JP4686873B2 - 溶銑の脱燐方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶銑の脱燐方法に関し、詳しくは脱燐処理時のスラグのT.Fe濃度を高位に維持し、脱燐反応を促進させることのできる脱燐方法に関するものである。尚、T.Feとはスラグ中の全ての鉄酸化物(FeOやFe2 O3 )の鉄分の合計値である。
【0002】
【従来の技術】
高炉から出銑された溶銑は、転炉にて精錬される前に溶銑予備処理と呼ばれる脱硫処理、脱珪処理及び脱燐処理が施されている。当初、これらの予備処理は、鋼材の品質面から低燐化や低硫化が要求されるものについて実施されていたが、近年では、転炉スラグの処理の問題、転炉でのMn鉱石の還元によるコスト削減効果、転炉の生産性向上によるコスト削減効果等により、高炉及び転炉を備えた銑鋼一貫製鉄所では、品質上からの低燐化及び低硫化のみならず、製鋼工程のトータルコストを削減する手段として、出銑されるほぼ全ての溶銑に対して脱硫処理及び脱燐処理が施されるようになった。
【0003】
このうち脱燐処理は、通常次のようにして行われている。即ち、(1);トーピードカー内の溶銑に脱燐用フラックス(酸化鉄、生石灰等)をインジェクションする方法、(2);取鍋内の溶銑に脱燐用フラックスをインジェクションするか若しくは吹き付けする方法、(3);2基の転炉を用いて一方の転炉で脱燐処理を行い、他方の転炉で脱炭精錬を行う方法(例えば特開昭63−195210号公報)、(4);1基の転炉を用いて脱燐工程及び脱炭工程を連続して行う方法(例えば特開平5−247511号公報)が用いられている。
【0004】
上記(1)及び(2)の方法では、T.Fe濃度が低く且つ塩基度(CaO/SiO2)が高いスラグを用いるため、脱燐と脱硫とが同時に進行するという利点がある。又、上記(3)の方法では、酸化剤として酸素を使用でき、脱燐処理時の温度制御のために鉄スクラップを用いることもできるため、生産性の向上という利点がある。更に、上記(4)の方法では、同一転炉で脱燐処理と脱炭精錬を行うので、(3)の方法による利点に加えて、エネルギーロスを少なくすることができるという利点がある。そして、(3)及び(4)の方法のように転炉型の容器を使用した場合には、フリーボードが高いため、酸素の単位時間当たりの供給量(「送酸速度」という)を上げ、脱燐速度を向上させることができるという利点がある。
【0005】
特に、(3)及び(4)の方法では、酸素は、上吹きランス先端に設置された、ラバールノズルと呼ばれる末広がりのノズルから供給されており、この場合、反応効率を低下させないために、ラバールノズルにより酸素が最適に膨張して超音速化されるようにラバールノズルの末広がり部形状が設計されており、酸素は超音速又は亜音速のジェットとして転炉内に供給されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記(1)及び(2)の方法において上吹き酸素を使用した場合には、送酸速度及び上吹きランスの条件によっては脱炭が過度に進行し、溶銑中の炭素含有量の低下により、次工程の転炉精錬における熱余裕がなくなり、生産性が低下するという問題点が生じる。
【0007】
又、上記(3)及び(4)の方法では、上吹きランスからの送酸速度が過大な場合には、脱燐処理中にも優先的に脱炭反応が進行してしまい、次工程の脱炭工程における熱余裕がなくなり、生産性が低下するという問題点がある。更に、高生産性を求めて、高送酸速度で最適に膨張して超音速化されるようなラバールノズルを用い、このラバールノズルに見合った高送酸速度で処理した場合には、上吹きランスから供給される酸素ジェットの噴出速度は増大し、溶湯表面に到達するジェット流速が増大するため、溶湯湯面の乱れが激化する。
【0008】
この湯面の乱れは、スピッティングやスプラッシュ等の激しい溶湯飛散をもたらし、炉口やフード、上吹きランス、更には排ガス設備といった部位への地金付着を増加させ、操業に悪影響を与えると共に、鉄歩留りの低下による生産性の悪化をもたらす。又、飛散に伴う鉄ダストの発生も著しく増加し、ダスト発生の観点からも鉄歩留りの低下をもたらす。転炉による脱炭吹錬においては、これに類似した操業状況の悪化を抑制するために、ラバールノズルの孔径や傾角等の上吹きランス形状のハード面を適正化しつつ、上吹きランスの先端と浴面との距離(以下「ランス高さ」と記す)や送酸速度等の操業条件を制御した対策が提案されているが、脱燐処理における対策は未だ提案されていない。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、その目的とするところは、上吹きランスを用いて酸素を供給しても、スピッティングやスプラッシュ等の溶湯飛散を発生させず、且つ、脱炭反応を促進させることなく脱燐反応を促進させ、短時間で高効率に溶銑を脱燐することのできる脱燐方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために、ラバールノズルの設計条件に着目して鋭意研究を行った。その結果、吹き出される酸素が最適に膨張して超音速化されるような設計条件に基づいて算出される出口径Deよりも極端に小さい出口径Deを有するラバールノズルを用いることで、上記課題を解決することができるとの知見を得た。以下、検討結果を説明する。
【0011】
溶銑の脱燐処理では、脱燐反応を促進させるためにスラグ中のT.Fe濃度を迅速に増加させ、且つ、高位に維持させることが必要である。又、脱炭反応を抑制させ、且つ、鉄飛散やダスト発生を低減させるためには、上吹きランスから吹き込まれる酸素ジェットの溶湯湯面での動圧を低くする必要がある。これらを満足するためには、上吹きランスから供給される酸素ジェットの噴出速度を遅くすること、所謂ソフトブロー化が有効な手段となる。
【0012】
溶湯湯面での酸素ジェットの動圧は、送酸速度又はランス高さを変動させることで低くすることができる。送酸速度を低下すれば、酸素ジェットの噴出速度は遅くなり、溶湯湯面での酸素ジェットの動圧は低下するが、送酸速度を遅くすることにより脱燐処理時間が延長し、効率的な脱燐処理は達成できない。又、ランス高さを大きくすれば、酸素ジェットの減衰時間が長くなり溶湯湯面での酸素ジェットの動圧はある程度低下するが、ランス高さを極端に大きくしない限りその効果は少ない。ランス高さを極端に大きくした場合には、溶湯面に到達する酸素が減少し、脱燐処理時間が延長する。
【0013】
このように、スラグ中のT.Fe濃度を迅速に増加させ且つ高位に維持して効率良く脱燐反応を行うためには、高い送酸速度を維持したまま、溶湯湯面での酸素ジェットの動圧を低くする必要がある。
【0014】
通常、ラバールノズルの設計は、送酸速度F(Nm3 /hr)から求まるラバールノズル1孔当たりの送酸速度Fh(Nm3 /hr)とスロート径Dt(mm)とから、下記の(1)式により設定ノズル背圧Po(kPa )を定め、定めた設定ノズル背圧Po(kPa )と雰囲気圧Pe(kPa )とスロート径Dt(mm)とを用い、下記の(3)式によりラバールノズルの出口径De(mm)を定めることによってなされている。ここで、雰囲気圧Peとは、ラバールノズルの外部の雰囲気圧、換言すれば、転炉等処理容器内のガス雰囲気圧力である。又、(3)式におけるKは定数である。
【0015】
【数3】
【0016】
【数4】
【0017】
このとき、(3)式の定数Kは理論的には0.259となるが、実際の操業においては送酸速度Fと設定ノズル背圧Poとの比(F/Po)を定常的に維持することは少なく、通常は定数Kが0.24〜0.28の範囲となるように、比(F/Po)を制御して操業することが多い。定数Kを0.24〜0.28として出口径Deを決定したラバールノズルでは、酸素ジェットはほぼ最適に膨張しており、酸素ジェットそのもののエネルギーは最大となる。そのため、浴面に到達する酸素ジェットのエネルギーも最大となり、脱炭反応やスプラッシュ等が発生することになる。
【0018】
そこで、本発明者等は、スロート径Dtは従来と同一であるが、出口径Deが従来と比較して異なるラバールノズルを用い、単位溶銑質量当たりの送酸速度を0.8〜2.2Nm3 /min. Tとして溶銑の脱燐挙動を調査(後述する実施例を参照のこと)した。その際、ラバールノズルの出口径Deは以下のようにして決定した。即ち、送酸速度Fhとスロート径Dtとから(1)式により設定ノズル背圧Poを求め、求めた設定ノズル背圧Poと雰囲気圧Peとスロート径Dtとから、(3)式により出口径Deを求める際に、定数Kを0.130〜0.345まで種々変化させて出口径Deを決定した。定数Kに比例して出口径Deは増減し、定数Kが0.28以上では定数Kの増加に伴って酸素ジェットの膨張は過剰状態となり、一方、定数Kが0.24以下では定数Kの減少に伴って酸素ジェットの膨張は不足状態となる。
【0019】
これらの脱燐処理において、スラグ中のT.Fe濃度と定数Kとの関係を調査した結果を図1に示し、又、脱燐処理後の溶銑中P濃度と定数Kとの関係を調査した結果を図2に示す。図1に示すように、単位溶銑質量当たりの送酸速度を2.0Nm3 /min. T以下の範囲とし、且つ、定数Kを0.185以下、即ち出口径Deを下記の(2)式の範囲内とした場合には、スラグ中のT.Fe濃度が安定して8.5mass%以上になり、又、図2に示すように、単位溶銑質量当たりの送酸速度及び定数Kを上記の範囲内とした場合には、脱燐処理後の溶銑中P濃度が安定して0.020mass%以下になるとの知見が得られた。
【0020】
【数5】
【0021】
これは、出口径Deを理論値(K=0.259の場合)に比べて小さくすることにより、酸素ジェットのラバールノズル内での膨張が不足し、酸素ジェットの噴流が減衰して酸素ジェットの湯面での運動エネルギーが低減したためと考えられる。この場合、操業時のノズル背圧Pを設定ノズル背圧Poよりも下げると最適膨張の範囲になる場合があるので、操業時のノズル背圧Pは少なくとも設定ノズル背圧Poを確保する必要がある。又、単位溶銑質量当たりの送酸速度を過度に小さくすると、脱燐処理時間が延長して好ましくないので、送酸速度の下限は0.6Nm3 /min. T程度とする必要がある。
【0022】
本発明は上記知見に基づきなされたもので、第1の発明による溶銑の脱燐方法は、その先端にラバールノズルが設置された上吹きランスを用い、酸素を供給して溶銑を脱燐処理する際に、この脱燐処理時の送酸速度F(Nm3 /hr)から定まるラバールノズル1孔当たりの送酸速度Fh(Nm3 /hr)とラバールノズルのスロート径Dt(mm)とに対して上記の(1)式を満足する設定ノズル背圧Po(kPa )を定め、この設定ノズル背圧Po(kPa )と脱燐処理時の雰囲気圧Pe(kPa )と前記スロート径Dt(mm)とから、その定数Kを0.130〜0.185の範囲内とする上記の(3)式により得られる出口径De(mm)を有するラバールノズルを備えた上吹きランスを用い、単位溶銑質量当たりの送酸速度を0.6〜2.0Nm3 /min. Tとし、且つ、ノズル背圧Pを前記設定ノズル背圧Po以上として酸素を供給することを特徴とし、第2の発明による溶銑の脱燐方法は、第1の発明において、前記上吹きランスが複数個のラバールノズルを有し、その内の一部のラバールノズルが上記(1)式並びに(3)式により定まる出口径Deを有していることを特徴とするものである。
【0023】
尚、本発明におけるノズル背圧P、設定ノズル背圧Po及び雰囲気圧Peは何れも絶対圧(真空の状態を圧力0とし、それを基準として表示される圧力)で表示した圧力である。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図3は、本発明で用いるラバールノズルの概略断面図であり、図3に示すように、ラバールノズル2は、その断面が縮小する部分と拡大する部分の2つの円錐体で構成され、縮小部分を絞り部3、拡大部分をスカート部5、絞り部3からスカート部5に遷移する部位である、最も狭くなった部位をスロート4と呼び、1個ないし複数個のラバールノズル2が銅製のランスノズル1に設けられている。そして、ランスノズル1は、円筒状のランス本体(図示せず)の下端に溶接等により接続され、上吹きランス(図示せず)が構成される。ランス本体の内部を通ってきた酸素は、絞り部3、スロート4、スカート部5を順に通って脱燐反応容器内に供給される。図中のDtはスロート径、Deは出口径であり、スカート部5の広がり角度θは通常15度以下である。
【0025】
本発明においては、このように構成されるラバールノズル2の形状を脱燐処理に先立ち、以下の手順によって決定する。
【0026】
先ず、脱燐処理時における上吹きランスからの送酸速度F(Nm3 /hr)からラバールノズル2の1孔当たりの送酸速度Fh(Nm3 /hr)を求める。具体的には送酸速度Fをラバールノズル2の設置個数で除算したものを送酸速度Fhとする。ここで、脱燐処理中に送酸速度Fを変化させる場合には、送酸速度Fとしてその内の代表値や加重平均値等を用いることとする。このようにして定めた送酸速度Fh(Nm3 /hr)とラバールノズル2のスロート径Dt(mm)とから、前述した(1)式により設定ノズル背圧Po(kPa )を定める。ここで、設定ノズル背圧Poとは、ランス本体内、即ちラバールノズル2の入側の酸素の設定圧力である。この場合、設定ノズル背圧Po(kPa )を予め決めておき、送酸速度Fh(Nm3 /hr)と設定ノズル背圧Po(kPa )とから、スロート径Dt(mm)を決めるようにしても良い。
【0027】
このようにして定めた設定ノズル背圧Po(kPa )と、雰囲気圧Pe(kPa )と、スロート径Dt(mm)とを用いて、前述した(2)式により出口径De(mm)を求める。但し、(2)式では出口径Deの下限値を示していないが、出口径Deがスロート径Dtよりも小さくなると、ラバールノズル2の形状が保たれなくなるので、出口径Deはスロート径Dtよりも大きい条件下で(2)式の範囲内の任意の値とする。又、ランスノズル1の設計に当たり、設置するラバールノズル2の孔数やスロート径Dtの寸法等の制約はないが、上吹きランスの送酸圧力等の制約により、必然的に送酸可能な孔数やスロート径Dtは決定されるため、これらを満足する範囲内で設定する必要がある。
【0028】
次いで、このようにして形状を決定したラバールノズル2を有するランスノズル1を製作し、ランス本体の下端に接続して上吹きランスを構成する。ランスノズル1が複数個のラバールノズル2を有している場合には、その内の一部のラバールノズル2のみを上記のようにして決定した形状としても良い。但し、この場合には、目的とする効果は若干低下する。
【0029】
この上吹きランスを用いて、高炉で製造された溶銑の脱燐処理を実施する。用いる溶銑としては高炉から出銑されたものであればどのようなものであっても処理することができる。脱燐処理の前に脱硫処理や脱珪処理が施されていても良い。脱珪処理とは、溶銑に酸素やミルスケールを添加し、主として溶銑中のSiを除去する処理である。因みに、脱燐処理前の溶銑の主な化学成分は、C:3.8〜5.0mass%、Si:0.2mass%以下、S:0.05mass%以下、P:0.1〜0.2mass%程度である。又、溶銑温度は1250〜1350℃の範囲であれば問題なく脱燐処理できる。脱燐処理容器としては、転炉、取鍋、及びトーピードカーの何れであっても本発明を実施することができる。
【0030】
そして、脱燐用フラックスとして生石灰等を溶銑に上置き、若しくは溶銑中にインジェクションしながら、上吹きランスからの単位溶銑質量当たりの送酸速度を0.6〜2.0Nm3 /min. Tとし、且つ、ノズル背圧Pを設定ノズル背圧Po以上として酸素を供給し、脱燐処理を実施する。酸素源が気体の酸素のみでは溶銑温度が上昇し過ぎて脱燐反応が阻害される場合もあるので、必要に応じて固体酸素源としてミルスケールや鉄鉱石等を添加する。固体酸素源を添加することにより溶銑温度を低下させることができる。気体酸素源の添加量と固体酸素源の添加量との比は、上吹きランスからの送酸速度が0.6〜2.0Nm3 /min. Tである限り、溶銑中のSi濃度、P濃度、C濃度、並びに、炭材等のインジェクション量に応じて適宜変更することができる。又、鉄スクラップを冷却材として添加しても良い。
【0031】
脱燐用フラックスの投入量は、溶銑中のSi濃度、S濃度及びP濃度に応じて変更することとするが、最大でも溶銑トン当たり40kg程度であれば十分である。又、脱燐用フラックスの種類として、特にソーダ系や弗化物系の組成を含まなくても良く、生石灰のみでも安定して脱燐することができる。脱燐用フラックスと溶銑とを混合させて脱燐反応を促進させるために、溶銑中に撹拌用ガスを吹き込んでも良い。又、ランス高さは特に限定する必要はなく、スラグ量等を勘案して設定すれば良い。
【0032】
溶銑をこのようにして脱燐処理することにより、高送酸速度の条件下においても、ラバールノズルからの酸素の噴出流速を低下させ、溶銑湯面での酸素ジェットエネルギーを低位に維持することができるので、スラグ中のT.Feが高濃度となり、脱燐反応を効率良く行うことができる。又、溶銑湯面での酸素ジェットエネルギーの低位維持により、脱炭反応が抑制されると共に、鉄飛散やダスト発生を防止することができる。
【0033】
【実施例】
容量が300トンで、上吹きランスから酸素を上吹きし、攪拌用ガスを底吹きする上底吹き複合吹錬用転炉内に約300トンの溶銑を装入して、合計21回の脱燐処理試験を行った。用いた溶銑は、脱Si処理が施された予備処理溶銑であり、試験条件として、ラバールノズルの孔数を3個及び4個の2水準、脱燐処理時の送酸速度を15000Nm3 /hr、18000Nm3 /hr、35000Nm3 /hr、40000Nm3 /hrの4水準、設定ノズル背圧Poを588kPa 及び1373kPa の2水準とし、且つ、定数Kを0.130〜0.345の範囲として、前述の(3)式によりラバールノズルの出口径Deを決定した。雰囲気圧Peは全ての水準で101kPa とした。
【0034】
そして、転炉内に脱燐用フラックスとして焼石灰を添加し、スラグを生成させると共に、溶湯の攪拌を目的としてAr又は窒素を底吹ノズルより毎分10〜36Nm3 程度吹き込みながら、ノズル背圧Pを、設定ノズル背圧Poが588kPa の場合には600kPa 、設定ノズル背圧Poが1373kPa の場合には1400kPa として、上吹きランスから酸素を供給し、脱燐処理を実施した。処理中の溶銑温度の調整は鉄スクラップの添加により行い、処理後の溶銑温度を1300〜1330℃に制御した。表1に用いた溶銑の成分及び温度、並びに、脱燐処理時の操業条件を示す。
【0035】
【表1】
【0036】
脱燐処理は、溶銑中のSiと反応する酸素分を除外して、脱燐反応のために供給された酸素が溶銑トン当たり13Nm3 となった時点で終了した。処理終了後、サブランスを転炉内に挿入して溶銑及びスラグから分析試料を採取し、溶銑中のP濃度及びスラグ中のT.Fe濃度を分析した。これらの分析値から脱燐反応の良否を判定した。評価基準として、スラグ中のT.Fe濃度が8.5mass%以上であることとした。この基準は、スラグ中のT.Fe濃度が8.5mass%以上であれば、溶銑中のP濃度が0.020mass%以下になることが経験的に分かっていたことによる。
【0037】
表2に、合計21ヒート実施した脱燐処理試験におけるラバールノズルの形状、操業条件及び試験結果を示す。又、前述した図1及び図2にスラグ中のT.Fe濃度並びに溶銑中のP濃度と定数Kとの関係を示す。
【0038】
【表2】
【0039】
表2並びに図1及び図2から明らかなように、送酸速度が2.0Nm3 /min. T以下で、且つ、定数Kが0.185以下の試験では、スラグ中のT.Fe濃度は安定して8.5mass%以上になり、そして、脱燐処理後の溶銑中P濃度は安定して0.020mass%以下になることが分かった。それに対して、この条件を満たさない試験では、スラグ中のT.Fe濃度は8mass%以下と低く、脱燐処理後の溶銑中P濃度も0.020mass%を越えており、目標とする0.020mass%以下まで脱燐できなかった。尚、表2の備考欄には、本発明の範囲内の試験は実施例と表示し、それ以外の試験は比較例と表示した。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、高送酸速度の条件下においても、上吹きランスから供給する酸素の噴出流速を低下させ、溶銑湯面での酸素ジェットエネルギーを低位に維持することができるので、スラグ中のT.Feが高濃度となり、脱燐反応を短時間で効率良く行うことが可能となる。又、溶銑湯面での酸素ジェットエネルギーの低位維持により、脱炭反応が抑制されると共に鉄飛散やダスト発生を防止することができ、操業の安定化が達成され、工業上極めて有益な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】スラグ中のT.Fe濃度と定数Kとの関係を調査した結果を示す図である。
【図2】脱燐処理後の溶銑中P濃度と定数Kとの関係を調査した結果を示す図である。
【図3】本発明で用いたラバールノズルの概略断面図である。
【符号の説明】
1 ランスノズル
2 ラバールノズル
3 絞り部
4 スロート
5 スカート部
Claims (2)
- その先端にラバールノズルが設置された上吹きランスを用い、酸素を供給して溶銑を脱燐処理する際に、この脱燐処理時の送酸速度F(Nm3 /hr)から定まるラバールノズル1孔当たりの送酸速度Fh(Nm3 /hr)とラバールノズルのスロート径Dt(mm)とに対して下記の(1)式を満足する設定ノズル背圧Po(kPa )を定め、この設定ノズル背圧Po(kPa )と脱燐処理時の雰囲気圧Pe(kPa )と前記スロート径Dt(mm)とから、その定数Kを0.130〜0.185の範囲内とする下記の(3)式により得られる出口径De(mm)を有するラバールノズルを備えた上吹きランスを用い、単位溶銑質量当たりの送酸速度を0.6〜2.0Nm3 /min. Tとし、且つ、ノズル背圧Pを前記設定ノズル背圧Po以上として酸素を供給することを特徴とする溶銑の脱燐方法。
- 前記上吹きランスが複数個のラバールノズルを有し、その内の一部のラバールノズルが前記(1)式並びに(3)式により定まる出口径Deを有していることを特徴とする請求項1に記載の溶銑の脱燐方法。
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