JP6760237B2 - 溶銑の脱珪処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、溶銑に浸漬させた浸漬ランスを介して酸素含有ガス(酸素ガスを含む気体)を、混銑車、溶銑鍋などの反応容器に収容された溶銑に吹き込んで行う溶銑の脱珪処理方法に関し、詳しくは、下端近傍の側面に複数の多重管構造の吐出ノズルを備えた浸漬ランスを反応容器内の溶銑に略鉛直に浸漬させ、多重管構造の吐出ノズルの内管から酸素含有ガス及び粉状精錬剤を吹き込むと同時に、多重管構造の内管以外の管から炭化水素系ガスを吹き込んで行う、溶銑の脱珪処理方法に関する。
近年、鋼材の高級化に伴う燐含有量低下対策、或いは製鋼プロセスの合理化を目的として、溶銑の脱燐処理が、転炉または溶銑鍋若しくは混銑車(「トピードカー」ともいう)などにおいて広く行われている。また、この脱燐処理では、溶銑中の珪素が脱燐反応を阻害するので、脱燐処理を効率的に行うために、脱燐処理の前に予め溶銑中の珪素を除去する脱珪処理も行われている。
溶銑中の珪素は酸化反応によって除去される。したがって、溶銑の脱珪処理は、溶銑に酸素ガスや酸化鉄などの酸素源を供給し、この酸素源によって溶銑中の珪素を酸化除去させている。その際に、反応効率を高める或いは生成するスラグの組成を調整するために、生石灰などの媒溶剤も添加されている。
また、近年、鉄鋼業においても、鉄鋼製品単位質量あたりの炭酸ガス排出量の抑制が強く求められており、還元に多大なエネルギーを要する鉄鉱石に代えて鉄スクラップの使用量を増大させる取り組みが盛んに行われている。鉄スクラップは、主に、溶銑の予備処理も含む製鋼プロセスにおいて使用され、鉄スクラップ溶解のために用いることができる熱量を増大させることが求められる。このため、溶銑の脱珪処理や脱燐処理の予備処理で精錬用の酸素源として従来多量に使用されていた酸化鉄の可能な限りの大部分を、酸素ガス(工業用純酸素ガス)に置き換えることによって、鉄スクラップ溶解のための熱源を創出する試みがなされている。
溶銑の脱珪処理において、溶銑に酸素ガスなどの酸素含有ガスを供給する方法は、大きく分けて2種類に分類される。1つの方法は、溶銑とは非接触の上吹きランスなどから酸素含有ガスを溶銑浴面に向けて吹き付ける方法(「上吹き送酸法」と呼ぶ)である。他の方法は、溶銑中に浸漬させたガス吹き込み用の浸漬ランスや反応容器の底部などに設けた羽口から、溶銑中に酸素含有ガスを直接吹き込む方法(「吹き込み送酸法」と呼ぶ)である。
例えば、特許文献1には、混銑車内の溶銑に鉛直に浸漬させた浸漬ランスの側面の下端近傍に開口する2つの2重管ノズルの内管から酸素ガスを吹き込んで行う吹き込み送酸法において、ノズル断面積あたりの酸素ガスの流量を特定の範囲とすることによって浸漬ランスの溶損を抑制する溶銑の脱珪処理方法が開示されている。また、特許文献2には、混銑車、溶銑鍋などの反応容器に収容された溶銑を、吹き込み送酸法と上吹き送酸法とを併用して行う溶銑の脱燐処理方法が開示されている。
また、溶銑の脱珪処理や脱燐処理を行う予備処理において、酸素源とともに溶銑に供給される媒溶剤としては、主に生石灰が使用されることが一般的であるが、特許文献3には、生石灰に代えて転炉脱炭スラグを使用し、脱燐効率を向上させるとともに、スラグのリサイクル使用量を増大させて系外へのスラグ排出量を抑制した溶銑脱燐処理方法が開示されている。
上記のように、混銑車、溶銑鍋などの反応容器に収容された溶銑に酸素含有ガスを供給する際には、上吹き送酸法及び吹き込み送酸法の2種類があるが、上吹き送酸法とするか、吹き込み送酸法とするかは、それぞれの送酸方法の以下に記す特徴を考慮して決められる。
吹き込み送酸法の場合には、酸素含有ガスの添加効率が高い、攪拌力が向上するなどの利点がある一方、浸漬ランスの浸漬部の熱負荷が大きく、浸漬ランスの耐用回数が限られるなどの問題がある。これに対して、上吹き送酸法の場合には、上吹きランスへの熱負荷は小さく、長期間に亘って使用できるという利点はあるが、酸素含有ガスの添加効率が低い、攪拌力が得られないなどの問題がある。
また、混銑車において酸素ガスを大量に用いる脱珪処理では、何れの送酸方法においても、大量のCOガスが発生して炉口近傍で燃焼し、炉口付近の耐火物に損傷を与え易いことや、溶銑浴の振動や鉄液滴の飛散などによって酸素ガスの供給速度などの操業条件が制約されるという問題もある。特に、上吹き送酸法では、脱珪酸素効率が低いことから、所望の脱珪反応速度を得るべく酸素ガス供給速度を増大させると、COガスの発生速度が増大して炉口付近で燃焼することによって炉口近傍の耐火物損傷が顕著になったり、上吹き酸素ジェットの運動エネルギーによって炉口からの噴出物が増大し、炉口や上吹きランスへの付着物が増大して操業を阻害したり、上吹き酸素ジェットによるCOガスの二次燃焼で混銑車の天井耐火物の損傷を招いたりするという問題があった。
このため、混銑車、溶銑鍋などの反応容器に収容された溶銑に対しては、吹き込み送酸法を採用することによって、上記のような問題を回避し、酸素ガスによる脱珪処理を効率良く行うことが試みられている。
特開2008−266674号公報 特開平4−280909号公報 特開2001−131624号公報
ところで、酸素含有ガスを混銑車内の溶銑に吹き込む際の他の1つの技術課題として、混銑車の開口部(炉口)からの溶銑の噴出が挙げられる。特に、浸漬ランスを混銑車の開口部から略鉛直に溶銑に浸漬させた場合には、浸漬ランスから吹き込んで反応した気体の浮上位置と混銑車の開口部とが近い位置関係になるために、溶銑が噴出しやすくなるという問題があり、酸素含有ガスの供給速度を増大させて効率的に脱珪処理を実施するうえで障害となっている。
特に、ガスを吹き込む吐出ノズルの浸漬深さを増大させると、溶銑浴振動の振幅が増大し、この振動が炉口からの溶銑の噴出を助長する傾向がある。この溶銑の噴出は設備トラブルを招くおそれがあり、溶銑が噴出しないようにするためには、浸漬ランスの浸漬深さを十分に深くすることはできず、浅くせざるを得ない。浸漬深さが浅いと、撹拌動力密度が低下して脱珪反応と脱炭反応とが競合し、その結果、脱珪反応効率が低下するという問題が生じる。
また、スラグ組成を調整するためのCaO系媒溶剤として転炉脱炭スラグ(脱炭滓)を使用して脱珪処理を行う際には、媒溶剤コストや製鉄所からのスラグ排出量の低減が可能となる一方、転炉脱炭スラグからの復燐も考慮しなければならない。尚、「復燐」とは、スラグに含有されていた燐酸化物(P)が分解して溶銑や溶鋼に移行し、溶銑や溶鋼の燐濃度が上昇する現象である。
脱珪処理と脱燐処理とを1つの反応容器で連続して行う溶銑の予備処理では、脱燐反応効率を高くするためにはスラグの塩基度((質量%CaO)/(質量%SiO))を高くする必要があるので、脱珪処理の最終段階でも或る程度スラグの塩基度を高めておくことが望ましい。また、脱珪処理の最終段階では、脱珪反応速度が低下して、COガス発生速度が増大するので、スラグの塩基度が低くてスラグの粘度が高い場合には、スラグのフォーミングによる操業阻害を招き易い。したがって、通常、脱珪処理の最終段階でも或る程度スラグの塩基度を高めておくことが行われる。このため、従来、脱珪処理と脱燐処理とを排滓を挟まずに連続して行う溶銑の予備処理では、脱珪処理段階でもスラグの塩基度は或る程度高く、CaO系媒溶剤として転炉脱炭スラグを大量に使用した場合でも、スラグからの復燐や、脱燐反応効率の低下は顕著ではなかった。
一方、溶銑の珪素濃度が0.10質量%以上といった範囲で脱珪処理のみを行い、脱燐については排滓を挟んで別ステーションで実施したり、別の反応容器に溶銑を移して実施したりする場合には、脱珪反応の観点からは脱珪処理においてスラグの塩基度をあまり高くする必要はなく、スラグの流動性を確保するために0.5以上の塩基度とする程度でも問題ないので、上記の脱燐処理を続けて行う場合に比べてCaO系媒溶剤の使用量を減少することができる。
また、近年の溶銑脱珪処理においては、前述のように、酸化鉄などの精錬剤による温度降下を極力低減することが求められている。これは、酸化鉄の分解吸熱のみを意味している訳ではなく、固体のCaO系媒溶剤の溶解による溶銑の温度降下の抑制も同様に求められる。特に、CaO系媒溶剤として転炉脱炭スラグを使用する場合には、スラグ中に20〜30質量%程度の酸化鉄が含まれることから、酸化鉄の分解による吸熱も無視できない。
転炉脱炭スラグをリサイクル使用する溶銑の脱珪処理において、溶銑の温度降下を抑制すべく、CaO系媒溶剤として機能する転炉脱炭スラグの使用量を低減していくと、スラグの塩基度が上昇せず、今度は転炉脱炭スラグからの復燐が顕著になって、続く工程の脱燐処理の負荷が増大したり、脱燐処理も含めた反応効率の低下を招いたりするという問題があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、混銑車や溶銑鍋などの反応容器内の溶銑に略鉛直に浸漬した浸漬ランスを介して酸素含有ガスを吹き込んで溶銑を脱珪処理するに際し、反応容器からの溶銑の噴出を抑え、且つ、高い反応効率で脱珪処理を行い、固体の精錬剤による吸熱を極力抑制しつつ、「Si+O=SiO」の発熱反応による溶銑の昇熱を行うと同時に、安価なCaO系媒溶剤である転炉脱炭スラグを使用しても、スラグからの復燐を防止し、後工程で効率的な脱燐処理が行える脱珪処理方法を提供することである。
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]耐火物被覆層を有する浸漬ランスを反応容器に収容された溶銑に略鉛直に浸漬し、前記浸漬ランスの側面に設けた多重管構造の吐出ノズルから、酸素含有ガス、粉状精錬剤、及び、前記酸素含有ガスの吐出ノズルを外周側から冷却するための炭化水素系ガスを前記溶銑に吹き込み、前記溶銑に含有される珪素を酸化して除去する溶銑の脱珪処理方法において、
前記粉状精錬剤が粉状の転炉脱炭スラグを含み、
前記酸素含有ガスに含まれる酸素ガスの溶銑1トンあたりの供給速度を0.05〜0.25Nm/(min・t)とし、
前記粉状精錬剤の溶銑1トンあたりの吹き込み速度を0.20〜1.00kg/(min・t)とし、
前記粉状精錬剤に含まれるCaOの溶銑1トンあたりの供給速度A(kg/(min・t))と、下記の(1)式及び(2)式によって定義される、脱珪処理で生成する酸化物融体における二酸化珪素生成速度B(kg/(min・t))との比A/Bを0.70以上、1.10以下として、
前記酸素含有ガスとともに前記粉状精錬剤を前記溶銑に吹き込むことを特徴とする、溶銑の脱珪処理方法。
B=CSiO2×Rf+(Fo+Co×Rf×0.7)×2.68×ηo …(1)
ηo=0.85−0.65×e−Rf/6Fo …(2)
ここで、CSiO2は粉状精錬剤中のSiOの含有質量比率(−)、Rfは溶銑1トンあたりの粉状精錬剤の供給速度(kg/(min・t))、Foは溶銑1トンあたりの酸素含有ガス中の酸素ガスの供給速度(Nm/(min・t))、Coは粉状精錬剤中の酸化鉄に含まれる酸素の粉状精錬剤に対する質量比率(−)、ηoは推定脱珪酸素効率(−)である。
本発明によれば、溶銑に酸素含有ガスとともに粉状精錬剤を吹き込むので、溶銑中に吹き込まれる粉状精錬剤(CaO含有物質)によって、酸素含有ガスのみを吹き込んだ場合と比較して吐出ノズルからの吹き込みガス気泡が溶銑浴内で分散され、それに伴って反応容器開口部からの溶銑の噴出が抑制でき、また気泡が分散されることによって脱珪反応に消費される酸素の効率が向上する。更に、粉状精錬剤に含まれるCaOの溶銑1トンあたりの供給速度Aと、脱珪処理で生成する酸化物融体における二酸化珪素生成速度指数Bとの比A/Bを所定の範囲に制御するので、安価なリサイクル精錬剤である転炉脱炭スラグを使用しつつ、精錬剤の使用量を抑制して脱珪反応で生じた熱の有効利用と転炉脱炭スラグからの復燐抑制とを両立させることが可能となり、後工程の脱燐処理を効率的に実施することができる。
溶銑に浸漬させた浸漬ランスから酸素ガスを吹き込んで混銑車に収容された溶銑を脱珪処理する状況を示す概略図である。 浸漬ランスの下端部の概略断面図である。 浸漬ランスの吐出ノズルからの吐出方向を示す概略図で、図3(A)は、2孔浸漬ランスを用いた場合を示し、図3(B)は、4孔浸漬ランスを用いた場合を示す。 粉状精錬剤の供給速度Rfと吹き込んだ酸素含有ガスに含まれる酸素ガスの供給速度Foとの比(kg/Nm)、つまり、粉体/酸素ガス比(kg/Nm)と脱珪酸素効率との関係を示す図である。 比A/Bと脱珪処理前後での脱燐量との関係を示す図である。 比A/Bと珪素濃度減少量0.01質量%あたりの温度上昇量(℃/0.01質量%Si)との関係を示す図である。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明者らは、浸漬ランスから溶銑に酸素含有ガスを吹き込み、溶銑に含有される珪素を、酸素含有ガス中の酸素で酸化して除去する溶銑の脱珪処理方法において、浸漬ランスの浸漬深さを深くしても、混銑車や溶銑鍋のようなフリーボードの小さい反応容器の開口部からの溶銑の噴出が少なく、高い反応効率で脱珪処理可能な脱珪処理方法の開発を目的として、反応容器として混銑車を対象とし、実機混銑車における溶銑の脱珪処理を種々の条件下で実施し、調査・検討を行った。尚、フリーボードとは、反応容器内の溶銑浴面から反応容器の開口部までの高さである。
図1に、溶銑に浸漬させた浸漬ランスから、酸素含有ガスとして酸素ガスを吹き込んで混銑車に収容された溶銑を脱珪処理する概略図を示し、図2に、浸漬ランスの下端部の概略断面図を示す。
混銑車6に収容された溶銑7を脱珪処理するにあたり、浸漬ランス1を混銑車6の開口部12から略鉛直に溶銑7に浸漬させる。浸漬ランス1の下端近傍の側面に、内管2及び外管3からなる二重管構造の吐出ノズル5を2つ有する2孔浸漬ランスを用いる場合は、図3(A)に示すように、吐出ノズル5の吐出方向が混銑車6の長手方向とほぼ同一となるように、浸漬ランス1を浸漬させた。また、浸漬ランス1の下端近傍の側面に内管2及び外管3からなる二重管構造の吐出ノズル5を4つ有する4孔浸漬ランスを用いる場合は、図3(B)に示すように、吐出ノズル5の吐出方向を極力長手方向に近づけつつ、ランス寿命を短くしないようにするべく、吐出ノズル5同士の端間距離を確保するという思想のもと、X=60°、Y=120°の配置として浸漬ランス1を浸漬させた。浸漬ランス1の径と吐出ノズル5の径との比、及び、寿命確保のための吐出ノズル5の端同士の許容距離などにより、X、Yは変え得るが、これは各製鉄所のニーズに応じて容易に変更し得ることである。尚、図3(A)は、2孔浸漬ランスを用いた場合の吐出ノズル5からの吐出方向を上方から見た概略図、図3(B)は、4孔浸漬ランスを用いた場合の吐出ノズル5からの吐出方向を上方から見た概略図である。
浸漬ランス1の耐火物被覆層4を構成する耐火物材料は、溶損やスポーリングに対して或る程度の耐用性を有する耐火物材料であれば、どのような組成であっても構わない。代表的な耐火物材料としては、SiOを10〜40質量%含有するAl−SiO系不定形耐火物、MgOを5〜30質量%含有するAl−MgO系不定形耐火物などを用いることができる。耐火物被覆層4の厚みは、ランス寿命を考慮すれば、25mm以上程度が好ましい。また、内管2及び外管3は、ステンレス鋼鋼管や炭素鋼鋼管を用いることができる。
従来は、溶銑容量約300トンの混銑車において、内管2からは15〜30Nm/min(0.05〜0.10Nm/(min・t))の酸素ガスを吹き込み、内管2と外管3との間隙からは1.5〜3.0Nm/min(0.005〜0.010Nm/(min・t))のプロパンガスを吹き込んで、吐出ノズル5の浸漬深さを0.5m以下として脱珪処理を行っていた。尚、吐出ノズル5の浸漬深さとは、内管2の上端から溶銑浴面までの距離である。また、内管2から吹き込む酸素ガス(工業用純酸素ガス)に替えて、空気、酸素富化空気、不活性ガスと酸素ガスとの混合ガスなどを使用することもできる。また更に、プロパンガスは、分解吸熱を利用して、酸素含有ガスを吹き込む内管2の先端を外周側から冷却して保護するための冷却用ガスであり、他の炭化水素系ガスなどでも代用できる。
粉状精錬剤の吹き込みは、炭化水素系ガス供給配管11を介して供給されるプロパンガスを内管2と外管3との間隙から吹き込みながら、不活性ガスを搬送用ガスとして粉状精錬剤供給配管9を介して粉状精錬剤を搬送し、酸素含有ガス供給配管10から供給される酸素ガスと浸漬ランス直上の合流部8で合流させ、酸素ガスとともに吐出ノズル5(内管2)から吹き込んだ。
これは、粉状精錬剤が転炉脱炭スラグなどのリサイクルスラグである場合にスラグ中に少量の金属鉄を含むことがあり、また、鋼製の配管が粉状精錬剤によって磨耗して金属鉄粉を生じることもあり、これらの金属鉄分が酸素ガス中で鋼製配管の発火源となるおそれがあるからである。上述のように浸漬ランス直上部で酸素ガスと粉状精錬剤とが合流するようにすれば、酸素ガスと粉状精錬剤とが混合している領域は浸漬ランス1だけとなり、万一発火したとしても、損傷を受けるのは浸漬ランス1のみで、浸漬ランス1の交換は容易であり、設備損傷や機会ロスの観点から被害は最小になるからである。
本発明者らは、先ず、酸素ガス供給速度を増大したり、吐出ノズル5の浸漬深さを増大したりする際に問題となる、混銑車6の開口部12からの溶銑7の噴出の原因について、種々検討を行った。その結果、次のような事象が溶銑7の噴出を助長する主な原因と考えられた。
(1)溶銑中に吹き込む酸素ガスなどによる反応生成ガスの浮上領域が開口部の直下に位置すること。
(2)反応生成ガスの浮上領域が狭く、単位面積、単位時間あたりの通過ガス量が大きいこと。
(3)反応生成ガスの浮上過程で浮上領域が一体化して混銑車の長手方向に直交する方向の浴振動モードが顕著となること。
溶銑と気体との界面は大きな界面張力を受けるので、酸素含有ガスが吐出ノズル5から水平方向に吹き込まれても、吹き込まれた気体は直ちに粗大な気泡を形成して浸漬ランス1の近傍に浮上し易いと考えられる。また、酸素含有ガスは浸漬ランス1から複数の方向に吹き込まれるが、上記のように水平方向の侵入深さが小さいために、吐出ノズル5の浸漬深さが或る程度大きくなると、反応生成ガスの気泡を含む気泡流(気泡を含む溶銑が形成する流れ)は一体化して一つの気泡流としてふるまう。そして、撹拌動力密度が大きくなると、溶銑浴の振動と同期して浮上位置が自励振動的に移動し、これにより、浴振動を助長して振幅が大きくなり易いと考えられる。
その際、浴振動は、内径の小さい混銑車6の長手方向に直交する方向が主要な振動モードになるが、一般に混銑車6では容器部分のフリーボードが小さく、特に上記の振動方向の断面では、炉壁が溶銑浴の上方を覆うように大きく張り出した形状とはなっておらず、開口部12が大きく設けられているので、上記の浴振動が過大になると、開口部12から溶銑7が溢れ出たり、浴振動によって実質的なフリーボードが小さくなることで溶銑7の飛散量が増大したりして、溶銑7の噴出を招いていたと考えられる。
これらの推定から、溶銑7の噴出を抑制するためには、溶銑中に吹き込む酸素含有ガスに粉状精錬剤を同伴させて吹き込んで、溶銑中に吹き込む酸素ガスなどによる反応生成ガスの浮上領域を吐出ノズル5からの噴出方向に拡大させることが有効であると考えた。吹き込み気流に粉状精錬剤を同伴させると、単に吹き込み方向の運動量が増すというだけでなく、気液界面から溶銑中に粉状精錬剤の粒子が侵入する際に気液界面が乱されて微小な気泡が生成し易くなる。
このようにして微小な気泡が溶銑中に分散して形成された気泡流では、水平方向の運動量が効率良く溶銑7に伝達される。その結果、吐出ノズル5の近傍での溶銑7の流れの水平方向成分が増大するとともに、気泡がその溶銑7の流れから分離し難くなるので、浴面での気泡の浮上領域は、吐出ノズル5からの吹き込み方向に移動して広く拡大した形になると考えられる。
これにより、開口部12の直下に浮上する気泡の単位面積、単位時間あたりの通過ガス量が低減するとともに、浮上領域を分散させることで過剰な浴振動も抑制することができ、溶銑7の噴出の抑制が可能になると考えられた。
更に、適正な吹き込み条件について検討を行った結果、以下のような好適な吹き込み条件を見出すに至った。
溶銑7の1トンあたりの酸素ガスの供給速度は、0.05〜0.25Nm/(min・t)の範囲が好適で、より望ましくは0.08〜0.15Nm/(min・t)の範囲である。酸素ガス供給速度が0.05Nm/(min・t)未満では、脱珪反応速度が小さく、処理時間の延長を招くため効率的でない。酸素ガス供給速度が0.25Nm/(min・t)超えでは、酸素ガス供給速度が過大で溶銑7の噴出のリスクが増大する。
溶銑7の1トンあたりの粉状精錬剤の吹き込み速度は0.20〜1.00kg/(min・t)の範囲が好適で、より望ましくは0.30〜0.80kg/(min・t)の範囲である。粉状精錬剤の吹き込み速度が0.20kg/(min・t)未満では、脱珪処理における溶銑7の噴出の抑制効果が小さいので、酸素ガス供給速度を増大したり、浸漬ランス1の浸漬深さを増大したりすることが困難な場合があり、効率的でないからである。また、粉状精錬剤の吹き込み速度が1.00kg/(min・t)超えでは、粉状精錬剤の吹き込み速度が大き過ぎて、吸熱量が増すからである。
溶銑の脱珪処理において、上記のような条件で酸素含有ガスとともに粉状精錬剤を溶銑7に吹き込んだ場合、開口部12からの溶銑7の噴出が抑制される。これにより、溶銑7の噴出による操業阻害を招くことなく、粉状精錬剤を吹き込まない場合に比べて、相対的に酸素含有ガスの供給速度を4〜6割程度増大させたり、吐出ノズル5の浸漬深さを4〜6割程度増大させたりすることが可能となる。
内管2から吹き込む粉状精錬剤の供給速度(kg/min)と、内管2から吹き込む酸素含有ガスに含まれる酸素ガスの供給速度(Nm/min)との比(kg/Nm)を「粉体/酸素ガス比」と定義したとき、吹き込みガスの浴中への分散を促進するためには粉体/酸素ガス比を大きくした方がよい。しかし、粉体/酸素ガス比を大きくし過ぎると温度降下の原因となることから、粉体/酸素ガス比は2以上、9未満とすることが好ましく、より望ましくは3以上、7未満とすることが好ましい。
その際、内管2から酸素ガスとともに吹き込む粉状精錬剤としては、転炉脱炭スラグが最も好適である。転炉脱炭スラグは、生石灰などと異なりプリメルト状態であるので、反応性は生石灰より優れ、且つ安価であるからである。転炉脱炭スラグの粒径の制約は特にないが、1mm以下程度の粒度で十分な効果が得られる。また、転炉脱炭スラグの成分のうちCaO成分は、通常、30質量%以上であるので、脱珪スラグの塩基度の確保を図る上で好適である。ただし、吹き込み条件によっては転炉脱炭スラグに含有される燐による溶銑の復燐が生じることがあるので、吹き込み条件には注意を要する。
転炉脱炭スラグに含有される酸化鉄成分が多すぎると、酸化鉄の分解反応による吸熱で熱余裕が減少し易くなる。そのため、転炉脱炭スラグは、CaO成分が30質量%以上、且つ、酸化鉄は、「FeO+Fe」の成分和が30質量%以下となるような成分のものが望ましい。転炉脱炭スラグの組成の典型的な範囲では、CaO;30〜50質量%、FeO+Fe;20〜40質量%、塩基度((質量%CaO)/(質量%SiO));3〜5、P;1〜2質量%である。
内管2から酸素含有ガスとともに吹き込む粉状精錬剤は、必ずしも転炉脱炭スラグのみには限らず他の粉状のリサイクル精錬剤や生石灰などのCaO系媒溶剤を併用してもよいが、CaO系媒溶剤のコストと転炉脱炭スラグの製鉄所外への排出量とを効果的に抑制するためには、粉状精錬剤に占める転炉脱炭スラグの比率は50質量%以上であることが望ましい。
上記の条件下において、転炉脱炭スラグからの復燐を効果的に抑制するための吹き込み条件について、更に検討を行い、本発明を完成させるに至った。
即ち、粉状精錬剤に含まれるCaOの溶銑7の1トンあたりの供給速度A(kg/(min・t))と、下記の(1)式及び(2)式によって定義される、脱珪処理で生成する酸化物融体における二酸化珪素生成速度指数B(kg/(min・t))との比A/Bが0.70以上、1.10以下となる条件下で、酸素含有ガスとともに粉状精錬剤を溶銑に吹き込むことで、粉状精錬剤による温度降下を抑制しつつ、転炉脱炭スラグからの復燐の抑制が可能となることを見出した。
B=CSiO2×Rf+(Fo+Co×Rf×0.7)×2.68×ηo …(1)
ηo=0.85−0.65×e−Rf/6Fo …(2)
ここで、CSiO2は粉状精錬剤中のSiOの含有質量比率(−)、Rfは溶銑7の1トンあたりの粉状精錬剤の供給速度(kg/(min・t))、Foは溶銑7の1トンあたりの酸素含有ガス中の酸素ガスの供給速度(Nm/(min・t))、Coは粉状精錬剤中の酸化鉄に含まれる酸素の粉状精錬剤に対する質量比率(−)、ηoは推定脱珪酸素効率(−)である。尚、通常の転炉脱炭スラグの場合、スラグ中のT.Feに占めるFe3+の質量比率は0.2程度であるので、Coはスラグ中のT.Feの質量比率の0.34倍(16×1.2/56≒0.34)として求めてもよい。T.Feとは、スラグ中の全ての鉄酸化物の鉄分の合計値である。
(1)式及び(2)式によって定義されるBは、粉状精錬剤中のSiOの供給速度(kg/(min・t))と、酸素ガス及び酸化鉄として供給される酸素と溶銑中珪素とが反応して生じる二酸化珪素(SiO)の発生速度(kg/(min・t))との和、つまり脱珪処理で生成する酸化物融体における二酸化珪素生成速度(kg/(min・t))を意味している。上記(1)式の右辺の係数2.68は標準状態で単位体積(1Nm)の酸素ガスによって化学量論的に生成する二酸化珪素(SiO)の質量2.68kgを意味する。
操業実績から求めた脱珪酸素効率は、粉状精錬剤に含まれる酸化鉄中の酸素の供給速度が酸素含有ガス中の酸素ガスの供給速度に対して小さい範囲でも、粉状精錬剤の供給速度によって大きく変化する。つまり、粉状精錬剤を供給することで、脱珪酸素効率が上昇する。これは、上述したように、酸素含有ガスが、粉状精錬剤とともに吹き込まれることで、溶銑中に微小な気泡として分散して供給される現象を反映しているものと考えられる。このため、酸素源や精錬剤の供給速度などから、脱珪反応に伴って生成する酸化物融体の塩基度を推定するには、脱珪酸素効率を適切に推定することが重要である。
図4に、粉状精錬剤の供給速度Rfと吹き込んだ酸素含有ガスに含まれる酸素ガスの供給速度Foとの比(kg/Nm)、つまり、粉体/酸素ガス比(kg/Nm)と脱珪酸素効率との関係を示す。図4に示すように、粉体/酸素ガス比(kg/Nm)が大きくなると脱珪酸素効率が上昇する。ここで、脱珪酸素効率は、溶銑に吹き込んだ酸素含有ガスに含まれる酸素ガスと、溶銑に吹き込んだ粉状精錬剤に含まれる酸化鉄中の酸素との合計量に対する、溶銑の脱珪量の実績から化学量論的に必要とされる酸素量の比率であり、溶銑の珪素濃度が0.10〜0.50質量%の範囲内で評価した。
図4には、上記(2)式によって得られる曲線も合わせて示しているが、脱珪酸素効率は概ね上記(2)式によって近似できることがわかる。脱珪酸素効率に影響を及ぼす他の要因としては、溶銑の珪素濃度、溶銑温度、吐出ノズルの個数及び浸漬深さ、酸素ガス供給速度などが挙げられ、例えば、上記(2)式において定数としている各項の係数を、これらの変数を用いた回帰式に置き換えるような方法で、脱珪酸素効率を更に精度良く推定するようにしてもよい。
しかし、溶銑の珪素濃度が0.10〜0.50質量%、溶銑温度が1300〜1400℃、吐出ノズルの個数が2〜4個、浸漬ランスの浸漬深さが0.4〜0.6m、酸素ガス供給速度が0.05〜0.20Nm/(min・t)の範囲では、これらの条件が脱珪酸素効率に及ぼす影響はそれほど大きい訳ではなく、図4の実績値のプロットのばらつきの程度に過ぎないので、上記(2)式による評価でも十分である。
図5に、上記の比A/Bと脱珪処理前後での脱燐量(負値はスラグからの復燐を示す)との関係を示す。比A/Bが0.70以上の範囲では、吹き込んだ転炉脱炭スラグからの復燐を効果的に抑制できており、比A/Bは0.70以上が必要で、より望ましくは0.80以上とすることが好ましい。
尚、図5において、転炉脱炭スラグを吹き込んでいない条件においても復燐が生じている理由は、混銑車では前チャージの脱燐処理後のスラグを完全には排出することが困難であり、脱珪処理開始時に混銑車内に残留していた前チャージの脱燐スラグと脱珪処理で生成した二酸化珪素とが混合し、スラグの塩基度が低下したことにより、前チャージの残留スラグから溶銑への復燐が生じたためである。
比A/Bを1.10超えに更に高くしても、復燐を抑制する効果は飽和しており、粉状精錬剤の供給量を増加するだけ溶銑温度の降下が増大するデメリットが生じる。
図6に、上記の比A/Bと珪素濃度減少量0.01質量%あたりの温度上昇量(℃/0.01質量%Si)との関係を示す。比A/Bは、粉状精錬剤の添加による溶銑温度の降下が発生しないようにするために1.10以下とすることが必要であり、より望ましくは1.00以下とすることが好ましい。
上記説明は、吐出ノズル5が二重管構造の場合について説明したが、吐出ノズル5が三重管以上の多重管構造であっても、本発明は実施できる。吐出ノズル5が三重管以上の多重管構造の場合は、内管から酸素含有ガスと粉状精錬剤とを吹き込み、内管の周囲の内管以外の管からは、炭化水素系ガスを吹き込む。その際、吐出ノズル5の内管の冷却効果を高めることを目的として、内管以外の各管からの吹き込み流量及び各管から吹き込む炭化水素系ガスの種類を変えるなどすることができる。
また、上記説明は、反応容器が混銑車6の場合の脱珪処理方法について説明したが、反応容器として溶銑鍋を使用した場合も、上記に準じて本発明を実施することができる。
以上説明したように、本発明によれば、脱珪処理において、酸素含有ガスとともに粉状精錬剤を溶銑7に吹き込むので、溶銑中に吹き込まれる粉状精錬剤によって、酸素含有ガスのみを吹き込んだ場合と比較して吐出ノズルからの吹き込みガス気泡が溶銑浴内で分散され、それに伴って反応容器の開口部からの溶銑の噴出が抑制でき、また気泡が分散されることによって脱珪反応に消費される酸素の効率が向上する。
更に、粉状精錬剤に含まれるCaOの溶銑7の1トンあたりの供給速度A(kg/(min・t))と、脱珪処理で生成する酸化物融体における二酸化珪素生成速度指数B(kg/(min・t))との比A/Bを所定の範囲に制御するので、安価なリサイクル精錬剤である転炉脱炭スラグを使用しつつ、精錬剤の使用量を抑制して脱珪反応で生じた熱の有効利用と転炉脱炭スラグからの復燐抑制とを両立させることが可能となる。
約300トン容量の混銑車に収容された300トンの溶銑に、上述した図2に示す浸漬ランスを、2孔浸漬ランスは図3(A)のごとく、4孔浸漬ランスは図3(B)のごとく、吐出ノズルの向きを調整して略鉛直に浸漬させ、溶銑の珪素濃度が0.10質量%以上の範囲で脱珪処理試験を実施した。この脱珪処理試験で使用した混銑車は、溶銑の脱燐処理を行った後の混銑車である。具体的には、混銑車に収容された溶銑に脱燐処理を施し、脱燐処理後、溶銑及び脱燐処理で生成したスラグを混銑車から排出し、その後、所定量の鉄スクラップを装入し、この混銑車を高炉に移動させて溶銑を受銑し、受銑後、図1に示す脱珪ステーションに移動して溶銑の脱珪処理を行った。
脱珪処理において、内管からは、25〜45Nm/min(0.08〜0.15Nm/(min・t))の酸素ガスを吹き込み、内管と外管との間隙からは、内管から吹き込む酸素ガスの5〜10体積%のプロパンガスを吹き込んだ。その際、内管から酸素ガスとともに粉状精錬剤を0〜300kg/minの範囲で吹き込んだ。浸漬ランスの浸漬深さ(内管の上端から溶銑浴面までの距離)は、混銑車の開口部からの溶銑の噴出がないことを確認して、400mmから550mmまで増大させた。
脱珪処理前及び脱珪処理後の溶銑中珪素濃度を分析し、この分析値に基づいて各試験での脱珪酸素効率を求めた。ここで、脱珪酸素効率は、溶銑に吹き込んだ酸素含有ガスに含まれる酸素ガスと、溶銑に吹き込んだ粉状精錬剤に含まれる酸化鉄中の酸素との合計量に対する、溶銑の脱珪量の実績から化学量論的に必要とされる酸素量の比率である。
粉状精錬剤としては、CaO;54質量%、SiO;17質量%、T.Fe;18質量%、P;2質量%、酸化鉄中酸素;6質量%の転炉脱炭スラグを1mm以下に粉砕して用いた。
試験条件及び試験結果を表1に示す。尚、表1において、溶銑の噴出判定は、混銑車の遠景を撮影したモニタ画面から目視で噴出の有無(有り;×、無し;○)を判定し、復燐の判定は、脱燐量(脱珪処理前の溶銑中燐濃度−脱珪処理後の溶銑中燐濃度)が0質量%以上、つまり、復燐なしを良好(○)、0質量%未満、つまり、復燐ありを不良(×)と判定し、昇温判定は、ΔT/ΔSi(珪素濃度減少量0.01質量%あたりの温度上昇量(℃/0.01質量%Si))が0℃/0.01質量%Si以上を良好(○)、0℃/0.01質量%Si未満を不良(×)と判定している。また、脱珪酸素効率は40%以上の場合を、脱珪酸素効率が高いと判定した。
本発明の規定範囲を逸脱する範囲において脱珪処理を実施した比較例は、溶銑の噴出、復燐、昇熱のいずれか、若しくは複数に問題があり、効率的な脱珪処理が実施できなかった。これに対して、本発明の規定範囲を満足する範囲において脱珪処理を実施した本発明例は、溶銑の噴出、復燐、昇熱の全てを満足する結果となった。
このように、本発明を適用することにより、混銑車内の溶銑に略鉛直に浸漬ランスを浸漬させ、該浸漬ランスから酸素含有ガスを吹き込む脱珪処理において、混銑車開口部からの溶銑の噴出を抑制することができ、これに伴って送酸速度を増大させたり、浸漬ランスの浸漬深さを深くしたりして効率的に送酸して脱珪処理することが可能となる。また、安価な精錬剤である転炉脱炭スラグを主体として使用しても、吹き込み量の低減による温度降下の抑制とスラグからの復燐の防止とを両立できる。更に、粉状精錬剤を伴わずに気体酸素を吹き込む場合に比べて大幅に脱珪酸素効率が向上することから、溶銑の珪素濃度が比較的高い場合でも、次の脱燐処理工程の負荷を増すことなく効率的に脱珪処理を実施することができる。また更に、脱炭量が減少して、発生したCOガスの炉内及び炉口付近での二次燃焼による耐火物への熱負荷も軽減されることから、耐火物寿命の点でも良い影響があり、脱珪処理の実施比率の増大も可能となる。
これらの結果、脱珪反応による発熱を有効利用し、脱珪処理工程での復燐抑止によって脱燐処理工程の負荷を軽減できることなどから、溶銑燐濃度が低減でき、CaO系媒溶剤のコスト削減、歩留り向上などの製造コストの低減効果を得ることが可能となる。
1 浸漬ランス
2 内管
3 外管
4 耐火物被覆層
5 吐出ノズル
6 混銑車
7 溶銑
8 合流部
9 粉状精錬剤供給配管
10 酸素含有ガス供給配管
11 炭化水素系ガス供給配管
12 開口部

Claims (1)

  1. 耐火物被覆層を有する浸漬ランスを反応容器に収容された溶銑に鉛直に浸漬し、前記浸漬ランスの側面に設けた多重管構造の吐出ノズルから、酸素含有ガス、粉状精錬剤、及び、前記酸素含有ガスの吐出ノズルを外周側から冷却するための炭化水素系ガスを前記溶銑に吹き込み、前記溶銑に含有される珪素を酸化して除去する溶銑の脱珪処理方法において、
    前記粉状精錬剤が、CaO成分が30質量%以上で、且つ、酸化鉄は、FeO+Fe の成分和が30質量%以下である成分の、粉状の転炉脱炭スラグを含み、
    前記酸素含有ガスに含まれる酸素ガスの溶銑1トンあたりの供給速度を0.05〜0.25Nm/(min・t)とし、
    前記粉状精錬剤の溶銑1トンあたりの吹き込み速度を0.20〜1.00kg/(min・t)とし、
    前記粉状精錬剤に含まれるCaOの溶銑1トンあたりの供給速度A(kg/(min・t))と、下記の(1)式及び(2)式によって定義される、脱珪処理で生成する酸化物融体における二酸化珪素生成速度B(kg/(min・t))との比A/Bを0.70以上、1.10以下として、
    前記酸素含有ガスとともに前記粉状精錬剤を前記溶銑に吹き込むことを特徴とする、溶銑の脱珪処理方法。
    B=CSiO2×Rf+(Fo+Co×Rf×0.7)×2.68×ηo …(1)
    ηo=0.85−0.65×e−Rf/6Fo …(2)
    ここで、CSiO2は粉状精錬剤中のSiOの含有質量比率(−)、Rfは溶銑1トンあたりの粉状精錬剤の供給速度(kg/(min・t))、Foは溶銑1トンあたりの酸素含有ガス中の酸素ガスの供給速度(Nm/(min・t))、Coは粉状精錬剤中の酸化鉄に含まれる酸素の粉状精錬剤に対する質量比率(−)、ηoは推定脱珪酸素効率(−)である。
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