JP4528625B2 - 新規の過酸化水素水溶液 - Google Patents

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Description

本発明は、オレフィンのエポキシ化工程における使用に特に適合した、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びp Bが4.5未満であるアミンの最大量を特徴とする特異的過酸化水素水溶液、及び前記のような過酸化水素水溶液の製造方法に関するものである。
今日、過酸化水素の大多数は、周知のアントラキノン方法により生産される。前記アントラキノン方法及び多数のこの変形に関する調査結果が、G. Goor, J. Glenneberg, S. Jacobi:"Hydrogen Peroxide" Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, Electronic Release(第6版)(Wiley-VCH, Weinheim June 2000, page14)から提供される。一般的に、前記アントラキノンループ方法は、下記の段階からなる:
(a)有機溶媒または有機溶媒混合物、及び少なくとも1つの活性アントラキノン化合物を含む作業溶液の水素化反応段階;
(b)前記水素化された作業溶液の酸化反応により過酸化水素が形成される段階;
(c)過酸化水素を水により抽出する段階;
(d)抽出された過酸化水素水溶液を安定化させる段階;
(e)抽出した後に、作業溶液を乾燥させる段階;及び
(f)作業溶液の再生及び精製段階。
前記各それぞれの工程段階について、前記Ullmannの参照文献は、多数の異なる可能性を開示する。
前記アントラキノン方法により得られた粗製の過酸化水素溶液または濃縮された過酸化水素溶液には、過酸化水素以外に多数の化合物が低濃度で含有されている。これらの化合物は不純物または安定化剤等の付加物である。不純物は、作業溶液から水性層に抽出される化合物である。これらは、主にカルボン酸、アルコール、カルボニル化合物及びアミンのようなイオン性または極性種のものである。よって、これらの不純物は、商業用過酸化水素溶液からも見出される。
例えば、前述した方法において通常用いられるヒドロキノン溶媒は、アミド類及び尿素類等の含窒素化合物である(前記Ullmannの文献における第6頁参照)。特に、テトラブチルウレア等のテトラアルキルウレアが好ましい。これらの溶媒を用いる場合、最終の過酸化水素溶液からモノアルキルまたはジアルキル、特にモノブチル及びジブチルアミン等のアミン不純物が発生する。例えば、Degussa AG社から購買可能な商業用過酸化水素溶液であるHYPROX(R)は、モノ−及びジブチルアミンを過酸化水素の重量を基準として200wppmまで含有している。
前記過酸化水素溶液の最終的な用途によって、各用途に必要な過酸化水素溶液の特定値を得るために追加的な精製段階を行うこともまた公知とされている。
例えば、DE-A 100 26 363は、過酸化水素水溶液をアニオン交換樹脂、特異的構造を有する非イオン性吸着樹脂、及びやはり特異的なマクロ多孔性(macroporous)構造を有する中性吸着樹脂により処理する過酸化水素水溶液の精製方法を開示する。このような方法により得られた過酸化水素水溶液には、カチオン性、アニオン性及び有機不純物が実質的に存在しない。従って、前記溶液は、マイクロ電子工学的な応用に特に有用である。
これと同様に、US-A 4,999,179は、精製後の各金属カチオンを5ppb未満の量で、各アニオンを10ppb未満の量で、及び有機不純物を総有機炭素含量で換算して5ppm以下の量で含有する過酸化水素溶液の精製方法を開示する。
このような方法における短所は、精製が極度に高費用であり、よって経済的な理由により、酸化プロピレンのような大衆の化学製品の製造に用いることができないということである。その上、このような高度に精製された過酸化水素溶液には、安全上の理由により、水性の−特に高度に濃縮された−過酸化水素溶液の安定化に必要なリン酸塩及び硝酸塩のようなアニオン成分が実質的に存在しない。
EP-A 100 119には、チタン−含有ゼオライトが触媒として用いられる場合、プロペンを過酸化水素により酸化プロペンに転換できることが公知とされている。
それ以後に、チタンシリカライト触媒の製造中に、または前記反応混合物のうち、これらの存在中に、塩基性、酸性及びイオン性化合物を添加することが触媒の活性及び選択性に及ぼす効果に関する多くの調査結果が発表された。
EP-A 230 949には、チタンシリカライト触媒をエポキシ化反応に用いる前または強塩基と共にその場で用いる前に、多量のアルカリ金属またはアルカリ土類金属イオンを前記反応混合物に導入することにより、チタンシリカライト触媒を中和させることが公知とされている。前記中和反応は、回分式工程において所望の酸化オレフィンの活性及び選択性を増加させるようになる。
ところが、EP-A 757 043における実験によると、触媒が反応前または途中で中和される場合、連続式方法において活性が相当減少することが分かる。従って、触媒をエポキシ化反応前または途中で中性または酸性塩で処理することが提案された。EP-A 757 043における実験データから、中性または酸性塩を添加することによって選択性は増加するが、活性は塩基の添加と比べて多少減少することが確認された。しかし、EP-A 757 043には、触媒が反応前に塩により処理され、前記触媒がスラリ形態で用いられる実施例のみが提示されている。なお、前記実験を8時間稼動させただけであるが、4時間後に触媒活性において既に急激な降下を示したため、これは、工業的な工程には許容され得ない手段である。
これと同様に、EP-A 712 852は、非塩基性塩の存在下においてチタンシリカライトにより触媒されたエポキシ化方法を行うことにより選択性が増加することを教示する。全ての実施例は、攪拌された触媒スラリと共に回分式作動モードにおいて1時間稼働させた。非塩基性塩の存在により短時間の実験において触媒の選択性に肯定的な作用を有することができることは明確であるが、連続式エポキシ化反応では、非塩基性塩が反応混合物に存在するとしても、活性及び選択性は時間の経過に伴って急激に下がることを見出した。従って、EP-A 712 852の教示は、不均一触媒の存在下において過酸化水素を用いる連続式エポキシ化方法を経済的に用いることができる反応系に導くことはできない。
WO 00/76989によると、前記の従来技術の文献に記載されているように、エポキシ化反応に用いられる商業的に入手可能な過酸化水素水溶液中でのイオン性成分の影響が論議された。イオン性成分、特にリン酸塩及び硝酸塩を安定化剤として商業的に入手可能な過酸化水素水溶液に添加することにより、過酸化水素の危険な分解を減少させた。WO 00/76989は、前記の従来技術の文献とは相反して、前記反応混合物の中にイオン性成分が存在すると、市販用過酸化水素に安定化剤として添加されたことさえも連続式チタンシリカライト触媒のエポキシ化反応においては長期間の選択性に不利であるため、最小に減少しなければならないことを教示する。これに対して、300時間以下で稼働する連続式反応が行われる前記の従来文献では、イオン性成分が100ppm超過の量で存在する場合、長期間の選択性が減少することが示されている。このような問題を解決するために、エポキシ化反応に用いられる前に、過酸化水素溶液からイオン性成分をイオン交換器により除去することが提案された。また、WO 00/76989は、アンモニム化合物及びアンモニアは、形成された酸化オレフィンとのオキシラン開環反応により好ましくない副生成物を生成させる恐れがあるため、いかなる環境においても避けなければならないことを教示する。WO 00/76989の教示が前記文献と比べて長期間の選択性を多少改善させるとしても、このような改善は、工業的規模の工程では依然として不十分である。また、このような改善は煩雑性と共に、投資及び工程費用の観点において全て経済的に好ましくない追加のイオン交換工程により達成され得るだけである。最後に、重要な点について言えば、過酸化水素溶液からリン酸塩及び硝酸塩のような安定化イオンを除去することにより前記工程は更に危険となり、追加的な測定が全体工程の間において安全性を保障して行われなければならない。
WO 00/76989の教示とは相反するように、WO 01/57012は、例えば、ナトリウム、硝酸塩、リン酸塩及び有機不純物の含量の高い、アントラキノン方法から直接得られた粗製の過酸化水素溶液を用いることが、非常に低い含量のナトリウム、硝酸塩及びリン酸塩を含有する高度に精製された過酸化水素溶液を用いるのと比べて生成物の選択性の観点からより優れていることを開示する。ところが、前記実験は、ただ何時間か行われるだけであるため、前記触媒の長期間の活性及び選択性は、前記参考文献から推論することはできない。
また別の接近法がWO 01/92242から選択され、前記文献は、窒素が少なくとも1つの水素原子を保有したアミノカルボニル官能性を有する化合物の存在下において粗製の過酸化水素溶液を用いる、オレフィンのエポキシ化のためのチタンシリカライト触媒化工程を開示する。前記例示は、85%以下の過酸化水素の転換率で行われる回分式工程を示す。2時間後、前記転換率が85%に至らないとしても前記反応は終結される。前記実験データは、窒素原子に結合した水素原子のないアミノカルボニル官能性を有する化合物と比べて反応速度の観点において改善されたことを示しているとしても、連続式方法における触媒の長期間の活性及び選択性は、WO 01/92242から入手できる情報から推論することはできない。
DE-A 199 36 547は、反応温度の上昇及び前記反応混合物のpH調整により転換率が一定に維持される、過酸化水素を用いたオレフィンのエポキシ化のための連続式チタンシリカライト触媒工程を開示する。長期間の実験(1000時間)において、pH調整による温度の上昇及び上昇速度が、pHを調整せずに試験した場合と比べて減少することが立証され得る。しかし、転換率及び選択性は、pH調整の有無とは関係なく同一である。
従って、本発明の目的は、経済的に生産できるとともに、安全に取り扱い、貯蔵及び船積みすることができ、不均一触媒の存在下におけるオレフィンのエポキシ化に適合し、かつ前記触媒の長期間の活性及び選択性の改善を保証する過酸化水素水溶液を提供することである。
本発明の主題
本発明の目的は、下記を含む過酸化水素水溶液により達成される:
i)総合で50wppm未満のアルカリ金属、アルカリ土類金属またはこれらの組合せ物(前記アルカリ金属またはアルカリ土類金属は、カチオンまたは錯体の形態で存在してもよい);
ii)総合で50wppm未満の、p Bが4.5未満であるアミンまたはこれに対応するプロトン化化合物;及び
iii)総合で100wppm以上のアニオンまたは解離してアニオンを形成できる化合物、
ここで、前記wppmは、過酸化水素の重量を基準としたものである。
本発明の過酸化水素水溶液は、下記の段階を含む、アントラキノンループ方法による過酸化水素溶液の製造方法により得られる:
(a)有機溶媒または有機溶媒混合物、及び少なくとも1つの活性アントラキノン化合物を含む作業溶液の水素化反応段階;
(b)前記水素化された作業溶液の酸化反応により過酸化水素が形成される段階;
(c)過酸化水素を水により抽出する段階;
(d)抽出された過酸化水素水溶液を安定化させる段階;
(e)過酸化水素溶液の重量に対し、過酸化水素の濃度が50重量%以上になるように前記過酸化水素水溶液を濃縮する段階;
(f)抽出した後に、作業溶液を乾燥させる段階;及び
(g)作業溶液の再生及び精製段階、
ここで、全体工程の中でアルカリ金属またはアルカリ土類金属、またはp Bが4.5未満であるアミン、或いは前記工程の中でこのようなアミンを形成する化合物のうち何れも得られる過酸化水素水溶液に下記を発生させる量で導入されない:
i)総合で50wppm以上のアルカリ金属、アルカリ土類金属またはこれらの組合せ物(前記アルカリ金属またはアルカリ土類金属は、カチオンまたは錯体の形態で存在してもよい);または、
ii)総合で50wppm以上の、p Bが4.5未満であるアミンまたはこれに対応するプロトン化化合物;
ここで、前記wppmは、過酸化水素の重量を基準としたものである。
本発明の過酸化水素溶液は、不均一触媒の存在下でのオレフィンのエポキシ化工程における使用に特に適合する。本発明の驚きべき結果は、前記特定した要件を満たしており、安全に取り扱い、貯蔵及び船積みできる過酸化水素溶液を経済的な工程で容易に製造できるということである。さらに、驚いたことに、該過酸化水素水溶液は、エポキシ化工程中における不均一触媒の長期間の活性及び選択性を向上させる。結果的に、本発明の過酸化水素水溶液を用いることにより、エポキシ化工程の全体的な経済性が相当改善されたが、これは、前記溶液自体が経済的に生産でき、また前記触媒の不活性化を減少させることにより、エポキシ化工程中における再生周期の間の稼動時間が増加することを可能にするからである。
本発明者らの功績は、従来技術の教示とは相反して、前記一定の限界値のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の存在が、オレフィンのエポキシ化反応に用いられる触媒の活性及び選択性に有害であることを認識したことである。更に、本発明者らは、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の他に、p Bが4.5未満であるアミンが、前記触媒の活性及び選択性に更に有害であり、よってオレフィンのエポキシ化反応に用いられる過酸化水素溶液中のこれらの含量が、前記特定した限界以下となるように慎重に調節しなければならないということを認知した。一方、過酸化水素水溶液を安定化させるのに通常用いられるリン酸塩または硝酸塩のようなアニオンは、前記エポキシ化触媒の活性及び選択性に全く影響を及ぼさないかまたは単に極めて少ない影響しか及ぼさない。前記過酸化水素水溶液の取り扱い、貯蔵及び船積みの際の安全性を保障するために、前記安定化にこれらのアニオンが必要であるため、前記溶液中にこれらの過酸化水素を重量として100wppm以上の安定化させる量で存在しなければならない。
従来技術の教示に相反して、アルカリ金属及びp Bが4.5未満であるアミンの量を徹底して調節せずにはアントラキノン方法により得られた粗製の過酸化水素溶液を用いたり、または金属カチオンに加えて、前記安定化させるアニオンが除去される精製された過酸化水素溶液を用いることは、オレフィンのエポキシ化のための経済的な方法としては不適合である。
溶液中に過酸化水素の重量を基準として50wppm未満の量のアルカリ金属またはアルカリ土類金属が許容可能であるが、前記触媒の長時間の活性及び選択性を更に向上させるためには、これら成分の量を40wppm未満に減少させることが好ましく、35wppm未満に減少させることが更に好ましい。
これまでには、文献において、p Bが4.5未満であるアミンが、エポキシ化触媒の長時間の選択性及び活性に有害な影響を及ぼすということが認識されたところはない。
このようなアミンの存在による効果は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属による効果と比べて遥かに明確に示される。従って、過酸化水素水溶液中のp Bが、4.5未満であるアミンの総量を、前記溶液中の過酸化水素の重量を基準として40wppm未満、好ましくは30wppm未満、より好ましくは20wppm未満、最も好ましくは10wppm未満に減少させることが特に好ましい。
前記エポキシ化触媒の活性及び選択性に特に有害なのは、アルキルアミン、特に第2級及び第3級アルキルアミンの存在である。
本発明者らによるまた別の驚きべき調査結果は、p Bが4.5未満である前記一定量のアミンが、前記エポキシ化触媒の長時間の活性及び選択性を劇的に減少させてはいるが、p Bが4.5以上の塩基を100wppm以上に添加する場合、かえって前記エポキシ化触媒の長時間の活性及び選択性が改善されるということである。従って、本発明の好ましい具現例によると、前記過酸化水素水溶液は、p Bが4.5以上の塩基またはこれに対応するプロトン化化合物を、過酸化水素の重量を基準として総合で100wppm以上で更に含有する。
これらの塩基は、前記過酸化水素の製造工程の間に導入されるか、または溶液の製造から前記エポキシ化反応における最終使用の間の任意の段階において前記過酸化水素溶液に添加することができる。
このような塩基は、前記過酸化水素溶液中に過酸化水素の総重量を基準として、好ましくは総合で3000wppm以下、更に好ましくは150〜2000wppm、特に好ましくは200〜1500wppm、及び最も好ましくは300〜1200wppmの量で存在する。
このような塩基は、好ましくはp Bが4.5以上である有機アミン及びアミド、p Bが4.5以上である有機ヒドロキシルアミン、アンモニア及びヒドロキシルアミンから選択される。アンモニアが特に好ましい。
本発明の過酸化水素溶液の特別な長所は、アニオンが前記通常の安定化させる量で存在できるということである。これらの安定化させるアニオンは、好ましくはオルトリン酸塩、リン酸水素、二水素リン酸塩、ピロリン酸塩、硝酸塩のような任意の種類のオキソリンアニオンである。
これらの安定化させるアニオン、または過酸化水素溶液中で解離してこれらを安定化させるアニオンを生成させることができる化合物は、過酸化水素の重量を基準として1000wppm以下、好ましくは100〜1000wppm、更に好ましくは200〜800wppm、最も好ましくは200〜600wppmの量で存在する。
従って、本発明の過酸化水素溶液は、前記過酸化水素溶液の取り扱い、貯蔵及び船積みの際の安全性を損傷させずに、前記エポキシ化反応において触媒の高度な選択性及び活性を保障する。
本発明の過酸化水素溶液のまた別の長所は、周知のアントラキノン方法を用いて経済的な方式で容易にこれを製造できるということであり、これにより本発明の工程を行う際に、追加的な精製段階が必要でなく、好ましくは適用されない。アントラキノン方法の公知とされた変形と比較して、本発明の工程のために唯一必要なのは、前記過酸化水素溶液が、本発明によって特定された前記制限された濃度を提供する量で製造される間、アルカリ金属、アルカリ土類金属、p Bが4.5以下であるアミン、またはアントラキノン方法が行われる間においてアミンを形成できる化合物の導入を回避するために、前記方法が慎重に調節されなければならないということである。
このような必要条件を達成するためには非常に多様なアントラキノン方法が考慮されるが、特に好ましいことは、有機窒素化合物が本質的に存在しない作業溶液を用いて、従来技術のアントラキノン方法において乾燥のために通常用いられるアルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物を用いずに、前記段階(f)における作業溶液を乾燥させ、活性酸化アルミニウムで処理することによって、前記段階(g)における作業溶液を再生することである。好ましくは、乾燥は、真空において水を蒸発させることにより行われる。
従って、本発明の方法は、高費用の労働集約的な精製段階を利用しなくても、エポキシ化反応に特に有用な本発明の過酸化水素溶液を提供する。従って、本発明の方法により得られる粗製の過酸化水素溶液を、任意の追加的な精製段階なしに直ちに用いることができる。
前記過酸化水素溶液を、過酸化水素濃度が、過酸化水素溶液の総重量を基準として50重量%超過、好ましくは60重量%超過、最も好ましくは60〜70重量%となるように濃縮させることが好ましい。本発明者らは、このような濃縮された過酸化水素溶液が、前記触媒の長時間の活性及び選択性を更に改善させるため、前記エポキシ化反応に特に有用であることを認知した。
本発明の過酸化水素溶液は、当業界において公知とされた過酸化水素を用いる任意のエポキシ化反応に用いることができる。本発明の過酸化水素溶液を、水混和性溶媒及び不均一触媒の存在下において行われる連続的なエポキシ化工程に用いることが特に好ましい。好ましくは、前記溶媒はメタノールであり、前記オレフィンはプロペンであり、前記不均一触媒はチタンシリカライト触媒である。
本発明は、下記実施例を参考としてより詳細に説明されるであろう。
実施例1:
本発明による過酸化水素水溶液の製造
水素添加、酸化、抽出、乾燥及び再生の段階を含む過酸化水素製造用アントラキノン方法によるループ(loop)工程のための試験設備では、作業溶液は75体積%のC/C10アルキル置換されたアリール化合物及び25体積%のトリス(2−エチルヘキシル)ホスフェートを含有する溶媒混合物の中に0.11mol/lの2−エチルアントラキノン、0.29mol/lの2−エチルテトラヒドロアントラキノン、0.13mol/lの2−イソヘキシルアントラキノン及び0.12mol/lの2−イソヘキシルテトラヒドロアントラキノンを含有してなる。水素添加の段階において、ループ反応器は、0.35MPaの水素圧力及び58℃の温度において稼働された。パラジウムブラック(0.5:1g/l)が水素添加反応用触媒として用いられた。水素添加の際の前記過酸化水素の当量は13.0g/lであった。
水素を添加した後、水素添加された作業溶液の一部を活性の酸化アルミニウムを用いて再生した。次に、組み合わされた作業溶液を前記Ullmannの文献における第14頁に記載されたラポルト(Laporte)酸化反応を用いて酸化した。次に、前記過酸化水素を脱イオン水を用いて抽出した。前記抽出水に過酸化水素の重量を基準として50ppmのH3PO4及び20ppmのHNO3を添加した。前記抽出された過酸化水素水溶液の濃度は41%であった。前記作業溶液を真空下において水を蒸発させて乾燥させ、次に水素添加の段階において再循環させた。前記粗製の過酸化水素溶液を、過酸化水素の重量を基準として200ppmのピロリン酸ナトリウムを用いて安定化させ、真空下において水を蒸発させて濃縮した。
このような方法により得られた溶液の過酸化水素の濃度は、溶液の総重量を基準として43重量%であり、250mg/kgのH22のリン酸塩、20mg/kgのH22の硝酸塩及び30mg/kgのH22のナトリウムを含有した。
実施例2乃至5及び比較例1乃至
実施例1において得られた過酸化水素溶液を表1に示されたような過酸化水素の濃度で濃縮した。
アルカリ金属イオン及び/又はp Bが4.5未満であるアミンを表1に記載のとおりに更に添加した。更に、アンモニアを過酸化水素重量を基準として500wppm(実施例5では、1000wppm)の量で添加した。
全ての実施例及び比較例においてチタン−シリカライト触媒を用いた。前記チタン−シリカライト粉末をEP-A 1 183 387の実施例5に従って、結合剤としてシリカゾルを用いて2mm押出体に形成させた。
エポキシ化は、300mlの容量、10mmの直径及び4mの長さを有する反応管において連続式に行われた。前記装置は、液体用3個の容器と関連ポンプ及び液体分離用ベッセルを更に含む。前記液体用3個の容器は、メタノール、過酸化水素溶液及びプロペンを含有した。反応温度は、冷却ジャケット内で循環する水性冷却液により調節され、前記冷却液の温度は、自動温度調節装置により調節された。反応圧力は2700000Pa(27バール絶対圧であった。供給ポンプの質量流量は、38重量%のプロペン濃度、48.7重量%のメタノールの供給濃度及び8重量%の過酸化水素の供給濃度となるように調整された。前記反応器を下降流(down-flow)稼動方式で稼動させた。前記冷却ジャケットの温度を35℃に調節し、総質量流量は0.35kg/hであった。生成物の排出量及び酸化プロペンの濃度は、ガスクロマトグラフィーにより決定され、過酸化水素の転換率は滴定(titration)により測定された。POに対する過酸化水素の選択率を計算した。
その結果を表1に示す。
Figure 0004528625
表2には、含窒素塩基のp Bの値を示す。
Figure 0004528625
表1にまとめられた実験結果から明らかなように、アルカリ金属の濃度が、過酸化水素の重量を基準として50wppm未満である場合、高い水素転換率及び選択性を長時間の実験を行う間維持することができる。前記比較例を参照すると、アルカリ金属イオン及びp Bが4.5未満であるアミンが請求された限界を超過する場合、転換率及び触媒の選択性が時間の経時的に急激に減少するということが明白になる。

Claims (18)

  1. 下記を含む過酸化水素水溶液:
    i)総合で50wppm未満のアルカリ金属、アルカリ土類金属またはこれらの組合せ物(前記アルカリ金属またはアルカリ土類金属は、カチオンまたは錯体の形態で存在してもよい);
    ii)総合で50wppm未満の、p Bが4.5未満であるアミンまたはこれに対応するプロトン化化合物;及び
    iii)総合で100wppm以上のアニオンまたは解離してアニオンを形成できる化合物、
    ここで、前記wppmは、過酸化水素の重量を基準としたものである。
  2. i)群の成分の総量が、過酸化水素の重量を基準として40wppm未満である、請求項1に記載の過酸化水素水溶液。
  3. ii)群の成分の総量が、過酸化水素の重量を基準として40wppm未満である、請求項1又は2に記載の過酸化水素水溶液。
  4. 前記アミンが、第1級第2級及び第3級アルキルアミンから選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の過酸化水素水溶液。
  5. 下記を更に含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の過酸化水素水溶液。
    iv)過酸化水素の重量を基準として総合で100wppm以上の、p Bが4.5以上である塩基またはこれに対応するプロトン化化合物。
  6. iv)群の成分の総量が、過酸化水素の重量を基準として3000wppm以下である、請求項5に記載の過酸化水素水溶液。
  7. iv)群の塩基が、p Bが4.5以上である有機アミン及びアミド、p Bが4.5以上である有機ヒドロキシルアミン、アンモニア及びヒドロキシルアミンから選択される、請求項5又は6に記載の過酸化水素水溶液。
  8. 過酸化水素の濃度が、前記過酸化水素溶液の総重量を基準として50重量%超過である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の過酸化水素水溶液。
  9. 下記の段階を含む、アントラキノンループ方法による、請求項1〜8のいずれか一項に記載の過酸化水素水溶液の製造方法:
    a)有機溶媒または有機溶媒混合物、及び少なくとも1つの活性アントラキノン化合物を含む作業溶液の水素化反応段階;
    b)前記水素化された作業溶液の酸化反応により過酸化水素が形成される段階;
    c)過酸化水素を水により抽出する段階;
    d)抽出された過酸化水素水溶液を安定化させる段階;
    e)過酸化水素水溶液の重量に対し、過酸化水素の濃度が50重量%以上になるように前記過酸化水素水溶液を濃縮する段階;
    f)抽出した後に、作業溶液を乾燥させる段階;及び
    g)作業溶液の再生及び精製段階、
    ここで、全体工程の中でアルカリ金属またはアルカリ土類金属、またはpKBが4.5未満であるアミン、或いは前記工程の中でこのようなアミンを形成する化合物のうち何れも得られる過酸化水素水溶液に下記:
    i)総合で50wppm以上のアルカリ金属、アルカリ土類金属またはこれらの組合せ物(前記アルカリ金属またはアルカリ土類金属は、カチオンまたは錯体の形態で存在してもよい);
    または、
    ii)総合で50wppm以上の、pKBが4.5未満であるアミンまたはこれに対応するプロトン化化合物;
    を発生させる量で導入されず及び
    iii)総合で100wppm以上のアニオンまたは解離してアニオンを形成できる化合物が得られる過酸化水素水溶液に添加される、
    ここで、前記wppmは、過酸化水素の重量を基準としたものである。
  10. −前記作業溶液が、有機窒素化合物を含んでおらず、
    −段階f)において、前記作業溶液の乾燥が、アルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物を用いずに行われ、
    −段階g)における作業溶液の再生が、活性酸化アルミニウムで処理することにより行われる、請求項9に記載の方法。
  11. 乾燥が真空中での水の蒸発により行われる、請求項10に記載の方法。
  12. 前記抽出された過酸化水素水溶液に対していかなる追加的な精製も行われない、請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。
  13. アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含有せずに、p Bが4.5以上である少なくとも1つの塩基を、最終過酸化水素水溶液中でのこのような塩基またはこれに対応するプロトン化化合物が、過酸化水素の重量を基準として、総合で100wppm以上に生成する量で添加する、請求項9〜12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 前記塩基が、p Bが4.5以上である有機アミン及びアミド、p Bが4.5以上である有機ヒドロキシルアミン、アンモニア及びヒドロキシルアミンから選択される、請求項13に記載の方法。
  15. 前記塩基が、前記過酸化水素溶液の製造工程の間または過酸化水素溶液の製造から最終使用の間における任意の段階において添加される、請求項13又は14に記載の方法。
  16. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の過酸化水素水溶液及び請求項9〜15のいずれか一項に記載の方法により得られる過酸化水素水溶液のオレフィンのエポキシ化のための使用
  17. 前記エポキシ化が、水混和性溶媒の中及び不均一触媒の存在下において行われる、請求項16に記載の使用
  18. 前記溶媒がメタノールであり、前記オレフィンがプロペンであり、前記不均一触媒がチタンシリカライト触媒である、請求項17に記載の使用
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