JP4514191B2 - エラストマー基材用フレキシブル塗料 - Google Patents

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Description

本発明は、可撓性基材物品、特に、エラストマー状またはゴム状物品あるいはそのような材料を含む基材の外表面に付与される耐候性コーティングに関する。保護フィルム特性を提供するのに加えて、該コーティングは、物品から熱を遠ざけることによって熱の蓄積を減少する(放射性)。該コーティングは、基材が加硫処理される前または加硫処理された後のいずれでも、エラストマー基材に付与され得る。
発明の背景
加工エラストマー製品は、曲がりそして撓み、歪みそして回復し、かつ/または力を制動する(トルクまたは振動をその耐用年数の間繰り返し吸収することを含む)ように設計され、多数の工業用途に利用される。例えば、エラストマー材料はタイヤ、ホース、シール、エンジンマウントなどのマウンティング、ダンパーおよび絶縁装置の製造に利用され、いくつか設計の局面を挙げると、履歴損失を示し、熱に耐えるように設計される。無数の物品に成形されたこれらのそして他の物品は、工業機械および自動車用部品といった多くの確立された用途を有している。多くのエラストマー製品は、様々な発生源から(例えば、内燃エンジンから)の熱と接触する。近年の動作温度の上昇および自動車のエンジン室のサイズの減少は、熱源と、ゴムホース、プラスチックハウジング、ベルト、様々なマウント、シュラウド、シール、グロメット、ワッシャー、スペーサー、カバーおよびハウジングなどのような成形部品との間の距離をより近づけている。これらの物品のうちには加熱加硫処理されるものもあり、室温で加硫処理されるものもあり、さらには違った様式で硬化されるものもあり、熱可塑性物質または熱硬化性材料として、特徴的な屈曲、伸び、ゴム弾性を示す。
全てのポリマー材料は、熱、光、酸素、オゾン溶媒、オイル、および/または燃料への曝露によって分解する。弾性材料、特に、天然および/または合成の加硫処理されたゴムは、これらの試剤に曝露されたときに分解することが特に知られており、このような分解要因に耐性があるエラストマー物品を供給するための継続的な研究が業界内でなされている。
米国特許第6,022,626号は、酸素、オゾンおよび/またはUV光から、特に220°F/104℃以上の温度に達したときに、ゴム基材を保護するためにエンジンマウントをカバーするのに適したコーティングを開示している。教示されているコーティングは、化学物質またはUV侵入からのポリマーバリアを提供する。熱環境への曝露において、米国特許第6,022,626号に教示されたポリマーは、酸素、オゾンおよびUV照射に対する初期バリアを提供し得るが、長期間にわたり繰り返される屈曲への耐久性を欠く。接着の損失またはコーティングのひび割れが一旦起こると、分解の効果が再開する。米国特許第‘626号に教示されているようなコーティングはまた、放射特性を提供せず、熱を散逸しない。
発明の名称が「保護コーティングを有するゴム物品」であるRobertsらの米国特許第5,314,741号は、1,3−ブタジエンのポリマーである不飽和ポリマーおよび必要に応じ1つ以上のモノエチレン性不飽和ポリマーを水素化することによって得られる水素化合成ゴムまたはポリマーでコーティングされたポリマー物品に関する。
従来のポリマー安定化剤、UV吸着剤などは、その上にコーティングが施されたゴム物品に使用されるが、やはり、改良されたエージング特性が、より過酷な動作条件の点においてさえ望まれている。
長期の耐用年数にわたり繰り返される屈曲または伸びを経験する下層のゴムへの十分で恒久的な接着を達成するには、さらなる改良が必要とされる。
アルキド、ウレタンおよびエナメル金属塗装仕上げは、金属光沢効果を与えることが周知であり、自動車の車体上などに広く使用されている。基材は主に、屈曲が限定されているか激しく衝撃を受けたときに塗装がひび割れることが予想される金属または硬質プラスチックの部品である。光沢効果金属コーティングは、金属本体パネル上に一般に付与され(これにより、1%以下の金属顔料が、着色顔料とともに散在する)、透明な仕上げ剤で上塗りされる。同様に、アルミニウム処理されたスプレー塗料は、家具、金属物品などに付与するためにこれまでに提供されているが、利用されるフィルム形成性材料が硬化して非常に伸びが限られたコーティングを与えるので、コーティングを使用に供して間もなく屈曲亀裂および接着の損失が生じるため、加工ゴム物品などの可撓性基材上のコーティングとしては不適切であろう。金属薄片効果塗料は、外観部分の視覚的美しさを提供するが、加熱環境下での加工ゴム製品の有用な長期の使用を延長するのに有用な程度の熱放射特性は提供しない。
弾性材料に腐食性材料への耐性を与える1つの方法は、弾性材料へ保護コーティングを付与することである。可撓性基材(例えば、エラストマー基材)および硬質基材(例えば、鋼、ステンレス鋼、アルミニウムまたはプラスチック)の両方で以前から利用されている様々な耐腐食性コーティングとしては、ポリウレタン、ポリスルフィド、およびフルオロカーボンエラストマーが挙げられる。フルオロカーボンエラストマーなどの従来の耐腐食性コーティングは、硬質基材に付与する場合、優れた耐油性および耐燃料性を提供することが見出されている。しかしながら、フルオロカーボンエラストマーは、天然ゴムおよび/またはジエン型エラストマーならびに混合物を含む可撓性エラストマー基材に付与した場合、耐疲労性が乏しく、低温度特性が乏しく、これらの基材への接着が乏しいという欠点を有する。
低レベルの化学的に結合させた官能基(例えば、ヒドロキシルまたはアミン保有基)を含む低分子量ポリオレフィンまたはポリイソオレフィン系のエラストマーをウレタンフォームに導入することが公知である。そのようなエラストマーは、非ブロックまたはブロックポリイソシアネートと混合することによって硬化され得る。例えば、米国特許第4,939,184号は、発泡剤の存在下、2または3個の末端水酸基を有する低分子量ポリイソブチレンをポリイソシアネートと反応させることによって作製された可撓性ポリウレタンフォームの製造を開示している。
Odamの米国特許第4,136,219号は、加硫処理されたゴム部品にポリウレタン塗料を付与するための2つの方法またはプロセスに関する。
米国特許第4,670,496号は、任意の色の色表示としてのタイヤ側壁ストライプ塗料(例えば、顔料)を開示しており、好ましくは、金属粒子が、加硫処理されていないジエンゴム(単数または複数)およびゴム加硫促進剤を含む溶液中に配置される。架橋性シリコーンおよび/または変性EPDMもまた、該溶液中に配置され得る。該促進剤は、コーティングゴムの自己加硫を提供するために加硫処理されたゴム基材から硫黄を除去するため、必須である。ゴム物品用のコーティングとして長期使用に適切な接着を提供するために、硬化後に10%より多い残存不飽和を含むジエンポリマーは分解と脆化を必ず受け、下層の基材が破損するずっと前に破損する。
遊離のイソシアネート基を含むジイソシアネートもまた、イソブチレンと第三級アミノアルコール基含有変性スチレンとのコポリマーを硬化するために、欧州特許出願公開第325 997号において、以前に提案されていた。欧州特許出願公開第325 997は、700〜200,000の分子量を有するポリマーのジイソシアネート硬化を開示しており、ゲル透過クロマトグラフィーによって測定される、約30,000までの重量平均分子量(Mw)および約8,600までの数平均分子量(Mn)のブレンドを例示している。
様々なバルクイソシアネート硬化ゴムおよびマスチックが50年代および60年代に開示されていた。エラストマーに存在するイソシアネート反応性官能基は、ジイソシアネートのNCO基と容易に硬化する。一例として、米国特許第6,087,454号は、60,000以上のMwを有しかつヒドロキシルおよび/またはアミン官能基を含むエラストマーポリマーと、ブロック化されたポリイソシアネートとを、該イソシアネートを脱ブロックする温度未満の温度で組み合わせることを含む、硬化バルクエラストマーを製造するためのプロセスを開示している。該混合物は、該ポリイソシアネートを脱ブロックする温度よりも高い温度までそれを加熱することによって硬化される。この反応は、非ブロック化イソシアネートの使用によって、室温で達成され得る。ヒドロキシ官能基を含む低分子量ポリイソブチレンは、米国特許第4,939,184号に開示されているような発泡剤の存在下で、ポリイソシアネートと硬化される。
米国特許第4,774,288号は、活性フェノール−ホルムアルデヒド樹脂加硫系を含む共役ジエンとα,β−不飽和ニトリルとの水素化コポリマーを開示している。該開示は、バルク加硫物に関するものであり、バルク加硫物は、良好な圧縮永久歪み特性、良好な耐油性および酸化条件下でのエージングにおける高温の空気中での酸化攻撃に対する良好な耐性を有するとして特徴付けられるが、有用な特性を提供するであろう天然ゴムやポリブタジエンなどの可撓性エラストマー基材上にコーティングが形成され得ることを示唆する記載はなされていない。
米国特許第5,314,955号は、(a)水素化アクリロニトリル−ブタジエンコポリマー、(b)フェノール樹脂、(c)硬化成分および(d)溶媒からなるコーティング組成物を開示している。このコーティングは、耐疲労性および耐燃料性と併せて、ゴム基材への接着の問題の多くを解決する。このコーティング組成物の欠点の1つは、コーティングを硬化し隣接する金属表面への接着を促進するために、高温焼付けを必要とすることである。高温焼付け条件は、コーティング用でさえ、コーティングされるべき物品全体のヒートソークを必要とする。ヘリコプターのローターベアリングなどのいくつかの部品には、高温焼付けによって損傷を受けるものもあるであろうから、‘955に教示されているようなコーティングは付与するのに現実的ではない。高温焼付けもまた、時間の遅延および部品の更なる取り扱いを追加するので、製造に費用がかかる。典型的な天然ゴムおよび/またはジエン型エラストマーを含む可撓性エラストマー基材用の、広い温度範囲にわたり耐疲労性を有し、基材への効果的な接着を示し、かつ室温で(これが物品のコーティング時の制限要素である場合)硬化され得る、改良された保護コーティングが未だ必要とされている。
米国特許第6,156,379号は、金属薄片をベースコート中に含む、金属表面上の従来のベースコートクリアコート塗料を開示している。その新規な差異は、細かく分割された蒸着金属に由来する光沢顔料に基づいている。金属コーティング組成物がベースコーティング層の上に付与され、クリアトップコーティング層が、金属コーティング層の上に付与される。金属コーティング組成物は、光沢顔料と溶媒とから本質的になるように定義されており、このことは、コーティング組成物が、薄片顔料と溶媒以外の成分を全く含まないか、または、顔料の重量濃度が95%以上になるように少量の樹脂または添加物を含むかのいずれかであることを意味している。アクリル酸系、ポリアミド、ビニルクロライドコポリマー、ウレタンおよびポリエステルといったバインダーが示唆されている。このようなバインダーは、これらが100%の伸びを示すことができず、屈曲亀裂および使用後の接着損失により機能しなくなるので、可撓性基材上にコーティングするのに適しているとは考えられていない。
米国特許第5,314,741号は、水素化ニトリルゴムなどの高飽和のポリマー、高飽和のスチレン/ブタジエンコポリマー、水素化ポリブタジエンまたは水素化スチレン/ビニルピリジン/ブタジエンターポリマーのラテックスを含むコーティング組成物を開示している。該コーティングは、基材に付与され、そこで硬化されて、報告によると耐オゾン性、耐酸素性および耐UV光性を有する所望のコーティング物品が得られる。教示されている適切な硬化剤は、亜鉛−硫黄硬化パッケージである。これらのコーティングの硬化を達成するためには、高温が必要である。さらに、硫黄含量が高い従来の加硫系および低い加硫促進剤含量、または中程度の用量の硫黄および当業者に公知の加硫物促進剤を有し、例えば、W.Hofmann,Kautschuk−Technologie,Genter Verlag,Stuttgart,1980 64および254−255頁に記載されている半効率的な加硫系は、いくつかの欠点を有する。動的応力に対する良好な耐性(屈曲寿命)を有する加硫物を生じる従来の加硫コーティングは、劣化および加硫戻りに非常に敏感である。半効率的加硫系により、通常、それほど大きくない動的応力に対する耐性(屈曲寿命)を有する加硫物が得られるが、それはそれで、それらはエージングおよび加硫戻りに対していくらかより安定である(R.N.DattaおよびW.F.Helt,Rubber World,August 1997,24頁以下参照)。
米国特許第4,939,198号 米国特許第4,136,219号 米国特許第4,670,469号 EPA 325997 米国特許第6,087,454号 米国特許第4,939,184号 米国特許第4,774,288号 米国特許第5,314,955号 米国特許第6,156,379号 米国特許第5,314,741号
本発明者らは、加硫化学を利用する高飽和のエラストマーに基づくコーティングが、基材(例えば、上述した物品のゴム物品、特に自動車のタイヤ、ホースなどで広く使用される天然ゴムとジエンエラストマーのブレンド)への接着が損なわれるという欠点があることを観察した。エラストマー表面への改良された接着および改良された耐屈曲性、ならびに下層のポリマー基材へ移される熱の減少を可能とする熱放射特性を提供する、可撓性エラストマー基材用の改良されたエラストマー保護コーティングが未だに必要とされている。加工製品における長期使用下での熱からのストレスのレベルは、時間と温度に依存する。吸収された熱の任意の減少およびエラストマー内の熱の放出の任意の上昇が、製品の使用/動作寿命を著しく延長し得る。加工エラストマー製品の熱吸収の割合を減少し、熱散逸の割合を上昇させることは、これらの物品の有用な使用寿命を延長するために、工業的に重要であるだろう。
(発明の要旨)
本発明の一実施態様は、可撓性エラストマー基剤に対して優れた付着性を示し、長期疲労および温度変化に耐性のある本発明の非放射性コーティング組成物に関する。このコーティングは室温で硬化する。このコーティングは、硬化前に、10%未満のエチレン性不飽和を含むフィルム形成性ポリマー(Tg<0℃)を含む。好ましい実施態様では、本発明のコーティング組成物は、(A)カルボキシル化水素化アクリロニトリル−ブタジエンコポリマー(X−HNBR)、(B)少なくとも1つのイソシアネート基および架橋を形成する基を含む硬化成分、ならびに(C)溶媒を含む。このコーティングは少なくとも100%の硬化後の伸びを示し、長期風化後でも基材に接着したままである。好ましいコーティング組成物は、(a)共役ジエン、不飽和ニトリル、およびカルボキシルモノマーの繰り返し単位を含むカルボキシル化水素化コポリマーおよび(b)少なくとも1つのイソシアネート基および架橋を形成する別の基を含む硬化成分の固形分を3〜30重量%、ならびに(c)溶媒を含む。
別の態様では、上記溶媒ベースのコーティングを金属に接合された加硫処理されたゴム基材表面に適用すること、コーティングを乾燥すること、そして任意に加熱して、周囲条件で硬化させることを含む、基材のコーティング方法である。エラストマーの周りに露出した金属の一部にもコーティングをすることが好ましい。本発明は、エラストマー−金属複合材料用コーティングに、エラストマー基材に対する優れた接着性と、腐食性物質に対する耐性と、広い温度範囲にわたる曲げ疲労に対する耐性を与える。
さらなるコーティングの態様は、不透明な、金属を充填した放射性エラストマーコーティングであり、加硫促進剤を含んでおらず、周囲温度で硬化可能である。このコーティングは2部式であり、基材に適用するときに混合される。一方の部は、0℃未満のTgを示し、内部または上部に活性水素含有硬化剤に反応する官能基あるいは活性水素を保有する基が取り込まれた可撓性皮膜形成重合体、および液体キャリアーを含む。第二すなわち別の部は、活性水素保有機および架橋基を含有する硬化剤成分、あるいは活性水素と反応する基および架橋基を含む硬化剤成分、およびキャリアー液体、並びに(a)100重量部の皮膜形成エラストマーあたり10〜100重量部の2〜10μmの平均粒径を有する熱伝導性金属粒子または(b)20〜150重量部の20〜60μmの平均粒径を有する熱伝導性粒子を含む。
図1は、120分にわたり赤外線熱源に曝露されたコーティングした対コーティングしていないゴムブロックについての内部温度対時間のプロットである。
図2は、天然ゴムに付与した0.001インチ(0.00040cm)の熱伝導性コーティングが、0、10および20phrの熱伝導性顔料での放射熱下での内部熱発生に及ぼす効果を図示したものである。
図3は、天然ゴムに付与した0.001インチ(0.00040cm)の熱伝導性コーティングが、0、10および20phrの熱伝導性顔料での放射熱下での内部熱発生に及ぼす効果を図示したものである。
図4は、天然ゴムに付与した0.001インチ(0.00040cm)の熱伝導性コーティングが、0、20および50phrの熱伝導性顔料での放射熱下での内部熱発生に及ぼす効果を図示したものである。
図5は、天然ゴムに付与した0.001インチ(0.00040cm)の熱伝導性コーティングが、0、20および50phrの熱伝導性顔料での放射熱下での内部熱発生に及ぼす効果を図示したものである。
図6は、10分後の放射熱下で、3つの異なる熱伝導性コーティングを用いてコーティングされた天然ゴムブロック対コーティングされていないブロックが、内部温度に及ぼす効果を図示したものである。
(発明の詳細な説明)
本明細書で開示されるコーティングは、周囲条件で硬化し、耐溶媒性および耐燃料性であり、耐オゾン性を有する。該コーティングは、フィルム形成性ポリマーと特定量の粒子状金属充填材とを含む。該フィルム形成剤は、硬化状態で少なくとも90%の光透過率を有し、硬化後に約90%以下の不飽和を含む、フィルムを提供する。この90+%光透過性フィルム形成性マトリックスは、熱反射率の低損失および反射性金属粒子状充填材からの熱伝導特性を提供する。
該コーティングは、永続的に接着し、ストレスあるいは環境性の亀裂または脆化に耐性である一方、該コーティングは、コーティングの下層の伝導性粒子からの顕著な熱の反射を生じる。このようなコーティングは、成形ゴム、TPEおよびプラスチック商品(例えば、空気式タイヤ、非空気式タイヤ、ホース、ベルト、マウント、シュラウド、偏向板など)に、特に、エンジンブロックや他の熱を放射する工業的部材などの熱い本体付近で使用される場合、永続的に結合する。硬化されたコーティングは、傷および擦れに耐性を有する。
該コーティングは、可撓性基材上へのコーティング後、約0.5から20ミルまで(12.7μm〜508μm)の典型的な乾燥フィルム厚(DFT)に、周囲条件下で硬化する。該コーティングは、選択した硬化剤およびフィルム形成剤に依存して水性または有機の担体を使用して、実質的に水を含まない溶液または水性懸濁液として、液状形態で付与される。より早い硬化は、利用可能な硬化条件の利用可能性に依存して、光エネルギーありまたはなしで、高い加熱状態で得られ得る。周囲硬化を有する本発明の利点は、顕著な熱容量(thermal mass)を有する最終的に組み立てられた加工ゴム製品が、コーティングの硬化を達成するために加熱されることを必要としないことである。金属充填コーティングフィルムの硬化された物理特性には、広い動作温度範囲(−40℃〜150℃)にわたる耐屈曲疲労性、高温およびオゾンへの長期曝露時の耐分解性が挙げられ、可撓性エラストマー基材への優れた接着が挙げられる。室温での硬化後のコーティング組成物は、歪みなしに約50%より大きな伸びを示し(完全回復)、より典型的には、接着の損失、亀裂、歪みまたはエラストマー基材の下層の曲がりからの剥離なしに、100%、200%または300%まで伸びる。熱反射性表面は、繰り返しの屈曲に対してその完全性を維持し、熱伝導性粒子は無傷のまま存在して熱放射性表面を提供する。
コーティング組成物は、加硫化学物質の使用なしでの硬化剤のための硬化部位として官能基を含む、少なくとも1つのフィルム形成性ポリマーまたはプレポリマーを含む。硬化剤は、フィルム形成性ポリマー100部に対して5から100(phr)部までで、典型的には利用される。熱伝導性金属粒子は、金属粒子の平均サイズに依存する重量基準の量で、本明細書の以下に明記される。
活性水素官能基を含む有用なフィルム形成性ポリマーの例が、本明細書中に開示される。硬化剤を含む活性水素と反応性の官能基を含むポリマーも開示される。本明細書で適切であるフィルム形成性ポリマーとしては、α−オレフィンエラストマー、共役ジエンエラストマー、水素化ジエンエラストマー、フルオロエラストマー、エチレン−カルボキシレート、エチレン−プロピレン−ジエンエラストマー、官能基化エチレン−ビニルアセテート、SB−ジブロック、SBS−およびSIBS−トリブロックコポリマーならびにその水素化バージョン、アクリル系ゴムが挙げられ、ポリウレタンが本明細書での使用に適している。官能基は、重合物中のコモノマーによって、または従来の手段により当該分野で公知の後重合法によって、フィルム形成剤中に提供され得る。硬化剤とフィルム形成性ポリマーとの間の化学架橋は、周囲硬化、基材接着および耐久性のために、本発明に必須の特徴である。
好ましい実施態様においては、本発明のコーティング組成物は、官能基化水素化アクリロニトリル−ブタジエンコポリマー(A)(官能基化HNBR)、(B)少なくとも1つのイソシアネート基(好ましくは、ポリイソシアネート、またはイソシアネート官能性プレポリマー、またはイソシアナトシラン、あるいは少なくとも1つのイソシアネート基を有する多官能性化合物、オリゴマー、プレポリマーを含む)および架橋を形成する基を含む硬化剤、ならびに(C)有機溶媒を含む。コーティング組成物の溶媒が、水ベースまたは炭化水素ベースのいずれかであり得ることも本発明の重要な側面である。減少量の揮発性有機化合物(VOC)を含む水性コーティングが提供される。
本発明のコーティング組成物は、エラストマー基材の加硫前またはその後のいずれかに、エラストマー基材に付与される。1つの局面では、本発明は、加硫処理されていないゴム基材の表面にコーティングを付与すること、および周囲温度または高温でコーティングを乾燥することによってコーティングを硬化させることを含む、基材をコーティングする方法を記載する。
別の発明の局面では、基材をコーティングするための方法が提供され、当該局面は、それ自体が必要に応じ金属コンポーネントに結合され得る加硫処理されたゴム基材の表面にコーティングを付与する工程、コーティングを乾燥する工程、および乾燥したコーティングを周囲条件で、必要に応じて熱、光または放射線を付与して硬化させる工程を含む。必要な場合には、エラストマーの周辺の周りのむき出しの金属の部分にもコーティングを付与することが好ましい。
本発明は、エラストマー基材への優れた接着、腐食性材料への耐性、熱の上昇に対する耐性、および広い温度範囲にわたる耐屈曲疲労性を有する、成形または成型ポリマー物品(例えば、弾性材料およびエラストマー−金属複合体)用の外部コーティングを提供する。
コーティングは、基材への付与時に2つの液状部分の混合物によって形成される。A部は、官能基化ポリマーの液状溶液または懸濁液を含み、B部は、液状硬化剤を含む。これらの部分が組み合わされると、周囲温度で硬化可能な実施態様は、30分〜1時間の典型的なポットライフを有する。A部とB部との硬化性コーティング混合物は2〜20%の固形物含量を含む。粘度は選択されたコンポーネントに依存して制御され得、コーティングを噴霧、刷毛塗りまたは浸漬し得るように20,000cps(Brookfield)未満である。
ポリマーを官能基化する方法
本明細書で使用される官能基化エラストマーフィルム形成剤は、いくつかの経路によって(例えば、共重合によっておよび重合後のポリマーへの官能基導入によるフィルム形成性ポリマーの変性のための様々な方法で)提供され得る。用語「官能基化」は、エチレン性不飽和コモノマーの部分としての活性水素保有部分が共重合されるか、または活性水素保有化合物がグラフト連結(後重合)されることを意味する。コモノマーまたはグラフト化化合物は、ポリマー構造に共有結合されるようになり、周囲温度硬化剤と反応し得る基を提供する。
フィルム形成剤は、重合非官能性エラストマーに活性水素保有官能基を導入するための従来のアプローチを用いて(例えば、官能基保有化合物を適切な官能基前駆体に転化することによって、またはエラストマーが溶液中にあるかもしくは「エン」反応(これによって、エノフィルへのアリル型水素移動およびそれに続く2つの不飽和末端の間のカップリングが起こる)により溶融された状態にある場合に達成され得るような適切な前駆体基の直接導入によって、あるいは溶融された状態におけるまたは溶媒を用いた希釈溶液中での炭素−炭素二重結合を介したフリーラジカルの付加によって)調製される。しかしながら、ポリマーが溶融された状態にある場合には、転化されるべき官能基を導入するため、または適切な前駆体基を直接導入するために、高い機械的剪断を付与し得る手段(例えば、押出機)を用いて所望の反応を達成する。一方で、適切な前駆体または直接導入される前駆体基に変換されるべき官能基が、メタレーションおよびそれに続く適切な求電子試薬との反応などの技術によって導入される場合には、導入は好ましくは、溶解状態のポリマーを用いて達成される。
官能基または官能基前駆体の導入に利用可能ないくつかの方法のうち、エラストマーポリマーの最小のカップリング(例えば、エン反応)で各導入部位に1つの官能基または官能基前駆体ユニットを導入する傾向がある方法、ならびにメタレーションおよびそれに続く求電子試薬との反応を含む方法が好ましい。適切な前駆体に変換されるべき官能基がエラストマーに導入される場合、前駆体基への官能基の変換はまた、一般的には、溶解状態のポリマーを用いて達成される。概して、そのような溶解状態のエラストマーポリマーを調製するために有用なことが公知のいずれの溶媒も、これらの反応または変換を達成するために使用され得る。
本発明で使用するための結合した架橋硬化部位を有する非官能基化付加ポリマーをこれまで提供する様々な後重合官能基化技術が公知である。ヒドロキシル基は、本明細書で使用される硬化剤との架橋反応を達成するために有用な官能基である。米国特許第4,118,427号は、高分子量飽和炭化水素ポリマー(例えば、ポリイソブチレンまたはエチレン−プロピレンゴム)をオゾン化し、次いでオゾン化した材料を還元し(例えば、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどの還元剤を使用することによって)、親ポリマーよりもかなり低い分子量を有する上述のヒドロキシル含有液状プレポリマーを形成することによるヒドロキシル含有硬化性液状炭化水素プレポリマーを開示する。
(A)官能基化コモノマー
本明細書で用いる硬化性フィルム形成性ポリマーは、エラストマー形成モノマーと官能基化コモノマーとの共重合によるか、または、ポリマーと官能基含有モノマーまたは反応性化合物との反応によって、形成され得る。導入された反応性基は、引き続いて、本明細書に記載したような硬化成分の反応によってポリマーを硬化する。この硬化方法は、架橋剤と、コポリマー上の対応する反応性官能基またはコポリマー上のペンダントと架橋する活性水素保有官能基または活性水素反応性基との反応を利用する。従来から行われているように、フィルム形成性ポリマーの重合の間に官能基保有コモノマーを導入するのが簡便である。フリーラジカル付加共重合、アニオン性付加重合、フリーラジカルグラフト連結、メタセシスグラフト化、および加水分解性グラフト化の様々なアプローチが当該分野で公知である。官能基含有ポリマーまたはコポリマーとしては、α−オレフィンエラストマー、ジエンエラストマー、水素化ジエンエラストマー、官能基化フルオロエラストマー、架橋性α−オレフィンコポリマーエラストマー、官能基化アクリレートまたはメタクリレートアクリレートコポリマー、およびエチレン−カルボキシレートなどの、それらの主要構成成分により特徴付けられるポリマーが挙げられる。
ゴム状コポリマーエラストマーの好ましい例としては、アニオン重合オレフィン性エラストマーが挙げられるが、これに限定されない。アニオン重合オレフィン性ゴムの例としては、最大30重量%のα,β−エチレン性不飽和ニトリルおよび/またはスチレン性コモノマー(例えば、スチレンおよび/またはアルキル置換スチレン)を必要に応じ含む、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴム、ポリイソブチレンまたは「ブチルゴム」、あるいは、共役ジエン(例えば、イソプレン)と必要に応じ共重合したイソオレフィンの任意の他のポリマーなどが挙げられる。特に好ましいエラストマーとしては、イソブチレン−イソプレンコポリマー、イソブチレン−パラメチルスチレンコポリマーなどが挙げられる。
適切なペンダント活性水素官能基は、米国特許第4,987,200号に記載されたプロセスによってアミン官能基化エチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)を形成する方法によって提供される。同様に、ヒドロキシル基で官能基化された高分子量イソブチレンコポリマーは、欧州特許出願公開公報第325 997号に記載されたプロセスを用いて製造され得る。さらに、低レベルのハロゲン(典型的には、0.5〜2.0モル%)を含む任意の市販のハロゲン化イソブチレンベースのポリマーをアルキルアミンまたはアミノアルコールと組み合わせて、アミンまたはヒドロキシル官能基をそれぞれ製造することができる。
1000〜200,000までの重量平均分子量を有し、ヒドロキシルおよび/またはアミン官能基を含む官能基化エラストマーが公知である。ヒドロキシ末端ポリイソブチレンは、慣用的には、クロロ末端ポリイソブチレンを脱塩化水素、ヒドロホウ素化および酸化することにより、カチオン重合イソブチレンの末端部位に水酸基を導入することによって調製される。イソブチレンモノマーをカチオン重合することによって得られるクロロ末端ポリイソブチレンが公知である。イソブチレンをリビングカルボカチオン重合し、メタノールおよびアミンなどの他の試薬でリビング製法を停止することを開示する、FaustおよびKennedy、「Living Carbocationic Polymerization: III.Demonstration of the Living Polymerization of Isobutylene」、Polym.Bull.15:317−23(1986)を参照されたい。
リビング重合法は、米国特許第5,350,819号;同第5,169,914号;および同第4,910,321号に記載されており、フィルム形成性ポリマーを形成するのに好ましい技術である。例えば、イソブチレンを用いてリビング重合を達成し得る一般的条件としては、(1)第三級アルキルハライド、第三級アルキルエーテル、第三級アルキルエステルなどの開始剤;(2)チタン、ホウ素またはアルミニウムのハライドを典型的には含むルイス酸共開始剤;(3)水素スカベンジャーおよび/または電子供与体;(4)公知のカチオン重合系およびモノマーに適合するルイス酸およびモノマーの選択を考慮してその比誘電率が選択される溶媒が挙げられる。
末端官能性ポリマー
活性水素基または活性水素基と反応性の基は、本明細書中で有用なフィルム形成性ポリマーの末端に導入され得る。米国特許第5,448,100号は、まず、ルイス酸を用いたイソブチレンのカルボカチオン重合によりポリマーを形成し、次いでアセチルスルフェートでの末端クエンチおよび水蒸気蒸留によるかまたはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールもしくはアセトンを用いての沈殿を行う「イニファー(inifer)」(開始−移動剤)により調製されるスルホン化テレケリックポリイソブツイレン(polyisobtuylene)を開示している。重合は、好ましくは、塩素化溶媒中、最も好ましくは、塩化メチレン、塩化メチルまたは5〜10個の炭素原子を含む脂肪族もしくは脂環式化合物などの溶媒の混合物中で起こる。ルイス酸は、例えば、三塩化ホウ素または四塩化チタン、あるいは他のハロゲン化金属(四塩化スズ、塩化アルミニウムもしくはアルキルアルミニウムが挙げられる)であり得る。末端クエンチは、好ましくは−90〜0℃の温度、最も好ましくは重合温度または複合体の分解温度で起こる。ポリイソブチレン:アセチルスルフェートのモル比は、好ましくは1:1以上である。
ポリイソブチレンなどのフィルム形成性ポリマーは、ヒドロキシおよび/またはアルコキシ基を保有する末端シラン基を含み得る。これらは、第三級炭素−塩素基を含むポリイソブチレンポリマーを脱塩化水素し、次いでエチレン性不飽和シランと付加反応する公知の経路によって得られ得る。例えば、第三級炭素−塩素結合を有するクロロブチルゴムをアリルトリメチルシランと反応させて、不飽和基を有するポリブチレンを得ることができ、次いで、これを、白金触媒を用いた付加条件下で、以下の一般式
Figure 0004514191
(式中、Rは水素原子、1〜20個の炭素原子を含むアルキル基、6〜20個の炭素原子を含むアリール基、7〜20個の炭素原子を含むアリールアルキル基、または式(R’)SiO−−(式中、各R’は独立して、水素原子、または1〜20個の炭素原子を含む置換もしくは非置換の炭化水素基を示す)のトリオルガノシロキシ基であり、各Xは独立して、ヒドロキシル基または周知の加水分解性基を示し、aは0、1、2または3である)のヒドロシラン化合物と反応させることができる。あるいは、ポリマーのヒドロシラン末端シロキサンが使用され得る。公知のヒドロシラン化合物としては、トリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン、フェニルジクロロシランなどのハロゲン化シラン;トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、フェニルジメトキシシランなどのアルコキシシラン;メチルジアセトキシシラン、フェニルジアセトキシシランなどのアシルオキシシラン;およびビス(ジメチルケトオキシメート)メチルシラン、ビス(シクロヘキシルケトオキシメート)メチルシランなどのケトオキシメートシランが挙げられる。プロセスは、例えば、特公平4−69659号公報、特公平7−108928号公報、特開昭63−254149号公報、特開昭64−22904号公報、特許第2539445号公報に記載されている。
官能基化水素化ジエンエラストマー
フィルム形成性ポリマーとしての本明細書での使用に適切な官能基化水素化ジエンコポリマーは、好ましくは約50,000以上の、より典型的には200,000〜500,000の分子量の溶媒溶解性ポリマーであり、10重量%以下の共役ジエン部分を含む。これらのポリマーは、反応性末端基官能性液状ポリマー(例えば、ATBNおよびCTBN)などの液状官能基化オリゴマーとは区別される。水素化コーティングポリマーを調製するための不飽和官能基化ポリマーは、50から85重量%までの共役ジエンモノマーユニット、5重量%〜50重量%の1つ以上の非共役エチレン性不飽和モノマーユニットおよび1〜20重量%の官能性コモノマーもしくは反応性架橋部位を保有するグラフト連結化合物を幅広く含む。好ましい共役ジエンモノマーユニットは、1,3−ブタジエンモノマーから誘導され、非共役エチレン性不飽和モノマーユニットは、不飽和アクリルエステル、メタクリルエステル、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルなどのニトリル、ならびにスチレンおよびアルキルスチレンなどのモノビニル芳香族炭化水素、ならびにビニリデンコモノマーから選択される1つ以上のエチレン性不飽和モノマーから誘導される。ジビニルベンゼンなどのジビニル芳香族炭化水素、ジイソプロペニルベンゼンなどのジアルケニル芳香族は、存在しないことが好ましい。他のコモノマーとしては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートまたはメタクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、およびビニルアセテートなどのビニルエステルが挙げられる。好ましい官能性コモノマーは、不飽和カルボン酸およびそのエステル(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸およびマレイン酸)から選択される。官能基化ジエンエラストマーフィルム形成剤のガラス転移点は、−10℃を超えてはならず、熱伝導性粒子充填コーティングにおける許容可能な屈曲亀裂/屈曲疲労への耐性を提供するために、好ましくは−25℃未満である。
オゾン化ゴムが形成され、過酸化物または過酸を用いてアルデヒド末端基がカルボキシル基に酸化される鎖切断法によって、カルボキシル末端基は、−C−CH=CH−C−型の不飽和を含むジエンエラストマー高分子上に形成され得る。あるいは、オゾン化ゴム上のヒドロキシル末端基は、接触水素化によるかあるいは金属の水素化物または水素化ホウ素物などの還元剤による還元技術などによって形成され得る。例えば、英国特許第884,448号を参照されたい。同様に、米国特許第4,118,427号は、ポリイソブチレンまたはエチレン−プロピレンゴムなどの高分子量飽和炭化水素ポリマーをオゾン化し、次いでオゾン化された材料を還元し(例えば、還元剤、好ましくはジイソブチルアルミニウムハイドライドを使用することによって)、親ポリマーよりも低い分子量の上述のヒドロキシル含有液状プレポリマーを形成することによる、液状ヒドロキシル含有硬化性液状炭化水素プレポリマーを開示している。
メルカプトアルコールまたはメルカプトカルボキシレートグラフト化化合物の導入によるフィルム形成性ポリマーの変性は、本発明における有用なフィルム形成剤が得られる。ヒドロキシルを含む適切なヒドロキシメルカプタンおよび/またはメルカプトカルボン酸エステル(HS−R−OH化合物)としては、式中のRが、6個までのさらなるヒドロキシル基によって必要に応じ置換されてもよいかまたは窒素、酸素もしくは硫黄原子で中断されていてもよい直鎖、分枝鎖または環状C−C36アルキル基であるものが挙げられる。HS−(CHR)n−(C(O)OROH)(式中、Rは水素またはC−Cアルキル基であり、Rは、6個までのさらなるヒドロキシル基によって必要に応じ置換されていてもよいかまたは窒素、酸素もしくは硫黄原子で中断されていてもよい直鎖、分枝鎖または環状C−C36アルキル基であり、好ましくは−OHは一級であり、nは1から5までの整数であり、mは1から2までの整数である)などのメルカプトカルボキシレートが適切である。
好ましいヒドロキシメルカプタンは、メルカプトエタノール、1−メルカプト−3−プロパノール、1−メルカプト−4−ブタノール、α−メルカプト−ω−ヒドロキシオリゴエチレンオキシド(例えば、α−メルカプト−ω−ヒドロキシオクタエチレングリコール)または対応するエチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリエーテルである。メルカプト−エタノールおよびα−メルカプト−ω−ヒドロキシオリゴエチレンオキシドが好ましい。好ましいヒドロキシル基含有メルカプトカルボン酸エステルは、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸およびメルカプト酪酸とエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、オクタエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコールおよびN−メチルジエタノールアミンとのエステルである。メルカプト酢酸および3−メルカプトプロピオン酸の対応するエステルが特に好ましい。メルカプト化合物と反応させる適切なタイプのエラストマーフィルム形成剤ベースポリマーとしては、イソブチレン、クロロプレン、ポリブタジエン、イソブチレン/イソプレン、ブタジエン/アクリロニトリル、ブタジエン−アクリレートコポリマー、S−Bコポリマー、ブタジエン−ビニリデンクロライド−アクリレート型コポリマーを含むポリマーが挙げられるが、但し、不飽和度は10%以下である。メルカプト化合物を配合する方法は、参照によって本明細書に援用される米国特許第6,252,008号に記載され、本明細書における官能性フィルム形成性ポリマーとしての使用に適している。ゴムは、0.1〜5重量%の範囲での結合したヒドロキシル基を含む。米国特許第6,252,008号の方法に従い導入されたヒドロキシル基を含む溶液重合ジエンゴムの分子量は、5〜15%固形物の希釈溶液が得られ得、噴霧、刷毛塗りまたは浸漬可能であり得る範囲、例えば、10,000から200,000までのMn(ゲル透過クロマトグラフィー)にあるべきである。
ホルムアルデヒドを用いた付加反応、一酸化炭素を用いた反応およびそれに続く水素化、ならびにヒドロホウ素化およびそれに続く加水分解によるなど、本明細書で使用される適切なフィルム形成性ポリマーにOH基を導入するための他の公知のアプローチがある。エチレン性不飽和基を含有するシランを用いる共重合が、適切な方法である。代表的なシランコモノマーとしては、反応性ケイ素基を有するビニルシランまたはアリルシランが挙げられる。言及され得る例としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ジビニルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシラン、アリルトリクロロシラン、アリルメチルジクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルジメチルメトキシシラン、ジアリルジクロロシラン、ジアリルジメトキシシラン、γ−メタアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、およびγ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランが挙げられる。
官能基化ジエンエラストマーは、本発明の最も好ましいフィルム形成剤の実施態様としてのニトリルコポリマーに関して、以下のとおり記載する。官能基化ブタジエンアクリロニトリルコポリマーは、低温可撓性、耐油性、耐燃料性および耐溶媒性、ならびに良好な耐磨耗性および耐水性などの有利なフィルム特性を提供する。
本発明は、最も好ましくは、官能基化水素化ニトリルゴム(HNBR)を用いて行われる。反応性官能基でのHNBRの官能基化は、コーティング組成物を架橋し、エラストマー基材への必須レベルの接着を得るための方法を提供する。コーティングは、エラストマー基材に適切に接着されない場合、未熟な屈曲亀裂および/または層剥離を示す。HNBR用の官能基は、活性水素基、エチレン性不飽和基または加水分解性基を含むものとして一般的に分類され得る。
HNBRの硬化は、水分、加熱(赤外線、熱)への曝露によるか、UV照射によるか、または電子線照射によって、本明細書に記載した架橋成分を付加することにより達成され得る。ジエンコポリマーに導入される反応性官能基に依存する。本明細書の以下に記載されるいくつかの官能基化HNBRの実施態様は、追加の架橋剤なしに自己硬化し、すべてが官能基化HNBRに付加される適切な架橋成分(例えば、ジニトロソベンゼン、ZnO、ガンマ−POM、フェノール性レゾール、多官能性アミン、ポリイソシアネート、ポリアクリレート、ジシアンジアミド、ジカルボキシミドおよびホルムアルデヒド(すなわち、UF、MF)樹脂が挙げられるが、これらに限定されない)を用いて硬化され得る。
官能基化HNBRは、当該分野で公知の様々な方法によって調製され得る。官能基は、官能基含有コモノマーの使用によるか、またはグラフト連結可能な官能基保有化合物の使用によって、およびメタセシスを用いてNBRを官能基化し、次いで変性NBRを水素化して官能基化HBNRを得ること、またはNBRとメチロール化フェノールとを反応させ、次いで変性NBRを水素化して官能基化HBNRを得ることによって、導入され得る。
活性水素保有官能基を含有する官能基化HNBRは、硬化性放射コーティング組成物における好ましい架橋性フィルム形成剤である。NBRにおける不飽和基(すなわち、ビニルおよび二置換オレフィン、ニトリル)の存在は、反応性部位を提供し、当該部位は反応性官能基が接着し得、さらなる架橋、後重合官能基化およびグラフト化反応に使用され得る。これらの反応性部位は、触媒または非触媒化学のいずれかによって変性され得る。そのような変性は、任意数の活性水素官能基(例えば、オレフィン性部位のエポキシ化によるエポキシド)を導入し得る。エポキシドは、開環反応によって、他の官能基に容易に変換される。例えば、グリコールは塩基を用いた開環によって、グリコールエーテルはアルコキシドまたはフェノキシドを用いた開環によって、アルコールはカルボアニオンまたは水素化物を用いた開環によって製造される。さらに、エポキシドは、当業者に利用可能な化学物質を用いて架橋性部位として機能する。多くの他の官能基が、骨格オレフィンの反応:ヒドロホルミル化(アルデヒド、アルコール、カルボン酸)、ヒドロカルボキシル化(カルボン酸)、ヒドロエステル化(エステル)、ヒドロシリル化(シラン)、ヒドロアミノ化(アミン)、ハロゲン化(ハロゲン)、クロロスルホニル化(塩素、スルホン酸)、ヒドロホウ素化(ボラン、アルコール、アミン)によって、導入され得る。このような変換の例は、Tremont(McGrath,M.P.;Sall,E.D.;Tremont,S.J.「Functionalization of Polymers by Metal−Mediated Processes」、Chem.Rev.1995,95,381)により概説されている。NBRエラストマーのニトリル基もまた、酸触媒プロセスにおけるアルコールとの反応によってアミドに、そして加水分解によってカルボン酸に転化され得る。
Figure 0004514191
架橋は、架橋成分の付加、水分、熱、UV照射、電子線照射によって達成され得る。HNBRに付加した反応性官能基およびその意図する用途に依存して、適切な架橋成分(例えば、ジニトロソベンゼン、ZnO、γ−POM、レゾール、多官能性アミン、イソシアネート、アクリレートおよびジシアンジアミン)が官能基化HNBRに付加され得る。特に好ましい架橋成分は、エラストマー物品への良好な結合を得ることが当該分野で公知の成分である。これらの成分としては、DNB、ZnOおよびQDOが挙げられ、多種多様な弾性材料への官能基化HNBRの接着を向上させるために付加され得る。
上述の官能基のなかでも、ジエンエラストマーに導入される反応性官能基の非限定的な例示としては、フェノール性OH、脂肪族OH、アミン、イソシアネート、エポキシ、アクリレート、シリルエーテル、シリル塩化物、無水物、マレイミド、およびディールスアルダージエノフィルが挙げられる。
本発明のR.F.を硬化するための適切な硬化成分および硬化反応助剤は、接着およびコーティングの分野の先行文献および先行特許において周知である。例えば、ポリマー上の官能基がフェノールであるならば、イソシアネート、ジカルボキシミド、ホルムアルデヒド源およびレゾールが、フェノール官能基化HNBRの架橋のために有用な適切な硬化剤である。同様に、例えば、イソシアネートまたはジカルボキシミド、ホルムアルデヒド源およびレゾールを用いてアミン官能基化HNBRを硬化することができる。エポキシ接着剤およびコーティングの分野で知られるような、適切なアミンおよびジシアンジアミド成分で、エポキシ官能基化HNBRを架橋して硬化することができる。イソシアネート官能基化HNBRは特に興味深い。なぜなら、水分あるいはアミンまたはポリオールのような他の硬化可能な試剤の添加によって架橋または硬化することができるからである。HNBRの一部としてイソシアネートを含むことがとりわけ望ましい。なぜなら、遊離のモノマーおよび結果として生じる揮発性のイソシアネートおよびそれについて報じられている健康上および安全上の問題が減じられるからである。アミン官能基化HNBR(またはNBR)をジアリールカーボネートと反応させてウレタン官能基化HNBR(またはNBR)を得ることによって、潜在的なイソシアネート官能基化HNBRを製造することができる。ウレタンの熱分解によってイソシアネート官能基化HNBR(またはNBR)が形成される(例えば、Kothandaraman,K.;Nasar,A.S.“The Thermal Dissociation of Phenol−Blocked Toluene Diisocyanate Crosslinkers”,J.M.S.−Pure Applied Chem.1995,A32,1009;Wicks,D.A.;Wicks,Z.W.“Blocked Isocyanates III:Part A.Mechanisms and Chemistry”,Progress in Organic Coatings 1999,36,148;Mohanty,S.;Krishnamurti,N.“Synthesis and Thermal Deblocking of Blocked Diisocyanate Adducts”,Eur.Polym.J.1998,34,77を参照)。フリーラジカル開始剤の添加あるいはマイケル付加反応のいずれかによって、マレイミド官能基化HNBRを架橋することができる。マレイミドは公知の架橋剤である。アクリレート官能基化HNBRは、フリーラジカルでも、UVおよび電子ビームでも硬化し得る。アミンおよび無水物−エポキシ接着剤の分野に記載される成分を用いて無水物置換体を硬化することができる。シリルエーテルおよびクロロシランを室温での水分−硬化の形態において用いることができる。ディールスアルダー付加物は自己硬化するかあるいはメタセシス型触媒の添加により硬化する。
フィルム形成エラストマー上に官能基を導入するための上述のグラフト法の詳細として、多官能性アクリレート、マレイン化されたポリブタジエンおよび2官能性アクリレートの金属塩のような多官能性のグラフト結合可能な材料をとともに、溶融したフィルム形成エラストマーを融解するプロセスが例示される。例えば、EPDMなどのオレフィンエラストマーを、2本ロールミルで、酸化亜鉛などの酸捕捉剤5部、ステアリン酸1部、酸化防止剤および過酸化物とともにどろどろにし、次いで5〜10部のトリメチロールプロパントリアクリレート、マレイン化された液状ポリブタジエンまたはジアクリル酸亜鉛などの多エチレン性不飽和化合物をこのフラックスロールに付加することができる。
メタセシスおよびそれに続く官能基化HNBRを得るための変性NBRの水素化によって、ならびに、(2)NBRとメチロール化フェノールとの反応およびそれに続く官能基化HBNRを得るための変性NBRの水素化によって、官能基化HNBRを製造することができる。
NBRエラストマー上へカルボキシ、無水物、ヒドロキシ官能基などの反応性ペンダント官能基を導入するための新規な方法を以下に提供する:
本発明で用いることができる、任意の適切な不飽和フィルム形成性ポリマー、特にNBRの直接的な官能基化は、オレフィンメタセシス化学を用いることで達成する。ここで、オレフィンC=C二重結合は、触媒およびモノマーと反応する。オレフィンメタセシス触媒は、ニトリル官能基の存在下でメタセシス反応を触媒する能力をもたねばならない。このモノマーは、オレフィンメタセシス反応(例えば、開環メタセシス重合[ROMP]、クロス−メタセシス、開環−クロス−メタセシス、および非環式ジエンメタセシス重合[ADMET])を受け得る、任意のシクロオレフィン、オレフィン、またはα,ω−ジエンであってよい。これらのモノマーは、硬化フィルムの二次架橋反応のための硬化サイトを付与するか、新たな物性をポリマーに付与する官能性を有する基(例えば、カルボン酸、アミド、エステル、無水物、エポキシ、イソシアネート、シリル、ハロゲン、ディールスアルダージエンおよびジエノフィル等)で誘導される。速度論的には、メタセシス触媒は、おそらくビニルC=C結合をまず攻撃するであろうが、HNBRコポリマー中でそれらが少量であることにより、主鎖のC=C二重結合での攻撃を競争的にし得る。こういった主鎖の不飽和への攻撃は、おそらくNBRの分子量の低下を招くであろうが、高レベルの触媒に対するNBR比を用いることで、このような加工の程度を最小化することができる。例えば、上述の触媒的な水素化法を用いた変性NBRの還元の後に、反応性の変性HNBRポリマーが得られる。水分、選択された硬化剤または外部エネルギー源(UVまたは電子ビーム)を用いてこのポリマーを架橋することができる。メタセシス触媒の特に好ましい利点は、水中または溶媒中の穏やかな条件下において、NBRへ反応性官能基を導入する独自の手段を提供することである。こうして、NBRラテックスは、当該ラテックスを不安定化させること無く、メタセシス触媒によって反応性官能基で変性することができる。このことにより、溶液中でまたは水分散体として、商業的に周知の種々のNBRポリマーおよびラテックス(水ベースの重合)を官能基化することができ、次いで水素化することにより官能基化HNBRを得ることができる。
水素化プロトン性末端ジエンポリマー
水素化ヒドロキシまたはカルボキシ末端ジエンポリマーは、単独でまたは別の高分子量(10,000Mn以上)フィルム形成性ポリマーとのブレンドで本発明の放射コーティングにおいて使用される、硬化可能なフィルム形成剤として適している。実質的に飽和したポリヒドロキシル化されたポリジエンポリマーは公知でありかつ市場で入手可能である。これらは、リチウム開始剤でアニオン重合され、OH基の末端を有する、共役ジエンの炭化水素(例、ブタジエンまたはイソプレン)を表す。この製造工程は、米国特許第4,039,593号;米国再発行特許第27,145号;および米国特許第5,376,745号に記載されるように公知であり、ポリヒドロキシル化されたポリジエンポリマーの製造についてのそれらの記載は、参照することで全て本明細書に導入される。そのようなポリマーは、2モルのsec−ブチルリチウムと1モルのジイソプロピルベンゼンとの反応によって形成される化合物のようなジリチウム開始剤で製造された。ブタジエンのそのような重合は、90重量%のシクロヘキサンおよび10重量%のジエチルエーテルで構成される溶媒中でなされた。モノマーに対するジ−開始剤のモル比によってポリマーの分子量が決まる。ポリマーは、2モルのエチレンオキシドでキャップされ2モルのメタノールで終結したジヒドロキシポリブタジエンを生成する。ヒドロキシル化されたポリジエンポリマーは水素化されて、実質的に全ての炭素−炭素二重結合が飽和する。米国特許第5,039,755号にあるようなラネーニッケル、白金などの貴金属、可溶性の遷移金属触媒およびチタン触媒のような触媒の存在下での水素化を含む確立されたプロセスによって、水素化は当業者によってなされた。適切なポリヒドロキシル化されたポリジエンは、米国のShell Chemical Companyから、KRATON LIQUID(登録商標)ポリマーの商品名の下、HPVM 2200シリーズ製品としておよびATOCHEMIE社からPolyBD(登録商標)として入手可能なものである。水素化ヒドロキシルブタジエンポリマーとともに混合するのに適した高分子量ポリマーとしては、本明細書で言及した他のものおよび公知のもののうち、例えば、上述のカルボキシ変性塩素化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、エピクロルヒドリンのポリマー、エチレン−アクリルコポリマー、SBR、SBS、ニトリルゴム(NBR)、SIBS、EPDM、EPM、ポリアクリレート、ハロゲン化ポリイソブチレンおよびポリプロピレンオキシドが挙げられるが、これらに限定されない。高分子量フィルム形成剤に対する液状の水素化ポリブタジエンポリオールの重量割合は、組み合わせにおける不飽和の百分率が全体で10%より少なくなるように限定される。したがって、水素化ポリジエンポリオールの混合物が、SBR、NBR等のような不飽和高分子から製造される場合、不飽和ポリマーの割合は、全体として少なくとも90%の飽和度が維持されるように制限される。変性塩素化ポリオレフィンは、酸性または無水物基で変性されたものを含んでいてもよい。変性塩素化ポリオレフィンのいくつかの例が米国特許第4,997,882号(第1欄第26行から第4欄第63行);同第5,319,032号(第1欄第53行〜第2欄第68行);および同第5,397,602号(第1欄第53行〜第2欄第68行)に記載されていて、それらは参照することで本明細書に導入される。塩素化ポリオレフィンは、出発原料のポリオレフィンの重量に基づき好ましくは約10〜40重量%、より好ましくは約10〜30重量%の塩素含量を有する。変性塩素化ポリオレフィンの一つの好適例は、ポリオレフィンの重量に基づき約10〜約30重量%の塩素量を有し、アミンで中和されていない、約50〜約100の範囲の酸価を有する変性塩素化ポリオレフィンである。
水素化ブロックコポリマー
本発明で採用し得る適切なフィルム形成剤は、水素化スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマーであり、それらは本明細書中で上述した方法により変性され、塩素化されたポリエチレンへと適用され、別途硬化剤との相互作用のための硬化機能が該ブロックコポリマーへ付与される。カルボキシル基を有するいくつかのエラストマー系のブロックコポリマーが市場で入手可能である。不飽和性を有するそのようなブロックコポリマーを本明細書で参照した方法を含む公知の水素化法で水素化することができる。
フェノール官能性エラストマー
フェノール官能基でのHNBRの官能基化は、メチロール化フェノールとNBRとを組み合わせ、次いでフェノール変性NBR中間体を水素化することによって実行できる。文献[A.Knop and L.Pilato,“Phenolic Resins Chemistry and Applications and Performance” Springer−Verlag,New York 1985,Chapter 19 pg 288−297]に報告されるような種々の化学反応によって、メチロール化フェノールは、NBRおよびNBRコポリマーと共有結合を形成することができる。
種々の公知のイソシアネート反応性官能基を、官能基化されたエラストマーフィルム形成性ポリマーへ導入することができる。上述のカルボキシ官能性、ヒドロキシ官能性およびアミン官能性エラストマーを最も容易に適用し得る。カルボキシ官能性コモノマーのような、官能性コモノマーをカルボキシル化した水素化ニトリルゴムのコポリマーを形成するために容易に適用し得る。本発明の目的のために、官能性水素化ニトリルゴムを、少なくとも一つのジエンモノマー、ニトリルモノマーおよび官能基を有するコモノマーまたはグラフト架橋化合物あるいはそれらの組み合わせのような官能基保有化合物を含むポリマーとして定義することができる。HNBRという略称を本明細書で用いる場合、該用語は、特に言及しない限りは、1,3ブタジエン以外のジエンモノマーおよびアクリロニトリル以外のコモノマーを含んでいてもよいゴムを意味するものと理解すべきである。追加的なモノマーがジエンモノマーの途中で重合またはグラフトして官能基化HNBRを形成してもよいことに留意することもまた重要である。追加的なモノマーは、例えば、架橋を促進させる少なくとも一つの官能基を付与することができる。
不飽和の未水素化ポリマーまたは部分水素化XHNBRポリマー(80〜97%の水素化度)とともに、加熱および任意的に適切なルイス酸により触媒化した条件下で、メチロールフェノールまたはエーテル誘導体を付加することによって、HNBRをフェノール性官能基で官能基化することができる。好ましくは、エーテルブロッキング基がメチロールフェノール化合物に付与され、反応後の水素化が容易になるように促す。ニトリルまたはカルボキシル基を介するエステル形成によって、または上述のアリルサイトへの付加によって付加することができる。好ましくは、フェノール基を保有するエチレン性不飽和化合物のメタセシス反応は、溶媒または水の中で行うことができる。あるいは、メチロール化されたフェニルエーテルまたはフェノールを保有するオレフィンをNBRでメタセシスし、次いで水素化することができる。続いて、フェノール官能基化NBRを水素化する。メチロール化反応は、フェノール官能基化NBRまたはHNBRをホルムアルデヒドとともに用いて、メチロール化フェノール官能基をNBRの中にまたはHNBRとともに生成させることで実行できる。メチロール化フェノールは、文献に報告されるような種々の化学反応によって、NBRおよびNBRコポリマーと共有結合を形成することができる。A.KnopおよびPilato,“Phenolic Resins Chemistry and Applications and Performance”Springer−Verlag,New York 1985,Chapter 19,pg.288−297を参照されたい。以下の構造式は、代表的なフェノール保有化合物での官能基化を表している。
Figure 0004514191
任意のメチロール化フェノールをNBRと組み合わせることができるが、モノ−メチロール化フェノールが特に好ましい。モノ−メチロール化フェノールとNBRポリマーとの組み合わせにより、安定なフェノール官能基化NBR生成物が得られる。当該分野で公知の手順(例、触媒、水素化)によるフェノール変性NBRの水素化の後で、安定なフェノール変性HNBRコポリマーが得られる。フェノール官能基化HNBRコポリマーを、ジカルボキシミド、イソシアネートおよびホルムアルデヒド源(パラホルムアルデヒド、γ−POM、ヘキサメチレンアミン、フェノール性レゾールまたはエーテル化されたフェノール)から選ばれるものを含むフェノール性樹脂用の種々の周知な架橋剤で架橋することができる。
メチロール化フェノール官能基化ニトリルゴム(NBR)または水素化体(HBNR)は、当該分野で公知の手順で製造することができる。モノ−メチロール化フェノールによって、または不飽和モノマーを不飽和NBRに作用させるメタセシスによって、フェノール官能基化NBR/HNBRを製造することができる。メタセシスによって製造されたメチロール化フェノール官能基化NBR/HBNRは、NBRを伴うメチロール化フェノール性モノマーを利用する。これらの材料は、独自の硬化性、フィルム形成性、金属接着性および相溶性という利点をもち、本発明のコーティングとしてだけではなく、エラストマー−金属接着剤の成分、オートデポジット材料(autodepositing materials)、RFLディップおよび反応性強化剤(例、エポキシ接着剤)としても役に立つ。メチロール化フェノール官能基化NBR/HNBRは自己硬化能を有する(すなわち、外部の硬化剤なし)。メチロール化フェノール官能基化NBR/HNBR誘導体は、フェノール性ノボラック、活性水素反応性または活性水素含有架橋剤およびゴム/エラストマー強化剤のような他の硬化成分とともに硬化し得る。メチロール化フェノール官能基化HNBRをゴム用の公知の加硫剤とともに用いることができる。加硫反応は、熱またはメチロール化フェノールの触媒活性により生成したキノンメチドまたはベンジルカルベニウムの形成に基づいている。キノンメチド中間体は、アリル水素の引抜きによって反応する。あるいは、メチロール化フェノールは、酸触媒条件下で基材中の不飽和ポリマーと反応する反応性ベンジルカルベニウムイオンを生成し得る。
HNBRの反応性官能基がフェノールである場合、イソシアネート、ジカルボキシミド、ホルムアルデヒド源およびレゾール硬化剤が、フェノール官能基化HNBRをエラストマー基材へ架橋させるために有用である。同様に、例えば、イソシアネートまたはジカルボキシミド、ホルムアルデヒド源および/またはレゾールを用いて、アミン官能基化HNBRを架橋することができる。エポキシ接着剤の分野で周知の、例えばアミン、アミドアミンおよび/またはジシアンジアミドのような公知の硬化剤を用いて、エポキシ官能基化HNBRを架橋して硬化することができる。
水分あるいはアミンまたはポリオールのような他の硬化剤の添加によって、イソシアネート官能基化HNBRを架橋または硬化することができる。HNBRの一部としてイソシアネートを導入することが特に好ましい。なぜなら、これは、遊離のモノマーおよびその結果生じる揮発性イソシアネートの量ならびにそれについて報じられている健康上および安全上の問題を減じるからである。フリーラジカル開始剤の添加またはマイケル付加反応のいずれかによって、マレイミド官能基化HNBRを架橋することができる。エチレン性不飽和アクリレート官能基化HNBRは、フリーラジカル、UVおよび電子ビーム両方で硬化が可能である。無水物官能基化HNBRは、アミンと無水物−エポキシ接着剤の分野で記載された成分とを用いて硬化することができる。シリルエーテルおよび塩化物は湿気硬化性である。ディールスアルダー付加物は、自己硬化するか、公知のメタセシス触媒の添加により硬化する。
エチレン性不飽和ニトリル共役ジエンゴムに、少なくとも90%の飽和を付与するために、従来手段によってニトリルゴムを水素化する。一般に、水素化のための数多くの公知の手順をいずれも利用することができ、そのような手順には、溶液水素化および酸化/還元水素化が挙げられるが、これらに限定されない。水素化によって、ゴムの不飽和結合の少なくとも90%が飽和される。飽和度が90%より低いと、ゴムの耐熱性が低い。より好ましいゴムの飽和度は95〜99.99%である。
さらに水素化されカルボキシル化されたアクリロニトリル−ブタジエンコポリマーの製造に有用な好適な共役ジエンモノマーは、いかなる周知の共役ジエンでもよく、1,3−ブタジエン;2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン;1,3−ペンタジエン;1,3−ヘキサジエン;2,4−ヘキサジエン;1,3−ヘプタジエン;ピペリレン;およびイソプレンのような約4〜約10個の炭素原子を有するジエンが挙げられるが、これらに限定されない。本発明では、1,3−ブタジエンが好ましい。
カルボキシル化したアクリロニトリル−ジエンコポリマーを形成するために共重合される不飽和ニトリルモノマーは、典型的には以下の式に相当する:
Figure 0004514191
[式中、各々のAは水素または1〜約10個の炭素原子を有する炭化水素基である]。A基の例には、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、オクチル、デシル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのアルキルおよびシクロアルキル;およびフェニル、トリル、キシリル、エチルフェニル、t−ブチルフェニルなどのアリールが挙げられる。アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが本発明で好ましい不飽和ニトリルである。
本発明のHNBRもまた、HNBR骨格の中に重合されるモノマーを含む官能基、またはHNBRへグラフトされた化合物を含む官能基、あるいはそれらの組み合わせを含む。
必要に応じて、カルボキシル基含有モノマーは、本発明で用いられるフィルム形成性エラストマーにおいて利用される。アクリル酸、メタクリル酸およびクロトン酸のような3〜約5個のC原子を有するα,β−不飽和モノカルボン酸モノマーおよび/または他の公知のカルボキシル基含有モノマー[例えば、4〜約5または約6個のC原子を有するα,β−不飽和ジカルボン酸(例、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸およびイタコン酸、ならびにそれらの無水物)などが挙げられるが、これらに限定されない]によってカルボキシル基を付与することができる。結合した不飽和カルボン酸は、コポリマーの約1〜約10重量%の量で存在してよく、この量で、相当量の共役ジオレフィンを置き換える。好ましくは、このモノマーは不飽和モノ−またはジ−カルボン酸誘導体である(例、エステル、アミド等)。カルボキシル基含有モノマーの機能には、架橋部位として作用することおよび接着を強化することが含まれる。
さらに、他の官能性コモノマーがHNBRコポリマーの骨格中に共重合してもよい。ニトリルモノマーおよび共役ジエンモノマーと共重合し得る官能基化エチレン性不飽和モノマーの例には、ヒドラジジル基保有エチレン性不飽和モノマー、アミノ基保有エチレン性不飽和モノマー、チオール基保有不飽和エチレン性不飽和モノマー、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびマレイン酸のような不飽和カルボン酸ならびにそれらの塩、メチルアクリレートおよびブチルアクリレートのような種々のアクリレートのような不飽和カルボン酸のアルキルエステル;メトキシアクリレート、エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、アクリルアミドおよびメタクリルアミドのような不飽和カルボン酸のアルコキシアルキルエステルである。
特に、12〜16個の炭素原子の3つの第三級炭素原子を有するアルキルチオール化合物の存在化でフリーラジカルで開始される共重合が起こる場合には、官能性コモノマーとして、N,N−ジ置換アミノアルキルアクリレート;N,N−ジ置換アミノアルキルメタクリレート;N,N−ジ置換アミノアルキルアクリルアミド;N,Nジ置換アミノアルキルメタクリルアミド;ヒドロキシル置換アルキルアクリレートおよびヒドロキシル置換アルキルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N,N’−ジメチロールアクリルアミドおよびN−エトキシメチロールアクリルアミドのようなN−アルキロール置換アクリルアミド;N−メチロールメタクリルアミド、N,N’−ジメチロールメタクリルアミドおよびN−エトキシメチルメタクリルアミドのようなN−置換メタクリルアミドのような様々な種類のモノマーもまた適切である。
ヒドロキシ置換アルキルアクリレートおよびヒドロキシ置換アルキルメタクリレートコモノマーの具体例としては、ヒドロキシメチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−フノキシ(phnoxy)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートおよび3−フノキシ(phnoxy)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートが挙げられる。これらのうち、ヒドロキシメチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレートおよび2−ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましい。
フリーラジカル開始剤の存在下、当業者にとって周知の方法で、上記例示した共役ジエン、不飽和ニトリル、および不飽和官能基含有コモノマーのいずれかを反応させることによってNBRコポリマーを重合させる。適切なフリーラジカル開始剤は、当該開示の範囲を超えて、典型的には、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、クメンパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、アスカリドール、アセチルパーオキサイド、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、トリメチルアミンオキシド、ジメチルアニリンオキシド、イソプロピルパーオキサイドカーボネート、ジイソブチレンオゾニド、過酢酸、硝酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、アゾビスイソブチロニトリルなどの、有機酸化物、過酸化物、ヒドロパーオキサイドおよびアゾ化合物等である。
ニトリルゴムの水素化は当該分野でおよび文献から公知である。例えば、好ましい市場で入手可能なX−HNBR(カルボキシル化HNBR)は、2段階で水素化されたカルボキシル化ニトリル−ジエンコポリマーから作られる。NBRの1,2−ビニル−配置のブタジエンユニットのC−C二重結合は非常に速く水素化され、1,4−シス配置のユニットがそれに次ぐことが公知である。1,4−トランス配置のブタジエンユニットは比較的ゆっくりと水素化される。水素化に用いられるNBR生成物は、1,4−トランス配置の二重結合の割合が優位であることによって識別される。
この公知の2段階の水素化方法において、炭素−炭素二重結合がまず還元され、次いで炭素−窒素結合が還元される。アクリロニトリル−ブタジエンコポリマーの水素化の他のテクニックは、例えば、米国特許第4,581,417号;同第4,631,315号;および同第4,795,788号に記載され;それらの記載は、参照することでこの明細書に導入される。
部分的または完全に水素化されたニトリルゴム(HNBR)もまた幾つかの明細書に開示されている(例えば、独国特許公報第2,539,132号;同第3,329,974号;同第3,046,008号および同第3,046,251号;ならびに欧州特許出願公開公報第111,412号)。
公知の従来法によってX−HNBRラテックスの水素化を実行することができる。アニオン界面活性剤を用いて従来どおりに作られるカルボキシル化したNBRポリマーラテックスを(1)酸素、空気およびヒドロパーオキサイドからなる群から選ばれる酸化剤;(2)ヒドラジンおよびその水和物から選ばれる還元剤;ならびに(3)金属イオン活性化剤;と組み合わせて、(b)この混合物を0℃から反応混合物の還流温度まで加熱する。この方法は、Goodyear Tire and Rubber社に譲渡された米国特許第4,452,950号に教示され、参照することで本明細書中に組み込まれる。
最も好ましくは、アクリロニトリル−ブタジエンコポリマーを最終生成物が約1〜約10モル%、好ましくは約1〜約5モル%の飽和レベルとなる程度にまで水素化する。
適切なカルボキシル化水素化ニトリルゴム(X−HNBR)は、Bayerにより「Therban(登録商標)」、例えばTherban KA 8889という商品名で製造されている。X−HNBRは、好ましくは約50%以下、より好ましくは約3〜40%、最も好ましくは約8〜30%のヨウ素価であってもよい。
本発明のHNBRは、水素化の前または後に、上述の方法によってHNBRにグラフト結合する架橋反応性官能基を有していてもよい。官能基を有する不飽和化合物の例として、官能基を有するビニル化合物、および官能基を有するシクロオレフィンを挙げることができる。グラフト変性法による官能基の導入は、有機パーオキサイドの存在化で、HNBRを官能基保有不飽和化合物と反応させることで行うことができる。官能基保有不飽和化合物は特に限定されない。しかし、低変性率のもとでの架橋密度および基材への接着性の向上という理由で、エポキシ基−含有不飽和化合物、カルボキシル基含有不飽和化合物、ヒドロキシル基−含有不飽和化合物、シリル基−含有不飽和化合物、不飽和有機ケイ素化合物等が挙げられる。
エポキシ官能基保有不飽和化合物またはエポキシ官能基保有シクロオレフィンの例には、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートおよびグリシジルp−スチリルカルボキシレートのような不飽和カルボン酸のグリシジルエステル;エンド−シス−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸およびエンド−シス−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2−メチル−2,3−ジカルボン酸のような不飽和ポリカルボン酸のモノ−またはポリグリシジルエステル;アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、o−アリルフェノールのグリシジルエーテル、m−アリルフェノールのグリシジルエーテルおよびp−アリルフェノールのグリシジルエーテルのような不飽和グリシジルエーテル;ならびに2−(o−ビニルフェニル)エチレンオキシド、2−(p−ビニルフェニル)エチレンオキシド、2−(o−アリルフェニル)エチレンオキシド、2−(p−アリルフェニル)エチレンオキシド、2−(o−ビニルフェニル)プロピレンオキシド、2−(p−ビニルフェニル)プロピレンオキシド、2−(o−アリルフェニル)プロピレンオキシド、2−(p−アリルフェニル)プロピレンオキシド、p−グリシジルスチレン、3,4−エポキシ−1−ブテン、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブテン、3,4−エポキシ−1−ペンテン、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ペンテン、5,6−エポキシ−1−ヘキセン、ビニルシクロヘキセンモノオキシドおよびアリル−2,3−エポキシシクロペンチルエーテルが含まれる。これらエポキシ官能基保有不飽和化合物は単独で用いても、それらの組み合わせで用いてもよい。
カルボキシル基含有不飽和化合物の例としては、特開平5−271356号公報に記載される化合物、例えば、アクリル酸、メタクリル酸およびα−エチルアクリル酸のような不飽和カルボン酸;ならびにマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、エンド−シス−ビシクロ−[2,2,1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸およびメチル−エンド−シス−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸のような不飽和ジカルボン酸を挙げることができる。不飽和カルボン酸誘導体のさらなる例として、不飽和カルボン酸の無水物、エステル、ハライド、アミドおよびイミドを挙げることができる。その具体例には、マレイン酸無水物、クロロマレイン酸無水物、ブテニルコハク酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物およびシトラコン酸無水物のような酸無水物;モノメチルマレエート、ジメチルマレエートおよびグリシジルマレエートなどのエステル;およびマレニルクロライドおよびマレイミドが含まれる。上述のうち、不飽和ジカルボン酸およびその無水物が、グラフト反応による官能基の導入が容易であるなどという理由から好ましく、マレイン酸無水物およびイタコン酸無水物のような酸無水物が特に好ましい。
フィルム形成性ポリマーへ導入するためのヒドロキシル基含有不飽和化合物の例には、アリルアルコール、2−アリル−6−メトキシフェノール、4−アリルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、3−アリルオキシ−1,2−プロパンジオール、2−アリルジフェノール、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オールおよび5−ヘキセン−1−オールが含まれる。
フィルム形成剤へ導入するためのシリル基含有不飽和化合物の例には、クロロジメチルビニルシラン、トリメチルシリルアセチレン、5−トリメチルシリル−1,3−シクロペンタジエン、3−トリメチルシリルアリルアルコール、トリメチルシリルメタクリレート、1−トリメチルシリルオキシ−1,3−ブタジエン、1−トリメチルシリルオキシシクロペンテン、2−トリメチルシリルオキシエチルメタクリレート、2−トリメチルシリルオキシフラン、2−トリメチルシリルオキシプロペン、アリルオキシ−t−ブチルジメチルシランおよびアリルオキシトリメチルシランが含まれる。
導入のための不飽和有機ケイ素化合物の例には、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリス(メトキシエトキシ)ビニルシランのようなトリスアルコキシビニルシランが含まれる。そのような不飽和有機ケイ素化合物のアルコキシ基は、シラノール基へと加水分解することができる。
不飽和スルホン酸またはリンエステル基の例には、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−スルホエチル(メタ)アクリレートおよび2−ホスホエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。フィルム形成性ポリマーとしての、種々のビニル−アクリレート、アクリレートまたは他のTgが0℃未満の可撓性ポリマーに導入されるこれらのコモノマーは、エポキシ樹脂、イソシアネート、カルボジイミド、アミノ樹脂、アミノシランおよび酸性基と反応性の他の架橋剤の存在下で硬化する。少なくとも約2モル%の硫黄および/またはリン含有酸性基を有し、5〜100、好ましくは10〜85、最も好ましくは10〜30の酸価を呈する、可撓性でTgが低いコポリマーが、本発明による有用なフィルム形成剤である。
上述の官能基を有するエチレン性不飽和化合物の一つをラジカルの発生下でHNBRとグラフト反応させることで、本発明のグラフト変性HNBRを得ることができる。ラジカルを発生させるための方法としては、(i)有機パーオキサイドを利用する方法、(ii)光誘起ラジカル発生剤を利用する方法、(iii)エネルギー線の照射による方法、および(iv)加熱による方法を挙げることができる。
(i)有機パーオキサイドを利用する方法:有機パーオキサイドとしては、例えば、有機パーオキサイド、有機パーエステルなどを好適に用いることができる。そのような有機パーオキサイドの具体例としては、過酸化ベンゾイル、ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(パーオキサイドベンゾエート)ヘキシン−3、1,4−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルパーアセテート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーベンゾエート、tert−ブチルパーフェニルアセテート、tert−ブチルパーイソブチレート、tert−ブチルパー−sec−オクトエート、tert−ブチルパーピバレート、クミルパーピバレートおよびtert−ブチルパージエチルアセテートが挙げられる。本発明では、アゾ化合物を有機パーオキサイドとして用いることができる。アゾ化合物の具体例としては、アゾビスイソブチロニトリルおよびジメチルアゾイソブチレートが挙げられる。これらのうち、過酸化ベンゾイル、ならびにジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキサイド)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサンおよび1,4−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンのようなジアルキルパーオキサイドが好適に用いられる。
これら有機パーオキサイドは単独で用いても、それらの任意の組み合わせでもよい。使用する有機パーオキサイドの割合は、100重量部の未変性HNBRに対して、通常は、0.001〜約10重量部、好ましくは約0.01〜約5重量部、より好ましくは約0.1〜約2.5重量部の範囲内である。使用する有機パーオキサイドの割合がこの範囲内にあれば、官能基保有不飽和化合物の反応速度および得られる官能基保有ポリマーの種々の物性が互いに高いレベルで釣り合いがとれる。よって、有機パーオキサイドをこのような範囲内で使用することが好ましい。
グラフト変性反応については特に限定はなく、当該分野における自体公知の任意の方法に従って該反応を行うことができる。グラフト反応は、通常は0〜400℃、好ましくは60〜350℃の温度で行うことができる。反応時間は、通常は1分〜24時間、好ましくは30分〜10時間の範囲内である。反応の完了後、メタノールのような溶媒を反応系に大量に加えて、ポリマー形成体を沈殿させ、ポリマーをろ過によって回収し、洗浄し、次いで減圧下で乾燥させることができる。
(ii)光誘起ラジカル発生剤を利用する方法:光誘起ラジカル発生剤を利用する方法は、光誘起ラジカル発生剤を加えた後に、得られた混合物を紫外光に曝してラジカルを発生させる方法であり、従来公知の任意の方法を用い得る。光誘起ラジカル発生剤は、紫外光の照射によって活性化するのであれば、任意の物質でよい。その具体例には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトイン、ブチロイン、トルオイン、ベンジル、ベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイシブチル(isibutyl)フェノン、α,α−ジクロロ−4−フェノキシアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4−ビス(ジメチルアミノフェノン)および1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムのようなカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノサルファイドおよびテトラメチルチウラムジサルファイドのような硫黄化合物;アゾビスイソブチロニトリルおよびアゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリルのようなアゾ化合物;過酸化ベンゾイルおよびジ(t−ブチル)パーオキサイドのようなパーオキサイド化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドのようなアシルホスフィンオキシドが含まれる。使用する光誘起ラジカル発生剤の割合は、通常、0.001〜約10重量部、好ましくは約0.01〜約5重量部、より好ましくは約0.1〜約2.5重量部の範囲内である。
照射による方法:エネルギー線の照射による方法は公知の方法、α−線、β−線およびγ−線のような活性なエネルギー線を照射してラジカルを発生させる方法である。特に、効率、実用上および経済上の観点からは、紫外光の使用が望ましい。
加熱による方法:加熱によりラジカルを発生させる方法は、100〜390℃の範囲の温度で加熱することで実施する。公知の溶液法ならびに、溶融およびニーディング法のどちらも用いることができる。これらのうち、押出機などを使用して加熱中にせん断ストレスをかける、溶融およびニーディング法が、反応効率の観点から好ましい。
フィルム形成性ポリマーへ官能基を導入する方法は、特に限定されない。その例には、(a)不飽和結合の酸化による方法、(b)少なくとも一つの官能基を分子中に含む化合物を不飽和結合に付加反応することによる上述の方法、(c)本明細書で述べる、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基を導入すること、あるいは、上述した、NBRまたはHNBRポリマーのオレフィン性結合と不飽和、好ましくはモノ不飽和のカルボキシル反応体との反応、およびリビングカチオン開始ポリマーへの末端基付加の方法が挙げられる。あるいは、ポリマーは、塩素または臭素含有化合物を用いてハロゲン化され得る。次いで、ハロゲン化ポリマーは、単不飽和カルボン酸と反応され得る。ポリマーと単不飽和カルボン酸の反応物はまた、前述の熱「エン」反応を生じさせるように高温で接触され得る。あるいは、単不飽和カルボン酸は、フリーラジカル誘導グラフト化により、ポリマーと反応され得る。本発明の官能基化エラストマーは、触媒的に有効な量の、少なくとも1つの酸性アルキル化触媒の存在下でのヒドロキシ芳香族化合物との接触により官能基化され得る。次いで、アルキル化ヒドロキシ芳香族化合物は、アルデヒドおよびアミン試薬を用いるマンニッヒ塩基縮合による誘導体を形成するようにさらに反応し、マンニッヒ塩基縮合物を生成し得る。ポリマーを官能基化するためのさらに別の手段では、ポリマーは、コッホ条件下、触媒の存在下で一酸化炭素と接触され、カルボン酸基で置換されたポリマーを生成し得る。官能基化の上記方法に加えて、本発明のポリマーは、空気酸化、オゾン分解、ヒドロホルミル化、エポキシ化、およびクロロアミノ化の方法、または任意の他の方法(例えば、特開平6−172423)による同種の方法より官能基化され得る。
フルオロエラストマーフィルム形成剤
本明細書において有用なフィルム形成性ポリマーとして、フルオロカーボンエラストマー(フルオロエラストマー)が、炭化水素(ビニリデンフルオリド、ヘキサフルオロプロピレンを含む)から誘導され、そして多数の供給業者から市販されている。種々の型のフルオロエラストマーの詳細な議論は、「Rubber Chemistry and Technology」と題する1973年7月発行の雑誌(第46巻、第619−652頁)に掲載されているR.G.Arnold、A.L.BarneyおよびD.C.Thompsonによる論文に包含される。フルオロエラストマーは、原理的に、フルオロエラストマーに100%の伸長まで応力を加えた際に塑性変形が生じるか否かにより、熱可塑性フルオロポリマーと区別される。フルオロプラスチックは、100%の伸長で変形するので、本発明のエラストマー基材に不適当なコーティング材料である。
本明細書において用いられる代表的なフルオロエラストマーとしては、1,1−ジヒドロパーフルオロブチルアクリレートを含む1つ以上のフッ化モノマーから誘導されたポリマー;ビニリデンフルオリドとクロロトリフルオロエチレンとのコポリマー;ビニリデンフルオリドとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー;ビニリデンフルオリドとヒドロペンタフルオロプロピレンとのコポリマー;テトラフルオロエチレンとプロピレンとのコポリマー;ならびにビニリデンフルオリドと、ヘキサフルオロプロピレンと、テトラフルオロエチレンとのターポリマー;ビニリデンフルオリドと、テトラフルオロエチレンと、パーフルオロビニルエーテルとのターポリマー;ビニリデンフルオリドと、テトラフルオロエチレンと、プロピレンとのターポリマー;ビニリデンフルオリドと、ヒドロペンタフルオロプロピレンと、テトラフルオロエチレンとのターポリマーが挙げられる。本発明に従って改変された最も好ましいフルオロエラストマーは、Viton(登録商標)の名称(例えば、ビニリデンフルオリドとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー、またはビニリデンフルオリドと、テトラフルオロエチレンと、ヘキサフルオロプロピレンとのターポリマー)で市販されている。他の適切なフルオロエラストマーは、FLOREL(登録商標)の下、Dyneonから、およびTECHNIFLON(登録商標)の下、Ausimontから市販されている。
本明細書において利用される、グラフト官能基化フルオロエラストマーの実施形態のフィルム形成剤は、フルオロエラストマーポリマーとグラフト化剤との反応生成物である。グラフト化剤は、フルオロエラストマーに共有結合するグラフト結合基、および、硬化剤の反応基の1つに対して結合形成を生じる、少なくとも1つの活性水素含有基(例えば、ヒドロキシル基、チオール基、またはカルボキシル基)を含む。グラフト修飾されたフルオロエラストマーは、エラストマー基材をコーティングする時点で、混合物のポットライフの時間内(ゲル化の前)に、混合物中で硬化剤と合わされる。
フルオロエラストマーのためのグラフト化剤は、1つのグラフト結合基および1つの活性水素保有基を含む。好ましいグラフト化剤は、1つの第一級アミン基および1つの活性水素含有基を含む。例としては、ヒドロキシアミン、アミノイソシアネート[例えば、(RNCHCHNCO(式中、Rは、例えば、水素またはヒドロカルビル基、ヒドロキシアルキルアミン、アミノカルボキシレート、アミノシラン、アミノシラノール、アミノチオールなどである)]が挙げられる。グラフト結合基として第一級アミンを含まない他の適切なグラフト化剤は、メルカプトアルコールおよびメルカプトシラノールのようなメルカプトヒドロキシ、メルカプトチオールなどである。好ましいグラフト化剤は、比較的穏やかな温度(60℃未満)でフルオロエラストマーにグラフトし、そしてモノマー、オリゴマー、ポリマーであり得、そして少なくとも1つの活性水素含有基および1を超えない第一級アミン基を含むが、必要に応じて、第二級アミン基または第三級アミン基、またはフルオロエラストマーをグラフト結合および架橋することができない他の基を含み得る。任意の第二級アミンは、フルオロエラストマーに対する第一級アミングラフト結合基のグラフト反応の速度を増加すると考えられる。グラフト化剤の具体例としては、種々のヒドロキシアルキルアミン(例えば、3−アミノ−1−プロパノール)、アミノアルキルシラノール(例えば、アミノアルキルシラントリオール、または、アルコキシシラン基の加水分解を触媒して反応性シラントリオールを生成し得る少なくとも1つの塩基性窒素を各分子内に含む、前駆体アミノアルキルアルコキシシラン);アミン−N−オキシド、アミノ(ヒドロキシ)カルボン酸、アミド(ヒドロキシ)アミン、ポリオキシアルキレンポリエーテルモノ(第一級)アミン、およびアミン末端ポリオールが挙げられる。このようなアミン末端ポリオールは、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ドデシルオキシドまたはスチレンオキシドのような、アルキレンオキシドのアミノ出発化合物への重付加のための公知のアミノ化方法により作製され得る。一般的に、ポリエーテルポリオールのようなポリオールは、ニッケル含有触媒(例えば、Ni/Cu/Cr触媒)のような、触媒の存在下でアンモニアを用いてアミノ化される。公知の方法は、米国特許第4,960,942号;米国特許第4,973,761号;米国特許第5,003,107号;米国特許第5,352,835号;米国特許第5,422,042号;および米国特許第5,457,147号(全てが本明細書中で参考として援用される)に教示される。用いられる出発化合物は、アンモニア、あるいはアミン基を含み、反応生成物中に1を超えない第一級アミノ基を提供する化合物[例えば、エチレンジアミンのような脂肪族ポリアミン、エチレンジアミンオリゴマー(例えば、ジエチレンポリアミン、トリエチレンテトラミンまたはペンタエチレンヘキサミン)、エタノールアミン、1,3−プロピレンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、1,3−または1,4−ブチレンジアミン、1,2−、1,3−、1,4−、1,5−、1,6−ヘキサメチレンジアミンなど]である。ポリエーテル−モノアミンに適切なポリエーテルブロックとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのコポリマー、ポリ(1,2−ブチレングリコール)、およびポリ(テトラメチレングリコール)が挙げられる。
好ましいアミノヒドロキシグラフト化剤化合物は、約1000未満、好ましくは500、より好ましくは250未満の分子量を有する化合物である。より好ましいアミノヒドロキシグラフト化剤は、2〜16個の炭素原子を含む。約1000を超える分子量を有するグラフト化剤を用いると、コーティングの可撓性および耐溶媒性の度合いが低下する。より好ましいグラフト化剤の例としては、3−アミノ−1−プロパノール、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノールおよびアミノアルキルシラノール(例えば、アミノプロピルシラントリオール)が挙げられる。用いられるグラフト化剤の有効な量は、フルオロエラストマーの重量に対して、1〜20重量%、好ましくは2〜10重量%、より好ましくは3〜7重量%である。
あまり好ましくはないが、ヒドロキシル官能基化フルオロエラストマーを提供する他のグラフト化剤の例としては、グラフト付加反応によりヒドロキシル官能性エチレン性不飽和化合物をグラフトするものが挙げられる。前述のメルカプトヒドロキシ化合物およびメルカプトカルボキシ化合物が適切である。ヒドロキシ基またはカルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーが適切であり、そしてこれらとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、メタクリル酸、および無水マレイン酸が挙げられるがこれらに限定されず、ポリオレフィンのような熱可塑性物質において広範に実施されるポリマーのリアクティブプロセシングの分野で公知の技術により、フリーラジカル開始剤の存在下でフルオロエラストマーにグラフトされ得る。
別の実施形態では、フルオロカーボンエラストマーは、必要に応じてヒドロキシ基を含む、ヒドロキシ(アルキル)メルカプタン、アミノチオールまたはメルカプトカルボン酸を用いる付加反応により、グラフト官能基化される。フルオロエラストマーへの付加のための結合ヒドロキシル基を生じる適切なメルカプタンとしては、メルカプトエタノールのようなヒドロキシメルカプタン、ヒドロキシアルキルメルカプタン(例えば、1−メルカプト−3−プロパノール、メルカプトエタノールアミン、1−メルカプト−4−ブタノール)、α−メルカプト−ω−ヒドロキシオリゴエチレンオキシド(例えば、α−メルカプト,ω−ヒドロキシオクタエチレングリコール)、または、対応するエチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリエーテルが挙げられる。加水分解の際にヒドロキシ基を生じるメルカプトアルコキシ化合物としては、2〜3例を挙げると、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランおよびγ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシランが挙げられる。適切なメルカプトカルボン酸および対応するエステルは、前述のメルカプト酢酸およびメルカプト酢酸のエステル、メルカプトプロピオン酸およびエステル、メルカプト酪酸およびエステルである。水酸基を含むエステル化化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、オクタエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコールおよびN−メチルジエタノールアミンが挙げられる。
メルカプト化合物(特にメルカプトアルコール)は、引き続く硬化に効果的な量で、本明細書において適切な任意の炭化水素エラストマーにグラフト結合され得る。メルカプト化合物を、穏やかな温度または周囲温度で配合し得ることは、官能基化フルオロエラストマーの調製においてとりわけ有用である。フルオロエラストマーにグラフトするためのメルカプト化合物の添加は、必要に応じて、溶液状のフリーラジカル開始剤を、開始剤の分解温度よりも高い温度で用いて[例えば、アゾ開始剤(例えば、アゾビスイソブチロニトリルおよびアゾビスシクロヘキサンニトリル)、過酸化物(例えば、ジラウロイルパーオキシド)、ベンズピナコールシリルエーテルを用いて]、あるいはUVまたは可視光の存在下で光開始剤を用いて実行され得る。ジアシルパーオキシド(特に、ジラウロイルパーオキシド)、ジデカノイルパーオキシド、ジ(3,3,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジスクシノイパーオキシドおよびジベンゾイルパーオキシドが適切である。フリーラジカル開始剤の有効量は、メルカプト化合物の重量に基づいて、0.5〜10重量%である。好ましいマルカプト(marcapto)化合物は、メルカプトエタノールのようなメルカプトアルコールである。出発メルカプト化合物の有効量は、フルオロエラストマーの重量に対して3%〜10%であり、これは、フルオロエラストマーに対して1重量%〜5重量%の結合ヒドロキシル基のレベルで結合するのに十分である。
より好ましいフルオロエラストマーグラフト化剤は、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール[NH−CH−CH−NH−CH−CH−OH(CAS番号111−41−1)およびアミノプロピルシラントリオール(例えば、SIA0608.0(CAS番号29159−37−3)として、Gelest,Inc.により22〜25%水溶液で提供される)]のような、室温でフルオロエラストマーにグラフトするものである。
架橋可能なα−オレフィンコポリマーエラストマー
ポリ(オレフィン/アクリル酸エステル/カルボキシレート)コポリマーフィルム形成性エラストマーは、少なくとも1つのα−オレフィンを、少なくとも1つのC−C18アルキル(メタ)アクリレート、ならびにポリイソシアネート、カルボジイミドのような材料と架橋を形成しやすい少量の不飽和官能基保有コモノマーおよび他の試薬と重合させることにより作製されるコポリマーである。官能基保有コモノマーは、エチレン性不飽和基および酸、ヒドロキシ、エポキシ、イソシアネート、アミン、オキサゾリン、ジエンまたは他の反応基を保有する基を含み得る。このような官能基化モノマーの非存在下では、架橋部位は、例えば、ペンダントエステル基の部分的加水分解により、α−オレフィンエステルコポリマー内に生成され得る。このようなオレフィンコポリマーフィルム形成性エラストマーの重合に適切なα−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、オクテンなど(これらの組合せを含む)が挙げられる。C−Cα−オレフィンが好ましく、エチレンが最も好ましい。
官能基化コモノマーは、活性水素、ハロゲン、または、例えば、アミド交換反応または加水分解により活性水素保有基に転化され得る基を保有するコポリマー化したα−オレフィンポリマーを提供するか、あるいは、逆に、官能基化コモノマーは、活性水素基を保有する架橋剤と反応性の基を含む。アルキルまたはアルコキシ(メタ)アクリレート(酸およびエステル)は、代表的な官能基化コモノマーである。アルキル基の具体例は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基およびデシル基;シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基およびシクロヘキシル基);アリール基(例えば、フェニル基およびトリル基);ならびにアラルキル基(例えば、ベンジル基およびネオフィル基)である。
アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基およびオクトキシ基が挙げられる。
α−オレフィンと必要に応じて混合される、適切なアルキルまたはアルコキシ(メタ)アクリレートとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシアクリレート(2−ethyle−hexy acrylate)、メトキシアクリレート、エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、アクリルアミドおよびメタクリルアミドなど、またはこれらの混合物が挙げられる。α−オレフィンモノマーと共重合可能である官能性エチレン性不飽和モノマーの具体例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびマレイン酸)およびそれらの塩、不飽和カルボン酸のアルキルエステル(例えば、メチルアクリレートおよびブチルアクリレート)が挙げられる。
好ましいα−オレフィン−アクリル酸エステルコポリマーゴムは、酸単位(例えば、(メタ)アクリル酸またはマレイン酸に由来する)、あるいは無水物単位(例えば、無水マレイン酸に由来する)、あるいは部分的エステル単位(例えば、モノエチルマレエートに由来する)のような、不飽和カルボン酸モノマー単位を含む。好ましい実施形態では、ポリマーは、エチレンと、C−Cアルキルアクリレートと、カルボン酸モノマー単位とのターポリマーであり;より好ましくは、このようなターポリマーは、少なくとも約30モルパーセントのエチレン、約10〜約69.5モルパーセントのモノエチルマレエートを含む。全ての場合において、α−オレフィンアクリレートゴムは、本質的に非結晶であり、そして室温よりも低い(すなわち、約20℃未満)のガラス転移温度(Tg)を有することが好ましい。
官能性の酸、ヒドロキシ、エポキシ、イソシアネート、アミン、オキサゾリン、ジエンまたは他の反応性官能基を付加するための反応基を含む他のコモノマーとしては、非共役ジエン(例えば、アルキリデンノルボルネン、アルケニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエンおよびこれらのダイマー)ならびに共役ジエン(例えば、ブタジエンおよびイソプレン)のようなジエンモノマーが挙げられる。ジヒドロジシクロペンタジエニル基含有(メタ)アクリレートの例としては、ジヒドロジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレートおよびジヒドロジシクロペンタジエニルオキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
官能性コモノマーのさらなる例としては、4〜10個の炭素原子を有するα,β−オレフィン不飽和カルボン酸のN−アルキロールおよびN−アルコキシアミド(例えば、N−メチロールアクリルアミド、N−エタノールアクリルアミド、N−プロパノールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−エタノールメタクリルアミド、n−ブトキシアクリルアミドおよびイソブトキシアクリルアミド、N−メチロールマレイミド、N−メチロールマレアミド、N−メチロールマレアミド酸、N−メチロールマレアミド酸エステル)、ビニル芳香族酸のN−アルキロールアミド(例えば、N−メチロール−p−ビニルベンズアミドなど)などが挙げられる。
活性水素と反応性であるか、またはそれ自体が活性水素基を含有するかのいずれかである基を保有する官能性コモノマーの他の例は、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレートおよびグリシジルアクリレートを含む、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物である。活性ハロゲン含有エチレン性不飽和化合物の具体例としては、ビニルベンジルクロリド、ビニルベンジルブロミド、2−クロロエチルビニルエーテル、ビニルクロロアセテート、ビニルクロロプロピオネート、アリルクロロアセテート、アリルクロロプロピオネート、2−クロロエチルアクリレート、2−クロロエチルメタクリレート、クロロメチルビニルケトンおよび2−クロロアセトキシメチル−5−ノルボルネンが挙げられる。一般的なカルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−ペンテン酸、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸が挙げられる。
他のエチレン性不飽和(メタ)アクリル酸エステルコモノマーの例としては、オクチルメタクリレート;シアノ置換アルキル(メタ)アクリレート(例えば、2−シアノエチルアクリレート、3−シアノプロピルアクリレートおよび4−シアノブチルアクリレート);アミノ置換アルキル(メタ)アクリレート(例えば、ジエチルアミノエチルアクリレート);フッ素含有アクリレート(例えば、1,1,1−トリフルオロエチルアクリレート);ヒドロキシル基置換アルキル(メタ)アクリレート(例えば、ヒドロキシエチルアクリレート);アルキルビニルケトン(例えば、メチルビニルケトン);ビニルまたはアリルエーテル(例えば、ビニルエチルエーテルおよびアリメチル(allymethyl)エーテル);ビニル芳香族化合物(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレンおよびビニルトルエン);ビニルアミド(例えば、アクリルアミド、メタクリルアミドおよびN−メチロールアクリルアミド);ならびにエチレン、プロピレン、ビニルクロリド、ビニリデンクロリド、ビニルフルオリド、ビニリデンフルオリド、ビニルアセテート、アルキルフマレートなどが挙げられる。
(アクリル酸系エラストマー)
官能基化アクリレートエラストマーは、ガラス転移温度が−10℃未満であれば適切であり、主要量(全ポリマー重量に対して50重量%よりも多い)の、以下の一般構造
Figure 0004514191
(式中、Rは、水素またはメチルであり;Rは、C−C20アルキル、C−Cアルキル、C−Cアルコキシアルキル、C−Cアルキルチオアルキル、C−Cシアノアルキルを表す)を有する1以上の共重合可能なα,β−エチレン性不飽和エステルモノマー、および少量の活性水素基保有コモノマーまたは活性保有基がグラフト結合された官能性部位から誘導される付加重合体として定義される。アクリレートは、種々の商業的供給元から、固体梱包物でおよびエマルジョンまたはラテックスとして入手可能である。全体のアクリレートゴム重量に対して約35%までの少量の硬化コポリマーまたはTg上昇コポリマー(例えば、2〜3例を挙げると、メチルメタクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、ビニリデンクロリドおよび/またはスチレン)が挙げられ得る。望ましくは、活性水素または活性水素含有硬化剤と反応する基を有する、官能基保有コモノマーは、不飽和モノカルボン酸(例えば、アクリル酸またはメタクリル酸)またはポリカルボン酸(例えば、イタコン酸、シトラコン酸など)またはポリカルボン酸の無水物である。
単独でおよび組み合わせて適切なアクリル系モノマーまたはメタクリル系モノマーの具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、エチルヘキシルアクリレートなどが挙げられる。好ましいコポリマーは、1または2の異なる共重合可能なモノマー(それぞれ、Rが水素であり;かつRがC−CアルキルまたはC−Cアルコキシアルキル(これらはそれぞれ、第一級、第二級または第三級のC原子を含んでもよい)である構造(I)を有する)を含む。より好ましいC−Cアルキルアクリレートの例は、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、イソアミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−メチルペンチルアクリレート、n−オクチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレート;好ましいC−Cアルコキシアルキルアクリレートの例は、メトキシアクリレートおよびエトキシアクリレートであり;好ましいアルキルチオアルキルアクリレートの例は、メチルチオエチルアクリレートであり;好ましいC−Cシアノアルキルアクリレートの例は、シアノエチルアクリレートおよびシアノプロピルアクリレートであり;ならびに上記の2つ以上の混合物が用いられ得る。
アクリル系エラストマーに好ましい活性水素保有コモノマーとしては、活性水素を保有する上記の官能性コモノマーの多くが挙げられ、これらのいくつかをここで繰り返すと、カルボン酸無水物、カルボンアミド、N置換カルボンアミド、アルデヒド、アルキルおよびアリールケト、ヒドロキシルラジカル、アリル塩素ラジカル、メチロール、マレイミド、ビスマリイミド(bis−maliimide)、アルキルN−メチロール、フェノールメチロール、チオールラジカル、アミノラジカル、イソシアネートラジカル、アルコキシアルキルラジカル、オキシランラジカルなどを含有するコモノマーが挙げられる。α,β−不飽和ヒドロキシカルボン酸またはジカルボン酸の無水物が好ましい。ポリマーが、アクリレートエステルと、カルボン酸または無水物コモノマーとのコポリマーのみである場合、これらは、望ましくは、アクリレートエステル由来の約90〜約98モルパーセントの繰り返し単位、より望ましくは、約92〜約97または98モルパーセントのエステルと、2〜10%のカルボン酸または無水物、より好ましくは3〜8%のカルボン酸または無水物とを有する。
フィルム形成剤ポリマーの付加重合の間にランダムに組み込まれる官能性コモノマーの例としては、グリシジルメタクリレート、アクリル酸およびメタクリル酸、無水マレイン酸、N−アルキルマレイミド、アクリルアミド、N−アルコキシアルキルアクリルアミド(例えば、N−イソブトキシメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミドなど)、メチルビニルケトン、アクロレイン、ビニルイソシアネート、ヒドロキシアルキルアクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートなど)が挙げられる。2つ以上のこのような官能性モノマーの混合物もまた含まれる。
いわゆるコアシェルポリマーは、アクリル系エラストマーに含まれる。ソフトシェルコポリマーに有用なゴム状コポリマーとしては、少なくとも1つの、そのホモポリマーのTgが−10℃未満であるアクリル系モノマーと、第2の共重合可能な官能性モノマーのコポリマー組成物が挙げられる。これらのモノマーは、得られるアクリル酸系コポリマーのTgが約−10℃を超えて上昇しないように選択された低Tgアクリル酸系コモノマーに対して少ない割合の上記モノビニルまたはビニリデンモノマー(例えば、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレートなど)の存在下で、重合され得る。
シェルコポリマーは付加重合体であり、広範な組成範囲にわたり変化し得るが、殆どの目的に関して、コポリマーは、約99.9〜約95重量%の少なくとも1つのゴム状モノマーおよび約0.1〜約5重量%の第2の共重合可能な官能性モノマーを含む。好ましいシェルポリマーは、アルキルアクリレートと2−ヒドロキシエチルメタクリレートとのコポリマーである。
連続的に重合した官能基化付加重合体ベースの本発明のエラストマーコーティングは、2つのガラス転移温度(その1つは0℃より低く、もう1つは0℃より高い)を示し得る。ゴム状のシェルコポリマー成分の量および硬成分とゴム状成分の比率は変動し得るが、殆どの目的に関して、ゴム状のシェルコポリマー成分に対する硬質コポリマー成分の割合は1未満であり、このことは、ゴム状成分の量が、50重量%を超える、好ましくは60重量%〜80重量%である主要比率であることを意味する。
二官能(ハロ、カルボキシ)基化アクリル酸系付加重合体はまた、本発明の耐有機溶媒性の実施態様のためのフィルム形成剤として有用であり、そしてアクリル酸エステルモノマーまたはモノマー混合物に由来する繰返し単位を含み、そしてこれはエラストマーにおいて−20℃未満のガラス転移温度を示す。官能基は、約0.1重量%〜約30重量%、好ましくは0.2重量%〜約15重量%の活性ハロゲン含有コモノマーと、約0.1重量%〜約20重量%のカルボキシル基含有コモノマーとの組合せから提供される。ハロゲン含有コモノマーの好ましいレベルにおいて、ハロゲン含量は、官能基化アクリル酸系ゴムの約0.1重量%〜約5重量%である。ハロゲン含有コモノマーのハロゲン基は、塩素、臭素またはヨウ素であり得る。塩素含有コモノマーは、経済性、入手の可能性、および安全性の理由から好ましい。
ハロゲン含有コモノマーの例は、ビニルクロロアセテート、ビニルブロモアセテート、アリルクロロアセテート、ビニルクロロプロピオネート、ビニルクロロブチレート、ビニルブロモブチレート、2−クロロエチルアクリレート、3−クロロプロピルアクリレート、4−クロロブチルアクリレート、2−クロロエチルメタクリレート、2−ブロモエチルアクリレート、2−ヨードエチルアクリレート、2−クロロエチルビニルエーテル、クロロメチルビニルケトン、4−クロロ−2−ブテニルアクリレート、ビニルベンジルクロリド、5−クロロメチル−2−ノルボルネン、5−(α−クロロアセトキシメチル)−2−ノルボルネン、5−(α,β−ジクロロプロピオニルメチル)−2−ノルボルネンなどである。好ましいモノマーは、ビニルクロロアセテート、アリルクロロアセテート、2−クロロエチルアクリレート、2−クロロエチルビニルエーテル、ビニルベンジルクロリド、5−クロロメチル−2−ノルボルネンおよび5−クロロアセトキシメチル−2−ノルボルネンである。
アクリル酸系ゴムに好ましい活性水素保有コモノマーは、約0.1重量%〜約20重量%、好ましくは、0.2%〜約10%、より好ましくは2重量%〜約6重量%の少なくとも1つのカルボキシル基含有コモノマーが存在する。カルボキシルモノマーは、好ましくはモノカルボン酸であるが、ポリカルボン酸であってもよい。好ましいカルボキシルコモノマーは、3〜約8の炭素原子を含む。このような好ましいコモノマーの例は、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、β,β−ジメチルアクリル酸、クロトン酸、2−ペンテン酸、2−ヘキセン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸などである。最も好ましいカルボキシルコモノマーは、モノカルボン酸モノマー(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸など)である。
官能基含有コモノマーは、最も簡便には、アクリレートエラストマーの付加重合の間に、上記で紹介したように組み込まれる。懸濁法、エマルジョン法、溶液法およびバルク法による重合が適切である。これらの重合は、フリーラジカル開始剤を用いて開始される。エマルジョン重合法が好ましい。当該分野および文献で公知である、種々の従来のセッケン、乳化剤および界面活性剤は、エマルジョン重合される官能性アクリレートゴム合成に利用され得る。二官能基化アクリレートエラストマーの重量平均分子量は、一般的に、100,000よりも大きい。市販グレードの官能基化アクリル酸系ゴムは、HYTEMP(登録商標)の下Zeon Chemicalsから入手可能である。
活性水素官能基を含む種々のα,β−不飽和C−Cアルキルエステルコポリマーラテックスが公知であり、種々の商業的供給元から入手可能である。好ましいアクリル酸系ゴムラテックスは、HYCARまたはHYSRETCH(商標)の下、Noveon(登録商標)から入手可能である。20℃未満のTgを示す、n−ブチルアクリレート、アクリロニトリル、N−メチロールアクリルアミドおよびイタコン酸のエマルジョン重合コポリマーは、水性コーティングの実施態様において使用するのに好ましいアクリル酸系フィルム形成剤である。
架橋可能なα−オレフィンコポリマー
ポリ(オレフィン/アクリル酸エステル/カルボキシレート)コポリマーは、未硬化では熱可塑性なので、本明細書において使用するのに適した可撓性を有する。これらは主に、少なくとも1つのα−オレフィンを、少なくとも1つのC−C18アルキル(メタ)アクリレート、ならびに、ポリイソシアネート、カルボジイミド、および他の硬化剤のような物質と架橋を形成しやすい、少量の不飽和のプロトン性官能基保有コモノマーと重合することにより作製されるコポリマーである。官能基保有コモノマーは、エチレン性不飽和基と、酸、ヒドロキシ、エポキシ、イソシアネート、アミン、オキサゾリン、ジエンまたは他の反応基を保有する基とを含み得る。このような官能基化モノマーの非存在下では、架橋部位は、例えば、ペンダントエステル基の部分的加水分解により、a−オレフィン−エステル−コポリマー内に生成され得る。このようなオレフィンコポリマーフィルム形成性エラストマーの重合に適切なa−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、オクテンなど(これらの組合せを含む)が挙げられる。C−Cα−オレフィンが好ましく、そしてエチレンが最も好ましい。
活性水素基保有官能性コモノマーの他の例は、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレートおよびグリシジルアクリレートを含む、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物である。活性ハロゲン含有エチレン性不飽和化合物の具体例としては、ビニルベンジルクロリド、ビニルベンジルブロミド、2−クロロエチルビニルエーテル、ビニルクロロアセテート、ビニルクロロプロピオネート、アリルクロロアセテート、アリルクロロプロピオネート、2−クロロエチルアクリレート、2−クロロエチルメタクリレート、クロロメチルビニルケトンおよび2−クロロアセトキシメチル−5−ノルボルネンが挙げられる。カルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−ペンテン酸、マレイン酸、フマル酸、およびイタコン酸が挙げられる。
エチレン性不飽和(メタ)アクリル酸エステルコモノマーの例としては、オクチルメタクリレート;シアノ置換アルキル(メタ)アクリレート(例えば、2−シアノエチルアクリレート、3−シアノプロピルアクリレートおよび4−シアノブチルアクリレート);アミノ置換アルキル(メタ)アクリレート(例えば、ジエチルアミノエチルアクリレート);フッ素含有アクリレート(例えば、1,1,1−トリフルオロエチルアクリレート);ヒドロキシル基置換アルキル(メタ)アクリレート(例えば、ヒドロキシエチルアクリレート);アルキルビニルケトン(例えば、メチルビニルケトン);ビニルまたはアリルエーテル(例えば、ビニルエチルエーテルおよびアリメチルエーテル(ally methyl ether));ビニル芳香族化合物(例えば、スチレン、a−メチルスチレン、クロロスチレンおよびビニルトルエン);ビニルアミド(例えば、アクリルアミド、メタクリルアミドおよびN−メチロールアクリルアミド);ならびにエチレン、プロピレン、ビニルクロリド、ビニリデンクロリド、ビニルフルオリド、ビニリデンフルオリド、ビニルアセテート、ビニルフマレートなどが挙げられる。
好ましいオレフィン/アクリル酸エステルコポリマーゴムは、例えば、(メタ)アクリル酸またはマレイン酸に由来する酸単位、例えば、無水マレイン酸に由来する無水物単位、あるいは、例えば、モノエチルマレエートに由来する部分的エステル単位のような不飽和カルボン酸モノマー単位を含む。好ましい実施形態では、ポリマーは、エチレンと、C−Cアルキルアクリレートと、カルボン酸モノマー単位とのターポリマーであり;より好ましくは、このようなターポリマーは、少なくとも約30モルパーセントのエチレン、約10〜約69.5モルパーセントのモノエチルマレエートを含む。全ての場合において、α−オレフィンアクリレートゴムは、本質的に非結晶であり、そして約20℃未満のガラス転移温度(Tg)を有することが好ましい。エチレン−カルボキシレートコポリマーは、VAMAC(登録商標)の下で市販されている。
アクリル酸およびアクリレートがα−オレフィンコポリマー骨格の一部である場合、アミド交換反応は、例えば、アミノアルコール(例えば、2−アミノ−1−エタノール)を用いることにより、ペンダントヒドロキシル官能性を生じることが知られている、溶融加工技術で作製され得る。ペンダントヒドロキシルによるさらなる反応(すなわち、別のアクリレート結合とのエステル交換)が生じ、結果として架橋および生成物の粘度の増加を生じ得る。
ポリウレタン
硬化可能なウレタンを含むキャスト可能なフィルム形成剤が、フィルム形成剤成分として利用され得る。活性水素官能基化ポリマーは、飽和プレポリマーであり、脂肪族ポリイソシアネートを用いて硬化される。ポリウレタンの硬化ガラス転移温度は0℃未満に限定され、そしてトリオール、テトラオールまたはそれ以上の数のOH官能性の包含により光架橋される。従って、鎖伸長ポリオールは、0℃以下のガラス転移温度を示す、ヒドロキシ末端水素化ポリブタジエンポリオールホモポリマーおよびコポリマーのようなものに限定される。これらの内、ポリTHF、ポリエステルジオール、ポリプロピレングリコールなどが当業者によく知られており、そして市販されている。従来の硬化剤および触媒が用いられる。米国特許第4,669,517号は、ポリウレタンの優れた結合を得るために、調製された加硫処理後のゴム表面に、放射性ポリウレタンを付与するための適切な方法を開示している。加硫処理後の表面を調製するための方法は、キャスト可能なポリウレタン放射コーティングを付与するために適用可能である。シアヌル酸は、熱伝導性金属粒子を含むポリウレタン反応混合物の付与の前に、ポリブタジエンポリオールが配合されたゴム表面に付与される。ポリウレタン反応混合物は、周囲温度で硬化する。
アクリロウレタン
本明細書に記載するようなフィルム形成剤の要件を満たすウレタン修飾アクリル酸系材料もまた意図される。これらは、水分、熱または光により活性化される硬化に適合し得る。このようなウレタン修飾アクリレートのガラス転移温度は、℃以下であるべきであり、かつ主要量のC−Cアクリル酸またはメタクリル酸エステルを含むべきである。本発明に使用できる好ましいウレタン−修飾アクリル酸系樹脂の例は、式(I)で表されるウレタン修飾アクリル樹脂の場合、60〜70モルのメチル−、エチル−またはブチル−アクリレートを、10〜50モルのメタクリル酸および30〜80モルの2−ヒドロキシメチルメタクリレートと共重合することにより製造されるアクリル酸系コポリマーである。ヒドロキシル基およびカルボキシル基のいくつかまたは全ては、α,β−エチレン性不飽和イソシアネート(例えば、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(2−イソシアネートエチルメタクリレート))との反応においてキャップされる。この材料は、水分硬化性であり、そして従来の光開始剤の取り込みによってUVにより硬化可能である。水分硬化性アクリロウレタンの実施形態では、2−ヒドロキシエチルメタクリレート単位由来の、少なくとも10モル%、好ましくは、少なくとも50モル%のヒドロキシル基が、メタクリロイルオキシエチルイソシアネートと反応していることが好ましい。α,β−エチレン性不飽和イソシアネートは、好ましくは、イソシアネートとヒドロキシル含有モノマー(例えば、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートおよび4−ヒドロキシブチルメタクリレート)の反応生成物ベースであり、必要に応じて3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシランまたは3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、第一級、第二級アミン(例えば、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、第二級アミン(例えば、N−メチル−またはN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、縮合アミノアルキルシラン(例えば、ビス(3−アミノプロピル)テトラメトキシまたはテトラエトキシジシロキサンNH(CH−−Si(OCH−−O−−(CHO)Si−(CHNH)、ポリグリコールエーテル修飾アミノシラン(例えば、登録商標「Dynasylan 121」の下で販売されているもの)、およびトリアミノ官能性プロピルトリメトキシシラン(例えば、Huls AGから入手可能な「Dynasylan TRIAMO」)と共に用いられ得る。2または3個のケイ素原子を有する類似のシランもまた用いられ得る。
マレイン酸化エラストマー材料
ポリウレタンベースのマレイン酸化付加重合体の、種々のポリマーブレンド、ポリマーアロイおよび動的加硫処理された複合材料(例えば、マレイン酸化ポリプロピレン、マレイン酸化スチレン−エチレン−ブテン−スチレン−ブロックコポリマー、マレイン酸化スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、マレイン酸化エチレン−プロピレンゴムおよびこれらのブレンド)は、本発明の官能基化フィルム形成性エラストマーとして利用され得る。マレイン酸化エラストマーは、適切な有機溶媒系に溶解され、好ましくは、使用される溶媒の一部に予め分散させた熱伝導性金属粒子と混合される。
エチレンビニルエステルコポリマー
フィルム形成性で溶媒可溶性のOH−官能性エチレンコポリマーは、カルボキシルまたはヒドロキシル官能基を含む種々のグレードで入手可能であり、これらもまた、本明細書において用いられるフィルム形成剤として適切である。従来より、これらのポリマーのいくつかは、架橋可能なホットメルト接着剤として用いられているが、これらのポリマーは、高温粘着性は比較的低いが、本明細書における周囲温度硬化型放射コーティングフィルムに容易に適合可能である。ヒドロキシル官能性を含むエチレンビニルエステルポリマーは、放射コーティング組成物における使用に適合し得、非ブロックイソシアネートを用いて硬化され得、そして硬化したコーティングが流動する温度を超えない特定の環境温度で十分な特性を提供する。OH基を含有するエチレンビニルアセテートコポリマーは、エチレンおよびビニルアルコール、ならびに必要に応じて、ビニルアセテートのモノマー単位を有するポリマーをベースとし、融解粘度は、好ましくは180℃で4〜40Pa・sである。エチレンビニルアルコールコポリマーは、好ましくは少なくとも5重量%のビニルアルコール単位を有する。1つの例は、10重量%ビニルアルコール、88.75重量%エチレン、1.2重量%ビニルアセテートを有するターポリマー(粘度(180℃にて20Pa・s)、MFR(125℃にて、325gmの荷重下で、6.4gm/10分))である。融点は、101.5℃(DSCによる)である。別のターポリマーは、13.7重量%ビニルアルコール、82.3重量%エチレン、および4.0重量%ビニルアセテートを含む(粘度(180℃にて、5.8Pa・s)、MFR(125℃にて、325gm下(例、30.4gm/10分))、DSC融点91℃)。
部分的に官能基化されたポリマー型および部分的に官能基化されていないポリマー型を含む混合物または相互貫入ネットワークのフィルム形成剤は、本明細書における使用に適切である。官能基化ポリマーとブレンド可能なものは、ランダムコポリマーおよびブロックコポリマーとしてのオレフィンゴムポリマー(例えば、SBS、EBS、EPMおよびEPDM)、水素化ポリジエンコポリマー、アクリル酸系ゴムおよび上記のフィルム形成剤の他のものである。例として、官能基化されていないポリマーフィルム形成剤は、部分的に加水分解されたエチレンビニルアセテートポリマーと、それぞれ10〜90重量%〜90〜10重量%の割合でブレンドし、本明細書中に開示される任意の適切な硬化剤およびその等価物を用いて硬化し得る。
官能基化EPMおよびEPDMエラストマー
官能基化EPMおよびEPDMエラストマーは、放射コーティングにおけるフィルム形成剤として使用される適切なフィルム形成性エラストマーである。これらは、ポリエン(通常、非共役ジエンコモノマー)と共重合された2つ以上のα−モノオレフィンを含む。有用なポリエンとしては、5−エチリデン−2−ノルボルネン;1,4−ヘキサジエン;5−メチレン−2−ノルボルネン;1,6−オクタジエン;5−メチル−1,4−ヘキサジエン;3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン;1,3−シクロペンタジエン;1,4−シクロヘキサジエン;ジシクロペンタジエン;5−ビニル−2−ノルボルネンなど;またはこれらの組合せが挙げられる。EPMおよびEPDM官能基化エラストマーに好ましいポリエンは、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネンおよび1,4−ヘキサジエンである。官能基は、上記の従来の経路により、および本明細書中に開示されるメタセシス経路により、配合され得る。
本発明において開示される方法の1つの局面では、有機酸官能性(例えば、カルボキシル官能性、脂肪族または芳香族ヒドロキシル官能性など)、および無機酸官能性(例えば、スルホン酸官能性、リン酸官能性など)を含むポリマーの作製に特に有用なスキームが提供される。
このようなスキームの1つを、ペンダントカルボキシル、ヒドロキシルまたは立体障害にならないペンダントオレフィン性官能基を組み込むために、EPMおよびEPDMゴムについて以下に例示する。
Figure 0004514191
(式中、nは市販のEPDMのエチレン繰り返し単位の通常の数を表し、mはプロピレン繰り返し単位の通常の数を表し、oは通常のジエンモノマー繰り返し単位の数を表し、pはマレイン酸ジシクロペンタジエンの1〜100の繰り返し単位の数を表す。)
EPDMを変性するための上記に例示したものと同じアプローチを用いて、ビニル不飽和を含むブタジエン−アクリロニトリルコポリマー等の共役ジエンポリマー中に官能基を取り込むことができる。
(B)硬化剤成分
周囲温度硬化剤は、(1)少なくとも1つの活性水素保有基および同一の活性水素基であるか異なる架橋基である1つの架橋基、または(2)活性水素基と反応する少なくとも1つの基および活性水素基と反応するかもしくは異なる架橋基と反応する1つの架橋基のいずれかを含む多官能性硬化成分である。キャスト可能なポリウレタンまたはウレタンアクリレート(アクリロウレタン)の場合、硬化相互作用は、共硬化するポリアミンを有していてもよいポリオールおよびポリイソシアネートまたはポリイソシアネートプレポリマーおよびまたはアクリレート部分上のエチレン性不飽和基の間である。前記硬化成分は、ポリイソシアネート、鎖伸長ポリイソシアネート、重合性イソシアネートポリオール付加物、ポリカルボジイミド、多官能性オキサゾリン、多官能性オキサジン、多官能性イミダゾリン、フェノール性ノボラック、フェノール性レゾール、アミノ樹脂およびアミノ(アルコキシ)シランから選択される。好ましい硬化成分は、少なくとも1つのイソシアネート基もしくはイソシアネート基保有基もしくは架橋基と反応する官能基またはそれらの組み合わせを含む。硬化成分は、官能基化ポリマー100重量部に対して、通常約3〜約30重量部、望ましくは約5〜約25重量部、好ましくは約10〜約20重量部のレベルで使用される。あるいは、キャスト可能なポリウレタンの場合、硬化成分は、ポリオール成分の当量に基づいて化学量論的量で使用される。
好適な硬化剤としては、2〜40個の炭素を含む脂肪族または芳香族ジイソシアネート等のモノマー性ポリイソシアネートが挙げられる。ポリイソシアネートの例としては、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン−1,2−ジイソシアネート、エチリデンジイソシアネート、シクロペンチレン−1,3−ジイソシアネート、1,2−、1,3−および1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−および1,4−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンイソシアネート、2,4−および2,6−トルエンジイソシアネート、1,3−および1,4−キシリレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトエチル)カルボネート、1,8−ジイソシアナト−p−メタン、1−メチル−2,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、クロロフェニレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネートトリフェニルメタン−4,4’,トリイソシアネート、イソプロピルベンゼン−α−4−ジイソシアネート、5,6−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンジイソシアネート、5,6−ジイソシアナトブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンが挙げられる。市販品の例は、VEBA製のトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、Henkel Corporation(ミネソタ州ミネアポリス)製のヘプタデシル(C17)ジイソシアネートであるDDI 1410脂肪族C−36ジイソシアネート、Upjohn Corp製の変性ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)であるIsonate(登録商標)143Lジイソシアネートである。さらなるウレタン成分は、VEBA製のイソホロンジイソシアネートおよびMobay製のDesmodur(登録商標)N脂肪族トリイソシアネートである。 Desmodur(登録商標)Nは、より具体的には3モルのヘキサメチレンジイソシアネートと後記191で定義するイソシアネート当量を有する水との反応生成物として定義される。その他の付加物またはポリイソシアネートのプレポリマーとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)の付加物であるDesmodur(登録商標)LおよびMondur(登録商標)CBが挙げられる。
脂環式ポリイソシアネートの例としては、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチル−シクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート,IPDI)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネートおよび1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン)ならびにポリイソシアネート[例、1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサンが挙げられる。ポリマーイソシアネートは、放射コーティングを硬化させるために使用される好ましい架橋剤である。液状ポリマーイソシアネートがより好ましく、これもまた広範に使用されている。「液状」という用語は、周囲温度もしくは高温での液体、またはポリイソシアネート用の溶媒中のポリイソシアネート溶液と定義される。10〜50%の反応性NCO基を含む、周囲温度で液状の、あるいは約70℃までで液化するか、あるいは担体もしくは希釈剤中で可溶であるポリイソシアネートは、本発明での使用に容易に適合される。多数の型の液状イソシアネートが記載されている。例えば、米国特許第3,644,457号、同第3,883,571号、同第4,229,347号、同第4,055,548号、同第4,102,833号、同第4,332,742号、同第4,448,904号、同第4,490,301号に記載されている。
有用な液状ポリイソシアネートは、種々のヒドロキシル官能性材料との反応により調製される。これらの反応は、有機金属または第三級アミンを用いて触媒可能である。有用なヒドロキシ化合物は、約1〜36個、好ましくは4〜16個の炭素原子を含む脂肪族アルコールである。脂肪族アルコールの非限定的な例は、環状脂肪族アルコール、芳香環含有脂肪族アルコール、エーテル基および臭素および塩素等のハロゲン等のイソシアネートと反応しない基を含有する脂肪族アルコールである。脂肪族アルコールの具体的かつ非限定的な例は、2−メチル−1−プロパノール、セチルアルコール、シクロヘキサノール、2−メトキシエタノールおよび2−ブロモエタノールである。150までの相対的分子量を有する分枝脂肪族アルコールが最も好ましい。
イソシアネート化合物の液状付加物の例としては、固体の4,4’−および/または2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートと、ジイソシアネート1モル当たり0.1〜0.3モルのモル比のジヒドロキシ化合物の分枝脂肪族ジヒドロキシ化合物との反応生成物が挙げられる。液状MDIベースの化合物の別の例は、MDIと、モノアルコール、ポリ−1,2−プロピレンエーテルグリコールおよびトリオールの混合物との反応生成物である。液状ポリイソシアネートの別の例は、約1.5〜約4の平均官能基かつ少なくとも約500の平均当量を有するアルコールまたはチオールと、ヒドロキシおよび/またはチオール当量当たり少なくとも2当量の有機ポリイソシアネートとの反応生成物であり、ここで、最初に生成したウレタンまたはチオウレタン基の約20%がアロファネートおよび/またはチオアロファネート基に転化される。
公知のブロックイソシアネートは、加熱工程がコーティングの硬化に使用されるコーティング形成の実施に適用させることができる。有機モノまたはポリイソシアネートとの反応に適するブロッキング剤は、例えば、フェノール、ラクタム、オキシム、イミド、アルコール、ピラゾールなどのイソシアネート反応性化合物である。有機ポリイソシアネートとブロッキング剤との反応は、当該分野で公知のいずれの方法によっても行うことができる。反応は、例えば約50〜120℃の温度で、バルクでまたは不活性溶媒中で行うことができる。完全にブロックされたイソシアネートの場合、イソシアネート反応性基とイソシアネートとの当量比が1/1〜2/1以上が利用され得る。本明細書においては、完全にブロックされたイソシアネートが好ましく用いられるが、部分的にブロックされたポリイソシアネートを所望する場合にのみ前記比を調節することができる。
官能基化エラストマーおよびそこに分散させた架橋剤を含む水性コーティングは、調製後すぐに使用される。水分散ポリイソシアネートの使用等によるポリイソシアネート硬化剤を用いる水性ベースのコーティングの態様において、これらの原料は公知であり、例えば、米国特許第5,202,377号に開示されている。’377号特許に教示された乳化可能なポリイソシアネートの例には、親水性ポリエーテルと部分的に反応することにより親水性にした親水性第三級イソシアネート官能基オリゴマーが含まれる。本発明の水性ベースの態様に適するその他の水分散可能なイソシアネートは、公知である。米国特許第4,663,377号は、(a)親水性イソシアネート−官能基オリゴマーおよび(b)ポリイソシアネートを含有する乳化可能なポリイソシアネート混合物を教示する。例えば、脂肪族ポリイソシアネートと、少なくとも10個のエチレンオキシド単位を含有する少なくとも1つのポリエーテル鎖を有するモノもしくはポリ水酸基含有、ノニオン性ポリアルキレンエーテルアルコールとの反応生成物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい水分散性イソシアネートは、脂肪族および脂環式イソシアネートに基づくものである。
コーティング組成物は、(i)カルボジイミドまたはポリイソシアネートなどの水分散性架橋剤と、(ii)反応性官能基を含む官能基化エラストマーポリマーの別の水溶液、乳化液または分散液とを組み合わせることにより生成することができる。あるいは、ジイソシアネートの実施態様の場合、官能基化エラストマーを含む水性組成物を、米国特許第5,466,745号に教示されるような架橋剤を含む別の水分散液と組み合わせることができる。コーティングは、水性媒体中のエラストマーと、ブロックされていないポリイソシアネート架橋剤および界面活性のイソシアナト反応性材料を含有する非水性の乳化可能な組成物とを混合することにより調製することができる。この代替法は、VOCとして知られている溶媒を選択するときにいくつかの揮発性有機成分を導入するであろう。しかしながら、VOCとは見なされずに使用可能なその他の溶媒希釈剤がある。公知の手法の後、(i)ブロックされていない疎水性イソシアネートおよび希釈剤を界面活性のイソシアネート反応性材料と水との混合物と混合し、油中水型エマルジョンを生成する、次いで(ii)このエマルジョンを、イソシアネートエマルジョンを水中油型エマルジョンに転換する比率かつ条件下でエラストマーを含む水性媒体に加えることができる。
言及し得る市販のジイソシアネートの具体例は、1,6−ヘキサンジイソシアネート(市販品、例えば、商品名HMDI、Bayer製)、イソホロンジイソシアネート(市販品、例えば、商品名IPDI、Huls製)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(市販品、例えば、商品名m−TMXDI、Cytec製)、2−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジイソシアネート、1,12−ドデカンジイソシアネートおよびメチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート) (市販品、例えば、Desmodur(登録商標)W、Bayer製)、ならびに高官能基イソシアネート、例えば、1,6−ヘキサンジイソシアネートのビウレット(市販品、例えば、Desmodur(登録商標)N、Bayer製)、1,6−ヘキサンジイソシアネートのイソシアヌル酸エステル(市販品、例えば、Desmodur(登録商標)N−3390、Bayer製)、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌル酸エステル(市販品、例えば、Desmodur(登録商標)Z−4370、Bayer製)、テトラメチルキシレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの反応生成物(市販品、例えば、Cythane(登録商標)3160、Cytec製)および1モルのトリメチロールプロパンと3モルのトルエンジイソシアネートとの反応生成物(市販品、例えば、Desmodur(登録商標)L、Bayer製)である。含まれるジ−またはポリイソシアネートの量は、3〜30phrとすべきである。好ましくは、前記量は、8〜15phrである。
官能基化フィルム形成剤を硬化させてシロキサン架橋を形成させるために用いられ得る別のクラスの架橋成分は、種々の公知の有機シランである。好ましい有機シランは、イソシアネート基ならびにシランおよび/またはフィルム形成剤と架橋形成可能な1以上の基(例えば加水分解可能な基、ヒドラジジル、チオ、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、および炭素原子を介してケイ素と結合する基上のその他の共反応性置換基(アシルオキシ、メルカプト、アミノ、フェノールおよびグリシド等))を含むイソシアナトシランである。前記シランは、ビニル基;ビニル含有基;別のイソシアネート基、別のイソシアネート含有基;ウレイド基;ウレイド含有基;イミダゾール基;またはイミダゾール含有基を含んでもよい。かかる化合物は、当該分野で知られている。
本明細書で用いられる反応性シラン硬化剤は、フィルム形成剤100重量部当たり25〜150重量部のシラン硬化剤の重量に基づき、外界で硬化可能な放射コーティングを提供し、前記フィルム形成剤は、硬化剤で硬化する10重量%以下の官能基を含む。シラン硬化剤は、フィルム形成性ポリマー上の選ばれた官能基に依存する同一もしくは異なる共反応基の少なくとも2つのシリコーン結合基を含むモノマーの4価のシランまたはビスもしくはオリゴ誘導体であり得る。かかる型の硬化基の1つは、加水分解可能な基であるかまたはフィルム形成剤ポリマー上の酸性もしくは塩基性官能基と相互作用する基である。シリコーン結合基は、フィルム形成性ポリマー上の官能基と共反応する基である。あるいは、シリコーン結合基はフィルム形成性ポリマー上の活性水素発生基と共反応する。これらの有機シラン化合物は公知であり、多数の市販供給先から利用可能である。
代表的な好ましいヒドロキシアルキル基含有シランは、一般式:
Figure 0004514191
(式中、Rは1〜20個の炭素原子を有する二価の脂肪族、環状脂肪族または芳香族基であり、好ましくは1〜9個、最も好ましくは2〜4個の炭素原子を有するアルキレン基であり;Rは1〜20個の炭素原子を有する一価の脂肪族、環状脂肪族または芳香族基であり、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、4〜7個の環状炭素原子を有するシクロアルキル基、および6、10もしくは14の核炭素原子を有しかつ1以上の置換基である1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を有するアリール基からなる群より選ばれるものであり;Rは1〜8個の炭素原子を含む一価の脂肪族、環状脂肪族または芳香族有機基であり、好ましくはメチル、エチル、プロピルおよびブチル、ならびにR−O−R(式中、Rは1〜4個の炭素原子(メチル、エチル、プロピル、ブチル)を有するアルキレン基−C=(O)−Rであり、Rは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である)から選ばれるものであり、ならびにaは0または1であり、好ましくは0である。
アミノ官能性シランは、カルボキシ官能性フィルム形成剤の硬化に好ましく、構造式(B)
Figure 0004514191
(式中、R、R、Rおよびaは前記(A)で定義した通りであり;Rは水素、1〜8個の炭素原子を有する一価の脂肪族基、4〜7個の環状炭素原子を有する一価の環状脂肪族基、フェニル、6個の核炭素原子を有しかつ1以上の置換基である1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を有するアルカリール基、およびR−NH−R−基(式中、Rは1〜20個の炭素原子を有する二価脂肪族、環状脂肪族基および芳香族基からなる群より選ばれるものであり、窒素原子のいずれの対からも離れた少なくとも2つの炭素原子が好ましく、好ましくはRは2〜9個の炭素原子のアルキレン基であり、RはRと同一であり、好ましくは水素である)を有するものが含まれる。
メルカプト官能基を有するシランとしては、構造式(C)
Figure 0004514191
(式中、R、R、Rおよびaは、前記式(A)で定義した通りである)を有するものが挙げられる。
本明細書で有用な有機シラン化合物としては、1〜20個の炭素原子を有する有機鎖をSi原子上に置換基として含み、少なくとも1つの引き抜き可能な水素原子(好ましくは、少なくとも3つの相互結合した炭素原子鎖の分だけケイ素原子から離れた官能基に結合している)を有するものが挙げられる。
好ましい有機シランは、イソシアナトシランである。本明細書において好適な市販のイソシアナト−アルコキシシランの例としては、OSi Specialties Group, Witco company(OSi)から入手可能なγ−イソシアナトプロピルトリメトキシシランであるSilquest(登録商標)Y−5187、およびOSi製のγ−イソシアナトプロピルトリエトキシシランであるSilquest(登録商標)A−1310が挙げられる。
活性水素基含有有機シランの代表名および略称名は、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、ヒドロキシブチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、メチルアミノプロピルトリメトキシシラン,γ−アミノプロピルトリプロポキシシラン、γ−アミノイソブチルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルエチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルフェニルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルメチルトリメトキシシラン等である。
また、硬化剤として、シランジオールまたはシラントリオールのいずれかで一部中和されていてもよい(Si−OH結合)を有するヒドロキシシランも適する。好ましくはシラノールは、第一の結合基を介してケイ素に結合した少なくとも1つの求核分子を含む。本明細書で用いられる用語「部分的に中和された」とは、シラノール基の少なくともいくつかがモノ−、ジ−またはトリ塩基性アルカリ金属塩、より具体的にはリチウム、ナトリウムまたはカリウム塩の形態であることを意味する。中和の程度は、シラノールの縮合可能な基の縮合を50%以下阻害するに十分な量であるが、シランとフィルム形成性ポリマーとの間の相互作用を十分に与え、架橋を形成するが、A部分とB部分とが結合した場合にフィルム形成性ポリマーをゲル化しない。硬化剤は、構造式D:
Figure 0004514191
(式中nは1、2または3であり、mは0、1または2であり、pは0または1であり、好ましくは0であり、ただし、m+n+p=3である;Rは第一の結合基であり、Mはアルカリ塩を形成する金属であり、Yは求核部分を含む基であり、R’は直鎖状、分枝状または環状C−Cアルキル基であり、好ましくはメチルまたはエチルであり、より好ましくはメチルである。式Dにおける結合基Rは、直鎖状、分枝状、または環状アルキレン基、またはアリーレン基またはそれらの組み合わせが好ましく、それ自身が求核基であってもよいヘテロ原子を1以上含んでもよい。より好ましくは、XはC−C−アルキレン基または−R’−−NH−−R’−−(式中、各R’は独立してC−Cアルキレン基である)である)により表される部分的に中和されたシラノールであってもよい。
適する求核基の例としては、アミン、フェノール、メルカプタンおよびカルボキシレートが挙げられ、第1級および第2級アミンならびにメルカプタンが好ましく、第1級および第2級アミンがより好ましく、第1級アミンが最も好ましい。部分的に中和されたアミノシラントリオールの具体例は、一般的には3−アミノプロピルシラントリオールおよびN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルシラントリオールのカリウム塩またはナトリウム塩である。
より好ましい有機シラン硬化剤は、有機シランの縮合の際にネットワーク架橋を形成し得る、シリコーンに結合する置換または無置換のアルキルアミノ基およびアルコキシ基を含む、少なくとも1つのシリコーン結合基を有するであろう。アミン基は、遊離のブロックされていない型で、またはブロックされたアミノ基として存在してもよい。アミン基のブロッキングは、メチルイソブチルケトンまたはメチルアミルケトンとの反応により提供され得る。シラン化合物と反応する好ましい基は、C−Cアルコキシ基が好ましい。アミノシランのクラスに含まれる硬化成分の例には、アミノプロピルトリエトキシまたは−メトキシシランおよびアミノエチルアミノプロピルトリエトキシまたはメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシランまたは3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、第1級第2級アミン含有シラン、例えば、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、第2級アミン、例えば、N−メチル−またはN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、縮合したアミノアルキルシラン、例えば、ビス(3−アミノプロピル)テトラメトキシまたはテトラエトキシジシロキサン、NH(CH−Si(OCH−O−(CHO)Si−(CHNH、ポリグリコールエーテル変性アミノシラン、例えば、商標「Dynasylan 121」で市販されているものおよびトリアミノ官能基プロピルトリメトキシシラン、例えば、Huls AGから入手可能な「Dynasylan TRIAMO」が挙げられるが、これらに限定されない。2または3個のシリコン原子を有する同様のシランを用いることができる。
アミノアルキルトリアルコキシシランとフルオロアルキルトリアルコキシシランとの好ましい組み合わせは、硬化したコーティングの熱による老化において改善した色安定性(黄変なし)を示す。
本発明において、活性水素を含む別のシランとの混合、および最も好ましくはアミノシラン硬化剤との混合に有用なフルオロアルキルシランは一般に、式E:
Figure 0004514191
(式中、Rはモノフルオリド化、オリゴフルオリド化または過フルオリド化された1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、またはモノフルオリド化、オリゴフルオリド化または過フルオリド化されたアリール基であり、YはCH、OまたはS基であり、Rは直鎖状、分枝状もしくは環状の1〜8個の炭素原子を有するアルキル基またはアリール基であり、Rは直鎖状、分枝状もしくは環状の1〜8個の炭素原子を有するアルキル基またはアリール基であり、yは0または1であり、mは0または1である)を有する。フルオロアルキルシランのいくつかの代表的具体例としては、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルシクロヘキシルジメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルフェニルジエトキシシラン、およびヘプタデカトリフルオロデシルトリメトキシシランCF(CFCHCHSi(OCH)が挙げられる。
フィルム形成剤の10重量%未満の量で使用されるアミノ樹脂を、酸触媒の加熱条件を用いることができる硬化成分として用いることができる。アミノ樹脂とは、ホルムアルデヒドと尿素、メラミン、ベンゾグアナミンまたはアセチルグアナミンなどとの反応に基づく原料の広い分類での任意の原料をいう。かかる化合物は周知であり、例えば、「Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology」、第3版、2巻、440−469頁、Wiley−Interscience、1978に記載されている。
少なくとも2つのエチレン性不飽和二重結合を含む硬化剤は、フィルム形成性ポリマー上の官能基が適切で公知である(例えば、マレイン酸二無水物およびフマル酸二無水物)場合は、当該結合のそれぞれが隣接する電子求引基により活性化されるので、Michael付加可能である。
その他の好適な硬化成分の例は、カルボジイミドである。多官能性カルボジイミドは、本発明で使用される官能基含有エラストマーに対し適切な反応性を有する。N−アシルウレア基がカルボキシル部位間で生成する。カルボジイミド結合は、カルボキシル基と、官能基化エラストマーに含まれる、例えばヒドラジル、アミノおよび/またはチオール基などの他の官能基との間でも形成することができる。多官能性カルボジイミドは、例えば、米国特許第2,941,966号に記載のように触媒としてホスホリンオキシドを用いて、ポリイソシアネートから得ることができる。水分散性カルボジイミドは、米国特許第4,321,394号に教示されるようなSn触媒0.01〜3重量%(反応混合物基準)の存在下で反応物質を反応させることにより、親水性ポリアミンまたはポリオールとイソシアネート基含有カルボジイミドとを付加させるより生成することができる。転位生成物は、酢酸スズ(II)または二酢酸二ブチルスズ等の触媒を用いて、25〜150℃の低温で生成することができる。ヒドロキシル保有化合物が好ましい親水性基であり、2〜8個のヒドロキシル基を含むポリオールが挙げられ、特に800〜10,000の範囲の分子量を有するものが好ましい。重合性ポリオールの例には、例えば、ポリエステル、ポリエーテル、ポリチオエーテル、ポリアセタールが含まれる。米国特許第5,258,481号に教示のように、特に本発明の水性コーティングの態様の場合、多官能性カルボジイミドを有する加水分解可能なシラン基を含む親水性多官能性カルボジイミドも好ましい。
本発明で用いられる好適なカルボジイミド化合物の例は、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル) カルボジイミド、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N’N’−ジ−tert−ブチルカルボジイミド、1−シクロヘキシル−3−(4−ジエチルアミノシクロヘキシル)カルボジイミド、1,3−ジ−(4−ジエチルアミノシクロヘキシル)カルボジイミド、1−シクロヘキシル−3−(ジエチルアミノエチル)カルボジイミド、1−シクロヘキシル−1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニル−(4)−エチル)カルボジイミド、1−シクロヘキシル−3−(4−ジエチル−アミノシクロヘキシル)カルボジイミドなどである。溶媒可溶性かつ水分散性カルボジイミドの様々な市販品がある。カルボジイミド化合物は、UCARLNK(登録商標)の下、Union Carbide社(USA)から市販されている。
(C)担体液
コーティングは、担体液中で付与される。担体液は、主に1種以上の有機溶媒または水のいずれでもよいが、担体は、例えば、主要割合の水とともに少量割合の溶媒または共溶媒を含有することができるように、原料の導入、共溶媒和化、分散等のための少量の一方が他方に含まれ得る。本発明のコーティング組成物は、好ましくは1以上の有機溶媒担体を用いて溶液の形態でエラストマー基材に付与することが好ましい。本発明の目的にとって、溶媒という用語は、本組成物のその他の成分にとっての担体として広く定義され得るものであり、ここで溶媒は、実質的に分散された状態でまたは混合物中で前記成分を溶解または維持することが可能である。好ましい溶媒としては、水ベースのラテックスおよび/または非HAP(有害汚染物質)、非VOCまたは非HAP、非VOC有機溶媒が挙げられる。
非HAP溶媒としては、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、酢酸t−ブチル、アセトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、テトラヒドロフラン、n−メチルピロリドン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ジメチルホルムアミド、ジイソブチルケトン(DIBK)、メチルイソアミルケトン、モノクロロトルエン、パラ−クロロベンゾトリフルオリド(PCBTF)およびvm&pナフサが挙げられる。アセトンとDIBKとの組み合わせが好ましい非HAP溶媒混合物である。アセトン、酢酸メチルおよびパラクロロベンゾトリフルオリド(PCBTF)を単独またはそのいずれの組み合わせも、HAPおよびVOC対応のコーティングにとって好ましい溶媒である。HAP溶媒のうち、大気下で光化学的に反応するものは、ヘキサン、キシレン、トルエン、MEKおよびMIBKである。HAPおよびVOC対応が重要でない場合、トルエン、キシレン、MEKおよびMIBKが好ましい溶媒である。
本発明のコーティング組成物の担体ビヒクルとして有用な溶媒のこのようなカテゴリーの1つは、実質的には、アクリロニトリル−ブタジエンコポリマーを溶解させることが知られているあらゆる有機溶媒またはその他の原料であってもよい。本発明において有用な有機溶媒の例としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよびジイソブチルケトン;酢酸ブチル等のアセテート;トルエン、キシレンおよびそれらの誘導体;ニトロプロパン;ならびに二塩化エチレン等のケトンが挙げられる。
本発明の溶媒に基づく実施態様の有機溶媒は、一般的には全コーティング組成物(溶媒、官能基化HNBR、硬化成分、熱伝導性粒子および任意の成分)の約70〜約97重量%で用いられる。好ましくは、溶媒を約85〜約95重量%含有する。従って、コーティング組成物は、約3〜約30%、好ましくは約5〜約15%の全非揮発固形分を有する。
しばしば担体として水を使用することが高度に望ましく、環境上有利であることが多い。本発明は、乳化重合ならびに下記ポリマー固形物の水転換分散(aqueous converted dispersions)により調製されたラテックスポリマーの利用により可能である。固体の大量のエラストマーフィルム形成剤は、適する有機溶媒または有機溶媒の混合物中に溶解させることにより、分散物に転換することができる。有機溶媒の例としては、特に限定されるものではないが、上記に列挙した有機溶媒のいずれもが挙げられ、好ましくはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよびメチルイソプロピルケトンである。溶媒は、溶媒混合物であってもよく、好ましくは低水溶性を有し、必要に応じて約50%を超える溶媒含有量かまたは約95℃未満の沸点、少なくとも水の沸点未満で水との共沸混合物を生成してもよい。連続相としてのポリマー溶液は、界面活性剤を導入した後に水を添加することにより処理される。当該分野で知られている混合技術を、アニオン性、カチオン性、ノニオン性または両性乳化剤(混合物を含む)に用いることができる。水性有機溶媒混合物を高せん断下で混練し、相転換を行い、ここで水が連続相になる。通常、水の沸点未満、概して95℃未満での加熱により溶媒を除去する。硬化成分および所望により追加の成分を、好ましくはコーティング直前にラテックスに加える。
X−HNBRゴムの水性ベースのラテックスを調製するためのさらなる好適な手法の例は、参照により本明細書に組込まれる米国特許第4,826,721号に記載されている。ゴム成分を3−クロロトルエン等の溶媒に溶解する。アビエチン(ロジン型)酸誘導体およびデヒドロアビエチン酸誘導体等の乳化剤も添加される。また、水も前記組成物に添加された。前記組成物を乳化させた後、ロータリーエバポレーションを用いて、好ましくは減圧下で溶媒を除去する。X−HNBRラテックスは、日本のNippon Zeon社からも入手可能である。本発明で用いられる水性ラテックスコーティング組成物は、通常、30〜50重量%の固形分含量を有する。
本発明のコーティング組成物を硬化して、実質的に透明または透過性のマトリックスエラストマーを形成する。透過性は、入射放射熱を、下層の熱伝導性金属粒子に伝達させるために必須であり、前記粒子は、熱をコーティング表面を通して逆に放射する。熱をコーティング基材に伝導させることよりむしろ、物品の表面未満の温度をモニタリングすると、驚異的なレベルの熱反射率が観察された。この放射特性は、低い表面積に成形された基材でさえも観察されたが、基材温度の低下もまた、下層の成形物品の体積に対する表面積の比に正比例することが予測される。
低いレベルにおいて、染料または有機顔料などの任意の着色化合物が取り込まれ得る。本発明によって提供される着色されたコーティングは、長期的に曝露される使用に対して顕著な色およびコーティングの物理的特性を提供する。放射性に加えて着色するために適する有機顔料のさらなるリストは、Lippincott & Peto Publicationsが出版した「the Rubber Blue Book」の最新巻に見出すことができ、エラストマー配合の分野の当業者に周知である。通常使用される有機色は、別の着色効果のために配合することができる。非顔料性有機着色剤は、色または淡色を着けながらコーティングを透過性のままにする。
無機金属酸化物顔料、特に微粒子化された(直径0.5ミクロン以下)顔料は、エラストマーフィルム形成剤100重量部当たり2.0重量部まで含むことができる。例えば、チタンは、コーティングが使用可能な放射特性を実質的に妨げることなく使用可能である。顔料は、バンバリーミキサーまたは2本ロールミルを用いて固相ポリマーに混練することができる。次いで、顔料を含むゴムを溶媒に溶解させる。あるいは、顔料を液状溶媒中に分散させ、次いで溶媒和したポリマーブレンドに添加してもよい。この方法は、アルミニウムフレークを添加するために好ましい方法である。アルミニウムフレークの溶媒分散例は、50部のアルミニウムフレークと、55部のエチレングリコールおよび45部のエチレングリコールモノブチルエーテルのブレンドとを含有する。
金属導電粒子
熱放射特性をさらに含む態様のコーティングでは、有効な放射特性を提供するためには、コーティングの最小表面範囲を必要とする。「粒子」という用語は、不規則な形状、顆粒形状、薄片形状または多彩な複雑形状を含む。熱反射性顔料が、微細粒固体もしくは薄片等、乾燥粉末形状、または溶媒中もしくは可塑剤(例、ミネラルスピリット)中で分散物もしくはペーストとして、多種形状で使用することが可能である。微細に分割した蒸着フィルムに由来するフレークが適する。熱伝導性金属粒子としては、真鍮、チタン、銀もしくはアルミニウムの微細に分割した不規則粒子または薄片粒子が挙げられる。リーフィングもしくはノンリーフィングアルミニウムフレークとして好ましく導入される金属コーティング粒子/金属コーティングフィルムが含まれる。リーフィングアルミニウム粒子もしくはフレーク等のリーフィングフレークは、例えば、ステアリン酸等のコーティングがされた市販品が入手可能であり、表面に付与する場合、前記粒子は、仕上げた放射コーティングの表面に平行に薄片が交互に重なった構造で配向する。5ミル(0.01cm.)の薄膜にキャスティングする場合、フィルム形成エラストマー100重量部に対して10〜100重量部レベルで用いた平均粒径5〜25μmの金属粒子は、有効な放射エネルギー放射率を与え、さらにストレスクラッキングを受けないようにコーティングに十分な耐屈曲疲労性を与える。ストレスクラッキングは、放射性能を損失させる。25〜100ミクロンの平均粒子径を有する金属粒子を、フィルム形成剤100重量部に対して少なくとも20重量部で150重量部までのレベルで用いて、ストレスクラッキングのない十分な放射熱放射率を提供すべきである。アルミニウムフレークは、直径で約300ミクロン未満の平均粒子径を有するものを通常は入手可能である。高アスペクト比の金属粒子の最大直径は、2つの主要な次元(幅と長さ)および、当該2つの主要な次元よりも数倍または数十倍小さい1つの副次的次元(厚さ)からはむしろ不確定である。信頼性は、平均粒子径を特徴付けるための供給者の仕様書にある。好ましくは、アルミニウムフレークは、約1〜約100ミクロン、より好ましくは5〜60ミクロン、さらにより好ましくは10〜45ミクロンの平均粒子径を有する。好ましいアルミニウム粒子は、325メッシュのふるいを99.9%通過するようなサイズ、すなわち、約45ミクロン未満、最も好ましくは平均粒子径8〜35ミクロン、特に10〜20ミクロンの直径を有するフレークである。
米国特許第5,045,114号に記載のように、アルミニウムのペーストではなくリーフィングの金属フレークを乾燥フレークとして配合することができ、少なくとも約40重量%のアルミニウムフレーク、より好ましくは約60〜70重量%のアルミニウムフレークを有する溶媒を配合することができる。金属粒子は、放射性能を発揮するためにフィルム形成性ポリマーに対する前記量で用いられる。金属粒子の好ましい量は、フィルム形成剤100重量部当たり15〜30重量部の範囲内である。この比率は、界面活性剤、またはシラン等の接着促進剤等の表面添加剤の考慮を含んでいる。
本発明のコーティング組成物は、ニトロソ化合物、ZnOおよびQDO、マレイミド、抗酸化剤およびサブミクロンサイズの粒子補強剤等の他の任意の成分を含んでもよい。任意の付加剤の総量は、官能基化フィルム形成性ポリマー100重量部当たり約15重量部を超えないようにすべきである。本発明で有用な粒子補強剤の具体例としては、沈降シリカおよびフュームドシリカが挙げられる。当該分野で周知のつや消し剤を、硬化したコーティングのつやを調整するのに有効な量で用いることができ、シリケートが挙げられるがこれらに限定されない。700ナノメーター未満、より典型的には20〜200ナノメーターの粒子径を有する任意のシリカ。サブミクロンサイズの粒子補強剤は、コーティングの放射特性の低下に対する注意すべき影響に対してフィルム形成剤の透過性に影響せず、官能基化エラストマーフィルム形成性ポリマー100重量部当たり20重量部を超えない様々な量で使用してもよい。
コーティング組成物は、スパチュラなどを用いて手によってあるいは機械的混合または振とうによって成分を単に混合することによって、製造され得る。コーティング組成物は、典型的には、浸漬、噴霧、ワイピング、刷毛塗りなどによって、エラストマー材料および/または他の基材に付与され、その後、コーティングは、典型的には約30分〜2時間、好ましくは約45分〜1時間の範囲の時間乾燥される。コーティング組成物は、典型的には、付与されて、約0.1〜5ミル(2.54μm〜127μm)、好ましくは約0.5〜1.5ミル(12.7〜38.1μm)の範囲の厚みを有する基材上に乾燥層を形成する。硬化した状態では、支持体を有しないかまたは有するコーティングフィルムは、ひび割れることなく、元の長さの少なくとも100%伸長し得、好ましくは200%まで伸長し得、より好ましくは300%まで伸長し得る。
コーティング組成物は、必要に応じて高温で、加硫された基材に付与され得るか、あるいは未加硫のまたは未硬化の基材に付与されてそれと共に硬化され得る。
従って、硬化したコーティングされた基材の光沢(これは、透明性を顕著に低下させない)は、少なくとも、異なる量の溶媒を用いることによって、蒸発速度を制御することによって、および/または種々の公知の顔料および/またはつや消し剤を含有させることによって、操作され得る。有機担体ベースのコーティングに関し、比較的短時間のまたは急速な蒸発は、より長時間の硬化速度よりも、よりつや消しのまたはより光沢のない表面を生じることが見出された。本発明の硬化したコーティングは、一般に、60度の角度で約3%〜約70%の光沢(ASTM D−523およびD−2457に従って、Byk−GardnerマイクロTRI光沢度計を用いて測定した場合)を基材に与え得る。光沢に対する望ましさは、使用に応じて変化し、迷彩色では低い光沢レベルが望ましく、装飾コーティングでは中程度〜高い光沢レベルが望ましい。例えば、コーティング組成物は、タイヤのサイドウォールに美学的に感じのよい外観(例えば、「金属質の濡れた」外観)を与えるために、有益に利用され得る。硬化したコーティングの得られる光沢は、効果的に制御されて、基材上に所望の表面、仕上げ、または外観を生じ得る。
コーティング組成物は、周囲空気条件(室温を含む)において約2〜24時間以内に硬化する。硬化は、コーティングを高温に曝すことによって加速され得るが、これは必要とされない。
(D)可撓性基材
本発明のコーティング組成物は、可撓性基材(例えば、莫大な数の成形エラストマー材料)を硬化前または硬化後の状態でコーティングすることができる。コーティングは、その外面全体に付与される。コーティング組成物は、成形または成型物品(例えば、熱可塑性加硫物または熱硬化性ゴムから作製されたもの)に付与され得る。本発明のコーティング組成物は、硬化したゴムエンジンマウンティングデバイス(これは、加硫したエラストマー部品からなり、このエラストマー部品は金属部品に接合されている)をコーティングするのに特に適している。
エンジンマウント構造体は、天然ゴムから形成されたベース層を有し、必要に応じて、1つ以上の金属マウンティング部材(例えば、車両構造体およびエンジンハウジングにボルトで固定するためのもの)に接合されており、かつ/または該金属マウンティング部材の周囲に形成されている。ベース層は、熱、酸化、オゾンアタックまたは紫外線照射によって引き起こされる分解を受けやすい。放射コーティングが噴霧または浸漬され、付与されたときにマウントの輪郭に一致し、該ベース層に付与された後完全に硬化されるが、ここで、放射コーティングは、マウントのゴム部分の内部の操作温度または平衡温度が使用下に置かれた場合少なくとも30°F(16℃)、より好ましくは少なくとも50°F(27℃)、最も好ましくは少なくとも75°F(41.6℃)低下するように、ベース層に付与される。
好ましい放射コーティング組成物は、耐油性および耐溶媒性が不足している硬化したエラストマー上のコーティングとして特に有効である。このようなエラストマーとしては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、エチレンプロピレンおよびエチレンプロピレンジエンゴム、ポリイソブチレン−イソプレンゴム、ポリクロロプレン、低アクリロニトリル含量(<35重量%)ニトリル−ブタジエンゴムなどが挙げられる。コーティング組成物はまた、剛性基材(例えば、金属、プラスチック、セラミックおよびコンポジット)に対して使用してもよい。熱可塑性基材および/または熱硬化性基材の例としては、可撓性ポリ塩化ビニル、PVC−ニトリルなどのPVC−エラストマーアロイ;コンパウンドポリエチレンおよびポリプロピレンなどの粘着促進または変性ポリオレフィン;PBTなどの可撓性ポリエステル、可撓性またはゴム状ポリウレタン、ポリウレア、ポリウレアリム;繊維強化可撓性プラスチック、および多孔性ビニルおよびポリウレタンが挙げられるが、これらに限定されない。コーティングは、エラストマーコンポーネントおよび剛性コンポーネントの両方を含む接合ゴムマウントに特に有用である。基材は、基材材料の伸度が25%よりも大きい場合、可撓性と考えられる。
本発明の組成物でコーティングされ得る一般的に入手可能な可撓性基材のさらなる例としては、タイヤ、バンパー、ワイパーブレード、振動絶縁装置、ゴムマウント、レールトラックパッドファスナー、ヘリコプターローターベアリング、シャシマウント、ワイパーフレーム、ガスケット、ヒール、靴底、印刷用ロール、ベルト、ホース、燃料タンク、ゴムモールディング、TPOまたはTPEモールディング、計器盤および可撓性加工ゴム製品が挙げられるが、これらに限定されない。放射特性に加えて、コーティングは、改善された耐油性、耐溶媒性、耐酸素性、耐オゾン性および耐UV光性を提供する。
本発明のコーティング組成物は、基材の1つの面または全ての面に付与することができる。しばしば、熱源に向けて配置されている基材の1つの面または表面のみをコーティングすることは熱放散にとって効果的であり得ることが理解されるべきである。上述のように、光、空気、オイルおよび溶媒に曝される基材の表面をコーティングすることは有利である。明らかに、基材の光、空気、オイルおよび溶媒と接触していない表面は、コーティングされる必要はない。コーティングは、好ましくは、フィルムの形態の連続的なコーティングであり、基材の意図される表面を完全に覆う。コーティングは、保護されるべき所望の表面を覆うような前述の厚みであるが、基材の機械的特性を著しく変化させるほど厚すぎるものではない。
タイヤは、本発明の組成物でコーティングされ得る。コーティング組成物は、タイヤの外面および/または内面全体を覆うように使用され得ることが理解されるべきである。さらに、タイヤの特定の部分(例えば、サイドウォール、トレッドなど)のみをコーティングすることもまた望ましい。タイヤは、一般に、トレッド、ショルダー領域でトレッドに隣接する一対のサイドウォール、略環状形状の布帛強化ゴムカーカス、およびトレッドおよびサイドウォールを支持するための1つ以上のプライ、ならびにカーカスとトレッドとの間に位置決めされた1つ以上のプライの外周布帛強化ベルトを有する。タイヤはまた、一般に、実質的に伸長できない一対の外周方向に延びるバンドルワイヤビーズを含み、ここで、示すように、カーカスは一方のビーズから他方のビーズまで延びており、サイドエッジはビーズを覆い得る。タイヤはまた、好ましくは硬い構造でかつビーズの領域に三角形断面を有する一対のアペックスコンポーネント、およびビーズ領域に位置決めされた一対の硬いチャファー(chaffer)コンポーネントを含み得る。タイヤの上記で列挙したコンポーネントは、従来のものであるが、列挙していない追加の部品が含まれていてもよく、上記で列挙した部品が省略されてもよいことが理解されるべきである。タイヤはまた、インナーライナーを含んでいてもよく、このライナーは、タイヤの内面に付与されて空気不透過性を改善し得る。任意のタイヤコンポーネントが本発明の組成物でコーティングされ得る。好ましくは、トレッドおよび/またはサイドウォール領域がコーティングされる。
コーティング用エラストマー基材の製造
コーティングされるべきエラストマー表面または基材は、必要に応じて、塩素化試薬(例えば、次亜塩素酸ナトリウムおよび塩酸)で前処理され得る。コーティング組成物の付与のためのエラストマー材料を製造するために種々の塩素化試薬を使用することは、当該分野で周知である。塩素化試薬の1つの例は、CHEMLOK(例えば7701)の登録商標でLord Corporationから市販入手可能である。塩素化試薬は、刷毛塗り、浸漬、噴霧、ワイピングなどによってエラストマー材料の表面に付与され得、その後、塩素化試薬は乾燥され得る。塩素化試薬は、非常に揮発性である傾向があり、典型的にはおよそ数秒または数分以内で乾燥する。
本発明のコーティング組成物は、可撓性エラストマー部品に対して単独で、およびエラストマー部品に隣接して固定される金属コンポーネントに対してもまた、強い接合を形成する驚くべき能力を有する。エラストマーおよび金属の両方に対してエラストマーコーティングを提供し、その結果、エラストマーと金属との間の境界がコーティング組成物によって十分に保護され得ることが望ましい。従って、本発明は、1つのタイプの保護されるべき基材に接合する能力しか有しない多くの従来の保護コーティング組成物とは区別される。
以下の実施例は、本発明の例示の目的のために提供され、特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲を限定するよう構成されるべきではない。
(実施例1)
以下の実施例を、Zetpol 2220(Zeon Chemicalによって製造されたX−HNBRポリマー、36%のアクリロニトリル含量および5モル%の不飽和を有する)を用いて製造した。適切な市販の代替物は、Therban(登録商標)KA 8889である。
エラストマーコーティング溶液は、以下のようにして製造した:
成分 記載 PHR
X−HNBR カルボキシル化水素化ニトリル−ブタジエン 100.0
この処方をメチルイソブチルケトン(MIBK、CAS No. 108-10-1)に溶解し、固形分含量を12.0重量%にした。
40グラムの溶液に、キシレン中53%のビス−[イソシアナトフェニ(isocyanatopheny)]メタン(ジイソシアネート)を0.1g、0.5gおよび1.0gのレベルで添加した。0.1gのジイソシアネートレベルでは、溶液は室温にて16時間未満で硬化した。0.5gでは、溶液は30分で硬化した。
40グラムの溶液に、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン(CAS番号24801−88−5)を0.3、0.7、1.0および1.3グラムの量で添加した。全てのレベルで、コーティング組成物は、45分〜1時間以内に硬化し始め、16時間未満で完全に硬化した。
耐燃料性試験
コーティングを、Chemlok(登録商標)7701で処理した55デュロメータ天然ゴム化合物(A135Q)に対して試験した。次いで、コーティングを、市販のフルオロカーボンコーティングPLV−2100、および米国特許第5,314,955号に教示された市販のHNBR SPE XVコーティングならびにコーティングしていないコントロールと比較した。
Jet A燃料に室温で24時間浸漬した場合、以下の体積%膨潤の結果が得られる:
コントロール 未コーティング 192.9%
コントロール PLV 2100 0.1%
コントロール HNBR SPE XV 33.6%
実施例 ビス−[イソシアナトフェニ(isocyanatopheny)]メタンでコーティング 2.2%
実施例 3−イソシアナトプロピルトリエトキシシランでコーティング 2.3%
接着試験
2つの1インチ幅のストリップを一緒に接合し、180°の剥離で引張ることによって、ゴム接着を試験した。ゴムストリップは、Chemlok(登録商標)7701で処理した55デュロメータ市販天然ゴム化合物(A135Q)から作製した。約2インチ長さの部分をコーティングした;各ストリップは、互いに接触させて配置し、472gのおもりを付与して密接な接触を確保した。おもりは10分間所定の位置に保持した。8日間の乾燥時間後、各ストリップをTinius Olsen(登録商標)引張試験機において引き剥がした。以下の表は、結果を記録する。
コーティングタイプ 剥離結果、Lbf
コントロール PLV 2100 2.03
コントロール HNBR SPE XV 8.52
実施例 ビス−[イソシアナトフェニ(isocyanatopheny)]
メタンでコーティング 15.5
実施例 3−イソシアナトプロピルトリエトキシシランでコーティング 21.1
1インチの金属クーポンに1インチ幅のゴムストリップを1平方インチ重ねて接合することによって、金属接着のせん断を試験した。ゴムストリップは、Chemlok(登録商標)7701で処理した55デュロメータ天然ゴム化合物(A135Q)から作製した。金属クーポンは304ステンレス鋼であった。接合させるのが困難な基材であることが知られているので、ステンレスを選択した。コーティング後、各々を互いに接触させて配置し、472gのおもりを付与して密接な接触を確保した。おもりは10分間所定の位置に保持した。8日間の乾燥時間後、各試験片をTinius Olsen引張試験機において引き剥がした。
コーティングタイプ 接着結果、psi
コントロール PLV 2100 16.78
コントロール HNBR SPE XV 19.23
実施例 ビス−[イソシアナトフェニ(isocyanatopheny)]
メタンでコーティング 18.2
実施例 3−イソシアナトプロピルトリエトキシシランでコーティング 18.5
耐オゾン性
オゾン試験を、動的オゾン試験(ASTM−D3395)を用いて、50pphm、104°Fにて行った。
試験片は、オゾン分解防止剤ワックスおよびアルキル−アリールフェニレン−ジアミンオゾン分解防止剤(M122N)で保護された55デュロメータの市販の硫黄硬化天然ゴム/ポリブタジエンブレンドに基づくものであった。動的条件下にて、カルボキシル化水素化コーティングは、オゾンバリアとして、HNBRコーティングSPE XVよりもより効果的であることが分かる。
最初のひび割れまでの経過時間
コントロール 未コーティング 6.5時間
コントロール HNBR SPE XV 6.5時間
実施例1(ビス−[イソシアナトフェニ(isocyanatopheny)]
メタンでコーティング)は、28時間でひび割れなかった。
実施例1(3−イソシアナトプロピルトリエトキシシランでコーティング)は、
28時間でひび割れなかった。
PLV 2100コーティングは、低い接着値を有するのに加えて、屈曲後にひび割れ、ゴム表面から剥離する。穴を開けていないDeMattia屈曲試験片(55デュロメータ天然ゴム化合物から作製)を、これらの同じコーティングでコーティングし、ASTM D−813に従って曲げた。PLV−2100コーティングは、激しくひび割れ、剥離し、4000サイクル未満で基材が露出した。焼成したHNBR SPE XVおよび実施例1の両方とも、80,000サイクルに達し、この時点で天然ゴム基材はひび割れた。実施例のコーティングのいずれにおいても、剥離の兆候はなかった。このベース処方物は、有効量の熱伝導金属を提供した場合、上記で試験したのと同様の良好な性能を示し、さらに放射特性を提供する。
(実施例2)以下の実施例は、Therbanの登録商標でTherban(登録商標)KA 8889としてBayer AGから入手可能なX−HNBRポリマーを用いて製造した。
エラストマーコーティング溶液を、以下の通り製造した:
成分 記載 PHR
X−HNBR カルボキシル化水素化ニトリル−ブタジエン 100.0
この処方をメチルイソブチルケトン(MIBK、CAS No. 108−10−1)に溶解し、固形分含量を15.0重量%にした。
16ミクロンの平均粒子径を有する33phrのアルミニウムフレークを、コーティング溶液に添加した。
97.5湿潤重量部の溶液に、2.5湿潤重量部のビス−[イソシアナトフェニ(isocyanatopheny)]メタン(ジイソシアネート)(Casabond(登録商標)TX、キシレン中53%)を添加した。
65のデュロメータAを有する天然ゴムの硬化したブロック3インチ×3インチ×0.5インチ(7.6cm×7.6cm×1.2cm)を、約1ミルの厚みの乾燥フィルムにコーティングした。
ブロックの中央に、1.5インチ(3.8cm)の穴を開け、温度をモニターするために熱電対を挿入した。ブロックを250ワットの赤外線ランプ下に配置し、ゴムブロックから8インチ(20cm)に吊り下げた。コントロールブロックはコーティングしなかった。Cole-Parmer Dual J-T-E-K熱電対温度計モデル91100-40を用いて、以下の時間間隔で温度記録を行った。
コーティングしなかったゴムブロック コーティングしたゴムブロック
時間(分) 温度(°F/℃) 温度(°F/℃)
初期0分 73.8/23.2 73.6/23.1
10分 162/172.2 97.3/36.2
20分 214.9/101.6 118.7/48.1
30分 238.5/114.7 130.5/54.7
コーティングしなかった試験片は、熱源への曝露の最初の10分以内に発煙し始めた。
DeMattia屈曲試験片は、ASTM D−813に従って、実施例2で使用したコーティング材料でコーティングした。77,000サイクル後、コーティングにおいてひび割れまたは剥離の兆候は観察されなかった。ゴム基材においてひび割れが生じ、基材のひび割れが生じた場所でコーティングが裂けた。接着は優秀であり、下層の基材においてのみ観察された破損は、最大レベルのコーティング完全性が得られることを示す。
図1に示す結果は、実施例2の繰り返しを示し、低速で作動する16インチの3速度ファンを用いて試験片をコーティングし、9.5フィート離れて試験片に送風し、赤外線ランプを試験片から4インチに位置決めした。空気移動下にて、実際の自動車をシミュレートする。
コーティングしなかったゴムブロック コーティングしたゴムブロック
時間(分) 温度(F) 温度(F)
初期0分 73 73
4分 95 78
10分 131 84
20分 172 92
35分 181 96
50分 189 99
120分 189 99
(実施例3)官能化HNBR水ベースラテックス
水ベース官能化HNBRラテックスを、本発明に従って製造した。Zeon ChemicalからラテックスBとして販売されている41%固形分のカルボキシル化HNBRラテックス、404EXPLTX005を使用した。以下の組成物を製造した。
Figure 0004514191
DeMattia屈曲試験片に、上記で列挙したラテックス/イソシアネートの組み合わせをスプレーした。DeMattia試験片を、MIBKでワイピングし、Chemlok(登録商標)7701で処理し、スプレーによって試験片にコーティングを付与した。全ての試験片は、80,000サイクルに達し、ひび割れまたは剥離の兆候はなかった。接着は優秀である。
オゾン試験を、動的オゾン試験(ASTM−D3395)を用いて、50pphm、104°Fにて行った。
試験片は、オゾン分解防止剤ワックスおよびアルキル−アリールフェニレン−ジアミンオゾン分解防止剤(M122N)で保護された55デュロメータの市販の硫黄硬化天然ゴム/ポリブタジエンブレンドに基づくものであった。2時間間隔で観察を行った。
観察されたエッジのひび割れまでの時間
A.コーティングしなかったコントロール 4.0時間
B.Chemisat(登録商標)LCH7302X、未官能化HNBRでコーティング 2時間
C.Chemisat(登録商標)LCH7302X、未官能化HNBRで、Bayhydur(登録商標)302(1,6−HDI)100重量部あたり5.0重量部でコーティング
4.0時間
D.カルボキシル化HNBR 404EXPLTX005でコーティング
10時間
E.カルボキシル化ラテックス404EXPLTX005で、I,1,6−HDI100重量部あたり5.0重量部でコーティング
22.0時間
Chemisat(登録商標)LCH7302Xは、Zeon Chemicalによって現在製造されている(以前は、Goodyear Chemical Companyによって製造されていた)HNBRラテックスである。
(実施例4)
Figure 0004514191
Alglo(登録商標)400およびアルミニウムペースト586は、Toyal America, Inc.によって供給されており、Stapa(登録商標)Metallux 214は、Eckart America L.P.によって供給されている。アルミニウムペースト565およびStapa(登録商標)Metallux 2156もまた使用した。種々の粒子径のリーフィングおよびノンリーフィングアルミニウム顔料の両方を使用して、異なる視覚効果を得ることができる。コンパウンドエラストマーをそれぞれ溶媒に溶解して、10%固形分含量にした。従来通り色合わせの公知の技術に従って、それらを直ちに淡色着色剤とブレンドし、異なる淡い色調にした。一方、90%の銀3および10%のグリーンの混合物は、パステルグリーン色がかった銀色を与える。
Caswellからの銅導電性粉末と銀2とのブレンド(実施例4F)は、金属質の金色を与えた。
(実施例5)コントロール
有機溶媒中のアクリロニトリルとブタジエンとの水素化コポリマーのコーティング(米国特許第5,314,741号に従って、そこに教示されている亜鉛−硫黄硬化を用いて硬化させた)を用いたコントロール実施例を、過酸化物硬化天然ゴム基材に適用した。
Figure 0004514191
HNBR以外の成分をミルで混合し、次いでMIBK溶媒に溶解して10%溶液とした。2ロールミルで固形分ゴムを混合し、続いてHNBRを溶媒に溶解することによって、コーティング組成物を製造した。硫黄硬化した天然ゴムシートの1インチ幅の試験片を、イソプロピルアルコールで洗浄し、その後、コーティング組成物を付与した。
コーティング組成物を天然ゴム基材試験片の表面に付与した。コーティング厚みは乾燥状態で約1ミルであった。2つのコーティングした未硬化のストリップを、コーティングした面が互いに向かい合うように一緒に配置した。コーティングを室温で24時間乾燥させた。試験片のいくつかをオーブン中、307°F(152℃)で15分間焼成し、コーティングを硬化させた。これは、生成物として、その上にコーティング(約2ミルの厚みで一緒に接合されている)を有するコーティングされた天然ゴム引張シートを与えた。接合した試験片を引き剥がし、それらを分離するのに必要な力を記録した。
未硬化コーティング(乾燥させたが焼成していない) 0.6lbs剥離強度
硬化したコーティング(307Fで15分間焼成した) 1.9lbs剥離強度
硬化したおよび未硬化のコーティングとしてのゴム基材に対するこれらの接着レベルは、容認できないほど低く、屈曲に供したエラストマー基材上で屈曲疲労およびひび割れを生じる。
(実施例6)
X−HNBRエラストマー(Bayer AGからのTherban KA−8889)をMIBKに溶解して5重量%の固形分含量にすることによって、透明なベースコーティングを作製した。99.25湿潤重量部の溶液に、0.75湿潤重量部のビス−[イソシアナトフェニ(isocyanatopheny)]メタン(ジイソシアネート)、キシレン中53%(Casabond TX)を添加した。熱伝導性アルミニウム顔料を、ポリマーの重量に基づいて種々の重量パーセントで透明コーティング溶液に添加した。
65のデュロメータAを有する天然ゴムの硬化したブロック3インチ×3インチ×0.5インチ(7.6cm×7.6cm×1.2cm)を、約1ミル(0.0004cm)の厚みの乾燥フィルムにコーティングした。
ブロックの中央に1.5インチ(3.8cm)の穴を開け、温度をモニターするためにブロックの中央に熱電対を挿入した。ブロックを250ワットの赤外線ランプ下に配置し、ゴムブロックから4インチ(10cm)に吊り下げた。コントロールブロックはコーティングしなかった。Cole−Parmer Dual(登録商標)J−T−E−K熱電対温度計モデル91100−40を用いて、時間に対して温度記録を行った。この実験ではファンを使用しなかった。
Figure 0004514191
(実施例6A)
Figure 0004514191
結果を図2にグラフで示す。
(実施例6B)
Figure 0004514191
結果を図3にグラフで示す。
(実施例6C)
Figure 0004514191
結果を図4にグラフで示す。
(実施例6D)
Figure 0004514191
結果を図5にグラフで示す。
(実施例7)
それぞれフルオロエラストマー、水ベースXHNBRラテックス、およびポリウレタンを用いて、3つの類似のコーティングを作製した。フルオロエラストマーベースコーティングは、以下の処方を混合し、次いでそれをMIBKに溶解して30%の固形分含量を有する溶液にすることによって、作製した。
(実施例7A)
Figure 0004514191
120.0グラムの溶解した溶液に、1.8グラムのN−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミンを添加した。4時間後、さらなる25グラムのMIBKと共に、5.0グラムの3−イソシアナトプロピルトリエトキシシランを添加した。
(実施例7B)
XHNBRラテックスを、Zeon ChemicalからのラテックスB(41%固形分含量)から開始することによって作製した。100.0グラムのラテックスBに、20.0グラムのSparkle Silvex(登録商標)760−20−A(Silberline(登録商標))および5.0グラムの水分散性ポリイソシアネートBayhydur(登録商標)302(Bayer)を添加した。
(実施例7C)
7.0グラム(ウレタン固形分に対して21.8phr)のアルミニウムペースト586(例えば、Toyal America)を100.0グラムのChemglaze(登録商標)V021(透明な水分硬化性ポリウレタン、32重量%の固形分、115cpsの粘度、0℃未満の硬化Tg、および350%の極限伸度で約3000p.s.i.の硬化引張強度を有する)に添加することによって、ポリウレタンを作製した。
65のデュロメータAを有する天然ゴムの硬化したブロック3インチ×3インチ×0.5インチ(7.6cm×7.6cm×1.2cm)を、実施例A、BおよびCのコーティングを用いて、約1ミルの厚みの乾燥フィルムにコーティングした。
試験したブロックの中央に1.5インチ(3.8cm)の穴を開け、温度をモニターするためにブロックの中央に熱電対を挿入した。ブロックを250ワットの赤外線ランプ下に配置し、ゴムブロックの上面から3インチ(7.5cm)に吊り下げた。コントロールブロックはコーティングしなかった。時間に対して温度の記録を行った。Omegascope(登録商標)モデルOS530シリーズの非接触式赤外温度計を用いて、表面温度をモニターした。Cole−Parmer Dual J−T−E−K熱電対温度計モデル91100−40を用いて、内部温度をモニターした。この実験ではファンを使用しなかった。
Figure 0004514191
Figure 0004514191
Figure 0004514191
Figure 0004514191
コーティングしていないコントロールの表面温度と実施例7A、7Bおよび7Cに基づくコーティングした試験片の表面温度とを比較する結果を、図6にグラフで示す。
(実施例8)
室温硬化性反射コーティング処方を以下の通り作製した:
Figure 0004514191
KBM 7803は、ヘプタデカトリフルオロデシルトリメトキシシランCF(CFCHCHSi(OCHであり、Shinetsu Siliconesから市販入手可能である。6インチ×6インチ×0.75インチの天然ゴムパッド(65デュロメータ)を、各コーティングでコーティングした。コーティングを硬化した後、コーティングの上方6インチに吊り下げた赤外線ランプに曝した。Cole−Parmer(登録商標)Dual J−T−E−K熱電対モデル91100−40を用いて、以下に示す時間間隔で表面温度をモニターした。曝露直後、パッドをオーブン中、350°Fで7分以上の加熱に供し、変色を促進させた。
Figure 0004514191
アミノアルキルトリアルコキシシランとフルオロアルキルトリアルコキシシランとの加水分解性混合物に基づく放射コーティングは、急速な硬化および熱エージング後の変色の減少を示す。
特許法に従ってベストモードおよび好適な態様を説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるのではなく、添付の特許請求の範囲により限定される。
図1は、120分にわたり赤外線熱源に曝露されたコーティングした対コーティングしていないゴムブロックについての内部温度対時間のプロットである。 図2は、天然ゴムに付与した0.001インチ(0.00040cm)の熱伝導性コーティングが、0、10および20phrの熱伝導性顔料での放射熱下での内部熱発生に及ぼす効果を図示したものである。 図3は、天然ゴムに付与した0.001インチ(0.00040cm)の熱伝導性コーティングが、0、10および20phrの熱伝導性顔料での放射熱下での内部熱発生に及ぼす効果を図示したものである。 図4は、天然ゴムに付与した0.001インチ(0.00040cm)の熱伝導性コーティングが、0、20および50phrの熱伝導性顔料での放射熱下での内部熱発生に及ぼす効果を図示したものである。 図5は、天然ゴムに付与した0.001インチ(0.00040cm)の熱伝導性コーティングが、0、20および50phrの熱伝導性顔料での放射熱下での内部熱発生に及ぼす効果を図示したものである。 図6は、10分後の放射熱下で、3つの異なる熱伝導性コーティングを用いてコーティングされた天然ゴムブロック対コーティングされていないブロックが、内部温度に及ぼす効果を図示したものである。

Claims (7)

  1. 周囲温度で硬化可能な2部式液体塗料組成物であって、
    一方の部に、スルホン酸、スルホン酸誘導体、クロロスルホン酸、ビニルエーテル、ビニルエステル、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、モノカルボン酸、ジカルボン酸、エステル誘導体化されたモノカルボン酸、エステル誘導体化されたジカルボン酸、ジカルボン酸の無水物、ジカルボン酸の環状イミド、それらのイオノマー誘導体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される化合物で官能基化された、官能基化水素化アクリロニトリル−ブタジエンコポリマーから選択される可撓性フィルム形成ポリマーを含み、かつ、
    当該2部の他方の部に、ポリイソシアネートまたはアミノ(アルコキシ)シランから選択される硬化成分と体液とを含む、組成物。
  2. さらに、(a)フィルム形成ポリマーの100重量部当り10〜100重量部の2〜10μmの平均粒径を有する熱伝導性金属粒子、又は(b)20〜150重量部の20〜60μmの平均粒径を有する熱伝導性金属粒子を含む、請求項1記載の組成物。
  3. 前記官能基化水素化アクリロニトリル−ブタジエンコポリマーが、カルボキシル化水素化アクリロニトリル−ブタジエンコポリマーである、請求項1記載の組成物。
  4. 前記官能基化水素化アクリロニトリル−ブタジエンコポリマーが、エステル誘導体化されたモノカルボン酸で官能基化されたものである、請求項1記載の組成物。
  5. 前記官能基化水素化アクリロニトリル−ブタジエンコポリマーが、1から10モルパーセントの不飽和レベルを有する、請求項1記載の組成物。
  6. 溶媒ベースの、熱伝導性金属粒子を充填した室温硬化性のエラストマーフィルム形成コーティングを成形されたエラストマー製品の表面に噴霧、浸漬又は刷毛塗りすることを含み、前記コーティングが請求項2に記載の組成物を含む、成形エラストマー製品のコーティング方法。
  7. 前記エラストマー製品が、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ポリイソブチレン−イソプレンゴム、ポリクロロプレン、及び低アクリロニトリル含量(<35重量%)のニトリル−ブタジエンゴムからなる群から選択されるエラストマーを含む、請求項記載の方法。
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