JP5471151B2 - 転炉製鋼方法 - Google Patents

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Description

本発明は、溶銑から溶鋼を溶製する転炉製鋼方法に関し、詳しくは、転炉内において脱炭精錬と同時に行われる脱燐精錬を、少ない脱燐用精錬剤の使用量で、従来と同等の脱燐効率で脱燐精錬することのできる転炉製鋼方法に関するものである。
伝統的転炉製鋼方法においては、同一の転炉において溶銑の脱燐精錬と脱炭精錬とを同時に行って、製鋼作業を終了していた。しかし、近年、鋼材の品質に対する要求が高くなり、一方、連続鋳造の拡大や、真空脱ガス炉、取鍋精錬炉などの溶鋼の二次精錬が普及するに伴い、転炉における出鋼温度が上昇し、それによって転炉における脱燐能力は低減した。これは、溶銑の脱燐反応は高温ほど不利になるからである。
そこで、転炉に装入する溶銑を予め脱燐処理して、溶銑中の燐を或る程度除去してから転炉に装入する溶銑予備処理法が発展してきた。燐は、温度レベルの低い溶銑段階における脱燐が効率的であることから、溶銑予備処理工程にて予め脱燐することが一般的に行われるようになった。この場合、精錬方法としては、トーピードカー方式、取鍋方式、或いは脱炭精錬を行う転炉とは別の転炉方式などがあるが、何れも生石灰、酸化鉄などを上方添加或いはインジェクション方式にて添加し、攪拌用ガスの吹き込みによる攪拌、或いは酸素ガスの上吹を併用して実施されている(例えば、特許文献1を参照)。尚、酸化精錬である脱燐精錬では、珪素の方が燐よりも酸素との親和力が強いために、溶銑中の珪素も酸化除去される。
このように、溶銑段階で脱珪・脱燐精錬を行い、転炉においては主に脱炭精錬を行うことで、転炉の効率化及び生産性向上が図られてきた。しかしながら、この方法においては、低燐化の工程能力のみを見れば、比較的低い到達燐レベルを達成することはできるものの、処理時間が長く処理時の抜熱が大きいこと、転炉に供給するまでに時間を要すること、2基の転炉を利用しても処理後の溶銑払出し、別転炉への再装入による温度低下が避けられないことなどから、溶銑の保有熱を有効に活用するという観点からは有利なプロセスではない。また、溶銑の予備脱燐処理は転炉工程における熱余裕を低下させ、使用原料の自由度がなくなり、今後の転炉における積極的な鉄スクラップのリサイクルの観点からも問題が大きい。
そこで、1つの転炉を用いて、脱燐精錬と脱炭精錬とを連続して行う方法が提案されている。例えば特許文献2には、底吹機能を有する転炉における溶銑の精錬方法において、底吹ガスによる攪拌エネルギーが0.5kW/t以上となるように底吹ガス流量を制御しつつ、処理後のスラグの塩基度(質量%CaO/質量%SiO2)が2.0未満で且つ酸化鉄含有率が5質量%以上となるように溶銑の脱珪、脱燐精錬を行った後、一旦吹錬を中断し、炉傾動によって炉内スラグを排出し、この排滓終了後、引き続いて脱炭吹錬を行うことを特徴とする転炉精錬方法が提案されている。
しかしながら、特許文献2においても、吹錬の途中に排滓工程を設けることで精錬時間が長くなり、放熱による温度低下が避けられない。また全体の精錬時間が長くなり、転炉を占有する時間も長く、効率的な転炉の運用という面からも問題がある。
特開昭62−109908号公報 特開平7−18319号公報
上記のように特許文献2の方法も問題があり、従って、溶銑の保有熱を有効に活用するという観点からは、1つの転炉で脱珪・脱燐・脱炭の精錬を同時に行う従前の方法が見直されるべきである。しかしながら、上述のように、転炉での脱燐能力を高めない限り、現状のままでは脱燐用精錬剤の使用量が多大になる。
近年、製鋼工程においては、地球温暖化に代表される環境影響に対応するべく、製鋼工程におけるスラグ排出量の削減が必須となっている。溶銑の脱燐精錬におけるスラグ排出量を削減するためには、脱燐用精錬剤として機能するスラグ(「脱燐精錬用スラグ」という)となる脱燐精錬剤の投入量を低減することが必要である。溶銑の脱燐精錬における脱燐精錬剤の主体は石灰(CaO)であり、従って、品質要求に応えるとともにスラグ排出量を削減するには、石灰の使用量を低減しつつ必要脱燐量を維持する技術、即ち、少ない石灰の使用量で効率良く脱燐精錬する技術が必要となる。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、転炉において溶銑の脱炭精錬と脱燐精錬とを同時に行って溶鋼を溶製するにあたり、少ない脱燐用精錬剤の使用量で、従来と同等の脱燐効率で脱燐精錬することができる、従来提案されているよりも有利な転炉製鋼方法を提供することである。
上記課題を解決するための第1の発明に係る転炉製鋼方法は、転炉内に酸素源として気体酸素源及び固体酸素源を供給して溶銑の脱炭精錬を行いつつ、CaOを主体とする脱燐精錬剤を添加し、該脱燐精錬剤を滓化させてスラグとなし、脱炭精錬と同時に溶銑に脱燐精錬を施して、溶銑から溶鋼を溶製する転炉製鋼方法において、1つの供給系統から気体酸素源を溶銑浴面に供給し、他の1つの供給系統から固体酸素源を、気体酸素源が供給されている場所の近傍の溶銑浴面に、搬送用ガスを用いて供給することを特徴とするものである。
第2の発明に係る転炉製鋼方法は、第1の発明において、前記気体酸素源及び固体酸素源のそれぞれの供給系統を、同一のランス内に配置することを特徴とするものである。
第3の発明に係る転炉製鋼方法は、第2の発明において、前記ランスは、気体酸素源の供給系統と固体酸素源の供給系統との間に、空気、還元性ガス、炭酸ガス、非酸化性ガス、希ガスのうちの何れか1種または2種以上のガスが存在する緩衝空間を有することを特徴とするものである。
第4の発明に係る転炉製鋼方法は、第1ないし第3の発明の何れかにおいて、CaOを主体とする脱燐精錬剤を、前記気体酸素源の供給系統を通じて前記気体酸素源とともに溶銑浴面に供給することを特徴とするものである。
第5の発明に係る転炉製鋼方法は、第1ないし第4の発明の何れかにおいて、前記固体酸素源の搬送用ガスが、空気、還元性ガス、炭酸ガス、非酸化性ガス、希ガスのうちの何れか1種または2種以上の気体であり、且つ、前記気体酸素源よりも酸素濃度が低いことを特徴とするものである。
第6の発明に係る転炉製鋼方法は、第1ないし第5の発明の何れかにおいて、前記固体酸素源は、粒度が1mm以下の焼結鉱、ミルスケール、ダスト、砂鉄、鉄鉱石のうちの何れか1種または2種以上であることを特徴とするものである。
第7の発明に係る転炉製鋼方法は、第1ないし第6の発明の何れかにおいて、前記気体酸素源の供給により形成される複数の火点で囲まれる位置に、前記固体酸素源を供給することを特徴とするものである。
本発明によれば、転炉内に気体酸素源及び固体酸素源を供給して溶銑の脱炭精錬を行うと同時に、CaOを主体とする脱燐精錬剤を添加して溶銑の脱燐精錬を行い、溶銑から溶鋼を溶製するにあたり、気体酸素源が供給されている場所の近傍の溶銑浴面に、搬送用ガスとともに固体酸素源を供給するので、固体酸素源の溶融が迅速化されて、脱燐精錬用スラグの酸素ポテンシャルが迅速に上昇し、当該スラグの脱燐能力が向上し、スラグの脱燐能力が向上することによって、従来に比べて少ない脱燐精錬剤の使用量であっても、従来と同等の脱燐速度を維持して脱燐精錬することが実現される。その結果、溶銑の脱燐精錬工程におけるスラグ発生量を削減することができ、環境への負荷を大幅に削減することが達成される。
本発明の作用効果を概念的に説明するための図であり、脱炭吹錬における鉄浴中の炭素濃度及び燐濃度の推移を示す図である。 本発明の作用効果を概念的に説明するための図であり、脱炭吹錬におけるスラグ中のCaO濃度及びT.Fe濃度の推移を示す図である。 本発明に好適な上吹きランスの概略断面図である。 図3に示す上吹きランスにおいて、緩衝空間への緩衝用ガスの供給経路を示す図である。
以下、本発明を具体的に説明する。
転炉を用いて、予備脱燐処理の施されていない溶銑から溶鋼を溶製するには、該溶銑を転炉内に装入し、CaOを主体とする脱燐精錬剤と、酸素ガスなどの気体酸素源及び固体の酸化鉄などの固体酸素源とを、転炉内に供給し、溶銑中の炭素を気体酸素源及び固体酸素源によって酸化除去するとともに、溶銑中の燐を気体酸素源及び固体酸素源によって酸化し、生成した燐酸化物を、CaOを主体とする脱燐精錬剤などからなる脱燐精錬用スラグに取り込み、溶銑中の燐を除去するという方法で行われている。溶銑中の炭素は、酸化されてCOガスとなって系外に排出される。ここで、CaOを主体とする脱燐精錬剤は、溶銑浴面を覆って、鉄スプラッシュなどの発生を防止する役割も果たしている。尚、酸素ガスなどの気体酸素源を溶銑に上吹きまたは底吹きして行う精錬を「酸素吹錬」と称し、また、気体酸素源及び固体酸素源は、まとめて酸素源と呼ばれている。
本発明では、脱燐精錬を転炉で実施するので、溶銑の予備処理は、溶製する鋼種の化学成分規格の硫黄含有量に基づき、必要に応じて予備脱硫処理を実施すればよく、予備脱燐処理及び予備脱珪処理は実施する必要がない。但し、転炉における脱燐精錬を促進させるために、溶銑中の炭素が除去されない程度の予備脱珪処理は実施しても構わない。これは、転炉での酸素吹錬時、溶銑中の珪素は酸化されてSiO2となり、CaOを主体とする脱燐精錬剤などからなる脱燐精錬用スラグに移行する。脱燐反応は、脱燐精錬用スラグの塩基度(質量%CaO/質量%SiO2)が高いほど促進されることから、生成するSiO2が多い場合には、CaOを主体とする脱燐精錬剤の供給量を多くする必要があり、効率的な脱燐精錬が阻害されるからである。また、燐含有量が少ない鉄鋼製品用の溶鋼を溶製する際には、溶銑段階で予備脱燐処理を実施し、更に転炉脱炭吹錬では本発明を適用することで、安定して燐含有量の少ない溶鋼の溶製が可能となる。つまり、燐含有量が少ない溶鋼を溶製する際には、予備脱燐処理を実施しても構わない。
原理的に考えれば、固体酸素源は、脱燐反応に関して、気体酸素源に比較して効率が高い。これは、脱燐反応が熱力学的には低温ほど有利であることに由来する。溶銑に酸素を投入すると脱炭反応及び脱燐反応が起こるが、気体酸素源を投入した場合は脱炭発熱による温度上昇が優勢であるのに対し、固体酸素源を投入した場合は固体酸素源の分解時に吸熱を伴うために、温度上昇が抑制される。つまり、固体酸素源を使用することにより、脱燐反応に有利な温度に維持される。但し、脱燐反応の促進のためには、固体酸素源が溶融できる程度の温度条件は必要である。また、固体酸素源は、溶融後にFeOとなり、脱燐反応に寄与する、脱燐精錬用スラグ中のFeO成分を増加させる機能を有しており、前記温度上昇の抑制効果と相俟って脱燐反応を促進させる。
従来、固体酸素源は、転炉の上方に設置されたホッパー(「炉上ホッパー」と呼ぶ)から酸素吹錬中に落下投入されるのが一般的であった。この場合に固体酸素源は、排気系統に吸引されないようにするために、数mm〜数十mmの粒状または塊状のものが使用される。粒状または塊状の固体酸素源は転炉内に投入されても直ちには溶融せず、転炉精錬終了時点まで残留する場合もある。また、固体酸素源が溶融することによってスラグ中のFeO濃度が上昇するが、スラグ中のFeOは溶銑中の炭素と反応して還元されることから、固体酸素源の溶融速度とFeOの還元速度とが同等の場合には、スラグ中のFeO濃度は上昇しない。つまり、スラグ中のFeOの還元速度よりも固体酸素源の溶融速度を大きくしなければ、スラグの酸素ポテンシャルは上昇せず、脱燐速度の向上は望めない。
本発明においては、1つの供給系統から気体酸素源を溶銑浴面に供給し、他の供給系統から固体酸素源を、気体酸素源が供給されている場所の近傍の溶銑浴面に搬送用ガスを用いて供給する。
溶銑浴面において、気体酸素源が溶銑浴面と衝突する場所、つまり火点は、気体酸素源によって過剰な高酸素ポテンシャル場が形成されているが、気体酸素源と溶銑中の炭素との反応によって高温になっている。従って、火点に直接固体酸素源を供給しても、酸素ポテンシャル及び冷却の観点で有意な効果は得られない。
一方、火点近傍の周縁部は、火点よりは温度が低いが比較的高温に維持されるので、そこに供給された固体酸素源は迅速に溶融することができる。更に、火点のような過剰な高酸素ポテンシャル場は形成されず、固体酸素源は効率良く反応に寄与することができる。これにより、スラグの酸素ポテンシャルが上昇し、つまり脱燐反応に最適なスラグが迅速に形成され、少ないスラグ量であっても、また高温下であっても脱燐反応が可能となる。
本発明の作用効果を図1及び図2を用いて概念的に説明する。図1は、酸素ガスを上吹きまたは底吹きする転炉での脱炭吹錬における鉄浴中の炭素濃度及び燐濃度の推移を示す図で、図2は、前記脱炭吹錬におけるスラグ中のCaO濃度及びT.Fe(=トータル鉄:スラグ中の全ての鉄酸化物の鉄分の合計値)濃度の推移を示す図である。
脱炭吹錬における鉄浴中の炭素濃度及び燐濃度の典型的な推移として、図1の実線に示すように、吹錬の進行に伴って炭素濃度は単調に減少するが、燐濃度は吹錬の序盤で低下した後、吹錬の中盤から終盤にかけて一旦上昇し、吹錬末期に再度低下することが知られている。この現象は、一般に、図2に示すスラグ中のT.Fe濃度の推移と対応して説明される。
即ち、脱炭反応が盛んに進行する吹錬中盤では供給した酸素源が優先的に脱炭反応に消費され、スラグ中のT.Fe濃度が低下する。これによりスラグの酸素ポテンシャルが低下し(酸化度が低くなる)、スラグ中の燐が鉄浴へ戻る、所謂、スラグから鉄浴へ復燐が発生し、鉄浴中の燐濃度が一時的に上昇する。
本発明では、固体酸素源を火点近傍に供給するので、効果的にスラグの酸素ポテンシャルを高めることができ、スラグ中のT.Fe濃度を吹錬中高位に維持できる。吹錬の全域にわたっては固体酸素源を添加できない場合も、例えば、前述したスラグ中のT.Fe濃度が低下する時期に本発明を適用すれば、図2の点線で示すようにスラグ中のT.Fe濃度の低下が抑制され、これにより、図1の点線で示すような燐濃度の低下が可能となる。
尚、本発明でいう、「気体酸素源が供給されている場所の近傍の溶銑浴面」とは、供給される気体酸素源が最初に溶銑に接触する面の近傍のことである。例えば、上吹きランスから気体酸素源を供給する場合には、上吹きランスから噴射される気体酸素源が溶銑浴面に衝突する位置の近傍であり、気体酸素源を炉底の羽口を用いて溶銑中へ吹き込む場合には、気体酸素源が羽口の出口で溶銑に侵入する面(この場合も「火点」と定義する)の近傍となる。但し、通常の酸素吹錬においては、気体酸素源が供給されている溶銑の浴面つまり火点から離れても、浴面温度は比較的高温に維持されるので、固体酸素源の供給位置は、溶銑全体の平均温度より高い部分であることが好ましい。
また、気体酸素源の供給系統及び固体酸素源の供給系統からの浴面上の供給位置の中心同士は、一致しないことが必要であり、固体酸素源の供給位置の中心が火点の領域にかからないことが好ましい。但し、供給領域自体が重なり合うことは問題ない。また、両系統から異なるガスが浴面に吹き付けられているため、前記浴面上の供給位置の中心同士が相当近接していても、実質的に一致していないのであれば領域の相違が確保され、問題はない。
本発明で使用する気体酸素源としては、酸素ガス(工業用純酸素を含む)、空気、酸素富化空気、酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスなどを使用することができる。通常の転炉精錬の場合には、他のガスを使用した場合に比べて脱炭反応速度及び脱燐反応速度が速いことから、酸素ガスを使用することが好ましい。混合ガスの場合は、脱炭反応速度及び脱燐反応速度を確保するために、酸素濃度を空気よりも高くすることが好ましい。
本発明の好ましい態様としては、固体酸素源の搬送用ガスとして空気、非酸化性ガス、希ガス、還元性ガス、非酸化性ガスに近い弱酸化性ガスである炭酸ガスのうちの何れか1種または2種以上の気体を用いる。ここで、還元性ガスとは、プロパンガスなどの炭化水素系ガス及びCOガスであり、非酸化性ガスとは、窒素ガスなどの酸化能力のないガスであり、希ガスとはArガスやHeガスなどの不活性ガスである。これらのガスを用いることで、火点近傍の温度上昇を抑制することができ、原理的に脱燐に有利な条件を作ることができる。
本発明においては、固体酸素源の搬送用ガスが空気などのような或る程度の酸素を含有するガスであっても効果を得ることができる。しかし上記の観点から、搬送用ガスに含まれる酸素の濃度は、気体酸素源よりも低いことが望ましい。例えば、気体酸素源が空気の場合は固体酸素源の搬送用ガスとして非酸化性ガス、希ガス、還元性ガス、炭酸ガスなどを使用することが望ましい。また、気体酸素源が純酸素若しくは酸素富化空気などの場合には上記した搬送用ガスの全てを用いることができる。
尚、固体酸素源には微量の金属鉄を含むものがあり、純酸素気流中では燃焼して設備に損害を与える恐れがある。固体酸素源を空気よりも酸素濃度の低い搬送用ガスで搬送することは、事故回避という工業的な観点からも有効である。
本発明においては、CaOを主体とする脱燐精錬剤はホッパーなどから気体酸素源とは別に投入してもよい。しかし本発明の更に好ましい態様においては、気体酸素源とともにCaOを主体とする脱燐精錬剤を、気体酸素源の供給場所と同一場所の溶銑浴面に供給する。これにより、CaOを主体とする脱燐精錬剤自体も高温雰囲気下で加熱されることから、スラグ化をより一層迅速にすることができる。つまり、脱燐反応をより一層促進させることができる。
本発明で使用する、CaOを主体とする脱燐精錬剤とは、CaOを含有し、本件の意図する脱燐精錬ができるものであれば特にCaOの含有量に制約はない。通常は、CaO単独からなるものや、またはCaOを50質量%以上含有し、必要に応じてその他の成分を含有するものである。
この場合、その他の成分としては一般的に滓化促進剤が挙げられる。即ち、本発明は、滓化促進剤の低減或いは省略を可能とする技術ではあるものの、滓化促進剤を添加して更に滓化効率を改善することを禁じるものではない。滓化促進剤としては、特に、CaOの融点を下げて滓化を促進させる作用のある酸化チタンや、酸化アルミニウム(Al23)を含有する物質が挙げられ、これらを使用することができる。中でも、スラグ粘度の観点からは酸化チタンの添加が好ましい。また、ホタル石などのCaF2系媒溶剤も滓化促進剤として使用可能である。但し、スラグを廃棄処分などにする際に、スラグからのフッ素の溶出量を抑えて環境を保護する観点から、CaF2系媒溶剤は滓化促進剤として使用しないことが好ましい。フッ素が不純物成分として不可避的に混入した物質については使用しても構わない。当然、酸化チタンを含有する物質や酸化アルミニウムを含有する物質を滓化促進剤として用いる場合も、この観点からフッ素を含まないものであることが好ましい。
CaOを主体とする脱燐精錬剤の具体例としては、安価でしかも脱燐能に優れることから生石灰、石灰石を使用することが好ましい。また、軽焼ドロマイトもCaOを主体とする脱燐精錬剤として使用することができる。
また、本発明で使用する固体酸素源としては、鉄鉱石の焼結鉱、ミルスケール、ダスト(集塵ダスト)、砂鉄、鉄鉱石などを使用することができる。集塵ダストとは、高炉、転炉、焼結工程において排気ガスから回収される、鉄分を含むダストである。固体酸素源の溶融化を促進させる観点から、固体酸素源は粒径1mm以下の粉粒体であることが好ましい。粒径が1mmを超えるものは、迅速な溶融が困難であり、スラグのFeO成分の上昇が得られにくい。ここで、粒径が1mm以下とは、目開き寸法が1mmの篩分器を通過するという意味であり、目開き寸法が1mmの篩分器を通過する限り、長径が1mmを超える紡錘形であっても構わない。尚、取扱いの観点から、粒径は1μm以上が好ましい。これらの固体酸素源のなかで、砂鉄及び微粉の鉄鉱石は、発生形態として1mm以下の微粉であり、粉砕処理を必要としないことから特に好適である。
本発明の転炉製鋼方法においては、脱燐反応を推進するために、酸素源として気体酸素源及び固体酸素源の双方を供給する。このうち気体酸素源は、上吹きランスによる上吹きや、底吹き羽口などによる溶銑中への底吹きなどの任意の方法により、供給することができる。固体酸素源も、気体酸素源が供給されている場所の近傍の溶銑浴面に供給する必要がある。例えば、気体酸素源が上吹きされている場合には、固体酸素源も上方から気体酸素源の溶銑浴面での衝突面の近傍に供給することが好ましいが、インジェクションランスまたは底吹き羽口などから搬送用ガスを用いて気体酸素源の溶銑浴面での衝突面の近傍に固体酸素源を供給してもよい。気体酸素源が羽口を通じて溶銑中に吹き込まれている場合には、同一の羽口に固体酸素源を供給する系統を設けるか、固体酸素源を供給する独立のインジェクションランス或いは羽口を設けることにより、羽口の出口で気体酸素源が溶銑に侵入する面の近傍に、固体酸素源を供給することができる。
また、本発明の転炉製鋼方法においては、CaOを主体とする脱燐精錬剤も気体酸素源が供給されている場所と同一場所の溶銑浴面に供給することが好ましい。このようにして、気体酸素源及び固体酸素源、更にはCaOを主体とする脱燐精錬剤を供給するためには、例えば、これらを供給するランス(上吹きランス、インジェクションランスなど)若しくは羽口に、少なくとも2つの供給系統を設置し、そのうちの1つの供給系統からCaOを主体とする脱燐精錬剤を気体酸素源とともに供給し、他の1つの供給系統から固体酸素源を前述した搬送用ガスとともに供給することにより、上記添加条件を達成することができる。供給手段は、上吹きランス、インジェクションランス、羽口など、どのような手段であっても構わないが、熱負荷が小さく耐用性に富み、操作が容易であることから、上吹きランスを用いることが好ましい。気体酸素源とともに供給される、CaOを主体とする脱燐精錬剤のサイズは、滓化を促進させる観点から1mm以下が好ましい。
気体酸素源が供給される浴面、即ち火点は、気体酸素源による脱炭反応が優勢であり、脱炭反応などの発熱により、2000℃を超える高温となっている。一方、脱燐反応は熱力学的には低温ほど促進される。従って、実質的に脱燐反応が起こるのは、火点からわずかに離れた、概ね1800℃以下の周辺部である。
上吹きランスが、少なくとも2つの供給系統を有し、そのうち1系統から気体酸素源を供給し、別の1系統から固体酸素源を搬送用ガスとともに火点の近傍に向けて供給することで、固体酸素源は火点に近接した、実質的に脱燐反応の促進される部分に供給されることになる。固体酸素源は、酸素ガスに比べて酸素濃度の低い搬送用ガスで供給されるので、その部分の温度が過剰に上昇することもなく、固体酸素源の良好な反応性によって、脱燐が更に促進される。例えば、1800℃における脱燐能力は、熱力学的概算で2000℃における脱燐能力より概ね倍増する。
2つの供給系統を有する上記のような構成としては、例えば、上吹きランスを少なくとも二重管構造として一方を酸素ガスの流路、他方を固体酸素源及び搬送用ガスの流路とし、気体酸素源を、ランス中心軸を中心とした同心円上に配されたノズル孔から供給し、一方、固体酸素源及び搬送用ガスを、ランス中心軸上に配されたノズル孔から供給する方法などを採用することができる。この方法は、気体酸素源の供給により形成される複数の火点に囲まれる位置に、固体酸素源を供給する状態を作り出すことができ、火点に囲まれた固体酸素源供給部は火点より低い高温状態が安定して維持されるので特に好適である。また、ランス中心軸を中心とした同心円上に複数のノズル孔を配し、交互(互い違い)の孔から気体酸素源、及び、固体酸素源を供給するようにしてもよい。
この場合に、供給系統を別々に配置しても、固体酸素源との接触などによる損耗によって固体酸素源の供給経路と気体酸素源の供給経路とが連通し、固体酸素源が気体酸素源と混合されることによって、固体酸素源に含まれる微量の金属鉄が燃焼し、それに伴って供給経路を構成する鋼管が燃焼する、或いは、固体酸素源と鋼管との接触により発生する火花によって鋼管が燃焼するなどの操業トラブルの発生する恐れがある。そこで、以下に、固体酸素源との接触などによる損耗によって供給経路が破損した場合でも、気体酸素源と固体酸素源とが混合することのない、本発明に好適な上吹きランスを、図面を参照して説明する。図3は、本発明に好適な上吹きランスの概略断面図である。
図3に示すように、本発明に好適な上吹きランス1は、円筒状のランス本体2と、このランス本体2の下端に溶接などにより接続されたランスノズル3と、で構成されていて、ランス本体2は、最外管4、外管5、中管6、内管7、最内管8の同心円状の5種の鋼管、即ち五重管で構成されており、銅製のランスノズル3には、その軸心部には、鉛直下向き方向の固体酸素源吹込ノズル9が設置され、この固体酸素源吹込ノズル9の周囲には、吐出方向を鉛直斜め下向き方向とする複数個の気体酸素源吹込ノズル10が設置されている。気体酸素源吹込ノズル10は、先端部になるほど断面が拡大する、所謂ラバールノズルの形状を採っている。固体酸素源吹込ノズル9はストレート形状であるが、固体酸素源吹込ノズル9もラバールノズルの形状を採っても構わない。
固体酸素源吹込ノズル9は、固体酸素源を搬送用ガスとともに転炉の内部に吹き込むためのノズルであり、一方、気体酸素源吹込ノズル10は、気体酸素源を転炉の内部に吹き込むためのノズルである。尚、気体酸素源吹込ノズル10からは、CaOを主体とする脱燐精錬剤を吹き込むこともできるように構成されている。
最外管4と外管5との間隙、及び、外管5と中管6との間隙は、上吹きランス1を冷却するための流路となっており、上吹きランス1の上部に設けられた給水継手(図示せず)から供給された冷却水は外管5と中管6との間隙を通ってランスノズル3の部位まで至り、ランスノズル3の部位で反転して最外管4と外管5との間隙を通って、上吹きランス1の上部に設けられた排水継手(図示せず)から排出される。給排水の経路を逆としても構わない。
中管6と内管7との間隙は、気体酸素源を気体酸素源吹込ノズル10へ供給するための供給経路となっており、上吹きランス1の上部に設けられた供給継手(図示せず)から中管6と内管7との間隙に供給された気体酸素源は、中管6と内管7との間隙を通って気体酸素源吹込ノズル10に至り、気体酸素源吹込ノズル10から噴出されるようになっている。
最内管8の内部は、搬送用ガスとともに固体酸素源を固体酸素源吹込ノズル9へ供給するための供給経路となっており、上吹きランス1の上部に設けられた供給継手(図示せず)から搬送用ガスとともに最内管8の内部に供給された固体酸素源は、最内管8の内部を通って固体酸素源吹込ノズル9に至り、固体酸素源吹込ノズル9から噴出されるようになっている。
内管7と最内管8との間隙は、先端部のランスノズル3の部位で密封されて行き止まりになっていて、空気、還元性ガス、炭酸ガス、非酸化性ガス、希ガスのうちの何れか1種または2種以上のガスが存在する緩衝空間となっている。本発明においては、緩衝空間に存在させるガスを「緩衝用ガス」と称す。
この緩衝空間への緩衝用ガスの供給経路を図4に示す。図4に示すように、上吹きランス1の上部に設けられた供給継手11に、検出器13、遠隔操作弁14、フレキシブルホース15、及び複数の手動遮断弁16を備えた緩衝用ガス導入管12が接続されており、この緩衝用ガス導入管12を介して緩衝空間へ緩衝用ガスが供給されるようになっている。検出器13としては、圧力計または流量計、若しくは圧力計及び流量計の双方を設置する。緩衝空間への緩衝用ガスの導入方法としては、遠隔操作弁14を遮断して緩衝空間に緩衝用ガスを密封することも、また、遠隔操作弁14を開放して緩衝空間に緩衝用ガスの圧力を常に働かせることも、どちらも操作できるように構成されている。
尚、図4では検出器13をフレキシブルホース15よりも上吹きランス1に近い側に設置しているが、フレキシブルホース15よりも供給側に設置するなど、検出器13をどこの部位に設置しても構わない。但し、緩衝空間の圧力変動の測定値に基づいて破孔を検知する場合には、検出器13を遠隔操作弁14よりも上吹きランス1の側に配置する必要があり、従って、検出器13は遠隔操作弁14よりも上吹きランス1の側に配置することが好ましい。
緩衝用ガスとして、空気、還元性ガス、炭酸ガス、非酸化性ガス、希ガスを使用する理由は、固体酸素源の供給経路である最内管8に破孔が発生して緩衝用ガスと固体酸素源とが接触しても、これらのガス種を緩衝用ガスとして使用する限り、固体酸素源中の金属鉄の燃焼や、固体酸素源と最内管8との接触によって発生する火花による最内管8の燃焼を防止することができるからである。
従って、このようにして構成される上吹きランス1によれば、固体酸素源の供給経路である最内管8が破孔しても、固体酸素源中の金属鉄の燃焼及びこれに伴う最内管8の燃焼を防止することができるとともに、固体酸素源と最内管8との接触によって発生する火花による最内管8の燃焼を防止することができ、本発明を実施する上で極めて好適である。
本発明において、供給すべき固体酸素源の全てを、気体酸素源が供給されている場所の近傍の溶銑浴面に供給する必要はなく、固体酸素源の一部のみを気体酸素源が供給されている場所の近傍の溶銑浴面に供給しても構わない。但し、気体酸素源が供給されている場所の近傍の溶銑浴面に供給する固体酸素源が少ないと、前述したスラグ中FeO成分の上昇が少ないので、これを防止するために、設備仕様に応じて、スラグ中FeO成分の上昇が十分となる量を下限とすればよい。また、上限としては、設備仕様に応じて抜熱が過大とならない量に抑制すればよい。例えば、100〜350トン程度の転炉で酸素吹錬する場合には、浴面に供給する気体酸素源中の酸素ガス純分1Nm3(標準状態での酸素ガス純分)に対し、搬送用ガスにより供給される固体酸素源を0.1kg以上1kg以下の範囲で添加することが好ましい。0.1kg未満では本発明で期待する効果が十分に得られず、一方、1kgを越えると固体酸素源の供給面における抜熱が大きくなり、スラグの滓化が不十分となって脱燐能力を低下させてしまう。
気体酸素源が供給されている溶銑浴面の近傍以外の場所に供給する固体酸素源は、上置き添加、インジェクション添加など適宜の方法で供給すればよい。同様に、気体酸素源が供給されている溶銑の浴面以外の場所に、CaOを主体とする脱燐精錬剤の少なくとも一部を供給する場合にも、上置き添加、インジェクション添加など適宜の方法で供給すればよい。
尚、気体酸素源を使用した場合には、酸化反応熱によって溶銑温度は上昇し、固体酸素源を使用した場合には、固体酸素源自体の顕熱、潜熱及び分解熱が酸化反応熱よりも大きいために溶銑温度は降下する。従って、気体酸素源と固体酸素源との使用比率は、上記の範囲を維持しつつ、転炉精錬前の溶銑温度と得られる溶鋼の目標温度とに応じて設定することとする。また、脱燐反応を効率的に行うためには溶銑を撹拌することが好ましく、この撹拌としては、一般に炉底に埋め込まれた羽口などを利用したガス撹拌を行えばよい。
脱燐精錬用スラグとしては、スラグ中のFeO濃度が10質量%以上50質量%以下の範囲が好適であるので、スラグ中のFeO濃度がこの範囲を維持できるように、酸素源の供給量を調整することが好ましい。より好ましい範囲は10質量%以上30質量%以下である。
このようにして溶銑に対して転炉精錬を行うことにより、従来に比べて少ない脱燐精錬剤の使用量であっても、従来と同等の脱燐速度を維持して脱燐精錬することが実現される。その結果、溶銑の脱燐精錬工程におけるスラグ発生量を削減することができ、環境への負荷を大幅に削減することが達成される。尚、本発明による脱燐精錬剤の削減効果は、原理的に転炉精錬に広く適用可能であり、例えば、予備脱燐処理を行った溶銑の脱炭吹錬においても当然に発揮される。
高炉から出銑した溶銑280トンを、予め鉄スクラップ45トンを装入した転炉に装入し、この転炉で合計4回の脱炭吹錬を実施(本発明例1〜4)した。脱炭吹錬前の溶銑の炭素濃度、珪素濃度及び燐濃度は、それぞれ4.3質量%、0.25質量%、及び0.12質量%に統一し、溶銑温度は約1300℃とした。脱炭吹錬後の溶鋼の炭素濃度及び燐濃度はそれぞれ0.05質量%及び0.025質量%を目標とし、脱炭吹錬後の溶鋼温度は1670℃を目標とした。
脱炭吹錬は、冷却水の給排水系統以外に、分離した2つの供給系統を有し、1つの供給系統から酸素ガスと生石灰粉(平均粒径1mm以下)とを供給でき、他の供給系統からArガスを搬送用ガスとして粉体の固体酸素源を供給できる上吹きランスを用いて行った。即ち、上吹きランスの構造を、冷却水の給排水系統、酸素ガスの供給系統及び固体酸素源の供給系統とが分離された四重管構造とし、気体酸素源である酸素ガスを、ランス中心軸を中心とした同心円上に配された複数のノズル孔から供給し、一方、固体酸素源及び搬送用ガスを、ランス中心軸上に配された単一のノズル孔から供給するようにした。その場合に、固体酸素源は、供給位置の中心が火点の領域にかからないように供給した。また、ホタル石などのフッ素を含有する物質は添加しないで脱炭吹錬した。また、転炉炉底の羽口からは、撹拌ガスとしてArガスを溶銑1トンあたり0.03〜0.30Nm3/minの流量で吹き込んだ。
固体酸素源としては、粉状の鉄鉱石(平均粒度50μm)、砂鉄(平均粒度100μm)、ミルスケール(平均粒度500μm)のうちの何れか1種を用い、溶銑浴面に吹き付けた。固体酸素源の供給速度は200kg/minとした。酸素ガスの送酸条件は平均で溶銑1トンあたり3.0Nm3/minとした。酸素原単位は、脱珪に必要な酸素を除いて約45Nm3/tとした。
脱燐精錬用スラグを形成するためのCaOを主体とする脱燐精錬剤としては、粒状の生石灰(平均粒度約20mm)及びドロマイト(平均粒度約20mm)を用い、これらを炉上ホッパーから炉内に上置き投入した。
また、比較例として、粒状の鉄鉱石(平均粒度約20mm)を炉上ホッパーから上置き投入した脱炭吹錬も実施(比較例1、2)した。比較例のその他の脱炭吹錬条件は本発明例1〜4に準じて行った。表1に、本発明例及び比較例における操業条件並びに脱炭吹錬後の溶鋼温度及び成分を示す。表1におけるCaO原単位及び固体酸素源使用量は、溶銑1tあたりの量で示した。CaO原単位は、生石灰の添加量とドロマイト中のCaO分添加量との和で算出した。
Figure 0005471151
表1に示すように、上吹きランスからの酸素ガスの吹き付け面の近傍に固体酸素源を供給した全ての本発明例において、CaO原単位27kg/tで、脱炭吹錬後の溶鋼中燐濃度は、0.025質量%以下になった。これに対して、比較例では、CaO原単位27kg/tでは、脱炭吹錬後の溶鋼中燐濃度が0.025質量%より高く、これを0.025質量%以下に低減しようとすると、CaO原単位30kg/tが必要であった。
高炉から出銑した溶銑280トンを、予め鉄スクラップ45トンを装入した転炉に装入し、この転炉で合計4回の脱炭吹錬を、実施例1で使用した上吹きランスを用いて実施(本発明例11〜14)した。脱炭吹錬前の溶銑の炭素濃度、珪素濃度、燐濃度及び溶銑温度は何れも実施例1と同様とした。また、脱炭吹錬後の溶鋼の炭素濃度、燐濃度及び溶鋼温度は何れも実施例1と同一の目標とした。
固体酸素源としては、粉状の鉄鉱石(平均粒度50μm)、砂鉄(平均粒度100μm)、ミルスケール(平均粒度500μm)のうちの何れか1種を用い、溶銑浴面に吹き付けた。脱燐精錬用スラグを形成するためのCaOを主体とする脱燐精錬剤としては、気体酸素源の供給系統から供給する生石灰(平均粒度1mm以下)と、炉上ホッパーから上置き投入する、粒状の生石灰(平均粒度約20mm)及びドロマイト(平均粒度約20mm)とを用いた。この場合、気体酸素源の供給系統から供給する生石灰粉の投入量は10kg/tとした。その他の脱炭吹錬条件は実施例1に準じた。
また、比較例として、粒状の鉄鉱石(平均粒度約20mm)を炉上ホッパーから上置き投入した脱炭吹錬も実施(比較例11、12)した。比較例のその他の脱炭吹錬条件は本発明例11〜14に準じて行った。表2に、本発明例及び比較例における操業条件並びに脱炭吹錬後の溶鋼温度及び成分を示す。表2におけるCaO原単位は、気体酸素源の供給系統から供給する生石灰粉、炉上から供給する粒状生石灰及びドロマイト中のCaO分の総和で算出した。
Figure 0005471151
表2に示すように、上吹きランスからの酸素ガスの吹き付け面の近傍に固体酸素源を供給した全ての本発明例において、CaO原単位25kg/tで、脱炭吹錬後の溶鋼中燐濃度は、0.025質量%以下になった。これに対して、比較例では、CaO原単位25kg/tでは、脱炭吹錬後の溶鋼中燐濃度が0.025質量%より高く、これを0.025質量%以下に低減しようとすると、CaO原単位28kg/tが必要であった。
高炉から出銑した溶銑を300トン容量の転炉に搬送し、この転炉で予備脱燐処理を実施した後、この溶銑を別の300トン容量の転炉に装入し、この転炉で合計4回の脱炭吹錬を、実施例1で使用した上吹きランスを用いて実施(本発明例21〜24)した。予備脱燐処理後(脱炭吹錬前)の溶銑の炭素濃度及び燐濃度は、それぞれ3.0質量%及び0.03質量%に統一し、溶銑温度は約1370℃とした。脱炭吹錬後の溶鋼の燐濃度は0.020質量%を目標とし、脱炭吹錬後の溶鋼の炭素濃度及び溶鋼温度は実施例1と同一の目標とした。
脱炭吹錬条件は実施例2に準じて行い、酸素原単位は、脱珪に必要な酸素を除いて約35Nm3/tとした。脱燐精錬用スラグを形成するためのCaOを主体とする脱燐精錬剤としては、全て、気体酸素源の供給系統から供給する生石灰(平均粒度1mm以下)とした。
また、比較例として、粒状の鉄鉱石(平均粒度約20mm)を炉上ホッパーから上置き投入した脱炭吹錬も実施(比較例21、22)した。比較例のその他の脱炭吹錬条件は本発明例21〜24に準じて行った。表3に、本発明例及び比較例における操業条件並びに脱炭吹錬後の溶鋼温度及び成分を示す。
Figure 0005471151
表3に示すように、上吹きランスからの酸素ガスの吹き付け面の近傍に固体酸素源を供給した全ての本発明例において、CaO原単位7kg/tで、脱炭吹錬後の溶鋼中燐濃度は、0.020質量%以下になった。更に、CaO原単位9kg/tでは、脱炭吹錬後の溶鋼中燐濃度は、0.015質量%になった。これに対して、比較例では、CaO原単位7kg/tでは、脱炭吹錬後の溶鋼中燐濃度が0.020質量%より高く、これを0.020質量%以下に低減しようとすると、CaO原単位9kg/tが必要であった。
1 上吹きランス
2 ランス本体
3 ランスノズル
4 最外管
5 外管
6 中管
7 内管
8 最内管
9 固体酸素源吹込ノズル
10 気体酸素源吹込ノズル
11 供給継手
12 緩衝用ガス導入管
13 検出器
14 遠隔操作弁
15 フレキシブルホース
16 手動遮断弁

Claims (7)

  1. 転炉内に酸素源として気体酸素源及び固体酸素源を供給して溶銑から溶鋼を溶製する脱炭精錬を行いつつ、CaOを主体とする脱燐精錬剤を添加し、該脱燐精錬剤を滓化させてスラグとなし、脱炭精錬と同時に脱燐精錬を施転炉製鋼方法において、少なくとも吹錬中盤の供給した酸素源が優先的に脱炭反応に消費される時期に、1つの供給系統から気体酸素源を鉄浴浴面に供給し、他の1つの供給系統から固体酸素源を、気体酸素源が供給されている場所の近傍の鉄浴浴面に、搬送用ガスを用いて供給することを特徴とする転炉製鋼方法。
  2. 前記気体酸素源及び固体酸素源のそれぞれの供給系統を、同一のランス内に配置することを特徴とする、請求項1に記載の転炉製鋼方法。
  3. 前記ランスは、気体酸素源の供給系統と固体酸素源の供給系統との間に、空気、還元性ガス、炭酸ガス、非酸化性ガス、希ガスのうちの何れか1種または2種以上のガスが存在する緩衝空間を有することを特徴とする、請求項2に記載の転炉製鋼方法。
  4. CaOを主体とする脱燐精錬剤を、前記気体酸素源の供給系統を通じて前記気体酸素源とともに鉄浴浴面に供給することを特徴とする、請求項1ないし請求項3の何れか1つに記載の転炉製鋼方法。
  5. 前記固体酸素源の搬送用ガスが、空気、還元性ガス、炭酸ガス、非酸化性ガス、希ガスのうちの何れか1種または2種以上の気体であり、且つ、前記気体酸素源よりも酸素濃度が低いことを特徴とする、請求項1ないし請求項4の何れか1つに記載の転炉製鋼方法。
  6. 前記固体酸素源は、粒度が1mm以下の焼結鉱、ミルスケール、ダスト、砂鉄、鉄鉱石のうちの何れか1種または2種以上であることを特徴とする、請求項1ないし請求項5の何れか1つに記載の転炉製鋼方法。
  7. 前記気体酸素源の供給により形成される複数の火点で囲まれる位置に、前記固体酸素源を供給することを特徴とする、請求項1ないし請求項6の何れか1つに記載の転炉製鋼方法。
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