JP4686880B2 - 溶銑の脱燐方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、上吹きランスから酸素を吹き付けて行う溶銑の脱燐方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高炉から出銑された溶銑は、転炉にて精錬される前に溶銑予備処理と呼ばれる脱硫処理、脱珪処理及び脱燐処理が施されている。当初、これらの予備処理は、鋼材の品質面上から低燐化や低硫化が要求されるものについて実施されていたが、近年では、転炉スラグの処理の問題、転炉でのMn鉱石の還元によるコスト削減効果、転炉の生産性向上によるコスト削減効果等により、高炉及び転炉を備えた銑鋼一貫製鉄所では、品質面上からの低燐化及び低硫化のみならず、製鋼工程のトータルコストを削減する手段として、出銑されるほぼ全ての溶銑に対して脱硫処理及び脱燐処理が施されるようになった。
【0003】
脱硫処理及び脱燐処理共に、当初は溶銑鍋やトーピードカー等の溶銑搬送用容器内で行われていたが、脱燐処理は上吹きランスから酸素を溶銑に吹き付けて行うこと、鉄鋼生産量の減少に伴って転炉が遊休設備化したこと、トーピードカー等の溶銑搬送用容器ではフリーボードが少なく効率的な脱燐処理ができないこと等により、脱燐処理量の増大に伴って、例えば特開昭63−195210号公報に開示されるように、転炉にて溶銑の脱燐処理を行うことが一般的となった。
【0004】
フリーボードが大きい転炉型容器で溶銑の脱燐処理を実施することにより、溶銑と生石灰やミルスケール等の脱燐用フラックスとの強撹拌が可能になると共に、酸素の単位時間当たりの供給量(「送酸速度」という)を上げ、脱燐速度を増大させることが可能となり、脱燐処理時間の短縮による生産性の向上が達成された。又、酸化剤として気体酸素を用いることができるため、脱燐処理時の温度制御のために鉄スクラップを配合することが可能となり、これによる生産性の向上という利点も生じている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上吹きランスからの送酸速度を上げることに伴って、酸素が溶銑と衝突して溶銑と反応する領域(以下「火点」と記す)の温度が上昇し、期待したほどには脱燐反応が向上しないという問題点が生じた。これは、脱燐反応が発熱反応であり、反応界面である火点が低温であるほど脱燐反応が進行するためである。又、脱燐処理時間を短縮しようとして上吹きランスからの送酸速度を過度に上げた場合には、脱燐処理中にも脱炭反応が優先して進行し、脱燐反応が遅れるという問題点も生じる。この場合には、溶銑中の炭素含有量の低下に起因して次工程の脱炭工程における熱余裕がなくなり、脱炭工程における生産性が低下するという問題点も誘発する。更に、上吹きランスからの送酸速度の上昇や溶銑の強撹拌に伴ってスプラッシュの発生が増大し、処理容器内壁面にスプラッシュが付着して操業に支障を来すという問題点も生じる。
【0006】
このように、フリーボードが大きい転炉型容器で溶銑の脱燐処理を実施することにより、フリーボードが小さい従来の溶銑鍋やトーピードカー等の溶銑搬送用容器を用いて脱燐処理した場合に比べて脱燐反応速度は格段に上昇したが、一方、上吹きランスからの送酸速度を上げることに伴う問題点も生じており、更なる脱燐速度の効率化等々未だ改善すべき点が多い。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、その目的とするところは、フリーボードが大きい処理容器を用い、上吹きランスから酸素を供給して溶銑を脱燐処理する際に、上吹きランスからの送酸速度を上げることに伴う問題点を解決して、従来に比べて格段と高効率に脱燐処理することのできる脱燐方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った。以下に検討結果を説明する。
【0009】
溶銑の脱燐処理では、脱燐反応を促進させるためにスラグ中のT.Fe濃度を迅速に増加させ、且つ、高位に維持させることが必要である。尚、T.Feとはスラグ中の全ての鉄酸化物(FeOやFe23 )の鉄分の合計値である。
【0010】
スラグ中のT.Fe濃度を増加させるには、従来から知られているように、上吹きランスから供給される酸素の噴出速度を遅くすること、所謂ソフトブロー化が有効な手段である。このソフトブロー化は、送酸速度の低減又はランス高さ(ランス高さとは、上吹きランスの先端と浴面との距離)の増大により達成可能であるが、送酸速度を遅くすることにより脱燐処理時間が延長し、効率的な脱燐処理は達成できず、又、ランス高さを大きくすればある程度は制御可能であるが、ランス高さのみを制御してソフトブロー化することは実際には困難であり、この場合も送酸速度を遅くせざるを得ない。即ち、ソフトブロー化は送酸速度の低下を伴い、脱燐処理を高効率に行うことはできない。
【0011】
又、脱燐反応は発熱反応であり、脱燐反応を促進させるためには、反応界面温度を上昇させず、低温に維持させることが有効である。ミルスケールや鉄鉱石等を添加すれば、これらが溶融する際の吸熱反応を利用して反応界面温度を低温に維持させることができるが、一方、固体のミルスケールや鉄鉱石の添加により脱燐用フラックスの滓化が阻害されるため、脱燐反応が遅延して脱燐処理を高効率に行うことはできない。
【0012】
ところで、脱燐処理容器の内壁面には、脱燐処理時に発生するスプラッシュや脱燐処理容器を傾斜させて行う出湯時の内壁面との接触等に起因して、地金やスラグが付着している。本発明者等はこの付着地金及び付着スラグに着目し、これらの地金又はスラグを溶融しながら脱燐処理すれば、脱燐処理を効率良く行うことができるのではないかとの結論に達した。
【0013】
即ち、脱燐処理時に脱燐処理容器の内壁面に付着した地金を溶解することにより、溶融状態のFeO等の酸化鉄が新たに生成し、この溶融状態の酸化鉄が流下して溶銑湯面上に存在するスラグ中に供給されるので、スラグのT.Feが迅速に増加し且つ高位に維持される。又、脱燐処理時に付着スラグを溶解することにより、付着スラグ中に含まれる粒鉄等が酸化され、同様に容器内に存在するスラグ中のT.Feが増加し且つ高位に維持される。付着地金及び付着スラグは溶融状態でスラグに供給されるので、スラグの滓化を損なうことはなく、むしろ、スラグの滓化を促進させる。そして、溶融された地金及びスラグは、ほとんど過熱度(スーパーヒート)を持たずに壁面を流下若しくは壁面から落下してスラグや溶銑と合流するので、スラグ及び溶銑の温度上昇が抑えられ、これにより火点の温度上昇も抑えられる。
【0014】
このように、容器内壁面に付着した地金又はスラグを溶解しながら溶銑を脱燐処理することで、スラグのT.Feは迅速に増加し且つ高位に維持されると共に火点の温度上昇が抑制されるので、脱燐処理を高効率で実施することが可能となるはずである。
【0015】
そこで、本発明者等は、転炉設備を用いて溶銑を脱燐処理する際に、その下端部に鉛直下向き方向及び鉛直斜め下向き方向のノズル孔を有すると共に、下端部から離れた位置の側面部に容器の内壁面に向かって開口するノズル孔を具備する上吹きランスを用い、容器の内壁面に向かって開口するノズル孔から酸素を供給して容器の内壁面に付着した地金又はスラグを溶解しながら、鉛直下向き方向及び鉛直斜め下向き方向のノズル孔から溶銑湯面に向けて酸素を供給して溶銑の脱燐処理を実施し、溶銑の脱燐挙動を調査(後述する実施例を参照のこと)した。
【0016】
その際に、鉛直下向き方向及び鉛直斜め下向き方向のノズル孔から供給される酸素供給量Vsと、容器の内壁面に向かって開口するノズル孔から供給される酸素供給量Vuとから、下記の(1)式により定義される酸素供給比Mを0.027〜0.190の範囲で変更すると共に、単位時間当たり及び単位溶銑質量当たりで表示した酸素供給量Vs及び酸素供給量Vuの合計量を0.28〜2.22Nm3 /min・Tの範囲で変更して、これらの脱燐反応に及ぼす影響を調査した。又、容器の内壁面に向かって開口するノズル孔から酸素を供給しない場合も比較のために実施した。
【0017】
【数1】
Figure 0004686880
【0018】
これらの脱燐処理において、スラグ中のT.Fe濃度と酸素供給比Mとの関係を調査した結果を図1に示し、又、脱燐処理後の溶銑中P濃度と酸素供給比Mとの関係を調査した結果を図2に示す。図1及び図2では送酸速度の影響も示している。
【0019】
図1及び図2に示すように、容器の内壁面に向かって開口するノズル孔から酸素を噴出させた脱燐処理(酸素供給比M=0.027〜0.190)では、何れも、容器の内壁面に向かって開口するノズル孔から酸素を供給しない場合(酸素供給比M=0)に比べてスラグ中のT.Fe濃度は上昇し、処理後のP濃度は低下するとの知見が得られた。そして、特に送酸速度を0.5〜2.0Nm3 /min・Tの範囲とし且つ酸素供給比Mを0.15以下とした場合には、スラグ中のT.Fe濃度が安定して8.5mass%以上になり、脱燐処理後の溶銑中P濃度が安定して0.020mass%以下になるとの知見が得られた。
【0020】
本発明は上記知見に基づきなされたもので、第1の発明による溶銑の脱燐方法は、その下端部に鉛直下向き又は斜め下向き方向のノズル孔を有し、その側面部に容器の内壁面に向かって開口するノズル孔を具備する、溶銑を収容した容器内を上下方向に移動可能な上吹きランスを用い、前記の容器の内壁面に向かって開口するノズル孔から酸素を供給して容器の内壁面に付着した地金又はスラグを溶解し、溶解した地金又はスラグを前記溶銑の湯面上に存在するスラグと混合させて溶銑湯面上に存在するスラグ中のT.Fe濃度を増加させると共に、前記の鉛直下向き又は斜め下向き方向のノズル孔から溶銑湯面に向けて酸素を供給して容器内に収容された溶銑を脱燐処理する溶銑の脱燐方法であって、前記の鉛直下向き又は斜め下向き方向のノズル孔から供給される酸素供給量Vsと、前記の容器の内壁面に向かって開口するノズル孔から供給される酸素供給量Vuとから上記の(1)式により定義される酸素供給比Mを0.027〜0.147の範囲とし、且つ、酸素供給量Vsと酸素供給量Vuとの合計量を0.5〜2.0Nm 3 /min・Tの範囲とすることを特徴とし、の発明による溶銑の脱燐方法は、第1の発明において、前記上吹きランスは、鉛直下向き又は斜め下向き方向のノズル孔へ供給される酸素の供給流路と、容器の内壁面に向かって開口するノズル孔へ供給される酸素の供給流路とが独立して設けられ、その流量が独立して制御されることを特徴とするものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図3は、本発明による脱燐処理を実施する際に用いた転炉設備の概略断面図、図4は、図3に示す上吹きランスの概略拡大断面図である。
【0022】
図3に示すように、本発明の溶銑脱燐処理で用いた転炉設備は、その外殻を鉄皮7で構成され、鉄皮7の内側に耐火物8が施行された転炉本体1と、この転炉本体1内に挿入され、上下方向に移動可能な上吹きランス2とを備えている。転炉本体1の上部には、収容した溶銑3を出湯するための出湯口9が設けられ、又、転炉本体1の炉底には撹拌用ガスを吹き込むためのポーラス煉瓦10が設けられている。このポーラス煉瓦10はガス導入管11と接続されている。
【0023】
図4に示すように、上吹きランス2は、円筒状のランス本体12と、このランス本体12の下端に溶接等により接続されたランスノズル13とで構成されている。ランス本体12は、外管14、中管15、内管16、最内管17の同心円状の4種の鋼管、即ち四重管で構成されている。但し、最内管17は、ランス本体12の下端までは設置されておらず、途中で溶接等により内管16と接続され、封鎖されており、従って、ランス本体12の下端部分は外管14、中管15、内管16からなる三重管で構成されている。
【0024】
銅製のランスノズル13には、鉛直下向き方向又は鉛直斜め下向き方向のノズル孔として下吹きノズル18が設置されている。この下吹きノズル18は、その断面が縮小する部分と拡大する部分の2つの円錐体で構成された、所謂ラバールノズルの形状を採っている。この下吹きノズル18の設置孔数や口径等の制約は特にないが、上吹きランス2の送酸圧力等の制約により、必然的に送酸可能な孔数や口径は決定されるため、これらを満足する範囲内で設定することとする。尚、ラバールノズルでは、縮小部分を絞り部、拡大部分をスカート部、絞り部からスカート部に遷移する部位であり、最も狭くなった部位をスロートと呼んでいる。
【0025】
又、ランス本体12の四重管の範囲には、転炉本体1の側壁内壁面に向かって開口するノズル孔として横吹きノズル19が外管14、中管15及び内管16を貫通して設置されている。横吹きノズル19は、図4では水平方向に向いているが水平方向に向ける必要はなく、溶銑湯面よりも上方部分となる、転炉本体1の側壁内壁面に向かって開口する限り、横吹きノズル19の設置位置と内壁面との関係から下向き若しくは上向きとしても良い。又、図4では直管状であるが、ラバールノズル形状としても良い。
【0026】
外管14と中管15との間隙、及び、中管15と内管16との間隙は、上吹きランス2を冷却するための冷却水の流路となっており、上吹きランス2の上部に設けられた給水継手(図示せず)から供給された冷却水は中管15と内管16との間隙を通ってランスノズル13の部位まで至り、ランスノズル13の部位で反転して外管14と中管15との間隙を通って上吹きランス2の上部に設けられた排水継手(図示せず)から排出される。給排水の経路を逆としても良い。
【0027】
内管16と最内管17との間隙は横吹きノズル19への酸素の供給流路となっており、上吹きランス2の上端部から内管16と最内管17との間隙に供給された酸素は横吹きノズル19から、溶銑3の湯面位置よりも上方位置にある、転炉本体1の側壁に向かって噴出される。一方、最内管17の内部は下吹きノズル18への酸素の供給流路となっており、上吹きランス2の上端部から最内管17内に供給された酸素は、最内管17から内管16を通り、下吹きノズル18から転炉本体1内に収容されている溶銑3の湯面に向かって噴出される。下吹きノズル18及び横吹きノズル19から噴出される酸素量は、各々独立した流量計(図示せず)により独立して流量制御されている。
【0028】
尚、本発明による脱燐方法を実施する場合、上吹きランス2は必ずしも四重管とする必要はなく、最内管17が設置されない三重管としても良い。この場合には、内管16の内部が酸素の供給流路となり、下吹きノズル18及び横吹きノズル19から噴出される酸素量は、下吹きノズル18及び横吹きノズル19の断面積に依存し、従って、上記(1)式により定義される酸素供給比Mを脱燐処理中に任意に変更することはできず、予め所定の酸素供給比Mとなるように下吹きノズル18及び横吹きノズル19の断面積を決める必要がある。又、スプラッシュ等の付着によりノズル断面積が変化した場合には、酸素供給比Mが変動して最適範囲から逸脱する虞もある。このような問題を避けるためには四重管構造とすることが好ましい。
【0029】
このような構成の転炉設備を用いて溶銑3を脱燐処理するに際しては、先ず、転炉本体1内に溶銑3を装入する。用いる溶銑3としてはどのようなものであっても処理することができ、脱燐処理の前に脱硫処理や脱珪処理が施されていても良い。脱珪処理とは、溶銑3に酸素やミルスケールを添加し、主として溶銑3中のSiを除去する処理である。因みに、脱燐処理前の溶銑3の主な化学成分は、C:3.8〜5.0mass%、Si:0.2mass%以下、S:0.05mass%以下、P:0.1〜0.2mass%程度である。又、溶銑温度は1250〜1350℃の範囲であれば問題なく脱燐処理できる。
【0030】
そして、脱燐用フラックスとして生石灰等を溶銑3上に一括投入若しくは分割投入或いは溶銑3中にインジェクションし、ポーラス煉瓦10から窒素やAr等を撹拌用ガスとして溶銑3中に吹き込みながら、上吹きランス2から酸素を供給して溶銑3の脱燐処理を実施する。脱燐用フラックスは、吹き込まれたガス気泡6により溶銑3と撹拌され溶融してスラグ4を形成する。この際に、前述したように、酸素供給比Mが0.15以下で、且つ、上吹きランス2からの酸素の総供給量、即ち、下吹きノズル18から供給される酸素供給量Vsと横吹きノズル19から供給される酸素供給量Vuとの合計量を単位時間当たり及び単位溶銑質量当たり0.5〜2.0Nm3 /min・Tとすることが好ましい。この場合に、酸素供給量Vuを零にすると従来の脱燐処理方法と同一になってしまうので、酸素供給量Vuを零としない範囲で、酸素供給比Mを0.15以下に制御する。
【0031】
横吹きノズル19から吹き込まれた酸素は転炉本体1の側壁内壁面に付着した付着物5中の地金を酸化させて酸化鉄に変質すると共に、この酸化反応による発熱により付着物5中の地金や地金が酸化した酸化鉄及びスラグを溶融させる。溶融した付着地金や酸化鉄及びスラグはスラグ4中又は溶銑3中に落下する。そのため、スラグ4中のT.Fe濃度は迅速に上昇し且つ高位に維持される。又、付着物5が溶融してスラグ4又は溶銑3と混合することにより、スラグ4及び溶銑3の温度上昇が抑えられ、これにより火点の温度上昇も抑えられる。
【0032】
付着物5を迅速に溶解させるために、横吹きノズル19はランス本体12の円周方向且つ高さ方向で複数個設置することが好ましい。転炉本体1の大きさにもよるが、具体的には、転炉本体1の容量が300トン程度であれば円周方向に4箇所、高さ方向に3箇所程度設置すれば良い。
【0033】
脱燐処理時の酸素源が気体の酸素のみでは溶銑温度が上昇し過ぎて脱燐反応が阻害される場合もあるので、必要に応じて固体酸素源としてミルスケールや鉄鉱石等を添加しても良い。固体酸素源を添加することにより溶銑温度を低下させることができる。気体酸素源の添加量と固体酸素源の添加量との比は、上吹きランス2からの送酸速度が0.5〜2.0Nm3 /min・Tである限り、溶銑3中のSi濃度、P濃度、C濃度等に応じて適宜変更することができる。又、鉄スクラップを冷却材として添加しても良い。
【0034】
脱燐用フラックスの投入量は、溶銑3中のSi濃度、S濃度及びP濃度に応じて変更することとするが、最大でも溶銑トン当たり40kg程度であれば十分である。又、脱燐用フラックスの種類として、特にソーダ系や弗化物系の組成を含まなくても良く、生石灰のみでも安定して脱燐することができる。又、ランス高さは特に限定する必要はなく、スラグ4の生成量等を勘案して設定すれば良い。
【0035】
このように、転炉本体1の内壁面に付着した地金又はスラグを溶解しながら溶銑3を脱燐処理することにより、溶融したFeO等の酸化鉄が新たに生成してスラグ4中に供給されるので、スラグ4のT.Feが迅速に増加し且つ高位に維持される。これら付着地金及び付着スラグは溶融状態でスラグ4に供給されるので、スラグ4の滓化を損なうことはなく、むしろ、スラグ4の滓化を促進させる。そして、溶融された地金及びスラグはほとんど過熱度を持たずにスラグ4や溶銑3と合流するので、火点の温度上昇が抑えられる。その結果、酸化反応であり且つ発熱反応である溶銑3の脱燐反応を高効率で実施することが可能となる。又、付着地金を溶解するので、鉄歩留まりも向上する。
【0036】
尚、上記説明では脱燐処理容器として転炉本体1を用いた場合を示したが、脱燐処理容器は転炉本体型の容器に限るものではなく、取鍋やトーピードカー等の溶銑搬送容器であってもフリーボードを大きくして溶銑の強撹拌を可能とした場合には、本発明を実施することができる。又、上記説明では1基の上吹きランス2を用いて脱燐用の酸素と付着物溶解用の酸素とを供給しているが、それぞれ別の上吹きランスを用いて酸素を供給しても良い。更に、上記説明では酸素を用いて付着物5を溶解しているが、ガスバーナー等を用いて化石燃料を燃焼させ、その熱で溶解しても良い。
【0037】
【実施例】
図3に示す転炉設備を用いて合計54回の溶銑の脱燐処理試験を実施した。以下、その結果を説明する。
【0038】
転炉本体の容量は300トンであり、脱珪処理が施された約300トンの溶銑を転炉本体内に装入して脱燐処理を実施した。用いた上吹きランスは、下吹きノズルの孔数を4孔と6孔の2水準とし、横吹きノズルを、全ての試験において、上吹きランスの円周方向に4箇所、鉛直方向に上吹きランス下端位置から500mm位置、1500mm位置、2500mm位置の3段とした。即ち、横吹きノズルの孔数は全ての上吹きランスで12孔である。そして、脱燐処理時の送酸速度を5000Nm3 /hr、9000Nm3 /hr、15000Nm3 /hr、36000Nm3 /hr、40000Nm3 /hrの5水準、酸素供給比Mを0.027〜0.19の範囲として試験した。又、比較のために、横吹きノズルからの酸素供給を停止した試験も実施した。横吹きノズルからの酸素供給を停止した試験は、従来の脱燐方法と同一となる。
【0039】
脱燐用フラックスとして焼石灰を転炉本体内に添加し、スラグを生成させると共に、Ar又は窒素をポーラス煉瓦から毎分10〜36Nm3 程度吹き込みながら上吹きランスから酸素を供給し、脱燐処理を実施した。処理中の溶銑温度の調整は鉄スクラップの添加により行い、処理後の溶銑温度を1300〜1330℃に制御した。表1に用いた溶銑の成分及び温度、並びに、脱燐処理時の操業条件を示す。
【0040】
【表1】
Figure 0004686880
【0041】
脱燐処理は、溶銑中のSiと反応する酸素分を除外して、脱燐反応のために供給された酸素が溶銑トン当たり13Nm3 となった時点で終了した。処理終了後、サブランスを転炉本体内に挿入して溶銑及びスラグから分析試料を採取し、溶銑中のP濃度及びスラグ中のT.Fe濃度を分析した。これらの分析値から脱燐反応の良否を判定した。
【0042】
表2及び表3に、合計54ヒート実施した脱燐処理試験における操業条件及び試験結果を示す。表2及び表3に示す出口径とは下吹きノズル(ラバールノズル)のスカート部の出口径である。又、前述した図1及び図2に、下吹きノズルの孔数が4孔の場合の試験結果について脱燐処理後のスラグ中のT.Fe濃度と酸素供給比Mとの関係、並びに脱燐処理後の溶銑中のP濃度と酸素供給比Mとの関係を示す。
【0043】
【表2】
Figure 0004686880
【0044】
【表3】
Figure 0004686880
【0045】
表2及び表3並びに図1及び図2から明らかなように、横吹きノズルから酸素を供給した試験では、下吹きノズルからのみ酸素を供給した試験に比較してスラグ中のT.Fe濃度が高くなり且つ処理後の溶銑中P濃度が低下した。特に、送酸速度が0.5〜2.0Nm3 /min・Tの範囲で、且つ酸素供給比Mが0.15以下とした試験(試験No.1〜24)では、スラグ中のT.Fe濃度が安定して8.5mass%以上になり、その結果、脱燐処理後の溶銑中P濃度が安定して0.020mass%以下になることが分かった。尚、表2及び表3の判定の欄には、脱燐処理後の溶銑中P濃度が0.020mass%以下となった試験に、特別に○印を付与している。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、処置容器の内壁面に付着した地金又はスラグを溶解しながら脱燐処理することにより、スラグ中のT.Feが迅速に増加し且つ高位に維持されると共に、溶融された地金又はスラグが溶銑中や脱燐フラックスの溶融したスラグ中に混合されて火点の温度上昇を抑制するので、溶銑の脱燐反応を従来と比較して格段と高効率で実施することが可能となり、工業上有益な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】スラグ中のT.Fe濃度と酸素供給比Mとの関係を示す図である。
【図2】脱燐処理後の溶銑中P濃度と酸素供給比Mとの関係を示す図である。
【図3】本発明による脱燐処理を実施する際に用いた転炉設備の概略断面図である。
【図4】図3に示す上吹きランスの概略拡大断面図である。
【符号の説明】
1 転炉本体
2 上吹きランス
3 溶銑
4 スラグ
5 付着物
10 ポーラス煉瓦
18 下吹きノズル
19 横吹きノズル

Claims (2)

  1. その下端部に鉛直下向き又は斜め下向き方向のノズル孔を有し、その側面部に容器の内壁面に向かって開口するノズル孔を具備する、溶銑を収容した容器内を上下方向に移動可能な上吹きランスを用い、前記の容器の内壁面に向かって開口するノズル孔から酸素を供給して容器の内壁面に付着した地金又はスラグを溶解し、溶解した地金又はスラグを前記溶銑の湯面上に存在するスラグと混合させて溶銑湯面上に存在するスラグ中のT.Fe濃度を増加させると共に、前記の鉛直下向き又は斜め下向き方向のノズル孔から溶銑湯面に向けて酸素を供給して容器内に収容された溶銑を脱燐処理する溶銑の脱燐方法であって、前記の鉛直下向き又は斜め下向き方向のノズル孔から供給される酸素供給量Vsと、前記の容器の内壁面に向かって開口するノズル孔から供給される酸素供給量Vuとから下記の(1)式により定義される酸素供給比Mを0.027〜0.147の範囲とし、且つ、酸素供給量Vsと酸素供給量Vuとの合計量を0.5〜2.0Nm 3 /min・Tの範囲とすることを特徴とする溶銑の脱燐方法。
    M=Vu/(Vs+Vu)…(1)
  2. 前記上吹きランスは、鉛直下向き又は斜め下向き方向のノズル孔へ供給される酸素の供給流路と、容器の内壁面に向かって開口するノズル孔へ供給される酸素の供給流路とが独立して設けられ、その流量が独立して制御されることを特徴とする請求項1に記載の溶銑の脱燐方法。
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