JP2021152192A - 溶銑予備処理方法及び溶銑予備処理ランス - Google Patents
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Abstract
Description
この溶銑予備処理により、転炉での精錬負荷を減少させることができ、転炉サイクルタイムの短縮や排出スラグ量の削減が図られる。
溶銑予備処理は、溶銑鍋やトーピードカー(混銑車)等の溶銑輸送容器内で行われ、その方法としては、例えば、図3に示すように、トーピードカー80内の溶銑中へランス81を浸漬させ、ランス81の下部に設けられたノズルから、酸素ガス(気体酸素)や固酸(酸化鉄等の酸化物)、石灰石、生石灰などを、溶銑に直接供給することで行われることが多い。例えば、特許文献1には、二重管構造のランスの外管から窒素(キャリアガス)を用いて処理剤(固酸と石灰分)を、内管から酸素ガスを、溶銑中にそれぞれ旋回させながら吹込む方法が開示されている。
局所損耗は、ランスより吹き込まれた固酸の浮上位置がランスに近いため、固酸と溶銑中のCとの反応でCOガスが発生する際の衝撃がランスへ加わることで発生したと推察された。つまり、ノズルから吹き込まれる固酸の浮上位置をランスからできる限り遠ざけることで、固酸と溶銑中のCとの反応でCOガスが発生する際の衝撃がランスへ与える影響を軽減でき、その結果、局所損耗を抑制でき、ランスの寿命を改善できる。
しかし、ノズル出口において固酸のキャリアガスの速度を増加させることは、固酸による圧損のため不可能だった。
そこで、本発明者らは、内管から吹込む酸素ガスに固酸を随伴させることで、固酸の浮上位置(反応位置)をランスから遠ざけ、上記影響を軽減することにより、ランスの局所損耗を抑制することを考えた。
本発明は、以上の知見をもとになされたものであり、その要旨は以下の通りである。
前記外管からキャリアガスを用いて前記粉体を溶銑中に吹込むと共に、前記内管から酸素ガスを溶銑中に吹込む際に、前記内管の内管出口における酸素ガスの流速を音速で除したマッハ数が1.0より大きくなるように、酸素ガスの流速を調整することを特徴とする溶銑予備処理方法。
従って、従来よりも、ノズル出口上方の局所損耗を抑制でき、ランスの長寿命化が図れるため、例えば、ランニングコストの低減が図れて経済的である。
図1(A)、(B)に示すように、本発明の一実施の形態に係る溶銑予備処理方法は、溶銑予備処理ランス(以下、単にランスとも記載)10を溶銑中に浸漬させ、ノズル10aを介して、固酸(酸化鉄等の酸化物(FeOやFe2O3))、石灰石、生石灰等を含む粉体と酸素ガスを溶銑中に吹込む方法であり、従来よりも、ランス10の下部側壁に設けられたノズル10aのノズル出口11上方の局所損耗を抑制でき、ランス10の長寿命化が図れるものである。
図3に示すランス81のノズル出口82より上方約15cmの位置から上方約50cmの位置にかけての局所損耗について、実機観察や簡易計算、水モデルから考察した結果、局所損耗の発生原因は、ランス81を用いて溶銑中に吹込まれた固酸の浮上位置がランス81に近いためであると推察された。
そこで、ノズル出口82における固酸の噴出速度(ノズル出口82の断面に対して垂直な方向の速度)を増加させることで、固酸の浮上位置(反応位置)をランス81から遠ざけ、上記影響を軽減することにより、ランス81の局所損耗を抑制することを考えた。
そこで、固酸のキャリアガスの流速を増加させるのではなく、内管から供給される酸素ガスの流速を増加させ、その酸素ガスに固酸を随伴させることにより固酸の浮上位置をランスから遠ざけることに想到した。
そこで、内管のガス流速について検討した結果、内管出口での酸素ガスの流速を音速で除したマッハ数が1以下(M≦1)の場合、ガスの吹込み形態が不安定となり、吹込んだガスが内管出口(吹込み口)に戻されるバックアタックが頻発することがわかった。このバックアタックが頻発すると、固酸もノズル出口側に戻されるため、耐火物の損耗抑制効果が得られにくい。
即ち、本発明者らが想到した溶銑予備処理方法においては、内管13の内管出口15における酸素ガスの流速(吹込み速度)を調整し、この酸素ガスの流速を音速で除したマッハ数を1.0より大きくする(好ましくは1.5以上、更に好ましくは2.0以上にする)。なお、気温15℃、1気圧(1013hPa)の空気中(国際標準大気(ISA)海面上気温)での音速は約340(m/s)であり、酸素ガスの流速は、標準状態にある場合での流量(Nm3/h)をノズル出口断面積で割って算出した流速として、マッハ数を計算する。
なお、Dはノズル内径(cm)、F´rDは修正フルード数(F´rD=ρg/ρl×v2/(D×g))であり、ρgは気体密度(g/cm3)、ρlは液体密度(g/cm3)、vは気体の流速(cm/s)、gは重力加速度(cm/s2)、である。
例えば、トーピードカーの内径が大きく、ノズル内径が小さいほど、吹込み速度の上限を大きくすることができるが、現実的なトーピードカーの内径とノズル内径で考えると、最大でもマッハ数は5未満(M<5)程度となる。
また、内管から溶銑中に吹込まれる酸素ガスの流れは直進流であることが望ましい。これは、旋回流(前記した特許文献1)では固酸を随伴させにくいことによる。
上記した内管13の内径dとは、内管出口15そのものの内径(即ち、内管出口15における内管13の内径)であり、内管出口15での内管13の開口部16の断面積Sとは、例えば、内管出口15に内管13内のガス流路の面積を小さくするための構造物等が設けられた場合に形成される開口部(構造物によって塞がれていない部分)の断面積である。
つまり、上記した関係「d>2×(S/π)1/2」は、内管出口15の開口部16の断面積Sが内管出口の内径dから算出される内管出口の断面積よりも小さいことを意味している。これにより、ノズル出口での外管と内管の境界(外管出口の開口部と内管出口の開口部との境界領域)を大きくすることができ、内管の酸素ガスにより外管の固酸を随伴させる効果を高めることができる。
このように、開口部の断面積を内管出口の内径から算出される断面積よりも小さくする構造としては、例えば、内管そのものの断面形状を変更した構造や、内管の内側面に突起等を設けた構造等があるが、図2(A)〜(C)に示すように、各内管13a〜13cの内管出口15a〜15cに、構造物17〜19をそれぞれ設けた構造にすることが現実的である。
図2(B)に示す構造物18は、内管13bの軸心を中心として放射状に延びる4つの閉塞部18aが等角度(断面十字状)に配置され、この各閉塞部18aの幅を、内管13bの軸心を中心として半径方向外側に向けて徐々に幅狭としたものである。このとき、隣り合う閉塞部18aの間に、酸素ガスが通過する開口部分18bが形成される(4つの開口部分18bの断面積の合計が、前記した開口部の断面積Sとなる)。
なお、図2(A)に示す構造物17と図2(B)に示す構造物18は、共に断面十字状となっているが、例えば、内管の軸心を中心として放射状に延びる3つ又は5つ以上の複数の閉塞部を等角度に配置した構成にすることもできる。また、内管の軸心方向における閉塞部の厚みを、酸素ガスの流れに沿って上流側(ノズルの基側)から下流側(ノズルの先側)にかけて徐々に厚くすることで、酸素ガスの流速をスムーズに増加させることもできる。
この構造物19の外径を、酸素ガスの流れに沿って上流側(ノズルの基側)から下流側(ノズルの先側)にかけて徐々に大きく(逆テーパー状に)することで、酸素ガスの流速をスムーズに増加させることもできる。
まず、トーピードカーに収容された400トンの溶銑中へランスを浸漬し、溶銑予備処理(脱Si処理)を行った。
使用したランスは二重管構造のランスであり、表1に示すように、実施例1と比較例が内管に構造物を設けていないランス、実施例2が図2(A)に示す十字構造物を設けたランス、実施例3が図2(B)に示す十字構造物を設けたランスである。
いずれの例も外管から窒素ガスを用いて固酸を、内管から酸素ガスを吹き込んだ。固酸の吹き込み量は400kg/min、酸素ガスの吹き込み量は20Nm3/minとし、内管出口のガス流速のマッハ数Mが表1に示す値となるように、ランスの内管出口の内径や十字構造物のサイズを調整した。なお、外管出口の固酸を含む窒素ガスの流速のマッハ数Mは0.3とした。
以上の条件で、処理前の溶銑のSi濃度0.5質量%を処理後0.35質量%とする溶銑予備処理を、それぞれのランスで5本ずつ行い、1本当たりのランス寿命(処理回数)を比較した。ランス寿命は、予備処理後にランスを調査し、ノズル上方約15cmの位置から上方約50cmの位置における最も耐火物損耗が激しい部分の損耗量が70mmに達している場合に寿命と判断した。
このように、実施例は比較例と比較して、ランスの寿命を長くできた。
従って、本発明の溶銑予備処理方法及び溶銑予備処理ランスを用いることにより、従来よりも、ノズル出口上方の局所損耗を抑制でき、ランスの長寿命化が図れることを確認できた。
前記実施の形態においては、溶銑予備処理ランスを溶銑輸送容器内の溶銑中に、その軸心が鉛直方向となるように配置して浸漬させ、その両側(又は片側)から固酸を含む粉体を溶銑中に吹込む場合について説明したが、ランスのノズル出口上方に局所損耗が発生するのであれば、溶銑予備処理ランスをその軸心が鉛直方向に対して傾斜するように配置してもよい。この場合、ランスの下部底壁にノズル吐出口を設けることもできる(粉体の溶銑への吹込み方向がランスの軸心方向と一致)。
また、前記実施の形態においては、内管出口のガス流路に構造物を設けることで、内管出口における酸素ガスの流速を調整した場合について説明したが、例えば、内管へ供給する酸素ガスの流速(例えば、コンプレッサー等による酸素ガスの吹込み圧力)を調整することにより、内管出口における酸素ガスの流速を調整することもできる。
Claims (3)
- 外管と、該外管内に配置される内管とを備えた二重管構造のランスを溶銑中に浸漬させ、該ランスの下部に設けられたノズルを介して固酸を含む粉体と酸素ガスを溶銑中に吹込む溶銑予備処理方法において、
前記外管からキャリアガスを用いて前記粉体を溶銑中に吹込むと共に、前記内管から酸素ガスを溶銑中に吹込む際に、前記内管の内管出口における酸素ガスの流速を音速で除したマッハ数が1.0より大きくなるように、酸素ガスの流速を調整することを特徴とする溶銑予備処理方法。 - 請求項1記載の溶銑予備処理方法に使用する溶銑予備処理ランスであって、前記内管出口での前記内管の開口部の断面積Sと該内管の内径dとの関係がd>2×(S/π)1/2を満たすことを特徴とする溶銑予備処理ランス。
- 請求項2記載の溶銑予備処理ランスにおいて、前記関係を満たすように、前記内管出口には前記内管の開口部の断面積Sを小さくする構造物が設けられていることを特徴とする溶銑予備処理ランス。
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