JP4517470B2 - ゴム組成物およびタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、加工性に優れ、しかも高耐ウエットスキッド性、低転がり抵抗性および耐摩耗性に優れる加硫物を与えるゴム組成物およびこのゴム組成物から製造されたタイヤトレッドを備えたタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車に対する低燃費化の要求に伴ってタイヤの転がり抵抗を低減するタイヤ用ゴム材料が求められるようになった。このタイヤの転がり抵抗を低減するためには、加硫ゴムの低周波数でのエネルギーロスを小さくすればよく、加硫ゴムの評価指標としては60℃のtanδが用いられ、60℃のtanδが小さい原料ゴムが好ましい。
【0003】
また、走行安定性の要求から、湿潤路面での摩擦抵抗(ウエットグリップ)や乾燥路面での摩擦抵抗(ドライグリップ)の大きい原料ゴムも強く望まれるようになってきた。このタイヤの湿潤路面での摩擦抵抗を増加するためには、加硫ゴムの高周波数でのエネルギーロスを大きくすればよく、加硫ゴムの評価指標としては0℃のtanδが用いられ、0℃のtanδが大きい原料ゴムが好ましい。
【0004】
しかしながら、これら低転がり抵抗と湿潤路面での摩擦抵抗は二律背反の関係にあり、両立することは非常に困難であった。これまでに、補強剤として、カーボンブラックに替えてシリカを配合したゴム組成物を用いることが提案されている。例えば、スチレン−ブタジエンコポリマー、ビニルポリブタジエンおよびシリカとカーボンブラックとの混合物からなるゴム組成物(特開平3−252433公報、特開平9−183868公報)等がある。
しかし、これらの方法は、十分な効果を達成するために、高価なシラン系カップリング剤を多量に使用する必要があり、かつ練り温度を150〜160℃以下に制御する必要があり、かつ加硫前の配合ゴムの加工性が悪い問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、練り温度の問題がなく、加硫前の加工性に優れ、かつ高耐ウエットスキッド性、低転がり抵抗性および耐摩耗性を同時に満足する加硫物を与えるゴム組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、高耐ウエットスキッド性、低転がり抵抗性および耐摩耗性に優れたタイヤを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、下記構成のゴム組成物およびタイヤが提供されて、本発明の上記目的が達成される。
【0007】
(1)ジエン系ゴム(a)と、該ジエン系ゴム(a)100重量部当たり5〜100重量部のシリカ(b)と、該シリカ(b)100重量部当たり0.1〜20重量部の相溶化剤(c)と、を含有するゴム組成物であって、
上記相溶化剤(c)は、(II)エポキシ基含有化合物、(III)一分子中にアミノ基とエーテル結合を有する化合物、(IV)一分子中に重合性不飽和結合とカルボキシル基を有する化合物、(V)エーテル結合含有化合物、から選択される少なくとも一種であり、
上記ジエン系ゴム(a)は、該ジエン系ゴム(a)に対して30〜100重量%のスチレン−ブタジエン共重合ゴムを含有し、
該スチレン−ブタジエン共重合ゴムは、
(i)スチレン成分含量が5〜45重量%であり、
(ii)ブタジエン成分の1,2−結合量が10〜80%であり、
(iii)ガラス転移温度が−70〜−10℃であり、かつ
(iv)該共重合ゴム100g当たり、アルコキシシリル基含有量が0.01〜5.0mmol及び/又はアミノ基含有量が0.01〜2.0mmolであり、
上記(II)エポキシ基含有化合物は、エポキシ化大豆油であり、
上記(III)一分子中にアミノ基とエーテル結合とを有する化合物は、3−ラウリルオキシプロピルアミンであり、
上記(IV)一分子中に重合性不飽和結合とカルボキシル基とを有する化合物は、2−メタクリロイルオキシエチル琥珀酸あり、
上記(V)エーテル結合含有化合物は、ジブチルエーテルであることを特徴とするゴム組成物。
【0009】
(2)上記相溶化剤(c)は、上記(II)、上記(III)および上記(IV)から選択される少なくとも一種である上記(1)に記載のゴム組成物。
【0010】
(3)上記ジエン系ゴム(a)は、該ジエン系ゴム(a)に対して50〜100重量%のスチレン−ブタジエン共重合ゴムを含有し、
該スチレン−ブタジエン共重合ゴムは、
(i)スチレン成分含量が20〜40重量%であり、
(ii)ブタジエン成分の1,2−結合量が15〜75%であり、
(iii)ガラス転移温度が−40〜−15℃であり、かつ
(iv)該共重合ゴム100g当たり、アルコキシシリル基含有量が0.1〜3.0mmol及び/又はアミノ基含有量が0.1〜1.5mmolである上記(1)又は(2)に記載のゴム組成物。
【0011】
(4)上記スチレン−ブタジエン共重合ゴムは、(iv)該共重合ゴム100g当たり、アルコキシシリル基含有量が0.1〜3.0mmolかつアミノ基含有量が0.1〜1.5mmolである上記(3)に記載のゴム組成物。
【0012】
(5)上記相溶化剤(c)は、上記(II)である上記(4)に記載のゴム組成物。
【0013】
(6)充填剤として、上記ジエン系ゴム(a)100重量部当たり2〜100重量部のカーボンブラックをさらに含有する上記(1)〜(5)のいずれかに記載のゴム組成物。
【0014】
(7)上記(1)〜(6)のいずれか一項に記載のゴム組成物から製造されたトレッドを備えることを特徴とするタイヤ。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳述する。
本発明のゴム組成物に含有されるジエン系ゴム(a)は、スチレン−ブタジエン共重合ゴムを含有し、それ以外のジエン系ゴム(a)としては、例えば、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエン−イソプレン共重合ゴム、ブタジエン−スチレン−イソプレン共重合ゴム、天然ゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0016】
ジエン系ゴム(a)のム−ニー粘度(ML1+4,100℃)は、30〜200であることが好ましく、より好ましくは40〜150である。
このジエン系ゴム(a)は、油展ゴムとして使用することが好ましく、油展ゴムのムーニー粘度(ML1+4,100℃)は20〜110が好ましく、30〜100がより好ましい。
【0017】
本発明のゴム組成物に含有されるジエン系ゴム(a)は、その30〜100重量%をスチレン−ブタジエン共重合ゴムが占める。特には50〜100重量%をスチレン−ブタジエン共重合ゴムが占めることが好ましい。そして該スチレン−ブタジエン共重合ゴムが、下記(i)〜(iii)と、(iv−1)〜(iv−3)から選択されるいずれか一つの条件と、を満たす。
(i)スチレン成分含量が5〜45重量%、好ましくは20〜40重量%であること。
(ii)ブタジエン成分の1,2−結合量が10〜80%、好ましくは15〜75重量%であること。
(iii)ガラス転移温度が−70〜−10℃、好ましくは−40〜−15℃であること。
(iv−1)該共重合ゴム100g当たりのアミノ基含有量が0.01〜2.0mmol(好ましくは0.1〜1.5mmol)であること。
(iv−2)該共重合ゴム100g当たりのアルコキシシリル基含有量が0.01〜5.0mmol(好ましくは0.1〜3.0mmol)であること。
(iv−3)該共重合ゴム100g当たり、アルコキシシリル基含有量が0.01〜5.0mmol(好ましくは0.1〜3.0mmol)かつアミノ基含有量が0.01〜2.0mmol(好ましくは0.1〜1.5mmol)であること。
【0018】
上記条件を満たすスチレン−ブタジエン共重合ゴムは、それ自体公知の方法で製造することができ、例えば下記(イ)〜(ハ)の方法を挙げることができるが、これらの方法に制限されない。
(イ)アルコキシシリル基が導入された共重合ゴム
例えば触媒としてn−ブチルリチウム等の有機アルカリ金属化合物を用いたアニオン重合により、スチレンと1,3−ブタジエンの共重合を行い、得られた重合体の活性アルカリ金属末端をアルコキシシラン化合物でカップリングすることで製造することができる(例えば特開昭63−215701号公報)。
(ロ)アミノ基が導入された共重合ゴム
n−ブチルリチウム等の有機アルカリ金属化合物を用いたアニオン重合により、1級または2級アミン、好ましくは2級アミンの存在下にスチレンと1,3−ブタジエンの共重合を行うことで製造することができる(例えば特開平6−279515号公報)。
(ハ)アルコキシシリル基およびアミノ基が導入された共重合ゴム
上記(ロ)の方法で転化率がほぼ100%に達した後、アルコキシシリル基を有する変性剤を添加することでアルコキシシリル基とアミノ基のいずれをも有するスチレン−ブタジエン共重合ゴムを製造することができる。
【0019】
上記アルコキシシランの具体例としては、例えば、特開平7−233216号公報に記載されるアルコキシシランが用いられ、例えば、
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、テトラトルイロキシシラン等のテトラアルコキシシラン;
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、エチルトリフェノキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ジエチルジフェノキシシラン等のアルキルアルコキシシラン;
ビニルトリメトキシシランン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、アリルトリメトキシシラン、オクテニルトリメトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、スチリルトシメトキシシラン等のアルケニルアルコシキシシラン;
フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリブトキシシラン、フェニルトリフェノキシシラン等のアリールアルコキシシラン;
トリメトキシクロロシラン、トリエトキシクロロシラン、トリプロポキシクロロシラン、トリブトキシクロロシラン、トリフェノキシクロロシラン、ジメトキシジクロロシラン、ジプロポキシジクロロシラン、ジフェノキシジクロロシラン、メトキシトリクロロシラン、エトキシトリクロロシラン、プロポキシトリクロロシラン、フェノキシトリクロロシラン、トリメトキシブロモシラン、トリエトキシブロモシラン、トリプロポキシブロモシラン、トリフェノキシブロモシラン、ジメトキシジブロモシラン、ジエトキシジブロモシラン、ジフェノキシジブロモシラン、メトキシトリブロモシラン、エトキシトリブロモシラン、プロポキシトリブロモシラン、フェノキシトリブロモシラン、トリメトキシヨードシラン、トリエトキシヨードシラン、トリプロポキシヨードシラン、トリフェノキシヨードシラン、ジメトキシジヨードシラン、ジエトキシジヨードシラン、ジプロポキシヨードシラン、メチキシトリヨードシラン、エトキシトリヨードシラン、プロポキシトリヨードシラン、フェノキシトリヨードシラン等のハロゲノアルコキシシラン;
β−クロロエチルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン等のハロゲノアルキルアルコキシシラン;
β−ニトロエチルメチルジメトキシシラン、γ−ニトロプロピルメチルジメトキシシラン等のニトロアルキルアルコキシシラン;
等が挙げられる。
【0020】
また、上記2級アミンとしては、例えば脂肪族2級アミン、芳香族2級アミンおよび環状イミン等が挙げられ、好ましくは脂肪族2級アミン、環状イミンである。
【0021】
脂肪族2級アミンとしては、例えばジメチルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルブチルアミン、メチルアミルアミン、アミルヘキシルアミン、ジエチルアミン、エチルプロピルアミン、エチルブチルアミン、エチルヘキシルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、プロピルブチルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、メチルシクロペンチルアミン、エチルシクロペンチルアミン、メチルシクロヘキシルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等が挙げられる。これらの中でも、ジメチルアミン、メチルエチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン等が好ましく挙げられる。
【0022】
芳香族2級アミンとしては、例えば、ジフェニルアミン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、ジベンジルアミン、N−メチルベンジルアミン、N−エチルフェネチルアミン等が挙げられる。
【0023】
環状イミン化合物としては、例えば、アジリジン、アセチジン、ピロリジン、ピペリジン、2−メチルピペリジン、3−メチルピペリジン、4−メチルピペリジン、3,5−ジメチルピペリジン、2−エチルピペリジン、ヘキサメチレンイミン、ヘプタメチレンイミン、ドデカメチレンイミン、コニイン、モルホリン、オキサジン、ピロリン、ピロール、アゼピン等が挙げられる。これらの中でも、ピロリジン、ピペリジン、3−メチルピペリジン、4−メチルピペリジン、3,5−ジメチルピペリジン、2−エチルピペリジン、ヘキサメチレンイミン、ヘプタメチレンイミン等が好ましい。
【0024】
これらの2級アミン化合物は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0025】
上記(ii)ブタジエン成分の1,2−結合量は、該結合量の調節剤として、エーテル化合物または第3級アミンを用いることにより、上記範囲内に調整することができる。
上記エーテル化合物または第3級アミンとしては、例えばジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、ジピペリジノエタン等を挙げることができる。
【0026】
また、上記(iii)ガラス転移温度は、スチレン含量やブタジエン部分のミクロ構造の1,2−結合(ビニル)含量によって調節することできる。ここで、スチレン含量およびブタジエン部分のミクロ構造の1,2−結合(ビニル)含量を増加するとガラス転移温度が増大する関係にある。
これらの関係を利用して、例えば重合時におけるスチレンの仕込み量を制御することによりスチレン含量を調節する方法、重合時における前記エーテル化合物や第3級アミン等の極性化合物の添加量を制御して(極性化合物の添加量を増加すると1,2−結合(ビニル)含量は増加する)1,2−結合(ビニル)含量を調節する方法、さらにはこれらの方法を併用して、ガラス転移温度を上記範囲内に調整することができる。なお、上記極性化合物やドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、リノレイン酸カリウム、安息香酸カリウム、フタル酸カリウム、テトラデシルベンゼンスルホン酸カリウムは、スチレンのランダマイザーともなる。
【0027】
本発明のゴム組成物に用いられる充填剤であるシリカ(b)としては、特に限定されるものではないが、湿式法シリカ、乾式法シリカ、合成ケイ酸塩系シリカのいずれのものも使用できる。補強効果の高いのは粒子径の小さいシリカであり、小粒子・高凝集タイプ(高表面積、高吸油性)のものがゴムへの分散性が良好で、物性および加工性の面で特に好ましい。
シリカ(b)の平均粒径は、一次粒子径で5〜60μm、特には8〜40μmが好ましい。
シリカ(b)の配合量は、ジエン系ゴム(a)100重量部に対して、5〜100重量部であり、更に好ましくは10〜90重量部である。
【0028】
本発明のゴム組成物では、充填剤としてカーボンブラックとシリカ(b)とを併用することが好ましく、この場合、カーボンブラックをジエン系ゴム(a)100重量部当たり2〜100重量部、シリカ(b)をジエン系ゴム(a)100重量部当たり5〜100重量部配合するのが好ましい。
本発明のゴム組成物には、その他の充填剤として、カーボン−シリカデュアル・フェイズフィラー、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等を配合することができ、必要に応じた量が使用される。
【0029】
本発明のゴム組成物に含有される相溶化剤(c)は、シランカップリング剤と以下の点でその機能は明確に異なる。
シランカップリング剤:(i)シリカと反応する部位と(ii)ポリマーと反応する部位とを併せ持つ。
相溶化剤(c):上記(i)の部位のみを有する。
【0030】
この相溶化剤(c)は、下記(II)〜(V)から選択される少なくとも一種であり、下記(II)〜(IV)から選択される少なくとも一種であることが好ましい。尚、本発明以外の相溶化剤(c)としては、下記(I)及び(VI)が挙げられる。
【0031】
「(I)アミノシラン化合物」の具体例としては、ヘキサメチルジシラザン、ノナメチルトリシラザン、アニリトリメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)ジメチルシラン、トリエチルアミノシラン等が挙げられる。なかでもシラザン化合物、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシランが好ましい。
上記「(II)エポキシ基含有化合物」は、エポキシ化大豆油である。また、本発明以外の相溶化剤(c)として、ブチルグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、酸化プロピレン、ネオペンチルグリコールシグリシジルエーテル、エポキシ樹脂、エポキシ化脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0032】
上記「(III)一分子中にアミノ基とエーテル結合を有する化合物」は、下記のものが挙げられる。また、本発明以外の相溶化剤(c)として、一分子中にアミノ基と水酸基、またはアミノ基とエポキシ基、またはアミノ基とカルボキシル基、またはアミノ基とエステル基、またはアミノ基と重合性不飽和結合を有する化合物が挙げられる。
(1)一分子中にアミノ基と水酸基とを有する化合物(本発明以外の相溶化剤):水酸化トリメチルベンジルアンモニウム、ガンマ酸、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、アミノフェノール、トランスー1,2ーシクロヘキサンジアミン四酢酸、3−アミノ−1−プロパノール、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、ピリジンメタノール、p−ヒドロキシフェニルアセトアミド等。
(2)一分子中にアミノ基とエポキシ基とを有する化合物(本発明以外の相溶化剤):N,N−ジグリシジル−o−トルイジン、ポリグリシジルアミン、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジル−o−トルイジン、トリスエポキシプロピルイソシアヌレート等。
(3)一分子中にアミノ基とエーテル結合とを有する化合物:3−ラウリルオキシプロピルアミン、また、本発明以外の相溶化剤(c)として、ジアミノジフェニルエーテル、モルホリン、N−(3−アミノプロピル)モルホリン、2−メチル−4−メトキシジフェニルアミン、p−フェネチジン、p−クレシジン、3−イソプロポキシアニリン等。
(4)一分子中にアミノ基とカルボキシル基とを有する化合物(本発明以外の相溶化剤):アントラニル酸、フタルアミン酸ソーダ、p−アミノ安息香酸、イミノジ酢酸、アミノドデカン酸、アミノカルボン酸塩、カルボキシベタイン、イミダゾリニウムベタイン、ピラジンモノカルボン酸、2,3−ピラジンジカルボン酸、ピコリン酸、シトラジン酸、ケリダム酸、キナルジン酸、3−カルバモイル−ピラジンカルボン酸、研光通商社製の商品名「KENGARD」等。
(5)一分子中にアミノ基とエステル基とを有する化合物(本発明以外の相溶化剤):p−アミノ安息香酸エチルエステル、ポリウレタン、ポリグルタミン酸メチル等。
(6)一分子中にアミノ基と重合性不飽和結合とを有する化合物(本発明以外の相溶化剤):4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、ダイアセトンアクリルアミド、N−〔3−(ジメチルアミノ)プロピル〕メタクリルアミド、N−t−オクチルアクリルアミド、ジアリルアミン、2−ビニルピリジン、トリアクリルホルマレート、トリアリルイソシアヌレート、2−アクリルアミドー2−メチルプロパンスルホン酸、アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等。
【0033】
上記「(IV)一分子中に重合性不飽和結合とカルボキシル基を有する化合物」は、下記のものが挙げられる。また、本発明以外の相溶化剤(c)として、一分子中に重合性不飽和結合と水酸基、または重合性不飽和結合とエポキシ基、または重合性不飽和結合とエーテル結合、または重合性不飽和結合とエステル結合を有する化合物が挙げられる。
(1)一分子中に重合性不飽和結合と水酸基とを有する化合物(本発明以外の相溶化剤):アリルアルコール、ポリオキシエチレンノニルプロペリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルグリシジルノニルフェニルエーテル、ビサボロール、ヒドロキシプロビルアクリレート、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル等。
(2)一分子中に重合性不飽和結合とエポキシ基とを有する化合物(本発明以外の相溶化剤):エポキシ化大豆油、エポキシ化ヤシ油、エポキシ化パーム油、メタクリル酸グリシジル等。
(3)一分子中に重合性不飽和結合とエーテル結合とを有する化合物(本発明以外の相溶化剤):トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ジエチルグリコールビスアリルカーボネート、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル等。
(4)一分子中に重含性不飽和結合とカルボキシル基とを有する化合物:2−メタクリロイルオキシエチル琥珀酸、また、本発明以外の相溶化剤(c)として、ドデカジエン二酸、クロトン酸、イタコン酸、オレイン酸等。
(5)一分子中に重合性不飽和結合とエステル結合とを有する化合物(本発明以外の相溶化剤):シクロヘキシルアクリレート、酢酸アリル、エトキシメチレンマロン酸ジエチルエステル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸トリプロピレングリコール、アクリル酸テトラエチレングリコール、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸ラウリル、n−ステアリルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸アルキル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル等。
【0034】
上記「(V)エーテル結合含有化合物」は、ジブチルエーテルが挙げられる。また、本発明以外の相溶化剤(c)として、イソプロピルエーテル等が挙げられる。
【0035】
上記「(VI)カルボン酸塩」は、オクタン酸ナトリウム、オクタン酸カリウム、オクテン酸ナトリウム、オクテン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ラウリル酸カリウム、ラウリル酸亜鉛、オレイン酸カリウム、オレイン酸カルシウム、オレイン酸亜鉛、オレイン酸ナトリウム、オクテン酸亜鉛、オクテン酸カルシウム、オクテン酸バリウム、オクテン酸ナトリウム、SCHlLL AND SElLACHER社製の商品名「ストラクトール」等が挙げられる。
【0036】
相溶化剤(c)の配合量は、配合されるシリカ(b)100重量部当たり、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.5〜10重量部である。
【0037】
本発明のゴム組成物には、加硫剤、加硫促進剤、ゴム用伸展油、所望によりその他の添加剤が配合される。
加硫剤としては、代表的には硫黄が使用され、その他に硫黄含有化合物、過酸化物等が使用することができる。加硫剤の使用量は、ジエン系ゴム(a)成分100重量部当たり、通常0.5〜10重量部であり、1〜6重量部が好ましい。
【0038】
加硫促進剤としては、アルデヒドアンモニア系、グアニジン系、チオウレア系、チアゾール系、ジチオカルバミン酸系等がある。加硫促進剤の使用量は、ジエン系ゴム(a)100重量部当たり、通常0.5〜15重量部であり、好ましくは1〜10重量部である。
【0039】
ゴム用伸展油としては、石油系配合油である芳香族系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、パラフィン系プロセスオイル等が挙げられるが、香族系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルが好ましい。ゴム用伸展油の使用量は、ジエン系ゴム(a)100重量部当たり、通常0〜100重量部であり、好ましくは5〜50重量部である。
【0040】
その他の添加剤として、所望により、シランカップリング剤、亜鉛華、加硫助剤、老化防止剤、加工助剤等が必要に応じた量使用される。
【0041】
本発明のゴム組成物の調製に当たっては、まずジエン系ゴム(a)、相溶化剤(c)、シリカ(b)、その他の充填剤(カーボンブラック、カーボン−シリカデュアル・フェイズ・フィラー等)、ゴム用伸展油、その他添加剤等をバンバリーミキサー等の混練機を使用して70〜180℃の温度で混練する。次に、得られた混合物を冷却後、さらに硫黄等の加硫剤および加硫促進剤等をバンバリーミキサーやミキシングロールを用いて配合してゴム組成物が調製される。調製されたゴム組成物は、所定の形状に成形後、140〜180℃の温度で加硫して、任意形状の加硫ゴム、即ちゴム製品が製造される。
【0042】
本発明のゴム組成物の加硫物は、耐摩耗性、ウエットスキッド特性、および低転がり性のバランスに優れるので、高性能タイヤや低燃費タイヤのトレッドの用途に好適である。
また、本発明のゴム組成物から製造されたトレッドを備えるタイヤは、耐摩耗性、ウエットスキッド特性、低転がり性に優れ、このタイヤを用いた自動車は、低燃費であり、走行安定性に優れる。
【0043】
【実施例】
以下、実験例によって本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実験例は本発明の範囲を限定するものではない。なお、以下において、スチレン−ブタジエン共重合ゴムを「共重合ゴム」ともいう。
【0044】
実験例で用いた相溶化剤は以下の通りである。
相溶化剤a:和光純薬社製、ジブチルエーテル
相溶化剤b:信越化学工業(株)社製、ヘキサメチルジシラザン
相溶化剤c:第八化学工業(株)社製、商品名「エポキシ化大豆油SO」
相溶化剤d:和光純薬社製、3−ラウリルオキシプロピルアミン
相溶化剤e:和光純薬社製、トリエタノールアミン
相溶化剤f:共栄社化学社性、2−メタクリロイルオキシエチル琥珀酸
相溶化剤g:研光通商社製、商品名「KENGARD 300−P」
相溶化剤h:SCHILL AND SEILACHAR社製、商品名「ストラクトールEF44」
【0045】
実験例中の各種の測定は下記の方法に拠って行った。
(1)ブタジエン部のビニル含量(%)
赤外吸収スペクトル法(モレロ法)によって求めた。
(2)結合スチレン含量(%)
赤外吸収スペクトル法により、検量線を作製し求めた。
(3)ムーニー粘度(ML1+4,100℃)
JIS K6300に準じ、Lローター、予熱1分、ローター作動時間4分、温度100℃で測定した。
(4)アルコキシシリル基含有量(mmol/100gゴム)
赤外吸収スペクトルによりSi−C結合に起因する1,160cm-1付近の吸収量により作成した検量線から定量した。但し、定量された値をGPC法で得られたポリスチレン換算数平均分子量Mnと、アルコキシシリル基の分子量で除して、アルコキシシリル基のモル数とした。
(5)アミノ基含有量(mmol/100gゴム)
ロバート.T.キーン、ジェイムズ.S.フリッツ、J.Anal.Chem.、24巻、564頁(1952年)に記載された「過塩素酸−酢酸溶液を用いた、酸−塩基滴定法」により以下の方法で定量し、求めた。試料を溶解させる溶媒にはクロロホルムを使用、滴定指示薬にはメチルバイオレットを使用して、予め濃度既知のトリ−n−オクチルアミン溶液により作成した検量線により定量し、アミノ基含量とした。
(6)ガラス転移温度(℃)
セイコー電子工業(株)製、示差走査熱量計(DSC)を使用し、昇温速度10℃/分で測定し、外挿開始温度をガラス転移温度とした。
(7)分子量分布(Mw/Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて、ポリスチレン換算で求めた。
【0046】
(8)加硫物の物性評価
原料ゴムを用い、表2に示される配合処方T〜Zのいずれかに従って、1.7リットルバンバリーミキサー混練り機で混練りしたのち、145℃で所定時間、加硫を行った加硫物を用いて各種測定を行った。
(イ)tanδ(60℃)およびtanδ(0℃)
米国レオメトリックス社製の動的スペクトロメーターを使用した。
tanδ(60℃)は、引張動歪1%、周波数10Hz、60℃の条件で測定した。測定結果は実測値で表示し、数値が小さいほど転がり抵抗が小さく良好である。
tanδ(0℃)は、同機器を使用し、引張動歪0.1%、周波数10Hz、0℃で測定した。測定結果は実測値で表示し、数値が大きいほどウエットスキッド抵抗が大きく良好である。
(ロ)ランボーン摩耗指数
ランボーン型摩耗試験機を用い、スリップ率が60%の摩耗量で表し、また測定温度は室温とした。指数が大きいほど耐摩耗性は良好である。
(ハ)加工性
混練り後、配合ゴムのムーニー粘度(ML1+4,100℃)で評価した。
(ニ)硬さ
JIS硬度計(A)タイプを用い、温度25℃で測定した。
【0047】
実験例1(共重合ゴムAの合成、その油展ゴムの調製、およびその評価)
十分に窒素で置換された、攪拌機およびジャケットの付いた内容積20リットルのオートクレーブ反応容器に、スチレン7.5g/分、1,2−ブタジエンを100ppm含んだ1,3−ブタジエン22.5g/分、シクロヘキサン150g/分、テトラヒドロフラン5.1g/分、n−ブチルリチウム0.151mmol/分を連続的に供給し、反応容器の温度を55℃にコントロールした。1基目の反応容器の頂部出口にて、四塩化ケイ素を0.03mmol/分で連続的に添加し、これを上記反応容器に連結した2基目の反応容器に導入して変性反応を行った。反応後の重合体溶液に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを添加し、さらに伸展油(商品名:フッコール・アロマックス#3,富士興産社製)を187.5g(ゴム100重量部に対して37.5重量部)添加して、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、115℃熱ロールでゴムを乾燥した。得られたゴムを共重合ゴムAとした。この共重合ゴムAおよび油展ゴムの組成および物性を表1に示す。
上記で調製した油展ゴムを用いて、表3に示される高シスポリブタジエンゴムおよび相溶化剤aを用い、表2に示される配合処方Yにより調製された配合ゴムを加硫して、物性評価を行った。その結果を表3に示した。
【0048】
実験例2(共重合ゴムBの合成、その油展ゴムの調製、およびその評価)
窒素置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン2,500g、テトラヒドロフラン38g、スチレン100g、1,3−ブタジエン385gを仕込んだ。反応容器内容物の温度を16℃に調整した後、n−ブチルリチウム3.45mmolを添加して重合を開始した。重合は断熱条件で実施し、最高温度は90℃に達した。
重合転化率が100%に達した後、ブタジエン15gを追加、重合した後、メチルトリフェノキシシラン2.76mmolを加えて15分間変性反応を行った後、四塩化ケイ素0.89mmolを加えた。反応後の重合体溶液に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを添加し、さらに伸展油(商品名:フッコール・アロマックス#3,富士興産社製)を187.5g(ゴム100重量部に対して37.5重量部)添加して、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、115℃熱ロールでゴムを乾燥し油展ゴムを得た。重合により生成したゴムを共重合ゴムBとし、この共重合ゴムBおよび油展ゴムの組成等を表1に示す。
上記で調製した油展ゴムを用いて、表3に示される天然ゴムおよび相溶化剤bを用い、表2に示される配合処方Yにより調製された配合ゴムを加硫して、物性評価を行った。その結果を表3に示した。
【0049】
実験例3(共重合ゴムCの合成、その油展ゴムの調製、およびその評価)
窒素置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン2,500g、テトラヒドロフラン75g、スチレン125g、1,3−ブタジエン365gを仕込んだ。反応容器内容物の温度を5℃に調整した後、n−ブチルリチウム3.45mmolを添加して重合を開始した。重合は断熱条件で実施し、最高温度は80℃に達した。
重合転化率が100%に達した後、ブタジエン10gを追加、重合した後、四塩化ケイ素0.86mmolを加えてた。反応後の重合体溶液に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを添加し、さらに伸展油(商品名:フッコール・アロマックス#3,富士興産社製)を187.5g(ゴム100重量部に対して37.5重量部)添加して、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、115℃熱ロールでゴムを乾燥し油展ゴムを得た。重合により生成したゴムを共重合ゴムCとし、この共重合ゴムCおよび油展ゴムの組成等を表1に示す。
上記で調製した油展ゴムを用いて、表3に示される高シスポリブタジエンゴムおよび相溶化剤bを用い、表2に示される配合処方Yにより調製された配合ゴムを加硫して、物性評価を行った。その結果を表3に示した。
【0050】
実験例4(共重合ゴムD、その油展ゴムの調製、およびその評価)
窒素置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン2,500g、テトラヒドロフラン75g、スチレン125g、1,3−ブタジエン365g、ピペリジン3.45mmolを仕込んだ。反応容器内容物の温度を5℃に調整した後、n−ブチルリチウム3.45mmolを添加して重合を開始した。重合は断熱条件で実施し、最高温度は80℃に達した。
重合転化率が100%に達した後、ブタジエン10gを追加、重合した後、メチルトリフェノキシシラン2.76mmolを加えて15分間変性反応を行い、四塩化ケイ素0.86mmolを加えた。反応後の重合体溶液に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを添加し、さらに伸展油(商品名:フッコール・アロマックス#3,富士興産社製)を187.5g(ゴム100重量部に対して37.5重量部)添加して、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、115℃熱ロールでゴムを乾燥し油展ゴムを得た。重合により生成したゴムを共重合ゴムDとし、この共重合ゴムDおよび油展ゴムの組成等を表1に示す。
上記で調製した油展ゴムを用いて、表3に示される高シスポリブタジエンゴムおよび相溶化剤bを用い、表2に示される配合処方Yにより調製された配合ゴムを加硫して、物性評価を行った。その結果を表3に示した。
【0051】
合成例1(共重合ゴムE、その油展ゴムの調製)
実験例4において、ピペリジンを使用しないように変更する以外は共重合ゴムDと同様にして、共重合ゴムEを合成し、その油展ゴムを調製した。得られた共重合ゴムおよび油展ゴムの組成等を表1に示す。
【0052】
実験例5(共重合ゴムFの合成、およびその評価)
窒素置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン2,500g、テトラヒドロフラン38g、スチレン100g、1,3−ブタジエン385g、ピペリジン3.45mmolを仕込んだ。反応容器内容物の温度を16℃に調整した後、n−ブチルリチウム3.45mmolを添加して重合を開始した。重合は断熱条件で実施し、最高温度は90℃に達した。
重合転化率が100%に達した後、ブタジエン15gを追加、重合した後、四塩化スズ0.89mmolを加えた。反応後の重合体溶液に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを添加して、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、115℃熱ロールでゴムを乾燥した。重合により生成したゴムを共重合ゴムFとし、この共重合ゴムFの組成等を表1に示す。
上記で調製した共重合ゴムFを用いて、表3に示される高シスポリブタジエンゴムおよび相溶化剤cを用い、表2に示される配合処方Yにより調製された配合ゴムを加硫して、物性評価を行った。その結果を表3に示した。
【0053】
実験例6、7(共重合ゴムG、Hの合成、その油展ゴムの調製、およびその評価)
合成例1において、ジビニルベンゼン0.05gを仕込みで増やした以外は共重合ゴムEと同様にして、共重合ゴムGを合成し、その油展ゴムを調製した。また、合成例1において、メチルトリフェノキシシラン2.76mmolを加えるところを、四塩化ケイ素0.15mmolおよびメチルトリフェノキシシラン2.46mmol加えると変更した以外は共重合ゴムEと同様にして、共重合ゴムHを合成し、その油展ゴムを調製した。得られた共重合ゴムおよび油展ゴムの組成等を表1に示す。
上記で調製した油展ゴムを用いて、表4に示される高シスポリブタジエンゴムおよび相溶化剤d(実験例6)、相溶化剤a(実験例7)を用い、表2に示される配合処方Yにより調製された配合ゴムを加硫して、物性評価を行った。その結果を表4に示す。
【0054】
実験例8〜10
表1に示されるスチレン−ブタジエン共重合ゴムD、Eの油展ゴムを使用し、表4に示される高シスポリブタジエンゴムおよび相溶化剤を用い、表2に示される配合処方Z、VおよびWにより調製された配合ゴムを加硫して、物性評価を行った。その結果を表4に示す。
【0055】
実験例11〜14
表1に示されるスチレン−ブタジエン共重合ゴムEの油展ゴムを使用し、表5に示される高シスポリブタジエンゴムおよび相溶化剤を用い、表2に示される配合処方Yにより調製された配合ゴムを加硫して、物性評価を行った。その結果を表5に示す。なお、実験例13で用いた相溶化剤gは、脂肪酸とアミンとの反応物とシリカとの重量比2:1の混合物であるが、配合処方Yにおいては、共重合ゴム100重量部に対してこの混合物3重量部を添加した。
【0056】
実験例15〜23(相溶化剤を含有しない例)
表1に示されるスチレン−ブタジエン共重合ゴムA〜F、H(油展されている場合は油展ゴム)を使用し、表6、表7に示される高シスポリブタジエンゴムまたは天然ゴムを用い、表2に示される配合処方X、T、Uにより調製された配合ゴムを加硫して、物性評価を行った。その結果を表6、表7に示す。
【0057】
これら全ての配合ゴムは、1.7Lバンバリーミキサー混練機を使用して混練りし、158〜170℃の温度で排出することにより調製した。
【0058】
【表1】
【0059】
(表1の説明)
*1:共重合ゴム100g当たりの含有量をmmolで示す。
【0060】
【表2】
【0061】
(表2の説明)
*1:スチレン−ブタジエン共重合ゴムと高シスブタジエンゴムあるいは天然ゴムとの総量
*2:三菱化学社製、商品名「ダイヤブラックN339」
*3:日本シリカ社製、商品名「ニプシルAQ」
*4:キャボット社製、商品名「ECOBLACK CRX2002」
*5:デグッサ社製、商品名「Si69」(ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)−テトラサルファン)
*6:富士興産社製、商品名「フッコール・アロマックス#3」(数値は油展ゴムに含有されるオイルの量と配合時に添加されるオイルの量との総量)
*7:昭和シェル石油社製、商品名「シェルフレックス680」(数値は同上である)
*8:大内新興社製、商品名「ノクラック810NA」(N−フェニル−N'−イソプロピル−p−フェニレンジアミン)
*9:大内新興社製、商品名「ノクセラーCZ」(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)
*10:大内新興社製、商品名「ノクセラーD」(ジフェニルグアニジン)
【0062】
【表3】
【0063】
【表4】
【0064】
【表5】
【0065】
【表6】
【0066】
【表7】
【0067】
(表3〜表7の説明)
*1:共重合ゴム70重量部と油展オイル26.25重量部とを含有する。
*2:ジェイエスアール(株)社製の高シスブタジエンゴム、商品名「BR01」
【0068】
表3〜7に示される結果より、以下のことが明らかである。
相溶化剤b〜hを配合した本発明のゴム組成物と、相溶化剤を配合しない実験例15〜23の組成物、および相溶化剤aを用いた実験例1、7の組成物との比較より、本発明のゴム組成物は、配合ゴムムーニー粘度が低く良好な加工性を有し、ウエットスキッド特性を損なうことなく(tanδ(0℃)が大)、低ヒステリシスロス性(tanδ(60℃)が小)、および耐摩耗性が同時に高水準にバランスされていることがわかる。特に、アルコキシシル基および/またはアミノ基を含有するスチレン−ブタジエン共重合ゴムを用いた本発明のゴム組成物は、良好な加工性を有し、ウエットスキッド特性を損なうことなく、低ヒステリシスロス性と耐摩耗性を更に改良されている。
また、相溶化剤を配合せずに、硫黄を含むシランカップリング剤を比較的多く配合する配合処方T、Uを適用した実験例22、23では、練り時の排出温度が170℃と高い場合、配合ゴムムーニー粘度が高く加工性が悪化するのに対し、本発明のゴム組成物である実験例8、9および10では、練り時の排出温度が170℃と高くとも、配合ゴムムーニー粘度が低く良好な加工性を有し、ウエットスキッド特性を損なうことなく、低ヒステリシスロス性と耐摩耗性が高水準にバランスされている。
【0069】
【発明の効果】
本発明のゴム組成物は、加工性に優れ、しかも耐摩耗性、ウエットスキッド特性、低転がり性のバランスに優れる。従って、本発明のゴム組成物は、その特長を生かし、高性能タイヤや低燃費タイヤのトレッドの用途に好適であり、その他のタイヤ用途や、汎用の加硫ゴムの用途にも使用できる。
また、本発明のゴム組成物から製造されたトレッドを備えたタイヤは、耐摩耗性、ウエットスキッド特性、低転がり性に優れるので、低燃費で走行安定性に優れた自動車を与える。
Claims (7)
- ジエン系ゴム(a)と、該ジエン系ゴム(a)100重量部当たり5〜100重量部のシリカ(b)と、該シリカ(b)100重量部当たり0.1〜20重量部の相溶化剤(c)と、を含有するゴム組成物であって、
上記相溶化剤(c)は、(II)エポキシ基含有化合物、(III)一分子中にアミノ基とエーテル結合を有する化合物、(IV)一分子中に重合性不飽和結合とカルボキシル基を有する化合物、(V)エーテル結合含有化合物、から選択される少なくとも一種であり、
上記ジエン系ゴム(a)は、該ジエン系ゴム(a)に対して30〜100重量%のスチレン−ブタジエン共重合ゴムを含有し、
該スチレン−ブタジエン共重合ゴムは、
(i)スチレン成分含量が5〜45重量%であり、
(ii)ブタジエン成分の1,2−結合量が10〜80%であり、
(iii)ガラス転移温度が−70〜−10℃であり、かつ
(iv)該共重合ゴム100g当たり、アルコキシシリル基含有量が0.01〜5.0mmol及び/又はアミノ基含有量が0.01〜2.0mmolであり、
上記(II)エポキシ基含有化合物は、エポキシ化大豆油であり、
上記(III)一分子中にアミノ基とエーテル結合とを有する化合物は、3−ラウリルオキシプロピルアミンであり、
上記(IV)一分子中に重合性不飽和結合とカルボキシル基とを有する化合物は、2−メタクリロイルオキシエチル琥珀酸であり、
上記(V)エーテル結合含有化合物は、ジブチルエーテルであることを特徴とするゴム組成物。 - 上記相溶化剤(c)は、上記(II)、上記(III)および上記(IV)から選択される少なくとも一種である請求項1記載のゴム組成物。
- 上記ジエン系ゴム(a)は、該ジエン系ゴム(a)に対して50〜100重量%のスチレン−ブタジエン共重合ゴムを含有し、
該スチレン−ブタジエン共重合ゴムは、
(i)スチレン成分含量が20〜40重量%であり、
(ii)ブタジエン成分の1,2−結合量が15〜75%であり、
(iii)ガラス転移温度が−40〜−15℃であり、かつ
(iv)該共重合ゴム100g当たり、アルコキシシリル基含有量が0.1〜3.0mmol及び/又はアミノ基含有量が0.1〜1.5mmolである請求項1又は2に記載のゴム組成物。 - 上記スチレン−ブタジエン共重合ゴムは、(iv)該共重合ゴム100g当たり、アルコキシシリル基含有量が0.1〜3.0mmolかつアミノ基含有量が0.1〜1.5mmolである請求項3に記載のゴム組成物。
- 上記相溶化剤(c)は、上記(II)である請求項4に記載のゴム組成物。
- 充填剤として、上記ジエン系ゴム(a)100重量部当たり2〜100重量部のカーボンブラックをさらに含有する請求項1〜5のいずれか一項に記載のゴム組成物。
- 請求項1から6のいずれか一項に記載のゴム組成物から製造されたトレッドを備えることを特徴とするタイヤ。
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