JP4526430B2 - 軸受ブッシュ及びこれを用いた複合運動装置 - Google Patents

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Description

本発明は、スプライン軸等の軸部材の軸方向への進退運動を支承する軸受ブッシュに関するものであり、例えば、スプライン軸を主軸とし、かかるスプライン軸を進退させながら該スプライン軸に回転運動を与えることが可能な複合運動装置において、そのスプライン軸の進退運動の支承に利用される軸受ブッシュに関する。
NC工作機械におけるワークの自動供給装置やツールの自動交換装置の主軸としては、軸方向へ自在に進退しつつも、回転運動を高精度になし得るものが必要とされており、主軸の軸方向への移動を支承すると共に該主軸に対して回転トルクを伝達するものとして、スプライン軸とスプラインナットの組み合わせが用いられている。
特に、多数のボールを介してスプライン軸にスプラインナットが組付けられたボールスプラインでは、前記ボールに与圧を与えることにより、スプラインナットとスプライン軸との間で回転トルクを伝達した際に、これら両者の間にバックラッシュが発生せず、回転トルクを伝達しながらもスプライン軸を円滑に進退させることができる。
従来、このようなボールスプラインを用いた複合運動装置の一例としては、軸方向に沿って複数条のボール転走溝が形成されたスプライン軸と、多数のボールを介してこのスプライン軸に組付けられると共に軸方向へ往復動自在なスプラインナットと、このスプラインナットを収容すると共に前記スプライン軸が貫通する略円筒状のハウジングと、このハウジングに取り付けられるプーリやギヤ等の回転伝達部材とから構成されたものが知られている。
前記ハウジングに回転伝達部材を設ける場合、スプラインナットに重ねて設けると、回転伝達部材の外径が大きくなり、装置の大型化、コストアップに結びつくことから、前記ハウジングを大径部と小径部とが連続した段付きの円筒状部材とし、大径部をスプラインナットの収容部に、小径部を回転伝達部材の取付部として利用している。
その反面、ハウジングをこのような段付きの円筒状部材とし、スプラインナットと回転伝達部材をハウジングの軸方向へ互いにずらして配置すると、回転伝達部材からハウジングに対して作用したラジアル荷重(スプライン軸の軸方向に垂直な荷重)がスプラインナットに対してモーメント荷重として作用してしまい、ハウジングの小径部の先端を何らスプライン軸に対して支承しない場合には、かかるハウジングがスプライン軸に対して傾いてしまうといった不都合がある。
このため、ハウジングの小径部の先端とスプライン軸との間には、合成樹脂製の軸受ブッシュを配置し、スプラインナットに作用するモーメント荷重の軽減を図っていた。この軸受ブッシュはハウジングの小径部の内周面に対して圧入されているものの、スプライン軸に対するハウジングの摺動抵抗の増加を抑えるために、スプラインナットに対しては微小な隙間(例えば、スプライン軸の外径6mmの場合に0〜24μm程度)を介し、所謂すきまばめの状態でスプライン軸に嵌合していた。
しかし、このようにハウジングの小径部に固定した樹脂製の軸受ブッシュをすきまばめの状態でスプライン軸に嵌合させていると、極めて僅かではあるが、スプライン軸と軸受ブッシュとの間に隙間が存在することから、軸受ブッシュとスプライン軸との接触状態が不安定となり、スプライン軸に対するハウジングの摺動抵抗が変動する等して、ハウジングの軸方向への進退運動の精度が損なわれ易いといった問題点があった。
また、軸受ブッシュの内径寸法、スプライン軸の外径寸法を厳密に管理することが必要となり、却って生産コストが嵩んでしまうといった問題点もあった。
従来、合成樹脂製の軸受ブッシュを使用した軸部材の案内装置としては、特開2001−12472号公報に開示されるように、かかる軸受ブッシュと軸部材とが所謂締まりばめ状態で圧接したものが知られている。この案内装置では、軸受ブッシュの内径と軸部材の外径を寸法管理することにより、両部材を嵌合させた際の締め代を管理し、それによって軸受ブッシュの軸部材に対する摺動抵抗を所定の範囲内に納めている。
特開2001−12472号公報
しかし、摺動抵抗を高めずに軸受ブッシュと軸部材との隙間を完全に排除するには、やはり軸受ブッシュの内径と軸部材の外径の寸法管理を厳密に行わなければならず、生産に手間がかかるといった不都合があった。
本発明はこのような問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、軸受ブッシュと軸部材との隙間を排除して両者間のガタつきを排除し、かかる軸部材が良好に進退運動を行い得ると共に、軸受ブッシュ及び軸部材の双方における寸法管理の負担を軽減し、安価に製造することが可能な軸受ブッシュを提供することにある。
すなわち、本発明は、軸部材の軸方向への往復運動を支承する軸受ブッシュであって、前記軸部材が貫通する受入孔を有し、この受入孔に面した内周面には溝が所定の間隔をおいて繰り返し形成されている。そして、この軸受ブッシュの内周面は軸部材との間に隙間を形成することなく、かかる軸部材に圧接している。
このような本発明によれば、前記軸受ブッシュの内周面には溝が所定の間隔をおいて繰り返し形成されていることから、軸受ブッシュを締まりばめで軸部材に嵌合させたとしても、軸部材と圧接した軸受ブッシュの摺接面は比較的容易に押しつぶされ、軸部材に対する圧接力を緩和することができる。また、軸受ブッシュと軸部材の接触面積も小さくすることができる。
このため、軸受ブッシュと軸部材の間の隙間を排除しつつも、両者の間の摺動抵抗を小さく抑えることができ、軸受ブッシュに対する軸部材の進退運動の精度を高めることが可能となる。また、軸受ブッシュの内周面に複数条の溝を形成したことにより、軸部材と圧接した軸受ブッシュの摺接面は比較的容易に押しつぶされて変形することから、軸受ブッシュの内径寸法の管理を厳密に行わずとも、軸部材に対する軸受ブッシュの摺動抵抗を小さく抑えることが可能であり、その分だけ安価に製造することが可能となる。
本発明に用いる軸受ブッシュとしては、金属製、合成樹脂製のいずれであっても差し支えないが、軸受ブッシュとスプライン軸とを締まりばめ状態で嵌合させた際に生じる圧接力を低減するという観点からすれば、合成樹脂を用いる方が好ましい。
このような本発明の軸受ブッシュは前述した複合運動装置に利用することができる。かかる複合運動装置ではスプライン軸の進退がスプラインナットに具備された多数のボールにより支承されており、かかるスプライン軸が大きな加速度、減速度で進退すると、ボールの転走に伴った振動がスプライン軸に作用する。しかし、本発明では軸受ブッシュを用いてスプライン軸の進退運動を支承した場合、かかる軸受ブッシュはスプライン軸に圧接することから、スプライン軸の振動に対する減衰効果が向上し、スプライン軸が大きな加速度、減速度で進退する場合であっても、かかるスプライン軸の位置決め制定時間が短くなる傾向にある。これにより、この複合運動装置を使用した作業におけるタクトタイムを短くすることができ、生産性の良好な機械装置を作り出すことができる。
また、本発明の軸受ブッシュはリニアモータアクチュエータにおける出力ロッドの進退運動の支承に利用することができる。リニアモータアクチュエータの一例として、多数の磁極が配列されたマグネットロッドと、このマグネットロッドの周囲に遊嵌すると共に前記マグネットロッドを軸方向へ駆動するコイル部材とから構成されるものが知られている。このマグネットロッドを出力ロッドとして使用する場合、かかるマグネットロッドの進退運動を軸受部材によって支承する必要があり、この軸受部材として本発明の軸受ブッシュを用いれば、軸受ブッシュとマグネットロッドの間の隙間を排除し、両者の間の摺動抵抗を小さく抑えることができ、軸受ブッシュに対するマグネットロッドの進退運動の精度を高めることが可能となる。
以下、添付図面に基づいて本発明の軸受ブッシュを詳細に説明する。
図1は本発明の軸受ブッシュを使用してスプライン軸の進退運動を支承した複合運動装置の一例を示すものである。この装置は工具交換装置等の主軸として利用されるものであり、かかる主軸として使用されるスプライン軸1と、このスプライン軸1の軸方向へ往復動自在なスプラインナット2と、このスプラインナット2を保持すると共に固定部Bに対して回転自在に支承されたハウジング3と、このハウジング3の一端に設けられると共に前記ハウジング3に対するスプライン軸1の進退を案内する軸受ブッシュ4とから構成されている。
スプライン軸1は図示外のボールねじ装置、あるいは油圧シリンダ、空気圧シリンダ等によって軸方向の進退運動が与えられ、かかる進退運動が前記スプラインナット2によって支承されるようになっている。また、前記ハウジング3にはタイミングベルトをかけ回したプーリやギヤ等の回転伝達部材5が固定されており、ハウジング3に対して外部から回転トルクが与えられ、この回転トルクがスプラインナット2を介してスプライン軸1に伝達され、かかるスプライン軸1を任意に回転させることができるようになっている。
図2は前記スプライン軸1とスプラインナット2を組み合わせたボールスプラインの一例を示すものである。前記スプライン軸1は断面略円形状に形成され、その外周面には軸方向に沿って複数条のボール転走溝10が形成されている。一方、前記スプラインナット2は前記スプライン軸1が貫通する貫通孔を有して略円筒状に形成され、スプライン軸1のボール転走溝10を転走する多数のボール20を介して該スプライン軸1に組付けられている。また、このスプラインナット2は前記ボール20が循環する無限循環路21を具備しており、ボール20を無限循環路21内で循環させながらスプライン軸1に沿って連続的に移動することができるようになっている。スプライン軸1とスプラインナット2の間で荷重を負荷しながら転走するボール20に対しては予圧が与えられており、スプラインナット2とスプライン軸1との間のバックラッシュが排除され、スプラインナット2からスプライン軸1へ回転トルクを伝達している最中でも、かかるスプライン軸1を円滑に且つ精度良く軸方向へ進退させることができるようになっている。
前記ハウジング3はスプライン軸1の周囲を覆う略円筒状をなしており、前記スプラインナット2を収容した大径部30と、この大径部30よりも外径が小さな小径部31とを具備し、全体として段付き円筒状に形成されている。前記大径部30の外周面には図示外の回転ベアリングが取り付けられ、これによってハウジング3が固定部Bに対して回転自在に支承されている。また、大径部30の内径側には前記スプラインナット2が嵌合しており、大径部30を径方向へ貫通するボルトによって該大径部30に固定されている。
一方、前記小径部31は前記大径部30よりも小さな外径で形成されており、その外周面には例えばプーリなどの回転伝達部材5が固定されるようになっている。また、小径部31の内径は前記スプライン軸1の外径よりも僅かに大きく形成されており、かかるスプライン軸1が小径部31の内部で軸方向へ自在に進退し得るように構成されている。
この小径部31側におけるハウジング3の一端、すなわち小径部31の先端には軸受ブッシュ4が取り付けられ、ハウジング3に対するスプライン軸1の進退運動を案内している。この軸受ブッシュ4は、摩擦摩耗特性に優れると共に自己潤滑性があり、加えて高い弾性率を備えた合成樹脂(例えばポリアセタール等)から形成されており、図3に示すように、ハウジング3の小径部31の内周面とスプライン軸2の外周面との間に介装されている。この軸受ブッシュ4はスプライン軸1が貫通する受入孔を有して略円筒状に形成されており、ハウジング3の小径部31の内周面に対して圧入されて固定される。また、前記受入孔の内径はスプライン軸1の外径と同じかそれよりも小さく形成されており、スプライン軸1の外周面に対して所謂締まりばめの状態で圧接している。この締まりばめは、例えば締め代をγ、軸径をDとした場合に、γ=D/1000程度である。
図3及び図4に示すように、軸受ブッシュ4の内周面には周方向に沿って複数条の溝40が所定の間隔をおいて形成されており、溝40以外の円環状の突部41の先端がスプライン軸1の外周面に圧接している。このため、軸受ブッシュ4が締まりばめの状態でスプライン軸1に嵌合しても、軸受ブッシュ4の内周面に形成された前記突部41の先端がスプライン軸1によって押しつぶされて容易に弾性変形し、軸受ブッシュ4とスプライン軸2との圧接力が軽減されることになる。これにより、軸受ブッシュ4を締まりばめの状態でスプライン軸1に嵌合させても、両者の間に作用する摺動抵抗を軽減することが可能となる。また、軸受ブッシュ4の内周面に複数状の溝を形成したことにより、スプライン軸1と軸受ブッシュ4の接触面積は溝40を形成しない場合に比較して小さくなるので、これによっても軸受ブッシュ4とスプライン軸1との間の摺動抵抗を低減することができるものである。
更に、このように周方向に沿った複数の溝40を軸受ブッシュ1の内周面に形成し、これら溝40に挟まれた複数の突部41をスプライン軸2の外周面に圧接せるように構成すれば、これらの突部41が進退するスプライン軸1の外周面を繰り返し拭うことになるので、軸受ブッシュがシール装置として機能し、スプライン軸1に付着した塵芥がハウジング3内に侵入するのを効果的に防止することができる。
軸受ブッシュ4としては前述の如く自己潤滑性を備えた合成樹脂を使用することができるが、前記溝40に対して予めグリースを充填しておき、スプライン軸1の進退運動に応じて溝40内のグリースがスプライン軸1の外周面に塗布されるように構成しても良い。また、このように軸受ブッシュの溝内にグリースを充填すれば、軸受ブッシュのシール装置としての機能を更に向上させることができる。
以上のように構成された複合運動装置では、例えばハウジング3の小径部31に固定されたプーリ5に対してタイミングベルト50で回転駆動力を伝達すると、固定部Bに対して回転自在に支承されたハウジング3を回転させることができる。これにより、スプラインナット2を介してハウジング3に支承されたスプライン軸1に対して回転トルクを伝達し、かかるスプライン軸1をその軸芯の周囲で任意に回転させることができる。また、このようにスプライン軸1が回転している状態で、かかるスプライン軸1をその軸方向へ任意に進退させることが可能となっている。
そして、ハウジング3の小径部31に対してスプライン軸1を案内する軸受ブッシュ4を設け、かかる軸受ブッシュ4をスプライン軸1に対して締まりばめで嵌合させたことから、これら両者の間における隙間が排除され、スプライン軸1を常に安定した摺動抵抗で円滑に案内することができるものである。
また、締まりばめによってスプライン軸1と軸受ブッシュ4を圧接させてはいるが、かかる軸受ブッシュ4の内周面に複数条の溝40を設けたことにより、前述の如く両者の圧接力を低減させ、更に接触面積を減少させることができるので、軸受ブッシュ4に対するスプライン軸1の摺動抵抗を小さく抑えることが可能となっている。
更に、軸受ブッシュ4の内周面に複数条の溝40を設けた結果として、スプライン軸1に接している突部41の先端は比較的容易に押しつぶされて変形するので、軸受ブッシュ4とスプライン軸1を締まりばめで嵌合させるに当たり、軸受ブッシュ4の内径寸法の管理をさほど厳密に行わずとも、スプライン軸1に対する軸受ブッシュ4の摺動抵抗を小さく抑えることが可能となる。これにより、軸受ブッシュ4の製作における寸法管理の手間が軽減され、その分だけ安価に本装置を製造することが可能となる。
実際に、外径6mm(公差0〜−0.012mm)のスプライン軸に対して、軸方向長さ3mm、外径8mm、内径6mm(公差0〜−0.010mm)の軸受ブッシュを嵌合させ、この軸受ブッシュに対するスプライン軸のガタつき、摺動抵抗の増加について検証した。かかる軸受ブッシュの内周面には幅0.75mm、深さ0.4〜0.7mmの溝を4本形成した。その結果、軸受ブッシュに対するスプライン軸のガタつきはなく、スプライン軸を円滑に案内することができた。また、摺動抵抗の増加は実用上十分に許容できるものであった。
図3に示した軸受ブッシュ4では、溝40の断面形状が矩形状をなしており、突部41も矩形状をなしているが、突部41の先端をより弾性変形し易くするといった観点からすれば、溝40の断面を三角形状とし、突部41の先端が尖塔状に形成されるのが好ましい。
尚、図3及び図4に示した軸受ブッシュ4では、その内周面に対して複数の溝40が互いに平行に形成されているが、これら溝40は連続した1本又は複数本の螺旋状溝として形成することも可能である。
図5は軸受ブッシュ4の他の例を示すものである。図3及び図4に示した軸受ブッシュ4では、その内周面に対して周方向に沿った溝40が形成されていたが、この図5に示す軸受ブッシュ6では、軸方向に沿った複数条の溝60を形成し、これらの溝によって挟まれた突条61をスプライン軸1の外周面に締まりばめで圧接させた。この軸受ブッシュ6でも前述の軸受ブッシュ4を用いた場合と同様の効果を得ることができた。
図6はハウジング3の小径部31の内部に潤滑剤の供給部材7を設けた例を示すものである。この供給部材7は前記軸受ブッシュ4と隣接しており、ハウジング3の小径部31の内周面に嵌合するリング部材70と、このリング部材70の内周面に固定されると共に潤滑剤が含浸されたフェルト等の塗布体71とから構成されている。前記塗布体71はスプライン軸1の外周面に接しており、スプライン軸1が進退すると、その外周面に対して必要最小限の潤滑剤を塗布するようになっている。前述の如く、本発明の軸受ブッシュ4はハウジング3の小径部31とスプライン軸1との間を密封するシール装置としても機能していることから、かかる軸受ブッシュ4に隣接して小径部31の内部に潤滑剤の供給部材7を設ければ、スプライン軸1に塗布された潤滑剤が外部に流出することはなく、また、軸受ブッシュ4により細かな塵芥が拭いさられたスプライン軸1の外周面に対して潤滑剤を塗布するので、一層の潤滑性能の向上を図ることができる。
図7は、本発明の軸受ブッシュをリニアモータアクチュエータ8における出力ロッドの支承に用いた例を示すものである。このリニアモータアクチュエータ8は、貫通孔80が形成されたハウジング81と、前記貫通孔81を貫くようにして設けられると共に軸方向に沿って所定のピッチで多数の磁極が配列された出力ロッド82と、この出力ロッド82の周囲に遊嵌すると共に前記ハウジング81に固定され、前記出力ロッド82を軸方向へ駆動するコイル部材83と、前記貫通孔の両端開口部においてハウジング81に固定されると共に前記出力ロッドの進退を支承する一対の軸受部材84,84から構成されており、前記出力ロッド82を軸方向へ自在に進退運動させ、任意の位置に停止させることができるようになっている。
前記出力ロッド82とコイル部材83はリニアモータを構成しており、前記コイル部材83は出力ロッド82の周囲に僅かな隙間を介して遊嵌している。前記出力ロッド82には複数の永久磁石が着磁されると共に、これら永久磁石が軸方向に沿って配列されており、外周面は円滑に加工されている。図8に示すように、各永久磁石84はN極及びS極を有しており、互いに隣接する永久磁石84はN極同士またはS極同士が対向するように交互に向きを逆転させて配列されている。これにより、出力ロッド82にはその長手方向に沿ってN極の磁極とS極の磁極が交互に並んだ駆動用の着磁部が形成され、これが界磁マグネットとなっている。
図8及び図9はこのリニアモータの作動原理を示すものである。コイル部材83はU,V及びW相の3つの励磁コイル86を1組とするコイル群を有している。いずれの相の励磁コイル86もリング状であり、出力ロッド82の外周面と僅かな隙間を介して対向している。また、各相の励磁コイル86の配列ピッチは永久磁石84の配列ピッチよりも短く設定される。出力ロッド82にはS極の磁極からN極の磁極に向かって磁束85が形成されており、コイル部材83にはその磁束密度を検出する磁極センサ(図示せず)が内蔵されている。従って、この磁極センサの出力する検出信号から励磁コイル86に対する出力ロッド82の各磁極(N極及びS極)の位置関係が把握される。励磁コイル86への通電を制御しているコントローラは前記磁極センサの検出信号を受信し、励磁コイル86と出力ロッド82の各磁極との位置関係に応じた最適な電流を演算し、それを各励磁コイル86に通電する。その結果、各励磁コイル86に流れる電流と永久磁石84によって形成される磁束85との相互作用によって、励磁コイル86と永久磁石84の各磁極との間に吸引力及び反発力が発生し、ハウジング81に固定されたコイル部材83に対して出力ロッド82が軸方向へ推進されることになる。
前記コイル部材を収容したハウジング61は熱伝導性に優れたアルミニウムで形成されている。前記励磁コイル86に通電した際に該励磁コイル86で発生する熱を効率よくハウジング81に伝達すると共に、周辺雰囲気中に放熱し、励磁コイル86そのものを効果的に冷却するという観点からすれば、ハウジング81の表面には複数の放熱フィンを形成するのが好ましい。
このハウジング81に対して前記出力ロッド82を支承している一対の軸受部材84としては、前述の複合運動装置で使用した本発明の軸受ブッシュをそのまま適用することができる。
すなわち、前記軸受部材84として図4に示した本発明の軸受ブッシュ4を使用すれば、かかる軸受ブッシュ4は出力ロッド82に対して締まりばめで嵌合することから、これら両者の間における隙間が排除され、出力ロッド82を常に安定した摺動抵抗で円滑に案内することができるものである。
また、締まりばめによって出力ロッド82と軸受ブッシュ4を圧接させてはいるが、かかる軸受ブッシュ4の内周面に複数条の溝40を設けたことにより、前述の如く両者の圧接力を低減させ、更に接触面積を減少させることができるので、軸受ブッシュ4に対する出力ロッド82の摺動抵抗を小さく抑えることが可能となっている。
更に、軸受ブッシュ4の内周面に複数条の溝40を設けた結果として、出力ロッド82に接している突部41の先端は比較的容易に押しつぶされて変形するので、軸受ブッシュ4と出力ロッド82を締まりばめで嵌合させるに当たり、軸受ブッシュ4の内径寸法の管理をさほど厳密に行わずとも、出力ロッド82に対する軸受ブッシュ4の摺動抵抗を小さく抑えることが可能となる。これにより、軸受ブッシュ4の製作における寸法管理の手間が軽減され、その分だけ安価にリニアモータアクチュエータを製造することが可能となる。
本発明の軸受ブッシュを利用した複合運動装置の実施の形態を示す正面断面図である。 本発明の複合運動装置に使用可能なボールスプラインの例を示す斜視図である。 軸受ブッシュとスプライン軸の接触状態を示す拡大図である。 軸受ブッシュを示す側面図である。 軸受ブッシュの他の例を示す側面図である。 軸受ブッシュに隣接して潤滑剤の供給部材を設けた例を示す拡大図である。 本発明の軸受ブッシュを利用したリニアモータアクチュエータの実施の形態を示す正面断面図である。 実施の形態に係るリニアモータの動作原理を示す側面図である。 実施の形態に係るリニアモータの動作原理を示す正面図である。
符号の説明
1…スプライン軸、2…スプラインナット、3…ハウジング、4…軸受ブッシユ、40…溝、41…突部

Claims (7)

  1. 軸方向に沿って複数条のボール転走溝が形成されたスプライン軸と、多数のボールを介してこのスプライン軸に組付けられると共に軸方向へ往復動自在なスプラインナットと、大径部と小径部とが連続した段付きの円筒状部材として形成され、前記スプライン軸が大径部及び小径部を貫通すると共に、前記大径部をスプラインナットの収容部に、前記小径部の外周面を回転伝達部材の取付面にしたハウジングと、このハウジングの小径部に固定されると共に前記スプライン軸の進退を支承する軸受ブッシュから構成され、
    前記軸受ブッシュは合成樹脂から形成され、前記スプライン軸が貫通すると共に内径が当該スプライン軸の外径と同じかそれよりも小さく形成された受入孔を有し、また、この受入孔に面した内周面には溝が所定の間隔をおいて繰り返し形成され、前記スプライン軸の外周面に対して締まりばめの状態で嵌合して前記溝以外の突部がスプライン軸の外周面に圧接することを特徴とする複合運動装置。
  2. 前記軸受ブッシュをなす合成樹脂は高い弾性率を備えていることを特徴とする請求項1記載の複合運動装置。
  3. 前記内周面の溝は周方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項1記載の複合運動装置。
  4. 前記内周面の溝は螺旋状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の複合運動装置。
  5. 前記軸受ブッシュはハウジングの小径部に圧入されていることを特徴とする請求項1記載の複合運動装置。
  6. 前記軸受ブッシュの内周面の溝に対してグリースが充填されていることを特徴とする請求項1記載の複合運動装置。
  7. 前記ハウジングの小径部内には、前記軸受ブッシュよりも内側の位置に該軸受ブッシュと隣接して、前記スプライン軸の外周面に潤滑剤を塗布する潤滑剤供給部材が設けられていることを特徴とする請求項1記載の複合運動装置。
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