JP3668172B2 - 溶銑の精錬方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に転炉型容器を用いて溶銑を精錬する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
製鋼トータルコストのミニマム化や低燐鋼の安定溶製に関して、従来溶銑の脱燐法として、(1)トーピードカー内の溶銑に脱燐用フラックスをインジェクションして予備脱燐を行う方法、(2)取鍋内の溶銑に脱燐用フラックスをインジェクションするかもしくは吹付けて、予備脱燐を行う方法、あるいは(3)2基の転炉を用いて、一方で脱燐を行い、他方で脱炭を行う方法(例えば、特開昭63−195210号公報)が用いられている。
【0003】
しかしながら、トーピードカーや溶銑鍋等の溶銑搬送容器を用いた場合、容器容量が小さく強攪拌精錬を行うことが困難で、特に脱燐反応は平衡から遠く、目標の脱燐量を達成するためには必要以上のフラックスを使用しなければならず、かつ精錬に長時間を要すという欠点がある。また、搬送容器を用いる脱燐処理プロセスでは、年々増加するスクラップを溶解消費することができないという問題もある。上記の観点から、近年は、容器容量が大きく、強攪拌下での脱燐精錬が可能な、上吹き酸素を用いた転炉型容器による脱燐処理方法へ移行しつつある。
【0004】
これらの脱燐方法においては、脱燐反応は簡単に記述すると主として次式で示される。
2[P]+5[O]+3CaO→3CaO・P2O5 (2)
ここで、[P]、[O]はスラグ・メタル界面に存在するPとOであり、PがOにより酸化された後、スラグ中のCaOで固定化されると言われている。したがって、スラグ中のCaO濃度が高いほど、またスラグ・メタル界面の酸素活量が高いほど、脱燐反応は効率よく進行する。
【0005】
しかしながら、スラグ中CaO濃度を増加するために、多量の生石灰を脱燐用フラックスとして添加すると生成スラグ量が増大する。CaO濃度が高いスラグは粉状化しやすいため、路盤材等への有効利用が困難であり、スラグの多くは埋め立て処分等となる一種の産業廃棄物になる。少量の生石灰添加で、CaO濃度を低くすると有効利用しやすくなるとともに生成スラグ量も低減できる。ただし、その場合は、脱燐反応を進行させるためにスラグ・メタル界面の酸素活量を高める必要がある。
【0006】
しかしながら、溶銑脱燐精錬の場合、スラグ・メタル界面では脱炭反応が同時に進行するため、バルクスラグの酸化鉄濃度と平衡する酸素活量よりスラグ・メタル界面の酸素活量はかなり低くなっており、脱燐速度や脱燐効率が不十分となる。上吹き酸素や鉄鉱石等の酸化鉄源の添加によりスラグ中酸化鉄濃度を高めることでスラグ・メタル界面の酸素活量を高め、脱燐精錬効率を向上することは可能であるが、その場合、スラグ中の酸化鉄濃度を過剰に高めるため、スロッピングによる操業不安定や鉄歩留まりの低下、生成スラグ量増大等を招く。
【0007】
上記問題点を解決するため、本発明者らは先に、上吹き酸素をスラグにより遮断し、溶銑表面に接触しないように吹きつけることにより、スラグ中酸化鉄濃度を過剰に高めることなくスラグ・メタル界面の酸素活量を高め、脱燐効率を大幅に向上する方法を提案した(特願2001-48592)。しかしながら、本方法での溶銑脱燐処理の研究を進めるにつれ、スラグによる上吹き酸素の遮断を確実にするためにランスを過剰に高く上げたり、上吹き酸素流量を過剰に低下すると、脱燐効率が低下するという問題に直面した。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の問題点に鑑み、安定してスラグ・メタル界面の酸素活量を高め高効率な脱燐精錬を可能とする方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため、本発明の要旨とするところは、
(1)フラックス添加と酸素上吹きを行って溶銑を脱燐精錬する際に、上吹き酸素がスラグにより遮断されて直接溶銑に接触しない溶銑の脱燐方法において、溶銑1t当りの上吹き酸素流量F(Nm3/min/t)と、ランスの先端から溶銑上面までの距離Hとノズルの出口直径dとの比H/dが、下記(1)式を満たすように、上吹き酸素流量、上吹きランス高さ、ランスノズルの出口直径の少なくとも1つ以上を調節することを特徴とする溶銑の精錬方法、
ここで、
F× 134.1 × ( H / d ) -1.63 > 0.3 (1)
(2)溶銑中Si濃度が0.1質量%以上であるときは、上吹き酸素が直接溶銑に接触するように、上吹き酸素流量、上吹きランス高さ、ランスノズルの出口直径の少なくとも1つ以上を調節することを特徴とする請求項1記載の溶銑の精錬方法、
にある。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明では、上吹きランス2のノズル径とノズル数の適正な設計と、スラグ量に応じた操業中の上吹き酸素流量とランス高さの調整により、図1で示すように、転炉型容器1を用いた精錬において、上吹き酸素ジェット5がスラグ4で遮断され、直接溶銑3の表面に接触しないように制御する。
【0011】
溶銑脱燐精錬時のような約3%以上の酸化鉄を含むスラグは、スラグ中の鉄イオンの価数変化(Fe2+⇔Fe3+)すなわち正孔の移動により、極めて速く酸素を透過することが知られており、ランスから吹き込まれてスラグ上面に達した酸素は高速でスラグ中を移行し、スラグ・メタル界面に達する。そのため、スラグ・メタル界面の酸素活量は高位に維持され、脱燐反応が速やかに進行する。
【0012】
しかしながら、スラグによる上吹き酸素の遮断を確実にするため、ランスを過剰に高くすると、炉内に吹き込まれた酸素がスラグ上面に到達する前に酸素の大部分がスラグ・メタル界面での脱炭反応により発生するCOガスの燃焼に消費され、スラグ上面での酸素濃度が低下するため、スラグ・メタル界面の酸素活量を高位に維持できなくなる。また、上吹き酸素流量を過剰に低下しても、スラグ上面での酸素量が低下して、スラグ・メタル界面の酸素活量が低下する。
【0013】
本発明では、このスラグ上面での酸素量低下に起因するスラグ・メタル界面活量低下を防止し、高効率の溶銑脱燐精錬を実現するために、ランスノズルの出口直径の適正な設計と、操業中の上吹き酸素流量とランス高さの調整により、下記の(1)式を満たすように制御する。その理由は以下の通りである。
F×134.1×(H/d)-1.63>0.3 (1)
ここで、F:溶銑1t当たりの上吹き酸素流量(Nm3/min/t)
H:ランス先端から溶銑上面までの距離(mm)
d:ランスノズルの直径(mm)
【0014】
本発明者らは、上吹き酸素噴流中のCO燃焼挙動を調査した。その結果、図2に示すように、噴流中の酸素濃度がランス先端からの距離xとノズルの出口直径dの比x/dで一義的に決定されることを見出した。この関係を回帰分析すると、噴流の中心酸素濃度(%O2)は次式で表される。
(%O2)=13410×(x/d)-1.63 (3)
【0015】
そこで、溶銑1t当たりの上吹き酸素流量F(Nm3/min/t)に上記酸素濃度を乗じたものを有効酸素流量Qe(Nm3/min/t)と定義すると、Qeは次式で表される。
Qe=F×(%O2)/100=134.1×(x/d)-1.63 (4)
【0016】
本発明者らは、小型炉を用いた種々の溶銑脱燐処理実験を実施し、この有効酸素量Qeとスラグ・メタル界面の酸素活量および脱燐効率の指標となる処理後の燐分配比との関係を調査した。この際、スラグ上面位置はスラグの泡立ち状態等により変動が大きいため、xとしてはランス先端から溶銑上面までの距離Hを用いた。図3にQeとスラグ・メタル界面の酸素活量との関係を、図4にQeと処理後の燐分配比との関係を示す。図から分かるように、有効酸素流量Qeが0.3超になると急速にスラグ・メタル界面の酸素活量が増加し、燐分配比も飛躍的に向上した。すなわち、有効酸素流量Qeを0.3超にすることで高効率な脱燐精錬を行えることが判明した。
【0017】
なお、有効酸素流量Qeの上限は特に規定されないが、Qeを増加するためには、上吹き酸素流量Fを増加したりランス先端から溶銑上面までの距離Hを小さくすることが必要であり、スラグにより上吹き酸素を遮断することが困難となる。したがって、上吹き酸素がスラグにより遮断されて溶銑に直接接触しないようにする条件で有効酸素流量Qeの上限が決定される。上吹き酸素が溶銑に接触しないようにする条件としては、下記(5)式で計算される酸素ジェットによるスラグ凹み深さLSが下記(6)式で計算される酸素ジェットが当たっていない部分のスラグ厚みLSo未満となる条件とする。
LS=Lhexp(−0.78h/Lh) (5)
但し、Lh=63×(ρS/ρM)-1/3×(Fo2/n/d)2/3
LS :酸素ジェットによるスラグ凹み深さ(mm)
h :ランス先端から酸素ジェットが当たっていない部分のスラグ上面までの距離(mm)
Lh :h=0のときのスラグ凹み深さ(mm)
ρS :スラグの嵩密度(=約1500kg/m3)
ρM :溶銑の密度(=6900kg/m3)
Fo2:上吹き酸素流量(Nm3/h)
n :上吹きランスのノズル孔数(−)
d :上吹きランスのノズル孔直径(mm)
LSo=WS/ρS /(πD2/4)×1000 (6)
但し、WS=WCaO/(%CaO)f×100
LSo :酸素ジェットが当たっていない部分のスラグ厚み(mm)
WS :スラグ質量(kg)
D :スラグ表面における精錬容器の内直径(m)
WCaO :添加フラックス中の総CaO質量(kg)
(%CaO)f:精錬後のスラグ中CaO濃度(質量%)
【0018】
また、Si濃度が0.1質量%以上の溶銑を脱珪および脱燐精錬する場合、溶銑中のSi濃度が0.1質量%以上の場合にはPよりもSiの方が優先的に酸化される割合が大きいため、上述のような界面酸素活量増加による脱燐反応効率向上効果は小さく、むしろ酸素を直接溶銑に接触させた方が速く脱珪が進行する。したがって、溶銑中Si濃度が0.1質量%以上である吹錬初期には、上吹き酸素を直接溶銑に接触させて効率的に脱珪を行い、溶銑中Si濃度が0.1質量%未満となって、脱燐反応が進行しやすくなった段階で酸素が直接溶銑に接触しない条件に制御することがより望ましい実施の形態である。
【0019】
具体的な実施の形態としては、以下のような方法がある。
まず、Si濃度が0.1質量%未満の溶銑を脱燐精錬する場合には、吹錬中常に酸素ジェットを溶銑に直接接触しないようにするのが望ましく、通常添加するフラックスの質量により決定されるLSoと通常操業での上吹き酸素流量と上吹きランス高さに応じて、(5)式で求められるLSがLS<LSoを満足するようにランスノズルの数および/または直径を設計して使用すれば良いが、この際、操業中の上吹き酸素流量とランス高さに対して、有効酸素流量Qeが(1)式を満たすようにランスノズルの直径を設計する。または、既存の上吹きランスをそのまま用いても(1)式とLS<LSoを同時に満たす条件が存在する場合は、その条件となるように、上吹き酸素流量、上吹きランス高さの1つ以上の操業条件を変更しても良い。
【0020】
Si濃度が0.1質量%以上の溶銑を脱珪および脱燐精錬する場合には、上記と同様な方法で、吹錬中常に上吹き酸素が溶銑に直接接触しない条件下で(1)式を満たすように操業しても良いが、前述の通り、溶銑中Si濃度が0.1質量%以上の期間中は、上吹き酸素が溶銑に接触するようにした方がより望ましい。従って、変更可能な上吹き酸素流量、上吹きランス高さ、フラックス添加量の範囲内で、(5)式で求められるLSがLS≧LSoとLS<LSoをいずれも満足できるように、かつLS<LSoを満足する条件下で(1)式も満足するように上吹きランスノズルの直径と数を設計して、溶銑中Si濃度が0.1質量%以上の吹錬初期にはLS≧LSoとなるように、溶銑中Si濃度が0.1質量%未満となった以降はLS<LSoでかつ(1)式も満足するように、上吹き酸素流量、上吹きランス高さの少なくとも1つ以上を調整するのが最良の形態である。あるいは、上吹きランスのノズル内に駆動系を設け、操業中に酸素が噴出するノズルの直径や数が調節可能なようにランスを製作し、溶銑中Si濃度が0.1質量%となる前後でノズルの直径および/または数を変更しても良い。
【0021】
なお、溶銑中Si濃度の変化は、サブランス等により溶銑サンプルを採取して迅速分析を行っても良いが、分析に数分を要し、制御遅れが生じる。通常、溶銑中Si濃度は吹き込んだ酸素量により精度良く推定できるため、酸素流量に応じて吹錬時間から求めることができる。
【0022】
【実施例】
試験転炉を用いて、溶銑の脱燐実験を実施した。
まず、約4.5質量%のC、約0.1質量%のP、約0.05質量%のSiを含む初期温度約1300℃の溶銑約6tを用いて脱燐精錬を行った。試験転炉の炉内直径はスラグが存在する部分で約1.1mである。
【0023】
(実施例1)
溶銑を転炉に装入し、脱燐フラックスであるCaO濃度95質量%の生石灰15kgを投入した後、上吹きランスからの酸素の吹き付けにより10分間の脱燐精錬を行った。上吹きランスとしては、予め設計、製作したノズル数4、ノズル出口直径30mmのものを使用し、上吹き酸素流量は精錬開始から終了まで1000Nm3/h一定とした。上吹きランス高さは、ランス先端から溶銑上面までの距離が1.7m一定となるように調整した。精錬終了後のスラグ中CaO濃度は42質量%であった。
【0024】
(実施例2)
実施例1と同じ条件下で、上吹き酸素流量とランス高さのみ変更した脱燐精錬を行った。上吹き酸素流量は2000Nm3/hでランス先端から溶銑上面までの距離を3.0m一定とした。精錬終了後のスラグ中CaO濃度は41質量%であった。
【0025】
(実施例3)
実施例1と同じ条件下で、上吹きランス形状と上吹き酸素流量およびランス高さを変更した脱燐精錬を行った。上吹きランスとしては、ノズル数4、ノズル出口直径60mmのものを使用し、精錬中のランス高さは、ランス先端からスラグ表面までの距離が3.0m一定となるように調整した。精錬終了後のスラグ中CaO濃度は41質量%であった。
【0026】
(比較例1)
実施例1と同じ条件下で、上吹きランス高さのみ異なる脱燐精錬を行った。ランス先端から溶銑上面までの距離を3.0m一定とした。精錬終了後のスラグ中CaO濃度は42質量%であった。
【0027】
実施例1〜3および比較例1は、(5)(6)式から計算するといずれも上吹き酸素が溶銑と接触しない条件となっているが、(1)式から計算される有効酸素流量は実施例が0.3超、比較例1が0.3以下の条件となる。表1に、精錬条件と(1)式から計算される有効酸素流量および精錬後の溶銑中P濃度の一覧を示す。表1からわかるように、比較例1と同じ生石灰投入量で、ランスノズルの出口直径や上吹き酸素流量、ランス高さのいずれかを変更して有効酸素流量を高めた実施例1〜3では、いずれも精錬後の溶銑中P濃度が著しく低下しており、高い脱燐効率が得られていることがわかる。
【0028】
【表1】
【0029】
次に、約4.5質量%のC、約0.1質量%のP、約0.4質量%のSiを含む溶銑約6tを用いて脱珪および脱燐精錬を行った。精錬前の溶銑温度は、この場合も約1300℃に調整した。この組成の溶銑を1000Nm3/hの酸素流量で精錬する場合、精錬開始1.5分で溶銑中Si濃度が0.1質量%未満となることを予め確認し、精錬開始1.5分を精錬制御条件変更の時期とした。使用した試験転炉は実施例1〜3の時と同一である。
【0030】
(実施例4)
溶銑を試験転炉に装入し、生石灰105kgを投入した後、上吹きランスからの酸素の吹き付けにより12分間の脱珪および脱燐精錬を行った。上吹きランスとしては、予め設計、製作したノズル数4、ノズル出口直径30mmのものを使用し、酸素流量は精錬開始から終了まで1000Nm3/h一定とした。ランス高さは、ランス先端から溶銑表面までの距離が1.5m一定となるように調整した。精錬終了後のスラグ中CaO濃度は43質量%であった。
【0031】
(実施例5)
実施例4と同じ条件下で、上吹きランス高さのパターンのみ変更した脱珪および脱燐精錬を実施した。上吹きランス高さは、ランス先端からスラグ表面までの距離が、精錬開始後1.5分までは0.5m一定となるように、精錬開始1.5分後から精錬終了までは1.5m一定となるように調整した。精錬終了後のスラグ中CaO濃度は42質量%であった。
【0032】
(実施例6)
実施例4と同じ条件下で、上吹き酸素流量とランス高さのパターンを変更した脱珪および脱燐精錬を実施した。上吹き酸素流量は、精錬開始後1.5分までは1000Nm3/h一定となるように、精錬開始1.5分後から精錬終了までは300Nm3/h一定となるように調整した。ランス高さは、ランス先端から溶銑表面までの距離が0.6m一定となるように調整した。精錬終了後のスラグ中CaO濃度は42質量%であった。
【0033】
(実施例7)
実施例4と同じ条件下で、上吹きランス形状、上吹き酸素流量およびランス高さのパターンを変更した脱珪および脱燐精錬を実施した。上吹きランスとしては、ノズル数4、ノズル出口直径40mmのものを使用した。上吹き酸素流量は、精錬開始後1.5分までは1000Nm3/h一定となるように、精錬開始1.5分後から精錬終了までは800Nm3/h一定となるように調整した。ランス高さは、ランス先端から溶銑表面までの距離が、精錬開始後1.5分までは0.4m一定となるように、精錬開始1.5分後から精錬終了までは1.4m一定となるように調整した。精錬終了後のスラグ中CaO濃度は39質量%であった。
【0034】
(比較例2)
実施例4と同じ条件下で、ランス高さのみ異なる脱燐精錬を行った。ランス高さは、ランス先端から溶銑表面までの距離が3.0m一定となるように調整した。精錬終了後のスラグ中CaO濃度は43質量%であった。
【0035】
実施例4〜7および比較例2についても、精錬開始後1.5分以降の上吹き条件は上吹き酸素が溶銑と接触しない条件となっているが、(1)式から計算される有効酸素流量は実施例が0.3超、比較例1が0.3以下の条件となる。表2に、精錬条件と、精錬開始後1.5分以降の(1)式から計算される有効酸素流量および精錬後の溶銑中P濃度の一覧を示す。
【0036】
実施例4は比較例2と同じく、精錬開始から常に上吹き酸素が溶銑と接触しないようにした精錬であるが、ランスを低くすることで有効酸素流量が増大し、比較例2と比べて精錬後の溶銑中P濃度が大きく低下できていることがわかる。溶銑中Si濃度が0.1質量%未満となる精錬開始後1.5分以降のみ酸素が溶銑に接触しないようにして、かつ有効酸素流量を高めた実施例5〜7では、ランスノズルの出口径、上吹き酸素流量、ランス高さのいずれを変更したものについても、実施例4より更に精錬後の溶銑中P濃度が低下しており、脱燐効率が大きく向上していることがわかる。
【0037】
【表2】
【0038】
【発明の効果】
本発明により、脱燐効率が大幅に向上され、極低燐化処理が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶銑脱燐精錬時の転炉型容器内の酸素噴流、スラグ、溶銑の状況を示す模式図。
【図2】ランス先端からの距離xとランスノズルの出口直径dの比x/dと酸素噴流中心酸素濃度の関係を示す図。
【図3】有効酸素流量Qeとスラグ・メタル界面の酸素活量の関係を示す図。
【図4】有効酸素流量Qeと脱燐精錬処理後の燐分配比の関係を示す図。
【符号の説明】
1 転炉型容器
2 上吹きランス
3 溶銑
4 スラグ
5 酸素ジェット
Claims (2)
- フラックス添加と酸素上吹きを行って溶銑を脱燐精錬する際に、上吹き酸素がスラグにより遮断されて直接溶銑に接触しない溶銑の脱燐方法において、溶銑1t当りの上吹き酸素流量F(Nm3/min/t)と、ランスの先端から溶銑上面までの距離Hとノズルの出口直径dとの比H/dが、下記(1)式を満たすように、上吹き酸素流量、上吹きランス高さ、ランスノズルの出口直径の少なくとも1つ以上を調節することを特徴とする溶銑の精錬方法。
F× 134.1 × ( H / d ) -1.63 > 0.3 (1) - 溶銑中Si濃度が0.1質量%以上であるときは、上吹き酸素が直接溶銑に接触するように、上吹き酸素流量、上吹きランス高さ、ランスノズルの出口直径の少なくとも1つ以上を調節することを特徴とする請求項1記載の溶銑の精錬方法。
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