JP4818304B2 - すべりねじ装置 - Google Patents
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Description
(1)ポリアセタール樹脂にPTFEの粉末や潤滑油を配合した場合、価格的には満足するが、雰囲気温度または摺動部の温度が 100℃をこえるとクリープ変形が発生し、摩耗も著しく大きくなり、使用ができなくなる場合がある。
(2)耐熱性に優れた芳香族ポリイミド樹脂に黒鉛、PTFE等を配合した樹脂組成物では、樹脂が高価であるため、樹脂製ナットの価格が高くなるという問題がある。また、黒鉛が摺動相手のねじ軸に移着し堆積するために、長期間使用した場合には振動・摺動音が発生する場合がある。
(3)芳香族ポリイミド樹脂や縮合多環芳香族樹脂等の潤滑性に優れた熱硬化性樹脂を主成分としても、潤滑性が不十分であり、すべりねじ装置に必要とされる低摩擦、低摩耗、低騒音を満足できないという場合がある。
(4)耐摩耗性を向上させるために、ガラス繊維、炭素繊維などを配合した繊維強化樹脂をナット材とした場合、摩擦せん断力が繊維に集中するため、樹脂表面だけでなく内部にも大きな力が加わる。そのため、往復運動により繊維物が起点となった大きな単位での疲労摩耗が発生する。特にねじ軸をナットが往復運動するすべりねじ装置においては早期に発生する。また、繊維物を配合すると相手のねじ軸を損傷する場合がある。
(5)比較的安価なPPSにウィスカを配合した樹脂組成物によるナットもウィスカが繊維であるため、往復運動により上記疲労摩耗を起こす。また、潤滑性も乏しく、低摩耗性、低騒音のすべりねじ装置が得られないという場合がある。
また、ねじ軸の呼び径の2倍以上のリードのような高速タイプとなった場合であっても、低トルクであり、十分な耐摩耗性を有するすべりねじ装置の提供を目的とする。
また、上記ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物は、該組成物全体に対して、上記有機樹脂粉末を 3〜30体積%、上記四フッ化エチレン樹脂を 10〜40 体積%配合してなることを特徴とする。
また、上記PTFEがモールディングパウダーまたはファインパウダーの少なくとも1種類であることを特徴とする。
また、上記ねじ溝部の凸形状は、軸方向断面が半円形であることを特徴とする。
また、すべりねじ装置のリードは、金属製ねじ軸の呼び径の2倍以上を有することを特徴とする。ここでリードとは、ねじ軸1回転あたりのナットの直線運動距離をいう。
また、上記金属製ねじ軸のねじ谷の軸方向断面は、円の中心が異なる二つの円弧の傾斜面で形成されることを特徴とする。
PPS組成物に、PTFEを配合することにより、安定した低摩擦特性が得られ、騒音がなく、起動摩擦係数も低くなり、耐摩耗性も向上する。また、γ線照射や焼成などを行なっていないモールディングパウダーやファインパウダーを用いることにより、PPSの溶融混練において繊維化し3次元の網目構造となるため、耐摩耗性が著しく向上する。また、微細化するために摺動面での存在確率も高くなり、極めて安定した低摩擦となる。PTFEは軟質であるため、繊維状となってもガラス繊維、炭素繊維などの硬質な繊維物のように疲労摩耗の原因とはならない。なお、モールディングパウダーはファインパウダーより摺動面での潤滑効果に優れるため特に好ましく使用できる。
さらに、有機樹脂粉末の平均粒径よりも短い繊維長を有するウィスカを配合してなるので、上記特性に加えてねじ精度の優れた樹脂製ナットが得られる。
また、一条ねじ、二条ねじ、もしくは多条ねじであってもよい。
特に、ねじの特性としてねじ軸の呼び径の2倍以上のリードを有するすべりねじ装置2が送りねじの高速化に対応できるため好ましい。
ゴシックアーク形式の軸方向部分拡大断面を図2に示す。ねじ軸1のねじ谷の断面は円の中心が異なる二つの円弧1aおよび1bの傾斜面で形成され、樹脂製ナット3のねじ山の断面は半円形3aで形成される。ねじ谷とねじ山とは相互にC点において線接触となる。
好適な有機樹脂粉末としては、熱硬化性ポリイミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、全芳香族ポリエステル樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂が挙げられる。好適な有機樹脂の市販品を例示すると、熱硬化性ポリイミド樹脂としては宇部興産社製UIP−R、UIP−S、レンジング社製P84−HT、東レ社製TI3000、熱可塑性ポリイミド樹脂としては三井化学社製オーラム#400、#500が挙げられる。全芳香族ポリエステル樹脂としては住友化学社製スミカスーパーE101S、E101M等が、芳香族ポリアミド樹脂としては日本アラミド社製5010、5011等が、ポリエーテルエーテルケトン樹脂としてはビクトレックス社製PEEK−150PF、450PF等がそれぞれ挙げられる。なお、これらの有機樹脂粉末は、2種類以上を混合して用いても良い。
これらの中でより好ましい有機樹脂粉末は熱硬化性ポリイミド樹脂粉末および全芳香族ポリエステル樹脂である。
PPSは 40 体積%以上含まれていることにより、PPS組成物の成形性、強度が向上する。
また、有機樹脂粉末が 3 体積%未満では所要の荷重支持分担能力が得られず、30 体積%をこえると真実接触面積が増加し摩擦係数が高くなる。
また、PTFEが 10 体積%未満では所要の潤滑性、耐摩耗性が得られず、40 体積%をこえると耐摩耗性が低下するとともに、溶融粘度が高く射出成形できない場合もある。
ウィスカとしては、チタン酸カリウムウィスカ、酸化チタンウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、ホウ酸アルミニウムウィスカ、炭酸カルシウムウィスカ、硫酸マグネシウムウィスカ、ウォラストナイト、ゾノトライト、酸化マグネシウムウィスカなどが挙げられる。これらウィスカの中で有機樹脂粉末の平均粒径よりも短い平均繊維長を有するウィスカが使用できる。ウィスカの繊維長が、有機樹脂粉末の粒径よりも長いと、摺動面においてせん断を受け、添加することにより逆に耐摩耗性が低下する。
(1)PPS[PPS]:東ソー社製;B−054
(2)熱硬化性ポリイミド樹脂粉末[PI−1]:宇部興産社製;UIP−R(平均粒径 10μm )
(3)熱可塑性ポリイミド樹脂粉末[PI−2]:三井化学社製;オーラム#500(平均粒径 30μm )
(4)全芳香族ポリエステル[OBP]:住友化学社製;スミカスーパーE101S(平均粒径 15μm )
(5)PTFE[PTFE−1]:三井・デュポンフロロケミカル社製;テフロン(登録商標)7J(モールディングパウダー)
(6)PTFE[PTFE−2]:喜多村社製;KT−400H(熱処理再生PTFE)
(7)PTFE[PTFE−3]:喜多村社製:KTL−610(γ線または電子線などの照射再生PTFE)
(8)酸化チタンウィスカ[酸化チタンウィスカ]:石原産業社製;FTL−100(平均繊維長 3〜6μm、繊維径 0.05〜0.1mm )
(9)チタン酸カリウムウィスカ[チタン酸カリウムウィスカ]:大塚化学社製;ティスモN(平均繊維長 10〜20μm、繊維径 0.3〜0.6μm )
(10)炭酸カルシウムウィスカ[炭酸カルシウムウィスカ]:丸尾カルシウム;炭酸カルシウムウィスカ(平均繊維長 20〜30μm、繊維径 0.5〜1μm )
(11)ガラス繊維[GF]:旭ファイバーグラス社製;MF−KAC
原材料を表1および表2に示す配合割合(体積%)でヘンシェル乾式混合機を用いてドライブレンドし、二軸押出し機を用いて溶融混練しペレットを作製した。このペレットから、シリンダー温度270〜310℃、ノズル温度 320℃、金型温度 140℃の条件でナットを射出成形にて作製した。
すべりねじ装置は、下記の仕様とした。リードはねじ軸の呼び径の 3 倍である。
(1)ねじ軸仕様−軸径:φ8mm、リード:24mm、条数:6、ピッチ:4、材質:SUS304
(2)ナット仕様−外径:φ14mm、全長:18mm
機能試験
アキシアル荷重 100N、ねじ軸回転数 8.3s-1( 500rpm )、ストローク 250mm、無潤滑、移動距離 100km で往復運転し、試験前後のアキシアルすきま増加量( mm )、試験後の摩擦トルク(材料間の比較)を測定した。結果を表1および表2に示す。
これに対して、280℃で非溶融の有機樹脂粉末およびPTFEを所定量配合した実施例1〜7は、低トルクで、耐摩耗性に優れていた。さらに、不溶融の有機樹脂粉末の粒径よりも短繊維長のウィスカを所定量配合した実施例8,9では、アキシアルすきま増加量が小さくなった。
2 すべりねじ装置
3 樹脂製ナット
Claims (4)
- 金属製ねじ軸と、該金属製ねじ軸と螺合するねじ溝部を有し、該金属製ねじ軸の回転に伴い該金属製ねじ軸の軸上を無潤滑で摺動しながら相対的に移動する樹脂製ナットとを備えてなるすべりねじ装置であって、
前記すべりねじ装置のリードは、前記金属製ねじ軸の呼び径の2倍以上を有し、前記金属製ねじ軸はステンレス鋼製のねじ軸であり、
前記樹脂製ナットは、前記ねじ溝部とナット本体とが、ポリフェニレンサルファイド樹脂に、四フッ化エチレン樹脂と280℃で非溶融の有機樹脂粉末とを配合してなるポリフェニレンサルファイド樹脂組成物から一体に形成されてなり、
前記ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物は、該組成物全体に対して、前記有機樹脂粉末を3〜30体積%、前記四フッ化エチレン樹脂を10〜40体積%配合してなり、
前記四フッ化エチレン樹脂がモールディングパウダーまたはファインパウダーの少なくとも1種類であり、前記有機樹脂粉末が熱硬化性ポリイミド樹脂の粉末であることを特徴とするすべりねじ装置。 - 前記ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物が、さらに該有機樹脂粉末の平均粒径よりも短い繊維長を有するウィスカを配合してなることを特徴とする請求項1記載のすべりねじ装置。
- 前記ねじ溝部の凸形状は、軸方向断面が半円形であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のすべりねじ装置。
- 前記金属製ねじ軸のねじ谷の軸方向断面は、円の中心が異なる二つの円弧の傾斜面で形成されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項記載のすべりねじ装置。
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