JP2019090078A - 吹き込み用浸漬ランス及び溶融鉄の精錬方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 溶融鉄に浸漬ランスを介して酸素含有ガス及び粉状精錬剤を吹き込んで精錬するに際し、溶融鉄の噴出を抑えて高能率の酸素ガスの吹き込みを可能とする。【解決手段】 本発明の吹き込み用浸漬ランス1は、溶融鉄中に浸漬し、側面に設けられた複数個の吐出ノズル4から酸素含有ガス及び粉状精錬剤を溶融鉄中に吹き込むための吹き込み用浸漬ランスであって、吐出ノズルは、金属内管2と金属外管3とを有する多重管構造であり、吹き込み用浸漬ランスの軸心に沿って、酸素含有ガス及び粉状精錬剤を供給するための精錬剤供給管5、及び、冷却媒体を供給するための冷却媒体供給管6を備え、精錬剤供給管、冷却媒体供給管及び吐出ノズルを保護するための耐火物被覆層7を備え、吹き込み用浸漬ランスの軸心を鉛直としたとき、吐出ノズルの中心軸が、水平方向から下向きに8°以上、30°未満の範囲で傾斜している。【選択図】 図2

Description

本発明は、混銑車などの精錬容器に収容された溶融鉄(溶融鉄とは溶銑、溶鋼及び溶融鉄合金を指す)に、酸素含有ガス(酸素ガスを含む気体)及び粉状精錬剤を吹き込むための吹き込み用浸漬ランスに関し、及び、この吹き込み用浸漬ランスを用いた溶融鉄の精錬方法に関する。
近年、鋼材の高級化に伴う燐含有量低下対策、或いは、製鋼プロセスの合理化を目的として、溶銑の脱燐処理が、転炉または溶銑鍋若しくは混銑車(「トピードカー」ともいう)などにおいて広く行われている。また、この脱燐処理では、溶銑中の珪素が脱燐反応を阻害するので、脱燐処理を効率的に行うために、脱燐処理の前に予め溶銑中の珪素を除去する脱珪処理も行われている。
このような溶融鉄の精錬においては、酸素源は必要不可欠な存在であり、酸素源としては、酸化鉄(固体酸素)または酸素ガス(気体酸素)の2種類が使用されている。このうち、酸化鉄(固体酸素)を使用する場合は、FeO=Fe+Oなる酸化鉄の分解反応が吸熱反応であり、溶融鉄の熱余裕を減じてしまう。一方、酸素ガス(気体酸素)を使用する場合は、Si+O=SiOを始めとした酸素ガスとの反応は、発熱反応であることから、溶融鉄の熱余裕を増加させることが可能であるので、熱源コスト削減の観点から精錬用の酸素源として酸素ガスを用いることがある。
近年では、鉄鋼業においても、鉄鋼製品単位質量あたりの炭酸ガス排出量の抑制が強く求められており、還元に多大なエネルギーを要する鉄鉱石に代えて、鉄スクラップの使用量を増大させる取り組みが行われている。鉄スクラップは、主に、溶銑の予備処理も含む製鋼プロセスにおいて使用され、鉄スクラップの溶解のために用いることができる熱量を増大させることが求められる。このため、溶銑の脱珪処理や脱燐処理の予備処理で精錬用の酸素源として従来多量に使用されていた酸化鉄の可能な限りの大部分を、酸素ガス(工業用純酸素ガス)に置き換えることによって、鉄スクラップ溶解のための熱源を創出する試みがなされている。
溶融鉄に酸素ガスなどの酸素含有ガスを供給する方法は、大きく分けて2種類に分類される。1つの方法は、溶融鉄とは非接触の上吹きランスなどから酸素含有ガスを溶融鉄の浴面に向けて吹き付ける方法(「上吹き送酸法」と呼ぶ)である。他の方法は、溶融鉄中に浸漬させた吹き込み用浸漬ランスや精錬容器の底部などに設けた羽口から、溶融鉄中に酸素含有ガスを直接吹き込む方法(「吹き込み送酸法」と呼ぶ)である。
例えば、特許文献1には、溶銑に鉛直に浸漬させた吹き込み用浸漬ランスの側面の下端近傍に開口させた2つの2重管ノズルの内管から酸素ガスを吹き込んで行う、吹き込み送酸法による脱珪処理方法において、ノズル断面積あたりの酸素ガスの流量を特定の範囲とすることによって吹き込み用浸漬ランスの溶損を抑制する溶銑の脱珪処理方法が開示されている。また、特許文献2には、ランスの高さ方向設置位置を調整することにより、溶銑中への酸素ガスの吹き込みと、溶銑の表面への酸素ガスの吹き付けとを、一つのランスを用いて行う溶銑の予備処理方法が開示されている。特許文献2は、2つの酸素ガスの吐出孔の角度を鉛直下向きに対して30°以上とすることにより、ランスを浸漬して酸素ガスを吹き込む際に、複数の気体ジェットとそれに随伴される溶銑の流動とが相互に干渉して不安化する現象を抑制でき、ランスの振動が抑制できるとしている。
また、溶銑の脱珪処理や脱燐処理を行う予備処理において、酸素源とともに溶銑に供給される媒溶剤としては、主に生石灰が使用されることが一般的であるが、特許文献3には、生石灰に代えて転炉脱炭スラグを使用し、脱燐効率を向上させるとともに、転炉脱炭スラグのリサイクル使用量を増大させて系外へのスラグ排出量を抑制した溶銑の脱燐処理方法が開示されている。実施例には、吹き込み用浸漬ランスから転炉脱炭スラグを含む粉状精錬剤を酸素ガスとともに溶銑中に吹き込む実施形態が示されている。
溶融鉄に酸素含有ガスを供給する際に、上吹き送酸法とするか、吹き込み送酸法とするかは、それぞれの送酸方法の以下に記す特徴を考慮して決められる。つまり、吹き込み送酸法の場合には、酸素含有ガスの添加効率が高い、溶融鉄の攪拌力が向上するなどの利点がある一方、吹き込み用浸漬ランスの浸漬部の熱負荷は大きく、耐用回数が限られるなどの問題がある。これに対して、上吹き送酸法の場合には、上吹きランスへの熱負荷が小さく、長期間に亘って上吹きランスを使用できるという利点はあるが、酸素含有ガスの添加効率が低い、攪拌力が得られないなどの問題がある。
また、混銑車において酸素ガスを大量に用いる脱珪処理では、何れの送酸方法においても、大量のCOガスが発生して炉口近傍で燃焼し、炉口付近の耐火物に損傷を与え易いことや、溶銑浴の振動や溶銑液滴の飛散などにより、酸素ガスの供給速度などの操業条件が制約を受けるという問題もある。
特に、上吹き送酸法では、脱珪酸素効率が低いことから、所望の脱珪反応速度を得るべく酸素ガス供給速度を増大させると、以下のような問題が起こる場合があった。つまり、酸素ガス供給速度を増大させると、COガスの発生速度が増大して炉口付近で燃焼することにより、炉口近傍の耐火物損傷が顕著になったり、上吹き酸素ジェットの運動エネルギーが大きくなることから、この運動エネルギーに起因して炉口からの噴出物や炉口や上吹きランスへの付着物が増大し、この付着物が操業を阻害したりする。更に、上吹き酸素ジェットによるCOガスの二次燃焼で混銑車の天井耐火物の損傷を招いたりするという問題があった。
このため、混銑車、溶銑鍋などのフリーボードの小さい精錬容器に収容された溶銑に対しては、吹き込み送酸法を採用することによって、上記のような問題を回避して、酸素ガスによる脱珪処理を効率良く行うことが試みられている。
特開2008−266674号公報 特開2015−160981号公報 特開2001−131624号公報
酸素含有ガスを混銑車などのフリーボードの小さい精錬容器に収容された溶銑中に吹き込む際の他の技術課題として、精錬容器の開口部(炉口)からの溶銑の噴出が挙げられる。特に、吹き込み用浸漬ランスを開口部から略鉛直に溶銑に浸漬させた場合には、吹き込み用浸漬ランスから吹き込んで反応した気体の浮上位置と精錬容器の開口部とが近い位置関係になるために、溶銑が噴出しやすくなるという問題がある。この問題は、フリーボードの小さい精錬容器において、酸素含有ガスの供給速度を増大させて効率的に脱珪処理を実施するうえで障害となっている。
また、ガスを吹き込む吐出ノズルの浸漬深さを増大させると、溶銑浴振動の振幅が増大し、この振動が炉口からの溶銑の噴出を助長する傾向がある。この溶銑の噴出は設備トラブルを招くおそれがあり、溶銑が噴出しないようにするためには、吹き込み用浸漬ランスの浸漬深さを十分に深くすることはできず、浅くせざるを得ない。浸漬深さが浅いと、撹拌動力密度が低下して脱珪反応と脱炭反応とが競合し、その結果、脱珪反応効率が低下するという問題が生じる。
特許文献1、2に開示されているように、酸素源として、主に溶銑に吹き込む酸素ガスを用いた溶銑の脱珪処理において、吹き込み用浸漬ランスのランス寿命を向上するための吹き込み方法の検討は種々なされてきたが、上記のような問題は解決されておらず、効率的な酸素ガス吹き込み方法を実現するためには、課題が残されていた。
一方、特許文献3に開示されているように、酸化鉄やCaO源などの種々の粉状の精錬剤を、酸素ガスとともに溶銑中に吹き込む精錬方法も知られている。しかし、酸化鉄を始めとして、これらの精錬剤による吸熱量は非常に大きく、酸素ガスの利用による熱量の創出効果が十分に生かされた精錬条件には、必ずしもなっていなかった。また、酸素ガスとともに溶銑中に吹き込む精錬剤が、上記のような溶銑の噴出や吹き込み用浸漬ランスのランス寿命に及ぼす影響も不明であり、実用的に適正な精錬剤の吹き込み条件は明らかではなかった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、混銑車などのフリーボードの小さい精錬容器に収容された溶融鉄に吹き込み用浸漬ランスを浸漬し、この吹き込み用浸漬ランスを介して酸素含有ガス及び粉状精錬剤を吹き込んで溶融鉄を精錬するに際し、溶融鉄の噴出を抑えて高能率の酸素ガスの吹き込みを可能とするとともに、粉状精錬剤による吸熱を抑制して昇熱能にも優れた酸素ガスの吹き込み処理を可能とする吹き込み用浸漬ランスを提供することであり、また、この吹き込み用浸漬ランスを用いた溶融鉄の精錬方法を提供することである。
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]溶融鉄中に浸漬し、側面に設けられた複数個の吐出ノズルから酸素含有ガス及び粉状精錬剤を溶融鉄中に吹き込むための吹き込み用浸漬ランスであって、
前記吐出ノズルは、前記酸素含有ガス及び前記粉状精錬剤を吹き込むための金属内管と、該金属内管の先端部を冷却する冷却媒体を吹き込むための金属外管とを有する多重管構造であり、
前記吹き込み用浸漬ランスの軸心に沿って、前記金属内管に接続して前記酸素含有ガス及び前記粉状精錬剤を供給するための精錬剤供給管、及び、前記金属外管に接続して前記冷却媒体を供給するための冷却媒体供給管を備え、
前記精錬剤供給管、前記冷却媒体供給管及び前記吐出ノズルを保護するための耐火物被覆層を備え、
前記吹き込み用浸漬ランスの軸心を鉛直としたとき、前記吐出ノズルの中心軸が、水平方向から下向きに8°以上、30°未満の範囲で傾斜していることを特徴とする吹き込み用浸漬ランス。
[2]上記[1]に記載の吹き込み用浸漬ランスを精錬容器に収容された溶融鉄に略鉛直に浸漬させ、前記金属内管から酸素含有ガス及び粉状精錬剤を吹き込み、前記金属内管と前記金属外管との間隙から前記冷却媒体として炭化水素系ガスを吹き込むことを特徴とする、溶融鉄の精錬方法。
[3]前記精錬容器が混銑車で、前記溶融鉄が溶銑であり、前記粉状精錬剤が粉状の転炉脱炭スラグを含むことを特徴とする、上記[2]に記載の溶融鉄の精錬方法。
[4]前記粉状精錬剤の前記溶融鉄1トンあたりの吹き込み速度を0.20〜1.00kg/(min・t)の範囲とすることを特徴とする、上記[2]または上記[3]に記載の溶融鉄の精錬方法。
本発明によれば、酸素含有ガス及び粉状精錬剤を溶融鉄中に吹き込む吐出ノズルを水平方向から下向きに8°以上、30°未満傾斜させるので、水平方向に吹き込んだ場合と比較して、吐出ノズルからの酸素含有ガス及び粉状精錬剤が溶融鉄浴内で吹き込み方向のより広い範囲に分散され、それに伴って精錬容器の開口部からの溶融鉄の噴出を比較的少ない粉状精錬剤の吹き込み速度で抑制できる。これにより、粉状精錬剤による吸熱を抑制して昇熱能の減少を抑制しつつ、酸素ガス供給速度の増大や吐出ノズルの浸漬深さの増大が可能になり、溶融鉄に対して行う酸素ガス吹き込み処理の能率を向上させることが実現される。
また、気泡や粉状精錬剤が溶融鉄中で吹き込み方向へ、より広い範囲に分散されること、及び、気泡や粉状精錬剤が到達する溶融鉄深さが増大して浴の攪拌力が増加することにより、目的とする精錬反応に消費される酸素ガスの効率を向上させることができる。
また更に、上記吐出ノズルの水平方向からの下向き角度θを30°未満とするので、粉状精錬剤を、略鉛直の精錬剤供給管から分岐させた斜め下向きの吐出ノズルから、高速の酸素含有ガスとともに吹き込む場合においても、吐出ノズルを構成する金属内管の粉状精錬剤による過剰な摩耗が防止され、耐用性にも優れた実用的な吹込み用浸漬ランスが得られる。
溶銑に略鉛直に浸漬させた吹き込み用浸漬ランスから酸素ガスを吹き込んで混銑車に収容された溶銑を脱珪処理する概略図である。 本発明で使用する吹き込み用浸漬ランスの下端部の概略断面図である。 吹き込み用浸漬ランスの吐出ノズルからの吐出方向を示す概略図で、図3(A)は、2孔式の吹き込み用浸漬ランスを用いた場合を示し、図3(B)は、4孔式の吹き込み用浸漬ランスを用いた場合を示す。 吐出ノズルの下向き角度θと、溶銑の開口部からの噴出が発生したチャージの比率との関係を示す図である。 吐出ノズルの下向き角度θ及び粉状精錬剤の吹き込み速度を変更して、溶銑の噴出の有無を調査した結果を示す図である。 脱珪酸素効率に及ぼす吐出ノズルの下向き角度θの影響を調査した結果を示す図である。 吹き込み用浸漬ランスのランス寿命に及ぼす吐出ノズルの下向き角度θの影響を調査した結果を示す図である。 吹き込み用浸漬ランス内の粉状精錬剤粒子の軌跡を示す模式図である。 従来使用されていた吹き込み用浸漬ランスの下端部の概略断面図である。
本発明者らは、溶融鉄中に略鉛直に浸漬させた吹き込み用浸漬ランスの側面の吐出ノズルから酸素含有ガスを吹き込んで行う溶融鉄の精錬において、溶融鉄を収容する精錬容器のフリーボードが小さい場合でも溶融鉄の噴出を抑え、また、酸素ガス供給速度を増大させる、または、吐出ノズルの浸漬深さを増大させても溶融鉄の噴出を抑えて、精錬の能率を向上させることについて種々検討を行った。
その結果、酸素含有ガスに同伴させて粉状精錬剤を吹き込むことが溶融鉄の噴出抑制に有効であることを見出した。
その場合に、粉状精錬剤の吹き込み速度が大きくなると、粉状精錬剤による吸熱量が増加して鉄スクラップ溶解などに利用できる熱量が減少してしまう。したがって、できるだけ少ない粉状精錬剤の吹き込み量で、溶融鉄の噴出を抑制することが望ましい。このため、本発明者らは、粉状精錬剤の吹き込み速度を抑制しつつ、溶融鉄の噴出を抑制することを可能とする粉状精錬剤の吹き込み方法について、種々検討を行った。
その結果、吹き込み用浸漬ランスの吐出ノズルを水平よりも所定の範囲内の角度だけ下向きに傾斜させることで、効率的な酸素ガス供給と脱珪処理とが可能となることを見出して本発明を完成させるに至った。
以下、図1に示す混銑車において、吹き込み用浸漬ランスを混銑車の開口部から混銑車に収容された溶銑に略鉛直に浸漬させ、吹き込み用浸漬ランスの側面に設けられた複数の吐出ノズルから溶銑に酸素ガス(工業用純酸素ガス)を吹き込んで行う脱珪処理の実施形態を例として、本発明を具体的に説明する。図1は、溶銑に略鉛直に浸漬させた吹き込み用浸漬ランスから、酸素含有ガスとして酸素ガスを吹き込んで混銑車に収容された溶銑を脱珪処理する概略図であり、図2は、本発明で使用する吹き込み用浸漬ランスの下端部の概略断面図である。
図1及び図2において、符号1は吹き込み用浸漬ランス、2は金属内管、3は金属外管、4は吐出ノズル、4aは吐出ノズルの中心軸、5は精錬剤供給管、6は冷却媒体供給管、7は耐火物被覆層、8は混銑車、9は溶銑、10は合流部、11は粉状精錬剤供給配管、12は酸素含有ガス供給配管、13は冷却媒体供給配管、14は混銑車の開口部(炉口)である。
本発明で使用する吹き込み用浸漬ランス1は、図2に示すように、側面に設けられた複数個の吐出ノズル4が、酸素含有ガス及び粉状精錬剤を吹き込むための金属内管2と、金属内管2の先端部を冷却する冷却媒体を吹き込むための金属外管3とを有する多重管構造になっている。そして、吹き込み用浸漬ランス1の軸心に沿って、金属内管2に接続して酸素含有ガス及び粉状精錬剤を金属内管2に供給するための精錬剤供給管5、及び、金属外管3に接続して冷却媒体を金属外管3に供給するための冷却媒体供給管6を備えている。また、吹き込み用浸漬ランス1の外周には、精錬剤供給管5、冷却媒体供給管6及び吐出ノズル4を保護するための耐火物被覆層7が施工されている。また、吹き込み用浸漬ランス1の軸心を鉛直としたとき、吐出ノズル4の中心軸4aは、水平方向に対して下向きに8°以上、30°未満の範囲内の下向き角度θで傾斜している。下向き角度θの範囲の詳細については後述する。金属内管2、金属外管3、精錬剤供給管5及び冷却媒体供給管6は、ステンレス鋼鋼管や炭素鋼鋼管で構成されている。
尚、従来の酸素ガス吹き込みによる脱珪処理では、吹き込み用浸漬ランス1として、特許文献1に開示されるような、具体的には、図9に示すような、吐出ノズル4の吐出方向が略水平方向である逆T字型の吹き込み用浸漬ランス1Aを用いることが一般的であった。吹き込み用浸漬ランス1Aは、吐出ノズル4の吐出方向が吹き込み用浸漬ランス1と異なるだけで、その他の構造は吹き込み用浸漬ランス1と同一であり、同一の部分は同一符号により示し、その説明は省略する。
本発明者らは、まず、混銑車8に収容された溶銑9の脱珪処理を種々の条件下で実施し、混銑車8の開口部14からの溶銑9の噴出が少なく、且つ、酸素ガスの供給速度や吐出ノズル4の浸漬深さの増大を可能とすることを目的とし、調査・検討を行った。
溶銑9の脱珪処理は、吹き込み用浸漬ランス1を混銑車8の開口部14から略鉛直に溶銑9に浸漬させ、金属内管2の先端部を冷却する冷却媒体として炭化水素系ガス(エタンガス、プロパンガス、天然ガスなど)などを金属内管2と金属外管3との間隙から溶銑中に吹き込んで吐出ノズル4の先端部を保護しつつ、酸素含有ガスを金属内管2から溶銑中に吹き込んで行う。溶銑9に含有される珪素が、酸素含有ガスに含有される酸素で酸化されて除去され、脱珪反応(Si+2O→SiO)が進行する。
約300トンの溶銑9を収容する混銑車8において、従来は、金属内管2から粉状精錬剤を吹き込むことなく、酸素ガスを金属内管2から吹き込み、プロパンガスなどの冷却媒体を金属内管2と金属外管3との間隙から吹き込み、目視による操業中の溶銑9の噴出が問題にならない吹き込み条件に調整して脱珪処理を行っていた。この場合、吐出ノズル4の浸漬深さは0.5m以下であり、酸素ガス供給速度は15〜25Nm/min(0.05〜0.08Nm/(min・t))、冷却媒体としてのプロパンガスの供給流量は1.5〜2.0Nm/minである。ここで、吐出ノズル4の浸漬深さとは、金属内管2の上端から溶銑浴面までの距離である。
尚、金属内管2から吹き込む酸素ガスに替えて、酸素ガス富化空気、不活性ガスと酸素ガスとの混合ガスなどを使用することもできる。また、プロパンガスは金属内管2の先端を、分解吸熱を利用して冷却し、保護するための冷却用ガスであり、他の炭化水素系ガスなどでも代用できる。
本発明者らは、酸素ガスの供給速度を増大したり、吐出ノズル4の浸漬深さを増大したりする際に問題となる、混銑車8の開口部14からの溶銑9の噴出の原因について、種々検討を行った。その結果、次のような事象が溶銑9の噴出を助長する主な原因と考えられた。
(1)溶銑中に吹き込む酸素ガスなどによる反応生成ガスの浮上領域が混銑車の開口部の直下に位置すること。
(2)反応生成ガスの浮上領域が狭く、単位面積、単位時間あたりの通過ガス量が大きいこと。
(3)反応生成ガスの浮上過程で浮上領域が一体化して混銑車の長手方向に直交する方向の浴振動モードが顕著となること。
酸素含有ガスは吐出ノズル4から斜め下向きに吹き込まれるが、溶銑9と気体との界面は大きな界面張力を受けるので、吹き込まれた気体は直ちに粗大な気泡を形成して吹き込み用浸漬ランス1の近傍に浮上し易いと考えられる。また、酸素含有ガスは吹き込み用浸漬ランス1から複数の方向に吹き込まれるが、上記のように水平方向への到達距離(侵入深さ)が小さいので、吐出ノズル4の浸漬深さが或る程度大きくなると、反応生成ガスの気泡を含む気泡流(気泡を含む溶銑が形成する流れ)は一体化して一つの気泡流としてふるまう。そして、撹拌動力密度が大きくなると、溶銑浴の振動と同期して浮上位置が自励振動的に移動し、これにより、浴振動を助長して振幅が大きくなり易いと考えられる。
その際、浴振動は、内径の小さい混銑車8の長手方向に直交する方向が主要な振動モードになる。一般に、混銑車8では容器部分のフリーボードが小さく、特に上記の振動方向の断面では、炉壁が溶銑浴の上方を覆うように大きく張り出した形状とはなっておらず、開口部14が大きく設けられている。したがって、上記の浴振動が過大になると、開口部14から溶銑9が溢れ出たり、浴振動によって実質的なフリーボードが小さくなることで、溶銑9の飛散量が増大したりして、溶銑9の噴出を招いていたと考えられる。
これらの推定から、溶銑9の噴出を抑制するためには、溶銑中に吹き込む酸素含有ガスに粉状精錬剤を同伴させて吹き込んで、溶銑中に吹き込む酸素ガスなどによる反応生成ガスの浮上領域を、吐出ノズル4からの噴出方向に拡大させることが有効であると考えた。吹き込み気流に粉状精錬剤を同伴させると、単に吹き込み方向の運動量が増すというだけでなく、気液界面から溶銑中に粉状精錬剤の粒子が侵入する際に気液界面が乱されて微小な気泡が生成し易くなる。
このようにして微小な気泡が溶銑中に分散して形成された気泡流では、水平方向への運動量が効率良く溶銑9に伝達される。その結果、吐出ノズル4の近傍での溶銑9の流れの水平方向成分が増大するとともに、気泡がその溶銑9の流れから分離し難くなるので、浴面での気泡の浮上領域は、吐出ノズル4からの吹き込み方向に移動して広く拡大した形になる。
これにより、開口部14の直下に浮上する気泡の単位面積、単位時間あたりの通過ガス量が低減するとともに、浮上領域を分散させることで過剰な浴振動も抑制することができ、その結果、溶銑9の噴出の抑制が可能になる。
また、吐出ノズル4の吐出方向を水平方向に対して下向き角度θで傾斜させることで、酸素ガス及び粉状精錬剤を水平方向に吹き込んだ場合と比較して、吐出ノズル4からの酸素含有ガス及び粉状精錬剤が溶銑浴内で吹き込み方向のより広い範囲に分散される。これにより、後述するように、少ない粉状精錬剤の供給速度で、溶銑9の噴出が抑制される。
その際に、溶銑9の1トンあたりの粉状精錬剤の吹き込み速度は0.20〜1.00kg/(min・t)の範囲が必要で、より望ましくは、0.30〜0.80kg/(min・t)の範囲である。粉状精錬剤の吹き込み速度が0.20kg/(min・t)未満では、脱珪処理における溶銑9の噴出の抑制効果が小さいので、酸素ガスの供給速度を増大したり、吐出ノズル4の浸漬深さを増大したりすることが困難な場合があり、効率的でないからである。また、粉状精錬剤の吹き込み速度が1.00kg/(min・t)を超えると、粉状精錬剤の吹き込み速度が大き過ぎて、吸熱量が増すからである。
また、酸素含有ガスに含まれる酸素ガスの溶銑9の1トンあたりの供給速度は、0.05〜0.25Nm/(min・t)の範囲が好ましく、より望ましくは、0.08〜0.15Nm/(min・t)の範囲である。酸素含有ガスに含まれる酸素ガスの供給速度が0.05Nm/(min・t)未満では、脱珪速度が小さく、処理時間の延長を招くため効率的でない。酸素含有ガスに含まれる酸素ガスの供給速度が0.25Nm/(min・t)を超えると、酸素ガス供給速度が過大で溶銑9の噴出のリスクが増大する。
吐出ノズル4の金属内管2での酸素含有ガスの線速度(断面積あたりの標準状態での通過ガス流量)は、200Nm/s以上、1200Nm/s以下の範囲とすることが好ましい。酸素含有ガスの線速度が200Nm/s未満では、粉状精錬剤粒子の速度や運動エネルギーが低いために、気泡の分散領域を拡大させて開口部14からの溶銑9の噴出を抑制する効果を十分に得られない場合がある。また、酸素含有ガスの線速度が1200Nm/s超えでは、粉状精錬剤の吹き込み時に圧力が上昇するために、エネルギー消費量の増大を招くとともに、粉状精錬剤粒子による金属内管2の摩耗が進むことによる操業リスクが増大するおそれがある。
金属内管2から吹き込む粉状精錬剤の供給速度(kg/min)と吹き込む酸素含有ガスに含まれる酸素ガスの供給速度(Nm/min)との比(kg/Nm)を「粉体/酸素ガス比」と定義したとき、吹き込みガスの浴中への分散を促進するためには粉体/酸素ガス比を大きくした方がよいが、大きくし過ぎると温度降下の原因となる。したがって、粉体/酸素ガス比は2以上、9未満の範囲とすることが好ましく、より望ましくは、3以上、7未満の範囲である。
酸素含有ガスとともに粉状精錬剤を溶銑9に吹き込むにあたり、吹き込み用浸漬ランス1の下端近傍の側面に2つの吐出ノズル4を有する2孔式の吹き込み用浸漬ランス1を用いる場合は、特許文献1の開示技術と同様に、図3(A)に示すように、吐出ノズル4の方向が混銑車8の長手方向とほぼ同一となるように吹き込み用浸漬ランス1を浸漬させる。また、吹き込み用浸漬ランス1の下端近傍の側面に4つの吐出ノズル4を有する4孔式の吹き込み用浸漬ランス1を用いることも好適である。4孔式の吹き込み用浸漬ランス1を用いる場合は、図3(B)に示すように、吐出ノズル4の向きは極力長手方向に近づけつつ、吹き込み用浸漬ランス1のランス寿命を短くしないように、吐出ノズル4同士の端間距離を確保するという思想のもと、X=60°、Y=120°の配置として吹き込み用浸漬ランス1を浸漬させる。
吹き込み用浸漬ランス1の径と吐出ノズル4の径との比、ランス寿命確保のための吐出ノズル4の端同士の許容距離などによってX、Yは変え得るが、これは各事業所のニーズに応じて容易に変更し得ることである。尚、図3(A)は、2孔式の吹き込み用浸漬ランス1を用いた場合の吐出ノズル4からの吐出方向を上方から見た概略図、図3(B)は、4孔式の吹き込み用浸漬ランス1を用いた場合の吐出ノズル4からの吐出方向を上方から見た概略図である。
金属内管2から酸素含有ガスとともに吹き込む粉状精錬剤としては、転炉脱炭スラグが最も好適である。転炉脱炭スラグは、生石灰などと異なり、プリメルト状態であるので、反応性は生石灰より優れ、且つ安価であるからである。転炉脱炭スラグの粒径の制約は特にないが、1mm以下程度の粒度で十分な効果が得られる。また、転炉脱炭スラグは、CaO成分が、通常、30質量%以上であるので、脱珪スラグの塩基度(質量%CaO/質量%SiO)の確保を図るうえで好適である。ただし、転炉脱炭スラグの酸化鉄成分が多すぎると酸化鉄の分解反応による吸熱により、熱余裕が減少し易くなる傾向にある。
そのため、転炉脱炭スラグはCaO成分が30質量%以上、且つ、酸化鉄(FeO+Fe)成分の合計量が30質量%以下となるような成分のものが望ましい。転炉脱炭スラグの典型的な組成範囲は、CaO;30〜50質量%、FeO+Fe;20〜40質量%、CaO/SiO;3〜5、P;1〜2質量%である。
金属内管2から酸素含有ガスとともに吹き込む粉状精錬剤は、必ずしも転炉脱炭スラグのみには限らず他の粉状のリサイクル精錬剤や生石灰などのCaO系媒溶剤を併用してもよいが、CaO系媒溶剤のコストと転炉脱炭スラグの製鉄所外への排出量とを効果的に抑制するためには、粉状精錬剤に占める転炉脱炭スラグの比率は50質量%以上であることが望ましい。
粉状精錬剤を吹き込む際は、図1に示すように、冷却媒体供給配管13を介して供給される炭化水素系ガスなどの冷却媒体を金属内管2と金属外管3との間隙から吹き込みながら、粉状精錬剤供給配管11を介して不活性ガス(アルゴンガス、窒素ガス)を搬送用ガスとして搬送し、酸素含有ガス供給配管12から供給される酸素含有ガスと吹き込み用浸漬ランス1の直上の合流部10で合流させる。
これは、粉状精錬剤が、転炉脱炭スラグなどのリサイクルスラグである場合にスラグ中に少量の金属鉄を含むことがあり、また、鋼製の配管が粉状精錬剤によって磨耗して金属鉄粉を生じることもあり、これらの金属鉄分が、酸素ガス中で鋼製配管の発火源となるおそれがあるからである。上述のように吹き込み用浸漬ランス1の直上部で酸素ガスと粉状精錬剤とが合流するようにすれば、酸素ガスと粉状精錬剤とが混合している領域は吹き込み用浸漬ランス1だけとなり、万一発火したとしても、損傷を受けるのは吹き込み用浸漬ランス1のみであり、吹き込み用浸漬ランス1の交換は容易で、設備損傷や機会ロスの観点から被害は最小になるからである。
吹き込み用浸漬ランス1の耐火物被覆層7を構成する耐火物材料は、溶損やスポーリングに対して或る程度の耐用性を有する耐火物材料であれば、どのような組成であっても構わない。代表的な耐火物材料としては、SiOを10〜40質量%含有するAl−SiO系不定形耐火物、MgOを5〜30質量%含有するAl−MgO系不定形耐火物などを用いることができる。耐火物被覆層7の厚みは、ランス寿命を考慮すれば、25mm以上程度が好ましい。
本発明者らは、更に、粉状精錬剤による吸熱量の抑制を図るため、より小さい粉状精錬剤の吹き込み速度においても溶銑9の噴出を抑制する効果が得られ、酸素ガス供給速度を増大したり、吐出ノズル4の浸漬深さを増大したりすることを可能とする吹き込み方法について検討した。
その結果、図2に示す吐出ノズル4の中心軸4aが、水平方向から下向きに8°以上、30°未満の範囲となるように、吐出ノズル4を傾斜させることで、効率的な酸素ガス供給と脱珪処理とが可能となることを見出した。以下、詳細に説明する。
約300トンの溶銑9を収容した混銑車8を用い、酸素ガス流量を30Nm/min(0.10Nm/(min・t))とした条件で、2つの吐出ノズル4を有する吹き込み用浸漬ランス1を用い、吐出ノズル4の中心軸4aの水平面からの下向き角度θを変化させて脱珪処理の試験を行い、下向き角度θの溶銑9の開口部14からの噴出に及ぼす影響を調査した。この試験では、吐出ノズル4の浸漬深さを0.3mの一定とし、内径21.4mmの鋼製の金属内管2から溶銑9に酸素ガスを吹き込むとともに、粉状精錬剤として粒径1mm以下に粉砕した転炉脱炭スラグを用い、転炉脱炭スラグの供給速度を50kg/min(0.17kg/(min・t))と少なく抑えた条件で酸素ガスとともに溶銑中に吹き込んだ。
この試験における粉体/酸素ガス比は1.7kg/Nmになる。また、この試験では、処理前の溶銑9の珪素濃度を0.30〜0.45質量%の範囲とし、酸素ガス及び転炉脱炭スラグ粉の吹き込み条件が同一である脱珪処理での脱珪酸素効率の実績に基づいて、脱珪処理前の珪素濃度に応じて酸素ガスの供給量を調整し、脱珪処理後の溶銑9の珪素濃度が0.10〜0.20質量%の範囲となるように制御した。ここで、脱珪酸素効率とは、溶銑9に吹き込んだ酸素含有ガスに含まれる酸素ガスと、溶銑9に吹き込んだ粉状精錬剤に含まれる酸化鉄中の酸素との合計量に対する、溶銑9の脱珪量の実績から化学量論的に必要とされる酸素量の比率である。
図4に、吹き込み用浸漬ランス1の吐出ノズル4の下向き角度θを変更して行った脱珪処理において、溶銑9の開口部14からの噴出が発生したチャージの比率を示す。溶銑9の開口部14からの噴出の有無の判定は目視で行った。
図4からも明らかなように、吐出ノズル4の下向き角度θを8°以上とすることにより、粉状精錬剤の供給速度を0.17kg/(min・t)に低減させて、粉体/酸素ガス比を1.7kg/Nmに低減させた条件においても、開口部14からの溶銑9の噴出を効果的に抑制できることがわかる。これは、吐出ノズル4からの吹き込み噴流が斜め下向きの運動量成分を有するとともに、粉状精錬剤粒子の吹き込みに伴って気泡の分散が図られ、これにより、運動量が効率良く溶銑9に伝達される。その結果、気泡及び精錬剤が分散された溶銑流の流れが変化し、溶銑浴面での気泡の浮上領域が吐出ノズル4の下向き角度θの増大に伴って吹き込み方向に水平に移動して広く拡大したことによると考えられる。
更に、酸素ガスの供給速度を40Nm/min(0.13Nm/(min・t))に増大させ、且つ、吐出ノズル4の浸漬深さを0.6mに増大させた条件において、吐出ノズル4の下向き角度θ及び粉状精錬剤の吹き込み速度を種々変更し、溶銑9の噴出、ランス寿命及び脱珪酸素効率に及ぼす吐出ノズル4の下向き角度θの影響を調査する試験を行った。
この試験では、内径16.1mmの鋼製の金属内管2を有する4つの吐出ノズル4を備えた4孔式の吹き込み用浸漬ランス1を用い、各吐出ノズル4の水平面からの下向き角度θは同一とした。そして、各吐出ノズル4の中心軸4aの水平面への投影が、図3(B)において、X=60°、Y=120°となるように配置して脱珪処理を行い、開口部14からの溶銑9の噴出の有無を目視で判定した。
粉状精錬剤としては、粒径1mm以下に粉砕した転炉脱炭スラグを用い、吹き込み用浸漬ランス1からの粉状精錬剤の吹き込み速度は、吹き込み期間中は一定とした。下向き角度θ及び粉状精錬剤の吹き込み速度の条件毎に、溶銑9の噴出の有無及び脱珪酸素効率を評価するとともに、溶銑9の噴出が起こらなかった条件では継続して同じ条件で脱珪処理を行い、吹き込み用浸漬ランス1のランス寿命も評価した。脱珪酸素効率は、同じ条件で行った複数回の脱珪処理の平均値を評価した。
図5に、吐出ノズル4の下向き角度θ及び粉状精錬剤の吹き込み速度の条件毎に、溶銑9の噴出の有無をプロットの種類(○:噴出なし、●:噴出あり)で区別して示した。下向き角度θを0°として水平方向に噴射させた条件では、溶銑9の噴出を防止するためには、粉状精錬剤の吹き込み速度を200kg/min(0.67kg/(min・t))以上とする必要があるが、下向き角度θの増大に伴って、より小さい粉状精錬剤の吹き込み速度において溶銑9の噴出を防止することが可能となった。例えば、下向き角度θが8°の場合には、粉状精錬剤の吹き込み速度が100kg/min(0.33kg/(min・t))の条件で溶銑9の噴出を防止することが可能である。
図4及び図5に示す結果から、吐出ノズル4の下向き角度θを8°以上とすることが必要であることがわかった。脱珪処理で生成するスラグは、流動性を確保するために、例えば、塩基度(質量%CaO/質量%SiO)を0.6以上といった、或る程度の塩基度には調整する必要があるので、この酸素ガス吹き込み条件において更に粉状精錬剤の吹き込み速度を低減する必要性は低いが、更に低い粉状精錬剤の吹き込み速度において、より確実に溶銑9の噴出を防止するためには、下向き角度θを10°以上とすることが好ましい。
また、この試験で粉状精錬剤の吹き込み速度を100kg/minとした条件について、脱珪酸素効率に及ぼす吐出ノズル4の下向き角度θの影響を調査した。図6に調査結果を示す。下向き角度θを増大するに伴って、脱珪酸素効率が向上することがわかる。
これは、上述のように、下向き角度θの増大に伴って、気泡や粉状精錬剤が分散された溶銑流の流れが下方向に移動するように変化することで、溶銑中での滞留時間が増大し、溶銑9との撹拌・混合が促進され、これにより、吹き込んだ酸素ガスと溶銑中の珪素との反応が促進されたことによると考えられる。また、下向き角度θの増大に伴って脱珪酸素効率が向上することから、同じ酸素ガス供給速度では下向き角度θの増大に伴ってCOガスの生成速度が減少するので、これも溶銑9の噴出の抑制に有利に作用する。
更に、脱珪酸素効率が向上すると、同じ酸素ガス供給速度において、より大きな脱珪速度が得られるので、高能率の脱珪処理が可能となるだけでなく、上記のようにCOガスの生成速度が減少する傾向となり、COガスの炉口近傍での燃焼によって炉口付近の耐火物が損傷を受けるという問題が軽減される。この問題で酸素ガス供給速度が制約を受けていた場合には、酸素ガス供給速度を増大させて脱珪処理の能率を向上する余地が生じるという利点もある。
図7に、この試験における吹き込み用浸漬ランス1のランス寿命に及ぼす吐出ノズル4の下向き角度θの影響を調査した結果を示す。図7に示すように、ランス寿命(耐用チャージ数)は通常20チャージ程度であるが、下向き角度θが20°を超えるとランス寿命が低下する傾向があり、下向き角度θが30°以上では、ランス寿命が1/2以下に大幅に低下する場合がある。したがって、下向き角度θは30°未満とし、好ましくは25°以下とする。
下向き角度θが大きくなってランス寿命が低下する場合、粉状精錬剤の吹き込み速度が大きいほど、ランス寿命が著しく低下する傾向である。また、吹き込み用浸漬ランス1の使用限界は、脱珪処理中に突如として溶銑9の噴出が発生することで判定され、その際、吹き込み用浸漬ランス1の先端部は、少なくとも1つの吐出ノズル4は精錬剤供給管5に達する位置まで溶損された状態となっていた。これらのことから、下向き角度θの増大に伴うランス寿命の低下は、粉状精錬剤による金属内管2の摩耗に起因すると考えられる。つまり、金属内管2が破れて吐出ノズル4の内部で酸素ガスと冷却媒体のプロパンガスとが混合して燃焼し、これによって急激に溶損が進行したと考えられる。
そこで、吹き込み用浸漬ランス1における粉状精錬剤の粒子の軌跡を、流動計算を用いて検討した。検討結果を図8の模式図に示す。図8に示すように、下向き角度θが30°以上と大きい条件では、金属内管2の入り口の下側に粉状精錬剤の粒子が高速で衝突し、金属内管2は摩耗を受け易い傾向であることが明らかである。吐出ノズル4の下向き角度θを30°未満に減少することで、摩耗を緩和できることが示唆された。
上記の本発明に係る吹き込み用浸漬ランス1及び溶融鉄の精錬方法の説明では、溶銑9への酸素ガス吹き込みによる脱珪処理を適用例として説明したが、本発明の適用対象はこれには限定されず、酸素ガス及び粉状精錬剤を高速で吹き込む、他の溶融鉄の精錬処理、例えば、溶銑の脱燐処理にも適用が可能である。溶銑の脱燐処理に適用した場合も、同様に、ランス寿命を大幅に低減させることなく、粉状精錬剤の使用量を抑制しつつ溶銑の噴出を抑制することを可能としたり、精錬反応への酸素効率を向上させたりする効果が得られることは明らかである。
以上説明したように、本発明によれば、酸素含有ガス及び粉状精錬剤を溶融鉄中に吹き込む吐出ノズル4を水平方向から下向きに8°以上、30°未満傾斜させるので、水平方向に吹き込んだ場合と比較して、吐出ノズル4からの酸素含有ガス及び粉状精錬剤が溶融鉄浴内で吹き込み方向により広い範囲に分散され、それに伴って精錬容器の開口部からの溶融鉄の噴出を比較的少ない粉状精錬剤の吹き込み速度で抑制できる。これにより、粉状精錬剤による吸熱を抑制して昇熱能の減少を抑制しつつ、酸素ガス供給速度の増大や吐出ノズル4の浸漬深さの増大が可能になり、酸素ガス吹き込み処理の能率を向上させることが実現される。
高炉から出銑され、混銑車に収容された300トンの溶銑に、上述した図1に示すように、吹き込み用浸漬ランスを軸心が略鉛直となるように浸漬させ、溶銑に酸素ガス及び粉状精錬剤を吹き込んで、溶銑の脱珪処理試験を実施した。この脱珪処理試験で使用した混銑車は、溶銑の脱燐処理を行った後の混銑車である。つまり、混銑車に収容された溶銑に脱燐処理を施し、脱燐処理後、溶銑及び脱燐処理で生成したスラグを混銑車から排出し、その後、所定量の鉄スクラップを装入した混銑車を高炉に移動させて溶銑を受銑し、更に図1に示した脱珪ステーションに移動して溶銑の脱珪処理を行った。
試験では4孔式の吹き込み用浸漬ランスを用い、4つの吐出ノズルの金属内管から、合計で40Nm/min(0.13Nm/(min・t))の酸素ガスを吹き込み、金属内管と金属外管との間隙からは、酸素ガスの5体積%のプロパンガスを吹き込んだ。その際、金属内管から酸素ガスとともに転炉脱炭スラグの粉体を100〜200kg/min(0.33〜0.67kg/(min・t))の吹き込み速度で吹き込んだ。
金属内管としては内径16.1mmの鋼管を使用し、図3(B)において、吐出ノズルの中心軸の水平面への投影がX=60°、Y=120°となるように配置して、吐出ノズルの水平面からの下向き角度θを0°から30°の範囲で変更した。吐出ノズルの浸漬深さは、0.6mとした。
各試験において、脱珪処理前の溶銑の珪素濃度は0.30〜0.45質量%、温度は1330〜1400℃の範囲であり、酸素ガス及び転炉脱炭スラグ粉の吹き込み条件が同一である脱珪処理での脱珪酸素効率の実績に基づいて、脱珪処理前の珪素濃度に応じて酸素ガスの供給量を調整し、脱珪処理後の溶銑の珪素濃度が0.10〜0.20質量%の範囲となるように制御した。
粉状精錬剤として吹き込んだ転炉脱炭スラグの粉体は、CaO;54質量%、SiO;17質量%、T.Fe;18質量%、P;2質量%、酸化鉄中酸素;6質量%の転炉脱炭スラグを1mm以下に粉砕して用いた。T.Feとは、スラグ中の全ての鉄酸化物の鉄分の合計値である。
粉状精錬剤の吹き込み速度は、吹き込み用浸漬ランスからの吹き込み期間を通じて一定として、下向き角度θ及び粉状精錬剤の吹き込み速度の条件毎に、溶銑の噴出の有無及び脱珪酸素効率を評価するとともに、溶銑の噴出が起きなかった条件では継続して同じ条件で脱珪処理を行い、吹き込み用浸漬ランスのランス寿命も評価した。
溶銑の噴出有無の評価は、噴出したチャージの比率(−)が0.1を超える場合を、「噴出あり」と判定した。
脱珪酸素効率は、脱珪処理前及び脱珪処理後の溶銑中珪素濃度を分析し、この分析値と、脱珪処理中に溶銑に供給した酸素ガス及び粉状精錬剤含まれる酸化鉄中の酸素の合計値とから、各試験チャージでの脱珪酸素効率を求め、同じ条件で行った複数回の脱珪処理の平均値で評価した。試験条件及び試験結果を表1に示す。
下向き角度θを0°として水平方向に噴射させた試験番号1〜3の試験及び下向き角度θを5°とした試験番号4〜6の試験結果を参酌すると、これらの場合には、粉状精錬剤の吹き込み速度を低下させると溶銑の噴出を招く場合があった。下向き角度θを8°以上に増大させた他の試験では、粉状精錬剤の吹き込み速度によらず、溶銑の噴出を防止することができており、下向き角度θを8°以上とすることにより、酸素ガスの吹き込み速度が比較的大きい条件においても、粉状精錬剤の吹き込み量を抑制しつつ溶銑の噴出を防止できることがわかった。
また、各試験における脱珪酸素効率を比較すると、粉状精錬剤の吹き込み速度が大きいほど、また、吐出ノズルの下向き角度θが大きいほど、脱珪酸素効率は増大する傾向であった。
更に、試験番号19〜21の試験結果を参酌すると、下向き角度θが30°の場合にはランス寿命が著しく低下しており、操業に支障がない程度のランス寿命を確保するためには、下向き角度θを30°未満にする必要があることがわかった。
このように、吐出ノズルを所定の角度範囲で斜め下向きとする本発明を適用することにより、混銑車内の溶銑に略鉛直に浸漬させた吹き込み用浸漬ランスから酸素含有ガス及び粉状精錬剤を吹き込む脱珪処理において、ランス寿命を大幅に低減させることなく、比較的小さい粉状精錬剤の吹き込み速度で混銑車の開口部からの溶銑の噴出を抑制できることがわかった。また、これに伴って吐出ノズルの浸漬深さを深くすることが可能となり、脱珪反応効率を高めることが可能となる。またその結果、脱珪反応による発熱を有効利用でき、製造コストの低減などの効果を得ることが実現される。
1 吹き込み用浸漬ランス
2 金属内管
3 金属外管
4 吐出ノズル
4a 吐出ノズルの中心軸
5 精錬剤供給管
6 冷却媒体供給管
7 耐火物被覆層
8 混銑車
9 溶銑
10 合流部
11 粉状精錬剤供給配管
12 酸素含有ガス供給配管
13 冷却媒体供給配管
14 開口部
θ 下向き角度

Claims (4)

  1. 溶融鉄中に浸漬し、側面に設けられた複数個の吐出ノズルから酸素含有ガス及び粉状精錬剤を溶融鉄中に吹き込むための吹き込み用浸漬ランスであって、
    前記吐出ノズルは、前記酸素含有ガス及び前記粉状精錬剤を吹き込むための金属内管と、該金属内管の先端部を冷却する冷却媒体を吹き込むための金属外管とを有する多重管構造であり、
    前記吹き込み用浸漬ランスの軸心に沿って、前記金属内管に接続して前記酸素含有ガス及び前記粉状精錬剤を供給するための精錬剤供給管、及び、前記金属外管に接続して前記冷却媒体を供給するための冷却媒体供給管を備え、
    前記精錬剤供給管、前記冷却媒体供給管及び前記吐出ノズルを保護するための耐火物被覆層を備え、
    前記吹き込み用浸漬ランスの軸心を鉛直としたとき、前記吐出ノズルの中心軸が、水平方向から下向きに8°以上、30°未満の範囲で傾斜していることを特徴とする吹き込み用浸漬ランス。
  2. 請求項1に記載の吹き込み用浸漬ランスを精錬容器に収容された溶融鉄に略鉛直に浸漬させ、前記金属内管から酸素含有ガス及び粉状精錬剤を吹き込み、前記金属内管と前記金属外管との間隙から前記冷却媒体として炭化水素系ガスを吹き込むことを特徴とする、溶融鉄の精錬方法。
  3. 前記精錬容器が混銑車で、前記溶融鉄が溶銑であり、前記粉状精錬剤が粉状の転炉脱炭スラグを含むことを特徴とする、請求項2に記載の溶融鉄の精錬方法。
  4. 前記粉状精錬剤の前記溶融鉄1トンあたりの吹き込み速度を0.20〜1.00kg/(min・t)の範囲とすることを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の溶融鉄の精錬方法。
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