[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る電子部品の回路構成について説明する。本実施の形態に係る電子部品1は、バンドパスフィルタの機能を有している。図1に示したように、電子部品1は、入力端子2と、出力端子3と、3つの共振器4,5,6と、インダクタ7,8と、キャパシタ17,18,19とを備えている。
インダクタ7は、入力端子2に接続された第1の端部とその反対側の第2の端部とを有している。インダクタ8は、出力端子3に接続された第1の端部とその反対側の第2の端部とを有している。共振器4は、インダクタ7の第2の端部に接続されている。共振器6は、インダクタ8の第2の端部に接続されている。共振器5は、共振器4と共振器6との間に配置されている。そして、隣接する共振器4と共振器5は誘導性結合し、隣接する共振器5と共振器6も誘導性結合する。
共振器4は本発明における第1の共振器に対応し、共振器6は本発明における第2の共振器に対応し、共振器5は本発明における第3の共振器に対応する。また、インダクタ7は本発明における第1のインダクタに対応し、インダクタ8は本発明における第2のインダクタに対応する。
共振器4は、互いに接続されたインダクタ11とキャパシタ14とを有している。共振器5は、互いに接続されたインダクタ12とキャパシタ15とを有している。共振器6は、互いに接続されたインダクタ13とキャパシタ16とを有している。インダクタ12は、インダクタ11とインダクタ13との間に配置されている。そして、隣接するインダクタ11,12は誘導性結合し、隣接するインダクタ12,13も誘導性結合する。図1では、インダクタ11,12間の誘導性結合と、インダクタ12,13間の誘導性結合を、それぞれ記号Mを付した曲線で表している。
インダクタ11は本発明における第1の共振器用インダクタに対応し、キャパシタ14は本発明における第1の共振器用キャパシタに対応する。また、インダクタ13は本発明における第2の共振器用インダクタに対応し、キャパシタ16は本発明における第2の共振器用キャパシタに対応する。
インダクタ11の一端とキャパシタ14,17,19の各一端は、インダクタ7の第2の端部に接続されている。インダクタ11の他端とキャパシタ14の他端はグランドに接続されている。インダクタ12の一端とキャパシタ15,18の各一端は、キャパシタ17の他端に接続されている。インダクタ12の他端とキャパシタ15の他端はグランドに接続されている。インダクタ13の一端、キャパシタ16の一端およびキャパシタ19の他端は、キャパシタ18の他端に接続されていると共にインダクタ8の第2の端部に接続されている。インダクタ13の他端とキャパシタ16の他端はグランドに接続されている。
共振器4,5,6はいずれも、開放端と短絡端とを有する1/4波長共振器である。共振器4の開放端は、インダクタ11とキャパシタ14との接続点である。共振器5の開放端は、インダクタ12とキャパシタ15との接続点である。共振器6の開放端は、インダクタ13とキャパシタ16との接続点である。キャパシタ17は、共振器4,5の開放端同士を接続している。また、キャパシタ18は、共振器5,6の開放端同士を接続している。インダクタ7の第2の端部は、インダクタ11とキャパシタ14との接続点に接続されている。インダクタ8の第2の端部は、インダクタ13とキャパシタ16との接続点に接続されている。共振器4,5は、前述のように誘導性結合すると共に、キャパシタ17を介して容量性結合する。共振器5,6も、前述のように誘導性結合すると共に、キャパシタ18を介して容量性結合する。共振器4,5,6は、バンドパスフィルタの機能を実現する。
本実施の形態に係る電子部品1では、入力端子2に信号が入力されると、そのうちの所定の周波数帯域内の周波数の信号が選択的に、共振器4,5,6を用いて構成されたバンドパスフィルタを通過し、出力端子3から出力される。
次に、図2ないし図6を参照して、電子部品1の構造について説明する。図2は、電子部品1の主要部分を示す斜視図である。図3は、電子部品1の外観を示す斜視図である。図4は、図2におけるA方向から見た電子部品1の主要部分を示す説明図である。図5は、図2におけるB方向から見た電子部品1の主要部分を示す説明図である。図6は、図2におけるC方向から見た電子部品1の主要部分を示す説明図である。
図3に示したように、電子部品1は、電子部品1の構成要素を一体化するための積層基板20を備えている。後で詳しく説明するが、積層基板20は、積層された複数の誘電体層と複数の導体層とを含んでいる。インダクタ7,8,11〜13は、いずれも、積層基板20内の1つ以上の導体層を用いて構成されている。キャパシタ14〜19は、積層基板20内の導体層と誘電体層を用いて構成されている。
積層基板20は、外周部として上面20Aと底面20Bと4つの側面20C〜20Fとを有する直方体形状をなしている。上面20Aと底面20Bは平行であり、側面20C,20Dも平行であり、側面20E,20Fも平行である。側面20C〜20Fは、上面20Aおよび底面20Bに対して垂直になっている。
側面20Cには、入力端子22と、その両側に配置された2つのグランド用端子24,25が設けられている。側面20Dには、出力端子23と、その両側に配置された2つのグランド用端子26,27が設けられている。入力端子22は図1における入力端子2に対応し、出力端子23は図1における出力端子3に対応する。グランド用端子24,25,26,27はグランドに接続される。
積層基板20において、側面20C,20Dに垂直な方向が、複数の誘電体層の積層方向である。図2ないし図4および図6において、記号Tを付した矢印は、複数の誘電体層の積層方向を表している。従って、本実施の形態では、側面20C,20Dが、積層方向における両端に配置された端面である。側面20Cは本発明における第1の端面に対応し、側面20Dは本発明における第2の端面に対応する。
上面20Aと底面20Bには、それぞれ、グランド層28,29が配置されている。グランド用端子24〜27は、グランド層28,29に接続されている。電子部品1は、積層基板20の底面20Bが実装基板に当接するように、実装基板に実装される。
次に、図7ないし図9を参照して、積層基板20における誘電体層と導体層について詳しく説明する。なお、ここでは、積層基板20の側面20C側を上側、積層基板20の側面20D側を下側として説明する。図7において(a)〜(d)は、それぞれ、上から1層目ないし4層目の誘電体層の上面を示している。図8において(a)〜(e)は、それぞれ、上から5層目ないし9層目の誘電体層の上面を示している。図9において(a)〜(c)は、それぞれ、上から10層目ないし12層目の誘電体層の上面を示している。図9において(d)は、上から12層目の誘電体層およびその下の導体層を、上から見た状態で表したものである。
図7(a)に示した1層目の誘電体層31の上面は、積層基板20の側面20Cとなる。誘電体層31の上面には、入力端子用導体層311と、その両側に配置された2つのグランド用導体層312,313が形成されている。入力端子用導体層311は入力端子22に接続される。グランド用導体層312は、グランド用端子24およびグランド層28,29に接続される。グランド用導体層313は、グランド用端子25およびグランド層28,29に接続される。また、誘電体層31には、入力端子用導体層311に接続されたスルーホール314が形成されている。
図7(b)に示した2層目の誘電体層32には、スルーホール314に接続されたスルーホール321が形成されている。
図7(c)に示した3層目の誘電体層33の上面には、インダクタ用導体層331が形成されている。導体層331は、第1の端部331aと第2の端部331bとを有している。第1の端部331aは、誘電体層33の上面におけるほぼ中央に配置されている。導体層331は、第1の端部331aから図7(c)における下方に延びた後、左へ延びるように屈曲して第2の端部331bに達している。スルーホール321は、導体層331における第1の端部331aの近傍の部分に接続されている。また、誘電体層33には、導体層331における第2の端部331bの近傍の部分に接続されたスルーホール332が形成されている。
図7(d)に示した4層目の誘電体層34には、スルーホール332に接続されたスルーホール341が形成されている。
図8(a)に示した5層目の誘電体層35の上面には、キャパシタ用導体層351が形成されている。導体層351は、図1におけるキャパシタ19を構成するための2つの部分351a,351bを含んでいる。この部分351a,351bについては、後で詳しく説明する。また、誘電体層35には、導体層351に接続されたスルーホール352が形成されている。スルーホール352には、スルーホール341が接続されている。
図8(b)に示した6層目の誘電体層36の上面には、共振器用導体層361,362,363が形成されている。導体層361,362,363は、図8(b)における左側から導体層361,362,363の順に、左右方向に配列されている。導体層361は、第1の端部361aと、その反対側の第2の端部361bとを有している。導体層362は、第1の端部362aと、その反対側の第2の端部362bとを有している。導体層363は、第1の端部363aと、その反対側の第2の端部363bとを有している。第2の端部361b,362b,363bはグランド層28に接続される。また、誘電体層36には、第1の端部361aと第2の端部361bとの間の位置において導体層361に接続されたスルーホール364と、第1の端部362aと第2の端部362bとの間の位置において導体層362に接続されたスルーホール365と、第1の端部363aと第2の端部363bとの間の位置において導体層363に接続されたスルーホール366とが形成されている。導体層361には、スルーホール352が接続されている。
図8(c)に示した7層目の誘電体層37の上面には、共振器用導体層371,372,373と、キャパシタ用導体層377が形成されている。導体層371,372,373は、図8(c)における左側から導体層371,372,373の順に、左右方向に配列されている。導体層371,372,373の各一端部はグランド層28に接続される。キャパシタ用導体層377は、図8(c)における導体層371,372,373の下方に配置され、左右方向に延在している。導体層377はグランド層29に接続される。また、誘電体層37には、それぞれ導体層371,372,373に接続されたスルーホール374,375,376が形成されている。スルーホール374,375,376には、それぞれスルーホール364,365,366が接続されている。
図8(d)に示した8層目の誘電体層38の上面には、共振器用導体層381,382,383が形成されている。導体層381,382,383は、図8(d)における左側から導体層381,382,383の順に、左右方向に配列されている。導体層381は、第1の端部381aと、その反対側の第2の端部381bとを有している。導体層382は、第1の端部382aと、その反対側の第2の端部382bとを有している。導体層383は、第1の端部383aと、その反対側の第2の端部383bとを有している。第2の端部381b,382b,383bはグランド層28に接続される。導体層381,382,383には、それぞれスルーホール374,375,376が接続されている。また、誘電体層38には、導体層383に接続されたスルーホール384が形成されている。
図8(e)に示した9層目の誘電体層39の上面には、キャパシタ用導体層391が形成されている。導体層391は、図1におけるキャパシタ19を構成するための2つの部分391a,391bを含んでいる。この部分391a,391bについては、後で詳しく説明する。また、誘電体層39には、導体層391に接続されたスルーホール392が形成されている。スルーホール392には、スルーホール384が接続されている。
図9(a)に示した10層目の誘電体層40には、スルーホール392に接続されたスルーホール401が形成されている。
図9(b)に示した11層目の誘電体層41の上面には、インダクタ用導体層411が形成されている。導体層411は、第1の端部411aと第2の端部411bとを有している。第1の端部411aは、誘電体層41の上面におけるほぼ中央に配置されている。導体層411は、第1の端部411aから図9(b)における下方に延びた後、右へ延びるように屈曲して第2の端部411bに達している。スルーホール401は、導体層411における第2の端部411bの近傍の部分に接続されている。また、誘電体層41には、導体層411における第1の端部411aの近傍の部分に接続されたスルーホール412が形成されている。
図9(c)に示した12層目の誘電体層42には、スルーホール412に接続されたスルーホール420が形成されている。
図9(d)に示したように、誘電体層42の下面には、出力端子用導体層421と、その両側に配置された2つのグランド用導体層422,423が形成されている。出力端子用導体層421は出力端子23に接続される。グランド用導体層422は、グランド用端子26およびグランド層28,29に接続される。グランド用導体層423は、グランド用端子27およびグランド層28,29に接続される。導体層421には、スルーホール420が接続されている。誘電体層42の下面は、積層基板20の側面20Dとなる。
図7ないし図9に示した誘電体層31〜42および導体層が積層されて積層体が形成される。図3に示したグランド層28,29は、この積層体の外周面のうち、積層方向Tに対して垂直で、且つ互いに平行な2つの面に形成される。更に、積層体に対して、それぞれ導体層311,421,312,313,422,423に接するように端子22〜27が形成されて、積層基板20が完成する。
図1におけるインダクタ11は、スルーホール364,374によって接続された導体層361,371,381を用いて構成されている。導体層361,371,381は、本発明における第1の共振器用導体層に対応する。図1におけるインダクタ12は、スルーホール365,375によって接続された導体層362,372,382を用いて構成されている。図1におけるインダクタ13は、スルーホール366,376によって接続された導体層363,373,383を用いて構成されている。導体層363,373,383は、本発明における第2の共振器用導体層に対応する。
図1におけるインダクタ7は、インダクタ用導体層331を用いて構成されている。インダクタ用導体層331は、本発明における第1のインダクタ用導体層に対応する。図1におけるインダクタ8は、インダクタ用導体層411を用いて構成されている。インダクタ用導体層411は、本発明における第2のインダクタ用導体層に対応する。
図8(c)に示したキャパシタ用導体層377は、導体層361,362,363と、導体層381,382,383との間に配置されている。導体層361は誘電体層36を介して導体層377に対向し、導体層381は誘電体層37を介して導体層377に対向している。図1におけるキャパシタ14は、これら導体層361,377,381と誘電体層36,37によって構成されている。導体層362は誘電体層36を介して導体層377に対向し、導体層382は誘電体層37を介して導体層377に対向している。図1におけるキャパシタ15は、これら導体層362,377,382と誘電体層36,37によって構成されている。導体層363は誘電体層36を介して導体層377に対向し、導体層383は誘電体層37を介して導体層377に対向している。図1におけるキャパシタ16は、これら導体層363,377,383と誘電体層36,37によって構成されている。なお、図4では、導体層377を示すために、導体層371,372,373の図示を省略している。
図8(a)に示したキャパシタ用導体層351は、入力端子22と導体層362との間に配置され、スルーホール352を介して導体層361に接続されていると共に、誘電体層35を介して導体層362に対向している。図1におけるキャパシタ17は、導体層351,362と、これらの間に配置された誘電体層35によって構成されている。
図8(e)に示したキャパシタ用導体層391は、出力端子23と導体層382との間に配置され、スルーホール384を介して導体層383に接続されていると共に、誘電体層38を介して導体層382に対向している。図1におけるキャパシタ18は、導体層391,382と、これらの間に配置された誘電体層38によって構成されている。
図1におけるキャパシタ19は、導体層351,391と、これらの間に配置された誘電体層35,36,37,38とによって構成されている。以下、キャパシタ19について、より詳しく説明する。導体層351の部分351aと導体層391の部分391aは、誘電体層の積層方向に見たときに、導体層361,371,381と導体層362,372,382との間に配置されている。そして、部分351aと部分391aは、導体層362,372,382と重なることなく、誘電体層35,36,37,38を介して互いに対向している。また、導体層351の部分351bと導体層391の部分391bは、誘電体層の積層方向に見たときに、導体層363,373,383と導体層362,372,382との間に配置されている。そして、部分351bと部分391bは、導体層362,372,382と重なることなく、誘電体層35,36,37,38を介して互いに対向している。図1におけるキャパシタ19は、導体層351,391のうち、特に、互いに対向する部分351a,391aおよび互いに対向する部分351b,391bと、導体層351と導体層391の間に配置された誘電体層35,36,37,38とによって構成されている。
なお、本実施の形態において、積層基板20としては、誘電体層の材料として樹脂、セラミック、あるいは両者を複合した材料を用いたもの等、種々のものを用いることができる。しかし、積層基板20としては、特に、高周波特性に優れた低温同時焼成セラミック多層基板を用いることが好ましい。
図2および図4に示したように、インダクタ用導体層331,411は、それぞれ、誘電体層の積層方向に見たときに、共振器4を構成する導体層361,371,381と、共振器6を構成する導体層363,373,383との間に位置している部分を含んでいる。より詳しく説明すると、インダクタ用導体層331は、誘電体層の積層方向に見たときに、共振器4を構成する導体層361,371,381と、共振器4に隣接する共振器5を構成する導体層362,372,382との間に位置している部分を含んでいる。同様に、インダクタ用導体層411は、誘電体層の積層方向に見たときに、共振器6を構成する導体層363,373,383と、共振器6に隣接する共振器5を構成する導体層362,372,382との間に位置している部分を含んでいる。
また、図4および図6から分かるように、積層方向Tについて、インダクタ用導体層331と導体層361,362との間の距離は、インダクタ用導体層331と入力端子22との間の距離に比べて十分小さい。すなわち、インダクタ用導体層331は、導体層361,362に対して近接した位置に配置されている。同様に、積層方向Tについて、インダクタ用導体層411と導体層382,383との間の距離は、インダクタ用導体層411と出力端子23との間の距離に比べて十分小さい。すなわち、インダクタ用導体層411は、導体層382,383に対して近接した位置に配置されている。
また、図3に示したように、積層基板20は、積層方向Tにおける両端に配置された第1の端面(側面20C)と第2の端面(側面20D)とを有している。入力端子22は第1の端面(側面20C)に配置され、出力端子23は第2の端面(側面20D)に配置されている。そして、図2に示したように、共振器4を構成する導体層361,371,381と、共振器5を構成する導体層362,372,382と、共振器6を構成する導体層363,373,383は、積層方向Tと交差する方向、特に積層方向Tに垂直な方向に配列されている。
以上説明したように、本実施の形態に係る電子部品1は、入力端子2と、出力端子3と、隣接する2つの共振器同士が誘導性結合するように設けられた3つの共振器4〜6と、入力端子2に接続された第1の端部とその反対側の第2の端部とを有するインダクタ7と、出力端子3に接続された第1の端部とその反対側の第2の端部とを有するインダクタ8とを備えている。共振器4はインダクタ7の第2の端部に接続され、共振器6はインダクタ8の第2の端部に接続されている。
以下、比較例の電子部品と比較しながら、本実施の形態に係る電子部品1の作用、効果について説明する。始めに、図10を参照して、比較例の電子部品101の回路構成について説明する。比較例の電子部品101は、インダクタ7,8を備えていない。比較例では、インダクタ11の一端とキャパシタ14,17,19の各一端は入力端子2に接続され、インダクタ13の一端、キャパシタ16の一端およびキャパシタ19の他端は、出力端子3に接続されている。
次に、図11ないし図13を参照して、比較例の電子部品101の構造について説明する。図11は、図4と同じ方向から見た電子部品101の主要部分を示す説明図である。図12は、図5と同じ方向から見た電子部品101の主要部分を示す説明図である。図13は、図6と同じ方向から見た電子部品101の主要部分を示す説明図である。これらの図に示したように、電子部品101は、電子部品101の構成要素を一体化するための積層基板120を備えている。積層基板120は、積層された複数の誘電体層と複数の導体層とを含んでいる。インダクタ11〜13は、いずれも、積層基板120内の1つ以上の導体層を用いて構成されている。キャパシタ14〜19は、積層基板120内の導体層と誘電体層を用いて構成されている。
積層基板120は、上面120Aと、底面120Bと、4つの側面120C〜120Fを有する直方体形状をなしている。上面120Aと底面120Bは平行であり、側面120C,120Dも平行であり、側面120E,120Fも平行である。側面120C〜120Fは、上面120Aおよび底面120Bに対して垂直になっている。
側面120Cには、入力端子22と、その両側に配置された2つのグランド用端子24,25が設けられている。側面120Dには、出力端子23と、その両側に配置された2つのグランド用端子26,27が設けられている。入力端子22は図10における入力端子2に対応し、出力端子23は図10における出力端子3に対応する。グランド用端子24,25,26,27はグランドに接続される。
積層基板120において、側面120C,120Dに垂直な方向が、複数の誘電体層の積層方向である。図11および図13において、記号Tを付した矢印は、複数の誘電体層の積層方向を表している。図示しないが、積層基板120においても、本実施の形態における積層基板20と同様に、上面120Aと底面120Bには、それぞれ、グランド層28,29が配置されている。グランド用端子24〜27は、グランド層28,29に接続されている。電子部品101は、積層基板120の底面120Bが実装基板に当接するように、実装基板に実装される。
次に、図14ないし図16を参照して、積層基板120における誘電体層と導体層について詳しく説明する。なお、ここでは、積層基板120の側面120C側を上側、積層基板120の側面120D側を下側として説明する。図14において(a)〜(d)は、それぞれ、上から1層目ないし4層目の誘電体層の上面を示している。図15において(a)〜(e)は、それぞれ、上から5層目ないし9層目の誘電体層の上面を示している。図16において(a)〜(c)は、それぞれ、上から10層目ないし12層目の誘電体層の上面を示している。図16において(d)は、上から12層目の誘電体層およびその下の導体層を、上から見た状態で表したものである。
図14(a)に示した1層目の誘電体層31の上面は、積層基板120の側面120Cとなる。誘電体層31の上面には、入力端子用導体層311と、その両側に配置された2つのグランド用導体層312,313が形成されている。入力端子用導体層311は入力端子22に接続される。グランド用導体層312は、グランド用端子24およびグランド層28,29に接続される。グランド用導体層313は、グランド用端子25およびグランド層28,29に接続される。また、誘電体層31には、入力端子用導体層311に接続されたスルーホール314が形成されている。
図14(b)に示した2層目の誘電体層32には、スルーホール314に接続されたスルーホール321が形成されている。図14(c)に示した3層目の誘電体層33の上面には、導体層333が形成されている。また、誘電体層33には、導体層333に接続されたスルーホール334が形成されている。図14(d)に示した4層目の誘電体層34には、スルーホール334に接続されたスルーホール342が形成されている。
図15(a)〜(d)に示したように、5層目ないし8層目の誘電体層35〜38の各々の上面に形成された導体層および誘電体層35〜38の各々に形成されたスルーホールの構成は、図8(a)〜(d)に示した本実施の形態における構成と同じである。なお、5層目の誘電体層35の上面の上に形成されたキャパシタ用導体層351には、図14(d)に示したスルーホール342が接続されている。
図15(e)に示した9層目の誘電体層39の上面には、キャパシタ用導体層391が形成されている。導体層391には、図15(d)に示したスルーホール384が接続されている。また、誘電体層39には、導体層391に接続されたスルーホール393が形成されている。
図16(a)に示した10層目の誘電体層40には、スルーホール393に接続されたスルーホール402が形成されている。図16(b)に示した11層目の誘電体層41の上面には、導体層413が形成されている。導体層413には、スルーホール402が接続されている。また、誘電体層41には、導体層413に接続されたスルーホール414が形成されている。図16(c)に示した12層目の誘電体層42には、スルーホール414に接続されたスルーホール420が形成されている。
図16(d)に示したように、誘電体層42の下面には、出力端子用導体層421と、その両側に配置された2つのグランド用導体層422,423が形成されている。出力端子用導体層421は出力端子23に接続される。グランド用導体層422は、グランド用端子26およびグランド層28,29に接続される。グランド用導体層423は、グランド用端子27およびグランド層28,29に接続される。導体層421には、スルーホール420が接続されている。誘電体層42の下面は、積層基板120の側面120Dとなる。
図14ないし図16に示した誘電体層31〜42および導体層が積層されて積層体が形成される。グランド層28,29は、この積層体の外周面のうち、積層方向Tに対して垂直で、且つ互いに平行な2つの面に形成される。更に、積層体に対して、それぞれ導体層311,421,312,313,422,423に接するように端子22〜27が形成されて、積層基板120が完成する。
比較例において、インダクタ11〜13とキャパシタ14〜19は、本実施の形態と同様にして構成されている。比較例の電子部品101は、本実施の形態におけるインダクタ7,8を構成するインダクタ用導体層331,411を備えていない。なお、図14(c)に示した導体層333において電流が流れる距離は、図7(c)に示したインダクタ用導体層331において電流が流れる距離に比べて極めて短い。同様に、図16(b)に示した導体層413において電流が流れる距離は、図9(b)に示したインダクタ用導体層411において電流が流れる距離に比べて極めて短い。また、図11および図13から分かるように、積層方向Tについて、導体層333と導体層361,362との間の距離は、導体層333と入力端子22との間の距離に比べて大きい。同様に、積層方向Tについて、導体層413と導体層382,383との間の距離は、導体層413と出力端子23との間の距離に比べて大きい。
ここで、シミュレーションによって、比較例の電子部品101と本実施の形態に係る電子部品1について、通過・減衰特性を比較した結果について説明する。このシミュレーションでは、比較例の電子部品101と本実施の形態に係る電子部品1のいずれについても、通過帯域がおよそ2.4〜2.5GHzのバンドパスフィルタとして機能するように設計されている。なお、2.4〜2.5GHzという周波数帯域は、ブルートゥース規格の通信装置や無線LAN用の通信装置において用いられるバンドパスフィルタの通過帯域に対応する。
図17は、シミュレーションによって得られた比較例の電子部品101の通過・減衰特性を示し、図18は、シミュレーションによって得られた本実施の形態に係る電子部品1の通過・減衰特性を示している。図17と図18を比較すると、本実施の形態に係る電子部品1の通過・減衰特性では、比較例の電子部品101の通過・減衰特性に比べて、2GHz以下の周波数帯域における減衰量が大きくなっていることが分かる。この違いは、以下のような作用によって生じると考えられる。すなわち、本実施の形態では、インダクタ7が発生する磁界によって、共振器4とこれに隣接する共振器5との間の誘導性結合が弱められ、インダクタ8が発生する磁界によって、共振器6とこれに隣接する共振器5との間の誘導性結合が弱められる。これにより、本実施の形態では、インダクタ7,8がない場合に比べて、バンドパスフィルタの通過帯域よりも低周波側の阻止帯域における減衰量が大きくなると考えられる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、インダクタ7,8を備えたことにより、複数の共振器を備えた電子部品1において、隣接する共振器間の誘導性結合を弱めることによって所望の特性を得ることが可能になる。
また、本実施の形態によれば、電子部品1の小型化、薄型化に伴って隣接する共振器間の距離を短くせざるを得ない場合であっても、隣接する共振器間の誘導性結合の大きさを小さくすることができるので、電子部品1の小型化、薄型化が容易になる。
また、本実施の形態では、図2および図4に示したように、インダクタ7を構成するインダクタ用導体層331と、インダクタ8を構成するインダクタ用導体層411は、それぞれ、誘電体層の積層方向に見たときに、共振器4を構成する導体層361,371,381と、共振器6を構成する導体層363,373,383との間に位置している部分を含んでいる。これにより、本実施の形態によれば、より効果的に、インダクタ7,8によって、隣接する共振器間の誘導性結合を弱めることが可能になる。
また、本実施の形態では、図4に示したように、積層基板20は、誘電体層の積層方向Tにおける両端に配置された第1および第2の端面、すなわち側面20C,20Dを有している。入力端子22は第1の端面(側面20C)において長手方向の中央に配置され、出力端子23は第2の端面(側面20D)において長手方向の中央に配置されている。そして、共振器4を構成する導体層361,371,381と、共振器5を構成する導体層362,372,382と、共振器6を構成する導体層363,373,383は、積層方向Tと交差する方向、特に積層方向Tに垂直な方向に配列されている。インダクタ用導体層331は、入力端子22と導体層361とを接続するため、誘電体層の積層方向に見たときに、入力端子22が配置された位置から導体層361が配置された位置へ向けて延びる。また、インダクタ用導体層411は、出力端子23と導体層383とを接続するため、誘電体層の積層方向に見たときに、出力端子23が配置された位置から導体層383が配置された位置へ向けて延びる。従って、本実施の形態では、誘電体層の積層方向に見たときに、インダクタ用導体層331,411の各々の少なくとも一部が導体層361,371,381と導体層363,373,383との間に位置する構成を容易に実現することができる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態に係る電子部品について説明する。本実施の形態に係る電子部品51の回路構成は、図1に示した第1の実施の形態に係る電子部品1の回路構成と同じである。図19は、電子部品51の外観を示す斜視図である。図20は、電子部品51の主要部分を示す説明図である。図19および図20に示したように、電子部品51は、電子部品51の構成要素を一体化するための積層基板60を備えている。後で詳しく説明するが、積層基板60は、積層された複数の誘電体層と複数の導体層とを含んでいる。インダクタ7,8,11〜13は、いずれも、積層基板60内の1つ以上の導体層を用いて構成されている。キャパシタ14〜19は、積層基板60内の導体層と誘電体層を用いて構成されている。
積層基板60は、上面60Aと、底面60Bと、4つの側面60C〜60Fを有する直方体形状をなしている。上面60Aと底面60Bは平行であり、側面60C,60Dも平行であり、側面60E,60Fも平行である。側面60C〜60Fは、上面60Aおよび底面60Bに対して垂直になっている。
側面60Cには入力端子62が設けられている。側面60Dには出力端子63が設けられている。側面60E,60Fには、それぞれグランド用端子64,65が設けられている。入力端子62は図1における入力端子2に対応し、出力端子63は図1における出力端子3に対応する。グランド用端子64,65はグランドに接続される。
積層基板60において、上面60Aおよび底面60Bに垂直な方向が、複数の誘電体層の積層方向である。図19および図20において、記号Tを付した矢印は、複数の誘電体層の積層方向を表している。従って、本実施の形態では、上面60Aおよび底面60Bが、積層方向における両端に配置された端面である。上面60Aは本発明における第1の端面に対応し、底面60Bは本発明における第2の端面に対応する。また、側面60Cは本発明における第1の側面に対応し、側面60Dは本発明における第2の側面に対応する。電子部品51は、積層基板60の底面60Bが実装基板に当接するように、実装基板に実装される。
次に、図21ないし図23を参照して、積層基板60における誘電体層と導体層について詳しく説明する。図21において(a)〜(c)は、それぞれ、上から2層目ないし4層目の誘電体層の上面を示している。図22において(a)〜(c)は、それぞれ、上から5層目ないし7層目の誘電体層の上面を示している。図23において(a)〜(c)は、それぞれ、上から8層目ないし10層目の誘電体層の上面を示している。図示しないが、1層目の誘電体層の上面には導体層は形成されていない。
図21(a)に示した2層目の誘電体層72の上面には、グランド用導体層721が形成されている。この導体層721は、グランド用端子64,65に接続される。
図21(b)に示した3層目の誘電体層73の上面には、インダクタ用導体層731が形成されている。導体層731は、第1の端部731aと第2の端部731bとを有している。第1の端部731aは、誘電体層73の上面における右側の端縁に配置されている。導体層731は、第1の端部731aから左へ延びた後、上へ延びるように屈曲し、更に右へ延びるように屈曲し、更に上へ延びるよう屈曲して第2の端部731bに達している。第1の端部731aは、出力端子63に接続される。また、誘電体層73には、導体層731における第2の端部731bの近傍の部分に接続されたスルーホール732が形成されている。
図21(c)に示した4層目の誘電体層74の上面には、キャパシタ用導体層741が形成されている。また、誘電体層74には、導体層741に接続されたスルーホール742が形成されている。スルーホール742には、スルーホール732が接続されている。
図22(a)に示した5層目の誘電体層75の上面には、共振器用導体層751,752,753が形成されている。導体層751,752,753は、図22(a)における左側から導体層751,752,753の順に、左右方向に配列されている。導体層751は、第1の端部751aと、その反対側の第2の端部751bとを有している。導体層752は、第1の端部752aと、その反対側の第2の端部752bとを有している。導体層753は、第1の端部753aと、その反対側の第2の端部753bとを有している。第2の端部751b,752b,753bはグランド用端子64に接続される。また、誘電体層75には、第1の端部751aと第2の端部751bとの間の位置において導体層751に接続されたスルーホール754と、第1の端部752aと第2の端部752bとの間の位置において導体層752に接続されたスルーホール755と、第1の端部753aと第2の端部753bとの間の位置において導体層753に接続されたスルーホール756とが形成されている。導体層753には、スルーホール742が接続されている。
図22(b)に示した6層目の誘電体層76の上面には、キャパシタ用導体層761が形成されている。導体層761は、図22(b)における左右方向に延在している。導体層761はグランド用端子65に接続される。また、誘電体層76には、それぞれスルーホール754,755,756に接続されたスルーホール764,765,766が形成されている。
図22(c)に示した7層目の誘電体層77の上面には、共振器用導体層771,772,773が形成されている。導体層771,772,773は、図22(c)における左側から導体層771,772,773の順に、左右方向に配列されている。導体層771は、第1の端部771aと、その反対側の第2の端部771bとを有している。導体層772は、第1の端部772aと、その反対側の第2の端部772bとを有している。導体層773は、第1の端部773aと、その反対側の第2の端部773bとを有している。第2の端部771b,772b,773bはグランド用端子64に接続される。また、誘電体層77には、導体層771に接続されたスルーホール774が形成されている。
図23(a)に示した8層目の誘電体層78の上面には、キャパシタ用導体層781が形成されている。また、誘電体層78には、導体層781に接続されたスルーホール782が形成されている。スルーホール782には、スルーホール774が接続されている。
図23(b)に示した9層目の誘電体層79の上面には、インダクタ用導体層791が形成されている。導体層791は、第1の端部791aと第2の端部791bとを有している。第1の端部791aは、誘電体層79の上面における左側の端縁に配置されている。導体層791は、第1の端部791aから右へ延びた後、上へ延びるように屈曲し、更に左へ延びるように屈曲し、更に上へ延びるよう屈曲して第2の端部791bに達している。第1の端部791aは、入力端子62に接続される。導体層791における第2の端部791bの近傍の部分にはスルーホール782が接続されている。
図23(c)に示した10層目の誘電体層80の上面には、グランド用導体層801が形成されている。この導体層801は、グランド用端子64,65に接続される。
図示しない1層目の誘電体層と図21ないし図23に示した誘電体層72〜80および導体層が積層されて積層体が形成される。そして、この積層体に対して端子62〜65が形成されて、積層基板60が完成する。
図1におけるインダクタ11は、スルーホール754,764によって接続された導体層751,771を用いて構成されている。導体層751,771は、本発明における第1の共振器用導体層に対応する。図1におけるインダクタ12は、スルーホール755,765によって接続された導体層752,772を用いて構成されている。図1におけるインダクタ13は、スルーホール756,766によって接続された導体層753,773を用いて構成されている。導体層753,773は、本発明における第2の共振器用導体層に対応する。
図1におけるインダクタ7は、インダクタ用導体層791を用いて構成されている。インダクタ用導体層791は、本発明における第1のインダクタ用導体層に対応する。図1におけるインダクタ8は、インダクタ用導体層731を用いて構成されている。インダクタ用導体層731は、本発明における第2のインダクタ用導体層に対応する。
図22(b)に示したキャパシタ用導体層761は、導体層751,752,753と、導体層771,772,773との間に配置されている。導体層751は誘電体層75を介して導体層761に対向し、導体層771は誘電体層76を介して導体層761に対向している。図1におけるキャパシタ14は、これら導体層751,761,771と誘電体層75,76によって構成されている。導体層752は誘電体層75を介して導体層761に対向し、導体層772は誘電体層76を介して導体層761に対向している。図1におけるキャパシタ15は、これら導体層752,761,772と誘電体層75,76によって構成されている。導体層753は誘電体層75を介して導体層761に対向し、導体層773は誘電体層76を介して導体層761に対向している。図1におけるキャパシタ16は、これら導体層753,761,773と誘電体層75,76によって構成されている。
図23(a)に示したキャパシタ用導体層781は、スルーホール774を介して導体層771に接続され、スルーホール782を介して導体層791に接続され、誘電体層77を介して導体層772に対向している。図1におけるキャパシタ17は、導体層772,781と、これらの間に配置された誘電体層77によって構成されている。
図21(c)に示したキャパシタ用導体層741は、スルーホール742を介して導体層753に接続され、スルーホール732を介して導体層731に接続され、誘電体層74を介して導体層752に対向している。図1におけるキャパシタ18は、導体層741,752と、これらの間に配置された誘電体層74によって構成されている。
また、図1におけるキャパシタ19は、導体層741,781と、これらの間に配置された誘電体層74〜77とによって構成されている。
なお、本実施の形態において、積層基板60としては、誘電体層の材料として樹脂、セラミック、あるいは両者を複合した材料を用いたもの等、種々のものを用いることができる。しかし、積層基板60としては、特に、高周波特性に優れた低温同時焼成セラミック多層基板を用いることが好ましい。
図20に示したように、積層基板60は、誘電体層の積層方向Tにおける両端に配置された第1および第2の端面、すなわち上面60Aと底面60Bと、上面60Aおよび底面60Bに垂直で且つ互いに反対側に配置された第1および第2の側面、すなわち側面60C,60Dとを有している。入力端子62は側面60Cに配置され、出力端子63は側面60Dに配置されている。そして、共振器4を構成する導体層751,771と、共振器5を構成する導体層752,772と、共振器6を構成する導体層753,773は、積層方向Tと交差する方向、特に積層方向Tに垂直な方向に配列されている。
以下、比較例の電子部品と比較しながら、本実施の形態に係る電子部品51の作用、効果について説明する。始めに、図24を参照して、比較例の電子部品の構成について説明する。比較例の電子部品における積層基板60は、図21(b)に示したインダクタ用導体層731の代わりに、図24(a)に示した導体層733を有している。導体層733は、第1の端部733aと第2の端部733bとを有している。第1の端部733aは、誘電体層73の上面における右側の端縁に配置されている。導体層733は、第1の端部733aから左へ延びた後、上へ延びるように屈曲し、更に左へ延びるように屈曲し、更に下へ延びるよう屈曲して第2の端部733bに達している。第1の端部733aは、出力端子63に接続される。また、導体層733における第2の端部733bの近傍の部分には、スルーホール732が接続されている。
また、比較例の電子部品における積層基板60は、図23(b)に示したインダクタ用導体層791の代わりに、図24(b)に示した導体層792を有している。導体層792は、第1の端部792aと第2の端部792bとを有している。第1の端部792aは、誘電体層79の上面における左側の端縁に配置されている。導体層792は、第1の端部792aから右へ延びた後、上へ延びるように屈曲し、更に右へ延びるように屈曲し、更に下へ延びるよう屈曲して第2の端部792bに達している。第1の端部792aは、入力端子62に接続される。また、導体層792における第2の端部792bの近傍の部分には、図23(a)に示したスルーホール782が接続されている。
次に、図25および図26を参照して、比較例の電子部品と本実施の形態に係る電子部品51との構成上の相違について説明する。図25は、比較例の電子部品における導体層733,792と、共振器用導体層751,752,753,771,772,773との位置関係を示す説明図である。図26は、本実施の形態に係る電子部品51における導体層731,791と、共振器用導体層751,752,753,771,772,773との位置関係を示す説明図である。
図25に示したように、比較例の電子部品では、導体層792,733は、いずれも、誘電体層の積層方向に見たときに、共振器4を構成する導体層751,771と、共振器6を構成する導体層753,773との間に位置している部分を含んでいない。
これに対し、本実施の形態に係る電子部品51では、図26に示したように、インダクタ用導体層791,731は、それぞれ、誘電体層の積層方向に見たときに、共振器4を構成する導体層751,771と、共振器6を構成する導体層753,773との間に位置している部分を含んでいる。より詳しく説明すると、インダクタ用導体層791は、誘電体層の積層方向に見たときに、共振器4を構成する導体層751,771と、共振器4に隣接する共振器5を構成する導体層752,772との間に位置している部分を含んでいる。同様に、インダクタ用導体層731は、誘電体層の積層方向に見たときに、共振器6を構成する導体層753,773と、共振器6に隣接する共振器5を構成する導体層752,772との間に位置している部分を含んでいる。
本実施の形態では、インダクタ用導体層791によって構成されるインダクタ7が発生する磁界によって、共振器4とこれに隣接する共振器5との間の誘導性結合が弱められ、インダクタ用導体層731によって構成されるインダクタ8が発生する磁界によって、共振器6とこれに隣接する共振器5との間の誘導性結合が弱められる。比較例における導体層792,733によっては、上述のような作用は生じない。従って、比較例の電子部品の回路構成は、実質的には図10に示した回路構成となる。
次に、シミュレーションによって、比較例の電子部品と本実施の形態に係る電子部品51について、通過・減衰特性を比較した結果について説明する。このシミュレーションでは、比較例の電子部品と本実施の形態に係る電子部品51のいずれについても、通過帯域がおよそ2.4〜2.5GHzのバンドパスフィルタとして機能するように設計されている。図27は、シミュレーションによって得られた本実施の形態に係る電子部品51の通過・減衰特性および比較例の電子部品を示している。図27において、破線は比較例の電子部品の通過・減衰特性を示し、実線は本実施の形態に係る電子部品51の電子部品の通過・減衰特性を示している。図27から、本実施の形態に係る電子部品51の通過・減衰特性では、比較例の電子部品の通過・減衰特性に比べて、2GHz以下の周波数帯域における減衰量が大きくなっていることが分かる。
上記のシミュレーションの結果からも分かるように、本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、複数の共振器を備えた電子部品51において、隣接する共振器間の誘導性結合を弱めることによって所望の特性を得ることが可能になる。また、本実施の形態によれば、電子部品51の小型化、薄型化に伴って隣接する共振器間の距離を短くせざるを得ない場合であっても、隣接する共振器間の誘導性結合の大きさを小さくすることができるので、電子部品51の小型化、薄型化が容易になる。
また、本実施の形態では、図26に示したように、インダクタ7を構成するインダクタ用導体層791と、インダクタ8を構成するインダクタ用導体層731は、それぞれ、誘電体層の積層方向に見たときに、共振器4を構成する導体層751,771と、共振器6を構成する導体層753,773との間に位置している部分を含んでいる。これにより、本実施の形態によれば、より効果的に、インダクタ7,8によって、隣接する共振器間の誘導性結合を弱めることが可能になる。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態に係る電子部品について説明する。本実施の形態に係る電子部品81の回路構成は、図1に示した第1の実施の形態に係る電子部品1の回路構成と同じである。図28は、本実施の形態に係る電子部品81の主要部分を示す説明図である。電子部品81は、電子部品81の構成要素を一体化するための積層基板90を備えている。積層基板90は、積層された複数の誘電体層と複数の導体層とを含んでいる。インダクタ7,8,11〜13は、いずれも、積層基板90内の1つ以上の導体層を用いて構成されている。キャパシタ14〜19は、積層基板90内の導体層と誘電体層を用いて構成されている。積層基板90の外観は、図19に示した第2の実施の形態における積層基板60と同様である。また、積層基板90における誘電体層の材料も、第2の実施の形態における積層基板60と同様である。図28において、記号Tを付した矢印は、複数の誘電体層の積層方向を表している。
次に、図29および図30を参照して、積層基板90における誘電体層と導体層について詳しく説明する。図29において(a)〜(c)は、それぞれ、上から2層目ないし4層目の誘電体層の上面を示している。図30において(a)〜(c)は、それぞれ、上から5層目ないし7層目の誘電体層の上面を示している。図30において(d)は、上から10層目の誘電体層の上面を示している。図示しないが、1層目、8層目および9層目の誘電体層の上面には導体層は形成されていない。
図29(a)に示した2層目の誘電体層72の上面には、グランド用導体層721が形成されている。この導体層721は、グランド用端子64,65に接続される。
図29(b)に示した3層目の誘電体層73の上面には、インダクタ用導体層731,735が形成されている。導体層731の形状および配置は、第2の実施の形態における導体層731と同じである。導体層735の形状は、導体層731と左右対称である。導体層735は、第1の端部735aと第2の端部735bとを有している。第1の端部735aは、誘電体層73の上面における左側の端縁に配置されている。導体層735は、第1の端部735aから右へ延びた後、上へ延びるように屈曲し、更に左へ延びるように屈曲し、更に上へ延びるよう屈曲して第2の端部735bに達している。第1の端部735aは、入力端子62に接続される。また、誘電体層73には、導体層731における第2の端部731bの近傍の部分に接続されたスルーホール732と、導体層735における第2の端部735bの近傍の部分に接続されたスルーホール736とが形成されている。
図29(c)に示した4層目の誘電体層74の上面には、キャパシタ用導体層743,744が形成されている。また、誘電体層74には、それぞれ導体層743,744に接続されたスルーホール745,746が形成されている。スルーホール745にはスルーホール732が接続され、スルーホール746にはスルーホール736が接続されている。
図30(a)、(b)に示したように、5層目の誘電体層75および6層目の誘電体層76の各々の上面に形成された導体層および誘電体層75,76の各々に形成されたスルーホールの構成は、図22(a)、(b)に示した第2の実施の形態における構成と同じである。なお、図30(a)に示した共振器用導体層751,753には、それぞれ図29(c)に示したスルーホール746,745が接続されている。
図30(c)に示した7層目の誘電体層77の上面には、共振器用導体層771,772,773が形成されている。導体層771,772,773の形状および配置は、図22(c)に示した第2の実施の形態における導体層771,772,773と同じである。なお、本実施の形態では、第2の実施の形態におけるスルーホール774は形成されていない。
図30(d)に示した10層目の誘電体層80の上面には、グランド用導体層801が形成されている。この導体層801は、グランド用端子64,65に接続される。
図示しない1層目、8層目、9層目の誘電体層と図29および図30に示した誘電体層72〜77,80および導体層が積層されて積層体が形成される。そして、この積層体に対して端子62〜65が形成されて、積層基板90が完成する。
本実施の形態において、図1におけるインダクタ11,12,13は、第2の実施の形態と同様にして構成されている。また、図1におけるキャパシタ14,15,16も、第2の実施の形態と同様にして構成されている。
図1におけるインダクタ7は、インダクタ用導体層735を用いて構成されている。インダクタ用導体層735は、本発明における第1のインダクタ用導体層に対応する。図1におけるインダクタ8は、インダクタ用導体層731を用いて構成されている。インダクタ用導体層731は、本発明における第2のインダクタ用導体層に対応する。
図29(c)に示したキャパシタ用導体層744は、スルーホール746を介して導体層751に接続され、スルーホール736を介して導体層735に接続され、誘電体層74を介して導体層752に対向している。図1におけるキャパシタ17は、導体層744,752と、これらの間に配置された誘電体層74によって構成されている。
図29(c)に示したキャパシタ用導体層743は、スルーホール745を介して導体層753に接続され、スルーホール732を介して導体層731に接続され、誘電体層74を介して導体層752に対向している。図1におけるキャパシタ18は、導体層743,752と、これらの間に配置された誘電体層74によって構成されている。
また、図1におけるキャパシタ19は、導体層743,744によって構成されている。
本実施の形態に係る電子部品81では、インダクタ用導体層735,731は、それぞれ、誘電体層の積層方向に見たときに、共振器4を構成する導体層751,771と、共振器6を構成する導体層753,773との間に位置している部分を含んでいる。より詳しく説明すると、インダクタ用導体層735は、誘電体層の積層方向に見たときに、共振器4を構成する導体層751,771と、共振器4に隣接する共振器5を構成する導体層752,772との間に位置している部分を含んでいる。同様に、インダクタ用導体層731は、誘電体層の積層方向に見たときに、共振器6を構成する導体層753,773と、共振器6に隣接する共振器5を構成する導体層752,772との間に位置している部分を含んでいる。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第2の実施の形態と同様である。
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、各実施の形態には共振器の数が3つの例を示したが、本発明の電子部品は、隣接する2つの共振器同士が誘導性結合するように設けられた複数の共振器を備えていればよく、共振器の数は、2つでもよいし、4つ以上であってもよい。
また、本発明の電子部品は、バンドパスフィルタに限らず、複数の共振器を備えた電子部品全般に適用することができる。
本発明の電子部品は、ブルートゥース規格の通信装置や無線LAN用の通信装置において用いられるフィルタ、特にバンドパスフィルタとして有用である。