JP5867520B2 - 溶銑の予備処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、1つの転炉型精錬炉を用いて溶銑の脱珪処理と脱燐処理とを、途中の排滓工程を挟んで連続して行う溶銑の予備処理方法に関する。
温室効果ガスの排出量削減が強く求められる近年、鉄鋼業においては、転炉や溶銑鍋などの処理容器で溶銑の脱燐処理及び脱炭精錬を行う際に、溶銑に熱的な余裕がある場合には、炉内の溶銑に鉄スクラップなどの冷鉄源を配合させて、鉄鋼製品生産に要するエネルギーを削減する方法が行われている。これは、高炉に装入される鉄鉱石のような酸化鉄と異なり、金属鉄である冷鉄源は還元する必要がなく、高炉から出銑される銑鉄を精錬して溶鋼を製造する方法よりも、少ないエネルギー消費量及び少ない温室効果ガス排出量で溶鋼を製造できるからである。また、高炉で製造された溶銑に冷鉄源を加えて溶鋼を溶製することで、高炉で製造される溶銑量以上の溶鋼を溶製でき、溶鋼の生産量増大も可能である。
また近年、コスト面及び品質面で有利であることから、転炉での脱炭精錬の前に、溶銑に対して予備処理として脱燐処理(「予備脱燐処理」ともいう)を実施し、予め溶銑中の燐を除去する精錬方法が行われている。これは、脱燐反応は精錬温度が低いほど熱力学的に進行しやすく、つまり、溶鋼段階よりも溶銑段階の方が脱燐反応は進行しやすく、少ない精錬剤で脱燐精錬を行うことができることに基づいている。
一般的に溶銑の予備処理では、先ず、酸化鉄などの固体酸素源を溶銑に添加して脱珪処理を行い、この脱珪処理で発生したスラグを除去し、更に、必要に応じて溶銑を別の精錬容器に移し替えた後に脱燐精錬剤(媒溶剤)及び脱燐剤(酸素ガスなどの酸素源)を添加して脱燐処理を実施する。通常、この脱燐処理の脱燐精錬剤としては生石灰などのCaO系媒溶剤を用い、脱燐剤である酸素源としては固体酸素源(酸化鉄など)や気体酸素源(酸素ガスなど)を用いている。また、予備処理を行う精錬容器としては、トーピードカー、取鍋(高炉鍋や装入鍋)、転炉型精錬炉などが用いられている。尚、脱珪処理を行わずに直ちに脱燐処理を施す場合もあるが、珪素(Si)は燐(P)よりも酸素(O)との親和力が強く、従って、溶銑中の燐よりも珪素の方が優先的に酸化されるので、この場合の脱燐処理の精錬初期は、脱珪反応(Si+2O→SiO2)が優勢であり(この時期を「脱珪期」ともいう)、溶銑中の珪素が或る程度低減した時点から脱燐反応(2P+5O→P25)が進行する。
上記の方法で脱燐処理を行った溶銑は、熱源である珪素が酸化されて殆どなくなっており、炭素(C)も酸化(C+O→CO)されて炭素濃度も出銑時に比べて1.5質量%程度低下し、鉄スクラップなどの冷鉄源を溶解するための熱的な余裕がないことから、脱燐処理の施された溶銑の転炉における脱炭精錬工程では冷鉄源を配合できないという問題が生じている。このため、溶鋼の増産が必要な場合には、予備処理としての脱燐処理を放棄して、転炉で脱燐精錬と脱炭精錬とを同時に行うという、従来の転炉吹錬に戻す操業を行う場合もある。尚、高炉−転炉の組み合わせからなる鉄鋼製造工程では、鉄スクラップなどの冷鉄源の溶解用熱源は、溶銑の有する顕熱、溶銑中の炭素及び珪素の燃焼熱が主体であり、溶銑中の炭素及び珪素が減少することで、溶銑の熱的余裕が低下する。
しかしながら、溶銑に予備処理として脱燐処理を施すことで、コスト低減及び鋼材の品質向上を達成できることのみならず、スラグ発生量を低減できることから、このような操業形態の変更を行わず、溶銑の脱燐処理を行い、その上で、転炉では脱炭精錬のみを行うと同時に鉄スクラップなどの冷鉄源の配合比率を増加させ、高炉で製造された単位質量あたりの溶銑からより多くの溶鋼を製造することが望ましい。
多くの冷鉄源を溶銑中に溶解させるためには、溶銑中の炭素及び珪素の燃焼熱を冷鉄源の溶解用熱源として有効活用する必要がある。転炉型精錬炉は、炉の空塔部(「フリーボード」ともいう)が大きく溶銑の強攪拌が可能であり、且つ、酸素ガス供給流量を多くすることができるので、溶銑中の炭素及び珪素の燃焼熱を利用して溶銑中に冷鉄源を溶解させるための精錬容器として有利である。そこで、脱珪処理による溶銑中珪素の燃焼熱を有効に活用し、且つ、脱燐処理に必要な脱燐精錬剤の使用量を低減させて脱燐精錬剤の滓化に要する熱量を抑制し、更に、脱珪処理と脱燐処理とを連続することで溶銑からの熱放出を抑制することにより、溶銑の熱的余裕を高めることを目的として、1つの転炉型精錬炉を用いて溶銑の脱珪処理と脱燐処理とを、途中の排滓工程を挟んで連続して行う溶銑の予備処理方法が幾つか提案されている。
例えば、特許文献1には、1つの転炉型精錬炉を用いて溶銑の脱珪、脱燐処理を行う際に、先ず、脱珪処理終了時のスラグの塩基度((質量%CaO)/(質量%SiO2))が0.3〜1.3の範囲に入るようにCaO系媒溶剤の供給量を調節して脱珪処理を行った後、転炉型精錬炉を傾動させて炉内に生成したスラグを炉口から排出し、次いで、新たにCaO系媒溶剤を添加して脱燐処理を行う溶銑の予備処理方法が提案されている。
特開平10−152714号公報
特許文献1に提案されるような、1つの転炉型精錬炉を用いて溶銑の脱珪処理と脱燐処理とを、途中の排滓工程を挟んで連続して行う精錬方法の場合には、排滓工程で如何に速やかに且つ目標とする所定量のスラグを炉内から流出させるかが、操業の重要なポイントとなる。
本発明者らは、上記排滓工程におけるスラグの排出性について検討した結果、スラグ排出の良否は脱珪処理中でのスラグのフォーミングが影響していることを知見した。即ち、脱珪処理中でのスラグのフォーミングが少ないとスラグの流動性が低く、所定時間内で十分な量のスラグを排出することは困難であり、従って、排滓工程で速やかに且つ十分な量のスラグを炉内から流出させるためには、脱珪吹錬中にスラグを安定的にフォーミングさせなければならないことを知見した。
この観点から特許文献1を検証すると、特許文献1は、脱珪処理中でのスラグのフォーミングはスロッピング(スラグが炉口から炉外に溢出する現象)の原因になるとして、スラグのフォーミングを防止することを操業目標の1つとしており、つまり、スラグのフォーミングが排滓工程におけるスラグ排出の良否に影響を与えることを認識しておらず、従って、特許文献1では、脱珪処理後の排滓工程において十分な量のスラグを排出できない虞がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、1つの転炉型精錬炉を用いて溶銑の脱珪処理と脱燐処理とを、途中の排滓工程を挟んで連続して行う溶銑の予備処理方法において、脱珪処理後の排滓工程において十分な量のスラグを迅速に炉外に排出することができ、次工程の脱燐処理では、コスト面及び品質面から十分な脱燐処理を行うことを可能とする、溶銑の予備処理方法を提供することである。
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]転炉型精錬炉内の溶銑に上吹きランスから気体酸素源を供給して溶銑を脱珪処理する脱珪処理工程と、該脱珪処理工程で生成したスラグの少なくとも一部を前記転炉型精錬炉から排出する排滓工程と、該排滓工程後、前記転炉型精錬炉内にCaO系媒溶剤を添加し、前記上吹きランスから気体酸素源を供給して残留させた溶銑を脱燐処理する脱燐処理工程と、を有する溶銑の予備処理方法であって、前記上吹きランスから気体酸素源を供給して脱珪処理する際に、上吹きランスによって気体酸素源が供給されている溶銑浴面及び/またはその近傍に、固体酸素源を搬送用ガスを用いて供給することを特徴とする溶銑の予備処理方法。
[2]前記上吹きランスは、前記気体酸素源及び前記固体酸素源のそれぞれの供給流路を有することを特徴とする、上記[1]に記載の溶銑の予備処理方法。
[3]転炉型精錬炉内の溶銑に上吹きランスから気体酸素源を供給して溶銑を脱珪処理する脱珪処理工程と、該脱珪処理工程で生成したスラグの少なくとも一部を前記転炉型精錬炉から排出する排滓工程と、該排滓工程後、前記転炉型精錬炉内にCaO系媒溶剤を添加し、前記上吹きランスから気体酸素源を供給して残留させた溶銑を脱燐処理する脱燐処理工程と、を有する溶銑の予備処理方法であって、前記上吹きランスから気体酸素源を供給して脱珪処理する際に、上吹きランスによって気体酸素源が供給されている溶銑浴面及び/またはその近傍に、固体酸素源を、可燃性ガスと該可燃性ガスを燃焼するための酸化性ガスとで形成される火炎で加熱しながら、搬送用ガスを用いて供給することを特徴とする溶銑の予備処理方法。
[4]前記上吹きランスは、前記気体酸素源、前記固体酸素源、前記可燃性ガス及び前記燃焼用酸化性ガスのそれぞれの供給流路を有することを特徴とする、上記[3]に記載の溶銑の予備処理方法。
[5]前記固体酸素源の供給量を、炉内でのスラグ高さ上昇速度または炉内からのCOガス発生速度に基づいて調節することを特徴とする、上記[1]ないし上記[4]の何れか1項に記載の溶銑の予備処理方法。
[6]前記固体酸素源の搬送用ガスは、還元性ガス、炭酸ガス、非酸化性ガス、希ガス、空気のうちの何れか1種または2種以上の気体であることを特徴とする、上記[1]ないし上記[5]の何れか1項に記載の溶銑の予備処理方法。
[7]前記固体酸素源は、粒度が1.0mm以下である鉄鉱石の焼結鉱、ミルスケール、ダスト、砂鉄、鉄鉱石のうちの何れか1種または2種以上であることを特徴とする、上記[1]ないし上記[6]の何れか1項に記載の溶銑の予備処理方法。
[8]前記気体酸素源の供給により形成される複数の火点で囲まれる位置に、前記固体酸素源を供給することを特徴とする、上記[1]ないし上記[7]の何れか1項に記載の溶銑の予備処理方法。
本発明によれば、1つの転炉型精錬炉を用いて、溶銑の脱珪処理と脱燐処理とを、途中の排滓工程を挟んで連続して行う溶銑の予備処理において、脱珪処理の際に、気体酸素源が供給されている溶銑浴面(「火点」という)及び/またはその近傍に、搬送用ガスとともに固体酸素源を供給するので、供給した固体酸素源が脱珪処理で生成するスラグ中に迅速に溶融して、スラグのFeO濃度が迅速に上昇し、その結果、脱珪処理で生成するスラグのフォーミングが促進され、その後の排滓工程での円滑な排滓に必要なレベルまで速やかにスラグをフォーミングさせることができ、排滓工程では、十分な量のスラグを迅速に炉外に排出することが実現される。また、固体酸素源を火炎を介して加熱供給した場合には、固体酸素源がより一層迅速に溶融し、スラグのFeO濃度が迅速に上昇するので、スラグのフォーミングをより一層促進させることが可能となる。これにより、排滓工程を遅延させることなく円滑に行うことが可能となるとともに、次工程の脱燐処理では、少ないCaO系媒溶剤の使用量で溶銑の燐濃度を低濃度まで低減することが可能となる。
本発明に係る溶銑の予備処理方法を実施する際に用いる転炉型精錬炉の概略断面図である。 本発明に係る溶銑の予備処理方法を工程順に示す概略図である。 本発明に好適な上吹きランスの例を示す概略図である。 本発明に好適な上吹きランスの他の例を示す概略図である。
以下、本発明を詳細に説明する。先ず、本発明に至った経緯について説明する。
本発明者らは、1つの転炉型精錬炉を用い、脱珪処理後の中間排滓を挟んで溶銑に対して脱珪処理及び脱燐処理を連続して行う場合に、脱珪処理において生成するスラグ(このスラグを「脱珪スラグ」という)を迅速且つ十分に排出することを目的として試験・検討を行った。その結果、脱珪スラグの排出の良否は脱珪処理中での脱珪スラグのフォーミングが影響していることを知見した。即ち、脱珪処理中における脱珪スラグのフォーミングが少ないとスラグの流動性が低く、所定時間内で十分な量の脱珪スラグを排出することは困難であり、従って、排滓工程で速やかに且つ十分な量の脱珪スラグを炉内から流出させるためには、脱珪吹錬中に脱珪スラグを安定的にフォーミングさせなければならないことを知見した。ここで、スラグのフォーミングとは、溶融スラグがガス気泡を含んで見掛け上の体積膨脹する現象である。
スラグがフォーミングする要素としては、(A)スラグの液相が多いこと、(B)ガス発生量が多いこと、の2つが挙げられる。(A)に関し、脱珪スラグは一般的にCaOとSiO2とを主成分としており、通常の脱珪処理時の温度域である1200〜1400℃では、この2つの成分のみでは液相は生成しない。従って、スラグの液相を増やすための3番目の成分が必要となる。CaOとSiO2とを主成分とするスラグにおいて、FeO濃度を高くするほど、液相が増加することが熱力学的に知られており、酸化鉄の添加は脱珪スラグのフォーミングに有効である。また、(B)に関し、通常の製鋼精錬操業におけるガス発生源は、溶銑中の炭素と酸素源とによる脱炭反応(COガス発生)である。この場合、溶銑と接触するスラグ中のFeO濃度が高いと、COガスが多く発生する。
即ち、これらのことから、スラグ中のFeO濃度を高くすることで、脱珪スラグのフォーミングが促進されることがわかる。
スラグ中のFeOは、気体酸素源による溶融鉄の酸化に由来するものと、酸化鉄などの固体酸素源の投入に由来するものとがある。前者の気体酸素源と溶融鉄との反応は、使用する溶銑の成分の違い、溶銑温度の高低、鉄スクラップの配合率、残留スラグ量、炉体状況などの複数の要因に大きく左右される。その結果、気体酸素源によるFeO生成量はバラツキを生じやすく、条件によってはフォーミングに必要なFeO量を下回る場合が生じる。つまり、気体酸素源と溶融鉄との反応を利用してスラグ中のFeO濃度を制御することは容易ではなく、この方法は、スラグ中のFeO濃度を制御する手段としては望ましくない。
スラグ中のFeO量を増やすための他の一つの手段は、固体酸素源の投入である。固体酸素源の投入量を増減することで、スラグ中のFeO濃度が固体酸素源の投入量に応じて変化することから、固体酸素源を投入する方法は、気体酸素源と溶融鉄との反応を利用する方法に比較して、スラグ中のFeO濃度を制御する手段として望ましい。
但し、転炉型精錬炉では、一般的に、固体酸素源は炉の上方に設置されたホッパーから炉内に落下投入されており、この場合、固体酸素源は、排気系統に吸引されないようにするために、数mm〜数十mmの粒状または塊状のものが使用されている。粒状または塊状の固体酸素源は炉内に投入されても直ちには溶融せず、未溶融のまま残留する場合もある。また、固体酸素源が溶融することによってスラグ中のFeO濃度が上昇するが、スラグ中のFeOは溶銑中の炭素と反応して還元されることから、固体酸素源の溶融速度とFeOの還元速度とが同等の場合には、スラグ中のFeO濃度は上昇しない。つまり、スラグ中のFeOの還元速度よりも固体酸素源の溶融速度を大きくしなければ、スラグ中のFeO濃度は上昇せず、フォーミング促進に寄与しない。
これらの事象を考慮した上で、固体酸素源の投入によってスラグ中のFeO濃度を迅速に上昇させることを検討した。その結果、脱珪処理工程において、上吹きランスによって気体酸素源が供給されている溶銑浴面(「火点」という)及び/またはその近傍に、固体酸素源を、搬送用ガスを用いて吹き付けて供給することで、スラグ中のFeO濃度が迅速に上昇するとの知見を得た。
火点が高温であることは当然として、火点近傍つまり火点の周縁部は高温に維持されるので、火点及び/または火点の近傍に供給された固体酸素源は迅速に溶融し、これにより、脱珪スラグのFeO濃度が速やかに上昇する。また、搬送用ガスとともに供給することから、固体酸素源は自ずと粉状或いは細かい粒状であり、添加された固体酸素源は速やかに溶融する。つまり、フォーミングに有利な脱珪スラグが迅速に形成され、円滑な排滓に必要なスラグ体積を速やかに確保することが実現される。脱珪処理においては、気体酸素源が供給されている溶銑の浴面つまり火点から離れても、浴面温度は比較的高温に維持されるが、固体酸素源の供給位置は、溶銑浴全体の平均温度よりも高い部分であること、つまり、火点及び/または火点の近傍であることが必要である。
ここで、火点の近傍とは、「固体酸素源の供給を行わない場合に、表面温度が溶銑浴全体の平均温度に比較して概ね100℃以上高温となる火点周囲の範囲」と定義する。具体的には、火点の近傍とは、「幾何学的に、火点の中心から、上吹きランス先端と溶銑浴面間との距離の0.3倍までの範囲内」と定義する。この0.3倍は、上吹きランスからの酸素ガス噴流の広がり角度から求められる数値である。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、本発明に係る溶銑の予備処理方法は、1つの転炉型精錬炉を用い、中間排滓を挟んで溶銑に対して脱珪処理及び脱燐処理を連続して行う溶銑の予備処理方法において、脱珪処理中、上吹きランスによって気体酸素源が供給されている溶銑浴面及び/またはその近傍に、固体酸素源を搬送用ガスを用いて供給することを必須とする。
以下、添付図面を参照して本発明の具体的な実施方法を説明する。図1は、本発明に係る溶銑の予備処理方法を実施する際に用いる転炉型精錬炉の概略断面図、図2は、本発明に係る溶銑の予備処理方法を工程順に示す概略図である。尚、図1は、図2−(B)の脱珪処理工程を示す図である。
本発明に係る溶銑の予備処理方法では、図1に示すような上底吹き可能な転炉型精錬炉1を用いる。上吹きは、転炉型精錬炉1の内部を昇降可能な上吹きランス2を介して、上吹きランス2の先端から気体酸素源として酸素含有ガスを溶銑5に向けて供給して行われる。酸素含有ガスとしては、酸素ガス、酸素富化空気、空気、酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスを使用することができる。図1では、酸素含有ガスとして酸素ガス8を使用した例を示している。ここで、酸素ガス8とは工業用純酸素である。底吹きは、転炉型精錬炉1の底部に設けられた底吹き羽口3を介して行われる。底吹きガス9としては、酸素ガスを含むガスでも、或いはアルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガスのみでもよいが、溶銑中に吹き込むことにより溶銑5の攪拌を強化して冷鉄源の溶解を促進する機能を有するほか、底吹き羽口3から搬送用ガスとともに造滓剤を溶銑中に吹き込む機能を有するものでもよい。
また、上吹きランス2には、気体酸素源の供給流路とは独立して、酸化鉄、鉄鉱石などの固体酸素源を搬送用ガスとともに供給する供給流路が設けられており、この供給流路を介して搬送用ガスを用いて固体酸素源を溶銑5に向けて吹き付けることができるように構成されている。図3に、固体酸素源を搬送用ガスとともに供給する供給流路が設けられている、本発明に好適な上吹きランス2の例を示す。
図3に示すように、上吹きランス2は、円筒状のランス本体11と、このランス本体11の下端に溶接などにより接続された銅鋳物製のランスチップ12とで構成されており、ランス本体11は、最内管15、内管16、中管17、外管18の同心円形状の4種の鋼管、即ち4重管で構成されている。最内管15の内部を固体酸素源が搬送用ガスとともに通り、最内管15と内管16との間隙を精錬用の酸素含有ガスが通り、内管16と中管17との間隙及び中管17と外管18との間隙は、冷却水の給水流路または排水流路となっている。内管16と中管17との間隙及び中管17と外管18との間隙のうちの一方が給水流路で、他方が排水流路であり、どちらを給水流路としても構わない。冷却水は、ランスチップ12の位置で反転するように構成されている。
最内管15の内部は、ランスチップ12のほぼ軸心位置に配置された固体酸素源噴射孔13と連通し、最内管15と内管16との間隙は、固体酸素源噴射孔13の外周に複数個設置された精錬用酸素含有ガス噴射孔14と連通している。固体酸素源噴射孔13は、固体酸素源を搬送用とともに吹き付けるためのノズル、精錬用酸素含有ガス噴射孔14は、精錬用の酸素含有ガスを吹き付けるためのノズルである。つまり、最内管15の内部が固体酸素源の供給流路となり、最内管15と内管16との間隙が精錬用酸素含有ガスの供給流路となっている。尚、図3において、固体酸素源噴射孔13はストレート形状のノズルであるが、精錬用酸素含有ガス噴射孔14と同様に、その断面が縮小する部分と拡大する部分の2つの円錐体で構成されるラバールノズルの形状であっても構わない。
本発明においては、溶銑5の精錬に2基以上の転炉型精錬炉1を使用し、そのうちの少なくとも1基の転炉型精錬炉1を本発明に係る溶銑予備処理に使用し、残りの少なくとも1基を、本発明に係る溶銑予備処理の施された溶銑の脱炭精錬に使用する。つまり、溶銑予備処理用の転炉型精錬炉1で予備処理を行い、次いで、予備処理の施された溶銑を脱炭精錬用の転炉型精錬炉1に移し替えて脱炭処理を行う。
本発明に係る溶銑5の予備処理方法では、図2−(A)に示すように、予め鉄スクラップなどの冷鉄源7が装入された転炉型精錬炉1に、装入鍋10を介して脱珪処理及び脱燐処理の施されていない溶銑5を装入する(溶銑装入工程)。
次いで、この転炉型精錬炉内の溶銑5に、気体酸素源として酸素含有ガスを上吹きランス2の精錬用酸素含有ガス噴射孔14を介して供給するとともに、上吹きランス2の固体酸素源噴射孔13を介して固体酸素源を搬送用ガスとともに吹き付けて、図2−(B)に示すように脱珪処理を実施する(脱珪処理工程)。溶銑5に含有される珪素と供給する気体酸素源中の酸素とが反応して脱珪反応(脱珪反応:Si+2O→SiO2)が起こり、脱珪処理が進行する。また、供給する固体酸素源中の酸素の一部も溶銑5に含有される珪素と反応して脱珪反応が起こる。この脱珪反応による珪素の燃焼熱で溶銑温度が上昇し、溶銑中の冷鉄源7の溶解が促進される。
この場合、上吹きランス2の固体酸素源噴射孔13は上吹きランス2の軸心方向を向いており、これに対して上吹きランス2の精錬用酸素含有ガス噴射孔14は上吹きランス2の軸心方向に傾斜した方向を向いており、固体酸素源噴射孔13からの噴流と精錬用酸素含有ガス噴射孔14からの噴流とは一般的には重ならずに、それぞれが別々に溶銑浴面に衝突する。つまり、固体酸素源噴射孔13から噴射される固体酸素源は、精錬用酸素含有ガス噴射孔14から吹きつけられる気体酸素源が溶銑浴面と衝突する位置、つまり、火点の近傍に吹き付けられる。但し、精錬用酸素含有ガス噴射孔14の上吹きランス2の軸心方向に対する傾斜角度(「傾角」という)が小さい場合には、固体酸素源噴射孔13からの噴流と精錬用酸素含有ガス噴射孔14からの噴流とが合体し、固体酸素源噴射孔13から噴射される固体酸素源は火点に吹き付けられる。
本発明では、固体酸素源が火点に吹き付けられても、また、火点の近傍に吹き付けられても、更には、火点と火点の近傍との双方に吹き付けられも、何れであっても構わない。以下、固体酸素源噴射孔13からの噴流と精錬用酸素含有ガス噴射孔14からの噴流とが重ならずに、それぞれが別々に溶銑浴面に衝突するとして本発明を説明するが、これは説明が煩雑になることから、便宜上このように説明するだけであり、固体酸素源が、火点、または、火点及びその周囲の双方に吹き付けられることを否定するものではない。何れにしろ、上吹きランス2を用いて気体酸素源及び固体酸素源を溶銑浴面に向けて吹き付けることで、溶銑5に対して自ずと本発明が実施される。
気体酸素源が溶銑浴面と衝突する位置である火点は、気体酸素源による脱炭反応が優勢であり、脱炭反応などの発熱によって高温となっており、この火点の近傍に添加された固体酸素源は、直ちに溶融し、脱珪反応によって生成するSiO2と反応し、FeO濃度の高い脱珪スラグ6が生成する。
この場合、固体酸素源を、火炎を介して加熱した後に溶銑5に向けて添加すれば、固体酸素源がより一層迅速に溶融し、脱珪スラグ6のFeO濃度が迅速に上昇し、速やかに脱珪スラグ6に液相を形成することができ、脱珪スラグ6をより一層有利にフォーミングさせることができる。
図4に、ランス先端に火炎を形成し、この火炎で固体酸素源を加熱することのできる、本発明に好適な上吹きランスの概略図を示す。図4において、上吹きランス2Aは、円筒状のランス本体21と、このランス本体21の下端に溶接などにより接続された銅鋳物製のランスチップ22とで構成されており、ランス本体21は、最内管27、仕切り管28、内管29、中管30、外管31、最外管32の同心円形状の6種の鋼管、即ち6重管で構成されている。最内管27の内部を固体酸素源が搬送用ガスとともに通り、最内管27と仕切り管28との間隙を可燃性ガスが通り、仕切り管28と内管29との間隙を、可燃性ガスを燃焼するための燃焼用酸化性ガスが通り、内管29と中管30との間隙を精錬用の酸素含有ガスが通り、中管30と外管31との間隙及び外管31と最外管32との間隙は、冷却水の給水流路または排水流路となっている。
最内管27の内部は、ランスチップ22のほぼ軸心位置に配置された固体酸素源噴射孔23と連通し、最内管27と仕切り管28との間隙は、固体酸素源噴射孔23の周囲に円環状のノズルまたは同心円上の複数個のノズル孔として開口する可燃性ガス噴射孔24と連通し、仕切り管28と内管29との間隙は、可燃性ガス噴射孔24の周囲に円環状のノズルまたは同心円上の複数個のノズル孔として開口する燃焼用酸化性ガス噴射孔25と連通し、そして、内管29と中管30との間隙は、燃焼用酸化性ガス噴射孔25の周辺に複数個設置された精錬用酸素含有ガス噴射孔26と連通している。
固体酸素源噴射孔23は、固体酸素源を搬送用とともに吹き付けるためのノズル、可燃性ガス噴射孔24は、可燃性ガスを噴射するためのノズル、燃焼用酸化性ガス噴射孔25は、可燃性ガスを燃焼する酸化性ガスを噴射するためのノズル、精錬用酸素含有ガス噴射孔26は、精錬用の酸素含有ガスを吹き付けるためのノズルである。つまり、最内管27の内部が固体酸素源の供給流路となり、最内管27と仕切り管28との間隙が可燃性ガス供給流路となり、仕切り管28と内管29との間隙が燃焼用酸化性ガス供給流路となり、内管29と中管30との間隙が精錬用酸素含有ガス供給流路となっている。尚、冷却水の流路は上吹きランス2と同様の構成となっている。
この構成の上吹きランス2Aでは、可燃性ガス噴射孔24から供給される可燃性ガスと、燃焼用酸化性ガス噴射孔25から供給される燃焼用酸化性ガスとは、上吹きランス半径方向の全方位で近接しているので、各々干渉し合い、雰囲気温度が高いこともあって、点火装置がなくても燃焼限界範囲内にガス濃度が達した時点で燃焼し、上吹きランス2Aの下方に火炎が形成される。この火炎により、固体酸素源噴射孔23から噴射される固体酸素源は加熱される。燃焼用酸化性ガスとは、空気や酸素ガスであり、精錬用の酸素含有ガスと同等である。
また、上吹きランス2及び上吹きランス2Aを用いて固体酸素源を炉内に供給することで、気体酸素源の供給によって形成される複数の火点に囲まれる位置に、固体酸素源を供給する状態を作りだすことができ、複数の火点に囲まれた固体酸素源供給部は、火点よりも温度は低いが、溶銑浴全体の平均温度よりも高い高温状態が安定して維持されるので特に好適である。
固体酸素源の投入量は、脱珪スラグ6を過不足なくフォーミングさせる量であればよい。固体酸素源は昇熱時及び分解時に吸熱することから、過度に投入すると、固体酸素源の分解熱により溶銑温度が低下してしまい、後工程での熱不足を招く。
固体酸素源の投入量は、脱珪処理中に炉内のスラグ高さの上昇速度を監視することで調節することができる。具体的には、フォーミングした脱珪スラグ6が炉口から溢れ出ず、且つ、フォーミングした脱珪スラグ6の上面が溶銑浴面から炉口までの高さの1/2以上となるように、固体酸素源の投入量を調整すればよい。このようにすることで、固体酸素源を過度に投入することなく、脱珪スラグ6を過不足なくフォーミングさせることが実現される。
尚、脱珪処理中のスラグ高さの上昇速度は、排ガス温度の測定値、上吹きランス2、2Aまたは炉体に取り付けた振動計の測定値、炉体から生じる音量の測定値、マイクロ波などによるスラグ面の計測値などによる情報から、把握することができる。また、炉内からのCOガス発生速度に基づいて、スラグ上昇の状況を推定してもよい。COガス発生速度は、排ガス中のCO濃度及びCO2濃度の測定値から炉内でのCOガス発生量を換算することで、算出することができる。
固体酸素源の搬送用ガスとしては、還元性ガス、非酸化性ガスに近い弱酸化性ガスである炭酸ガス、非酸化性ガス、希ガスのうちの何れか1種または2種以上の気体を用いることが好ましい。ここで、還元性ガスとは、プロパンガスなどの炭化水素系ガス及びCOガスであり、非酸化性ガスとは、窒素ガスなどの酸化能力のないガスであり、希ガスとはアルゴンガスやヘリウムガスなどの不活性ガスである。これは、固体酸素源には微量の金属鉄を含むものがあり、純酸素などの酸素濃度の高い気流中では燃焼して設備に損害を与える虞があるからである。
また、固体酸素源として自然界に存在する物質(鉄鉱石や砂鉄など)を使用する場合には、自然界に存在する物質は金属鉄を含有しておらず、その場合には、固体酸素源の搬送用ガスとして空気を使用可能である。ここで、金属鉄を含有する固体酸素源とは、鉄鋼製造工程の排ガス中や排水中から回収されるダスト、ケーク、スラッジなどである。
本発明では、1つの転炉型精錬炉1を用いて脱珪処理及び脱燐処理を実施しており、脱珪処理を実施する際には、前チャージの脱燐処理で生成したスラグ(このスラグを「脱燐スラグ」という)が炉壁に付着して残留する。従って、脱珪処理において、脱珪スラグ6の塩基度((質量%CaO)/(質量%SiO2))(以下、単に「塩基度」とのみ表示することもある)を制御しない場合には、残留した脱燐スラグに含有される燐酸化物(P25)が分解して、溶銑5の燐濃度が上昇する、所謂、「復燐」が発生する。脱珪処理におけるCaO系媒溶剤の使用量を削減するべく、脱燐スラグを意図的に炉内に残留させる場合には、復燐による燐濃度のピックアップがより大きくなる。つまり、このような復燐を防止するために、脱珪スラグ6の塩基度を調整することが好ましい。
通常の脱珪処理条件においては、溶銑温度が1300℃程度で、且つ、脱珪スラグ中のFeO濃度が10〜20質量%程度であり、これらを勘案すると、脱珪処理後の脱珪スラグ6の塩基度を0.8以上とすることで復燐反応が抑制される。上記の考えをより確実に実行するには、脱珪処理の全期間を通じて、脱珪スラグ6の組成がSiO2飽和領域に到達しないように、つまり脱珪スラグ6の塩基度を0.8以上に調整すればよい。尚、脱珪スラグ6の温度は溶銑5の温度と同等と考えればよい。
脱珪スラグ6の塩基度((質量%CaO)/(質量%SiO2))は、下記の(1)式に基づいて計算することができる。
塩基度=[(炉内残留CaO量(kg/溶銑-t))+(脱珪処理での添加CaO量(kg/溶銑-t))]÷[(炉内残留SiO2量(kg/溶銑-t))+(脱珪処理での生成SiO2量(kg/溶銑-t))]…(1)
尚、炉内残留CaO量及び炉内残留SiO2量は、炉内に残留する前チャージの脱燐スラグ中に含有されるCaO量及びSiO2量であり、脱珪処理での生成SiO2量は、脱珪処理前後の溶銑中Si濃度の変化から算出できる。
従って、本発明においては、脱珪スラグ6の塩基度の調整のために、脱珪処理前及び/または脱珪処理中に、(1)式に則り、必要に応じてCaO系媒溶剤を炉内に添加する。このCaO系媒溶剤としては、生石灰、炭酸カルシウム、ドロマイト、転炉スラグ(転炉での脱炭精錬で生成するスラグ)、取鍋内スラグ(取鍋内の溶鋼上に存在するスラグであって、出鋼時に混入した転炉スラグに生石灰などのスラグ改質剤を添加したもの)などが使用できる。CaO系媒溶剤の添加方法としては、粒状及び塊状のものは炉上のホッパーから、粉状のものは上吹きランス2、2Aを介するなどして投入することができる。
脱珪スラグ6の塩基度調整用のCaO系媒溶剤の添加時期は脱珪処理を開始してからでもよいが、脱珪処理中に脱珪スラグ6を十分に滓化させるためには、CaO系媒溶剤を事前に炉内に投入しておいてもよい。尚、前チャージの脱燐スラグを炉内に積極的に残留させた場合には、脱燐スラグは塩基度が高いことから、脱珪処理工程に供する溶銑5の珪素濃度が低いときは、脱珪スラグ6の塩基度調整用のCaO系媒溶剤の添加が必要でないことがある。この場合に、脱珪スラグ6の塩基度調整用のCaO系媒溶剤の使用量削減のためには、炉内に残留させる前チャージの脱燐スラグの量は50質量%以上であることが好ましい。
本発明に係る溶銑5の予備処理方法では、脱珪処理終了後、炉内に存在するSiO2を大量に含む低塩基度の脱珪スラグ6を転炉型精錬炉1から排出する。脱珪スラグ6の排出性の観点から、生成される脱珪スラグ6の塩基度が1.5以下となり、且つ、脱珪スラグ6の温度が1280℃以上となるように、脱珪処理条件を制御することが好ましい。これは、脱珪スラグ6の流動性を確保して、良好な排出性及び排滓率(排滓率(質量%)=(排出スラグ質量)×100/[(脱珪処理工程で生成したスラグ質量)+(前チャージの残留スラグ質量)])を得るためである。
脱珪スラグ6の塩基度が1.5を超える場合、脱珪スラグ6に固相状態のスラグ(「固相スラグ」という)が生じることで脱珪スラグ6の流動性が低くなり、また、スラグ温度が1280℃を下回っても、同様に固相スラグの増加による流動性の低下、並びに、液相状態のスラグ自体の粘性上昇が生じることから、脱珪スラグ6の流動性が低くなり排滓が困難になる。これを防止するために、使用する溶銑5の初期条件によっては、例えば脱珪処理が進んで溶銑中珪素濃度が0.05質量%を下回るような段階であっても、スラグ温度が1280℃を下回る場合が発生するが、この場合には、酸素ガスを更に供給して脱炭反応を進めてスラグ温度を高めて排滓工程を行うことが重要である。排滓のための更に好ましい条件は、脱珪スラグ6の塩基度が1.0以下、脱珪スラグ6の温度が1320℃以上である。
固体酸素源つまり酸化鉄はCaO系媒溶剤の滓化を促進させる機能も有しており、本発明では、火点の近傍に固体酸素源を添加しており、これにより、CaO系媒溶剤の滓化が促進され、短時間で行われる脱珪処理中に目標とする塩基度の脱珪スラグ6を形成させることができるという効果も得られる。
この脱珪処理工程のあとに、図2−(C)に示すように、転炉型精錬炉1を、出湯口4が設置された側とは反対側に傾動させて、脱珪処理で発生した、SiO2を大量に含む低塩基度の脱珪スラグ6を転炉型精錬炉1の炉口から排出する(排滓工程)。
本発明において、排滓工程における脱珪スラグ6の排滓率は30質量%以上を確保することが好ましい。これは、その後の脱燐処理工程においては脱燐反応を進める上で脱燐スラグの塩基度を1.5〜3.5に調整する必要があり、排滓率が30質量%を下回ると、脱燐処理工程で添加すべきCaO系媒溶剤の量が多くなってしまうだけでなく、脱燐処理におけるスラグ量が多くなり、脱燐処理中のスラグフォーミングが抑制できず、転炉型精錬炉1の炉口からのスラグ漏洩による操業支障が生じるからである。
また、従来の溶銑予備処理から転炉脱炭精錬までの平均的な生石灰の原単位に比較してコスト高を回避し、且つ、脱燐処理での最低限必要な残留スラグ量を確保するためには、排滓率を50質量%以上80質量%以下とすることが好ましい。つまり、溶銑5の予備処理から脱炭精錬までで消費するCaO系媒溶剤の総使用量を抑制するためには、排滓率を50質量%以上に高めることが好ましい。一方、生成した脱珪スラグ6の80質量%を超えて排滓してしまうと、次工程の脱燐処理工程において新たに添加するCaO系媒溶剤の滓化が損なわれ、脱燐反応が阻害される虞があるので、排滓率は80質量%以下とすることが好ましい。
排滓工程後は、転炉型精錬炉内に残留させた脱珪処理後の溶銑5にCaO系媒溶剤及び酸素源を供給して、図2−(D)に示すように、溶銑5を脱燐処理する(脱燐処理工程)。脱燐処理工程において、炉内のスラグの塩基度は1.5〜3.5の範囲に調整する。この脱燐処理工程において使用する酸素源は、脱珪処理と同様に、上吹きランス2からの気体酸素源、具体的には酸素ガス8を主体とするが、一部固体酸素源を使用しても構わない。但し、本発明は多量の冷鉄源7の溶解を目的の1つとしており、昇熱時及び分解時に吸熱する固体酸素源を脱燐処理工程での酸素源として使用することはできるだけ避けることが好ましい。
脱燐処理で使用するCaO系媒溶剤としては、生石灰や炭酸カルシウムなどが使用できる。但し、これらに限定されず、CaOを50質量%以上含有し、必要に応じてフッ素やアルミナ、酸化チタンなどの他の成分を含有するものも、脱燐処理時のCaO系媒溶剤として使用することができる。フッ素、アルミナ、酸化チタンはCaOの滓化促進剤として機能し、脱燐反応が促進される。これらの中でもスラグ粘度を低減させる観点から酸化チタンの添加が好ましい。CaO系媒溶剤の添加方法としては、粒状及び塊状のものは炉上のホッパーから、粉状のものは上吹きランス2、2Aを介するなどして投入することができる。
溶銑中の燐は供給される酸素源中の酸素に酸化されて燐酸化物(P25)となり、この燐酸化物が、CaO系媒溶剤の滓化によって形成され、脱燐精錬剤として機能するスラグ中に3CaO・P25なる安定形態の化合物として取り込まれ、溶銑5の脱燐反応が進行する。脱燐処理において生成するスラグは「脱燐スラグ」と呼ばれる。
脱燐反応が進行し溶銑中燐濃度が所定の値に低下したなら、脱燐処理を終了し、図2−(E)に示すように、転炉型精錬炉1を出湯口4が設置された側に傾転させて転炉型精錬炉内の溶銑5を、出湯口4を介して溶銑保持容器(図示せず)に出湯する(出湯工程)。
この出湯工程後、炉内の脱燐スラグを排出せずに、転炉型精錬炉1に冷鉄源7及び溶銑5を装入し、次チャージの脱珪処理工程を開始してもよく、また、炉内の脱燐スラグを排出した後、冷鉄源7及び溶銑5を装入し、次チャージの脱珪処理工程を開始してもよい。炉内に生成された脱燐スラグの全量または大半を炉内に残留させて次チャージの脱珪処理を開始した場合には、前チャージの脱燐スラグの有する熱量及び鉄分を次チャージの脱珪処理において回収することができるとともに、前チャージの脱燐スラグ中のCaO分を次チャージの脱珪処理におけるCaO源として活用することができ、脱珪処理時でのCaO系媒溶剤の使用量を削減することができる。
本発明の脱珪処理及び脱燐処理で使用する気体酸素源としては、酸素ガス(工業用純酸素を含む)、空気、酸素富化空気、酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスなどを使用することができる。脱燐処理の場合には、他のガスを使用した場合に比べて脱燐反応速度が速いことから、酸素ガスを使用することが好ましい。混合ガスの場合は、脱燐反応速度を確保するために、酸素濃度を空気よりも高くすることが好ましい。
本発明においては、CaO系媒溶剤はホッパーなどから気体酸素源とは別個に投入してもよい。しかし本発明の更に好ましい態様においては、気体酸素源とともにCaO媒溶剤を、気体酸素源の供給場所と同一場所の溶銑浴面に供給する。これにより、CaO媒溶剤自体も高温雰囲気下で加熱されることから、スラグの滓化をより一層迅速にすることができる。これにより、脱珪処理においては、脱珪スラグ6のフォーミングが促進され、脱燐処理においては、脱燐反応をより一層促進させることができる。
また、本発明で使用する固体酸素源としては、鉄鉱石の焼結鉱、ミルスケール、ダスト(集塵ダスト)、砂鉄、鉄鉱石などを使用することができる。集塵ダストとは、高炉、転炉、焼結工程において排気ガスから回収される、鉄分を含むダストである。固体酸素源の溶融化を促進させる観点から、固体酸素源は粒径1.0mm以下の粉粒体であることが好ましい。粒径が1.0mmを超えるものは、迅速な溶融が困難であり、脱珪スラグ6のFeO成分の上昇が得られにくい。ここで、粒径が1.0mm以下とは、目開き寸法が1.0mmの篩分器を通過するという意味であり、目開き寸法が1.0mmの篩分器を通過する限り、長径が1.0mmを超える紡錘形であっても構わない。尚、取扱いの観点から、粒径は1μm以上が好ましい。
上記の固体酸素源のなかで、砂鉄及び微粉の鉄鉱石は、発生形態として1.0mm以下の微粉であり、粉砕処理を必要としないことから特に好適である。このうち、砂鉄は、固体酸素源として機能するのみならず、酸化チタンを7〜10質量%程度含有していることからCaO系媒溶剤の滓化促進剤としての機能も備えており、特に好適である。
本発明の脱珪処理において、供給すべき固体酸素源の全てを、気体酸素源が供給されている場所の近傍に供給する必要はなく、固体酸素源の一部のみを気体酸素源が供給されている場所の近傍に供給しても構わない。但し、気体酸素源が供給されている場所の近傍に供給する固体酸素源が少ないと、前述したスラグ中FeO成分の上昇が少ないので、これを防止するために、設備仕様に応じて、スラグ中FeO成分の上昇が十分となる量を下限とすればよい。また、上限としては、設備仕様に応じて抜熱が過大とならない量に抑制すればよい。
例えば、100〜350トン程度の転炉型精錬炉1で脱珪処理する場合には、浴面に供給する気体酸素源中の酸素ガス純分1Nm3(標準状態での酸素ガス純分)に対し、搬送用ガスにより供給される固体酸素源を0.1kg以上2kg以下の範囲で添加することが好ましい。0.1kg未満では本発明で期待する効果が十分に得られず、一方、2kgを超えると固体酸素源の供給面における抜熱が大きくなり、脱珪スラグ6の滓化が不十分となってフォーミングが不十分になる。より好ましい供給量は0.3kg以上である。この場合、気体酸素源が供給されている溶銑浴面の近傍以外の場所に供給する固体酸素源は、上置き添加、インジェクション添加など適宜の方法で供給すればよい。
以上説明したように、本発明によれば、1つの転炉型精錬炉1を用いて途中の排滓工程を挟んで脱珪処理工程及び脱燐処理工程を交互に行う溶銑の予備処理において、脱珪処理の際に、気体酸素源が供給されている火点及び/または火点の近傍に、搬送用ガスとともに固体酸素源を供給するので、供給した固体酸素源が脱珪処理で生成する脱珪スラグ中に迅速に溶融して、脱珪スラグ6のFeO濃度が迅速に上昇し、その結果、脱珪処理で生成する脱珪スラグ6のフォーミングが促進され、その後の排滓工程での円滑な排滓に必要なレベルまで速やかに脱珪スラグ6をフォーミングさせることができ、排滓工程では、十分な量の脱珪スラグ6を迅速に炉外に排出することが実現される。
尚、本発明は上記説明の範囲に限るものではなく、種々の変更が可能である。例えば、上記説明では、1つの上吹きランスから精錬用酸素含有ガスと固体酸素源とを供給しているが、上吹きランスを2本配置し、一方の上吹きランスから精錬用酸素含有ガスを供給し、他方の上吹きランスから固体酸素源を供給するようにしてもよい。また、上吹きランス2、2Aでは、軸心部に固体酸素源噴射孔が設けられ、その周辺部に精錬用酸素含有ガス噴射孔が設けられているが、ランス中心軸を中心とした同心円上に複数のノズル孔を配し、交互(互い違い)のノズル孔から気体酸素源、及び、固体酸素源を供給するようにしてもよい。
図1に示す容量300トン規模の転炉型精錬炉を用いて溶銑予備処理の試験を実施した。転炉型精錬炉に収容された約300トンの溶銑に対し、上吹きランスから精錬用の酸素ガスを溶銑に吹き付けるとともに、炉底に設けた底吹き羽口から撹拌用の窒素ガスを溶銑中に吹き込んで予備処理を実施した。CaO系媒溶剤としては、脱珪処理及び脱燐処理ともに生石灰(CaO)を使用した。
溶銑の予備処理は、図2に示すように、転炉型精錬炉に溶銑を装入し更に生石灰を添加し、上吹きランスから酸素ガスを供給して脱珪処理を行い、次いで、脱珪スラグの一部を排出し、その後、生石灰を添加した後に引き続き上吹きランスから酸素ガスを供給して溶銑の脱燐処理を行った。脱燐処理後、脱燐スラグは炉内への付着分を除いて全て排出し、その後、転炉型精錬炉に溶銑を装入し、次チャージの脱珪処理工程を行った。
この予備処理方法において、本発明例1〜3では、図3に示す上吹きランスから酸素ガスを供給しつつ、固体酸素源(砂鉄)を供給して脱珪処理を実施し、また、本発明例4では、図4に示す上吹きランスから酸素ガスを供給しつつ、更に上吹きランスから固体酸素源(砂鉄)、都市ガス、都市ガス燃焼用酸素ガスを供給し、都市ガスを燃焼させて上吹きランス先端の下方に火炎を形成させ、この火炎を介して固体酸素源を加熱しながら供給して脱珪処理を実施した。
また比較例として、上吹きランスから酸素ガスを供給するものの、上吹きランスからは固体酸素源を供給せずに、固体酸素源を炉上ホッパーから本発明例1〜4と同じ供給速度で炉内に落下投入する脱珪処理も行った。脱珪処理工程に供する溶銑は、その温度を1300℃の一定に調整した。
表1に、本発明例1〜4及び比較例1〜3の脱珪処理における、脱珪処理前の溶銑中珪素濃度、上吹きランスからの酸素ガスの供給速度(送酸速度)、上吹きランスからの固体酸素源供給速度、及び上吹きランスからの都市ガスの供給速度を示す。
Figure 0005867520
固体酸素源としては平均粒度100μmの砂鉄を使用し、都市ガス燃焼用酸素ガスは都市ガスの完全燃焼当量を供給した。
これらの条件で脱珪処理を行い、脱珪処理中に、フォーミングした脱珪スラグが炉口から噴出し始めるまでの脱珪処理開始からの時間を調査した。表1に脱珪スラグが噴出し始めるまでの時間を示す。尚、脱珪スラグのフォーミングが促進されるほど、炉口から噴出し始めるまでの時間は短くなる。
脱珪処理前の溶銑中珪素濃度が同じである本発明例1と比較例1とを比較することで、上吹きランスから固体酸素源を供給する本発明例1では、脱珪スラグのフォーミングが速やかに起こることが確認された。同様に、脱珪処理前の溶銑中珪素濃度が同じである本発明例2と比較例2、並びに、本発明例3と比較例3との比較でも、上吹きランスから固体酸素源を供給する本発明例2、3において脱珪スラグのフォーミングが速やかに起こることが確認された。
更に、固体酸素源を火炎を介して加熱添加した本発明例4においては、脱珪処理前の溶銑中珪素濃度が同一であるが、火炎を形成しなかった本発明例2よりも脱珪スラグのフォーミングが速やかに起こることが確認された。
図1に示す容量300トン規模の転炉型精錬炉を用いて溶銑予備処理の試験を実施した。転炉型精錬炉に収容された約300トンの溶銑に対し、上吹きランスから精錬用の酸素ガスを溶銑に吹き付けるとともに、炉底に設けた底吹き羽口から撹拌用の窒素ガスを溶銑中に吹き込んで予備処理を実施した。CaO系媒溶剤としては、脱珪処理及び脱燐処理ともに生石灰(CaO)を使用した。
溶銑の予備処理は、図2に示すように、転炉型精錬炉に溶銑を装入し更に生石灰を添加し、上吹きランスから酸素ガスを供給して脱珪処理を行い、次いで、脱珪スラグの一部を排出し、その後、生石灰を添加した後に引き続き上吹きランスから酸素ガスを供給して溶銑の脱燐処理を行った。脱燐処理後、脱燐処理が施された溶銑は出湯するも、脱燐スラグは排出せずに転炉型精錬炉に残留させる、または、脱燐スラグの一部を排出して残留させ(残留率30%、50%、70%)、その後、転炉型精錬炉に、先ず冷鉄源を装入し、次いで溶銑を装入し、次チャージの脱珪処理工程を行った。
この予備処理方法において、本発明例5〜8では、図3に示す上吹きランスから酸素ガスを供給しつつ、固体酸素源(砂鉄)を供給して脱珪処理を実施し、また、本発明例9〜13では、図4に示す上吹きランスから酸素ガスを供給しつつ、更に上吹きランスから固体酸素源(砂鉄)、都市ガス、都市ガス燃焼用酸素ガスを供給し、都市ガスを燃焼させて上吹きランス先端の下方に火炎を形成させ、この火炎を介して固体酸素源を加熱しながら供給して脱珪処理を実施した。
また比較例として、脱燐処理後、脱燐スラグの全量を炉内に残留(残留率=100%)させたまま溶銑を装入し、上吹きランスから酸素ガスを供給するものの、上吹きランスからは固体酸素源を供給せずに、固体酸素源を炉上ホッパーから本発明例5〜13と同じ供給速度で炉内に落下投入する脱珪処理(比較例4、5)も行った。脱珪処理工程に供する溶銑は、その温度を1300℃の一定に調整した。
表2に、本発明例5〜13及び比較例4、5の脱珪処理における、脱珪処理前の溶銑中珪素濃度、上吹きランスからの酸素ガスの供給速度(送酸速度)、上吹きランスからの固体酸素源供給速度、上吹きランスからの都市ガスの供給速度、脱燐スラグの残留率、及び脱珪処理と脱燐処理とを通じて炉内に投入した生石灰量を示す。
Figure 0005867520
固体酸素源としては平均粒度100μmの砂鉄を使用し、都市ガス燃焼用酸素ガスは都市ガスの完全燃焼当量を供給した。
これらの条件で脱珪処理を行い、脱珪処理中に、フォーミングした脱珪スラグが炉口から噴出し始めるまでの脱珪処理開始からの時間を調査した。また、排滓工程における脱珪スラグの排滓率(中間排滓率)を調査した。表2に脱珪スラグが噴出し始めるまでの時間及び中間排滓率を示す。
脱珪処理前の溶銑中珪素濃度が同じである本発明例5〜9と比較例4とを比較することで、上吹きランスから固体酸素源を供給する本発明例5〜9では、脱珪スラグのフォーミングが速やかに起こることが確認された。また、本発明例5〜9では、比較例4に比較して脱珪処理後の中間排滓率も高くなった。
また更に、脱燐処理後、脱燐スラグの全量を炉内に残留させた本発明例8と比較例4との比較では、本発明例8では、脱珪処理と脱燐処理とを通じての生石灰投入量を少なくすることができた。また、本発明例5〜8を比べると、脱燐スラグの炉内残留量が多いほど、脱珪処理と脱燐処理とを通じての生石灰投入量を少なくすることができた。
また、特に、固体酸素源を、火炎を介して加熱添加した本発明例9においては、脱珪処理前の溶銑中珪素濃度及び脱燐スラグの残留率が同一であるが、火炎を形成しなかった本発明例8よりも脱珪スラグのフォーミングが速やかに起き、中間排滓率が高くなり、脱珪処理と脱燐処理とを通じての生石灰投入量を少なくできることが確認できた。
脱珪処理前の溶銑中珪素濃度が0.4質量%と高い本発明例10〜13においても、火炎を形成して固体酸素源を供給することで、固体酸素源を投入しなかった比較例5よりも脱珪スラグのフォーミングが速やかに起き、中間排滓率が高くなり、脱珪処理と脱燐処理とを通じての生石灰投入量を少なくできることが確認できた。
1 転炉型精錬炉
2 上吹きランス
2A 上吹きランス
3 底吹き羽口
4 出湯口
5 溶銑
6 脱珪スラグ
7 冷鉄源
8 酸素ガス
9 底吹きガス
10 装入鍋
11 ランス本体
12 ランスチップ
13 固体酸素源噴射孔
14 精錬用酸素含有ガス噴射孔
15 最内管
16 内管
17 中管
18 外管
21 ランス本体
22 ランスチップ
23 固体酸素源噴射孔
24 可燃性ガス噴射孔
25 燃焼用酸化性ガス噴射孔
26 精錬用酸素含有ガス噴射孔
27 最内管
28 仕切り管
29 内管
30 中管
31 外管
32 最外管

Claims (8)

  1. 転炉型精錬炉内の溶銑に上吹きランスから気体酸素源を供給して溶銑を脱珪処理する脱珪処理工程と、該脱珪処理工程で生成したスラグの少なくとも一部を前記転炉型精錬炉から排出する排滓工程と、該排滓工程後、前記転炉型精錬炉内にCaO系媒溶剤を添加し、前記上吹きランスから気体酸素源を供給して残留させた溶銑を脱燐処理する脱燐処理工程と、を有する溶銑の予備処理方法であって、
    前記上吹きランスから気体酸素源を供給して脱珪処理する際に、上吹きランスによって気体酸素源が供給されている溶銑浴面及び/またはその近傍に、固体酸素源を搬送用ガスを用いて供給し、
    前記転炉型精錬炉内に生成された脱燐スラグの30%以上を炉内に残留させて次チャージの脱珪処理を開始することを特徴とする溶銑の予備処理方法。
  2. 前記上吹きランスは、前記気体酸素源及び前記固体酸素源のそれぞれの供給流路を有することを特徴とする、請求項1に記載の溶銑の予備処理方法。
  3. 転炉型精錬炉内の溶銑に上吹きランスから気体酸素源を供給して溶銑を脱珪処理する脱珪処理工程と、該脱珪処理工程で生成したスラグの少なくとも一部を前記転炉型精錬炉から排出する排滓工程と、該排滓工程後、前記転炉型精錬炉内にCaO系媒溶剤を添加し、前記上吹きランスから気体酸素源を供給して残留させた溶銑を脱燐処理する脱燐処理工程と、を有する溶銑の予備処理方法であって、
    前記上吹きランスから気体酸素源を供給して脱珪処理する際に、上吹きランスによって気体酸素源が供給されている溶銑浴面及び/またはその近傍に、固体酸素源を、可燃性ガスと該可燃性ガスを燃焼するための燃焼用酸化性ガスとで形成される火炎で加熱しながら、搬送用ガスを用いて供給することを特徴とする溶銑の予備処理方法。
  4. 前記上吹きランスは、前記気体酸素源、前記固体酸素源、前記可燃性ガス及び前記燃焼用酸化性ガスのそれぞれの供給流路を有することを特徴とする、請求項3に記載の溶銑の予備処理方法。
  5. 前記固体酸素源の供給量を、炉内でのスラグ高さ上昇速度または炉内からのCOガス発生速度に基づいて調節することを特徴とする、請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の溶銑の予備処理方法。
  6. 前記固体酸素源の搬送用ガスは、還元性ガス、炭酸ガス、非酸化性ガス、希ガス、空気のうちの何れか1種または2種以上の気体であることを特徴とする、請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の溶銑の予備処理方法。
  7. 前記固体酸素源は、粒度が1.0mm以下である鉄鉱石の焼結鉱、ミルスケール、ダスト、砂鉄、鉄鉱石のうちの何れか1種または2種以上であることを特徴とする、請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の溶銑の予備処理方法。
  8. 前記気体酸素源の供給により形成される複数の火点で囲まれる位置に、前記固体酸素源を供給することを特徴とする、請求項1ないし請求項7の何れか1項に記載の溶銑の予備処理方法。
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