JP4535599B2 - 建設車両の運転室支持装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブルドーザ等の建設車両の運転室を車体フレームに支持する運転室支持装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ブルドーザ等の建設車両においては、不整地での作業が主であり、走行時の車体振動が激しいため、車体フレームと運転室の間に緩衝支持手段を設けて、車体フレームから運転室に伝わる振動を抑え、運転室内の居住性、及びオペレータの操縦姿勢の安定性等が低下しないようにしている。
【0003】
例えば、特許登録第2940849号公報にはこのような建設機械のフロアフレーム支持構造が開示されており、図19は同公報に記載されたフロアフレーム支持部の側面図である。図19に示すように、運転室41は、車両前側の低床部分及び後側の高床部分を側面視で略S形状につないで形成したフロアフレーム42に載置されている。フロアフレーム42の低床部分の前部左右は、図20に示すように、フロアフレーム42に回転自在に軸支された軸44bの外周部にゴムブッシュ44aを有する振動緩衝手段を介してピッチング方向に回動自在に支持する緩衝支持体44により車体フレーム43に連結されている。また、フロアフレーム42の高床部分の後部左右は、上下方向及び左右方向の振動を緩衝して支持する吸振支持体45により、車体フレーム43から立設した左右一対のブラケット46,46に連結されている。前記吸振支持体45は、図21に示すように、ゴム等からなる円筒状の弾性体47と、非圧縮性の減衰液48及びこの減衰液48に浸かったダンパ部材49からなる液体ダンパとを有する振動緩衝マウント手段(所謂、液体封入式ゴムマウント装置)で構成されており、フロアフレーム42の横揺れ及び上下揺れを制振している。
【0004】
また、実開平3−38282号公報に開示された操縦台の支持構造によれば、図22に示すように、走行車体51の左右に前後方向少なくとも一対の支持台52F,52Rを取付け、この各支持台52F,52R上にはそれぞれ、図23に示すゴム又は合成樹脂製の緩衝体55を有する緩衝具53F、及び図24に示す山形状の緩衝体56を有する緩衝具53Rを介して操縦台54を搭載している。また、前記全支持台52F,52Rの緩衝具支持面Sは、その垂線Tが左右方向及び前後方向の中央側上方を指向すべく、傾斜させている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の従来技術には以下のような問題がある。特許登録第2940849号公報に開示された技術においては、運転室41の低床部分の上下方向の振動を緩衝支持体44のゴムブッシュ44aで緩衝支持しているが、このゴムブッシュ44aは剛性をある程度大きくする必要があるため、通常最も大きな上下方向の振動に対しては大きな減衰効果はない。このため、運転室41の上下方向の振動は緩衝支持体44を中心にしたピッチングに変換され、このピッチングが高床部分に設けた吸振支持体45により制振される。ところが、低床部の緩衝支持体44を中心にして高床部がピッチングするので、吸振支持体45(液体封入式ゴムマウント装置)は上下方向と共に前後方向の振動も受けることになる。通常、運転室41の横揺れを抑えるために、これらのマウント装置の横剛性即ち吸振支持体45の弾性体47の軸芯に直交する方向の剛性は大きく設定されており、従って前後方向の剛性も上下方向に比して剛性が非常に大きい(つまり弾性体47の変位が拘束される)。このため、ピッチング時の上下方向の振動も液体ダンパにより充分に緩衝することは困難である。従って、運転室41のピッチングの制振効果が十分に得られないという問題がある。
【0006】
また、実開平3−38282号公報に開示された技術は、前後の緩衝具53F,53Rを互いに略同一高さに配置し、かつその取付軸(垂線T)を左右方向及び前後方向の中央側上方に指向させて横揺れを制振するものであるが、緩衝具53Rから遠く離れているオペレータ席では前後、左右等の揺れ振動時には振動変位がより大きくなるとの不都合がある。
【0007】
本発明は上記従来の問題点に着目し、運転室の上下揺れとピッチングを良好に制振できる建設車両の運転室支持装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段、作用及び効果】
上記目的を達成するために、本発明に係る建設車両の運転室支持装置の第1発明は、運転室の下部を構成するフロアフレームに、側面視で前後位置に互いに上下に所定距離離間して低床部及び高床部を設け、この低床部及び高床部と車体フレームとの間に防振マウント装置を取り付けて運転室を弾性支持した建設車両の運転室支持装置において、低床部の防振マウント装置は、その支持軸線が上下方向に延びるように設けられている。また、防振マウント装置の高床部での支持点を上下方向位置でオペレータのSRP又は運転室重心位置の近傍に設け、高床部の防振マウント装置は、その支持軸線の上方前後方向で運転室の重心側へ所定角傾斜するように設けられている。
【0009】
第1発明によれば、防振マウント装置の傾斜支持により支持部の上下方向及び前後方向の剛性を変化させることができるので、支持傾斜角を適切に設定することにより、運転室の上下揺れとピッチングに対する応答性(つまり制振特性)を最適に調整することができる。フロアフレームの前後に低床部及び高床部を設けた運転室を備えた車両においては、前後のいずれか一方の防振マウント装置の支持部近傍を中心に運転室がピッチングする振動モードの影響が大きい。このような振動モードでは、高床部の防振マウント装置を傾斜支持することにより、この傾斜支持した支持部の通常剛性を小さく(つまりばね定数を小さく)設定してある支持軸方向が他方の防振マウント装置の支持部近傍を中心としたピッチング時の振動方向(衝撃力の入力方向)と略一致する。従って、ピッチング時に支持点の変位の拘束が小さくなり、傾斜支持した防振マウント装置のピッチング剛性を鉛直支持した場合に比して小さくできる。これにより、傾斜支持した防振マウント装置はピッチングを効果的に制振するので、運転室の居住性(乗り心地)及びオペレータの操縦姿勢の安定性を向上することができる。尚、この防振マウント装置は支持軸方向の剛性が小さく、かつ支持軸に直交する方向の剛性はこれよりもある程度大きい(例えば10倍以上)ものが好適である。
【0010】
また、上下方向位置においてローリング時の回転軸芯となるオペレータのSRP又は運転室重心位置の近傍に防振マウント装置の高床部での支持点を設定したので、オペレータのSRP又は運転室重心位置を中心にローリングをしている時の揺れ量が最小になり、従って防振マウント装置で効率的に制振することができ、オペレータには疲労が少なく好都合である。
【0011】
第2発明は、第1発明の構成において、傾斜角θは10°〜20°としている。
【0012】
第2発明によれば、殆どの機種で走行時の最大衝撃力を効果的に緩衝することが可能となる。一般的にブルドーザにおいては、走行時に運転室に発生する最大衝撃力は、後進時の障害物乗り越え落下時に地面から受けるものであり、その作用線は車体の上下方向の線に対して車体前側に概ね10°〜20°傾斜している。従って、この衝撃力の作用する方向と防振マウント装置の支持軸方向とを略一致させることにより、衝撃力を最も効果的に緩衝できる。
【0013】
第3発明は、運転室の下部を構成するフロアフレームに、側面視で前後位置に互いに上下に所定距離離間して低床部及び高床部を設け、この低床部及び高床部と車体フレームとの間に防振マウント装置を取り付けて運転室を弾性支持した建設車両の運転室支持装置において、傾斜角θを所定角度範囲内で調整可能とした構成としている。
【0014】
第3発明によれば、傾斜角θを調整可能としたので、同一構成の防振マウント装置を用いて種々の機種や作業条件等に対して容易に適応でき、汎用性を高めることができる。
【0015】
第4発明は、運転室の下部を構成するフロアフレームに、側面視で前後位置に互いに上下に所定距離離間して低床部及び高床部を設け、この低床部及び高床部と車体フレームとの間に防振マウント装置を取り付けて運転室を弾性支持した建設車両の運転室支持装置において、低床部及び高床部のいずれか一方の防振マウント装置の支持軸線の方向を鉛直にし、他方の支持軸線の上方を前後、左右の両方向に運転室の重心側へそれぞれ所定角θ1,θ2傾斜させた構成としている。
【0016】
第4発明によれば、防振マウント装置の傾斜支持により支持部の上下方向、前後方向及び左右方向の剛性を変化させることができるので、支持傾斜角を適切に調整することにより、運転室の上下揺れ、ピッチング、横揺れ及びローリング等に対する応答性(つまり制振特性)を最適に調整することができる。フロアフレームの前後に低床部及び高床部を設けた運転室を備えた車両においては、前後のいずれか一方の防振マウント装置の支持部近傍を中心に運転室がピッチングする振動モードの影響が大きい。このような振動モードでは、ピッチング中心に近い方の防振マウント装置を鉛直支持し、他方を前後方向で重心位置側に傾斜支持することにより、傾斜支持した防振マウント装置においては、通常剛性を小さく(つまりばね定数を小さく)設定してある支持軸方向がピッチング時の支持点の振動方向(衝撃力の入力方向)と略一致する。従って、ピッチング時に支持点の変位の拘束が小さくなり、傾斜支持した防振マウント装置のピッチング剛性を鉛直支持した場合に比して小さくできる。これにより、傾斜支持した防振マウント装置はピッチングを効果的に制振する。さらに、この傾斜支持した防振マウント装置を左右方向で重心位置側に(内側に)傾斜支持することにより、支持軸方向の剛性が横揺れ及びローリングに対する剛性にも寄与して横揺れ及びローリングの剛性を小さくするので、横揺れ及びローリングに対しても制振効果が大きくなる。これらの結果、運転室の居住性(乗り心地)及びオペレータの操縦姿勢の安定性を向上することができる。
【0017】
第5発明は、第1又は第4発明の構成において、防振マウント装置は全て同一のものとしている。第6発明によれば、防振マウント装置は全て同一のものを使用するため、製作コストを安価にでき、部品点数の低減により部品管理が容易となって生産性がよく、またメンテナンス性も向上できる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係る建設車両の運転室支持装置の実施形態を図1〜図18により説明する。
【0019】
先ず、第1実施形態について、図1〜図12により説明する。図1は本実施形態の概要を示す図である。図2はフロアフレームの斜視図である。
【0020】
図1,2により、本実施形態の概要を説明する。運転室1の底部を構成するフロアフレーム2は側面視で略S字形状に形成され、前部の低床部2aと後部の高床部2bと、これらの両部2a,2bをつなぐ部分から構成されている。そして、フロアフレーム2と車体フレーム8との間に取り付ける防振マウント装置20を低床部2aでは上下方向に、高床部2bでは運転室重心G側に傾斜させて設置し、運転室1を車体フレーム8に対して弾性支持している。
【0021】
以下、詳細について説明する。図3はフロアフレーム支持部の側面図である。図4は図3のZ視図で正面図であり、図5は図3のY視図、また図6は図3のA−A断面図であり、防振マウント装置を示す図である。
【0022】
図3,4,6に示すように、フロアフレーム2の低床部2aの下面には車両左右方向に延びるサポート3がボルト4により固定されていて、サポート3の下面の左右2箇所には防振マウント装置20,20のシャフト21がそれぞれボルト6,7により固定されている。一方、車体フレーム8には各防振マウント装置20,20の位置に対応して左右2箇所にブラケット9,9がボルト10によりそれぞれ固定されていて、ブラケット9,9の上面に左右1対の防振マウント装置20,20がボルト11により締着されている。これにより、フロアフレーム2の前部は支持軸線M−Mを上下方向にして車体フレーム8に弾性支持されている。
【0023】
図3,5,6に示すように、高床部2bの下面の左右2箇所には、水平面に対してθだけ前方に向けて傾斜した下面を有するブラケット12,13がボルト15により固定されていて、このブラケット12,13の前記傾斜面に防振マウント装置20のシャフト21がボルト6により固定されている。一方、車体フレーム8にはブラケット12,13の位置に対応して左右2箇所に水平面に対してθだけ前方に向けて傾斜した上面を有するブラケット16,16がボルト17により締着されていて、ブラケット16,16の上面にそれぞれ防振マウント装置20,20のケース22がボルト11により締着されている。これにより、フロアフレーム2の後部は、支持軸線N−Nが鉛直線に対して運転室1の重心G側(前方)へθだけ傾斜して、車体フレーム8に弾性支持されている。ここで、θは、実機テストに基づいて10°〜20°に設定してあり、また防振マウント装置20のシャフト21とフロアフレーム2との接続点である後方支持点P2 の高さ位置は運転室重心Gの高さと略同一に設定してある。
【0024】
防振マウント装置20は例えば図6に示すように液体封入式ゴムマウント装置で構成され、中央部に設けたシャフト21と外側のケース22とは、スリーブ23と筒状部材24とを挟着して加硫接着した筒状積層ゴム25により結合されている。ケース22と積層ゴム25とシャフト21とによりケース22の内側に液体封入室26が形成され、液体封入室26内には減衰液とシャフト21の下部に設けた減衰板27とが封入されている。
【0025】
従って、防振マウント装置20のシャフト21の軸芯方向のばね定数Kv は小さく、かつ衝撃や大きな振動に対しては良好な減衰効果を有する。またシャフト21に直交する方向のばね定数Kh は大きく、Kh >Kv となっている。
【0026】
次に、第1実施形態の作用、効果について、図7〜図12により説明する。一般に、運転室が前方支持点P1 及び後方支持点P2 にて支持されている場合、前方支持点P1 を中心にピッチング運動する時のエネルギーの吸収性が振動減衰性(言い換えると、運転室の居住性及び操作安定性等)に大きく影響するので、このようなピッチング運動に対するピッチング剛性を中心にして、従来技術と比較して説明する。
【0027】
図7は本実施形態の運転室支持装置の模式側面図であり、図8は前方支持点P1 及び後方支持点P2 の防振マウント装置を上下方向に取り付けたタイプの運転室支持装置の模式側面図である。また、図9はピッチング時の後方支持点P2 の挙動を示す図であり、図10は図9のQ部拡大図である。図11は、後進で障害物を乗り越え落下した時の後方支持点P2 の変位量の実測波形を示す図である。また図12は、平坦地走行時のフロアフレーム2上の上下方向の加速度実測波形を示す。
【0028】
図9において、後方支持点P2 が前方支持点P1 を中心にL0 の半径で動くとする。高さを距離L3 だけ変化させると、後方支持点P2 は点P2'に達し、水平方向に距離L4 だけ変化する。ここで、L0 ,L1 ,L2 は前方支持点P1 と後方支持点P2 との間の直線距離、水平距離、垂直距離をそれぞれ表す。仮に、L1 =1100,L2 =650,L3 =10とすれば、L4 =6.5(単位はそれぞれmm)となる。
【0029】
図10で、後方支持点P2 での防振マウント装置の取付け傾斜角をθとすると、後方支持点P2 はシャフト21の軸芯方向変位(以後、縦変位と言う)L5 とシャフト21に直交する方向の変位(以後、横変位と言う)L6 とを同時に実現しなければならない。ここで、θ=15°とすれば、L3 =10、L4 =6.5の移動を実現するためには、L5 =11.3,L6 =3.7の縦変位L5 及び横変位L6 が必要となる。
【0030】
仮に、防振マウント装置の縦剛性Kv =100,横剛性Kh =1000とすると、点P2 から点P2'への変位に伴い弾性体を変形させるのに必要なエネルギーE1 は、式E1 =(Kv ×L5 +Kh ×L6 )/2により求められ、E1=1.32×10となる。
【0031】
一方、図8に示す従来タイプのものにおいては、後方支持点P2 は防振マウント装置の縦変位L3 と横変位L4 を同時に実現しなければならないので、点P2から点P2'への変位に伴い弾性体を変形させるのに必要なエネルギーE2 は、式E2 =(Kv ×L3 +Kh ×L4 )/2により求められ、E2 =2.61×10となる。
【0032】
従って、本実施形態によると、従来タイプのものに比べてピッチング剛性が約50%に低下し、衝撃力を大幅に緩和することができる。
【0033】
図11において、本実施形態の場合は、従来タイプの場合に比べて落下時の後方支持点P2 の変位量が図示のp部に示すように大であり、剛性が柔らかくなっていることが解る。また、減衰のしかたも非常に緩やかであり、尖った衝撃を和らげていることがわかる。
【0034】
図12において、本実施形態の場合は、従来タイプの場合に比べて図中q部に示すように比較的低い周波数帯での強度(上下方向加速度)が若干大きくなっているが、全体的にはほぼ同様の強度分布を示しており、平坦走行時に上下揺れを抑制する効果は従来と変わらずに得られることが解る。
【0035】
更に、本実施形態では、後方支持点P2 を上下方向位置でオペレータSRP近傍に、又は運転室1の重心位置G近傍に設置したため、オペレータ又は運転室の重心位置G近傍での揺れ量を効率的に低減することができるので、オペレータには疲労が少なく好都合である。尚、SRPは「Seat Reference Point」のことで、オペレータがシートに着座した時のシートの基準点(ISO3462及びSAE J899に準ずる)を示す。
【0036】
また、同一の防振マウント装置20を全ての支持点に用いており、装着部位に応じて取付角度を設定するだけで優れた防振効果が得られるため、運転室支持装置の共通化を図って生産コストを低減でき、メンテナンス性も良い。
【0037】
また、傾斜支持の傾斜角θを10°〜20°に設定したので、後進走行時の障害物乗り越え落下時の運転室1の重心に対する着地点からの衝撃入力の方向と傾斜支持の傾斜角θとが略一致し、発生する衝撃力を効果的に和らげることができる。
【0038】
次に、参考例について図13により説明する。図13は参考例による運転室支持装置の模式側面図である。
【0039】
本例は、第1実施形態における後方支持点P2 の重心G側への傾斜と共に、さらに前部支持部P1 を前後方向で重心G側へθ3 だけ傾斜支持したものである。
【0040】
本例によれば、後方支持部P2 に加えて前部支持部P1 も傾斜支持しているので、運転室1の上下揺れとピッチングに対する減衰特性を微妙にバランス良く調整することができ、更に居住性及び操作安定性を向上できる。
【0041】
また、図14の第実施形態の模式側面図に示すように、運転室1aの前部を高床側にし、後部を低床側に構成した場合において、前部支持部P1 を前後方向で重心G側へθ4だけ傾斜支持してもよい。
【0042】
本実施形態によれば、運転室1aが車両の前端部にある場合に好適であり、第1実施形態と同様な効果を奏する。
【0043】
次に、第実施形態について図15,16により説明する。図15は第実施形態の運転室支持装置の模式側面図である。図16は図15のX視図である。
【0044】
実施形態は、図15,16に示すように、前記第1実施形態において、後方支持部を前後方向で重心G側へθ1 、左右方向で重心G側へθ2 だけ傾斜支持したものである。
【0045】
実施形態によれば、後部支持部が前後方向に加えて左右方向にも傾斜支持しているので、上下揺れとピッチングに対する応答性に加え、さらに横揺れとローリングに対する応答性を最適に調整することができ、更に居住性及び操作安定性を向上できる。
【0046】
次に、第実施形態について図17,18により説明する。本実施形態は傾斜角調整機能付きの運転室支持装置を示しており、図17は傾斜角調整機能付き支持装置の斜視図で、図18は図17のW視図である。
【0047】
図17,18に示すように、傾斜角調整機能付き支持装置30は、下部ブラケット31と、ケース32と、プレート33と、上部ブラケット34とから構成されており、下部ブラケット31は車体フレーム8に、上部ブラケット34はフロアフレーム2にそれぞれボルト35により固定されている。
【0048】
下部ブラケット31の上部には点Fを中心として半径Rの内曲面31aが形成されており、この内曲面31aに沿って2本のキー溝31bが設けられている。またケース32の下面には点Fを中心として半径Rの外曲面32aが形成されており、この外曲面32aに沿って2本のキー32bが設けられている。下部ブラケット31のキー溝31bにケース32のキー32bを嵌合させてあり、これによりケース32は下部ブラケット31に対して内外曲面31a,32aに沿って傾動自在となっている。
【0049】
下部ブラケット31には、ケース32の傾動角を調整するための調整具36が設けられている。この調整具36は、例えばキー32bの外周面に設けたラック(図示せず)と、キー溝31bの底部に回転自在に設けたピニオン(図示せず)とを噛み合わせ、このピニオンを調整ねじ36aで回転してラックを介してキー32bを動かすことにより、ケース32の傾動角を任意に設定できるようになっている。尚、傾動角を設定した後に、図示しない固定手段によりケース32を下部ブラケット31に固定する。
【0050】
同様に、上部ブラケット34及びプレート33には、それぞれ内曲面34aとキー溝34b及び外曲面33aとキー33bが形成され、プレート33は上部ブラケット34に対して内外曲面34a,33aに沿って傾動自在となっている。ケース32には防振マウント装置20が収納され、その上面には防振マウント装置20のケース22がボルト11により固定されている。また、プレート33の下部には防振マウント装置20のシャフト22がボルト16により取り付けられている。
【0051】
傾斜角調整機能付き支持装置30の作用、効果について、図17,18により説明する。
【0052】
図17,18に示すように、調整具36を回動操作することにより、防振マウント装置20を下部ブラケット31及び上部ブラケット34に対して任意の傾斜角でセットすることができ、よってフロアフレーム2を車体フレーム8に対して防振マウント装置20の任意の支持傾斜角で弾性支持することができる。
【0053】
従って、傾斜角調整機能付き支持装置30を前記第1〜第実施形態の支持装置に適用することにより、同一構成の防振マウント装置20を用いて種々の機種、作業条件に対して適応することが可能である。
【0054】
以上説明したように、本発明による運転室の支持装置によれば、前後いずれか一方の支持部の支持軸線の上方を前後方向で運転室の重心側へ所定角θ傾斜させて支持することにより、運転室の上下方向及び前後方向の剛性を変化させることができるので、傾斜角θを適切に調整することにより、運転室の上下揺れとピッチングに対する応答性を最適に調整でき、居住性及び操縦安定性を向上できる。
【0055】
また、高床部支持点を上下方向位置でローリング時の回転軸芯となるオペレータのSRP又は運転室重心位置の近傍に設置したため、オペレータのSRP又は運転室重心位置を中心としたローリング時の揺れ量が最小になり、防振マウント装置により効率的に制振でき、オペレータには疲労が少なく好都合である。
【0056】
さらに、傾斜支持の傾斜角θを10°〜20°に設定したので、殆どの機種で走行時の最大衝撃力を効果的に緩衝することが可能である。
【0057】
また、防振マウント装置として全て同一のものを使用できるため、運転室支持装置の製作コストを低減でき、部品点数の減少による部品管理が容易となり、またメンテナンス性も向上できる。
【0058】
さらにまた、防振マウント装置の支持傾斜角θを任意に設定することにより、同一構成の防振マウント装置を用いて種々の機種、作業条件に対して容易に適応することが可能であり、汎用性を高められる。
【0059】
た、前後いずれか一方の支持部の支持軸線の方向が鉛直で、他方の支持部の支持軸線の上方が前後、左右の両方向共に運転室の重心G側へそれぞれ所定角θ1 ,θ2 傾斜させて支持することにより、運転室の上下、前後及び左右の各方向の剛性を変化させることができるので、傾斜角を適切に調整することにより、運転室の上下揺れとピッチング、及び横揺れとローリングにそれぞれ対する応答性を最適に調整でき、居住性及び操縦安定性をより向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の建設車両の運転室支持装置の概要説明図である。
【図2】フロアフレームの斜視図である。
【図3】フロアフレーム支持部の側面図である。
【図4】図3のZ視図である。
【図5】図3のY視図である。
【図6】図3のA−A断面図である。
【図7】第1実施形態の運転室支持装置の模式側面図である。
【図8】前後の防振マウント装置を上下方向に取付けた例の模式側面図である。
【図9】第1実施形態の後方支持点の挙動説明図である。
【図10】図9のQ部拡大図である。
【図11】後進乗り越え落下時の後方支持点の変位量の実測波形である。
【図12】平坦走行時のフロアフレーム上の加速度の実測波形である。
【図13】参考例の運転室支持装置の模式側面図である。
【図14】第実施形態の運転室支持装置の模式側面図である。
【図15】第実施形態の運転室支持装置の模式側面図である。
【図16】図15のX視図である。
【図17】第実施形態の傾斜角調整機能付き支持装置の斜視図である。
【図18】図17のW視図である。
【図19】第1の従来技術の運転室支持装置を示す図である。
【図20】図19のB−B断面図である。
【図21】吸振支持体の側面断面図である。
【図22】第2の従来技術の運転室支持装置の説明図である。
【図23】前方緩衝具を示す図である。
【図24】後方緩衝具を示す図である。
【符号の説明】
1...運転室、2...フロアフレーム、2a...低床部、2b...高床部、3...サポート、8...車体フレーム、9...ブラケット、12,13...ブラケット、16...ブラケット、20...防振マウント装置、21...シャフト、22...ケース、23...スリーブ、24...筒状ケース、25...筒状積層ゴム、26...液体封入室、27...減衰板、30...傾斜角調整機能付き支持装置、31...ブラケット、32...ケース、33...プレート、34...ブラケット、36...調整具。

Claims (5)

  1. 運転室(1)の下部を構成するフロアフレーム(2)に、側面視で前後位置に互いに上下に所定距離離間して低床部(2a)及び高床部(2b)を設け、この低床部(2a)及び高床部(2b)と車体フレーム(8)との間に防振マウント装置(20)を取り付けて運転室(1)を弾性支持した建設車両の運転室支持装置において、
    前記低床部(2a)の防振マウント装置(20)は、その支持軸線(M-M)が上下方向に延びるように設けられており、
    防振マウント装置(20)の高床部(2b)での支持点(P2)を上下方向位置でオペレータのSRP又は運転室重心(G)位置の近傍に設け、前記高床部(2b)の防振マウント装置(20)は、その支持軸線(N-N)の上方、前後方向で運転室(1)の重心(G)側へ所定角(θ)傾斜するように設けられている、
    ことを特徴とする建設車両の運転室支持装置。
  2. 請求項1記載の建設車両の運転室支持装置において、傾斜角(θ)は10°〜20°であることを特徴とする建設車両の運転室支持装置。
  3. 運転室(1)の下部を構成するフロアフレーム(2)に、側面視で前後位置に互いに上下に所定距離離間して低床部(2a)及び高床部(2b)を設け、この低床部(2a)及び高床部(2b)と車体フレーム(8)との間に防振マウント装置(20)を取り付けて運転室(1)を弾性支持した建設車両の運転室支持装置において、
    低床部(2a)及び高床部(2b)の少なくともいずれか一方の防振マウント装置(20)の支持軸線(M-M)(N-N)の上方を、前後方向で運転室(1) の重心(G) 側へ所定角(θ) 傾斜させ、更に、傾斜角(θ)を所定角度範囲内で調整可能とした
    ことを特徴とする建設車両の運転室支持装置。
  4. 運転室(1)の下部を構成するフロアフレーム(2)に、側面視で前後位置に互いに上下に所定距離離間して低床部(2a)及び高床部(2b)を設け、この低床部(2a)及び高床部(2b)と車体フレーム(8)との間に防振マウント装置(20)を取り付けて運転室(1)を弾性支持した建設車両の運転室支持装置において、
    低床部(2a)及び高床部(2b)のいずれか一方の防振マウント装置(20)の支持軸線(M-M)の方向を鉛直にし、他方の支持軸線(N-N) の上方を前後、左右の両方向に運転室(1)の重心(G)側へそれぞれ所定角(θ1)(θ2)傾斜させた
    ことを特徴とする建設車両の運転室支持装置。
  5. 請求項1又は4記載の建設車両の運転室支持装置において、防振マウント装置(20)は全て同一のものであることを特徴とする建設車両の運転室支持装置。
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