JP4009711B2 - オレフィン重合用触媒及びそれを用いたオレフィンの重合法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エチレン、プロピレン等のオレフィン重合用触媒及びそれを用いるオレフィンの重合方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
メタロセン化合物を触媒成分としたオレフィン重合用触媒は知られている。従来、メタロセン、代表的には最も実用化が進んでいるジルコノセンは、(1)メチルアルミノオキサン(以下、MAOという。)、(2)Ph2 MeHN・B (C6 F5 )4 (但し、Phはフェニル基を、Meはメチル基を示す。)、(3)有機アルミニウム化合物及びヘテロポリ酸、等と組み合わせて活性化することにとって触媒成分にオレフィン重合能を発現させている。
【0003】
しかし、ジルコノセンを活性化するために用いられる上記(1)のMAOは、大量に用いる必要があり、それに伴い重合触媒がコスト高となると共に得られるポリマー中の触媒殘渣が多くなる、上記(2)のPh2 MeHN・B(C6 F5 )4 は、不安定であることから、失活し易く、取扱いが不便である、上記(3)のヘテロポリ酸系は低活性である、等の問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、より簡便で、安価かつ取扱いが容易なメタロセン触媒系からなるオレフィン重合用触媒及びそれを用いるオレフィンの重合方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、チタノセン、ジルコノセンとアルミニウムトリハライドとの反応生成物及びジアルキルアルミニウムハライドを組み合わせた組成物が、本発明の目的を達成し得ることを見出だし、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、(1)ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムハライド、(2)一般式 Cp2 Zr(X)(Y)で表されるビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウム化合物(但し、Xはハロゲン原子若しくは炭素数1〜8個のアルキル基、Yはハロゲン原子若しくは炭素数1〜8個のアルキル基を示す。XとYは同じでも良い。)とアルミニウムトリハライドとの反応生成物及び(3)ジアルキルアルミニウムハライドからなるオレフィン重合用触媒を要旨とする。
【0007】
又、本発明は、上記ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムハライドがビス(シクロペンタジエニル)チタニウムクロリドであり、上記反応生成物がビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドと三塩化アルミニウムとの反応生成物であり、上記ジアルキルアルミニウムハライドがジエチルアルミニウムクロリドであることを特徴とする。
又、本発明は、上記反応生成物が、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドと三塩化アルミニウムの等モル反応生成物であることを特徴とする。
【0008】
更に、本発明は、上記オレフィン重合用触媒の存在下、オレフィンを重合することからなるオレフィンの重合法を要旨とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の重合触媒は、(1)ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムハライド(以下、成分(1)という。)、(2)一般式 Cp2 Zr(X)(Y)で表されるビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウム化合物(但し、Xはハロゲン原子若しくは炭素数1〜8個のアルキル基、Yはハロゲン原子若しくは炭素数1〜8個のアルキル基を示す。XとYは同じでも良い。)とアルミニウムトリハライドとの反応生成物及び(3)ジアルキルアルミニウムハライド(以下、成分(3)という。)からなる。
【0010】
成分(1)としてはビス(シクロペンタジエニル)チタニウムクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムブロミド、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムアイオダイド等が挙げられるが、特にビス(シクロペンタジエニル)チタニウムクロリド(Cp2 TiCl)が好ましい。これらの成分(1)は、容易に製造することができる公知の化合物であり、安価で、かつ安定な化合物である。
【0011】
成分(2)は、上記一般式 Cp2 Zr(X)(Y)で表されるビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウム化合物(但し、Xはハロゲン原子若しくは炭素数1〜8個のアルキル基、Yはハロゲン原子若しくは炭素数1〜8個のアルキル基を示す。XとYは同じでも良い。)とアルミニウムトリハライドとの反応生成物である。ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウム化合物の上記一般式におけるX及びYのハロゲン原子としては、塩素、臭素、ヨウ素、弗素原子が挙げられ、特に塩素原子が好ましい。又、X及びYのJの炭素数1〜8個のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル等が挙げられ、好ましくはメチル、エチル、プロピル、特に好ましくはメチル基である。ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウム化合物は既知の化合物であり、その多くは市販されているが、後記の実施例で示すようにその製造法は文献等に記載されているか、その文献等に記載されている方法に準じて製造することができる。ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウム化合物の中でもビス(シクロペンタジエニル)チタニウムクロリド(Cp2 ZrCl2 )が、特に好ましい。アルミニウムトリハライドとしては、三塩化アルミニウム(AlCl3 )、三臭化アルミニウム、三ヨウ化アルミニウムが挙げられるが、特にAlCl3 が好ましい。
【0012】
成分(2)としては、Cp2 ZrCl2 とAlCl3 との反応生成物、特に両者の等モル反応生成物が好ましい。ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウム化合物とアルミニウムトリハライドを反応して成分(2)を製造する方法は、反応に対して不活性な媒体中で行われる。該媒体としては、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の飽和脂肪族炭化水素、シクロプロパン、シクロヘキサン等の飽和脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられるが、芳香族炭化水素、特にトルエンが好ましい。反応は、50℃〜該媒体の還流温度、1〜10時間で完結する。得られた反応生成物は分離し、精製するのが好ましい。又、成分(2)は、上記ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウム化合物と上記アルミニウムトリハライドを予め反応させてそれらの反応生成物としたもの以外に、オレフィンを重合する際、その重合系に両者を成分(1)又は成分(3)と共に供給して、その場で両者を接触させても良い。
【0013】
本発明の重合触媒は、上記成分(1)、成分(2)及び成分(3)からなるが、それらは、成分(1)中のチタン1グラム原子当り、成分(2)は成分(2)中のジルコニウムが0.1〜10グラム原子、好ましくは0.5〜1.5グラム原子、成分(3)は0.1〜1,000グラムモル、好ましくは10〜30グラムモルとなる割合で用いられる。
【0014】
上記3成分からなる重合触媒は、オレフィンを重合する際に、上記3成分をそのまま、又は3成分を同時に混合して用いても良いが、予め成分(1)と成分(2)を混合、接触させた後、成分(3)を混合した上で用いるのが好ましい。成分(1)と成分(2)の混合、接触は、−100℃〜+100℃、好ましくは0〜30℃で0.5〜60分間行われる。この混合、接触は、適当な媒体、例えば、オレフィンの重合時に用いられることがある炭化水素中で行うことができる。
【0015】
更に、本発明は、上記重合触媒の存在下、オレフィンを重合することからなるオレフィンの重合方法である。オレフィンの重合は、エチレン及び/又はオレフィン類(但し、エチレンを除く。)を単独重合若しくは共重合させることからなる。単独重合若しくは共重合させるオレフィン類としては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等のα−オレフィン等が挙げられる。本発明は、エチレン又はプロピレンの単独重合並びにエチレンとプロピレンの共重合に適しているが、特にエチレンの単独重合に適している。
【0016】
(共)重合反応は、通常、(共)重合反応に対して不活性で、(共)重合時に液体である媒体中で行われる。該媒体としては、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の飽和脂肪族炭化水素、シクロプロパン、シクロヘキサン等の飽和脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これら媒体は1種に限らず2種以上併用することができる。上記単独重合若しくは共重合は、通常、−100℃〜+100℃、好ましくは0〜30℃で0.5〜100時間行われる。
【0017】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
(実施例1)
[成分1の合成]
100mlの3つ口フラスコを充分窒素置換した後、三塩化チタン0.88gとビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム0.88gを入れ、冷却しながらテトラヒドロフラン25mlを加えた。室温で1時間攪拌し、80℃で2時間還流した後、溶媒を留去して緑褐色の固体を得た。この固体を真空下、120℃で加熱してビス(シクロペンタジエニル)マグネシウムを昇華除去し、170℃に加熱することにより紫褐色の成分1であるビス(シクロペンタジエニル)チタニウムクロリド(Cp2 TiCl)を合成した。
【0018】
[成分2の合成]
100mlの3つ口フラスコを充分窒素置換した後、予め昇華精製した3.94gの三塩化アルミニウム、50mlのトルエン溶媒及び8.64gのビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(Cp2 ZrCl2 )をこの順序で入れた。次いで、攪拌下、還流させながら1時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却した後、液相だけを濾過により回収し、真空脱気することで淡黄色の固体を得た。更に、この固体を精製ヘキサン各80mlで5回洗浄し、真空乾燥することにより淡黄色の成分2を合成した。
【0019】
[エチレンの重合]
窒素置換した100mlのフラスコにトルエン17mlを入れ、良く攪拌しながら減圧下脱気を行った後、エチレンを導入した。エチレンの吸収量はマスフローメーターで測定した。エチレンの吸収が認められなくなりトルエンが充分に飽和した後、上記で合成した成分2の2.73×10-5モルのトルエンスラリーを1ml(27.3マイクロモル)を加えた。マスフローメーターにより重合が進行しないことを確認した後、上記で合成した成分1のCp2 TiClの2.73×10-5モルのトルエン溶液を1ml加えた。室温で5分間攪拌した後、ジエチルアルミニウムクロリドの1.0モルのトルエン溶液を1ml加えることにより重合が開始した。1時間後、重合溶液に5mlのメタノールを加えることにより重合を停止した。2規定の塩酸を少量含む大量のメタノールに沈殿させてポリマーを回収した後、濾過、減圧することにより1.67gのポリエチレンを得た。
【0020】
(実施例2)
[成分2の合成]
100mlの3つ口フラスコを充分窒素置換した後、6.03gのCp2 ZrCl2 と精製したジエチルエーテル溶媒50mlを入れた。次いで、攪拌しながら14モル/lのメチルリチウムのジエチルエーテル溶液29.5mlを30分掛けて滴下した。更に、室温にて15時間攪拌した後、真空脱気により溶媒を除去した。残存した固相部を精製ヘキサン400mlで抽出し、その可溶部を回収した。更に、約100mlの体積になるまで真空脱気にて濃縮した。この濃溶液を−78℃に冷却することにより白色結晶からなるビス(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム(Cp2 ZrMe2 )を合成した。
実施例1の成分2の合成において、Cp2 ZrCl2 の代りに上記で得たCp2 ZrMe2 を用いた以外は、実施例1と同様にして成分2を合成した。
【0021】
[エチレンの重合]
実施例1で用いた成分2の代りに上記で得られた成分2を用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレンの重合を行い、0.013gのポリエチレンを得た。
【0022】
(実施例3)
[成分2の合成]
100mlの3つ口フラスコを充分窒素置換した後、実施例2で得たCp2 ZrMe2 2.17g、トルエン溶媒50ml及びCp2 ZrCl2 2.51gをこの順序で入れた。次いで、攪拌下、還流させながら50時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却した後、真空脱気することにより溶液量が約半分になるまで濃縮した。この濃溶液を−78℃に冷却することにより淡黄色結晶からなるビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムメチルクロリド(Cp2 ZrMeCl)を合成した。
実施例1の成分2の合成において、Cp2 ZrCl2 の代りに上記で得たCp2 ZrMeClを用いた以外は、実施例1と同様にして成分2を合成した。
【0023】
[エチレンの重合]
実施例1で用いた成分2の代りに上記で得られた成分2を用いた以外は、実施例1と同様にしてエチレンの重合を行い、0.22gのポリエチレンを得た。
【0024】
(実施例4)
[エチレンの重合]
窒素置換した100mlのフラスコに三塩化アルミニウム3.6mg(27.3マイクロモル)及びトルエン17mlを入れ、良く攪拌しながら減圧下脱気を行った後、エチレンを導入した。エチレンの吸収量はマスフローメーターで測定した。エチレンの吸収が認められなくなりトルエンが充分に飽和した後、Cp2 ZrCl2 の2.73×10-5モルのトルエン溶液を1ml(27.3マイクロモル)を加えた。マスフローメーターにより重合が進行しないことを確認した後、Cp2 TiClの2.73×10-5モルのトルエン溶液を1ml加えた。室温で5分間攪拌した後、ジエチルアルミニウムクロリドの1.0モルのトルエン溶液を1ml加えることにより重合が開始した。1時間後、重合溶液に5mlのメタノールを加えることにより重合を停止した。2規定の塩酸を少量含む大量のメタノールに沈殿させてポリマーを回収した後、濾過、減圧することにより0.19gのポリエチレンを得た。
【0025】
(比較例1)
実施例1において、Cp2 TiCl(成分(1))を用いなかった以外は、実施例1と同様にしてエチレンの重合を行ったが、ポリマーは得られなかった。
【0026】
(比較例2)
実施例1において、ジエチルアルミニウムクロリド(成分(3))を用いなかった以外は、実施例1と同様にしてエチレンの重合を行ったが、ポリマーは得られなかった。
【0027】
【発明の効果】
本発明の触媒は安定で取扱いが容易であり、常温でオレフィンの重合が可能であると共に、メタロセン化合物と組み合わせる有機アルミニウム化合物の使用量を従来のアルミノオキサンのそれに比べて大幅に減少することができ、従って触媒コスト並びにポリマー中の触媒残渣を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の触媒の調製方法を示すフローチャート図である。
Claims (4)
- (1)ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムハライド、(2)一般式 Cp2 Zr(X)(Y)で表されるビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウム化合物(但し、Xはハロゲン原子若しくは炭素数1〜8個のアルキル基、Yはハロゲン原子若しくは炭素数1〜8個のアルキル基を示す。XとYは同じでも良い。)とアルミニウムトリハライドとの反応生成物及び(3)ジアルキルアルミニウムハライドからなるオレフィン重合用触媒。
- 上記ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムハライドがビス(シクロペンタジエニル)チタニウムクロリドであり、上記反応生成物がビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドと三塩化アルミニウムとの反応生成物であり、上記ジアルキルアルミニウムハライドがジエチルアルミニウムクロリドであることからなる請求項1記載のオレフィン重合用触媒。
- 上記反応生成物が、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドと三塩化アルミニウムの等モル反応生成物であることからなる請求項2記載のオレフィン重合用触媒。
- 請求項1ないし3のいずれかに1項に記載のオレフィン重合用触媒の存在下、オレフィンを重合することからなるオレフィンの重合法。
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-
1999
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