JP6743713B2 - 溶銑の脱炭吹錬方法 - Google Patents
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Description
なお、本明細書では、「溶銑」及び「溶鋼」の上位概念として「溶鉄」という用語を使用する。
また、特許文献2も特許文献1と同様、脱炭吹錬においてスラグ中のT.Feを低下させることを課題とし、適切な撹拌を施すことで課題を解決する技術が記載されている。
従って、転炉による脱炭吹錬では、鉄の酸化ロスを低減して鉄歩留りを向上させ、且つ、酸化鉄を必要とする脱りんも効率的に推進できることが望ましい。
溶鉄中炭素濃度が0.5質量%以下となる脱炭吹錬末期における上吹き吹酸速度を1.6〜3.6Nm3/min/溶鉄質量(ton)とすると共に、(1)式によって算出されるBOC値が500〜2000の範囲に収まる底吹きガス流量(Nm3/min)とし、
前記脱炭吹錬末期における上吹き吹酸量と底吹き吹酸量の和を4.0〜10.0Nm3/溶鉄質量(ton)とすることを特徴としている。
BOC値が大きい程、底吹き撹拌動力に対して酸素供給速度が大きく、BOC値が小さい程、底吹き撹拌動力に対して酸素供給速度が小さいことを示している。
上吹き吹酸速度の低下や適切な上底吹き比を施すことで転炉の鉄歩留りを向上させることは可能である。しかし、従来の脱炭吹錬では、上吹き吹酸速度もしくは上底吹き比のどちらか一方しか規定せず、また脱炭吹錬末期における総吹錬量を規定していなかったため、鉄歩留り向上と脱りん推進の両立を図ることが困難であった。
上底吹き式転炉は、溶鉄14を貯留する転炉11と、炉口11aから転炉11内に挿入され、先端部から溶鉄14に向けて酸素ガスを吹き付ける上吹きランス12と、転炉11の底部に設けられ、溶鉄14に底吹きガスを吹き込む羽口13とを備えている。底吹きガスには、アルゴン、窒素、酸素、二酸化炭素などが使用される。
なお、脱炭吹錬中に石灰系の造滓材を溶鉄14に添加することにより、炉内で生成した酸化物が造滓材と溶融してスラグ15が生成する。溶鉄14中のりんは、スラグ15中の酸化鉄と反応してCaOを含むスラグ15に吸収される。
・要件A:上吹き吹酸速度を1.6〜3.6Nm3/min/溶鉄質量(ton)とする。
・要件B:酸素供給速度と底吹き撹拌動力のバランスを示すBOC値が500〜2000の範囲に収まる底吹きガス流量QB(Nm3/min)とする。
・要件C:総吹酸量(上吹き吹酸量と底吹き吹酸量の和)を4.0〜10.0Nm3/溶鉄質量(ton)とする。
上吹き吹酸速度を1.6Nm3/min/溶鉄質量(ton)未満とすると、脱炭速度が著しく低下して脱炭吹錬時間の延長を招き、適切な時間内での脱炭が不可能となる。
上吹き吹酸速度を3.6Nm3/min/溶鉄質量(ton)以下とすることで、単位時間当たりの酸素の過剰供給を防ぎ、鉄の酸化速度を抑制して鉄歩留りの向上が可能となる。一方、上吹き吹酸速度が3.6Nm3/min/溶鉄質量(ton)超の場合、単位時間当たりの酸素供給量が過剰となるため、炭素の酸化と共に、鉄の酸化速度が著しく増加し、鉄歩留りの低下が顕著となる。
BOC値は、以下の(2)〜(5)式を用いて算出する。
QO2S:上吹き酸素流量と底吹き酸素流量の和(Nm3/min)
W:溶鉄質量(ton)
τ:均一混合時間(s)
[C]:溶鉄中炭素濃度(質量%)
H:溶鉄浴高さ(静置時の溶鉄の最大深さ)(m)
ρ:溶鉄密度(kg/m3)
εV,B:溶鉄容積当たりの底吹き投入エネルギー(W/m3・s)
εV,T:溶鉄容積当たりの上吹き投入エネルギー(W/m3・s)
QB:底吹きガス流量(Nm3/min)
VL:溶鉄容積(m3)
TL:溶鉄温度(吹酸終点温度)(K)
Tn:底吹きガスの初期温度(K)
P2:大気圧(1.033×104kg/m2)
ξ:上吹きランス孔中心線と鉛直線との間の角度(°)
QO2,T:上吹き酸素流量(Nm3/min)
M:酸素分子量
n:上吹きランスの孔数
d0:上吹きランス孔の先端出口平均径(m)
X:静置時の溶鉄浴面と上吹きランス先端間距離(m)
一方、底吹き撹拌動力に対して酸素供給速度が低すぎる場合(BOC値<500)、脱りん反応に必要なスラグ中酸化鉄の生成速度が著しく低下し、酸化鉄を利用した脱りん反応が進行しなくなる。
因って、底吹き撹拌動力と酸素供給速度が最適なバランスとなるBOC値500〜2000で脱炭吹錬することにより、スラグ中酸化鉄の生成速度が、鉄歩留り向上及び脱りん推進の観点から最適となる。
要件Aにより、適切な時間内での脱炭促進と、スラグ中酸化鉄の生成速度の抑制による鉄歩留り向上が可能となり、要件Bにより、スラグ中酸化鉄の生成速度を、鉄歩留りが著しく悪化しない程度とすることができる。しかし、脱りんに必要な酸化鉄の絶対量を確保するためには要件Cが必要となる。
脱りん反応には、スラグ中酸化鉄濃度と脱りん反応時間を確保することが必要であるが、総吹酸量が4.0Nm3/溶鉄質量(ton)未満になると、要件A、Bのもとでは、スラグ中酸化鉄濃度、脱りん反応時間の双方が確保されず、脱りん能力の悪化を招く。
一方、総吹酸量が10.0Nm3/溶鉄質量(ton)超になると、要件A、Bのもとでは、鉄の過剰酸化が起こると共に脱炭吹錬時間の延長を招く。
因って、総吹酸量を4.0〜10.0Nm3/溶鉄質量(ton)以下とすることにより、脱炭吹錬時間を延長することなく、鉄歩留りの向上と脱りんの推進を図ることができる。
転炉の溶鉄量は300〜400ton、脱炭吹錬を実施する前の溶鉄の炭素濃度は4.0〜4.4質量%、りん濃度は100〜150×10−3質量%、マンガン濃度は0.15〜0.25質量%であった。
また、脱炭吹錬開始時から溶鉄中炭素濃度が0.5質量%となるまでの上吹き吹酸速度は3.6Nm3/min/溶鉄質量(ton)、脱炭吹錬終了時における溶鉄中炭素濃度の目標値は0.06質量%以下とした。
溶鉄に向けて酸素ガスを吹き付ける上吹きランスの先端部と溶鉄浴面間の距離は2.2〜2.6mとした。底吹きガスには酸素を用い、BOC値が400〜2200となるように流量調整を行った。
T.Feは、18.0質量%以下を合格(○)、18.0質量%超を不合格(×)とした。終点炭素濃度は、0.06質量%以下を合格(○)、0.06質量%超を不合格(×)、終点りん濃度は、20×10−3質量%以下を合格(○)、20×10−3質量%超を不合格(×)とした。脱炭吹錬時間は、実施例4を基準とし、実施例4の脱炭吹錬時間以下を合格(○)、実施例4の脱炭吹錬時間超を不合格(×)とした。
・実施例1〜4は、全ての評価項目が合格であった。
・比較例1は、上吹き吹酸速度が1.0Nm3/min/溶鉄質量(ton)(1.6Nm3/min/溶鉄質量(ton)未満)であったため、脱炭が進まず終点炭素濃度が不合格となった。また、脱りんに必要な酸化鉄の確保が不十分であったため、終点りん濃度も不合格となった。
・比較例2は、上吹き吹酸速度が4.0Nm3/min/溶鉄質量(ton)(3.6Nm3/min/溶鉄質量(ton)超)であったため、T.Feが過剰となり、T.Feが不合格となった。
・比較例4は、BOC値が2200(2000超)であったため、底吹き撹拌動力に対して酸素供給速度が高すぎて、T.Feが過剰となり、T.Feが不合格となった。また、酸化鉄が生成しすぎたため、スラグ中のCaO濃度が低下して復りんが発生し、終点りん濃度が不合格となった。
・比較例6は、総吹酸量が12.0Nm3/溶鉄質量(ton)(10.0Nm3/溶鉄質量(ton)超)であったため、T.Feが過剰となり、T.Feが不合格となった。また、脱炭吹錬時間も延びたため、脱炭吹錬時間が不合格となった。
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JP2017001706A JP6743713B2 (ja) | 2017-01-10 | 2017-01-10 | 溶銑の脱炭吹錬方法 |
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