脱泡して調製。
(ii)電解液組成
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とジメチルカーボネート(DMC)の混合溶媒(容量比=2:2:3)に、1.0MのLiPFを含有させ、更にビニレンカーボネート2容量%を添加。
第7形態における炭素質材料において、上記複合黒鉛粒子は、球状天然黒鉛粒子に、黒鉛化可能なバインダーを捏合し、次いで黒鉛化処理をして得られたものであることが好ましい。
また、第7形態における炭素質材料において、上記複合黒鉛粒子は、湾曲又は屈曲した複数の鱗片状又は鱗状黒鉛からなるものであることが好ましい。
また、第7形態における炭素質材料において、上記複合黒鉛粒子は、黒鉛化処理物を粉砕又は磨砕して得られたものであることが好ましい。
第7形態における炭素質材料は、上記複合黒鉛粒子(以下、「複合黒鉛粒子(A)」ともいう)のみからなるものであってもよい。
第7形態における炭素質材料は、複合黒鉛粒子(A)と、複合黒鉛粒子(A)とは形状又は物性の異なる炭素質粒子(以下、「炭素質粒子(B)」ともいう)と、からなるものであってもよい。
炭素質粒子(B)としては、天然黒鉛、人造黒鉛、気相成長性炭素繊維、導電性カーボンブラック、非晶質被覆黒鉛、樹脂被覆黒鉛及び非晶質炭素よりなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
複合黒鉛粒子(A)に対し、炭素質粒子(B)を適宜選択して混合することによって、導電性の向上によるサイクル特性の向上や充電受入性の向上、不可逆容量の低減、また、プレス性の向上が可能となる。
炭素質粒子(B)を混合する場合の量の下限は、負極材料全体に対して、通常0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.6質量%以上であり、上限は、通常80質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。この範囲を下回ると、導電性向上の効果が得にくい場合がある。また上回ると、初期不可逆容量の増大を招く場合がある。
炭素質粒子(B)のうちで、天然黒鉛としては、例えば、高純度化した鱗片状黒鉛や球形化した黒鉛を用いることができる。
天然黒鉛の体積平均粒子径は、通常8μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常60μm以下、好ましくは40μm以下の範囲である。天然黒鉛のBET比表面積は、通常4m/g以上、好ましくは4.5m/g以上、通常9m/g以下、好ましくは5.5m/g以下の範囲である。
人造黒鉛としては、例えば、コークス粉や天然黒鉛をバインダーで複合化した粒子、単一の黒鉛前駆体粒子を粉状のまま焼成、黒鉛化した粒子等を用いることができる。
非晶質被覆黒鉛としては、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛に非晶質前駆体を被覆、焼成した粒子や、天然黒鉛や人造黒鉛に非晶質を表面に被覆した粒子を用いることができる。
樹脂被覆黒鉛としては、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛に高分子材料を被覆、乾燥して得た粒子等を用いることができ、非晶質炭素としては、例えば、バルクメソフェーズを焼成した粒子や、炭素前駆体を不融化処理し焼成した粒子を用いることができる。
このうち、炭素質粒子(B)としては、特に天然黒鉛が、高容量が維持されるので好ましい。
複合黒鉛粒子(A)と、炭素質粒子(B)のうち体積平均粒子径5μm未満の炭素質粒子と、を混合して炭素質材料(又は負極活物質)とする場合、炭素質粒子の含有量は、炭素質材料(又は負極活物質)全量に対し、通常0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.6質量%以上である。
また、複合黒鉛粒子(A)と、炭素質粒子(B)のうち体積平均粒子径5μm以上の炭素質粒子と、を混合して炭素質材料(又は負極活物質)とする場合、炭素質粒子の含有量は、炭素質材料(又は負極活物質)全量に対し、通常0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.6質量%以上である。
いずれの場合においても、炭素質粒子の含有量は、炭素質材料(又は負極活物質)全量に対し、通常95質量%以下、好ましくは80質量%以下の範囲である。
炭素質粒子(B)の混合割合が前記範囲を下回ると、炭素質粒子(B)を添加した上記の効果が現れ難い場合もある。一方、前記範囲を上回ると、複合黒鉛粒子(A)の特性が得られ難い場合もある。
本発明の負極材料は、上記炭素質粒子の物性の項で記載したものと同様に測定したプレス荷重が、5cmあたりに換算して、200kgf/5cm以上が好ましく、250kgf/5cm以上が特に好ましく、300kgf/5cm以上が更に好ましい。また、通常1200kgf/5cm以下、好ましくは1000kgf/5cm以下、特に好ましくは850kgf/5cm以下である。
すなわち、負極材料を100質量部、スチレン・ブタジエンゴムの水分散液を固形分として、2質量部及び重量平均分子量25万〜30万のカルボキシメチルセルロースの水溶液を固形分として1質量部を配合して水系スラリーとし、この水系スラリーを厚さ18μmの銅箔上に、乾燥膜厚10±0.1mg/cmとなるようドクターブレードを用いて塗布して乾燥させた後に、直径20cmのローラを有するロールプレスを用いて、金属製のローラ2つの間に挟んで1回のプレスで、密度1.73±0.03g/cmとなるようプレス荷重を調整して幅5cmの活物質層を形成させるときの該プレス荷重が、上記範囲となることが好ましい。
プレス荷重がこの下限を下回るような負極材料では、粒子がつぶれやすく、極板の活物質層の密度を制御しにくく、電極にした際に浸液性が悪く、浸液速度が小さくなる場合がある。更に、つぶれてリチウムイオンのパスを塞ぐ場合があり、レート特性が低下する場合がある。一方、プレス荷重がこの上限を上回るような負極材料では、活物質層の極板からの剥離が大きくなる傾向があり、更に高い能力のプレス装置が必要となる場合がある。
上記範囲のプレス荷重を有する負極材料の調製方法は特に限定はないが、複合黒鉛粒子(A)については、炭素質粒子種、バインダー量、黒鉛化度等を工夫することによって、また、複合黒鉛粒子(A)と炭素質粒子(B)の混合比を、(A)(B)両粒子の柔らかさの違いに応じて最適化することによって得ることができる。
以下に複合黒鉛粒子(A)の製造方法について説明する。
複合黒鉛粒子(A)は、原料である球状黒鉛粒子、バインダー等を混合し、必要に応じて成形、脱揮発成分焼成、黒鉛化、粉砕、分級を行うことにより製造される。
本製造方法では、特に、以下の工夫点を組み合わせることが好ましい。
原料についての工夫点として、例えば、球状黒鉛粒子の主成分として平均円形度の高い球形化黒鉛を選択することが挙げられる。
また、球状黒鉛粒子とバインダーを捏合するに際し、バインダーであるピッチ等の種類や量を最適化するといった工夫や粉砕時の強度を最適化することが好ましい。
以下、複合黒鉛粒子(A)の好適な製造方法について詳細に説明する。
まず、球状黒鉛粒子及びバインダーを加熱しながら捏合する。この際、所望により黒鉛化触媒を加えてもよい。好適な炭素質粒子、バインダー及び黒鉛化触媒は次の通りである。
−球状黒鉛粒子−
球状黒鉛粒子の主成分としては、塗工性を上げるためタップ密度の高いものを得るという観点から、球形度の高いものが好ましく、球形化天然黒鉛が特に好ましい。通常、X線広角回折法による(002)面の面間隔(d002)が0.340nm以下を示すような結晶性の高い天然黒鉛を原料とするものが例に挙げられる。具体的には天然黒鉛若しくはこれらに機械的粉砕品を加えて円形度を向上させたものが好ましい。
球状黒鉛粒子のレーザー回折/散乱式粒子径分布測定による体積粒子径分布のメジアン径は、特に制限はないが、通常5μm以上、好ましくは6μm以上、特に好ましくは8μm以上、また、通常40μm以下、好ましくは35μm以下、特に好ましくは30μm以下の範囲である。炭素質粒子のメジアン径がこの下限を下回ると、コストアップとなりやすく、上限を上回ると塗工時の不良発生の原因となりやすい。炭素質粒子のメジアン径は、前述の負極材料のメジアン径と同様にして測定することができる。
球状黒鉛粒子の平均粒子径は、目的とする複合黒鉛粒子の0.93倍以上が好ましく、目的とする複合黒鉛粒子の平均粒子径と等倍若しくはそれより大きいものを用いることが特に好ましい。
球状黒鉛粒子は、球形化処理を経て製造されたものが特に好ましい。
球形化処理に用いる装置としては、例えば、衝撃力を主体に粒子の相互作用も含めた圧縮、摩擦、せん断力等の機械的作用を繰り返し粒子に与える装置を用いることができる。具体的には、ケーシング内部に多数のブレードを設置したローターを有し、そのローターが高速回転することによって、内部に導入された炭素材料に対して衝撃圧縮、摩擦、せん断力等の機械的作用を与え、表面処理を行なう装置が好ましい。また、炭素材料を循環させることによって機械的作用を繰り返して与える機構を有するものであるのが好ましい。好ましい装置として、例えば、ハイブリダイゼーションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロン(アーステクニカ社製)、CFミル(宇部興産社製)、メカノフュージョンシステム(ホソカワミクロン社製)、シータコンポーザ(徳寿工作所社製)等が挙げられる。
これらの中で、奈良機械製作所社製のハイブリダイゼーションシステムが好ましい。
この装置を用いて処理する場合は、回転するローターの周速度を30〜100m/秒にするのが好ましく、40〜100m/秒にするのがより好ましく、50〜100m/秒にするのが更に好ましい。また、処理は、単に炭素質物を通過させるだけでも可能であるが、30秒以上装置内を循環又は滞留させて処理するのが好ましく、1分以上装置内を循環又は滞留させて処理するのがより好ましい。
球状黒鉛粒子の平均円形度は、通常0.85以上、好ましくは0.9以上、また、通常1.0以下、好ましくは0.96以下の範囲である。炭素質粒子の平均円形度がこの下限を下回ると、配向度が下がりやすく、上限を上回るとコストアップとなりやすい。球状黒鉛粒子の平均円形度は、前述の負極材料の平均円形度と同様にして測定したものを用いる。
球状黒鉛粒子のタップ密度は、通常0.8g/cm以上、好ましくは0.9g/cm以上、更に好ましくは0.95g/cm以上、また、通常1.35g/cm以下、好ましくは1.2g/cm以下の範囲である。球状黒鉛粒子のタップ密度がこの範囲を下回ると、活物質とした場合の充填密度が上がり難く、高容量の電池が得られない場合がある。一方、この範囲を上回ると、球状黒鉛粒子を歩留まりよく得るのが困難となり、コストアップにつながる場合がある。なお、タップ密度の測定方法は二次電池用複合黒鉛粒子の記載と同様である。ここで、本明細書において、球状黒鉛粒子の「球状」とは、楕円体等の、いわゆる球形に近い形状も含む形状を意味する。
−黒鉛化可能なバインダー−
「黒鉛化可能なバインダー」(以下、単に「バインダー」と記載することがある)としては、具体的には、含浸ピッチ、バインダーピッチ、コールタールピッチ、石炭液化油等の石炭系重質油、アスファルテン等の直留系重質油、エチレンヘビーエンドタール等の分解系重質油等の石油系重質油等が挙げられる。
バインダー中に含まれるキノリン不溶成分は通常0〜10質量%であるが、少なければ少ないほど固さや電池にした時の容量の点で好ましい。バインダーのキノリン不溶成分の含有量が多すぎると、得られる複合黒鉛粒子の強度が高くなり、負極集電体に塗布された活物質層をプレスしても粒子が変形せず、高密度化するのが困難となる傾向があり、また、容量も低下する場合がある。
バインダーは、炭化・黒鉛化により得られる黒鉛化処理を経た複合黒鉛粒子に占めているバインダー由来のものの比率が通常1質量%以上、好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上となるように用いる。その上限としては、この比率が通常60質量%以下、好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下となる量である。バインダー量が多すぎると、バインダー由来の非晶質部分が最終生成物中で多くなるため、電池にしたときの電池容量が低下する場合がある。また、得られる複合黒鉛粒子が堅くなるため、負極集電体に塗布された活物質層をプレスした際、バインダー由来部分ではなく、炭素質粒子由来の黒鉛質粒子そのものの破壊が起きやすくなる。一方、バインダー量が少なすぎると、得られる複合黒鉛粒子が柔らかくなりすぎ、良好な充放電特性が得られない場合がある。
複合黒鉛粒子中のバインダー量は、捏合以前の段階で添加するバインダーの量によってコントロールする。例えばJIS K2270記載の方法で求めたバインダーの残炭率がp%である場合には所望の量の100/p倍のバインダーを添加することとなる。
なお、ピッチ、タール等のバインダー添加の際の工夫としては、極力、低温、短時間で均一に分散させることが初期不可逆容量低減、プレス荷重低減のために好ましい。分散を低温、短時間で行うためには炭素質粒子が壊れない程度に攪拌を強めればよい。
−黒鉛化触媒−
充放電容量の増加とプレス性の改良のために、炭素質粒子とバインダーの混合に際し、黒鉛化触媒を添加してもよい。
黒鉛化触媒としては、鉄、ニッケル、チタン、ケイ素、ホウ素等の金属及びこれらの炭化物、酸化物、窒化物等の化合物が挙げられる。なかでも、ケイ素、ケイ素化合物、鉄、鉄化合物が好ましく、ケイ素化合物のなかでは炭化珪素、鉄化合物のなかでは酸化鉄が特に好ましい。
黒鉛化触媒としてケイ素やケイ素化合物を用いた場合、加熱により生成する炭化ケイ素が2800℃以上の温度ですべて熱分解して結晶性の極めて良好な黒鉛を成長させ、かつケイ素が揮散する時に黒鉛結晶間に細孔が形成されるので、粒子内部のリチウムイオンの電荷移動反応と拡散とを助長し電池性能を向上させることができる。また、黒鉛化触媒として鉄又はその化合物を用いた場合、炭素の触媒への溶解、析出の機構により結晶性の良好な黒鉛を成長させ、ケイ素と同様な効果を発現することができる。
これらの黒鉛化触媒の添加量は、原料としての炭素質一次粒子に対して通常30質量%以下、好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。黒鉛化触媒が多すぎると、黒鉛化が進みすぎ、リチウム二次電池製造時の特性、特に浸液性が充分でないといった問題が生じる場合がある。同時に、複合黒鉛粒子内に細孔を生成させるためか、粒子の強度が低下し、その結果極板作製時のプレス工程において表面が平滑化し、イオンの移動を阻害する場合もある。
一方、黒鉛化触媒が少なすぎると、黒鉛化が不十分でリチウム二次電池にした時の充放電容量の低下の問題があり、また、極板作製時のプレス工程において高圧力を必要とし高密度化するのが困難となる場合もある。更に、複合黒鉛粒子内に適量の細孔が存在しないためか、粒子の強度が高くなりすぎ、負極集電体に塗布された活物質層を所定の嵩密度にプレス成形するときに高圧力を必要とし、負極活物質層を高密度化するのが困難となる場合がある。
−捏合(混合)−
炭素質粒子、バインダー及び所望により添加された黒鉛化触媒等の原料は、まず、加熱下で捏合される。
これにより、炭素質粒子及び捏合温度では溶融しない原料に液状のバインダーが添着された状態となる。この場合、捏合機に全原料を仕込んで捏合と昇温を同時に行ってもよいし、捏合機にバインダー以外の成分を仕込んで攪拌状態で加熱し、捏合温度まで温度が上がった後に常温又は加硫溶融状態のバインダーを仕込んでもよい。
加熱温度は、バインダーの軟化点以上であり、加熱温度が低すぎると、バインダーの粘度が高くなり、混合が困難となるので、通常軟化点より10℃以上高い温度、好ましくは軟化点より20℃以上高い温度で行われる。加熱温度が高すぎるとバインダーの揮発と重縮合によって混合系の粘度が高くなりすぎるので、通常300℃以下、好ましくは250℃以下である。
捏合機は撹拌翼をもつ機種が好ましく、撹拌翼はZ型、マチスケータ型といった汎用的なものを用いることができる。
捏合機に投入する原料の量は、通常混合機容積の10体積%以上、好ましくは15体積%以上で、50体積%以下、好ましくは30体積%以下である。捏合時間は5分以上必要であり、最長でも揮発分の揮散による大きな粘性の変化を来たす時間までで、通常は30〜120分である。捏合機は捏合に先立ち捏合温度まで予熱しておくことが好ましい。
−成形−
得られた捏合物は、そのまま、揮発成分(以下、「VM」と略記する)の除去と炭化を目的とする脱VM焼成工程に供してもよいが、ハンドリングしやすいように、成形してから脱VM焼成工程に供することが好ましい。
成形方法は形状を保持することが可能であれば特に制限はなく、押し出し成形、金型成形、静水圧成形等を採用することができる。このうち、成形体内で粒子が配向し易い押し出し成形や、粒子の配向はランダムに保たれるが生産性に問題がある静水圧成形より、比較的操作が容易であり、また、捏合でランダムな配向となった構造を破壊せずに成形体を得ることができる金型成形が好ましい。
成形温度は、室温(冷間)、加熱下(熱間、バインダーの軟化点以上の温度)のどちらでもよい。冷間で成形する場合は、成形性の向上と成形体の均一性を得るために、捏合後冷却された混合物を予め最大寸法が1mm以下に粗砕することが望ましい。成形体の形状、大きさは特に制限は無いが、熱間成形では、成形体が大きすぎると成形に先立つ均一な予熱を行うのに時間がかかる問題があるので、通常最大寸法で150cm程度以下の大きさとすることが好ましい。
成形圧力は、圧力が高すぎると成形体の細孔を通しての脱揮発成分除去(脱VM)が困難となり、かつ真円ではない炭素質粒子が配向し、後工程における粉砕が難しくなる場合があるので、成形圧力の上限は、通常3tf/cm(294MPa)以下、好ましくは500kgf/cm(49MPa)以下、更に好ましくは10kgf/cm(0.98MPa)以下である。下限の圧力は特に制限はないが、脱VMの工程で成形体の形状を保持できる程度に設定することが好ましい。
−脱VM焼成−
得られた成形体は、炭素質粒子及びバインダーの揮発成分(VM)を除去して、黒鉛化時の充填物の汚染、充填物の成形体への固着を防ぐために、脱VM焼成を行う。脱VM焼成は、通常600℃以上、好ましくは650℃以上で、通常1300℃以下、好ましくは1100℃以下の温度で、通常0.1時間〜10時間行う。加熱は、酸化を防止するために、通常、窒素、アルゴン等不活性ガスの流通下又はブリーズ、パッキングコークス等の粒状炭素材料を間隙に充填した非酸化性雰囲気で行う。
脱VM焼成に用いる設備は、電気炉やガス炉、電極材用リードハンマー炉等、非酸化性雰囲気で焼成可能であれば特に限定されない。加熱時の昇温速度は揮発分の除去のために低速であることが望ましく、通常、低沸分の揮発が始まる200℃付近から水素の発生のみとなる700℃近傍までを、3〜100℃/hrで昇温する。
−黒鉛化−
脱VM焼成により得られた炭化物成形体は、次いで、高温で加熱して黒鉛化する。
黒鉛化時の加熱温度は、通常2600℃以上、好ましくは2800℃以上で加熱する。また、加熱温度が高過ぎると、黒鉛の昇華が顕著となるので、3300℃以下が好ましい。加熱時間は、バインダー及び炭素質粒子が黒鉛となるまで行えばよく、通常1〜24時間である。
黒鉛化時の雰囲気は、酸化を防止するため、窒素、アルゴン等の不活性ガスの流通下又はブリーズ、パッキングコークス等の粒状炭素材料を間隙に充填した非酸化性雰囲気下で行う。黒鉛化に用いる設備は、電気炉やガス炉、電極材用アチソン炉等、上記の目的に添うものであれば特に限定されず、昇温速度、冷却速度、熱処理時間等は使用する設備の許容範囲で任意に設定することができる。
−粉砕−
このようにして得られた黒鉛化処理物は、通常はこのままでは本発明の要件を満たさないので、粉砕もしくは磨砕を行う。その工程は粗粉砕、中粉砕、微粉砕の3工程に大別される。
黒鉛化処理物の粉砕・磨砕方法は特に制限はないが、粉砕・磨砕の手段としては、機械的に摩砕する手段、例えば、ボールミル、ハンマーミル、CFミル、アトマイザーミル、パルペライザー等、風力を利用した粉砕手段、例えば、ジェットミル等が例示される。粗粉砕、中粉砕については、ジョークラッシャ、ハンマーミル、ローラミル等の衝撃力による粉砕方式を用いてもよい。ここで、粉砕のタイミングは、黒鉛化前であっても黒鉛化後であってもよい。後者の方がルツボ詰め等の作業が不要で安価に製造できるので、より好ましい。
−粗粉砕、中粉砕−
本発明に記載の要件を満たすためには、該黒鉛化処理物の粗粉砕・中粉砕においては、例えば「オリエント工業社製VM−32型粉砕機」を用いる場合には、黒鉛化処理物をベルト搬送式のフィーダーにて、300kg/分のスピードで粉砕機に搬入し、粉砕羽根回転数を1000回転/分以上にて粉砕・磨砕する。また本粉砕段階で過度な粉砕・磨砕を行なうと、黒鉛化処理物の粒子表面に多くの微粉が発生し、この微粉により粉砕処理品を塗布した電極にて電池を作製した場合に初回充放電時の不可逆容量が増加する場合がある。
−微粉砕−
また、微粉砕においては、例えば「ターボ工業社製TB−250型粉砕機」を用いる場合には、黒鉛化処理物を定量式のスパイラルフィーダーにて、50kg/分、55kg/分又は60kg/分で搬入して粉砕する。粉砕機への黒鉛化処理物の搬入速度を高めると、粉砕羽根回転数を一定にした場合、粉砕後の黒鉛化処理物の比表面積は低下する場合がある。
微粉砕時の粉砕羽根回転数は、例えば「ターボ工業社製TB−250型粉砕機」を用いる場合は、6450回転/分、7800回転/分又は8000回転/分にて粉砕する。微粉砕時に粉砕機の粉砕羽根回転数を高めると、黒鉛化処理物の搬入速度を一定にした場合、粉砕後の黒鉛化処理物の比表面積は増加する。
−分級−
得られた粉砕又は磨砕物から必要に応じ大径粒状物・小径粒状物(微紛)除去を行ってもよい。
大径粒状物を除去することにより短絡の発生や、塗布時のむらが減少することがある。また小径粒状物(微紛)を除去することにより、初期不可逆容量が減少することがある。また、大径粒状物や微紛の除去により、レーザー回折/散乱式粒子径測定による体積粒子径分布において、粒子径100μm以上のものが全体の3体積%以下、かつ、粒子径1μm以下のものが全体の1体積%以下となるように整粒することが望ましい。
大径粒状物・小径粒状物を除去する方法としては、種々あるが、篩分け及び分級により除去することが、機器の簡易性、操作性及びコスト面で好ましい。更に、篩分け又は分級は、複合黒鉛粒子の粒度分布及び平均粒子径が、黒鉛化及び該粒状物の除去により変化するのを必要に応じ再調整できるという利点がある。
大径粒状物除去のための篩分けには、網面固定式、面内運動式、回転ふるい式等があるが、処理能力の点から、網面固定式の中のブロースルー型の篩が特に好ましい。使用する篩い目の目開きのサイズは、80μm以下、30μm以上のものであれば使用可能であり、除去する粒状物の生成状況(特に量及び粒子径)と、複合黒鉛粒子の粒度分布及び平均粒子径の調整要求に合わせ適宜選択し使用する。該サイズが80μmを越えると、該粒状物の除去が不充分となり、30μm未満の場合、複合黒鉛粒子を過剰に除去することにつながり、製品ロスが多く生じるとともに、粒度分布の調整も困難になる場合がある。なお、汎用のサイズとして市販されている目開きが45μm、38μmの篩い目が好ましく使用できる。
分級は、風力分級、湿式分級、比重分級等の方法で行うことができ、100μm以上の粒状物を除去するには特に限定されないが、複合黒鉛粒子の性状への影響及び複合黒鉛粒子の粒度分布及び平均粒子径も調整することを考慮すると、旋回流分級機等の風力分級機の使用が好ましい。この場合、風量と風速を制御することで、上記篩い目の目開きのサイズを調整するのと同様に、該粒状物の除去と複合黒鉛粒子の粒度分布及び平均粒子径を調整することができる。
<第8形態>
第8形態に係る負極は、金属化合物系材料を含む負極活物質を含む負極の一形態である。
第8形態における金属化合物系材料は、後述の一般式(T1)で表されるチタン酸化物を含む。
第8形態については、特許第4855331号公報を参照することができる。
従来より、チタン酸化物系材料を負極活物質とするリチウム二次電池が開発されている。
チタン酸化物は、充放電サイクル特性に優れた材料であり、チタン酸化物系材料を負極活物質とするリチウム二次電池は、充電時のリチウムデンドライトの析出等がほとんど起らないため、耐久性及び安全性に優れている。
そのため、電気自動車やハイブリッド電気自動車用電源用のリチウム二次電池を考えた場合、チタン酸化物を用いた電池は、安全性が高いという観点だけでなく、制動時の回生エネルギーの回収効率が高くなるという観点からも非常に有望視されている。
また、車載用の電池としては、−30℃程度の低温から60℃程度の高温の温度条件で繰り返し充放電しても容量劣化が小さいことに加えて、電池の内部抵抗上昇が小さいことが求められる。
しかしながら、チタン酸化物系材料を負極活物質として用いた場合には、負極が多孔質となり、黒鉛等の炭素質材料に比べると、負極に水分が混入し易くなる。
一方、電解質として用いられ得るLiPFは、電池系内の微量の水と反応してフッ化水素(HF)を生成する。このHFは電池内の構成材料に悪影響を与え、電池特性を低下させるという問題がある。チタン酸化物系材料を負極活物質として適用することによってこの影響はさらに大きくなる。また、特に、高温環境下においてはHFによる悪影響が大きくなるため、車載用途としては大きな問題となる。
一方、前述のとおり、本発明のリチウム二次電池の負極として第8形態に係る負極を用いた場合には、前述した非水電解液中の添加剤Aの作用により、負極上での非水溶媒の分解反応が抑制されることにより、保存後の容量維持率が向上する。
特に、本発明における非水電解液が、電解質(以下、「主成分電解質」ともいう)としてLiPFを含有し、かつ、添加剤として、前述の、ジフルオロリン酸リチウム、モノフルオロリン酸リチウム、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム、トリス(オキサラト)リン酸リチウム、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム、ビスオキサラトホウ酸リチウム、及び添加剤Cからなる群から選択される少なくとも1種(以下、「副成分電解質」ともいう)を含有する場合には、上述した、負極への水分の混入が抑制される。
これにより、高温環境下において充放電を繰り返し行ったときに、放電容量が低下し難く、内部抵抗が上昇し難くなる。
本発明における非水電解液が副成分電解質を含有する場合に、上述した、負極への水分の混入が抑制される理由は、副成分電解質が、非水電解液中に含まれる微量の水分を捕獲できるため、と考えられる。
従って、本発明における非水電解液が副成分電解質を含有する場合には、水分が存在することによって発生する不具合を回避することができる。具体的には、LiPFからなる主成分電解質と水分とが反応してHFが発生することを防止することができる。そのため、HFによって活物質や負極集電体等が腐食されることを抑制することができ、充放電を繰り返したときにおける容量等の電池特性の低下を抑制することができる。
さらに、第8形態に係る負極を用いることにより、本発明における非水電解液が副成分電解質を含有する場合であっても、上記副成分電解質が分解されて負極上に分解被膜が形成されてしまうことを防止することができる。
即ち、第8形態に係る負極では、1.4〜1.8V(vs.Li+/Li)程度という比較的酸化還元電位が高いチタン酸化物を負極活物質として用いているため、充放電時に、上記副成分電解質の分解が起り難くなる。よって、上記副成分電解質は、分解して被膜を形成することがほとんどなく、水分に対するトラップ剤としての機能を十分に発揮することができる。
それ故、リチウム二次電池においては、高温環境下において充放電を繰り返し行ったときに、放電容量が低下し難く、内部抵抗が上昇し難くなる。
第8形態における金属化合物系材料は、下記一般式(T1)で表されるチタン酸化物を含む。
LiTi ・・・ (T1)
〔一般式(T1)中、Aは、遷移金属元素、周期律表におけるLi以外の第1族元素(長周期表でいうIA族元素)、第2族元素(長周期表でいうIIA族元素)、及び第13族元素(長周期表でいうIIIB族元素)からなる群から選択される少なくとも1種の元素を表す。
一般式(T1)中、x、y、及びzは、0≦x≦3、0≦y≦1.3、1≦z≦2.5を満たす値を表す。〕
一般式(T1)で表されるチタン酸化物は、リチウムチタン複合酸化物である。
第8形態における金属化合物系材料が、一般式(T1)で表されるチタン酸化物を含むことにより、上記副成分電解質の分解を起り難くすることができる。
一般式(T1)におけるx、y、及びzの値がそれぞれ上述の範囲から外れる場合には、電池性能が劣化する場合がある。
第8形態における金属化合物系材料は、一般式(T1)で表されるチタン酸化物として、TiO、Li0.8Ti2.2、LiTi、Li1.33Ti1.67、Li1.14Ti1.71、及びLiCrTiOから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。これにより、上記副成分電解質の分解をより起り難くすることができる。
第8形態における負極は、公知の構成とすることができ、例えば、負極集電体と、その表面に形成された負極活物質層と、によって構成することができる。
上記負極活物質層は、例えば、以下の方法によって形成することができる。
即ち、一般式(T1)で表されるチタン酸化物を含む金属化合物系材料を含む負極活物質と、バインダーと、導電性を向上させるためのカーボン等の導電助剤と、溶媒と、を混合し、スラリー状の負極合材を得る。この負極合材を、負極集電体の表面に塗布、乾燥し、その後圧縮することにより形成することができる。
また、第8形態における負極としては、上記負極合材をプレス成形して得られるペレット電極等を用いることもできる。
上記バインダーは、上記活物質粒子間を連結し、上記負極活物質層を上記集電体に繋ぎ止める役割を果たすものであり、高分子材料が用いられる。
該高分子材料には、上記非水電解液に用いられる上記非水溶媒に対する耐性、電池反応が進行する電位に対する安定性、及び耐熱性等が要求される。そのため、上記バインダーの高分子材料としては、例えばポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂、スチレン−ブタジエン系ゴム、ポリアクリロニトリル等を用いることができる。これらの高分子材料は、1種を単独で用いることもできるが、2種以上を併用することもできる。
また、上記負極活物質及び上記バインダーを分散させる溶剤としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。
上記負極活物質層は、上記負極活物質を50〜98質量%、上記導電助剤を30〜1質量%、上記バインダーを20〜1質量%含有することが好ましい。
上記負極活物質が50質量%未満の場合には、容量等の電池性能が低下するおそれがある。一方、98質量%を越える場合には、バインダー量が不充分になって負極活物質の粒子が十分に結着されず、上記負極活物質層から滑落したり、導電助剤量が不充分になって導電性が低下するおそれがある。
また、上記導電助剤が30質量%を超える場合には、負極活物質量が不十分になって容量等の電池性能が低下したり、バインダー量が不十分になって負極活物質の粒子が滑落するおそれがある。一方、導電助剤が1質量%未満の場合には、導電性が不十分になるおそれがある。また、上記バインダーが20質量%を越える場合には、負極活物質量が不十分になって容量等の電池性能が低下したり、導電助剤量が不充分になって導電性が低下するおそれがある。また、バインダーが1質量%未満の場合には、負極活物質の粒子が十分に結着されず、上記負極活物質層から滑落するおそれがある。
より好ましくは、上記負極活物質層は、上記負極活物質を70〜96質量%、上記導電助剤を15〜2質量%、上記バインダーを15〜2質量%含有することがよい。
また、上記負極集電体は、例えば金属等の導電性材料からなるものであり、負極活物質層と外部の負荷との間の電子の移動を媒介する。
上記導電性材料としては、電池反応が進行する電位において、リチウムと合金を形成しない材料を用いることが好ましい。具体的には、例えばニッケル、アルミニウム、チタン、ステンレス等を用いることができる。これらのうち1種を単独で用いてもよいが、2種以上を併用することもできる。より好ましくは、上記負極集電体は、アルミニウム又はニッケルからなることがよい。
本発明のリチウム二次電池が、上述の第8形態に係る負極を備える場合であって、非水電解液中に主成分電解質(LiPF)と副成分電解質とが含まれる場合には、容量維持率を顕著に向上させることができる共に抵抗増加率を顕著に抑制することができる。
特に、上述の場合には、負極活物質としてチタン酸化物を用いることにより、負極活物質として黒鉛を用いた場合と比較して、副成分電解質による、容量維持率の向上効果及び抵抗増加率の抑制効果が顕著に増大する。
<第9形態>
第9形態に係る負極は、金属化合物系材料を含む負極活物質を含む負極の一形態である。
第9形態における金属化合物系材料は、後述の一般式(T11)で表されるチタン酸化物を含む。
第9形態については、特許第5353923号公報を参照することができる。
本発明のリチウム二次電池が、第9形態に係る負極を備える場合も、本発明のリチウム二次電池が、第8形態に係る負極を備える場合と同様の効果が得られる。
第9形態における金属化合物系材料は、下記一般式(T11)で表されるチタン酸化物を含む。これにより、出力抵抗が大きく低減する。
LiTi ・・・ (T11)
〔一般式(T11)中、Mは、Na、K、Co、Al、Fe、Ti、Mg、Cr、Ga、Cu、Zn及びNbからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。
一般式(T11)中、x、y、及びzは、0.7≦x≦1.5、1.5≦y≦2.3、0≦z≦1.6を満たす値を表す。
一般式(T11)で表されるチタン酸化物は、リチウムチタン複合酸化物である。
一般式(T11)で表されるチタン酸化物は、スピネル構造を有することが好ましい。これにより、出力抵抗が大きく低減するので特に好ましい。
一般式(T11)中、x、y、及びzが上記範囲であることにより、一般式(T11)で表されるチタン酸化物に対し、リチウムイオンがドープ・脱ドープされたときの構造を安定的に保つことができる。
一般式(T11)中、x、y、及びzの組み合わせとしては、電池性能のバランスをより良好に保つ観点から、下記(a)〜(c)の組み合わせが好ましい。
(a)1.2≦x≦1.4、1.5≦y≦1.7、z=0
(b)0.9≦x≦1.1、1.9≦y≦2.1、z=0
(c)0.7≦x≦0.9、2.1≦y≦2.3、z=0
一般式(T11)中におけるx、y、及びzの組み合わせが上記(a)である場合の具体例としては、Li4/3Ti5/3が挙げられる。
一般式(T11)中におけるx、y、及びzの組み合わせが上記(b)である場合の具体例としては、LiTiが挙げられる。
一般式(T11)中におけるx、y、及びzの組み合わせが上記(c)である場合の具体例としては、Li4/5Ti11/5が挙げられる。
また、一般式(T11)中において、z≠0である場合の具体例としては、Li4/3Ti4/3Al1/3が挙げられる。
一般式(T11)で表されるチタン酸化物は、上記した要件に加えて、更に、下記の(1)〜(13)に示した物性及び形状等の特徴の内、少なくとも1種を満たしていることが好ましく、2種以上を同時に満たすことが特に好ましい。
−(1)BET比表面積−
一般式(T11)で表されるチタン酸化物のBET比表面積は、BET法を用いて測定した比表面積の値が、0.5m・g−1以上が好ましく、0.7m・g−1以上がより好ましく、1.0m・g−1以上が更に好ましく、1.5m・g−1以上が特に好ましく、また、200m・g−1以下が好ましく、100m・g−1以下がより好ましく、50m・g−1以下が更に好ましく、25m・g−1以下が特に好ましい。
BET比表面積が、上記範囲を下回ると、負極と非水電解液との反応面積が減少し、出力抵抗が増加する場合がある。一方、上記範囲を上回ると、チタン酸化物の結晶の表面や端面の部分が増加し、また、これに起因して、結晶の歪も生じるため、不可逆容量が無視できなくなり、好ましい電池が得られにくい場合がある。
第9形態におけるBET比表面積の測定方法は、第1形態におけるBET比表面積の測定方法と同様である。
−(2)体積平均粒子径−
一般式(T11)で表されるチタン酸化物の体積平均粒子径(一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には二次粒子径)は、レーザー回折・散乱法により求めた体積の平均粒子径(メジアン径)で定義される。
一般式(T11)で表されるチタン酸化物の体積平均粒子径は、通常0.1μm以上であり、0.5μm以上が好ましく、0.7μm以上が更に好ましく、また、通常50μm以下であり、40μm以下が好ましく、30μm以下が更に好ましく、25μm以下が特に好ましい。
体積平均粒子径が、上記範囲を下回ると、電極作製時に多量のバインダーが必要となり、結果的に電池容量が低下する場合がある。また、上記範囲を上回ると、電極極板化時に、不均一な塗面になりやすく、電池製作工程上望ましくない場合がある。
第9形態における体積平均粒子径の測定方法は、第1形態における体積平均粒子径の測定方法と同様である。
−(3)平均一次粒子径−
一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合においては、一般式(T11)で表されるチタン酸化物の平均一次粒子径が、通常0.01μm以上であり、0.05μm以上が好ましく、0.1μm以上が更に好ましく、0.2μm以上が特に好ましく、また、通常2μm以下であり、1.6μm以下が好ましく、1.3μm以下が更に好ましく、1μm以下が特に好ましい。
平均一次粒子径が、上記範囲を上回ると、球状の二次粒子を形成し難く、粉体充填性に悪影響を及ぼしたり、比表面積が大きく低下したりするために、出力特性等の電池性能が低下する可能性が高くなる場合がある。また、上記範囲を下回ると、通常、結晶が未発達になるために充放電の可逆性が劣る等、二次電池の性能を低下させる場合がある。
なお、平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により測定される。具体的には、粒子が確認できる倍率、例えば10000〜100000倍の倍率の写真で、水平方向の直線に対する一次粒子の左右の境界線による切片の最長の値を、任意の50個の一次粒子について求め、平均値をとることにより求められる。
−(4)形状−
一般式(T11)で表されるチタン酸化物の粒子の形状は、従来用いられるような、塊状、多面体状、球状、楕円球状、板状、針状、柱状等が用いられるが、中でも一次粒子が凝集して、二次粒子を形成して成り、その二次粒子の形状が球状ないし楕円球状であるものが好ましい。
通常、電気化学素子はその充放電に伴い、電極中の活物質が膨張収縮をするため、そのストレスによる活物質の破壊や導電パス切れ等の劣化がおきやすい。そのため一次粒子のみの単一粒子の活物質であるよりも、一次粒子が凝集して、二次粒子を形成したものである方が膨張収縮のストレスを緩和して、劣化を防ぐためである。
また、板状等軸配向性の粒子であるよりも、球状又は楕円球状の粒子の方が、電極の成形時の配向が少ないため、充放電時の電極の膨張収縮も少なく、また電極を作製する際の導電材との混合においても、均一に混合されやすいため好ましい。
−(5)タップ密度−
一般式(T11)で表されるチタン酸化物のタップ密度は、0.05g・cm−3以上が好ましく、0.1g・cm−3以上がより好ましく、0.2g・cm−3以上が更に好ましく、0.4g・cm−3以上が特に好ましく、また、2.8g・cm−3以下が好ましく、2.4g・cm−3以下が更に好ましく、2g・cm−3以下が特に好ましい。
タップ密度が、上記範囲を下回ると、負極として用いた場合に充填密度が上がり難く、また粒子間の接触面積が減少するため、粒子間の抵抗が増加し、出力抵抗が増加する場合がある。また、上記範囲を上回ると、電極中の粒子間の空隙が少なくなり過ぎ、非水電解液の流路が減少することで、出力抵抗が増加する場合がある。
第9形態におけるタップ密度の測定方法は、第1形態におけるタップ密度の測定方法と同様である。
−(6)円形度−
一般式(T11)で表されるチタン酸化物の球形の程度として、円形度を測定した場合、以下の範囲に収まることが好ましい。
第9形態における円形度の測定方法は、第1形態における円形度の測定方法と同様である。
一般式(T11)で表されるチタン酸化物の円形度は、1に近いほど好ましく、通常0.10以上であり、0.80以上が好ましく、0.85以上が更に好ましく、0.90以上が特に好ましい。高電流密度充放電特性は、円形度が大きいほどが向上する。従って、円形度が上記範囲を下回ると、負極活物質の充填性が低下し、粒子間の抵抗が増大して、短時間高電流密度充放電特性が低下する場合がある。
−(7)アスペクト比−
一般式(T11)で表されるチタン酸化物のアスペクト比は、通常1以上、また、通常5以下であり、4以下が好ましく、3以下が更に好ましく、2以下が特に好ましい。アスペクト比が、上記範囲を上回ると、極板化時にスジ引きや、均一な塗布面が得られず、短時間高電流密度充放電特性が低下する場合がある。なお、上記範囲の下限は、 一般式(T11)で表されるチタン酸化物のアスペクト比の理論下限値である。
第9形態におけるアスペクト比の測定方法は、第1形態におけるアスペクト比の測定方法と同様である。
−(8)負極活物質の製造法−
一般式(T11)で表されるチタン酸化物の製造法としては、本発明の要旨を超えない範囲で特には制限されないが、いくつかの方法が挙げられ、無機化合物の製造法として一般的な方法が用いられる。
例えば、酸化チタン等のチタン原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質とLiOH、LiCO、LiNO等のLi源を均一に混合し、高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
特に球状又は楕円球状の活物質を作成するには種々の方法が考えられる。一例として、酸化チタン等のチタン原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、攪拌をしながらpHを調節して球状の前駆体を作成回収し、これを必要に応じて乾燥した後、LiOH、LiCO、LiNO等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
また、別の例として、酸化チタン等のチタン原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これにLiOH、LiCO、LiNO等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
更に別の方法として、酸化チタン等のチタン原料物質と、LiOH、LiCO、LiNO等のLi源と、必要に応じ他の元素の原料物質とを水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これを高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
また、これらの工程中に、Ti以外の元素、例えば、Al、Mn、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、C、Si、Sn、Agを、チタンを含有する金属酸化物構造中及び/又はチタンを含有する酸化物に接する形で存在していることも可能である。これらの元素を含有することで、電池の作動電圧、容量を制御することが可能となる。
−(9)負極の製造−
負極の製造は、公知の何れの方法を用いることができる。
第9形態における負極の製造の好ましい態様は、第1形態における負極の製造の好ましい態様と同様である。
−(10)負極集電体−
負極活物質を保持させる負極集電体としては、公知のものを任意に用いることができる。
第9形態における負極集電体の好ましい態様は、第1形態における負極集電体の好ましい態様と同様である。
−(11)負極集電体と活物質層の厚さの比−
第9形態における負極集電体と活物質層との厚さの比の好ましい範囲は、第1形態における負極集電体と活物質層との厚さの比の好ましい範囲と同様である。
−(12)負極活物質の密度−
第9形態における負極活物質の密度の好ましい態様は、第1形態における負極活物質の密度の好ましい態様と同様である。
−(13)バインダー−
第9形態におけるバインダーの好ましい態様は、第1形態における負極活物質の密度の好ましい態様と同様である。
〔正極〕
前記正極を構成する正極活物質としては、MoS、TiS、MnO、Vなどの遷移金属酸化物又は遷移金属硫化物、LiCoO、LiMnO、LiMn、LiNiO、LiNiCo(1−X)〔0<X<1〕、LiNiCoMn〔x+y+z=1、0<x<1、0<y<1、0<z<1〕、LiFePOなどのリチウムと遷移金属とからなる複合酸化物、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリアセン、ジメルカプトチアジアゾール、ポリアニリン複合体などの導電性高分子材料等が挙げられる。これらの中でも、特にリチウムと遷移金属とからなる複合酸化物が好ましい。負極がリチウム金属又はリチウム合金である場合は、正極として炭素材料を用いることもできる。また、正極として、リチウムと遷移金属との複合酸化物と、炭素材料と、の混合物を用いることもできる。
上記の正極活物質は、1種類で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。正極活物質は導電性が不充分である場合には、導電性助剤とともに使用して正極を構成することができる。導電性助剤としては、カーボンブラック、アモルファスウィスカー、グラファイトなどの炭素材料を例示することができる。
本発明における正極は、好ましくは、上述した正極活物質を含有する正極活物質層を備える。かかる正極活物質層は、例えば、公知の正極集電体上に設けることができる。
正極の好ましい構成及び好ましい作製方法については、負極活物質を正極活物質に変更すること以外は、基本的に、前述した負極の好ましい構成及び好ましい作製方法と同様である。
正極集電体の材質としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料が好ましく、アルミニウムが特に好ましい。
〔セパレータ〕
本発明のリチウム二次電池は、正極と負極との間に、セパレータを備えることができる。
上記セパレータは、正極と負極とを電気的に絶縁し且つリチウムイオンを透過する膜であって、多孔性膜や高分子電解質が例示される。
上記多孔性膜としては微多孔性高分子フィルムが好適に使用され、材質としてポリオレフィン、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル等が例示される。
特に、多孔性ポリオレフィンが好ましく、具体的には多孔性ポリエチレンフィルム、多孔性ポリプロピレンフィルム、又は多孔性のポリエチレンフィルムとポリプロピレンフィルムとの多層フィルムを例示することができる。多孔性ポリオレフィンフィルム上には、熱安定性に優れる他の樹脂がコーティングされてもよい。
上記高分子電解質としては、リチウム塩を溶解した高分子や、電解液で膨潤させた高分子等が挙げられる。
本発明における非水電解液は、高分子を膨潤させて高分子電解質を得る目的で使用してもよい。
〔電池の構成〕
本発明のリチウム二次電池は、種々公知の形状をとることができ、円筒型、コイン型、角型、フィルム型その他任意の形状に形成することができる。しかし、電池の基本構造は、形状によらず同じであり、目的に応じて設計変更を施すことができる。
本発明のリチウム二次電池(非水電解液二次電池)の例として、図1に示すコイン型電池が挙げられる。
図1に示すコイン型電池では、円盤状負極2、非水電解液を注入したセパレータ5、円盤状正極1、必要に応じて、ステンレス、又はアルミニウムなどのスペーサー板7、8が、この順序に積層された状態で、正極缶3(以下、「電池缶」ともいう)と封口板4(以下、「電池缶蓋」ともいう)との間に収納される。正極缶3と封口板4とはガスケット6を介してかしめ密封する。
この一例では、セパレータ5に注入される非水電解液として、本発明における非水電解液を用いることができる。
なお、本発明のリチウム二次電池は、負極と、正極と、非水電解液と、を含むリチウム二次電池(充放電前のリチウム二次電池)を、充放電させて得られたリチウム二次電池であってもよい。
即ち、本発明のリチウム二次電池は、まず、負極と、正極と、非水電解液と、を含む充放電前のリチウム二次電池を作製し、次いで、この充放電前のリチウム二次電池を1回以上充放電させることによって作製されたリチウム二次電池(充放電されたリチウム二次電池)であってもよい。
本発明のリチウム二次電池の用途は特に限定されず、種々公知の用途に用いることができる。例えば、ノートパソコン、モバイルパソコン、携帯電話、ヘッドホンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、電子手帳、電卓、ラジオ、バックアップ電源用途、モーター、自動車、電気自動車、バイク、電動バイク、自転車、電動自転車、照明器具、ゲーム機、時計、電動工具、カメラ等、小型携帯機器、大型機器を問わず広く利用可能なものである。
以下に実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって制限されるものではない。
なお、以下の実施例において、「wt%」は質量%を表す。
また、以下の実施例において、「添加量」は、最終的に得られる非水電解液中における含有量(即ち、最終的に得られる非水電解液全量に対する量)を表す。
〔実施例1−1〕
以下の手順にて、リチウム二次電池を作製した。
<負極の作製>
表1に示す負極活物質100質量部、カルボキシメチルセルロース1質量部及びSBRラテックス2質量部を水溶媒で混錬してペースト状の負極合剤スラリーを調製した。
次に、この負極合剤スラリーを厚さ18μmの帯状銅箔製の負極集電体に塗布し乾燥した後に、ロールプレスで圧縮して負極集電体と負極活物質層からなるシート状の負極を得た。このときの負極活物質層の塗布密度は10mg/cmであり、充填密度は1.5g/mlであった。
<正極の作製>
LiCoO 90質量部、アセチレンブラック5質量部及びポリフッ化ビニリデン5質量部を、N−メチルピロリジノンを溶媒として混錬してペースト状の正極合剤スラリーを調製した。
次に、この正極合剤スラリーを厚さ20μmの帯状アルミ箔の正極集電体に塗布し乾燥した後に、ロールプレスで圧縮して正極集電体と正極活物質とからなるシート状の正極を得た。このときの正極活物質層の塗布密度は30mg/cmであり、充填密度は2.5g/mlであった。
<非水電解液の調製>
非水溶媒としてエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とメチルエチルカーボネート(EMC)とをそれぞれ30:35:35(質量比)の割合で混合し、混合溶媒を得た。
得られた混合溶媒中に、電解質であるLiPFを、最終的に得られる非水電解液中における電解質濃度が1モル/リットルとなるように溶解させた。
上記で得られた溶液に対して、添加剤A(環状硫酸エステル化合物)としての上記例示化合物A−1(添加量0.5wt%)を添加し、非水電解液を得た。
<コイン型電池の作製>
上述の負極を直径14mmで、上述の正極を直径13mmで、それぞれ円盤状に打ち抜いて、コイン状の電極(負極及び正極)を得た。また、厚さ20μmの微多孔性ポリエチレンフィルムを直径17mmの円盤状に打ち抜きセパレータを得た。
得られたコイン状の負極、セパレータ及びコイン状の正極を、この順序でステンレス製の電池缶(2032サイズ)内に積層し、上記非水電解液20μlを注入してセパレータと正極と負極に含漬させた。
さらに、正極上にアルミニウム製の板(厚さ1.2mm、直径16mm)及びバネを乗せ、ポリプロピレン製のガスケットを介して、電池缶蓋をかしめることにより電池を密封し、直径20mm、高さ3.2mmの図1で示す構成を有するコイン型のリチウム二次電池(以下、試験用電池と称する)を作製した。
得られたコイン型電池(試験用電池)について、各測定を実施した。
[評価方法]
<電池の充放電特性:高温保存後の容量維持率>
上記コイン型電池を、25℃の恒温槽中で1mA定電流かつ定電圧4.2Vで充電し、この25℃恒温槽中で1mA定電流で2.85Vまで放電した際の放電容量を測定し、初期放電容量[mAh]とした。
その後、定電圧4.2Vで充電し、次いで、この充電後のコイン型電池を80℃の恒温槽内で2日間保存した後、25℃恒温槽中で1mA定電流で2.85Vまで放電した際の放電容量を測定し、高温保存後の放電容量[mAh]とし、下記式により高温保存後の容量維持率[%]を求めた。
実施例1−1での高温保存後の容量維持率[%]
=(高温保存後の放電容量[mAh]/初期放電容量[mAh])
後述の比較例1−1のコイン型電池についても同様にして、初期放電容量[mAh]及び高温保存後の放電容量[mAh]を測定し、比較例1−1での高温保存後の容量維持率[%]を求めた。
以上の結果から、下記式により、比較例1−1での高温保存後容量維持率[%]を100%としたときの実施例1−1での高温保存後容量維持率[%](相対値;%)として、「高温保存後容量維持率[%]」を求めた。
得られた結果を表1に示す。
高温保存後の容量維持率[%]
=(実施例1−1での高温保存試験後の容量維持率[%]/比較例1−1での高温保存後の容量維持率[%])×100[%]
〔実施例1−2、比較例1−1〕
負極活物質と添加剤Aとの組み合わせを、下記表1に示す組み合わせに変更したこと以外は実施例1−1と同様の操作を行った。
比較例1−1において、添加剤A欄の「無し」との表記は、添加剤Aを添加しなかったことを示す(後述の各比較例においても、同様である)。
結果を表1に示す。
〔実施例2−1、2−2、比較例2−1〕
負極活物質と添加剤Aとの組み合わせを、下記表1に示す組み合わせに変更したこと以外は実施例1−1と同様の操作を行った。
但し、これらの例における高温保存後の容量維持率[%]は、比較例2−1での高温保存後容量維持率[%]を100%としたときの相対値として求めた。
結果を表1に示す。
〔実施例3−1、3−2、比較例3−1〕
負極活物質と添加剤Aとの組み合わせを、下記表1に示す組み合わせに変更したこと以外は実施例1−1と同様の操作を行った。
但し、これらの例における高温保存後の容量維持率[%]は、比較例3−1での高温保存後容量維持率[%]を100%としたときの相対値として求めた。
結果を表1に示す。
〔実施例4−1、4−2、比較例4−1〕
負極活物質と添加剤Aとの組み合わせを、下記表1に示す組み合わせに変更したこと以外は実施例1−1と同様の操作を行った。
但し、これらの例における高温保存後の容量維持率[%]は、比較例4−1での高温保存後容量維持率[%]を100%としたときの相対値として求めた。
結果を表1に示す。
−表1の説明−
・例示化合物A−1及びA−22は、一般式(I)で表される環状硫酸エステル化合物である添加剤Aの具体例である。
表1に示すように、添加剤Aを含有する非水電解液を用いた各実施例では、保存後の容量維持率が顕著に高いことが確認された。
1 正極
2 負極
3 正極缶
4 封口板
5 セパレータ
6 ガスケット
7,8 スペーサー板

Claims (28)

  1. 正極と、
    リチウムを吸蔵・放出可能な負極活物質であって、炭素質材料及び金属化合物系材料からなる群から選択される少なくとも1種を含む負極活物質を含む負極と、
    下記一般式(I)で表される環状硫酸エステル化合物である添加剤Aを含有する非水電解液と、
    を備えるリチウム二次電池。

    〔一般式(I)において、Rは、一般式(II)で表される基又は式(III)で表される基を表し、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、一般式(II)で表される基、又は式(III)で表される基を表す。
    一般式(II)において、Rは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は式(IV)で表される基を表す。一般式(II)、式(III)、および式(IV)における波線は、結合位置を表す。
    一般式(I)で表される環状硫酸エステル化合物中に、一般式(II)で表される基が2つ含まれる場合、2つの一般式(II)で表される基は、同一であっても互いに異なっていてもよい。〕
  2. 前記炭素質材料が、天然黒鉛である炭素質材料、人造炭素質物質を一回以上熱処理してなる炭素質材料、及び人造黒鉛質物質を一回以上熱処理してなる炭素質材料からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載のリチウム二次電池。
  3. 前記負極が、前記負極活物質を含有する負極活物質層を備え、
    前記負極活物質層が、前記負極活物質として炭素質材料を含有し結晶性及び配向性の少なくとも一方が異なる炭素質材料含有層を2層以上含む請求項1又は請求項2に記載のリチウム二次電池。
  4. 前記負極活物質層は、前記2層以上の炭素質材料含有層のうちの隣り合う2層が接する界面を少なくとも1つ含む請求項3に記載のリチウム二次電池。
  5. 前記炭素質材料が、ハードカーボンを含む請求項1に記載のリチウム二次電池。
  6. 前記炭素質材料が、黒鉛と、ハードカーボンと、を含む請求項1に記載のリチウム二次電池。
  7. 前記炭素質材料が、結晶性が異なる炭素質物を2種以上含む複合炭素質物を含む請求項1に記載のリチウム二次電池。
  8. 前記複合炭素質物が、粒子状炭素質物に対し、該粒子状炭素質物とは結晶性が異なる炭素質物を被覆及び/又は結合させてなる界面を有し、該界面の結晶性が不連続及び/又は連続的に変化するものである請求項7に記載のリチウム二次電池。
  9. 前記粒子状炭素質物が、天然黒鉛及び人造黒鉛の少なくとも一方を含有する黒鉛系炭素質物である請求項8に記載のリチウム二次電池。
  10. 前記粒子状炭素質物が、
    (a)石炭系コークス、石油系コークス、ファーネスブラック、アセチレンブラック、及びピッチ系炭素繊維からなる群から選択される少なくとも1種を熱分解して得られた熱分解物、
    (b)有機物気体の炭化物、並びに、
    (c)前記(a)又は前記(b)の少なくとも一部を黒鉛化してなる炭素質物
    からなる群から選択される少なくとも1種を含有する請求項8に記載のリチウム二次電池。
  11. 前記粒子状炭素質物とは結晶性が異なる炭素質物が、前記粒子状炭素質物よりも結晶性が低い低結晶性炭素質物である請求項8〜請求項10のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
  12. 前記粒子状炭素質物とは結晶性が異なる炭素質物が、
    (d)石炭系重質油、直流系重質油、分解系石油重質油、芳香族炭化水素、N環化合物、S環化合物、ポリフェニレン、有機合成高分子、天然高分子、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、炭化可能な有機物、又は、
    (e)前記(d)を低分子有機溶媒に溶解させたもの
    の炭化物である請求項8〜請求項11のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
  13. 前記複合炭素質物が、黒鉛系炭素質物と低結晶性炭素質物とを含有し、前記黒鉛系炭素質物が複合炭素質物全体に対して50質量%以上である請求項7〜請求項12のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
  14. 前記複合炭素質物の円形度が、0.85以上である請求項7〜請求項13のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
  15. 前記複合炭素質物が、粒子状炭素質物と炭化可能な有機物とを混合して混合物とし、該混合物を400℃〜3200℃で1回以上熱処理する工程を含む方法で得られたものである請求項7〜請求項14のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
  16. 前記炭素質材料が、鱗片状黒鉛を球形化してなる球形化黒鉛、及び、前記球形化黒鉛の表面を炭素被覆してなる炭素被覆球形化黒鉛からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1に記載のリチウム二次電池。
  17. 前記炭素質材料が、黒鉛、ソフトカーボン、及びハードカーボンからなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1に記載のリチウム二次電池。
  18. 前記炭素質材料が、球状天然黒鉛粒子と黒鉛化可能なバインダーの黒鉛化物とが複合化された複合黒鉛粒子を含み、
    前記複合黒鉛粒子のBET比表面積で規格化した表面に存在するCO基の量が、1.35μmol/m以上5μmol/m以下、平均円形度が0.85以上0.95以下である請求項1に記載のリチウム二次電池。
  19. 前記炭素質材料は、(002)面の面間隔(d002)が0.340nm以下の炭素質材料を含む請求項1〜請求項18のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
  20. 前記金属化合物系材料が、下記一般式(T1)で表されるチタン酸化物を含む請求項1に記載のリチウム二次電池。
    LiTi ・・・ (T1)
    〔一般式(T1)中、Aは、遷移金属元素、周期律表におけるLi以外の第1族元素、第2族元素、及び第13族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を表す。
    一般式(T1)中、x、y、及びzは、0≦x≦3、0≦y≦1.3、1≦z≦2.5を満たす値を表す。〕
  21. 前記金属化合物系材料が、前記一般式(T1)で表されるチタン酸化物として、TiO、Li0.8Ti2.2、LiTi、Li1.33Ti1.67、Li1.14Ti1.71、及びLiCrTiOからなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項20に記載のリチウム二次電池。
  22. 前記金属化合物系材料が、下記一般式(T11)で表されるチタン酸化物を含む請求項1に記載のリチウム二次電池。
    LiTi ・・・ (T11)
    〔一般式(T11)中、Mは、Na、K、Co、Al、Fe、Ti、Mg、Cr、Ga、Cu、Zn及びNbからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。
    一般式(T11)中、x、y、及びzは、0.7≦x≦1.5、1.5≦y≦2.3、0≦z≦1.6を満たす値を表す。
  23. 前記金属化合物系材料が、前記一般式(T11)で表されるチタン酸化物として、Li4/3Ti5/3、LiTi、Li4/5Ti11/5、及びLi4/3Ti4/3Al1/3を含む請求項22に記載のリチウム二次電池。
  24. 前記添加剤Aの含有量が、前記非水電解液の全量に対し、0.01質量%以上である請求項1〜請求項23のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
  25. 前記非水電解液が、更に、炭素−炭素不飽和結合を有するカーボネート化合物、フッ素原子を有するカーボネート化合物、フルオロリン酸化合物、オキサラト化合物、及び環状スルトン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である添加剤Bを含有する請求項1〜請求項24のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
  26. 前記添加剤Bの含有量が、前記非水電解液の全量に対し、0.01質量%〜10質量%である請求項25に記載のリチウム二次電池。
  27. 前記添加剤Bが、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート、モノフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、ジフルオロ(ビスオキサラト)リン酸リチウム、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム、トリス(オキサラト)リン酸リチウム、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム、ビスオキサラトホウ酸リチウム、1,3−プロパンスルトン、及び1,3−プロペンスルトンからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項25又は請求項26に記載のリチウム二次電池。
  28. 請求項1〜請求項27のいずれか1項に記載のリチウム二次電池を充放電させて得られたリチウム二次電池。
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