JP2018059161A - 溶銑の脱りん方法 - Google Patents

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崇 杉谷
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貴光 中須賀
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真也 大谷
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【課題】転炉型容器を用いた脱りん処理における、脱りん効率と鉄歩留の向上を両立することができる溶銑の脱りん方法の提供。【解決手段】転炉型容器1を用い、出口径De/スロート径Dtが1.40〜1.70のラバールノズル4を先端に備えた上吹ランス2から酸素ガスを吹付け且つ底部から底吹ガスを吹込んで溶銑を攪拌しつつ吹錬を行う溶銑の脱りん方法において、脱珪期、脱りん期において酸素ガス流量、酸素ガス流量/底吹ガス流量比を各々所定の値とする。【選択図】図1

Description

本発明は、転炉型容器で行う溶銑の脱りん方法であって、特に、低りん溶銑と高い鉄歩留を両立することのできる脱りん処理方法に関する。
高炉から出銑された溶銑には、りんが多く含まれ、りん濃度[%P](単位:mass%)が高い状態となっている。近年では、高品質化の要求が高まってきており、それに応えるために、転炉での脱炭処理の前に、高濃度の[%P]が含まれる溶銑を、例えば転炉型容器に装入して脱りん処理を行うのが一般的である。
転炉型容器を用いた脱りん処理では、装入された溶銑に対して、上方に備えられている上吹ランスから酸素ガスを吹き付けて溶銑中のりんを酸化させる事で、脱りん処理を行っている。
一般的に、上吹きランスの先端には、酸素ガスを吹き込む孔として、ラバールノズルが採用されている。このラバールノズル(中細ノズル)は、酸素ガスを吹き込む際の圧力エネルギーを高効率で、噴流の運動エネルギーに変換できるものである。
ラバールノズルが採用されている上吹きランスを用いて、脱りん処理を行う方法としては、例えば、特許文献1〜11に開示されているものがある。
特許文献1は、スプラッシュ等の溶湯飛散を発生させず、且つ脱炭反応を促進させることなく、高効率に溶銑を脱りんすることを目的としている。
具体的には、溶銑の脱燐処理をする際、ラバールノズル1孔当たりの送酸速度Fh(Nm3/hr)と、ラバールノズルのスロート径Dt(mm)とに対して、(1)式を満足する設定ノズル背圧Po(kPa)を定め、この設定ノズル背圧Poと、雰囲気圧Pe(kPa)と、スロート径Dt(mm)とから、(2)式により得られる出口径De(mm)を有するラバールノズルを備えた上吹きランスを用い、送酸速度を0.6〜2.0Nm3/min.Tとし、ノズル背圧Pを設定ノズル背圧Po以上として酸素を供給することとしている。
特許文献2は、スプラッシュ等の溶湯飛散を発生させず且つ脱炭反応を促進させることなく、高効率に溶銑を脱燐することを目的としている。
具体的には、溶銑の脱燐処理をする際、ラバールノズル1孔当たりの送酸速度Fh(Nm3/hr)と、ラバールノズルのスロート径Dt(mm)とに対して、(1)式を満足する設定ノズル背圧Po(kPa)を定め、この設定ノズル圧力Poを2倍した設計ノズル背圧Poo(kPa)と、雰囲気圧Pe(kPa)と、スロート径Dt(mm)とから、(2)式により得られる出口径De(mm)を有するラバールノズルを備えた上吹きランスを用い、送酸速度を2.0Nm3/min.T以下として酸素を供給することとしている。
特許文献3は、蛍石を使用せず、低燐鋼を効率よく製造することを目的としている。
具体的には、脱りん吹錬後のスラグ塩基度を1.8以上2.4以下とし、火点面積と溶銑浴表面積との比を0.15以上とし、3mm以下のCaO粒子を投射することとしている。
特許文献4は、転炉型容器による溶銑の脱りん処理後の鉄歩留を高くすることを目的としている。
具体的には、上吹酸素ガスの噴出線速度をマッハ1〜1.7とし、溶銑中[Si]が0.10質量%以上のときでは、上吹き酸素ガスの溶銑面衝突圧力を1650〜3300Pa、底吹きガスによる投入エネルギーを400〜2000W/t、上吹の圧力/底吹エネルギーを1〜5とし、溶銑中の[Si]が0.00〜0.10質量%のときでは、溶銑面衝突圧力を820〜1600Pa、投入エネルギーを1000〜3000W/t、上吹圧力/底吹エネルギーを0.3〜1へと変更することとしている。
特許文献5は、転炉型容器による溶銑の脱りん処理後の鉄歩留を高くすることを目的としている。
具体的には、溶銑中[Si]が0.10質量%以上のときでは、第1投入エネルギーεT=500〜3000W/t、第2投入エネルギーεB=400〜2000W/t、0.5≦εTB≦3とし、溶銑中の[Si]が0.00〜0.10質量%のときでは、εT=50〜400W/t、εB=1000〜3000W/t、0.02≦εTB≦0.3とすることとしている。
特許文献6は、スラグ滓化と溶銑温度を精度良く制御することで、安定的かつ高精度に低りん鋼を溶製することを目的としている。
具体的には、上吹ハードブローおよび底吹撹拌動力をソフトブローとする脱珪期と、上吹ソフトブローおよび底吹撹拌動力をソフトブローとする造滓期と、上吹ソフトブローおよび底吹撹拌動力をハードブローとする脱りん期を設けることとしている。
特許文献7は、脱りん精錬において、ハロゲン化物を用いずに脱りん効率を上げ、スラグ発生量を低下させることを目的としている。
具体的には、上吹酸素による溶銑の凹み深さ(キャビティー深さ)を制御することにより、溶銑/スラグ界面の酸素活量を高くし、脱りん効率を向上することとしている。
特許文献8は、脱炭特性を維持したまま、脱りん処理を効率よく実施することで、フラックス原単位の低減、脱りん処理時間の短縮等を図り、低りん鋼を低コストで溶製することを目的としている。
具体的には、複数のラバールノズルを有し、各ノズルのスロート径dt(mm)および出口径de(mm)が下記式を満足する転炉用上吹き酸素ランス(ただし、式中、1.20≦α<1.40、n:ノズル数、FO2 dC:脱炭処理時の上吹き酸素流量(Nm3 /h))、及び、そのランスを用いて脱りん処理および脱炭処理を別々に行うこととしている。
特許文献9は、転炉形精錬容器での酸素精錬により冷鉄源の溶解を伴いながら、脱りん処理を効率的に行うことを目的としている。
具体的には、底吹ガス流量を0.1〜0.3Nm3/minとし、精錬初期から中期にかけて、上吹酸素ガスによる鉄浴表面へこみ深さが、下記式を満足するように行うこととしている。
0.20≦L/L0≦0.30
ただし、L:酸素ジェットによる鉄浴表面のへこみ深さ,L0:酸素ガス供給前の鉄浴深さ(m)
特許文献10は、冷鉄源を溶解すべく溶銑を吹込みガスによって強撹拌しながら脱P処理を行う予備精錬方法であって、熱ロスが小さく、しかも短時間で脱P処理を行うことができる予備精錬方法を提供することを目的としている。
具体的には、脱りん精錬において、二次精錬スラグを3〜10kg/溶銑t添加し、二次精錬スラグの塩基度が1.8〜3.5であって、T.Fe:0〜10重量%、SiO2:15〜25重量%、CaO:35〜50重量%、Al2O3:10〜30重量%とすることとしている。
特許文献11は、酸素精錬設備を用い、且つC:3%以上の溶銑に対して配合率15%以下の冷鉄源の完全溶解処理中に同時脱P処理する方法を提供することを目的としている。
具体的には、冷鉄源溶解期には、底吹きガスによる強攪拌下で固体酸素源を連続的に供給し、Si反応完了後のスラグ塩基度を1.5〜2.5になるように脱Pフラックスを脱Si反応が完了するまでに添加し、鉄浴温度が1300〜1350℃となるのに必要な量の上吹酸素を供給し、冷鉄源溶解完了後の上吹き酸素供給量を、スラグのT.Feが5%以下とならないよう低下させることとしている。
特開2002−256318号公報 特開2002−256319号公報 特開2010−095785号公報 特開2015−140462号公報 特開2014−221932号公報 特開2009−052070号公報 特開2001−131621号公報 特開2001−200309号公報 特開平08−104912号公報 特開平08−041516号公報 特開平07−188722号公報
さて、転炉型容器を用いた脱りん処理においては、略同形状の転炉型容器を用いて実施する脱炭処理と比較して、処理の温度、すなわち処理終了後の温度が低い。例えば、転炉型容器を用いた脱りん処理後の温度は、1200℃〜1400℃程度であり、略同形状の転炉型容器を用いた脱炭処理後の温度は、1550℃〜1700℃程度である。
そのため、炉内に付着する鉄(地金)量が多く、転炉型容器に装入した鉄分に対する、処理後に容器から排出される鉄分の比率、すなわち鉄歩留が低下しやすい。このような鉄歩留の低下は、粗鋼生産量の低下を招き、ひいては収益低下に繋がることから、転炉型容器を用いた脱りん処理においては、溶銑を効率的に脱りんすることに加え、鉄歩留の向上が重要な課題となっている。
しかしながら、上で例示した特許文献1〜11の技術は、前述の課題を解決するものとはなっていない。
特許文献1について、通常脱りんが進行している限りは脱炭も不可避的に生じているはずであるが、処理後C濃度についての記載はなく、脱炭反応も考慮した操業条件となっていない。また、脱りん効率と鉄歩留の向上を両立するためには、処理の操業条件を適切に切り換える必要があるが、この特許文献1では処理を通じて操業条件が一定であり、脱りん効率と鉄歩留の向上を両立するための最適条件とはなっていない。
特許文献2について、通常脱りんが進行している限りは脱炭も不可避的に生じているはずであるが、処理後C濃度の記載がなく、脱炭反応も考慮した操業条件となっていない。また、この文献も上記と同様に、処理を通じて操業条件が一定であり、脱りん効率と鉄歩留の向上を両立するための最適条件とはなっていない。
特許文献3は、脱りん効率のみに特化した技術であって、鉄歩留の向上も考慮した操業条件となっていない。また、この文献も上記と同様に、処理を通じて操業条件が一定であり、脱りん効率と鉄歩留の向上を両立するための最適条件とはなっていない。
特許文献4、5は、上吹酸素ガスの圧力と、底吹ガスのエネルギーとの比を適正範囲とすることで、過剰なFeOの生成抑制や、過度のCOガス発生に伴う鉄分飛散を抑制して、鉄歩留を向上させている技術である。しかし、本願発明は、不可避的に発生するCOガスの燃焼を活用して鉄歩留を向上させることを目的としており、同文献の技術思想とは異なるものである。なお、この同文献においては、上吹ランス高さや、上吹ランス先端のランスチップ構造をも含めた操業条件について、特に言及されていない。
特許文献6は、脱りん能に着目した技術であって、鉄歩留も考慮した技術とは異なるものである。なお、この同文献においては、上吹ランス高さや、上吹ランス先端のランスチップ構造をも含めた操業条件について、特に言及されていない。
特許文献7は、上吹ランス高さや、上吹ランス先端のランスチップ構造をも含めた操業条件について、特に言及されておらず、最適な操業パターンとは言い難い。
特許文献8は、脱りん効率と脱炭効率にのみ着目しており、熱付与による鉄歩留の向上をも狙いとした本願発明と技術思想が異なる。また、同文献の発明例では、単一の操業条件で実施されており、その操業パターンの適正化については全く言及されていない。つまり、この技術では、脱りん効率と鉄歩留の向上を両立させることが難しいと考えられる。
特許文献9は、冷鉄源を用いた場合の脱りん処理に関する技術であるが、鉄歩留の向上まで考慮した最適操業については言及されていない。なお、この同文献においては、上吹ランス高さや、上吹ランス先端のランスチップ構造をも含めた操業条件について、特に言及されていない。
特許文献10は、二次精錬スラグを添加して脱りん処理を行うことに着目した技術である。この同文献には、脱りん効率と鉄歩留の向上を両立するための操業条件については言及されていない。なお、この同文献においては、上吹ランス高さや、上吹ランス先端のランスチップ構造をも含めた操業条件について、特に言及されていない。
特許文献11は、冷鉄源溶解を行いながら、固体酸素源の連続的な供給と、スラグT.Fe濃度を確保することによって、脱りん処理を行うことに着目した技術である。この同文献には、脱りん効率と鉄歩留の向上を両立するための操業条件には言及されていない。なお、この同文献においては、上吹ランス高さや、上吹ランス先端のランスチップ構造をも含めた操業条件について、特に言及されていない。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、転炉型容器を用いた脱りん処理における、脱りん効率と鉄歩留の向上を両立することができる溶銑の脱りん方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明にかかる溶銑の脱りん方法は、先端にラバールノズルが備えられた上吹ランスから酸素ガスを吹き付けるとともに、底部から底吹ガスを吹き込んで、装入された溶銑を攪拌しつつ吹錬を行う転炉型容器を用いた溶銑の脱りん方法において、スロート径Dt(mm)と出口径De(mm)との比であるDe/Dtが、1.40以上1.70以下とされた前記ラバールノズルから酸素ガスを吹き付けることで、[%C]≧4mass%、[%Si]≧0.1mass%、[%P]≧0.08mass%を含有する溶銑を、[%C]≧2.5mass%、0<[%Si]≦0.03mass%、0.007≦[%P]≦0.045mass%を含有する溶銑へと吹錬する脱りん処理であって、
i)溶銑中のPよりもSiが優先的に取り除かれる脱珪期の段階では、前記上吹ランスに備えられたラバールノズルからの酸素ガス流量Po2(1)(Nm3/min/t)が、式(1)で示す範囲を満たし、
1.06×(De/Dt)+0.331×H(1)-1.15≦Po2(1)≦0.338×(De/Dt)+0.274×H(1)+0.517 ・・・(1)
ただし、H(1):脱珪期での上吹ランスの高さ(m)
前記転炉型容器の底部から吹き込まれる底吹ガス流量V(1)(Nm3/min/t)と前記酸素ガス流量Po2(1)(Nm3/min/t)との比であるPo2(1)/V(1)が、8以上13以下となるように、前記底吹ガス流量V(1)を制御し、
ii)前記脱珪期の後であって、溶銑中のSiよりもPが優先的に取り除かれる脱りん期の段階では、前記上吹ランスに備えられたラバールノズルからの酸素ガス流量Po2(2)(Nm3/min/t)が、式(2)で示す範囲を満たし、
0.300×(De/Dt)+0.135×H(2)−0.292≦Po2(2)≦0.851×(De/Dt)+0.248×H(2)-1.06 ・・・(2)
ただし、H(2):脱りん期での上吹ランスの高さ(m)
前記転炉型容器の底部から吹き込まれる底吹ガス流量V(2)(Nm3/min/t)と前記酸素ガス流量Po2(2)(Nm3/min/t)との比であるPo2(2)/V(2)が、4.5以上10以下となるように、前記底吹ガス流量V(2)を制御して吹錬を行うことを特徴とする。
本発明によれば、転炉型容器を用いた脱りん処理における、脱りん効率と鉄歩留の向上を両立することができる。
転炉型容器を用いた脱りん処理の概略を模式的に示した図である。 上吹ランスの先端、すなわちランスチップの概略を模式的に示した拡大図である。 ラバールノズルの側面視形状を模式的に示した図である。 脱りん処理中における溶銑P,Si,C濃度の変化を模式的に示した概念図である。 ラバールノズルのスロート径Dtと出口径Deとの比であるDe/Dt=1.40における、脱珪期での上吹ランス高さH(1)と上吹酸素ガス流量Po2(1)の実績を示すグラフである。 ラバールノズルのスロート径Dtと出口径Deとの比であるDe/Dt=1.55における、脱珪期での上吹ランス高さH(1)と上吹酸素ガス流量Po2(1)の実績を示すグラフである。 ラバールノズルのスロート径Dtと出口径Deとの比であるDe/Dt=1.70における、脱珪期での上吹ランス高さH(1)と上吹酸素ガス流量Po2(1)の実績を示すグラフである。 底吹ガス流量V(1)と上吹酸素ガス流量Po2(1)との比であるPo2(1)/V(1)と処理後りん濃度の関係を示すグラフである。 底吹ガス流量V(1)と上吹酸素ガス流量Po2(1)との比であるPo2(1)/V(1)と鉄歩留の関係を示すグラフである。 ラバールノズルのスロート径Dtと出口径Deとの比であるDe/Dt=1.40における、脱りん期での上吹ランス高さH(2)と上吹酸素ガス流量Po2(2)の実績を示すグラフである。 ラバールノズルのスロート径Dtと出口径Deとの比であるDe/Dt=1.55における、脱りん期での上吹ランス高さH(2)と上吹酸素ガス流量Po2(2)の実績を示すグラフである。 ラバールノズルのスロート径Dtと出口径Deとの比であるDe/Dt=1.70における、脱りん期での上吹ランス高さH(2)と上吹酸素ガス流量Po2(2)の実績を示すグラフである。 底吹ガス流量V(2)と上吹酸素ガス流量Po2(2)との比であるPo2(2)/V(2)と処理後りん濃度の関係を示すグラフである。 底吹ガス流量V(2)と上吹酸素ガス流量Po2(2)との比であるPo2(2)/V(2)と鉄歩留の関係を示すグラフである。 処理後りん濃度と鉄歩留を示すグラフである。 処理後りん濃度のヒストグラムである。 鉄歩留のヒストグラムである。
以下、本発明にかかる溶銑の脱りん方法の実施形態を、図を参照して説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明を具体化した一例であって、その具体例をもって本発明の構成を限定するものではない。従って、本発明の技術的範囲は、本実施形態に開示内容だけに限定されるものではない。
本発明は、上吹ランスから酸素ガス(上吹酸素ガス)を吹き付けるとともに、底吹き羽口に備えられている底吹きノズルから酸素ガス(底吹ガス)を吹き込んで、反応容器に装入された溶銑を攪拌しつつ吹錬を行うものであり、脱りん反応中に発生するCOガスを燃焼させることによる二次燃焼を活用して、処理終了後に炉外に排出されない炉内付着鉄(地金)を溶解させることで、炉内の脱りん能と鉄歩留の向上を両立させようとすることを目的としている。
まず、本発明の溶銑の脱りん方法で用いる反応容器について、述べる。
溶銑に対して脱りん処理を行う反応容器には、混銑車や取鍋等が挙げられるが、本発明においては、図1に示すように、溶銑面から炉口までの距離(フリーボード)が大きく二次燃焼領域が広い転炉型容器を対象とする。
なお、転炉型容器を用いた脱りん処理においては、略同形状の転炉型容器を用いた脱炭処理と比較して、処理の温度、すなわち処理終了後の温度が低い。例えば、転炉型容器を用いた脱りん処理後の温度は、1200℃〜1400℃程度であり、略同形状の転炉型容器を用いた脱炭処理後の温度は、1550℃〜1700℃程度である。
そのため、炉内に付着する鉄(地金)の量が多く、転炉型容器に装入した鉄分に対する、処理後に容器から排出される鉄分の比率、すなわち鉄歩留が低下しやすい。このような鉄歩留の低下は、粗鋼生産量の低下を招き、ひいては収益低下に繋がることから、転炉型容器を用いた脱りん処理においては、溶銑を効率的に脱りんすることに加え、鉄歩留の向上が重要な課題となっている。
さて、本発明においては、高炉から出銑され、[%C]≧4mass%、[%Si]≧0.1mass%、[%P]≧0.08mass%を含有する溶銑を、[%C]≧2.5mass%、0<[%Si]≦0.03mass%、0.007≦[%P]≦0.045mass%を含有する溶銑へと吹錬する脱りん処理の技術を対象としている。
なお、[%M]は、溶銑中の濃度を示し、単位はmass%である。
高炉から出銑された溶銑には、りん濃度[%P](単位:mass%)が高く含まれている。近年では、高品質化の要求が高まってきている。その要求に応えるために、転炉での脱炭処理の前に、高濃度の[%P]が含まれる溶銑を転炉型容器に装入して、脱りん処理を行うのが一般的である。
また、本発明の対象は、処理後のCを1%以下にまで脱炭する、一般的な転炉脱炭精錬ではなく、脱炭精錬に先立つ、事前の溶銑脱りん精錬を対象としている。
本発明においては、近年高まっている、鋼材の高品質化の要求に応えるため、溶銑の脱りん処理において、処理後のりん濃度の閾値を0.020mass%とし、その処理後のりん濃度が0.020mass%以下となれば、脱りんが十分に進行したと判断することとしている(例えば、特開2009-052070号公報、特開2015-140462号公報など参照)。
また、本発明においては、鉄歩留の低下が課題となっている転炉型容器を用いた脱りん処理において、処理後の鉄歩留が97.5%以上となれば、鉄歩留が高いと判断することとしている(例えば、特許2015-140462号公報など参照)。
なお、鉄歩留の算出方法は、以下の通りである。
ただし、
・処理後に転炉から出湯した全鉄分(t)=(100-処理後溶銑[C](%)−処理後溶銑[Si](%)−処理後溶銑[Mn](%)−処理後溶銑[P](%)−処理後溶銑[S](%))/100×出湯量(t)
・転炉に装入した全鉄分(t)=(100-処理前溶銑[C](%)−処理前溶銑[Si](%)−処理前溶銑[Mn](%)−処理前溶銑[P](%)−処理前溶銑[S](%))/100×溶銑装入量(t)+ミルスケール装入量(kg)/1000(kg/t)×ミルスケール中鉄分濃度(50%)+鉄鉱石装入量(kg)/1000(kg/t)×鉄鉱石中鉄分濃度(63%)+その他の装入した鉄分(t)
(t)は重量トンを意味する。なお、その他の装入した鉄分について、本実施形態では装入していないが、屑鉄、冷銑など、溶銑以外の鉄原料や、リサイクルスラグ、集塵ダストなど、ミルスケール、鉄鉱石以外の副原料を装入した場合は、その副原料に含まれる鉄分も分母に加えることとする。
ここで、本発明において用いる上吹ノズルの先端の形状、すなわちランスチップの形状について、述べることとする。
図2中の上図は、下方から見た、ランスチップの形状を模式的に示した図であり、下図はランスチップに備えられたラバールノズルの形状を模式的に示した側方断面図である。
一般的に、上吹きランスの先端には、酸素ガスを吹き込む孔として、ラバールノズルが採用されている。このラバールノズル(中細ノズル)は、酸素ガスを吹き込む際の圧力エネルギーを高効率で、噴流の運動エネルギーに変換できるものである。
図2中の下図に示すように、ラバールノズルにおいて、細く絞られた箇所がスロート部とされている。その直径をスロート径と呼び、「Dt」(mm)と表している。なお、「De」は、ラバールノズルの出口の径を示し、単位は(mm)である。
図3において、上図は適正膨張とされた形状のラバールノズルを模式的に示した側方断面図であり、下図は過膨張とされた形状のラバールノズルを模式的に示した側方断面図である。
図3に示すように、通常、ラバールノズルの形状及び寸法から、適正マッハ数、適正圧、適正流量が決定され、それに基づいた脱りん処理の条件が設定される。ラバールノズルの出口に向かっての形状が適正に膨張しているものが適正膨張とされている。その適正膨張に基づいた適正条件、乃至は、その適正条件に近い条件で操業されている。
一方、上記の適正膨張ではない形状のラバールノズルを用いての操業、すなわち適正条件から外れた領域で操業された場合、衝撃波や膨張波の発生により噴流のエネルギーロスが大きくなることが知られており、このようなラバールノズルの形状を不適正膨張(過膨張)と呼んでいる(参考文献:内藤憲一郎ら,新日鐵技報394(2012),p33.) 。
本発明の転炉型容器を用いた溶銑の脱りん方法では、敢えて、ラバールノズルのスロート径Dt(mm)と出口径De(mm)との比であるDe/Dtが、1.40以上1.70以下の、不適正膨張(過膨張)の形状を備えているランスチップを備えた上吹きランスを用いて、脱りん処理を行うこととしている。
このような過膨張のラバールノズルを備えた上吹ランスを使用することで、転炉型容器内にCOガスが存在する雰囲気において、噴流のエネルギーを意図的に低下させて、効率的にCOガスを燃焼させることができる。
このCOガスの燃焼熱(二次燃焼)によって、炉内に付着した地金を溶解、あるいは、地金の付着そのものを抑制することができるようになるため、鉄歩留を向上させることが可能となる。
ところで、De/Dtが1.40未満ではCOガスの燃焼が起こらないので、適さない。一方、De/Dtが1.70を超えてしまうと、噴流のエネルギーロスが多くなりすぎてしまい、脱炭反応が起こらず、二次燃焼に必要なCOガスそのものが発生しなくなる。
それ故、本発明においては、先端(ランスチップ)にDe/Dt=1.40以上1.70以下のラバールノズルを備えている上吹ランスを使用することを前提としている。
なお、ただ単純に、本発明で規定した上吹ランスを用いて脱りん処理の操業を行えば良いという訳ではなく、COガスの発生とその燃焼、および、脱りん反応を両立させる必要がある。
そこで本発明では、脱りん反応のみでなく、脱炭反応によりCOガスを発生させて、そのCOガスの燃焼によって、炉内に付着する地金を低減して鉄歩留を向上させるために、上吹ランスから吐出される酸素ガスの流量(上吹酸素ガス流量)Po2と、底吹き羽口に備えられている底吹きノズルから吐出される底吹ガス流量Vとの比、および、ラバールノズルのスロート径Dtと出口径Deとの比De/Dtに応じた上吹酸素ガス流量Po2と、上吹ランスの高さHの条件を適正化した。
なお、「H」は、図1に示すように、上吹ランスの吐出部から溶銑装入後の溶銑面までの距離であり、単位は(m)である。「Po2」は、上吹ランスに備えられたラバールノズルからの上吹酸素ガス流量であり、単位は(Nm3/min/t)である。「V」は、転炉型容器の底部に備えられている底吹き羽口からの底吹ガス流量であり、単位は(Nm3/min/t)である。
次いで、溶銑中のPよりもSiが優先的に取り除かれる脱珪期の段階について、述べることとする。
図4は、脱りん処理中における溶銑P,Si,C濃度の変化を模式的に示した概念図である。
転炉型容器を用いた精錬プロセスでは、先ず[P]よりも、溶銑中で最も酸化されやすい元素である[Si]が、上吹酸素ガス(気酸)と反応することとなる。この[Si]が反応する期間を、本発明においては脱珪期としている。なお、この脱珪期を便宜上、第1期と呼ぶこともある。
図4に示すように、溶銑中のSi濃度が0.03〜0.08mass%の範囲までは、主に脱珪反応が進行する。したがって、脱珪期の時間は、以下に示す式を用いて、溶銑中のSi濃度が0.03〜0.08mass%となるのに必要な時間を導出すればよい。ただし、本発明においては、処理中の溶銑Si濃度=0.05mass%として、脱珪に必要な時間を算出した。
なお、炉内に供給する酸素として、上吹酸素ガス(気酸)以外に、脱りん剤に含まれる酸素(固酸)もあるが、本発明では考慮していない。
ただし、
22.4(Nm3/kmol):酸素ガスのモル体積
本発明では、脱珪期において、上吹ランスに備えられたラバールノズルからの上吹酸素ガス流量Po2(1)(Nm3/min/t)を、以下の式(1)で示す範囲を満たすようにしている。
1.06×(De/Dt)+0.331×H(1)-1.15≦Po2(1)≦0.338×(De/Dt)+0.274×H(1)+0.517 ・・・(1)
ただし、H(1):脱珪期(第1期)での上吹ランスの高さ(m)
(De/Dt):ラバールノズルのスロート径Dt(mm)と出口径De(mm)との比
ところで、本発明で規定する上吹ランスを用いて溶銑の脱りん処理を行う場合、脱珪期において、従来通りの操業パターンで、式(1)を満たすように気酸(上吹酸素ガス)を供給しても、脱珪反応が進行しないといった問題や、酸素ガスを上吹きすることによる溶銑の飛散に伴う鉄歩留の低下等の問題が生じる虞がある。
このような問題を解決するため、式(1)に示すように、脱珪期における操業パターン(上吹ランスの先端に備えられたラバールノズルの形状に関する比(De/Dt)と、上吹ランス高さH(1)に応じた上吹酸素ガス流量Po2(1))の適正範囲を導出した。
以上より、本発明は、脱りん能と鉄歩留を両立するために、上吹ランスの形状と、その上吹ランスを用いた、脱珪期における操業方法について、最適な条件を設定し、その最適条件に基づいて、実際の脱珪期における操業を行うこととしている。
また、本発明では、脱珪期において、転炉型容器の底部に備えられている底吹き羽口からの底吹ガス流量V(1)(Nm3/min/t)と、上吹酸素ガス流量Po2(1)(Nm3/min/t)との比であるPo2(1)/V(1)が、8以上13以下となるように、底吹ガス流量V(1)を制御することとしている。
脱珪期においては、効率的に脱珪反応を促進させるために、底吹き羽口に備えられた底吹きノズルから底吹ガスを吹き込んで、溶銑の攪拌を行っている。
ところで、上吹酸素ガス流量Po2(1)に対して、底吹ガス流量V(1)が少なすぎると、脱珪反応効率が低下してしまう。そのため、脱りん期へ移行後も脱珪処理を行うこととなり、脱りん能が低下してしまう。
一方で、上吹酸素ガス流量Po2(1)に対して、底吹ガス流量V(1)を過剰に多くしても、脱珪反応促進効果はある段階で頭打ちとなってしまう。それに加えて、底吹ガスによる溶銑の飛散により、鉄歩留が低下してしまう。
以上より、底吹ガス流量V(1)と上吹酸素ガス流量Po2(1)との比であるPo2(1)/V(1)には、適正範囲があることを知見した。その適正範囲は、後述する実験例に基づいて導出した。
続いて、脱珪期の後であって、溶銑中のSiよりもPが優先的に取り除かれる脱りん期について、述べることとする。なお、脱りん期を便宜上、第2期と呼ぶこともある。
図4に示すように、溶銑中のSi濃度が低下した後に、溶銑中のPやCが取り除かれる反応が生じることとなる。
本発明では、脱りん期において、上吹ランスに備えられたラバールノズルからの上吹酸素ガス流Po2(2)(Nm3/min/t)を、式(2)で示す範囲を満たすようにしている。
0.300×(De/Dt)+0.135×H(2)−0.292≦Po2(2)≦0.851×(De/Dt)+0.248×H(2)-1.06 ・・・(2)
ただし、H(2):脱りん期(第2期)での上吹ランスの高さ(m)
(De/Dt):ラバールノズルのスロート径Dt(mm)と出口径De(mm)との比
このように、主に溶銑中のPとCが取り除かれる反応が生じる段階においては、溶銑中の[P]がスラグとの反応によって(3CaO・P2O5)の形で固定化される脱りん反応が起こると共に、溶銑中[C]と酸素とが反応してCOガスが発生する脱炭反応が起こることとなる。
ところで、本発明で規定する上吹ランスを用いて溶銑の脱りん処理を行う場合、脱りん期において、従来通りの操業パターンで気酸(上吹酸素ガス)を供給しても、脱りん反応が進行しないといった問題に加えて、脱炭反応によって生じたCOガスを気酸で燃焼させて熱を得る二次燃焼が進行しない等の問題が生じる虞がある。
このような問題を解決するため、式(2)に示すように、脱りん期における操業パターン(上吹ランスの先端に備えられたラバールノズルの形状に関する比(De/Dt)と、上吹ランス高さH(2)に応じた上吹酸素ガス流量Po2(2))の適正範囲を導出した。
以上より、本発明は、脱りん能と鉄歩留を両立するために、上吹ランスの形状と、その上吹ランスを用いた、脱りん期における操業方法について、最適な条件を設定し、その最適条件に基づいて、実際の脱りん期における操業を行うこととしている。
また、本発明では、脱りん期において、転炉型容器の底部に備えられている底吹き羽口からの底吹ガス流量V(2)(Nm3/min/t)と、上吹酸素ガス流量Po2(2)(Nm3/min/t)との比であるPo2(2)/V(2)が、4.5以上10以下となるように、底吹ガス流量V(2)を制御して吹錬を行うこととしている。
脱りん期においては、効率的に脱りん反応および脱炭反応を起こさせるために、底吹き羽口に備えられた底吹きノズルから底吹ガスを吹き込んで、溶銑の攪拌を行っている。
ところで、上吹酸素ガス流量Po2(2)に対して、底吹ガス流量V(2)が少なすぎると、脱炭反応も起こりにくくなり、鉄歩留が低下してしまうこととなる。
一方で、上吹酸素流量Po2(2)に対して、底吹ガス流量V(2)を過剰に多くすると、脱炭反応促進により二次燃焼の促進と、鉄歩留が向上する効果は得られるが、スラグ中のFeOXが過剰に還元されることとなり、スラグによる溶銑[P]の固定化が行われなくなり、脱りん能が低下してしまう虞がある。
以上より、底吹ガス流量V(2)と上吹酸素ガス流量Po2(2)との比であるPo2(2)/V(2)には、適正範囲があることを知見した。その適正範囲は、後述する実験例に基づいて導出した。
なお、(%MOX)は、スラグ中の濃度を示し、単位はmass%である。
以上述べた本発明に沿って、溶銑の脱りん処理を行えば、転炉型容器を用いた脱りん処理における、脱りん効率と鉄歩留の向上を両立することができる。
[実験例]
次に、本発明の溶銑の脱りん方法に従って実施した実験結果について、説明する。
まず、溶銑の脱りん処理の実施条件について、述べる。
脱りん処理前の溶銑について、脱りん処理を行う前に脱硫処理を行い、溶銑中[S]濃度を0.001〜0.010mass%に低下させた。溶銑の装入量は、240.7〜267tとした。また、その溶銑の処理前温度は、1250〜1373℃であった。なお、溶銑の処理前温度は、脱りん処理前に実施した脱硫処理終了後の温度を測定したものである。
脱りん処理前の溶銑の濃度については、以下の通りである。
・溶銑中[C]濃度、[%C]=4.03〜4.80mass%
・溶銑中[Si]濃度、[%Si]=0.10〜0.71mass%
・溶銑中[Mn]濃度、[%Mn]=0.10〜38mass%
・溶銑中[P]濃度、[%P]=0.082〜0.174mass%
・溶銑中[S]濃度、[%S]=0.001〜0.010mass%
なお、上記の濃度については、脱硫処理終了直後の溶銑の一部を採取し、化学分析に供した。
脱りん処理の処理条件について、副原料を炉上から上方投入する方法を採用した。なお、副原料の使用量については、当業者常法で決定した。
副原料種類については、以下の通りである。
・焼石灰(塊状CaO):CaO濃度=95mass%
・ミルスケール:T.Fe濃度=50mass%
・鉄鉱石:T.Fe濃度=63mass%
上吹ランスの先端に備えられているラバールノズルの形状については、以下の通りである。
・Type1:孔数=7、スロート径Dt=28.5mm 出口径De=40mm、ノズル角度=20°
・Type2:孔数=6、スロート径Dt=25mm 出口径De=38.7mm、ノズル角度=20°
・Type3:孔数=4、スロート径Dt=25mm 出口径De=42.5mm、ノズル角度=15°
上吹酸素ガス流量Po2については、以下の通りである。
・脱珪期の上吹酸素ガス流量Po2(1):1.15〜2.15(Nm3/min/t)
・脱りん反応期の上吹酸素ガス流量Po2(2):0.38〜1.31(Nm3/min/t)
底吹ガス流量Vについては、以下の通りである。
・脱珪期の底吹ガス流量V(1):0.11〜0.22(Nm3/min/t)
・脱りん反応期の底吹ガス流量V(2):0.05〜0.20(Nm3/min/t)
上吹ランスの高さHについては、2.6〜3.6mの範囲とした。
処理時間については、当業者常法により、9.4〜14.2分の範囲とした。
脱珪期の時間については、下式を用いて、導出した。
ただし、
22.4(Nm3/kmol):酸素ガスのモル体積
処理途中で採取した溶銑の分析結果を待って脱りん処理を行うと、処理時間が大幅に長くなってしまうので、本実施形態においては、上式を用いた計算によって脱珪期間を求めた。
脱珪期の後の脱りん期は、溶銑中[Si]濃度が0.03〜0.08mass%に達してから始まる。そのため、本実施形態においては、計算上の溶銑中[Si]濃度を0.05mass%として、脱珪反応に必要な時間の計算を行った。
なお、上式中の係数0.7は、当業者常法において得た係数(脱珪酸素効率)である。
処理途中の溶銑を採取することについては、サブランスで溶銑の一部を採取し、その採取した溶銑の一部を化学分析に供した。
処理後の溶銑について、その溶銑の出湯量は、242.4〜267.1tであった。また、その溶銑の処理後温度は、1289〜1370℃であった。なお、溶銑の処理後温度は、脱りん処理直後の転炉内溶銑の温度を測定したものである。
脱りん処理後の溶銑の濃度については、以下の通りである。
・溶銑中[C]濃度、[%C]=3.28〜4.58mass%
・溶銑中[Si]濃度、[%Si]=0.01〜0.03mass%
・溶銑中[Mn]濃度、[%Mn]=0.02〜0.1mass%
・溶銑中[P]濃度、[%P]=0.008〜0.045mass%
・溶銑中[S]濃度、[%S]=0.001〜0.014mass%
なお、上記の濃度については、脱りん処理直後の転炉内溶銑の一部を採取し、化学成分を分析した。
次に、溶銑の脱りん方法の実験結果について、図と表に従って説明する。
まず、本実験結果に対しての判断基準について、述べる。
処理後の溶銑りん濃度について、高品質化の要求に応えるためには、溶銑りん濃度を0.020mass%にする必要がある(特許4686874号公報、特許5338251号公報など参照)。
例えば、特許第4686874号公報の段落[0002]には、「高炉及び転炉を備えた銑鋼一貫製鉄所では、品質上からの低燐化・・・」と開示されている。また、同文献の段落[0041]には、「評価基準として、処理後の溶銑中のP濃度が0.020mass%以下・・・」と開示されている。
また、特許5338251号公報の段落[0002]には、「低燐鋼の需要の増加に伴い・・・」と開示されている。また、同文献の段落[0009]脱燐吹錬後の溶銑における燐濃度を0.020質量%以下とする・・・」と開示されている。
以上より、本発明においては、処理後りん濃度が0.020mass%に到達したか否かで、脱りん能の優劣を判断した。
一方、転炉型容器を用いた脱りん処理における鉄歩留については、例えば以下に示す、特開2015-140462号公報の記載などから考慮した。
この特開2015-140462号公報の段落[0009]には、「転炉型容器による溶銑の脱りん処理後の鉄歩留を高くすることができる。例えば、鉄分損失が2.5%以下、即ち、鉄歩留を97.5%以上にすることができる。」と開示されている。
以上より、本発明においては、97.5%を鉄歩留の閾値(下限値)として、鉄歩留の優劣を判断した。
表1、表2に、本発明の溶銑の脱りん方法に従って処理を行った実験の結果を示す(発明例1〜56)。なお、表1、表2は、一続きのものであり、説明しやすくするため、2分割としている。また、以降に示す表2、表4、表6、表8、表10中の脱りん判定、鉄歩留判定について、本発明で規定した閾値を満足した場合○とし、それら閾値のうちどれか一つでも満足しなかった場合×とした。
表1、表2の発明例1を参照すると、処理前の溶銑は、[%C]=4.24mass%であり、[%C]≧4mass%を満たし、[%Si]=0.18mass%であり、[%Si]≧0.1mass%を満たし、[%P]=0.088であり、[%P]≧0.08mass%を満たすものである。
ラバールノズルの出口径Deが38.7mmであり、スロート径Dtが25mmである。スロート径Dtと出口径Deとの比であるDe/Dtが1.40となり、1.40以上1.70以下を満たす。なお、脱珪期での上吹ランスの高さH(1)は、2.6mである。
上記のDe/Dtの値とH(1)の値から導き出される式(1)の下限が1.19となり、上限が1.70となる。脱珪期(第1期)における上吹酸素ガス流量Po2(1)が1.28Nm3/min/tであり、式(1)で示す範囲を満たす。なお、底吹ガス流量V(1)は、0.13Nm3/min/tである。
脱珪期の底吹ガス流量V(1)と上吹酸素ガス流量Po2(1)との比であるPo2(1)/V(1)が9.7となり、8以上13以下を満たす。
続いて、脱りん期においては、上吹ランスの高さH(2)は、3.2mである。
上記のDe/Dtの値とH(2)の値から導き出される式(2)の下限が0.56となり、上限が0.93となる。脱りん期(第2期)における上吹酸素ガス流量Po2(2)が0.72Nm3/min/tであり、式(2)で示す範囲を満たす。なお、底吹ガス流量V(2)は、0.13Nm3/min/tである。
脱りん期の底吹ガス流量V(2)と上吹酸素ガス流量Po2(2)との比であるPo2(2)/V(2)が5.4となり、4.5以上10以下を満たす。
すると、処理後の溶銑は、[%C]=3.69mass%となり、[%C]≧2.5mass%を満たし、[%Si]=0.01mass%となり、0<[%Si]≦0.03mass%を満たし、[%P]=0.01mass%となり、本発明で規定した閾値[%P]≦0.020mass%を満たすものとなり、脱りん処理が良好なものとなった。また、処理後の鉄歩留が98.0%となり、閾値である97.5%以上を超え、良好な結果が得られた。
表1、表2の発明例3を参照すると、処理前の溶銑は、[%C]=4.17mass%であり、[%C]≧4mass%を満たし、[%Si]=0.14mass%であり、[%Si]≧0.1mass%を満たし、[%P]=0.088であり、[%P]≧0.08mass%を満たすものである。
ラバールノズルの出口径Deが38.7mmであり、スロート径Dtが25mmである。スロート径Dtと出口径Deとの比であるDe/Dtが1.40となり、1.40以上1.70以下を満たす。また、脱珪期での上吹ランスの高さH(1)は、2.8mである。
上記のDe/Dtの値とH(1)の値から導き出される式(1)の下限が1.26となり、上限が1.76となる。 脱珪期(第1期)における上吹酸素ガス流量Po2(1)が1.52Nm3/min/tであり、式(1)で示す範囲を満たす。なお、底吹ガス流量V(1)は、0.16Nm3/min/tである。
脱珪期の底吹ガス流量V(1)と上吹酸素ガス流量Po2(1)との比であるPo2(1)/V(1)が9.5となり、8以上13以下を満たす。
続いて、脱りん期においては、上吹ランスの高さH(2)は、3.2mである。
上記のDe/Dtの値とH(2)の値から導き出される式(2)の下限が0.56となり、上限が0.93となる。脱りん期(第2期)における上吹酸素ガス流量Po2(2)が0.76Nm3/min/tであり、式(2)で示す範囲を満たす。なお、底吹ガス流量V(2)は、0.12Nm3/min/tである。
脱りん期の底吹ガス流量V(2)と上吹酸素ガス流量Po2(2)との比であるPo2(2)/V(2)が6.3となり、4.5以上10以下を満たす。
すると、処理後の溶銑は、[%C]=3.66mass%となり、[%C]≧2.5mass%を満たし、[%Si]=0.02mass%となり、0<[%Si]≦0.03mass%を満たし、[%P]=0.009mass%となり、本発明で規定した閾値[%P]≦0.020mass%を満たすものとなり、脱りん処理が良好なものとなった。また、処理後の鉄歩留が99.9%となり、閾値である97.5%以上を超え、非常に良好な結果が得られた。
表3、表4に、本発明の溶銑の脱りん方法に従って処理を行った実験の結果を示す(発明例57〜112)。なお、表3、表4は、一続きのものであり、説明しやすくするため、2分割としている。
表3、表4の発明例57を参照すると、処理前の溶銑は、[%C]=4.58mass%であり、[%C]≧4mass%を満たし、[%Si]=0.32mass%であり、[%Si]≧0.1mass%を満たし、[%P]=0.125mass%であり、[%P]≧0.08mass%を満たすものである。
ラバールノズルの出口径Deが40mmであり、スロート径Dtが28.5mmである。スロート径Dtと出口径Deとの比であるDe/Dtが1.55となり、1.40以上1.70以下を満たす。また、脱珪期での上吹ランスの高さH(1)は、2.6mである。
上記のDe/Dtの値とH(1)の値から導き出される式(1)の下限が1.35となり、上限が1.75となる。脱珪期(第1期)における上吹酸素ガス流量Po2(1)が1.48Nm3/min/tであり、式(1)で示す範囲を満たす。なお、底吹ガス流量V(1)は、0.16Nm3/min/tである。
脱珪期の底吹ガス流量V(1)と上吹酸素ガス流量Po2(1)との比であるPo2(1)/V(1)が9.3となり、8以上13以下を満たす。
続いて、脱りん期においては、上吹ランスの高さH(2)は、3.2mである。
上記のDe/Dtの値とH(2)の値から導き出される式(2)の下限が0.61となり、上限が1.05となる。脱りん期(第2期)における上吹酸素ガス流量Po2(2)が0.76Nm3/min/tであり、式(2)で示す範囲を満たす。なお、底吹ガス流量V(2)は、0.11Nm3/min/tである。
脱りん期の底吹ガス流量V(2)と上吹酸素ガス流量Po2(2)との比であるPo2(2)/V(2)が6.7となり、4.5以上10以下を満たす。
すると、処理後の溶銑は、[%C]=3.87mass%となり、[%C]≧2.5mass%を満たし、[%Si]=0.02mass%となり、0<[%Si]≦0.03mass%を満たし、[%P]=0.018mass%となり、本発明で規定した閾値[%P]≦0.020mass%を満たすものとなり、脱りん処理が良好なものとなった。また、処理後の鉄歩留が98.3%となり、閾値である97.5%以上を超え、良好な結果が得られた。
表3、表4の発明例58を参照すると、処理前の溶銑は、[%C]=4.59mass%であり、[%C]≧4mass%を満たし、[%Si]=0.34mass%であり、[%Si]≧0.1mass%を満たし、[%P]=0.123mass%であり、[%P]≧0.08mass%を満たすものである。
ラバールノズルの出口径Deが40mmであり、スロート径Dtが28.5mmである。スロート径Dtと出口径Deとの比であるDe/Dtが1.55となり、1.40以上1.70以下を満たす。また、脱珪期での上吹ランスの高さH(1)は、2.6mである。
上記のDe/Dtの値とH(1)の値から導き出される式(1)の下限が1.35となり、上限が1.75となる。脱珪期(第1期)における上吹酸素ガス流量Po2(1)が1.63Nm3/min/tであり、式(1)で示す範囲を満たす。なお、底吹ガス流量V(1)は、0.15Nm3/min/tである。
脱珪期の底吹ガス流量V(1)と上吹酸素ガス流量Po2(1)との比であるPo2(1)/V(1)が10.8となり、8以上13以下を満たす。
続いて、脱りん期においては、上吹ランスの高さH(2)は、3.2mである。
上記のDe/Dtの値とH(2)の値から導き出される式(2)の下限が0.61となり、上限が1.05となる。脱りん期(第2期)における上吹酸素ガス流量Po2(2)が0.72Nm3/min/tであり、式(2)で示す範囲を満たす。なお、底吹ガス流量V(2)は、0.12Nm3/min/tである。
脱りん期の底吹ガス流量V(2)と上吹酸素ガス流量Po2(2)との比であるPo2(2)/V(2)が6.0となり、4.5以上10以下を満たす。
すると、処理後の溶銑は、[%C]=3.66mass%となり、[%C]≧2.5mass%を満たし、[%Si]=0.02mass%となり、0<[%Si]≦0.03mass%を満たし、[%P]=0.012mass%となり、本発明で規定した閾値[%P]≦0.020mass%を満たすものとなり、脱りん処理が良好なものとなった。また、処理後の鉄歩留が98.5%となり、閾値である97.5%以上を超え、良好な結果が得られた。
表5、表6に、本発明の溶銑の脱りん方法に従って処理を行った実験の結果を示す(発明例113〜168)。なお、表5、表6は、一続きのものであり、説明しやすくするため、2分割としている。
表5、表6の発明例113を参照すると、処理前の溶銑は、[%C]=4.5mass%であり、[%C]≧4mass%を満たし、[%Si]=0.3mass%であり、[%Si]≧0.1mass%を満たし、[%P]=0.113mass%であり、[%P]≧0.08mass%を満たすものである。
ラバールノズルの出口径Deが42.5mmであり、スロート径Dtが25mmである。スロート径Dtと出口径Deとの比であるDe/Dtが1.70となり、1.40以上1.70以下を満たす。また、脱珪期での上吹ランスの高さH(1)は、2.6mである。
上記のDe/Dtの値とH(1)の値から導き出される式(1)の下限が1.51となり、上限が1.80となる。脱珪期(第1期)における上吹酸素ガス流量Po2(1)が1.67Nm3/min/tであり、式(1)で示す範囲を満たす。なお、底吹ガス流量V(1)は、0.15Nm3/min/tである。
脱珪期の底吹ガス流量V(1)と上吹酸素ガス流量Po2(1)との比であるPo2(1)/V(1)が11.3となり、8以上13以下を満たす。
続いて、脱りん期においては、上吹ランスの高さH(2)は、3.2mである。
上記のDe/Dtの値とH(2)の値から導き出される式(2)の下限が0.65となり、上限が1.18となる。脱りん期(第2期)における上吹酸素ガス流量Po2(2)が0.76Nm3/min/tであり、式(2)で示す範囲を満たす。なお、底吹ガス流量V(2)は、0.13Nm3/min/tである。
脱りん期の底吹ガス流量V(2)と上吹酸素ガス流量Po2(2)との比であるPo2(2)/V(2)が5.7となり、4.5以上10以下を満たす。
すると、処理後の溶銑は、[%C]=3.75mass%となり、[%C]≧2.5mass%を満たし、[%Si]=0.01mass%となり、0<[%Si]≦0.03mass%を満たし、[%P]=0.018mass%となり、本発明で規定した閾値[%P]≦0.020mass%を満たすものとなり、脱りん処理が良好なものとなった。また、処理後の鉄歩留が98.5%となり、閾値である97.5%以上を超え、良好な結果が得られた。
表5、表6の発明例114を参照すると、処理前の溶銑は、[%C]=4.38mass%であり、[%C]≧4mass%を満たし、[%Si]=0.43mass%であり、[%Si]≧0.1mass%を満たし、[%P]=0.108mass%であり、[%P]≧0.08mass%を満たすものである。
ラバールノズルの出口径Deが42.5mmであり、スロート径Dtが25mmである。スロート径Dtと出口径Deとの比であるDe/Dtが1.70となり、1.40以上1.70以下を満たす。また、脱珪期での上吹ランスの高さH(1)は、2.6mである。
上記のDe/Dtの値とH(1)の値から導き出される式(1)の下限が1.51となり、上限が1.80となる。脱珪期(第1期)における上吹酸素ガス流量Po2(1)が1.77Nm3/min/tであり、式(1)で示す範囲を満たす。なお、底吹ガス流量V(1)は、0.16Nm3/min/tである。
脱珪期の底吹ガス流量V(1)と上吹酸素ガス流量Po2(1)との比であるPo2(1)/V(1)が11.4となり、8以上13以下を満たす。
続いて、脱りん期においては、上吹ランスの高さH(2)は、3.2mである。
上記のDe/Dtの値とH(2)の値から導き出される式(2)の下限が0.65となり、上限が1.18となる。脱りん期(第2期)における上吹酸素ガス流量Po2(2)が0.74Nm3/min/tであり、式(2)で示す範囲を満たす。なお、底吹ガス流量V(2)は、0.12Nm3/min/tである。
脱りん期の底吹ガス流量V(2)と上吹酸素ガス流量Po2(2)との比であるPo2(2)/V(2)が6.3となり、4.5以上10以下を満たす。
すると、処理後の溶銑は、[%C]=3.88mass%となり、[%C]≧2.5mass%を満たし、[%Si]=0.01mass%となり、0<[%Si]≦0.03mass%を満たし、[%P]=0.012mass%となり、本発明で規定した閾値[%P]≦0.020mass%を満たすものとなり、脱りん処理が良好なものとなった。また、処理後の鉄歩留が97.8%となり、閾値である97.5%以上を超え、良好な結果が得られた。
以上、表1〜表6中の発明例1〜168に示すように、本発明の溶銑の脱りん方法に従って行った実験の結果によれば、転炉型容器を用いた脱りん処理における、脱りん効率と鉄歩留の向上を両立させることができる。
次に、表7、表8に、本発明と比較するために行った脱りん処理の実機実験の結果を示す(比較例169〜224)。なお、表7、表8は、一続きのものであり、説明しやすくするため、2分割としている。
表7、表8の比較例169を参照すると、De/Dtは1.40であり、H(1)は2.6(m)である。これらの値から導き出される、脱珪期における式(1)の下限が1.19となり、上限が1.70となる。
しかしながら、その脱珪期における上吹酸素ガス流量Po2(1)が1.73Nm3/min/tであり、式(1)で示す範囲を満たさない。
処理後の溶銑の濃度は、規定を満たすものとなるが、処理後の鉄歩留が97.3%となり、閾値である97.5%以上を満たさず、脱りん能と鉄歩留の向上を両立させることができない、不良な結果となった。
また、表7、表8の比較例181を参照すると、脱珪期の上吹酸素ガス流量Po2(1)が1.53Nm3/min/tであり、底吹ガス流量V(1)は、0.11Nm3/min/tである。すると、脱珪期の底吹ガス流量V(1)と上吹酸素ガス流量Po2(1)との比であるPo2(1)/V(1)が13.3となり、8以上13以下を満たさない。
処理後の鉄歩留が97.7%となり、閾値である97.5%以上を満たすものとなるが、処理後の溶銑中[%P]濃度が0.038mass%となり、本発明で規定した閾値[%P]≦0.020mass%を満たさず、脱りん能と鉄歩留の向上を両立させることができない、不良な結果となった。
また、表7、表8の比較例189を参照すると、De/Dtは1.40であり、H(2)は3(m)である。これらの値から導き出される、脱りん期における式(2)の下限が0.53となり、上限が0.88となる。
しかしながら、その脱りん期における上吹酸素ガス流量Po2(2)が0.93Nm3/min/tであり、式(2)で示す範囲を満たさない。
処理後の溶銑中[%P]濃度が0.04mass%となり、本発明で規定した閾値[%P]≦0.020mass%を満たさず、また、処理後の鉄歩留が96.5%となり、閾値である97.5%以上を満たさず、脱りん能も低く且つ、高い鉄歩留を得られないといった、双方が不良な結果となった。
次に、表9、表10に、本発明と比較するために行った脱りん処理の実機実験の結果を示す(比較例225〜276)。なお、表9、表10は、一続きのものであり、説明しやすくするため、2分割としている。
表9、表10の比較例225を参照すると、De/Dtは1.55であり、H(2)は3(m)である。これらの値から導き出される、脱りん期における式(2)の下限が0.58となり、上限が1.00となる。
しかしながら、その脱りん期における上吹酸素ガス流量Po2(2)が1.04Nm3/min/tであり、式(2)で示す範囲を満たさない。
処理後の溶銑中[%P]濃度が0.034mass%となり、本発明で規定した閾値[%P]≦0.020mass%を満たさず、また、処理後の鉄歩留が96.0%となり、閾値である97.5%以上を満たさず、脱りん能も低く且つ、高い鉄歩留を得られないといった、双方が不良な結果となった。
表9、表10の比較例235を参照すると、脱りん期の上吹酸素ガス流量Po2(2)が0.73Nm3/min/tであり、底吹ガス流量V(1)が0.06Nm3/min/tである。すると、脱りん期の底吹ガス流量V(2)と上吹酸素ガス流量Po2(2)との比であるPo2(2)/V(2)が11.9となり、4.5以上10以下を満たさない。
処理後の溶銑の濃度は、本発明で規定した閾値[%P]≦0.020mass%を満たすものとなるが、処理後の鉄歩留が97.2%となり、閾値である97.5%以上を満たさず、脱りん能と鉄歩留の向上を両立させることができない、不良な結果となった。
表9、表10の比較例254を参照すると、脱珪期の上吹酸素ガス流量Po2(1)が1.75Nm3/min/tであり、底吹ガス流量V(1)が0.13Nm3/min/tである。すると、脱珪期の底吹ガス流量V(1)と上吹酸素ガス流量Po2(1)との比であるPo2(1)/V(1)が13.9となり、8以上13以下を満たさない。
処理後の鉄歩留が97.5%となり、閾値である97.5%以上を満たすものとなるが、処理後の溶銑中[%P]濃度が0.031mass%となり、本発明で規定した閾値[%P]≦0.020mass%を満たさず、脱りん能と鉄歩留の向上を両立させることができない、不良な結果となった。
以上、表7〜表10中の比較例169〜276に示すように、本発明で規定した閾値ものを1つでも満たさないと、転炉型容器を用いた脱りん処理における、脱りん効率と鉄歩留の向上を両立させることができない。
ここで、上で述べた溶銑の脱りん方法の本実験の結果に基づいて、本発明で規定している閾値ついて、説明する。
まず、脱珪期(第1期)における上吹酸素ガス流量Po2(1)の適正範囲について、説明する。
脱珪期とは、主に溶銑中[Si]が反応して(SiO2)となる期間のことである。脱珪反応は、吹き込まれて容器内の溶銑に到達した酸素ガスと、溶銑中[Si]との反応によって生じる。従って、脱珪反応は、吹き込まれた酸素ガスが容器内の溶銑に到達することで進行する。
ところで、上吹ランスから吹き込まれた上吹酸素ガスが、容器内の溶銑に到達する際の衝突圧が低下(上吹酸素ガスの勢いが低下)すると、脱珪反応の進行が難しくなる、すなわち脱珪酸素効率が低下してしまう。
このように、脱珪酸素効率が低下すると、式(1)で算出される溶銑[%Si]の値が大きくなる。この場合においては、脱珪処理時間を延長しなければ、脱りん期移行後も、脱珪反応が起こるため、結果的に脱りん能の低下に繋がることとなる。
一方で、仮に脱珪処理時間を延長した場合、当然ながら処理1回あたりに要する時間が延びるので、生産量が低下してしまう。なお、上記した本実験例においては、比較例においても脱珪処理時間の延長は行わず、発明例と同等の脱珪処理時間を付与した。
このような脱珪期では、容器内において、酸素ガスが照射されることによる溶銑の飛散(スピッティング)が生じる。この溶銑の飛散は、脱りん処理後の鉄歩留の低下に繋がることとなる。
溶銑の飛散は、溶銑に到達する上吹酸素ガスの衝突圧が増大(上吹酸素ガスの勢いが増大)する程、その飛散量が増加することとなる。なお、溶銑面における上吹酸素ガスの衝突圧には、当然ながら上吹酸素ガス流量Po2(1)が影響する。
また、スロート径Dtと出口径Deとの比であるDe/Dtは、上吹酸素ガスのエネルギーロスに影響するものであり、上吹酸素ガスのエネルギーは衝突圧に影響するものであることから、脱珪酸素効率と鉄歩留の向上に影響する。更に、上吹ランス高さHも、溶銑面における上吹酸素ガスの衝突圧に影響する。
以上鋭意研究を重ねた結果、本願発明者は、脱珪期における上吹酸素ガス流量Po2(1)、スロート径Dtと出口径Deとの比であるDe/Dt、および、上吹ランス高さH(1)を適正化することで、脱りん能と鉄歩留を向上させられるとの考えに至った。
更に検討を進める中で、スロート径Dtと出口径Deとの比であるDe/Dt、および、上吹ランス高さH(1)に応じた上吹酸素ガス流量Po2(1)について、適正範囲があることを見出した。
そこで、以下に示す方法で、脱珪期における上吹酸素ガス流量Po2(1)の適正範囲を表す式を導出した。
ここで、図5〜図7を参照しながら、上吹酸素ガス流量Po2(1)の適正範囲を表す式(1)の導出の手順について、述べる。
図5は、De/Dt=1.40の場合における、脱珪期での上吹ランス高さH(1)と上吹酸素ガス流量Po2(1)の実績を示すグラフである。
図6は、De/Dt=1.55の場合における、脱珪期での上吹ランス高さH(1)と上吹酸素ガス流量Po2(1)の実績を示すグラフである。
図7は、De/Dt=1.70の場合における、脱珪期での上吹ランス高さH(1)と上吹酸素ガス流量Po2(1)の実績を示すグラフである。
なお、図5〜図7に示すプロットに関し、◆印は発明例のNo.1-24、No.57-80、No.113-136の実験結果である。■印は発明例のNo.13-18、No.69-74、No.113-130の実験結果であり、下限の重回帰分析に使用したものである。▲は発明例のNo.19-24、No.75-80、No.131-136の実験結果であり、上限の重回帰分析に使用したものである。一方、×印は比較例のNo.169-180、No.205-216、No.241-252の実験結果である。
また、図5〜図7に関し、脱珪期の操業条件以外はほぼ同一のデータを対象に、横軸を上吹ランス高さH(1)の実績とし、縦軸を上吹酸素流量Po2(1)の実績とし、そして、スロート径Dtと出口径Deとの比であるDe/Dt毎に層別して、散布図としてグラフ化した。このグラフ化によって、発明例が含まれる領域と、比較例が含まれる領域とに明確に区別することができた。
次に、スロート径Dtと出口径Deとの比であるDe/Dt毎に、発明例の領域における上限の6ch、及び下限の6chを対象に、それぞれ上吹酸素流量Po2(1)の実績を従属変数とし、De/Dt、および、上吹ランス高さH(1)を独立変数として重回帰分析を行うことにより、上限の回帰式と下限の回帰式を導出した(S1)。
また、上限、下限それぞれ6点の上吹酸素流量Po2(1)の実績と、その回帰式から求まる上吹酸素流量Po2(1)の計算値の差を求めた(S2)。
そして、重回帰分析に用いた6点を含むすべての発明例のデータが範囲に含まれるように、上記の(S2)で求めた差の最大値を、上記の(S1)で導出した上限、下限回帰式それぞれの切片に反映させた。なお、求めた値については、有効数字は3桁とした。
以上より、脱珪期における上吹酸素ガス流量Po2(1)の適正範囲を、式(1)に示す範囲とした。
脱珪期(第1期)における上吹酸素ガス流量Po2(1)と底吹ガス流量V(1)との比であるPo2(1)/V(1)の適正範囲について、述べる。
脱珪期においては、効率的に脱珪反応を促進させるために、底吹き羽口に備えられた底吹きノズルから底吹ガスを吹き込んで、溶銑の攪拌を行っている。
ところで、上吹酸素ガス流量Po2(1)に対して、底吹ガス流量V(1)が少なすぎると、脱珪反応効率が低下してしまう。そのため、脱りん期へ移行後も脱珪処理を行うこととなり、脱りん能が低下してしまう。
一方で、上吹酸素ガス流量Po2(1)に対して、底吹ガス流量V(1)を過剰に多くしても、脱珪反応促進効果はある段階で頭打ちとなってしまう。それに加えて、底吹ガスによる溶銑の飛散により、鉄歩留が低下してしまう。
以上より、底吹ガス流量V(1)と上吹酸素ガス流量Po2(1)との比であるPo2(1)/V(1)には、適正範囲があることを知見した。
ここで、図8、図9を参照しながら、脱珪期における上吹酸素流量Po2(1)と底吹ガス流量V(1)との比であるPo2(1)/V(1)の適正範囲について、述べる。
図8は、底吹ガス流量V(1)と上吹酸素ガス流量Po2(1)との比であるPo2(1)/V(1)と処理後りん濃度の関係を示すグラフである。
図9は、底吹ガス流量V(1)と上吹酸素ガス流量Po2(1)との比であるPo2(1)/V(1)と鉄歩留の関係を示すグラフである。
なお、図8、図9に示すプロットに関し、○印は発明例のNo.1-12、No.25-28、No.57-68、No.81-84、No.113-124、No.137-140の実験結果である。一方、×印は比較例のNo.181-186、No.217-222、No.253-258の実験結果である。
図8を参照すると、鋼材の高品質化の要求に応えるために、本発明で規定した処理後のりん濃度の閾値である0.020mass%を下回るためには、導出されるPo2(1)/V(1)の値が13以下となる必要があることがわかる。
また、図9を参照すると、鉄歩留が高いとされる97.5%以上を上回るには、導出されるPo2(1)/V(1)の値が8以上となる必要があることがわかる。
以上より、底吹ガス流量V(1)と上吹酸素ガス流量Po2(1)との比であるPo2(1)/V(1)の適正範囲を、8以上13以下とした。
溶銑中[P]が低下する脱りん期(第2期)における上吹酸素ガス流量Po2(2)の適正範囲について、述べる。
脱りん期では、溶銑中の[P]がスラグとの反応によって(3CaO・P2O5)の形で固定化される脱りん反応が生じると共に、溶銑中[C]と酸素とが反応してCOガスが発生する脱炭反応が生じる。
脱りん反応は、上吹酸素ガスが溶銑面に衝突する際の圧力(衝突圧)を低下させることで促進される。上吹酸素ガスの衝突圧には、上吹酸素ガス流量Po2(2)と、上吹ランス高さH(2)が影響する。
一方で、本発明では、脱炭反応によって生じるCOガスを燃焼(二次燃焼)させることで、炉内(容器内)に付着した地金を溶解して、鉄歩留を向上させている。この二次燃焼は、吐出された上吹酸素ガスが存在する上吹ランスの先端と、溶銑面との間で生じるものである。二次燃焼が上吹ランスの先端と溶銑面との間で生じることから、二次燃焼量と炉内付着地金の溶解挙動については、上吹ランス高さH(2)が影響すると考えられる。
また、上吹酸素ガスのエネルギーを適度に失わせて二次燃焼用の酸素として用いることが重要なポイントであると考えられる。そのため、二次燃焼による鉄歩留の向上には、上吹酸素ガス流量Po2(2)と、スロート径Dtと出口径Deとの比であるDe/Dtが影響すると考えられる。
以上鋭意研究を重ねた結果、本願発明者は、脱りん期における上吹酸素ガス流量Po2(2)、スロート径Dtと出口径Deとの比であるDe/Dt、および、上吹ランス高さH(2)を適正化することで、脱りん能と歩留を向上させられるとの考えに至った。
更に検討を進める中で、スロート径Dtと出口径Deとの比であるDe/Dt、および、上吹ランス高さH(2)に応じた上吹酸素ガス流量Po2(2)について、適正範囲があることを見出した。
そこで、以下に示す方法で、脱りん期における上吹酸素ガス流量Po2(2)の適正範囲を表す式を導出した。なお、脱珪反応とは反応形態が異なるため、上吹酸素ガス流量Po2(2)の適正範囲は脱珪期と異なる。
ここで、図10〜図12を参照しながら、上吹酸素ガス流量Po2(2)の適正範囲を表す式(2)の導出の手順について、述べる。
図10は、De/Dt=1.40の場合における、脱珪期での上吹ランス高さH(2)と上吹酸素ガス流量Po2(2)の実績を示すグラフである。
図11は、De/Dt=1.55の場合における、脱珪期での上吹ランス高さH(2)と上吹酸素ガス流量Po2(2)の実績を示すグラフである。
図12は、De/Dt=1.70の場合における、脱珪期での上吹ランス高さH(2)と上吹酸素ガス流量Po2(2)の実績を示すグラフである。
なお、図10〜図12に示すプロットに関し、◆印は発明例のNo.29-52、No.85-108、No.141-164の実験結果である。■印は発明例のNo.41-46、No.97-102、No.153-158の実験結果であり、下限の重回帰分析に使用したものである。▲は発明例のNo.47-52、No.103-108、No.159-164の実験結果であり、上限の重回帰分析に使用したものである。一方、×印は比較例のNo.187-198、No.223-234、No.259-270の実験結果である。
また、図10〜図12に関し、この段階の操業条件以外はほぼ同一のデータを対象に、横軸を上吹ランス高さH(2)の実績とし、縦軸を上吹酸素ガス流量Po2(2)の実績とし、そして、スロート径Dtと出口径Deとの比であるDe/Dt毎に層別して、散布図としてグラフ化した。このグラフ化によって、発明例が含まれる領域と、比較例が含まれる領域とに明確に区別することができた。
次に、De/Dt毎に、発明例の領域における上限の6ch、及び下限の6chを対象に、それぞれ上吹酸素ガス流量Po2(2)の実績を従属変数とし、スロート径Dtと出口径Deとの比であるDe/Dt、および、上吹ランス高さH(2)を独立変数として重回帰分析を行うことにより、上限の回帰式と下限の回帰式を導出した(S3)。
また、上限、下限それぞれ6点の上吹酸素ガス流量Po2(2)の実績と、その回帰式から求まる上吹酸素ガス流量Po2(2)の計算値の差を求めた(S4)。
そして、重回帰分析に用いた6点を含むすべての発明例のデータが範囲に含まれるように、上記の(S4)で求めた差の最大値を、上記の(S3)で導出した上限、下限それぞれの回帰式の切片に反映させた。なお、求めた値については、有効数字は3桁とした。
以上より、脱りん期における上吹酸素ガス流量Po2(2)の適正範囲を、式(2)に示す範囲とした。
溶銑中[P]が低下する脱りん期(第2期)における上吹酸素流量Po2(2)と底吹ガス流量V(2)との比であるPo2(2)/V(2)の適正範囲について、述べる。
脱りん期においては、効率的に脱りん反応を促進させるとともに、脱炭反応を起こさせるために、底吹き羽口に備えられた底吹きノズルから底吹ガスを吹き込んで、溶銑の攪拌を行っている。
ところで、上吹酸素ガス流量Po2(2)に対して、底吹ガス流量V(2)が少なすぎると、脱炭反応も起こりにくくなり、鉄歩留が低下してしまう。
一方で、上吹酸素ガス流量Po2(2)に対して、底吹ガス流量V(2)を過剰に多くしてもと、脱炭反応促進により二次燃焼の促進と鉄歩留の向上効果は得られるが、スラグ中のFeOXが過剰に還元されることとなり、スラグによる溶銑[P]の固定化が行われなくなり、脱りん能が低下してしまう。
以上より、底吹ガス流量V(2)と上吹酸素ガス流量Po2(2)との比であるPo2(2)/V(2)には、適正範囲があることを知見した。
ここで、図13、図14を参照しながら、脱りん期における上吹酸素流量Po2(2)と底吹ガス流量V(2)との比であるPo2(2)/V(2)の適正範囲について、述べる。
図13は、底吹ガス流量V(2)と上吹酸素ガス流量Po2(2)との比であるPo2(2)/V(2)と処理後りん濃度の関係を示すグラフである。
図14は、底吹ガス流量V(2)と上吹酸素ガス流量Po2(2)との比であるPo2(2)/V(2)と鉄歩留の関係を示すグラフである。
なお、図13、図14に示すプロットに関し、○印は発明例のNo.29-40、No.53-56、No.85-96、No.109-112、No.141-152、No.165-168の実験結果である。一方、×印は比較例のNo.199-204、No.235-240、No.271-276の実験結果である。
図13を参照すると、本発明で規定した処理後のりん濃度の閾値である0.020mass%を下回るためには、導出されるPo2(2)/V(2)の値が4.5以上となる必要があることがわかる。
また、図14を参照すると、鉄歩留が高いとされる97.5%以上を上回るには、導出されるPo2(1)/V(1)の値が10以上となる必要があることがわかる。
以上より、底吹ガス流量V(1)と上吹酸素ガス流量Po2(1)との比であるPo2(1)/V(1)の適正範囲を、4.5以上10以下とした。
図15〜17を参照して、本発明の作用効果について説明する。
図15は、処理後りん濃度(mass%)と鉄歩留(%)を示すグラフである。図16は、処理後りん濃度(mass%)のヒストグラムである。図17は、鉄歩留(%)のヒストグラムである。
図15を参照すると、本発明例が、処理後りん濃度が0.02mass%以下を下回り、且つ鉄歩留が97.5以上を上回っている箇所に集中しており、低りんと高い鉄歩留が両立していることがわかる。
図16を参照すると、本発明例が、処理後りん濃度=0.02mass%以下に集まり、且つ処理後りん濃度の平均も0.014mass%と低く、処理後の低りん化が安定して実現できていることがわかる。
図17を参照すると、本発明例が、鉄歩留=97.5%以上に集まり、且つ鉄歩留の平均も98.2%と高く、高い鉄歩留が安定して実現できていることがわかる。
以上、本発明によれば、転炉型容器を用いた脱りん処理において、低りん溶銑と高い鉄歩留の両立を安定して実現させることができ、鋼材の高品質化の要求に十分に応えることが可能となる。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
1 転炉型容器
2 上吹ランス
3 ランスチップ
4 ラバールノズル
5 底吹き羽口
6 底吹きノズル
7 溶銑
8 スラグ
9 炉内付着鉄(地金)

Claims (1)

  1. 先端にラバールノズルが備えられた上吹ランスから酸素ガスを吹き付けるとともに、底部から底吹ガスを吹き込んで、装入された溶銑を攪拌しつつ吹錬を行う転炉型容器を用いた溶銑の脱りん方法において、
    スロート径Dt(mm)と出口径De(mm)との比であるDe/Dtが、1.40以上1.70以下とされた前記ラバールノズルから酸素ガスを吹き付けることで、[%C]≧4mass%、[%Si]≧0.1mass%、[%P]≧0.08mass%を含有する溶銑を、[%C]≧2.5mass%、0<[%Si]≦0.03mass%、0.007≦[%P]≦0.045mass%を含有する溶銑へと吹錬する脱りん処理であって、
    i)溶銑中のPよりもSiが優先的に取り除かれる脱珪期の段階では、
    前記上吹ランスに備えられたラバールノズルからの酸素ガス流量Po2(1)(Nm3/min/t)が、式(1)で示す範囲を満たし、
    1.06×(De/Dt)+0.331×H(1)-1.15≦Po2(1)≦0.338×(De/Dt)+0.274×H(1)+0.517 ・・・(1)
    ただし、H(1):脱珪期での上吹ランスの高さ(m)
    前記転炉型容器の底部から吹き込まれる底吹ガス流量V(1)(Nm3/min/t)と前記酸素ガス流量Po2(1)(Nm3/min/t)との比であるPo2(1)/V(1)が、8以上13以下となるように、前記底吹ガス流量V(1)を制御し、
    ii)前記脱珪期の後であって、溶銑中のSiよりもPが優先的に取り除かれる脱りん期の段階では、
    前記上吹ランスに備えられたラバールノズルからの酸素ガス流量Po2(2)(Nm3/min/t)が、式(2)で示す範囲を満たし、
    0.300×(De/Dt)+0.135×H(2)−0.292≦Po2(2)≦0.851×(De/Dt)+0.248×H(2)-1.06 ・・・(2)
    ただし、H(2):脱りん期での上吹ランスの高さ(m)
    前記転炉型容器の底部から吹き込まれる底吹ガス流量V(2)(Nm3/min/t)と前記酸素ガス流量Po2(2)(Nm3/min/t)との比であるPo2(2)/V(2)が、4.5以上10以下となるように、前記底吹ガス流量V(2)を制御して吹錬を行う
    ことを特徴とする溶銑の脱りん方法。
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