JP4514851B2 - 糊剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、繊維製品への糊付けに関し、繊維への吸着性に優れ、適度な糊付け効果を有する一方で、後日の洗濯の際に、優れた糊落ち性を有する液体糊剤に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、繊維製品用の糊剤にはカルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、澱粉等が用いられてきたが、使いやすくするために種々の改良が行われ、現在は、冷水に希釈が容易であり、使用性が簡便な酢酸ビニルを主成分とした液状糊料が開発されている。特開平9−195170号公報、特開平9−195168号公報等には、酢酸ビニルを主成分とした糊剤に関して、布への吸着性を向上させる技術が開示されている。
特開平1−321981号公報及び特開平10−195772号公報には、繊維への吸着性を改善するため、カチオン性高分子をエマルジョン内に含有させたり、あるいは、酢酸ビニルと共に、酢酸ビニルと共重合可能なカチオン性モノマーを共重合させるなどして、浴中でマイナスに帯電している繊維に対する電気的親和性を高めている。しかしながら、満足できる吸着量を得るために必要なカチオン量を配合すると、次の洗濯において糊落ち性が悪く、糊剤が繊維製品に累積したり、あるいは、洗浄成分であるアニオン性界面活性剤等と相互作用を生じ、洗浄力が低下するといった問題が懸念される。これら問題を回避するためには、カチオン量を低減せざるを得ず、この場合、糊付け処理において布への吸着量が低下し、満足できる糊付け効果(張り感)が得られないという問題がある。
従って本発明の目的は、布への吸着性を向上させるとともに、糊落ち性が良好な繊維製品用の糊剤を提供することにある。
【0003】
【課題を解決するための手段】
本発明は、酢酸ビニル由来の構造を構成骨格の一部ないし全部として有する重合体(以下、酢酸ビニル重合体と略称する)を含有し、糊剤中に非イオン界面活性剤を0.02〜0.55重量%含有し、且つ糊剤の25℃におけるゼータ電位が20〜50mVであるエマルジョン型糊剤により、上記目的を達成するものである。
【0004】
【発明の実施の形態】
本発明に配合される非イオン界面活性剤は、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテルが好ましく、特にはアルキル基又はアルケニル基の炭素数が8〜18、好ましくは10〜18、平均付加モル数20〜70、好ましくは30〜60のポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテルが好ましい。非イオン界面活性剤は酢酸ビニル重合体を重合する際の、乳化剤として用いることが好ましい。非イオン界面活性剤は糊剤中に0.02〜0.55重量%、好ましくは0.05〜0.45重量%になるように配合する。
【0005】
本発明では糊剤の25℃におけるゼータ電位を、20〜50mV、好ましくは25〜40mVに調整する。ゼータ電位は、糊剤を25℃のイオン交換水を用いて100倍に希釈したものを、流動電位測定装置(ZP−10B型 島津製作所製)を用いて測定する。
このようなゼータ電位を得るためには、
(i)非イオン界面活性剤の存在下で、酢酸ビニルと共にカチオン性モノマーを重合させるか、
(ii)非イオン界面活性剤と、カチオン化澱粉及び/又はカチオン化セルロースの存在下で、酢酸ビニルが一部ないし全部を占めるモノマー(混合物)を重合させるか、又は
(iii)(i)及び(ii)の双方の要件によって重合させる際に、
カチオン性モノマー、並びにカチオン化澱粉及び/又はカチオン化セルロースに由来するカチオン性のN原子の量が、糊剤中に3×10-3〜2×10-2mol/Lとなるように、、調製することによって製造することができる。
【0006】
カチオン性モノマーとしては、下記一般式(1)〜(7)のカチオン性モノマー化合物等が挙げられ、これらのうち特に一般式(3)〜(5)のものが好ましい。
【0007】
【化1】
Figure 0004514851
【0008】
【化2】
Figure 0004514851
【0009】
具体的には、上記カチオン性モノマーを、酢酸ビニル重合体の重合に用いる全モノマー混合物中に、0.1〜2重量%、好ましくは0.3〜1.5重量%の割合で反応させ重合させた重合体を、糊剤中10〜55重量%になるように配合する。
【0010】
一方、カチオン化澱粉及び/又はカチオン化セルロースは、特に、5重量%水溶液の50℃における粘度が30〜100mPa・ s (B型粘度計、東京計器株式会社製、ローターNo.1、12r/ min、1min)、好ましくは50〜90mPa・ sのものを用いることが望ましい。具体的には、カチオン置換度が0.02〜0.08、好ましくは0.03〜0.08のカチオン化澱粉及び/又はカチオン化セルロースを糊剤中の濃度で0.5〜6重量%になるよう添加する方法がある。
ここで、カチオン置換度とはグルコース単位当りのカチオン化度であり、澱粉またはセルロースを構成している水酸基の数はグルコース単位あたり3個であり、これが総てカチオン置換されている場合を3.0とする時の値である。なお、カチオン性モノマーを用いる方法とカチオン化澱粉又はカチオン化セルロースを用いる方法を併用してもよく、配合量は適宜調整される。
【0011】
酢酸ビニル重合体を構成するためのその他のモノマー化合物としては、前記したカチオン性モノマーの他に、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の低級アルコールエステル又は不飽和カルボン酸アミドを用いることが好ましい。
不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アコニチン酸、ソルビン酸、ケイ皮酸、α−クロロソルビン酸、シトラコン酸を挙げることができ、特にアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸が好ましい。
また、不飽和カルボン酸の低級アルコールエステルとしては、上記不飽和カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステルを挙げることができ、特に、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルが好ましい。
このような不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸の低級アルコールエステルは、酢酸ビニル重合体の重合に用いる全モノマー混合物中に好ましくは1〜30重量%、より好ましくは2〜20重量%の割合で配合され重合される。
不飽和カルボン酸アミドの例としては、N,Nージアルキルアクリルアミド、N,Nージアルキルメタクリルアミド、N―アルキルアクリルアミド、N―アルキルメタクリルアミド、N−アルコキシアルキルアクリルアミド、N−ヒドロキシアルキルアクリルアミド、N−ヒドロキシアルキリメタクリルアミド、Nーアシルアルキルアクリルアミド、N−アシルアルキリメタクリルアミドから選ばれる1 種以上が挙げられ、これらアミド化合物のアルキル基、アルコキシル基、アシル基の鎖長は炭素数1〜18が好ましい。特にこれらの中でも、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,Nージメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、ダイアセトンイソアクリルアミドが良好である。
不飽和カルボン酸アミドは、酢酸ビニル重合体の重合に用いる全モノマー混合物中に好ましくは0.1〜30重量%、より好ましくは1〜20重量%の割合で配合され重合される。
【0012】
本発明では、エマルジョンの貯蔵安定性をさらに向上させるために、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、化工澱粉、水溶性セルロース誘導体から選ばれる一種以上(以下、非イオン性高分子化合物と略称する)を併用することが好ましい。非イオン性高分子化合物は、ポリエチレングリコールを標準物質とした時の重量平均分子量が10,000〜200,000であるものが好ましい。非イオン性高分子化合物は、糊剤中に、0.1〜10重量%含有することが好ましく、1〜4重量%含有することがより好ましい。
【0013】
本発明では酢酸ビニル重合体の重量、及びカチオン化澱粉、カチオン化セルロース、あるいはポリビニルアルコール等の非イオン性水溶性高分子化合物を配合する場合はこれらも含んだ重量を、貯蔵安定性及び性能の点から糊剤中に20〜60重量%とすることが好ましい。
【0014】
本発明の最も好ましい製法は、カチオン化澱粉及び/又はカチオン化セルロース、非イオン界面活性剤、及び非イオン性高分子化合物の存在下で、酢酸ビニル由来の構造を構成骨格の一部として有する重合体を重合する方法である。本発明の最終的な糊剤は、重合後のエマルジョンにその他の任意成分を配合することによって得られるが、本発明では、糊剤と分けて説明するために、重合後のエマルジョン溶液を糊料基剤とする。
【0015】
詳しい製造条件、任意成分及び使用方法については、常法、例えば特開平10−195772号公報の6頁9欄8行〜同頁10欄12行に記載と同様でよいが、本発明の糊剤には、特にその他成分としてジブチルフタレート、ジブチルアジペート、ジオクチルアジペート又はトリアセチンなどのような可塑剤、エチレングリコール、プロピレングリコール又はエタノールなどの凍結防止剤、殺菌剤、プロキセル等の防黴・防菌剤、安定な香料などを添加することが好ましく、糊剤中の濃度調整の為に水等の希釈剤も追加的に配合することができる。
【0016】
【発明の効果】
本発明によれば布への吸着性に優れ、糊落ち性が良好の糊剤を提供することができる。
【0017】
【実施例】
<糊料基剤の調製>
1.糊料基剤Aの調製
窒素雰囲気下で重合反応槽に、カチオン化澱粉[コーンスターチと3−(N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド)−1,2−プロピレンオキサイドとの反応で得る。カチオン置換度=0.08、5%水溶液の50℃における粘度は70mPa・ sである]8.9重量部、及びイオン交換水100重量部を90℃にて均一溶解した後60℃まで冷却し、酢酸ビニルを10重量部とポリビニルアルコール(重量平均分子量66,000)3重量部、非イオン界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、平均付加モル数40、HLB18.3)1.5重量部を加え、さらに、リン酸3ナトリウム0.5重量部、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩0.4重量部、イオン交換水20重量部を加え、75℃に加熱して重合を開始した。
重合開始後、6時間かけて、酢酸ビニル、アクリル酸、N,N−ジメチルアクリルアミドの最終比率が95.5/2.5/2(重量比)になるように予め混合しておいたもの100重量部を、反応溶液中に滴下した。滴下終了後、80℃に昇温し、1時間そのまま攪拌を続けた。冷却後、10重量%炭酸ナトリウム水溶液を用いてエマルションのpHを5に調整し、重合体重量が約50%の糊料基剤Aを得た。
【0018】
2.糊料基剤Bの調製
窒素雰囲気下で重合反応槽に、前記と同じカチオン化澱粉6.7重量部、及びイオン交換水100重量部を90℃にて均一溶解した後60℃まで冷却し、酢酸ビニルを10重量部とポリビニルアルコール(重量平均分子量66,000)3重量部、非イオン界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、平均付加モル数40、HLB18.3)1.5重量部を加え、さらに、リン酸3ナトリウム0.5重量部、2.2‘−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩0.4重量部、イオン交換水20重量部を加え、75℃に加熱して重合を開始した。
重合開始後、6時間かけて、酢酸ビニル、アクリル酸、N,N−ジメチルアクリルアミド、及び2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩(前記一般式(4)のもの)の最終比率が95/2.5/2/0.5(重量比)になるように予め混合しておいたもの100重量部を、反応溶液中に滴下した。滴下終了後、80℃に昇温し、1時間そのまま攪拌を続けた。冷却後、10重量%炭酸ナトリウム水溶液を用いてエマルジョンのpHを5に調整し、重合体重量が約50%の糊料基剤Bを得た。
【0019】
3.糊料基剤Cの調製
糊料基剤Aの調製において、カチオン置換度=1.7、5重量%水溶液の50℃における粘度が40mPa・ sのカチオン化澱粉8.9重量部を用いた以外は、同様の方法で調製し、重合体重量が約50%の糊料基剤Cを得た。
【0020】
4.糊料基剤Dの調製
糊料基剤Aの調製において、非イオン界面活性剤を6重量部使用した以外は同様の方法で調製し、重合体重量が約50%の糊料基剤Dを得た。
【0021】
<糊剤の調製>
上記で合成した糊料基剤A〜Dを用い、表1に示す化合物(プロピレングリコール、シリコーンエマルジョン)を添加して、表1に示す粘度の糊剤を得た。
<測定および評価方法>
各糊剤を下記に示す方法a〜dで、ゼータ電位、糊付け効果(張り感)、布への吸着率、及び糊落ち性について評価した。結果を表1に示す。
a.ゼータ電位
各糊剤を、25℃のイオン交換水で100倍に希釈し、島津流動電位測定装置(ZP−10B型 島津製作所製)を用いて測定した。
b.糊付け効果
ターゴトメータ型洗浄試験機を使用した。20℃の水道水500ml、表1の組成物1.3gを洗浄槽(内容積1000ml)に入れよく分散させた後、60#木綿ブロード布20gを入れ、100r/ minで3分間糊付け処理した。その後、1分間脱水してから、20℃、65%相対湿度の恒温恒湿室に一昼夜乾燥した。乾燥後、130℃にて1分間アイロンプレスした。
次に、上記方法により糊付けした木綿布から5cm幅の小片を作製し、10枚を1組として、純曲げ試験機(カトーテック株式会社製)を用いて、20℃、65%相対湿度の恒温恒湿室において曲げ剛性を測定した。結果を表1に示した。
c.布への吸着率(%)
布への吸着率(%)の測定は、上記糊付け試験において、糊付け直前(衣類を入する前)の糊溶液の吸光度を、660nmの波長で測定(m)し、更に、糊付け終了後の糊溶液の吸光度を、同様に660nmの波長で測定(n)し、両吸光度の差から吸着率(%)を換算した。60%以上を合格とする。
吸着率(%)=(m−n)/m×100
d.糊落ち性
上記方法により糊付けした木綿布を、130℃で1分間アイロンプレスした。次にターゴトメータ型洗浄機を用い、浴比30倍、家庭用洗剤(花王社製アタック)を濃度0.067重量%とし、上記アイロンプレスした木綿布を洗浄(20℃、100r/ min、10min、水道水使用)した。脱水後、20℃、65%相対湿度の恒温室に一昼夜乾燥した。乾燥後、再び130℃で1分間アイロンプレスし、その曲げ剛性を同様の方法で測定し、その値をIとした。また、糊付け前の木綿布の曲げ剛性も同様に測定し、その値をJとし、更に、糊付け後の木綿布の曲げ剛性値をHとした。これらの測定結果から下記式により糊落ち率を算出した。4%以下を合格とする。
糊落ち率(%)=(I−J)/(H−J)×100
【0022】
【表1】
Figure 0004514851

Claims (2)

  1. 酢酸ビニル由来の構造を構成骨格の一部として有する重合体を含有し、糊剤中に非イオン界面活性剤を0.02〜0.55重量%含有し、且つ糊剤の25℃におけるゼータ電位が20〜50mVであるエマルジョン型糊剤であって、
    前記重合体が、酢酸ビニルと、下記一般式(4)のカチオン性モノマー0.1〜2重量%と、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上の不飽和カルボン酸1〜30重量%と、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド及びN,N−ジエチルメタクリルアミドから選ばれる1種以上の不飽和カルボン酸アミド1〜30重量%とを含有するモノマー混合物を重合してなる重合体である、
    エマルジョン型糊剤。
    Figure 0004514851
  2. 酢酸ビニル由来の構造を構成骨格の一部として有する重合体を含有する請求項記載のエマルジョン型糊剤の製法であって、
    (i)非イオン界面活性剤の存在下で、酢酸ビニルと共にカチオン性モノマーを重合させるか、
    (ii)非イオン界面活性剤と、カチオン化澱粉及び/又はカチオン化セルロースの存在下で、酢酸ビニルが一部を占めるモノマーを重合させるか、又は
    (iii)(i)及び(ii)の双方の要件によって重合させる際に、
    カチオン性モノマー、並びにカチオン化澱粉及び/又はカチオン化セルロースに由来するカチオン性のN原子の量が、糊剤中に3×10−3〜2×10−2mol/Lとなるように、調製される糊剤の製法。
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