JP6180337B2 - 転炉型容器における上吹き条件を変更する脱りん処理方法 - Google Patents
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Description
特許文献1では、溶銑脱りん処理方法において、脱珪期の開始前に溶銑の塩基度が2.5〜3.5、溶銑の湯面から上吹ランスの吹出口までの高さを1.8〜2.2mに設定し、脱珪期では、上吹ランスからの酸素流量を3.0〜4.0Nm3/min・tとし、底吹撹拌動力を100〜300W/tとし、造滓期では、上吹ランスからの酸素流量を1.3〜1.6Nm3/min・t、底吹撹拌動力を100〜300W/tとし、脱りん期では、上吹ランスからの酸素流量を1.3〜1.6Nm3/min・tとし、底吹撹拌動力を500W/t以上としている。
特許文献3では、溶鋼の精錬方法において、転炉底吹撹拌エネルギーがを1.0kW/t・s以上にすると共に、更に転炉上吹撹拌エネルギーは第二工程末期前まで2.0kW/t・s以上とした上吹撹拌エネルギーとし、第二工程末期には1.5kW/t・s以下に低下させている。
本発明に係る転炉型容器における上吹き条件を変更する脱りん処理方法は、上吹きの転炉型容器を用いて、[C]≧4質量%、[P]≧0.06質量%を含む溶銑に対して脱りん処理を行って、当該脱りん処理後に[C]≧2.5質量%、且つ、0.001質量%≦[P]≦0.04質量%とするに際し、上吹きの酸素ノズルの吐出口における酸素ガスの噴出線速度を、マッハ1以上、マッハ1.7以下とし、溶銑中の[Si]が0.10質量%以上である段階では、上吹き酸素ガスの溶銑面衝突圧力PSを1650Pa以上3300Pa以下、底吹きガスによる投入エネルギーεBを400W/t以上2000W/t以下、PS/εBを1以上5以下とし、溶銑中の[Si]が0.00質量%を超えて0.10質量%未満となった段階で、溶銑面衝突圧力PSを820Pa以上1600Pa以下、投入エネルギーεBを1000W/t以上3000W/t以下、PS/εBを0.3以上1未満へ変更することを特徴とする。
図1に示すように、本発明の転炉型容器における上吹き条件を変更する脱りん処理方法は、高炉等で製造した溶銑1を上底吹き転炉型容器(転炉型容器という)2に装入して脱りん処理を行うことを対象としている。詳しくは、炭素濃度[C]が4質量%以上([C]≧4質量%)、且つ、りん濃度[P]が0.06質量%以上([P]≧0.06質量%)である溶銑1を転炉型容器2に装入して脱りん処理を行うことを対象としている。
以下、本発明の転炉型容器における上吹き条件を変更する脱りん処理方法について詳しく説明する。
における酸素ガスの噴出線速度は、マッハ1以上マッハ1.7以下としている。
酸素ガスの噴出線速度を、マッハ1以上を確保しないと、酸素と溶銑中の炭素Cとの反応、いわゆる着火反応が起きない。一方、酸素ガスの噴出線速度が、マッハ1.7を超えると、ほとんどの酸素が脱炭反応だけに消費されてしまい、溶銑中のりんの酸化への寄与分が少なくなると共に、脱炭反応に伴って発生するCOガスによりダストロスが多くなる。このようなことから、酸素ガスの噴出線速度はマッハ1以上マッハ1.7以下に設定している。
脱りん処理において、溶銑の[Si]が0.1質量%以上である場合には、脱りん反応は進まず、[Si]が0.1質量%未満になってから脱りん反応は進む。このようなことから、本発明では、溶銑の[Si]が0.1質量%以上の段階と、[Si]が0.1質量%未満との段階とで処理条件を変更することとしている。
溶銑の[Si]が0.1質量%である段階では、脱炭反応や脱りん反応よりも優先して脱珪反応が起こる。このとき、酸素ガスの溶銑面に衝突する際の圧力(溶銑面衝突圧力)PSが小さすぎると、与えた酸素ガスのうち脱珪反応に寄与する割合(脱珪酸素効率)が著しく低下してしまう。即ち、溶銑面衝突圧力PSが1650Pa未満であるときは脱珪酸素効率が低下する。
式(1)のPSは、溶銑面衝突圧力PSであって単位はPa(パスカル)であり、上吹きガスランス5から噴出させた噴出酸素の溶銑に対する衝突圧力である。式(1)のCは、式(2)で定義される定数であり、X*は、式(3)で算出される無次元距離を示しており、X0 *は、式(4)で定義される無次元の仮想原点を示している。また、P0(X*=15)は式(5)で算出される値であり、無次元距離X*=15における絶対圧力(Pa)を示し、Pは大気圧(Pa)を示している。
さて、溶銑の[Si]が0.1質量%以上である段階(脱珪期)において、上吹きガスランス5からの酸素を供給することによって脱珪反応は進むものの、効率的に脱珪素反応を進めるためには(出来るだけ素早く溶銑の[Si]が0質量%になるまでの時間を短くするためには)、羽口7からガス(底吹きガス)を吹き込んで溶銑を撹拌することが必要である。本発明では、底吹きガスによる投入エネルギーεBを400W/t以上とすることにより、溶銑を効率よく撹拌し脱珪反応を進めている。底吹きガスの撹拌による脱珪反応の効率化は、投入エネルギーεBが2000W/tを超えたときに飽和するため、投入エネルギーεBの上限値は、2000W/tにしている。
なお、溶銑温度Tは、脱りん処理中に刻々と変化するが、この実施形態では、転炉型容器に溶銑を装入する直前の温度を用いた。溶鉄密度(溶銑密度)ρは、溶銑の成分と溶銑温度によって変わるが、この実施形態では、7000kg/m3を用いた。また、溶鉄深さ(溶銑深さ)hは、転炉型容器に装入した溶銑の装入量(装入溶銑量)や転炉型容器内に施工した耐火物の損耗状態によって変化する。この実施形態では、装入溶銑量は、実操業の平均値である262tとし、転炉型容器内に耐火物を施工した直後の炉内形状のプロフィールを基準として、溶鉄深さhを一律2mとした。なお、重力加速度g、大気圧力pは、それぞれ、9.8m/s2、101325Paの定数を用いた。
なお、脱りん処理中において、溶銑の[Si]によって処理条件を変更することとしているが、脱りん処理中に溶銑をサンプリングして[Si]の濃度の分析を行ってからでは、切替時期を逸してしまうため、式(10)を用いて脱りん処理中の[Si]を得ることとしている。なお、炉内に供給する酸素として、気体酸素以外に、後述するスケールや鉄鉱石に含まれる酸素もあるが、これは考慮しない。
脱珪期の終了後の脱りん期においては、脱炭反応が活発になるため、上吹の酸素ガスの溶銑へ与えるエネルギー、即ち、溶銑面衝突圧力PSが大きすぎると、COガスの発生によるダスト損失が増加するため、脱りん期では、脱珪期に比べて溶銑面衝突圧力PSを低下させる必要がある。それゆえ、本発明では、溶銑面衝突圧力PSを、大きくとも1600Pa以下、望ましくは、1500Pa以下にしている。しかしながら、溶銑面衝突圧力PSを小さくしすぎると、本来の目的である脱りん反応が起こらなくなるため、最小でも溶銑面衝突圧力PSを820Pa、望ましくは、900Pa以上、さらに望ましくは、1000Pa以上確保するのがよい。
脱りん期において、底吹きガスによって溶銑を撹拌する力が大きいと脱りん反応は効率よく進む。投入エネルギーεBを少なくとも1000W/t以上にすれば、底吹きガスによる溶銑の撹拌力が強く、脱りん反応が進む。一方で、投入エネルギーεBを3000W/tより大きくしてしまうと、溶銑の撹拌が強すぎ、スラグ中のFeOが溶銑中の炭素Cによって過度に還元されてスラグの脱りん能力が低下するため、投入エネルギーεBの上限値を3000W/tとしている。
PS/εB=1.0である場合は、上吹き酸素ガスが強すぎず弱すぎない状況であるため、上吹きガスランスからの酸素ガスによって、スラグ中のFeO濃度を脱りん処理に必要な濃度にまで高めることができる。しかしながら、PS/εB>1.0にしてしまうと、スラグ中のFeO濃度は高められるものの、FeO濃度が脱りん処理に必要な濃度以上であって過剰に高まった状態となり、転炉型容器全体として見たときは当該転炉型容器内のFe分をFeOとして取り込んでしまい鉄損失となる。ゆえに、PS/εBは1.0未満にする必要がある。一方、PS/εBが小さすぎると、スラグ中のFeO濃度を脱りん処理に必要な濃度に維持することが難しくなるため、PS/εBの下限値は0.3にする必要がある。
脱りん処理前の溶銑の成分は、[C]=4.1〜4.78質量%、[Si]=0.18〜0.58質量%、[Mn]=0.20〜0.32質量%、[P]=0.107〜0.160質量%とした。また、脱りん処理前の溶銑温度を1287〜1396℃とした。溶銑温度及び成分値は、混銑車から転炉型容器に溶銑を搬送する容器(取鍋)に、溶銑を装入したときに、溶銑を一部採取したときのものである。
実施例1〜19では、溶銑中の[Si]が0.10質量%以上である段階(脱珪期の欄)では、上吹き酸素ガスの溶銑面衝突圧力PSを1650Pa以上3300Pa以下、底吹きガスによる投入エネルギーεBを400W/t以上2000W/t以下、PS/εBを1以上5以下としている。
一方、比較例20〜38では、脱珪期における条件(溶銑面衝突圧力PS、投入エネルギーεBの値、PS/εBの値)、若しくは、脱りん期における条件(溶銑面衝突圧力PS、投入エネルギーεBの値、PS/εBの値)が本発明に規定した条件から外れている。
図4は、実施例及び比較例における処理後の[P]とチャージ数の関係をまとめたものである。実施例及び比較例における処理後の[P]に関して、図4に示すように、[P]の平均値の顕著な差は見られなかったものの、ばらつき(標準偏差)については、図5に示すように、実施例は0.00286質量%であって、0.00689質量%の比較例に比べて改善された。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積など
は、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
2 転炉型容器
3 炉体
4 炉口
5 上吹きガスランス
6 底部
7 底吹き羽口
8 吐出口
Claims (1)
- 上吹きの転炉型容器を用いて、[C]≧4質量%、[P]≧0.06質量%を含む溶銑に対して脱りん処理を行って、当該脱りん処理後に[C]≧2.5質量%、且つ、0.001質量%≦[P]≦0.04質量%とするに際し、
上吹きの酸素ノズルの吐出口における酸素ガスの噴出線速度を、マッハ1以上、マッハ1.7以下とし、
溶銑中の[Si]が0.10質量%以上である段階では、上吹き酸素ガスの溶銑面衝突圧力PSを1650Pa以上3300Pa以下、底吹きガスによる投入エネルギーεBを400W/t以上2000W/t以下、PS/εBを1以上5以下とし、
溶銑中の[Si]が0.00質量%を超えて0.10質量%未満となった段階で、溶銑面衝突圧力PSを820Pa以上1600Pa以下、投入エネルギーεBを1000W/t以上3000W/t以下、PS/εBを0.3以上1未満へ変更することを特徴とする転炉型容器における上吹き条件を変更する脱りん処理方法。
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