JPH07293559A - すべり軸受 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【目的】潤滑剤切れを生じることがなく、且つ潤滑剤で
周辺を汚染することもない、摩擦特性，摩耗特性に優れ
たすべり軸受を提供する。 【構成】すべり軸受１は、軸４に対向する合成樹脂製の
すべり軸受本体２と、多孔質合成樹脂材に潤滑油を含浸
してなる潤滑剤供給部材３とを有している。軸４に対向
する潤滑剤供給部材３に含有された潤滑油が長期にわた
り徐々に滲み出して、軸受１の滑り面１ａ及び軸４のす
べり面４ａに徐々に供給されるように構成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、事務用機器，音響機
器，測定機器等に使用され、軸に対して相対すべり運動
するすべり軸受に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、機器を構成する部品の移動をすべ
り案内する機構として、例えば軸に嵌合して摺動するス
リーブ型のすべり軸受が用いられている。このものは、
その内周の軸受すべり面が軸の外周のすべり面に対向し
ている。この従来のすべり軸受の材料として、自己潤滑
性が良好な合成樹脂が単体で用いられている。または、
合成樹脂材料の摩擦，摩耗特性の改善のために、例えば
合成樹脂に潤滑油を数重量％しみ込ませるなどのよう
に、固体潤滑剤や潤滑油、あるいはカーボン繊維などの
耐摩耗性繊維状物等を単独もしくは複合して合成樹脂中
に分散含有させることも行われている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、合成樹
脂単体にせよ、あるいは合成樹脂に潤滑剤や繊維状物等
を分散含有したものにせよ、すべり面の耐摩擦性，耐摩
耗性という点では未だ満足し得るものはなかった。その
ため軸受のすべり面に潤滑油またはグリースなどの潤滑
剤を塗布して使用することが多い。

【０００４】しかしその場合、塗布量が少ないと、軸受
使用の初期の摩擦係数は低くなるが短時間の使用で「潤
滑剤切れ」を生じて軸受の摩擦，摩耗特性が著しく低下
するという問題点がある。また、反対に潤滑剤の塗布量
が多すぎると、「潤滑剤垂れ」を生じたり、軸受摺動時
に潤滑剤が飛散したりする現象が生じて周辺が汚染され
るという問題点がある。

【０００５】そこで本発明は、上記従来の問題点に着目
してなされたものであり、潤滑剤切れを生じることがな
く、且つ潤滑剤で周辺を汚染することもない、摩擦特
性，摩耗特性に優れたすべり軸受を提供することを目的
としている。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記の目的を達成する本
発明は、軸に対して相対すべり運動するすべり軸受に係
り、軸に対向する合成樹脂製のすべり軸受本体と、同じ
く軸に対向すると共に多孔質合成樹脂材に潤滑剤を含浸
してなる潤滑剤供給部材とを有していることを特徴とす
るものである。

【０００７】ここで、前記すべり軸受本体は、ポリテト
ラフルオロエチレン（ＰＴＦＥ）を主成分とする合成樹
脂よりなるものとすることができる。また、前記潤滑剤
供給部材の多孔質合成樹脂材は、ポリウレタンを材料と
する多孔質のフェルト状部材よりなるものとすることが
できる。

【０００８】

【作用】本発明のすべり軸受は、軸に対して相対すべり
移動する。そのとき、軸に対向している潤滑剤供給部材
に含浸されている多量の潤滑剤が徐々に滲み出して、す
べり軸受のすべり面と軸のすべり面とに供給される。潤
滑油の供給は長時間にわたり適量ずつ行われる。

【０００９】また、潤滑油は潤滑剤供給部材に含浸され
ているため「潤滑剤垂れ」を生じることはなく、軸受摺
動時に潤滑剤が飛散することもない。ここで、すべり軸
受本体を、摩擦特性に優れるポリテトラフルオロエチレ
ンを主成分とし、これに摩耗特性向上物質を混合した合
成樹脂製とすることにより、摩擦特性と摩耗特性とが共
に向上する。

【００１０】また、潤滑剤供給部材の合成樹脂材を、ポ
リウレタンを材料とする多孔質のフェルト状部材とする
ことにより、耐摩耗特性，耐油性，親油性，毛細管現象
に優れ、且つ使用中に膨潤したり形くずれせず、潤滑剤
の保持力も良好である。しかも、使用中に摺動特性を阻
害する毛屑等も発生しない。

【００１１】

【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明
する。図１は第１の実施例を表したものである。この実
施例のすべり軸受１は、金属製又は合成樹脂製の外筒５
と、その外筒５の内面の長手方向の両端部に外筒端面か
ら僅かに奥に引っ込めてそれぞれ設けられた合成樹脂製
の円筒状のすべり軸受本体２と、そのすべり軸受本体２
の外側において外筒５の内周面５ａに嵌着した環状の潤
滑剤供給部材３とを有して構成されている。

【００１２】この場合、すべり軸受本体２の内周面であ
るすべり面１ａと潤滑剤供給部材３の内周面３ａとが軸
４に対向している。そのすべり軸受本体２の内径は潤滑
剤供給部材３の内径とほぼ等しく、すべり軸受本体２の
すべり面１ａと潤滑剤供給部材３の内周面３ａはいずれ
も一部が軸４と接している。なお、潤滑剤供給部材３の
内径をすべり面１ａの内径より僅かに大きくして、潤滑
剤供給部材３を軸４と非接触にしても良い。

【００１３】ここで、すべり軸受本体２の合成樹脂とし
ては必ずしも限定する必要はないが、この実施例では、
摩擦特性に優れるポリテトラフルオロエチレンを主成分
とし、これに摩耗特性向上物質を混合した合成樹脂製と
され、これにより摩擦特性と摩耗特性とを共に向上させ
てある。また潤滑剤供給部材３は、微細な連続気孔を多
数有する多孔質合成樹脂材であればスポンジ状等であっ
ても良いが、この実施例の場合は、耐摩耗特性，耐油
性，親油性，毛細管作用に優れたポリウレタン製のフェ
ルト状多孔質部材とされている。これにより、使用中に
膨潤したり、形崩れしたりせず、潤滑油の保持力にも優
れた特性を得るものである。更には、一般的なウール等
のフェルト材に潤滑油を含浸させたものの場合は、使用
中に毛屑等が発生して摺動特性を阻害することがある
が、ポリウレタン製のフェルト状多孔質部材では毛屑が
でないので、より高性能で長寿命のすべり軸受が得られ
ることになる。

【００１４】上記の潤滑剤供給部材３に、潤滑剤として
鉱油，合成油，エステル油，ジエステル油等から選定し
たいずれかの潤滑油が含浸させてある。次に作用を説明
する。すべり軸受１が軸４に対して回転運動，直線運動
等の相対すべり運動を行うとき、潤滑剤供給部材３の内
周面３ａから滲みだした潤滑油が、すべり軸受本体２の
内周面であるすべり面１ａ及びこれに接触している軸４
の外径のすべり面４ａとの潤滑作用を行う。

【００１５】多孔質の潤滑剤供給部材３の内部には多量
の潤滑油が含有されており、長時間にわたって適量ずつ
供給されるから潤滑油切れが防止できる。しかも潤滑油
はグリースよりも摩擦特性が良く、また両すべり面１
ａ，４ａの間への引込み性が良いことから摩耗特性も良
好であり、低摩擦，低摩耗，長寿命が保証される。ま
た、潤滑油は潤滑剤供給部材３に含浸されているため、
余分の潤滑油がすべり面１ａに供給されることはなく、
潤滑油の垂れや飛散は生じないし軸受周辺を汚染すると
いうこともない。

【００１６】なお、潤滑剤供給部材３の内径をすべり軸
受本体２の内径よりも僅かに大きくして、潤滑剤供給部
材３を軸４に対して非接触にしても良い。図２に第２の
実施例を示す。この実施例のすべり軸受１は、円筒状の
潤滑剤供給部材３を外筒５の両端部に設けたすべり軸受
本体２の中間に設けてある点が上記第１の実施例と異な
っている。潤滑剤供給部材３の容積を大きくできるため
多量の潤滑油が含有されるという利点があるが、その他
の作用・効果は第１の実施例と同様である。

【００１７】図３に第３の実施例を示す。この実施例の
すべり軸受１は、上記第１，第２の実施例の構成を複合
したもので、潤滑剤供給部材３を両端と中間との３個所
に設けると共に、端部のすべり軸受本体２の内周のすべ
り面１ａに回転運動用のヘリングボーン形の動圧発生用
の溝６を設けてある。

【００１８】この実施例の場合、すべり軸受１と軸４と
が相対回転運動を行うと、潤滑剤供給部材３から滲み出
した潤滑油が、すべり軸受１と軸４との間の軸受すき間
に供給され、その潤滑油に動圧発生用の溝６のポンピン
グ作用で動圧が発生する。これにより、すべり軸受１が
軸４に対して非接触となり、いっそう低摩擦で且つ長寿
命となる。

【００１９】その他の作用・効果は第１の実施例と同様
である。図４に第４の実施例を示す。この実施例のすべ
り軸受１は、上記第３の実施例が回転運動用の動圧発生
タイプであるのに対して、直線運動用の動圧発生タイプ
である。すなわち、すべり軸受本体２のすべり面１ａに
正逆直線運動用の矢じり状の動圧発生溝７が設けてあ
る。その矢先方向が矢符号Ａ方向の溝７Ａと矢符号Ｂ方
向の溝７Ｂとを円周方向に交互に波形に連続しているも
のを軸方向にほぼ等間隔に配列したものである。なお、
溝７の形状は、ハ字形状や菱形その他の形状であっても
良い。

【００２０】この実施例の場合、すべり軸受１と軸４と
が相対正逆直線運動を行うと、潤滑剤供給部材３より滲
み出し軸受すきまに供給された潤滑油に動圧発生用の溝
７のポンピング作用で動圧が発生する。例えば、すべり
軸受１が軸４に対して矢符号Ａの方向に直線移動する
と、逆方向の動圧発生溝７Ｂのポンピング作用でその矢
先部分の潤滑油の圧力が高くなり動圧が発生する。ま
た、すべり軸受１が上記と逆の矢符号Ｂ方向に直線移動
すると、動圧発生溝７Ａのポンピング作用で同様に動圧
が発生する。

【００２１】このようにして、潤滑剤供給部材３から軸
受すき間に供給された潤滑油に動圧発生用の溝７のポン
ピング作用で動圧が発生して、すべり面１ａ，４ａの間
に潤滑油膜が形成され、すべり軸受１が軸４に対して非
接触に支持されることにより、低摩耗，長寿命となる。
その他の作用・効果は第１の実施例と同様である。

【００２２】図５に第５の実施例を示す。この実施例の
すべり軸受１は、上記第２の実施例において外筒５の中
間部に取付けられている円筒状の潤滑剤供給部材３に、
軸方向のスリット１０を設けたものである。このように
スリット１０を設けたことにより、外筒５の内周への潤
滑剤供給部材３の組み付けが簡単になる利点がある。

【００２３】また、潤滑剤供給部材３は必ずしも円筒状
に形成する必要はなく、製造の簡単なシート状に形成し
たものを丸めて外筒５の中間部に挿入して組み付けても
よい。その他の作用・効果の点は上記第２の実施例と同
様である。図６に第６の実施例を示す。

【００２４】この実施例のすべり軸受１は、上記第１の
実施例における両端の潤滑剤供給部材３の取り付け構造
を変えたもので、外筒５の両端部に円環状の凹溝１１を
形成するとともに、潤滑剤供給部材３の外周にその凹溝
１１に対応させて環状の突起１２を形成して、この突起
１２を凹溝１１に嵌合することにより潤滑剤供給部材３
を外筒５に保持している。

【００２５】これにより、潤滑剤供給部材３の保持がよ
り確実になる利点がある。その他の作用・効果の点は上
記第２の実施例と同様である。図７に第７の実施例を示
す。この実施例のすべり軸受１は、上記第６の実施例に
おける両端の潤滑剤供給部材３の取付け位置と構造を変
えたもので、外筒５の両端部分に設けたすべり軸受本体
２の内側に、それぞれ潤滑剤供給部材３が設けられてい
る。そして、第６の実施例と同様、潤滑剤供給部材３は
外筒５の内周面に形成された円環状の凹溝１３により保
持されている。潤滑剤供給部材３の保持が確実となるば
かりでなく、潤滑剤供給部材３の環状の突起１２も不用
である。

【００２６】その他の作用・効果の点は他の実施例と同
様である。なお、上記各実施例では、すべり軸受１の外
形形状を円筒状としたものを示したが、これに限らず角
形その他の形状でも良い。また、潤滑剤供給部材３の配
置や形状も上記実施例のものに限定されず、各実施例の
ものの組合せであっても、あるいは全く別の配置や形状
であっても良く、必要に応じて任意に設定することがで
きる。

【００２７】

【発明の効果】以上説明したように、軸に対して相対す
べり運動する本発明のすべり軸受は、合成樹脂製のすべ
り軸受本体と、多孔質の合成樹脂に潤滑油を含浸させた
潤滑剤供給部材を有しているあため、潤滑剤供給部材に
含浸されている多量の潤滑油が徐々に滲み出し、軸と軸
受のすべり面に長時間にわたり適量ずつ供給されて潤滑
油切れや潤滑油垂れを生じることなく良好な潤滑機能を
発揮する。そのため、摩擦，摩耗特性が優れると共に潤
滑油の飛散による周辺の汚染もないという効果を奏す
る。

【００２８】また、この発明の実施例によれば、すべり
軸受本体を摩擦特性に優れるＰＴＦＥを主成分とし摩耗
特性向上物質を混合した合成樹脂製としたため、上記本
発明の効果に加えて、更に摩擦特性と摩耗特性とが共に
一層すぐれたすべり軸受が得られるという効果を奏す
る。また、この発明の実施例によれば、潤滑剤供給部材
を耐摩耗特性，耐油性，親油性，毛細管作用に優れたポ
リウレタン製多孔質のフェルト状部材としたため、使用
中に膨潤したり型崩れしたりせず、潤滑油の保持力にも
優れ、また使用中に摺動特性を阻害する毛屑等が出ない
のでより高性能で長寿命なすべり軸受が得られるという
効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１の実施例の縦断面図である。

【図２】本発明の第２の実施例の縦断面図である。

【図３】本発明の第３の実施例の縦断面図である。

【図４】本発明の第４の実施例の縦断面図である。

【図５】（ａ）は本発明の第５の実施例の縦断面図、
（ｂ）はそのX-X 断面図である。

【図６】本発明の第６の実施例の縦断面図である。

【図７】本発明の第７の実施例の縦断面図である。

【符号の説明】

１ すべり軸受 １ａ すべり面（軸受の） ２ すべり軸受本体 ３ 潤滑剤供給部材 ４ 軸 ４ａ すべり面（軸の）

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 軸に対して相対すべり運動するすべり軸
   受は、軸に対向する合成樹脂製のすべり軸受本体と、軸
   に対向する多孔質合成樹脂材に潤滑剤を含浸してなる潤
   滑剤供給部材とを有していることを特徴とするすべり軸
   受。