JP3827413B2 - すべり装置およびキャリッジ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はすべり装置およびキャリッジに関し、特に樹脂製の直線移動用すべり装置およびそれに用いるキャリッジに関する。
【0002】
【従来の技術】
CD−ROM、DVD等のディスク型記録装置は、大量の情報を記録できる装置として近年多用されるようになってきている。このような装置に用いられている記録検出用ピックアップをディスク半径方向に直線移動させるためのスライドベース部品、例えば直線移動用すべり装置は、記録装置の記録密度が高くなるにつれて、より高水準の機械精度が求められている。また、記録装置の普及に伴い機械精度を維持しつつ低価格化が求められている。
従来、このようなすべり装置は、アルミ合金や亜鉛合金等をダイキャスト成形してキャリッジを製作し、そのキャリッジの摺動部については、別途後加工後潤滑剤を塗布、あるいは、含油焼結金属、自己潤滑性樹脂等の摺動部材を組み込んでいた。しかし、工数が多くなり、低価格化に対応できないため、一部の機種においては、コストダウンを主目的とし、樹脂を射出成形して本体を製作し、摺動部については、ダイキャスト成形と同様に別途摺動部材を設けるなどの手段を採用していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、樹脂の射出成形を用いた直線移動用すべり装置は、より過酷な振動条件で使用される車載用CD、CD−ROM、携帯型CD等において、音とび等の誤動作が発生するという問題がある。
また、DVDの場合のように記録密度が高くなるにつれて要求される高水準の機械精度も維持できないという問題がある。
さらに、樹脂製直線移動用すべり装置は、このすべり装置に組込まれる半導体レーザ等の寿命低下が生ずるという問題がある。
【0004】
本発明は、このような問題に対処するためになされたもので、高記録密度や過酷な振動条件で使用される場合においても、機械精度を維持しつつ低価格化が得られるすべり装置およびキャリッジを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明のキャリッジは、軸と、この軸の外周面に摺動案内される摺動孔を有し、半導体レーザが装着されている、樹脂組成物の射出成形体からなるキャリッジにおいて、
上記樹脂組成物は、無機充填材と、繊維状補強材および摺動特性向上材から選ばれた少なくとも一つの配合材とが配合され、前記射出成形体の比重が 1.9〜3.0 で熱伝導率が 0.5〜5 kcal/m・hr・℃であることを特徴とする。
【0006】
また、上記樹脂組成物は無機充填材と、繊維状補強材とが配合されてなることを特徴とする。
また、上記樹脂組成物は無機充填材と、繊維状補強材と、摺動特性向上材とが配合されてなることを特徴とする。
【0007】
また、上記キャリッジの摺動孔が射出成形面で形成されてなることを特徴とする。
【0010】
従来の樹脂製キャリッジが高記録密度や過酷な振動条件下で使用できない原因について追及した結果、従来の樹脂製キャリッジの比重が低いことや熱伝導率が小さいことに原因があることを見い出した。
例えば、ダイキャスト成形キャリッジに比較して、樹脂製キャリッジが軽いため、スピーカ等の振動発生源が近くに存在するときに誤動作が発生し易くなったり、樹脂製キャリッジの熱伝導率が小さいため、装着された半導体レーザの発熱により寸法変化や半導体レーザ等の寿命が低下していた。
本発明は、このような知見に基づいてなされたもので、樹脂製キャリッジを構成する樹脂組成物の比重を 1.9〜3.0 、熱伝導率を 0.5〜5 kcal/m・hr・℃とすることにより、本発明のすべり装置およびキャリッジは、高記録密度や過酷な振動条件で使用される場合においても、誤動作の発生や半導体レーザ等の寿命低下を抑えることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のすべり装置およびキャリッジについて図1および図2により説明する。図1および図2は、光学式ディスク装置に用いられる直線移動用のすべり装置の一部とそれに用いられているキャリッジの斜視図である。
主軸1と補助軸2にキャリッジ3が装着されている。キャリッジ3は、その摺動部4を主軸1および補助軸2の外周面に摺動案内されて軸方向に直線移動する。図1に示すキャリッジ3は全体を射出成形体により形成したもので、主軸1および補助軸2を挿通する貫通孔が摺動部4になっている。図2に示すキャリッジ3は、主軸1および補助軸2を挿通する貫通孔にキャリッジ3と別材質のスリーブ状の滑り軸受4aを設けたものである。主軸1および補助軸2はスタンド6に固定され、キャリッジ3には半導体レーザ5が装着されている。
【0012】
キャリッジ3は樹脂組成物の成形体からなり、比重が 1.9〜3.0 、好ましくは 2.2〜3.0 、より好ましくは 2.5〜3.0 で、熱伝導率が 0.5〜5 kcal/m・hr・℃、好ましくは 0.6〜5 kcal/m・hr・℃、より好ましくは 1〜5 kcal/m・hr・℃である。比重が 1.9未満であると、キャリッジ3の質量が軽くなり、振動の影響を受けやすくなり、CDなどにおいて音とび等の誤動作が発生する。また比重が3.0 を越えると成形性が困難となる。熱伝導率が 0.5kcal/m・hr・℃未満であると、作動時において半導体レーザ5の表面温度の上昇を押えることができなくなり、寸法変化、あるいは半導体レーザ等の寿命低下が生ずる。熱伝導率が5 kcal/m・hr・℃を越えると、表面温度の上昇を押える点では良好となるが、射出成形性などが困難となる。
【0013】
本発明に係る比重が 1.9〜3.0 で熱伝導率が 0.5〜5 kcal/m・hr・℃となる成形体を形成することのできる樹脂組成物について説明する。
本発明に係る樹脂組成物は樹脂本体に、無機充填材と、繊維状補強材および摺動特性向上材から選ばれた少なくとも一つの配合材とが配合される。
樹脂体は、多かれ少なかれ金属材料よりは潤滑性を有し、また無機充填材の結合剤として好ましいものと考えられる。
樹脂本体としては、金属酸化物、繊維状補強材等の高比重、高熱伝導率を有する無機充填材を高充填することのできる樹脂体であれば、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂であっても、特に限定することなく使用することができる。
そのような樹脂本体としては、例えば66ポリアミド樹脂、46ポリアミド樹脂等のポリアミド系樹脂(PA)、熱硬化性ポリイミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂等のポリイミド系樹脂(PI)、ポリアミドイミド系樹脂(PAI)、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)等のポリアリーレンスルフィド系樹脂(PAS)、ポリシアノアリールエーテル系樹脂(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)等のポリエーテルケトン系樹脂(PEK)、ポリエチレンテレフチレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフチレート樹脂(PBT)などのポリエステル系樹脂、液晶ポリエステル樹脂(LCP)等の芳香族系ポリエステル樹脂、ポリアセタール系樹脂(POM)、ポリオレフィン系樹脂等を挙げることができる。
これらの樹脂群のうち、熱可塑性的な性質を有する樹脂、もしくは射出成形可能な樹脂、また熱可塑性樹脂であり射出成形可能な樹脂体が複雑な形状のキャリッジを生産性よく効率的に製造できるため好ましい。
【0014】
射出成形が容易で、無機充填材等を高充填することのできる樹脂体が本発明の樹脂体として好ましく、そのような樹脂体としては、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)やポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)を挙げることができる。
また、PPS、PBTは耐熱性に優れ、吸水性が少なく、結晶性樹脂であり、寸法安定性、機械的強度の点でも好ましいものと考えられる。
【0015】
PPSとしては、最大結晶化度が約 60 〜 65 %、吸水率が 0.05 %(ASTM D570、23℃、水中、24時間)、ガラス転移点が 80 〜 95 ℃(DSC法、JIS K 7121)、融点が 280〜290 ℃(DSC法、JIS K 7121)、溶融粘度が 300〜30000 ポイズ(300 〜320 ℃)、好ましくは 300〜3000ポイズであり、直鎖状または架橋型もしくは半架橋型のいずれの形態であってもよい。
【0016】
またPBTとしては、結晶化度が約 70 〜 90 %、吸水率が 0.1%(ASTMD570、23℃、水中、24時間)、ガラス転移点が 25 ℃前後(DSC法、JIS K 7121)、融点が 220〜230 ℃(DSC法、JIS K 7121)、溶融粘度が 100〜1000ポイズ(260 ℃)が好ましい。溶融粘度は、樹脂体の融点よりも 10 〜 50 ℃程度高い温度で測定し、好ましくはJIS K 7210に準ずる測定方法、もしくは、より具体的には毛管直径 1mm、毛管長さ 10 mm、バレル直径 9.55 mm、バレル長さ 350mm、せん断速度103 sec-1の条件下で評価することが好ましい。なお、上記各々の評価内容に限らず、いかなる評価方法を採ってもよい。
【0017】
これらは例えば、せん断速度が 1×102 〜 1×104 (sec-1)、好ましくは 1×103 (sec-1)にて、溶融粘度が 1×102 〜 1×105 ポイズ、好ましくは 1×102 〜 1×104 ポイズの樹脂および樹脂組成物が射出成形の点で好ましい。また、吸水率が 0.5重量%以下、好ましくは 0.1重量%以下、また最大結晶化度が、少なくとも 10 %以上、好ましくは 20 %以上、より好ましくは 30 %以上、90%以下の結晶性的な性質を有する樹脂が機械的強度の点から好ましい。
【0018】
樹脂製キャリッジに高比重、高熱伝導率を付与するための無機充填材としては、高比重および高熱伝導率を有していることが好ましいが、高比重または高熱伝導率のいずれかの特性を有していてもよい。後者の場合、繊維状補強材および/または摺動特性向上材が高比重または高熱伝導率のいずれかの特性を有していることが必要で、無機充填材と繊維状補強材および/または摺動特性向上材との組合わせで、高比重および高熱伝導率を達成できる配合材であればよい。
例えば、無機充填材として比較的高い熱伝導率を有する酸化マグネシウムや酸化鉄などの金属酸化物を用いた場合には、低い熱伝導率のガラス繊維を繊維状補強材として使用することができる。一方、比較的低い熱伝導率を有するマイカ粉(例えば、K2 O・3Al2 3 ・6SiO2 ・2H2 O)を無機充填材として使用する場合は、高い熱伝導率を有する炭素繊維を繊維状補強材として使用することにより、高比重および高熱伝導率を達成することができる。
【0019】
本発明に係る無機充填材は、樹脂本体に高充填でき、かつ樹脂成形時の温度で不具合を発生しないものであれば特定されることなく使用でき、例えば、比重が少なくとも 3以上、好ましくは 3.3以上、例えば 15 以下、好ましくは 10 以下、熱伝導率が少なくとも 10 kcal/m・hr・℃以上、好ましくは 20 kcal/m・hr・℃以上、より好ましくは 30 kcal/m・hr・℃以上、 100kcal/m・hr・℃以下の無機充填材が好ましい。
【0020】
そのような無機充填材としては、例えば、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化アルミニウム等の金属酸化物類を挙げることができる。これらの中で、酸化マグネシウムや酸化鉄が安全性、摩耗特性および滑性を有する点の理由で特に好ましい。
【0021】
無機充填材の形状は、樹脂組成物の生産性および製品成形性の面から 150〜350 メッシュより選択される粉粒径、もしくは 0.05 〜100 μm 、好ましくは 0.1〜 50 μm 、より好ましくは 0.2〜 25 μm の粉末状がよい。例えば、酸化鉄(Fe2 3 )では 0.1〜 1μm 、好ましくは 0.2〜 0.5μm (BET法による平均粒径)が好適である。
このような微粒子径の充填材は、前記結晶性樹脂の結晶化度を上げるうえで、このような微粒子径の充填粉粒体が核となって、金型内での樹脂体の結晶化の促進に多少たりとも寄与されることも期待できるので、上記結晶性的性質を有する樹脂本体にこのような充填材を配合することは好ましいと考えられる。
【0022】
本発明においては、無機充填材とともに繊維状補強材および摺動特性向上材から選ばれた少なくとも一つの配合材を配合することができる。
繊維状補強材は、無機充填材が配合された樹脂組成物を補強可能なものであれば、特にその種類を限定するものでなく、例えば炭素繊維(CF)、ガラス繊維(GF)、芳香族ポリアミド繊維、アルミナ繊維、ウォラスナイト、チタン酸カリウムウィスカー等の短繊維などを例示することができる。そして、より機械的強度の優れた成形品を得るためには、引張り弾性率が 200GPa 以上(700GPa以下)の繊維状補強材を採用することが好ましい。
【0023】
摺動特性向上材は、キャリッジの摺動部が射出成形面で形成される場合などには、特に配合することが好ましい。具体的には、黒鉛やフッ素系樹脂などを挙げることができる。フッ素系樹脂としては、耐熱性、摺動性、射出金型からの離型性等に優れたテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのパーフルオロ系フッ素樹脂が好ましく、これらもまた、上記充填材の平均粒径程度(例えば 1〜30μm )が好ましく、これらは、成形体中に例えば 1〜20重量%、好ましくは 1〜10重量%程度配合されていれば、成形性を損なわず、摺動性を改善でき、また成形金型からの離型性も改善される。特に焼成された再生テトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)で上記平均粒径を有するものが好ましい。
【0024】
本発明に係る樹脂組成物の配合割合は、樹脂本体に無機充填材と、繊維状補強材、摺動特性向上材とを、比重が 1.9〜3.0 で熱伝導率が 0.5〜5 kcal/m・hr・℃となる範囲で配合することができる。
具体的には、樹脂本体が 30 〜 50 重量%、好ましくは 30 〜 40 重量%、無機充填材が 30 〜 70 重量%、好ましくは 40 〜 70 重量%、繊維状補強材および/または摺動特性向上材が 10 〜 30 重量%、好ましくは 15 〜 25 重量%の範囲にあることが好ましい。このような配合割合であると、成形体の比重を 1.9〜3.0 、熱伝導率を 0.5〜5 kcal/m・hr・℃とすることができ、また射出成形性にも優れている。
【0025】
本発明のすべり装置を構成するキャリッジ3は、上述の樹脂組成物を成形することにより得られる。成形方法は、射出成形、圧縮成形、トランスファー成形、押出し成形等を用いることができる。これの中でも射出成形がキャリッジとしての精度や生産性を向上させることができるため好ましい。
【0026】
また、例えばPBTを例にすれば、金型内のキャビティ表面温度の設定温度により、成形体表面にスキン層が形成される。このスキン層は約 250μm 以下、実質的には平均 1〜100 μm の薄膜が形成される。これは、金型表面温度が低い場合(例えば 25 ℃前後)では約 200μm 前後となり、逆に金型表面温度が高い場合(例えば 120℃前後)では約 20 〜30μm 程度となる。このように、金型温度を常温( 20 ℃前後)〜 120℃、もしくは 120〜 150℃に設定して、スキン層の厚みを調整することも考えられる。また、衝撃強度等を重視するのであれば、金型表面温度を低く設定することが好ましい。
【0027】
摺動部4を有するキャリッジ3は射出成形法により一体に成形することが好ましい。特に摺動性に優れた樹脂組成物、例えばマイカ粉と炭素繊維とを配合した場合や、さらにテトラフルオロエチレン樹脂を配合した場合などにあっては、射出成形により形成された貫通孔内表面を、そのまま摺動部4とすることが可能となり、部品点数や組み立て工数が削減される。このようなキャリッジは、必要により樹脂体のガラス転移点以上、融点以下の熱処理を施して、結晶化を促進し、寸法安定性、機械的強度を向上させてもよい。しかし、衝撃強度等を重視するのであれば上記熱処理は省略してもよい。
【0028】
また、キャリッジ3を射出成形法により成形して、そのキャリッジ3の摺動部4となる貫通孔に、キャリッジ3と別材質のスリーブ状の滑り軸受4aを設けることができる(図2)。滑り軸受4aは、含油合金、固体潤滑剤、摺動抵抗の小さな樹脂、例えば、ポリテトラフルオロエチレン樹脂を主成分とする樹脂等から構成することができる。この滑り軸受4aは、キャリッジ3の貫通孔に挿入して接着や、融着、圧入等で固定しても、またインサート成形や二色成形等でキャリッジ3と一体に射出成形することができる。このキャリッジは、部品点数は多くなるが、滑り性能や耐久性の向上が図り易い。また、インサート成形等の方法を採ることで、製造工程の増加を抑えることができる。
【0029】
本発明のすべり装置を構成する主軸1および補助軸2の材質は、特に限定されず、SS鋼、S−C鋼、SCM鋼、SUJ鋼、SUS鋼など種々の材料を用いることができる。鋼の硬度は、HRC 30 〜 60 程度、もしくは、HB 140〜220 程度でよく、また、焼き入れ処理後の硬度はHRC 55 〜 70 程度好ましくはHRC 60 〜 65 程度とすると耐摩耗性、寸法安定性の点で好ましい。
【0030】
以上の構成は、軸と、軸の外周面に摺動案内されるキャリッジとを備えたすべり装置を対象とするが、軸は、円状の軸のみならず、平面状の摺動面を有する軸と、この摺動面に摺動案内されるキャリッジを備えたすべり装置にも、以上の構成が同様に適用できる。
【0031】
本発明のすべり装置は、軸の外周面およびキャリッジの貫通孔の内表面の少なくとも片方に、さらに摺動性薄膜を形成することが好ましい。好ましい摺動性薄膜としては、例えば、特許第 2534682号に開示されている−CX 2X−O−(xは 1〜4 の整数)を主要構造単位とし、イソシアネート基、エポキシ基、またはアミノ基から選ばれる官能基を少なくとも一つ有する平均分子量が 1,000〜 50,000 のフルオロポリエーテル重合体を塗布、吹付けまたは浸漬し、ついで乾燥して形成された薄膜を挙げることができる。
また、さらにグリース、オイル、コート剤等を軸の外周面またはキャリッジの貫通孔の内表面に塗布することもできる。
【0032】
なお、これらキャリッジと相手部材または成形用金型の摺動面の表面・形状粗さは、最大粗さ(Rmax)、算術平均粗さ(Ra)、十点平均粗さ(Rz)などのJISで定義された評価法によって測定される。これら少なくとも一つの摺動面の表面・形状粗さは、約25μm 以下であり、約 8μm 以下が好ましく、3.2 μm 以下であればより好ましい。表面・形状粗さが、約25μm を越えると、摺動面に傷が多くついて摩耗の原因となる場合が多く、金型からの離型性にも悪影響を及ぼす傾向がある。なお、表面・形状粗さの下限値は、加工時の効率を考慮して約 0.1μm 以上、好ましくは 1μm 以上あればよい。また、相手材や成形用金型の表面の仕上加工などに長時間を要して効率的に生産できないことや、樹脂体の転移膜の形成に影響される可能性もあるため、摩耗に影響しない仕様や条件であれば、摺動面の表面・形状粗さは、約 1〜 3μmRa の範囲としてもよい。このような表面粗さ、形状は、上記微粒子粉粒体を樹脂材に配合しているので、射出成形されたキャリッジの表面状態は滑らかな状態を保ちえているものと考えられる。
【0033】
【実施例】
実施例および比較例で使用した原材料を一括して以下に示す。なお、[ ]内は表1に用いた略号または化学記号を示す。
(1)ポリフェニレンスルフィド樹脂[PPS]:東レ社製;M2100
(2)ポリブチレンテレフタレート[PBT]:クラレ社製;S1000
(3)酸化マグネシウム[MgO]:旭硝子社製;AP−FS、熱伝導率 36kcal/m ・hr・℃(at 25 ℃)、比重 3.4〜3.6 、平均粒径約 200〜 325メッシュ
(4)酸化鉄[Fe2 3 ]:研削粉を焼成して使用、熱伝導率 33 kcal/m・hr・℃(at 25 ℃)、比重 3.8〜5.3 、粒子の大きさ約 0.1〜50μm
(5)マイカ[MICA]:カナダマイカ社製;S325、熱伝導率 0.3kcal/m・hr・℃(at 41.3 ℃)、比重 2.8〜3.1 、粒子の大きさ約 10 〜80μm (薄片状)
(6)ガラス繊維[GF]:旭ガラスファイバー社製;MF06MB120、熱伝導率 0.6kcal/m・hr・℃(at 25 ℃)、比重 2.5〜2.6
(7)炭素繊維[CF]:東邦レーヨン社製;ベスファイトHTA−C6S、熱伝導率 15 kcal/m・hr・℃(at 25 ℃)、比重 1.75 〜1.95
(8)焼成されたポリテトラフルオロエチレン樹脂[再生PTEE]:喜多村社製;KTL610、平均粒径約 25 μm
【0034】
実施例l〜実施例4および比較例l〜比較例3
以上の原材料を表1に示した割合で配合し、ヘンシェルミキサーで混合した後、混練押出し機により押出して造粒し、250 ℃(PBT)成形用ペレットを得た。得られたペレットを射出成形機によりシリンダー温度、250 ℃(PBT)、 310℃(PPS)、射出圧力最大 2000kg/cm2 、金型温度 100〜 150℃の条件で調整後成形して図1に示すキャリッジ3(摺動部の表面粗さ 2〜 3μmRa )を作製し、主軸1および補助軸2としてSUS鋼を用いて直線移動用のすべり装置を作製した。
得られたすべり装置のキャリッジの質量を測定した。また、半導体レーザを作動させた時の半導体レーザ5の表面温度を測定した。その結果を表1に併記した。なお、比較例3はアルミ合金をダイキャスト成形してキャリッジを作製した。
【0035】
【表1】
Figure 0003827413
【0036】
表1に示すように、実施例l〜実施例4のすべり装置は、比較例1、2のすべり装置に比較してキャリッジの比重が大きく、したがって質量が重くなっている。このため車載用CD、CD−ROM、携帯型CD等において、音とび等の誤動作が発生しなかった。
また、比較例1、2のすべり装置に比較して半導体レーザ5の表面温度が低く、半導体レーザ5の寿命低下を抑えることができた。
【0037】
【発明の効果】
本発明のすべり装置は、キャリッジが樹脂組成物の成形体からなり、その比重が 1.9〜3.0 で熱伝導率が 0.5〜5 kcal/m・hr・℃であるので、高記録密度や過酷な振動条件で使用される場合であっても、誤動作の発生や半導体レーザ等の寿命低下を抑えることができる。
【0038】
また、樹脂組成物が無機充填材と、繊維状補強材および摺動特性向上材から選ばれた少なくとも一つの配合材とが配合されてなるので、容易に比重と熱伝導率を上述の範囲とすることができる。
【0039】
本発明のすべり装置は、キャリッジが、このような樹脂組成物の射出成形体であるので、寸法精度や生産性に優れ、低価格に対応できる。
【0040】
また、キャリッジの摺動部が射出成形面で形成されてなるので、生産工数が減り、より低価格に対応できる。また、キャリッジの摺動部が滑り軸受で形成されてなるので、より摺動特性に優れたすべり装置が得られる。
【0041】
本発明のキャリッジは、射出成形体の比重が 1.9〜3.0 で熱伝導率が 0.5〜5 kcal/m・hr・℃以上であるので、高記録密度や過酷な振動条件で使用される場合であっても、誤動作の発生や半導体レーザ等の寿命低下を抑えることができるすべり装置のキャリッジとして使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】直線移動用のすべり装置とキャリッジの斜視図である。
【図2】直線移動用のすべり装置と滑り軸受を有するキャリッジの斜視図である。
【符号の説明】
1 主軸
2 補助軸
3 キャリッジ
4 摺動部
4a 滑り軸受
5 半導体レーザ(フォトカプラー)
6 スタンド

Claims (4)

  1. 軸と、この軸の外周面に摺動案内される摺動孔を有し、半導体レーザが装着されている、樹脂組成物の射出成形体からなるキャリッジにおいて、
    前記樹脂組成物は、無機充填材と、繊維状補強材および摺動特性向上材から選ばれた少なくとも一つの配合材とが配合され、前記射出成形体の比重が 1.9〜3.0 で熱伝導率が 0.5〜5 kcal/m・hr・℃であることを特徴とするキャリッジ。
  2. 前記樹脂組成物は無機充填材と、繊維状補強材とが配合されてなることを特徴とする請求項1記載のキャリッジ。
  3. 前記樹脂組成物は無機充填材と、繊維状補強材と、摺動特性向上材とが配合されてなることを特徴とする請求項1記載のキャリッジ。
  4. 前記キャリッジの摺動孔が射出成形面で形成されてなることを特徴とする請求項2または請求項3記載のキャリッジ。
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