JP4505878B2 - 有機性汚泥の処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は有機性汚泥の処理方法に係り、特に、有機性汚泥の濃縮、脱水工程から排出される濃縮分離液や脱水濾液中のリンを、MAP(リン酸マグネシウムアンモニウム)として除去、回収する有機性汚泥の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
下水処理汚泥等の有機性汚泥は、必要に応じて濃縮した後脱水処理し、得られた脱水ケーキを、含有金属類の安定化のために溶融するか、或いは減溶化のために焼却処理した後、再利用又は投棄処分されている。この溶融又は焼却工程で発生する排ガスは硫黄酸化物等の酸性ガスを含むため、この排ガスは、アルカリ剤で処理した後、大気中に放出される。この排ガス処理法としては、排ガスをアルカリ溶液と接触させてガス中の酸性物質を吸収させる湿式処理法がある。
【0003】
一方、このような有機性汚泥の濃縮、脱水処理で得られた濃縮分離液や脱水濾液(以下、これらをまとめて「汚泥分離液」と称す。)については、前段の生物処理工程へ返送するなどして処理されている。
【0004】
ところで、リン含有水からリンを除去する方法として、従来、リン含有水中にマグネシウムイオンを添加して、該水中に含有されるアンモニア及びリンとマグネシウムとからMAPを生成させ、生成したMAP粒子を分離回収する方法が提案されている。このMAP法の処理対象水は、嫌気消化槽脱離液(特公平7−77640号公報)、活性アルミナ脱離液(特開平9−85263号公報)等であり、また生し尿にマグネシウム塩を添加する(特公昭58−45320号公報)の場合のように、PO4−P濃度が100mg/L以上の高濃度リン含有水とされている。なお、従来、嫌気消化槽脱離液をMAP法で脱リン処理する場合、その処理pHは通常8.0〜8.3程度とされている。また、被処理水中のMg/P比は1.0〜1.2程度となるようにマグネシウム塩の添加制御が行なわれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
有機性汚泥の濃縮、脱水工程で得られる汚泥分離液は、リンを含有するものであるが、従来、この汚泥分離液についてはMAP法によるリンの除去、回収は行なわれていない。これは、従来一般にMAP法の処理対象水とされているリン含有水に比べて、有機性汚泥の濃縮、脱水工程で得られる汚泥分離液はPO4−P濃度が低く、また、共存物質としてMAP法に必要なNH4−N濃度も低いためである。例えば、MAP法が適用されるリン含有水として代表的な嫌気消化槽脱離液のPO4−P濃度は100〜150mg/L程度であるのに対し、汚泥分離液のPO4−P濃度は25〜50mg/L程度と格段に低く、NH4−N濃度も嫌気消化槽脱離液の500mg/L以上に対し、汚泥分離液では50〜80mg/Lである。
【0006】
しかし、有価物の回収、再利用の点からは、汚泥分離液についても含有されるリンをMAPとして除去、回収することが望まれる。
【0007】
本発明は、上記従来の実状に鑑みてなされたものであって、有機性汚泥の濃縮、脱水工程から排出される濃縮分離液や脱水濾液中のリンを、MAPとして効率的に除去、回収する有機性汚泥の処理方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の有機性汚泥の処理方法は、有機性汚泥を濃縮した後又は濃縮することなく脱水して分離液と脱水ケーキとを得る脱水工程と、該分離液の脱リン工程と、該脱水ケーキの溶融又は焼却工程と、該溶融又は焼却工程の排ガスをアルカリ吸収液で湿式処理する排ガス処理工程とを備えてなる有機性汚泥の処理方法において、前記排ガス処理工程のアルカリ吸収液として水酸化マグネシウムスラリーを用い、その吸収排液を前記脱リン工程において分離液と混合して該分離液中のリンからリン酸マグネシウムアンモニウムの不溶化物を生成させ、これを分離する有機性汚泥の処理方法であって、該脱リン工程の処理pHを8.7〜8.9とし、該吸収排液と分離液とを、脱リン工程の被処理水中のMg/P比が1.8〜4.5となるように混合することを特徴とする。
【0009】
本発明では、MAP法による脱リン工程の処理pHを8.7〜8.9と、従来の嫌気消化槽脱離液等をMAP処理する場合の処理pHよりも若干高pH域とし、添加するマグネシウム塩量を被処理水中のMg/P比が1.8〜3.0程度と従来の嫌気消化槽脱離液等をMAP処理する場合のMg/P比よりも若干高くすることにより、MAP法による低PO4−P濃度で低NH4−N濃度の汚泥分離液からのリンの除去、回収を可能とする。
【0010】
このように高pH、高Mg/P比とすることが必要な理由は、MAPの析出は溶解度積に依存するためである。即ち、MAPの析出における溶解度積は
[Mg2+][NH4 +][HPO4 2-][OH-]=7.8×10-15(モル/リットル)4
で表わされ(京大・宗宮ら)、上式の左辺からもわかるように、被処理水である汚泥分離液中のNH4 +,HPO4 2-が低濃度である分をMg2+,OH-で補う必要があるためである。
【0011】
本発明では、脱水ケーキの溶融又は焼却工程での排ガス処理を安価な水酸化マグネシウムを使用した湿式法で行うと共に、その排ガス処理で生じた吸収排液中のマグネシウムイオンをMAP法による脱リン工程において、高Mg/P比とするためのマグネシウム源として利用することにより、有機性汚泥の濃縮、脱水、脱水ケーキの溶融又は焼却、排ガス処理及び汚泥分離液の脱リンの一連の処理を低コストにて工業的に有利に行うことができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明の有機性汚泥の処理方法の脱リン工程で用いられる脱リン装置の実施の形態を示す系統図である。
【0014】
図1において、1はMAP反応塔であり、下部にポンプP1を有した原水(汚泥分離液と吸収排液との混合水)の導入配管2が接続され、反応塔1の上部に処理水の取出配管3が接続されている。また、処理水の一部を塔底部に循環させるためのポンプP2を有する循環配管4が設けられている。反応塔1の頂部は開放しており、塔下部には被処理水の流通孔を有するMAP粒子Mの支持板10が設けられている。5はpH計、6は原水貯槽である。7はpH調整用のNaOH(水酸化ナトリウム)貯槽であり、NaOH水溶液は配管8より反応塔1の下部に注入される。9はNaOH水溶液の希釈水として、必要に応じて砂濾過水等が導入される配管である。この脱リン装置へは、後述の汚泥分離液及び吸収排液がそれぞれ配管11,12より導入される。
【0015】
本発明では、下水処理工程等から排出される有機性汚泥を必要に応じて濃縮した後、脱水処理し、得られた脱水ケーキを溶融又は焼却工程へ送給する。また、汚泥分離液、即ち、濃縮分離液及び/又は脱水濾液は図1に示す脱リン装置へ送給する。
【0016】
なお、この濃縮手段としては、自然沈降濃縮槽、凝集分離槽等を用いることができ、脱水手段としては、遠心分離機、ベルトプレス脱水機、スクリュープレス脱水機、凝集スクリーン等を用いることができる。
【0017】
本発明では、脱水ケーキの溶融又は焼却工程で発生した排ガスの処理に水酸化マグネシウムスラリーを用いるが、この水酸化マグネシウムスラリーとしては、処理効率、取り扱い性、後段の脱リン工程へのMgの供給効率等の面から40〜48重量%濃度のものを用いるのが好ましい。この排ガス処理は、通常の湿式吸収塔を用いて行うことができ、その処理条件は、排ガスの浄化の程度に応じて適宜決定される。
【0018】
排ガス処理工程の吸収排液は、前述の汚泥分離液と共に図1に示す脱リン装置へ送給する。
【0019】
汚泥分離液及び吸収排液は、それぞれ配管11,12より、原水貯槽6に導入されて混合される。この汚泥分離液と吸収排液との混合液よりなる原水は、配管2よりMAP反応塔1の下部に導入される。塔内では、前述の如く、低PO4−P濃度、低NH4−N濃度の原水からMAPを効率的に生成させるために、pH8.7〜8.9となるようにNaOH水溶液が注入される。なお、pH調整はアルカリ剤であれば良く、何らNaOH水溶液に限定されるものではない。
【0020】
反応塔1内では、既に析出しているMAP粒子Mを種晶としてMAPが造粒される。即ち、原水の流入と処理水の循環によりMAP粒子が流動状態となり、このMAP粒子の表面に新たなMAPが析出し、MAP粒子が粒成長する。MAPの析出によりリンの濃度が低下した処理水は取出配管3より排出される。また処理水の一部は循環配管4により塔下部へ循環される。
【0021】
本発明において、汚泥分離液と吸収排液とは、MAP反応塔1に導入される原水のMg/P比が、前述の如く、1.8〜5の範囲、特に2.5〜3.5の範囲となるように混合するのが好ましい。Mg/P比が1.8未満では、低PO4−P濃度、低NH4−N濃度の汚泥分離液からMAPを効率的に生成させることができず、また、汚泥分離液に対する吸収排液の水量を大きくとり、Mg/P比を大きくとることもできるが、Mg/P比が4.0を超えると、超えた分はMAP生成反応に対して無駄な分となり、好ましくない。このようなMg/P比となる汚泥分離液と吸収排液との混合割合は、有機性汚泥の性状や、濃縮、脱水工程及び排ガス処理工程の処理条件等によっても異なるが、一般的には汚泥分離液:吸収排液=1:0.02〜0.05(容量比)とするのが好ましい。
【0022】
このように汚泥分離液に吸収排液を混合することによりMAP法による脱リン処理を効率的に行うことが可能となる。この脱リン処理で得られる処理水は、前段の活性汚泥槽等へ返送されて処理される。
【0023】
なお、MAPの生成にMgイオンが不足する場合には、別途Mg塩を添加する必要があるが、通常の場合、高価なMg塩を系外から添加することなく、或いは添加する場合であっても極少量の添加でMAP生成による脱リン処理を行うことができる。また、MAP生成にアンモニウムイオンが不足する場合には、反応塔に更にアンモニア又はアンモニウム塩を添加する必要がある。
【0024】
図1に示す脱リン装置は、本発明の実施に好適な脱リン装置の一例であって、本発明は何ら図示のものに限定されるものではない。例えば、MAP反応塔は、空気曝気により塔内の粒子を流動させる型式のものであってもよく、また、吸収排液は原水貯槽に導入せず、直接MAP反応塔の下部に導入しても良い。また、この吸収排液に予めNaOH水溶液を混合してMAP反応塔に導入しても良い。
【0025】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0026】
実施例1
本発明方法に従って、下水処理場から排出された有機性汚泥を遠心濃縮することにより濃縮した後、さらに遠心脱水機で脱水する濃縮、脱水工程から排出された濃縮分離液と脱水濾液とからなる、下記平均水質の汚泥分離液の脱リン処理を行った。
【0027】
[汚泥分離液平均水質]
PO4−P: 49.2mg/L
NH4−N: 64.0mg/L
pH : 6.2
この濃縮、脱水工程で得られた脱水ケーキの焼却工程で発生した排ガスの処理工程からは、40重量%のMg(OH)2スラリーを用いて湿式処理したことにより、下記平均水質の吸収排液が排出された。
【0028】
[吸収排液平均水質]
Mgイオン: 3440mg/L
pH : 7.2
図1に示す脱リン装置を用いて、上記汚泥分離液及び吸収排液をそれぞれ144m3/日,3m3/日で原水貯槽6に導入し、原水貯槽6の原水(汚泥分離液と吸収排液との混合液)を5.9m3/hrでMAP反応塔1に導入した。循環水量は11.0m3/hrとした。また、反応塔には、塔内のpHが8.7〜8.9の範囲となるように24重量%NaOH水溶液を注入した。
【0029】
このようにして脱リン処理を行ったときの原水のPO4−P濃度及びMg濃度並びにMg/P比と、処理水のPO4−P濃度及びpHの経日変化は表1に示す通りであった。
【0030】
【表1】
Figure 0004505878
【0031】
表1より、脱水ケーキの焼却工程の排ガス処理の吸収排液を用いて、汚泥分離液からリンをMAPとして効率的に除去、回収することができることがわかる。
【0032】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明によれば、有機性汚泥の脱水ケーキの溶融又は焼却工程の排ガス工程の排ガス処理を、安価な水酸化マグネシウムを用いて低コストにて行うと共に、この排ガス処理の吸収排液を利用して、有機性汚泥の濃縮、脱水濾液中のリンをMAPとして効率的にしかも安価に除去、回収することができる工業的に極めて有利な有機性汚泥の処理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機性汚泥の処理方法の脱リン工程で用いられる脱リン装置の実施の形態を示す系統図である。
【符号の説明】
1 MAP反応塔
2 原水導入配管
3 処理水取出配管
4 循環配管
5 pH計
6 原水貯槽
7 NaOH貯槽

Claims (1)

  1. 有機性汚泥を濃縮した後又は濃縮することなく脱水して分離液と脱水ケーキとを得る脱水工程と、
    該分離液の脱リン工程と、
    該脱水ケーキの溶融又は焼却工程と、
    該溶融又は焼却工程の排ガスをアルカリ吸収液で湿式処理する排ガス処理工程とを備えてなる有機性汚泥の処理方法において、
    前記排ガス処理工程のアルカリ吸収液として水酸化マグネシウムスラリーを用い、その吸収排液を前記脱リン工程において分離液と混合して該分離液中のリンからリン酸マグネシウムアンモニウムの不溶化物を生成させ、これを分離する有機性汚泥の処理方法であって、
    該脱リン工程の処理pHを8.7〜8.9とし、該吸収排液と分離液とを、脱リン工程の被処理水中のMg/P比が1.8〜4.5となるように混合することを特徴とする有機性汚泥の処理方法。
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