JP4519231B2 - スチレン−ブタジエン・ブロックコポリマー - Google Patents
スチレン−ブタジエン・ブロックコポリマー Download PDFInfo
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Description
【発明が属する属する技術】
本発明はスチレン−ブタジエンブロックコポリマーに関する。
【0002】
【従来の技術】
用語「メタロセン」は、最初に1950年代に、Cp2Fe(式中、Cpはシクロペンタジエニルである)に与えられた口語「鉄サンドウィッチ」の代替として使用された。その後Cpのη5−結合モードは最初にWilkinson及びFischerによって1954年に記述された。現在、この用語は、遷移金属錯体であって、それに結合した1以上のCpまたは置換Cpを有する遷移金属錯体を示すために使用される(K B Sinclair and R B Wilson, Chem Ind 1994,7,857を参照されたい)。初期の金属曲げメタロセン{2つのCpを有するメタロセン(Cp(重心)−金属−Cp(重心)の角度が180℃未満であるもの、例えばCp2TiCl2}の領域における初期の関心及び研究のほとんどは、高度に活性で立体選択性の不均質チーグラー−ナッタ重合触媒をモデルにする努力によっていた(H H Brintzinger et al, Angrew Chem Int Ed Engl 1995,34,1143を参照)。この重合触媒は、初期には、TiCln/AlRm-pClp(式中、Rはアルキル基、例えばメチル(Me)またはエチル(Et)であり、nは3または4であり、mは3であり、そしてpは1または2である)のような金属に基づいている(P Locatelli et al, Trends Poly Science 1994,2,87を参照)。
【0003】
曲げメタロセンモデル(特にIV金属に基づくもの)は均質重合(それらが触媒するもの)の鍵となる特徴の解明の約束を提供した。この情報は、慣用のチーグラー−ナッタ触媒の分野に相関されると考えられる。モデルとして、IV族の金属の曲げメタロセンはいくつかの利点を提供する。これらの利点は、単純は配位ジオメトリー、シス配向のたった2つの反応性のリガンドのサイト、並びに実際的な見地から、活性触媒種のさらに直接的な観察を許容する分光技術(例えばNMR)との適合性を含んでいた。これらの「モデル」が、多くの用途で現存のチーグラー・ナッタ重合触媒系を置換していることは現在明らかであろう(H H Brintzinger et al, Angew Chem Int Ed Engl 1995,34,1143を参照されたい)。
【0004】
1950年代中期から、Cp2TiCl2及びEt2AlClが、慣用のティーグラー・ナッタ触媒作用において使用されるものに類似した条件下でポリエチレンの形成を触媒することが知られてきた(D S Breslow and NR Newburg, J Am Chem Soc 1957,79,5072を参照されたい)。1960年までに、このような系における鍵となる特徴が、種々の分光分析技術によって導き出されてきた。この鍵となる特徴は、Cp2TiRCl(式中、RはMe、Etまたは関連する種である)の、アルキルアルミニウム助触媒での置換、タイプCp2TiRCl・AlRCl2のアダクツを形成するルイス酸中心によるこの種の中のTi−Cl結合の極性化、及びこの電子不足種のTi−R結合へのオレフィンの挿入による、形成を含む。しかし、これらのタイプのモデル系は単にエチレンを重合できるだけであり、これは、プロピレンをも重合できる不均質ティーグラー・ナッタ触媒と対照的である。この制限はこの分野における発展の一連の障害であることを証明した。
【0005】
1970年代後半に突破口が現れ、このときSinnとKaminskyは思いがけなく、Cp2MMe2/AlMe3(式中、MはTiまたはZrである)の不活性な触媒系に少量の水を加えると、エチレンの重合のために驚くべき高い活性を付与することを観察した(H Sinn and W Kaminsky,Adv Organomet Chem 1980,18,99を参照されたい)。AlMe3の部分加水分解がメチルアルモキサン{MAO:一般式Me2AlO−[Al(Me)O]n−AlMe2(式中、nは一般に5〜20の整数を表すと考えられる)}を形成し、次にこれが有効な助触媒として働くと考えられた。この考えは直接にMAOを合成し、そしてそれを助触媒として首尾よく利用すること(Cp2ZrMe2だけでなくCp2ZrCcl2をも使用して)によって支持された(H Sinn et al,Angrew Chem Int Ed Engl 1980,19,396を参照されたい)。いくつかの実験における活性は、慣用のチーグラー・ナッタ触媒系よりも高かった。1時間あたり金属1グラムあたり40000kgのポリエチレンのような高さの活性が、Al:Zr比が12000のMAO(Mw=78000)で活性化されたジルコノセン触媒を使用して報告されている(W Kaminsky et al,Makromol Chem Rapid Commun 1983,4,417を参照されたい)。さらに、Sinn及びKaminskyは、これらのタイプのMAOで活性化された均質メタロセン触媒は、プロピレンと他のα−オレフィンを、立体規則性はないが重合することができることを示した(H Sinn and WKaminsky, Adv Organomet Chem 1980,18,99を参照されたい)。
【0006】
初期に金属メタロセン触媒作用におけるMAOの役割は、現在、3つの面をもつと考えられている。第1に、MAOは金属−アルキルアダクツの生成のためにアルキル化剤として働く。第2に、MAOは強いルイス酸として働き、アニオンリガンドを抜き出し、それによって重要なアルキルカチオン種を形成する。最後に、MAO及び特にMAO中のAlMe3不純分は、オレフィン及び溶媒中の触媒毒を除去するためのスカベンジャーとして働く(例えばAlMe3と反応するH2Oはより多くのMAOを形成する)(A D Horton,TrendsPolym Sci 1994,2,158)。
【0007】
MAOの助触媒としての役割は現在かなり良く理解されている。しかし、KaminskyとSinnの発見と時は、そうではなかった。これらのMAO活性化された初期の金属メタロセンモデル錯体から誘導される活性触媒種の性質は不明確なままであった。この問題をいっそう大きくしたものは著しく複雑なMAOの性質並びに高い活性のために要求される大過剰である。事実、MAOの正確な構造は今日まで未知のままである(J C W Chien et al, JPoly Sci,Part A, Poly Chem 1991,29(4),459を参照されたい)。そのときの議論の多くは、活性種が二成分金属性かまたはカチオン性であるかということということを思いめぐらしていた。Natta、Sinn及び他の人々は、活性触媒が二成分金属種であると提唱する理論を維持した。この理論においては、この二成分金属種はアルキル基またはハライドがIV族金属とアルミニウム中心促進オレフィン挿入とを橋架けする(GNatta and G Mazzanti,Tetrahedron 1960,8,86を参照されたい)。Shilovらは、オレフィンの示唆される挿入が真にカチオン性種(例えば[Cp2TiR]+)で実際に起こると提唱する理論を支持した(A K Zefirova and A E Shilov,Dokl Akad Nauk SSSR 1961,136,599を参照されたい)。
【0008】
1986年に、Jordanはこの問題の解決を、塩基で安定化されたジルコノセンアルキルカチオン(例えば[Cp2ZrR(THF)]+、ここでRはMeまたはベンジル(Bz)基であり、そしてTHFはテトラヒドロフランである)のテチラフェニルボレート塩を単離することによって助けた(R F Jordan et al, J Am Chem Soc 1986,108,1718を参照されたい)。Jordanはまた、助触媒の非存在下でオレフィンを重合するそれらの能力を示した(R F Jordan,Adv Organomet Chem 1991,32,325を参照されたい)。その後のJordan及び他のフループによる研究は、アルキルカチオンがIV族金属曲げメタロセンに基づくオレフィン重合における重要な中間体であるという考えに対する信用を与えた。
【0009】
いくつかの要求が現在、オレフィン重合のために活性なIV族金属曲げメタロセン触媒の形成に重要であると広く考えられている。活性な触媒はd°、14e-、ルイス酸金属中心、及び反応性M−R結合に対してシスの、空の配位サイトを有しなければならない。
【0010】
大過剰のMAOで活性化されたIV族金属曲げメタロセンはα−オレフィンを重合できるが、しかし、必要とされる大過剰のMAOはしばしばMAOのコストによる産業的見地、並びに得られるポリマー内に残る必須の高触媒残さから非実際的である。この問題に対する1つの解決は、オレフィンのM−R結合への挿入が、対イオンが非常に弱く結合している場合にのみ起こるという観察(これは大きい対イオン、例えばBPh4 -及びC2B9H12 -がカチオン性金属中心にかなり強く配位して中程度の活性のみ有する触媒を生じることに注意する)から展開された(G G Hlatky et al,J Am Chem Soc 1989,111,2728を参照されたい)。弱くかまたは配位していない対イオンを生成させるために、電子吸引置換基をホウ素対イオン中心の周辺に置くという一般的考えがかなり出現した。最も成功した電子吸引基はフッ素化フェニルであり、これは安定であるが弱く配位している対イオンを生成する{例えばB(C6F5)3、[HNMe2Ph][B(C6F5)4及び[C(Ph)3][B(C6F5)4]}。生じた触媒種は、高度に活性な重合触媒で、プロピレンとより高級なα−オレフィンを重合することができるが、それらはまた、活性触媒は、塩基安定化無しで及びMAOを使用しないで生成できることを示した。
【0011】
Cpリガンドに基づく初期の金属曲げメタロセン触媒がプロピレン重合のために活性であるが、それらのうちこれまで立体選択性であるものはないとみられる。キラルのIV族アンサ−メタロセンが、Brintzinerによって、IV族金属ハライド上のエチレンで橋架けしたインデニル及びテトラヒドロインデニルリガンドを使用して開発された。これらのタイプの化合物は触媒的条件下で溶液中でそのキラル結合構造を維持して高度にアイソタクティックなポリ−α−オレフィン(アイソタクティックポリプロピレンを含む)を形成できることが、別々にEwen、Kaminsky及びBrintzingerによって示された(J A Ewen,J.Am Chem Soc 1984,106,6335を参照されたい)。これらの発見は、これらの触媒がポリマー成長の立体化学を制御する機構の拡張的な探査につながった。多数のキラルメタロセンが、どのようにリガンドの結合構造が触媒活性、並びにポリマーの微細構造、分子量に影響するのか、そしてどのオレフィンが重合できるのかを理解する試みのために合成された。
【0012】
より高い触媒活性が、エチレン橋がシリレン橋架け単位によって置換された場合に達成できることがまもなく発見された。このことは、さらに固いリガンドの骨格、並びに好ましい電子的特性をつくった(ジメチルシラン橋は一般に電子密度を金属中心に付与すると考えられる)(欧州特許出願第302,424号を参照されたい)。メチル基を橋架けされたインデニルリガンドの2及び2’の位置で置換すると、さらに固いリガンド系をつくることによってポリマー分子量及び触媒活性を増加させることも発見された(下記を参照されたい)。この分野の他の発展は、助触媒の開発、及び触媒をモノマーが導入されるまえにMAOに暴露することによって触媒を「予備活性化」する考えを取り扱った。全体的に、これらの改善は印象的ではあるが商業的に生存可能な触媒を提供するまでには達しなかった。
【0013】
種々の熱可塑性プラスチックを形成するためのエチレン、プロピレン及びより高級なα−オレフィンの重合の領域は、メタロセン触媒に関する最も熱心な調査及び産業用途の領域であった。ポリプロピレン(アイソタクティック、シンジオタクティック及びヘミ−アイソタクティック)の形成のための可能な商業的な生存可能性は文献に記述されている。これらの触媒は、α−オレフィンの重合の領域において現状の技術を示し、何が可能であるかを示し、そして成功した触媒デザインと関連したいくつかのニュアンスを示す(W Spaleck et al, Organometallics 1994,13,954を参照されたい)。
【0014】
Spaleckは、インデニルベンゾ環の4,4’及び5,5’位置において異なる芳香族基を系統的に置換することによって、ジメチルシリレンで橋架けされたインデニルリガンドに基づく触媒の有用性を延ばした。この「合理的な触媒デザイン」のアプローチによって、Spaleckは4,4’位(下記参照)においてナフチル部分を有するリガンドを含む最良の触媒を決定できた。このリガンド系を使用する触媒は、高活性、高分子量及び優秀な立体規則性を含む、優秀な重合特性を示した。
【0015】
【化1】
【0016】
Spaleck触媒の極端に高い活性は印象的である。しかし、溶液重合は一般に、高いAl:Zr助触媒添加量(例えば15000:1)、形態制御の欠如及び反応器汚染を含む、ある固有の不利点を有する。
【0017】
メタロセン触媒の実際の実行は、その高いコストを除けば、多数の重要な因子による。最も重要な因子は不活性の支持体(例えばシリカ)上にメタロセンを支持し、かつ高い重合活性を維持する能力であった。この利点は、支持されていないメタロセンと比較したとき、高い活性を達成するために支持されたメタロセン触媒がはるかに少ない量のMAO助触媒しか必要としないという事実に大きく依存している。このことは、全コストを減じ、そして製造されたポリマー内の残りの助触媒の量を低下させる。一般に、MAOは、もしそれが少量で使用されるのであれば、それは通常より安価であり、そして通常の触媒毒を掃去するので、Turner及びMarksによって開発された、別のカチオン形成助触媒に勝る。さらに、支持された不均質触媒は、ポリマーの形態への改善された制御を与え、そして経済的に有利な塊状及び気相重合法において使用できる。
【0018】
高度に立体規則的なポリマーを生成する、これらの触媒の能力は、触媒としてのそれらの価値にとって重要である。この立体規則性の起源はさらに明らかになりつつある。アイソタクティックポリプロピレンにおいて、鎖生長は、プロピレンモノマーの、金属原子とポリマー鎖の最初の炭素内へのレゲオ選択的(regeoselective)な1,2挿入から生じると一般的に受け入れられている。配位と挿入におけるプロピレンモノマーの2つのプロキラル(prochiral)な2つ面のうちの1つの間の違いは2つの別々の制御機構によって影響されると考えられていた。
【0019】
第1の機構は「鏡像部位制御」であり、ここではリガンドの立体配置が入ってくるモノマーの配向に影響する。第2の機構は「鎖末端制御」であり、この場合には最後に挿入されたモノマーの立体化学がその後に挿入されるモノマーの配向を命令する。現在の考え方に従えば、Spaleckは、これら2つの制御機構はそれほど分離できるものではなく、そして「間接立体配置制御」を引き合いに出す(L A Catonguay and A R Rappe, J AmChem Soc 1992,114,5832を参照されたい)。この機構において、プロキラルモノマーの1,2−挿入は主として、生長しつつある鎖中の金属中心に最も近い少なくとも4または5個の炭素原子の配向によって影響される。ポリマー鎖中のこれらの炭素原子の配向は、次に、触媒リガンドの立体配置に影響される。Spaleckの触媒におけるペンダント(側鎖)ナフチル基は、ポリマー鎖中へのリガンドの影響を最適化して、それによって次に挿入されるモノマーへの立体配置制御を増すと考えられる。
【0020】
Spaleckは、インデニルシクロペンタジエニル環上の2,2’−メチル置換基とインデニルベンゾ環上の4,4’ナフチル基との間の100%相乗効果を議論する。この効果は、2−メチル置換基とシリコーン橋のメチルとの間の相互作用の既知の重要性と協力して、高度に活性で選択的な触媒を得るために必要な美妙なバランスをつくる。Spaleckはまた、これらの触媒系における電子効果が重要な役割を果たすことに注目している。
【0021】
モノ−Cpプラットホームに基づく産業的に重要な等級の触媒は、米国特許番号第5,254,405号及び欧州特許出願416,815号によって開示される。これらの「束縛されたジオメトリー」触媒は、高度の変化性を示し、1:1の比のm及びr立体配置を有するポリマー中で23%のmmmmペンタド〜98%を超えるm立体配置を有するポリマー中で93.4%のmmmmペンタド、の範囲であることができるポリプロピレンを生成する。Cpの代わりにフルオレニル基を組み込んだこの等級内の触媒は、もし窒素ヘテロ原子上の置換基がシクロヘキシル基であれば優勢にシンジオタクティックポリプロピレンを、そしてもし該ヘテロ原子上の置換基がt−ブチル基であれば、アイソタクティックポリプロピレンを製造することができる。この等級の触媒はまた、より高級なα−オレフィンをエチレンと共重合する際に非常に良い。Tiがこの等級の触媒のために選ばれた4族の金属であることに注意すべきである。
【0022】
α−オレフィン重合技術の最先端の触媒は、メチレンで橋架けされたCp及びフルオレニルリガンド系に基づく触媒を含み、これはまたアイソタクティック、シンジオタクティック及びヘミ−アイソタクティックポリプロピレン、並びにある種の共重合体を、種々の置換基の存在によって生成することができる(J AEwan at el, J Am Chem Soc 1988,110,6255を参照されたい)。
【0023】
メタロセン、特に初期の金属曲げメタロセン触媒のポリオレフィン産業に与えた影響は劇的であり、そして最近におけるどのような他の化学産業においても前代未聞である。この領域における科学的なコミュニティーによってなされた多大な努力は、チーグラー・ナッタモデル系としてのメタロセンからそれら自体の権利に基づく独立可能な産業触媒としてのメタロセンへの迅速な進歩を許容してきた。それらが支持されたときに高い活性並びに高い選択性を維持するそれらの能力を含む、多数の因子がこの成功に寄与してきた。メタロセンの他の魅力的な特徴は、それらを現存のチーグラー・ナッタ触媒の「差込式の(drop−in)」代替として使用する可能性である。メタロセンで重合するために必要な条件は、現在の触媒で使用されるものに十分に類似している。
【0024】
メタロセン触媒の利点のいくつかは、α−オレフィンに特異的であるようであるが、いくつかの一般的な利点が決定されることができる。メタロセン触媒は4つの主たる利点を示し、これはそれらを他のオレフィン触媒系から2、3の例外を除き区別する(L K Johnson et al, J Am ChemSoc 1995,117,6414)。第1に、メタロセンは不均質チーグラー・ナッタ触媒よりも広い種類のビニルモノマーを、分子量または立体障害に関係なく重合できる。このことは、慣用の触媒系では今までアクセスできなかった、オレフィン、α−オレフィン及び可能性として官能化されたモノマーの、組みあわせての、重合及び共重合のための機会を与える。第2に、メタロセンは単一サイトの触媒であり、この場合重合の全ての活性サイトは同一である。このことは、狭い分子量分布及び狭い組成分布の均一ポリマー及びコポリマーの製造を許容する。第3に、メタロセン触媒作用における主鎖停止工程はβ−水素の排除なので、得られるポリマーは不飽和末端基を有する鎖を含む。不飽和末端基は反応性部分を提供し、これはポリマーを官能化するために、またはさらにグラフト重合するために使用できる。最後に、メタロセンはオレフィンを高い位置選択制(regioselectivity)だけでなく非常に高い立体選択性を伴って重合できる。このことは、触媒構造/ポリマーのタクティシティーの関係の知識が増加するにつれて、ポリマー微細構造上の制御の程度を常に増加していくことを許容する(J A Ewen, J Makromol Chem, Macromol Symp 1993,66,179を参照されたい)。
【0025】
初期の金属メタロセン触媒は、1つの有名な例外を除いて、α−オレフィン重合産業におけるさらに伝統的なチーグラー・ナッタ触媒系からの移行を支配した。モノ−シクロペンタジエニル,12e-,第IV族金属錯体は、それがMAOのような助触媒で活性化されたとき、芳香族α−オレフィンスチレン(及び種々の置換スチレン)のシンジオタクティック重合のための優秀な触媒である(N Ishihara et al, Macromolecules 1986,19,2464)。初期の金属モノ−シクロペンタジエニル触媒はしばしば、「半サンドイッチ」または「ピアノスツール」錯体と呼ばれる。スチレンはα−オレフィンであるが、その特異な性質によって、しばしば他のα−オレフィンとは別に扱われる。
【0026】
シンジオタクティック様式でスチレンを重合する触媒は1980年代中期からのみ知られている。TiX4(Xはハライド、アルコキシドまたはアルキル基である)を含むピアノ−ストール錯体以外の触媒は、適切に活性化されたときは、スチレンのシンジオタクティック重合を促進する。前者の触媒は適切な助触媒で活性化されたときにある種のジエンの高度に立体規則性の重合を促進することが知られている(米国特許第5,023,304号を参照されたい)。
【0027】
曲げメタロセンで触媒された多くのα−オレフィン重合(ここでは活性触媒種に関して多くが知られている)に似ず、ピアノ−スツール錯体から誘導される触媒種の正確な性質について多くは知られていない。しかし、ピアノ−スツール触媒について行われた調査のほとんどはスチレンのシンジオタクティック重合に関する。結果として、これらの重合に含まれる機構及び触媒構造に関する情報はこの文献からきている。上記したように、ピアノ−スツール化合物由来の触媒は、あるタイプの共役ジエンをも重合することができる。スチレンと共役ジエンの重合のピアノ−スツール触媒での重合間には多くの類似が存在するようである(AZambelli et al,Makromol Chem,Macromol Symp 1991,48/49,297を参照されたい)。共役ジエンを重合する目的のためのピアノ−スツール触媒の使用は有機金属化学の比較的新しい分野であるので、スチレンのシンジオタクティック重合について行われたようには多くの調査はこの問題に関して行われていない。従って、シンジオタクティックスチレン重合に関係する活性種について何が知られているのかのより接近した検査がピアノ−スツールで触媒された共役ジエン重合に関係する機構及び触媒構造にいくらかの光を注ぎ得る。
【0028】
スチレンのシンジオタクティック重合において、少なくともチタンベースのピアノ−スツール触媒に関して、活性種がモノ−Cp,Ti(III),アルキルカチオンであると示唆されている。
【0029】
【化2】
【0030】
上に示したように、単一のスチレンモノマーが2,1様式でTi(III)−R+結合内に挿入され、そしてη2−ベンジル構造を採用する。このタイプの触媒におけるTi(III)金属中心のTi(IV)金属中心からの形成はCp★TiR3(Cp★はペンタメチルシクロペンタジエニルであり、そしてRはMeまたはBzである)がB(C6F5)3と室温(25℃)においてクロロベンゼン及びトルエン中でESRによって反応されるときに起こるとGrassiによって最近示された(A Grassi et al,Organometallics 1996,15,480及びA Grassi et al,Macromol Chem Phys 1995,196,1093)。事実、Ti(IV)からTi(III)への還元は、スチレン及びある種の置換スチレンの存在下に促進されることが示されたが、しかしこの還元は定量的でないことに注意することが重要である。Ti(IV)触媒前駆体の形成において対イオンまたは助触媒の選択はほとんど差異をつくらないと思われる。Chienは、ESRによって、Kaminsky及びSinnによって開発された系に類似した様式でMAOと反応させたとき、Ti(III)種がトリスハライド、トリスアルコキシド等のピアノスツール錯体を形成することを示した(U Bueschges and J C W Chien,J.Polym Sci,Part A 1989,27,1525及びJ C W Chien et al,Macromolecules 1992,25,3199を参照されたい)。もしMAOが助触媒であると、上記構造中、RはMeであることに注意すべきである。一般に、アルキル置換基がどのようなものであっても、Rはアルキルアルミニウム助触媒から金属中心に移動することに注意すべきである。Rは多数の挿入が起こった後の、成長するポリマー鎖を示すこともできる。もし出発物質がアルキル化ピアノ−スツール錯体であれば、B(C6F5)3は、最初に、別のTi(IV)R2 +(これは条件によって、結果的にTi(III)種へと分解し得る)錯体を形成すると考えられる。シンジオタクティックポリスチレン(sPS)の形成に関して、これらの系内の活性種は、Ti(IV)から還元された常磁性Ti(III)金属中心を含むことが一般的に受け入れられている。しかし、この分解の機構は知られておらず、そして少なくともB(C6F5)3が助触媒として使用される場合には、溶媒、温度及びモノマー感受性であると思われる。Ti(III)種がこの等級の触媒中で機能することの他の証拠は、スチレンのシンジオタクティック重合のための触媒前駆体としてCpTi(IV)Cl2と等しくCpTi(III)Cl2種が機能するという観察からきている。
【0031】
上に示した構造中の活性種は、もしチーグラー・ナッタ1,4−ジエン重合触媒への類似によって、成長しているポリマー内の最後に挿入されたスチレンモノマーのフェニル環が金属中心に配位し、そしてη4配位モードが配位したモノマーについて想定されるのであれば、14e-錯体である(L Porri etal,Prog Polym Sci 1991,16,405を参照されたい)。最後に挿入されたスチレンモノマーはフェニル環が金属中心に強く配位すると、η2−ベンジル部分に類似する。スチレンの2,1挿入のみがこのタイプの相互作用を許容することに注意すべきである(A Zambelli et al,Makrol Chem,Macromol Symp 1995,89,373を参照されたい)。分子軌道計算から、ベンジル置換基のフェニル基内の全ての6つの炭素は、たとえそれらが通常η6またはηn−ベンジルではなくη2−ベンジルと通常呼ばれたとしても、金属中心との結合に参加することが知られている。さらに、上に示した構造中に示されたものに似たη6−アレーン・アダクツの形成及び分光学的同定が示されてきた(C Pellecchia et al,Organometallics 1993,12,4473を参照されたい)。例えば、[Cp★MMe2(η6−C6H5Me)][MeB(C6F5)3]アレーンアダクツは、Cp★MMe3がB(C6F5)3と、トルエン中で低温で反応したときに形成され、ここでMはZrまたはHfを表わす(D Gillis et al,J Am Chem Soc 1993,115,2543を参照されたい)。
【0032】
Cp部分は金属中心に結合されたままであり、そしてこれらの重合における活性種の部分であることが示されてきた。種々に置換されたCpもピアノ−スツールタイプの触媒において、スチレンのシンジオタクティック重合のために首尾よく使用されてきた。例えば、もしインデニルがCpの代わりにTiベースのトリクロライド・ピアノ−スツール錯体中で使用されると、次の触媒が合成される−IndTiCl3(Indはインデニルである)(T E Ready et al, Macromolecules 1993,26,5822を参照されたい)。Readyは、インデニルで置換された触媒は、シンジオタクティックポリマー形成のためにCpアナログよりも実際に優れていることを示した。ヘッド対ヘッドの比較において、IndTiCl3は、種々の量のMAOで活性化されたとき、MAOで活性化されたCpTiCl3よりも高い活性、収率及び百分率シンジオタクティシティーを示した。この改善された触媒性能は、Cp部分と相対的な、インデニル環のより大きい電子付与能力のせいである(P G Gassman and C H Winter, J Am Chem Soc 1988,110,6130を参照されたい)。しかし、Cp★は、それが配位している金属中心に、Cpよりも多くの電子密度を付与するが、CpTiCl3及びCp★TiCl3はMAOで活性化されたときにはスチレン重合触媒として等しく良好に機能する。sPS活性に関しては、触媒性能の順序は、IndTiCl3、Cp★TiCl3=CpTiCl3=CpTiCl2>CpTiCl2・2THF>Cp2TiCl2>Cp2TiClであると思われる。Ti(II)種はTi(pH)2のように、たとえ低い活性を伴ってでもsPSを生成する(A Zambelli et al,Macromolecules 1989,22,2129を参照されたい)。
【0033】
共役ジエンを重合できるメタロセン触媒はまれである。事実、共役ジエンを重合できる唯一の十分に研究されたメタロセンはピアノ−スツール錯体である。説明してきたように、これらのタイプの触媒はスチレンをも重合できる。
【0034】
ジエン重合において、Tiベースのピアノ−スツール触媒に関して、活性種は次の、モノ−Cp,Ti(III),14e-,アリルカチオン性種であると提案されている(G Ricci et al,J Organomet Chem 1993,451,67を参照されたい)。
【0035】
【化3】
【0036】
これは、上で議論した考えのいくつか、並びにチーグラー・ナッタで触媒され1,4−ジエン重合に含まれる機構及び他の証拠に基づいている。上に示した構造において、1,3−ブタジエンが共役ジエンとして使用される。
【0037】
Zambelliは、数ある中でブタジエンとイソプレンとを共重合するために使用されるMAO活性化CpTiCl3を開示する(A Zambelli et al,Macromol Chem Phys 1994,195,2623を参照されたい)。この重合は、3mLのトルエン中で18℃において、1100:1のAl:Ti比を使用して2mgのCpTiCl3によって触媒された。ブタジエン及びイソプレンの濃度は変えられ、下に示す各モノマーの異なったモル比のコポリマーを生成した。
【0038】
【表1】
【0039】
一般に、ブタジエンはこの重合ではイソプレンよりも活性が高いと決定された。しかし、モノマーの濃度が適切に調節されると、ほとんど同じ量の両方のモノマーがコポリマー生成物中に組み込まれることができる。わかるように、重合速度は、イソプレン濃度を増すにつれ、そしてブタジエン濃度を減らすにつれ強く低下した。
【0040】
比較の目的のため、Zambelliはまた数種のジエン及びスチレンを同一条件下でホモ重合した。下に示すように、最初の3種の重合は、13mLのトルエン中で18℃において、1000:1のAl:Ti比を使用して2mgのAMO活性化CpTiCl3によって触媒された。4つ目の試験はAl:Ti比が1.4×105:1のCpTiCl3の0.005mgを使用した。
【0041】
【表2】
【0042】
わかるように、次の順序で反応性は増加する。イソプレン<<スチレン<ブタジエン<<4−メチル−1,3−ペンタジエン。
Bairdの最近の調査は、同じ条件下で、スチレンがこれらのタイプの触媒でのカルボカチオン機構を介して重合し得ることを示唆している。これらの新しい結果は、助触媒がB(C6F5)3であるときはTiベースのピアノ−スツール触媒で重合されたジエン及び他のモノマーについての含蓄を有し得る。
【0043】
前記のように、別個の、塩基を含まないアルキルカチオンが、B(C6F5)3を加えることによって、CpMR3−型錯体(MはIV族金属を、Rはアルキル基を表わす)から合成し得る(米国特許番号第5,446,117号を参照されたい)。しかし、Bairdの最近の公開されたこの分野の結果は、温度、溶媒、及びモノマーの溶液内の触媒のタイプへの強い依存性が存在し、これがそれゆえに重合それ自体の機構に影響し得ることを示している(Q Wang et al,Organometallics 1996,15,693を参照されたい)。Bairdsの研究において、Cp★TiMe3及びB(C6F5)3が種々の条件下で混合され、アタクティックポリスチレンをカルボカチオン機構を介して生成すると思われる触媒を生じる。
【0044】
Bairdは、CH2Cl2のような極性溶媒において、スチレンを重合してアタクティックポリスチレンを形成する触媒が、Cp★TiMe3及びB(C6F5)3が20〜−78℃の範囲の温度で反応されるときに、生じることを観察している。しかし、トルエンのような非極性溶媒中では、同じ2種の触媒成分が結合してスチレンを重合してsPSを形成する触媒を、重合の温度が0℃より高く保持される場合に限って形成できる。重合が0℃未満で行われると、アタクティックポリスチレンのみが形成される。彼の結果の説明のように、Bairdは、スチレンのカルボカチオン機構を介するアタクティック重合を促進する活性触媒種が重合条件に依存して形成されることを示唆する。
【0045】
上述したように、Grassiは、Ti(III)種が25℃において、クロロベンゼン及びトルエン中で、Cp★TiR3(RはMeまたはBz)がB(C6F5)3と反応されたときに形成されることを示した。このことは、Tiベースのピアノ−スツール錯体でのsPS触媒作用における活性種がCpTi(III)−R+種であるという一般的仮説と一致している。しかし、Baird及びGrassiの結果に基づいて、1より多いTi中心種が形成でき、そして温度、溶媒及びモノマーの条件に依存して異なる種が活性触媒になり得るということはほとんど確実である。例えば、Bairdは、NMRによって、Cp★TiMe3及びB(C6F5)3がCD2Cl2中で低温において反応されそして低温に保持されたとき、この反応において初期に形成されるTi(IV)種の[Cp★TiMe2][MeB(C6F5)3]が安定なままであり、そしてTi(III)種または他の種に分解しないことを示した。温度を上げながらNMRをモニタリングするとき、Bairdは、いくつかの新しい種が形成されたことを示す、多数の新しいCp★及びTi−Me共鳴が現れることに気づいた。さらに、Bairdは、Cp★TiMe3及びB(C6F5)3が室温で、CH2Cl2、ClCH2CH2Cl2またはトルエン中で結合されたときに、エチレンを形成することができる非常に活性な種が形成されることを示した。室温及び溶媒としてのCH2Cl2の条件は、その前から、カルオカチオン機構を介してアタクティックポリスチレンを生じると推定される触媒を形成することができる条件として注目されていた。しかし、エチレンはカルボカチオン機構を介しては容易に重合されない。確かに、これらの観察の1つの可能な説明は、Cp★TiMe3及びB(C6F5)3が反応されるときは、1種より多い触媒種が形成されるということである。
【0046】
この情報がどのようにTiベースのピアノ−スツール錯体で触媒された共役ジエン重合に関するかは明らかではない。B(C6F5)3はここで引用される共役ジエンの重合のいずれにおいても助触媒として使用されていない。MAOのみが使用されている。もしMAOで活性化されたTi(IV)ベースのピアノ−スツール種が、B(C6F5)3を助触媒(対イオン)として使用するときに形成されるものに類似する錯体を形成し、このタイプの触媒を使用したときのジエン重合とスチレン重合との間の提案された類似性が与えられるのであれば、この示唆は重要であるかもしれない。その証拠は、MAOで活性化されたTi中心ピアノ−スツール錯体は、もし反応が室温またはそれ以上で行われたときには、B(C6F5)3で活性化されたものに類似の方法で挙動することを示唆している(P Longo et al, Macromol Chem Phys 1995,196,3015を参照されたい)。さらに、Longoは、トルエン中で、−17℃においてさえ、MAOで活性化されたCpTiCl3がシンジオタクティックポリスチレンを形成することを示した。
【0047】
ピアノ−スツール錯体で触媒されたスチレン及びジエン重合のいくつかの面はさらに明らかでなく、そしてさらに調査を必要とする。例えば、スチレンはピアノ−スツール錯体のM−R+結合に2,1様式で挿入されるが、プロピレンのような他のα−オレフィンは一般に初期の金属ベースのメタロセンのM−R+結合に2,1様式で挿入されることが既知である(A Zambelli et al,Macromolecules 1987,20,2037を参照されたい)。高ビニルチーグラー・ナッタジエン重合触媒を使用すると、ジエン二重結合の1つのη3M−アリル種内への2,1−挿入が観察される。類似の1,2挿入が、ピアノ−スツール錯体で触媒された高ビニルジエンポリマー内で発生するかどうかは知られていない。たしかに、特にTiの場合の活性種の酸化状態、及び1以上のタイプの触媒種が形成できる可能性に関する疑問が残ったままである。しかし、明らかに、Tiは、ジエン及びスチレンの両方のための触媒としてZr及びHfよりも優れており、そしてこれは、Zrベースの触媒がTiベースの触媒ほど多く研究されていない理由の一因であるかもしれない(P Longo et al,Makromol Chem Rapid Commun 1994,15,151を参照されたい)。スチレンの場合には、触媒前駆体がTi(III)またはTi(IV)金属中心で開始するかどうかは問題ではないように思われる。従って、TiはZrよりも優れているかもしれないが、これはそれがより容易に還元されるからである。事実、ESRによってCp★ZrBz3はそれがB(C6F5)3と反応したときにZr(III)種を形成しないことが示されている。しかし、ジエン重合において、Ti(III)前駆体がTi(IV)前駆体と同様に十分に働くかどうかについては、文献はより明らかではない。CpTiCl2・2THF及び[CpTiCl2]nのようなMAO−活性化Ti(III)錯体は、+4の酸化状態のTiで出発したTi錯体で触媒されたジエンポリマーのものと同じ微細構造を有すジエンポリマーを与える(G Ricci et al,Makrol Chem,Macromol Symp 1995,89,383を参照されたい)。この現象についての一つの可能な説明は、Ti(III)錯体を純粋な状態で得ることがそれらのO2及びH2O(すなわち空気)に対して極端に感受性であることによって困難であるということかもしれない。従って、Ti(III)とTi(IV)触媒前駆体の間の差異は、本来の活性の欠如よりも、純度の欠如及び空気への感受性によるかもしれない。最後に、ジエン重合において、Tiベースのピアノ−スツール触媒が常に正確に「単一サイト」として特徴づけられるとは限らない。なぜならこれらの重合における分子量分布が4〜6のように高いことが可能であるからである(J Chien et al,Macromolecules 1992,25,3199を参照されたい)。
【0048】
スチレン重合及びジエン重合の機構の間の類似によって、いくつかの調査がTiベースのピアノ−スツールタイプの触媒を用いたそれらの共重合について実施されてきているということは驚くことではない。この調査の大部分はZambelliらによって実施されている(C Pellecchia et al,Macromolecules 1992,25,4450を参照されたい)。Zambelliは、彼のオリジナルの研究において、スチレンとイソプレンを重合するために、40℃において3mLのトルエン中で、1100:1のAl:Ti比を使用して2mgのMAO活性化CpTiCl3を使用している。
【0049】
【表3】
【0050】
MAOで活性化されたCpTiCl3がスチレンとジエンイソプレンを共重合することができるが、転化率は悪く、そして反応時間は長い。わかるように、この触媒系はスチレン及びイソプレンのホモ重合のためには、これらの2種のモノマーの共重合のものよりも活性である。2種のモノマーが共重合されたときには、スチレンがはるかに反応性であることがさらにわかるが、モノマーの比は、スチレンとイソプレンとの等モル比のコポリマーを生成させるために調節できる。反応性比、r1×r2=2.3の生成物の値は、2種のモノマーが密接に関連する機構に従って反応して、ほぼランダムのコポリマーが生成することを示唆するに十分に低い。Zambelliは、イソプレンの配位はスチレンの触媒への配位よりも強いと期待されると述べている。挿入されたイソプレンのTi−η3アリル結合は、同じように挿入されたスチレンのTi−η2−ベンジル結合よりも強いと期待される。従って、イソプレンの配位は、スチレンの配位よりも速くそして好ましいであろうが、イソプレンのTi−η3アリル結合への挿入はTi−η3ベンジル結合への挿入よりも遅いであろう。もし両方の配位及び挿入が等しくそして律速であるときは、ホモ重合におけるスチレンと比較してのイソプレンの低い反応性、及びスチレンとのイソプレン共重合のより高い反応性は正当化され得る。コポリマーの分子量及びシス含量は与えられていない。
【0051】
これらの結果においてつくられたスチレン/イソプレンコポリマー内のほぼランダムなモノマー分布は、より広い種類のスチレン/ジエン共重合の調査を促した(A Zambelli et al,Macromol Chem Phys 1994,195,2623を参照されたい)。スチレン及びブタジエンは、18℃において5mLのトルエン中で、1100:1のAl:Ti比で2mgのMAO活性化CpTiCl3を使用して共重合された。モノマーの濃度が変えられ、そして報告された結果は下に示す通りである。
【0052】
【表4】
【0053】
一般に、Zambelliによる重合のアウトラインの全ては、使用された条件下でほぼランダムなコポリマーを生成すると報告されている。スチレンとブタジエンとの共重合についての反応性比の生成物値、r1×r2=1.6は、スチレンとイソプレンとについて観察されたものよりもいくぶん低い。モノマーのホモ重合中の反応性は、共重合における反応性とパラレルではない。前述のように、イソプレンの低いホモ重合速度は単に、スチレン単位が末端の成長している鎖と比較して、イソプレン単位で終わっている成長する鎖の特に遅い反応性による。一方、ブタジエンは、挿入がブタジエン単位が末端の成長している鎖で起こるときも、スチレン単位が末端の鎖で起こるときも、スチレンよりも反応性である。
【0054】
スチレン/ブタジエンの共重合を、スチレン含量が一定に保持されると共にブタジエン含量が増加する反応条件下で比較するとき、収量における実際の減少が下に示すように観察された。
【0055】
【表5】
【0056】
試験1〜4において、18℃において4.5mL中のトルエン中で、1000:1のAl:Ti比でAMOで活性化されたCpTiCL3の1mgを用いる。試験5においては、26mLのトルエン中で3mgのCpTiCl3を用いた以外は条件は同じである。全ての5つの重合を90分間行わせた。ほんの少量のブタジエンをスチレンに添加したことによるこの共重合速度の減少は、たとえブタジエンがホモ−及び共重合の両方においてより反応性であったとして、異常である。しかし、この観察は、ブタジエン単位が末端の成長している鎖が、スチレン単位が末端の鎖よりも反応性が低いと仮定することによって正当化される。
【0057】
4−メチル−1,3−ペンタジエン(4−MPD)とスチレンとの共重合の結果を下の表に示す。これらの共重合は18℃において、重合の全体積を48mLにするのに十分なトルエンを用いて、1100:1のAl:Tiの比によって2mgのCpTiCl3によって触媒された。
【0058】
【表6】
【0059】
4−MPDはTiベースのピアノ−スツール錯体によって1,2様式でホモ重合され、これがそれほど速く重合される理由であると思われる。4−MPDモノマー及び4−MPD末端の成長鎖の両方のとりわけ高い反応性は、スチレン及び4−MPDとのモル比を共重合における両モノマーの量と比較したときに明らかである。
【0060】
スチレンの2,1挿入は、η2−ベンジル相互作用が起こりうる唯一の方法であるから、スチレンの2,1挿入はその追加された安定性のために起こるようである。同様に、ジエン挿入は立体効果を妨げる第2の相互作用(η3−アリルの形成のような)に従事する可能性を増すような方法で起こるらしい。従って、第2相互作用に従事するときに分子が電子を放出すればするほど、いったんそれが挿入されれば、Ti金属中心はより親電子でなくなり、そしてより反応性でなくなる。これに応じて、もし第2ηn(n>1)相互作用がさらにη1相互作用(ここではたった一つのTi−C結合がある)のほうにシフトすることができるとすれば、ある理由で、成長している鎖の末端はさらに反応性になる。これは、最後に挿入されたモノマーがより緩く結合され、これによって中心Ti金属中心が親電子的になり、そして結果としてより反応性となるからである。従って、いずれかの一定の反応性鎖に対する異なるモノマーの反応性は次の順序で増加する。スチレン<イソプレン<ブタジエン<4−MPD。この順序づけはモノマーの親核性増加とだいたい一致している。
【0061】
【課題を解決するための手段】
本発明は、sPSブロック及びシス−1,4−PBdブロックを有するスチレン−ブタジエンブロックコポリマーが、約0℃〜約100℃の範囲内の温度において、約10〜約50mmHgの範囲内の1,3−ブタジエン分圧で,ある触媒系を使用して重合を実施するときに、合成できるという、予期されない発見に基づく。これらのブロックコポリマーは通常は少なくとも5つのsPSブロックを含み、そして好ましくは少なくとも10個のsPSブロックを含む。
【0062】
本発明はさらに詳細には、
(a)シンジオタクティックポリスチレンブロック及び(b)シス1,4−ポリブタジエンブロックを含むスチレン−ブタジエンブロックコポリマーであって、シス1,4−ポリブタジエンブロックは約20%以下のビニル含量を有し、シンジオタクティックポリスチレンブロックは少なくとも50%のシンジオタクティック構造含量を有し、該ブロックコポリマーは少なくとも5つのシンジオタクティックポリスチレンブロックを含み、そして該ブロックコポリマーは約10000〜約700000の範囲内の数平均分子量を有する、
前記のスチレン−ブタジエンブロックコポリマーを開示する。
【0063】
本発明はまた、シンジオタクティックポリスチレンブロックを有するスチレン−ブタジエンブロックコポリマーの合成方法であって、
1,3−ブタジエンとスチレンとを、約0℃〜約100℃の範囲内の温度において、約10〜約50mmHgの範囲内の1,3−ブタジエン分圧で共重合することを含み、ここで該共重合は触媒成分及び助触媒成分を含む触媒系の存在下で実施され、触媒成分が、CpMX3、CpMX2、MX4及びMX3{式中、CpはC5RnH5-n(Rはアルキル、アリール、アルカリール、アリールアルキル、ハロアルキル、ハロアリール、ハロアルカリール、ハロアリールアルキル、シリルアルキル、シリルアリール、シリルアルカリール、シリルアリールアルキル、ハロシリルアルキル、ハロシリルアリール、ハロシリルアルカリール、ハロシリルアリールアルキル、シリルハロアルキル、シリルハロアリール、シリルハロアルカリール、ハロシリルアリールアルキル、アルコキシ、シロキシ等を表わす)の芳香族化合物を表わす}より成る群から選択される構造式のものである、前記の合成方法をも開示する。Rはまた、1以上の炭素及び/または珪素原子を通じて結合されたNR'2、PR'2、SR'、及びBR'2であってもよいが、もし1より多い炭素原子が存在すると、それらは飽和でも不飽和でもよく、ここで各R’は同じでも異なっていても良く、そして所望によって1以上のハロゲン原子及び/またはアルコキシ基によって置換されているヒドリド、またはヒドロカルビル若しくはシリルであり、かつ20以下の炭素原子及び/または珪素原子を有する。R基は同じでも異なっていてもよく、そしてCpに1以上の場所で結合できることに注意すべきである。式C5RnH5-nにおいて、nは0〜5の整数を示す。Mはチタン、ジルコニウム及びハフニウムよる成る群から選択され、そしてXは、水素、ハロゲン、アルキル、アリール、アルカリール、アリールアルキル、ハロアルキル、ハロアリール、ハロアルカリール、ハロアリールアルキル、シリルアルキル、シリルアリール、シリルアルカリール、シリルアリールアルキル、ハロシリルアルキル、ハロシリルアリール、ハロシリルアルカリール、ハロシリルアリールアルキル、シリルハロアルキル、シリルハロアリール、シリルハロアルカリール、ハロシリルアリールアルキル、アルコキシ、シロキシ、NR'2、PR'2、SR'、及びBR'2より成る群から選択されるものである。MX3については、Xは1〜20の炭素原子を含む有機酸、例えばアセチルアセトネート、アセテート、ベンゾエート、ナフテネート、オクタノエート、ネオデカノエート、パルミテート、ステアレート、サリチルアルデヒド、salicaldehyde、トリフルオロアセテート等であってもよい。X基は同じでも異なっていてもよいことに注意すべきである。X基はMに1以上の場所で結合し得る。助触媒成分は、
【0064】
【化4】
【0065】
(式中、R”は1〜約10の炭素原子を含むアルキル基を表わし、R"'は2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル基または3,5−トリフロロメチルフェニル基を表わし、R””は2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル基、3,5−トリフルオロメチルフェニル基またはフェニル基を表わし、そしてZはアンモニウム塩、銀原子、またはトリフェニルメチル基を表わすが、以下のことを条件とする:
もし触媒成分がMX4であるときは、助触媒成分が式
【0066】
【化5】
【0067】
のものであることを条件とし、
もし触媒成分がMX3であるときは、助触媒成分が
【0068】
【化6】
【0069】
の式のものであることを条件とし、
もし助触媒成分が式BR'''3であるときは少なくとも1つのXがアルキル基、アリール基、またはアルカリール基を表わし、そして
もし、助触媒成分が式Z+B-R”4であるときは、少なくとも1つのXがアルキル基、アリール基またはアルカリール基を表わす。
【0070】
本発明はさらに、(a)少なくとも1つのシンジオタクティックポリスチレンブロック及び(2)少なくとも1つのハロゲン化ポリブタジエンブロックを含むブロックコポリマーであって、該ブロックコポリマーが約10000〜約700000の範囲内の数平均分子量を有する、前記のブロックコポリマーを開示する。
【0071】
本発明のスチレン−ブタジエンコポリマーはsPSブロック及びシス1,4−PBdブロックを有する。このシス1,4−PBdブロックは約20%以下のビニル含量を有する。シス1,4−PBdブロックは典型的には約7〜約20%の範囲内のビニル含量(1,2−微細構造含量)を有する。これらのスチレン−ブタジエンブロックコポリマーは典型的には約10000〜約700000の範囲内の絶対数平均分子量を有する。このスチレン−ブタジエンブロックコポリマーはさらに典型的には約20000〜約500000の範囲内の絶対数平均分子量を有する。スチレン−ブタジエンコポリマーが、50%結合スチレンのような比較的に高い結合スチレン含量を有するときは、それは典型的には約25000〜約50000の範囲内の数平均分子量を有する。これらのブロックコポリマーは、1より多いポリスチレンブロック及び1より多いポリブタジエンブロックを含む。これらのブロックコポリマーは通常は、少なくとも5つのsPSブロックを含む、そしてさらに典型的には少なくとも10のsPSブロックを含む。このsPSブロックは少なくとも50%のシンジオタクティック微細構造含量、そして典型的には少なくとも75%のシンジオタクティック微細構造含量を有する。ほとんどの場合、ポリスチレンブロックは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%のシンジオタクティック微細構造含量を有する。
【0072】
本発明のスチレン−ブタジエンブロックコポリマーは、スチレンと1,3−ブタジエンとを、約10mmHg〜約50mmHgの範囲内の1,3−ブタジエン分圧下で一定の触媒系を利用して重合することによって合成される。sPSのブロック及びシス1,4−PBdのブロックを有する望まれるブロックコポリマーを達成するためには、共重合が10mmHg〜50mmHgの範囲内の1,3−ブタジエン分圧下で行われることが重要である。もし使用される1,3−ブタジエン分圧があまりに高いと、ポリブタジエンのホモポリマーが生成する。しかし、もし重合があまりに低い1,3−ブタジエン分圧で行われると、ポリスチレンホモポリマーが生成する。ほとんどの場合、共重合は、約15mmHg〜約40mmHgの範囲内の1,3−ブタジエン分圧を使用して実施される。約20mmHg〜約35mmHgの範囲内の圧力を使用するのが通常好ましい。
【0073】
本発明の共重合は約0℃〜約100℃の広い温度範囲にわたって実施できる。共重合は典型的には約5〜約80℃の範囲内の温度で実施される。共重合を約15℃〜約45℃の範囲内の温度で実施するのが通常好まし。
【0074】
本発明のスチレン−ブタジエンブロックコポリマーを合成する際に使用される共重合は通常は、炭化水素溶媒(これは1以上の芳香族、パラフィン系、またはシクロパラフィン系化合物であることができる)中で実施される。これらの溶媒は通常は1分子あたり4〜10の炭素原子を含み、そして重合の条件下で液体である。適切な有機溶媒のいくつかの適切な例は、ペンタン、イソオクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソブチルベンゼン、石油エーテル、ケロセン、石油スピリッツ、石油ナフサ等を単独または混合物で含む。本発明の共重合はまた、塊状相または気相反応として、担持されているかまたは担持されていない触媒系を使用して実施することもできる。
【0075】
溶液重合においては、重合媒質中に5〜50重量%のモノマーが存在する。そのような重合媒質はもちろん、有機溶媒及びモノマーを含む。ほとんどの場合、重合媒質が20〜40重量%のモノマーを含むことが好ましい。重合媒質が30〜35重量%のモノマーを含むことが一般にさらに好ましい。
【0076】
本発明の実施において使用される触媒系は触媒成分及び助触媒成分を含む。この触媒成分は式:CpMX3、CpMX2、MX4及びMX3{式中、CpはC5RnH5-n(Rはアルキル、アリール、アルカリール、アリールアルキル、ハロアルキル、ハロアリール、ハロアルカリール、ハロアリールアルキル、シリルアルキル、シリルアリール、シリルアルカリール、シリルアリールアルキル、ハロシリルアルキル、ハロシリルアリール、ハロシリルアルカリール、ハロシリルアリールアルキル、シリルハロアルキル、シリルハロアリール、シリルハロアルカリール、ハロシリルアリールアルキル、アルコキシ、シロキシ等を表わす)の芳香族化合物を表わす}より成る群から選択される構造式のものである。Rはまた、1以上の炭素及び/または珪素を通じて結合されたNR'2、PR'2、SR'、及びBR'2であってもよいが、もし1より多い炭素原子が存在すると、それらは飽和でも不飽和でもよく、ここで各R’は同じでも異なっていても良く、そして所望によって1以上のハロゲン原子及び/またはアルコキシ基によって置換されているヒドリド、またはヒドロカルビル若しくはシリルであり、かつ20以下の炭素原子及び/または珪素原子を有する。Rは同じでも異なっていてもよく、そしてRがCpに1以上の場所で結合できることに注意すべきである。式C5RnH5-nにおいてnは0〜5の整数を表わす。Mはチタン、ジルコニウム及びハフニウムよる成る群から選択され、そしてXは、水素、ハロゲン、アルキル、アリール、アルカリール、アリールアルキル、ハロアルキル、ハロアリール、ハロアルカリール、ハロアリールアルキル、シリルアルキル、シリルアリール、シリルアルカリール、シリルアリールアルキル、ハロシリルアルキル、ハロシリルアリール、ハロシリルアルカリール、ハロシリルアリールアルキル、シリルハロアルキル、シリルハロアリール、シリルハロアルカリール、ハロシリルアリールアルキル、アルコキシ、シロキシ、NR'2、PR'2、SR'、及びBR'2より成る群から選択されるものである。MX3については、Xは1〜20の炭素原子を含む有機酸、例えばアセチルアセトネート、アセテート、ベンゾエート、ナフテネート、オクタノエート、ネオデカノエート、パルミテート、ステアレート、サリチルアルデヒド、salicaldehyde、トリフルオロアセテート等であってもよい。X基はMに1以上の場所で結合し得る。シクロペンタジエニル(Cp)に結合する置換基がそれに1以上の部位で結合できることが理解されるべきである。触媒成分中のX基は同じでも異なっていても、飽和でも不飽和でもよく、そして金属(M)に1以上の場所で結合できる。CpMX2及びMX3の場合には、金属MはIIIの酸化状態であり、そしてCpMX3及びMX4の場合には、金属MはIVの酸化状態である。Cpとして使用できる化合物のいくつかの具体的な例は
【0077】
【化7】
【0078】
{式中、Aはアルキレン基(例えば−CH2−または−CH2CH2−)またはアリーレン基(−C6H4−)を表わし、Yは酸素または硫黄原子(この場合mは1である)または窒素、ホウ素またはリン(この場合mは2である)を表わし、そしてRは、アルキル、アリール、アルカリール、アリールアルキル、ハロアルキル、ハロアリール、ハロアルカリール、ハロアリールアルキル、シリルアルキル、シリルアリール、シリルアルカリール、シリルアリールアルキル、ハロシリルアルキル、ハロシリルアリール、ハロシリルアルカリール、ハロシリルアリールアルキル、シリルハロアルキル、シリルハロアリール、シリルハロアルカリール、ハロシリルアリールアルキル、アルコキシ、シロキシ等を表わす}を含む。Rはまた、1以上の炭素及び/または珪素原子を通じて結合されたNR'2、PR'2、SR'、及びBR'2であってもよいが、もし1より多い炭素原子が存在すると、それらは飽和でも不飽和でもよく、ここで各R’は同じでも異なっていても良く、そして所望によって1以上のハロゲン原子またはアルコキシ基によって置換されているヒドリド、またはヒドロカルビル若しくはシリルであり、かつ20以下の炭素原子及び/または珪素原子を有する。R基が同じでも異なっていてもよいこと、そしてR基がCpに1以上の場所において結合できること、そしてl(エル)が0または1を表わすことに注意すべきである。このタイプの具体的化合物の代表的な例は、
【0079】
【化8】
【0080】
を含む。
助触媒成分は
【0081】
【化9】
【0082】
(式中、R”は1〜約10の炭素原子を含むアルキル基を表わし、R'''は2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル基または3,5−トリフロロメチルフェニル基を表わし、R””は2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル基、3,5−トリフルオロメチルフェニル基またはフェニル基を表わし、Zはアンモニウム塩、フェロセニウムイオン、インデニウムイオン、カチオン系誘導体または置換フェロセン若しくはインデン、銀原子、またはトリフェニルメチル基を表わし、そしてnは1〜約40、好ましくは3〜約20の整数を表わす)より成る群から選択される式を有する。実際のプラクティスにおいて、R'''及びR""は他のタイプの電子吸引置換基(同じでも異なっていてもよい)であることができる。式
【0083】
【化10】
【0084】
の式のMAOの助触媒において、R★は好ましくは1〜4の炭素原子を含み、メチル基が最も好ましい。
BR'''3において使用できるR'''のいくつかの代表的な例は
【0085】
【化11】
【0086】
を含む。
Z+B-R””4分子中で使用できるR””のいくつかの代表的な例は、
【0087】
【化12】
【0088】
を含む。Z+B-R””4において、R””基は好ましくは2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル基である。
もし触媒成分がMX3またはMX4であるときは、助触媒成分が
【0089】
【化13】
【0090】
の式のものである。
もし助触媒成分が式BR’’’3または式Z+B-R””4であるときは、であるときは少なくとも1つのXがアルキル基、アリール基、またはアルカリール基を表わす。ほとんどの場合、Xはメチル基またはベンジル基を表わす。しかし、Xは金属(M)から引き離すことができることができるいずれの基であってもよい。
【0091】
助触媒成分中のアルミニウムの触媒成分中の金属に対するモル比は典型的には約10:1〜約10000:1の範囲内である。助触媒中のアルミニウムの触媒成分中の金属に対するモル比は好ましくは約100:1〜約5000:1の範囲内である。助触媒中のアルミニウムの触媒成分中の金属に対するモル比が約400:1〜約2000:1の範囲内であるであるのが一般に最も好ましい。商業的用途において、助触媒中のアルミニウムの触媒成分中の金属に対するモル比は通常約50:1〜約500:1の範囲内である。助触媒中のホウ素の触媒中の金属に対するモル比は典型的には0.7:1〜1.5:1の範囲内である。助触媒中のホウ素の触媒中の金属に対するモル比はさらに典型的には0.9:1〜1.1:1の範囲内である。助触媒中のホウ素の触媒中の金属に対するモル比が1:1にできるだけ近いことが高度に望ましい。触媒系は典型的には約1×10-5phm(モノマー100部あたりの部数)〜約20phmの範囲内のレベルで使用される。触媒はさらに典型的には1×10ー4phm〜2phmの範囲内のレベルで使用され、好ましくは0.001phm〜0.2phmの範囲内のレベルで使用される。
【0092】
本発明は、単に例示の目的である以下の実施例によって示されるが、これらは本実施例が実施できる方法であるとも本発明の範囲を限定するものと理解されるべきではない。特に示さない限り、部及び百分率は重量により示される。
【0093】
【実施例】
一般的手順
全ての操作は標準のシュレンク(Schlenk)技術または不活性雰囲気の乾燥グローブボックスを使用してN2雰囲気下に行った。メチルアルモキサン(MAO:Witcoからトルエン中の10重量%溶液として購入)を真空下に50℃で一晩乾燥して溶媒及び遊離のAl(CH)3を除き、そして固体の形態で使用した。トルエン(Carlo Erbaから購入)を濃硫酸で処理して、次に飽和NaHCO3及び蒸留水で洗浄してチオフェン(C4H4S)を除いた。トルエンを次にCaCl2上で乾燥し、そして使用前にNa金属から蒸留した。スチレン(Aldrichから購入)を、使用前に減圧下にCaH2から蒸留した。重合等級の1,3ブタジエン(Societa Ossigeno Napoli(S.O.N.)から購入)を使用前に、活性化した3オングストロームの分子篩のカラムを通した。Ti(t−ブトキシ)4をAldrichから購入し、そして減圧での蒸留によって精製した。CpTiCl3、CpTiF3、Cp★TiF3、Cp★Ti(CH3)3、Ti(アセチルアセトネート)3及びB(C6F5)3を文献に従って調製した。p−トルエンスルホニルヒドラジド(Aldrichから購入)(THS)を真空下に50℃において9時間乾燥し、そして使用前に褐色のガラス瓶内に窒素下に保存した。ポリマーの分子量はSECによって決定した。ガラス転移温度(Tg)及び融点(Tm)はDSCによって決定した。平均シーケンス長さは13C NMRデータに基づいて計算し、そしてオゾノリシス試験の結果と比較した。ポリマーの微細構造は1H、13C、VT13C、及びDEPTNMR 試験によって決定し、そしてモル%で報告する。S=スチレン、B=シス1,4−PBdまたはトランス−1,4−PBd、V=1,2−ポリブタジエン、E=エチレン、b=ブテン、そしてnd=検出されなかったかまたは決定されなかった、であることに注意されたい。
シンジオタクティックポリスチレン−ポリブタジエンブロックコポリマーのNMR特性
シンジオタクティックスチレンのシーケンス(連鎖)及びシス1,4−ポリブタジエンのシーケンスの存在を、13C NMR(CDCl3)によって決定した:syndio−SSSトリアド(SS1S,44.3ppm;SS2S,41.0ppm);BBBトリアド(BC1B及びBC4B,27.4ppm;BC2B及びBC3B,129.8ppm)。これらのブロックコポリマーのコポリマーの性質をキー13C NMR(CDCl3)共鳴の存在によって決定した。これは次のものを含む:SSBBトリアド(S2SBB,40.5ppm;SS1BB,42.2ppm;SS2BB,43.3ppm;SSC1B,35.6ppm;SSB4B,27.4)。化学シフトはTMSを基準とした。
水素化されたシンジオタクティックポリスチレン−ポリブタジエンブロックコポリマーのNMR特性
ポリエチレンシーケンスの存在を、VT 13C NMR(1,1,2,2−テトラクロロエタン)によって決定した:EEEEトリアド(27.78ppm)。これらのブロックコポリマーのコポリマーの性質をキー13C NMR(1,1,2,2−テトラクロロエタン)共鳴の存在によって決定した。これは次のものを含む:SSEEトリアド(S1SEE,42.9ppm;S2SEE,39.4;SS1EE,41.6;SS2EE,41.9ppm;SSE1E,35.4ppm;SSE2E,25.3ppm;SSEE1,27.78ppm)。化学シフトはTMSを基準とした。
重合手順
オーブン乾燥した、250mLの三つ首丸底フラスコを乾燥N2で約25℃に冷却されるまでフラッシュした。N2の正圧下に、三つ首丸底フラスコを気密機械攪拌機構、ゴム隔壁及びオーブン乾燥すり合わせガラスストップコック(これを通じてフラスコが真空、N2または1,3−ブタジエンと連結される)を備えつけた。乾燥トルエン(100mL)、続いて乾燥スチレン(50mL)をカニューレを介して丸底フラスコに窒素圧力下に移した。望まれる量の固体MAO(前もって乾燥ボックス中でオーブン乾燥シュレンクフラスコを使用して調製したもの)のトルエン(10mL)溶液を、カニューレを通して丸底フラスコ内に攪拌しながら窒素圧力下に移した。三つ首丸底フラスコのゴム隔壁を次にオーブン乾燥すり合わせガラスで結合したストップコックで置換した。次に丸底フラスコを望まれる温度に設定した一定温度の浴中に置いた。溶液を熱平衡に達するように0.5時間攪拌した。不活性雰囲気を維持しながら、丸底フラスコ内の全圧を大気圧に等しくした。望まれる過圧の1,3−ブタジエンを激しく攪拌しながら導入することによって丸底フラスコ内の望まれる1,3−ブタジエン分圧を達成した。0.5時間後、望まれる触媒のトルエン(10mL)溶液(前もって乾燥ボックス中でオーブン乾燥シュレンクフラスコを使用して調製したもの)を攪拌しているフラスコ内にオーブン乾燥ガラスシリンジを使用してストップコックを介して注入した。シリンジを丸底フラスコから取り出す前に、正確な量のヘッドガスを触媒溶液を注入するときに取り出した。典型的には1.0時間後に、EtOH(約20mL)を丸底フラスコ内に導入して重合を停止した。次に重合混合物を攪拌しているEtOH(約400mL:HClで酸性化されている)のビーカー内に注いだ。凝固したポリマーを濾過によって集め、pHで中性になるまでEtOHで洗い、そして真空下で一定重量になるまで乾燥した。
水素化手順
還流コンデンサ及びテフロン攪拌棒を備えた250mLの丸底フラスコ内で、望まれるシンジオタクティックポリスチレン−ポリブタジエンブロックコポリマーのトルエン溶液(120mL)(2〜3w/w%)を、各ブタジエン単位につき2当量のTHSで処理した。反応混合物を8時間還流し、温度が60〜80℃に達したときに黄色い溶液に変わった。反応溶液を25℃に冷却し、そして濾過した。得られた無色の濾過物をエタノール(300mL)で処理し、そして凝固させた水素化ブロックコポリマーを濾過によって回収した。濾別したブロックコポリマーを過剰のエタノール及び熱水で洗浄し、そして真空下で80℃において一定重量になるまで乾燥した。
実施例1
触媒:CpTiCl3,3.0×10-5モル;助触媒:MAO,1.2×10-2(Al/Tiモル比=400);1,3−ブタジエン過圧:22.9mmHg;収量:0.233g;温度:15℃;ポリマー微細構造:S=43,B=50,V=7;分子量:Mw=317000;r1×r2,562;DSC:Tg,−66.7℃,Tm,249.6℃;平均シーケンス長さ:nS=14.7,nb=19.6。
実施例2
触媒:CpTiCl3,3.0×10-5モル;助触媒:MAO,1.2×10-2(Al/Tiモル比=400);1,3−ブタジエン過圧:23.8mmHg;収量:0.410g;温度:15℃;ポリマー微細構造:S=15,B=78,V=7;分子量:Mw=41400;r1×r2,285;DSC;Tg,−86.7℃,Tm,検出されず;平均シーケンス長さ:n S =4.8,nb=33.3。
実施例3
触媒:CpTiCl3,3.0×10-5モル;助触媒:MAO,1.2×10-2(Al/Tiモル比=400);1,3−ブタジエン過圧:24.8mmHg;収量:1.401g;温度:15℃;ポリマー微細構造:S=2,B=83,V=15;分子量:Mw=319400。
実施例4
触媒:CpTiCl3,3.0×10-5モル;助触媒:MAO,1.2×10-2(Al/Tiモル比=400);1,3−ブタジエン過圧:33.8mmHg;収量:1.420g;温度:15℃;ポリマー微細構造:S=0.3,B=83,V=16.7;分子量:Mw=501300。
実施例5
触媒:CpTiCl3,3.0×10-5モル;助触媒:MAO,1.2×10-2(Al/Tiモル比=400);1,3−ブタジエン過圧:25.7mmHg;収量:0.860g;温度:25℃;ポリマー微細構造:S=20,B=67,V=13;分子量:Mw=367900。
実施例6
触媒:CpTiCl3,3.0×10-5モル;助触媒:MAO,1.2×10-2(Al/Tiモル比=400);1,3−ブタジエン過圧:35.7mmHg;収量:0.73g;温度:35℃;ポリマー微細構造:S=21,B=70.3,V=8.7;分子量:Mw=56090。
実施例7
触媒:CpTiCl3,3.0×10-5モル;助触媒:MAO,1.2×10-2(Al/Tiモル比=400);1,3−ブタジエン過圧:37.6mmHg;収量:3.7g;温度:35℃;ポリマー微細構造:S=8,B=75,V=17;分子量:Mw=170300。
実施例8
触媒:CpTiCl3,3.0×10-5モル;助触媒:MAO,1.2×10-2(Al/Tiモル比=400);1,3−ブタジエン過圧:35.7mmHg;収量:0.860g;温度:45℃;ポリマー微細構造:S=90,B−V=10;分子量:Mw=51794。
実施例9
触媒:CpTiF3,3.0×10-5モル;助触媒:MAO,1.2×10-2(Al/Tiモル比=400);1,3−ブタジエン濃度:0.4M;収量:0.45g;温度:25℃;ポリマー微細構造:S=43,B=43,V=14。
実施例10
触媒:Cp★TiF3,3.0×10-5モル;助触媒:MAO,1.2×10-2(Al/Tiモル比=400);1,3−ブタジエン濃度:0.4M;収量:0.56g;温度:25℃;ポリマー微細構造:S=7,B=75,V=18。
実施例11
触媒:Cp★Ti(CH3)3,3.0×10-5モル;助触媒:MAO,1.2×10-2(Al/Tiモル比=400);1,3−ブタジエン過圧:21.8mmHg;収量:0.057g;温度:15℃;ポリマー微細構造:S=20,B=65,V=15。
実施例12
触媒:Ti(acac)3,3.0×10-5モル;助触媒:MAO,1.2×10-2(Al/Tiモル比=400);1,3−ブタジエン過圧:20.5mmHg;収量:0.085g;温度:15℃;重合時間:2.0時間;ポリマー微細構造:S=39,B=51,V=10。
実施例13
触媒:Ti(OtBu)4,3.0×10-5モル;助触媒:MAO,1.2×10-2(Al/Tiモル比=400);1,3−ブタジエン過圧:26.1mmHg;収量:0.048g;温度:15℃;ポリマー微細構造:S=96,B−V=4。
実施例14
触媒:Cp★Ti(CH3)3,3.0×10-5モル;助触媒:MAO,1.2×10-2(Al/Tiモル比=400);1,3−ブタジエン過圧:26.3mmHg;収量:0.057g;温度:15℃;ポリマー微細構造:S=9,B=78,V=3。
実施例15
触媒:Cp★Ti(CH3)3,3.0×10-5モル;助触媒:MAO,1.2×10-2(Al/Tiモル比=400);1,3−ブタジエン過圧:21.9mmHg;収量:0.03g;温度:15℃;ポリマー微細構造:S=96,B+V=4。
実施例16
触媒:Cp★Ti(CH3)3,3.0×10-5モル;助触媒:MAO,1.2×10-2(Al/Tiモル比=400);1,3−ブタジエン過圧:22.6mmHg;収量:0.6g;温度:25℃;ポリマー微細構造:S=65,B=32,V=3。
実施例17
触媒:Cp★Ti(CH3)3,3.0×10-5モル;助触媒:B(C6F5)3,3.0×10-5モル,TIBA,9.0×10-4;1,3−ブタジエン過圧:23.2mmHg;収量:0.022
g;温度:25℃;ポリマー微細構造:S=82,B=14,V=4。
実施例18
触媒:Cp★Ti(CH3)3,3.0×10-5モル;助触媒:B(C6F5)3,3.0×10-5モル,TIBA,9.0×10-4;1,3−ブタジエン過圧:22.6mmHg;収量:0.03g;温度:25℃;ポリマー微細構造:S=94,B=4,V=2。
実施例19
触媒:Cp★Ti(CH3)3,3.0×10-5モル;助触媒:B(C6F5)3,3.0×10-5モル,TIBA,9.0×10-4;1,3−ブタジエン過圧:25.1mmHg;収量:0.084g;温度:30℃;ポリマー微細構造:シンジオタクティックポリスチレン(いくらかのアタクティックポリスチレンも検出された)。
実施例20
シンジオタクティックポリスチレン−ポリブタジエンブロックコポリマーのポリマー微細構造:S=70,B=27,V=3;得られた水素化シンジオタクティックポリスチレン−ポリブタジエンブロックコポリマーのポリマー微細構造:S=47,E+b=53,DSC:Tm(スチレン),215℃、Tm(エチレン),49℃;平均シーケンス長さ:ns=20,nE=11。
実施例21
シンジオタクティックポリスチレン−ポリブタジエンブロックコポリマーのポリマー微細構造:S=66,B=26,V=8;得られた水素化シンジオタクティックポリスチレン−ポリブタジエンブロックコポリマーのポリマー微細構造:S=45,E+b=55,DSC:Tm(スチレン),212℃、Tm(エチレン),60℃;平均シーケンス長さ:ns=19,nE=14。
実施例22
シンジオタクティックポリスチレン−ポリブタジエンブロックコポリマーのポリマー微細構造:S=24,B=61,V=15;得られた水素化シンジオタクティックポリスチレン−ポリブタジエンブロックコポリマーのポリマー微細構造:S=14,E=79,b=7,DSC:Tm(スチレン),検出されず,Tm(エチレン),84℃;平均シーケンス長さ:ns=2,nE=132。
【0094】
本発明の変更物はここに与えられた記述にそって可能である。ある代表的な態様を本発明を例示する目的のために示してきたが、本技術の当業者には、種々の変更及び修正が本発明の範囲から逸脱することなくなし得ることが明らかである。従って、記述された特別の態様内でなされ得る変更が、特許請求の範囲によって定義される全ての意図される本発明の範囲内であることが理解される。
Claims (2)
- (a)シンジオタクティックポリスチレンブロック及び(b)シス−1,4−ポリブタジエンブロックを含むスチレン−ブタジエンブロックコポリマーであって、シス−1,4−ポリブタジエンブロックが20%以下のビニル含量を有し、シンジオタクティックポリスチレンブロックが少なくとも50%のシンジオタクティック微細構造を有し、ブロックコポリマーは少なくとも5つのシンジオタクティックポリスチレンブロックを有し、ブロックコポリマーは10000〜700000の範囲内の数平均分子量を有し、各シンジオタクティックポリスチレンブロックが少なくとも3つのスチレン繰返単位を含む、前記のスチレン−ブタジエンブロックコポリマー。
- 1,3−ブタジエン及びスチレンを0℃〜100℃の範囲内の温度及び10mmHg〜50mmHgの範囲内の1,3−ブタジエン分圧において共重合することを含む、請求項1に記載のスチレン−ブタジエンブロックコポリマーの合成方法であって、該共重合が、触媒成分と助触媒成分を含む触媒系の存在下で実施される、前記の合成方法。
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