JP4503596B2 - シクロペンテンニトリル誘導体の製造方法 - Google Patents

シクロペンテンニトリル誘導体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、α,β−不飽和ケトンへの共役付加反応を利用した、新規なシクロペンテンニトリル誘導体の製造法に関する。
α,β−不飽和ケトンへの共役付加反応を利用するシクロペンテン誘導体の合成法は数多く知られているが、何れも高価な試薬や化合物を必要とし、しかも多段階を要するため工業化されている方法は皆無に近い。
ニトリル誘導体の共役付加反応を利用したシクロペンテンニトリル誘導体の合成法は、これまでに全く知られていない。
また、光学活性なシクロペンテンニトリル誘導体の工業的製法は全くない。
α,β−不飽和ケトンに対するニトリルカルボアニオンの反応は通常ケトンへの1,2−付加反応のみが起こり、共役付加反応は起こらない。
従来、共役付加が優先する例として知られているのは、フェニルアセトニトリルのようにα位にアリール置換基を有する基質の反応に限られている(非特許文献1及び非特許文献2参照)。
R. Sauvetre, M. C. Roux, and J. Seyden-Penne, Tetrahedron, 34, 2135 (1978) M. C. Roux, L. Wartski, and J. Seyden-Penne, Tetrahedron, 37, 1927 (1981)
本発明は、上記した如き現状に鑑みなされたもので、高価な試薬や化合物を使用せずに少ない工程数でシクロペンテンニトリル誘導体、就中、容易に光学分割可能なシクロペンテンニトリル誘導体が、より詳細には橋頭にステロイド骨格と同様の立体配置を持ったメチル基を有するシクロペンテンニトリル誘導体を収率良く得ることができる、α,β−不飽和ケトンへのニトリル誘導体の共役付加反応を利用したシクロペンテンニトリル誘導体の合成法を提供することを目的とする。
本発明は、α,β−不飽和ケトンと、γ−アルコキシ−β,γ−不飽和ニトリルとを原料物質として使用することを特徴とする、シクロペンテンニトリル誘導体の製造方法に関する。より詳細には、本発明は、α,β−不飽和ケトンと、α位にアルキル基又はアリル基を有していてもよい4−アルコキシ−3−ブテンニトリルとを原料物質として使用することを特徴とする、シクロペンテンニトリル誘導体の立体選択的な製造方法に関する。
また、本発明は、α,β−不飽和ケトンと、γ−アルコキシ−β,γ−不飽和ニトリルとの共役付加反応により得られた化合物を、次いで5員環形成反応に付すことを特徴とする、シクロペンテンニトリル誘導体の製造法に関する。
より詳細には、本発明は、α,β−不飽和ケトンと、α位にアルキル基又はアリル基を有していてもよい4−アルコキシ−3−ブテンニトリルとの共役付加反応により得られた化合物をエノールエステル化し、次いでこれを5員環形成反応に付すことを特徴とする、シクロペンテンニトリル誘導体の製造法に関する。
さらに、本発明は、前記した本発明の方法により製造されたシクロペンテンニトリル誘導体のケト基を還元して、対応するアルコール誘導体とし、これを光学分割することによる光学活性アルコール誘導体を製造する方法に関する。
さらに詳細には、本発明は、α,β−不飽和ケトンと、α位にアルキル基又はアリル基を有していてもよい4−アルコキシ−3−ブテンニトリル、例えば、4−メトキシ−3−ブテンニトリルとの共役付加反応により得られた化合物を、有機カルボン酸又は炭酸の誘導体、好ましくは例えば、無水酢酸又はクロロ炭酸エステル等のエステル化剤を用いてエノールエステルとし、これを例えば強酸で処理することにより5員環を形成させてシクロペンテンニトリル誘導体とする、新規で且つ収率の良いシクロペンテンニトリル誘導体の製造法に関する。
また、本発明は、共役付加反応が、ハロゲン化アルキル又はハロゲン化アルケニルの存在下に行われ、γ−アルコキシ−β,γ−不飽和ニトリルのα位のアルキル化又はアルケニル化が同時に行われるものである前記製造方法を提供するものである。
さらに、本発明は、光学活性なシクロペンテンニトリル誘導体を製造するための原料物質としての、γ−アルコキシ−β,γ−不飽和ニトリルの使用に関する。より詳細には、本発明は、光学分割可能なシクロペンテンニトリル誘導体を製造するための原料物質としての、α位にアルキル基又はアリル基を有していてもよい4−アルコキシ−3−ブテンニトリルの使用に関する。
本発明の製造法において用いられる、γ−アルコキシ−β,γ−不飽和ニトリルとしては、ニトリルのα位に1個又は2個の水素原子を有し、ニトリルのγ位にアルコキシ基が置換しており、ニトリルのβ,γ位に炭素−炭素二重結合を有する不飽和ニトリルが挙げられる。好ましいγ−アルコキシ−β,γ−不飽和ニトリルとしては、α位にアルキル基又はアリル基を有していてもよい4−アルコキシ−3−ブテンニトリル(以下、4−アルコキシ−3−ブテンニトリル類と略す。)などが挙げられ、例えば下記一般式[1]
Figure 0004503596
(式中、Rはアルキル基を表し、Rは水素原子、アルキル基又はアリル基を表す。)
で示される化合物が挙げられる。
上記式中、R及びRで表されるアルキル基としては、例えば、炭素数が1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6の直鎖状又は分枝状のアルキル基が挙げられ、より具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第二級ブチル基、第三級ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。
本発明の製造法において用いられる4−アルコキシ−3−ブテンニトリル類の具体例としては、例えば、4−メトキシ−3−ブテンニトリル、4−メトキシ−2−メチル−3−ブテンニトリル、2−(2−メトキシエテニル)−4−ペンテンニトリル等が挙げられるが勿論これらに限定されるものではない。
本発明の製造法において用いられるα,β−不飽和ケトンとしては、α,β位に炭素−炭素二重結合を有するケトンであって、非環式又は環式のいずれであってもよいが、好ましくは環状ケトン類が挙げられる。環状ケトン類としては、単環のシクロアルケン環でも、シクロアルケン環とシクロアルカン環との多環式又は縮合環式であってもよい。また、単環、多環又は縮合環の環上にアルキル基等の置換基を1以上有していてもよい。
本発明の製造法において用いられるα,β−不飽和ケトンとしては、例えば、下記一般式[2]
Figure 0004503596
(式中、環Aはシクロアルカン環と縮合環を形成していてもよいシクロアルケン環を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表す。)
で示される環状ケトン化合物が挙げられる。
上記式中、環Aで表される、シクロアルカン環と縮合環を形成していてもよいシクロアルケン環としては、例えば炭素数3〜20、好ましくは5〜12の、単環、又はシクロアルカン環と縮合環を形成しているシクロアルケン環等が挙げられる。
上記式中、Rで表されるアルキル基としては、上記R及びRで表されるアルキル基と同様のものが挙げられる。
また、環Aで表される、シクロアルカン環と縮合環を形成していてもよいシクロアルケン環は、環上にR以外にアルキル基等の置換基を1以上有していてもよい。
本発明の製造法において用いられるα,β−不飽和ケトンとしては、例えば、ケト基を有するステロイド類等も挙げることができる。
本発明の方法におけるハロゲン化アルキル又はハロゲン化アルケニルとしては、炭素数が1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6の直鎖状又は分枝状のアルカン化合物の少なくとも1個、好ましくは1個の水素原子が、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルキル、また、炭素数が3〜20、好ましくは3〜10、より好ましくは3〜6の直鎖状又は分枝状のアルケン化合物の少なくとも1個、好ましくは1個の水素原子が、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルケニルが挙げられる。好ましい、ハロゲン化アルキル又はハロゲン化アルケニルとしては、ヨウ化メチル、臭化アリルなどが挙げられる。
本発明の方法における、α位にアルキル基又はアリル基を有していてもよい4−アルコキシ−3−ブテンニトリルとしては、シアノ基のα位に既にアルキル基やアリル基が置換した化合物であってもよいが、α位が無置換、即ちメチレン基の化合物を原料物質として使用して、共役付加反応における塩基性の条件下で、ハロゲン化アルキル又はハロゲン化アルケニルを存在させることにより、その場で生成させることもできる。
本発明の製造法において、α位にアルキル基又はアリル基を有していてもよい4−アルコキシ−3−ブテンニトリルとして下記一般式[1]
Figure 0004503596
(式中、Rはアルキル基を表し、Rは水素原子、アルキル基又はアリル基を表す。)
で示される化合物を用い、α,β−不飽和ケトンとして下記一般式[2]
Figure 0004503596
(式中、環Aはシクロアルカン環と縮合環を形成していてもよいシクロアルケン環を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表す。)
で示される化合物を用いた場合、得られるシクロペンテンニトリル誘導体は、下記一般式[3]
Figure 0004503596
(式中、R及びRは前記と同じ。)
で示される化合物となる。
本発明の製造法において、共役付加反応により得られたエノラート化合物をエステル化した後、5員環形成反応に付す方法としては、例えば、得られたエノラート化合物を、カルボン酸又は炭酸の反応性誘導体などのエステル化剤を用いてエノールエステルとし、これを強酸で処理する方法等が挙げられる。
用いられる酸としては、強酸であれば何れの酸でも使用可能であるが、通常は、例えば、塩酸、硫酸、過塩素酸等の鉱酸類や、例えばp−トルエンスルホン酸、酢酸等の有機酸等が好ましく用いられる。
本発明の製造法において、α,β−不飽和ケトンと、γ−アルコキシ−β,γ−不飽和ニトリルとの共役付加反応により得られたエノラート化合物は、エステル化した後、次の環化反応に使用される。エステル化物は、一度それを単離してから次に環化反応に使用することもできるが、単離することなく、粗生成物としてそのまま次の環化反応に供することもできる。エノラート化合物をエステル化する方法としては各種の有機カルボン酸又は炭酸の反応性誘導体、例えばカルボン酸無水物、酸ハロゲン化物、ハロゲン化炭酸エステルなどのエステル化剤を用いてエノラート部分の酸素をエステル化してエノールエステルとすることができる。使用されるエステル化剤の具体例としては、例えば、無水酢酸やクロロ炭酸エステルなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
本発明の製造法において用いられるγ−アルコキシ−β,γ−不飽和ニトリル、例えば4−アルコキシ−3−ブテンニトリル類の使用量は、α,β−不飽和ケトンに対し、通常、1〜2当量、好ましくは1.1〜1.5当量である。
また、本発明の製造法において用いられる無水酢酸やクロロ炭酸エステル等のエステル化剤の使用量は、α,β−不飽和ケトンに対し、通常、1〜3当量、好ましくは1.1〜1.5当量である。
本発明の製造法に係る共役付加反応は、通常、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下、テトラヒドロフラン(THF)やシクロペンチルメチルエーテル等の溶媒中で、−10℃以下、好ましくは−50℃以下、より好ましくは−70℃以下で、塩基の存在下で数十分乃至数時間撹拌することにより行われる。使用される塩基としては、カリウムアルコキシド、ナトリウムアルコキシドなどのアルカリ金属アルコキシド、水素化ナトリウムなどの水素化物又はその誘導体などのカルバニオンを生成させるための各種の塩基を使用することができる。好ましい塩基としては、カリウムを含有する塩基性化合物が挙げられる。
反応後、反応混合物に無水酢酸やクロロ炭酸エステル等のエステル化剤を加えて生成物のエノラート化合物をエステル化する。
得られたエノールエステルの粗生成物を、例えばTHF等の溶媒中、強酸の水溶液で加熱処理すれば、エノールエーテル部の加水分解と分子内アルドール縮合が進行し、シクロペンテンニトリル誘導体が容易に且つ高収率で得られる。
原料として使用するα,β−不飽和ケトンのβ位がプロキラルな場合には、生成物はジアステレオマーとなり、ラセミ体として得られるが、アンチ体(例えば、α,β−不飽和ケトンのメチル基と、シアノ基が異なる側にあるもの(以下の実施例ではb体と呼ぶ))とシン体(例えば、α,β−不飽和ケトンのメチル基と、シアノ基が同じ側にあるもの(以下の実施例ではa体と呼ぶ))とは、かならずしも50:50の比ではなく、どちらかの立体配置のものが優勢に得られる。本発明ではこのようなアンチ体又はシン体のいずれかが優勢に得られることを立体選択的という。
本発明の方法で得られた、ジアステレオマーの混合物は、再結晶法などにより簡単に分割することができる。そして、ステロイドのCD環と同様な立体配置を有するシン体を光学分割すればステロイドと同じ立体配置を有する2環性化合物が得られる。本発明者らは、本発明の方法で得られたシン体が、酵素による加水分解法により極めて簡便に光学分割可能であることも見出した。使用する酵素はカルボン酸エステル、好ましくは酢酸エステルを加水分解することができる酵素であればよく、各種の市販のリパーゼ類を使用することができる。
本発明の製造法を、前記した一般式[1]及び一般式[2]を用い、塩基としてカリウム化合物を用い、エステル化剤として無水酢酸を使用した場合の反応スキームを例示すれば、例えば、以下のようになる。
Figure 0004503596
即ち、例えば、4−メトキシ−3−ブテンニトリル1(R=CH,R=H)にテトラヒドロフラン中、低温下でカリウムヘキサメチルジシラジド(KHMDS)を作用させると、2位のプロトンが引抜かれてカルバニオン2が生成する。
ニトリル1は、γ−カルボニルニトリルのエノール誘導体であることから、炭素−炭素二重結合におけるZ体とE体の割合は約6:4などの混合物となることもあるが、両者を分離する必要はない。
カルバニオン2にヨウ化メチルあるいは臭化アリルを加えると、ニトリル1の2位にメチル基あるいはアリル基が導入される(R=CH 又は CHCH=CH)。これにさらにカリウムヘキサメチルジシラジド(KHMDS)などの塩基を作用させると、再び2位のプロトンが引抜かれてカルバニオンが生成し、これも共役付加に用いることができる(詳細は、後記実施例の項参照)。
カルバニオン2の溶液に環状α,β−不飽和ケトン3を存在させると共役付加反応が速やかに進行し、対応するエノラート化合物4が生成する。この反応溶液に無水酢酸を加えるとエノールエステル5が得られる。
本発明の方法においては、共役付加を促進するために広く用いられるヘキサメチルホスホルトリアミド(HMPA)等の添加剤を存在させてもよいが、必ずしも存在させる必要はない。また、低温、短時間で反応を停止しても1,2−付加体は全く検出されない。
なお、無水酢酸のかわりにクロロ炭酸エステルを用いると、対応するエノール炭酸エステルが得られる。
エノールエステル5を単離することなく、そのままテトラヒドロフランと希塩酸の混合物中で加熱すると、二環性エノン6が収率よく得られる。
なお、エノール酢酸エステルもエノール炭酸エステルも同等な結果を与える。
テトラヒドロフランは反応溶液を均一系にするために用いているが、溶媒はテトラヒドロフランに限定されるものではなく、反応に何らかの悪影響を与える虞のあるもの以外は何れも使用可能である。
本発明の方法によれば、光学分割可能なシクロペンテンニトリル誘導体が、容易に且つ収率良く得られる。特に、本発明の方法で得られるシクロペンテンニトリル誘導体は、ステロイド骨格のC環−D環に相当する環構造及び立体配置(橋頭のβ位にメチルなどのアルキル基を有する構造)を有する化合物を簡便な方法で高収率で製造することができる。例えば、3−メチル−2−シクロヘキセノンに対し本法を適用すると、ステロイドCD環部に相当するシクロペンテンニトリル誘導体が立体選択的に得られる。このシクロペンテンニトリル誘導体は容易に光学分割することができ、例えば、再結晶法などによりジアステレオマーを分離し、次いでケト基を還元して生成させた水酸基をエステル化した後、リパーゼなどの酵素を用いることにより選択的な加水分解による光学分割か可能となり、光学活性な二環性ニトリル誘導体を製造することができる。従って、本発明の方法によれば、ステロイドのCD環部の実用的な不斉合成が可能となる。
本発明の方法は、立体障害の大きなエノンに対しても適用可能であり、イソホロンやWieland-Miescher ケトンからそれぞれ対応するシクロペンテンニトリル誘導体が好収率で得られる。
本発明の方法は、α位の水素原子が引き抜かれ易いγ−アルコキシ−β,γ−不飽和ニトリル、即ち4−アルキコキシ−3−ブテンニトリル類を原料として使用することを特徴とするものであり、かかる原料化合物を使用することにより、α,β−不飽和ケトンと選択的かつ容易に反応し、そして続く環化反応も容易に、かつ高収率で行うことができる。
本発明の方法における原料化合物である、γ−アルコキシ−β,γ−不飽和ニトリルは、γ−カルボニルニトリルのエノール誘導体であるが、エノール誘導体とすることにより、シアノ基のα位の水素原子の引き抜きが優先的かつ選択的に生起して、マイケル反応型の求核付加反応が進行することは本発明により初めて見出されたものである。
本発明に係る4−アルコキシ−3−ブテンニトリル類は様々な置換様式を持つα,β−不飽和ケトン類に高収率で共役付加反応するので、これをエノールエステルとした後、それに続く強酸を用いる5員環形成反応により各種の置換様式を有する、各種の2環性及び3環性シクロペンテンニトリル誘導体がわずか2工程で収率良く合成することできる。そして、得られたシクロペンテンニトリル誘導体は、ステロイドのCD環部分と同じ立体配置を有する誘導体に容易に光学分割することができるので、ステロイド骨格を合成する際の原料として有用となる。即ち、本発明の方法によれば、ステロイドのCD環部を2工程で収率良く合成することができ、かつそれを容易に光学分割することができるので、ステロイドのCD環部の実用的な不斉合成法の開発に結びつけることができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
Figure 0004503596
アルゴン雰囲気下で500mLの二口フラスコにカリウムヘキサメチルジシラジド(11.0g,55mmol)を仕込み、−78℃でテトラヒドロフラン200mLに溶解した。これに4−メトキシ−3−ブテンニトリル(1)(5.34g,55.0mmol)のテトラヒドロフラン(25mL)溶液を加え−78℃で1時間撹拌後、3−メチル−2−シクロへキセン−1−オン(2)(5.7mL,50mmol)のテトラヒドロフラン(25mL)溶液を加えて同温度で1時間撹拌した。これに無水酢酸(9.4mL,100mmol)を加え、1時間かけて−45℃まで昇温後、飽和塩化アンモニウム水溶液で反応を停止した。分液して水層をエーテルで抽出し、有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。
粗生成物を還流冷却管を取り付けた500mL二口フラスコに移し、テトラヒドロフラン100mLと3M塩酸100mLを加えた。30分かけて80℃に昇温後、更に2.5時間撹拌した。飽和重曹水で反応を停止して分液し、水層をエーテルで抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=20%)により精製し、エノン(3)を得た[6.8g、エノン(2)からの収率78%、(3a):(3b)=87:13のジアステレオマー混合物]。
Figure 0004503596
塩基としてカリウム−t−ブトキシドを用いて実施例1と同様に行った。
100mL二口フラスコにアルゴン雰囲気下カリウムt−ブトキシド814mg(7.25mmol)をとり、テトラヒドロフラン12.5mLを加えて−78℃に冷却した。続いて3−メチル−2−シクロへキセン−1−オン(1)0.57 mL(5.00mmol)と4−メトキシ−3−ブテンニトリル(2)0.78mL(7.50mmol)のテトラヒドロフラン(4.2mL)溶液を加えた。−78℃で30分撹拌後、無水酢酸 0.95mL(10.0mmol)を加え10分間かけて0℃まで昇温した後、飽和塩化アンモニウム水溶液で反応を停止した。反応混合物をエーテルで抽出し、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去して得られる粗生成物を酢酸(7.5mL)に溶かし100mL二口フラスコに入れ、還流冷却管を取り付ける。次に水2.5mLを加え、混合物を100 ℃で8時間撹拌した後、減圧下で溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマト(酢酸エチル/ヘキサン=20%)で精製し、エノン(3)760mg(81%、(3a):(3b)=83:17のジアステレオマー混合物)を得た。
Figure 0004503596
アルゴン雰囲気下で小試験管にカリウムヘキサメチルジシラジドの0.5Mトルエン溶液(0.50mL,0.25mmol)を仕込み、−78℃に冷却してテトラヒドロフラン0.60mLを加えた。これに4−メトキシ−3−ブテンニトリル(1)(30mg,0.31mmol)のテトラヒドロフラン(0.30mL)溶液を加え、−78℃で1時間撹拌後、2−シクロへキセン−1−オン(4)(22μL,0.23mmol)のテトラヒドロフラン(0.30mL)溶液を加えて同温度で15分間撹拌した。これに無水酢酸(27μL,0.29mmol)を加え、1時間かけて−45℃まで昇温後、飽和塩化アンモニウム水溶液で反応を停止した。分液して水層をエーテルで抽出し、有機層を合わせて無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。
粗生成物を小試験管に移し、テトラヒドロフラン0.45mLと3M塩酸0.45mLを加えた。30分かけて80℃に昇温後、更に10分間撹拌した。飽和重曹水で反応を停止して分液し、水層をエーテルで抽出した。有機層を合わせて無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=20%)により精製し、エノン(5)を得た[31mg、エノン(4)からの収率85%、(5a):(5b)=40:60のジアステレオマー混合物]。
Figure 0004503596
アルゴン雰囲気下で小試験管にカリウムヘキサメチルジシラジドの0.5Mトルエン溶液(0.50mL,0.25mmol)を仕込み、−78℃に冷却してテトラヒドロフラン0.60mLを加えた。これに4−メトキシ−3−ブテンニトリル(1)(30mg,0.31mmol)のテトラヒドロフラン(0.30mL)溶液を加え、−78℃で1時間撹拌後、ジヒドロカルボン(6)(22μL,0.23mmol)のテトラヒドロフラン(0.30mL)溶液を加えて同温度で15分間撹拌した。これに無水酢酸(27μL,0.29mmol)を加え、30分間撹拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液で反応を停止した。分液して水層をエーテルで抽出し、有機層を合わせて無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。
粗生成物を小試験管に移し、テトラヒドロフラン0.45mLと3M塩酸0.45mLを加えた。30分かけて80℃に昇温後、更に30分間撹拌した。飽和重曹水で反応を停止して分液し、水層をエーテルで抽出した。有機層を合わせて無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=30%)により精製し、ヒドロキシケトン(7)を得た[25mg、エノン(6)からの収率46%)。
Figure 0004503596
アルゴン雰囲気下で小試験管にカリウムヘキサメチルジシラジドの0.5Mトルエン溶液(0.50mL,0.25mmol)を仕込み、−78℃に冷却してテトラヒドロフラン0.60mLを加えた。これに4−メトキシ−3−ブテンニトリル(1)(30mg,0.31mmol)のテトラヒドロフラン(0.30mL)溶液を加え、−78℃で1時間撹拌後、2−シクロへプテン−1−オン(8)(25μL,0.23mmol)のテトラヒドロフラン(0.30mL)溶液を加えて同温度で15分間撹拌した。これに無水酢酸(27μL,0.29mmol)を加え、1時間かけて−45℃まで昇温後、飽和塩化アンモニウム水溶液で反応を停止した。分液して水層をエーテルで抽出し、有機層を合わせて無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を留去した。
粗生成物を小試験管に移し、テトラヒドロフラン0.45mLと3M塩酸0.45mLを加えた。20分かけて80℃に昇温後、更に1.5時間撹拌した。飽和重曹水で反応を停止して分液し、水層をエーテルで抽出した。有機層を合わせて無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=20%)により精製し、エノン(9)を得た[29mg、エノン(8)からの収率73%、(9a):(9b)=28:72のジアステレオマー混合物]。
Figure 0004503596
アルゴン雰囲気下で小試験管にカリウムヘキサメチルジシラジドの0.5Mトルエン溶液(0.56mL,0.28mmol)を仕込み、−78℃に冷却してテトラヒドロフラン0.63mLを加えた。これに4−メトキシ−3−ブテンニトリル(1)(34mg,0.35mmol)のテトラヒドロフラン(0.31mL)溶液を加えて−78℃で1時間撹拌後、3−メチル−2−シクロペンテン−1−オン(10)(25μL,0.25mmol)のテトラヒドロフラン(0.31mL)溶液を加えて同温度で1時間撹拌した。これに無水酢酸(29μL,0.30mmol)を加え、1時間かけて−55℃まで昇温後、飽和塩化アンモニウム水溶液で反応を停止した。分液して水層をエーテルで抽出し、有機層を合わせて無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。
粗生成物を小試験管に移し、テトラヒドロフラン0.50mLと3M塩酸0.50mLを加えた。20分かけて80℃に昇温後、更に10分間撹拌した。飽和重曹水で反応を停止して分液し、水層をエーテルで抽出した。有機層を合わせて無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=30%)により精製し、ヒドロキシケトン(11)を得た[25mg、エノン(10)からの収率92%、(11)を主成分とする68:24:8のジアステレオマー混合物]。
Figure 0004503596
アルゴン雰囲気下、−78℃で4−メトキシ−3−ブテンニトリル(1)(27mg,0.28mmol)のテトラヒドロフラン(1.5mL)溶液に、カリウムヘキサメチルジシラジドの0.5Mトルエン溶液(0.56mL,0.28mmol)を加えた。1時間後、ヨウ化メチル(17μL,0.28mmol)を加えて同温度で30分間撹拌した。これにカリウムヘキサメチルジシラジドの0.5Mトルエン溶液(0.44mL,0.22mmol)を加えて−78℃で1時間撹拌後、3−メチル−2−シクロヘキセン−1−オン2(23μL,0.20mmol)のテトラヒドロフラン(0.50mL)溶液を加え、1時間かけて−45℃まで昇温した。これに無水酢酸(26μL,0.28mmol)を加え、同温度で30分間撹拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液で反応を停止した。分液して水層をエーテルで抽出し、有機層を合わせて無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。
粗生成物を小試験管に移し、テトラヒドロフラン0.40mLと3M塩酸0.40mLを加えた。30分かけて80℃に昇温後、更に30分間撹拌した。飽和重曹水で反応を停止して分液し、水層をエーテルで抽出した。有機層を合わせて無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=20%)により精製し、エノン(12)を得た[27mg、エノン(2)からの収率71%、91:9のジアステレオマー混合物]。
Figure 0004503596
100mL二口フラスコ中、−78℃で2−(2−メトキシエテニル)−4−ペンテンニトリル(13)(695mg,3.92mmol)のテトラヒドロフラン(11mL)溶液に、カリウムヘキサメチルジシラジドの0.5Mトルエン溶液(7.2mL,3.6mmol)を加えた。−78℃で1時間撹拌後、これに3−メチル−2−シクロヘキセン−1−オン(2)(0.37mL,3.27mmol)のテトラヒドロフラン(5.4mL) 溶液を加え、同温度で30分間撹拌した。クロロ炭酸エチル(0.44mL,4.58mmol)を加え、1時間かけて−45℃まで昇温後、飽和塩化アンモニウム水溶液で反応を停止した。分液して水層をエーテルで抽出し、有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。
粗生成物を還流冷却管を取り付けた50mL二口フラスコに移し、テトラヒドロフラン10mLと3M塩酸6.5mLを加えた。15分かけて80℃に昇温後、更に1.5時間撹拌した。飽和重曹水で反応を停止して分液し、水層をエーテルで抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=13%)により精製し、エノン(14)を得た[479mg、エノン(2)からの収率68%、95:5のジアステレオマー混合物]。
シクロペンテンアヌレーション反応を用いた光学活性ステロイドCD環部の合成
次式
Figure 0004503596
で示される合成経路に基づいて、3−メチル−2−シクロヘキセン−1−オン(1)と、4−アルコキシ−3−ブテンニトリル(2)から、本発明のシクロペンテンアヌレーション反応により合成される2環性エノン(3a及び3b)を、アルコール(4a及び4b)に還元後、酢酸エステル(5)とする。中間体の精製操作は不要であり、酢酸エステル(5)を再結晶することにより、(3b)由来のジアステレオマーを完全に除去することができる。得られた酢酸エステル(5a)を酵素(例えば、リパーゼQLM:名糖産業製)を用いて加水分解すると、光学活性アルコール((−)−4a)と光学活性酢酸エステル((+)−5a)とを各々ほぼ純粋に得ることができる。
(1)2環性エノン(3)の製造
1000mL二口フラスコにアルゴン雰囲気下カリウムヘキサメチルジシラジド19.2g(91.4mmol)をとり−78℃に冷却してテトラヒドロフラン260mLを加える。続いて4−メトキシ−3−ブテンニトリル28.88g(91.4mmol)のテトラヒドロフラン(30mL)溶液を加え1時間撹拌後、3−メチル−2−シクロへキセン−1−オン19.6mL(84.5mmol)のテトラヒドロフラン(50mL)溶液を加え、さらに1時間撹拌する。次に無水酢酸13.0mL(138mmol)を加え1時間かけて−45℃まで昇温させた後、飽和塩化アンモニウム水溶液で反応を停止する。水層をエーテルで抽出し有機層とあわせて飽和食塩水で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥後溶媒を留去する。
このものを精製することなく1000mL二口フラスコにテトラヒドロフラン(140mL)溶液としてとり、還流冷却管を取り付ける。次に3M塩酸水溶液140mLを加え30分かけて80℃に昇温し、さらに2.5時間撹拌した後、室温まで冷却する。飽和重曹水で反応を停止し、水層をエーテルで抽出し有機層とあわせて飽和食塩水で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥後溶媒を留去する。得られたエノン((3a):(3b)=87:13のジアステレオマー混合物)は精製せずに、次の反応に用いた。
(2)アルコール(4)の製造
3000mLフラスコに、(1)で製造した粗エノン((3a):(3b)=87:13のジアステレオマー混合物)をとり、メタノール760mLと水85mLに溶解する。塩化セリウム(III)七水和物47.2g(127mmol)を加え、−55℃に冷却する。水素化ホウ素ナトリウム9.6g(254mmol)を加え、1時間かけて0 ℃まで昇温する。水で希釈して減圧下でメタノールを留去し、濁りがなくなるまで酒石酸を加えた後、水層を酢酸エチルで抽出する。飽和食塩水で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥後溶媒を留去する。得られたアルコール((4a):(4b)=87:13のジアステレオマー混合物)は精製せずに、次の反応に用いた。
(3)シン体(5a)の製造
3000mLフラスコにアルゴン雰囲気下で、前記(2)で製造した粗アルコール((4a):(4b)=87:13のジアステレオマー混合物)をとり、塩化メチレン280mLとトリエチルアミン35mL(254mmol)に溶解する。4−ジメチルアミノピリジン1.0g(8.5mmol)を加え、氷冷下で無水酢酸16mL(169mmol)を加える。1時間撹拌後、水で反応を停止し、水層を酢酸エチルで抽出し有機層とあわせて飽和食塩水で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥後溶媒を留去する。粗エステルをエーテルに溶解し、活性炭大さじ3杯を加えてセライトでろ過する。ろ液を濃縮後、エタノールに溶解し、ドライアイス浴で冷却する。析出した結晶を−78℃で吸引ろ過して冷エタノールで洗浄し、結晶状の酢酸エステル5aを7.0g得る。母液を濃縮してシリカゲルカラムクロマトグラフィー(エーテル/ヘキサン=10%)により精製後、冷エタノールから再結晶し、さらに酢酸エステル(5a)3.6g(合計10.6g、エノン1から4工程の通算収率57%)を得る。
(4)光学活性アルコール((−)−4a)の製造
リン酸二水素カリウム286mgとリン酸水素二ナトリウム七水和物2.25gを水50mLに溶解してリン酸緩衝液を調製する。酢酸エステル(5a)1.10g(5.0mmol)のテトラヒドロフラン(5mL)溶液にリン酸緩衝液25mLとリパーゼQLM(名糖産業製)250mgを加え、室温(23℃前後)で2日間激しく撹拌する。食塩を飽和するまで加え、セライトを通してろ過し、セライト上に残ったリパーゼをエーテルでよく洗浄する。ろ液を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥後溶媒を留去する。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=10%〜50%)により分離精製し、酢酸エステル((+)−5a)543mg(収率50%、光学純度97%ee)とアルコール((−)−4a)438mg(収率49%、光学純度>99%ee)を得る。光学純度は、キラルカラム(ダイセルキラルセルAS−HとOB−H)を用いた高速液体クロマトグラフィー分析により決定した。
本発明に係るシクロペンテンシアヌレーション反応は、天然物、特にステロイドなどと同じ立体配置を有する化合物を容易にかつ高収率で製造することができ、天然物の全合成に利用することが可能である。また、本発明の方法は、ステロイドの実用的不斉合成法として効果的に使用し得る。
さらに、本発明の方法によれば、容易に光学分割できる化合物を製造することができるので、各種の立体特異的な化合物の製造方法、例えば各種の生理活性物質の製造方法として産業上の利用可能性を有している。


Claims (22)

  1. α,β−不飽和ケトンと、γ−アルコキシ−β,γ−不飽和ニトリルとを原料物質として使用することを特徴とする、立体選択的なシクロペンテンニトリル誘導体の製造方法。
  2. γ−アルコキシ−β,γ−不飽和ニトリルが、α位にアルキル基又はアリル基を有していてもよい4−アルコキシ−3−ブテンニトリルである、請求項1に記載のシクロペンテンニトリル誘導体の製造方法。
  3. γ−アルコキシ−β,γ−不飽和ニトリルが、下記一般式[1]
    Figure 0004503596
    (式中、Rはアルキル基を表し、Rは水素原子、アルキル基又はアリル基を表す。)
    で示されるα位にアルキル基又はアリル基を有していてもよい4−アルコキシ−3−ブテンニトリルである請求項2に記載の製造方法。
  4. α,β−不飽和ケトンが下記一般式[2]
    Figure 0004503596
    (式中、環Aはシクロアルカン環と縮合環を形成していてもよいシクロアルケン環を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表す。)
    で示される化合物である、請求項1に記載の製造方法。
  5. α,β−不飽和ケトンと、γ−アルコキシ−β,γ−不飽和ニトリルとの共役付加反応により得られた化合物を、次いで5員環形成反応に付すことを特徴とする、シクロペンテンニトリル誘導体の製造方法。
  6. γ−アルコキシ−β,γ−不飽和ニトリルが、α位にアルキル基又はアリル基を有していてもよい4−アルコキシ−3−ブテンニトリルである、請求項5に記載のシクロペンテンニトリル誘導体の製造方法。
  7. 共役付加反応により得られた化合物を単離することなく、次の5員環形成反応に付すことを特徴とする請求項5又は6に記載の製造方法。
  8. 共役付加反応が、カリウムを含有する塩基の存在下で行われる請求項5又は6に記載の製造方法。
  9. 共役付加反応が、ハロゲン化アルキル又はハロゲン化アルケニルの存在下に行われ、γ−アルコキシ−β,γ−不飽和ニトリルのα位のアルキル化又はアルケニル化が同時に行われるものである請求項5又は6に記載の製造方法。
  10. 共役付加反応により得られた化合物を有機カルボン酸又は炭酸の反応性誘導体でエステル化した後、5員環形成反応に付すことを特徴とする、請求項5又は6に記載の製造方法。
  11. 5員環形成反応が、強酸で処理することにより5員環を形成させる、請求項5又は6に記載の製造方法。
  12. 共役付加反応により得られた化合物を、無水酢酸又はクロロ炭酸エステルを用いてエノールエステルとする、請求項5又は6に記載の製造方法。
  13. α位にアルキル基又はアリル基を有していてもよい4−アルコキシ−3−ブテンニトリルが下記一般式[1]
    Figure 0004503596
    (式中、Rはアルキル基を表し、Rは水素原子、アルキル基又はアリル基を表す。)
    で示される化合物である、請求項6に記載の製造方法。
  14. α,β−不飽和ケトンが環状ケトンである、請求項5又は6に記載の製造方法。
  15. α,β−不飽和ケトンがケト基を有するステロイド類である、請求項5又は6に記載の製造方法。
  16. α,β−不飽和ケトンが下記一般式[2]
    Figure 0004503596
    (式中、環Aはシクロアルカン環と縮合環を形成していてもよいシクロアルケン環を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表す。)
    で示される化合物である、請求項5又は6に記載の製造方法。
  17. α位にアルキル基又はアリル基を有していてもよい4−アルコキシ−3−ブテンニトリルが下記一般式[1]
    Figure 0004503596
    (式中、Rはアルキル基を表し、Rは水素原子、アルキル基又はアリル基を表す。)
    で示される化合物であり、α,β−不飽和ケトンが下記一般式[2]
    Figure 0004503596
    (式中、環Aはシクロアルカン環と縮合環を形成していてもよいシクロアルケン環を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表す。)
    で示される化合物であり、シクロペンテンニトリル誘導体が下記一般式[3]
    Figure 0004503596
    (式中、R及びRは前記と同じ。)
    で示される化合物である、請求項6に記載の製造方法。
  18. α位にアルキル基又はアリル基を有していてもよい4−アルコキシ−3−ブテンニトリルが、4−メトキシ−3−ブテンニトリルである、請求項17に記載の製造方法。
  19. 光学分割可能なシクロペンテンニトリル誘導体を製造するための原料物質としての、γ−アルコキシ−β,γ−不飽和ニトリルの使用。
  20. γ−アルコキシ−β,γ−不飽和ニトリルが、α位にアルキル基又はアリル基を有していてもよい4−アルコキシ−3−ブテンニトリルである、請求項19に記載の使用。
  21. 請求項1〜18のいずれかに記載の製造方法により製造されたシクロペンテンニトリル誘導体のケト基を還元して対応するアルコールとした後、これを光学分割して、光学活性アルコール誘導体を製造する方法。
  22. 光学分割が、酵素を用いた光学分割法である請求項21に記載の方法。
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