JP4507429B2 - 低りん銑の溶製方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、低りんの溶製方法に関し、とくに蛍石等のふっ素含有脱りんフラックスやAlO含有脱りんフラックス等によることなく、転炉滓の如き製鋼滓を用いて効率の良い脱りんを行うことのできる、低りん銑の溶製方法を提案する。
【0002】
【従来の技術】
近年、鋼材品質に対する要求が一段と高まってきたことに対応し、低P鋼の安価な溶製や製鋼コストの低減を目指して、製鋼前の溶銑を脱りんする“溶銑脱P処理”技術への関心が高まっている。これまでに提案された溶銑脱P処理技術の代表的なものとしては、例えば、次のような方法が挙げられる。
▲1▼上下両吹き転炉を使用し、脱P剤に、滓化を助けるために蛍石を使用するか、あるいは蛍石を少量にして脱炭期以前の転炉滓を脱P剤の主成分として用いて吹錬する方法 (例えば、特開平11−302716号公報参照)、
▲2▼蛍石を使用せずに、蛍石に代えてアルミニウム含有物質を用い、滓化を良好にして吹錬する方法 (例えば、特開2000−248309号公報参照)、
などが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように従来は、脱りん率を向上させるために、上底吹き転炉等に投入する脱りんフラックスとして、低温での AlO滓化を確保するために用いる蛍石、あるいはその螢石に代えて AlOを使用するのが一般的であった。しかしながら、これらの脱りんフラックスは、蛍石のようにふっ素を含むものでは、環境への悪影響が懸念される他、螢石に代えてAlOを活用するものではCaOと AlO間で低融点のアルミニウム・アルミネイトを形成するため、滓化性は良いが転炉の耐火物寿命の低下を招くという問題があった。
【0004】
そこで本発明の目的は、ふっ素酸化物やAlO含有フラックスに頼ることなく、脱りん効率の向上を図るための技術を提案することにある。
また、本発明の他の目的は、脱りんフラックスとして、製鉄所内で発生する製鋼滓等をリサイクルして使用することにより、資源の有効利用とコスト低減を目指すことにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
従来技術が抱えている上述した問題について鋭意研究する中で、発明者らは、溶銑脱りん炉の上吹きランスの高さを吹錬の時期に合わせて適切に制御すれば、炉内の二次燃焼効率を向上させることができ、ひいては螢石含有フラックスあるいは螢石に代わる AlO含有フラックスを用いなくても滓化が可能であり、しかも、螢石や AlOを用いた場合と同等あるいは同等以上の脱りん効率が得られることを知見し、本発明を開発することに成功した。
【0006】
即ち、本発明は、上底吹き機能を有する転炉形式の溶銑脱りん炉にて、底吹きガス撹拌を行いつつ酸素ガスを上吹きして溶銑脱燐を行うことにより低りん銑を溶製する方法において、受銑後、ふっ素レスでAlO含有量が5質量%未満の脱りんフラックスを添加し、吹錬初期から滓化が終了するまでの間、上吹きランスの湯面からランス下端までの高さを2.0〜3.0mの範囲内に維持すると共に上吹き酸素ガス流量を1.5〜2.5Nm/min・tに制御する上吹き酸素ガス吹錬を行い、滓化終了後該上吹き酸素ガス流量を0.5Nm/min・t以下に抑えると共に底吹きガス攪拌を強化することを特徴とする低りん銑の溶製方法法である。
【0007】
また、本発明においては、ふっ素レスでAlO含有量が5質量%未満の脱りんフラックスは、製鋼滓、または、その製鋼滓に酸化鉄分と石灰分のいずれか1以上を混合したものを用いることが好ましい実施形態となる。
【0008】
【発明の実施の形態】
上記の要旨構成で明らかにしたように、本発明の特徴は、▲1▼ふっ素レスで AlOの含有量が少量のフラックスを脱りんフラックスとして用いること、▲2▼吹錬初期から滓化が終了するまでの間における、上吹きランスの高さ(湯面からランス下端までの距離)を 2.0〜3.0 mの範囲内に維持した状態で、上吹き酸素ガスの吹錬操作を行うことにある。すなわち、本発明では、ふっ素レスで、しかもAlOの含有量が少量の、いわゆる滓化促進剤を含まないフラックスを用いる一方で、上吹きランスによる加熱を制御することにより滓化の促進を図り、上述した従来技術が抱えている問題点の解決を図ったものである。
【0009】
本発明において用いる脱りんフラックスとしては、製鋼滓、例えば脱炭精錬時に生成した転炉滓または合成フラックスを用いることができる。その他、必要に応じ、固体酸素供給源としての作用をもつ、酸化鉄成分として、焼結鉱や鉄鉱石、ミルスケールなど、および生石灰や焼石灰を用いる。本発明で用いるフラックスは蛍石を含ませなくとも良いので、近年、問題視されている環境への影響が少なく、一方で螢石に代わるAlOをも基本的には含有しなくとも良いので、そのための炉壁耐火物の傷みが少なく、耐火物寿命の向上に対して有効に作用する。なお、転炉耐火物寿命の観点からは、AlO含有量は5質量%未満、好ましくは2質量%未満が許容できる。
【0010】
次に、本発明においては、溶銑中のSiが燃焼する吹錬初期から吹錬中期にかけての期間の二次燃焼効率を上げることによって滓化の促進を図るために、酸素ガスの上吹き吹錬ランスの高さを適切に制御(送酸速度の上昇)する一方で、底吹き撹拌ガスの流量を抑えて、スラグ中の(FeO)の高位安定化を図ることが重要である。
【0011】
図1は、ふっ素・AlOレス脱りんフラックスを用いて、吹錬初期〜中期における、上吹きランス下端の湯面からの高さ (距離) と、脱りん酸素効率との関係を調査した結果を示すものである。この図に明らかなように、上吹ランスの高さは2〜3mが最も適当である。即ち、この上吹きランス高さが2.0 m未満では脱りん処理を実施した場合に、スラグの滓化が悪く脱りん効率が悪い。しかし、この上吹きランスの高さを2m以上にして吹錬を行うと、二次燃焼反応が効率よく起こり、その熱がスラグによく伝達されることによって、ふっ素レスフラックスであっても滓化がよく進行し、脱りん効率が向上する。一方で、この上吹きランス高さが3.0 mを超えると、二次燃焼域が上方に移動して、スラグへの着熱効率が低下し、脱りん効率の低下を招くようになる。
つまり、本発明は、COガスの二次燃焼反応によって生じた熱を、溶融スラグに効率よく伝達する手段として、上吹きランスの高さを適正な位置に制御することにしたのである。
【0012】
上吹きランスの高さを2.0〜3.0mに調節する吹錬の期間は、全吹錬期間の30〜60%程度が経過した時点である滓化の終了時点であり、このときの上吹き酸素ガスの適正流量は、滓化を促進するために、1.5〜2.5Nm/min・tとする。もし、上吹きランスからの酸素ガス上吹き流量が1.5Nm/min・t未満になると、二次燃焼反応が不足してスラグに十分な熱を伝達できなくなって滓化不良となる。一方、2.5Nm/min・tを超えると、著しいハードブローとなってスピッティングや脱炭反応の行き過ぎが起こり、吹錬に支障をきたし、好ましくない。
【0013】
一方、上底吹き転炉の底吹き羽口からの撹拌用ガスの吹き込みについては、上述した滓化が終了するまでは、流量を下げてソフトブローの状態にすることが望ましい。例えば、0.5Nm/min・t 以下、好ましくは0.1 〜0.2Nm/min・t 程度に制御し、そして、滓化の終了後は、0.5Nm/min・t 以上としてスラグ−メタル間の界面反応が促進されるようにハードブローの状態として、脱炭抑制下に脱りんが進むように流量制御を行う。
【0014】
【実施例】
上底吹き転炉内に、200tの溶銑とともに、表1に示す成分組成の転炉滓を35kg/t、焼石灰を12.5kg/t、焼結鉱を42kg/t含む脱りん用フラックスを装入し、図2に示す吹錬スケジュールに従って脱りん吹錬を行った。
その結果、表2に示すように、吹錬前の溶銑中P質量%は0.12質量%だったものを、0.012質量%までに低下させることができたし、スラグ中のPOは3質量%から7質量%に増加していることから、効果的な脱りんが行われたことが確かめられた。しかも、従来技術の下では、転炉滓を主成分とするフラックスを使用した例であっても、同程度の脱りん効率を上げるには少なくとも25kg/t超の焼石灰の配合が必要であったから、本発明の効果が顕著であることがわかった。
【0015】
【表1】
Figure 0004507429
【0016】
【表2】
Figure 0004507429
【0017】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、脱りん用フラックスとして、蛍石やAlOを使うまでもなく、単に上吹きランスの高さを適正に制御するだけで、効果的な脱りんを行うことができる。従って、環境保護の面で好ましく、炉壁耐火物寿命を向上させる上で好ましく、そして精錬コストを低下させるという点で優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、上吹きランス高さと脱りん酸素効率との関係を示すグラフである。
【図2】図2は、実施例の吹錬制御スケジュールの説明図である。

Claims (2)

  1. 上底吹き機能を有する転炉形式の溶銑脱りん炉にて、底吹きガス撹拌を行いつつ酸素ガスを上吹きして溶銑脱燐を行うことにより低りん銑を溶製する方法において、受銑後、ふっ素レスでAlO含有量が5質量%未満の脱りんフラックスを添加し、吹錬初期から滓化が終了するまでの間、上吹きランスの湯面からランス下端までの高さを2.0〜3.0mの範囲内に維持すると共に上吹き酸素ガス流量を1.5〜2.5Nm/min・tに制御する上吹き酸素ガス吹錬を行い、滓化終了後該上吹き酸素ガス流量を0.5Nm/min・t以下に抑えると共に底吹きガス攪拌を強化することを特徴とする低りん銑の溶製方法。
  2. ふっ素レスでAlO含有量が5質量%未満の脱りんフラックスは、製鋼滓、または、その製鋼滓に酸化鉄分と石灰分のいずれか1以上を混合したものを用いることを特徴とする請求項1に記載の溶製方法。
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