JP2018024898A - 脱りん効率と鉄分歩留に優れた溶銑の脱りん方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】脱りん石灰効率及び鉄分歩留を向上させることが可能な脱りん効率と鉄分歩留に優れた溶銑脱りん方法の提供。【解決手段】本発明は、転炉型反応容器内の溶銑に上吹きランスから酸素ガスと粉状のCaO源を、底部から底吹きガスを吹き込んで溶銑を攪拌して脱りん処理をする方法において、攪拌持続時間Δtが0.5min以上1.5min以下ごとに弱攪拌と強攪拌を切り換え、弱攪拌時では溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,w(Nm3/min/t)を0.075以上0.135以下、強攪拌時では溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,s(Nm3/min/t)を0.17以上0.34以下、強攪拌時での溶銑1tあたりの底吹きガス流量と弱攪拌時での溶銑1tあたりの底吹きガス流量との比QB,s/QB,wを1.7以上4.5以下、脱りん処理後のスラグ塩基度(mass%CaO)/(mass%SiO2)を1.4以上2.3以下とする。【選択図】図3
Description
本発明は、上底吹きの転炉型反応容器に装入され、不純物の一つとして、りんを含有する溶銑に対して、上吹きランスから酸素ガスとともに粉状のCaO源を溶銑に吹き込み、且つ当該容器の底部から攪拌ガスを吹き込んで攪拌して脱りん処理を行う、脱りん効率と鉄分歩留に優れた溶銑の脱りん方法に関する。
高炉等で製造された溶銑には、[C](炭素)、[Si](珪素)、[P](りん)等が含まれており、従来より、転炉(脱炭炉)での脱炭精錬に先立って、溶銑段階で脱りん処理を実施している。
鋼(溶銑)中に含まれているもののうち、りんは、一般的に鋼の性能を悪化させる有害な不純物である。つまり、りんが鋼中に存在していると、強度(硬さ)を低下させたり、靱性(粘り強さ)を劣化させたり、耐腐食性を弱める等の影響を鋼に与えてしまうので、溶銑段階で脱りん処理を実施している。
鋼(溶銑)中に含まれているもののうち、りんは、一般的に鋼の性能を悪化させる有害な不純物である。つまり、りんが鋼中に存在していると、強度(硬さ)を低下させたり、靱性(粘り強さ)を劣化させたり、耐腐食性を弱める等の影響を鋼に与えてしまうので、溶銑段階で脱りん処理を実施している。
ところで、近年では、鋼材の高級化、高付加価値化に伴い、ユーザーからの品質要求がますます厳しくなってきている。
このような、鋼材の品質に対する要求が厳しくなっている状況の中で、その鋼材品質を高く、且つ安定したものとなるように図りつつ、生産コストが低く、且つ、環境に対して低負荷の下で、鋼中のりんを除去することは、製鋼工程において大きな課題である。すなわち、脱りん処理方法における処理条件の適正化が、高品質の鋼材を製造する製鋼工程に取って、非常に重要である。
このような、鋼材の品質に対する要求が厳しくなっている状況の中で、その鋼材品質を高く、且つ安定したものとなるように図りつつ、生産コストが低く、且つ、環境に対して低負荷の下で、鋼中のりんを除去することは、製鋼工程において大きな課題である。すなわち、脱りん処理方法における処理条件の適正化が、高品質の鋼材を製造する製鋼工程に取って、非常に重要である。
上で述べた溶銑の脱りん処理においては、上底吹き方式の転炉を用いるのが主流であり、その処理方法としては、例えば、特許文献1〜4に開示されているものがある。
特許文献1は、溶銑脱りん処理の高能率化のために、塩基度増加と滓化率向上及びスピッティング抑制の両立、スラグ中FeO増加とスロッピング抑制の両立、といった課題を解決し、より低コストで高脱りん処理効率、高脱りん能を確保する脱珪脱りん処理技術を確立することを目的としている。
特許文献1は、溶銑脱りん処理の高能率化のために、塩基度増加と滓化率向上及びスピッティング抑制の両立、スラグ中FeO増加とスロッピング抑制の両立、といった課題を解決し、より低コストで高脱りん処理効率、高脱りん能を確保する脱珪脱りん処理技術を確立することを目的としている。
具体的には、上吹きランスと底吹きノズルを備えた上底吹き型の転炉に、[C]:4.3〜4.6mass%、[Si]:0.30〜0.50mass%及び[P]:0.090〜0.120mass%を有する溶銑を装入して、上吹きランスから酸素とともに粉状生石灰を吹き付けて脱珪・脱りん処理することにより、溶銑を脱珪・脱りん処理する。
この際、(1)固体酸素源を溶銑上に、上吹きランスから酸素供給を開始する直前または直後30s間以内に酸素流量に換算して2.0〜4.0Nm3/t添加し、上吹きランスからの上吹き酸素供給速度を2.0〜3.0Nm3/min/tとし、(2)底吹きノズルからの底吹きガス供給速度を、脱珪処理期間中には0.2〜0.3Nm3/min/tとするとともに、脱珪処理後脱りん処理終了までは0.4〜0.5Nm3/min/tとし、(3)装入塩基度をCaO/SiO2:2.5〜3.0として、(4)装入塩基度の計算に含まれる全CaO質量の80%以上を最大粒径が0.5mm以下とした粉状生石灰により6kg/min/t以下の吹き込み速度で調整して上吹きランスから酸素とともに溶銑に吹付け、(5)上吹き酸素の供給時間を6min間以下とし、(6)処理終了後の[C]を3.4〜3.7mass%とすることとしている。
この際、(1)固体酸素源を溶銑上に、上吹きランスから酸素供給を開始する直前または直後30s間以内に酸素流量に換算して2.0〜4.0Nm3/t添加し、上吹きランスからの上吹き酸素供給速度を2.0〜3.0Nm3/min/tとし、(2)底吹きノズルからの底吹きガス供給速度を、脱珪処理期間中には0.2〜0.3Nm3/min/tとするとともに、脱珪処理後脱りん処理終了までは0.4〜0.5Nm3/min/tとし、(3)装入塩基度をCaO/SiO2:2.5〜3.0として、(4)装入塩基度の計算に含まれる全CaO質量の80%以上を最大粒径が0.5mm以下とした粉状生石灰により6kg/min/t以下の吹き込み速度で調整して上吹きランスから酸素とともに溶銑に吹付け、(5)上吹き酸素の供給時間を6min間以下とし、(6)処理終了後の[C]を3.4〜3.7mass%とすることとしている。
特許文献2は、生石灰粉を上吹きして溶銑を脱りんする方法において、上吹き酸素流量を2.0〜5.0Nm3/min/tに増加して、上吹き酸素の供給時間を5〜8min間という短時間に高速で溶銑脱りん処理する場合に、上吹きした生石灰粉の飛散ロスをCaO純分換算で1.0kg/t以下に抑制、及び、処理後[P]を0.015mass%以下にまで低減を同時に実現することを目的としている。
具体的には、上底吹き転炉でCaO含有粉体を上吹き酸素とともに溶銑へ上吹きして溶銑脱りんする方法において、上吹き酸素とともに生石灰粉を3kg/min/t以下の速度で溶銑表面へ吹き付け、底吹きガス流量を0.2〜0.6Nm3/min/t、サブランスから0.1〜1.0Nm3/min/tのガスとともに生石灰粉を3kg/min/t以下の速度で溶銑表面へ上吹きし、CaO・FetO・SiO2・Al2O3を含有するプリメルトフラックス4〜10kg/tと、前記生石灰粉と前記プリメルトフラックスと塊生石灰とのCaO純分に対して、前記生石灰粉中のCaO純分が40%以上となるように定めた量の生石灰粉とを吹錬開始前後に添加し、かつ、処理後スラグ塩基度を2.0〜3.0とすることとしている。
特許文献3は、上底吹き型の転炉等の転炉設備を用いて行う溶銑の脱りん処理方法において、精錬効率の向上と同時に効率的な冷鉄源の溶解を行うことを可能とする、溶銑の脱りん処理方法を提供することを目的としている。
具体的には、転炉の中心軸に対して、対象位置に設置された2個の底吹き羽口で1組をなすように各底吹き羽口を設置し、酸素上吹きランスからの酸素吹込み中には、そのうちの少なくとも1組の底吹き羽口において、一方の羽口からの吹き込みガス流量が、他方の羽口からの吹き込みガス流量と比べて増加または減少された関係に維持されるよう制御することとしている。
具体的には、転炉の中心軸に対して、対象位置に設置された2個の底吹き羽口で1組をなすように各底吹き羽口を設置し、酸素上吹きランスからの酸素吹込み中には、そのうちの少なくとも1組の底吹き羽口において、一方の羽口からの吹き込みガス流量が、他方の羽口からの吹き込みガス流量と比べて増加または減少された関係に維持されるよう制御することとしている。
特許文献4は、取鍋精練において、精練時間の短縮、高清浄鋼の製造を可能とする底吹きガス制御方法を提供することを目的としている。
具体的には、取鍋精錬における底吹きガス制御方法において、取鍋に複数個の底吹きプラグを設け、該各プラグへのガス供給流量を周期的に変化させるとともに、該各プラグの配列順に該周期的変化波形に位相差を持たせ、溶鋼に水平旋回流動を生ぜしめることとしている。
具体的には、取鍋精錬における底吹きガス制御方法において、取鍋に複数個の底吹きプラグを設け、該各プラグへのガス供給流量を周期的に変化させるとともに、該各プラグの配列順に該周期的変化波形に位相差を持たせ、溶鋼に水平旋回流動を生ぜしめることとしている。
ところで、溶銑の脱りん処理を行う際には、脱りん能の高いスラグを形成させることが重要である。また、溶銑の脱りん処理を行う際には、脱りん剤としてCaOが用いられているが、そのCaOの融点は2000℃超と高いものである。
そのため、従来では、蛍石(CaF2)を添加する等して融点を下げる手法が採用されていたが、近年では、蛍石を添加すること無く、且つ、溶銑に添加するCaOを粉状とし、その粉状のCaOを酸素ガスとともに、上吹きランスから溶銑(火点=高温場)に吹き込む方法が採用されている。
そのため、従来では、蛍石(CaF2)を添加する等して融点を下げる手法が採用されていたが、近年では、蛍石を添加すること無く、且つ、溶銑に添加するCaOを粉状とし、その粉状のCaOを酸素ガスとともに、上吹きランスから溶銑(火点=高温場)に吹き込む方法が採用されている。
しかし、そのときの粉状CaOの吹き込み条件が適正でないと、吹き込まれた粉状のCaOが脱りん反応に有効に使われないため、脱りん能の向上効果が得られないという課題があった。加えて、転炉における底吹きガスの攪拌条件が適正でないと、吹き込まれた粉状のCaOが脱りん反応に有効に使われないため、脱りん能の向上効果が得られないという課題があった。
その一方で、スラグ中FeO濃度を高めることは、脱りん反応に有利であるが、脱りん処理の終了までに、スラグ中FeOを還元回収できなければ、操業の阻害や鉄分歩留の低下を招いてしまい、操業上及び生産コスト上で、好ましくない。スラグ中のFeO濃度をコントロールするにあたっても、転炉における底吹きガスの攪拌条件を適正に制御する必要がある。
この観点より、本明細書で例示した特許文献1〜4を精査した場合、以下に示すような課題が挙げられる。
特許文献1は、脱珪処理の期間と脱珪処理後脱りん処理終了の期間とで底吹きガス流量を変化させているものの、1回だけの変化(弱攪拌→強攪拌)である。この技術では、適切な脱りん処理が行われるか甚だ疑問である。
特許文献1は、脱珪処理の期間と脱珪処理後脱りん処理終了の期間とで底吹きガス流量を変化させているものの、1回だけの変化(弱攪拌→強攪拌)である。この技術では、適切な脱りん処理が行われるか甚だ疑問である。
また、同文献は、スピッティング防止やスロッピング抑制を目的としているため、スラグ塩基度が2.3〜2.9と高く、粉体CaOの比率が80%以上にも係わらず、滓化率は100%ではない。すなわち、粉状CaOの反応促進効果を高める最適な処理条件とはなっていない。さらには、スラグ量が多く、従って、スラグ中への鉄分損失が大きいと考えられる。つまり、高効率で脱りん処理が行われているとは言い難い。
特許文献2は、脱りん処理中において、底吹きガス流量が一定であって、変更させていない。この技術でも、適切な脱りん処理が行われるか疑問である。
また、同文献は、低りん化やスロッピング抑制を目的としているため、スラグ塩基度を2.0〜3.0と、また好ましくは処理後のスラグ塩基度=2.2〜2.7と高める必要があり、脱りん効率と鉄分歩留の観点から、高効率で脱りん処理が行われているとは言い難い。
また、同文献は、低りん化やスロッピング抑制を目的としているため、スラグ塩基度を2.0〜3.0と、また好ましくは処理後のスラグ塩基度=2.2〜2.7と高める必要があり、脱りん効率と鉄分歩留の観点から、高効率で脱りん処理が行われているとは言い難い。
特許文献3は、粉状CaOの吹き込み、処理後のスラグ塩基度についての条件の記載が全くなく、高効率で脱りん処理が行われているとは考え難い。同文献は、底吹きガス流量の変更周期が長く、非定常攪拌による溶銑・スラグ、特にスラグの攪拌促進効果が小さい。この技術でも、適切な脱りん処理が行われるか疑問である。
特許文献4は、フリーボードの小さい取鍋での底吹きガス流量であるため、流量が少なく、また、その変更周期も短く、取鍋精錬に限定された制御方法であるので、転炉型反応容器での脱りん反応促進には適用することができない。
特許文献4は、フリーボードの小さい取鍋での底吹きガス流量であるため、流量が少なく、また、その変更周期も短く、取鍋精錬に限定された制御方法であるので、転炉型反応容器での脱りん反応促進には適用することができない。
このような従来技術では、低りん化の条件で、脱りん効率と鉄分歩留の向上を同時に達成できているとは考え難い。
また、これまでの技術を参照してみると、粉状CaOの吹き込み時の脱りん反応促進技術に関して、底吹きガス流量を周期的に変化させて、溶銑・スラグの攪拌促進を記載した技術は、ほとんど開示されていない。また、反応容器を取鍋とした場合でも、開示されているものは少ない。また、粉状CaOの吹き込みで脱りん反応を促進させつつ、鉄分損失低減のために、底吹きガス流量を規定した技術は、開示されていない。
また、これまでの技術を参照してみると、粉状CaOの吹き込み時の脱りん反応促進技術に関して、底吹きガス流量を周期的に変化させて、溶銑・スラグの攪拌促進を記載した技術は、ほとんど開示されていない。また、反応容器を取鍋とした場合でも、開示されているものは少ない。また、粉状CaOの吹き込みで脱りん反応を促進させつつ、鉄分損失低減のために、底吹きガス流量を規定した技術は、開示されていない。
以上、従来技術を考察すると、脱りん石灰効率と鉄分歩留を高める最適な処理条件を有した技術は、存在しないと考えられる。
そこで、本発明は、上述問題点に鑑み、脱りん処理時の処理条件を最適化することで、脱りん石灰効率及び鉄分歩留を向上させることが可能な脱りん効率と鉄分歩留に優れた溶銑の脱りん方法を提供することを目的とする。
そこで、本発明は、上述問題点に鑑み、脱りん処理時の処理条件を最適化することで、脱りん石灰効率及び鉄分歩留を向上させることが可能な脱りん効率と鉄分歩留に優れた溶銑の脱りん方法を提供することを目的とする。
上述の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明にかかる脱りん効率と鉄分歩留に優れた溶銑の脱りん方法は、上底吹き方式の転炉型反応容器に装入された溶銑に対して、上吹きランスから酸素ガスとともに粉状のCaO源を吹き込み、前記転炉型反応容器の底部から底吹きガスを吹き込んで溶銑を攪拌して、脱りん処理をする溶銑の脱りん方法において、前記脱りん処理の工程では、攪拌持続時間Δtが0.5min以上1.5min以下の範囲ごとに、弱攪拌と強攪拌を交互に切り換え、前記弱攪拌時においては、前記溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,w (Nm3/min/t)を、0.075以上0.135以下の範囲で行い、前記強攪拌時においては、前記溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,s(Nm3/min/t)を、0.17以上0.34以下の範囲で行い、前記強攪拌時での溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,s(Nm3/min/t)と、前記弱攪拌時での溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,w(Nm3/min/t)との比であるQB,s/QB,w(-)を、1.7以上4.5以下とし、前記脱りん処理後のスラグ塩基度(mass%CaO)/(mass%SiO2)(-)が、1.4以上2.3以下となるように脱りん処理を行うことを特徴とする。
本発明にかかる脱りん効率と鉄分歩留に優れた溶銑の脱りん方法は、上底吹き方式の転炉型反応容器に装入された溶銑に対して、上吹きランスから酸素ガスとともに粉状のCaO源を吹き込み、前記転炉型反応容器の底部から底吹きガスを吹き込んで溶銑を攪拌して、脱りん処理をする溶銑の脱りん方法において、前記脱りん処理の工程では、攪拌持続時間Δtが0.5min以上1.5min以下の範囲ごとに、弱攪拌と強攪拌を交互に切り換え、前記弱攪拌時においては、前記溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,w (Nm3/min/t)を、0.075以上0.135以下の範囲で行い、前記強攪拌時においては、前記溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,s(Nm3/min/t)を、0.17以上0.34以下の範囲で行い、前記強攪拌時での溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,s(Nm3/min/t)と、前記弱攪拌時での溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,w(Nm3/min/t)との比であるQB,s/QB,w(-)を、1.7以上4.5以下とし、前記脱りん処理後のスラグ塩基度(mass%CaO)/(mass%SiO2)(-)が、1.4以上2.3以下となるように脱りん処理を行うことを特徴とする。
本発明によれば、脱りん処理時の処理条件を最適化することで、脱りん石灰効率及び鉄分歩留を向上させることが可能である。
以下、本発明にかかる脱りん効率と鉄分歩留に優れた溶銑の脱りん方法の実施形態を、図を参照して説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明を具体化した一例であって、その具体例をもって本発明の構成を限定するものではない。従って、本発明の技術的範囲は、本実施形態に開示内容だけに限定されるものではない。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明を具体化した一例であって、その具体例をもって本発明の構成を限定するものではない。従って、本発明の技術的範囲は、本実施形態に開示内容だけに限定されるものではない。
なお、本実施形態においては、溶銑Yの脱りん処理時には、装入された溶銑YやスラグZが反応容器から溢れる可能性があるため、体積に余裕がある、上底吹き方式の転炉型反応容器1を用いている。この転炉型反応容器1は、上吹きランス2と、底吹き羽口3(攪拌用で主に不活性ガスを吹き込む)を備えている。
本発明にかかる脱りん効率と鉄分歩留に優れた溶銑Yの脱りん方法は、上吹きランス2から酸素ガスとともに粉状のCaO源を溶銑Yに吹き込んで脱りん処理をする過程において、所定の時間Δtごとに、攪拌の強度(強攪拌・弱攪拌)、すなわち溶銑1tあたりの底吹きガス(攪拌ガス)流量QBを適切に切り換えて、溶銑Yの脱りん処理を行う方法である。
本発明にかかる脱りん効率と鉄分歩留に優れた溶銑Yの脱りん方法は、上吹きランス2から酸素ガスとともに粉状のCaO源を溶銑Yに吹き込んで脱りん処理をする過程において、所定の時間Δtごとに、攪拌の強度(強攪拌・弱攪拌)、すなわち溶銑1tあたりの底吹きガス(攪拌ガス)流量QBを適切に切り換えて、溶銑Yの脱りん処理を行う方法である。
さて、高炉等で製造された溶銑Yには、[C](炭素)、[Si](珪素)、[P](りん)等が含まれており、従来より、転炉(脱炭炉)での脱炭精錬に先立って、溶銑段階で脱りん処理を実施している(図1参照)。
ただし、パラメータ[M]は、溶銑中[M]濃度(mass%)を指し、本実施形態においては、[M]=[C],[Si],[Mn],[P]などと表記することもある。
ただし、パラメータ[M]は、溶銑中[M]濃度(mass%)を指し、本実施形態においては、[M]=[C],[Si],[Mn],[P]などと表記することもある。
鋼(溶銑Y)中に含まれるりんは、一般的に鋼の性能を悪化させる有害な不純物である。つまり、りんが鋼中に存在していると、強度(硬さ)を低下させたり、靱性(粘り強さ)を劣化させたり、耐腐食性を弱める等の影響を鋼に与えてしまうので、溶銑段階で脱りん処理を実施している。
また、溶銑Y中においては、一般的に、0.20mass%以上の[Si]が含まれている。脱りん処理を実施する際には、0.20mass%以上の[Si]が含まれた溶銑Yをそのままの状態で、転炉型反応容器1に装入する、あるいは、例えば溶銑中の[Si]が高い場合、0.20〜0.50mass%程度にまで事前脱珪した後に、その溶銑Yを転炉型反応容器1に装入する。
また、溶銑Y中においては、一般的に、0.20mass%以上の[Si]が含まれている。脱りん処理を実施する際には、0.20mass%以上の[Si]が含まれた溶銑Yをそのままの状態で、転炉型反応容器1に装入する、あるいは、例えば溶銑中の[Si]が高い場合、0.20〜0.50mass%程度にまで事前脱珪した後に、その溶銑Yを転炉型反応容器1に装入する。
溶銑Yを装入した後、塊状の脱りん剤(生石灰、転炉スラグ、酸化鉄等)を、炉(容器1)上に備えられたホッパーから切り出して、装入されている溶銑Yに添加するとともに、上吹きランス2から酸素ガスと粉状のCaO源を、溶銑面に向かって噴射して、溶銑Y内に供給し、溶銑Yの脱りん処理を行う。ただし、酸素ガスとCaO源は、上吹きランス2の先端に備えられたノズル孔(吐出部)から同時に噴射される。
なお、CaO源を、酸素ガスとは別系統(例えば、専用配管など)のノズルで噴射する方式については、本発明の対象外とする。
本実施形態においては、粉状のCaO源として、CaO濃度が高い生石灰(焼石灰)、(主成分:CaO)を用いることとしている。また、生石灰以外については、消石灰(主成分:CaCO3)等を、粉状のCaO源として用いてもよい(CaCO3→CaO+CO2)。
本実施形態においては、粉状のCaO源として、CaO濃度が高い生石灰(焼石灰)、(主成分:CaO)を用いることとしている。また、生石灰以外については、消石灰(主成分:CaCO3)等を、粉状のCaO源として用いてもよい(CaCO3→CaO+CO2)。
表1に、投入する副原料の各濃度を示す。
溶銑Yの脱りん処理を実施する場合、溶銑中[Si]濃度に依存して、以下の(i)〜(iii)に示す反応が進行するようになっている。
(i) [Si]が0.10mass%以上のとき:脱りん反応はほとんど起こらず、脱珪反応が優先的に進行する。ここを、本実施形態における、脱[Si]が主である第1段階とする。
(ii) [Si]が0.05mass%以上0.10mass%未満のとき:脱珪反応とともに、脱炭反応、脱りん反応が進行し始める。ここは、第1段階から第2段階への移行期である。
(i) [Si]が0.10mass%以上のとき:脱りん反応はほとんど起こらず、脱珪反応が優先的に進行する。ここを、本実施形態における、脱[Si]が主である第1段階とする。
(ii) [Si]が0.05mass%以上0.10mass%未満のとき:脱珪反応とともに、脱炭反応、脱りん反応が進行し始める。ここは、第1段階から第2段階への移行期である。
(iii) [Si]が0.00mass%超0.05mass%未満のとき:脱珪反応は終了し、脱炭反応、脱りん反応が主体となり進行する。ここを、本実施形態における、脱[P]が主である第2段階とする。
・脱珪反応:Si+2O=(SiO2) or Si+2O+(CaO)=(CaO-SiO2)
なお、上の式は、通常の式の表記ではなく、説明する上での表記である。
・脱珪反応:Si+2O=(SiO2) or Si+2O+(CaO)=(CaO-SiO2)
なお、上の式は、通常の式の表記ではなく、説明する上での表記である。
・脱炭反応:C+O=CO(g)
・脱りん反応:2P+5O=(P2O5) or 2P+5O+3(CaO)=(3CaO・P2O5),2P+5O+4(CaO)=(4CaO・P2O5)
上記の反応に関しては、例えば、参考文献:Tetsu-to-Hagane,73(1987),P1567-P1574.参照するとよい。
・脱りん反応:2P+5O=(P2O5) or 2P+5O+3(CaO)=(3CaO・P2O5),2P+5O+4(CaO)=(4CaO・P2O5)
上記の反応に関しては、例えば、参考文献:Tetsu-to-Hagane,73(1987),P1567-P1574.参照するとよい。
ただし、パラメータMは、溶銑Y中を示す。本実施形態においては、M=Si,P,Oなどである。また、パラメータMOXは、スラグZ中を示す。本実施形態においては、MOX=CaO,SiO2,P2O5,3CaO・P2O5,4CaO・P2O5,FeOなどである。
ところで、脱りん反応が起こり始めるのは、溶銑中[Si]濃度が、0.10mass%未満になってからである。
ところで、脱りん反応が起こり始めるのは、溶銑中[Si]濃度が、0.10mass%未満になってからである。
そのため、図2に示すように、本実施形態においては、脱りん反応よりも脱珪反応が主である、処理開始〜処理前半の期間である第1段階と、脱りん反応が主となる、処理中盤・後半〜処理終了の期間である第2段階とで、酸素ガスの吹き込む条件を大きく変更し、処理全体を通じて全CaO源の反応効率を向上させた上で低りん化するために、各処理条件を設定することとしている。
なお、第1段階においては、脱珪反応を効率的且つ、速やかに進行させるとともに、第2段階への移行に適した条件としている。また、第2段階においては、脱りんに有利なスラグZを生成させるとともに、脱りん反応を効率的に進行させるのに適した条件としている。
また、脱りん処理において粉状CaOの吹き込みを実施しているため、脱りん効率は高いものの、更なる脱りん効率及び鉄分歩留の向上のためには、攪拌強化による溶銑Y及びスラグZ中の物質移動促進や、溶銑−スラグ反応界面積の増加が大きく影響することに着目して検討を重ね、その結果、上底吹き攪拌方法の最適条件を見出した。
また、脱りん処理において粉状CaOの吹き込みを実施しているため、脱りん効率は高いものの、更なる脱りん効率及び鉄分歩留の向上のためには、攪拌強化による溶銑Y及びスラグZ中の物質移動促進や、溶銑−スラグ反応界面積の増加が大きく影響することに着目して検討を重ね、その結果、上底吹き攪拌方法の最適条件を見出した。
なお、本実施形態では、脱りん処理前に、[C]i≧4mass%、[Si]i≧0.10mass%、かつ、[P]i≧0.080mass%を含む溶銑Yに対して、脱りん処理後に、[C]f≧2.5mass%、[Si]f≦0.05mass%、かつ、[P]f≦0.060mass%となる脱りん処理を対象としている。
また、本実施形態で表記する添え字については、以下の通りである。
(添え字i)は、脱りん処理前(装入溶銑)のことである。
また、本実施形態で表記する添え字については、以下の通りである。
(添え字i)は、脱りん処理前(装入溶銑)のことである。
(添え字f)は、脱りん処理後(出湯溶銑)のことである。
(添え字1)は、溶銑中[Si]濃度が0.10mass%以上である脱りん処理開始〜処理前半の期間、つまり第1段階のことである。
(添え字2)は、溶銑中[Si]濃度が0.03mass%より大きく0.12mass%未満である脱りん処理中盤、乃至は、脱りん処理後半〜処理終了の期間、つまり第2段階のことである。
(添え字1)は、溶銑中[Si]濃度が0.10mass%以上である脱りん処理開始〜処理前半の期間、つまり第1段階のことである。
(添え字2)は、溶銑中[Si]濃度が0.03mass%より大きく0.12mass%未満である脱りん処理中盤、乃至は、脱りん処理後半〜処理終了の期間、つまり第2段階のことである。
(添え字w)は、底吹きガス流量QBが少ない期間、つまり弱攪拌の期間のことである。
(添え字s)は、底吹きガス流量QBが多い期間、つまり強攪拌の期間のことである。
また、パラメータQBは、溶銑1tあたりの底吹きガス流量(Nm3/min/t)を示し、(QB=Qb/Wm)から導き出される。なお、パラメータWmは、溶銑重量を示し、Wm=Wm,iを用いることとしている。
(添え字s)は、底吹きガス流量QBが多い期間、つまり強攪拌の期間のことである。
また、パラメータQBは、溶銑1tあたりの底吹きガス流量(Nm3/min/t)を示し、(QB=Qb/Wm)から導き出される。なお、パラメータWmは、溶銑重量を示し、Wm=Wm,iを用いることとしている。
パラメータQtは、上吹き酸素ガス流量(Nm3/min) を示し、上吹きランス2に複数個備えられているノズル孔から吐出されるガスの総流量を示す。
パラメータΔtは、強攪拌時の底吹きガス流量QB,s(Nm3/min)と、弱攪拌時の底吹きガス流量QB,w(Nm3/min) の切り替え時期、すなわち、強攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,s(Nm3/min/t)と、弱攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,w(Nm3/min/t)の切り替え時期(min)を示す。この切り替え時期Δtは、強攪拌又は弱攪拌での維持時間と言い換えることもできる。
パラメータΔtは、強攪拌時の底吹きガス流量QB,s(Nm3/min)と、弱攪拌時の底吹きガス流量QB,w(Nm3/min) の切り替え時期、すなわち、強攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,s(Nm3/min/t)と、弱攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,w(Nm3/min/t)の切り替え時期(min)を示す。この切り替え時期Δtは、強攪拌又は弱攪拌での維持時間と言い換えることもできる。
さて、脱珪反応・脱りん反応や、スラグZ中FeOの還元反応(鉄分回収)を、速やかに進行させるためには、溶銑YとスラグZの攪拌を十分に行うことが重要である。従来より、転炉型反応容器1の底部に、底吹きノズル4を複数個備えた底吹き羽口3を設置し、その底吹きノズル4から大量のガス(不活性ガス)を吹き込むことによる吹きガス強攪拌が実施されている。
ところで、上吹きランス2から吹き込む酸素ガスで攪拌をしようとしても、そのガス流量が脱炭吹錬時よりも少ないため、この上吹きガス攪拌の手段だけでは、十分な溶銑Yの攪拌を期待することはできない。
また、脱珪処理・脱りん処理時の溶銑温度は、脱炭吹錬時の溶銑・溶鋼温度に比べると低いものである。とは言え、脱珪処理・脱りん処理時の溶銑温度は1200℃以上あり、底吹き羽口3(底吹きノズル4)にとっては、高温場の厳しい環境下である。そのため、1個の底吹きノズル4から大量のガスを吹き込んだ操業を継続すると、底吹き羽口3の溶損速度を速めることとなる。特に、転炉を使用する回数が多くなったときには、底吹きノズル4を余儀なく閉塞させてしまうことが考えられる。その結果、底吹きガス流量が大幅に少なくなってしまい、脱りん石灰効率や鉄分歩留が低下しまう虞がある。
また、脱珪処理・脱りん処理時の溶銑温度は、脱炭吹錬時の溶銑・溶鋼温度に比べると低いものである。とは言え、脱珪処理・脱りん処理時の溶銑温度は1200℃以上あり、底吹き羽口3(底吹きノズル4)にとっては、高温場の厳しい環境下である。そのため、1個の底吹きノズル4から大量のガスを吹き込んだ操業を継続すると、底吹き羽口3の溶損速度を速めることとなる。特に、転炉を使用する回数が多くなったときには、底吹きノズル4を余儀なく閉塞させてしまうことが考えられる。その結果、底吹きガス流量が大幅に少なくなってしまい、脱りん石灰効率や鉄分歩留が低下しまう虞がある。
また、底吹きガス流量を増加させた時には、ガスそのものの使用量が増加するといった、脱りん処理に関するコストが嵩んでしまうことなどのコスト面の不具合が生じるとともに、溶銑Y・スラグZの飛散(スピッティング、スプラッシュ、ダストなど)が発生してしまい、鉄分損失・CaO損失が多くなってしまう虞がある。その上、上吹きランス2の昇降不良等の操業トラブルが発生する可能性が高く、脱珪反応・脱りん反応の問題のみならず、操業上の問題も生じるので、底吹きガス流量を、単純に増加させることは好ましくない。
なお、転炉型反応容器1の底部における物理的制約(底部近傍の広さ等)、及び、出鋼時等の操業上の制約などから、底吹き羽口3の設置場所、底吹きノズル4の個数に制限が設けられることとなる。
従って、従来手法である、底吹きガス流量を増加させる転炉底吹きガス攪拌方法では、溶銑Y・スラグZの攪拌の更なる改善は、困難であるという技術的背景が存在した。
従って、従来手法である、底吹きガス流量を増加させる転炉底吹きガス攪拌方法では、溶銑Y・スラグZの攪拌の更なる改善は、困難であるという技術的背景が存在した。
そこで、本発明では、溶銑Y・スラグZの流れの不規則性が、攪拌・混合にとって非常に有利に働く現象(乱流攪拌)に着目して検討を重ね、その結果、底吹きガス流量が少なくても、大きな攪拌エネルギーが得られる、溶銑Yの脱りん方法を見出した。
具体的には、水モデル実験において、強攪拌の期間における底吹きガス流量Qb,sと、弱攪拌の期間における底吹きガス流量Qb,wの比(Qb,s/Qb,w)、及び、各攪拌の切り替え時間Δtをパラメータと定義して、それらパラメータを変化させて検討した。
具体的には、水モデル実験において、強攪拌の期間における底吹きガス流量Qb,sと、弱攪拌の期間における底吹きガス流量Qb,wの比(Qb,s/Qb,w)、及び、各攪拌の切り替え時間Δtをパラメータと定義して、それらパラメータを変化させて検討した。
その結果、弱攪拌の期間における底吹きガス流量Qb,wと強攪拌の期間における底吹きガス流量Qb,sを、定期的(周期的)に切り替える攪拌強度切換操作、すなわち、非定常操作を利用することで、水A(溶銑Yに例えたもの)−スラグ模擬剤Bの攪拌、特にスラグ模擬剤Bの攪拌(水−スラグ模擬剤界面の乱れの増加を含む)が促進されることとなるので、混合時間tmが短くなり、効果的に攪拌できることを知見した。ただし、底吹きガス流量Qbの切り替え条件(Qb,s/Qb,w、Δt)を適正にする必要がある。なお、水モデル実験の条件、結果等の詳細は、後で述べることとする。
以上述べた水モデル実験の知見を実機に応用した実験の結果、脱珪反応・脱りん反応や、スラグZ中FeOの還元反応を促進させることができた(詳細は後述)。また、水モデル実験と同様に、底吹きガス流量Qbの切り替え条件が適正でなければならないことも確認した。
なぜならば、CaO、SiO2、FeOを効率良く反応させても、CaO-SiO2-FeO系スラグを速やかに生成できない場合、局所的にスラグ中のSiO2、FeO濃度が高いスラグZが生成されて、スラグフォーミング現象(脱炭反応が起こる頻度が多くなり、 生成したCOガス気泡に起因してスラグZが泡立つ現象)が起こってしまい、攪拌不良に繋がる。それ故、脱珪反応・脱りん反応の進行が難しくなる。
なぜならば、CaO、SiO2、FeOを効率良く反応させても、CaO-SiO2-FeO系スラグを速やかに生成できない場合、局所的にスラグ中のSiO2、FeO濃度が高いスラグZが生成されて、スラグフォーミング現象(脱炭反応が起こる頻度が多くなり、 生成したCOガス気泡に起因してスラグZが泡立つ現象)が起こってしまい、攪拌不良に繋がる。それ故、脱珪反応・脱りん反応の進行が難しくなる。
なお、溶銑Yの底吹きノズル4への差し込み(底吹きノズル4への侵入)を防止するために、通常弱攪拌時においては、底吹きガス流量QB,w=0では操業していない。つまり、底吹きガスQB,wを全く吹き込まないことではなく、ほんの少しだけ(微量)、溶銑Yに吹き込むこととしている。
ところで、弱攪拌の期間における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量(Nm3/min/t)を、QB,w<0.075とした場合、ガス流量が少なすぎるので、脱珪・脱りんの反応促進効果が得られなく、適さない。
ところで、弱攪拌の期間における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量(Nm3/min/t)を、QB,w<0.075とした場合、ガス流量が少なすぎるので、脱珪・脱りんの反応促進効果が得られなく、適さない。
また、弱攪拌の期間における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量(Nm3/min/t)を、QB,w>0.135とした場合、脱珪反応・脱りん反応の進行に問題ないが、強攪拌の期間における底吹きガス流量QB,sとの比(QB,s/QB,w)、あるいは、QB,w・QB,sの変化幅が小さくなる(強攪拌との差が小さくなる)ため、スラグZ中FeOの還元促進効果が得られない。
一方で、強攪拌の期間における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量(Nm3/min/t)を、QB,s<0.17とした場合、ガス流量が少なすぎるので、脱珪・脱りんの反応促進効果が得られなく、適さない。
一方で、強攪拌の期間における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量(Nm3/min/t)を、QB,s<0.17とした場合、ガス流量が少なすぎるので、脱珪・脱りんの反応促進効果が得られなく、適さない。
また、強攪拌の期間における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量(Nm3/min/t)を、QB,s>0.34とした場合、ガス流量が多すぎるので、溶銑Y・スラグZの飛散(スピッティング、スプラッシュ、ダストなど)が発生してしまい、脱珪・脱りんの反応促進効果が得られなく、適さない。
弱攪拌と強攪拌の切り換え時期(攪拌持続時間)(min)を、Δt<0.5とした場合、脱珪反応・脱りん反応の進行に問題ないが、切り替え操作による攪拌エネルギーの増加がほとんどないため、スラグZ中FeOの還元促進効果が得られなく、適さない。
弱攪拌と強攪拌の切り換え時期(攪拌持続時間)(min)を、Δt<0.5とした場合、脱珪反応・脱りん反応の進行に問題ないが、切り替え操作による攪拌エネルギーの増加がほとんどないため、スラグZ中FeOの還元促進効果が得られなく、適さない。
一方で、弱攪拌と強攪拌の切り換え時期(min)を、Δt>1.5とした場合、QB,w=一定、あるいは、QB,s=一定、あるいは、そのQB,w、QB,sの中間をとった程度の攪拌となり、切り替え操作による攪拌エネルギーの増加がほとんどないため、反応促進効果が得られなく、適さない。
以上より、図3に示すように、脱りん処理の工程では、溶銑1tあたりの底吹きガス(不活性ガス)の流量QB(Nm3/min/t)を、0.075以上0.135以下の範囲と設定した弱攪拌(QB,w)と、0.17以上0.34以下の範囲と設定した強攪拌(QB,s)とで切り替えるようにしている。ただし、弱攪拌と強攪拌の攪拌持続時間(切り換え時期)Δtを、0.5min以上1.5min以下としている。
以上より、図3に示すように、脱りん処理の工程では、溶銑1tあたりの底吹きガス(不活性ガス)の流量QB(Nm3/min/t)を、0.075以上0.135以下の範囲と設定した弱攪拌(QB,w)と、0.17以上0.34以下の範囲と設定した強攪拌(QB,s)とで切り替えるようにしている。ただし、弱攪拌と強攪拌の攪拌持続時間(切り換え時期)Δtを、0.5min以上1.5min以下としている。
上述の通り、強攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,sと、弱攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,wを、定期的(Δtごと)に切り替える攪拌操作が、溶銑Yの脱りん処理において、重要である。
このことより、強攪拌時の底吹きガス流量QB,sと弱攪拌時の底吹きガス流量QB,w比、QB,s/QB,wも、適正にする必要がある。
このことより、強攪拌時の底吹きガス流量QB,sと弱攪拌時の底吹きガス流量QB,w比、QB,s/QB,wも、適正にする必要がある。
ここで、上で述べた溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,w(Nm3/min/t)を、0.075以上0.135以下の範囲とした弱攪拌と、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,s(Nm3/min/t)を、0.17以上0.34以下の範囲とした強攪拌から、そのQB,w、QB,sの変化幅を読み取ると、変化幅が1.26以上4.53以下となることがわかる。なお、上限値に関しては、上の閾値で作用効果を確認することができたが、下限値については以下の通り、少し大きい閾値とすることで作用効果を確認することができた。
強攪拌時の溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,sと、弱攪拌時の溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,w比を、QB,s/QB,w<1.7とした場合(QB,sが小さい、あるいは、QB,wが大きい場合)、脱珪反応・脱りん反応の進行に問題ないが、QB,w、QB,sの変化幅が小さいので、スラグZ中FeOの還元促進効果が得られなく、適さない。
また、強攪拌時の溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,sと弱攪拌時の溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,wの比を、QB,s/QB,w>4.5とした場合(QB,sが大きい、あるいは、QB,wが小さい場合)、脱珪反応・脱りん反応の進行に問題ないが、QB,w、QB,sの変化幅が大きいので、スラグZ中FeOの還元促進効果が得られなく、適さない。
また、強攪拌時の溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,sと弱攪拌時の溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,wの比を、QB,s/QB,w>4.5とした場合(QB,sが大きい、あるいは、QB,wが小さい場合)、脱珪反応・脱りん反応の進行に問題ないが、QB,w、QB,sの変化幅が大きいので、スラグZ中FeOの還元促進効果が得られなく、適さない。
以上より、強攪拌での溶銑1tあたりのガス流量QB,s(Nm3/min/t)と、弱攪拌時での溶銑1tあたりのガス流量QB,w(Nm3/min/t)との比であるQB,s/QB,w(-)を、1.7以上4.5以下としている。
ここで、脱りん処理後のスラグ塩基度(mass%CaO)/(mass%SiO2)について述べることとする。
ここで、脱りん処理後のスラグ塩基度(mass%CaO)/(mass%SiO2)について述べることとする。
まず、[Si]を含有する溶銑Yの脱りん処理では、CaO-SiO2-FeO-P2O5系のスラグが生成される。
上吹きランス2から気体の酸素ガスと、粉状のCaO源を溶銑面に噴射して、溶銑Y中に供給して、脱りん処理を行う場合、脱りん反応においては、例えば、以下の2つが挙げられる。
上吹きランス2から気体の酸素ガスと、粉状のCaO源を溶銑面に噴射して、溶銑Y中に供給して、脱りん処理を行う場合、脱りん反応においては、例えば、以下の2つが挙げられる。
(a)トランジトリー反応:溶銑Y中へ侵入するCaO粒子(CaO-FeO系)/溶銑界面
(b)パーマネント反応:トップスラグ(CaO-SiO2-FeO系)/溶銑界面
しかしながら、脱りん反応では、最終的に溶銑中[P]はトップスラグに吸収されるため、スラグ組成を脱りん能が高い適正範囲にすることは重要である。
その脱りん能は、脱りん処理終了後にスラグZを採取し分析して得られるCaO濃度とSiO2濃度との比、(mass%CaO)/(mass%SiO2)、所謂、スラグ塩基度で整理することができる(例えば、特開2003-13126号公報参照、(mass%CaO)/(mass%SiO2)=1.0〜3.0)。
(b)パーマネント反応:トップスラグ(CaO-SiO2-FeO系)/溶銑界面
しかしながら、脱りん反応では、最終的に溶銑中[P]はトップスラグに吸収されるため、スラグ組成を脱りん能が高い適正範囲にすることは重要である。
その脱りん能は、脱りん処理終了後にスラグZを採取し分析して得られるCaO濃度とSiO2濃度との比、(mass%CaO)/(mass%SiO2)、所謂、スラグ塩基度で整理することができる(例えば、特開2003-13126号公報参照、(mass%CaO)/(mass%SiO2)=1.0〜3.0)。
さて、脱りん処理後のスラグ塩基度が(mass%CaO)/(mass%SiO2)<1.4の場合、脱りん能が小さく、(a)に挙げたトランジトリー反応により、脱りん反応が促進されても、トップスラグで復りんが起こってしまうため、脱りん促進効果が無く、適さない。
溶銑Yの脱りん処理時の処理温度は、一般的に1250〜1400℃であるが、この温度領域では蛍石(CaF2)等の媒溶剤を添加しなければ、(mass%CaO)/(mass%SiO2)>2.3を実現することが難しい。たとえ、仮にスラグ塩基度を前述のように実現できたとしても、脱りん促進効果は飽和してしまうか、弊害が起こる。
溶銑Yの脱りん処理時の処理温度は、一般的に1250〜1400℃であるが、この温度領域では蛍石(CaF2)等の媒溶剤を添加しなければ、(mass%CaO)/(mass%SiO2)>2.3を実現することが難しい。たとえ、仮にスラグ塩基度を前述のように実現できたとしても、脱りん促進効果は飽和してしまうか、弊害が起こる。
また、上述の脱りん処理においては、CaO投入量が多くなるため、生成されるスラグZが増加してしまうこととなるので、溶銑Yの製造コストの増大を招くといった問題が生じる。それに加えて、未滓化CaOが多く存在することとなり、スラグ冷却後に水和反応により、その未滓化CaOが膨張するため、スラグZを利材化時に問題となる。
従って、脱りん処理後のスラグ塩基度(mass%CaO)/(mass%SiO2)を、1.4以上2.3以下の範囲とする必要がある。
従って、脱りん処理後のスラグ塩基度(mass%CaO)/(mass%SiO2)を、1.4以上2.3以下の範囲とする必要がある。
なお、本実施形態における脱りん処理方法の可否(精錬特性の評価)については、脱りん石灰効率ηP-CaO(%)、及び、鉄分歩留ηFe(%)を用いて、評価することとしている。
脱りん石灰効率ηP-CaOは、投入した全CaOの内、2P+5O+3(CaO)=(3CaO・P2O5)として、脱りん反応に寄与したCaOの割合を示す指数である。この脱りん石灰効率ηP-CaOの値が高いほど、石灰が効果的に使用されており、[P]の酸化反応、すなわち、脱りん反応が促進される(脱りん効率が優れている)ことを意味する。また、鉄分歩留ηFeの値が高いほど、脱りん処理に伴う鉄分損失が少ない(鉄分歩留が優れている)ことを意味する。
脱りん石灰効率ηP-CaOは、投入した全CaOの内、2P+5O+3(CaO)=(3CaO・P2O5)として、脱りん反応に寄与したCaOの割合を示す指数である。この脱りん石灰効率ηP-CaOの値が高いほど、石灰が効果的に使用されており、[P]の酸化反応、すなわち、脱りん反応が促進される(脱りん効率が優れている)ことを意味する。また、鉄分歩留ηFeの値が高いほど、脱りん処理に伴う鉄分損失が少ない(鉄分歩留が優れている)ことを意味する。
以下に、脱りん石灰効率ηP-CaO(%)の求め方を示す。
ただし、
56(kg/kmol):CaOのモル質量
31(kg/kmol):Pのモル質量
WCaO(kg/t):溶銑1tあたり、脱りん剤(副原料)中CaO分から計算されるCaO原単位
WCaO=炉上投入による焼石灰投入量(kg)/Wm×焼石灰中CaO濃度(mass%)+炉上投入によるミルスケール投入量(kg)/Wm×ミルスケール中CaO濃度(mass%)+炉上投入による鉄鉱石投入量(kg)/Wm×鉄鉱石中CaO濃度(mass%)+吹き込み投入による粉状CaO源投入量(kg)/Wm×粉状CaO源中CaO濃度(mass%)+その他のCaO源の投入量(kg)/Wm
ところで、上式中の「その他のCaO源」は、リサイクルスラグ(転炉スラグ等)、焼結鉱、集塵ダスト等である。また、CaOを含む副原料を装入した場合は、その副原料中のCaO分を加える。なお、後述する実施例では、前述のものを投入していない。また、溶銑重量Wm(t)に関しては、Wm=Wm,iを用いることとしている。
56(kg/kmol):CaOのモル質量
31(kg/kmol):Pのモル質量
WCaO(kg/t):溶銑1tあたり、脱りん剤(副原料)中CaO分から計算されるCaO原単位
WCaO=炉上投入による焼石灰投入量(kg)/Wm×焼石灰中CaO濃度(mass%)+炉上投入によるミルスケール投入量(kg)/Wm×ミルスケール中CaO濃度(mass%)+炉上投入による鉄鉱石投入量(kg)/Wm×鉄鉱石中CaO濃度(mass%)+吹き込み投入による粉状CaO源投入量(kg)/Wm×粉状CaO源中CaO濃度(mass%)+その他のCaO源の投入量(kg)/Wm
ところで、上式中の「その他のCaO源」は、リサイクルスラグ(転炉スラグ等)、焼結鉱、集塵ダスト等である。また、CaOを含む副原料を装入した場合は、その副原料中のCaO分を加える。なお、後述する実施例では、前述のものを投入していない。また、溶銑重量Wm(t)に関しては、Wm=Wm,iを用いることとしている。
以下に、鉄分歩留ηFe(%)の求め方を示す。
ただし、
WFe,i(t):装入溶銑中全鉄分及び副原料中全鉄分、その他の装入した鉄分
WFe,i=(100−[C]i−[Si]i−[Mn]i−[P]i)/100×Wm,i+ミルスケール装入量(kg)/1000(kg/t)×ミルスケール中鉄分濃度(mass%)/100+鉄鉱石装入量(kg)/1000(kg/t)×鉄鉱石中鉄分濃度(mass%)/100+吹き込み用固体酸素源装入量(kg)/1000(kg/t)×固体酸素源中鉄分濃度(mass%)/100+その他の装入した鉄分(t)
ところで、上式中の「その他の装入した鉄分」は、屑鉄、冷銑等、溶銑Y以外の鉄原料や、リサイクルスラグ、焼結鉱、集塵ダスト等である。また、ミルスケール、鉄鉱石以外の副原料を装入した場合は、そこに含まれる鉄分を加える。なお、後述する実施例では、前述のものを投入していない。
WFe,i(t):装入溶銑中全鉄分及び副原料中全鉄分、その他の装入した鉄分
WFe,i=(100−[C]i−[Si]i−[Mn]i−[P]i)/100×Wm,i+ミルスケール装入量(kg)/1000(kg/t)×ミルスケール中鉄分濃度(mass%)/100+鉄鉱石装入量(kg)/1000(kg/t)×鉄鉱石中鉄分濃度(mass%)/100+吹き込み用固体酸素源装入量(kg)/1000(kg/t)×固体酸素源中鉄分濃度(mass%)/100+その他の装入した鉄分(t)
ところで、上式中の「その他の装入した鉄分」は、屑鉄、冷銑等、溶銑Y以外の鉄原料や、リサイクルスラグ、焼結鉱、集塵ダスト等である。また、ミルスケール、鉄鉱石以外の副原料を装入した場合は、そこに含まれる鉄分を加える。なお、後述する実施例では、前述のものを投入していない。
WFe,f(t):出湯溶銑中全鉄分
WFe,f=(100−[C]f−[Si]f−[Mn]f−[P]f)/100×Wm,f
以上より、脱りん処理後における、スラグ塩基度(mass%CaO)/(mass%SiO2)を、1.4以上2.3以下と規定している。
なお、図6に、本発明の溶銑Yの脱りん方法を行う手順のフローチャートを示しており、それに従って脱りん処理を行うようにするとよい。
[実験例]
まず、水モデル実験の実施条件について述べることとする。
WFe,f=(100−[C]f−[Si]f−[Mn]f−[P]f)/100×Wm,f
以上より、脱りん処理後における、スラグ塩基度(mass%CaO)/(mass%SiO2)を、1.4以上2.3以下と規定している。
なお、図6に、本発明の溶銑Yの脱りん方法を行う手順のフローチャートを示しており、それに従って脱りん処理を行うようにするとよい。
[実験例]
まず、水モデル実験の実施条件について述べることとする。
図4に示すように、水モデル実験の例においては、転炉型反応容器1として、上部の内径(静止浴面直径)が0.645mで、底部の内径が0.568mとされ、その底部に底吹きノズル7を4個備えている底吹き羽口6が設けられた、アクリル製容器5を使用した。
なお、溶銑Yの脱りん処理では、上吹き酸素ガスの流量が小さいので、上吹きランス2無しで水モデル実験を行った。
なお、溶銑Yの脱りん処理では、上吹き酸素ガスの流量が小さいので、上吹きランス2無しで水モデル実験を行った。
溶銑Yに例えた水A(容積、62L)を注入して、水深を0.280mとした。また、スラグ模擬剤Bについて、底吹きノズル7からガスを吹き込んだ状態で洗剤(2mL)を投入し、泡を形成・成長させ、それをスラグ模擬剤Bとした。スラグ模擬剤Bの厚みを0.184mとした。
攪拌操作については、以下に示すようにした。
底吹きガス流量に関して、弱攪拌Qb,w=6〜36NL/minと設定し、弱攪拌時において、設定した流量のガスを底吹きノズル7から吹き込んだ。また、強攪拌Qb,s=36NL/minと設定し、強攪拌時において、設定した流量のガスを底吹きノズル7から吹き込んだ。
攪拌操作については、以下に示すようにした。
底吹きガス流量に関して、弱攪拌Qb,w=6〜36NL/minと設定し、弱攪拌時において、設定した流量のガスを底吹きノズル7から吹き込んだ。また、強攪拌Qb,s=36NL/minと設定し、強攪拌時において、設定した流量のガスを底吹きノズル7から吹き込んだ。
水A(溶銑Y)及びスラグ模擬剤Bの攪拌においては、容器5の底部に設けられた底吹き羽口6の底吹きノズル7から、空気(Air)を導入した。
また、各攪拌の切り替え時期(攪拌持続時間)Δt=0〜2minとした。なお、攪拌の変更無しの場合は10minとした。なお、切り替え時期に関し、弱攪拌時の底吹きガス流量Qb,wと、強攪拌時の底吹きガス流量Qb,sを測定しているときにおいて、Δt毎に切り替えた。なお、測定方法は下記に示す。
また、各攪拌の切り替え時期(攪拌持続時間)Δt=0〜2minとした。なお、攪拌の変更無しの場合は10minとした。なお、切り替え時期に関し、弱攪拌時の底吹きガス流量Qb,wと、強攪拌時の底吹きガス流量Qb,sを測定しているときにおいて、Δt毎に切り替えた。なお、測定方法は下記に示す。
水A(溶銑Y)−スラグ模擬剤Bの攪拌・混合の評価について、以下に示すようにした。
スラグ模擬剤Bの最上層部に、KClトレーサーを一括添加し、スラグ模擬剤Bを介してのKClトレーサー移動を、水Aの電気伝導度の経時変化により15min間測定し、水Aの電気伝導度が一定になるのに要した時間tmを求めた。
tmは、水モデル実験における混合時間(水A−スラグ模擬剤B間の攪拌・混合特性を表す)を示す。なお以降、混合時間tmと呼ぶこととする。
スラグ模擬剤Bの最上層部に、KClトレーサーを一括添加し、スラグ模擬剤Bを介してのKClトレーサー移動を、水Aの電気伝導度の経時変化により15min間測定し、水Aの電気伝導度が一定になるのに要した時間tmを求めた。
tmは、水モデル実験における混合時間(水A−スラグ模擬剤B間の攪拌・混合特性を表す)を示す。なお以降、混合時間tmと呼ぶこととする。
KClトレーサーとしては、KCl被覆発泡ポリスチレン粒子(40g)で、粒径1mm以下、かさ密度30kg/m3のものを用いた。
次に、水モデル実験の結果について説明する。
表2に、水モデル実験の結果を示す。なお、表2中の実施例(No.101-105)は、本発明の脱りん処理方法に従って行った水モデル実験の結果を示す。また、比較例(No.106-111)は、比較するために行った、水モデル実験の結果を示す。
次に、水モデル実験の結果について説明する。
表2に、水モデル実験の結果を示す。なお、表2中の実施例(No.101-105)は、本発明の脱りん処理方法に従って行った水モデル実験の結果を示す。また、比較例(No.106-111)は、比較するために行った、水モデル実験の結果を示す。
実施例(No.101-105)に示す如く、Δt(=0.5min以上1.5min以下)を満たすとともに、QB,s/QB,w(=1.7以上4.5以下)を満たす、すなわち、強攪拌時の底吹きガス流量と弱攪拌時の底吹きガス流量に十分に差をつけて攪拌を行うと、図5に示すように、とともに、混合時間tmが短くなるとともに、効果的に攪拌・混合できる、良好な結果となった。
一方で、比較例(No.106,107) は、QB,s/QB,wが満たしていない。比較例(No.108,109) は、Δtが満たしていない。比較例(No.110,111) は、強攪拌と弱攪拌を切り換えていない。以上、比較例によれば、一つでも閾値を満たしていないと、混合時間tmも長くなり、且つ攪拌・混合が効果的にされない、不良な結果となった。
一方で、比較例(No.106,107) は、QB,s/QB,wが満たしていない。比較例(No.108,109) は、Δtが満たしていない。比較例(No.110,111) は、強攪拌と弱攪拌を切り換えていない。以上、比較例によれば、一つでも閾値を満たしていないと、混合時間tmも長くなり、且つ攪拌・混合が効果的にされない、不良な結果となった。
続いて、実機実験の実施条件について述べることとする。
本実機実験においては、転炉型反応容器1として、250t規模の転炉(脱りん炉)を使用した。その転炉型反応容器1の直径(静止湯面直径)は、5.10mである。なお、本実機実験においては、転炉炉内耐火物の損耗状況により若干変化するが、転炉型反応容器1の直径を一律に5.10m(新炉時)としている。さて、高炉で製造された溶銑Yは、転炉に装入されて脱りん処理が行われる。
本実機実験においては、転炉型反応容器1として、250t規模の転炉(脱りん炉)を使用した。その転炉型反応容器1の直径(静止湯面直径)は、5.10mである。なお、本実機実験においては、転炉炉内耐火物の損耗状況により若干変化するが、転炉型反応容器1の直径を一律に5.10m(新炉時)としている。さて、高炉で製造された溶銑Yは、転炉に装入されて脱りん処理が行われる。
ここで、脱りん処理前の溶銑Yについて、溶銑重量Wm,i=264.7〜265.2tであった。なお、溶銑Yを、高炉→鋳床脱珪(任意)→溶銑脱硫(任意)→転炉の順で、搬送した。また、溶銑重量Wm,iについては、溶銑搬送用容器から転炉装入用溶銑鍋に払い出した時に、クレーンスケール値を記録した。
また、溶銑温度Tm,i=1588〜1598Kであった。
また、溶銑温度Tm,i=1588〜1598Kであった。
溶銑温度Tm,iについては、溶銑搬送用容器から転炉装入用溶銑鍋に払い出した直後の溶銑Yの温度を測定した。なお、溶銑温度Tm,iの測定について、高炉の操業状況や前工程により変動するが、比較的条件が等しい場合に実施した。
脱りん反応は、酸化反応であるので、総酸素量(気酸+固酸)が多いほど有利である、また、脱りん反応は発熱反応でもあるので、低温ほど有利である。
脱りん反応は、酸化反応であるので、総酸素量(気酸+固酸)が多いほど有利である、また、脱りん反応は発熱反応でもあるので、低温ほど有利である。
従って、各処理条件において、脱りん結果に大きく影響を及ぼす、総酸素量と、脱りん処理後の溶銑温度を同じとするように調整するため、処理前の溶銑温度も同じ方が比較しやすい。そのため、本実機実験では前述のように略同じとした。
また、脱りん処理前の溶銑中[M]i濃度については、以下の通りである。
・溶銑中[C]濃度、[C]i=4.40〜4.60mass%
・溶銑中[Si]濃度、[Si]i=0.30〜0.35mass%
・溶銑中[Mn]濃度、[Mn]i=0.25〜0.35mass%
・溶銑中[P]濃度、[P]i=0.121〜0.129mass%
なお、高炉の操業状況により変動するが、上述の前工程を経た中で比較的条件が等しい場合に、各濃度の測定を実施した。また、溶銑搬送用容器から転炉装入用溶銑鍋に払い出した直後の溶銑Yの一部を採取し、化学分析に供した。
また、脱りん処理前の溶銑中[M]i濃度については、以下の通りである。
・溶銑中[C]濃度、[C]i=4.40〜4.60mass%
・溶銑中[Si]濃度、[Si]i=0.30〜0.35mass%
・溶銑中[Mn]濃度、[Mn]i=0.25〜0.35mass%
・溶銑中[P]濃度、[P]i=0.121〜0.129mass%
なお、高炉の操業状況により変動するが、上述の前工程を経た中で比較的条件が等しい場合に、各濃度の測定を実施した。また、溶銑搬送用容器から転炉装入用溶銑鍋に払い出した直後の溶銑Yの一部を採取し、化学分析に供した。
ところで、脱りん処理の処理条件について、炉上から投入する脱りん剤(副原料)として、以下に示すものとした。
・焼石灰(塊状CaO)=190〜4140kg、大きさ5〜50mm
・ミルスケール=8900〜10550kg
・鉄鉱石=2000kg
上述した処理条件が決定されると、CaOの必要投入量が求まることとなる。そして、粉状CaO以外のものを、脱りん処理後の溶銑温度Tm,f=1598Kとなるように狙って、溶銑Yに投入した。なお、ミルスケールで温度調整を行った。鉄鉱石は、一律2000kg投入した。
・焼石灰(塊状CaO)=190〜4140kg、大きさ5〜50mm
・ミルスケール=8900〜10550kg
・鉄鉱石=2000kg
上述した処理条件が決定されると、CaOの必要投入量が求まることとなる。そして、粉状CaO以外のものを、脱りん処理後の溶銑温度Tm,f=1598Kとなるように狙って、溶銑Yに投入した。なお、ミルスケールで温度調整を行った。鉄鉱石は、一律2000kg投入した。
上で述べたものはいずれも、上吹きランス2から酸素ガスを溶銑Yへ吹き込みを開始する前、乃至は、吹錬進行度(予定されている必要送酸量に対する送酸量)の50%が経過するまでに投入した。
また、吹き込んで投入する脱りん剤(副原料)として、以下に示すものとした。
・焼石灰(粉状CaO)=1930〜2125kg、粒径3mmアンダー
粉状CaO吹き込み速度と処理時間から、粉状CaOの投入量が決定される。脱りん剤(炉上投入+吹き込み投入)中CaO分から計算されるCaO原単位、WCaO=12.1〜26.2kg/tである。
また、吹き込んで投入する脱りん剤(副原料)として、以下に示すものとした。
・焼石灰(粉状CaO)=1930〜2125kg、粒径3mmアンダー
粉状CaO吹き込み速度と処理時間から、粉状CaOの投入量が決定される。脱りん剤(炉上投入+吹き込み投入)中CaO分から計算されるCaO原単位、WCaO=12.1〜26.2kg/tである。
なお本実機実験においては、上吹きランス2の先端に備えられているノズル孔の形状について、以下に示す形状(Type1)を用いた。
・Type1:孔数nt=5、孔径dt=0.046mm、孔角度θt=15°、全断面積At=0.008m2
ノズル孔の形状に関しては、下記に示した従来技術以外にも多数開示されており、それらを参考にして、上述のように決定した(例えば、特開2015-140462号公報参照)。なお、一般的には、「第5版鉄鋼便覧I, 製銑・製鋼, 一般社団法人日本鉄鋼協会, P275.」
を参照して決められることもある。
・Type1:孔数nt=5、孔径dt=0.046mm、孔角度θt=15°、全断面積At=0.008m2
ノズル孔の形状に関しては、下記に示した従来技術以外にも多数開示されており、それらを参考にして、上述のように決定した(例えば、特開2015-140462号公報参照)。なお、一般的には、「第5版鉄鋼便覧I, 製銑・製鋼, 一般社団法人日本鉄鋼協会, P275.」
を参照して決められることもある。
さて、上吹きランス2のノズル孔(スロート部)の全断面積At(m2)については、以下に示す式を用いて求める。
ただし、
nt(個):上吹きランス2のノズル孔の数
(各ノズル孔から酸素ガスと粉状CaOが吹き込まれる)
dt(m):上吹きランス2のノズル孔の径(スロート径)
θt(°):上吹きランス2のノズル孔の角度
なお、パラメータθt(°)は、上吹きランス2の長手方向(軸心方向)に対するノズル孔の角度を示す。
nt(個):上吹きランス2のノズル孔の数
(各ノズル孔から酸素ガスと粉状CaOが吹き込まれる)
dt(m):上吹きランス2のノズル孔の径(スロート径)
θt(°):上吹きランス2のノズル孔の角度
なお、パラメータθt(°)は、上吹きランス2の長手方向(軸心方向)に対するノズル孔の角度を示す。
実操業では、ノズル孔の使用回数により、損耗で形状が変わる場合があるため、本実機実験においては、ノズル孔交換後の新品形状に近い状態のものを使用し、極力、形状変化の影響が無い条件で脱りん処理を実施した。
その上吹きランス2の高さH(m)を、以下に示す条件とした。
・第1段階、H1=2.5m
・第2段階、H2=3.5m
上述の高さH(m)は、上吹きランス2の先端に備えられたノズル孔(吐出部)から溶銑面(溶銑装入後であって、脱りん処理前における溶銑Yの高さ)までの距離を示すものである。言い換えれば、パラメータHは、酸素ガスと粉状CaOの吹き込み高さ(吐出高さ)を示すものといえる。
その上吹きランス2の高さH(m)を、以下に示す条件とした。
・第1段階、H1=2.5m
・第2段階、H2=3.5m
上述の高さH(m)は、上吹きランス2の先端に備えられたノズル孔(吐出部)から溶銑面(溶銑装入後であって、脱りん処理前における溶銑Yの高さ)までの距離を示すものである。言い換えれば、パラメータHは、酸素ガスと粉状CaOの吹き込み高さ(吐出高さ)を示すものといえる。
高さHについては、脱りん処理前に、マイクロ波等の光を溶銑面に照射させ、その測定値等に基づき設定することができる。
なお、転炉の形状(耐火物施工図面等)と溶銑重量Wから、溶銑深さ(図面上での位置関係)を算出することができるが、転炉炉内耐火物の損耗状況により若干変化することがある。そのため、本実機実験における脱りん処理の処理条件では、マイクロ波湯面レベル計を用いて測定した溶銑面(溶銑装入後の処理前の溶銑高さ位置)に対して、上吹きランス2を昇降させて、上吹きランス2の高さを制御した。
なお、転炉の形状(耐火物施工図面等)と溶銑重量Wから、溶銑深さ(図面上での位置関係)を算出することができるが、転炉炉内耐火物の損耗状況により若干変化することがある。そのため、本実機実験における脱りん処理の処理条件では、マイクロ波湯面レベル計を用いて測定した溶銑面(溶銑装入後の処理前の溶銑高さ位置)に対して、上吹きランス2を昇降させて、上吹きランス2の高さを制御した。
上吹きランス2から吹き込まれる酸素ガスの流量Qt(Nm3/min)を、以下に示す条件とした。
・第1段階、Qt,1=400Nm3/min
・第2段階、Qt,2=250Nm3/min
酸素ガスとして、純酸素を用いた。なお、脱珪反応を促進させるため、第1段階においては、酸素ガスの供給速度を大きくしている。また、スラグZ中FeOの高位維持と脱りん時間の確保のため、第2段階においては、酸素ガスの供給速度を小さくしている(例えば、特開2015-140462号公報、特開2015-113482号公報参照)。
・第1段階、Qt,1=400Nm3/min
・第2段階、Qt,2=250Nm3/min
酸素ガスとして、純酸素を用いた。なお、脱珪反応を促進させるため、第1段階においては、酸素ガスの供給速度を大きくしている。また、スラグZ中FeOの高位維持と脱りん時間の確保のため、第2段階においては、酸素ガスの供給速度を小さくしている(例えば、特開2015-140462号公報、特開2015-113482号公報参照)。
また、粉状CaOの吹き込み速度Fp(kg/min)を、以下に示す条件とした。
・第1段階、Fp,1=120kg/min
・第2段階、Fp,2=250kg/min
なお、粉状CaOが装入されている吹き込みタンクに設置されている重量計(ロードセル)を用いて、その粉状CaOの重量を検出し、その検出したデータより、粉状CaOの吹き込み速度を制御することができる。
・第1段階、Fp,1=120kg/min
・第2段階、Fp,2=250kg/min
なお、粉状CaOが装入されている吹き込みタンクに設置されている重量計(ロードセル)を用いて、その粉状CaOの重量を検出し、その検出したデータより、粉状CaOの吹き込み速度を制御することができる。
上述した酸素ガスと粉状CaOは、上吹きランス2の先端に設けられた同一のノズル孔から噴射される。なお、上吹きランス2からの酸素ガスの吹き込みを開始した直後(0〜1min後程度)から、粉状CaOの吹き込みを開始した。また、上吹きランス2から酸素ガスの吹き込みを終了する前(1〜2min前程度)までに、粉状CaOの吹き込みを終了した。
粉状CaOの吹き込み速度Fpは、粉状CaOが装入されている吹き込みタンク内の圧力と、粉状CaOが搬送される吹き込みラインの圧力の差から設定される。また、吹き込みタンクに設置している重量計の変化により、粉状CaOの吹き込み量を把握して、粉状CaOの吹き込み速度Fpを自動制御した。
粉状CaOの吹き込み速度Fpは、粉状CaOが装入されている吹き込みタンク内の圧力と、粉状CaOが搬送される吹き込みラインの圧力の差から設定される。また、吹き込みタンクに設置している重量計の変化により、粉状CaOの吹き込み量を把握して、粉状CaOの吹き込み速度Fpを自動制御した。
また、各攪拌時の底吹きガス流量Qb(Nm3/min)及び、各攪拌の切り替え時期(攪拌持続時間)Δtを、以下に示す条件とした。
・弱攪拌時、Qb,w=8〜60Nm3/min
・強攪拌時、Qb,s=25〜95Nm3/min
・切り替え時期、Δt=0〜2min
上でも述べたように、脱珪反応・脱りん反応や、スラグZ中FeOの還元反応(鉄分回収)を、速やかに進行させるためには、溶銑YとスラグZの攪拌を十分に行うことが重要である。
・弱攪拌時、Qb,w=8〜60Nm3/min
・強攪拌時、Qb,s=25〜95Nm3/min
・切り替え時期、Δt=0〜2min
上でも述べたように、脱珪反応・脱りん反応や、スラグZ中FeOの還元反応(鉄分回収)を、速やかに進行させるためには、溶銑YとスラグZの攪拌を十分に行うことが重要である。
弱攪拌時においては、その弱攪拌時におけるガスの流量Qb,wを適切に設定し、その設定値に基づいて、底吹き羽口3の底吹きノズル4から不活性ガス(N2)を、溶銑Yへ吹き込むこととした。また、強攪拌時においては、その強攪拌時におけるガス流量Qb,sを適切に設定し、その設定値に基づいて、底吹き羽口3の底吹きノズル4から不活性ガス(N2)を、溶銑Yへ吹き込むこととした。これら適切に設定したQb,wとQb,sを脱りん処理の終了まで、Δt毎に切り替えた。
さて、脱りん処理の時間を、以下に示す条件とした。
・全体の処理時間、τ=7.2〜8.0min
・第1段階の処理時間、τ1=1.7〜2.1min
・第2段階の処理時間、τ2=7.2〜8.0min
なお、全体の処理時間τ(min)は、上吹きランス2から吹き込まれる酸素ガスの供給開始時刻〜終了時刻の全処理時間を示す(τ=τ1+τ2)。また、処理時間τ1(min)は、第1段階での上吹きランス2から吹き込まれる酸素ガス(Qt,1)の供給時間を示す。処理時間τ2(min)は、第2段階での上吹きランス2から吹き込まれる酸素ガス(Qt,2)の供給時間を示す。
・全体の処理時間、τ=7.2〜8.0min
・第1段階の処理時間、τ1=1.7〜2.1min
・第2段階の処理時間、τ2=7.2〜8.0min
なお、全体の処理時間τ(min)は、上吹きランス2から吹き込まれる酸素ガスの供給開始時刻〜終了時刻の全処理時間を示す(τ=τ1+τ2)。また、処理時間τ1(min)は、第1段階での上吹きランス2から吹き込まれる酸素ガス(Qt,1)の供給時間を示す。処理時間τ2(min)は、第2段階での上吹きランス2から吹き込まれる酸素ガス(Qt,2)の供給時間を示す。
なお、全体の処理時間τは、上吹きランス2から吹き込まれる酸素ガスの流量パターンと、必要酸素ガス量により決定した。また、第1段階から第2段階への切り替え時期は、各段階の処理条件での[Si]calに基づき、決定した。そして、第1段階における酸素ガスの流量Qt,1と、[Si]cal(≒0.075mass%)から、第1段階の処理時間τ1を求めた。また、過去の操業実績から導出される必要送酸量、第1段階における酸素ガスの流量Qt,1、第1段階の処理時間τ1、及び、第2段階における酸素ガスの流量Qt,2から、第2段階の処理時間τ2を求めた。
脱りん処理の途中における溶銑中[Si]濃度(計算値)、[Si]cal(mass%)については、以下に示す式を用いて求める。
ただし、
[Si]i(mass%):脱りん処理前の溶銑中[Si]濃度
Qt,1(Nm3/min):第1段階での上吹きランス2から吹き込まれる酸素ガスの流量
τ1(min):第1段階での上吹きランス2から吹き込まれる酸素ガスの供給時間
ηSi(-):脱珪酸素効率(本実施形態における実施条件:ηSi=0.7)
22.4(Nm3/kmol):酸素ガスのモル体積
28(kg/kmol):Siのモル質量
Wm(t):溶銑重量(=Wm,i)
この[Si]calは、第1段階から第2段階への切り替え時期を決定するために必要な値であり、[Si]cal=0.03〜0.12mass%とするとよい。上吹きランス2の高さ、酸素ガスの流量、粉状CaOの吹き込み速度を、脱りん処理の途中で変更することで、[Si]calの値を導出する。
[Si]i(mass%):脱りん処理前の溶銑中[Si]濃度
Qt,1(Nm3/min):第1段階での上吹きランス2から吹き込まれる酸素ガスの流量
τ1(min):第1段階での上吹きランス2から吹き込まれる酸素ガスの供給時間
ηSi(-):脱珪酸素効率(本実施形態における実施条件:ηSi=0.7)
22.4(Nm3/kmol):酸素ガスのモル体積
28(kg/kmol):Siのモル質量
Wm(t):溶銑重量(=Wm,i)
この[Si]calは、第1段階から第2段階への切り替え時期を決定するために必要な値であり、[Si]cal=0.03〜0.12mass%とするとよい。上吹きランス2の高さ、酸素ガスの流量、粉状CaOの吹き込み速度を、脱りん処理の途中で変更することで、[Si]calの値を導出する。
ところで、脱りん処理の途中において、溶銑Yの一部を採取し、[Si]の濃度分析を行ってからでは、切り替え時期を逸してしまうため、脱りん処理の途中の溶銑中[Si]濃度、[Si]calを得て、切り替え時期を決定することとしている。
なお、炉(容器1)内に供給する酸素としては、酸素ガス(気酸)の他に、脱りん剤に含まれる酸素(固酸)もあるが、本実施形態においては、固酸については考慮しないこととしている。また、本実機実験の実施例と比較例においては、[Si]cal≒0.075とした。
なお、炉(容器1)内に供給する酸素としては、酸素ガス(気酸)の他に、脱りん剤に含まれる酸素(固酸)もあるが、本実施形態においては、固酸については考慮しないこととしている。また、本実機実験の実施例と比較例においては、[Si]cal≒0.075とした。
脱りん処理後の溶銑Yについて、溶銑重量Wm,f=260.5〜265.2tであった。
なお、溶銑Yを、転炉(脱りん炉)→転炉(脱炭炉)の順に、搬送した。また、溶銑重量Wm,fについて、転炉(脱りん炉)から転炉(脱炭炉)装入用溶銑鍋に出湯時に、クレーンスケール値を記録した。
また、溶銑温度Tm,f=1591〜1603Kであった。
なお、溶銑Yを、転炉(脱りん炉)→転炉(脱炭炉)の順に、搬送した。また、溶銑重量Wm,fについて、転炉(脱りん炉)から転炉(脱炭炉)装入用溶銑鍋に出湯時に、クレーンスケール値を記録した。
また、溶銑温度Tm,f=1591〜1603Kであった。
溶銑温度Tm,fについては、処理直後の転炉(容器1)内にある溶銑Yの温度を測定した。
脱りん処理後の溶銑中[M]f濃度については、以下の通りである。
・溶銑中[C]濃度、[C]f=3.57〜3.77mass%
・溶銑中[Si]濃度、[Si]f=0.01mass%
・溶銑中[Mn]濃度、[Mn]f=0.06〜0.15mass%
・溶銑中[P]濃度、[P]f=0.005〜0.050mass%
各濃度を測定するにあたり、脱りん処理直後の転炉(容器1)内にある溶銑Yの一部を採取し、化学分析に供した。なお、本実機実験における脱りん処理方法の可否は、精錬特性(脱りん石灰効率ηP-CaO、鉄分歩留ηFe)を用いて評価した。
脱りん処理後の溶銑中[M]f濃度については、以下の通りである。
・溶銑中[C]濃度、[C]f=3.57〜3.77mass%
・溶銑中[Si]濃度、[Si]f=0.01mass%
・溶銑中[Mn]濃度、[Mn]f=0.06〜0.15mass%
・溶銑中[P]濃度、[P]f=0.005〜0.050mass%
各濃度を測定するにあたり、脱りん処理直後の転炉(容器1)内にある溶銑Yの一部を採取し、化学分析に供した。なお、本実機実験における脱りん処理方法の可否は、精錬特性(脱りん石灰効率ηP-CaO、鉄分歩留ηFe)を用いて評価した。
脱りん処理後のスラグについて、実績スラグ塩基度(mass%CaO)/(mass%SiO2)=1.25〜2.60であった。
スラグ塩基度を測定するにあたり、脱りん処理直後の転炉(容器1)内にあるスラグZの一部を採取し、化学分析に供した。脱りん処理の処理条件(第1段階・第2段階)が適正なものであれば、実績スラグ塩基度≒配合スラグ塩基度となる。
スラグ塩基度を測定するにあたり、脱りん処理直後の転炉(容器1)内にあるスラグZの一部を採取し、化学分析に供した。脱りん処理の処理条件(第1段階・第2段階)が適正なものであれば、実績スラグ塩基度≒配合スラグ塩基度となる。
なお、後述する比較例においては、実績(処理後)スラグ塩基度が2.3を超えてしまっている場合、CaOの完全溶解は難しいので、未滓化CaO分を含むデータで示している。
次に、溶銑Yの脱りん方法の実機実験の結果について、図と表に従って説明する。
表3、表4に、本発明の溶銑Yの脱りん方法に従って処理を行った実機実験の結果を示す(実施例1〜22)。なお、表3、表4は、一続きのものであり、説明しやすくするため、2分割としている。また、表3〜表6中の評価について、本発明で規定した閾値を満足した場合○とし、それら閾値のうちどれか一つでも満足しなかった場合×とした。
次に、溶銑Yの脱りん方法の実機実験の結果について、図と表に従って説明する。
表3、表4に、本発明の溶銑Yの脱りん方法に従って処理を行った実機実験の結果を示す(実施例1〜22)。なお、表3、表4は、一続きのものであり、説明しやすくするため、2分割としている。また、表3〜表6中の評価について、本発明で規定した閾値を満足した場合○とし、それら閾値のうちどれか一つでも満足しなかった場合×とした。
表3、表4の実施例1を参照すると、弱攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,wが0.094Nm3/min/tであり、0.075以上0.135以下を満たす。また、強攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,sが0.226Nm3/min/tであり、0.17以上0.34以下を満たす。
また、弱攪拌と強攪拌の切り換え時期(攪拌持続時間)Δtが1.00minであり、0.5以上1.5以下を満たす。強攪拌時のガス流量と弱攪拌時のガス流量との比であるQB,s/QB,wが2.40(-)となり、1.7以上4.5以下を満たす。脱りん処理後のスラグ塩基度(mass%CaO)/(mass%SiO2)が1.80(-)となり、1.4以上2.3以下を満たす。すると、処理後[P]fが0.005mass%となり、脱りん石灰効率ηP-CaOが21.4(%)となり、鉄分歩留ηFeが98.8(%)となり、良好な結果が得られた。
また、弱攪拌と強攪拌の切り換え時期(攪拌持続時間)Δtが1.00minであり、0.5以上1.5以下を満たす。強攪拌時のガス流量と弱攪拌時のガス流量との比であるQB,s/QB,wが2.40(-)となり、1.7以上4.5以下を満たす。脱りん処理後のスラグ塩基度(mass%CaO)/(mass%SiO2)が1.80(-)となり、1.4以上2.3以下を満たす。すると、処理後[P]fが0.005mass%となり、脱りん石灰効率ηP-CaOが21.4(%)となり、鉄分歩留ηFeが98.8(%)となり、良好な結果が得られた。
実施例8を参照すると、弱攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,wが0.094Nm3/min/tであり、0.075以上0.135以下を満たす。また、強攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,sが0.226Nm3/min/tであり、0.17以上0.34以下を満たす。
また、弱攪拌と強攪拌の切り換え時期Δtが1.50minであり、0.5以上1.5以下を満たす。強攪拌時のガス流量と弱攪拌時のガス流量との比であるQB,s/QB,wが2.40(-)となり、1.7以上4.5以下を満たす。脱りん処理後のスラグ塩基度(mass%CaO)/(mass%SiO2)が1.80(-)となり、1.4以上2.3以下を満たす。すると、処理後[P]fが0.018mass%となり、脱りん石灰効率ηP-CaOが18.5(%)となり、鉄分歩留ηFeが98.5(%)となり、良好な結果が得られた。
また、弱攪拌と強攪拌の切り換え時期Δtが1.50minであり、0.5以上1.5以下を満たす。強攪拌時のガス流量と弱攪拌時のガス流量との比であるQB,s/QB,wが2.40(-)となり、1.7以上4.5以下を満たす。脱りん処理後のスラグ塩基度(mass%CaO)/(mass%SiO2)が1.80(-)となり、1.4以上2.3以下を満たす。すると、処理後[P]fが0.018mass%となり、脱りん石灰効率ηP-CaOが18.5(%)となり、鉄分歩留ηFeが98.5(%)となり、良好な結果が得られた。
実施例13を参照すると、弱攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,wが0.075Nm3/min/tであり、0.075以上0.135以下を満たす。また、強攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,sが0.321Nm3/min/tであり、0.17以上0.34以下を満たす。
また、弱攪拌と強攪拌の切り換え時期Δtが1.00minであり、0.5以上1.5以下を満たす。強攪拌時のガス流量と弱攪拌時のガス流量との比であるQB,s/QB,wが4.25(-)となり、1.7以上4.5以下を満たす。脱りん処理後のスラグ塩基度(mass%CaO)/(mass%SiO2)が1.80(-)となり、1.4以上2.3以下を満たす。すると、処理後[P]fが0.006mass%となり、脱りん石灰効率ηP-CaOが18.3(%)となり、鉄分歩留ηFeが99.0(%)となり、良好な結果が得られた。
また、弱攪拌と強攪拌の切り換え時期Δtが1.00minであり、0.5以上1.5以下を満たす。強攪拌時のガス流量と弱攪拌時のガス流量との比であるQB,s/QB,wが4.25(-)となり、1.7以上4.5以下を満たす。脱りん処理後のスラグ塩基度(mass%CaO)/(mass%SiO2)が1.80(-)となり、1.4以上2.3以下を満たす。すると、処理後[P]fが0.006mass%となり、脱りん石灰効率ηP-CaOが18.3(%)となり、鉄分歩留ηFeが99.0(%)となり、良好な結果が得られた。
実施例22を参照すると、弱攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,wが0.132Nm3/min/tであり、0.075以上0.135以下を満たす。また、強攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,sが0.227Nm3/min/tであり、0.17以上0.34以下を満たす。
また、弱攪拌と強攪拌の切り換え時期Δtが0.50minであり、0.5以上1.5以下を満たす。強攪拌時のガス流量と弱攪拌時のガス流量との比であるQB,s/QB,wが1.71(-)となり、1.7以上4.5以下を満たす。脱りん処理後のスラグ塩基度(mass%CaO)/(mass%SiO2)が1.40(-)となり、1.4以上2.3以下を満たす。すると、処理後[P]fが0.018mass%となり、脱りん石灰効率ηP-CaOが23.7(%)となり、鉄分歩留ηFeが98.7(%)となり、良好な結果が得られた。
また、弱攪拌と強攪拌の切り換え時期Δtが0.50minであり、0.5以上1.5以下を満たす。強攪拌時のガス流量と弱攪拌時のガス流量との比であるQB,s/QB,wが1.71(-)となり、1.7以上4.5以下を満たす。脱りん処理後のスラグ塩基度(mass%CaO)/(mass%SiO2)が1.40(-)となり、1.4以上2.3以下を満たす。すると、処理後[P]fが0.018mass%となり、脱りん石灰効率ηP-CaOが23.7(%)となり、鉄分歩留ηFeが98.7(%)となり、良好な結果が得られた。
以上より、表3、表4の実施例によれば、本発明で規定した閾値を全て満たすことで、処理後[P]f、脱りん石灰効率ηP-CaO、鉄分歩留ηFeのすべてにおいて、良好な結果を得ることができる。
次に、表5、表6に、本発明と比較するために行った脱りん処理の実機実験の結果を示す(比較例23〜44)。なお、表5、表6は、一続きのものであり、説明しやすくするため、2分割としている。
次に、表5、表6に、本発明と比較するために行った脱りん処理の実機実験の結果を示す(比較例23〜44)。なお、表5、表6は、一続きのものであり、説明しやすくするため、2分割としている。
表5、表6の比較例27を参照すると、弱攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,wが0.030Nm3/min/tであり、0.075以上0.135以下を満たさない。また、強攪拌時のガス流量と弱攪拌時のガス流量との比であるQB,s/QB,wが7.50(-)となり、1.7以上4.5以下
を満たさない。すると、処理後[P]fが0.031mass%となり、脱りん石灰効率ηP-CaOが12.9(%)となり、鉄分歩留ηFeが97.6(%)となり、良好な結果が得られなかった。
を満たさない。すると、処理後[P]fが0.031mass%となり、脱りん石灰効率ηP-CaOが12.9(%)となり、鉄分歩留ηFeが97.6(%)となり、良好な結果が得られなかった。
比較例32を参照すると、弱攪拌と強攪拌の切り換え時期(攪拌持続時間)Δtが2.00minであり、0.5以上1.5以下を満たさない。すると、処理後[P]fが0.038mass%となり、脱りん石灰効率ηP-CaOが12.9(%)となり、鉄分歩留ηFeが97.5(%)となり、良好な結果が得られなかった。
比較例35を参照すると、弱攪拌と強攪拌の切り換え時期Δtが0.00minであり、0.5以上1.5以下を満たさない。強攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,sが0.094Nm3/min/tであり、0.17以上0.34以下を満たさない。なお、弱攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,wも0.094Nm3/min/tである。つまり、強攪拌と弱攪拌を切り換えずに脱りん処理を行った結果である。
比較例35を参照すると、弱攪拌と強攪拌の切り換え時期Δtが0.00minであり、0.5以上1.5以下を満たさない。強攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,sが0.094Nm3/min/tであり、0.17以上0.34以下を満たさない。なお、弱攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,wも0.094Nm3/min/tである。つまり、強攪拌と弱攪拌を切り換えずに脱りん処理を行った結果である。
それ故、強攪拌時のガス流量と弱攪拌時のガス流量との比であるQB,s/QB,wが1.00(-)となり、1.7以上4.5以下を満たさない。すると、処理後[P]fが0.025mass%となり、脱りん石灰効率ηP-CaOが14.6(%)となり、鉄分歩留ηFeが97.2(%)となり、良好な結果が得られなかった。
比較例44を参照すると、弱攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,wが0.030Nm3/min/tであり、0.075以上0.135以下を満たさない。また、強攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,sが0.158Nm3/min/tであり、0.17以上0.34以下を満たさない。
比較例44を参照すると、弱攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,wが0.030Nm3/min/tであり、0.075以上0.135以下を満たさない。また、強攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,sが0.158Nm3/min/tであり、0.17以上0.34以下を満たさない。
また、弱攪拌と強攪拌の切り換え時期Δtが0.25minであり、0.5以上1.5以下を満たさない。強攪拌時のガス流量と弱攪拌時のガス流量との比であるQB,s/QB,wが5.25(-)となり、1.7以上4.5以下を満たさない。脱りん処理後のスラグ塩基度(mass%CaO)/(mass%SiO2)が1.25(-)となり、1.4以上2.3以下を満たさない。すると、処理後[P]fが0.050mass%となり、脱りん石灰効率ηP-CaOが14.8(%)となり、鉄分歩留ηFeが97.3(%)となり、良好な結果が得られなかった。
以上より、表5、表6の比較例によれば、本発明で規定した閾値を1つでも満たさないと、処理後[P]f、脱りん石灰効率ηP-CaO、鉄分歩留ηFeに関して、良好な結果を得ることができない。
ここで、上で述べた溶銑の脱りん方法の本実機実験の結果に基づいて、本発明で規定している閾値ついて、説明する。
ここで、上で述べた溶銑の脱りん方法の本実機実験の結果に基づいて、本発明で規定している閾値ついて、説明する。
まず、精錬特性(脱りん石灰効率ηP-CaO、鉄分歩留ηFe)に及ぼす、弱攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,w(Nm3/min/t)の影響について、図7を参照しながら述べる。なお、図7に示すプロットに関し、●印は実施例のNo.1-4の実験結果であり、○印は比較例のNo.23、24、26、27の実験結果である。
図7に示すように、弱攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量を、QB,w<0.075、及び、QB,w>0.135とした場合、脱りん石灰効率ηP-CaOについては高い結果も存在するが、鉄分歩留ηFeについては急激に低下していることがわかる。つまり、脱りん石灰効率ηP-CaO、鉄分歩留ηFeともに両立した、高い良好な結果を得ることができなかった(○印参照)。
図7に示すように、弱攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量を、QB,w<0.075、及び、QB,w>0.135とした場合、脱りん石灰効率ηP-CaOについては高い結果も存在するが、鉄分歩留ηFeについては急激に低下していることがわかる。つまり、脱りん石灰効率ηP-CaO、鉄分歩留ηFeともに両立した、高い良好な結果を得ることができなかった(○印参照)。
これにより、弱攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,wには、最適な範囲が存在することがわかった。この弱攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量を、0.075≦QB,w≦0.135とした場合、処理後[P]fが低く、且つ、脱りん石灰効率ηP-CaO、鉄分歩留ηFeがともに両立した、高い良好な結果を得ることができた(●印参照)。
以上より、本発明では、弱攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,w(Nm3/min/t)を、0.075以上0.135以下と規定している。
以上より、本発明では、弱攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,w(Nm3/min/t)を、0.075以上0.135以下と規定している。
精錬特性(脱りん石灰効率ηP-CaO、鉄分歩留ηFe)に及ぼす、強攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,s(Nm3/min/t)の影響について、図8を参照しながら述べる。なお、図8に示すプロットに関し、●印は実施例のNo.1、5-7の実験結果であり、○印は比較例のNo.28、30、31の実験結果である。
図8に示すように、強攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量を、QB,s<0.17、及び、QB,s>0.34とした場合、脱りん石灰効率ηP-CaOについては高い結果も存在するが、鉄分歩留ηFeについては急激に低下していることがわかる。つまり、脱りん石灰効率ηP-CaO、鉄分歩留ηFeともに両立した、高い良好な結果を得ることができなかった(○印参照)。
図8に示すように、強攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量を、QB,s<0.17、及び、QB,s>0.34とした場合、脱りん石灰効率ηP-CaOについては高い結果も存在するが、鉄分歩留ηFeについては急激に低下していることがわかる。つまり、脱りん石灰効率ηP-CaO、鉄分歩留ηFeともに両立した、高い良好な結果を得ることができなかった(○印参照)。
これにより、強攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,sには、最適な範囲が存在することがわかった。この強攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量を、0.17≦QB,s≦0.34とした場合、処理後[P]fが低く、且つ、脱りん石灰効率ηP-CaO、鉄分歩留ηFeがともに両立した、高い良好な結果を得ることができた(●印参照)。
以上より、本発明では、強攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,s(Nm3/min/t)を、0.17以上0.34以下と規定している。
以上より、本発明では、強攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,s(Nm3/min/t)を、0.17以上0.34以下と規定している。
精錬特性(脱りん石灰効率ηP-CaO、鉄分歩留ηFe)に及ぼす、弱攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,wと、強攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,sの切り替え時期(攪拌持続時間)Δt(min)の影響について、図9を参照しながら述べる。なお、図9に示すプロットに関し、●印は実施例のNo.1、8-11の実験結果であり、○印は比較例のNo.32-36の実験結果である。
図9に示すように、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,w(弱攪拌)と、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,s(強攪拌)の切り替え時期を、Δt<0.5、及び、Δt>1.5とした場合、脱りん石灰効率ηP-CaOについては高い結果もあるが、鉄分歩留ηFeについては急激に低下していることがわかる。つまり、脱りん石灰効率ηP-CaO、鉄分歩留ηFeはともに両立した、高い良好な結果を得ることができなかった(○印参照)。
これにより、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,s(強攪拌)と、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,w(弱攪拌)の切り替え時期Δtには、最適な範囲が存在することがわかった。このQB,wとQB,sの切り替え時期を、0.5≦Δt≦1.5とした場合、処理後[P]fが低く、且つ、脱りん石灰効率ηP-CaO、鉄分歩留ηFeがともに両立した、高い良好な結果を得ることができた(●印参照)。
以上より、本発明では、弱攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,wと、強攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,sの切り替え時期(攪拌持続時間)Δt(min)を、0.5以上1.5以下と規定している。
精錬特性(脱りん石灰効率ηP-CaO、鉄分歩留ηFe)に及ぼす、強攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,sと、弱攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,wの比、QB,s/QB,wの影響について、図10を参照しながら述べる。なお、図10に示すプロットに関し、●印は実施例のNo.1-7、12-14の実験結果であり、○印は比較例のNo.23、24、27、30、31、35-37の実験結果である。
精錬特性(脱りん石灰効率ηP-CaO、鉄分歩留ηFe)に及ぼす、強攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,sと、弱攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,wの比、QB,s/QB,wの影響について、図10を参照しながら述べる。なお、図10に示すプロットに関し、●印は実施例のNo.1-7、12-14の実験結果であり、○印は比較例のNo.23、24、27、30、31、35-37の実験結果である。
図10に示すように、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,s(強攪拌)と、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,w(弱攪拌)の比を、QB,s/QB,w<1.7、及び、QB,s/QB,w>4.5とした場合、脱りん石灰効率ηP-CaOについては高い結果もあるが、鉄分歩留ηFeについては急激に低下していることがわかる。つまり、脱りん石灰効率ηP-CaO、鉄分歩留ηFeはともに両立した、高い良好な結果を得ることができなかった(○印参照)。
これにより、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,s(強攪拌)と、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,w(弱攪拌)の比、QB,s/QB,wには、最適な範囲が存在することがわかった。溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,s(強攪拌)と溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB, w(弱攪拌)の比を、1.7≦QB,s/QB,w≦4.5とした場合、処理後[P]fが低く、且つ、脱りん石灰効率ηP-CaO、鉄分歩留ηFeがともに両立した、高い良好な結果を得ることができた(●印参照)。
以上より、本発明では、強攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,sと、弱攪拌時における、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,wの比、QB,s/QB,wを、1.7以上4.5以下と規定している。
精錬特性(脱りん石灰効率ηP-CaO、鉄分歩留ηFe)に及ぼす、脱りん処理後のスラグ塩基度の影響について、図11を参照しながら述べる。なお、図11に示すプロットに関し、●印は実施例のNo.1、15-20の実験結果であり、○印は比較例のNo.38-42の実験結果である。
精錬特性(脱りん石灰効率ηP-CaO、鉄分歩留ηFe)に及ぼす、脱りん処理後のスラグ塩基度の影響について、図11を参照しながら述べる。なお、図11に示すプロットに関し、●印は実施例のNo.1、15-20の実験結果であり、○印は比較例のNo.38-42の実験結果である。
図11に示すように、脱りん処理後のスラグ塩基度を、(mass%CaO)/(mass%SiO2)<1.4、及び、(mass%CaO)/(mass%SiO2)>2.3とした場合、脱りん石灰効率ηP-CaOについては高い結果もあるが、鉄分歩留ηFeについては急激に低下していることがわかる。つまり、脱りん石灰効率ηP-CaO、鉄分歩留ηFeはともに両立した、高い良好な結果を得ることができなかった(○印参照)。
これにより、脱りん処理後のスラグ塩基度(mass%CaO)/(mass%SiO2)には、最適な範囲が存在することがわかった。脱りん処理後のスラグ塩基度を、1.4≦(mass%CaO)/(mass%SiO2)≦2.3とした場合、処理後[P]fが低く、且つ、脱りん石灰効率ηP-CaO、鉄分歩留ηFeがともに両立した、高い良好な結果を得ることができた(●印参照)。
以上より、本発明では、脱りん処理後のスラグ塩基度(mass%CaO)/(mass%SiO2)を、1.4以上2.3以下と規定している。
以上より、本発明では、脱りん処理後のスラグ塩基度(mass%CaO)/(mass%SiO2)を、1.4以上2.3以下と規定している。
まとめると、本発明は、上底吹き方式の転炉型反応容器1に装入された溶銑Yに対して、上吹きランス2から酸素ガスとともに粉状のCaO源を吹き込み、転炉型反応容器1の底部から底吹きガス(攪拌ガス)を吹き込んで溶銑Yを攪拌して、脱りん処理をする工程において、攪拌持続時間Δtが0.5min以上1.5min以下の範囲ごとに、弱攪拌と強攪拌を交互に切り換え、その弱攪拌時においては、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,w (Nm3/min/t)を、0.075以上0.135以下の範囲で行い、また強攪拌時においては、溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,s(Nm3/min/t)を、0.17以上0.34以下の範囲で行い、強攪拌時での溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,s(Nm3/min/t)と、弱攪拌時での溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,w(Nm3/min/t)との比であるQB,s/QB,w(-)を、1.7以上4.5以下とし、脱りん処理後のスラグ塩基度(mass%CaO)/(mass%SiO2)が、1.4以上2.3以下となるように脱りん処理を行うものである。
本発明の脱りん効率と鉄分歩留に優れた溶銑Yの脱りん方法によれば、CaO系脱りん剤の滓化を促進し、過剰にCaOを添加しなくても、スラグZの脱りん能を向上させることができる。その結果、蛍石(CaF2)等のフッ素含有物質を、滓化促進用の媒溶剤として使用しなくても、CaOの使用量が少ない処理条件下で、従来の手法と同等以上の処理後[P]fを得ることができる。
具体的には、処理後[P]f≦0.020mass%を安定して得ることが可能となり、脱りん石灰効率ηP-CaOを17%以上とすることができる。従って、脱りん処理に関するコストの低減と、脱りんスラグ中に取り込まれていた鉄分損失の低減が可能となる。また、スラグZ中FeOの還元回収が促進されるので、鉄分歩留ηFeを98.5%以上と、鉄分歩留に優れたものとすることができる。
更に、脱りんスラグについては、未溶解CaOが減少しており、且つ、環境に影響を及ぼすフッ素が含有されていないため、転炉型反応容器1に備えられている耐火物の溶損を抑制しりことができる。また、路盤材として使用した場合に、膨張の原因となるCaOの含有が少ないので、生成されたスラグZの再利用も容易となる。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
1 転炉型反応容器
2 上吹きランス
3 底吹き羽口
4 底吹きノズル
5 アクリル製容器
6 底吹き羽口(水モデル実験)
7 底吹きノズル(水モデル実験)
A 水
B スラグ模擬剤
Y 溶銑
Z スラグ
2 上吹きランス
3 底吹き羽口
4 底吹きノズル
5 アクリル製容器
6 底吹き羽口(水モデル実験)
7 底吹きノズル(水モデル実験)
A 水
B スラグ模擬剤
Y 溶銑
Z スラグ
Claims (1)
- 上底吹き方式の転炉型反応容器に装入された溶銑に対して、上吹きランスから酸素ガスとともに粉状のCaO源を吹き込み、前記転炉型反応容器の底部から底吹きガスを吹き込んで溶銑を攪拌して、脱りん処理をする溶銑の脱りん方法において、
前記脱りん処理の工程では、攪拌持続時間Δtが0.5min以上1.5min以下の範囲ごとに、弱攪拌と強攪拌を交互に切り換え、
前記弱攪拌時においては、前記溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,w (Nm3/min/t)を、0.075以上0.135以下の範囲で行い、
前記強攪拌時においては、前記溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,s (Nm3/min/t)を、0.17以上0.34以下の範囲で行い、
前記強攪拌時での溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,s(Nm3/min/t)と、前記弱攪拌時での溶銑1tあたりの底吹きガス流量QB,w(Nm3/min/t)との比であるQB,s/QB,w(-)を、1.7以上4.5以下とし、
前記脱りん処理後のスラグ塩基度(mass%CaO)/(mass%SiO2)(-)が、1.4以上2.3以下となるように脱りん処理を行う
ことを特徴とする脱りん効率と鉄分歩留に優れた溶銑の脱りん方法。
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- 2016-08-08 JP JP2016155621A patent/JP2018024898A/ja active Pending
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